説明

脱穀処理装置

【課題】 扱室下方の揺動選別棚幅より外方部まで処理室受網の濾過部を拡大し、処理室の濾過能力を高め、脱穀処理能力の向上を図る。
【解決手段】 扱室(3)からの排塵物を受け入れて軸芯方向に移送しながら処理する排塵処理胴(17)を排塵処理室(18)内に軸架し、この排塵処理室(18)内で処理された被処理物を下方の揺動選別棚(40)上に直接導く第1濾過経路(22)と、この排塵処理室(18)内で処理された被処理物を揺動選別棚(40)の側端部よりも外方を迂回して揺動選別棚(40)上に導く第2濾過経路(26)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示されているように、扱室内からの排塵処理物を受け入れて軸芯方向に沿って移送しながら処理する排塵処理胴を備えた排塵処理室には、脱粒処理された排塵処理物を濾過する受網(排塵網11e)が張設され、そして、この受網の濾過孔は揺動選別棚部に面した選別室側にのみ設けられていて、そこからの漏下物が下方の揺動選別棚上に受けられるようになっている。
【特許文献1】特開2006−271264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来のものでは、受網の濾過面積が少ないため、濾過効率が悪く、処理性能の低下を招く問題があった。
本発明は、かかる問題点を解消することにあり、扱室下方の揺動選別棚幅より外方部まで受網の濾過部を拡大し、処理室の濾過能力を高め、処理性能の高揚化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、扱室(3)からの排塵物を受け入れて軸芯方向に移送しながら処理する排塵処理胴(17)を排塵処理室(18)内に軸架させて設け、この排塵処理室(18)内で処理された被処理物を下方の揺動選別棚(40)上に直接導く第1濾過経路(22)と、この排塵処理室(18)内で処理された被処理物を揺動選別棚(40)の側端部よりも外方を迂回して揺動選別棚(40)上に導く第2濾過経路(26)とを設けたことを特徴とする脱穀処理装置とする。
【0005】
扱室3終端より排塵処理室18内に取り込まれた排塵物は、排塵処理胴17の回転によって排塵処理室18内を移送されながら処理され、処理された被処理物は、第1濾過経路22及び第2濾過経路26で濾過されて下方の揺動選別棚40上に導かれる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、前記第2濾過経路(26)を、排塵処理室(18)下側の第2濾過孔(27)から所定の落差(H)をおいて傾斜配置する流下案内板(29)によって形成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀処理装置とする。
【0007】
第2濾過孔27から濾過した被処理物は、下方の流下案内板29上に落下し、この流下案内板29上を揺動選別棚40側に向けて流下して、揺動選別棚40上に供給される。
第2濾過孔27と流下案内板29との間には、所定の落差Hの空間を設けているので、流下案内板上での被処理物の停滞や第2濾過孔27部での詰まりが少なくなる。
【0008】
請求項3記載の本発明は、前記第1濾過経路(22)における第1濾過孔(23)の目合を、第2濾過経路(26)における第2濾過孔(27)の目合よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀処理装置とする。
【0009】
排塵処理胴17の側面部の第1濾過孔23に対し、第2濾過孔27は排塵処理胴17の下側に設けられているために被処理物が漏下し易いが、この第2濾過孔27の目合を小さくすることによって、不要なワラ塵や枝梗付着粒、カギ又などが多量に漏下することが抑制される。これにより、下方の流下案内板29上での詰まりを防止すると共に、湿材等で第2濾過孔27の目合が詰まり易い条件下でも目合を大きく設定してある第1濾過孔23からの濾過が容易であり、3番ロスの急増が抑制される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明によると、排塵処理室18からの漏下物は、第1濾過経路22と第2濾過経路26とを経て揺動選別棚40上に導かれるために、排塵処理室18における実質的な濾過面積が拡大されて濾過能力が高められ、脱穀処理作業の能率を向上させることができる。
【0011】
また、請求項2記載の本発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果を奏するものでありながら、第2濾過孔27からの漏下物は、下方に臨む流下案内板29によって揺動選別棚40上に導くことができ、しかも、この第2濾過孔27と流下案内板29との間には、所定の落差Hの空間を設けているので、流下案内板29上での被処理物の停滞や第2濾過孔27部での詰まりを防止でき、揺動選別棚40上へ円滑に案内落下させることによって、脱穀処理作業の能率を向上させることができる。
【0012】
請求項3記載の本発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、第1濾過経路22における第1濾過孔23の目合が、第2濾過経路26における第2濾過孔27よりも大きく設定されているので、第1濾過孔23より目合の小さい第2濾過孔27では、不要なワラ塵や枝梗付着粒、カギ又などが多量に濾過するのを抑制でき、下方の流下案内板29上での詰まりを防止でき、湿材等で第2濾過孔27の目合が詰まり易い条件下でも、目合を大きく設定してある第1濾過孔23からの漏下が容易となり、3番ロスの急増を抑制することができることによって、脱穀処理作業の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
図1及び図2は、コンバインに搭載する脱穀装置を示すもので、まず、この構成につき説明する。
【0014】
扱歯1付扱胴2を内装軸架した扱室3の下半周部に沿って受網4を張設している。5は扱室3の上方部を覆う扱胴カバ−であって、扱胴軸方向に平行な軸芯回りに揺動開閉可能に構成している。
【0015】
扱室3の扱口側には穀稈を挟持搬送するフィ−ドチェン6とこの上側に対設する挟持レ−ル7を配設している。この挟持レ−ル7は扱胴カバ−5側に装着して該カバ−と共に揺動開閉する構成である。8は脱穀後の排ワラを搬出処理する排ワラ搬送装置、9は搬出後の排藁を受け入れて切断処理する排藁カッターを示す。扱室3の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口10が設けらている。
【0016】
前記扱室3のフィードチェン6側とは反対側一側には2番処理胴14を内装軸架した2番処理室15を並設している。また、前記2番処理胴14の後方にはこれと同一軸芯上において外周に処理歯16を備えた排塵処理胴17を内装軸架した排塵処理胴室18を構成して設けている。前記扱室終端の排塵口10に対応する部位から排塵処理室18始端への送塵路11には、排塵処理胴17の始端部に固着されたスパイラ−形状の取込羽根19が介入するように設けて、排塵処理室18内への排塵物の取込みが容易に行なえるようにしている。排塵処理胴17の終端には排出羽根20が設けられ、処理室終端にまで送られてきた排塵物を前記排出羽根20によって処理室終端のわら屑排出口21から後記する揺動選別装置(揺動選別棚)40の選別棚終端及び機外に排出する構成としている。
【0017】
前記排塵処理室18には処理された処理物を下方の揺動選別棚40上に直接導く第1濾過経路22と、揺動選別棚幅(選別室幅)より外方から揺動選別棚上に導く第2濾過経路26を設けている。第1濾過経路22は、排塵処理胴17の側面部に対応する部位において第1濾過孔23を形設する格子状の受網24とガイドフィン25とによって構成してあり、処理された処理物を下方の揺動選別棚40上に直接導くようにしている。第2濾過経路26は、排塵処理胴の下方に対応する部位において第2濾過孔27を有するクリンプ網状の受網28と、上下方向の傾斜下端側が揺動選別棚上に臨み、傾斜上端側が第2濾過孔27から所定の落差Hをもって下方に臨む流下案内板29とによって構成してあり、受網28の第2濾過孔27から濾過する処理物を流下案内板29によって揺動選別棚上へ案内落下させるようにしている。
【0018】
そして、第2濾過孔27は、穀粒や細かい塵埃の漏れる通常の大きさの目合L1とし、第1濾過孔23は、第2濾過孔27のそれよりも目合L2をより大きく設定して濾過効率を高めるようにしている。
【0019】
なお、実施例では、処理室の濾過部包囲角度(第1濾過孔部と第2濾過孔部を含む)は、処理胴包囲角度の約半分(180度近く)を占めるように構成してあり、充分な濾過面積の確保によって処理物の濾過作用が効率良く行える。
【0020】
また、排塵処理室の第1濾過孔23及び第2濾過孔27は、扱室終端の排塵口10から排塵処理室18始端への連通送塵路11を除く後方位置に設ける構成としている。排塵処理室始端の送塵路11部では、藁塵と穀粒の分離が充分とは云えず、また、濾過機能を促進するための仕切抵抗体を送塵路部近くに設けると、処理物の後方への送塵を止めるようになるので、扱室終端部での持ち回り処理物が増加し、脱穀負荷の増大を招くが、このような問題点を解消することができる。
【0021】
第2濾過孔27を有する受網28上及び処理胴17の回転方向下手側にわたる処理室ケーシング30内面に処理物の移送抵抗を付与する仕切抵抗体31を設けることで、第2濾過孔27からの穀粒の濾過促進を図るようにしている。各仕切抵抗体31,31…は、前後の設置幅D1を第2濾過孔27の濾過幅D2と略同じくすることで、各仕切抵抗体で処理物の送塵に抵抗をかけながら処理物を良くこなす部位での濾過を促進し、効率よく処理物中の穀粒を回収することができる。また、各仕切抵抗体のうち、前方側の仕切抵抗体31fでは抵抗度合を小さく(送り方向への若干の傾斜角度を設ける)し、後方側の仕切抵抗体31rでは抵抗度合を大きく(前方側の傾斜角より急傾斜角又は処理胴軸と直交する)している。排塵処理室の始端側(送塵路)近くで過度の抵抗を加えると送塵路部で処理物が充満し、扱室内での脱穀過負荷に伴う作業能率低下や藁塵と穀粒が分離不充分のまま揺動選別棚上に多量に排出されるなどの不具合があるので、前方側では抵抗度合を小さくし、後方側では抵抗度合を大きくすることによって解消することができる。
【0022】
排塵処理胴17の外周に処理物を軸芯方向後方に送りながら処理する螺旋処理体32を券回し、この螺旋処理体32の外周縁部には所定間隔置きに切欠凹部33を切欠き形成して設けると共に、この切欠凹部33に前記処理歯16を取付ボルト34によって一体的に締付固定する構成としている。
【0023】
排塵処理室18の後方部を開放し、処理室後側板35によって軸支される排塵処理胴17からの排塵処理物を後方排出口21Rを介して直接機外後方へ排出できるように構成している。後方への機外排出を可能とすることで、前方部から多量に送塵された処理物を速やかに機外排出ができるようになり、高藁塵流量に対応でき能率の向上が図れる。後方排出口21Rから後方へ排出される排塵物は、後方排出ガイド板35によって機体後方側へ排出案内落下される。
【0024】
扱室終端より排塵処理室18内に取り込まれた排塵処理物は、排塵処理胴17の螺旋処理体32によって後方に移送されながら螺旋処理体外周の処理歯16によってこなされ、第1受網24の濾過穴23及び第2受網28の濾過孔27より濾過される。第1濾過孔23からの濾過物はガイドフィン25を介して直接下方の揺動選別棚上に落下され、また、第2濾過孔27からの濾過物は流下案内板29上に受けられて扱室下方の選別室側へ案内落下され揺動選別棚40上に導かれる。排塵処理室終端では、排出すべきわら屑などの排塵物が処理胴終端の排出羽根20によりわら屑排出口21から揺動選別棚終端上へ、また、後方排出口21Rから機外後方へ排出されることになる。
【0025】
扱室3の下側には揺動可能に架設した揺動選別装置(揺動選別棚)40を設け、更に、その下方には選別方向の上手側から順に、唐箕41と、1番移送螺旋42と、2番移送螺旋43と、その上方に片側吸引方式の吸引排塵ファン44を設けて選別室を構成している。なお、1番揚穀装置45は1番移送螺旋42で回収された穀物を揚送してグレンタンク内に収容する。また、2番揚穀装置46は2番移送螺旋43で回収された2番物を2番処理胴14の2番処理室15内へ還元するようになっている。
【0026】
そして、揺動選別棚40は、扱室からの脱穀処理後の処理物及び排塵処理室からの処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚47、チャフシーブ48、ストローラック49の順に配置し、且つ、前記チャフシーブ48の下方にグレンシーブ50を配置して設け、前記唐箕41及び吸引排塵ファン44による選別風と揺動との共同作用によって扱室3及び排塵処理室18から漏下してきた処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別処理するように構成している。なお、前記チャフシーブ48は、複数枚の帯板状のシーブ板43aを等間隔に配置して上部を枢着43bし、下部が円弧状の長孔43cに沿って揺動開閉するようにして相互の選別間隔の開度調節ができる構成としている。
【0027】
扱室3内に供給される穀稈は、株元がフィ−ドチェン6に挾持されて搬送されながら穂先部分が扱室3内に供給されて、回転している扱胴2により脱穀作用を受ける。このようにして処理された脱穀処理物は、回転している扱胴2によって持ち回りされて、更に、脱粒処理作用を受け、受網4から漏下して選別室の揺動選別装置40に達し揺動選別作用を受ける。
【0028】
この場合、扱室の始端側で脱穀処理された処理物は、移送棚47上に落下して後方へ揺動移送されてチャフシ−ブ48に達する。また、扱室終端に至った排塵処理物は、排塵口10から下方のチャフシーブ48上に落下するものと、送塵路11を経て排塵処理室18内へ送られて排塵処理胴17により処理されるものとに分かれる。そして、チャフシーブ48上での排塵処理物は、チャフシ−ブ48を構成している複数枚のシ−ブ板48a…相互間にある選別間隔を漏下しながら風選作用を受ける。
【0029】
チャフシ−ブ48から漏下するものはグレンシーブ50上に落下しここでふるい選別されながら風選作用を受ける。このとき、唐箕41は、起風した選別風を選別室内に吹き込みながら選別し、吸引排塵フアン44による吸引作用によって選別される。
【0030】
このようにして、処理物は、揺動選別作用と選別風による風選作用との共同作用を受けながら選別されて、1番物(精粒)、2番物、排塵物とに選別分離され、1番物はグレンシ−ブ50にてふるい選別された後、1番移送螺旋42の受樋内に落下して収集されて機外に取り出されグレンタンク内に収容される。2番物は2番移送螺旋43から2番揚穀装置46によって揚穀されて2番処理室15内に還元され再処理される。そして、排塵物は吸引排塵ファン44によって吸塵され機外に排出されると共に、ストロ−ラック49に達したわら屑は棚先から機外に排出される。
【0031】
一方、扱室終端より排塵処理室18内に取り込まれた排塵処理物は、後方に移送されながら処理胴17外周の処理歯16によってこなされ、受網24の濾過穴23及び受網28の濾過孔27より漏下しチャフシーブ48上に還元される。排塵処理室18の終端に至っては、排塵物が処理胴17終端の排出羽根20によりストローラック49上及び機外に排出処理される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】脱穀装置の側断面図
【図2】同上平面図
【図3】同上切断背面図
【図4】同上切断正面図
【図5】同上要部の切断正面図
【図6】同上要部の切断側面図
【図7】同上要部の切断正面図
【図8】同上要部の切断正面図
【図9】同上要部の切断平面図
【符号の説明】
【0033】
3 扱室 7 扱胴
16 処理歯 17 排塵処理胴
18 排塵処理室 22 第1濾過経路
23 第1濾過孔 24 第1受網
26 第2濾過経路 27 第2濾過孔
28 第2受網 29 流下案内板
40 揺動選別棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(3)からの排塵物を受け入れて軸芯方向に移送しながら処理する排塵処理胴(17)を排塵処理室(18)内に軸架させて設け、この排塵処理室(18)内で処理された被処理物を下方の揺動選別棚(40)上に直接導く第1濾過経路(22)と、この排塵処理室(18)内で処理された被処理物を揺動選別棚(40)の側端部よりも外方を迂回して揺動選別棚(40)上に導く第2濾過経路(26)とを設けたことを特徴とする脱穀処理装置。
【請求項2】
前記第2濾過経路(26)を、排塵処理室(18)下側の第2濾過孔(27)から所定の落差(H)をおいて傾斜配置する流下案内板(29)によって形成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀処理装置。
【請求項3】
前記第1濾過経路(22)における第1濾過孔(23)の目合を、第2濾過経路(26)における第2濾過孔(27)の目合よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−182942(P2008−182942A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18616(P2007−18616)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】