説明

脚立等の開き止め金具

【課題】一端を一方の開き体に軸着ピンで軸支し、先端部に他方の開き体に設けた係止ピンに係合する切り欠き溝を形成した横長片からなる脚立等の開き止め金具において、掛け易く、かつ外れ難いものとすることができるので、安全性を向上させることができるものである。
【解決手段】係止ピン17の中心と前記切り欠き溝18内でこの係止ピン17が収まるべき個所の中心は開き止め金具15を係止ピン17に掛ける前では、前者を軸着ピン方向からみて後者よりも遠ざけるようにずらして位置させ、前記切り欠き溝18はその開口18aの内方は前記軸着ピン16と反対側にえぐれる様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚立、脚立式足場、可搬式作業台など脚立等の開き止め金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脚立を例に取ると、従来、周知のように例えば一対の支柱脚間に複数の踏桟を適宜間隔で取り付けて梯子枠を形成し、該梯子枠の一対を対向させ上端を相互に回動自在に軸着し、軸着部である最上段の部分に踏板を設け、軸着部を回動することで一対の脚部を開閉すると同時に踏板を折り畳みまたは開いて使用し、または不使用時に収納するようにしたものである。
【0003】
ところで、このような脚立では、2つの開き止め金具があり、そのうち一つは下記特許文献にもあるような脚立の使用時に、梯子枠をハの字に開いた状態で、その開きを固定するものである。
【特許文献1】特開2010−90564号公報
【0004】
他は、適宜な先行技術文献はないが、不使用時に運搬、収納するために、梯子枠を双方合わせて閉じた状態でその開きを固定するものである。
【0005】
後者には、掛金30が使用され、図11に示すように、この掛金30は、一端を一方の梯子枠の支柱に端部を軸着ピン31で軸支し、先端部に他方の梯子枠の支柱に設けた係止ピン32に係合する切り欠き33形成した横長片34からなるものである。
【0006】
そして、切り欠き33は略U字形のものであるが、係止ピン32が挿入し易いように、係止ピン32の軸の芯と切り欠き33の中央は軌跡が合うように合致させ、さらに、切り欠き33は開口から直線的に奥に切り込むか、もしくは、横長片7の回転軌跡にあうような多少円弧を描くようなものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような掛金30は永年の使用でどうしてもガタが生じ、係止ピン32が切り欠き33から抜け出て、外れ易くなる。
【0008】
運搬中での掛金30の外れは、畳んでいる梯子枠相互が開く事態を招き、事故にもつながるおそれもある。
【0009】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、掛け易く、かつ外れ難いものとすることができるので、安全性を向上させることができる脚立等の開き止め金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、一端を一方の開き体に軸着ピンで軸支し、先端部に他方の開き体に設けた係止ピンに係合する切り欠き溝を形成した横長片からなる脚立等の開き止め金具において、前記係止ピンの中心と前記切り欠き溝内でこの係止ピンが収まるべき個所の中心は開き止め金具を係止ピンに掛ける前では、前者を軸着ピン方向からみて後者よりも遠ざけるようにずらして位置させ、前記切り欠き溝はその開口内方は前記軸着ピンと反対側にえぐれる様にしたことを要旨とするものである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、切り欠きはその開口から係止ピンが中に入る際には、開口外側縁が係止ピンの外周外側端に当たり、そのまま多少押し込まねばならないような状態となるが、前記開口をすぎて係止ピンは切り欠きの奥にすすむとえぐれ部分に収まり、前記押し込み状態は解除され、かつ、開口から抜け出難いものとなる。
【0012】
請求項2記載の発明は、切り欠き溝は、横長片の先端部に下向きに開口し、軸着ピン側から見て、横長片のこの切り欠き溝より先の部分の下側は少なくとも切り欠き溝開口部側を円弧に形成したことを要旨とするものである。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、前記請求項1記載の発明に加えて、開き止め金具を係止ピンに掛ける際には、切り欠き溝開口部側に形成した円弧部分がまずこの係止ピンに当たり、係止ピンは滑り込んで切り欠き溝内にスムーズに入り込んで行く。
【0014】
請求項3記載の本発明は、円弧には開口内方のえぐれが連続してS字カーブを描くことを要旨とするものである。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、前記請求項2の作用に加えて、切り欠き溝内に入り込む係止ピンはS字カーブに従って移動し、えぐれ部分にスムーズに移動する。
【0016】
請求項4記載の本発明は、横長片のこの切り欠き溝より先の部分は勾玉状であり、横長片の上下幅は切り欠きを挟んで切り欠き溝より先の部分の幅を切り欠き溝より軸着ピン側の幅よりも小さく形成し、また、切り欠き溝開口は切り欠き溝より先の方側に広げたことを要旨とするものである。
【0017】
請求項4記載の本発明によれば、横長片の上下幅は切り欠きを挟んで切り欠き溝より先の部分の幅を切り欠き溝より軸着ピン側の幅よりも小さく形成し、また、切り欠き溝開口は切り欠き溝より先の方側に広げたことで、切り欠き溝開口の間口は係止ピンに対向する側が広く形成でき、係止ピンを切り欠き溝内に入れ易いものとなる。
【0018】
請求項5記載の本発明は、係止ピンは、開き止め金具の掛着部を糸巻ドラム状のくびれを有するドラム体とすることを要旨とするものである。
【0019】
請求項5記載の本発明によれば、係止ピンは、開き止め金具の掛着部を糸巻ドラム状のくびれを有するドラム体とすることで、開き止め金具が掛る際に切り欠き溝内に入り込む係止ピンはよりすべり易いものとなり、えぐれ部分にスムーズに移動することができる。
【0020】
請求項6記載の本発明は、一方の開き体は、一対の支柱脚間に複数の踏桟を適宜間隔で取り付けて形成した梯子枠であり、該梯子枠の一対を対向させ上端を相互に回動自在に軸着した脚立とすることを要旨とするものである。
【0021】
請求項6記載の本発明によれば、本発明の開き止め金具を、一対の支柱脚間に複数の踏桟を適宜間隔で取り付けて形成した梯子枠の一対を対向させ上端を相互に回動自在に軸着した脚立に適用したものであり、脚立の不使用時には、開き止め金具により梯子枠を双方合わせて閉じた状態でその開きを固定することができ、運搬、収納に適した状態が得られる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明の脚立等の開き止め金具は、一端を一方の開き体に軸着ピンで軸支し、先端部に他方の開き体に設けた係止ピンに係合する切り欠き溝を形成した横長片からなる脚立等の開き止め金具において、掛け易く、かつ外れ難いものとすることができるので、安全性を向上させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図7〜図10は本発明の脚立等の開き止め金具を備えた脚立式作業台を示すもので、上部に手摺支柱部分4を延設した一対の支柱脚1間に踏桟2を適宜間隔で取付けて梯子状の主脚3を形成した。
【0024】
主脚3の一対を対向させ、一方の主脚3を長尺に、他方の主脚3をこれよりも多少短尺に形成し、長尺な主脚3の上端よりも多少下方位置に短尺な主脚3の上端を折畳金物9で回動自在に軸着した。このようにして、折畳金物9により、一対の主脚3は、それぞれ開き体となる。
【0025】
かかる支柱脚1の上部位置で主脚3間に作業床用天板6を折畳み自在に掛け渡す。作業床用天板6は、一端が長尺な主脚3に回動自在に軸着され、他端が水平の使用状態で短尺な主脚3よりも外方に突出する幅に形成する。図中7は、一端が天板6の下面に回動自在に軸着され、他端が短尺な主脚3に取付けてある踏桟2に回動自在に軸着されるアーム状のステイを示す。
【0026】
長尺な主脚3の上端に前記作業床用天板6の突出方向と同じ方向に突出する手摺枠8を主脚3に添う収納状態から上下方向に出没自在に取付ける。該手摺枠8はブラケット23により、軸支し、バネによりこのブラケット23の所定位置にロックできるようにした。
【0027】
図中15は開き体である一対の主脚3のうち、長尺な主脚3に軸着ピン16による回動軸着部を介して軸支される開き止め金具で、先端部に他方の開き体である短尺な主脚3に設けた係止ピン17に係合する切り欠き溝18を形成した横長片からなる。
【0028】
切り欠き溝18と係止ピン17の関係は、係止ピン17の中心αと前記切り欠き溝18内でこの係止ピン17が収まるべき個所の中心βは開き止め金具15を係止ピン17に掛ける前では、前者中心αを軸着ピン16の方向からみて後者中心βよりも遠ざけるようにずらして位置させた。
【0029】
また、前記切り欠き溝18はその開口18aの内方は前記軸着ピンと反対側にえぐれ部19を確保してえぐれる様にした。
【0030】
さらに、前記切り欠き溝18は、横長片の先端部に下向きに開口するものであり、軸着ピン16側から見て、横長片のこの切り欠き溝18より先の部分の下側は少なくとも切り欠き溝18の開口部側を円弧20に形成した。この円弧20には前記開口内方のえぐれ部19のえぐれが連続してS字カーブ21を描くものとなる。
【0031】
横長片のこの切り欠き溝18より先の部分γは勾玉状であり、横長片の上下幅は切り欠き溝18を挟んで切り欠き溝18より先の部分の幅を切り欠き溝18より軸着ピン16側の幅よりも小さく形成し、また、切り欠き溝18の開口は切り欠き溝18より先の方側に広げるようにした。
【0032】
また、横長片の上辺で前記切り欠き溝18の上方に摘み片22を手前側に直角に曲げ形成することで一体に設けた。
【0033】
図5に示すように、係止ピン17は開き止め金具15の掛着部を糸巻ドラム状のくびれを有するドラム体17aとした。このくびれを利用して係止ピン17は開き止め金具15の切り欠き溝18の開口部から内方のえぐれ部19に入り込む。
【0034】
また、図示は省略するが、開き止め金具15の回転方向と直角方向のアソビを設ける為、軸着ピン部16にスブリングワッシャーを2枚を開き止め金具15を挟む様に仕込んである。これにより開き止め金具15の回転方向と直角方向の左右にアソビができ、より開き止め金具15を掛けやすくしている。
【0035】
次に使用法について説明する。不使用時には図5、図10に示すように長尺な主脚3と短尺な主脚3は折畳金物9を中心軸として平行に折畳まれている。
【0036】
この状態で、作業床用天板6とステイ7は、一端がそれぞれの主脚3との回動軸着部を介して回動し、長尺な主脚3と短尺な主脚3との間で他端が上方に移動して扁平に折畳まれている。
【0037】
この状態から作業台を使用するには、長尺および短尺な主脚3を折畳金物9を介して図7に示すように左右に回動し全体をハ字状に広げれば、主脚3の広がりに追随して作業床用天板6とステイ7もそれぞれの主脚3との軸着部を中心にして下方に回動し、長尺および短尺な主脚3,3の間で水平位置まで移動する。
【0038】
この水平位置で作業床用天板6は、途中が主脚3に設けてある踏桟2を使用した天板受け材の上に載置し、この天板受け材で下方から支承される。そして、作業床用天板6は、回動軸着部とは反対側の先端が主脚3よりも外方に突出するから、壁面などの作業箇所に近接して作業床用天板6を位置させることができ、作業性の向上が図れる。
【0039】
また、対向する主脚3,3は、一方を長尺に他方を短尺に形成してあるから、上部の回動軸着部が長尺な主脚3の上端に位置せず、これよりも下方位置となるから、長尺な主脚3に短尺な主脚3が寄りかかるような状態となり、対向する主脚を上端で軸着する場合に比較して安定性を増すことができる。
【0040】
手摺枠8のセットは、主脚3に添って収納されている手摺枠8を回転させて引き上げる。略水平位置で手摺枠8はブラケット23の切り欠きにピンが入り込み回動が阻止されてこの略水平位置に係止される。
【0041】
よって、作業中に手摺枠8が外れるおそれがなく、作業の安全を確保できる。また、手摺枠8のセットは、上方への引き出しと、水平方向への回動とで行えるから、作業床用天板6上に載っている作業員の邪魔になることもない。
【0042】
そして、手摺枠8は、主脚1から外方水平方向に突出している作業床用天板6の上方に位置するから、作業床用天板6の突出部分に載って作業する作業員の安全を確保できる。
【0043】
使用後、図10に示すように長尺な主脚3と短尺な主脚3は折畳金物9を中心軸として平行に折畳む際には、開き止め金具15を係止ピン17に掛けて主脚3同士の開きを防止する。
【0044】
摘み片22を指で挟んで、開き止め金具15を回動し、切り欠き溝18はその開口18aから係止ピン17が中に入る際には、開口18aの外側縁が係止ピン17の外周外側端に当たり、そのまま多少押し込まねばならないような状態となるが、前記開口18aをすぎて係止ピン17は切り欠き溝18の奥にすすむとえぐれ部19に収まり、前記押し込み状態は解除され、かつ、開口18aから抜け出難いものとなる。
【0045】
その結果、開き止め金具15は係止ピン17から外れ難いものとなり、運搬途中で主脚3同士が開いてしまうことはない。
【0046】
このような動きは、係止ピン17の糸巻ドラム状のくびれを有するドラム体17aにより、摩擦抵抗が少なくスムーズに行うことができる。
【0047】
一方、使用に際して開き止め金具15を係止ピン17から外すには、逆の動作で、摘み片22を指で挟んで開き止め金具15を上方に引き上げるように回動すれば、係止ピン17はS字カーブ21の出っ張りを乗り越えながらえぐれ部19から抜け出て、切り欠き溝18から外れる。
【0048】
前記実施形態は本発明の開き止め金具を脚立式作業台に適用した例について説明したが、このような脚立式作業台のみならず、脚立、脚立式足場、可搬式作業台など開き体相互の開きを防止する場合において、適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の脚立等の開き止め金具の1実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の脚立等の開き止め金具の1実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の脚立等の開き止め金具の1実施形態を示す側面図である。
【図4】本発明の脚立等の開き止め金具の1実施形態を示す要部の正面図である。
【図5】本発明の脚立等の開き止め金具と係止ピンの関係を示す平面図である。
【図6】本発明の脚立等の開き止め金具を備えた脚立式作業台の要部の側面図である。
【図7】本発明の脚立等の開き止め金具を備えた脚立式作業台の側面図である。
【図8】本発明の脚立等の開き止め金具を備えた脚立式作業台の正面図である。
【図9】本発明の脚立等の開き止め金具を備えた脚立式作業台の背面図である。
【図10】本発明の脚立等の開き止め金具を備えた脚立式作業台の折り畳んだ状態の側面図である。
【図11】従来例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 支柱脚 2 踏桟
3 主脚 4 手摺支柱部分
5 手摺 6 作業床用天板
7 ステイ 8 手摺枠
9 折畳金物 10 案内突起
11 ガイド長孔 12 支持部材
13 固定金具 14 係合部材
15 開き止め金具 16 軸着ピン
17 係止ピン 17a ドラム体
18 切り欠き溝
18a 開口 19 えぐれ部
20 円弧 21 S字カーブ
22 摘み片 23 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を一方の開き体に軸着ピンで軸支し、先端部に他方の開き体に設けた係止ピンに係合する切り欠き溝を形成した横長片からなる脚立等の開き止め金具において、前記係止ピンの中心と前記切り欠き溝内でこの係止ピンが収まるべき個所の中心は開き止め金具を係止ピンに掛ける前では、前者を軸着ピン方向からみて後者よりも遠ざけるようにずらして位置させ、前記切り欠き溝はその開口内方は前記軸着ピンと反対側にえぐれる様にしたことを特徴とする脚立等の開き止め金具。
【請求項2】
切り欠き溝は、横長片の先端部に下向きに開口し、軸着ピン側から見て、横長片のこの切り欠き溝より先の部分の下側は少なくとも切り欠き溝開口部側を円弧に形成した請求項1記載の脚立等の開き止め金具。
【請求項3】
円弧には開口内方のえぐれが連続してS字カーブを描く請求項2記載の脚立等の開き止め金具。
【請求項4】
横長片のこの切り欠き溝より先の部分は勾玉状であり、横長片の上下幅は切り欠き溝を挟んで切り欠き溝より先の部分の幅を切り欠き溝より軸着ピン側の幅よりも小さく形成し、また、切り欠き溝開口は切り欠き溝より先の方側に広げた請求項2記載の脚立等の開き止め金具。
【請求項5】
係止ピンは、開き止め金具の掛着部を糸巻ドラム状のくびれを有するドラム体とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の開き止め金具。
【請求項6】
一方の開き体は、一対の支柱脚間に複数の踏桟を適宜間隔で取り付けて形成した梯子枠であり、該梯子枠の一対を対向させ上端を相互に回動自在に軸着した脚立とする請求項1記載の脚立等の開き止め金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−225034(P2012−225034A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92705(P2011−92705)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(597144484)ジーオーピー株式会社 (50)
【Fターム(参考)】