説明

脱硫装置の運転方法、および脱硫装置

【課題】脱硫触媒の劣化を防止する。
【解決手段】脱硫触媒11aが充填された脱硫器11と、脱硫器11で脱硫された脱硫原料を貯蔵する脱硫原料タンク12と、を備えた脱硫装置1の運転方法であって、脱硫装置1の始動時および/または停止時において、脱硫器内における炭化水素原料の初溜点が脱硫触媒の温度よりも高くなる条件を満たすように、脱硫器11に前記脱硫原料を圧送して脱硫器内の圧力を高める。始動時においては、脱硫触媒11aが活性化する触媒活性温度に到達するまで、脱硫器11に脱硫原料を供給して脱硫原料タンク12と脱硫器11との間で脱硫原料を循環させる。停止時においては、脱硫触媒11aの温度が常圧における炭化水素原料の初溜点以下に低下するまで、脱硫器11を脱硫原料でパージする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫装置の運転方法、および脱硫装置に関し、特に脱硫触媒の劣化を防止することができる脱硫装置の運転方法、および脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱硫装置は、灯油等の炭化水素原料から有害な硫黄を除去する装置として、燃料電池システム等において使用されている(例えば、特許文献1)。
従来の脱硫装置について、図5〜図7を参照しながら説明する。参照する図において、図5は従来の脱硫装置の構成を説明するための構成図であり、図6は従来の脱硫装置の動作を説明するためのグラフであり、図7は従来の脱硫装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0003】
従来の脱硫装置1′は、図5に示すように、脱硫触媒11a′が充填された脱硫器11′と、この脱硫器11′で脱硫された脱硫灯油を貯蔵する脱硫灯油タンク12′と、脱硫触媒11a′を加熱するヒータ13′と、原料タンク1a′に貯留された灯油(JIS1号灯油)を脱硫器11′に圧送するポンプP′と、を備えて構成されている。
【0004】
脱硫装置1′は、脱硫器11′にJIS1号灯油を循環させながら脱硫処理を行なうが、脱硫触媒11a′を活性化させるために、所定の触媒活性化温度にまでヒータ13′で加熱する必要がある。
このため、従来の脱硫装置1′を始動する場合には、図6(a)に示すように、ヒータ13′をONにして(S1)、脱硫触媒11a′の温度Tcを測定しながら(S2)、脱硫触媒温度Tcが触媒活性化温度に到達したときに(S3)ポンプP′をONにして(S4)、脱硫器11′にJIS1号灯油を循環させながら脱硫処理を行なっていた。
【0005】
すなわち、図7に示すように、ヒータ13′をONにしてヒータ目標温度までヒータ温度Tを上昇させると、脱硫触媒温度Tcも上昇し所定の触媒活性化温度に到達する(t)。その後、ポンプP′を駆動して(t)、脱硫器11′にJIS1号灯油を循環させながら脱硫処理を行なう。
なお、脱硫装置1′を停止する場合には、図6(b)に示すように、ヒータ13とポンプP′をOFFする。
【0006】
【特許文献1】特開2007−70502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、脱硫器内部の圧力Prを計測して灯油の初溜点Bpを求めてみると、図7に示すように、ヒータ13′をONにして脱硫触媒11a′を活性化させる温度(JIS1号灯油供給許可温度)にまで加熱すると、脱硫触媒温度Tcが灯油の初溜点Bpを超えてしまうため(t1〜t2)、脱硫器11′内部の灯油が蒸発して気相が形成される。そして、脱硫器内部の温度上昇により、しだいに気相の圧力(脱硫器圧力Pr)が上昇して灯油の液面が低下する。
このため、脱硫触媒11a′が気相にさらされて乾燥した触媒上に炭化した灯油が析出して脱硫触媒11aが劣化するという問題があった。
【0008】
一方、灯油の液面を保持する目的で、脱硫触媒温度Tcが低い状態で灯油を供給すると、脱硫触媒11a′が活性化していないため脱硫触媒11a′の能力が十分に発揮されず、脱硫触媒11a′の寿命が低下するという問題があった。また、脱硫が不十分な灯油が脱硫灯油タンク12′に貯留されるおそれがあり、脱硫が不十分な灯油と脱硫灯油とが混じってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前記した問題を解決するため、脱硫触媒の劣化を防止することができる脱硫装置の運転方法、および脱硫装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、炭化水素原料に含まれる硫黄を除去する脱硫触媒が充填された脱硫器と、この脱硫器で脱硫された脱硫原料を貯蔵する脱硫原料タンクと、を備えた脱硫装置の運転方法であって、前記脱硫装置の始動時および/または停止時において、前記脱硫器内における前記炭化水素原料の初溜点が前記脱硫触媒の温度よりも高くなる条件を満たすように、前記脱硫器に前記脱硫原料を圧送して前記脱硫器内の圧力を高める昇圧工程を含むこと、を特徴とする。
【0011】
かかる工程によれば、脱硫触媒温度が上昇および下降する脱硫装置の始動および/または停止時において、前記脱硫器内における前記炭化水素原料の初溜点が前記脱硫触媒の温度よりも高くなる条件を満たすように、脱硫器に供給される炭化水素原料の温度がその初溜点よりも低く設定される。
このため、炭化水素原料の蒸発を防止して、脱硫触媒が気相にさらされないようにすることで、脱硫触媒の劣化を防止することができる。
また、脱硫前の炭化水素原料ではなく、脱硫後の脱硫原料を脱硫器に圧送することで、前記炭化水素原料と前記脱硫原料とが混じらないようにすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の脱硫装置の運転方法であって、前記始動時おける昇圧工程は、前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達するまで、前記脱硫器に前記脱硫原料を供給して前記脱硫原料タンクと前記脱硫器との間で前記脱硫原料を循環させる循環工程を含むこと、を特徴とする。
ここで、触媒活性温度とは、触媒の処理能力が確保され炭化水素原料を脱硫器に供給してもよい温度をいう。
【0013】
かかる工程によれば、前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達するまでは、前記脱硫器に前記脱硫原料を供給することで、触媒が効率的に働かない状態であっても、脱硫されていない炭化水素原料が脱硫原料タンクに供給されることを防止することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の脱硫装置の運転方法であって、前記循環工程の後、前記脱硫原料の供給を停止するとともに前記炭化水素原料を前記脱硫器に供給して脱硫を行なう脱硫工程を含むこと、を特徴とする。
【0015】
かかる工程によれば、前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達した後は、前記炭化水素原料を前記脱硫器に供給して脱硫を行なうことで、脱硫触媒の劣化を防止しながら効率的に脱硫装置を稼動させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の脱硫装置の運転方法であって、前記停止時における昇圧工程は、前記脱硫触媒の温度が常圧における前記炭化水素原料の初溜点以下に低下するまで、前記脱硫器を前記脱硫原料でパージするパージ工程を含むこと、を特徴とする。
【0017】
かかる工程によれば、脱硫触媒の温度が下降する脱硫装置の停止時において、前記脱硫触媒の温度が常圧(1気圧)における前記炭化水素原料の初溜点以下に低下するまで、前記脱硫器を前記脱硫原料でパージすることで、脱硫器内に脱硫原料が満たされているため、炭化水素原料の蒸発を防止して脱硫触媒が気相にさらされないようにすることができる。このため、次回の起動時も脱硫触媒の劣化を防止することができる。また、前記炭化水素原料と前記脱硫原料とが混じらないようにすることができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、炭化水素原料に含まれる硫黄を除去する脱硫触媒が充填された脱硫器と、この脱硫器で脱硫された脱硫原料を貯蔵する脱硫原料タンクと、前記脱硫触媒を加熱する加熱手段と、原料タンクに貯留された前記炭化水素原料を前記脱硫器に圧送するポンプと、を有する脱硫装置であって、炭化水素原料に含まれる硫黄を除去する脱硫触媒が充填された脱硫器と、この脱硫器で脱硫された脱硫原料を貯蔵する脱硫原料タンクと、前記脱硫触媒を加熱する加熱手段と、原料タンクに貯留された前記炭化水素原料を前記脱硫器に圧送するポンプと、を有する脱硫装置であって、前記脱硫器の流出口から前記脱硫原料タンクの流入口までの流路に設けられ、予め設定された背圧力で開放される背圧弁と、前記脱硫触媒の温度を検出する触媒温度計と、前記原料タンクと前記ポンプとの間に配設され前記炭化水素原料の供給を遮断する遮断弁と、前記脱硫原料タンクから前記遮断弁と前記ポンプとの間の流路に連通されるリターン流路と、このリターン流路に設けられたリターン弁と、を備え、前記背圧力は、前記脱硫装置の始動時および/または停止時において、前記脱硫器内における前記炭化水素原料の初溜点が前記脱硫触媒の温度よりも高くなる条件を満たすように、前記ポンプにより前記脱硫器に前記脱硫原料を圧送して前記脱硫器内の圧力を高める背圧力で設定されていること、を特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、脱硫触媒温度が上昇および下降する脱硫装置の始動および/または停止時において、前記脱硫器内における前記炭化水素原料の初溜点が前記脱硫触媒の温度よりも高くなる条件を満たすように背圧弁の背圧力が設定され、脱硫器に供給される炭化水素原料の温度がその初溜点よりも低くなるようにすることができる。
このため、炭化水素原料の蒸発を防止して、脱硫触媒が気相にさらされないようにすることで、脱硫触媒の劣化を防止することができる。
また、脱硫前の炭化水素原料ではなく、脱硫後の脱硫原料を脱硫器に圧送することで、前記炭化水素原料と前記脱硫原料とが混じらないようにすることができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の脱硫装置であって、前記脱硫装置は、始動時おいて、前記加熱手段により前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達するまで、前記遮断弁を閉じるとともに前記バイパス弁を開け、前記ポンプにより前記脱硫器に前記脱硫原料を供給して前記脱硫原料タンクと前記脱硫器との間で前記脱硫原料を循環させるように構成されていること、を特徴とする。
かかる構成によれば、触媒が効率的に働かない状態であっても、脱硫されていない炭化水素原料が脱硫原料タンクに供給されることを防止することができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の脱硫装置であって、前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達した後において、前記リターン弁を閉じて前記脱硫原料の供給を停止するとともに、前記遮断弁を開けて前記炭化水素原料を前記脱硫器に供給して脱硫を行なうように構成されていること、を特徴とする。
【0022】
請求項8に係る発明は、請求項5に記載の脱硫装置であって、前記脱硫装置は、停止時における前記脱硫触媒の温度の降下中においては、前記脱硫触媒の温度が常圧における前記炭化水素原料の初溜点以下に低下するまで、前記遮断弁を閉じて前記リターン弁を開いて前記脱硫器を前記脱硫原料でパージするように構成されていること、を特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、前記脱硫器を前記脱硫原料でパージすることで、脱硫器内に脱硫原料が満たされているため、次回の起動時も脱硫触媒の劣化を防止することができる。また、前記炭化水素原料と前記脱硫原料とが混じらないようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る脱硫装置の運転方法、および脱硫装置は、脱硫触媒の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る燃料電池システムにおける脱硫装置について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図において、図1は本発明の実施形態に係る灯油改質型燃料電池システム100の主要構成を示す構成図である。
なお、本発明に係る脱硫装置1は、燃料電池システムに限定されるものではなく、ジェット燃料やディーゼル燃料等の用途への適用も可能である。
【0026】
本発明の実施形態に係る灯油改質型燃料電池システム100は、図1に示すように、炭化水素原料に含まれる硫黄分を除去する脱硫装置1と、灯油に含まれる炭化水素と水蒸気とを反応させて水素を生成する改質装置2と、水素と酸素との電気化学反応によって発電を行なう燃料電池スタック3と、改質水や冷却水を貯留する冷却水タンク4と、を備えている。
【0027】
炭化水素原料には、例えば、水素源としてのエネルギー密度が非常に高く、可搬性および貯蔵性に富む灯油(JIS1号灯油)を使用することができる。ただし、灯油に限定されるものではなく、軽油、重油、アスファルテン、オイルサンド油、メタノール、ナフサ、石炭液化油、石炭系重質油、ガソリン等の液状炭化水素混合物、都市ガス、LPG等の気体状炭化水素混合物などの各種の炭化水素混合物を用いることができる。
【0028】
改質装置2は、図1に示すように、炭化水素原料に含まれる炭化水素分と水蒸気とを反応させて水素ガスと一酸化炭素ガスを含むガス(改質ガス)を生成する改質器21と、改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変性するCO変成器22と、残余の一酸化炭素をさらに低減したガス(水素含有ガス)を生成するCO除去器23と、を備えている。
【0029】
改質器21は、炭化水素と水蒸気との反応を促進させる白金(Pt)等の貴金属系触媒が使用される改質反応触媒(不図示)と、所定の改質処理温度に設定する熱量を供給するバーナ21aと、を備えている。
改質器21には、脱硫された脱硫灯油、および冷却水タンク4から改質水が供給される。そして、バーナ21aには、燃料として、燃焼灯油、および燃料電池スタック3で使用されなかった未反応の水素が含まれているアノードオフガスが供給される。
【0030】
CO変成器22は、内部に、酸化鉄、銅−亜鉛系、銅−クロム系等のシフト反応触媒が充填されたシフト反応触媒層を備えている。そして、CO変成器22には、改質器21で生成された改質ガスが導入される。
【0031】
CO除去器23は、燃料電池スタック3における電極の被毒の問題を回避するため、CO選択酸化触媒(PROX反応触媒)の存在下に、PROX空気を導入してCO変成器22から供給されるシフトガス中に微量に存在する一酸化炭素を酸化させて、シフトガスの一酸化炭素濃度をさらに低減させた改質ガス(水素含有ガス)を燃料電池スタック3に供給するための装置である。
【0032】
燃料電池スタック3は、CO除去器23から供給される水素含有ガスをアノードに導入し、加湿器(図示せず)によって加湿された空気をカソードに導入して、水素と酸素の電気化学的反応によって発電を行なうものである。
【0033】
続いて、本発明の実施形態に係る脱硫装置の構成ついて図2を参照しながら説明する。図2は本発明の実施形態に係る脱硫装置の構成を示す構成図である。
本発明の実施形態に係る脱硫装置1は、図2に示すように、炭化水素原料である灯油(JIS1号灯油)を貯留する原料タンク1aと、灯油に含まれる硫黄を除去する脱硫触媒11aが充填された脱硫器11と、この脱硫器11で脱硫された脱硫原料である脱硫灯油を貯蔵する脱硫灯油タンク12と、脱硫触媒11aを加熱する加熱手段であるヒータ13と、原料タンク1aに貯留されたJIS1号灯油を脱硫器11に圧送するポンプPと、脱硫器11の流出口から脱硫灯油タンク12の流入口までの流路Lに設けられた背圧弁と、脱硫触媒11aの温度を検出する脱硫触媒温度計11bと、脱硫器内部の圧力を検出する圧力計11cと、原料タンク1aとポンプPとの間に配設されJIS1号灯油の供給を遮断する遮断弁である電磁弁15と、脱硫灯油タンク12から電磁弁15とポンプPとの間の流路に連通されるリターン流路16と、このリターン流路16に設けられたリターン弁である逆止弁18と、脱硫器11に送るJIS1号灯油を加温する熱交換器HEXと、脱硫装置1の動作を制御する制御装置8と、を備えている。
【0034】
脱硫器11は、液状炭化水素に対して耐性のある材料、例えば、ステンレス鋼等の金属で耐圧性の筐体を構成して、その形状、大きさ、材質等は、特に限定されず、脱硫するために導入される炭化水素原料の性状、硫黄含有量、脱硫付加、処理量等に応じて、適宜選択される。
脱硫器11に充填される脱硫触媒11aは、例えば、コバルト−モリブデン系、ニッケル−アルミニウム系、またはニッケル−タングステン系の水素化脱硫触媒、あるいはこれらと酸化亜鉛を組み合わせた脱硫触媒によって構成される。
【0035】
ヒータ13は、脱硫器11の外側に設けられ、脱硫器11の外壁を介して脱硫器11に充填された脱硫触媒11aを加熱し、脱硫触媒11aを所定の触媒活性温度に加熱するものである。
なお、ヒータ13は、脱硫触媒11aを加熱できるものであれば特に限定されるものではなく、脱硫器11の外被を被包するように設けられた電熱ヒータ、あるいは反応器の外側に設けられ、燃料プロセッサを構成する改質装置を加熱するために設けられたバーナ等の加熱手段から供給される加熱媒体を流通させる加熱媒体流通路を有する外被管等で構成することができる。
【0036】
また、原料タンク1aの液面は、リターン弁として逆止弁18を採用した関係で原料タンク1aの水頭圧の方が逆止弁18のクラック圧よりも高くなるように設定されている。このため、電磁弁15を閉じた場合には、脱硫灯油タンク12からポンプPへ脱硫灯油が供給され、電磁弁15を開けた場合には、JIS1号灯油がポンプPを介して脱硫器11へ供給される。
【0037】
背圧弁12aは、ポンプPの作動時における脱硫器内部の圧力を調整するために設けられている。そして、背圧弁12aの設定圧力(背圧力)は、脱硫器11内における灯油の初溜点が脱硫触媒11aの温度よりも高くなる条件を満たすように、ポンプPにより脱硫器11に脱硫灯油を圧送して脱硫器内の圧力を高める背圧力で設定されている。
【0038】
なお、本実施形態において、圧力計11cは、脱硫器11の内部に配設したが、これに限定されるものではなく、脱硫器内部の圧力を測定できるものであればポンプPから背圧弁12aまでの流路に設けることもできる。
【0039】
熱交換器HEXは、脱硫器11の流入側に設けられ、脱硫器11に流入するJIS1号灯油と脱硫器から流出する脱硫灯油との間で熱交換を行なう。つまり、ポンプPから脱硫器11へは熱交換器HEXを介して加温されたJIS1号灯油が送られる。そして、脱硫器11で脱硫された脱硫灯油は、熱交換器HEXを介して冷却され、背圧弁12aを介して脱硫灯油タンク12まで供給されている。
【0040】
制御装置8は、図示しない中央処理装置および記憶装置を備え、燃料電池スタック3(図1)の発電電力量や改質装置2(図1)の状態に伴う始動・停止信号を受信して、ヒータ13、ポンプP、および電磁弁15の動作を制御する。
【0041】
以上のように構成された脱硫装置1の動作について主として図3〜図4を参照しながら説明する。図3は脱硫装置の動作を示すフローチャートであり、(a)は始動時、(b)は停止時である。図4は脱硫装置の動作の状態を示すグラフであり、(a)は始動時、(b)は停止時である。
なお、図4においては、説明の便宜上、勾配の程度や折点の位置において誇張して表示する場合がある。
【0042】
本発明の実施形態に係る脱硫装置1は、始動および停止時において、制御装置8により、脱硫器内における炭化水素原料である灯油(脱硫器に供給された脱硫灯油、ないしJIS1号灯油)の初溜点Bpが脱硫触媒温度Tcよりも高くなる条件を満たすように、ポンプPにより脱硫器11に脱硫灯油を圧送して脱硫器11内の圧力を高める昇圧工程を含んで構成されている。
【0043】
なお、本実施形態においては、昇圧工程は、始動時および停止時の両方で実施しているが、これに限定されるものではなく、始動時または停止時のいずれか一方で実施することもできる。
【0044】
始動時における昇圧工程は、ヒータ13により脱硫触媒11aが活性化する触媒活性温度に到達するまで、ポンプPを駆動して電磁弁15を閉じると逆止弁18が開き、ポンプPにより脱硫器11にリターン流路16から脱硫灯油を供給して脱硫灯油タンク12と脱硫器11との間で脱硫灯油を循環させるように、循環工程を備えている。
【0045】
具体的には、図3(a)に示すように、始動処理を開始する場合には、まずヒータ13をONにしてから、電磁弁15を閉じてポンプPをONにする(S1)。電磁弁15をとじると逆止弁18が開くので、脱硫器11には脱硫灯油タンク12からリターン流路16を通って脱硫灯油が圧送される。脱硫器11に脱硫灯油が供給されると、脱硫器11内部の圧力が急速に高められる(図4のPr(t〜t)参照)。
【0046】
そして、脱硫器11内部の圧力が背圧弁12aの設定圧力まで高まると(図4のPr(t))、脱硫器11から流出した脱硫灯油が流路L(図2)から、熱交換器HEXおよび背圧弁12aを通って脱硫灯油タンク12まで回収される。
このようにして、脱硫灯油タンク12と脱硫器11との間で脱硫灯油が循環される(図4のPr(t〜t)参照)。
【0047】
このとき、図3(a)に示すように、脱硫触媒温度計11bにより脱硫触媒温度Tcを測定して(S2)、脱硫触媒温度が触媒活性温度(触媒の処理能力が確保されJIS1号灯油を供給してもよい温度、JIS1号灯油供給許可温度)に到達したときに、電磁弁15を開いてJIS1号灯油を脱硫器11に供給する。電磁弁15を開くと逆止弁18が閉じるので、脱硫灯油タンク12からの脱硫灯油の供給が停止しJIS1号灯油が脱硫器11に供給され、脱硫器11で脱硫された脱硫灯油が流路Lを通って、脱硫灯油タンク12まで回収される。
【0048】
このとき、脱硫触媒温度Tcは、図4(a)に示すように、ヒータ温度Tの上昇に伴い急速に上昇した後(t〜t)、しだいになだらかな曲線を描いて脱硫触媒11aが活性化する触媒活性温度に到達する(t)。そして、その後、ヒータの目標温度に漸近するように推移する(t〜t)。
このようにして、脱硫触媒温度Tcが触媒活性温度に到達したときに、JIS1号灯油を供給して脱硫を開始して、脱硫工程を行なう。
【0049】
脱硫器内部の圧力Prは、図4(a)に示すように、ヒータ温度Tの上昇および脱硫灯油の供給圧力により急速に上昇した後、背圧弁12aの設定圧力に到達するとその設定圧力に保持される。
脱硫器内の灯油の初溜点Bpは、脱硫器内部の圧力Prを高めることで、脱硫器内部の圧力Prの上昇に伴って上昇する。
【0050】
ここで、脱硫装置1は、灯油の初溜点Bpが脱硫触媒温度Tcよりも高くなる条件を満たすように背圧弁12aの背圧力を設定している。例えば、予め試験運転等を行ない、脱硫装置1の仕様に応じてポンプPおよびヒータ13の仕様や駆動のタイミングを適宜設定するが、通常、ポンプPの駆動によって液相で満たされた脱硫器11内は、すぐに昇圧されるので(脱硫器の昇温速度に比べて昇圧速度の方が速い)、ヒータ13のONタイミングは本実施形態のようにポンプPの駆動前でもよいし、ヒータ13ONと同時にポンプPを駆動、あるいはヒータ13ONの前にポンプPを駆動してもよい。
【0051】
したがって、脱硫器内部の圧力Prを特に監視する必要はなく、単に決められたシーケンスの順にポンプPやヒータ13を駆動するだけで本発明の目的を達成することが可能である。もっとも、本発明の目的から考えれば、例えば、脱硫器11内が昇圧されたことを圧力計11cで確認してからヒータ13をONする制御も可能である。
【0052】
脱硫装置1の停止時における昇圧工程は、脱硫触媒11aの温度が常圧(1気圧)における炭化水素原料である灯油の初溜点以下に低下するまで、電磁弁15を閉じて逆止弁18を開いて脱硫器11を脱硫灯油でパージするパージ工程を含んで構成されている。
【0053】
具体的には、図3(b)に示すように、停止処理を開始する場合には、ポンプPをONにしたままでヒータ13をOFFにしてから、電磁弁15を閉じる(S1)。電磁弁15を閉じると逆止弁18が開くので、JIS1号灯油の代わりに、脱硫器11には脱硫灯油タンク12からリターン流路16を通って脱硫灯油が供給される。
そして、脱硫触媒温度計11bにより脱硫触媒温度Tcを測定して(S2)、脱硫触媒11aの温度が常圧における灯油の初溜点以下に低下したとき(S3)、ポンプPをOFFにして(S4)、停止処理を終了する。
【0054】
脱硫装置1の停止時におけるパージ工程において、脱硫器11内では、図4(b)に示すように、ヒータ13をOFFにすると(t)、脱硫触媒温度Tcは徐々に下降する(t〜t)。一方、ポンプPはONしたままであるから(t)、脱硫器内部の圧力Prは下降しない(t〜t)。このようにして、脱硫触媒11aの温度が1気圧における灯油の初溜点以下に低下してからポンプPをOFFにして(t)、脱硫装置1の停止処理を終了する。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る脱硫装置1によれば、脱硫触媒温度Tcが上昇および下降する脱硫装置の始動および停止時において、脱硫器11内における灯油の初溜点Bpが脱硫触媒温度Tcよりも高くなる条件を満たすように、脱硫器11に供給される灯油の温度がその初溜点Bpよりも低く設定される。
このため、灯油の蒸発を防止して、脱硫触媒11aが気相にさらされないようにすることで、脱硫触媒11aの劣化を防止することができる。また、脱硫前のJIS1号灯油ではなく、脱硫後の脱硫灯油を脱硫器に圧送することで、脱硫前のJIS1号灯油と脱硫灯油とが混じらないようにすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。
例えば、本実施形態ではリターン弁として逆止弁18を採用したが、これに限定されるものではなく、制御装置8により開閉を電気的に制御する電磁弁を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る灯油改質型燃料電池システム100の主要構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る脱硫装置の構成を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る脱硫装置の動作を示すフローチャートであり、(a)は始動時、(b)は停止時である
【図4】本発明の実施形態に係る脱硫装置の動作の状態を示すグラフであり、(a)は始動時、(b)は停止時である。
【図5】従来の脱硫装置の構成を説明するための構成図である。
【図6】従来の脱硫装置の動作を説明するためのグラフである。
【図7】従来の脱硫装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 脱硫装置
1a 原料タンク(JIS1号灯油タンク)
2 改質装置
3 燃料電池スタック
8 制御装置
11 脱硫器
11a 脱硫触媒
11b 脱硫触媒温度計
11c 圧力計
12 脱硫灯油タンク(脱硫原料タンク)
12a 背圧弁
13 ヒータ
15 電磁弁(遮断弁)
16 リターン流路
18 逆止弁(リターン弁)
100 灯油改質型燃料電池システム
Bp 初溜点
HEX 熱交換器
L 流路
P ポンプ
Pr 脱硫器内部の圧力
Tc 脱硫触媒温度(脱硫触媒の温度)
ヒータ温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料に含まれる硫黄を除去する脱硫触媒が充填された脱硫器と、この脱硫器で脱硫された脱硫原料を貯蔵する脱硫原料タンクと、を備えた脱硫装置の運転方法であって、
前記脱硫装置の始動時および/または停止時において、前記脱硫器内における前記炭化水素原料の初溜点が前記脱硫触媒の温度よりも高くなる条件を満たすように、前記脱硫器に前記脱硫原料を圧送して前記脱硫器内の圧力を高める昇圧工程を含むこと、
を特徴とする脱硫装置の運転方法。
【請求項2】
前記始動時おける昇圧工程は、前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達するまで、前記脱硫器に前記脱硫原料を供給して前記脱硫原料タンクと前記脱硫器との間で前記脱硫原料を循環させる循環工程を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の脱硫装置の運転方法。
【請求項3】
前記循環工程の後、前記脱硫原料の供給を停止するとともに前記炭化水素原料を前記脱硫器に供給して脱硫を行なう脱硫工程を含むこと、
を特徴とする請求項2に記載の脱硫装置の運転方法。
【請求項4】
前記停止時における昇圧工程は、
前記脱硫触媒の温度が常圧における前記炭化水素原料の初溜点以下に低下するまで、前記脱硫器を前記脱硫原料でパージするパージ工程を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の脱硫装置の運転方法。
【請求項5】
炭化水素原料に含まれる硫黄を除去する脱硫触媒が充填された脱硫器と、この脱硫器で脱硫された脱硫原料を貯蔵する脱硫原料タンクと、前記脱硫触媒を加熱する加熱手段と、原料タンクに貯留された前記炭化水素原料を前記脱硫器に圧送するポンプと、を有する脱硫装置であって、
前記脱硫器の流出口から前記脱硫原料タンクの流入口までの流路に設けられ、予め設定された背圧力で開放される背圧弁と、
前記脱硫触媒の温度を検出する触媒温度計と、
前記原料タンクと前記ポンプとの間に配設され前記炭化水素原料の供給を遮断する遮断弁と、
前記脱硫原料タンクから前記遮断弁と前記ポンプとの間の流路に連通されるリターン流路と、
このリターン流路に設けられたリターン弁と、を備え、
前記背圧力は、前記脱硫装置の始動時および/または停止時において、前記脱硫器内における前記炭化水素原料の初溜点が前記脱硫触媒の温度よりも高くなる条件を満たすように、前記ポンプにより前記脱硫器に前記脱硫原料を圧送して前記脱硫器内の圧力を高める背圧力で設定されていること、
を特徴とする脱硫装置。
【請求項6】
前記脱硫装置は、始動時おいて、前記加熱手段により前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達するまで、前記遮断弁を閉じるとともに前記バイパス弁を開け、前記ポンプにより前記脱硫器に前記脱硫原料を供給して前記脱硫原料タンクと前記脱硫器との間で前記脱硫原料を循環させるように構成されていること、
を特徴とする請求項5に記載の脱硫装置。
【請求項7】
前記脱硫触媒が活性化する触媒活性温度に到達した後において、前記リターン弁を閉じて前記脱硫原料の供給を停止するとともに、前記遮断弁を開けて前記炭化水素原料を前記脱硫器に供給して脱硫を行なうように構成されていること、
を特徴とする請求項6に記載の脱硫装置。
【請求項8】
前記脱硫装置は、停止時における前記脱硫触媒の温度の降下中においては、前記脱硫触媒の温度が常圧における前記炭化水素原料の初溜点以下に低下するまで、前記遮断弁を閉じて前記リターン弁を開いて前記脱硫器を前記脱硫原料でパージするように構成されていること、
を特徴とする請求項5に記載の脱硫装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−79183(P2009−79183A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251071(P2007−251071)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】