説明

脊髄及び関節痛の検知及び治療のためのバイオマーカー及び方法

本発明では、脊椎又は関節疼痛及び炎症に関連する単離されたフィブロネクチンーアグリカン複合体を含むバイオマーカーが提供される。また、フィブロネクチンーアグリカン複合体の検知方法が提供される。さらに、フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在又は増加したレベルを検知することによる、疼痛と炎症の治療のための脊椎又は関節における治療場所を識別する方法が提供される。脊椎又は関節疼痛及び炎症を治療する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊髄又は関節の痛みに伴う病理の診断方法、及び脊髄又は関節の痛みを治療するための組成物及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の参照)
本出願はGaetano J.Scuderi氏、Lewis S.Hanna氏、Robert Bowser氏による2008年10月16日出願の特許文献1、2008年11月26日出願の特許文献2および2008年12月12日出願の特許文献3の恩恵を享受し、これら文献はここに参照され採り入れられる。
【0003】
脊髄及び関節の痛みは治療が困難である。特に脊髄及び関節の痛みの原因は識別が困難である。関節に負荷される力の度合いが増大すると関節損傷を引き起こす。異常な関節構造は多くの場合加齢の特徴であるが、関節損傷も多くの場合外傷の結果として観察される。例えば、軟骨傷害はアスリートに多く見られる。外傷による関節損傷は典型的に急性の炎症を伴うが、加齢による異常な関節構造は慢性的な状態である。現在医学者は外傷による急性の傷害と加齢による関節変形とを識別するシステム又は方法を持たない。現在では多くの場合、患者が患う特定の状態が急性か慢性かが不明であるため、ある所与の患者に対し適切な治療方法を決定するのが困難である。
【0004】
極端に高率の試験的膝関節鏡検査が半月板損傷の診断の困難さを際立たせている。この問題は、この病理を診断する今日の主流であるMRIの低い無病正診率により、さらに悪化している。MRIは65%もの無症候の人を半月板損傷と診断することが、MRIを問題のある診断装置となし、異常な半月板の病理と膝の痛みとの無関係さを際立たせている。おおくの人が変形性関節炎を発症している年配の患者にとって、異常な半月板の病理と膝の痛みとの無関係さは特に問題である。その有益性を疑問視する圧倒的な証拠(Moseley氏他著、非特許文献1)にも拘わらず、膝関節鏡検査はいまだに米国だけで年間66万回も実施されている。
【0005】
脊椎関連の痛みも典型的に、椎間板起因の、小関節起因の神経根障害性の痛みと分類されている。神経根障害性の痛みは伝統的に、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊椎すべり症、坐骨神経痛、梨状筋症候群、閉塞筋症候群、嚢胞性障害(例えば、結節及び滑膜の)、腫瘍、及び他の病理等の状態に関連する、神経根への圧迫又は機械的刺激のような、種々の身体的/機械的異常のせいにされてきた。
【0006】
髄核の脊椎神経根への接触は軸索の損傷と神経根の微小構造に機能的変化をもたらし、その結果痛みに関連するしぐさを引き起こすと言われて来た。したがって髄核を硬膜外に漏らす機械的欠陥は神経根損傷をもたらし、その結果神経根の痛みをもたらすと理論づけられてきた。この「化学的神経根障害」は、椎間板ヘルニアのような機械的欠陥を持つ一部の患者においてだけ、神経根障害の痛みの存在を説明するかもしれないが、残りの患者は痛みが無いはずである。
【0007】
多くの研究が脊椎関連の痛みの病態生理を説明しようと試みて、幾つかの分子の通路が仮に示唆された。しかし傷害又は変性から痛みの状態へとつながる原因となる通路については、明確に確認されなかった。分子マーカーは臨床の症状にリンクされ、そして診断および治癒手段の有望な目標となりうる。ある研究は、硬膜外空間は椎間板ヘルニアにより影響を受けるという証拠を提供したが、誰も、罹患者と非罹患者の間の差異を検知する目的で硬膜外空間での生体分子の濃度を測定していない。
【0008】
従って、本発明の1つの目的は、脊椎又は関節の痛みを示すバイオマーカーを提供することである。
本発明の他の1つの目的は、痛みの治癒のため脊椎又は関節内の場所を識別するバイオマーカーと方法を提供することである。
また本発明の他の1つの目的は、脊椎又は関節に関連する痛みの原因となる症状の存在を診断し又は診断を補助するバイオマーカーを提供することである。
本発明の他の1つの目的は、脊椎又は関節に関連する痛みの原因となる症状の存在を診断し又は診断を補助する方法を提供することである
さらに本発明の他の1つの目的は、脊椎又は関節に関連する痛みを患う患者に対する適切な療法を判定するバイオマーカーと方法を提供することである。
また本発明の他の1つの目的は、脊椎又は関節に関連する痛みの治療の効率性を監視し、評価するバイオマーカーと方法を提供することである。
さらに本発明の他の1つの目的は、脊椎又は関節の痛みを治療する組成物及び方法を提供することである。
また本発明の他の1つの目的は、痛みを抑制又は減少させるため脊椎と関節内の治療部位を選択する組成物及び方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国暫定特許申請 61/106,059
【特許文献2】米国暫定特許申請 61/118,401
【特許文献3】米国暫定特許申請 61/122,045
【特許文献4】米国特許6,329,511
【特許文献5】米国特許7,183,390
【特許文献6】WO98156401
【特許文献7】米国特許6,267,722
【特許文献8】米国特許7,198,522
【特許文献9】米国特許6,818,455
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Moseley他著 N.Engl.J.Med,347(2):81−8(2002)
【非特許文献2】Hermanson著 Bioconjugate Tehniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diego
【非特許文献3】D.W.Mount著 2001、生物情報学「配列と遺伝子分析」,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.
【非特許文献4】Needlemann及びWunsch著 J.Mol.Biol.,48:443−453(1970)
【非特許文献5】Hentikoff及びHentikoff著 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89:10915−10919(1992)
【非特許文献6】HarlowとLane著 抗体の使用:研究所マニュアル、Cold Spring Harbor Press (1999)
【非特許文献7】Coligan 免疫学の現在のプロトコル(1991)Harlow & Lane
【非特許文献8】Godig,モノクローナル抗体:原理と実際(第2版、1986)
【非特許文献9】Kohler & Milstein,ネイチャー256:495−497(1975)
【非特許文献10】Huse他著、サイエンス246:1275−1281(1989)
【非特許文献11】Ward他著、ネイチャー341:544−546(1989)
【非特許文献12】Stite &Terr著 基礎的及び臨床免疫学(第7版、1991)
【非特許文献13】Maggio著 酵素免疫検定法(1980)
【非特許文献14】Kronval他著 J.Immunol.111:1401−1406(1973)
【非特許文献15】Akerstrom他著 J.Immunol.135:2589−2542(1985)
【非特許文献16】分子クローニング:実験マニュアル(Sambrook 及び Russel著、第3版)コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州(2001)
【非特許文献17】Mathiowitz及びLanger著、徐放 5:13−22(1987)
【非特許文献18】Mathiowitz他著、反応性ポリマー、6:275−283(1987)
【非特許文献19】Mathiowitz他著、応用ポリマー科学、35:755−774(1988)
【発明の概要】
【0011】
脊椎及び/又は関節の痛みに関連するバイオマーカーが識別された。バイオマーカーはフィブロネクチン及びアグリカンポリペプチドまたはそのフラグメントを含む複合体又は集合体からなる。ある実施形態では、フィブロネクチンーアグリカン複合体は、アグリカン、フィブロネクチン結合フラグメントのG1,G2又はG3の領域、又はそれらの組合せを含む。
【0012】
脊椎又は関節試料においてフィブロネクチンーアグリカン複合体の存在又はその増大したレベルを検知することにより、脊椎又は関節内の痛みの治療部位を識別する方法も提供される。ある実施形態では、治療部位として識別された部位はまた、脊椎又は関節内の痛みの発生源である。脊椎試料は、限定されないが、硬膜外洗浄、椎間洗浄、小関節洗浄を含むいかなる適切な方法でも入手可能である。関節試料は、限定されないが、経皮の又は切開した吸引術、生体組織検査、又は洗浄を含むいかなる既存の方法を使用しても入手可能である。フィブロネクチン及びアグリカンを含む複合体は、限定されないが、クロマトグラフィー(色層)分析、選択的結合検定法、質量分析、分光光度法、又はそれらの組合せを含むいかなる適切な方法を使用しても検知可能である。ある実施形態では、フィブロネクチン及びアグリカンを含む複合体は、脊椎試料、硬膜外空間又は脳脊髄液から単離可能である。
【0013】
フィブロネクチンーアグリカン複合体の検知に使用される選択的結合検定法は、フィブロネクチン、アグリカン、又はそれらのフラグメント又は複合体に対する選択的結合パートナーを使用する。有用な選択的結合パートナーには、生体内でフィブロネクチン及びアグリカンに対する結合パートナーとして知られた抗体又はポリペプチドを含む。
代表的な選択的結合検定法は、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、ELISA、及び放射性免疫測定法がある。特に好適は結合検定法には、フィブロネクチンーアグリカン複合体には存在しないフィブロネクチン又はアグリカンを有意に検知することなく、フィブロネクチン及びアグリカンを含む複合体を選択的に検知する検定法がある。
【0014】
開示された検知検定法においてフィブロネクチンーアグリカン複合体を検知するポジティブ対照もまた提供される。ポジティブ対照又は標準試料は典型的に、ヒト配列順序と相同の配列順序を持つ、同一の又は異なる種から得られたフィブロネクチン及びアグリカンから構成されるフィブロネクチンーアグリカン複合体である。
【0015】
フィブロネクチンーアグリカン複合体を検知する開示された方法は、脊椎又は関節の解剖学的構造及び生理学的機能に関連する痛み症候群を診断し、又は診断を補助するのに有用である。脊椎内の特定の場所からの試料において、フィブロネクチンーアグリカン複合体の検知は、神経根障害、小関節痛、椎間板起因の痛み、又は関節痛を診断し、又は診断を補助するのに使用可能である。フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在は、また、特定の患者にある治療を指定し、患者の予後を決定し、又は、患者の脊椎又は関節痛の治療の効果を監視するのに使用可能である。
【0016】
また、脊椎又は関節痛の治療法も提供される。その方法は、フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在の増大するレベルの検知により識別された、患者の痛みのある部位の治療を含む。適合する治療法は、限定されないが、脊椎減圧法の外科的治療、ステロイド又は非ステロイドの抗炎症剤による治療を含む、全ての既存の治療法を含む。
【0017】
他の脊椎又は関節痛の治療法は、フィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質の投与を含む。適切なフィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質は、フィブロネクチンーアグリカン複合体の1つ以上の生体活性を抑制又は減少させ、フィブロネクチン及びアグリカン及び/又はそれらのフラグメントからのフィブロネクチンーアグリカン複合体の形成を抑制又は減少させ、フィブロネクチンーアグリカン複合体を解離させ、フィブロネクチン及び/又はアグリカンの発現を減少させ、軟骨からのアグリカンの分解を減少させる。代表的なフィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質は、限定されないが、抗体及び他のポリペプチド、ペプチド模倣、微小有機分子、リボザイムなどの抑制RNA、三重鎖形成オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、低分子干渉RNA及びマイクロRNAを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】症候性ヒトサンプルのサイズ排除色層分析(SEC)の結果を示すグラフである。グラフは215nmにおけるSECカラムから溶離したタンパク質の光学密度を溶離時間(分)に対して表わしたものである。矢印は検定法により検出されたフィブロネクチン/アグリカンG3フラグメントのピークを識別する。他の高分子量ピークはフィブロネクチンと他の又はより大きなアグリカンのフラグメントとの複合体を含む。
【図2】非症候性ヒトサンプルのSECの結果を示すグラフである。グラフは215nmにおけるSECカラムから溶離したタンパク質の光学密度を溶離時間(分)に対して表わしたものである。矢印は検定法により検出されたフィブロネクチン/アグリカンG3フラグメントのピークのあるべき場所とその不存在を識別する。フィブロネクチンと他の又はより大きなアグリカンのフラグメントとの複合体を含む他の高分子量ピークも又存在しない。
【図3】フィブロネクチンのネガティブELISAの結果と、精製されたウシのアグリカンG3フラグメントと生体外で事前混合されたフィブロネクチンのポジティブELISAの結果を示す棒グラフである。データはそれぞれのユニットに対する光学密度として表示される。
【図4】ELISAで分析された、表示された脊椎円板レベルから採取された脊椎試料のフィールマン(Pfirrmann)及び術中VAS値を示す棒グラフである。
【図5】抗アグリカン−G3抗体を捕獲に使用し、抗フィブロネクチン抗体を検知に使用したELISAの直線性を示すグラフである。データは450nmでの実吸収値と450nmでの期待吸収値との対比で示される。
【図6】フィブロネクチンーアグリカン(G3)に対するELISA検定法からの光学密度(OD)を、1人のヒト患者の非症候性対照の膝からのものと、症候性疼痛を有する膝からのものとを比較した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(I.定義)
ここで使用される「神経根疼痛」、「神経根障害」、「神経根障害疼痛」および「坐骨神経痛」は、1つ以上の刺激された腰神経根の経路に沿った脊髄根レベルまたは「神経根(radic)」から発した、末梢部の放散痛のことを言う。坐骨神経痛の場合は、坐骨神経を形成するL4,L5及び/又はS1神経根から発生する。放散痛は、L3,L2又はL1領域内の上位腰椎椎間板ヘルニアから、又は、頸椎間板ヘルニア、頸神経根刺激、又は頸椎間板変性の場合はいかなる頸神経根からも発生する可能性がある。この痛みは、「関連痛」と分類される小関節又は他の脊髄構造に起因する痛みとは異なる。放散痛はまた、L3,L2又はL1領域内の上位腰椎椎間板ヘルニア、又は頸椎の脊髄領域から発生可能である。
【0020】
ここで使用される「椎間板起因疼痛」とは、椎間板から発する脊髄関連の痛みを意味する。椎間板は髄核からの水和作用の逸失に伴う低下した機能性を患う。機能性の低下は、線維輪の損傷と同時に起こる。この弱体化は、膨隆し、脱出性の、突出した、又は隔離性の椎間板のような構造的損傷につながる。この弱体化はまた、椎間板の内容物の漏洩に起因する生化学的な損傷につながり、それは背部疼痛又は前述の化学的神経根障害を出現する。
【0021】
「小関節疼痛」又は「小関節起因疼痛」とは、小関節から発する疼痛を意味する。
「小関節」又は「関節突起間関節」とは、軟骨、膜、半月板、及び滑膜を備える対になった滑膜関節を言う。
「脊髄疼痛」又は「脊髄関連疼痛」には、椎間板起因、小関節起因、及び神経根障害性の疼痛を含む。
「急性疼痛」とは、6カ月まで、例えば5カ月〜1ヶ月、4週間〜1週間、6日〜1日、又はそれ以下の期間継続する疼痛を言う。
「慢性疼痛」とは6カ月以上の期間継続する疼痛を言う。
【0022】
「生体試料」とは、ある患者からの細胞または細胞の集合、ある量の組織または体液をいう。このような試料は典型的にはヒトからであるが、非ヒトの霊長類、マウス、ラット等の齧歯動物、ヤギ、ウシ、イヌ、ウマ、及びネコから単離された組織を含む。
生体試料はまた、生体組織検査試料、組織病理目的で凍結された部位、及び洗浄試料などの組織の部位を含む。
「脊髄試料」又は「脊髄由来試料」とは、脊髄からの組織又は体液の試料を意味し、限定されないが、「脊髄椎間板試料」、「硬膜外試料」及び「小関節試料」を含む。
多くの場合これら試料はまた「生体試料」と呼ばれる。
【0023】
ここで使用される「関節」「付属肢骨格の関節」とは、全ての可動関節を意味する。可動関節は滑膜関節とも呼ばれる。従って「関節」とは、骨、関節軟骨、関節嚢、滑膜組織裏層、及び、嚢内の潤滑滑液を含む全ての連結部を意味する。
「軟骨」は、関節の軟骨構成要素を意味する。「半月板」とは、典型的に膝の構成要素を意味する。
「正常関節」又は「対照関節」とは、患者にとって治療不要な疼痛源である関節を言う。正常関節の疼痛のレベルは典型的に、患者が治療を求める程には患者の機能又は生活の質に影響を及ぼさない。
【0024】
「関節試料」又は「関節由来試料」とは、関節からの組織又は体液の試料を意味し、限定されないが、滑液試料および生体外及び生体内の関節又は組織洗浄を意味する。
多くの場合これら試料はまた「生体試料」と呼ばれる。
生体試料内の「バイオマーカーのレベル」又は「フィブロネクチンーアグリカン複合体のレベル」又は「フィブロネクチンーアグリカンG3複合体のレベル」とは、生体試料内に存在するバイオマーカーの量を言う。「バイオマーカーのレベル」又は「フィブロネクチンーアグリカン複合体のレベル」又は「フィブロネクチンーアグリカンG3複合体のレベル」は定量化される必要はなく、単に検知可能であればよく、例えば、対照試料のレベルとの比較、対照試料の期待レベルとの比較、あるいは無比較による、人による主観的な目視による検知でよい。
【0025】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は相互に互換性を有して使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの言葉は、1つ以上のアミノ酸残基が自然発生の対応するアミノ酸の人工的な模倣であるアミノ酸ポリマーにも、自然発生のアミノ酸ポリマー、被修飾残基を含むアミノ酸ポリマー、及び非自然発生のアミノ酸ポリマーに加えて、適用される。
「薬剤」又は「治療用薬剤」とは、薬理活性を有する或いは有する可能性のある組成物を意味する。薬剤は、既知の薬剤、薬理活性が識別されたが、更に治療的評価が行われている組成物、理学活性のスクリーニングをこれから受けるコレクション、及びライブラリの1つである組成物、を含む。この言葉は、抗体を含むペプチド、タンパク質、小分子などの有機又は非有機化学物質及び天然物を含む。
【0026】
「免疫検定法」とは、ある抗原に特異的に結合する抗体を使用する検定法を意味する。免疫検定法は、抗原を検知し、定量化し、及び/又は標的とするために、特定の抗体の特定の結合部位を使用することに特徴がある。
結合エージェント、例えば抗体とタンパク質例えばバイオマーカー間の「特異的結合」とは、混合物例えば生体試料内に存在する特徴に優先的に結合する、捕獲又は検知エージェントの能力を言う。特異的結合とはまた、約10−6 Mより小さい、好適には約10−8 Mより小さい、最も好適には約10−9 Mより小さい解離定数(K)を意味する。
【0027】
タンパク質又はペプチドに関し、ある抗体に「特異的に(選択的に)結合する」又は、「特異的に(選択的に)免疫活性を示す」とは、タンパク質と他の生物由来物質との異種集団の中でタンパク質の存在を決定する結合反応を意味する。従って、所定の免疫検定法の条件下では、特定の抗体は特定のタンパク質又はタンパク質複合体と背景に対して少なくとも2倍以上結合し、試料内に存在する他のタンパク質とは有意な量では実質的に結合しない。
【0028】
「標識」又は「検知可能部分」とは、分光法、光化学的、生化学的、X線検査の、免疫化学的、又は他の物理的手段により検知可能な組成物を言う。例えば、有用な標識は、32P、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(ELISAで通常使用されるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、不完全抗原、および、例えばペプチド内に放射標識を組み込むことにより、又は、そのペプチドと特異的に反応する抗体を検知するように使用されることにより、検知可能なタンパク質又は他の物質、を含む。標識はいかなる部位の核酸、タンパク質、及び抗体に組み込み可能である。抗体を標識に接合させるいかなる従来技術も適用可能であり、それらはHermanson著の非特許文献2に記載されている。
【0029】
「抑制物質」又は「拮抗物質」とは、標的バイオマーカーの、直接的又は間接的に部分的又は全体的に活性を抑制し、活性化を減少させ、阻止し、遅延させ、不活性化し、除感作し、又は活性又は発現を下方制御する、化合物又は組成物を意味する。
拮抗物質は、例えば抗体のようなポリペプチド及び可溶受容体だけでなく、低分子干渉RNA又はアンチセンスRNAのような核酸、小化学分子を含む自然発生及び合成のバイオマーカー拮抗物質を含む。
【0030】
(II.脊椎又は関節痛のバイオマーカー)
脊椎又は関節の痛みを示すバイオマーカーは経験的に決定されてきた。幾つかの実施形態では、バイオマーカーは、フィブロネクチンとアグリカンの複合体、好適には、脊椎試料又は関節試料から単離されたフィブロネクチンとアグリカンの複合体からなる。以下の事例は、フィブロネクチンとアグリカンを含むバイオマーカーが、脊椎又は関節痛を患う患者の脊椎又は関節由来の生体試料内に存在することを示している。
【0031】
バイオマーカーは、フィブロネクチンとアグリカンのポリペプチドをいかなる比率で有してもよい。複合体は全長のフィブロネクチンとアグリカンのポリペプチド、又は、フィブロネクチン及び/又はアグリカンのポリペプチドのフラグメントを含む。「フラグメント」とは、全長タンパク質より短いポリペプチドのサブ組を意味する。代表的なフィブロネクチン又はアグリカンのフラグメントは、20,30,40,50又はそれ以上のフィブロネクチン又はアグリカン由来のアミノ酸を含み、それらは、それぞれ、抗フィブロネクチン抗体又は抗アグリカン抗体により検知される。他の代表的なアグリカンのフラグメントは、アグリカンの1つ以上のG1、IGD,G2,KS,CS1,CS2,又はG3領域、又はそのフラグメント、またはその組合せを有する、アグリカンのポリペプチドの部分を含む。
ある実施形態では、バイオマーカーは、フィブロネクチン又はそのフラグメントと、アグリカンのG3領域又はそのフラグメントとの複合体からなる。他の実施形態では、バイオマーカーは、フィブロネクチン又はそのフラグメントと、アグリカンのG1又はG2領域又はそのフラグメントとの複合体からなる。
【0032】
代表的なヒトフィブロネクチンの第1配列は、NCBI遺伝子ID2335(FN1;Ensembl:ENSG00000115414;HPRD:00626;MIM:135600)において発見される。ここで使用される「フィブロネクチン」とは、疾病又は障害に伴う約20の既知のスプライス変異株を含む自然に発生するフィブロネクチン変異株と、異なる細胞タイプによる異なるスプライシングに起因するフィブロネクチン変異株とを含む。
【0033】
アグリカンは、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンを有するコンドロイチン硫酸プロテオグリカンファミリーの構成要素である。代表的なアグリカンの第1配列は、NCBI遺伝子ID176(ACAN;Ensembl:ENSG00000157766;HPRD:01123;MIM:155760)において発見される。代表的なバーシカンの配列は、NCBI遺伝子ID(VCAN;Ensembl:ENSG00000038427;UniProtKB:P13611)において発見される。代表的なブレビカンの配列は、NCBI遺伝子ID(BCAN;Ensembl:ENSG00000132692;UniProtKB:Q96GW7)において発見される。代表的なニューロカンの配列は、NCBI遺伝子ID(NCAN;Ensembl:ENSG00000130287;UniProtKB:O14594)において発見される。この遺伝子ファミリーは高度に相同であり、50%超のアミノ酸同一性の広範なタンパク質領域を含む類似のタンパク質機能を発現する。
ここに使用される「アグリカン」はまた、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、及びニューロカンの既知の自然発生変異株とスプライス変異株、及び、異なる細胞タイプによる異なるスプライシングに起因するアグリカン、バーシカン、ブレビカン、及びニューロカンの変異株とを含む。
【0034】
フィブロネクチン又はアグリカンのポリペプチド、又はそれらのフラグメントは、フィブロネクチン又はアグリカンの変異株又は翻訳後変異株でありうる。ここで使用される「変異株」ポリペプチドは、対応する野性型ポリペプチドのアミノ酸配列に比べて少なくとも1つのアミノ酸配列変異を有する。1つのアミノ酸配列変異は、例えば、置換、削除、又は1つ以上のアミノ酸の挿入である。変異ポリペプチドはいかなる置換、削除、又は挿入の組合せを有してもよい。
ある実施形態では、フィブロネクチン又はアグリカンの変異株ポリペプチドは、ある整数の数のアミノ酸変異を有し、それらのアミノ酸配列は野生型フィブロネクチン又はアグリカンのポリペプチドに対し、少なくとも60,70,80,85,90,95,97,98,99,99.5又は100%の同一性を有する。好適な実施形態では、フィブロネクチン又はアグリカンの変異株ポリペプチドは、野生型フィブロネクチン又はアグリカンのポリペプチドに対し、少なくとも60,70,80,85,90,95,97,98,99,99.5又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0035】
配列同一性の百分率はコンピュータプログラム又は直接的配列比較により計算可能である。2つの配列間の同一性を判定する好適なコンピュータプログラムは、限定されないが、GCGプログラムパッケージ、FASTA,BLASTP,及びTBLASTNがある。(例えば、D.W.Mount著、非特許文献3を参照)BLASTP及びTBLASTNはNCBI又は他から入手可能である。周知のスミスウェスタン・アルゴリズムも同一性の判定に使用可能である。
【0036】
アミノ酸配列の比較用の代表的なパラメータは、以下のものを含む:1)Needlemann及びWunschによるアルゴリズム(非特許文献4参照);2)Hentikoff他によるBLOSSUM62(非特許文献5参照);3)ギャップペナルティ=12;4)ギャップペナルティ=4。
これらのパラメータに有用なプログラムは、「ギャップ」プログラム(ウィスコンシン州マジソンのジェネティックコンピュータグループ社製)として公開されている。
上記パラメータは、ポリペプチド比較のデフォルトパラメータ(エンドギャップにペナルティの無い)である。
或いは、ポリペプチド配列識別は次の等式を使用して計算してもよい;
識別%=(同一の残基の数)/(アミノ酸残基内のアライメント長)X100
この計算において、アライメント長は内部ギャップを含むが、末端ギャップを含まない。
【0037】
(III.脊椎又は関節疼痛における治療場所識別法)
フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在を検知することによる、脊椎又は関節痛の治療場所を決定する方法が開示される。
(A.脊椎疼痛)
フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在、又は増加するレベルを脊椎内のある場所において検知することが、その場所を脊椎痛の治療が必要な場所として識別するために使用可能である。ある実施形態では、フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在、又は増加するレベルに基づいて脊椎痛の治療が必要な場所として識別されたある場所が、疼痛の発生源である。ある実施形態では、提案された方法は、1つ以上の生体試料を疼痛の発生源と疑われる脊椎のレベルから獲得するステップと、それぞれの生体試料内のフィブロネクチンーアグリカン複合体レベルを検知し比較するステップとを有する。これは関連痛の場所よりはむしろ、実際の疼痛場所を識別するのに有用である。フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在、又は増加するレベルを試験される適合患者は、脊椎の疼痛を発現する患者であればよい。患者は例えば、椎間板起因、小関節起因、又は神経根の疼痛を疑われる疼痛を経験している。
【0038】
開示された方法は、脊椎痛を治療するため脊椎内の場所を判定するのに有用である。これらの場所は、脊椎内の痛みの発生源である場所である可能性がある。患者に疼痛をもたらす場所の識別は、患者の病理または障害の診断又は診断の補助に有用である。患者に疼痛をもたらす場所の識別は、また、患者の適切な治療を決定する補助として有用である。
【0039】
(B.関節疼痛)
フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在、又は増加するレベルを関節内のある場所において検知することが、その場所を関節痛の治療が必要な場所として識別するために使用可能である。ある実施形態では、フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在、又は増加するレベルに基づいて関節痛の治療が必要な場所として識別されたある場所が、疼痛の発生源である。ある実施形態では、提案された方法は、1つ以上の生体試料を疼痛の発生源と疑われる脊椎のレベルから獲得するステップと、それぞれの生体試料内のフィブロネクチンーアグリカン複合体レベルを検知するステップとを有する。フィブロネクチンーアグリカン複合体の存在、又は増加するレベルを試験される適合患者は、付属肢骨格の関節痛を発現する患者であればよい。患者は例えば、変形性関節症、軟骨症、又は半月板、腱又は靭帯の病理への関連を疑われる疼痛を経験している。
【0040】
開示された方法は、関節痛を治療するため治療場所を判定するのに有用である。これらの場所は、関節内の痛みの発生源である場所である可能性がある。患者に疼痛をもたらす場所の識別は、患者の病理または障害の診断又は診断の補助に有用である。患者に疼痛をもたらす場所の識別は、また、患者の適切な治療を決定する補助として有用である。
【0041】
(C.患者)
フィブロネクチンーアグリカン複合体の検知のため選択される患者は、脊椎又は関節痛を発現する患者であればよい。好適には患者はヒトである。患者は、限定されないが、椎間板起因、小関節起因、又は神経根の疼痛を含む脊椎に付随する痛みを経験していてもよい。
【0042】
適合患者は、限定されないが、骨、関節軟骨、又は滑膜組織裏層を含む関節の解剖学的構造に付随する痛みを経験していることを疑われていてもよい。関節には、限定されないが、大可動(滑膜)関節(例えば、膝、腰、肩)、小可動(滑膜)関節(例えば、肘、手首、足首、関節突起間関節、又は脊椎の小関節)、及び半関節(例えば、仙腸関節、胸鎖関節、顎関節(TMJ)を含む。患者は急性の関節関連疼痛を経験し、又は慢性の関節関連疼痛を経験していてもよい。
【0043】
ある実施形態では、患者は関節関連疼痛又は脊椎関連疼痛を30週又は25週またはそれ未満の期間経験した。他の実施形態では、患者は関節関連疼痛又は脊椎関連疼痛を20,15,10,8または6週間又はそれ未満の期間経験した。
患者の性別は問わず、年齢も問わない。患者は急性又は慢性のどちらかの疼痛を経験している。
【0044】
(D.フィブロネクチンーアグリカン複合体の検知)
(1.脊椎から生体試料を獲得する方法)
フィブロネクチンーアグリカン複合体の検知のため脊椎から試料を獲得するため、いかなる数の既存技術も使用可能である。これらの方法には、限定されないが、試料を硬膜外空間、椎間板間空間、及び小関節空間から獲得する方法を含む。適切な方法は以下に詳述される。
(方法1:硬膜外空間洗浄(尾側))
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)その後導入針が仙骨裂孔を経由して挿入され、再び蛍光顕微鏡で確認された。
3)その後カテーテルが針を通って硬膜外空間に送られ、カテーテルは蛍光顕微鏡を使用して病理レベルまで送られる。
4)カテーテルが満足できる場所に到達したら、ガイド線が除かれる。
5)規定生理食塩水(NS)約3ccを含む注射器がカテーテルの遠方端末に取り付ける。
6)1/2cc刻みの規定生理食塩水(NS)が、注入物のそれぞれの体積の吸引を試みながら椎間板空間に注入される。各注入後3−5秒間待って再吸引する。
7)その後吸入物はプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに置かれ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素又は他の急速冷凍手段に浸される。
8)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。
【0045】
(方法2.硬膜外(尾側海綿体))
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)その後導入針が仙骨裂孔を経由して挿入され、再び蛍光顕微鏡で確認された。
3)その後カテーテルが針を通って硬膜外空間に送られ、カテーテルは蛍光顕微鏡を使用して病理レベルの上面観まで送られる。
4)ガイド線が抜かれ、吸収剤を含む分析線が導入される。
5)規定生理食塩水(NS)約1ccを含む注射器を誘導針のポートに取り付ける。
6)吸収剤を浸漬しながら規定生理食塩水が注入される。
7)カテーテルは障害部分を通って牽引された吸収剤を伴って病理レベルの底面観まで引き上げられる。
8)その後分析線が抜かれる。
9)その後吸収剤から洗われてプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに入れられ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素又は他の急速冷凍手段に浸される。
10)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。或いは第9)ステップで試料は直ちに中央実験室での分析または治療現場での検定法を使用して分析されてもよい。
【0046】
(方法3.大後頭孔(硬膜外修飾))
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)その後小骨髄穿刺針が患部の孔に挿入され、再び蛍光顕微鏡で確認された。
3)規定生理食塩水(NS)約1.5ccを含む注射器を針に取り付ける。
4)約1/2cc刻みの規定生理食塩水(NS)が、注入物のそれぞれの体積の吸引を試みながら硬膜外空間に注入される。各注入後3−5秒間待って再吸引する。
5)その後吸入物はプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに置かれ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素又は他の急速冷凍手段に浸される。
6)その後微量遠心機チューブはマイナス20度C以下で分析まで保存される。
【0047】
(方法4.大後頭孔(吸収/吸着海綿体)
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)その後、針が患部の孔に挿入され、再び蛍光顕微鏡で確認された。
3)吸収剤を含む分析線が針を通って導入される。
4)規定生理食塩水(NS)約1ccを含む注射器を針に取り付ける。
5)吸収剤を浸漬しながら規定生理食塩水が注入される。
6)分析線が抜かれる。
7)その後吸収剤からの物体は、洗われてプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに入れられ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素又は他の急速冷凍手段に浸される。
8)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。或いは第7)ステップで試料は直ちに中央実験室での分析または治療現場での検定法を使用して分析されてもよい。
【0048】
(方法5.トランスラミナ(Translaminar))
1)皮膚及び皮下組織が導入領域内で浸潤された。
2)その後、針がトランスラミナ手法を使用して硬膜外空間に挿入される。
3)黄色靱帯を介した「ポップ(pop)」が硬膜外空間内の適切な場所を確認し、或いは蛍光顕微鏡による確認が行われる。
4)規定生理食塩水(NS)約3−5ccを含む注射器を針に取り付ける。
5)約1cc刻みの規定生理食塩水(NS)が、注入物のそれぞれの容量の吸引を試みながら硬膜外空間に注入される。各注入後3−5秒間待って再吸引する。
6)その後吸入物はプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに置かれ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素又は他の急速冷凍手段に浸される。
7)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。
【0049】
(方法6.椎間板空間(洗浄))
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)単一又は2重の針技術を使用して蛍光顕微鏡の案内の元、椎間板空間への挿入が実施される。
3)規定生理食塩水(NS)約1.5ccを含む注射器を針に取り付け、椎間板空間に注入する。
4)約3秒後、椎間板は洗浄液に対して再吸引される。
5)この工程を十分な量(約3/8cc)が得られるまで繰り返す。
6)その後吸引物は洗浄されプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに置かれ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素に浸される。
7)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。
【0050】
(方法7.椎間板空間(吸収海綿体))
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)単一又は2重の針技術を使用して蛍光顕微鏡の案内の元、椎間板空間への挿入が実施される。
3)導入針案内線が抜かれ、吸収剤を含む分析線が導入される。
4)規定生理食塩水(NS)約1ccを含む注射器を誘導針のポートに取り付ける。
5)微量遠心機チューブを浸漬しながら規定生理食塩水が注入される。
6)その後分析線が抜かれる。
7)その後吸収剤からの物体は、洗われてプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに入れられ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素に浸される。
8)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。或いは第7)ステップで試料は直ちに中央実験室での分析または治療現場での検定法を使用して分析されてもよい。
【0051】
(方法8.小関節空間(洗浄))
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)単一又は2重の針技術を使用して蛍光顕微鏡の案内の元、小関節空間への挿入が実施される。
3)規定生理食塩水(NS)約1.5ccを含む注射器を針に取り付け、小関節空間に注入する。
4)約3秒後、椎間板は洗浄液に対して再吸引される。
5)この工程を十分な量(約3/8cc)が得られるまで繰り返す。
6)その後吸引物は洗浄されプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに置かれ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素に浸される。
7)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。
【0052】
(方法9.小関節空間(吸収/吸着海綿体))
1)皮膚及び皮下組織が蛍光顕微鏡で検証された導入領域内で浸潤された。
2)単一又は2重の針技術を使用して蛍光顕微鏡の案内の元、小関節空間への挿入が実施される。
3)導入針案内線が抜かれ、吸収剤を含む分析線が導入される。
4)規定生理食塩水(NS)約1ccを含む注射器を誘導針のポートに取り付ける。
5)吸収剤を浸漬しながら規定生理食塩水が注入される。
6)分析線が抜かれる。
7)その後吸収剤からの物体は、洗われてプロテアーゼ抑制因子混合溶液を含む微量遠心機チューブに入れられ、そしてすぐに氷、ドライアイス上に置かれ又は液体窒素又は他の急速冷凍手段に浸される。
8)その後試料はマイナス20度C以下で分析まで保存される。或いは第7)ステップで試料は直ちに中央実験室での分析または治療現場での検定法を使用して分析されてもよい。
【0053】
好適な吸収剤は、限定されないが、海綿体、泡状物質、ガーゼ、フェルト又は布を含む。吸収剤は生体適合性であり、天然又は合成材料から作成可能である。天然材料には、限定されないが、綿を含む。合成材料には、限定されないが、ナイロンのようなポリマーを含む。
【0054】
(2.関節から試料を獲得する方法)
関節から試料を獲得するいかなる数の既存技術がフィブロネクチン−アグリカン複合体の検知のため使用されてもよい。適合する方法には、限定されないが、経皮又は切開による吸引、生体組織検査、又は洗浄を含む。
【0055】
(3.フィブロネクチン−アグリカン複合体の検知法)
脊椎又は関節試料内のフィブロネクチン−アグリカン複合体の定性的又は定量的検知には、生体試料内のポリペプチドの存在を検知するいかなる既知の方法も使用可能である。
好適な方法には、限定されないが、分光法、選択的結合検定法、質量分光法、分光光度法又はそれらの組合せを含む。
【0056】
代表的な結合検定法には、酵素結合免疫吸着検定法などの免疫検定法を含む。免疫検定法は、定性的又は定量的に脊椎試料のフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在を分析するのに使用可能である。適用可能な技術の概観は多くの公知のマニュアル、例えば、HarlowとLane著の非特許文献6から入手可能である。
【0057】
(a.選択的結合パートナー)
ある実施形態では開示された方法及びキットは、フィブロネクチン又はアグリカンの選択的結合パートナーを、脊椎又は関節からの試料内のそれらの存在の識別又はレベルの判定に利用している。この選択的結合パートナーは、フィブロネクチン又はアグリカンに特異的に結合する抗体、又は他の生体分子、又はそれらのフラグメント、複合体である。
【0058】
ある実施形態では、モノクローナル又はポリクローナル抗体が使用される。
抗体はいかなる既知の抗体も、商業的に入手可能な抗体でもよい。使用される抗体のタイプ、由来、及び他の側面は、その抗体が使用される検定法に照らして考慮されるべきであることは、当業者には周知である。ある場合には、ウェスタンブロットで抗原標的(例えば、フィブロネクチン又はアグリカンからのエピトープ又は多重エピトープ)を認識する抗体は、全てのELISA又はELISpot検定法では適用可能ではなく、またその逆も成り立つ。
【0059】
ある実施形態では、使用される抗体、抗体フラグメント、又は単鎖抗体は公知のモノクローナル又はポリクローナル抗体の生成技術(例えば、非特許文献7−9参照)を使用して生成可能である。このような技術には、ファージ又は類似のベクタ−内の遺伝子組換型抗体のライブラリからの抗体の選択による抗体の調製や、ラビット又はマウスの免疫化によるモノクローナル又はポリクローナル抗体の調製(非特許文献10,11参照)を含む。
【0060】
フィブロネクチン又はアグリカンからの多くの免疫原が、フィブロネクチン、アグリカン及びそのフラグメントに特異的反応性の抗体を生成するのに使用される。例えば、遺伝子組換型フィブロネクチン又はアグリカン又はそのフラグメントは、当業者に周知の方法で単離可能である。遺伝子組換型タンパク質は、真核生物または原核生物の細胞に発現可能である。遺伝子組換型タンパク質はモノクローナル又はポリクローナル抗体の生成に典型的に使用される免疫原である。或いは、フィブロネクチンとアグリカンの既知の配列に由来し、キャリアタンパク質に結合された合成ペプチドが、免疫原として使用可能である。自然発生のタンパク質もまた純粋な又は非純粋な形で使用可能である。生成物はその後抗体生成能力のある動物に注入される。モノクローナル又はポリクローナル抗体のいずれかが生成され、その後タンパク質を測定する免疫検定に使用される。
【0061】
他の実施形態では、フィブロネクチンとアグリカンを含む複合体に特異的に結合する抗体が、特異結合パートナーとして使用される。ある実施形態では、フィブロネクチン−アグリカン複合体に存在する抗原に特異的に結合し、しかし、フィブロネクチン又はアグリカンだけの場合には結合しない抗体が使用される。
【0062】
他の実施形態では、フィブロネクチン又はアグリカン又はそれらのフラグメント又は複合体の検知のために、特異的結合因子として非抗体ポリペプチドが使用される。フィブロネクチンに特異的に結合する多くのタンパク質が既存技術で既知である。フィブロネクチンの選択的結合パートナーとして使用可能な代表的なタンパク質は、限定されないが、細胞表面インテグリン、コラーゲン、フィブリン、レクチン、ヘパリン硫酸を含む。アグリカンの選択的結合パートナーとして使用可能なポリペプチドは、限定されないが、テネイシン−R、テネイシン−C,フィビュリン−1、フィビュリン−2、フィブリリン−1を含む。
【0063】
(b.検定法)
選択的結合パートナーが用意されると、それぞれの特異バイオマーカーは、免疫検定法を含む種々の選択的結合検定法により検知可能となる。免疫学的及び免疫検定法の手続については、非特許文献12に概要が示されている。さらに開示された選択的結合検定法は幾つかの構成のいずれにおいても実行可能である。幾つかの免疫検定法構成は、非特許文献13に詳述されている。
【0064】
ある実施形態は、フィブロネクチン又はアグリカン、又はそのフラグメント又は複合体の特異結合パートナーを使用して、脊椎又は関節内のフィブロネクチン−アグリカンの存在を検知し及び/又はレベルの測定するための方法を提供する。
その方法は一般的に、
a)脊椎又は関節試料にフィブロネクチン又はアグリカン、又はそのフラグメント又は複合体の特異結合パートナーを接触させるステップと、そして、
b)特異結合パートナーと試料の分子との間の結合を検知するステップと、
を含む。
特異結合パートナーと試料の分子との間の特異結合の検知は、適合する対照との比較により、バイオマーカーがその試料内に存在することを示す。特異的タンパク質相互反応を検知する種々の方法は従来技術で公知であり、本方法でも使用可能である。それら方法には、競合検定法と非競合検定法がある。
【0065】
適合する方法には、限定されないが、ウェスタンブロット、免疫沈降、ELISA及び放射性免疫測定法がある。これらの及び他の適合する検定法は公知である。一般的にバイオマーカーの検知に使用される特異結合パートナーは、検知可能なように直接的又は間接的に標識付けされる。脊椎又は関節試料は、細胞、細胞粒子、又は可溶タンパク質を固定可能な、膜(即ち、ニトロセルロース)又はポリスチレン又は磁気ビーズのような、固相担体またはキャリア上に接触されそして固定される。担体はその後適合するバッファで洗浄され、その後検知可能に標識付けされた選択的結合パートナーに接触される。
【0066】
好適な方法には、複合体を形成していないフィブロネクチン及び/又はアグリカンと比較して、フィブロネクチン及びアグリカンポリペプチド、又はそのフラグメントを含む複合体を選択的に検知する方法を含む。このようなフィブロネクチン−アグリカン複合体の選択的検知に対する適合する結合検定法には、フィブロネクチン−アグリカン複合体に結合し、このような複合体に存在しないフィブロネクチン及び/又はアグリカンを検知しない、選択的結合パートナーを使用する検定法を含む。これらの検定に使用される適合する選択的結合パートナーには、フィブロネクチン−アグリカン複合体に存在し、しかし、フィブロネクチン−アグリカン複合体の中に無いフィブロネクチン又はアグリカンには存在しない、エピトープを認知する抗体を含む。複合していないフィブロネクチン又はアグリカンと比較してフィブロネクチン−アグリカン複合体に特異なエピトープは、これらポリペプチドそれぞれからのアミノ酸配列から部分的に構成されてよい。このように、各ポリペプチドはエピトープに貢献する。複合していないフィブロネクチン又はアグリカンと比較してフィブロネクチン−アグリカン複合体に特異なエピトープは、また、複合体内のこれらポリペプチドにおける配座の差異に起因して、存在する可能性があり、その差異は、通常「マスク」されているエピトープを、抗体又は他のポリペプチドによる結合に対し利用可能にする。
【0067】
他の適合する検定法には、フィブロネクチン−アグリカン複合体の検知と組み合わせて、フィブロネクチン及びアグリカンのそれぞれに対する特異結合パートナーを使用する検定法を含む。免疫共沈降及び異種ELISA検定法は、これら検定法のタイプの代表である。これらの検定法では、第1のポリペプチドに対する第1の特異結合パートナーは、複合体を「捕獲する」のに使用され、第2のポリペプチドに対する第2の特異結合パートナーは、複合体を検知するのに使用される。異種ELISAと免疫共沈降、および後続のウェスタンブロットによるポリペプチド複合体の検知法は、従来技術で周知である。以下の事例は、抗フィブロネクチン及び抗アグリカン抗体をヒト試料内のフィブロネクチン−アグリカン複合体の検知に使用する、異種ELISAシステムの使用について記載している。
【0068】
全ての結合検定法において、特に特異結合パートナーが基板に接合されている場合、非特異的結合の量を最小化することが望ましい。このような非特異的結合を減らす方法は当業者に公知である。この技術は典型的に基板をタンパク質性組成物で被覆することを含む。詳細には、ウシ血清アルブミン(BSA)、無脂肪粉ミルク、ゼラチンのようなタンパク質性組成物が広く使用されている。さらに、あるいはタンパク質性物質の代わりに、非特異相互作用を最小化するため種々の洗浄剤及び/又は塩類が免疫検定法に採り入れられる。検定法を通してインキュベーション及び/又は洗浄ステップがそれぞれの試薬の組合せの後に必要である。インキュベーション及び洗浄の時間は、検定法フォーマット、特異結合パートナーのバイオマーカーに対する親和性、溶液の量、濃度を含む、複数の要因によって異なる。
【0069】
ある実施形態は、検知検定法で使用可能な、例えば検知検定法を較正する、フィブロネクチン−アグリカン複合体に対するポジティブ対照を提供する。ある実施形態では、フィブロネクチンとアグリカンは由来が異なり、例えば、異なる種由来である。フィブロネクチンはヒトフィブロネクチンで、アグリカンはウシ、ブタ、ウマのアグリカンでよい。或いは、フィブロネクチンはウシ、ブタ、ウマのフィブロネクチンで、アグリカンはヒトアグリカンでよい。フィブロネクチンとアグリカンはヒト配列と配列相同性を持つ同種又は異種由来であれば、いかなる組合せでもよい。フィブロネクチンとアグリカンは遺伝子組換型、自然発生型、又はそれらの組合せでもよい。
【0070】
(c.検知可能標識)
免疫検定法を含む特異結合検定法は、多くの場合、特異結合パートナーと検知された分析物により生成された複合体に特異結合し、その検知を許容する、標識化因子を使用する。標識化因子は、分析物の検知に使用された特異結合パートナーの一部でよい。或いは標識化因子は、特異結合パートナーと検知された分析物により生成された複合体に特異結合する二次抗体などの第3の部分であってよい。免疫グロブリンの定常部に特異結合可能な他のタンパク質、例えばタンパク質A又はタンパク質Gは、標識化因子として使用可能である。これらのタンパク質は様々な種由来の免疫グロブリン定常部に高親和性を出現する(非特許文献14,15参照)。標識化因子は、ストレプトアビジンのような他の粒子が特異結合可能な、ビオチンのような検知可能部分により修飾可能である。種々の検知可能部分は当業者に周知である。
【0071】
検知可能標識は検知可能な物理的、化学的特性を有する物質であればよい。多くの有用な検知可能標識が公知であり、それには、分光、光化学、生化学、免疫化学、X線検査、電気的、光学的、化学的方法により検知可能ないかなる標識をも含む。標識の選択は、要求感度、化合物との結合容易性、要求安定性、使用可能器具、廃棄条件などに依存する。有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、ダイナビーズ(登録商標))、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ロダミン他)、放射標識(例えば、H、125I、35S,14C又は32P)、酵素(例えば、ELISAに通常使用される、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ他)、及びコロイド金、着色ガラス、又はプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、天然ゴムなど)のような熱量測定標識、を含む。
【0072】
非放射標識は多くの場合間接的手段により接合される。
一般的に、リガンド分子(例えばビオチン)が分子に共有結合する。その後リガンドは、本質的に検知可能か又は検知可能酵素、蛍光化合物、又は化学発光化合物のような信号システムに共有結合するかのどちらかである、他の分子(例えば、ストレプトアビジン)に結合する。リガンド及びその標的は、バイオマーカーを認知する抗体、又はバイオマーカーに対する抗体を認知する二次抗体、とのいかなる適合する組合せでも使用可能である。
【0073】
分子はまた信号生成化合物と、例えば、酵素又はフルオロフォアとの結合により、直接結合可能である。標識として使用可能な酵素は、主としてヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼ及びグリコシダーゼ又はオキシドターゼ(oxidotase)、特にペルオキシダーゼである。代表的な蛍光化合物は、限定されないが、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル及びウンベリフェロンを含む。代表的な化学発光化合物は、限定されないが、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン(dihydrophthalazinedione)を含む。標識を検知する方法は当業者にとって周知である。
【0074】
(E.診断と予後)
疼痛の発生源である脊椎又は関節内の場所を識別するためのフィブロネクチン−アグリカン複合体の検知方法は、脊椎又は関節の解剖学的構造及び生理学的機能に関連する疼痛症候群を持つ患者の、診断又は診断を補助するのに使用可能である。
(1.脊椎痛の診断と予後)
例えば、硬膜外空間、椎間板又は小関節内のフィブロネクチン−アグリカン複合体の識別は、神経根障害、小関節痛、椎間板起因の疼痛の診断又は診断を補助するのに使用可能である。
【0075】
ある特定の患者に対して脊椎内の特定の場所を疼痛の発生源として示すフィブロネクチン−アグリカン複合体の量は、限定されないが、患者の年齢、性別、治療履歴、他や、生体試料が抽出された場所、及び、バイオマーカーの検知に使用された検定フォーマット、を含む多くの因子に起因する。ある実施形態では、生体試料内のフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、定量化又は直接対照試料と比較されず、むしろフィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」に対して検知される。ここで「診断的存在」とは、試料が採取された場所における疼痛原因の病理又は傷害の存在又は存在の可能性を示すフィブロネクチン−アグリカン複合体の量を言う。ある実施形態では、「診断的存在」はポジティブ又はネガティブな結果を示す単純な検定法で検知可能である。
フィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」のポジティブ「検知」は、試料が採取された場所における疼痛原因の病理又は傷害の存在を示す。
【0076】
フィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、検知される「診断的存在」のために定量化される必要はない。むしろ、フィブロネクチン−アグリカン複合体が標準又は対照に比べて高いレベルにあるかを判定するいかなる方法も使用可能である。さらに、「診断的存在」は、いかなるフィブロネクチン−アグリカン複合体の絶対量にも関せず、むしろ生体試料、検定条件、患者の症状、等に依存して、罹患者のレベルを標準又は対照患者から区別するのに十分な量に関している。
【0077】
開示された方法は、フィブロネクチン−アグリカン複合体がある特定の対照試料内に通常存在する、又は存在の可能性があるか否かに関係なく使用可能である。例えば、フィブロネクチン−アグリカン複合体は、ある特定の検査法では、ある標準脊椎試料(例えば、椎間板空間又は硬膜外空間ラバセート(lavasate))内に検知不可能かもしれず、その結果対照生体試料内にフィブロネクチン−アグリカン複合体が完全に不存在となる。このような生体試料に対しては、「診断的存在」とは、同一検定法を使用したフィブロネクチン−アグリカン複合体のいかなる検知可能な量をも意味する。
【0078】
しかし他の事例では、フィブロネクチン−アグリカン複合体の検知可能なレベルが標準又は対照試料に存在し、そして「診断的存在」は、標準レベルより高い、好適には標準レベルより統計的に有意な増加を意味する。ある実施形態では、生体試料内のフィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」は少なくとも約1.5,2,5,10,100,200,500,1000,又はそれ以上の倍数だけ、対照試料より大きい。
対照試料は脊椎痛を未経験の個々の又は個々からなる1つのグループから採取された試料でよい。
或いは、対照試料は疼痛の発生源と疑われていない脊椎のレベルから採取されてもよい。例えば、椎間板起因の疼痛を患う患者において、対照試料は同じ患者の罹患していない又は無症候性の椎間板空間から採取されてもよい。
【0079】
脊椎のある特定のレベルに存在するフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、椎間板起因、小関節起因、神経根障害性の疼痛のような特定のタイプの脊椎痛の診断又は診断の補助に使用可能である。更に或いは、脊椎試料におけるフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、脊椎の解剖学的構造又は傷害からの疼痛を、筋肉痛のような他の発生源に起因する疼痛から区別するのに使用可能である。
【0080】
ある実施形態では、脊椎に沿ったある特定の場所に存在するフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、その特定の場所における解剖学的構造又は傷害をしめす。例えば、フィブロネクチン−アグリカン複合体がL5椎間板ラバセートに検知された場合、患者はL5に解剖学的構造又は傷害を有する。フィブロネクチン−アグリカン複合体の存在は従って、他の方法、例えばMRIにより傷害が検知可能か否かに拘わらず、傷害を診断し、特定の場所における治療を施すのに使用可能である。患者は典型的に、傷害又は解剖学的構造の箇所、即ちフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在箇所に対する治療薬の投与により治療される。
【0081】
生体試料におけるフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、患者に特定の治療を受ける候補にするために使用可能である。その患者から採取された脊椎試料はフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又は不存在を分析される。脊椎試料にフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在が検知された場合、患者は治療を選択される。治療のタイプ、例えば抗炎症剤又は外科治療は、フィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルによって判定された症状の重症度に対して適合させられる。
【0082】
ある特定の場所に存在するフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、試験対象患者の予後を決定するのに使用可能である。例えば、脊椎試料に存在するフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、脊椎に対する急性傷害の程度を示し、医師がどの程度まで傷害又は解剖性構造の回復又は治癒が得られる可能性があるのかを判定する補助となりうる。
【0083】
(2.関節痛の診断及び予後)
関節に関する疼痛の発生源として関節を識別するためのフィブロネクチン−アグリカン複合体の検知方法は、付属肢骨格の滑膜関節の解剖学的構造及び生理学的機能に関連する疼痛症候群を持つ患者の、診断又は診断を補助するのに使用可能である。例えば、関節におけるフィブロネクチン−アグリカン複合体の識別は、変形性関節症、半月板構造、回旋筋腱板裂傷、腱又は靭帯構造、軟骨症、又は筋膜痛の診断又は診断の補助に使用可能である。
【0084】
ある特定の患者に対してある関節を関節に関する疼痛の発生源として示すフィブロネクチン−アグリカン複合体の量は、限定されないが、患者の年齢、性別、治療履歴、他や、生体試料が抽出された場所、及び、バイオマーカーの検知に使用された検定フォーマット、を含む多くの因子に起因する。ある実施形態では、生体試料内のフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、定量化又は直接対照試料と比較されず、むしろフィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」に対して検知される。ここで「診断的存在」とは、試料が採取された場所における疼痛原因の病理又は傷害の存在又は存在の可能性を示すフィブロネクチン−アグリカン複合体の量を言う。ある実施形態では、「診断的存在」はポジティブ又はネガティブな結果を示す単純な検定法で検知可能である。
フィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」のポジティブ「検知」は、試料が採取された場所における疼痛原因の病理又は傷害の存在を示す。
【0085】
フィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、検知される「診断的存在」のために定量化される必要はない。むしろ、フィブロネクチン−アグリカン複合体が標準又は対照に比べて高いレベルにあるかを判定するいかなる方法も使用可能である。さらに、「診断的存在」は、いかなるフィブロネクチン−アグリカン複合体の絶対量にも関せず、むしろ生体試料、検定条件、患者の症状、等に依存して、罹患者のレベルを標準又は対照患者から区別するのに十分な量に関している。
【0086】
開示された方法は、フィブロネクチン−アグリカン複合体がある特定の対照試料内に通常存在する、又は存在の可能性があるか否かに関係なく使用可能である。例えば、フィブロネクチン−アグリカン複合体は、ある特定の検査法では、ある標準関節試料(例えば、滑膜液試料)内に検知不可能かもしれず、その結果対照生体試料内にフィブロネクチン−アグリカン複合体が完全に不存在となる。このような生体試料に対しては、「診断的存在」とは、同一検定法を使用したフィブロネクチン−アグリカン複合体のいかなる検知可能な量をも意味する。
【0087】
しかし他の事例では、フィブロネクチン−アグリカン複合体の検知可能なレベルが標準又は対照試料に存在し、そして「診断的存在」は、標準レベルより高い、好適には標準レベルより統計的に有意な増加を意味する。ある実施形態では、生体試料内のフィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」は少なくとも約1.5,2,5,10,100,200,500,1000,又はそれ以上の倍数だけ、対照試料より大きい。
対照試料は関節関連痛を未経験の個々の又は個々からなる1つのグループから採取された試料でよい。
或いは、対照試料は、試験対象患者の未罹患又は無症候性の関節から採取されてもよい。対照試料を採取するのに特に適合する関節は、未罹患又は無症候性の、フィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」のために検査される関節に対し対側性の関節である。例えば、左膝痛を患う患者においては、対照試料は、右膝が未罹患又は無症候性の場合、同じ患者の右膝から採取される。
【0088】
ある特定の関節に存在するフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、変形性関節症、半月板構造、回旋筋腱板裂傷、腱又は靭帯構造、軟骨症、又は筋膜痛のような特定のタイプの関節関連痛の診断又は診断の補助に使用可能である。ある実施形態では、関節におけるフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、その特定の関節の解剖学的構造又は損傷を示唆する。更に或いは、関節試料におけるフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、関節痛を脊髄のような他の解剖学的構造又は生理学的発生源から区別するのに使用可能である。例えば、対照試料と比較した関節試料のフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又は増加したレベルは、関節関連の疼痛を神経根障害の疼痛から区別するのに使用可能である。
【0089】
フィブロネクチン−アグリカン複合体の検知は単独でも、又は他の診断方法と組合せても関節関連痛の診断に使用可能である。代表的な診断方法には、限定されないが、治療歴、身体検査、X線検査、MRI及び関節内注射を含む。フィブロネクチン−アグリカン複合体の存在は従って、他の方法、例えばMRIにより傷害が検知可能か否かに拘わらず、傷害を診断し、特定の場所における治療を施すのに使用可能である。患者は典型的に、傷害又は解剖学的構造の箇所、即ちフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在箇所に対する治療薬の投与により治療される。
【0090】
生体試料におけるフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルは、患者に特定の治療を受ける候補にするために使用可能である。治療のタイプ、例えば抗炎症剤又は外科治療は、フィブロネクチン−アグリカン複合体の存在又はレベルによって判定された症状の重症度に対して適合させられる。
【0091】
ある特定の場所に存在するフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、試験対象患者の予後を決定するのに使用可能である。例えば、関節試料に存在するフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルは、関節に対する急性傷害の程度を示し、医師がどの程度まで傷害又は解剖性構造の回復又は治癒が得られる可能性があるのかを判定する補助となりうる。
【0092】
(D.治療効果の監視)
開示された方法は、治療又は一連の治療の効果を検証するのにも使用可能である。例えば、フィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」のための神経根障害試験がポジティブで、神経根障害を疑われる患者において、抗炎症治療の効果が、フィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルを時間経過と共に監視することにより、評価可能である。治療の後の患者から採取された生体試料のフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルが、同じ患者から治療前に採取した試料のレベルに比較して減少した場合は、治療が効果的であったことを示唆する。
【0093】
関節試料内のフィブロネクチン−アグリカン複合体の「診断的存在」のための関節関連痛試験がポジティブな患者において、抗炎症治療の効果は、治療された関節のフィブロネクチン−アグリカン複合体のレベルを時間経過と共に監視することにより、評価可能である。例えば、患者から治療後に採取された生体試料におけるフィブロネクチン−アグリカン複合体レベルの、治療前に同じ患者から採取された試料のレベルと比較した減少は、治療が効果的であったことを示唆する。
【0094】
(IV.疼痛の治療法)
一度疼痛が発生する場所がフィブロネクチン−アグリカン複合体の存在により識別されると、疼痛を治療し、又は疼痛の原因となる解剖学的構造を治療する既知のいかなる方法も使用可能である。例えば、神経根障害又は椎間板起因疼痛又は小関節痛が診断されると、脊椎疼痛を治療する既知のいかなる治療法も患者に適用可能である。適合する方法には、限定されないが、椎弓切開、椎弓切除、椎間板切除、微小椎間板切除、経皮椎間板切除、内視鏡椎間板切除、レーザ椎間板切除、固定術、増殖注入療法、他の外科的減圧術、機器使用又は不使用固定術による減圧術を含む。
【0095】
脊椎の疼痛も、ステロイド又は非ステロイド抗炎症剤の投与を含む標準的非外科的方法で治療可能である。非ステロイド抗炎症剤(NSAID)は既存技術で周知である。イブプロフェン、アスピリン、又はパラセラモール(paraceramol)のようなNSAIDを含む非ステロイド剤が使用可能である。コルチゾール受容体に結合することにより炎症を減少させる糖質コルチコイドのようなステロイドも、治療に使用可能である。
患者の治療には、いかなる数の既知の関節関連痛に対する治療法も適用可能である。
適合する方法は、限定されないが、関節鏡壊死組織切除又はステロイド系又は非ステロイド系の抗炎症剤の投与を含む。
【0096】
(A.バイオマーカー拮抗物質)
ある実施形態では、1つ以上のフィブロネクチン−アグリカン複合体の拮抗物質が脊椎又は関節痛の治療に使用される。適合するフィブロネクチン−アグリカン複合体の拮抗物質は、直接的又は間接的にフィブロネクチン−アグリカン複合体の生物活性を抑制又は減少させる。他の適合するフィブロネクチン−アグリカン複合体の拮抗物質は、フィブロネクチン及びアグリカンモノマーからのフィブロネクチン−アグリカン複合体の形成を抑制又は減少させ、又は、フィブロネクチン及びアグリカンを含む現存する複合体を解離させる。更に他の適合するフィブロネクチン−アグリカン複合体の拮抗物質は、フィブロネクチン又はアグリカンの出現を抑制又は減少させる。
【0097】
(1.抗体)
ある実施形態では、フィブロネクチン−アグリカン複合体の拮抗物質は抗体である。フィブロネクチン又はアグリカンに特異結合する抗体又はそのフラグメントは、フィブロネクチン−アグリカン複合体の形成を抑制又は減少させ、現存する複合体を解離させ、及び/又はフィブロネクチン−アグリカン複合体の生物活性を抑制又は減少させる。抗体の生成法は周知であり、当業者の能力範囲内にあり、そして以下に詳述される。
【0098】
ここに開示される抗体は、フィブロネクチン又はアグリカンポリペプチド、又はそのフラグメントに特異結合し、フィブロネクチンのアグリカンへの結合、又はフィブロネクチン−アグリカン複合体の、疼痛となる信号を媒介する生体標的への結合を抑制し又は減少させる。他の適合する抗体は、これらポリペプチドのどちらか単独よりはむしろ、フィブロネクチン−アグリカン複合体に特異結合する。これら抗体は、複合体内の機能以外のフィブロネクチンとアグリカンの機能に干渉しないため、特に有用である。
【0099】
開示された抗体は「ブロック」「機能ブロック」又は「拮抗的」抗体と定義される。抗体を生成するのに使用された免疫原は、フィブロネクチン又はアグリカンのいかなる免疫原性部分であってよい。ある実施形態では、抗アグリカン抗体の生成に使用された免疫原は、アグリカンのG3領域である。免疫原は既存技術の種々の方法で生成される。例えば、既存の遺伝子組換法を使用したクローン化された遺伝子の発現、合成ペプチド複合体、発生源の細胞からの単離、高レベルのフィブロネクチン又はアグリカンを出現する細胞集団などである。他の実施形態では、免疫原はフィブロネクチン−アグリカン複合体を含む。複合体は患者の生体試料から単離可能であるか、又はフィブロネクチン及びアグリカンモノマーから複合体の形成により生体外で生成可能である。
【0100】
抗体はポリクローナル又はモノクローナル抗体でよい。抗体は、ヒト化抗体又はキメラ化抗体のような異種間の、同種異系間の、同系間の、またはそれらの修飾形であってよい。抗体は抗イディオタイプ抗体でよい。抗体には、Fab及びF(ab)を含む抗体フラグメント、及び、標準多量体構造の代わりに単鎖抗体又はscFvとして生成された抗体も含む。抗体はIgG1,IgG2,IgG3又はIgG4のようなIgG又はIgM,IgA,IgE,IgDイソタイプでよい。抗体重鎖の定常ドメインは、所望のエフェクター機能によって選択される。軽鎖定常ドメインは、カッパー又はラムダ定常ドメインでよい。
フィブロネクチン又はアグリカンに結合する商業的に入手可能な又は従来から既知の抗体が使用されてもよい。例えば、フィブロネクチンに結合するヒト化抗体は、特許文献4、及び特許文献5に記載されている。
【0101】
(2.他のポリペプチド)
他の実施形態では、バイオマーカー拮抗物質が抗体以外のフィブロネクチン又はアグリカンに結合するポリペプチド又はそのフラグメントである。フィブロネクチン又はアグリカンに結合するポリペプチドは、フィブロネクチン及びアグリカンを含む複合体の形成を減少又は抑制し、及び/又はフィブロネクチン−アグリカン複合体の生体活性を減少又は抑制するのに使用可能である。ペプチドの生成方法は周知である。
【0102】
ある実施形態では、ポリペプチドはフィブロネクチン又はアグリカン受容体の可溶性フラグメントである。代表的フィブロネクチン受容体には、フィブロネクチン受容体1及び2がある。他の適合する可溶性ポリペプチドには、フィブロネクチン又はアグリカンに結合することが既知のウィルスタンパク質を含む。例えば、多くの種類のフィブロネクチンに結合するキメラ化ウィルス受容体が使用可能である。
【0103】
(3.小分子及び他の拮抗物質)
追加の生体活性剤が拮抗活性のためにスクリーンされることが望ましい。ある実施形態では、生体活性剤の候補はフィブロネクチン及びアグリカンを含む複合体の形成を減少又は抑制し、又は現存する複合体を解離させる能力に対してスクリーンされる。他の実施形態では、生体活性剤の候補はフィブロネクチン及びアグリカン複合体の生体標的への結合を減少させる能力、又はフィブロネクチン−アグリカン複合体の生体活性を減少又は抑制する能力に対しスクリーンされる。
【0104】
ここで使用される「生体活性剤候補」という言葉は、いかなる分子、例えば、タンパク質、小有機分子、小非有機分子、有機―金属分子、炭水化物(多糖類を含む)、ポリヌクレオチド、脂質、他を意味する。一般的に、様々な濃度に対する異なる応答を得るため、異なる薬剤濃度の複数の検定法が並行して行われる。典型的に、これら濃度の1つがネガティブ対照、即ち、ゼロ濃度又は検知レベル未満として機能する。さらにポジティブ対照、即ち、フィブロネクチン又はアグリカンに結合することが既知の薬剤も使用可能である。
【0105】
薬剤候補には、有機、非有機、有機―金属、合成、準合成、及び自然発生の小分子を含む。
薬剤候補は、多くの化学薬品クラスに亘るが、典型的には有機分子であり、好適には分子量100超で約2500ダルトン未満、より好適には100〜2000の、より好適には100〜1250の、より好適には100〜1000の、より好適には100〜750の、より好適には200〜500ダルトン、を有する小有機化合物である。薬剤候補は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を有し、典型的に少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシル又はカルボキシル基、好適には少なくとも2つの官能化学基を有する。
【0106】
薬剤候補は多くの場合、1つ以上の上記官能基で置換された環状炭素又は複素環構造及び/又は芳香族又は多重芳香族構造を有する。薬剤候補はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、又はそれらの組合せを含む生体分子の中にも発見される。特に好適には、ペプチド例えば、ペプチド模倣体である。ペプチド模倣体は例えば特許文献6に記載のとおり生成可能である。
【0107】
薬剤候補は、合成又は自然化合物のライブラリを含む広範な供給源から得られる。例えば無作為オリゴヌクレオチドの発現を含む、広範な有機合成物及び生体分子のランダムなそして方向性を持った合成に対し、多くの方法が使用可能である。或いは、バクテリア、真菌、植物及び動物の抽出物の形での自然化合物のライブラリが使用可能又はすぐに生成可能である。更に、自然又は合成されたライブラリは、従来技術の化学的、物理的及び生化学的手段により容易に修飾される。既知の薬理学的薬剤は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミディフィケーション(amidification)のような方向性のある又はランダムな化学修飾を受け、構造類似体を生成する。好適な実施形態では、生体活性薬剤候補は、有機化学成分又は小分子化学組成物であり、それらは広範に既存技術で利用可能である。
【0108】
(4.フィブロネクチン又はアグリカンの発現を減少又は抑制する拮抗物質)
他の実施形態では、拮抗物質はフィブロネクチン又はアグリカンの発現を減少又は抑制する。フィブロネクチン又はアグリカンの発現を減少又は抑制する拮抗物質には、限定されないが、フィブロネクチン又はアグリカンのエンコードする核酸に特異な、リボゾーム、三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFOs)、アンチセンスDNA、低分子干渉RNAおよびミクロRNAを含む、抑制核酸を含む。
【0109】
有用な抑制核酸には、RNAをエンコードするフィブロネクチン又はアグリカンの発現を対照に対して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%減少させるものを含む。フィブロネクチン又はアグリカンの発現は、ノーザンプロット法及び量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を含む、当業者に周知の方法で測定可能である。
【0110】
抑制核酸及びその生成法は周知である。siRNAの設計ソフトウェアは、例えばウェブサイトhttp://i.cs.hku.hk/〜sirna/software/sirna.phpで使用可能である。核酸の合成は、例えば非特許文献16で周知である。
「siRNA」とは、短い長さの二重鎖RNAで、非毒性の低分子干渉RNAを意味する。一般的に毒性を示さない限り、siRNAの長さには特定の制限はない。
「siRNA」は、例えば、15−49bp、好適には15−35bp、更に好適には、21−30bpの長さである。或いは、出現するsiRNAの最終転写産物の二重鎖のRNA部分は、例えば、15−49bp、好適には15−35bp、更に好適には、21−30bpの長さである。
【0111】
2つのRNAがペアを組むsiRNAの二重鎖RNA部分は、完全にペアとなったものに限定されず、不適性塩基対(対応するヌクレオチドが相補的でない)及びバルジ(1つの鎖に対応する相補的ヌクレオチドを欠く状態)に起因する非ペア部分を含んでもよい。非ペア部分は、siRNA情報と干渉しない程度まで含まれてよい。
ここで使用される「バルジ」とは、好適には1−2つの非ペアのヌクレオチドを有し、2つのRNA鎖がペアを組むsiRNAの二重鎖RNA部分は、好適には1−7、より好適には、1−5のバルジを含む。
さらに、ここで使用される「不適性塩基対」は、2つのRNA鎖がペアを組むsiRNAの二重鎖RNA部分に含まれ、数は好適には1−7、より好適には1−5である。好適な不適性塩基対では、ヌクレオチドの1つがグアニンであり、他の一方がウラシルである。このような不適性塩基対は、センスRNAに対するDNA符号化におけるCからT、GからA又はそれらの組合せの置換変異に起因するが、しかし特にそれらに限る訳ではない。さらに、2つのRNA鎖がペアを組むsiRNAの二重鎖RNA部分は、「バルジ」と「不適性塩基対」の両方を有する場合が有り、それらは合計して、好適には数で1−7、より好適には、1−5となる。
【0112】
siRNAの末端構造は、siRNAが標的遺伝子の発現をそのRNA干渉(RNAi)効果により停止させ、減少させ、抑制する限りにおいては、平滑か、凝集性(突出)のいずれかであってよい。凝集(突出)末端構造は3’突出に限らず、RNA干渉効果を有することが出来れば5’突出も含まれる。さらに突出するヌクレオチドの数は既にレポートされた2−3に限らず、突出がRNA干渉効果を誘導できればどのような数でもよい。例えば、突出は1−8、好適には2−4のヌクレオチドである。ここで凝集末端構造のsiRNAの合計長はペアを組む二重鎖部分の長さと両端の突出する単鎖部分の長さとの合計長により表わされる。たとえば両端に4ヌクレオチド突出を有する19bp二重鎖RNA部分の合計長は、23bpで表わされる。さらにこの突出配列は標的遺伝子に対して特異性が低いので、それは必ずしも標的遺伝子配列に対し相補性(アンチセンス)又は同一性(センス)である必要はない。さらに、siRNAが標的遺伝子に対し遺伝子停止効果を維持することが可能な限り、siRNAは低分子量RNA(tRNA,rRNA又はウィルスRNAのような自然RNAか、又は人工のRNA分子でよい)を、例えば、1つの末端の突出部分に含んでもよい。
【0113】
さらに、siRNAの末端構造は必ずしも両端が上記のような切り取り構造である必要はなく、二重鎖RNAの一方の末端がリンカーRNAと結合する、ステムループ構造でよい。二重鎖RNA領域の長さは(ステムループ部分)は、例えば、15−49bp、好適には15−39bp、更に好適には、21−30bpでありうる。或いは、出現されるsiRNAの最終転写産物である二重鎖RNA領域の長さは、例えば、15−49bp、好適には15−35bp、更に好適には21−30bpである。更に、リンカーの長さには、ステム部分のペアリングを妨害しない長さであれば、特定の制限はない。例えば、ステム部分の安定的ペアリング及びその部分に対するDNAコーディング間の組み換えの抑制のため、リンカー部分はクローバー葉tRNA構造を有してもよい。リンカーはステム部分のペアリングを妨害する長さを有するが、例えば、リンカー部分をイントロン(介在配列)を含むように構築し、イントロンがRNA前駆体から成熟RNAへの処理の間に切除され、それによりステム部分のペアリングを許容することは可能である。ステムループsiRNAの場合には、ループ構造の無いRNAのどちらかの末端(頭又は尾)は低分子量RNAを有してもよい。前述のようにこの低分子量RNAは、tRNA,rRNA又はウィルスRNAのような自然RNAか、又は人工のRNA分子でよい。
【0114】
miRNA(マイクロRNA)は、ダイサーのような酵素による短いステムループ前駆体の開裂により生成される。一方siRNAは長い二重鎖RNA分子の開裂により生成される。miRNAは一重鎖であり、siRNAは二重鎖である。
siRNAの生成法は周知である。フィブロネクチン又はアグリカンの配列が既知であるため、当業者はフィブロネクチン又はアグリカンの発現を下方制御するsiRNA
を公知の情報を使用して容易に生成可能である。
【0115】
(5.フィブロネクチン及び/又はアグリカンの分解の原因となるアグレカナーゼ及びマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)の抑制物質)
ある実施形態では、既知のアグレカナーゼ又はMMPのキレート剤のような拮抗剤が、アグリカンフラグメントの遊離を抑制又は遅延させるのに有効な量で、必要とする患者に投与され、それは結果的にフィブロネクチンーアグリカン複合体の形成を減少又は排除し、それにより患者に痛みからの解放をもたらす、ことが可能である。
【0116】
(B.医薬的組成物)
フィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質を含む医薬的組成物が提供される。ペプチド又はポリペプチドを含む医薬的組成物は、非経口による(筋肉内、腹腔内、静脈内又は皮下注射)、経皮の(受動的に又はイオン導入法又は電気穿孔法を使用して)又は、経粘膜的な(経鼻の、経膣の、直腸経由の、舌下の)投与ルートで、投与可能である。
組成物は、生体分解可能な挿入物を使用して投与可能であり、椎間板、硬膜外空間、小関節のような脊椎構造又は可動関節に直接到達可能である。組成物は投与のルートに適切な剤形に調製可能である。ペプチド又はポリペプチドでないフィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質を含む組成物も経腸投与のために更に調製可能である。
【0117】
ここに開示される拮抗物質は患者に治療に効果のある量で投与される。ここで使用される「効果のある量」又は「治療に効果のある量」とは、必要とする患者の脊椎痛を治療し、抑制し、緩和するために十分な投薬量を意味する。詳細な製剤は、患者依存の変数(例えば、年齢他)、治療中の傷害又は病理、及び実施されている治療などの種々の要因により異なる。
【0118】
ここに開示されるフィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質に対しては、さらに研究が進むにつれ、種々の患者の種々の症状の治療に対する適切な投与量レベルについての情報が得られ、そして通常の当業者は、治療状況、年齢、患者の全身健康状態を考慮して適切な投与量を確認することが可能になろう。選択された投与量は投与の経路及び所望治療期間に依存する。一般的に体重の0.001又は10mg/kgの投与量レベルが毎日哺乳類に投与される。一般的に静脈内注射又は点滴では、投与量はより少ない。
【0119】
ある実施形態では、ペプチド及びポリペプチドを含むフィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質は水溶液で、非経口、椎間板内、小関節内、髄腔内、硬膜外又は関節の注射により投与される。好適な実施形態では、フィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質は、患者の疼痛の発生源である脊椎のある領域に直接投与される。例として、フィブロネクチンーアグリカン複合体が硬膜外空間に検知された場合、フィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質が直接注射により硬膜外空間に投与される。
或いは、フィブロネクチンーアグリカン複合体がそれら領域に検知された場合、フィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質が直接注射により椎間板空間、小関節、又は可動関節に投与される。
【0120】
製剤は懸濁液又は乳濁液の形態でもよい。一般的に、医薬組成物はペプチド又はポリペプチドの効果的量を含み、場合により医薬的に許容される希釈剤、保存剤、溶解剤、乳化剤、抗原免疫増強剤、及び/又は担体を含む。このような組成物は、希釈滅菌水、種々のバッファ内容物の緩衝食塩水(例えば、トリス塩酸、アセテート、リン酸塩)、PH及びイオン化強度、および場合によって洗浄剤及び溶解剤のような添加剤(例えば、TWEEN20(登録商標),TWEEN80(登録商標),ポリソルベート(Polysorbate)80)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、二亜硫酸ナトリウム)及び保存剤(例えば、シマーソル(Thimersol),ベンジルアルコール)及びバルク化剤(例えば、乳糖、マニトール)を含む。非水溶媒又は溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油やコーン油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射用有機エステルである。製剤は凍結乾燥され、使用直前に再溶解/再懸濁されてもよい。製剤は、例えばバクテリア保持フィルターを通過させるフィルタリングにより、滅菌剤を組成物に組み込むことにより、組成物に照射することにより、又は組成物を熱することにより、滅菌されてもよい。
【0121】
ペプチド及びポリペプチドを含むフィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質は、徐放製剤により投与可能である。徐放重合体デバイスは、重合体デバイス(棒、円筒、薄膜、円板)の移植または注入(微小粒子)に続いて全身に長期間放出するように生成可能である。マトリックスは、ペプチドが固体重合体マトリックス又は微小カプセル内に分散され、コアが重合体の殻とは異なる物質で出来ていて、ペプチドがコア内に分散又は懸濁されている、液体又は固体の、微小球面のような微小粒子であってよい。ここで特に定義されない限り、微小粒子、微小球面、及び微小カプセルは互換的に使用される。或いは重合体が、ナノメータから4センチの範囲の薄いスラブ又は薄膜に射出され、粉ひき又は他の標準的技術による粉体、又はハイドロゲルのようなゲルでもよい。
【0122】
非生物分解性又は生物分解性のマトリックスのいずれかがフィブロネクチンーアグリカン複合体の拮抗物質の送達に使用可能であるが、生物分解性マトリックスが好ましい。これらは、天然又は合成の重合体であってよいが、分解性能と放出特性が優れているため合成重合体が好適である。重合体は所望の放出期間によって選択される。ある場合には直線的放出が最も有用であり、他の場合にはパルス放出又は「バルク放出」がより効果をもたらす。重合体はハイドロゲル(典型的に、水重量で90%まで吸収)の形態でよく、場合によっては多価のイオン又は重合体と相互結合していてもよい。
【0123】
マトリックスは溶剤の蒸発、スプレー乾燥、溶剤抽出、及び他の既知の方法により形成可能である。生体分解性微小球面は、例えば、非特許文献17、非特許文献18、及び非特許文献19に記載される、薬剤送達用の微小球面を生成するのに開発されたいかなる方法を使用しても調製可能である。
デバイスは移植または注射の領域を治療するため局地的放出用に調製可能であり、それにより全身の治療に必要な、又は全身送達の投与量よりはるかに少ない投与量を送達する。これらは皮下で、筋肉、脂肪、内に移植又は注射し、又は呑み込み可能である。
【0124】
(V.キット)
免疫検定法のような特異結合検定法を使用する検知方法が、特に患者治療の現場での使用に適している。このような方法は、患者の即時診断及び/又は予後評価が可能である。
上記の診断、研究、及び治療用のキットもまた提供される。診断及び研究用途にはこのようなキットは、以下のいずれか又は全てを含んでよい:検定試薬、バッファ、及び開示されたバイオマーカーに対する選択的結合パートナー。これらは全て運搬に適した容器に内蔵されている。選択的結合パートナーには、フィブロネクチンーアグリカン複合体に選択的に結合する、又は複合体での使用のため複合体の構成要素のそれぞれに結合する、抗体を含んでもよい。ある実施形態では、キットは連続固体表面上の選択的結合パートナーを含む。
【0125】
代表的なキットは、検知結合パートナー及びフィブロネクチンーアグリカン複合体の検知用のポジティブ対照を有する1つの容器からなる。ポジティブ対照は、フィブロネクチンーアグリカン複合体又はフィブロネクチンーアグリカン複合体を形成する構成要素であってよい。フィブロネクチン及びアグリカン配列はヒト配列、又はフィブロネクチン及びアグリカンがヒト配列に相同な他の種であってよい。フィブロネクチン及びアグリカンは共に同一の種由来か、異なる種由来であってよい。フィブロネクチン及び/又はアグリカンフラグメントは自然発生源から精製され、又は固相法により合成され、又は遺伝子組み換え法により生成されてもよい。キットは又、連続固体表面のような基質に結合した捕獲結合パートナーを含んでもよい。捕獲結合パートナーは典型的に、フィブロネクチンーアグリカン複合体のアグリカンに結合し、検知結合パートナーはフィブロネクチンーアグリカン複合体のフィブロネクチンに結合するが、捕獲結合パートナーが、フィブロネクチンーアグリカン複合体のフィブロネクチンに結合し、検知結合パートナーはフィブロネクチンーアグリカン複合体のアグリカンに結合する可能性があることも理解する必要がある。
【0126】
ある実施形態では、生体試料の抽出に使用されるデバイスもキットに含まれる。ある実施形態では、抽出デバイス、例えば、注射器、針、カテーテルが直接生体試料を罹患可能性のある椎間板又は硬膜外空間又は関節からバイオマーカーの選択的結合パートナーを含む容器に抽出してもよい。ある場合には、キットはバイオマーカーの存在及び/又はレベルを直ちに評価できる。このタイプのキットは治療場所での使用に特に適している。治療現場での診断システムの事例は特許文献7に記載されている。本発明のキットと共に使用するために適応可能な設計の他のデバイスは、例えば、特許文献8及び特許文献9に記載されている。
【0127】
ある実施形態では、キットは、生体試料を脊椎又は関節から抽出するための溶液を含んでもよい。このキットに含まれる溶液は、例えば、生理学的溶液、例えば生理食塩水でよい。ある実施形態では、キットは、試料の抽出に使用されたデバイスと同一のデバイス、又は他のデバイスを使用して投与可能な1つ以上の治療剤を含んでもよい。
【0128】
更に、キットは、キットで提供された材料の使用に対する指示(即ち、実施要綱)を含む使用説明書を有してもよい。使用説明書は典型的には書面の又は印刷物であるが、それらは、説明書を保管し、最終使用者に通信可能ないかなる媒体で提供されてもよい。適合する媒体は、限定されないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)及び光媒体(例えば、CD ROM)を含む。媒体は使用説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含んでもよい。
【0129】
(実施例)
(実施例1.ヒト試料からのフィブロネクチンーアグリカン複合体の精製のための色層分析の適用)
椎間板洗浄試料又は滑膜液からフィブロネクチンーアグリカン複合体を精製するため、分子ふるい色層分析(SEC)が実施され、次いで陰イオン交換色層分析が実施された。分子ふるい色層分析(SEC)及び陰イオン交換色層分析は、BioLogic QuadTec(登録商標)UV/VIS検知器及び電導率モニターを備えたBio−Rad BioLogic DuoFlow(登録商標)コンピュータに制御されるHLPCシステムを使用して実行された。
【0130】
SECは、順に並んだ2つのBio−Rad(登録商標)SEC−400−5コラムを使用し、50mMのトリス/HCL,100mM NaClを含むpH8.0の定組成溶離を使用して実施された。結果として得られたフラクションは総タンパク質含有量(A280nm及びA215nm)及びフィブロネクチンのアグリカンフラグメントとの複合体からなる発見されたバイオマーカーの存在について分析された。図1は症候性試料に対するSEC−HPLC溶離プロファイル(A215nm)を示し、図2は同一条件での非症候性試料に対するSEC−HPLC溶離プロファイルを示す。後続の試験により、フラクション14と15は開発された検定法で検知可能なレベルのフィブロネクチンーアグリカン複合体を含む唯一のフラクションであることが判った。このコラムに対する分子量基準に基づき、フラクション14,15に溶離するタンパク質が分子量範囲250Kda−700Kdaを持つと予測した。
【0131】
フィブロネクチンーアグリカン複合体はまた、陰イオン交換色層分析を使用して精製可能である。複合体はコラムに結合され、50mMのトリス/HCL,100mM NaClを含むpH8.0の溶液で平衡化され、トリス/HCLバッファ内の150mM−230mMの直線的塩勾配によってコラムから溶離される。
フィブロネクチンーアグリカン複合体は更に陽イオン交換色層分析を使用して精製可能である。複合体はコラムに結合され、50mMの酢酸ナトリウム,100mMのNaClを含むpH6.0の溶液で平衡化され、酢酸塩内の100mM−300mMの直線的塩勾配によってコラムから溶離される。
【0132】
(実施例2.抗フィブロネクチン及び抗アグリカン(G3領域)抗体を使用した銀染色法及びウェスタンブロット分析)
実施例1はヒト試料のSEC−HPLCによるフラクション化を示した。SEC分析からのフラクション14,15はSDS−PAGE分離にかけられ、その後、フラクション内のタンパク質の寸法を決定し、それらの識別を探索するため銀染色法又はウェスタンブロット分析にかけられる。
ウェスタンブロット分析は、抗フィブロネクチンモノクローナル(DiaPharma Group社、DPGR028AフィブロネクチンELISAキットからの検知抗体)及び抗アグリカンモノクローナル(G3領域)(Santa Cruz Biotechnology社、アグリカンC20、sc−16493)特異抗体を使用した標準的手法で実施された。
【0133】
銀染色分析は、双方のフラクションにおいて250Kdより大きい範囲のタンパク質の存在を示した。抗フィブロネクチン及び抗アグリカン(G3領域)抗体を使用したウェスタンブロット分析は、分子量範囲400−600Kdにおいて免疫反応性帯域を明らかにし、タンパク質がポリアクリルアミドゲルを通過して共遊走したことを示唆した。データは、抗フィブロネクチン及び抗アグリカン(G3領域)抗体の両方に免疫反応性のタンパク質複合体の存在を示唆した。
【0134】
(実施例3、ポリアクリルアミドゲルを通過してフィブロネクチンと共遊走するアグリカン領域の分析)
単一ヒト試料の分子ふるい色層分析(SEC)が実施例1に記載の通り実施され、SECからの溶離されたフラクション8−20がSDS−PAGEにより分離され、その後、ポリクローナル抗アグリカンG1(Santa Cruz Biotechnology社、アグリカンD20、sc−16492),G2(Santa Cruz Biotechnology社、アグリカンE12、sc−67513)又はG3(Santa Cruz Biotechnology社、アグリカンC20、sc−16493)抗体を使用したウェスタンブロット分析のためメンブランに送られた。
【0135】
抗アグリカンG3領域抗体使用したウェスタンブロット分析は、フラクション8−20に、G3領域を含むアグリカンの種々のタンパク分解性フラグメントに対応する、異なる分子量の免疫反応性帯域を明らかにした。抗アグリカンG1領域抗体使用したウェスタンブロット分析は、フラクション8−20に、抗アグリカンG3領域抗体使用して観察された帯域パターンとは異なる帯域パターンを示す、免疫反応性帯域を明らかにした。抗アグリカンG2領域抗体使用したウェスタンブロット分析は、フラクション8−20に、抗アグリカンG1又はG3領域抗体を使用して観察された帯域パターンとは異なる帯域パターンを示す、免疫反応性帯域を明らかにした。抗アグリカンG1、G2及びG3領域抗体を使用した帯域パターンの分析は、アグリカンのG1、G2及びG3領域は、フィブロネクチンとの異なる複合体又はそのフラグメントに存在することを示唆する。
【0136】
(実施例4.フィブロネクチンーアグリカンタンパク質複合体の異種ELISA分析)
上記の実施例はヒト試料内のフィブロネクチンとアグリカン(G3)の複合体の存在を示唆する。このような複合体の更なる存在試験のため、異種ELISAサンドイッチ検定法が開発され、使用された。
(材料と方法)
単一ヒト試料の分子ふるい色層分析(SEC)が実施例1に記載の通り実施され、フラクション14と15が更なる分析に使用された。
抗フィブロネクチンモノクローナル抗体(DiaPharma Group社、DPGR028AフィブロネクチンELISAキットからの検知抗体)が、捕獲抗体として機能するためポリスチレンプレート状に固定された。
その後ヒト試料のSECからのフラクション14と15がフィブロネクチン捕獲抗体を含むプレート上に分注される。インキュベーションの後、試料は除去され、プレートは洗浄され、そしてプレートは、検知抗体としての抗アグリカンG3領域ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology社、アグリカンC20、sc−16493)と共にインキュベーションされた。プレートは洗浄され、そしてフィブロネクチンとアグリカンのG3領域との複合体の存在が、HRPで標識付けされた2次抗体を使用して、その後の光学検知により検知された。抗アグリカンG3領域抗体が捕獲抗体として使用され、抗フィブロネクチン抗体が検知抗体として使用される、追加の実験が実施された。
【0137】
フラクション14は最高光学密度を発現し、フラクション15は同じくポジティブだが光学密度はそれより低い。これらの結果は、どちらの抗体が捕獲抗体として使用され、どちらの抗体が検知抗体として使用されるかに関わりなく、SECフラクション内に、相互作用するタンパク質複合体と分子量が一致する、相互作用するフィブロネクチンとアグリカン(G3領域)との異種複合体の存在することを意味する。
【0138】
(実施例5.熱及び還元剤によるフィブロネクチンとアグリカン(G3)の複合体の解離)
フィブロネクチンとアグリカンのG3領域を含む複合体の更なる存在試験として、ウェスタンブロット上の帯域の転位に対する熱及び還元剤の効果が試験された。
(材料及び方法)
単一ヒト試料の分子ふるい色層分析(SEC)が実施例1に記載の通り実施され、フラクション14と15が更なる分析に使用された。フラクション14及び15からのタンパク質が4−20%SDS−ポリアクリルアミドゲル上に分けて置かれる。試料は未処理か、又は沸騰水槽内で3分間熱処理されるか、沸騰水槽内で還元剤DTTの存在下で3分間熱処理される。その後タンパク質は、上記の実施例で記載の通り、抗アグリカンのG3領域モノクローナル抗体又は抗フィブロネクチンモノクローナル抗体を使用したウェスタンブロット法のためメンブランに送られる。
【0139】
(結果)
試料が熱又は還元剤で処理されない場合、ウェスタンブロット法は、抗アグリカンのG3領域モノクローナル抗体及び抗フィブロネクチンモノクローナル抗体と免疫反応性の単一の帯域を明らかにした。
沸騰水槽内で3分間熱処理された試料の場合、ウェスタンブロット法は、抗アグリカンのG3領域モノクローナル抗体及び抗フィブロネクチンモノクローナル抗体の単一の帯域が分子量のより低い複数の帯域に分割されることを示した。このことは、フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体の2量体構造が、フィブロネクチンモノマーとアグリカン(G3)複合体へ部分的解離することと一貫性がある。
【0140】
沸騰水槽内で還元剤DTTの存在下で3分間熱処理された試料の場合、ウェスタンブロット法は、抗アグリカンのG3領域モノクローナル抗体及び抗フィブロネクチンモノクローナル抗体の単一の帯域が分子量のより低い複数の帯域に分割されることを示した。
このことは、フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体が分離したフィブロネクチン及びアグリカン(G3領域)サブユニットに解離することと一貫性がある。さらにフィブロネクチンは幾つかのペプチドに開裂され、それらペプチドはジスルフィド結合により一体化される。
この実施例は、フィブロネクチン及びアグリカン(G3領域)に対しポジティブな、帯域のゲル転位特性は、熱及び還元により影響される可能性が有り、それは、タンパク質−タンパク質複合体の解離と一貫性があることを示している。
【0141】
(実施例6.フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体のヒト椎間板痛のバイオマーカーとしての試験)
臨床的及びX線検査の特徴により腰髄核ヘルニアと診断された45歳の女性が、椎間板造影法により更に評価された。椎間板生成の程度はPhirrmannスケールでX線検査評価により決定された。疼痛に対する視覚的アナログ尺度(VAS)も患者に対して測定され、患者はVAS値5と報告した。VASは1−10の尺度であり、1は無痛、10は最も強度の強い疼痛を意味する。椎間板造影法に先立ち、ヒト椎間板の円板内空間が椎間板空間洗浄法(方式6)により試料採取された。椎間板造影法の間、術間VAS値がそれぞれの腰部椎間板のレベルに対して獲得される。表1に示されるように、バイオマーカー複合体ELISAは、変性に対する最大のX線検査目盛を示した腰部椎間板レベルと、激しい術間疼痛尺度との両方に置いてポジティブであった。
【0142】
(表1)MRI検査及び椎間板造影法を受ける疼痛を有する単一のヒト志願者の種々の腰部レベルにおける特性
【表1】

この事例はヒト患者の円板内空間におけるフィブロネクチンーアグリカンタンパク質複合体の存在は、臨床的疼痛、調和性の椎間板造影法、及びMRIに関係することを示す。これらのデータを図4に図示する。
【0143】
(実施例7.ELISAキットのポジティブ対照)
ELISAキットのポジティブ対照を確立するため、ウシアグリカンが検査された。ウシアグリカンのヒトアグリカンに対する高い相同性に起因して、ウシアグリカンが軟骨から公知の方法に従って精製された。その後精製されたアグリカンは、アグリカンを分解するマトリックスメタロプロテイナーゼMMP−9と生体内で温浸された。G3及びそのフラグメントは、セファロース(登録商標)樹脂上に固定された抗アグリカンG3領域との親和性色層分析によって精製された。溶出したアグリカンG3領域はヒトフィブロネクチンと混合され複合体を形成した。開発されたELISAは、ヒトフィブロネクチンとウシアグリカンG3との間で生体外で形成された複合体を検出した。同様の原理が高い相同性を同様に有するウシ及びヒトフィブロネクチンに対し適用可能である。
フィブロネクチンもアグリカンG3領域も単体ではELISA検定法においてポジティブな信号を生成しなかった。従ってこれらはいずれもネガティブ対照として使用可能である。
【0144】
図5は抗アグリカンG3抗体を捕獲に使用し、抗フィブロネクチン抗体を検知に使用したELISAの直線性を示す。疼痛を有する1人の患者からのポジティブ試料がこの実験で使用された。450nmにおける初期光学密度(O.D.)が複合体ELISAにより測定された。この試料の連続的希釈が直線性研究において使用された。光学密度期待値は初期測定値及び希釈要素から計算された。理想的条件では、この直線プロットは傾き1、y軸切片0で、かつR=1である。得られた値は傾き=1.09、R=0.99であった。
捕獲用の抗体は抗フィブロネクチンであり、かつ検知用抗体は抗アグリカンでありうることがわかる。
【0145】
(実施例8.関節鏡検査デブリードマンを受けた疼痛を有する膝からの滑膜液試料と、無症候性対照膝との比較)
滑膜関節における疼痛の存在のバイオマーカーとしてのフィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体の有用性を比較するため、関節鏡検査デブリードマンを受けた患者の疼痛を有する膝からの滑膜液試料が、無症候性志願者からの膝の滑膜液と比較された。
(材料と方法)
医療機関審査会の許可を得たのち、患者が症例管理連続設計に基づいて研究のため集められた。全ての患者は参加することにインフォームドコンセントを与えた。関節鏡手術を受けた患者が個人開業の1つの膝外科医院から集められた。参入基準は、年齢30−69、活動関連の膝疼痛、保存的対応の失敗(注射、治療)、機械的症候の存在(固定、キャッチング、崩壊)、及び半月板裂傷に対するMRIポジティブであった。除外基準は、高エネルギー外傷又は骨折、炎症性関節炎、靭帯損傷、又は手術後3カ月以内の経口/関節内ステロイド注射である。
【0146】
別の患者の組が、膝痛が無く、年齢適合人口統計を有する無症候性志願者から集められた。参入基準は、年齢30−69、膝痛が無い又は間欠性の膝痛の履歴の無いことである。除外基準は、炎症性関節炎、経口/関節内ステロイド注射、滲出の存在、膝手術の履歴、又は、膝の配列や安定性の身体的診察において正常値を逸脱していることである。
各患者に対し関節内試料が以下のように採取された。
吸引場所がグルコン酸クロルヘキシジンにより3重に準備され、吸引が前側から又は直接横方向に無菌の10cc注射器と21ゲージx1.5インチ針で実施された。膝は10ccの0.9%生理食塩水で洗浄され、その後洗浄液は注射器に回収された。洗浄液はプロテアーゼ抑制因子混合物を含むエッペンチューブに分注され、その後輸送まで氷上に置かれた。
フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体に対する異種ELISA検定法(実施例4で記載の通り)が、1:5の比率の希釈後各試料に対し実施された。
【0147】
(結果)
12の症候性膝と10の無症候性膝がプロトコルに従って検定された。症候性グループの平均(+/−標準偏差)光学密度(OD)は1.82(+/−0.50)で、無症候性対照グループは−0.12(+/−0.07)であった。この差異はt検定(pが0.001未満)により統計的に有意である。図6は症候性患者と無症候性対照のそれぞれの結果を示す。
この実施例は、フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体が、膝関節の滑膜液から検定可能であり、履歴、身体検診及びMRIスキャンで診断されたように関節内障害の存在を予知するバイオマーカーとして機能可能であることを示している。
【0148】
(実施例9.1人のヒト患者において、疼痛を持つ膝からの滑膜液試料を反対側の無症候性膝と比較)
滑膜関節における疼痛の存在のバイオマーカーとしてのフィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体の有用性を比較するため、疼痛を有する膝からの滑膜液試料が、反対側の無症候性膝の滑膜液と比較された。この対の比較は不適合症例管理研究の患者間可変性を無くす。
【0149】
(材料と方法)
医療機関審査会の許可を得たのち、1人の患者が症例管理連続設計に基づいて研究のため集められた。全ての患者は参加することにインフォームドコンセントを与えた。患者は47歳の男性で一方の膝に活動関連の膝疼痛を有した。彼は保存的対応に失敗(注射、治療)し、半月板裂傷に対するMRIポジティブであった。どちらの膝にも骨折はなく、炎症性関節炎、靭帯損傷、又は術後3カ月以内に痛む膝に対し経口/関節内ステロイド注射がない。反対側の無症候性膝は有意の疼痛又は間欠的疼痛又は手術の履歴がない。無症候性膝の検査は正常であり従前の手術の履歴は無い。
【0150】
2つの関節内試料が実施例6で記載されたように獲得された:1つは疼痛を有する膝から、他の1つは無症候性膝から。吸引液はプロテアーゼ抑制因子混合物を含むエッペンチューブに分注され、その後輸送まで氷上に置かれた。
フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体に対する異種ELISA検定法(実施例4で記載の通り)が、1:10の比率の希釈後各試料に対し実施された。
【0151】
(結果)
疼痛を有する膝の光学密度は450nm波長において22.68であった。無症候性膝の光学密度は450nm波長において、ブランク値を差し引いた後10進法2桁までの精度で0.00であった。図6はこの結果を棒グラフで示す。
この実施例は、単一のヒト患者の反対側の膝を検定することにより実験的に可変性を制御する場合でも、フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体が、膝関節の滑膜液から検定可能であり、履歴、身体検診及びMRIスキャンで診断されたように関節内障害の存在を予知するバイオマーカーとして機能可能であることを示している。
【0152】
(実施例10.全関節形成法を受けている疼痛を有する膝からの滑膜液試料と無症候性膝との比較)
滑膜関節における疼痛の存在のバイオマーカーとしてのフィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体の有用性を比較するため、全関節形成法を受けている疼痛を有する膝からの滑膜液試料が、無症候性志願者の膝の滑膜液と比較された。
【0153】
医療機関審査会の許可を得たのち、患者が症例管理連続設計に基づいて研究のため集められた。全ての患者は参加することにインフォームドコンセントを与えた。全関節形成法を受けている膝痛を有する患者が個人開業の1つの足膝外科医院から集められた。参入基準は、年齢40−70、活動関連の膝疼痛、保存的対応の失敗(注射、治療)、変質性関節症及び変形性関節炎に関するX線検査で明白なポジティブであった。除外基準は、急性骨折、炎症性関節炎(例えばリウマチ性関節炎)、又は手術後3カ月以内の経口/関節内ステロイド注射であった。
【0154】
別の患者の組が、膝痛が無く、年齢適合人口統計を有する無症候性志願者から集められた。参入基準は、年齢30−69、膝痛が無い又は間欠性の膝痛の履歴の無いことである。除外基準は、炎症性関節炎、経口/関節内ステロイド注射、又は、膝の配列や安定性の身体的診察において正常値を逸脱していることである。
各患者に対し関節内試料が以下のように採取された。
吸引場所がグルコン酸クロルヘキシジンにより3重に準備され、吸引が前側から無菌の10cc注射器と21ゲージx1.5インチ針で実施された。膝は10ccの0.9%生理食塩水で洗浄され、その後洗浄液は注射器に回収された。洗浄液はエッペンチューブに分注され、その後輸送まで氷上に置かれた。
フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体に対する異種ELISA検定法(実施例4で記載の通り)が、1:5の比率の希釈後各試料に対し実施された。
【0155】
(結果)
4つの症候性膝と1つの無症候性膝がプロトコルに従って検定された。症候性グループの平均(+/−標準偏差)光学密度(OD)は8.4(+/−5.1)で、無症候性志願者は0.0であった。
この実施例は、フィブロネクチンーアグリカン(G3)複合体が、膝関節の滑膜液から検定可能であり、履歴、身体検診及び単純X線スキャンで診断されたように関節内障害及び変形性関節症の存在を予知するバイオマーカーとして機能可能であることを示している。
【0156】
特に定義されない限り、ここに使用される全ての技術的及び科学的用語は当業者に通常理解される意味と同じ意味を持つ。ここに引用された文献はここに参照され採り入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブロネクチンーアグリカン複合体を検知するため、フィブロネクチン及びアグリカンのそれぞれに対する特異結合パートナーを組合せて使用することにより、フィブロネクチン及びアグリカンを含む試料から単離される、ことを特徴とするフィブロネクチン及びアグリカンからなる単離された複合体。
【請求項2】
前記複合体はアグリカン又はそのフラグメント、フィブロネクチン又はそのフラグメント、又はそれらの組合せのG1,IGD、G2,KS,CS1,CS2,又はG3領域を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記複合体はフィブロネクチンのアグリカン結合フラグメントを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記フィブロネクチン及び前記アグリカンは遺伝子組み換え型、天然、又は合成、又はそれらの組合せである、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
患者の脊椎の疼痛又は炎症を治療するための治療場所を識別する方法であって、
a)1つ以上の生体試料を1つ以上の脊椎内の可能性のある治療場所から獲得するステップと、
b)脊椎疼痛の治療のため、前記治療場所からの1つ以上の生体試料において脊椎疼痛に関連する1つ以上のバイオマーカーを有する治療場所を選択するステップと、
からなり、
ここにおいて前記1つ以上のバイオマーカーは、フィブロネクチン又はそのフラグメントとアグリカン又はそのフラグメントとの複合体である、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記バイオマーカーは、アグリカン又はそのフラグメントのG3領域からなる、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の生体試料は、洗浄、吸引、注入―吸引、生体組織検査、微小針吸引生検、コア生検、内視鏡又は切開生検のグループから選択された1つの技術を使用して得られ、
ここにおいて前記試料は、硬膜外、椎間板間、椎間板外、小関節円板内の空間のグループから選択された脊椎内の1つの空間から得られ、
そして前記試料は、大後頭孔、尾、椎弓間、経皮、内視鏡、切開、前側、後ろ側又は横方向のグループから選択された脊椎へのアプローチによって得られ、
ここにおいて、吸引液、組織、又は液体試料は、注入生理食塩水、他の注入された水溶液、注入された非水の液体又は溶液、滑膜液、髄核液、線維輪、硬膜外脂肪、骨、関節嚢、靭帯、又は腱のリストから選択され、
試料となった液体又は組織は、スポンジ、灯芯、綿球、縫合糸、親水性カテーテル、疎水性カテーテル、又は中空内腔カテーテルのグループから選択された追加の吸収剤、吸着剤、又は毛細官材料又はデバイスの助けにより獲得される、
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のバイオマーカーは、色層分析技術、結合検定法、免疫学的技術、または質量分析法を使用して検知される、ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記治療場所は疼痛または炎症の発生源の場所である、ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
ある関節を患者の関節に関連する疼痛又は炎症を治療するための治療場所として識別する方法であって、
a)1つ以上の生体試料を、関節に関連する疼痛又は炎症を治療するため、前記患者の1つ以上の関節内の可能性のある治療場所から獲得するステップと、
b)1つ以上の生体試料において関節に関連する疼痛又は炎症に関連する1つ以上のバイオマーカーを有する関節を、関節に関連する疼痛又は炎症を治療する場所として選択するステップと、
からなり、
ここにおいて前記1つ以上のバイオマーカーは、フィブロネクチン又はそのフラグメントとアグリカン又はそのフラグメントとの複合体である、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記バイオマーカーは、フィブロネクチン又はそのフラグメントとアグリカンのG3領域又はそのフラグメントとの複合体である、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の生体試料は、洗浄、吸引、注入―吸引、生体組織検査、微小針吸引生検、コア生検、内視鏡又は切開生検のグループから選択される1つの方法により獲得され、
ここにおいて、前記試料は、滑膜(即ち、可動関節)、半関節、関節癒合のリストから選択される関節のクラスから獲得され、
ここにおいて関節は、肩、肘、毛根、中手骨、指骨、肩鎖、胸鎖、肋骨、仙腸、腰、膝、足根骨、中足骨の関節のグループから選択され、
ここにおいて、吸引液、組織、又は液体試料は、注入生理食塩水、他の注入された水溶液、注入された非水の液体又は溶液、滑膜液、髄核液、線維輪、硬膜外脂肪、骨、関節嚢、靭帯、又は腱のリストから選択され、
試料となった液体又は組織は、スポンジ、灯芯、綿球、縫合糸、親水性カテーテル、疎水性カテーテル、又は中空内腔カテーテルのグループから選択された追加の吸収剤、吸着剤、又は毛細官材料又はデバイスの助けにより獲得される、
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のバイオマーカーは、分離法、免疫学的技術、または質量分析法を使用して検知される、ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記治療場所は疼痛または炎症の発生源の場所である、ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
試料内のフィブロネクチンーアグリカン複合体を検知するキットであって、
フィブロネクチンーアグリカン複合体に結合する検知結合パートナーを含む容器と、
フィブロネクチンーアグリカン複合体を検知するためのポジティブ対照と、
からなり、
ここにおいて、前記ポジティブ対照は、請求項1に記載の複合体からなる、
ことを特徴とするキット。
【請求項16】
さらに捕獲結合パートナーを含み、前記捕獲結合パートナーは基質に拘束されている、
ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記捕獲結合パートナーは、フィブロネクチンーアグリカン複合体内のアグリカンに結合し、また、前記検知結合パートナーは、フィブロネクチンーアグリカン複合体内のフィブロネクチンに結合する、ことを特徴とする請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記捕獲結合パートナーは、フィブロネクチンーアグリカン複合体内のフィブロネクチンに結合し、また、前記検知結合パートナーは、フィブロネクチンーアグリカン複合体内のアグリカンに結合する、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記捕獲結合パートナー及び前記検知結合パートナーは、フィブロネクチンーアグリカン複合体上の異なるエピトープに結合する、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記捕獲結合パートナー及び前記検知結合パートナーは、フィブロネクチンーアグリカン複合体上の同一のエピトープに結合する、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項21】
同種の又は異種由来のフィブロネクチン及びアグリカン又はそれらのフラグメントの複合体からなる、ポジティブ対照又は標準試料を有する、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項22】
第1の種がヒトである、ことを特徴とする請求項21に記載のキット。
【請求項23】
第2の種が、ウシ、ブタ、及びウマ又はヒトのフィブロネクチン又はアグリカン配列に相同な配列を有するいかなる哺乳類を含むグループから選択される、ことを特徴とする請求項21に記載のキット。
【請求項24】
第1の種がヒトであり、第2の種がウシである、ことを特徴とする請求項21に記載のキット。
【請求項25】
前記複合体はアグリカン、そのフィブロネクチン結合フラグメント、又はそれらの組合せのG1,IGD、G2,KS,CS1,CS2,又はG3領域からなる、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項26】
前記複合体はフィブロネクチンのアグリカン結合フラグメントからなる、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項27】
前記フィブロネクチン及びアグリカンは遺伝子組み換え型の、天然の、又は合成の又はそれらの組合せである、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項28】
患者から生体試料を獲得するデバイスを更に有する、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項29】
病理又は傷害を示唆するフィブロネクチンーアグリカン複合体の基準レベルを更に有する、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項30】
前記検知結合パートナーは、フィブロネクチンーアグリカン複合体のエピトープに結合する、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項31】
前記検知結合パートナーは、フィブロネクチン単独又はアグリカン単独には検知可能に結合しない、ことを特徴とする請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記捕獲結合パートナー及び前記検知結合パートナーは、抗体又はその抗原結合フラグメント、フィブロネクチンーアグリカン複合体に結合能力を有するフィブロネクチンーアグリカン複合体受容体又はそのフラグメント、又はそれらの組合せ、からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項33】
脊椎痛又は炎症を抑制又は減少させる方法であって、
a)請求項5に記載の方法に従って脊椎内の治療場所を識別するステップと、
b)脊椎痛又は炎症を抑制又は減少させるため、前記治療場所に治療を施すステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項34】
前記治療は、椎弓切開、椎弓切除、椎間板切除、微小椎間板切除、経皮椎間板切除、内視鏡椎間板切除、レーザ椎間板切除、固定術、増殖注入療法、他の外科的減圧術、機器使用又は不使用固定術による減圧術、モーションスペアデバイス、関節形成術、小関節形成術、棘間デバイス、動的安定化デバイス、椎弓根ネジ、ロッド、フック、椎体間デバイス、髄核交換又は増大デバイス、線維輪修復又は修復デバイス、ステロイド又は非ステロイド抗炎症剤の投与、からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
脊椎痛又は炎症を抑制又は減少させる方法であって、
患者の脊椎内のフィブロネクチンーアグリカン複合体を拮抗するため、効果的な量の選択的フィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬を必要とする患者に投与するステップを有する、ことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記フィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬は、患者の脊椎内において、選択的にフィブロネクチンーアグリカン複合体の形成を抑制又は減少させ、フィブロネクチンーアグリカン複合体を解離させ、フィブロネクチンーアグリカン複合体の生体活性を抑制又は減少させる、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記フィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬がポリペプチドである、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記フィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬が、フィブロネクチン、アグリカン又はそれらのフラグメントから形成されるフィブロネクチンーアグリカン複合体のエピトープに結合する抗体からなる、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体はフィブロネクチンーアグリカン複合体に選択的に結合し、かつ、フィブロネクチン単独又はアグリカン単独には検知可能に結合しない、ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
脊椎疼痛又は炎症を抑制又は減少させるため治療される脊椎円板を、必要とする患者において識別する方法であって、
前記患者の2つ以上の脊椎円板内のフィブロネクチンーアグリカン複合体のレベルを決定するステップと、
治療の必要な脊椎疼痛又は炎症の無い患者の脊椎円板内のフィブロネクチンーアグリカン複合体のレベルに比較して、増加、減少又は差異のあるフィブロネクチンーアグリカン複合体レベルを有する脊椎円板を選択するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項41】
フィブロネクチンのレベルは請求項5に記載の方法を使用して決定される、ことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
脊椎疼痛又は炎症の治療のための患者を選択する方法であって、
前記患者から得られた脊椎試料をフィブロネクチンーアグリカン複合体について分析するステップと、
フィブロネクチンーアグリカン複合体が前記脊椎試料内に検知された場合、前記患者を脊椎痛の治療のため選択するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項43】
前記脊椎試料は、洗浄、吸引、注入―吸引、生体組織検査、微小針吸引生検、コア生検、内視鏡又は切開生検のグループから選択された1つの技術を使用して得られ、
ここにおいて前記試料は、硬膜外、椎間板間、椎間板外、小関節円板内の空間のグループから選択された脊椎内の1つの空間から得られ、
そして前記試料は、大後頭孔、尾、椎弓間、経皮、内視鏡、切開、前側、後ろ側又は横方向のグループから選択された脊椎へのアプローチによって得られ、
ここにおいて、吸引液、組織、又は液体試料は、注入生理食塩水、他の注入された水溶液、注入された非水の液体又は溶液、滑膜液、髄核液、線維輪、硬膜外脂肪、骨、関節嚢、靭帯、又は腱のリストから選択され、
試料となった液体又は組織は、スポンジ、灯芯、綿球、縫合糸、親水性カテーテル、疎水性カテーテル、又は中空内腔カテーテルのグループから選択された追加の吸収剤、吸着剤、又は毛細官材料又はデバイスの助けにより獲得される、
ことを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
脊椎痛又は関節痛又は炎症を減少させるのに効果的な量のフィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬を含む医薬組成物。
【請求項45】
関節関連痛又は炎症を抑制又は減少させる方法であって、
a)請求項12に記載の方法に従って、関節関連痛の治療場所としてある関節を識別するステップと、
b)関節関連痛又は炎症を抑制又は減少させるため、前記治療場所に治療を施すステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項46】
前記治療は、外科的方法、又は、ステロイド又は非ステロイド抗炎症剤の投与からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
関節関連痛又は炎症を抑制又は減少させる方法であって、
患者の1つ以上の関節内のフィブロネクチンーアグリカン複合体を拮抗するため、効果的な量のフィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬を必要とする患者に投与するステップを有する、ことを特徴とする方法。
【請求項48】
前記フィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬は、患者の1つ以上の関節内において、フィブロネクチンーアグリカン複合体の形成を抑制又は減少させ、フィブロネクチンーアグリカン複合体を解離させ、フィブロネクチンーアグリカン複合体の生体活性を抑制又は減少させる、ことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記フィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬がポリペプチドである、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記フィブロネクチンーアグリカン複合体拮抗薬が、フィブロネクチン、アグリカン又はそれらのフラグメントから形成されるフィブロネクチンーアグリカン複合体のエピトープに結合する抗体からなる、ことを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体はフィブロネクチン又はアグリカンに比較して、フィブロネクチンーアグリカン複合体に選択的に結合する、ことを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
試料内のフィブロネクチンーアグリカン複合体を検知するためのポジティブ対照として使用される、フィブロネクチンとアグリカンの複合体からなる単離された複合体。
【請求項53】
前記複合体はアグリカン又はそのフラグメント、フィブロネクチン又はそのフラグメント、又はそれらの組合せのG1,IGD、G2,KS,CS1,CS2,又はG3領域を有する、ことを特徴とする請求項52に記載の複合体。
【請求項54】
前記複合体はフィブロネクチンのアグリカン結合フラグメントを含む、ことを特徴とする請求項52に記載の複合体。
【請求項55】
前記フィブロネクチン及び前記アグリカンは遺伝子組み換え型、天然、又は合成、又はそれらの組合せである、ことを特徴とする請求項52に記載の複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−505887(P2012−505887A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532140(P2011−532140)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/058976
【国際公開番号】WO2010/045024
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511092332)サイトニックス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】