説明

脚付き床部材

【課題】嵩張ることなく、効率良く運搬、保管でき、しかも現場で簡単且つ迅速に施工でき、作業者の施工能力に左右されないよう形成した脚付き床部材を提供する。
【解決手段】浴室に設置する床部材であり、下面1に脚2を設け、この脚2を起伏動作自在に形成する。この場合本発明は、脚2を倒伏時に受けて略水平状に配置させる脚受け部10を備えて形成すると良い。又本発明は、下面1に排水用の設備部11を下方に突き出させて設け、この排水用の設備部11より脚2を倒伏時に下方に突き出させて形成するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴室の床面を形成する床部材に関し、更に詳しくは洗い場パンや、浴槽載置用の浴槽パン、或いはこれらの防水パンを支持する架台等の床部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の床部材としては、例えば支持部材の両端側に、上下に移動可能に支持脚が取り付けられ、支持部材が防水床部に対して支持部材の長手方向にスライド自在に形成されているものがある(例えば特開平9−144093号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで戸建て住宅は、湿気対策等から一般に床下が高く設定されるから、この種の住宅の場合、浴室の床部材の脚は、例えば300mm〜500mm程度に長く形成されるのが通例である。従ってこのように長い脚が床部材に当初から設けられていると、脚が突き出されている分、運搬時、保管時にスペースが広く必要になり、一度に運搬、保管できる量が少なくなる。それ故この種の床部材は、嵩張らないよう運搬や保管を効率良く行え、しかも現場で簡便、迅速に施工できるよう形成されているのが望ましい。
【0004】
しかるに従来品は、上記の通り、支持部材に支持脚が起立状に取り付けられていたから、従来品によると上下方向の寸法が大きくなるのを避けられず、従って一度に大量の床部材を運搬、保管することができない、という問題点があった。その結果従来この種の床部材は、防水パンと脚とが別個に形成され、脚は現場で防水パンに取り付けて施工しているのが実情である。
而してこの種の床部材を施工する作業者の技術レベルは、必ずしも一様ではない。従って従来品の場合は、施工に手間暇がかかっただけではなく、脚の取り付け強度や取り付け状態等にばらつきが生じるのを避けられなかった。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の技術的課題は、嵩張ることなく、効率良く運搬、保管でき、しかも現場で簡単且つ迅速に施工でき、作業者の施工能力に左右されないよう形成した脚付き床部材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような技術的手段を採る。
【0007】
即ち本発明は、図1等に示されるように、浴室に設置される床部材であって、下面1に脚2が設けられ、この脚2が起伏動作自在に形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明の床部材としては、例えば洗い場形成用の洗い場パン、浴槽載置用の浴槽パン、又洗い場パン等の防水パンを支持する架台等がある。脚2は、通常、下面1の四隅に配置されるが、配置箇所や本数は任意である。又脚2は、下面1の範囲内に納まるよう、通常、内側に倒伏されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
又本発明は、脚2を倒伏時に受けて略水平状に配置させる脚受け部10を備えて形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
なぜならこれによると、運搬時や保管時に、倒伏状態の脚2を利用して本発明品を略水平に積み重ねることができ、安定した状態で運搬や保管が可能になるからである。脚受け部10は、下面1が下方に凸段差状に突き出されて形成されるのでも、或いは別部材が下面1に固定されることで形成されるのでも良い。
【0011】
又この場合本発明は、下面1に排水用の設備部11が下方に突き出されて設けられ、この排水用の設備部11より脚2が倒伏時に下方に突き出されて形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
なぜならこれによると、倒伏時に略水平状に配置される脚2で、排水用の設備部11を傷めることなく、効率良く積み重ねて運搬や保管ができるからである。ここで、排水用の設備部11としては、例えば排水トラップや排水溝等がある。
【0013】
又この場合本発明は、脚2を取り付けるためのベース部材3が下面1に設けられ、このベース部材3の脚取付箇所4が縦向きの対向片4aで形成され、この対向片4aの間に脚2が横軸5を中心に回動自在に取り付けられ、この横軸5と摺接して脚2を起伏動作時に上下方向に移動させるための長孔7が脚2にその長手方向に沿って形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0014】
なぜならこれによると、施工時に長孔7を利用して脚2を適宜の高さに配置でき、又脚2の上端を対向片4aの間の天面に突き当てて荷重を受け止めることができ、耐荷重性が良くなるからである。
【0015】
又本発明は、脚2を取り付けるためのベース部材3が下面1に設けられ、又下面1に排水用の設備部11が下方に突き出されて設けられ、上記のベース部材3に倒伏状態の脚2に代わって接地する支持部16が上記の排水用の設備部11より下方に突き出されて形成されているのが好ましい(請求項5)。
【0016】
なぜならこれによると、運搬や保管の際に脚2を倒伏させても、排水用の設備部11を傷めることなく、支持部16で支持できるからである。
【0017】
この場合本発明は、ベース部材3が倒伏時の脚2を収納させる溝状部3aを備え、支持部16が起立片16aで形成され、この起立片16aの間に脚2が横軸5を中心に回動自在に取り付けられているのが好ましい(請求項6)。
【0018】
なぜならこれによると、脚2を倒伏時にベース部材3の間に収納させて体裁良く配置でき、又運搬時や保管時の衝撃をベース部材3で受け止め、脚2を保護できるからである。
【0019】
又この場合本発明は、起立片16aに、脚2の高さを調節するための調節部21が形成され、この調節部21が、横軸5を縦方向に案内する縦向きのスリット21aと、このスリット21aに高さを違えて形成されている複数の横軸係止用の切り欠き21bとでなるのが好ましい(請求項7)。
【0020】
なぜならこれによると、ブロック材等の高さ調節部材を必要とすることなく、現場の状況に合わせて高さを簡単に変更でき、施工を容易化できるからである。
【0021】
更に本発明は、脚2が倒伏時にマグネット15で吸着自在に形成されているのでも良い(請求項8)。
【0022】
なぜならこの場合は、運搬や保管の際に脚2をマグネット15で仮止めでき、施工時は簡単に起立させることができるからである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に従って説明する。
【0024】
本発明は、浴室に設置される床部材であり、この実施形態では洗い場パンに実現したものである。図1等において、1は洗い場パン等の下面であり、2はこの下面1に起伏動作自在に設けられている脚である。
【0025】
又3は、脚2が取り付けられるベース部材である。このベース部材3は、この実施形態では長尺状に形成され、図3に示されるように、本発明の床部材の一辺に沿って平面視でコの字状に、下面1に設けられている。脚2は、この実施形態の場合、ベース部材3を介して起伏動作自在に形成されているものである。
【0026】
4は、ベース部材3の脚取付箇所である。この脚取付箇所4は、縦向きの対向片4aで形成され、この実施形態では図3に示されるように、下面1の四隅に配置されている。脚2は、対向片4aの間に、横軸5を中心に回動自在に取り付けられ、ベース部材3に沿って起伏動作自在に設けられている。なおこの実施形態では、脚2の先に、高さ調節用のアジャスターボルト6が設けられている。
【0027】
7は、横軸5と摺接して脚2を起伏動作時に上下方向に移動させるための長孔である。この長孔7は、脚2に、その長手方向に沿って形成されている。又8、9は、起立時に脚2を固定するためのボルト挿通孔である。ボルト挿通孔8は対向片4aの上部に形成され、ボルト挿通孔9は脚2の上部に形成されている。
【0028】
10は、脚2を倒伏時に受けて略水平状に配置させる脚受け部である。この脚受け部10は、この実施形態ではベース部材3に一体状に形成されている。
【0029】
11は、排水用の設備部としての排水トラップである。この排水用の設備部11は、下面1に下方に突き出されて設けられ、上記の脚2はこの排水用の設備部11より倒伏時に下方に突き出されて形成されている。
【0030】
次に本発明の作用を説明する。
この実施形態の本発明は、脚2が排水用の設備部11より下方に突き出されているから、図1に示されるように、脚2を倒伏させると、脚2の側面が接地し、排水用の設備部11が支障になることはない。作業者は、この状態で本発明品を積み重ねて運搬や保管する。
【0031】
そして浴室の床を施工する場合は、先ず作業者は横軸5を締め付けているナット(図示せず)を緩め、次に脚2を、横軸5を中心に引き降ろして起立させる。そしてボルト12(図2等参照)を、ボルト挿通孔8、9に通してナット(図示せず)で締め付け、脚2をベース部材3に固定する。この作業を四隅の脚2の全てについて行い、洗い場を施工する。なおこの場合作業者は、起立状の脚2を堅固に固定できるよう、例えばL字形金具13(図2等参照)で脚2の上部の両側を下面1に固定すると良い。
【0032】
以上の処において、本発明は、図5に示されるように、ベース部材3を省略して下面1に直に例えば蝶番14を用いて設けられるのでも良く、又脚2は図6に示されるように、倒伏時にマグネット15で吸着自在に形成されているのでも良い。マグネット15は、例えば脚2の下端部に取り付けられ、このマグネット15に対応する例えば下面1の位置に、防錆加工された鉄片等の磁性体(図示せず)が固定されるものである。
【0033】
又上例では、倒伏時に脚2が接地するよう形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図7等に示されるように形成されるのでも良い。
即ちこの実施形態の本発明は、上記のベース部材3に、倒伏状態の脚2に代わって接地する支持部16が排水用の設備部11より、長さD(図8、図9参照)だけ下方に突き出されて形成されているものである。
【0034】
ベース部材3は、この実施形態では倒伏時の脚2を収納させる溝状部3aを備えて形成されている。支持部16は、起立片16aで形成され、この起立片16aの間に脚2が横軸5を中心に回動自在に取り付けられている。支持部16の先端部には、脚2を起立させたときボルト12(図8、図9参照)を通して脚2を固定するためのボルト孔17が形成されている。なおこの実施形態の場合、脚2は溝状部3aに納められ、倒伏時は粘着テープ18で仮止めされている。
【0035】
この実施形態に係る本発明品の場合、運搬や保管時は支持部16が接地し、粘着テープ18で仮止めされた状態で運搬や保管される。この場合、支持部16は、排水用の設備部11より下方に突き出されているため、設備部11が支障となることはない。又施工時は、粘着テープ18を剥がすと共に、ナット19(図9、図10参照)を緩めて脚2を引き起こし、ボルト孔17にボルト12を通してナット19、20(図9参照)で締め付けて固定する。
【0036】
又本発明は、図10、図11に示されるように、上記の起立片16aに、脚2の高さを調節するための調節部21が形成されているのでも良い。この調節部21は、この実施形態では、横軸5を縦方向に案内する縦向きのスリット21aと、このスリット21aに高さを違えて形成されている複数の横軸係止用の切り欠き21bとで構成されている。この本発明の場合は、施工時にナット19を緩めて脚2を引き起こし、脚2の高さを調節した後、横長状のボルト孔17にボルト12を通し、ナット(図示せず)で締め付けて脚2を固定する。図11Aに示されるように、脚2は、調節部21の切り欠き21bの位置が下になるほど高くなり、同図Bに示されるように、上になると低くなる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、下面に脚を設け、この脚を起伏動作自在に形成しているものであるから、これによると嵩張ることなく効率良く運搬、保管でき、しかも現場で簡単且つ迅速に施工でき、又作業者の施工能力に左右されることなく確実に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の床部材の好適な一実施形態を示す脚倒伏時の正面図である。
【図2】同上床部材の脚起立時の正面図である。
【図3】同上床部材の要部平面図である。
【図4】同上床部材の短手方向の側から見た脚起立時の側面図である。
【図5】同上床部材の他の実施形態を示す要部正面図である。
【図6】同上床部材の他の実施形態を示す要部斜視図である。
【図7】同上床部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】図7の実施形態の要部斜視図である。
【図9】図7の実施形態の要部正面図である。
【図10】同上床部材の更に他の実施形態を示す要部斜視図である。
【図11】A、Bとも、図10の実施形態の作用を説明するための要部斜視図である。
【符号の説明】
1  下面
2  脚
3  ベース部材
4  脚取付箇所
4a 対向片
5  横軸
7  長孔
10 脚受け部
11 排水用の設備部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に設置される床部材であって、下面に脚が設けられ、この脚が起伏動作自在に形成されていることを特徴とする脚付き床部材。
【請求項2】
請求項1記載の脚付き床部材であって、脚を倒伏時に受けて略水平状に配置させる脚受け部を備えて形成されていることを特徴とする脚付き床部材。
【請求項3】
請求項2記載の脚付き床部材であって、下面に排水用の設備部が下方に突き出されて設けられ、この排水用の設備部より脚が倒伏時に下方に突き出されて形成されていることを特徴とする脚付き床部材。
【請求項4】
請求項3記載の脚付き床部材であって、脚を取り付けるためのベース部材が下面に設けられ、このベース部材の脚取付箇所が縦向きの対向片で形成され、この対向片の間に脚が横軸を中心に回動自在に取り付けられ、この横軸と摺接して脚を起伏動作時に上下方向に移動させるための長孔が脚にその長手方向に沿って形成されていることを特徴とする脚付き床部材。
【請求項5】
請求項1記載の脚付き床部材であって、脚を取り付けるためのベース部材が下面に設けられ、又下面に排水用の設備部が下方に突き出されて設けられ、上記のベース部材に倒伏状態の脚に代わって接地する支持部が上記の排水用の設備部より下方に突き出されて形成されていることを特徴とする脚付き床部材。
【請求項6】
請求項5記載の脚付き床部材であって、ベース部材が倒伏時の脚を収納させる溝状部を備え、支持部が起立片で形成され、この起立片の間に脚が横軸を中心に回動自在に取り付けられていることを特徴とする脚付き床部材。
【請求項7】
請求項6記載の脚付き床部材であって、起立片に、脚の高さを調節するための調節部が形成され、この調節部が、横軸を縦方向に案内する縦向きのスリットと、このスリットに高さを違えて形成されている複数の横軸係止用の切り欠きとでなることを特徴とする脚付き床部材。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の脚付き床部材であって、脚が倒伏時にマグネットで吸着自在に形成されていることを特徴とする脚付き床部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2004−92070(P2004−92070A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−251797(P2002−251797)
【出願日】平成14年8月29日(2002.8.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】