説明

脱感作性歯磨剤

そのような組成物のための口に許容できるビヒクル、有効な療法的量のハロゲン化ジフェニルエーテルを含む抗細菌化合物、有効な療法的量のカリウム塩を含む抗過敏症剤、および抗細菌化合物のための可溶化剤を含む口腔用組成物であって、可溶化剤がラウリル硫酸ナトリウムおよびシクロデキストリンを組み合わせで含む、前記口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 象牙質過敏症は、露出した象牙質の熱刺激(熱いまたは冷たい)、浸透圧刺激、触覚刺激、および/または熱、浸透圧および触覚刺激の組み合わせによるような物理的な刺激に応答する急性の、限局性の歯の痛みとして定義される。
【0002】
[0002] 当技術において、カリウム塩は象牙質過敏症の処置において有効であることが知られている。例えば、先行技術は、カリウム塩、例えば硝酸カリウム、塩化カリウムまたはリン酸カリウム類を含む練り歯磨きが歯のブラッシングの後数週間の間歯を脱感作することを開示している。敏感な象牙質の下にある歯髄神経の付近における細胞外カリウム濃度の上昇が、局所的に適用されたカリウム塩類を含む口腔用製品の療法的脱感作作用の原因であることが報告されている。開いた象牙質の細管の中に入る、およびそれから出るカリウムイオンの受動拡散のため、有効成分の繰り返しの適用が、歯髄神経の付近において必要な濃度を築き上げるのに必要である。
【0003】
[0003] 歯の過敏症の処置に加え、歯のプラークを制御するための歯磨剤を提供するのが望ましい。プラークは、不規則または不連続な点において、例えばざらざらした歯石の表面上で、歯肉線および同様のものにおいて粘り強く接着する。見苦しいことに加えて、プラークは歯肉炎および歯周疾患の他の形の発生に関わっていることが示されている。
【0004】
[0004] 当技術において、多種多様な抗細菌剤がプラーク形成ならびにプラーク形成と関係する口の感染症および歯の疾患を妨げることが示唆されている。例えば、ハロゲン化ヒドロキシジフェニルエーテル化合物、例えばトリクロサンはそれらの抗細菌活性に関して当技術で周知であり、口腔中の細菌の蓄積によるプラーク形成に対抗するための口腔用組成物において用いられてきた。抗細菌剤の有効性は、歯および歯茎の軟組織領域へのそれの送達ならびに歯および歯茎の軟組織領域によるそれの取り込みに依存している。
【0005】
[0005] 一部の最近の市販の歯磨配合物において、トリクロサンが効果的に抗プラークの有効性および歯肉炎に対する保護の利益を送達することができるように、トリクロサンがラウリル硫酸ナトリウム(SLS)の存在下で可溶化されており、それは発泡およびクリーニングの利益を提供する界面活性剤である。
【0006】
[0006] しかし、カリウム塩類、例えば塩化カリウムまたはリン酸カリウム類は、水中で不溶性である分子であるラウリル硫酸カリウムの形成のため、ラウリル硫酸ナトリウムと共存できない。加えて、この組み合わせは結果としてほとんど発泡を示さない歯磨剤をもたらす。
【0007】
[0007] ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン(HPβCD)は、そのトリクロサンを含む疎水性成分の水中での溶解度を増大させる能力に関して知られている分子である。しかし、2種類の可溶化剤、界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)およびシクロデキストリンの組み合わせでの使用は、結果としてどちらか一方を同じ濃度で用いた場合よりもはるかに低い疎水性成分の溶解度をもたらすことが報告されている。
【0008】
[0008] 従って、当技術において、カリウムイオンを含む口腔用組成物中に含まれる抗細菌化合物の歯の組織への送達および歯の組織による取り込みの手段を提供して脱感作性歯磨剤により抗細菌剤の療法的有効性を提供する手段を提供する必要性が存在する。
【0009】
[0009] 当技術において、療法的利益および脱感作の利益の両方を提供することができる歯磨組成物の必要性も存在する。
[0010] さらに、当技術において、トリクロサンからの療法的利益およびカリウム塩からの脱感作の利益の両方を提供することができ、さらに優れたトリクロサンの溶解度および許容できるレベルの発泡を提供することができる歯磨剤組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
[0011] 本発明は脱感作性歯磨剤に、特に抗細菌の有効性を加えて有するそのような歯磨剤に関する。
[0012] 第1の観点において、この発明は、そのような組成物のための口に許容できるビヒクル、有効な療法的量の抗細菌化合物、有効な療法的量のカリウム陽イオンの源、陰イオン性界面活性剤およびシクロデキストリンを含む口腔用組成物を提供する。
【0011】
[0013] 抗細菌化合物はハロゲン化ジフェニルエーテル、典型的には2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含んでいてよい。2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルは、組成物中に組成物の重量に基づいて0.05重量%〜2重量%の濃度で存在していてよい。
【0012】
[0014] カリウム陽イオンの源は水溶性カリウム塩、例えば塩化カリウムであってよい。カリウム塩は、組成物中に組成物の重量に基づいて3重量%〜15重量%の濃度で存在していてよい。
【0013】
[0015] 陰イオン性界面活性剤は典型的にはラウリル硫酸ナトリウムである。ラウリル硫酸ナトリウムは、組成物中に組成物の重量に基づいて0.5重量%〜2重量%の濃度で存在していてよい。
【0014】
[0016] シクロデキストリンは典型的にはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンである。シクロデキストリンは、組成物中に組成物の重量に基づいて1重量%〜15重量%の濃度で存在していてよい。
【0015】
[0017] 口腔用組成物は典型的には歯磨剤である。
[0018] 第2の観点において、この発明は、そのような組成物のための口に許容できるビヒクル、0.05重量%〜2重量%の2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含む抗細菌化合物、0.5重量%〜20重量%のカリウム陽イオンの源、0.5重量%〜2重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む陰イオン性界面活性剤、および1重量%〜15重量%のヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む歯磨組成物を提供し、全ての重量は組成物の重量に基づいている。
【0016】
[0019] 第3の観点において、この発明は口腔ケア組成物中の2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルのための可溶化剤を提供し、可溶化剤はラウリル硫酸ナトリウムおよびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを組み合わせで含む。
【0017】
[0020] 第4の観点において、この発明はハロゲン化ジフェニルエーテルをカリウムイオンの源およびラウリル硫酸ナトリウムを含む歯磨組成物中で可溶化する方法を提供し、その方法は組成物にシクロデキストリンを添加することを含む。ハロゲン化ジフェニルエーテルは2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含んでいてよい。シクロデキストリンはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含んでいてよい。
【0018】
[0021] 第5の観点において、この発明は、そのような組成物のための口に許容できるビヒクル、有効な療法的量のハロゲン化ジフェニルエーテルを含む抗細菌化合物、有効な療法的量のカリウム塩を含む抗過敏症剤(anti−hypersensitivity agent)、および抗細菌化合物のための可溶化剤を含む口腔用組成物を提供し、可溶化剤はラウリル硫酸ナトリウムおよびシクロデキストリンを組み合わせで含む。
【0019】
[0022] ハロゲン化ジフェニルエーテルは2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含んでいてよい。2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルは、組成物中に組成物の重量に基づいて0.05重量%〜2重量%の濃度で存在していてよい。
【0020】
[0023] カリウム塩は水溶性であってよい。カリウム塩は塩化カリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方であってよい。
[0024] 可溶化剤は、組成物の重量に基づいて0.5重量%〜2重量%のラウリル硫酸ナトリウムおよび1重量%〜15重量%のヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含んでいてよい。
【0021】
[0025] 本発明は、口腔に本発明に従う口腔用組成物を投与することを含む、象牙質過敏症と関係する不快感および痛みが低減された、細菌性プラークの蓄積の処置および予防のための方法も提供する。
【0022】
[0026] 本発明は、シクロデキストリン、特に置換されたシクロデキストリン、より詳細にはヒドロキシアルキル−ベータ−シクロデキストリン、最も詳細にはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンの、陰イオン性界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウム、カリウム塩およびハロゲン化ジフェニルエーテル、例えば2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(“トリクロサン”)を含む水溶液中への組み込みは、沈殿の形成を予想外に低減させ、増大したトリクロサンの溶解度および増大した全体的な発泡を示したという本発明者らによる発見に基礎を置いている。これらの技術的な効果は、これらの構成要素を含む歯磨組成物中でも示されている。増大したトリクロサンの溶解度は、結果として歯磨組成物中のトリクロサンの有効性の対応する増大をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0027] 本発明は、そのような組成物のための口に許容できるビヒクル、有効な療法的量の抗細菌化合物、有効な療法的量のカリウム陽イオンの源、陰イオン性界面活性剤およびシクロデキストリンを含む口腔用組成物、例えば歯磨剤を提供する。組成物はその中に含まれる抗細菌化合物の歯の組織による増大した取り込みを示すことができ、象牙質過敏症と関係する不快感および痛みを除去する、または実質的に低減する。
【0024】
[0028] 本発明者らは、沈殿が形成される傾向があると考えられるため通常はカリウム塩類と共存できない陰イオン性界面活性剤の、シクロデキストリンとの組み合わせは、たとえカリウム塩の存在下であっても抗細菌化合物のための可溶化剤として働くくことができることを見出した。陰イオン性界面活性剤およびシクロデキストリンの組み合わせは、抗細菌化合物および抗過敏症剤としてカリウム塩を含む歯磨化合物において用いることができる。発明者らは、溶液中の抗細菌化合物をそれが組成物中で沈殿しないように保持することにより、歯による抗細菌化合物の送達および取り込みが大きく増進されることを見出した。
【0025】
[0029] 口腔用組成物は、陰イオン性界面活性剤およびシクロデキストリンの混合物を含む。有用なシクロデキストリン類には、アルファ−CD、ベータ−CD、ガンマ−CD、ヒドロキシプロピル−アルファ−シクロデキストリン(HP−アルファ−CD)、HP−ベータ−CD、HP−ガンマ−CDおよびトリメチル−ベータ−CD(TM−ベータ−CD)、特にヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンが含まれる。
【0026】
[0030] 1態様において、組成物は組成物の重量に基づいて0.5重量%〜2重量%の範囲の濃度を有する陰イオン性界面活性剤および組成物の重量に基づいて1重量%〜15重量%の範囲の濃度を有するシクロデキストリンを含む。別の態様において、組成物は組成物の重量に基づいて1.25重量%から1.75重量%までの範囲の濃度を有する陰イオン性界面活性剤および組成物の重量に基づいて3重量%〜10重量%の範囲の濃度を有するシクロデキストリンを含む。1態様において、陰イオン性界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム(“SLS”)であり、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンである。
【0027】
[0031] カリウムイオンの存在下で、1態様のSLS陰イオン性界面活性剤/ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン混合物は、特に抗細菌化合物がハロゲン化ジフェニルエーテル、例えば2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含む場合、抗細菌化合物が溶液中に留まるように、抗細菌化合物のための可溶化剤として働き、それは抗細菌化合物の有効な送達に不可欠である。これは、抗細菌化合物をカリウムイオンを含む溶液から沈殿させるラウリル硫酸ナトリウムを含む特定の口腔用組成物とは異なっている。
【0028】
[0032] この発明において有用である抗細菌剤には、水に不溶性の非陽イオン性化合物、特にハロゲン化ジフェニルエーテル類、フェノールおよび同族体、モノおよびポリアルキルならびに芳香族ハロフェノール類、ビスフェノール系化合物、ならびにレゾルシノールおよびそれの誘導体が含まれる。より詳細には、本発明の口腔ケア組成物の調製に有用であるハロゲン化ジフェニルエーテル類には、抗プラークの有効性および安全性の考慮すべき事柄に基づいて、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(トリクロサン)および2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジブロモ−ジフェニルエーテルが含まれる。1態様において、抗細菌化合物は2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(“トリクロサン”)である。
【0029】
[0033] フェノールおよびその同族体、モノおよびポリアルキルならびに芳香族ハロフェノール類、レゾルシノールおよびそれの誘導体ならびにビスフェノール系化合物を含む抗細菌化合物は米国特許第5,368,844号において完全に開示されており、その開示をそのまま本明細書に援用する。フェノール化合物にはn−ヘキシルレゾルシノールおよび2,2’−メチレンビス(4−クロロ−6−ブロモフェノール)も含まれる。
【0030】
[0034] ハロゲン化ジフェニルエーテルまたはフェノール系抗細菌化合物は、本発明の口腔用組成物中に有効な療法的量で存在する。1態様において、有効な療法的量は組成物の重量に基づいて0.05重量%〜2.0重量%の範囲である。別の態様において、有効な療法的量は組成物の重量に基づいて0.1重量%〜1重量%の範囲である。
【0031】
[0035] 脱感作性カリウムイオンの源は、一般には硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウムおよびシュウ酸カリウムを含む水溶性カリウム塩である。1態様において、水溶性カリウム塩は硝酸カリウムである。別の態様において、水溶性カリウム塩は塩化カリウムである。そのような態様において、カリウム塩は一般に、歯磨剤の構成要素の1種類以上の中に組成物の重量に基づいて0.5重量%〜20重量%の範囲の濃度で組み込まれている。別のそのような態様において、カリウム塩は一般に、歯磨剤の構成要素の1種類以上の中に組成物の重量に基づいて3重量%〜15重量%の範囲の濃度で組み込まれている。
【0032】
[0036] 本発明の実施に従う口腔用組成物の調製において、湿潤剤を有する水相を含む口に許容できるビヒクルが存在する。湿潤剤は、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールおよびそれらの混合物の内の1種類以上を含む。1態様において、水は組成物の重量に基づいて少なくとも10重量%の量で存在する。別の態様において、水は組成物の重量に基づいて少なくとも30重量%〜60重量%の量で存在する。さらに別の態様において、湿潤剤の濃度は典型的には合計で口腔用組成物の40〜60重量%である。
【0033】
[0037] 歯磨組成物、例えば練り歯磨きおよびゲルは、典型的には研磨性物質も含む。1態様において、研磨性物質には20ミクロンまでの粒径を有する結晶質シリカ、例えば商業的に入手可能であるZeodent 115、もしくはZeodent 165、シリカゲルまたはコロイド状シリカが含まれる。別の態様において、研磨性物質には複合非晶質アルカリ金属アルミノシリケート類、水和アルミナ、メタリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸水素カルシウム二水和物のような組成物が含まれる。1態様において、研磨性物質は本発明の半固体またはペースト状の歯磨組成物中に15重量%〜60重量%の量で含まれる。別の態様において、本発明の組成物は組成物の重量に基づいて20重量%〜55重量%の範囲の濃度を有する研磨性物質を含む。
【0034】
[0038] 本発明に従って調製された歯磨剤は、典型的には天然の、または合成のシックナーを含む。適切なシックナーには、アイリッシュモス(Irish moss)、i−カラギーナン(i−carrageenan)、トラガカントガム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(ナトリウムCMC)およびコロイド状シリカが含まれる。1態様において、シックナーの濃度は組成物の重量に基づいて0.1重量%〜5重量%の範囲である。別の態様において、シックナーの濃度は組成物の重量に基づいて0.5重量%〜2重量%の範囲である。
【0035】
[0039] 口腔用組成物はフッ化物イオンの源またはフッ化物を提供する化合物を抗齲食剤として含んでいてもよい。1態様において、フッ化物イオン組成物は口腔用組成物の25ppmから5,000ppmまでの範囲のフッ化物イオンを供給するのに十分な量で提供される。別の態様において、フッ化物イオン組成物は口腔用組成物の500ppmから1500ppmまでの範囲のフッ化物イオンを供給するのに十分な量で提供される。代表的なフッ化物イオンを提供する化合物には、無機フッ化物塩類、例えば可溶性アルカリ金属塩類、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウムおよびモノフルオロリン酸ナトリウム、ならびにスズフッ化物類、例えばフッ化第一スズおよび塩化第一スズが含まれる。
【0036】
[0040] 抗細菌増進剤も口腔用組成物中に含まれてよい。1態様において、抗細菌増進剤は本発明の組成物中に組成物の重量に基づいて0.05重量%〜3重量%の範囲の重量で組み込まれる。別の態様において、抗細菌増進剤は本発明の組成物中に組成物の重量に基づいて0.1重量%〜2重量%の範囲の重量で組み込まれる。
【0037】
[0041] 抗細菌剤、例えばトリクロサンとの組み合わせでの抗細菌増進剤の使用は、例えば米国特許第5,188,821号および米国特許第5,192,531号のように当技術で既知であり、そのそれぞれを本明細書にそのまま援用する。1態様において、抗細菌増進剤は1,000から5,000,000g/モルまでの範囲の分子量を有する陰イオン性ポリマー性ポリカルボキシレートである。別の態様において、抗細菌増進剤は30,000から2,500,000g/モルまでの範囲の分子量を有する陰イオン性ポリマー性ポリカルボキシレートである。1態様において、陰イオン性ポリマー性ポリカルボキシレート類は一般にそれらの遊離酸の形で用いられる。別の態様において、陰イオン性ポリマー性ポリカルボキシレート類は部分的に、または完全に中和された水溶性アルカリ金属塩、例えばナトリウム、カリウム、またはアンモニウム塩の形で用いられる。1態様において、抗細菌増進剤は、無水マレイン酸またはマレイン酸と別の重合可能なエチレン的に(ethylenically)不飽和な単量体との1:4〜4:1コポリマー類を含む。1つのそのような態様において、無水マレイン酸コポリマーには、30,000から約(abut)2,500,000g/モルまでの範囲の分子量(“M.W.”)を有するメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーが含まれる。これらのコポリマー類は、例えばISP CorporationのGantrez(登録商標)AN 139(M.W.1,000,000g/モル)、Gantrez(登録商標)AN 119(M.W.200,000g/モル)、Gantrez(登録商標)ES−225(M.W.100,000〜150,000g/モル)およびGantrez(登録商標)S−97医薬グレード(Pharmaceutical Grade)(M.W.2,000,000g/モル)を含め、商標Gantrezの下で商業的に入手可能である。
【0038】
[0042] あらゆる適切な香味または甘味物質も本発明の口腔用組成物の調製において用いることができる。適切な香味成分の例には、香味油、例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、チョウジ、セージ、ユーカリ、マヨラマ、桂皮、レモン、オレンジの油、およびサリチル酸メチルが含まれる。適切な甘味料には、スクロース、ラクトース、マルトース、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、サッカリンおよび同様のものが含まれる。適切には、香味および甘味料はそれぞれ、または合わせて口腔用組成物の0.1重量%〜5重量%を構成していてよい。
【0039】
[0043] 過酸化尿素、過酸化カルシウム、および過酸化水素を含む白化剤、保存剤、ビタミン類、例えばビタミンB6、B12、EおよびK、シリコン類、クロロフィル化合物、ならびに歯の過敏症の処置のためのカリウム塩類、例えば硝酸カリウムおよびクエン酸カリウムのような様々な他の物質を、この発明の口腔用製剤に組み込むことができる。これらの薬剤は、存在する場合、本発明の組成物中に、望まれる特性および特徴に実質的に悪影響を及ぼさない量で組み込まれる。
【0040】
[0044] 本発明は、口腔に本明細書で論じた口腔用組成物を投与することによる、象牙質過敏症と関係する不快感および痛みが低減された、細菌性プラークの蓄積の処置および予防のための方法も提供する。
【0041】
[0045] 本発明の口腔用組成物の製造は、そのような組成物を製造するための様々な標準的な技法のいずれかにより成し遂げられる。歯磨剤を作るために、湿潤剤、例えばグリセリン、グリセロール、ソルビトール、およびプロピレングリコールの1種類以上、増粘剤、ならびに抗細菌剤、例えばトリクロサンを含むビヒクルを調製し、ビヒクルならびに陰イオン性界面活性剤、例えばSLS、およびシクロデキストリンを添加し、続いて研磨剤およびフッ化物塩類をプレミックスに混ぜ合わせる。最後に香味料を混合し、pHを6.8〜7.0に調整する。
【0042】
[0046] 下記の実施例は本明細書をさらに説明するものであるが、本発明がそれに限定されるわけでは無いことは理解される。本明細書で、および添付された特許請求の範囲において言及される全ての量および比率は、別途示さない限り重量によるものである。
【実施例】
【0043】
実施例1
[0047] ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、塩化カリウムおよびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む4種類の水溶液を調製した。これらの成分に関するそれらの組成(全ての量は重量%におけるものである)を、それらの外観および発泡特性と一緒に下記の表1に示す。
【0044】
表1: ラウリル硫酸ナトリウム、塩化カリウムおよびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む水溶液ならびにそれらの物理的外観および発泡性状。
【0045】
【表1】

【0046】
[0048] 1%SLSおよび1%KClを含む処方番号1は厚い沈殿の形成を示し、ほとんど発泡を示さなかった。沈殿形成および発泡に対するシクロデキストリンの影響を実証するため、処方番号2、3および4を試験した。これらの処方は、増大するレベルのKCl(1%から1.5%までのKCl)を1%SLSおよび10%ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンと一緒に含んでいた。溶液は、KCl濃度1.25%までは透明のままであった。それを超えると、1.5%KClにおいて、溶液はわずかに濁った;しかし、濁りはシクロデキストリンを全く含まない処方番号1と比較してかなり低減していた。加えて、シクロデキストリンを含む溶液は、シクロデキストリンを全く含まない処方番号1と比較してより高い量の泡を示した。
【0047】
[0049] 1.5%SLSおよび3.75%KCl(歯磨剤におけるこれらの構成要素の典型的な濃度に相当する)を含むさらなる水溶液、処方番号5を表2に示す。これらの薬剤が水中に存在する場合、溶液は沈殿の形成により濁って見え、発泡を示さなかった。しかし、10%ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを添加した類似の溶液(処方番号6、表2)は、濁りがより少なく見え、より低い量の沈殿を有し、増大した発泡を示した。
【0048】
表2:ラウリル硫酸ナトリウム、塩化カリウムおよびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む水溶液ならびにそれらの物理的外観および発泡性状。
【0049】
【表2】

【0050】
[0050] 本発明者らは、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンにより低減された沈殿の形成および増大された発泡を、より多くの遊離のSLSをもたらすヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンの沈殿を妨害する能力の結果であると考えた。もしこの因果関係(attribution)が正しければ、トリクロサンの溶解度は溶液中のSLSの利用可能性に依存するため、本発明者らはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンの添加はトリクロサンの溶解度を増大させそうであると考えた。
【0051】
実施例2
[0051] 下記の実験からの結果は、KClの存在下および非存在下での、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンの添加による、トリクロサンの増大した溶解度を確証した。
【0052】
[0052] 実験の第1セットにおいて、KClの存在/非存在下におけるトリクロサンの溶解度を濾過の方法論を用いて測定し、濾液をトリクロサンに関して分析した。表3に示した溶解度の結果は、SLSの添加がトリクロサンの溶解度を(SLSを含まない対照と比較して)増大させたことを示唆している。KClの添加は沈殿を示し、濾液の分析はトリクロサンの(1.5%SLSのみと比較して)減少した溶解度を示した。これらの結果は、前の実験1の結果に基づいて予想された通りであった。
【0053】
表3:ラウリル硫酸ナトリウムを単独または塩化カリウムとの組み合わせのどちらかで含む水溶液中のトリクロサンの溶解度。
【0054】
【表3】

【0055】
[0053] 下記の実験において、トリクロサンの溶解度を増大する濃度のヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン(SLS無し、KCl無し)を用いて測定した。その結果を表4に示し、それはトリクロサンの溶解度が用量依存的様式で増大したことを明確に示していた。
【0056】
表4:ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンのみを含む水溶液中でのトリクロサンの溶解度
【0057】
【表4】

【0058】
[0054] 次の実験において、SLSおよびKClと一緒でのヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンの存在下でトリクロサンの溶解度を測定した。表5で示したその結果は、シクロデキストリンの存在下でのトリクロサンの増大した溶解度を明確に示しており;溶解した量も用量依存的様式で増大した。
【0059】
表5:SLS/KClおよびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む水溶液中でのトリクロサンの溶解度。
【0060】
【表5】

【0061】
[0055] これらの実験のこれらの結果は、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを組み込むことにより、配合物中のトリクロサンの溶解度を向上させることができることを示唆している。
【0062】
実施例3:比較例1
[0056] 典型的な有効成分および口に許容できるビヒクルを含む歯磨配合物を調製した。
【0063】
[0057] 実施例1に従って、歯磨組成物は表6に示した配合を有しており、特にトリクロサン、SLS、KCl、およびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを示した量で含んでいた。比較歯磨組成物は表6で比較例1に関して示した配合を有しており、特にトリクロサン、SLS、およびKClを示した量で含んでいたが、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンは含んでいなかった。
【0064】
[0058] 組成物を、それぞれの組成物中のトリクロサンの溶解度を決定するために試験し、その結果を表7に示す。
[0059] 表7から、歯磨組成物へのヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンの添加によりトリクロサンの溶解度が増大したことを明確に理解することができる。実施例1の歯磨組成物からのトリクロサンの可溶化された量は、表7で示したように、水で3倍希釈した後でさえも測定可能であった。
【0065】
表6:SLSおよびKClを含み、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む、および含まない、基本型歯磨剤の配合物。
【0066】
【表6】

【0067】
表7:SLSおよびKClを含み、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む、および含まない、基本型歯磨剤の配合物の希釈溶液中のトリクロサンの溶解度。
【0068】
【表7】

【0069】
[0060] まとめると、これらの結果はKClおよびSLSの存在下でのトリクロサンの溶解度の増大に対するヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンの予想外の利益を明確に示している。カリウム塩が脱感作の利益を送達することができるであろう一方で、今や溶解した形で容易に利用可能であるトリクロサンは他の療法的利益を提供することができる可能性がある。
【0070】
[0061] 本発明は実施例において開示された特定の態様により範囲を限定されるべきでは無く、それは本発明の少数の観点の説明として意図されており、機能的に均等であるあらゆる態様はこの発明の範囲内である。実際、本発明の様々な修正が、本明細書で示し、記述した修正に加えて当業者に明らかになると考えられ、それは添付された特許請求の範囲内に入ることを意図する。
【0071】
[0062] 引用されたあらゆる参考文献に関して、それぞれの開示全体を本明細書にそのまま援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口に許容できるビヒクル、有効な療法的量の抗細菌化合物、有効な療法的量のカリウム陽イオンの源、陰イオン性界面活性剤およびシクロデキストリンを含む口腔用組成物。
【請求項2】
前記の抗細菌化合物がハロゲン化ジフェニルエーテルを含む、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
ハロゲン化ジフェニルエーテルが2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含む、請求項2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルが組成物中に組成物の重量に基づいて0.05重量%〜2重量%の濃度で存在する、請求項3に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
カリウム陽イオンの源が水溶性カリウム塩を含む、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
カリウムイオンを放出可能な化合物が塩化カリウムである、請求項5に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
カリウム塩が組成物中に組成物の重量に基づいて3重量%〜15重量%の濃度で存在する、請求項5に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
陰イオン性界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
ラウリル硫酸ナトリウムが組成物中に組成物の重量に基づいて0.5重量%〜2重量%の濃度で存在する、請求項8に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンである、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項11】
シクロデキストリンが組成物中に組成物の重量に基づいて1重量%〜15重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項12】
前記の組成物が歯磨剤である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項13】
そのような組成物のための口に許容できるビヒクル、0.05重量%〜2重量%の2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含む抗細菌化合物、0.5重量%〜20重量%のカリウム陽イオンの源、0.5重量%〜2重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む陰イオン性界面活性剤、および1重量%〜15重量%のヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む歯磨組成物であって、全ての重量が組成物の重量に基づいている、前記歯磨組成物。
【請求項14】
口腔ケア組成物中の2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルのための可溶化剤であって、可溶化剤がラウリル硫酸ナトリウムおよびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを組み合わせで含む、前記可溶化剤。前記の抗細菌化合物がハロゲン化ジフェニルエーテルを含む、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項15】
ハロゲン化ジフェニルエーテルをカリウムイオンの源およびラウリル硫酸ナトリウムを含む歯磨組成物中で可溶化する方法であって、その方法が組成物にシクロデキストリンを添加することを含む、前記方法。
【請求項16】
ハロゲン化ジフェニルエーテルが2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の口腔用組成物を口腔に投与することを含む、象牙質過敏症と関係する不快感および痛みが低減された、細菌性プラークの蓄積の処置および予防のための方法。
【請求項19】
そのような組成物のための口に許容できるビヒクル、有効な療法的量のハロゲン化ジフェニルエーテルを含む抗細菌化合物、有効な療法的量のカリウム塩を含む抗過敏症剤、および抗細菌化合物のための可溶化剤を含む口腔用組成物であって、可溶化剤がラウリル硫酸ナトリウムおよびシクロデキストリンを組み合わせで含む、前記口腔用組成物。
【請求項20】
ハロゲン化ジフェニルエーテルが2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルを含む、請求項19に記載の口腔用組成物。
【請求項21】
2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルが組成物中に組成物の重量に基づいて0.05重量%〜2重量%の濃度で存在する、請求項20に記載の口腔用組成物。
【請求項22】
カリウム塩が水溶性である、請求項19に記載の口腔用組成物。
【請求項23】
カリウム塩が塩化カリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方である、請求項22に記載の口腔用組成物。
【請求項24】
可溶化剤が組成物の重量に基づいて0.5重量%〜2重量%のラウリル硫酸ナトリウムおよび1重量%〜15重量%のヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む、請求項19に記載の口腔用組成物。
【請求項25】
口腔に請求項19に記載の口腔用組成物を投与することを含む、象牙質過敏症と関係する不快感および痛みが低減された、細菌性プラークの蓄積の処置および予防のための方法。

【公表番号】特表2012−522776(P2012−522776A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503393(P2012−503393)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/039201
【国際公開番号】WO2010/114541
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】