脊椎矯正装置
【課題】小型且つ簡易に組むことが出来て、脊椎の矯正を簡単に行うことのできる脊椎矯正装置を提供する。
【解決手段】使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置(10)である。前方(A)を向いて体幹を起立させた使用者の脊椎を挟んだ対称位置に対称の運動を与えるように腰部を揺動せしめる下肢運動部(20)と、下肢運動部(20)の前方に設けられて使用者の両手で把持される一対の握り部(51a、51b)と、下肢運動部(20)を駆動させた状態で下肢運動部(20)の前方(A)の位置から側方の位置に向けて握り部(51a、51b)を下肢運動部(20)に対して相対的に移動させ固定する制御部と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置(10)である。前方(A)を向いて体幹を起立させた使用者の脊椎を挟んだ対称位置に対称の運動を与えるように腰部を揺動せしめる下肢運動部(20)と、下肢運動部(20)の前方に設けられて使用者の両手で把持される一対の握り部(51a、51b)と、下肢運動部(20)を駆動させた状態で下肢運動部(20)の前方(A)の位置から側方の位置に向けて握り部(51a、51b)を下肢運動部(20)に対して相対的に移動させ固定する制御部と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカイロプラクターにより脊椎の矯正をする場合、手技によりその位置を調整するような変位を椎骨に与えて矯正が行われる。また、脊椎を構成する椎骨を支持する脊椎起立筋群にその収縮力を活性化させる刺激を手技により与えて脊椎の矯正効果を得る方法もある。例えば、脊椎の歪みによって、脊椎起立筋群のうちの横突棘筋が伸びきってしまっている場合、これを更に伸びた状態へ繰り返し引っ張りとなるような運動を与えて、横突棘筋の収縮力の活性化を促すのである。収縮力の活性化した横突棘筋によれば、脊椎の歪みが自己解消できて、脊椎が矯正され得る。
【0003】
ところで、カイロプラクター等の専門家によらずとも、上記したような脊椎起立筋群の収縮力を活性化させて脊椎の自己矯正効果を得る脊椎矯正装置の開発が期待されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カイロプラクターなどの専門家による手技と同様に、装置によって、特定の脊椎起立筋群の収縮力を活性化させて脊椎の自己矯正効果を得るためには、特定の部位に正しく繰り返し運動を付与しなければならない。すなわち、使用者と脊椎矯正装置との相対的位置関係を厳密に調整する必要がある。かかる調整のための位置決めの機構装置の構造は複雑になり、装置が大型になりがちである。
【0005】
本発明は上記した状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、小型且つ簡易に組むことが出来て、脊椎の矯正を簡単に行うことのできる脊椎矯正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による脊椎矯正装置は、使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置であって、前方を向いて体幹を起立させた前記使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめる下肢運動部と、前記下肢運動部の前方に設けられて前記使用者の両手で把持される一対の握り部と、前記下肢運動部を駆動させた状態で前記下肢運動部の前記前方の位置から側方の位置に向けて前記握り部を前記下肢運動部に対して相対的に移動させ固定する制御部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の装置によれば、脊椎を捻ることで脊椎の歪みに合わせて脊椎起立筋群のうちの横突棘筋が伸ばされた状態となる。そして、使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめることで腰部の位置を安定させ、脊椎のうちの椎骨同士に小刻みな震えを伝達させるのである。特に脊椎の歪みを生じた部分、すなわち不連続点において震えが吸収されて、当該部位に関連する横突棘筋を伸びた状態からさらに伸びた状態に繰り返し変位させ得るのである。つまり、使用者と脊椎矯正装置との相対的位置関係を厳密に調整することなく、歪みを生じた脊椎の矯正を簡単に行うことが出来る。かかる発明によれば、脊椎矯正装置への使用者の位置決めのための機構を必要としないから、装置を小型且つ簡易に組むことが出来る。
【0008】
上記発明において、前記下肢運動部は、前記使用者を起立させた状態でその両肢を介して前記腰部を揺動せしめることを特徴としてもよい。下肢からは骨盤の脊椎を挟んだ左右対称位置に運動が与えられる。使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめることで腰部の位置を安定させ、脊椎のうちの椎骨同士に小刻みな震えを伝達させ得る。
【0009】
上記発明において、前記下肢運動部は前記使用者の前記下肢の左右を交互に上下動せしめるよう上下動する踏み板であって、前記上下動の中心揺動軸が前記使用者の両下肢の間に来るよう配置されることを特徴としてもよい。踏み板の上下動の中心揺動軸が使用者の両下肢の間に来るよう配置されることで、下肢からは骨盤の脊椎を挟んだ左右対称位置に、それぞれ交互に上下運動が与えられる。脊椎と骨盤との接続位置は、骨盤の揺動のほぼ中心となり脊椎のうちの椎骨同士には小刻みな震えを伝達させ得る。
【0010】
上記発明において、前記一対の握り部は水平に配置された単一の棒状の両端部にそれぞれ設けられていることを特徴としてもよい。使用者は把持部を回外位又は回内位のどちらかで把持するかを適宜選択できて、特に回外位に把持部を把持した場合には、上肢の脇部が回内位に把持した場合よりも締まり体幹の位置が安定する。これにより脊椎の歪みを生じた部分、すなわち不連続点に安定して震えが吸収されて、当該部位に関連する横突棘筋を伸びた状態からさらに伸びた状態に繰り返し変位させ得る。
【0011】
上記発明において、前記棒状体は長手方向中心部近傍の回転軸の周囲において水平面内で揺動することを特徴としてもよい。両上肢から両肩部、すなわち脊椎を挟んだ左右対称位置に振動を導入することで、脊椎の長さ方向に沿った脊椎の捻りの中心軸を安定させ、使用者の姿勢を安定させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】脊椎の矯正についての原理の図である。
【図2】脊椎の矯正についての原理の図である。
【図3】本発明による脊椎矯正装置の斜視図である。
【図4】本発明による脊椎矯正装置の要部の断面図(断面B−B)である。
【図5】本発明による脊椎矯正装置の要部の上面図である。
【図6】本発明による脊椎矯正装置の要部の断面図である。
【図7】本発明による脊椎矯正装置の要部の断面図(断面C−C)である。
【図8】本発明による脊椎矯正装置の要部の上面図である。
【図9】本発明による脊椎矯正装置の要部の分解斜視図である。
【図10】本発明による脊椎矯正装置の制御図である。
【図11】本発明による脊椎矯正装置の要部のハンドルの図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明によって脊椎の矯正効果を得るための原理を説明する。
【0014】
図1に示すように、脊椎1を構成する椎骨2を支持するための図示しない脊椎起立筋群のうちの横突棘筋5は、椎骨2の側方の横突起4とその上方の椎骨2の後方(背面側)の棘突起3とを接続する筋肉である。例えば、図1に示すように、脊椎を側屈させると、左右の横突棘筋5のうち一方の横突棘筋5−2が伸張する。健常者であれば、横突棘筋5−2の収縮力により脊椎1の側屈は解消される。しかしながら、横突棘筋5−2の収縮力が低下している場合にあっては脊椎1の側屈を解消させることができない。
【0015】
そこで、図2に示すように、脊椎1(図1参照)に捻りを与えると、下方(図面奥側)に位置する椎骨2’の横突起4’とその上方に位置する椎骨2の棘突起3との距離が長くなるため横突棘筋5−2は伸張される。続いて、横突棘筋5−2の伸張とともに、上半身を起立状態にした人体に、腰部を揺動させるような運動を与える。すると、腰部の揺動は椎骨2同士を小刻みに振るわせて吸収される。つまり、腰部を揺動させる運動によって、横突棘筋5−2には伸びた状態とさらに伸びた状態との間の繰り返し運動が与えられる。その結果、収縮力の低下した横突棘筋5−2は収縮力が活性化し、上記した脊椎1の捻りを解除した後にあっては、活性化した収縮力により脊椎の側屈が解消され、脊椎が矯正され得るのである。
【0016】
次に、本発明の1つの実施例である脊椎矯正装置について、図3乃至図10を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図3に示すように、脊椎矯正装置10は略方形の踏み板40を設けた床面上に設置される円筒形の下肢運動部20、下肢運動部20の外周側を覆う円環状の回動部30、回動部30から鉛直上方に伸びる円筒形の回動柱60、回動柱60の上部の嵌合部61に嵌合されるハンドル50及び回動部30から鉛直上方に伸びる柱53、柱53の上端であって回動柱60の近傍に立設された操作部52を含む。ここで、図3中に示すように、X軸、Y軸及びZ軸を定める。すなわち、踏み板40の中央から図の回動柱60に向かって右方向を+X、上方向を+Y、前方を+Zとする。また、下肢運動部20の前方(+Z方向)に基準点Aを設ける。
【0018】
図4に示すように、下肢運動部20は略円筒形の中央筐体21に設けられる。中央筐体21には、外周側に向けて略半周に渡り連続したラックギア29が設けられ、底面21aには床と接する足部70が少なくとも3以上設けられる。クランク部材26aは図には示さないが軸受けが存在し底面21aに固定される柱91aに接続させいる。
クランク部材26aは、図には示さないがシャフトを介してギアやプーリー等からなる動力伝達部23に連結され、さらに、動力伝達部23はモータなどを含む中央駆動部24に連結されている。中央駆動部24は中央部モータ制御部101によって駆動速度などを制御可能である。
回転運動を得たクランク部材26aはアーム92aを介して動力伝達接合部材93aに接合されたアーム92bに伝えられる。
底面21aに固定された柱91bはシーソー運動をするアーム92aの支点である構造をしており、クランク部材26b、26cを介してアーム92c、92dにより、その運動を踏み板40a、40bに接合された動力伝達接合部材93b、93cを介して上下運動に変える構造と成っている。この踏み板40a、40bの上下運動は交互に相反する運動と成るように設定されている。
使用者の両足裏面を上下動させるストロークは、両足裏面間の距離にもよるが、脊椎に震えを生じさせるのに過大すぎず、過小すぎない量、踏み板40a、40bが同じレベルの水平線に成ったところより1cm以上、一般的に3cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましい。
尚、図7を見るとシリンダー部材93が底面21aに固定され、ピストン部材94が踏み台40に固定され、踏み台40を安定化させており、シリンダー部材93の内部は踏み台40の上下運動の最下位置よりピストン部材94下がらない様にシリンダー部材内部のピストン部材が当たるところ93aが存在する構造に成っている。
【0019】
図4に示すように、下肢運動部20の底部外周には外周側に突出した鍔部71が設けられる。鍔部71の上面は平滑に研磨され、ローラ72と接する。ローラ72は、下肢運動部20に対して回動部30が回動自在となるように、回動部30下端内側部に少なくとも3個以上配置される。
【0020】
更に図6を参照すると、回動部30を区画する回動筐体33内には、回動モータ制御部102により駆動速度などを制御可能な、ギアやモータなどを含む回動駆動部31が固設される。回動駆動部31は、回動部30の回動軸と直交する回転軸L2を有するウォームギア32に連結されている。ウォームギア32は回動筐体33の内周側に設けられた窓34を介して、中央筐体21の外周の約半周に渡って設けられたラックギア29と係合されている。
【0021】
故に、回動駆動部31によりウォームギア32を回転させると、回動部30は下肢運動部20の外周を基準点A(図3参照)に対して左右約90度まで回動し得る。
【0022】
揺動駆動部35によってカム36を回転させると羽根部材64a及び64bによって回動柱60は回転軸M2を中心とした往復を繰り返す回転運動をする。これにより、回動柱60の上部に嵌合されたハンドル50は回転軸M2の周囲においてX−Z平面内で揺動する。ハンドル50の揺動について、把持部51a及び51b近傍の前後動のストロークは20cm以下であることが好ましいが、使用者の安全性を考えると8cm以下がより好ましい。
【0023】
図3及び図9を参照すると、回動柱60の上部には断面略矩形の嵌合部61が形成され、Y軸方向に互いに離間して削孔された複数の高さ調節用孔61’が設けられる。嵌合部61には嵌合孔56によってハンドル50が嵌合され、ピン54によってハンドル50の中央に設けられた貫通孔50’と高さ調節用孔61’のうちの1とを連通させて固定する。この構成によりハンドル50は高さを調整可能である。ピン54には脱落防止機構を設けると好適である。ハンドル50の両端部には把持部51a及び51bが設けられ、その端部には回動用スイッチ55a及び55bが設けられる。また、把持部51aの内側には揺動用スイッチ55cが設けられる。回動用スイッチ55a、55b及び揺動用スイッチ55cは図示しないハンドル内の配線を介して配線65a、65b及び65cにそれぞれ接続し、配線65a、65b及び65cは中空の回動柱60内部を通って後述する中央制御部に接続される。
【0024】
図10を参照すると、中央制御部100は中央部モータ制御部101、回動モータ制御部102及び揺動モータ制御部103のそれぞれに接続される。中央制御部100は、操作部52に接続され、操作部52及び回動用スイッチ55a、55b及び揺動用スイッチ55cを操作することによって、中央制御部100から各制御部のそれぞれに対し制御信号が送出される。
【0025】
次に、脊椎矯正装置10の使用方法及び動作について、図3乃至図10を用いて詳細に説明する。
【0026】
使用者はあらかじめ立位(腰部を動かさないようにする。)若しくは座位で自らの体を左右に捻り、左右どちらが捻り可能な角度が浅いかを確認しておく。横突棘筋5に収縮力の低下した部位がある場合、自ら体を捻った場合は当該部位を無意識にかばって捻り角度が浅くなるのである。つまり、自ら体を捻った場合の捻り角度の浅い方に本発明の装置で捻りを与えて、収縮力の低下した横突棘筋5を伸張させることができるのである。
【0027】
図3を参照すると、まず、使用者は足裏マークを記載された踏部44a及び44bに下肢を載せて脊椎矯正装置10上に基準点Aを正面にして起立する。使用者の前腕を略水平にしてハンドル50を回内位若しくは回外位で把持し、使用者の肩との位置関係をハンドル50の移動の際に大きく変化させないで済むように、ハンドル50の高さを胸部から腹部近傍の間で調整する。
【0028】
次に操作部52を操作して回動部30の回動する角速度を調整する。角速度は、体幹の捻り及び脊椎に捻りを与える速度でもあるので、各部位に無理を生じさせないよう好ましくは5〜45度/秒の範囲で調整され得る。
【0029】
続いて、図9を参照すると、使用者はハンドル50の把持部51a及び51bをそれぞれ左右の手で親指を外側に向けて、すなわち回外位で把持する。
【0030】
さらに、使用者は回動用スイッチ55a又は55bを親指で操作して回動部30を回動させる。詳細には、図6、図9及び図10を参照すると、回動用スイッチ55aを右手で押下して、中央制御部100から回動モータ制御部102を介して、回動駆動部31に電力が供給される。回動駆動部31の図示しないモータの回転数は、操作部52で調整した角速度を回動部30に与えるように、回動モータ制御部102により制御される。回動用スイッチ55aの押下により、ハンドル50は基準点Aに対して左方向へ移動させるように左回動し、回動用スイッチ55aを離すと回動は停止し、ハンドル50は固定される。同様に回動用スイッチ55bによって回動部30を右方向へ回動させることができる。ここで、あらかじめ確認しておいた捻り可能な角度が浅い左右のうち一方へ回動部30を回動させると、把持部51a及び51bを把持した使用者の腕・肩が回動部30の回動によって脊椎1に対して捻られる。このとき、使用者は意識して腰部を基準点Aに対向させ、捻りを与えないよう腰部の位置を維持すべきであるが、上記した踏み板40a、40bの上下動の周波数によれば、慣性力により使用者の腰部の向きが変化しづらいのである。
【0031】
把持部51a及び51bを回外位で把持すると、使用者の脇が締って肩部にハンドル50の運動を安定して伝えることができる。使用者の腕・肩の「移動の遊び」が減少し、やがて脊椎1自体にも捻りが与えられる。使用者は腕、肩及び脊椎1周辺に痛みを感じる前に回動部30の回動を停止させる。上記したように、使用者の腰部は下肢に対して捻りを与えられず、腰部と肩部との間で脊椎1が捻られるのである。
【0032】
以上の状態では、使用者の横突棘筋5(図1参照)は伸びた状態にある。使用者の腰部の揺動は使用者の脊椎1を構成する椎骨2の各々の小刻みな震えで吸収され、特に不連続点となる脊椎の歪み部分に震えは吸収される。従って、椎骨2同士を接続する横突棘筋5、特に脊椎の歪みに関連する横突棘筋5に繰り返し運動を与えることができる。横突棘筋5の伸びた状態とさらに伸びた状態との間の繰り返し運動は、横突棘筋5の低下した収縮力を活性化させる。これにより、上記した捻りを解除した後にあっては、横突棘筋5の活性化した収縮力によって脊椎1の歪みを矯正し得るのである。
【0033】
本実施例においては、万一使用者の身体の捻りの限界を超えて回動部30が回動しようとしても、例えば左方向に回動する場合にあっては使用者の右手が回動用スイッチ55aからただちに離れてしまって回動が停止する。
【0034】
次に、上記した脊椎矯正装置10において、ハンドル50を揺動させる使用方法及び動作について説明する。
【0035】
図3及を参照すると、使用者は脊椎矯正装置10のハンドル50の高さ、回動部30の回動する角速度及びを上記したと同様に調整する。さらにハンドル50の揺動する周波数は、上記したと同様の周波数、好ましくは2〜22Hzの範囲で操作部52を操作して指定する。
【0036】
次に、使用者は操作部52を操作して、上記したと同様に下肢運動部20の踏み板40を所望の周波数で始動させる。
【0037】
続いて、使用者はハンドル50の揺動を指定した周波数で始動させ、ハンドル50の把持部51a及び51bをそれぞれ左右の親指を外側に向けて、すなわち回外位で把持する。詳細には、図8乃至図10を参照すると、使用者は揺動用スイッチ55cを押下し、中央制御部100から揺動モータ制御部103を介して、揺動駆動部35に電力が供給される。揺動駆動部35は、カム36を回転させる。カム36の回転は、羽根部材64a及び64bによって回動柱60の回転軸M2周りの左右反復回転に変換される。故に、ハンドル50は回転軸M2の周囲において水平面内で繰り返し揺動せしめられる。
【0038】
さらに、使用者は上記したと同様に、回動用スイッチ55a又は55bを操作して、回動部30を下肢運動部20に対して所望の方向へ回動させ、脊椎1に捻りを与える。
【0039】
ここで、使用者の上肢にはハンドル50の揺動により、その左右を交互に前後させる運動が既に与えられている。かかる運動により、脊椎1がハンドル50の移動によって捻りを与えられる前に、使用者の肩部の左右を交互に前後に揺動せしめ、脊椎1の捻りのための回転軸を固定する。これにより、ハンドル50により与えられる脊椎1の捻りの中心を安定化させる。故に、ハンドル50を揺動させない場合と同様の脊椎を矯正する効果をより安定して得ることができるのである。ハンドル50の揺動する周期は、かかる効果を得るために上記したように2〜22Hzの範囲で指定される。
【0040】
上記した操作において、踏み板40の上下動とハンドル50の揺動とを同期させると、上記した脊椎1の捻りの中心をより安定化させやすくなる。特に、下肢の左が最も高く上がった時に上肢の左が最も後方に下がるように同期させると、歩行に近い腰部と肩部の対応関係となり、脊椎1の捻りの中心を最も安定化させやすい。
【0041】
なお、親指を内側に向けて、すなわち回内位で把持部51a及び51bを把持しても操作可能なように、回動用スイッチ55a及び55bは把持部の内側に設けても良い。
【0042】
また、本実施例では下肢運動部20を床面に固定して、回動部30を下肢運動部20の周囲に回動させたが、これとは逆に、回動部30を床面に固定して下肢運動部20を回転させる構造としてもよい。
【0043】
さらに、ハンドル50に換えて、図11に示すようなハンドル80を使用してもよい。ハンドル80は、中央に略矩形の嵌合孔86を有し、回転柱60の上部の嵌合部61(図9参照)がこれに嵌合される。ハンドル80の両端部には、水平にスリット80a及び80bが切れ込まれ、上下に対向したスライド孔89a及び89bが設けられる、スライド孔89a及び89bには、把持体82a及び82bの一端ぶ近傍に植設されたピン84a及び84bが摺動自在に係合している。把持体82a及び82bは、略L字状であって、ピン84a及び84bの植設された一端部から手前に向けて伸びるスライド部83a及び83bと、手前側端部で略直角に外側に向けて屈曲する把持部81a及び81bとからなる。スライド部83a及び83bは、後述する筒部材85a及び85b内に、摺動自在に挿通される。筒部材85a及び85bは、その長手方向を回転柱60が基準点Aに最も近づいた状態においてZ軸と平行になるように、回動部30(図3参照)上に垂直に設けられた上部固定柱87a及び87b、下部固定柱87c及び87bの上端部に固定される。
【0044】
なお、上部固定柱87a及び87bは中空の下部固定柱87c及び87d内に上下にスライド自在に嵌め込まれ、高さ調節ピン88a及び88b(その他、図示しない高さ調節ピン)と高さ調節孔90a及び90b(その他、図示しない高さ調節孔)によって、嵌合部61の高さ調節孔61’によってハンドル80の調節される高さ(図9参照)にそれぞれ適合するように高さを調節可能である。
【0045】
かかる構成により、把持部81a及び81bを把持した使用者の左右の上肢に前後方向の直線運動を左右交互に与え得る。このようなハンドル80を使用した場合においても、上記したハンドル50と同様に、脊椎1の捻りの中心を安定させる。
【0046】
以上、本発明の実施例によれば、上記したと同様に、使用者の脊椎1に捻りを与えて横突棘筋5の伸びた状態とさらに伸びた状態との間の繰り返し運動を与え、横突棘筋5の低下した収縮力を活性化させる。脊椎1の捻りを解除した後にあっては、横突棘筋5の活性化した収縮力によって脊椎1の歪みを矯正し得るのである。
【符号の説明】
【0047】
1 脊椎
2 椎骨
5 横突棘筋
10 脊椎矯正装置
20 下肢運動部
30 回動部
40 踏み板
50 ハンドル
M1 中心軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカイロプラクターにより脊椎の矯正をする場合、手技によりその位置を調整するような変位を椎骨に与えて矯正が行われる。また、脊椎を構成する椎骨を支持する脊椎起立筋群にその収縮力を活性化させる刺激を手技により与えて脊椎の矯正効果を得る方法もある。例えば、脊椎の歪みによって、脊椎起立筋群のうちの横突棘筋が伸びきってしまっている場合、これを更に伸びた状態へ繰り返し引っ張りとなるような運動を与えて、横突棘筋の収縮力の活性化を促すのである。収縮力の活性化した横突棘筋によれば、脊椎の歪みが自己解消できて、脊椎が矯正され得る。
【0003】
ところで、カイロプラクター等の専門家によらずとも、上記したような脊椎起立筋群の収縮力を活性化させて脊椎の自己矯正効果を得る脊椎矯正装置の開発が期待されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カイロプラクターなどの専門家による手技と同様に、装置によって、特定の脊椎起立筋群の収縮力を活性化させて脊椎の自己矯正効果を得るためには、特定の部位に正しく繰り返し運動を付与しなければならない。すなわち、使用者と脊椎矯正装置との相対的位置関係を厳密に調整する必要がある。かかる調整のための位置決めの機構装置の構造は複雑になり、装置が大型になりがちである。
【0005】
本発明は上記した状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、小型且つ簡易に組むことが出来て、脊椎の矯正を簡単に行うことのできる脊椎矯正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による脊椎矯正装置は、使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置であって、前方を向いて体幹を起立させた前記使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめる下肢運動部と、前記下肢運動部の前方に設けられて前記使用者の両手で把持される一対の握り部と、前記下肢運動部を駆動させた状態で前記下肢運動部の前記前方の位置から側方の位置に向けて前記握り部を前記下肢運動部に対して相対的に移動させ固定する制御部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の装置によれば、脊椎を捻ることで脊椎の歪みに合わせて脊椎起立筋群のうちの横突棘筋が伸ばされた状態となる。そして、使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめることで腰部の位置を安定させ、脊椎のうちの椎骨同士に小刻みな震えを伝達させるのである。特に脊椎の歪みを生じた部分、すなわち不連続点において震えが吸収されて、当該部位に関連する横突棘筋を伸びた状態からさらに伸びた状態に繰り返し変位させ得るのである。つまり、使用者と脊椎矯正装置との相対的位置関係を厳密に調整することなく、歪みを生じた脊椎の矯正を簡単に行うことが出来る。かかる発明によれば、脊椎矯正装置への使用者の位置決めのための機構を必要としないから、装置を小型且つ簡易に組むことが出来る。
【0008】
上記発明において、前記下肢運動部は、前記使用者を起立させた状態でその両肢を介して前記腰部を揺動せしめることを特徴としてもよい。下肢からは骨盤の脊椎を挟んだ左右対称位置に運動が与えられる。使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめることで腰部の位置を安定させ、脊椎のうちの椎骨同士に小刻みな震えを伝達させ得る。
【0009】
上記発明において、前記下肢運動部は前記使用者の前記下肢の左右を交互に上下動せしめるよう上下動する踏み板であって、前記上下動の中心揺動軸が前記使用者の両下肢の間に来るよう配置されることを特徴としてもよい。踏み板の上下動の中心揺動軸が使用者の両下肢の間に来るよう配置されることで、下肢からは骨盤の脊椎を挟んだ左右対称位置に、それぞれ交互に上下運動が与えられる。脊椎と骨盤との接続位置は、骨盤の揺動のほぼ中心となり脊椎のうちの椎骨同士には小刻みな震えを伝達させ得る。
【0010】
上記発明において、前記一対の握り部は水平に配置された単一の棒状の両端部にそれぞれ設けられていることを特徴としてもよい。使用者は把持部を回外位又は回内位のどちらかで把持するかを適宜選択できて、特に回外位に把持部を把持した場合には、上肢の脇部が回内位に把持した場合よりも締まり体幹の位置が安定する。これにより脊椎の歪みを生じた部分、すなわち不連続点に安定して震えが吸収されて、当該部位に関連する横突棘筋を伸びた状態からさらに伸びた状態に繰り返し変位させ得る。
【0011】
上記発明において、前記棒状体は長手方向中心部近傍の回転軸の周囲において水平面内で揺動することを特徴としてもよい。両上肢から両肩部、すなわち脊椎を挟んだ左右対称位置に振動を導入することで、脊椎の長さ方向に沿った脊椎の捻りの中心軸を安定させ、使用者の姿勢を安定させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】脊椎の矯正についての原理の図である。
【図2】脊椎の矯正についての原理の図である。
【図3】本発明による脊椎矯正装置の斜視図である。
【図4】本発明による脊椎矯正装置の要部の断面図(断面B−B)である。
【図5】本発明による脊椎矯正装置の要部の上面図である。
【図6】本発明による脊椎矯正装置の要部の断面図である。
【図7】本発明による脊椎矯正装置の要部の断面図(断面C−C)である。
【図8】本発明による脊椎矯正装置の要部の上面図である。
【図9】本発明による脊椎矯正装置の要部の分解斜視図である。
【図10】本発明による脊椎矯正装置の制御図である。
【図11】本発明による脊椎矯正装置の要部のハンドルの図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明によって脊椎の矯正効果を得るための原理を説明する。
【0014】
図1に示すように、脊椎1を構成する椎骨2を支持するための図示しない脊椎起立筋群のうちの横突棘筋5は、椎骨2の側方の横突起4とその上方の椎骨2の後方(背面側)の棘突起3とを接続する筋肉である。例えば、図1に示すように、脊椎を側屈させると、左右の横突棘筋5のうち一方の横突棘筋5−2が伸張する。健常者であれば、横突棘筋5−2の収縮力により脊椎1の側屈は解消される。しかしながら、横突棘筋5−2の収縮力が低下している場合にあっては脊椎1の側屈を解消させることができない。
【0015】
そこで、図2に示すように、脊椎1(図1参照)に捻りを与えると、下方(図面奥側)に位置する椎骨2’の横突起4’とその上方に位置する椎骨2の棘突起3との距離が長くなるため横突棘筋5−2は伸張される。続いて、横突棘筋5−2の伸張とともに、上半身を起立状態にした人体に、腰部を揺動させるような運動を与える。すると、腰部の揺動は椎骨2同士を小刻みに振るわせて吸収される。つまり、腰部を揺動させる運動によって、横突棘筋5−2には伸びた状態とさらに伸びた状態との間の繰り返し運動が与えられる。その結果、収縮力の低下した横突棘筋5−2は収縮力が活性化し、上記した脊椎1の捻りを解除した後にあっては、活性化した収縮力により脊椎の側屈が解消され、脊椎が矯正され得るのである。
【0016】
次に、本発明の1つの実施例である脊椎矯正装置について、図3乃至図10を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図3に示すように、脊椎矯正装置10は略方形の踏み板40を設けた床面上に設置される円筒形の下肢運動部20、下肢運動部20の外周側を覆う円環状の回動部30、回動部30から鉛直上方に伸びる円筒形の回動柱60、回動柱60の上部の嵌合部61に嵌合されるハンドル50及び回動部30から鉛直上方に伸びる柱53、柱53の上端であって回動柱60の近傍に立設された操作部52を含む。ここで、図3中に示すように、X軸、Y軸及びZ軸を定める。すなわち、踏み板40の中央から図の回動柱60に向かって右方向を+X、上方向を+Y、前方を+Zとする。また、下肢運動部20の前方(+Z方向)に基準点Aを設ける。
【0018】
図4に示すように、下肢運動部20は略円筒形の中央筐体21に設けられる。中央筐体21には、外周側に向けて略半周に渡り連続したラックギア29が設けられ、底面21aには床と接する足部70が少なくとも3以上設けられる。クランク部材26aは図には示さないが軸受けが存在し底面21aに固定される柱91aに接続させいる。
クランク部材26aは、図には示さないがシャフトを介してギアやプーリー等からなる動力伝達部23に連結され、さらに、動力伝達部23はモータなどを含む中央駆動部24に連結されている。中央駆動部24は中央部モータ制御部101によって駆動速度などを制御可能である。
回転運動を得たクランク部材26aはアーム92aを介して動力伝達接合部材93aに接合されたアーム92bに伝えられる。
底面21aに固定された柱91bはシーソー運動をするアーム92aの支点である構造をしており、クランク部材26b、26cを介してアーム92c、92dにより、その運動を踏み板40a、40bに接合された動力伝達接合部材93b、93cを介して上下運動に変える構造と成っている。この踏み板40a、40bの上下運動は交互に相反する運動と成るように設定されている。
使用者の両足裏面を上下動させるストロークは、両足裏面間の距離にもよるが、脊椎に震えを生じさせるのに過大すぎず、過小すぎない量、踏み板40a、40bが同じレベルの水平線に成ったところより1cm以上、一般的に3cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましい。
尚、図7を見るとシリンダー部材93が底面21aに固定され、ピストン部材94が踏み台40に固定され、踏み台40を安定化させており、シリンダー部材93の内部は踏み台40の上下運動の最下位置よりピストン部材94下がらない様にシリンダー部材内部のピストン部材が当たるところ93aが存在する構造に成っている。
【0019】
図4に示すように、下肢運動部20の底部外周には外周側に突出した鍔部71が設けられる。鍔部71の上面は平滑に研磨され、ローラ72と接する。ローラ72は、下肢運動部20に対して回動部30が回動自在となるように、回動部30下端内側部に少なくとも3個以上配置される。
【0020】
更に図6を参照すると、回動部30を区画する回動筐体33内には、回動モータ制御部102により駆動速度などを制御可能な、ギアやモータなどを含む回動駆動部31が固設される。回動駆動部31は、回動部30の回動軸と直交する回転軸L2を有するウォームギア32に連結されている。ウォームギア32は回動筐体33の内周側に設けられた窓34を介して、中央筐体21の外周の約半周に渡って設けられたラックギア29と係合されている。
【0021】
故に、回動駆動部31によりウォームギア32を回転させると、回動部30は下肢運動部20の外周を基準点A(図3参照)に対して左右約90度まで回動し得る。
【0022】
揺動駆動部35によってカム36を回転させると羽根部材64a及び64bによって回動柱60は回転軸M2を中心とした往復を繰り返す回転運動をする。これにより、回動柱60の上部に嵌合されたハンドル50は回転軸M2の周囲においてX−Z平面内で揺動する。ハンドル50の揺動について、把持部51a及び51b近傍の前後動のストロークは20cm以下であることが好ましいが、使用者の安全性を考えると8cm以下がより好ましい。
【0023】
図3及び図9を参照すると、回動柱60の上部には断面略矩形の嵌合部61が形成され、Y軸方向に互いに離間して削孔された複数の高さ調節用孔61’が設けられる。嵌合部61には嵌合孔56によってハンドル50が嵌合され、ピン54によってハンドル50の中央に設けられた貫通孔50’と高さ調節用孔61’のうちの1とを連通させて固定する。この構成によりハンドル50は高さを調整可能である。ピン54には脱落防止機構を設けると好適である。ハンドル50の両端部には把持部51a及び51bが設けられ、その端部には回動用スイッチ55a及び55bが設けられる。また、把持部51aの内側には揺動用スイッチ55cが設けられる。回動用スイッチ55a、55b及び揺動用スイッチ55cは図示しないハンドル内の配線を介して配線65a、65b及び65cにそれぞれ接続し、配線65a、65b及び65cは中空の回動柱60内部を通って後述する中央制御部に接続される。
【0024】
図10を参照すると、中央制御部100は中央部モータ制御部101、回動モータ制御部102及び揺動モータ制御部103のそれぞれに接続される。中央制御部100は、操作部52に接続され、操作部52及び回動用スイッチ55a、55b及び揺動用スイッチ55cを操作することによって、中央制御部100から各制御部のそれぞれに対し制御信号が送出される。
【0025】
次に、脊椎矯正装置10の使用方法及び動作について、図3乃至図10を用いて詳細に説明する。
【0026】
使用者はあらかじめ立位(腰部を動かさないようにする。)若しくは座位で自らの体を左右に捻り、左右どちらが捻り可能な角度が浅いかを確認しておく。横突棘筋5に収縮力の低下した部位がある場合、自ら体を捻った場合は当該部位を無意識にかばって捻り角度が浅くなるのである。つまり、自ら体を捻った場合の捻り角度の浅い方に本発明の装置で捻りを与えて、収縮力の低下した横突棘筋5を伸張させることができるのである。
【0027】
図3を参照すると、まず、使用者は足裏マークを記載された踏部44a及び44bに下肢を載せて脊椎矯正装置10上に基準点Aを正面にして起立する。使用者の前腕を略水平にしてハンドル50を回内位若しくは回外位で把持し、使用者の肩との位置関係をハンドル50の移動の際に大きく変化させないで済むように、ハンドル50の高さを胸部から腹部近傍の間で調整する。
【0028】
次に操作部52を操作して回動部30の回動する角速度を調整する。角速度は、体幹の捻り及び脊椎に捻りを与える速度でもあるので、各部位に無理を生じさせないよう好ましくは5〜45度/秒の範囲で調整され得る。
【0029】
続いて、図9を参照すると、使用者はハンドル50の把持部51a及び51bをそれぞれ左右の手で親指を外側に向けて、すなわち回外位で把持する。
【0030】
さらに、使用者は回動用スイッチ55a又は55bを親指で操作して回動部30を回動させる。詳細には、図6、図9及び図10を参照すると、回動用スイッチ55aを右手で押下して、中央制御部100から回動モータ制御部102を介して、回動駆動部31に電力が供給される。回動駆動部31の図示しないモータの回転数は、操作部52で調整した角速度を回動部30に与えるように、回動モータ制御部102により制御される。回動用スイッチ55aの押下により、ハンドル50は基準点Aに対して左方向へ移動させるように左回動し、回動用スイッチ55aを離すと回動は停止し、ハンドル50は固定される。同様に回動用スイッチ55bによって回動部30を右方向へ回動させることができる。ここで、あらかじめ確認しておいた捻り可能な角度が浅い左右のうち一方へ回動部30を回動させると、把持部51a及び51bを把持した使用者の腕・肩が回動部30の回動によって脊椎1に対して捻られる。このとき、使用者は意識して腰部を基準点Aに対向させ、捻りを与えないよう腰部の位置を維持すべきであるが、上記した踏み板40a、40bの上下動の周波数によれば、慣性力により使用者の腰部の向きが変化しづらいのである。
【0031】
把持部51a及び51bを回外位で把持すると、使用者の脇が締って肩部にハンドル50の運動を安定して伝えることができる。使用者の腕・肩の「移動の遊び」が減少し、やがて脊椎1自体にも捻りが与えられる。使用者は腕、肩及び脊椎1周辺に痛みを感じる前に回動部30の回動を停止させる。上記したように、使用者の腰部は下肢に対して捻りを与えられず、腰部と肩部との間で脊椎1が捻られるのである。
【0032】
以上の状態では、使用者の横突棘筋5(図1参照)は伸びた状態にある。使用者の腰部の揺動は使用者の脊椎1を構成する椎骨2の各々の小刻みな震えで吸収され、特に不連続点となる脊椎の歪み部分に震えは吸収される。従って、椎骨2同士を接続する横突棘筋5、特に脊椎の歪みに関連する横突棘筋5に繰り返し運動を与えることができる。横突棘筋5の伸びた状態とさらに伸びた状態との間の繰り返し運動は、横突棘筋5の低下した収縮力を活性化させる。これにより、上記した捻りを解除した後にあっては、横突棘筋5の活性化した収縮力によって脊椎1の歪みを矯正し得るのである。
【0033】
本実施例においては、万一使用者の身体の捻りの限界を超えて回動部30が回動しようとしても、例えば左方向に回動する場合にあっては使用者の右手が回動用スイッチ55aからただちに離れてしまって回動が停止する。
【0034】
次に、上記した脊椎矯正装置10において、ハンドル50を揺動させる使用方法及び動作について説明する。
【0035】
図3及を参照すると、使用者は脊椎矯正装置10のハンドル50の高さ、回動部30の回動する角速度及びを上記したと同様に調整する。さらにハンドル50の揺動する周波数は、上記したと同様の周波数、好ましくは2〜22Hzの範囲で操作部52を操作して指定する。
【0036】
次に、使用者は操作部52を操作して、上記したと同様に下肢運動部20の踏み板40を所望の周波数で始動させる。
【0037】
続いて、使用者はハンドル50の揺動を指定した周波数で始動させ、ハンドル50の把持部51a及び51bをそれぞれ左右の親指を外側に向けて、すなわち回外位で把持する。詳細には、図8乃至図10を参照すると、使用者は揺動用スイッチ55cを押下し、中央制御部100から揺動モータ制御部103を介して、揺動駆動部35に電力が供給される。揺動駆動部35は、カム36を回転させる。カム36の回転は、羽根部材64a及び64bによって回動柱60の回転軸M2周りの左右反復回転に変換される。故に、ハンドル50は回転軸M2の周囲において水平面内で繰り返し揺動せしめられる。
【0038】
さらに、使用者は上記したと同様に、回動用スイッチ55a又は55bを操作して、回動部30を下肢運動部20に対して所望の方向へ回動させ、脊椎1に捻りを与える。
【0039】
ここで、使用者の上肢にはハンドル50の揺動により、その左右を交互に前後させる運動が既に与えられている。かかる運動により、脊椎1がハンドル50の移動によって捻りを与えられる前に、使用者の肩部の左右を交互に前後に揺動せしめ、脊椎1の捻りのための回転軸を固定する。これにより、ハンドル50により与えられる脊椎1の捻りの中心を安定化させる。故に、ハンドル50を揺動させない場合と同様の脊椎を矯正する効果をより安定して得ることができるのである。ハンドル50の揺動する周期は、かかる効果を得るために上記したように2〜22Hzの範囲で指定される。
【0040】
上記した操作において、踏み板40の上下動とハンドル50の揺動とを同期させると、上記した脊椎1の捻りの中心をより安定化させやすくなる。特に、下肢の左が最も高く上がった時に上肢の左が最も後方に下がるように同期させると、歩行に近い腰部と肩部の対応関係となり、脊椎1の捻りの中心を最も安定化させやすい。
【0041】
なお、親指を内側に向けて、すなわち回内位で把持部51a及び51bを把持しても操作可能なように、回動用スイッチ55a及び55bは把持部の内側に設けても良い。
【0042】
また、本実施例では下肢運動部20を床面に固定して、回動部30を下肢運動部20の周囲に回動させたが、これとは逆に、回動部30を床面に固定して下肢運動部20を回転させる構造としてもよい。
【0043】
さらに、ハンドル50に換えて、図11に示すようなハンドル80を使用してもよい。ハンドル80は、中央に略矩形の嵌合孔86を有し、回転柱60の上部の嵌合部61(図9参照)がこれに嵌合される。ハンドル80の両端部には、水平にスリット80a及び80bが切れ込まれ、上下に対向したスライド孔89a及び89bが設けられる、スライド孔89a及び89bには、把持体82a及び82bの一端ぶ近傍に植設されたピン84a及び84bが摺動自在に係合している。把持体82a及び82bは、略L字状であって、ピン84a及び84bの植設された一端部から手前に向けて伸びるスライド部83a及び83bと、手前側端部で略直角に外側に向けて屈曲する把持部81a及び81bとからなる。スライド部83a及び83bは、後述する筒部材85a及び85b内に、摺動自在に挿通される。筒部材85a及び85bは、その長手方向を回転柱60が基準点Aに最も近づいた状態においてZ軸と平行になるように、回動部30(図3参照)上に垂直に設けられた上部固定柱87a及び87b、下部固定柱87c及び87bの上端部に固定される。
【0044】
なお、上部固定柱87a及び87bは中空の下部固定柱87c及び87d内に上下にスライド自在に嵌め込まれ、高さ調節ピン88a及び88b(その他、図示しない高さ調節ピン)と高さ調節孔90a及び90b(その他、図示しない高さ調節孔)によって、嵌合部61の高さ調節孔61’によってハンドル80の調節される高さ(図9参照)にそれぞれ適合するように高さを調節可能である。
【0045】
かかる構成により、把持部81a及び81bを把持した使用者の左右の上肢に前後方向の直線運動を左右交互に与え得る。このようなハンドル80を使用した場合においても、上記したハンドル50と同様に、脊椎1の捻りの中心を安定させる。
【0046】
以上、本発明の実施例によれば、上記したと同様に、使用者の脊椎1に捻りを与えて横突棘筋5の伸びた状態とさらに伸びた状態との間の繰り返し運動を与え、横突棘筋5の低下した収縮力を活性化させる。脊椎1の捻りを解除した後にあっては、横突棘筋5の活性化した収縮力によって脊椎1の歪みを矯正し得るのである。
【符号の説明】
【0047】
1 脊椎
2 椎骨
5 横突棘筋
10 脊椎矯正装置
20 下肢運動部
30 回動部
40 踏み板
50 ハンドル
M1 中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置であって、
前方を向いて体幹を起立させた前記使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめる下肢運動部と、
前記下肢運動部の前方に設けられて前記使用者の両手で把持される一対の握り部と、
前記下肢運動部を駆動させた状態で前記下肢運動部の前記前方の位置から側方の位置との間で前記握り部を前記下肢運動部に対して相対的に移動させる制御部と、を含むことを特徴とする脊椎矯正装置。
【請求項2】
前記下肢運動部は、前記使用者を起立させた状態でその両肢を介して前記腰部を揺動せしめることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記下肢運動部は前記使用者の前記下肢の左右を交互に上下動せしめるよう上下動する踏み板であって、前記上下動の中心揺動軸が前記使用者の両下肢の間に来るよう配置されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記一対の握り部は水平に配置された単一の棒状の両端部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記棒状体は長手方向中心部近傍の回転軸の周囲において水平面内で揺動することを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項1】
使用者の脊椎を矯正する脊椎矯正装置であって、
前方を向いて体幹を起立させた前記使用者の脊椎を挟んだ対称位置に運動を与えて腰部を揺動せしめる下肢運動部と、
前記下肢運動部の前方に設けられて前記使用者の両手で把持される一対の握り部と、
前記下肢運動部を駆動させた状態で前記下肢運動部の前記前方の位置から側方の位置との間で前記握り部を前記下肢運動部に対して相対的に移動させる制御部と、を含むことを特徴とする脊椎矯正装置。
【請求項2】
前記下肢運動部は、前記使用者を起立させた状態でその両肢を介して前記腰部を揺動せしめることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記下肢運動部は前記使用者の前記下肢の左右を交互に上下動せしめるよう上下動する踏み板であって、前記上下動の中心揺動軸が前記使用者の両下肢の間に来るよう配置されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記一対の握り部は水平に配置された単一の棒状の両端部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記棒状体は長手方向中心部近傍の回転軸の周囲において水平面内で揺動することを特徴とする請求項5記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−220988(P2010−220988A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98446(P2009−98446)
【出願日】平成21年3月22日(2009.3.22)
【出願人】(590004187)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月22日(2009.3.22)
【出願人】(590004187)
【Fターム(参考)】
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