説明

脱水汚泥成形器

【課題】脱水汚泥の粘性に影響されにくく、汚泥の付着問題もなく、さらには圧縮ローラーで生じる異物の噛み込みという問題もない、脱水汚泥成形器を提供すること。
【解決手段】脱水された汚泥を乾燥処理する前に当該汚泥を紐状に成形するための脱水汚泥成形器1である。脱水汚泥成形器1は、脱水汚泥が圧入される供給口2a、および下方に向かって開口する開口部2bを有する本体ケース2と、開口部2bに取り付けられ複数の孔7が形成された多孔板3と、を備える。多孔板3に形成された孔7から脱水汚泥が紐状となって下方に押し出されて落下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水を処理する過程で発生する脱水汚泥などを乾燥処理する際の前処理として用いられる脱水汚泥成形器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関しては、例えば、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された被乾燥汚泥成形機は、脱水汚泥を複数の角棒状に成形するための仕切りをトラフ上の脱水汚泥出口部分に設けるともに、トラフに振動機を取り付けてなる装置である。脱水汚泥をトラフ上で振動搬送しながら仕切り部を通過させて角棒状に成形する。脱水汚泥が厚い場合を考慮して仕切りの上方に回転カッターを配置し、脱水汚泥を複数の角棒状に切断できるようにしている。
【0003】
特許文献2に記載された紐状造形乾燥装置は、複数の造形圧縮ローラー、乾燥材料カッターなどを具備してなる装置である。平圧縮ローラー間を通過させて脱水汚泥を帯状に造形した後、乾燥材料カッターで紐状に成形したり、縦溝付きの圧縮ローラーと平圧縮ローラーとの間を通過させて脱水汚泥を紐状に成形したりしている。
特許文献3に記載された乾燥装置も、板状の脱水汚泥を切断ローラを利用してサイコロ状に成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3880099号公報
【特許文献2】特開2008−20172号公報
【特許文献3】特開平07−222999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された被乾燥汚泥成形機では、斜め上方に傾斜した振動するトラフ上の脱水汚泥出口部分で脱水汚泥を角棒状に成形している。この方法では、脱水汚泥の粘性が高いと振動搬送が上手くいかず、脱水汚泥の成形が困難となる場合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載された紐状造形乾燥装置では、圧縮ローラー間を通過した脱水汚泥が、ローラー表面へ付着し続けて成形されずに堆積するという汚泥の付着問題が懸念される。スクレーパを設けたとしてもその除去効果は確実なものではなく、除去されたとしてもその汚泥は成形されることなく落下してしまう。また、脱水汚泥に含まれる異物が圧縮ローラー間に噛み込んで圧縮ローラーなどが破損してしまうという問題も懸念される。さらには、乾燥材料カッターへの脱水汚泥の付着、乾燥材料カッターの刃の摩耗も懸念される。
特許文献3に記載された乾燥装置では、汚泥の切断のために切断ローラを使用するため、特許文献2同様に切断ローラへの脱水汚泥の付着等が懸念される。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、脱水汚泥の粘性に影響されにくく、汚泥の付着問題もなく、さらには圧縮ローラーで生じる異物の噛み込みという問題もない、脱水汚泥成形器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、脱水された汚泥を乾燥処理する前に当該汚泥を成形するための脱水汚泥成形器であって、前記汚泥が圧入される供給口、および下方に向かって開口する開口部を有する本体ケースと、前記開口部に取り付けられ、複数の孔が形成された多孔板と、を備え、前記多孔板に形成された孔から前記汚泥が紐状となって下方に押し出されて落下することを特徴とする脱水汚泥成形器である。
【0009】
この構成によると、本体ケースに脱水汚泥を圧入することで脱水汚泥を紐状に成形することができるので、脱水汚泥の粘性に特に影響されることなく脱水汚泥を紐状に成形することができ、かつ、汚泥の付着問題もない。また、ローラーなどの回転部品を用いないので、異物の噛み込みという問題もない。
【0010】
また本発明において、前記供給口は、前記本体ケースの上端部に設けられており、前記本体ケースは、上部から下部に向かって内部空間が広がるように形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によると、本体ケース内の隅々まで脱水汚泥を拡散・充満させることができ、その結果、紐状に成形された脱水汚泥が多孔板から均等に押し出される。
【0012】
さらに本発明において、前記本体ケースの縦断面が前記供給口を頂角の位置とする二等辺三角形状となるように、前記本体ケースが形成されていることが好ましい。この構成によると、本体ケース内の隅々まで脱水汚泥をより拡散・充満させ易い。
【0013】
さらに本発明において、前記本体ケースの側板の内面に前記汚泥を分散させる邪魔板が取り付けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によると、本体ケース内の脱水汚泥の流れに偏りがあったとしても、脱水汚泥の流れが均一となるように邪魔板で調節することができる。
【0015】
さらに本発明において、前記多孔板のうち、前記本体ケースに圧入される前記汚泥により前記多孔板が受ける圧力が低い部分は、圧力が高い部分よりも開口率が大きくされていることが好ましい。
【0016】
この構成によると、脱水汚泥が押し出されにくい多孔板部分が減少する。すなわち、多孔板から脱水汚泥を均等に押し出すことができる。
【0017】
さらに本発明において、前記多孔板に形成された複数の孔の汚泥入口端の孔面積の合計は、前記供給口の断面積以上の面積とされていることが好ましい。この構成によると、押出成形時の抵抗を軽減できる。
【0018】
さらに本発明において、前記多孔板に形成された孔の直径が5mm以上20mm以下とされていることが好ましい。
【0019】
紐状に成形された脱水汚泥の径が大き過ぎるとその中心付近まで乾燥させにくい。この構成によると、多孔板に形成された孔の直径が5mm以上とされていることで、孔の閉塞を防止できる。また、多孔板に形成された孔の直径が20mm以下とされていることで、中心付近まで乾燥させ易い紐状の脱水汚泥を成形することができる。
【0020】
さらに本発明において、前記多孔板に形成された孔は、汚泥出口端の直径が汚泥入口端の直径よりも大きくされていることが好ましい。
【0021】
この構成によると、汚泥入口端の直径よりも汚泥出口端の直径のほうが大きいことで、多孔板に形成された孔の閉塞が生じにくい。
【0022】
さらに本発明において、前記多孔板の厚みが、当該多孔板に形成された複数の孔の汚泥入口端の最小直径の1/2よりも大きく、かつ、当該多孔板に形成された複数の孔の汚泥出口端の最大直径の1.5倍よりも小さくされていることが好ましい。
【0023】
この構成によると、多孔板の出口部での脱水汚泥の膨張を防ぎつつ、多孔板部での圧損を低く抑えることができる。
【0024】
さらに本発明において、前記供給口は、前記本体ケースに複数設けられていることが好ましい。
【0025】
この構成によると、複数の孔から排出される汚泥の量を均等にできる。
【0026】
さらに本発明において、複数の前記供給口に圧入される前記汚泥の圧力を制御する圧力制御手段を備えることが好ましい。
【0027】
この構成によると、複数の孔から排出される汚泥の量をより均等にできる。
【0028】
また本発明の第2の態様は、前記した脱水汚泥成形器を備える汚泥乾燥装置である。紐状に成形された脱水汚泥は、風との接触効率が高いので乾燥させ易い。すなわち、この構成によると、汚泥乾燥装置の乾燥性能が向上する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、本体ケースに脱水汚泥を圧入することで脱水汚泥を紐状に成形することができるので、脱水汚泥の成形に際しその粘性に影響されにくく、かつ、汚泥の付着問題もない。また、ローラーなどの回転部品を用いないので、異物の噛み込みという問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る脱水汚泥成形器を備える汚泥乾燥装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す乾燥処理部の上部を拡大した図である。
【図3】図2に示す脱水汚泥成形器の多孔板を示す図である。
【図4】脱水汚泥成形器の多孔板から脱水汚泥が押し出される様子を示す斜視図である。
【図5】乾燥処理部の上段のベルト上に落下して搬送される脱水汚泥の様子を示す斜視図である。
【図6】汚泥乾燥装置の乾燥性能比較実験の結果を示すグラフである。
【図7】変形例の脱水汚泥成形器等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、下水を処理する過程で発生する脱水汚泥(有機汚泥)を成形対象の汚泥としているが、無機汚泥にも本発明に係る脱水汚泥成形器を適用することができる。なお、汚泥(脱水汚泥)の含水率は、70wt%〜85wt%程度である。含水率が78wt%〜82wt%程度の脱水汚泥を成形対象の汚泥とすることが多い。
【0032】
(汚泥乾燥装置の構成)
図1を参照しつつ本発明の一実施形態に係る脱水汚泥成形器1を備える汚泥乾燥装置100について説明する。図1に示すように、本実施形態の汚泥乾燥装置100は、乾燥処理部51と図示しない乾燥空気発生部とを有する。なお、汚泥乾燥装置100は、乾燥空気発生部と乾燥処理部51とが別々に分かれていても、一体化していてもよい。
【0033】
(乾燥空気発生部)
乾燥空気発生部は、乾燥処理部51内に高温の乾燥空気を送風するための装置である。高温の乾燥空気としては40〜240℃に加熱した空気を利用することができる。なお、高温の乾燥空気として、臭気を抑える観点から40〜90℃に加熱(低温の熱源を利用する)した空気を使用することが好ましい。また、加熱前の空気としては予め除湿した乾燥空気を用いることが好ましい。
【0034】
(乾燥処理部)
乾燥処理部51は、その外部から供給された脱水汚泥に対して、乾燥空気発生部から供給された高温の乾燥空気と接触させて脱水汚泥を乾燥させる装置である。この乾燥処理部51は、脱水汚泥が供給される側から順に、脱水汚泥成形器1、上段側ベルトコンベア16、下段側ベルトコンベア17、および汚泥排出装置18を備えている。上段側ベルトコンベア16のベルト16aには、脱水汚泥が落下しない大きさの多数のスリット(孔)が形成されており、空気が通過しやすいようになっている(下段側ベルトコンベア17のベルト17aについても同様)。脱水汚泥成形器1へは、例えば回転容積式一軸偏心ねじポンプにより脱水汚泥を圧入供給する。
【0035】
(乾燥原理)
乾燥処理部51の脱水汚泥成形器1に圧入された脱水汚泥は、紐状となって上段側ベルトコンベア16上に落下し、上段側ベルトコンベア16のベルト16a上を搬送される。上段側ベルトコンベア16の下流側端部まで搬送された脱水汚泥は、下段側ベルトコンベア17のベルト17a上に落下してさらに搬送される。ベルト16aおよびベルト17a上を搬送される際に、乾燥空気発生部からの高温の乾燥空気と接触することで脱水汚泥は乾燥する。乾燥汚泥は、汚泥排出装置18で排出される。
【0036】
なお、図示しない送風ファンによって乾燥処理部51に送られた高温の乾燥空気は、脱水汚泥の水分を取り込み、湿り空気となる。湿り空気は乾燥処理部51から排出され、必要に応じて排ガス処理が行われる。排ガス処理としては、脱臭処理(生物脱臭、活性炭処理)、洗浄処理(湿式洗浄)、熱の有効利用のための熱回収処理、及び、吸着剤や凝縮操作による乾燥処理といった処理のうちいずれか1つを単独で行っても良く、これらを組み合わせて行っても良い。脱臭処理や洗浄処理を行うことによって排ガスを系外(汚泥乾燥装置100の外部)に放出することができる。また、乾燥処理を行うことによって、排ガスを汚泥乾燥用の乾燥空気として再利用することができる。
【0037】
(脱水汚泥成形器の構成)
次に、図2および図3を参照しつつ脱水汚泥成形器1について説明する。図2(b)は図2(a)のA−A矢視図である。脱水汚泥成形器1は、本体ケース2と多孔板3とを備えている。
【0038】
(本体ケース)
図2に示したように、本体ケース2は、その縦断面(内部空間)が下方(下流)に向かって広がる二等辺三角形状の容器であり、下方に向かって広がるように配置された2枚の側板4と、鉛直方向に配置された二等辺三角形状の2枚の側板5とを有する。なお、「下方」には、鉛直下向きだけでなく、斜め下向きも含む(以下の「下方」も同様)。二等辺三角形の頂角に位置する部分に、脱水汚泥が圧入される供給口2aが設けられている。二等辺三角形の底辺に位置する部分は開口部2bとされており、この部分に多孔板3が取り付けられている。供給口2aにはフランジ19が取り付けられている。このフランジ19を介して本体ケースの供給口2aに、汚泥配管20が接続され、一軸偏心ねじポンプPから脱水汚泥が圧入される。供給口2aの口径は、汚泥配管20の口径と等しい。
【0039】
2枚の側板5の内面には、それぞれ、邪魔板6が取り付けられている。邪魔板6は、四角形のプレートであり、本体ケース2内に供給された脱水汚泥を分散させるためのものである。本体ケース2内の脱水汚泥の流れに偏りがあった場合に邪魔板6を取り付けることで、脱水汚泥の流れが均一になるように調節することができる。なお、邪魔板6の形状は、四角形に限られるものではない。2枚の側板5のいずれか一方のみに邪魔板6を取り付けてもよい。また、邪魔板6は、本体ケース2内の脱水汚泥の流れに偏りがあった場合の調節用のプレートであって、必ずしも必要なものではない。
【0040】
本実施形態のように、本体ケース2の縦断面(内部空間)が下方に向かって広がる二等辺三角形状となるように本体ケース2を形成することで、本体ケース2内の隅々まで脱水汚泥を拡散・充満させることができ、その結果、紐状に成形された脱水汚泥を多孔板3から均等に押し出すことができる。なお、本体ケース2の縦断面(内部空間)を二等辺三角形状とし、かつ、その頂角に位置する部分に供給口2aを設けることは、本体ケース2内の隅々まで脱水汚泥を拡散・充満させ易く好ましい構成であるが、必ずしも二等辺三角形状とする必要はない。上部から下部に向かって内部空間が広がるように本体ケースを形成することで、脱水汚泥の拡散性・充満性を向上させることができる。
【0041】
(多孔板)
図3に示したように、多孔板3は、複数の孔7が形成されたプレートである。この多孔板3から脱水汚泥が紐状となって下方に押し出されて落下する。なお、多孔板3は、本体ケース2(図2参照)に対して着脱容易に固定される。具体的には、多孔板3は、本体ケース2に対して例えばネジ止め固定される。多孔板3を本体ケース2から取り外すことで、多孔板3を容易に洗浄できる。
【0042】
本実施形態の二等辺三角形状の本体ケース2では、多孔板3の中央部の圧力(圧入される脱水汚泥による圧力)が、多孔板3の端部分の圧力よりも高くなる。そのため、多孔板3の端部分の孔7の数を、多孔板3の中央部の孔7の数よりも多くしている。これにより、多孔板3部での壁面抵抗により脱水汚泥が押し出されにくい多孔板部分が減少する。結果として、多孔板3から脱水汚泥を均等に押し出すことができる。
【0043】
本実施形態では、孔7の直径を全て同じにして、中央部分と両端部分とで孔7の数を変えているが、中央部分と両端部分とで孔7の数を変えずに、両端部分の孔7の直径を中央部分の孔7の直径よりも大きくしてもよい。すなわち、多孔板3が受ける圧力が低い部分(両端部分)の開口率を、圧力が高い部分(中央部分)の開口率よりも大きくすればよい。
【0044】
また、本実施形態では、多孔板3の中央部分でも両端部分でも、互い違いにずらして孔7が配置されている。こうすることで、孔7から押し出される紐状の脱水汚泥同士がひっつきにくくなる。また、多孔板3に形成された孔7は、脱水汚泥の出口直径Dout(汚泥出口端の直径)が入口直径Din(汚泥入口端の直径)よりも大きくされている。こうすることで、脱水汚泥に含まれている夾雑物(髪の毛など)による孔7の閉塞が生じにくくなる。
【0045】
ここで、多孔板3に形成された孔7の汚泥入口端の孔面積の合計は、本体ケース2の供給口2a(汚泥配管20)の断面積以上の面積とされていることが好ましい。これにより、押出成形時の抵抗を軽減できる。
【0046】
また、多孔板3に形成された孔7の直径は、5mm以上20mm以下とされていることが好ましい。ここで、多孔板3に形成された孔7の直径が5mm以上20mm以下というのは、多孔板3の厚み方向における全ての部分における孔7の直径が、5mm以上20mm以下ということである。入口直径Dinと出口直径Doutとが異なる本実施形態のような場合は、入口直径Dinおよび出口直径Doutのいずれもが、5mm以上20mm以下ということである。紐状に成形された脱水汚泥の径が大き過ぎるとその中心付近まで乾燥させにくい。多孔板3に形成された孔7の直径が5mm以上とされていることで、夾雑物(髪の毛など)による孔7の閉塞を防止できる。また、孔7の直径が20mm以下とされていることで、中心付近まで乾燥させ易い紐状の脱水汚泥を成形することができる。
【0047】
さらには、多孔板3の厚みが、多孔板3に形成された複数の孔7の最小入口直径Dinの1/2よりも大きく、かつ、孔7の最大出口直径Doutの1.5倍よりも小さくされていることが好ましい。多孔板3に形成された複数の孔7の形状・寸法が全て等しい本実施形態では、多孔板3の厚みが、孔7の入口直径Dinの1/2よりも大きく、かつ、孔7の出口直径Doutの1.5倍よりも小さくされている。さらには、多孔板3の厚みは、多孔板3に形成された複数の孔7の平均直径と同程度であることが好ましい(本実施形態の場合、(入口直径Din+出口直径Dout)/2=孔7の平均直径)。こうすることで、多孔板3の出口部での脱水汚泥の膨張を防ぎつつ、多孔板3部での圧損を低く抑えることができる。
【0048】
なお、多孔板3に設ける孔の形状は真円である必要はない。楕円であってもよいし、三角形、四角形などの多角形であってもよい。
【0049】
以上説明した多孔板3から脱水汚泥が紐状となって下方に押し出されて落下する。このとき、図4に示したように、紐状に成形された脱水汚泥は、その自重で切れる。本実施形態では、多孔板3を水平に配置しているが、水平方向に対して少し傾斜させて多孔板3を配置してもよい。なお、図4では、フランジ19の図示を省略している。脱水汚泥が適当な長さに切れることで、乾燥処理部51のベルト16a上に脱水汚泥が均一に散布され、十分な空隙を保ちつつ脱水汚泥はベルト16a・17a上を乾燥されながら搬送される。
【0050】
本体ケース2と多孔板3とを具備してなる本実施形態の脱水汚泥成形器1によると、本体ケース2に脱水汚泥を圧入することで脱水汚泥を多孔板3部で紐状に成形することができるので、脱水汚泥の粘性に特に影響されることなく脱水汚泥を紐状に成形することができ、かつ、汚泥の付着問題もない。また、ローラーなどの回転部品を用いないので、異物の噛み込みという問題も生じない。また、構造が簡単なため、メンテナンスが容易である。さらには、ローラーなどを用いないため、脱水汚泥成形器1自体に動力は不要である。
【0051】
(実施例)
次に、脱水汚泥を乾燥処理する際の前処理として脱水汚泥成形器1を用いる場合と、脱水汚泥成形器1を用いない場合とで、汚泥乾燥装置100の乾燥性能にどの程度の差が生じるか比較実験を行った。なお、脱水汚泥成形器1を用いない場合とは、汚泥乾燥装置100に脱水汚泥成形器1が無い場合、すなわち、一軸偏心ねじポンプPから上段側ベルトコンベア16へ脱水汚泥を直接投入した場合のことをいう。
【0052】
多孔板3の仕様は下記の通りである。
幅W:100mm×長さL:520mm×厚み9mm
孔7の入口直径Din:7.6mm、出口直径Dout:8mm
孔7の形状・配置・個数:図3の通り
成形対象である脱水汚泥(乾燥前)の含水率:78〜82wt%
【0053】
多孔板3から脱水汚泥が押し出される様子を図4に示し、乾燥処理部51の上段のベルト16a上に落下して搬送される脱水汚泥の様子を図5に示した。
【0054】
比較実験結果を図6に示したように、脱水汚泥成形器1を用いて脱水汚泥を紐状に成形した後に乾燥処理したほうが、明らかに脱水汚泥からの蒸発水量が増加した。紐状に成形され、かつ適度な長さに自重で切れた脱水汚泥は、風との接触効率が高く乾燥させ易いことがわかる。
【0055】
(変形例)
図7を参照して、変形例の脱水汚泥成形器201等について、上記実施形態との相違点を説明する。なお、図7の図示の向きは図2(a)と同じであり、図7の矢印A2の向きは図2(a)の矢印Aの向きに対応する。図2(a)に示す脱水汚泥成形器1では、本体ケース2に1つの供給口2aが設けられた。一方、図7に示す脱水汚泥成形器201では、本体ケース2に複数の供給口2aが設けられる。また、複数の供給口2aに圧入される汚泥の圧力は制御弁221で制御される。以下、上記相違点をさらに説明する。
【0056】
複数の供給口2aそれぞれには、汚泥配管220が接続される。具体的には、1つのポンプPに接続された1本の汚泥配管220を複数の汚泥配管220に枝分かれさせる。そして、枝分かれした汚泥配管220それぞれが別個の供給口2aに接続される。なお、図7ではポンプPを1つのみ示しているが、ポンプPを複数設け、複数のポンプPと複数の供給口2aとを複数の汚泥配管220を介して接続してもよい。
【0057】
制御弁221(圧力制御手段)は、複数の供給口2aに圧入される汚泥の圧力を制御する弁である。制御弁221は、汚泥配管220に設けられる。制御弁221は、汚泥配管220と供給口2aとの間に設けられてもよい。制御弁221は、複数の汚泥配管220のうち全ての汚泥配管220に設けることが好ましい(一部の汚泥配管220に設けてもよい)。
【0058】
ポンプP(圧力制御手段)を複数設けた場合は、複数のポンプPのうち一部または全部の吐出圧を制御することにより、複数の供給口2aに圧入される汚泥の圧力を制御してもよい。また、制御弁221による圧力制御と、ポンプPによる圧力制御とを組み合わせて行ってもよい。
【0059】
次に、この変形例による効果を説明する。図2(a)に示すように、本体ケース2に1か所のみ供給口2aを設けた場合、本体ケース2の開口部2bの面積を広くすると、供給口2aから離れた位置の孔7(図3参照)から汚泥が排出されにくくなる。この問題は、孔7の開口率、面積、及び直径の調整(上述)だけでは解消できない場合もある。
一方、図7に示す脱水汚泥成形器201では、本体ケース2に複数の供給口2aが設けられている。よって、本体ケース2の開口部2bの面積を広くした場合でも、複数の孔7(図3参照)から排出される汚泥の量を均等にできる。
【0060】
なお、複数の孔7から均等に汚泥が排出できるように、本体ケース2の開口部2bの面積に応じて、供給口2aの数を設定することが好ましい。また、供給口2aの数の調整と、孔7(図3参照)の開口率等の調整とを組み合わせることで、孔7から排出される汚泥の量をさらに均等にできる。
【0061】
脱水汚泥成形器201では、複数の供給口2aに圧入される汚泥の圧力が制御弁221(またはポンプP)で制御される。汚泥が排出されやすい孔7の近くの供給口2aよりも、汚泥が排出されにくい孔7の近くの供給口2aでの汚泥の圧力を高く制御することで、複数の孔7から排出される汚泥の量をより均等にできる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0063】
1、201:脱水汚泥成形器
2:本体ケース
2a:供給口
2b:開口部
3:多孔板
6:邪魔板
221:制御弁(圧力制御手段)
100:汚泥乾燥装置
P:ポンプ(圧力制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水された汚泥を乾燥処理する前に当該汚泥を成形するための脱水汚泥成形器であって、
前記汚泥が圧入される供給口、および下方に向かって開口する開口部を有する本体ケースと、
前記開口部に取り付けられ、複数の孔が形成された多孔板と、
を備え、
前記多孔板に形成された孔から前記汚泥が紐状となって下方に押し出されて落下することを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項2】
請求項1に記載の脱水汚泥成形器において、
前記供給口は、前記本体ケースの上端部に設けられており、
前記本体ケースは、上部から下部に向かって内部空間が広がるように形成されていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項3】
請求項2に記載の脱水汚泥成形器において、
前記本体ケースの縦断面が前記供給口を頂角の位置とする二等辺三角形状となるように、前記本体ケースが形成されていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の脱水汚泥成形器において、
前記本体ケースの側板の内面に前記汚泥を分散させる邪魔板が取り付けられていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の脱水汚泥成形器において、
前記多孔板のうち、前記本体ケースに圧入される前記汚泥により前記多孔板が受ける圧力が低い部分は、圧力が高い部分よりも開口率が大きくされていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の脱水汚泥成形器において、
前記多孔板に形成された複数の孔の汚泥入口端の孔面積の合計は、前記供給口の断面積以上の面積とされていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の脱水汚泥成形器において、
前記多孔板に形成された孔の直径が5mm以上20mm以下とされていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の脱水汚泥成形器において、
前記多孔板に形成された孔は、汚泥出口端の直径が汚泥入口端の直径よりも大きくされていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の脱水汚泥成形器において、
前記多孔板の厚みが、当該多孔板に形成された複数の孔の汚泥入口端の最小直径の1/2よりも大きく、かつ、当該多孔板に形成された複数の孔の汚泥出口端の最大直径の1.5倍よりも小さくされていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の脱水汚泥成形器において、
前記供給口は、前記本体ケースに複数設けられていることを特徴とする、脱水汚泥成形器。
【請求項11】
請求項10に記載の脱水汚泥成形器において、
複数の前記供給口に圧入される前記汚泥の圧力を制御する圧力制御手段を備える、脱水汚泥成形器。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の脱水汚泥成形器を備える汚泥乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179591(P2012−179591A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24625(P2012−24625)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】