説明

脱毛の治療もしくは予防または毛の成長の促進のための方法

本発明は、哺乳動物において毛を成長させるための、または哺乳動物において毛を成長させるための医薬の製造における、特に種々の型の脱毛症を治療または予防するための、ミッドカインファミリーのタンパク質の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
本出願はオーストラリア特許No. 2010900771 (2010年2月24日出願)に基づく優先権を主張し、その内容全体を援用する。
【0002】
本発明は、脱毛症に罹患しているかまたは脱毛症を発症する性向があるヒトなどの哺乳動物における脱毛または毛の菲薄化の治療および予防の分野、および脱毛症に罹患しているかまたは脱毛症を発症する性向があるヒトなどの哺乳動物における毛の成長の促進に関する。
【背景技術】
【0003】
毛および毛の発生
毛は我々の身体イメージと一体であり、我々の自尊心および自信に対して著しい影響をもつ可能性がある。ヒト以外の哺乳動物種の毛は一般に“被毛(fur)”と呼ばれる。そうではないと明記しない限り、またはそうではないことが状況から要求されない限り、本明細書中で用いる用語“毛(hair)”は“被毛”を含むと解釈すべきである。また、用語“毛”は、そうではないことが状況から要求されない限り、まゆ(眉)、まぶた(眼瞼)の端、腋窩、および鼻孔の内側を含めて、哺乳動物の身体のいかなる部分の毛も含むと解釈すべきである。したがって、毛は頭髪、まゆ毛、まつ毛(eyelash、cilia)、または他の体毛を含むことができる。
【0004】
それぞれの毛は2つの構造体をもつ:毛幹(shaft)および毛包(follicle)。毛幹の主成分はケラチンである。毛幹は3つのケラチン層を含むが、内層、すなわち髄質(medula)は存在しない場合がある。中間層、すなわち皮質(cortex)が、毛幹の大部分を構成する。外層、すなわちクチクラ(cuticle)は、重なった構造の密に充填した鱗屑によって形成されている。色素細胞が皮質および髄質の全体に分布して、毛にその特徴的な色を与える。毛包は数層を含む。毛包の基部に毛乳頭(papilla)と呼ばれる突起があり、これは毛細血管、すなわち細い血管を含み、これらが細胞に供給を行なっている。毛の生存部分、すなわち乳頭を囲む毛球(bulb)と呼ばれる領域が、毛細血管により供給を受ける唯一の部分である。毛球の細胞は23〜72時間毎に分裂し、これは身体の他のいずれの細胞より急速である。毛包は、内毛根鞘(inner root sheath)と外毛根鞘(outer root sheath)によって囲まれている。これらの2つの鞘は、成長しつつある毛幹を保護し、形作る。内毛根鞘は毛幹に続いており、皮脂を産生する皮脂(油)腺、および時にはアポクリン(臭)腺の開口の下方で終わる。外毛根鞘は皮脂腺に達するまで続いている。立毛筋(erector pili muscle)が皮脂腺の下方で外毛根鞘の周囲の繊維層に結合している。この筋が収縮すると、これによって毛が立つ。
【0005】
ヒトの皮膚は2タイプの毛を含む:うぶ毛(産毛)(vellus hair)および終毛(terminal hair)。うぶ毛は短くて細い“軟毛(peach fuzz)”の体毛である。それはきわめて柔らかく、一般に色が薄く、かつ短い毛であり、男女の人体の大部分の場所に生育する。うぶ毛は一般に2センチメートル未満の長さであり、うぶ毛が生育する毛包は皮脂腺に結合していない。うぶ毛は、それを隠す終毛がより少ない者、たとえば女性および子供に最も容易にみられる。それは、青年期前の者および男性型禿頭症を示している男性にもみられる。終毛または“男性ホルモン型”の毛は発育した毛であり、それは一般にうぶ毛より長く、粗く、太く、かつ色が濃い。一般に成長期がより長いため、終毛の成長の段階もうぶ毛の場合より明瞭である。終毛には皮脂腺が付随する。思春期には、若干のうぶ毛が発育して終毛になる場合がある。他の状態、たとえば男性型禿頭症では、終毛がうぶ毛のような状態に逆戻りする場合がある。
【0006】
毛の成長には連続した3つの段階がある:退行期(catagen)、休止期(telogen)、成長期(anagen)。成長期は毛が活発に成長する段階であり、その期間は毛根の細胞が急速に分裂している。成長期の毛は皮下脂肪内へ深く固定されており、容易には引き抜くことができない。新しい毛が形成されると、それが根状毛(棍状毛)(club hair)を毛包まで押し上げ、最終的には押し出す。この期間中に毛は28日毎に約1cm成長する。頭髪はこの活発な成長期に2〜6年間留まる。毛が一定の長さ以上に成長しにくいヒト対象は成長期が短縮している可能性があり、これに対し、より長い毛が速やかに成長できる者はより長い成長期をもつ可能性がある。ヒトの場合、手、足、まぶたおよびまゆの毛は、一般に頭髪(headまたはscalp hair)と比較して短い成長期をもつ。退行期は移行段階であり、ヒトの場合は約2〜3週間持続し、その期間中は成長が止まり、これによって“根状”毛が形成される。休止期は休止している段階であり、頭髪については約100日間、他の体毛についてはより長期間、持続する。休止期中には毛包は休止状態にあり、根状毛が形成され、成長期の毛と比較して休止期の毛は皮膚のより高い位置にあり、容易に引き抜くことができる。休止期の毛の毛根は、肉眼で見える固体状の硬い乾いた白色の物質を含む。休止期の毛が抜けるのは正常であり、休止期には1日当たり最高75本の毛髪がヒトの頭皮から抜ける。毎日ほぼ同数の毛包が成長期に入るので、抜けた毛は正常に置き換わる。正常な頭皮では常に約80%〜90%の毛包が成長期にあり、約1%〜3%が退行期にあり、すなわち退縮しつつあり、約5%〜10%が休止期にある。
【0007】
脱毛および/または毛の成長が低下した状態
脱毛または毛の菲薄化には、抜けた毛に置き換わる能力が低下した、または抜け毛が同時にもしくは続いて置き換わることなく増加する結果となる、いずれかの状態が含まれる:たとえば、脆い毛の成長、細い毛の成長、短い毛の成長、散在した毛の成長、脱毛症、または毛の色素消失。たとえば、毛周期が無制御状態になって脱毛が加速する可能性があり、これは一時的または永続性の場合がある。そうではないと明記しない限り、またはそうではないことが状況から要求されない限り、本明細書中で用いる用語“脱毛症(alopecia)”は、脱毛(hair loss)を表わすために用いられる。
【0008】
脱毛症はさまざまな原因をもつ可能性がある。遺伝性男性ホルモン型脱毛症は最も多い型の脱毛症である:それは毛の体積の減少、またはさらには禿頭症によって発現し、約70%に及ぶ男性が罹患する。急性脱毛症は、化学療法、ストレス、著しい栄養不良、鉄不足、ホルモン障害、エイズ、または急照射に関連する場合がある。円形脱毛症は自己免疫由来のもの(細胞仲介性の機序)であると思われ、身体の1以上の場所におけるさまざまな大きさの“斑(patch)”を特徴とする。完全脱毛症は頭皮全体に広がる型の円形脱毛症を表わし、全身性脱毛症は全身に広がる型の円形脱毛症を表わす。機序において、すべての型の脱毛症で、脱毛は、毛包が成長期に入る能力の低下、速度低下もしくは障害、または毛包を成長期に維持する能力の障害に直接関係し、これによって毛幹の形成が減少し、速度低下し、または完全に停止する。毛は成長期に十分な成長に達する前に退行期に移行し、このため持続的に短く細くなる可能性がある(すなわち“毛の菲薄化”)。化学療法薬、放射線療法薬、および他の医薬製剤が、療法の副作用として毛包の壊死またはアポトーシスを誘発する場合があり、これらも毛包が成長期に入るのを阻害する。たとえば、アルキル化剤、たとえばテモゾロミド(temozolomide)、ブスルファン(busulfan)、イホスファミド(ifosamide)、塩酸メルファラン(melphalan hydrochloride)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)またはシプロホスファミド(cyclophosphamide)、および代謝拮抗薬、たとえば5−フルオロウラシル、カペシタビン(capecitabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、フロクスウリジン(floxuridine)、デシタビン(decitabine)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、ペメトレキセド二ナトリウム(pemetrexed disodium)、メトトレキセート(methotrexate)またはデカルバジン(dacarbazine)、および天然物、たとえばビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、酒石酸ビノレルビン(vinorelbine tartrate)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、イキサベピロン(ixabepilone)、ダウノルビシン(daunorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、マイトマイシン(mitomycin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、イリノテカン(irinotecan)、トポテカン(topotecan)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、硫酸エトポシドまたは硫酸ブレオマイシン(bleomycin sulfate)、および生物製剤、たとえばフィルグラスチム(filgrastim)、ペグフィルグラスチム(pegfilgrastim)、ベバシズマブ(bevacizumab)、サルグラモスチム(sargramostim)またはパニツムマブ (panitumumab)、およびホルモン剤またはホルモン関連剤、たとえば酢酸メゲストロール(megestrol acetate)、フルオキシメステロン(fluoxymesterone)、ロイプロリド(leuprolide)、酢酸オクトレオチド(octreotide acetate)、クエン酸タモキシフェン(tamoxifen citrate)またはフルキシメステロン(fluxymesterone)、および他の療法薬、たとえばソラフェニブ(sorafenib)、エルロチニブ(erlotinib)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、デキストラゾキサン(dexrazoxane)、アナグレリド(anagrelide)、イソトレチノイン(isotretinoin)、ベキサロテン(bexarotene)、ボリノスタット(vorinostat)、アドリアマイシン(adriamycin)、シトキサン(Cytoxan)、タキソール(taxol)、ロイコボリン(leucovorin)、オキサリプラチン、ならびに以上の薬剤の組合わせは、一時的または永続性の脱毛症を誘発することが知られている。
【0009】
以上のいずれかの要因により起きた脱毛症は、多くの患者にとって低い自尊心および不安の根源である。癌に対する化学療法または放射線療法を受けている者には、その療法の他の有害な副作用、たとえば吐き気、皮疹などに由来する不快感に脱毛症が追加される。化学療法を受けている患者を含めて脱毛症に罹患している多くの者が、彼らの禿げたまたは薄くなった領域を覆うために、かつら、ヘアピース、スカーフ、帽子またはターバンの使用を選択する。脱毛を伴う者は、彼らが違って見えるという理由で他人が嘲笑するという困惑および恐れをしばしば感じる。ある者は、まつ毛および/またはまゆ毛が無いことを隠すために大型の眼鏡をかけるという手段をとる場合がある。ある対象では脱毛症がうつ病を引き起こす可能性がある。
【0010】
脱毛症の動物モデル
ヒトの脱毛症の有用なモデルが幾つかあり、それらは脱毛症の治療薬および毛の成長を促進する他の治療薬の有効性を試験する際に使用することが当技術分野で認められている。
【0011】
たとえばベニガオザル(stumptailed macaque)は、多くの点でヒトの男性ホルモン型脱毛症と類似する遺伝性禿頭特性をもち、周期的進行(休止期から再成長期へ、そして再成長期から成長後期へ)の速度および毛包サイズの全体的変化を含めた、毛包の周期的変化の速度の形態計測評価を得るために用いられる。これらの霊長類は化合物の有効性を推定するためにも妥当な程度に良好な手段であり、たとえば男性ホルモン型脱毛症に対するミノキシジル(minoxidil)の有効性を試験するために用いられた。局所ミノキシジル治療を停止すると禿頭プロセスが再開され、フォリキュログラム(foiliculogram)は休止期の毛包の割合が増大したことを示した。この治療停止は、その後のミノキシジル再適用に際しての毛の再成長に対して明らかに影響をもたなかった。そのような処置により、初回治療段階の場合と同様な再成長が得られた。これらの動物において、局所ミノキシジルの4年間の継続治療は、全身性または局所性の副作用を生じなかった。たとえば、Brigham et al, Clin. Dermatol 6, 177-187, 1998; Sundberg et al, Exp. Mol. Pathol. 67, 118-130 (1999)を参照;それらの内容を全体として本明細書に援用する。
【0012】
マウスモデルにおける試験から得られた所見は、総合的に自己免疫疾患としての円形脱毛症の概念を支持し、自然および誘発性の円形脱毛症を伴う幾つかのげっ歯類モデルが同定された。たとえば、Dundee Experimental Bald Rat(DEBR)は、特発性円形脱毛症を発症することが確認された最初のげっ歯類モデルであり、候補となる円形脱毛症感受性遺伝子座を同定するために用いられている(Michie et al, Br J Dermatol, 125, 94-100, 1991, 本明細書に援用する)。最も広範に特性解明された容易に入手できる円形脱毛症モデルは、C3H/HeJマウスモデルである(Sundberg et al., J Invest Dermatol., 102, 847-56, 1994, 本明細書に援用する)。老齢のC3H/HeJマウス(3〜5カ月齢以上の雌および6カ月齢以上の雄)は、ヒトの円形脱毛症の組織病理学的および免疫組織化学的特徴を発現する。脱毛症は、十分に老齢の動物の背面に散在的または円形領域に発症する。組織学的に、この非瘢痕性脱毛症における変化は、主に細胞傷害性または細胞増殖抑制性(CD8+)およびヘルパー(CD4+)T細胞からなる単核細胞によって囲まれた成長期毛包に限定されるように思われ、これが毛包および毛幹の形成異常と関連する。罹患C3H/HeJマウスの系統追跡は、この非瘢痕性脱毛症が、より若い雌に優勢である遺伝性で複雑な多遺伝子疾患の可能性があることを示唆する。円形脱毛症を伴うC3H/HeJマウスを用いて、円形脱毛症の現在の治療法の効力を試験し、樹立した円形脱毛症における新規治療方式の有効性および安全性プロフィールを試験し、またこの疾患の発症を予防するために種々の要因が円形脱毛症の発症に及ぼす影響を評価することができる。
【0013】
Paus et al, Am. J. Pathol. 144, 719-734 (1994)も急性脱毛症のモデルを記載しており、それの内容全体を本明細書に援用する。このモデルにおいて、脱毛症はC57 BL/6マウスにシクロホスファミド(cyclophosphamide)を1回腹腔内注射することにより誘発される。脱毛処理した(depilated)C57 BL/6マウスにおいては、毛包が成長期に同期化する。脱毛処理後9日目までに、すべての毛包が成熟した成長期VI毛包となり、皮膚は灰色ないし黒色の毛幹の特徴を示す。組織学的、肉眼的および機能的に、脱毛処理により誘発した成長期VI毛包は自然発現した成長期毛包と識別できない。脱毛処理後、約16日目に、脱毛処理した動物に毛幹の損失なしに毛包退行が起き、皮膚の色が黒色からピンク色に変化し、これらは退行期の誘導とメラニン産生停止の両方の指標となる。退行期毛包の発現は、肉眼的には皮膚の色が黒色から淡灰色に変化することによって示され、広い範囲で起き、最初は首の領域に、次いでわき腹および尾の領域に現われる。脱毛処理後20日目に、すべての毛包が再び休止期に入り、これは皮膚の色が灰色からピンク色に変化することを特徴とする。シクロホスファミドをC57 BL/6マウスに脱毛処理後9日目に投与すると、動物は急速かつ再現性のある急性脱毛症の肉眼的徴候を用量依存性で示す;これには、著しい被毛脱落、および脱色素を特徴とする早期の成長期停止が含まれ、12〜14日目までに灰色の皮膚外観を生じる。こうして、首の領域の毛包はシクロホスファミド処理後3〜5日目に全般的に退行期になる。動物の背側の毛幹は12〜14日目に擦ることによっても容易に除去でき、15日目までに背面の60%にも及ぶ脱毛症を示す可能性がある。シクロホスファミドにより誘発される色の変化および脱毛症は、成長期VI毛包に形成異常形態の成長期および退行期が誘導されたことを反映する。また、シクロホスファミド処理した動物において、ピンク色の皮膚、および毛包の損傷による急速な被毛脱落によって示されるように、毛包は急速に休止期に入る。シクロホスファミド処理後に休止期は短縮され、正常な休止期毛包は次の毛周期に入るので、動物は16〜20日目、すなわち処理後7〜10日目に、新たな毛幹を発現する。これらの新たな毛幹は、新たな正常に色素沈着した毛幹を産生する時間がなかった異常形成毛包が存在するため、しばしば脱色素されている。のちに、色素沈着した毛幹が発生する。
【0014】
脱毛および/または毛の成長低下の状態に対する療法
脱毛症に対する既存の療法には、局所用ミノキシジル(minoxidil)およびその誘導体、たとえばU.S. Pat. No. 4,139,619および4,596,812、ならびに欧州特許No. EP-0353123、EP-0356271、EP-0408442、EP-0522964、EP-0420707、EP-0459890およびEP-0519819、スピロノラクトン(spironolactone)、酢酸シプロテロン(cyproterone acetate)、フルタミド(flutamide)、フィナステリド(finasteride)、プロゲステロンまたはエストロゲンが含まれる。抗−男性ホルモン薬、たとえばフィナステリドおよびミノキシジルは男性ホルモン型脱毛症の治療用として知られている。これらの治療法はいずれも広範には適用できない。たとえば、そのような治療法は化学療法薬による治療中の脱毛を予防できない。一方で、そのような治療法は望ましくない副作用を生じる可能性がある。たとえば、ミノキシジルは有効な血管拡張薬である。有効な結果を達成するために、患者はそのような化合物を頻繁に投与することも要求される可能性がある。たとえば、ミノキシジルはごく一過性の効果をもたらす;局所ミノキシジル治療を停止すると一般に禿頭プロセスが更新されてフォリキュログラムが休止毛包の割合の上昇を示すからである。ミノキシジルは1日2回、2%濃度での投与も推奨されている。フィナステリドは経口送達される点でミノキシジルより進んでおり、利用できる最良の処置とみなされるにもかかわらず、約35%以上の脱毛男性レシピエントがその薬物に対して低い応答を示すか、または全く応答しない。フィナステリドも若干の利用者に対して著しい副作用を生じる可能性がある;多数の男性利用者が、その薬物を使用した後の勃起機能障害、インポテンス、性欲低下、または女性化乳房(gynecomestica)を報告しているからである。そのような副作用を伴う男性において、それらの副作用はフィナステリドを停止した後も消失しない場合がある。
【0015】
種々のプロスタグランジンアナログ、たとえばトラボプロスト(travoprost)、ボプロストール(voprostol)も男性ホルモン型脱毛症の処置に使用するものとして開示されており、これらも頻繁な投与、たとえば少なくとも1日1回を要求する可能性があるが、トラボプロストの単回投与がたとえばU.S. Pat. Publication 20100190853に記載されている。プロスタグランジンアナログは化学療法関連の脱毛症に使用するものとしても知られている:たとえば、U.S. Pat. Publication 20110002286。プロスタグランジンアナログはさまざまな有害作用をもつ可能性がある:たとえば、筋収縮仲介炎症、カルシウム移動、ホルモン調節および細胞増殖制御。
【0016】
ミッドカインファミリーのタンパク質
ミッドカイン(midkine)(MK)は増殖/分化因子であり、最初は、レチノイン酸による胚性腫瘍細胞(EC)の分化誘導プロセスで一過性に発現する遺伝子産物として発見された。MKは広範な有害および有益な生物学的作用を生じることが知られている。MKの発現は、食道癌、甲状腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、胸部癌、肝癌、肺癌、乳癌、神経芽腫、神経芽腫、神経膠芽腫、子宮癌、卵巣癌、およびウィルムス腫瘍を含めたヒト癌細胞において増加しており、癌細胞の生存および移動を助成しかつ血管新生を促進すると考えられている。MKは、炎症細胞、たとえばマクロファージおよび好中球の移動を助成して炎症を生じることも知られている。MKは子宮内膜症に際して培養された子宮内膜間質細胞の増殖を刺激することも知られている。したがって、MK阻害薬、たとえばMKのタンパク質またはRNAを標的とする抗体、アプタマーまたはRNAiが、広範な炎症性疾患、たとえば関節炎、自己免疫疾患、リウマチ性関節炎、骨関節炎、多発性硬化症、術後癒着、炎症性大腸炎、乾癬、狼瘡、喘息、好中球機能異常、および子宮内膜症の処置に使用するものとして開示されている。
【0017】
MKの有益な作用も知られており、その場合、MKは虚血事象における血管損傷および腎炎発症の後の発生期内膜の形成促進、ならびにリウマチ患者における術後癒着の軽減にも関与する。したがってMKタンパク質は、脳虚血、心臓虚血、血管再構築術後の再狭窄、冠動脈血管閉塞性疾患、脳血管閉塞性疾患、腎血管閉塞性疾患、末梢血管閉塞性疾患、および動脈硬化症の処置に使用するものとして開示されている。
【0018】
プレイオトロフィン(pleiotrophin)(PTNまたはHB−GAM)は、アミノ酸配列レベルでMKに対して約50%の同一性をもつミッドカインファミリーのタンパク質である。MKおよびPTNは両方とも高含量のシステインおよび塩基性残基を含む。10個のシステイン残基すべてがMKおよびPTNに保存されており、構造的には両方ともN−ドメインとC−ドメインに分割できる。NMR分析の結果、これら2種類の分子はきわめて類似する三次元構造をもつことが分かっている。各ドメインは、フレキシブルなリンカー領域により連結された3つのβシートからなる。コンドロイチン硫酸およびヘパリンへの結合のために重要であると考えられるK79、R81およびK102がこれら2種類のタンパク質間で保存されている。MKとPTNは、これらの塩基性残基がタンパク質の表面付近に現われる三次元構造も共有する。したがって、PTNはこれまでMKと同じ医療適用のために開示されている。
【0019】
本明細書中でいずれかの先行技術刊行物に言及した場合、そのような言及はその刊行物がオーストラリアその他において共通の一般的知見の一部を形成するという認識を構成するものではないと解釈すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】U.S. Pat. No. 4,139,619
【特許文献2】U.S. Pat. No. 4,596,812
【特許文献3】EP-0353123
【特許文献4】EP-0356271
【特許文献5】EP-0408442
【特許文献6】EP-0522964
【特許文献7】EP-0420707
【特許文献8】EP-0459890
【特許文献9】EP-0519819
【特許文献10】U.S. Pat. Publication 20100190853
【特許文献11】U.S. Pat. Publication 20110002286
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Brigham et al, Clin. Dermatol 6, 177-187, 1998
【非特許文献2】Sundberg et al, Exp. Mol. Pathol. 67, 118-130 (1999)
【非特許文献3】Michie et al, Br J Dermatol, 125, 94-100, 1991
【非特許文献4】Sundberg et al., J Invest Dermatol., 102, 847-56, 1994
【非特許文献5】Paus et al, Am. J. Pathol. 144, 719-734 (1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明を導く研究において、本発明者らは、脱毛しやすいかまたは脱毛を伴う対象において毛の成長または毛の成長開始を増強するタンパク質ベースの薬剤であって、たとえば対象に局所投与するための薬剤の開発を試みた。本発明者らは、真皮が一般に外部作用物に対して備えているバリヤーにもかかわらず皮膚に容易に適用して効果を発揮できる、有効な局所用のタンパク質ベースの配合物の開発も試みた。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、たとえば禿げた領域または脱毛症部位の形態の脱毛を伴う、本質的に高齢のマウスモデルからなる脱毛動物モデルを開発した。本発明者らは、この動物モデルへのミッドカインまたはプレイオトロフィンタンパク質の局所適用がこれらの禿げた領域または脱毛症部位において毛の成長または毛の成長再開を誘導することを見出した。ミッドカインまたはプレイオトロフィンの局所配合物は、この動物モデルにおけるこれらの毛の成長促進効果の発現において非経口配合物より優れていることが見出された。
【0024】
本明細書に提示するデータは、ミノキシジルと対照的に、ミッドカインおよびプレイオトロフィンが、それらの毛包を成長期に同期化させるために剃毛した、脱毛症の臨床症状を示していない健康な動物においては、肉眼で見えるほどには毛の成長を刺激しなかったことも示す。これは、ミッドカインおよびプレイオトロフィンが、ミノキシジルより特異的な、真皮乳頭の血管を拡張する作用を含まない機序で作用するという可能性を示唆する。したがって、ミッドカインファミリーのタンパク質により刺激された被毛再成長は、毛包に対するミッドカインの抗アポトーシス作用から生じ、これによってそれらの成長期を延長し、あるいは正常な休止期毛包を次の毛周期に再入させることができる。
【0025】
本発明を導く研究において、本発明者らは、受け入れられている化学療法誘発脱毛症(chemotherapy-induced alopecia)(CIA)の動物モデルを用いた;たとえば、Paus et al, Am. J. Pathol. 144, 719-734 (1994)が記載したもの:その内容を全体として本明細書に援用する。本発明者らはランダム化試験を実施し、その際すべての動物を剃毛およびワックス処理し、5グループの動物に1日1回、ミッドカインタンパク質の局所配合物を、腹腔内シクロホスファミド注射前7日間および注射後19日間投与し、他の2グループの動物に1日1回、ミッドカインタンパク質の局所配合物を、腹腔内シクロホスファミド注射後19日間投与した。対照マウスには生理食塩水プラセボを投与した。本明細書に提示するデータは、化学療法の前、または化学療法の前と後のミッドカインファミリータンパク質、たとえばMKおよび/またはPTNの局所投与が被毛脱落の程度を有意に軽減すること、すなわち化学療法薬投与に伴うすべての時点で被毛の成長を促進することを指摘する。ミッドカインファミリーのタンパク質で処置した場合はプラセボを投与したグループより多数の動物が黒色ないし濃い灰色の皮膚をもつことによって証明されるように、ミッドカインファミリーのタンパク質による処置は、シクロホスファミド処理後もより大きな割合の成長期毛包を保持する。これは成長期毛包に対する抗アポトーシス効果を示唆する。これらの有益な効果は、化学療法直後の期間で毛包がまだ回復していない時点、および化学療法を停止した後の後続の毛包回復期間中に検知できる。本明細書に提示するデータは、プラセボを投与されている対象と比較して脱毛症の発症率が低下することによって証明されるように、化学療法後のミッドカインファミリータンパク質、たとえばMKおよび/またはPTNの局所投与が、毛包の回復を少なくとも改善することも指摘する。したがって、化学療法後に局所ミッドカインタンパク質で1日1回処置した動物は、処置を受けない動物より全体として脱毛が少なく、この脱毛軽減は化学療法の前と後にミッドカインタンパク質で処置した動物とほぼ同じくらいの効果である。化学療法の前または後にミッドカイン療法を受けた対象も、より高い毛成長速度を毛包回復期間中に示す;これは、ミッドカインが毛包に抗アポトーシス効果を及ぼし、これによってそれらの成長期を延長すること、あるいは正常な休止期毛包が次の毛周期に再入するのがミッドカイン処置に伴って増強されることを示唆する。
【0026】
本明細書中で高齢の脱毛マウスモデルについて記載した方法は、本明細書に記載する男性ホルモン型脱毛症のベニガオザル21−23モデルおよび/または丘疹性無毛症の無毛(hr/hr)モデルを含めて、ヒトの脱毛症の他の動物モデルにおける試験にも適用できることを理解すべきである。
【0027】
したがって、本明細書に提示するデータは、たとえば高齢の対象、男性ホルモン型脱毛症または急性脱毛症などの脱毛症に罹患している対象において、毛の成長促進および/または脱毛の軽減および/または毛の菲薄化の軽減および/または脱毛の予防および/または毛の菲薄化の予防および/または脱毛の遅延および/または毛の菲薄化の遅延に、ミッドカインファミリーのタンパク質を含む組成物を使用することを支持する。一般に、脱毛症の治療および/または予防に有効な本発明組成物は局所投与用として配合されるが、非経口配合物も、たとえば一般に非経口投与される急性脱毛症性の細胞傷害性作用物(cytotoxic agent)または細胞増殖抑制作用物(cytostatic agent)、たとえば化学療法薬との共投与のために使用できる。
【0028】
したがって、本発明の一例は、脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質、たとえばミッドカイン、プレイオトロフィン、またはミッドカインもしくはプレイオトロフィンのバリアントもしくはホモログ、および局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む配合物、たとえば局所配合物を提供する。“局所配合物”とは、その配合物を哺乳動物の真皮に外部適用できること、または真皮に適用されることを意味する。たとえば、その配合物は、脱毛しやすいかまたは脱毛のリスクをもつ男性対象、たとえば男性型禿頭症に罹患しているかまたはそれを発症するリスクをもつ対象の真皮または皮膚に投与するために使用できる。他の例において、本発明の配合物は、脱毛と関連する疾患または状態、たとえば脱毛症、特に急性脱毛症または男性ホルモン型脱毛症に罹患している対象の真皮または皮膚に投与するのに有用である。
【0029】
一例において、この局所配合物は、脱毛を治療もしくは予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質、および局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む。好ましくは、配合物は、脱毛しやすいかまたは脱毛のリスクをもつ対象の真皮または皮膚に投与するためのもの、あるいは脱毛を伴う対象の真皮または皮膚に投与するためのものである。この局所配合物が脱毛症、たとえば急性型の脱毛症または男性ホルモン型脱毛症の治療または予防に適することは認識されるであろう。たとえば、この配合物は、細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を受けているかまたは細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を処方された対象における脱毛症の治療または予防のために使用できる。ミッドカインファミリーのタンパク質は、ミッドカイン、プレイオトロフィン、ミッドカイン様タンパク質、またはトランケート型ミッドカインタンパク質であってもよい。
【0030】
したがって本発明は、療法有効量のミッドカインファミリーのタンパク質、たとえば毛の成長を増強するのに有効な量のミッドカインタンパク質もしくはプレイオトロフィンタンパク質またはその生物学的に有効なバリアントを含む、改良された局所配合物を提供する。本発明の局所配合物は、男性ホルモン型脱毛症、急性脱毛症、円形脱毛症、完全脱毛症および全身性脱毛症を含めた脱毛症の予防または治療のために特に有用である。本発明の局所配合物は、好ましくは男性ホルモン型脱毛症の処置のためのものである。本発明の局所配合物は、よりさらに好ましくは、脱毛を引き起こす細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物、特に化学療法薬、放射線療法薬、またはHIV−1に感染した対象に投与する抗ウイルス性化合物による療法を受けている対象における、急性脱毛症の治療のためのものである。本発明の局所配合物は、好ましくは脱毛を引き起こす細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物、特に化学療法薬、放射線療法薬、またはHIV−1に感染した対象に投与する抗ウイルス性化合物による療法を受けようとしている対象における、急性脱毛症の予防のためのものである。
【0031】
本発明の局所配合物は、男性ホルモン型脱毛症もしくは男性型禿頭症に罹患しているかもしくはそれを発症する素因をもつ対象、および/または脱毛を引き起こす細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物による療法を受けようとしているかもしくはそのような療法を受けている対象において、毛の成長を刺激するために有用であることを理解すべきである。
【0032】
本発明の局所配合物は、組み合わせ可能な、または逐次もしくは共にもしくは同時に投与できる種々のタイプの療法薬またはキャリヤーと適合性であることも理解すべきである。たとえば、ミッドカインファミリーのタンパク質を含む局所配合物は、同じ状態を処置するための第2化合物をさらに含むか、及び/又はそのような第2化合物(単数または複数)と共投与することができる。そのような状況では、ミッドカインファミリーのタンパク質の有効性は第2化合物の作用によって補足される。たとえば、ミッドカインファミリーのタンパク質をセストラジオール(cestradiol)および/またはオキサンドロロン(oxandrolone)および/またはミノキシジル(minoxidil)および/またはフィナステリド(finasteride)、あるいはテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを遮断する薬剤と共投与する。あるいは、またはさらに、たとえば化学療法または放射線療法またはHIV−1感染症もしくはエイズの治療を受けている対象の場合、本発明の局所配合物は脱毛を引き起こす細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物と共投与される。そのような状況ではミッドカインファミリーのタンパク質の有効性は細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物の脱毛作用と拮抗する。
【0033】
本発明の他の例は、脱毛症に罹患しているかまたは脱毛症を発症する性向がある対象において脱毛を予防および/または治療するための医薬、たとえば局所用医薬の製造における、ミッドカインファミリーのタンパク質の使用を提供する。医薬は、脱毛しやすいかまたは脱毛を伴う集団区分、たとえば男性型禿頭症に罹患しているかまたはそれを発症するリスクをもつ対象に投与するためのものであってもよい。たとえば、対象は肉眼で見える脱毛症を伴っていなくてもよいけれどもその対象に脱毛症の素因を与える遺伝的条件を伴っており、あるいは対象は脱毛症を誘発する細胞傷害性作用物または細胞増殖抑制作用物または抗ウイルス性化合物による療法を受けようとしていてもよい。他の例において、この局所用医薬は脱毛に関連する疾患または状態、たとえば脱毛症に罹患している対象の真皮または皮膚に投与するのに有用である。たとえば、対象は既存の脱毛症を伴っていてもよく、あるいはミッドカインファミリーのタンパク質による療法を開始する前に肉眼で見える脱毛症の症状が発症しているか否かにかかわらず、脱毛症を誘発する細胞傷害性作用物または細胞増殖抑制作用物または抗ウイルス性化合物による療法を受けていてもよい。ミッドカインファミリーのタンパク質は、化学療法を受けている対象の急性脱毛症を治療または予防するための医薬の製造に特に有用であり、そのような医薬は局所経路または非経口経路により投与するものとして配合できるが、局所配合物が好ましい。
【0034】
“局所用医薬”は、有効薬剤、すなわちミッドカインファミリーのタンパク質、たとえばミッドカイン、プレイオトロフィン、またはミッドカインもしくはプレイオトロフィンのバリアントもしくはホモログに、哺乳動物の真皮に適用するための局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を配合したものを意味する。
【0035】
特に好ましい一例において、ミッドカインファミリーのタンパク質の使用は、ヒトまたは他の哺乳動物対象の脱毛症、たとえば急性型の脱毛症または男性ホルモン型脱毛症を治療または予防するための医薬の製造におけるものである。対象は、ヒトまたは哺乳動物対象であって、細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を受けているかまたは細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を処方された対象であってもよい。医薬は局所適用のための配合物であってもよい。ミッドカインファミリーのタンパク質は、ミッドカイン、プレイオトロフィン、ミッドカイン様タンパク質、またはトランケート型ミッドカインタンパク質であってもよい。
【0036】
本発明の他の例は、脱毛を治療または予防する方法であって、その必要がある対象、たとえば脱毛症に罹患しているかまたは脱毛症を発症する性向がある対象に、対象において脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質、たとえばミッドカイン、プレイオトロフィン、またはミッドカインもしくはプレイオトロフィンのバリアントもしくはホモログ、および局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む配合物、たとえば局所配合物を投与することを含む方法を提供する。対象は一般に哺乳動物、たとえばヒトであろう。たとえば、本発明の方法は、男性型禿頭症の場合のように脱毛しやすいかまたは脱毛のリスクをもつ男性対象の処置に有用である。そのような対象は肉眼で見える脱毛症の症状をもたなくてもよいけれどもその対象に脱毛症の素因を与える遺伝的条件を伴い、あるいは対象は脱毛症を誘発する細胞傷害性作用物または細胞増殖抑制作用物または抗ウイルス性化合物による療法を受けようとしているか、または受けていてもよい。他の例において、本発明の方法は脱毛に関連する疾患または状態、たとえば脱毛症に罹患している対象の処置に有用である。そのような対象は既存の脱毛症を伴うか、あるいは脱毛症を誘発する細胞傷害性作用物または細胞増殖抑制作用物または抗ウイルス性化合物による療法を受けていて脱毛症の症状が発症していてもよい。化学療法を受けているかまたは化学療法を処方された対象の治療および予防は、明らかに本発明方法に包含される。
【0037】
本発明の他の例は、たとえば脱毛症を誘発する細胞傷害性作用物または細胞増殖抑制作用物または抗ウイルス性化合物による療法の途中または療法後の毛の成長または毛のイニシエーションを促進または増強する方法であって、その必要がある対象に、対象において脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質、たとえばミッドカイン、プレイオトロフィン、またはミッドカインもしくはプレイオトロフィンのバリアントもしくはホモログ、および局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む配合物、たとえば局所配合物を投与することを含む方法を提供する。
【0038】
他の例において、本発明は、脱毛を治療または予防する方法であって、その必要がある対象、たとえば急性型の脱毛症または男性ホルモン型脱毛症などの脱毛症に罹患しているかまたはそのような脱毛症を発症しやすい対象に、対象において脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質、およびキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む配合物を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、配合物は局所配合物であり、この方法は対象の脱毛した患部の皮膚または脱毛する可能性のある領域の皮膚に局所配合物を投与することを含む。この配合物は、脱毛症に罹患している対象に、対象の脱毛を軽減し、および/または毛を成長させるのに十分な時間および条件下で、投与してもよい。あるいは、またはさらに、脱毛症に罹患している対象に、対象の毛包のアポトーシスを阻止または軽減するのに十分な時間および条件下で配合物を投与してもよい。あるいは、またはさらに、脱毛症に罹患している対象に、対象の毛包の成長期を延長するのに十分な時間および条件下で配合物を投与してもよい。あるいは、またはさらに、脱毛症に罹患している対象に、対象の正常な休止期毛包が後続の毛周期に入るのを促進または前進させるのに十分な時間および条件下で配合物を投与してもよい。本発明による方法は、細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を受けているかまたは細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を処方された対象に特に有用である。好ましい態様において、ミッドカインファミリーのタンパク質は、ミッドカイン、プレイオトロフィン、ミッドカイン様タンパク質、またはトランケート型ミッドカインタンパク質であってもよい。
【0039】
他の例において、本発明は、脱毛を伴う対象の毛の成長または毛のイニシエーションを促進または増強する方法であって、その必要がある対象に、対象において脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質および局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む局所配合物を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、ミッドカインファミリーのタンパク質はミッドカインまたはプレイオトロフィンである。
【0040】
他の例において、本発明は、化学療法を受けているかまたは化学療法を処方された対象の脱毛を軽減する方法であって、その対象に、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質、およびキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む配合物を、化学療法による脱毛を予防または軽減するのに十分な時間および条件下で投与することを含む方法を提供する。好ましくは、この方法は、化学療法を受けた対象に、または化学療法を処方された対象にその化学療法の開始前に、配合物を局所投与することを含む。一例において、この方法は、化学療法を処方された対象に、その化学療法の開始の前と後に配合物を局所投与することを含む。本明細書に例示するように、ミッドカインファミリーのタンパク質はミッドカインであってもよい。
【0041】
本発明の他の例は、たとえば禿げた領域または脱毛症の部位の形態の脱毛を伴う、本質的に高齢のマウスからなる脱毛の動物モデルを提供する。本発明は明らかに、脱毛を予防する、および/または毛の成長を促進する、および/または毛の成長を増強する、新規な療法薬および予防用組成物のスクリーニングのためにこの動物モデルを使用することにまで及び、その際、このスクリーニング法は被験化合物を動物に投与して毛の成長および/または脱毛の軽減を測定することを含み、その際、被験化合物の不存在下と比較した被験化合物の存在下での脱毛の軽減および/または毛の成長の増大および/または毛の成長のイニシエーションは、被験化合物が脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強することの指標となる。このスクリーニング法の一例において、被験化合物の活性をミッドカインファミリーのタンパク質の活性と比較し、ミッドカインファミリーのタンパク質に匹敵するかまたはそれと比較して増強した活性をもつ被験化合物を本発明の方法で本発明のいずれかの例に従って同定し、および/または単離し、および/または局所投与のために配合する。
【0042】
他の例において、本発明は、脱毛を予防する、および/または毛の成長を促進する、および/または毛の成長を増強する化合物を同定または単離する方法であって、1歳より高齢であり、かつ脱毛を伴っており、かつミッドカインタンパク質をコードする1つの対立遺伝子およびその遺伝子の他の1つの機能性対立遺伝子がノックアウトされているマウスに、被験化合物を投与し、次いでそのマウスにおいて毛の成長および/または脱毛の軽減を測定することを含み、その際、そのマウスにおける被験化合物の不存在下と比較した被験化合物の存在下での脱毛の軽減および/または毛の成長の増大および/または毛の成長のイニシエーションは、被験化合物が脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強することの指標となる方法を提供する。
【0043】
定義
本明細書はPatentln Version 3.6を用いて作成したヌクレオチドおよびアミノ酸の配列情報を含み、それらを特許請求の範囲の後に提示する。各ヌクレオチド配列は、配列リスト中において指示番号<210>に続く配列識別子により識別される(たとえば、<210>1、<210>2、<210>3など)。配列の長さおよびタイプ(DNA、タンパク質(PRT)など)、ならびに各ヌクレオチド配列の生物源を、それぞれ指示フィールド番号<211>、<212>および<213>に提示する情報により指示する。本明細書中に述べるヌクレオチド配列は、用語“SEQ ID NO:”に続く配列識別子により規定される(たとえば、SEQ ID NO:1は配列リスト中に<400>1と表示される配列を表わす)。
【0044】
本明細書中で用いる用語“に由来する”は、特定したものを特定の供給源から得ることができる(その供給源から直接とは限らないが)ことを指示すると解釈すべきである。
本明細書全体を通して、状況からそうではないことが要求されない限り、用語“含む”(“comprise”、またはその変形“comprises”もしくは“comprising”など)は、記載した工程もしくは要素もしくは整数または一群の工程もしくは要素もしくは整数を含むけれども、他のいずれかの工程もしくは要素もしくは整数または一群の工程もしくは要素もしくは整数を除外しないことを示すと解釈される。
【0045】
用語“毛(hair)”は、ヒトを含めた哺乳動物の身体の毛(hair)または被毛(fur)を意味し、これにはたとえば頭髪、まゆ毛、まつ毛、口髭、あごひげ、胸毛、背毛、腕毛、すね毛、陰毛、鼻毛、または耳毛が含まれる。
【0046】
本明細書中で用いる用語“治療又は処置”(“treat”または“treating”または“treatment”)は、既存の状態の治療処置、または予防もしくは防止の措置を含むと解釈すべきであり、その目的は、毛の菲薄化、脱毛または脱毛症を防止し、改善し、軽減し、または速度低下させる(減弱させる)ことである。したがって、毛を成長させること、または毛の菲薄化を処置することは、菲薄化した毛、たとえば脱毛症を正常化すること、および/または毛の長さや太さを増大させることを表わす。処置を必要とする哺乳動物は、既にその状態を伴っていてもよく、あるいはその状態をもつ傾向があってもよく、あるいはその状態を予防すべき者であってもよい。そのような処置は、好ましくは毛包に対する抗アポトーシス効果を伴い、これによってそれらの成長期を延長し、あるいは正常な休止期毛包を次の毛周期に再入させる。
【0047】
“防止”(“preventing”、“prevention”または“preventative”)または“予防”(“prophylactic”)は、異常または症状を含めた、ある状態、疾患、障害または表現型が起きないようにし、防ぎ、防御し、または保護することを表わす。防止を必要とする哺乳動物は、その状態を発症しやすい可能性がある。
【0048】
用語“改善”(“ameliorate”または“amelioration”)は、異常または症状を含めたある状態、疾患、障害または表現型を低下させ、軽減し、または排除することを表わす。
用語“療法有効量”は、哺乳動物の毛の菲薄化、脱毛または脱毛症を、毛の菲薄化、脱毛または脱毛症の治療または予防に有益なレベルまで軽減することができるミッドカインファミリーのタンパク質の量を表わす。療法有効量は、経験的に、毛の菲薄化、脱毛または脱毛症の処置に関してルーティンな方法で決定できる。
【0049】
本明細書全体を通して、そうではないと明記しない限り、または状況からそうではないことが要求されない限り、単一の工程、組成物、一群の工程または一群の組成物についての言及は、1つおよび複数の(すなわち1以上の)これらの工程、組成物、一群の工程または一群の組成物を包含すると解釈すべきである。
【0050】
本明細書に記載する各例は、そうではないと明記しない限り、必要に応じて変更を加えて、他のそれぞれおよびすべての例に適用されるべきである。
本明細書に記載するそれぞれの定義または説明語は、状況からそうではないことが要求されない限り、必要に応じて変更を加えて、本発明の他のそれぞれおよびすべての例に適用されると解釈すべきである。
【0051】
本明細書に記載する発明を具体的に記載したもの以外に変更および改変できることは当業者に認識されるであろう。本発明はそのような変更および改変をすべて含むことを理解すべきである。本発明はまた、本明細書中に言及または指示したすべての工程、特徴、組成物および化合物を、個別または総合的に、かついずれかもしくはすべての組合わせまたはいずれか2以上のそれらの工程もしくは特徴を含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、40%グリセロール中のミッドカイン(MK)(1μg/ml)または40%グリセロール中のプレイオトロフィン(PTN)(1μg/ml)10μlを含む局所配合物を、週3回、15日間、1.5歳の脱毛症のBlack 6 MKヘテロ接合型ノックアウト(+/−)マウスの異なる脱毛症領域に投与した、被毛成長促進効果を示す写真を提示する。図中、各列の円は、同列の各動物についてのMK(首の領域に近い方の円)およびPTN(尾の領域に近い方の円)の皮膚パッチの位置を指示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Lは、処置開始からそれぞれ1、4、6、8、11、13、15、18、20、22および25日目のマウスを示す。データは、MKまたはPTNの局所配合物で処置した動物がこの動物モデルにおいて有意の被毛再成長を示すこと、およびPTNよりMKを用いると被毛再成長がより速やかに起きることを指摘する。15日後に処置を停止した時点で(パネルH)、MKは25日目まで持続する有益な効果をもっていた。動物は処置後にそれらの背側領域全体にわたって改善された被毛状態を示したので、被毛再成長は処置領域に完全に局在化するわけではない。
【図2】図2は、MK(1μg/ml)またはPTN(1μg/ml)50μlを含む配合物を、高齢のBlack 6 MKホモ接合型ノックアウト(−/−)マウスの異なる脱毛症領域に15日間、非経口(すなわち皮下)投与し、続いて図1の説明に記載した局所配合物でさらに10日間処置した効果を示す写真を提示する。図中、各列の円は、同列の各動物についてのMK(首の領域に近い方の円)およびPTN(尾の領域に近い方の円)の皮下注射および皮膚パッチの位置を指示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Lは、処置開始からそれぞれ1、4、6、8、11、13、15、18、20、22および25日目のマウスを示す。パネルHは、週3回の局所処置を開始した日の動物を示す。データは、MKまたはPTNの皮下注射で処置した動物が15日後に肉眼で見える被毛再成長の徴候を示さなかったことを指摘する。しかし、局所療法の開始後10日目に、MKまたはPTNの投与はこの動物モデルにおいて被毛成長を刺激した(パネルL)。動物は処置後にそれらの背側領域全体にわたって改善された被毛状態を示したので、被毛再成長は処置領域に完全に局在化したわけではなかった。
【図3】図3は、10%グリセロール中のMK(2μg/ml)100μlを、週5回、1.5歳のBlack 6 MKヘテロ接合型ノックアウト(+/−)マウスの脱毛症領域に外部適用した、被毛成長促進効果を示す写真を提示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Fは、処置開始からそれぞれ7日目、14日目、21日目、28日目、および35日目のマウスを示す。データは35日間の試験期間中に被毛再成長が進行し、約21〜28日後に有意の被毛再成長が顕著であることを示す(パネルCおよびD)。
【図4】図4は、10%グリセロール中のPTN(2μg/ml)100μlを、週5回、1.5歳のBlack 6 MKヘテロ接合型ノックアウト(+/−)マウスの脱毛症領域に外部適用した、被毛成長促進効果を示す写真を提示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Fは、処置開始からそれぞれ7日目、14日目、21日目、28日目、および35日目のマウスを示す。データは35日間の試験期間中に被毛再成長が進行し、約21〜28日後に有意の被毛再成長が顕著であることを示す(パネルCおよびD)。
【図5】図5は、図3および4の実験に対する陽性対照として、100μlのミノキシジル(リアップ(RiUP)(登録商標)、大正製薬株式会社)を高齢のBlack 6 MKヘテロ接合型ノックアウト(+/−)マウスの脱毛症領域に外部適用した、被毛成長促進効果を示す写真を提示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Fは、処置開始からそれぞれ7日目、14日目、21日目、28日目、および35日目のマウスを示す。ミノキシジルによる35日間の処置後に皮膚の実質領域で被毛が再成長しなかったので、データはミノキシジルによる処置がMKまたはPTNによる処置後にみられたものより効果が低いことを示す。
【図6】図6は、図8および9の実験に対する陰性対照として、100μlの10%(v/v)グリセロール/リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を外部適用した後の、9週齢の雄C3H/HeJマウスの剃毛領域における被毛再成長を示す写真を提示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Dは、処置開始からそれぞれ7日目、14日目、および21日目のマウスを示す。データは約21日目に初めて肉眼で見えるようになる遅い被毛再成長を示す。
【図7】図7は、図8および9の実験に対する陽性対照として、100μlのミノキシジル(たとえば、1% w/v;RiUP(登録商標)、大正製薬株式会社)を外部適用した後の、9週齢の雄C3H/HeJマウスの剃毛領域における被毛再成長を示す写真を提示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Dは、処置開始からそれぞれ7日目、14日目、および21日目のマウスを示す。データは約21日目に初めて肉眼で見えるようになる遅い被毛再成長を示し、これはミノキシジルが真皮乳頭に及ぼす血管拡張作用と一致する。
【図8】図8は、10%グリセロール/PBS中のMK(2μg/ml)100μlを外部適用した後の、9週齢の雄C3H/HeJマウスの剃毛領域における被毛再成長を示す写真を提示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Dは、処置開始からそれぞれ7日目、14日目、および21日目のマウスを示す。データは約21日目に初めて肉眼で見えるようになる遅い被毛再成長を示し、これは、脱毛症の症状を示すことなく成長期に同期化したにすぎない動物においてMKの作用様式がミノキシジルと異なることを示唆する。
【図9】図9は、10%グリセロール/PBS中のPTN(2μg/ml)100μlを外部適用した後の、9週齢の雄C3H/HeJマウスの剃毛領域における被毛再成長を示す写真を提示する。パネルAは、処置を開始した日の動物を示す。パネルB〜Dは、処置開始からそれぞれ7日目、14日目、および21日目のマウスを示す。データは、約21日目に初めて肉眼で見えるようになる遅い被毛再成長を示し、これは、脱毛症の症状を示すことなく成長期に同期化したにすぎない動物においては、MKの作用様式がミノキシジルと異なることを示唆する。
【図10】図10は、1日目に剃毛およびワックス処理することによって成長期に同期化し、9日目に150mg/kgのシクロホスファミド(CYP)を腹腔内注射した後のシクロホスファミド誘発脱毛症のネズミモデルにおいて、経時的に(日)発症した脱毛症のパーセントを示すグラフを提示する。脱毛症のパーセントは、皮膚パッチを適用した皮膚の面積のうち、指示した測定日に脱毛を示すパーセントとして測定された。丸は1日1回の生理食塩水プラセボ(すなわちミッドカインタンパク質を含まない)をCYPのほかに投与した動物における脱毛症を示す。中実四角(MK 2−29)は、5μgのミッドカインタンパク質を1日1回の基準で2日目から実験終了の29日目まで局所投与した動物における脱毛症のパーセントを示す。中実三角(MK 10−29)は、5μgのミッドカインタンパク質をそれぞれ1日1回の基準で10日目から実験終了の29日目まで局所投与した動物における脱毛症のパーセントを示す。データは、CYP投与の前および/または後に投与した場合にミッドカインタンパク質がCYP誘発による被毛脱落を軽減すること、ならびにミッドカインがCYP処理停止後の被毛成長により測定した毛包回復速度を増大させることを証明する。これらの条件下で、プラセボ対照を投与した動物とミッドカインを投与した動物との最大差は12〜14日目に検知できた。
【図11】図11は、図10に提示したデータの13日目の脱毛症のパーセントのグラフを提示する。脱毛症のパーセントは、皮膚パッチを適用した皮膚の面積のうち、指示した測定日に脱毛を示すパーセントとして測定された。中空棒(PBS)は1日1回の生理食塩水プラセボ(すなわちミッドカインタンパク質を含まない)をCYPのほかに投与した動物における42%の脱毛症を示す。ハッチングを施した棒(MK 2−29)は、5μgのミッドカインタンパク質を1日1回の基準で2日目から実験終了の29日目まで局所投与した動物におけるわずか20%脱毛症のパーセントを示す。ストライプを施した棒(MK 10−29)は、5μgのミッドカインタンパク質をそれぞれ1日1回の基準で10日目から実験終了の29日目まで局所投与した動物におけるわずか26%の脱毛症のパーセントを示す。データは、CYPの前および/または後に投与した場合にミッドカインタンパク質がCYP誘発による被毛脱落を軽減すること、ならびにミッドカインがCYP処理停止後の被毛成長により測定した毛包回復速度を増大させることを証明する。
【図12】図12は、15匹のマウスの背側の皮膚の写真を提示する:それぞれ、1日1回、局所配合物として投与したリン酸緩衝化生理食塩水プラセボ(すなわちミッドカインタンパク質を含まない)で処置(PBSのラベルを付けた5匹のマウスのグループ)、あるいは単回シクロホスファミド(CYP)腹腔内注射の前および/または後に1日1回、局所配合物として投与した5μgのミッドカインタンパク質で処置(MK 2−29のラベルを付けた5匹のマウスのグループ)、あるいは単回150mg/kgのシクロホスファミド(CYP)腹腔内注射後に1日1回の基準で5μgのミッドカインタンパク質で局所処置(MK 10−29のラベルを付けた5匹のマウスのグループ)。動物を被毛再成長/脱毛症の徴候および皮膚の色素沈着について観察した。データは、PBSで処置したマウスが特にそれらの首の領域に著しい被毛脱落および灰色またはピンク色の皮膚の色を示したことを指摘し、これは退行期(灰色)または休止期(ピンク色)の毛包が優勢であることと一致する。CYP処理の前と後にミッドカインタンパク質で処置したマウス(MK 2−29)は、PBSを投与したグループと比較して少ない被毛脱落面積を示し、皮膚は均一に黒色または濃い灰色であり、これは成長期(黒色)の毛包が優勢であって退行期の割合が低いことと一致する。このグループではピンク色の皮膚はほとんど見られず、これは休止期の毛包の割合がはるかに少ないことを示唆する。同様に、CYP処理後にのみミッドカインタンパク質で処置したマウス(MK 10−29)もPBSを投与したグループと比較して少ない脱毛面積を示し、化学療法の前と後にミッドカインタンパク質を投与した動物と肉眼的に同様に見えた。化学療法の後にのみミッドカインタンパク質を投与したマウスの皮膚は均一に濃い灰色であり、これは成長期または退行期の毛包が優勢であることと一致する。
【0053】
配列リストの簡単な説明
SEQ ID NO:1は、ヒトのミッドカインのアミノ酸配列を提示する(寄託識別子gi|4505135およびref|NP_002382.1)。
【0054】
SEQ ID NO:2は、ヒトのプレイオトロフィンのアミノ酸配列を提示する(寄託識別子gi|4506281およびref|NP_002816.1)。
SEQ ID NO:3は、WO 2004/052928のSEQ ID NO: 4に対応するヒトのミッドカイン様タンパク質のアミノ酸配列を提示する)。
【0055】
SEQ ID NO:4は、ヒトのミッドカインmRNAのヌクレオチド配列を提示する(寄託識別子gi|182650およびgb|M69148.1)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
ミッドカインファミリーのタンパク質
ミッドカインは13−kDaのタンパク質であり、レチノイン酸による肺腫瘍細胞の分化の初期に発現が誘導される遺伝子からの産物として発見された。プレイオトロフィンは、ラット新生仔の脳に、神経突起の伸長を増強する能力をもつヘパリン結合タンパク質として発見された。
【0057】
本明細書中で用いる用語“ミッドカインファミリーのタンパク質”は、ミッドカインまたはその機能性領域と類似のアミノ酸配列を示し、かつミッドカインのものと同一または類似の機能を示す、タンパク質である。ミッドカインファミリーのタンパク質には、ミッドカインファミリーのタンパク質の機能性バリアントが含まれる。
【0058】
ミッドカインとの同一性が低いタンパク質ですら、そのタンパク質がミッドカインのものと同一の機能または類似の機能をもつ限り、ミッドカインファミリーのタンパク質である可能性がある。そのようなミッドカインファミリーのタンパク質の例は、ミッドカイン(たとえばSEQ ID NO:1)、ミッドカイン様タンパク質(たとえばSEQ ID NO:3(WO 2004/052928))、トランケート型ミッドカインタンパク質、またはプレイオトロフィン(たとえばSEQ ID NO:2)であってもよい。ミッドカインファミリーのタンパク質はミッドカインファミリーのタンパク質の機能性バリアントであってもよく、これにはミッドカイン、ミッドカイン様タンパク質、トランケート型ミッドカインタンパク質、またはプレイオトロフィンの機能性バリアントが含まれる。機能性バリアントは、修飾されていないタンパク質と比較して、1個以上のアミノ酸の置換、欠失または付加によって修飾されていてもよい。ミッドカインファミリーのタンパク質の機能性バリアントはミッドカインの機能を示すであろう。
【0059】
1態様において、ミッドカインファミリーのタンパク質はミッドカインである。他の態様において、ミッドカインファミリーのタンパク質はプレイオトロフィリンである。
ミッドカインの機能は、細胞増殖の増強、アポトーシスの阻害、ヘパリンへの結合、細胞移動の増強、または細胞分化の誘導であってもよい。1態様において、MKの機能はアポトーシスの阻害である。
【0060】
本明細書中で用いる“機能性バリアント”および“バリアント”には、ミッドカインの機能を示す天然タンパク質バリアントまたは人為的に修飾したタンパク質バリアントが含まれる。
【0061】
本明細書中で用いる“修飾”(“modified”または“modification”)には、アミノ酸残基の置換、付加および/または欠失が含まれる。
ミッドカインファミリーのタンパク質は、それの長さ全体または機能性領域にわたって、野生型ミッドカインファミリーのタンパク質(たとえば、SEQ ID NO:1〜3のいずれか)のセグメント(好ましくは連続セグメント)に対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列をもつことができる。
【0062】
ミッドカインファミリーのタンパク質は、たとえばミッドカインの機能を維持または増強するために選択された位置において、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、またはさらに15、20、25、30、35、40、45もしくは50の修飾を含むことができる。
【0063】
したがって、具体的に述べるミッドカインファミリーのタンパク質の配列は、アミノ酸の個々の置換、欠失および/または付加がミッドカインファミリーのタンパク質の機能を強く損なわない限り、変更が可能である。
【0064】
ミッドカインファミリーのタンパク質またはそれらの機能性バリアントは、他のペプチドもしくはポリペプチドと、またはさらに他の化学基、たとえばグリコシル基、脂質、ホスフェート、アセチル基などと結合していてもよく、ただし、それらがそれらのミッドカイン機能に強い有害な影響を及ぼさない限りである。したがって、修飾されたミッドカインファミリーのタンパク質は融合構築体であってもよい。たとえば、ミッドカインファミリーのタンパク質は、ミッドカインファミリーのタンパク質が毛包細胞に進入するのを容易にすることが当技術分野で認識されているタンパク質トランスロケーションドメインを含むペプチジル部分に縮合していてもよい。
【0065】
天然アミノ酸のほかに、天然に存在しないアミノ酸または修飾されたアミノ酸も考慮され、本発明の範囲に含まれる。事実、本明細書中で用いる“アミノ酸”は、天然アミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、およびアミノ酸アナログ、ならびにそれぞれのDまたはL立体異性体を表わす。
【0066】
天然アミノ酸には、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リシン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、バリン(V)、ヒドロキシプロリン(Oおよび/またはHyp)、イソジチロシン(IDT)、およびジ−イソジチロシン(ジ−IDT)が含まれる。ヒドロキシプロリン、イソジチロシン、およびジ−イソジチロシンは、翻訳後に形成される。ある態様において、天然アミノ酸、特に遺伝子コードされる20種類のアミノ酸が用いられる。
【0067】
置換は保存的アミノ酸置換であってもよく、その場合、置換アミノ酸は基準配列中の対応するアミノ酸と類似の構造または化学的特性をもつ。あるいは、置換は非保存的アミノ酸置換であってもよい。
【0068】
たとえば、保存的アミノ酸置換は下記の置換を伴う:脂肪族または疎水性アミノ酸、たとえばアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンの相互置換;ヒドロキシル含有アミノ酸、たとえばセリンおよびトレオニンの相互置換;酸性残基、たとえばグルタミン酸またはアスパラギン酸の相互置換;アミド含有残基、たとえばアスパラギンおよびグルタミンの相互置換;芳香族残基、たとえばフェニルアラニンおよびチロシンの相互置換;塩基性残基、たとえばリシン、アルギニンおよびヒスチジンの相互置換;ならびに小分子アミノ酸、たとえばアラニン、セリン、トレオニン、メチオニン、およびグリシンの相互置換。
【0069】
機能性バリアントは、ミッドカインファミリーのタンパク質をアミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティー、および/またはペプチド主鎖のレベルで化学修飾した際に得ることができる。これらの変更は類似または改良された療法特性をもつタンパク質を得るためのものである。
【0070】
力価の増強、活性の持続、精製の容易さ、および/または半減期の延長をもたらす修飾は、当業者に既知であろう。
ミッドカインファミリーのタンパク質の機能性バリアントは、タンパク質の配列を修飾し、次いで得られたタンパク質をミッドカインと同様に機能する能力、たとえば細胞増殖の増強、アポトーシスの阻害、ヘパリンへの結合、細胞移動の増強、または細胞分化の誘導についてアッセイすることによって同定できる。
【0071】
ミッドカインファミリーのタンパク質は、当業者に周知の合成化学または組換えDNA変異形成技術により製造できる。たとえば、ミッドカインはJP-A-H09-95454の実施例に開示される方法に従って製造できる。
【0072】
配合物
ミッドカインファミリーのタンパク質は、医薬、医薬部外品、または化粧品の分野に用いられる、好ましくは局所投与に適したいずれかの形態で配合できる。たとえば、組成物は育毛製品、毛髪または頭皮用の化粧品(たとえば、シャンプー、ヘアコンディショナー、頭皮ローション、頭皮クリーム、ヘアトニックなど)、スキンケア製品(たとえば、ローション、クリーム、フェースクリーム、フェースローション、乳液、パック剤、洗顔液、石鹸など)、ボディーケア製品(たとえば、ボディークリーム、ボディーローション、石鹸、液体洗剤、入浴剤など)、UV保護剤(たとえば、日焼け止め、サンスクリーンローション、日焼けオイルなど)、または化粧品(たとえば、アイライナー、アイブローペンシル、クリーム、ローションなど)であってもよい。
【0073】
好都合には、ミッドカインファミリーのタンパク質を、たとえば静脈内注射による非経口投与用として、たとえば1種類以上の化学療法薬と共に配合できる。
賦形剤は一般に溶解性および/または生体接着性を改善するために剤形に含有されるであろう。適切な賦形剤には、溶剤、補助溶剤、乳化剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、皮膚軟化剤、抗酸化剤、およびキレート化剤、湿潤剤、ならびに吸水剤が含まれる。配合物は1種類以上の添加剤、たとえば色素、有色顔料、真珠光沢剤(pearlescent agent)、脱臭剤、および消臭剤も含むことができる。
【0074】
希釈剤または増量剤は、錠剤の圧縮またはビーズおよび顆粒の形成のための粒度が得られるように、固体剤形の嵩を増す。適切な希釈剤には、リン酸二カルシウム2水和物、硫酸カルシウム、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、水解デンプン、アルファー化デンプン、二酸化ケイ素、酸化チタン、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよび粉糖が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
配合物は1種類以上の分散剤、たとえばリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、生理食塩水、ブドウ糖、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)も含むことができる。
【0076】
配合物は、固体剤形配合物に凝集性を付与し、これによって錠剤、ビーズまたは顆粒が剤形形成後に確実に無傷のままであるようにするために、1種類以上の結合剤も含むことができる。適切な結合剤には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:デンプン、アルファー化デンプン、ゼラチン、糖類(ショ糖、ブドウ糖、デキストロース、乳糖およびソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ろう、天然ゴムおよび合成ゴム、たとえばアラビアゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、下記を含むセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(“HPMC”)、微結晶性セルロース(“MCC”)、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、およびベーガム(veegum)、ならびに合成ポリマー、たとえばアクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸、ならびにポリビニルピロリドン(PVP)。
【0077】
配合物は、固体単位剤形、たとえば錠剤の製造または摂取を容易にするために、1種類以上の滑沢剤も含むことができる。たとえば、適切な滑沢剤にはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、タルク、および鉱油が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
配合物は、投与後の剤形の崩壊を容易にするために1種類以上の崩壊剤も含むことができ、これには一般にデンプン、グリコール酸デンプンナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファー化デンプン、クレー、セルロース、アルギニン、ゴム、または架橋ポリマー、たとえば架橋PVPが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
配合物は、たとえば酸化または細菌作用による薬物分解反応を阻害または遅延するために、1種類以上の安定剤および/または保存剤(たとえば、E216、E218、およびクロロブタノール半水和物)も含むことができる。
【0080】
配合物は1種類以上の界面活性剤も含むことができる。界面活性剤は陰イオン性、陽イオン性、両性または非イオン性界面活性剤であってもよい。適切な陰イオン界面活性剤には、カルボキシレート、スルホネートおよびスルフェートイオンを含むものが含まれるが、これらに限定されない。陰イオン界面活性剤の例には、長鎖アルキルスルホン酸ナトリウム、カリウム、アンモニウム、およびアルキルアリールスルホネート、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、たとえばビス−(2−エチルチオキシ)−スルホコハク酸ナトリウム;ならびにアルキルスルフェート、たとえばラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。陽イオン界面活性剤には第四級アンモニウム化合物、たとえば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンおよびヤシアミンが含まれるが、これらに限定されない。非イオン界面活性剤の例には、エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールミリステート、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ポリグリセリル−4−オレエート、アクリル酸ソルビタン、アクリル酸スクロース、PEG−150ラウレート、PEG−00モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン水素化獣脂アミドが含まれる。両性界面活性剤の例には、ナトリウムN−ドデシル−β−アラニン、ナトリウムN−ラウリル−β−イミノジプロピオネート、ミリストアンホアセテート(myristoamphoacetate)、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインが含まれる。
【0081】
所望により、固体配合物、たとえば錠剤、ビーズ、顆粒、または粒子は、ある量の無毒性助剤、たとえば湿潤剤または乳化剤、色素、またはpH緩衝剤も含有することができる。
【0082】
医薬配合物は、単位剤形当たり前決定量の有効薬剤、すなわちミッドカインファミリーのタンパク質またはその誘導体もしくはアナログを含有する単位剤形で提供できる。有効薬剤の濃度は、その配合物が予防もしくは治療のいずれのためのものか、投与経路、選択した経路による投与後の化合物の半減期、患者の年令、体重および状態(たとえば処置される問題ドリンキングの重症度を含む)に応じて変更できる。たとえば、単位剤形は約1μg〜10ug、または0.01mg〜1000mg、または0.1mg〜250mgのミッドカインファミリーのタンパク質またはその誘導体もしくはアナログを含むことができる。他の例において、ミッドカインファミリーのタンパク質またはその誘導体もしくはアナログは、有効薬剤の濃度が医薬組成物の総重量を基準として少なくとも約1%(w/w)または少なくとも約5%(w/w)または少なくとも約10%(w/w)または少なくとも約25%(w/w)であるように配合できる。
【0083】
医薬配合物を調製するためには、1種類以上のミッドカインファミリーのタンパク質と医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を混合する;たとえば、生理的に許容できるキャリヤー、賦形剤または安定剤と、たとえば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、または懸濁液の形で混合することによる(たとえば以下を参照:Hardman, et al. (2001) Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, N.Y.; Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, N.Y.; Avis, et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al, (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY; Weiner and Kotkoskie (2000) Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y.)。
【0084】
脱毛症を処置するための配合物中におけるミッドカインファミリーのタンパク質の量は、種々のパラメーター、たとえば処置される哺乳動物の年齢、性別および状態に応じて変更できる。たとえば、ミッドカインファミリーのタンパク質を、医薬の総重量の0.001〜50%(w/w)、0.001〜10%(w/w)、0.001〜5%(w/w)、または0.001〜1%の最終濃度になるように配合できる。液体配合物中のミッドカインファミリーのタンパク質の濃度は、たとえば0.0001μg/ml〜2mg/ml、0.001μg/ml〜1mg/ml、0.01μg/ml〜500μg/ml、0.1μg/ml〜100μg/ml、0.1μg/ml〜50μg/ml、0.1μg/ml〜10μg/ml、または1μg/ml〜2μg/mlであってもよい。
【0085】
ミッドカインファミリーのタンパク質および医薬的に許容できるキャリヤーまたは希釈剤を含む配合物は、同じ状態を処置するための補助療法薬のうちいずれかをさらに含むことができ、その際、その補助療法薬はミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)と同じ経路による投与に適している。たとえば、ミッドカインファミリーのタンパク質に、局所投与用として、セストラジオールおよび/またはオキサンドロロンおよび/またはミノキシジルを配合できる。補助療法薬は一般にその配合物中に既知の処方レベルに従った濃度で存在する。そのような組成物が増強された療法効果を患者に提供し、それらの効果の和を超える可能性があることは、当業者に認識されるであろう。
【0086】
医薬化合物の配合物は選択する投与経路に従って異なるであろう(たとえば、液剤、乳剤、カプセル剤)。液剤または乳剤について、適切なキャリヤーには、たとえば水性またはアルコール性/水性の溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれ、これには生理食塩水および緩衝化された媒体が含まれる。非経口ビヒクルには、たとえば塩化ナトリウム溶液、リンガー液デキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳糖添加リンガー液、または固定油を含めることができる。静脈内ビヒクルには、種々の添加剤、保存剤、または体液、栄養素もしくは電解質の補充剤(replenisher)を含めることができる(一般的に、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, Mack Publishing Co., Pa., 1985を参照)。吸入用としては、薬剤を可溶化し、そして投与に適したディスペンサー(たとえば、アトマイザー、ネブライザー、または加圧エアゾールディスペンサー)に装填することができる。
【0087】
医薬配合物は、いずれか適切な経路による投与に適合させることができる:たとえば、経口(口腔または舌下を含む)、局所(口腔、舌下または経皮を含む)、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、または皮内を含む)経路。そのような配合物は、医薬技術分野で既知のいずれかの方法により、たとえば有効成分とキャリヤー(単数または複数)、希釈剤(単数または複数)または賦形剤(単数または複数)を一緒にすることにより調製できる。
【0088】
たとえば、ミッドカインファミリーのタンパク質を局所投与用として配合する。局所組成物には、ミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)を処置すべき皮膚の表面と直接接触させることにより外部適用する医薬剤形が含まれる。この目的のための一般的な医薬剤形には、軟膏剤、リニメント剤、クリーム、シャンプー、ローション、パスタ剤、ゼリー剤、スプレー剤、エアゾール剤などが含まれ、処置すべき身体部分に応じてパッチまたは含浸包帯剤として適用できる。用語“軟膏剤”には、油性、水溶性およびエマルジョンタイプの基剤、たとえばワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、およびその混合物を含む配合物(クリームを含む)が含まれる。
【0089】
まゆ毛またはまつ毛に局所使用するために、有効なミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)を、薬理的に許容できる緩衝剤および塩類の添加によって生理的に許容できる浸透圧を示す水性アルコール溶液、クリーム、軟膏または油中に配合できる。そのような配合物は、ディスペンサーに応じて、保存剤、たとえば塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、パラヒドロキシ安息香酸、ならびにフェニル水銀塩、たとえば硝酸塩、クロリド、酢酸塩およびホウ酸塩、または抗酸化剤、ならびに添加剤、たとえばEDTA、ソルビトール、ホウ酸などを添加剤として含有してもよく、含有しなくてもよい。さらに、特定の水性液剤は、増粘剤、たとえば多糖類、たとえばメチルセルロース、ムコ多糖類、たとえばヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、またはポリアルコール、たとえばポリビニルアルコールを含有してもよい。種々の徐放性ゲルまたはマトリックス、ならびに可溶性および不溶性の眼内挿入剤(ocular insert)、たとえばインサイチュゲルを形成する物質をベースとするものも使用できる。使用する実際の配合物およびミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)に応じて、種々の量の薬物および種々の投与計画を採用できる。
【0090】
皮膚および頭皮に局所使用するために、ミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)は、有利には軟膏、クリーム、リニメントまたはパッチを有効成分のキャリヤーとして用いて配合できる。同様に、これらの配合物はディスペンサーおよび用途の性質に応じて、保存剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。そのような保存剤には、前記のもの、およびメチル−、プロピル−、またはブチル−パラヒドロキシ安息香酸、ベタイン、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウムなどが含まれる。徐放送達のための種々のマトリックスも使用できる。
【0091】
他の例において、1種類以上のミッドカインファミリーのタンパク質を含む配合物を、たとえば皮下または静脈内注射による非経口投与に適合させる。そのような配合物には水性および非水性の無菌注射液剤が含まれ、それらは抗酸化剤、ならびに緩衝剤、細菌発育阻止剤、および配合物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有してもよい;また水性および非水性の無菌懸濁液剤が含まれ、それらは懸濁化剤および増粘剤を含有してもよい。配合物は単回量または多数回量の容器、たとえば密閉したアンプルまたはバイアルに入れて提供でき、また使用直前に無菌液体キャリヤー、たとえば注射用水を添加するだけでよい凍結乾燥(freeze-dried、lyophilized)状態で貯蔵できる。即時調製される注射用液剤および懸濁液剤は、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製できる。一例において、1種類以上のミッドカインファミリーのタンパク質を、非経口投与のために、静脈用の脂質乳剤または界面活性剤ミセルまたはポリマーミセルとして配合する(たとえば、Jones et al, Eur. J. Pharmaceutics Biopharmaceutics 48, 101-111, 1999; Torchilin J. Clin, release 73, 137-172, 2001を参照。
【0092】
持続放出型の注射用配合物は、たとえば1種類以上のミッドカインファミリーのタンパク質を、医薬およびマトリックス材料を収容した、直径約1μm〜150μm、たとえば約5μm〜25μmの体積平均直径をもつ多孔質マイクロ粒子に封入することにより調製される。一例において、多孔質マイクロ粒子は約5%〜90%(体積)の平均多孔度をもつ。他の例において、多孔質マイクロ粒子はさらに1種類以上の界面活性剤、たとえばリン脂質を含む。マイクロ粒子を医薬的に許容できる水性または非水性の注射用ビヒクル中に分散させてもよい。そのような配合物に適したマトリックス材料は、生体適合性合成ポリマー、脂質、疎水性分子、またはその組合わせを含む。たとえば、合成ポリマーはたとえば下記の群から選択されるポリマーを含むことができる:ポリ(ヒドロキシ酸)、たとえばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリアルキレン類、たとえばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリアルキレングリコール類、たとえばポリ(エチレングリコール)、ポリアルキレンオキシド類、たとえばポリ(エチレンオキシド)、ポリアルキレンテレフタレート、たとえばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル類、ポリビニルエステル類、ポリハロゲン化ビニル類、たとえばポリ(塩化ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン類、ポリ(ビニルアルコール類)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリウレタン類およびそのコポリマー、誘導体化セルロース、たとえばアルキルセルロース類、ヒドロキシアルキルセルロース類、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、ニトロセルロース類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩(本明細書中でまとめて“合成セルロース類”と呼ぶ)、アクリル酸、メタクリル酸のポリマーもしくはコポリマーまたはその誘導体(エステル類を含む):ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)(本明細書中でまとめて“ポリアクリル酸類”と呼ぶ)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、そのコポリマー、誘導体およびブレンド。好ましい例において、合成ポリマーはポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、またはポリ(ラクチド−co−グリコリド)を含む。
【0093】
他の例において、医薬配合物を経口投与用に、たとえばカプセル剤、ソフトゲル剤、または錠剤;水性または非水性液体中の散剤または顆粒剤、液剤または懸濁液剤、経口摂取可能なフォームもしくはホイップ、または水中油型乳液もしくは油中水型乳液として適合させる。経口配合物は、有効量のミッドカインファミリーのタンパク質および少なくとも1種類の炭水化物アルコールおよび水性結合剤を含む顆粒内相を含むことができる。医薬配合物は実質的に乳糖を含まないものであってもよい。そのような配合物に好ましい炭水化物アルコールは、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール、エリトリトールおよびキシリトールからなる群から選択される。好ましくは、炭水化物アルコールは約15%〜約90%の濃度で存在する。好ましい水性結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン類、デンプン類、ゼラチン類などからなる群から選択される。結合剤は一般に約1%から約15%まで(重量)の範囲で存在する。顆粒内相は1種類以上の希釈剤、たとえば微結晶性セルロース、粉末セルロース、二塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート(dextrate)類、デキストリン類、アルギネート類およびデキストロース賦形剤からなる群から選択される希釈剤も含むことができる。そのような希釈剤も約15%〜約90%(重量)の範囲で存在する。顆粒内相は1種類以上の崩壊剤、たとえば置換度の低いヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、および部分アルファー化デンプンからなる群から選択される崩壊剤も含むことができる。崩壊剤は一般に約5%から約20%まで(重量)の範囲で存在する。そのような配合物は、1種類以上の滑沢剤、たとえばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびにフマル酸ステアリルナトリウムからなる群から選択される滑沢剤も含むことができる。滑沢剤は一般に約0.5%から約5%まで(重量)の範囲で存在する。たとえばミッドカインファミリーのタンパク質および少なくとも1種類の炭水化物アルコールを混合して乾燥ブレンドを調製し、この乾燥ブレンドを顆粒内相が得られるように水性結合剤と共に湿式造粒し、得られた顆粒内相を配合物が得られるようにさらに配合することを含む方法により、そのような配合物を錠剤、カプセル剤またはソフトゲル剤にする。一般に錠剤またはカプセル剤は、たとえば0.001mgから1000mgまでの適宜な単位量を含有するように調製される。
【0094】
あるいは、1種類以上のミッドカインファミリーのタンパク質を含む経口投与用の液体または半固体医薬配合物、たとえばハードゲルまたはソフトゲルカプセル剤を製造できる。この配合物は、第1キャリヤー成分および任意選択的な第2キャリヤー成分を含むことができ、これらのキャリヤーは、独立して下記のうち1種類以上を含む:ラウロイルマクロゲル(macrogel)グリコリド類、カプリロカプロイルマクロゲルグリコリド類、ステアロイルマクロゲルグリコリド類、リノレオイルマクロゲルグリコリド類、オレオイルマクロゲルグリコリド類、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、脂肪アルコール、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、脂肪酸、ポリエトキシル化脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪エステル、脂肪酸のグリセリド類、ポリオキシエチレン−グリセロール脂肪エステル、ポリオキシプロピレン−グリセロール脂肪エステル、ポリグリコール化グリセリド類、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリエトキシル化ソルビタンエステル、ポリエトキシル化コレステロール、ポリエトキシル化ひまし油、ポリエトキシル化ステロール、レシチン、グリセロール、ソルビン酸、ソルビトール、またはポリエトキシル化植物油。
【0095】
配合物は、下記のうち1種類以上からなる乳化/可溶化成分も含むことができる:アルキル硫酸金属塩、第四級アンモニウム化合物、脂肪酸の塩類、スルホスクシネート類、タウレート類、アミノ酸類、ラウロイルマクロゴール(macrogol)グリセリド類、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド類、ステアロイルマクロゴールグリセリド類、リノレオイルマクロゴールグリセリド類、オレオイルマクロゴールグリセリド類、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、脂肪酸、ポリエトキシル化脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−グリセロール脂肪エステル、ポリグリコール化グリセリド類、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリエトキシル化ソルビタンエステル、ポリエトキシル化コレステロール、ポリエトキシル化ひまし油、ポリエトキシル化ステロール、レシチン、またはポリエトキシル化植物油。
【0096】
配合物は、結晶化防止/可溶化成分も含むことができ、それらは存在する場合には一般に下記のうち1種類以上からなる:アルキル硫酸金属塩、ポリビニルピロリドン、ラウロイルマクロゴールグリセリド類、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド類、ステアロイルマクロゴールグリセリド類、リノレオイルマクロゴールグリセリド類、オレオイルマクロゴールグリセリド類、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、脂肪アルコール、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、脂肪酸、ポリエトキシル化脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪エステル、脂肪酸のグリセリド類、ポリオキシエチレン−グリセロール脂肪エステル、ポリグリコール化グリセリド類、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリエトキシル化ソルビタンエステル、ポリエトキシル化コレステロール、ポリエトキシル化ひまし油、ポリエトキシル化ステロール、レシチン、またはポリエトキシル化植物油。
【0097】
ミッドカインファミリーのタンパク質に疎水性ポリマー、好ましくは生体接着性ポリマーを配合し、場合によりマイクロ粒子またはナノ粒子に封入し、またはそれら全体に分散させてもよい。生体接着性ポリマーは、配合物を胃腸管の壁に接着させることにより胃腸での保持を改善する。適切な生体接着性ポリマーには、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリ(ビスカルボキシフェノキシプロパン−co−無水セバシン酸)(20:80)(ポリ(CCP:SA))、アルギネート(調製したばかりのもの);およびポリ(無水フマル酸−co−無水セバシン酸(20:80)(ポリ(FA:SA))、タイプA(スダン(sudan)レッド色素を含有)およびB(色素無添加)が含まれる。他の高接着性ポリマーには、p(FA:SA)(50:50)、ならびに非水溶性のポリアクリレート類およびポリアクリルアミド類が含まれる。好ましい生体接着性ポリマーは、一般に非水溶性であるのに十分なほど疎水性であるが、接着を促進するのに十分な量の露出した表面カルボキシル基を含む:たとえば非水溶性のポリアクリレート類およびポリメタクリル酸類;ヒドロキシ酸のポリマー、たとえばポリラクチドおよびポリグリコリド;ポリ酸無水物;ポリオルトエステル類;これらのポリマーを含むブレンド;ならびにこれらのポリマーのモノマーを含むコポリマー。好ましいバイオポリマーは生物侵食性(bioerodable)であり、好ましい分子量は1000から15,000kDaまでの範囲、最も好ましくは2000〜5000Daである。ポリ酸無水物、たとえばポリ無水アジピン酸(“p(AA)”)、ポリ無水フマル酸、ポリ無水セバシン酸、ポリ無水マレイン酸、ポリ無水リンゴ酸、ポリ無水フタル酸、ポリ無水イソフタル酸、ポリ無水アスパラギン酸、ポリ無水テレフタル酸、ポリ無水イソフタル酸、ポリ無水カルボキシフェノキシプロパン、ならびに他のポリ酸無水物との種々のモル比のコポリマーが、特に好ましい。親水性ポリマーと生体接着性疎水性ポリマーのブレンドも使用できる。適切な親水性ポリマーには、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類、およびポリエチレングリコールが含まれる。他の粘膜接着性ポリマーには、DOPA−無水マレイン酸コポリマー、無水イソフタル酸ポリマー、DOPA−メタクリレートポリマー、DOPA−セルロース系ポリマー、およびDOPA−アクリル酸ポリマーが含まれる。
【0098】
あるいは、ミッドカインファミリーのタンパク質を経口投与のためにポリマーに封入または分子分散させて粒径を低下させ、溶解性を高めることができる。これらのポリマーには、たとえば下記のものをめることができる:ポリ(乳酸)またはP(LA)、ポリカプリルラクトン、ポリラクチド−co−グリコリドまたはP(LGA)、ポリヒドロキシブチレート ポリβ−リンゴ酸);ポリ酸無水物、たとえばポリ(無水アジピン酸)またはP(AA)、ポリ(無水フマル酸−co−無水セバシン酸)またはP(FA:SA)、ポリ(無水セバシン酸)またはP(SA);セルロース系ポリマー、たとえばエチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースなど;アクリル酸およびメタクリル酸ポリマー、たとえばEudragit RS 100、RL 100、E100 PO、L100−55、L100、S100(Rohm Americaにより販売)、または医薬目的での封入のために一般に用いられる当業者に既知である他のポリマー。ポリイミドなどの疎水性ポリマーも適切である。一定量の親水性を付与するのに十分なブレンディングまたは共重合は、材料の湿潤性を改善するために有用な可能性がある。たとえば、約5%〜約20%のモノマーは親水性モノマーの可能性がある。親水性ポリマー、たとえばヒドロキシルプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)がこの目的で一般に用いられる。
【0099】
経口配合物は、たとえば少なくとも85%(wt/wt)のミッドカインファミリーのタンパク質をインビトロで60分以内に放出する“即時放出”配合物であってもよい。あるいは配合物は、即時放出配合物より低い速度で薬物を放出する、すなわち少なくとも85%(wt/wt)の薬物をインビトロで放出するのに60分より長時間かかる“制御放出”配合物であってもよい。放出期間を延長するために、ポリマーに対する有効薬剤の比率を高めることができる。相対薬物濃度を高めることは、ポリマーマトリックス内における有効化合物のドメインサイズを大きくし、これによって溶解を遅らせる効果をもつと考えられる。特定のタイプの疎水性ポリマーを含有するポリマーマトリックスの場合、そのポリマーが粘膜接着剤として作用し、胃腸管における有効化合物の保持時間を延長させるであろう。薬物溶解速度の増大とポリマーマトリックスの粘膜接着性との組合わせによって有効化合物の取込みが増加し、化合物について摂食状態と空腹状態にみられる差が少なくなる。
【0100】
本明細書に記載する配合物は、化粧品に一般に用いられる成分、たとえば油、界面活性剤、UV吸収剤、アルコール類、キレート化剤、pH調節剤、保存剤、増粘剤、色素、香料、および皮膚栄養補給剤をさらに含むことができる。具体的には、組成物は下記のものを含むことができる:皮膚化粧品に用いられる有効成分、たとえば酸化亜鉛マイクロ粒子、酸化チタン、UV吸収剤、たとえばParsol MCXおよびParsol 1789、ビタミン類、たとえばアスコルビン酸、保湿剤、たとえばヒアルロン酸ナトリウム、ワセリン、グリセリン、および尿素、ホルモン剤、皮膚明白剤(skin-lightening agent)、たとえば麹酸(kojic acid)、アルブチン(arbutin)、胎盤エキス、およびルシノール(rucinol)、ステロイド薬、アラキドン酸代謝産物およびヒスタミンなどの化学メディエーターの産生または放出の阻害薬(たとえばインドメタシン(indometacin)およびイブプロフェン(ibuprofen))、抗炎症薬、たとえば受容体アンタゴニスト、抗男性ホルモン薬、皮脂分泌抑制薬、たとえばビタミンA酸、ロイアルゼリーエキス、およびロイアルゼリー酸、末梢血管拡張薬、たとえばニコチン酸トコフェロール、アルプロスタジル(alprostadil)、塩酸イソクスプリン(isoxsuprine hydrochloride)、および塩酸トラゾリン(tolazoline hydrochloride)、末梢血管拡張活性をもつ二酸化炭素、血管循環促進薬、たとえばミノキシジル、塩化カルプロニウム(carpronium chloride)、トウガラシチンキ、ビタミンEバリアント、イチョウエキス、およびセンブリ(Swertia japonica)エキス、細胞刺激薬、たとえばペンタデカン酸グリセリドおよびニコチン酸アミド、抗微生物薬、たとえばヒノキチオール、L−メントール、およびイソプロピルメチルフェノール、グリシルリジン酸およびそのバリアントまたは塩類、セラミドおよびセラミドアナログ。
【0101】
用量単位および投与頻度
ミッドカインファミリーのタンパク質または医薬の用量および頻度は、状況に応じて適宜変更できる。
【0102】
一般に、ミッドカインファミリーのタンパク質、またはミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)を含む医薬は、任意の頻度で使用できる。一般に、ミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)を反復して長期間、処置すべき身体部分、たとえばまぶた、まゆ、皮膚または頭皮に局所適用する。好ましい投与計画は、一般に規則的な、たとえば1日1回、週1回、週2回または週3回で、少なくとも約1ヵ月間、より好ましくは少なくとも約3ヵ月間、最も好ましくは少なくとも約6ヵ月間の投与を伴うであろう。たとえばミッドカインファミリーのタンパク質または医薬を週1、2、3、4、5、6または7回(ミッドカインファミリーのタンパク質または医薬を1日1回適用することに相当する)使用できる。いずれかの日に、ミッドカインファミリーのタンパク質または医薬の使用が1日1、2、3、4または5回の適用に相当してもよい。1態様において、ミッドカインファミリーのタンパク質または医薬を哺乳動物に1日1回で週3回または5回適用する。
【0103】
一般に、ミッドカインファミリーのタンパク質を含む局所配合物を0.001〜1,000μg/cm/日、0.005〜500μg/cm/日、0.01〜100μg/cm/日、0.05〜50μg/cm/日、または0.1〜10μg/cm/日の量で適用できる。一般に、頭皮に局所適用する用量は、ミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)および配合物に応じて、約0.1ng〜約100mg/日、より好ましくは約1ng〜約10mg/日、最も好ましくは約10ng〜約1mg/日の範囲である。一般に、まぶたの処置のためのミッドカインファミリーのタンパク質(単数または複数)の1日量は、まぶた当たり約0.1ng〜約100mgであってもよい。
【0104】
ミッドカインファミリーのタンパク質を有効成分として単独で適用してもよく、あるいは他の有効成分と共に適用してもよい。同様に、医薬はミッドカインファミリーのタンパク質のほかに他の有効成分を含むことができる。ミッドカインファミリーのタンパク質以外のそのような有効成分は、細胞刺激薬、血液循環促進薬、抗男性ホルモン薬、皮脂分泌抑制薬、免疫抑制薬、抗ヒスタミン薬、抗微生物薬、病巣刺激薬、皮膚軟化剤、消炎薬、または低分子量抗アポトーシス薬であってもよいが、これらに限定されない。具体的には、それら他の有効成分は、下記のうち少なくとも1種類であってもよい:パントテン酸またはそのバリアント、胎盤エキス、光増感剤、チョウセンニンジンエキス、ビオチン、モノニトログアヤコール、塩化カルプロニウム(carpronium chloride)またはその水和物、ビタミンEまたはそのバリアント、センブリエキス、トウガラシチンキ、セファランチン、ニコチン酸またはそのバリアント、エストラジオール、エチニルエストラジオール、ランジン酸(randic acid)、ミノキシジルまたはそのアナログ/バリアント、5α−レダクターゼ阻害薬、12−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート、薬草、たとえば黄精(オウセイ)(Polygonatum rhizome)、カギカズラ(Uncaria)、マリアアザミ(Silybum marianum)、ヘンナ(henna)、および甘草(Glycyrrhiza)、安息香酸エストラジオール、ジフェニルヒダントイン、レゾルシン、ヒノキチオール、1−メントール、サリチル酸、タデ(Polygonum)根エキス、チクセツニンジン(Panax japonicus rhizome)エキス、パンテノール、二硫化セレン、塩酸ピリドキシン、ジピリチオン亜鉛、ピリチオン亜鉛、硫黄、ピロクトンオラミン(piroctone olamine)、ピリチオン亜鉛、硫黄、グリチルレチン酸ステアリル、グリシルリジン酸二カリウム、アラントイン、ジアルキルモノアミンバリアント、エゴマ(Perilla frutescens)エキス、ブクリョウ(Poria sclerotium)エキス、β−グリチルレチン酸、硝酸ミコナゾール(miconazole nitrate)、安息香酸、サリチル酸ナトリウム、フィトステロール、ワイン酵母エキス、タカナール(takanal)、エチニルエストラジオール、イソプロピルメチルフェノール、セファランチン(cepharanthine)ビオチン、D−パントテニルアルコール、シャクヤク(Paeonia)エキス、シナノキ(Tilia)エキス、ソフォラ(クララ、エンジュ)(Sophora)エキス、ソフォラ・フラベスセンス(Sophora flavescens)エキス、ショウガ(Zingiber Officinale (Ginger))根エキス、6−ベンジルアミノプリン、ペンタデカン酸グリセリド、t−フラボノン、アマチャ(sweet Hydrangea leaf)エキス、アデノシン、およびパントテニルエチルエーテル。
【0105】
一例において、ミッドカインファミリーのタンパク質を含む配合物を、同じ状態の処置のための補助療法薬、たとえばセストラジオールおよび/またはオキサンドロロンおよび/またはミノキシジルおよび/またはフィナステリド、あるいはテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを遮断する薬剤と、逐次または同時に投与する。補助療法薬は、その薬剤について標準的な処置計画の条件下でそれに従って共投与される。そのような処置計画が増強された療法効果を患者に提供し、それらの効果の和を超える可能性があることは、当業者に認識されるであろう。
【0106】
あるいは、またはさらに、たとえば化学療法または放射線療法またはHIV−1感染症もしくはエイズの治療を受けている対象の場合、ミッドカインファミリーのタンパク質を含む配合物は脱毛を引き起こす細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物と逐次または同時に投与される。そのような状況ではミッドカインファミリーのタンパク質の有効性は細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物の脱毛作用と拮抗する。細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物は、一般にその薬剤に標準的な処置計画に従って投与されるであろう。好都合には、ミッドカインファミリーのタンパク質と細胞傷害薬/細胞増殖抑制薬を同一経路で、たとえば非経口的に投与する。
【0107】
対象
本発明の組成物は、ヒトおよび他の哺乳動物の医療処置に適切であり、これには愛玩動物、たとえばイヌおよびネコ、ならびに家畜、たとえばウマ、動物園の動物、たとえばネコ科、イヌ科、ウシ科、有蹄類および霊長類、または実験室動物、たとえばげっ歯類、ウサギ類および霊長類の処置が含まれる。これらの組成物は、いずれかの型の脱毛症に罹患しているいずれかの哺乳動物、特にヒト、霊長類、イヌ、ネコまたはウマの処置に特に適切である。
【0108】
処置すべき対象は、毛の菲薄化、脱毛または脱毛症に罹患してもよく、あるいは毛の菲薄化、脱毛または脱毛症に罹患していなくてもよい(すなわち、検知できる疾患がない)けれども毛の菲薄化、脱毛または脱毛症を発現する傾向がある。
【0109】
ミッドカインファミリーのタンパク質、またはミッドカインファミリーのタンパク質を含む医薬を用いて、細胞傷害性作用物または細胞増殖抑制作用物により引き起こされる毛の菲薄化、脱毛または脱毛症を処置することができる。細胞傷害性作用物または細胞増殖抑制作用物は内因性のもの、たとえばストレスに応答して産生されるものであってもよく、あるいは外因性のもの、たとえば癌の処置のための化学療法に際して投与されるものであってもよい。
【0110】
本発明は、本明細書に記載する細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物による処置を受けている対象、またはそのような療法を処方された対象における、脱毛症の治療または予防に特に適切である。本明細書に例示するように、対象を細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物による療法の前、またはそのような療法を開始する前と後に処置することができる。本発明は、細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の化合物による処置を開始した後にミッドカインファミリーのタンパク質療法を開始することをも提供する。
【0111】
たとえば、対象に本明細書に記載する組成物を各まぶたの皮膚−まつ毛境界部に細い線として、またクリームとして頭皮に、化学療法計画(ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびパクリタキセル、または5−フルオロウラシル、ロイコボリンおよびオキサリプラチン)の開始前に1日1回で数週間、たとえば2週間または3週間、適用することができる。化学療法計画の全体を通して、またその停止後に、患者に組成物を適用し続けることができる。その患者は一般に、化学療法に普通は伴う完全脱毛を生じることはなく、化学療法を停止するとより速やかに回復することができる。化学療法が完了した数週間後に、患者はこの組成物の適用を停止することができる。この段階で脱毛しているならば、処置を再開する。
【0112】
以下に実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明がそれらに限定されるとみなすべきではない。
【実施例】
【0113】
実施例1
組換えミッドカインの調製方法
ヒトMKオープンリーディングフレームを含むcDNAフラグメント(ヌクレオチド位置1−432;SEQ ID NO:4)を、酵母発現ベクターpPIC9(Invitrogen)に挿入した。この組換えプラスミドを酵母(ピキア・パストリス(メタノール資化性酵母)(Pichia pastoris)GS 115;Research Corporation Technologies)にトランスフェクションし、目的クローンをヒスチジンおよびG418で選択した。
【0114】
酵母が培養培地中へ分泌したヒトMKタンパク質を、下記のカラムクロマトグラフィーを以下の順序で用いて精製した:
1. SP Steamlines(Pharmacia;20mM pH5.5の酢酸緩衝液で吸着および洗浄、20mM pH3.5の酢酸緩衝液(NaClを含有)で溶離);
2. 硫酸化セルロファイン(Sulfated Cellulofine)(日本、生化学工業;10mM pH7.2のリン酸緩衝液で吸着、0.7MのNaClを含有する緩衝液で洗浄、2.0MのNaClを含有する緩衝液で溶離);
3. Superdex 75 pg(Pharmacia;生理食塩水でゲル濾過);
4. Poly Sulfoethyl A(Poly LC Co.;20mM緩衝液(0.6MのNaClを含有)で溶離、0.88MのNaClを含有する緩衝液で洗浄、2MのNaClを含有する緩衝液で溶離);および
5. Superdex 75 pg(Pharmacia;生理食塩水でゲル濾過)。
【0115】
ミッドカイン調製物を生理食塩水に対して透析した。胚性ニューロンの生存を促進するMK活性を指数として用いて、精製MKタンパク質の活性を検出した。
実施例2
ミッドカイン(MK)およびプレイオトロフィン(PTN)の外部適用の育毛効果
40%グリセロールリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(v/v)中1μg/mlのMKまたはPTNを調製した。10μlのMKまたはPTN溶液を、高齢のBlack 6マウス(1.5歳、MKヘテロ接合型ノックアウト(+/−))の脱毛症領域に週3回、直接適用した。適用開始後25日間、MKおよびPTNそれぞれが育毛効果をもつか否かを観察した。図1はその観察結果を示す。図1およびその簡単な説明から明らかに理解されるように、MKまたはPTNの適用は高齢のマウスの脱毛症領域における毛の成長を促進した。MKおよびPTNの育毛効果15日目に既に確認されたので、この実験ではMKおよびPTNを15日目に停止した。MKおよびPTNの適用を停止しても、15日目から25日目まで毛の量は増加した(図1)。これは、MKおよびPTNの育毛効果がそれらの適用を停止した後ですら、しばらく持続することを示す。
【0116】
実施例3
MKおよびPTNの皮下注射の育毛効果
PBS中1μg/mlのMKまたはPTNを調製した。50μlのMKまたはPTN溶液を、高齢のBlack 6マウス(1.5歳、MKホモ接合型ノックアウト(−/−))に皮下注射した。MKおよびPTNの皮下注射は、これらの条件下でこの動物モデルにおいて15日目に育毛効果を示さなかった(図2)。15日目に、MKまたはPTNの皮下注射から実施例2に従った外部適用に変更した後、25日目にMKまたはPTNの育毛効果がみられた(図2)。
【0117】
実施例4
MKの静脈内注射の育毛効果
PBS中1μg/mlのMKを調製した。100μlのMK溶液を、高齢のBlack 6マウス(1.5歳、MKホモ接合型ノックアウト(−/−))に静脈内注射した。MKの静脈内注射は、これらの条件下でこの動物モデルにおいて育毛効果を示さなかった(データを示していない)。
【0118】
実施例5
MKおよびPTNの外部適用の育毛効果
10%グリセロール/PBS(v/v)中2g/mlのMKまたはPTNを調製した。100μlのMKまたはPTN溶液を、高齢のBlack 6マウス(1.5歳、MKヘテロ接合型ノックアウト(+/−))の脱毛症領域に週5回、直接適用した。適用開始後35日間、MKおよびPTNそれぞれが育毛効果をもつかどうかを観察した。図3および4は、その観察結果を示す。ミノキシジル(たとえば、1% w/v;RiUP(登録商標)、大正製薬株式会社)を陽性対照として用いた(図5)。図3および4ならびにそれらの簡単な説明から明らかに理解されるように、MKおよびPTNの適用は両方ともこれらの条件下で高齢のマウスの脱毛症領域における育毛効果を示した。
【0119】
実施例6
MKおよびPTNの外部適用の育毛効果はミノキシジルの効果とは異なる
10%グリセロール/PBS(v/v)中2g/mlのMKまたはPTNを調製した。100μlのMKまたはPTN溶液を、C3H/HeJマウス(雄、9週齢)の剃毛領域に直接適用した。10%グリセロール/PBS(v/v)およびミノキシジル(たとえば、1% w/v;RiUP(登録商標)、大正製薬株式会社)を、それぞれ陰性および陽性対照として用いた(図6および7)、適用開始後21日間、MKおよびPTNそれぞれが成長期の毛の成長増強を示すか否かを観察した。図8および9は、その観察結果を示す。ミノキシジル(RiUP(登録商標))の適用は毛の成長増強を示した(図7)。これと対照的に、MKおよびPTNはそのような増強を示さなかった(図8および9)。得られたデータは、脱毛症の症状を示さず成長期に同期化したにすぎない動物においてMKの作用様式がミノキシジルのものと異なることを示唆する。
【0120】
実施例7
急性脱毛症に対するMKの外部適用の効果
動物倫理
すべての操作が、オーストラリア、メルボルンのRoyal Melbourne Institute of Technology (RMIT) Animal Experimentation and Ethics Committee (AEEC Project # 1042)により承認されたものであった。
【0121】
動物
合計35匹のマウスを試験に用いた。病原体を保有しない雌C57Bl/6JマウスをAnimal Resource Centre, Canning Vale, Western Australia, Australiaから入手した。動物を標準的な清潔な一般的動物舎条件下でRDDT Animal Facility (201.01)内の1室に収容した:目標値22±2℃および相対湿度30〜70%、12時間の明:暗サイクルに維持。動物に照射済みのRat and Mouse Chow(Specialty Feeds, Glen Forrest, Western Australia, Australia)を給餌し、都市水を適宜供給した。新鮮な水を少なくとも週2回供給した。試験結果に支障を与える可能性のある汚染物質を確認するために、餌、寝床および水の定期検査を行なった。
【0122】
動物をランダムに試験グループに分け、ケージ当たり2〜3匹のグループで収容し、受け入れ時に少なくとも2日間の検疫期間をおいた。動物を肩甲骨間への皮下注射によるマイクロチップトランスポンダーの埋込みにより識別した。各ケージ内の動物の二次的識別を、永久マーカーによるテイルマーキングの採用により行なった。脱毛したマウスの皮膚をケージメートが過度にグルーミングするように思われた場合には、処理の開始前にマウスを個別に収容した。
【0123】
処理の開始時に、マウスは5週齢〜7週齢であり、体重はそれらの平均体重より20%以上の差がなかった。
急性脱毛症の誘発
急性脱毛症をPaus et al, Am. J, Pathol. 144, 719-734 (1994)により記載された操作に従って、すなわちC57BL/6マウスへのシクロホスファミドの単回腹腔内注射により誘発した。この試験は、次表に概説するように、35匹の雌C57Bl/6Jマウスを5匹ずつ7実験グループに分けたものを含む。
【0124】
【表1】

【0125】
下記のプロトコルを用いた:
試験1日目:マウスを、ケタミン(ketamine)(50mg/kg)、キシラジン(xylazine)(5mg/kg)およびアセプロマジン(acepromazine)(0.8mg/kg)の組合わせを腹腔内注射することにより麻酔した。マウスの背側の約2×4cmの試験領域から、電気バリカンで剃ることにより被毛を除いた。皮膚を温水ですすいでその領域を清浄にし、軽くなでて乾かした。残っている被毛は、市販の脱毛ワックスストリップを用いて除いた。
【0126】
試験2〜9日目:グループ1、2、3、5および6のマウスに、最終投与濃度5μgのミッドカイン/マウス/日、または対照のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液を0.5mLの容量で、試験領域への皮膚適用により投与した。グループ4および7のマウスには、対照のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液を0.5mLの容量で、試験領域への皮膚適用により投与した。
【0127】
試験9日目:すべてのグループのマウスを、10mL/kgの投与容量のビヒクル(水)またはシクロホスファミドの腹腔内注射により処理した。
試験10〜29日目:グループ4および7のマウスに、最終投与濃度5μgのミッドカイン/マウス/日を0.5mLの容量で、試験領域への皮膚適用により投与した。グループ1、2、3、5および6のマウスに、最終投与濃度5μgのミッドカイン/マウス/日、または対照のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液を0.5mLの容量で、試験領域への皮膚適用により投与した。試験2〜9日目に対照溶液を投与したグループ1、2、3、5および6のマウスには、試験10〜29日目にも対照溶液を投与した。試験2〜9日目にミッドカイン溶液を投与したグループ1、2、3、5および6のマウスには、試験10〜29日目にもミッドカイン溶液を投与した。
【0128】
試験30日目:マウスを、漸増濃度の二酸化炭素曝露によってと殺した。標的領域の部分の皮膚を採集し、肉眼検査および顕微鏡検査のために10%中性緩衝化ホルマリン中に保存した。
【0129】
マウスを試験1日目から29日目まで1日1回、毒性の臨床徴候についてモニターした。これらの観察には下記のいずれかの変化の評価が含まれるであろう:
−皮膚および被毛(粗さ、立毛、グルーミング欠如、脱毛);
−眼および粘膜(分泌物、白濁、眼の周囲のただれ);
−呼吸、循環、自律神経系または中枢神経系の機能;
−身体活動および行動パターン(異常な体位、歩行、および何らかの異常な活動のチェック);
−何らかの振戦、痙攣、流涎、下痢、嗜眠、睡眠過剰または昏睡。
【0130】
皮膚/被毛の観察
試験9日目から29日目まで1日1回、、マウスを脱毛症(被毛脱落)の徴候および皮膚色素沈着の変化に関して観察した。脱毛の程度を脱毛症(被毛脱落)を伴う標的領域のパーセントとして測定し、皮膚の色素沈着を黒色、灰色またはピンク色と採点した。脱毛症および皮膚色素沈着の変化に関するグループ発生率所見を対照グループおよび試験グループについて、Windows用GraphPad Prism 5.0(GraphPad Software, San Diego California USA)を用いる一元分散分析テストにより測定した。
【0131】
被毛の脱落/再成長の程度も週2回の写真により記録した。撮影プロセスを容易にするために、マウスをケタミン(50mg/kg)、キシラジン(5mg/kg)、アセプロマジン(0.8mg/kg)で鎮静した。
【0132】
最終測定
皮膚の試料を各動物の標的領域から採集し、組織病理学的評価のために10%中性緩衝化ホルマリン中に保存した。
【0133】
図11のデータは、シクロホスファミドの前および/または後に投与した場合にミッドカインタンパク質がシクロホスファミド誘発による被毛脱落を軽減すること、ならびにミッドカインがシクロホスファミド処理停止後の毛の成長により測定した毛包回復の速度を高めることを証明する。図12のデータは、PBSで処置したマウスが特にそれらの首側領域に著しい被毛脱落および灰色またはピンク皮膚色を示すことを指摘し、これは退行期(灰色)または休止期(ピンク色)の毛包が優勢であることと一致する。CYP処理の前と後にミッドカインタンパク質で処置したマウス(MK2−29)は、PBS投与グループと比較して少ない脱毛領域を示し、皮膚は均一な黒色または濃い灰色であり、これは成長期の毛包(黒色)が優勢であって退行期の割合がより低いことと一致した。このグループではピンク色の皮膚はほとんどみられず、これは休止期の毛包の割合がはるかに少ないことを示唆する。同様に、CYP処理の後にのみミッドカインタンパク質で処置したマウス(MK10−29)もPBS投与グループと比較して少ない被毛脱落領域を示し、化学療法の前と後にミッドカインタンパク質を投与した動物と肉眼的に同様に見えた。化学療法の後にのみミッドカインタンパク質を投与した動物の皮膚は均一な濃い灰色であり、これは成長期または退行期の毛包が優勢であることと一致した。
【図1(A)】

【図1(B)】

【図1(C)】

【図1(D)】

【図1(E)】

【図1(F)】

【図1(G)】

【図1(H)】

【図1(I)】

【図1(J)】

【図1(K)】

【図1(L)】

【図2(A)】

【図2(B)】

【図2(C)】

【図2(D)】

【図2(E)】

【図2(F)】

【図2(G)】

【図2(H)】

【図2(I)】

【図2(J)】

【図2(K)】

【図2(L)】

【図3(A)】

【図3(B)】

【図3(C)】

【図3(D)】

【図3(E)】

【図3(F)】

【図4(A)】

【図4(B)】

【図4(C)】

【図4(D)】

【図4(E)】

【図4(F)】

【図5(A)】

【図5(B)】

【図5(C)】

【図5(D)】

【図5(E)】

【図5(F)】

【図6(A)】

【図6(B)】

【図6(C)】

【図6(D)】

【図7(A)】

【図7(B)】

【図7(C)】

【図7(D)】

【図8(A)】

【図8(B)】

【図8(C)】

【図8(D)】

【図9(A)】

【図9(B)】

【図9(C)】

【図9(D)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛を治療もしくは予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質および局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む、局所配合物。
【請求項2】
配合物が、脱毛しやすいかまたは脱毛のリスクをもつ対象の真皮または皮膚に投与するためのものである、請求項1に記載の局所配合物。
【請求項3】
配合物が、脱毛を伴う対象の真皮または皮膚に投与するためのものである、請求項1に記載の局所配合物。
【請求項4】
配合物が、脱毛症の治療または予防のためのものである、請求項1に記載の局所配合物。
【請求項5】
脱毛症が急性型の脱毛症である、請求項4に記載の局所配合物。
【請求項6】
配合物が、細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を受けているかまたは細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を処方された対象における脱毛症の治療または予防のためのものである、請求項4に記載の局所配合物。
【請求項7】
脱毛症が男性ホルモン型脱毛症である、請求項4に記載の局所配合物。
【請求項8】
ミッドカインファミリーのタンパク質が、ミッドカイン、プレイオトロフィン、ミッドカイン様タンパク質、またはトランケート型ミッドカインタンパク質である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の局所配合物。
【請求項9】
ミッドカインファミリーのタンパク質がプレイオトロフィンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の局所配合物。
【請求項10】
ミッドカインファミリーのタンパク質がミッドカインである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の局所配合物。
【請求項11】
ヒトまたは他の哺乳動物対象の脱毛症の治療または予防のための医薬の製造における、ミッドカインファミリーのタンパク質の使用。
【請求項12】
医薬が局所適用のための配合物である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
脱毛症が急性型の脱毛症である、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
急性脱毛症が細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置により誘発され得る、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
ヒトまたは他の哺乳動物対象が、細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を受けているかまたは細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を処方された対象である、請求項11に記載の使用。
【請求項16】
ミッドカインファミリーのタンパク質が、ミッドカイン、プレイオトロフィン、ミッドカイン様タンパク質、またはトランケート型ミッドカインタンパク質である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
ミッドカインファミリーのタンパク質がプレイオトロフィンである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
ミッドカインファミリーのタンパク質がミッドカインである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
脱毛を治療または予防する方法であって、その必要がある対象に、対象において脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、量のミッドカインファミリーのタンパク質およびキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む配合物を投与することを含む方法。
【請求項20】
配合物が局所配合物であり、その方法が対象の脱毛した患部の皮膚または脱毛する可能性のある領域の皮膚に局所配合物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
その方法が、脱毛症に罹患している対象に、対象の脱毛を軽減するのに十分な、および/または毛を成長させるのに十分な期間および条件下で配合物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
その方法が、脱毛症に罹患している対象に、対象の毛包のアポトーシスを阻止するかまたは低下させるのに十分な期間および条件下で配合物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
その方法が、脱毛症に罹患している対象に、対象の毛包の発育期を延長するのに十分な期間および条件下で配合物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
その方法が、脱毛症に罹患している対象に、対象の正常な休止期毛包が後続の毛周期に入るのを促進または増強するのに十分な期間および条件下で配合物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
その方法が、脱毛症に罹患している対象に配合物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
その方法が、脱毛症を発症しやすい対象に配合物を投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
脱毛症が急性型の脱毛症である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
その方法が、細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を受けているかまたは細胞傷害性作用物もしくは細胞増殖抑制作用物による処置を処方された対象に配合物を投与することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
脱毛症が男性ホルモン型脱毛症である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項30】
ミッドカインファミリーのタンパク質が、ミッドカイン、プレイオトロフィン、ミッドカイン様タンパク質、またはトランケート型ミッドカインタンパク質である、請求項19〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ミッドカインファミリーのタンパク質がプレイオトロフィンである、請求項19〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ミッドカインファミリーのタンパク質がミッドカインである、請求項19〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
脱毛を伴う対象において毛の成長または毛のイニシエーションを促進または増強する方法であって、対象において脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強するのに有効な、量のミッドカインファミリーのタンパク質および局所用のキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む局所配合物を、対象に投与することを含む方法。
【請求項34】
ミッドカインファミリーのタンパク質がミッドカインまたはプレイオトロフィンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
化学療法を受けているかまたは化学療法を処方された対象において脱毛を軽減する方法であって、対象に、ある量のミッドカインファミリーのタンパク質およびキャリヤー、賦形剤または皮膚軟化剤を含む配合物を、化学療法による脱毛を予防または軽減するのに十分な期間および条件下で投与することを含む方法。
【請求項36】
その方法が、化学療法で処置された対象に配合物を局所投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
その方法が、化学療法を処方された対象に化学療法開始の前に配合物を局所投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
その方法が、化学療法を処方された対象に化学療法開始の前と後に配合物を局所投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
ミッドカインファミリーのタンパク質がミッドカインである、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
脱毛を予防する、および/または毛の成長を促進する、および/または毛の成長を増強する化合物を同定または単離する方法であって、1歳より高齢であり、かつ脱毛を伴っており、かつミッドカインタンパク質をコードする1つの対立遺伝子およびその遺伝子の他の1つの機能性対立遺伝子がノックアウトされているマウスに、被験化合物を投与し、次いでそのマウスにおいて毛の成長および/または脱毛の軽減を測定することを含み、その際、そのマウスにおける被験化合物の不存在下と比較した被験化合物の存在下での脱毛の軽減および/または毛の成長の増大および/または毛の成長のイニシエーションは、被験化合物が脱毛を予防し、および/または毛の成長を促進し、および/または毛の成長を増強することの指標となる方法。

【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−520447(P2013−520447A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554162(P2012−554162)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/AU2011/000194
【国際公開番号】WO2011/103624
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512220994)アドヴァンジェン・インターナショナル・プロプライアタリー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】