説明

脱着可能な自己接着性ラベル用HMPSA

【課題】自己接着性ラベルを付けた物品(包装物および/または容器、例えばガラス瓶)から脱着が可能(剥がすことが可能)な感圧性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(a)〜(c)から成る:(a)25〜50重量%のSBS、SIS、SIBS、SEBSおよびSEPSから成る群の中から選択される一種以上のスチレン・ブロック共重合体、(b)35〜75重量%の液体相溶性があるか、150℃以下の軟化温度を有する一種以上の粘着付与樹脂、(c)1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリドンと51〜100重量%の互いに同じか、異なる一種または複数の脂肪酸の二量体および/または互いに同じか、異なる脂肪酸の三量体と(ii)0〜49重量%の互いに同じか、異なる脂肪酸モノマーとの反応で得られる一種または複数の超分子(supramolecular)ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己接着性ラベルに適した感圧性ホットメルト接着剤組成物に関するものであり、特にリサイクルプロセス時に、自己接着性ラベルを付けた物品(包装物および/または容器、例えばガラス瓶)から脱着が可能(剥がすことが可能)な感圧性ホットメルト接着剤組成物に関するものである。
【0002】
本発明はさらに、上記感圧性ホットメルト接着剤組成物から成る層を含む多層構造物と、自己接着性ラベルと、自己接着性ラベルを脱着する階段を含む物品をリサイクル方法とにも関するものである。
【背景技術】
【0003】
ラベルを付けた多くの包装物および/または容器は、その内容物を取り出した後に再利用のためまたは粉砕後にその材料を回収するために洗浄処理(またはリサイクリング)される。この洗浄処理では多くの場合、物品表面上に接着剤を残さずにラベルを物品から完全に分離する必要があり、しかも簡単な方法でリサイクルできる必要がある。
【0004】
例えばビールビンのようなガラス瓶の洗浄で一般に用いられているリサイクリング方法は60〜100℃の温度に維持された塩基性水溶組成物中に被洗浄物品を浸す階段を含む。この階段の別の目的は物品に固定されたラベルを剥離、分離することにある。
【0005】
感圧接着剤(自己接着剤、PSA)はわずかな圧力を加えただけで瞬間的に接着剤を基材に接着させることができるようにする室温で直ちに接着させる能力を有する被被覆支持体に粘着性を付与する物質である。このPSAは情報(例えばバーコード、説明、価格)を表示するため、および/または、装飾のために、物品表面上に固定する自己接着ラベルの製造で広く使われている。
【0006】
一般に、PSAは一層以上の層を有する紙またはポリマー材料のフィルムから成る印刷可能な大きな寸法の支持体の層の表面全体に連続コーティングプロセスによって塗布される。印刷可能な支持体層を被覆する接着剤の層(一般に印刷面とは反対側の面)自体は例えばシリコン処理フィルムから成る保護膜(「離型ライナー」とよばれる)で覆われている。こうして得られた多層系は一般に幅が1m、直径が約2m程度の大型リールの形に巻かれ、包装され、保存、輸送される。
【0007】
この多層系は支持体層の印刷面上に所望の装飾要素および/または情報を印刷し、所望形状および寸法へ切断する操作を含む製造プロセスを経て最終ユーザが使用可能な自己接着ラベルになる。上記保護膜は印刷支持体層上に形成された接着剤層に影響を与えずに簡単に除去できる。この保護膜を分離した後、ラベルは室温に近い温度で被被覆物品上に手または自動パッケージングライン上のラベラーを使用して貼り付けられる。
【0008】
PSAは室温でのその高い粘着性(タック)によってラベルを被被覆物品、例えばビンに迅速に結合でき、工業的な高い生産速度を得ることができる。
【0009】
[特許文献1](米国特許第US 3 763 117号明細書)には熱い塩基性水溶液を使用して簡単に分離ができる接着性に優れたアクリレートベースのPSAが記載されている。
【0010】
[特許文献2](米国特許第US 5 385 965号明細書)にも紙またはポリマー材料のフィルムの支持体上に塗布した後に、熱いアルカリ性溶液を用いて基材から分離可能なラベルを得ることが可能なPSAが記載されている。このPSAはアクリレートベースのコポリマーまたはスチレン−ブタジエンコポリマーの水性エマルジョンの形をしている。このエマルションの固体含有率は70%以下であるため、エマルションを乾燥させる階段を必要とするため、支持体層上のPSAの被覆作業が複雑になる。しかも、この接着剤はビンのリサイクリングで使用される水溶性組成物中に一部が溶液または懸濁液となって移るという欠点があるため、上記組成物を環境中に廃棄する前に再処理する工業的な設備を必要とする。
【0011】
特許文献3(国際特許出願公開第WO 2008/110685号公報)および特許文献4(国際特許出願公開第WO 2009/016285号公報)にはスチレンブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、酸の形または金属塩の形をした脂肪酸とから成る感圧セイホットメルト接着剤組成物が記載されている。この組成物は支持体層上に塗布して自己接着性ラベルにすることができ、この自己接着性ラベルは物品(例えばガラス瓶)に恒久的に結合でき、しかも、ラベルを付けた物品を高温の塩基水溶液に浸すことで迅速かつ完全に脱着できる。遊離後に接着剤は基本的にラベルに残る。
【0012】
ホットメルト接着剤またはホットメルト(HM)は室温で固体で、水も溶剤も含まない物質である。このHMは溶融状態で塗布され、冷却されると即座に固まり、被組立物を固定するジョイントを形成する。このホットメルト接着剤は一般に熱可塑性ポリマーと、必要に応じて用いられる粘着付与(粘着付与)樹脂と、可塑剤とから成る組成物の形をしている。ホットメルトはそれで被覆された支持体に相対的に硬くてタックのない特性を与える。他のホットメルトは支持体に相対的に軟らかくて高いタックのある特性を与え、これが自己接着性ラベルの製造で広く使われているPSAである。この接着剤が自己接着性ホットメルトまたはホットメルト感圧接着剤(HMPSA)と呼ばれるものに対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第US 3763117号明細書
【特許文献2】米国特許第US 5 385 965号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第WO 2008/110685号公報
【特許文献4】国際特許出願公開第WO 2009/016285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記特許文献3(国際特許出願公開第WO 2008/110685号公報)および特許文献4(国際特許出願公開第WO 2009/016285号公報)が解決した課題の代替となる新規なHMPSAを提供することにある。
すなわち、公知技術をさらに改善し、必要に応じて自己接着性ラベルの性質を改良し、例えば脱着時間または速度を速くするといった、自己接着性ラベルメーカーの要求条件を満たす新しい解決策を提供することは望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の対象は、下記(a)〜(c)から成るホットメルト感圧粘着剤(HMPSA)組成物:
(a)25〜50重量%のSBS、SIS、SIBS、SEBSおよびSEPSから成る群の中から選択される一種以上のスチレン・ブロック共重合体、
(b)35〜75重量%の液体であるか、150℃以下の軟化温度を有する一種以上の相溶性粘着付与樹脂、
(c)1〜20重量%の下記(1)と(2)の反応で得られる一種または複数の超分子(supramolecular)ポリマー:
(1)式(I)の1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリドン(またはUDETAまたはUreido Diエチレン TriAmineとよばれる):

【0016】
(2)下記の(i)と(ii)を含む脂肪酸組成物:
(i)51〜100重量%の互いに同じか、異なる一種または複数の脂肪酸の二量体および/または互いに同じか、異なる一種または複数の脂肪酸の三量体、
(ii) 0〜49重量%の互いに同じか、異なる一種または複数の脂肪酸単量体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特に断らない限り、本願明細書で量を表すのに用いる百分比は重量/重量百分率に対応する。
本発明のHMPSAで使用可能なブロック共重合体の重量平均分子量Mwは一般に60kDa〜400kDaであり、各種の重合したモノマーブロックから成り、下記一般式のトリブロック形状を有する:
A−B−A (II)
【0018】
(ここで、
Aは非エラストマーのスチレン(またはポリスチレン)ブロックを 表し、
Bはエラストマーブロックを表し、下記にすることができる:
(1)ポリブタジエン:この場合のブロック共重合体はポリスチレン-ポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、SBSとよばれる。
(2)ポリイソプレン:この場合のブロック共重合体はポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンの構造を有し、SISとよばれる。
(3)ポリイソプレン−ポリブタジエン:この場合のブロック共重合体はポリスチレン−ポリイソプレン−ポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、SIBSとよばれる。
(4)完全にまたは部分的に水素化されたポリイソプレン:この場合のブロック共重合体はポリスチレン-ポリ(エチレンプロピレン)-ポリスチレン構造を有し、SEPSとよばれる。
(5)完全にまたは部分的に水素化されたポリブタジエン:この場合のブロック共重合体はポリスチレン-ポリ(エチレンブチレン)-ポリスチレンブの構造を有し、SEBSとよばれる。このSEBSコポリマーは必要に応じて無水マレイン酸で化学的に変成できる。
【0019】
これらスチレンのトリブロックコポリマーは公知の方法を使用して得らことができ、市販もされている。これらの製品を得るための商業的方法では一般に式A−Bのジブロック化合物も生じる。従って、本発明でSBS、SIS、SIBS、SEBSおよびSEPSという用語はトリブロックとジブロックとの混合物を意味する。ジブロックの量はスチレンコポリマーの全重量を基礎にして0〜90%まで変えることができる。式(I)の直鎖構造の他に、本発明のHMPSAで使用できるスチレントリブロックコポリマーには放射状構造のものがある。
【0020】
スチレンブロック共重合体またはSBS、SIS、SIBS、SEBSおよびSEPSから成る群の中から選択される本発明のHMPSAに含まれるブロック共重合体はこれらの5つのファミリの一つまたは複数に属するコポリマーにすることができるということは明らかである。
【0021】
スチレンブロックの量はブロック共重合体の全重量を基礎として広範囲、例えば15%〜50%に変えることがきる。商業的な製品の例としては下記を挙げることができる:
(1)SBS:Polimeri Europa社(イタリア)からのEuroprene(登録商標)Sol T 166(10%ジブロックと30%スチレン)、Firestoned社からのStereon(登録商標)840A、Kraton(登録商標)D1120(75%ジブロックと30%スチレン)、
(2)直鎖のSIS:ジブロック含有量が0%で、スチレン含有量が44%のExxonMobil社から市販のVector(登録商標)4411、56%のジブロックと16%のスチレンとを有するKraton社からのKraton(登録商標)D11l3、25%のジブロックと30%のスチレンとを有するKraton(登録商標)D1165、
(3)放射状SIS:29%のジブロックと30%のスチレンとを有するKraton(登録商標)D1124、80%のジブロックと18%のスチレンとを有するExxonMobil社からのVector(登録商標)DPX 586、
(4)SIBS:35%のジブロックと18%のスチレンとを有するKraton(登録商標)MD 6455、
(5)SEBS:Kraton(登録商標)G1726(70%ジブロックと30%スチレン)、Kraton(登録商標)G1924(30%ジブロックと13%スチレン)。これは1%無水マレイン酸がグラフトされたSEBSである。
【0022】
本発明のHMPSAの好ましい変形例でのスチレンブロック共重合体の含有量は30〜50%、好ましくは35〜45%である。
本発明の他の好ましい変形例のHMPSAに含まれるスチレンブロック共重合体としては直鎖または放射状SISが用いられる。
【0023】
本発明のHMPSAで使用できる粘着付与樹脂は一般に200〜5000の平均分子量Mwを有し、特に、下記の中から選択される:
(i)天然または化学的に変性した松やにロジン(コロファン)、例えば松ゴムから抽出したロジン、植物の根から抽出したウッドロジン、その水素化誘導体、ダイマー、ポリマーまたはモノアルコールまたはポリオール(例えばグリセリン、ペンタエリスリトールまたはネオペンチルグリコール)でエステル化した誘導体、
(ii) 石油留分からの約5、9または10の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素の混合物の水素化、重合または共重合(芳香族炭化水素との)で得られる樹脂)、
(iii) Friedel−Crafts触媒の存在でのモノテルペン(またはピネン)のような一般にテルペン炭化水素の重合、必要に応じてフェノールの作用で変性、で得られるテルペン樹脂、
(iv) 天然テルペン、例えばスチレン/テルペン、αメチルスチレン/テルペン、ビニールトルエン/テルペンをベースにしたコポリマー。
【0024】
本発明のHMPSAに含まれる粘着付与樹脂は軟化温度が150℃以下のものを選択する。
軟化温度(または軟化点)はASTM E 28規格テストで求める。その原理は以下の通り:直径が約2cmの真鍮のリングを融解状態のテストする樹脂で充填する。室温へ冷却後、リングと固体の樹脂を温度調節したグリセリン溶液中に水平に設置し、グリセリン溶液の温度を毎分5℃づつ変化させる。直径が約9.5mmの鋼ボールを固体の樹脂円板上の中心に置く。軟化温度はグリセリン溶液の温度を毎分5℃づつ上げた時にボールが自重で流れ出した樹脂円板を通って25.4mmの高さを落下する時の温度である。
【0025】
粘着付与樹脂は市販されており、軟化温度が150℃以下の製品で、例としては下記ファミリを挙げることができる:
(i) Arizona Chemical 社のSylvalite(登録商標)RElOOS(軟化温度が約100℃の松やにロジンとペンタエリスリトールとのエステル)およびSylvatac(登録商標)RE12(室温で液体のコロホニ・エステル)、フランスの会社DRTのDertopoline(登録商標)CG(軟化温度117℃)、
(ii) Exxon Mobil Chemicalから入手可能なEscorez(登録商標) 5600(これは芳香族化合物で変性した水素化ジシクロペンタジエン樹脂で、Mwは約980Da、軟化温度は100℃)、類似構造のEscorezR 5615(軟化温度115℃)、Exxon Chemical社のEscorez(登録商標)5400(軟化温度100℃)、Cray Valley社のWingtack(登録商標)86、Eastman社のRegalite(登録商標)R5100、
(iii) DRT社のDertophene(登録商標)T(軟化温度95℃)、Arizona Chemical社のSylvarez(登録商標)TP95(これはMwが約1120Daで、軟化温度が95℃のフェノールテルペン樹脂である)、
(iv) Arizona Chemical社のSylvarez(登録商標)ZT1O5LT(これは軟化点が105℃のスチレン/テルペンコポリマーである)。
【0026】
「相溶性のある粘着付与樹脂」という用語は、SBS、SIS、SIBS、SEBSおよびSEPSブロック共重合体から成る群の中から選択されるブロック共重合体と50%/50%の配合で混合した時に実質的に均一な混合物を与える粘着付与樹脂を意味する。
【0027】
軟化温度が90〜120℃である粘着付与樹脂、例えばSylvatac(登録商標)RE 12、Escorez(登録商標)5615、Sylvarez(登録商標)ZT 105人のLTまたはSylvalite(登録商標)RE 100Sが好ましい。
【0028】
本発明HMPSAでの粘着付与樹脂の含有量は40〜55%であるのが好ましい。
【0029】
本発明のホットメルト感圧接着剤組成は上記定義の超分子(supramolecular)ポリマーを1〜20%含む
【0030】
「超分子(supramolecular)ポリマー」とは、水素結合によって結合した同じ化合物の分子によって形成される化学構造を示す。この表現は一つ(ホモポリマーの場合)または複数(コポリマーの場合)の単位の繰返しが共有結合によって形成される化学構造を表すために用いる用語である「ポリマー」という用語との類似性から来たものである。同じ類似性から超分子ポリマーを構成する化合物も「繰返し単位」という用語で表される。
【0031】
本発明の組成の超分子ポリマーは一つまたは複数の繰返し単位から得られ、各繰返し単位は200〜9000グラム/モル、好ましくは200〜2000グラム/モルの分子量を有する。
【0032】
超分子ポリマーの繰返し単位は少なくとも一つのアミド官能基とUDETAのイミダゾリドンから得られるラジカルとから成る。これらの基(会合基(association groups)とよばれる)によって繰返し単位に対応する分子の間に水素結合ができ、その結果としてこれらの分子間に超分子ポリマーが構築される。
【0033】
この超分子ポリマーは特許文献5(国際特許出願公開第WO2008/029065号公報)に記載されており、ここでは単に多くの用途の中でホットメルト接着および感圧接着剤の添加剤として使用されていることを記載しておく。
【特許文献5】国際特許出願公開第WO2008/029065号公報
【0034】
本発明社は、この超分子ポリマーを本発明のHMPSAへ入れることで印刷可能な支持体層上へ塗布する前に、溶融状態でタンク(メルターとよばれる)中に160℃Cまでの温度で数時間、さらには1〜2日間まで保存できる均質な特性を有するホットメルト感圧性組成物が得られる、ということを発見した。さらに、対応する多層系から得られる自己接着性ラベルは物品、特にガラス製物品へのラベル付けに適し、しかも、塩基性水溶液に物品を浸すことでラベルを容易かつ迅速に脱着できる。この時、感圧性組成はラベルの支持体層に残り、物品の外観上には痕跡は残らない。従って、感圧性組成はリサイクリング処理で使用する水溶性組成物中に溶解、分散しないか、極めてわずかしか溶解、分散しない。従って、洗浄浴の追加の精製を不要にする。
【0035】
本発明のHMPSA中の超分子ポリマーは上記定義の式(I)のUDETAを脂肪酸と反応させて得られる。
【0036】
二量体および三量体の脂肪酸は植物または動物から得られる「モノマー」とよばれる6〜22の炭素原子、好ましくは12〜20の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の圧力下での高温重合で得られる。この種の不飽和脂肪酸(モノマー)の例としては、製紙用パルプ製造の副産物であるトール油から得られる1つまたは2つの二重結合を有するC18酸(オレイン酸またはリノール酸)を挙げることができる。
【0037】
これらの不飽和脂肪酸の重合で得られるテクニカル混合物は平均して30〜35%の多くの場合出発酸に対して異性体となるモノカルボン酸モノカルボン酸(モノマー酸)と60〜65%の出発酸に対して2倍の炭素を有するジカルボン酸(二量体酸)と、5〜15%の出発酸に対して3倍の炭素を有するトリカルボン酸(三量体酸)と含む。この混合物を精製することによって各種グレードの単量体、二量体または三量体酸が商業レベルで得られる、水素化されたまたは水素化されない形で存在する。これらの中ではUniqema社が開発したPripol(登録商標)を上げことができる。
【0038】
本発明の特に好ましい実施例では、超分子ポリマーは式(I)のUDETAとC18脂肪酸の重合で得られる不飽和の単量体および/または二量体および/または三量体の脂肪酸組成物との実質的に化学量論量での反応で得られる。上記組成物は0〜5%の単量体と、90〜100%の二量体および三量体との混合物からなる。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施例では、式(I)のUDETAと反応する脂肪酸は0〜5%の単量体と、90〜100%の二量体および三量体との混合物からなる。
【0040】
この種の混合物の例としては下記を挙げることができる:
Pripol(登録商標)1017(1〜3%の単量体と、75〜80%の二量体と、18〜22%の三量体脂肪酸の混合物)
Pripol(登録商標)1040(0〜1%の単量体と、20〜25%の二量体と、75〜80%の三量体脂肪酸の混合物)
Pripol(登録商標)1013(0〜1%の単量体と、95〜98%の二量体と、3〜4%の三量体脂肪酸の混合物)
Unidyme(登録商標)14(Arizona Chemicals社) (0〜1%の単量体と、94〜97%の二量体と、2〜5%の三量体脂肪酸の混合物)
【0041】
式(I) のUDETAとPripol(登録商標)1017との反応で得られる超分子ポリマーを以下に「SUPRA(Pripol(登録商標)1017)とよぶことにする。対応する繰返し単位は約900グラム/モルの平均分子量を有する。この製造方法は上記特許文献5(国際特許出願公開第WO2008/029065号公報)、特に実施例8を参照できる。
【0042】
同様に、以下で使用するSUPRA(Pripol(登録商標)1040)、SUPRA(Pripol(登録商標)1013)およびSUPRA(Unidyme(登録商標)14)という記載は、式(I)のUDETAと対応する脂肪酸混合物とを反応させて得られる超分子ポリマーを意味する。
【0043】
本発明の他の好ましい実施例では、HMPSA中の超分子ポリマーの含有量は3〜15%である。
【0044】
本発明組成物は一種以上の安定剤または抗酸化剤を0.1〜2%の量で含むのが好ましい。この化合物は組成物が酸素、熱、光またはある種の材料(例えば粘着付与樹脂)に残る触媒と反応して劣化するのを保護するために導入される。この化合物はフリーラジカルを閉じ込める主抗酸化剤を含むことができ、一般に置換されたフェノール、例えばCiba社のIrganox(登録商標)1010である。この主抗酸化剤は他の抗酸化剤、例えばCiba社のIrgafos(登録商標)168のような亜リン酸エステル、紫外線安定剤、例えばアミンと一緒に使用できる。
【0045】
本発明組成物はさらに、可塑剤を最大で20%含むことができる。この可塑剤は芳香族化合物を含むパラフィン油またはナフテン油(例えばEsso社のPrimol(登録商標)352)を含むか、この画分を含まなくてもよい(例えばNynas社からのNyflex 222B)。
本発明組成物はさらに、ポリエチレンのホモポリマー蝋(Honeywell社のA−C(登録商標)617)、ポリエチレン/酢酸ビニールコポリマー蝋または顔料、色素または充填材を含むことができる。
【0046】
本発明の熱溶融性自己接着組成物はその成分を130〜200℃の温度で均質混合物が得られるまで単に混合することで製造できる。混合条件は当業者に周知である。
【0047】
本発明の他の対象は下記から成る多層システムにある:
(1)本発明のホットメルト感圧組成物から成る接着剤層、
(2)上記接着剤層に隣接する紙またはポリマーフィルムから成る一種または複数の印刷可能な支持体層、
(3)上記接着剤層に隣接する保護層。
【0048】
印刷可能な支持体層として下記を使用するのが好ましい:
(1)60〜110g/m2の重さを有する紙、または、
(2)PETまたはPVC(KlecknerからPentalabel(登録商標)の名称で市販)のる熱収縮性フィルムまたはOPP、または、
(3)OPP/PET二重層フィルム(OPP層が接着層と隣接する)。
【0049】
上記多層系のHMPSAの量に対応する接着剤層の厚さは一般に支持体層の単位面積当たりに7〜50g/m2である。本発明のHMPSAは130℃〜180℃の温度で溶融状態で印刷可能な支持体層上に塗布される。この塗布はノズルコーテング(約160〜180℃の温度)またはカーテンコーティング(約120〜180℃の温度)等の公知のコーテング方法で実行できる。HMPSAのノズルコーテングは一般に保護膜上へ行なわれ、得られたアセンブリを支持体層上に貼り付ける。HMPSAのカーテンコーティングによる塗布はコーティング温度に従って支持体層上に直接行うことができる。
【0050】
得られた多層システムは長さが極めて長い長方形の形をしており、一般に幅が2mで直径が1mのリールの形に巻かれ、包装される。
【0051】
本発明はさらに、上記多層システムを加工して得られる自己接着ラベルにも関するものである。この加工プロセスは一般に下記を含む:
(1)印刷可能な支持体層上に印刷する印刷階段、
(2)多層システムを切断して、幅を減少させ、小さい幅のリール上に再包装する切断階段、
(3)得られた多層系上記階段のリールに包装する階段(「ストリッピング」とよばれる)。この段階では最終使用に適した自己接着ラベルの寸法および形状に対応する印刷済み支持体層の一部のみに保護膜を結合する。この階段は選択的な切断と、支持体層および接着剤層の不用な部分(「ラベルの骨格」とよばれる)の除去が基本である。
【0052】
この多層システムは保護膜からラベルを分離して、ラベルを付ける物品上にそれを固定する自己接着ラベルの自動分離システムによって物品のパッケージングラインで使用される。
【0053】
本発明のさらに他の対象は上記自己接着ラベルで被覆された物品にある。
【0054】
ラベルを付けた物品はガラスまたはPET(ポリエチレンテレフタラート)、PVC(ポリ塩化ビニール)、PE(ポリエチレン)およびPP(ポリプロピレン)から選択される通常の熱可塑性物質で作られたパッケージ(包装)またはコンテナ(容器)であるのが好ましい。特に、ガラス瓶が好ましい。このガラス瓶にはその製造中に機械特性を維持するためおよび引掻きから保護するための被覆処理をしてもしなくてもよい。この処理は例えばガラスの表面上へ金属酸化物層を形成したり、必要な場合にはこの金属酸化物層をロウのような追加の層でさらに覆う処理である。
【0055】
本発明はさらに、上記定義のラベルの付いた物品を60〜100℃の温度に維持された塩基性水溶液中に浸し、ラベルを剥離する階段を含む、ラベルの付いた物品をリサイクルする方法にも関するものである。
【0056】
本発明方法を用いることによって、物品上に接着剤を全く残さずに、接着剤組成物で塩基性洗浄水溶液を汚染せずに、ラベルを物品から完全に分離させることができる。本発明方法を工業的に実行することで、洗浄水の汚染を少なくでき、水の消費量を減らし、リサイクルさせてより経済的に実行できる。従って、処理済み物品から分離したラベルを集めて、洗浄溶液槽から機械的手段を用いて除去できる。
【0057】
本発明方法は約80℃の温度で実行するのが好ましい。
【0058】
本発明のHMPSAの接着性能は、FINAT Technical Manual, 6th edition, 2001に記載のFINAT Test Method No.1に従って、ガラス板上での180°剥離テストで決定できる(FINATは自己接着性ラベルの製造加工メーカの国際連合である)。このテストの原理は以下のとおりである。
【0059】
厚さ50μmの熱収縮性PVCフィルムに20g/m2の量のHMPSAを予備塗布し、95℃で30秒間水中に浸してフィルムを約72%だけ縮ませる。
【0060】
矩形ストリップ(25mm×175mm)の形に検査材料を切断する。この検査材料をガラス板から成る基材上に固定する。得られた集合体を室温で1時間放置した後、ストリップを180°の角度で剥離できる引張試験機にセットし、毎分300mmの速度で剥離する。この機械でストリップをこの条件下で剥離するのに必要な力を測定する。結果はN/cmで表される。ガラス板に接着するときに、自己接着ラベルを作るための接着剤の180°剥離強度は一般に2N/cm以上、好ましくは4N/cm以上であるのが好ましい。
【0061】
本発明のHMPSAの粘着度は、FINAT Test Method No.9に記載のループ粘着性テストで決定する。予め20g/m2の量のHMPSAを塗布した剥離テストと同じフィルムから175mm×25mmの測定用長方形ストリップを得る。このストリップの両末端を合わせてループを形成する。接着剤層を外側にする。結合した両末端を縦軸線に沿って300mm/分の速度で前進後退可能な張試験機の可動ジョーに取付る。垂直に設置したループの下部を25mmの水平ガラス板と一辺が約25mmの正方形の面積上に30mmに渡って接触させる。接触後、ジョーの移動方向を逆にする。粘着力はプレートからループを完全に剥離するのに必要な力の最大値である。PSAの粘着力は一般に1N/cm2以上である。
【0062】
本発明HMPSAを予めガラス基材上に塗布し、固定したラベルの加熱塩基性水溶媒体中での剥離性(debondability)は下記のテストで決定した。
【0063】
直径が7cmで、高さが約20cmのガラス瓶を使用し、ガラス成分の種類に従って2つのグループに分けた。すなわち、ビンの製造時に加えられた表面処理の種類に従ってガラスの表面層は2つのタイプに分けられる。第1タイプの層は基本的に酸化錫から成り、第2タイプは酸化錫層上に塗布した基本的に酸化ポリエチレン蝋のエマルションから成る層を有する。第2タイプの層は新しいガラス瓶の形である。第1タイプはリサイクルでのクリーニング時に塩基性水溶液中に少なくとも一回浸されたガラス瓶の形をしている。以下、第1タイプのビンを「SnO」、第2タイプのビンを「PE」の記号で表すことにする。
【0064】
被テストHMPSAを同じ支持体層上に同じ条件で被覆し、180°剥離テストを行った。得られた支持体上の自己接着ラベルから矩形(7cm ×5cm)を切断した。
【0065】
4つのガラス瓶(PEタイプが2つ、SnOタイプが2つ)に上記ラベルの一つを単に圧力だけで貼り付けた。テストを続ける前にPEタイプおよびSnOタイプの各々のラベル群に対して下記を実施した:
(1)2つのラベル付き瓶の一つは室温に48時間放置した。
(2)残りのラベル付き瓶は24時間室温に放置した後、25%以下の相対湿度を有する50℃の乾燥器中に24時間放置し、さらに2時間室温に放置した。
【0066】
これらの2つの環境処理の狙いは、それぞれ初期状態(ラベル付け時)と老化後(すなわち商業化後の使用段階後)とのラベル付き瓶の挙動をシミュレーションすることにある。
ラベルを付けたガラス瓶を80℃の恒温に維持したpH 12の水性浴中に浸した。浸した時から瓶からラベルが完全に脱着したときまでの時間を測定する。
【0067】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明敵実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
[表1]に示す組成物を各成分を180℃で単に加熱混合することで製造した。各組成物は上記成分以外に一般的な安定剤または抗酸化剤を1%含む。
実行したテストの結果は[表2]に示す。
【0069】
塩基性水溶液中での加熱脱着テストで、ラベルが分離した後の瓶の外表面上には接着剤は観測されなかった。ラベルのHMPSAのロスは約0%であった。これは各実施例で塩基性水溶液中にHMPSAが含まれないことを示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)から成るホットメルト感圧粘着剤(HMPSA)組成物:
(a)25〜50重量%のSBS、SIS、SIBS、SEBSおよびSEPSから成る群の中から選択される一種以上のスチレン・ブロック共重合体、
(b)35〜75重量%の液体であるか、150℃以下の軟化温度を有する一種以上の相溶性粘着付与樹脂、
(c)1〜20重量%の下記(1)と(2)の反応で得られる一種または複数の超分子(supramolecular)ポリマー:
(1)式(I)の1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリドン(またはUDETAまたはUreido Diエチレン TriAmineとよばれる):

(2)下記の(i)と(ii)を含む脂肪酸組成物:
(i)51〜100重量%の互いに同じか、異なる一種または複数の脂肪酸の二量体および/または互いに同じか、異なる一種または複数の脂肪酸の三量体、
(ii) 0〜49重量%の互いに同じか、異なる一種または複数の脂肪酸モノマー。
【請求項2】
スチレンブロック共重合体の含有量が30〜50重量%である請求項1に記載のHMPSA。
【請求項3】
スチレンブロック共重合体が直鎖またはラジアルSISである請求項1または2に記載のHMPSA。
【請求項4】
粘着付与樹脂が液体であるか、90〜120℃の軟化温度を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のHMPSA。
【請求項5】
粘着付与樹脂の含有量が40〜55重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のHMPSA。
【請求項6】
超分子(supramolecular)ポリマーが式(I)のUDETAと、主としてC18の不飽和脂肪酸モノマーの重合で得られる単量体および/または二量体および/または三量体の脂肪酸の組成物との実質的に化学量論量の反応によって得られ、重量組成物は0〜10重量%の単量体と、90〜100重量%の二量体および三量体の混合物から成る請求項1〜5のいずれか一項に記載のHMPSA。
【請求項7】
式(I)のUDETAと反応される脂肪酸組成物が0〜5重量%の単量体と、95〜100重量%の二量体および三量体の混合物から成る請求項1〜6のいずれか一項に記載のHMPSA。
【請求項8】
超分子(supramolecular)ポリマーの含有量が3〜15重量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載のに記載のHMPSA。
【請求項9】
0.1〜10重量%の一種以上の安定剤または抗酸化剤をさらに含む1〜8のいずれか一項に記載のに記載のHMPSA。
【請求項10】
下記(1)〜(3)を含む多層系:
(1)請求項1〜9のいずれか一項に記載のHMPSAから成る接着剤層、
(2)一層または複数の紙またはポリマーフィルムから成る上記接着剤層に隣接した印刷可能な支持体層、
(3)上記接着剤層に隣接した保護層。
【請求項11】
上記印刷可能な支持体層として下記のいずれかを使用する請求項10に記載の多層系:
60〜110g/m2の重さを有する紙、または、
PET、PVCまたはOPPから成る熱収縮性フィルム、または、
OPP/PET二重層フィルム(OPP層が上記接着剤層に隣接)。
【請求項12】
HMPSAの量に対応する接着剤層の厚さ(支持体層の単位面積の当たりの厚さ)が7〜50g/m2である請求項10または11に記載の多層系。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の多層系を生成して得られる自己接着性ラベル。
【請求項14】
請求項13に記載の自己接着性ラベルで被覆された物品。
【請求項15】
ガラスまたはプラスチックから成る包装材料または容器、好ましくはガラス瓶から成る請求項14に記載の物品。

【公開番号】特開2011−236422(P2011−236422A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−104817(P2011−104817)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(501305888)
【Fターム(参考)】