説明

脱穀機の二番還元装置

【課題】 脱穀機の小型化及び低重心化を実現できる二番還元装置を提供する。
【解決手段】脱穀機は、選別装置の下方に配置される唐箕ファンと、唐箕ファンから選別装置の搬送方向下流側に行くに従って順に配置される一番コンベアと、セカンドファン55と、二番コンベア24と、を備える。そして、脱穀機の二番還元装置は、セカンドファン55と同軸状に二番処理装置44を備え、この二番処理装置44は二番コンベア24の終端部から処理物を受け入れるための連通路41を備える。また、二番処理装置44は、二番処理装置44で処理された処理物を選別装置へ還元するための還元コンベア22を備える。この還元コンベア22は、その中心軸線が前記二番コンベア24の中心軸線と直交するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀機が備える二番物を還元するための二番還元装置に関するものであり、詳細には二番処理装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、脱穀後の処理物である籾及び藁屑等を選別装置によって一番物と二番物とに選別した後、一番物を穀物タンクに貯溜する一方、二番物については二番物還元装置により選別装置に再び送って再選別する構成のコンバインが知られている。このような構成のコンバインの二番還元装置では、二番物を選別装置に還元する前に枝梗の除去処理を行う二番処理装置を備える構成をとることがある。
【0003】
このような脱穀機で用いられる選別装置は、揺動選別装置と風選別装置を備える構成のものが一般的である。揺動選別装置は扱胴の下方に配置され、扱胴から漏下する処理物を後方に送りながら比重選別を行う。風選別装置は唐箕を備えており、前記揺動選別装置から落下する穀粒や藁屑等に風を当てることで風選別を行う。また、唐箕による選別風の風力が弱まる選別装置の後部にセカンドファンを設け、このセカンドファンによって予備選別風を送風することにより、風選別性能を向上させた構成の風選別装置も知られている。
【0004】
特許文献1は、風選別装置にセカンドファンを備えるとともに二番還元装置に二番処理装置を備える構成の脱穀機を開示する。この特許文献1の脱穀機において、選別部の揺動本体下方の選別樋には、前から順に、選別風を送風する唐箕と、揺動本体から漏下する一番物を穀粒タンクに搬送する一番コンベアと、二番物を還元コンベアを介して脱穀部の前部に還元搬送する二番コンベアとを横設し、該二番コンベアと前記一番コンベアとの間にはセカンドファンを設ける構成となっている。二番コンベアの端部には還元コンベアが連結されており、該還元コンベアの前方側の端部は二番処理装置としての枝梗処理装置に連設されている。この構成で、前記還元コンベアにより揚穀された二番物は、枝梗処理装置へ投入された後、処理後の二番物は揺動選別装置の選別開始部に落下するように排出される。
【特許文献1】特許第3854861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成は、二番処理装置(枝梗処理装置)が還元コンベアの搬送方向終端部でかつ脱穀機内の高い位置に配置されているため、二番還元装置のコンパクト化が困難で、また脱穀機の重心が高くなってしまっていた。従って、脱穀機の小型化、コンバインの機体バランス等の観点から改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、脱穀機の小型化及び低重心化を実現できる二番還元装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、選別装置によって選別された二番物を前記選別装置に還元搬送する脱穀機の二番還元装置において、以下の構成が提供される。即ち、前記脱穀機は、前記選別装置の下方に配置される唐箕ファンと、前記唐箕ファンから前記選別装置の搬送方向下流側に行くに従って順に配置される一番コンベアと、セカンドファンと、二番コンベアと、を備える。そして、前記二番還元装置は、前記セカンドファンと同軸状に二番処理装置を備える。
【0009】
これによれば、小さいスペースにセカンドファンと二番処理装置をまとめて配置できるので、脱穀機のコンパクト化が容易になる。また、セカンドファンと二番処理装置との間で簡易な構成により駆動を伝達できる。更に、二番処理装置が脱穀機の下部に配置されるレイアウトとなるので、脱穀機の低重心化を実現できる。
【0010】
前記の脱穀機の二番還元装置においては、前記二番処理装置が、前記二番コンベアの終端部から二番物を受け入れるための連通路を備えることが好ましい。
【0011】
これによれば、二番コンベアの終端部から二番処理装置に二番物を受け渡す構成を簡素化できる。
【0012】
前記の脱穀機の二番還元装置においては、前記二番処理装置で処理された処理物を選別装置へ還元するための還元コンベアを備えることが好ましい。
【0013】
これによれば、二番処理装置で処理された処理物を選別装置まで確実に還元することができる。
【0014】
前記の脱穀機の二番還元装置においては、前記還元コンベアは、その中心軸線が前記二番コンベアと直交するように設けられることが好ましい。
【0015】
これによれば、二番コンベアと還元コンベアとの間の動力伝達を、例えばベベルギアを用いて簡単に実現することができる。
【0016】
前記の脱穀機の二番還元装置においては、前記二番処理装置は前記脱穀機の機枠側板の内外に跨って設けられることが好ましい。
【0017】
このように二番処理装置の一部を機外に出るように配置することで、二番処理装置の処理能力を維持しながらセカンドファンの配置スペースを大きく確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図である。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、コンバインの前進する方向に向かって左側及び右側を意味するものとする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のコンバイン10は、稲、麦等の株元を刈り取るための刈取部12を機体前部に備え、進行部としてのクローラ部11を機体下部に備えて構成されている。そして図2に示すように、コンバイン10の左側の上部には、刈り取った穀稈を脱穀するための脱穀機14が備えられる。また、この脱穀機14と並設するように、グレンタンク15がコンバイン10の上部右側に備えられている。
【0020】
グレンタンク15の前方には、コンバイン10を操作するための運転部17が配置されている。この運転部17には運転操作部52及び運転座席53等が設けられており、この運転操作部52を操作することによって刈取や走行等、コンバイン10の各種の操作を行うように構成されている。前記運転部17の下方には、コンバイン10の駆動源としてのエンジン18が配置されている。
【0021】
図1に示すクローラ部11はコンバイン10の左右両側に配置されており、このクローラ部11が駆動することでコンバイン10を走行させるように構成されている。そして、この左右のクローラ部11を後述の走行ミッション装置によって制御することで、コンバイン10の走行方向及び速度の調節が可能になっている。
【0022】
刈取部12は、前処理部25と、刈刃部13と、掻込装置47と、図略の搬送部と、を備えている。前処理部25はコンバイン10の機体の前方下部に配置され、分草板45と、引起し装置46とによって構成されている。引起し装置46は図略のタインを備えており、倒伏した作物を拾い上げたり、穂先を一定の幅に収束させたりする引起し作業を行う。分草板45は、刈り取るべき幅を規定するためのものであり、また、倒伏した状態の稲等を当該分草板45がすくい上げることによって、引起し装置46による前記引起し作業を容易にする。
【0023】
刈刃部13は刈刃と受刃とを備えており、両者が左右に駆動されることによって作物の株元を切り取る。また、掻込装置47は刈刃部13の上方に配置されており、この掻込装置47は、刈刃部13によって切断された穀稈を掻き込み、図略の搬送部に受け渡す。この搬送部は搬送チェーン及び縦搬送チェーン等を備えており、後述の脱穀機14のフィードチェーン16に作物の株元を搬送するよう構成されている。
【0024】
脱穀機14はフィードチェーン16を備え、このフィードチェーン16によって穀稈を挟持しながら搬送して脱穀するよう構成されている。穀稈の脱穀後、穀粒が藁屑より選別分離されて、精粒は一番物として前記グレンタンク15に貯溜される。藁屑は、コンバイン10後部に備えられる排藁カッター48によって適宜の長さに切り刻まれ、機外へ排出される。
【0025】
次に図3、図4を参照して脱穀機14について説明する。図3は脱穀機14の構成を示す側面図である。図4は脱穀機の平面図である。
【0026】
脱穀機14は穀稈脱穀用の扱胴30を備え、この扱胴30は脱穀機14内の前部上方に設置されている。扱胴30は、その先端部が面取りされた円筒形状に構成されており、その中心軸を前記フィードチェーン16の搬送方向に略沿わせるように向けて配置されている。
【0027】
扱胴30の外周には複数の扱歯81が植設されている。また、扱胴30の下方位置には粗選別を行うためのクリンプ網34が備えられる。このクリンプ網34は、扱胴30の下部を覆うように円弧面状に構成されている。
【0028】
この構成で、穀稈はフィードチェーン16に挟持された状態で脱穀機14に搬送され、扱胴30の回転による衝撃作用、扱歯81によるしごき作用、そしてクリンプ網34によるもみほぐし作用等によって脱粒される。
【0029】
脱穀機14は、扱胴30の終端部近傍に配置される送塵口処理胴31を備えている。この送塵口処理胴31は円筒状に形成され、その中心軸が扱胴30の中心軸と平行となるように配置されている。また、図3及び図4に示すように、送塵口処理胴31は、扱胴30の終端部と送塵口処理胴31の先端部がラップするようにして、扱胴30の右側に配置される。
【0030】
送塵口処理胴31の外周には螺旋状の扱歯82が備えられている。また、送塵口処理胴31の下方には送塵口処理用クリンプ網99が備えられる。この送塵口処理用クリンプ網99は、送塵口処理胴31の下部を覆うように円弧面状に形成されている。
【0031】
この構成で、扱胴30終端から送り出された籾、藁屑等は、送塵口処理胴31によって処理されるとともに、送塵口処理用クリンプ網99で粗選別される。粗選別後の籾や藁屑等は、後述する揺動選別装置32に処理物として落下する。
【0032】
脱穀機14は、扱胴30及び送塵口処理胴31の下方に左右方向に横設される揺動選別装置32を備えている。また、揺動選別装置32の更に下方には風選別装置33が配置される。この揺動選別装置32と風選別装置33によって、脱穀機14における選別装置が構成されている。この構成で、脱穀された穀粒は、前記揺動選別装置32及び風選別装置33によって、精粒である一番物と、枝梗付き穀粒や穂切れ粒等である二番物とに選別される。
【0033】
揺動選別装置32について説明する。この揺動選別装置32は、穀粒搬送方向の上流から下流に向かって順に、フィードパン35と、チャフシーブ36と、ストローラック37と、を備えている。フィードパン35は多量の穀粒が落下する場所に配置されており、後の選別を効率的に行うために、籾層を平均化する前処理を行う。チャフシーブ36は、フィードパン35から送られた穀粒と藁屑の粗選別を行うためのものであり、揺動選別装置32の幅方向に横架された複数のチャフフィンを備えている。このチャフフィンの角度は変更可能に構成されており、この角度を調節することによって穀粒の漏下量を調節することができる。例えば、チャフシーブ36上に堆積する籾層が厚い場合には、チャフシーブ36の角度を大きくすることで籾の漏下量を増加させて処理能力を増大させる一方、堆積する籾層が薄い場合には、チャフシーブ36の角度を小さくすることで籾の漏下量を制限して藁屑等の混入を防止することができる。ストローラック37は、藁屑をほぐすとともに、藁屑中に存在する穀粒を、再選別のために後述の二番コンベア24に落下させる。
【0034】
次に風選別装置33について説明する。この風選別装置33は、唐箕ファン38と、セカンドファン55と、グレンシーブ39と、を備えている。唐箕ファン38はフィードパン35の下方に配置されるとともに、揺動選別装置32の幅方向に横設されている。セカンドファン55は、唐箕ファン38の後方に配置され、一番コンベア23と二番コンベア24の間に横設されている。グレンシーブ39はチャフシーブ36の下方に配置される。
【0035】
一番コンベア23は、樋状に形成される一番コンベア樋26の上に配置されており、この一番コンベア樋26に落下した籾を搬送するように構成されている。二番コンベア24も同様に、樋状に形成されている二番コンベア樋27上に配置されている。
【0036】
以上の構成で、グレンシーブ39より落下してくる籾、藁屑等に対して、唐箕ファン38が生起する選別風が当てられる。そして、この選別風にかかわらず略垂直に落下する比重の重い物は一番コンベア樋26へ送られるとともに、比重のやや軽い物は二番物として二番コンベア樋27に飛ばされる。以上により、脱穀後の処理物を比重選別することができる。なお、選別装置の選別精度を上げるために、比重が若干軽い程度の物についても二番コンベア樋27に落下するように選別風の強度等が調整されている。
【0037】
セカンドファン55は一番コンベア23の後方に配置されており、唐箕ファン38からの選別風が弱くなる下流側で補助風を生起し、藁屑等を確実に下流側へ吹き飛ばすように構成されている。また、前記一番コンベア樋26の底部には流穀板28が接続され、この流穀板28はストローラック37へ向かうように後上方へ延出している。この流穀板28は前記セカンドファン55の上方を覆うように配置され、当該流穀板28の下面であって前記セカンドファン55にほぼ対面する位置には風向板91が固定されている。この風向板91の詳細については後述する。図4に示すように、セカンドファン55の軸部の右側端部は後述の二番処理装置44に接続されている。
【0038】
また、揺動選別装置32の終端部には吸引ファン(図3及び図4において図略)が備えられ、この吸引ファンによって選別後の藁屑等が吸塵され機外に排出されるように構成されている。
【0039】
かかる揺動選別装置32と風選別装置33との相互作用により、脱穀後の処理物は、穀稈が搬送されてくる機体前方側から後方側に向けて搬送され、一番物と二番物に選別される。
【0040】
図4に示すように、前記一番コンベア23の搬送方向下流側の端部は脱穀機14の側壁90から突出するとともに、この突出部分には揚穀筒19が接続されている。この揚穀筒19は上下方向に向けて配設されるとともに、その内部には、一番物を上方のグレンタンク15に向けて運ぶための揚穀コンベア21が設けられている。この構成で、前記選別装置によって選別されて図3の一番コンベア樋26に落下した一番物は、一番コンベア23によって図3の紙面手前側から奥側へ搬送される。そして一番物は、一番コンベア23の終端部から揚穀コンベア21に受け継がれ、前記グレンタンク15まで搬送される。
【0041】
また、図4に示すように、脱穀機14の側壁90の外側には還元筒20が設置されている。この還元筒20は上下方向に向けて配設されるとともに、その下端は、前記二番コンベア24の搬送方向下流側の端部近傍に位置している。還元筒20の内部には、二番物を上方へ運ぶための還元コンベア22が設けられている。この還元コンベア22は、揚穀コンベア21とほぼ平行な向きとなるように配設されている。また、図3等に示すように、還元コンベア22の中心軸線は、二番コンベア24の中心軸線と直交している。
【0042】
この構成で、前記選別装置によって選別されて二番コンベア24に落下した二番物は、当該二番コンベア24によって図3の紙面手前側から奥側へ搬送される。
【0043】
二番物は、二番還元装置によって揺動選別装置32に還元されて再び選別される。具体的には、二番コンベア樋27に落下した二番物は二番コンベア24によって搬送され、終端部に配置される連通路41を介して二番処理装置44に送られ、枝梗が処理される。その後、二番処理物は二番処理装置44から還元コンベア22へ送られ、更に上方へ搬送される。そして、還元コンベア22の終端(上端部)に搬送された二番処理物は、放出装置54によって揺動選別装置32へ向けて放出される。なお、二番還元装置の詳細については後述する。
【0044】
以上に示すように、コンバイン10によって刈り取られた稲等から脱穀された穀粒は、選別装置によって一番物と二番物に選別される。そして選別された一番物は、一番コンベア23及び揚穀コンベア21を介してグレンタンク15に集積される。グレンタンク15内に貯溜された一番物は、前記排出オーガ51を介して機外に排出される。一方、二番物は、二番コンベア24、連通路41、二番処理装置44、還元コンベア22及び放出装置54を経由して前記揺動選別装置32上に戻され、再び選別される。
【0045】
次に図5を参照して脱穀機14及び選別装置の駆動伝達構成について説明する。図5は、コンバイン10の動力伝達構成を示すスケルトン図である。
【0046】
図5に示すように、本実施形態のコンバイン10が備えるエンジン18の動力は、エンジン18の出力軸60から、クローラ部11を駆動させる走行ミッション装置61、脱穀機14の各部、排出オーガ51及び刈取部12にそれぞれ分岐して伝達される。
【0047】
エンジン18の駆動力の一部は、動力の断接制御のための脱穀クラッチ71を介して、唐箕ファン38及び一番コンベア23に伝達される。この駆動力は更に、セカンドファン55、二番コンベア24、揺動選別装置32、吸引ファン40、排藁カッター48、及びフィードチェーン16へ伝達される。
【0048】
また、エンジン18の駆動力の一部は、扱胴駆動軸49を経由して扱胴30及び送塵口処理胴31に伝達される。扱胴30に伝達された駆動力は、更に、排藁を前記排藁カッター48へ搬送するための排藁搬送部76へ伝達される。
【0049】
前記一番コンベア23の端部にはベベルギアを介して揚穀コンベア21が連結されており、一番コンベア23に伝達された駆動力によって揚穀コンベア21が駆動されるようになっている。
【0050】
セカンドファン55の側壁90側の軸端には二番処理装置44が配置されている。二番処理装置44の入力軸はセカンドファン55の軸部に接続されており、これにより二番処理装置44に駆動力が伝達される。
【0051】
前記二番コンベア24の端部には還元コンベア22がベベルギアを介して連結されている。また、還元コンベア22の端部には放出装置54が、ベルト等からなる伝達部59によって連結されている。これにより、二番コンベア24に伝達された駆動力は、更に還元コンベア22及び放出装置54へ伝達される。
【0052】
グレンタンク15には、前記排出オーガ51へ穀粒を搬送するための底コンベア67及び縦コンベア68を備えている。また、排出オーガ51には排出コンベア69が内蔵されている。エンジン18の駆動力の一部はこれらのコンベアにも伝達され、それぞれのコンベアを駆動することができる。
【0053】
次に本実施形態の二番還元装置の詳細について説明する。図6は、脱穀機内での二番物の搬送経路を示す平面図である。図7は、二番処理装置及び連通路の様子を示す断面図である。図8は、二番還元装置による還元の様子を示す平面図である。なお図6に鎖線で示す矢印は二番物の搬送経路を示し、図8において鎖線で示す矢印は処理後の二番物の放出方向を示す。
【0054】
図3及び図4に示すように、本実施形態の二番還元装置は、二番コンベア24と、この二番コンベア24に連通路41を介して接続される二番処理装置44と、二番処理装置44に接続する還元コンベア22と、から構成される。そして、還元コンベア22の搬送方向終端部には放出装置54が接続されている。
【0055】
二番コンベア24は前述のように揺動選別装置32の下方位置に横設されており、この二番コンベア24は、落下してきた二番物を、軸部に備えるスクリュー羽根によって脱穀機の奥側(図3において紙面奥側、図4において上側)へ搬送する。そして、図6に示すように、二番コンベア24の搬送終端部において、板状に形成される送穀羽根56が軸部に備えられている。
【0056】
また、図6に示すように二番コンベア24の終端部近傍には連通路41が備えられている。この連通路41の一端は、二番コンベア樋27の二番処理装置44側(コンバイン10の機体前方側)の壁部に開口を形成し、他端は二番処理装置44に連通するように構成される。なお、前記送穀羽根56は、前記連通路41が二番コンベア樋27に形成する開口(連通路41の入口)に対面するように備えられる。
【0057】
二番処理装置44は、回転可能な二番処理胴42と、この二番処理胴42を収容する円筒形状の二番処理ハウジング43と、を備えている。前記二番処理胴42は、その中心軸がセカンドファン55の軸部と同軸となるように配置され、セカンドファン55の動力が二番処理胴42の入力軸にカップリングを介して伝達されることで回転駆動される。また、二番処理ハウジング43の内側面には制御弁88が備えられており、この制御弁88によって二番物が詰まることなく二番処理装置44から還元筒20へと搬送されるように構成されている。なおこの制御弁88は角度を調節できるように構成されており、この角度を調節することで二番処理装置44内の二番物の送り速度を変えることができる。
【0058】
前記二番処理ハウジング43は、脱穀機14の一側の側壁90に跨るように配置されている。二番処理ハウジング43のうち脱穀機14内に位置する部分には、前記連通路41が接続されている。また、前述のとおり、セカンドファン55の上方に備えられている流穀板28の下面には風向板91が取り付けられている。図6に示すように、この風向板91はセカンドファン55の右側端部近傍に複数配置されており、各風向板91は、後方へ近づくに従って右側となるように傾斜している。この風向板91によって、セカンドファン55から送られる補助風の一部が右側(二番処理装置44の後方)へと案内される。
【0059】
即ち、本実施形態では前記二番処理装置44がセカンドファン55の端部に配置されている分だけ、セカンドファン55の軸長が短くなっている。従って、平面視で前記二番処理装置44のすぐ後方の位置にある処理物(送塵口処理胴31から落下した処理物がこの位置に落下することが多い)に対しては、セカンドファン55の風を直接当てることは困難である。しかしながら本実施形態では、前記風向板91によってセカンドファン55からの風向きを案内することにより、上記の位置にある処理物に対しても選別風を十分に作用させて選別することができる。
【0060】
二番処理胴42の外周には処理歯84が突設される一方、前記二番処理ハウジング43の内壁にはツースバー85が備えられている。この構成で、二番処理胴42が回転すると、前記処理歯84と前記ツースバー85とが籾と枝梗を分離させ、単粒化することができる。
【0061】
ここで、例えば図3に示すように、前記セカンドファン55の軸心(二番処理装置44の軸心)は、二番コンベア24の軸心より若干低く配置されている。また図7に示すように、前記二番処理装置44において処理歯84の先端が描く軌跡の径は、二番コンベア24のスクリュー径よりも大きくなっている。従って、二番処理ハウジング43の底部は二番コンベア24の底部よりも低く位置し、連通路41は二番処理装置44側が低くなる傾斜状に構成されている。これにより、二番コンベア24から二番処理装置44への二番物の受け渡しが円滑に行われる。
【0062】
図6に示すように、二番処理装置44が脱穀機14の外側に突出する部分において、二番処理胴42の軸方向端部には平板状の送穀羽根50が備えられる。二番処理装置44による処理物は、この送穀羽根50によって還元コンベア22の始端部に送られる。
【0063】
還元コンベア22は図3に示すように、上方の放出装置54へ向けて前記処理物を搬送可能に構成している。この放出装置54は、図8に示すように、ハウジング58と、ハウジング58内で回転自在に支持される軸部86と、この軸部86に固定される跳出し羽根87と、を備えている。前記軸部86の上端部は、還元コンベア22の上端部と、ベルトやギア等からなる伝達部59を介して連結されている。
【0064】
放出装置54のハウジング58は、脱穀機14の一側の側壁90に跨るように設けられている。また、このハウジング58が脱穀機14の内部空間に露出する部分には、放出口57が形成されている。この放出口57は揺動選別装置32の前方(搬送方向上流側)を向いて開口しており、搬送されてきた二番処理物は、この放出口57から放出される。
【0065】
この構成で、二番物は二番コンベア24の終端部から平面視で迂回するように二番処理装置44を経由し、還元コンベア22に搬送される。具体的に説明すると、前記二番コンベア樋27に落下し、図6の鎖線で示すように二番コンベア24によって搬送されてきた二番物は、送穀羽根56によって脇の連通路41へ押し出される。なお、連通路41は前述したように下り斜面となっているので(図7を参照)、二番物は二番処理装置44にスムーズに導入される。
【0066】
二番処理装置44に投入された二番物は枝梗が除去された後、図6等に示す送穀羽根50によって還元コンベア22の始端部へ受け継がれる。更に二番物は還元コンベア22によって放出装置54へと搬送され、図8に示すように、跳出し羽根の回転によって放出口57から揺動選別装置32の前方中央へと放出される。以上により二番処理物の還元が完了し、処理物は再び揺動選別装置32及び風選別装置33によって選別される。
【0067】
以上に示すように、本実施形態のコンバイン10が備える脱穀機14は、選別装置の下方に配置される唐箕ファン38と、唐箕ファン38から選別装置の搬送方向下流側に行くに従って順に配置される一番コンベア23と、セカンドファン55と、二番コンベア24と、を備える構成である。そして、この構成の脱穀機14において、二番還元装置は、セカンドファン55と同軸状に二番処理装置44を備える。
【0068】
この構成により、小さいスペースにセカンドファン55及び二番処理装置44をまとめて配置できるので、脱穀機14の構成をコンパクトにすることができる。また、セカンドファン55と二番処理装置44の間で簡易な構成により駆動を伝達できる。更に、重量物である二番処理装置44が脱穀機14の下部に配置されることになるので、重心が安定し、コンバイン10の機体バランスを向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態において、前記二番処理装置44は、二番コンベア24の終端部から二番物を受け入れるための連通路41を備えている。
【0070】
この構成により、二番コンベア24の終端部から二番処理装置44に二番物を受け渡す構成を簡素化できる。
【0071】
また、本実施形態の二番還元装置は、二番処理装置44で処理された処理物を選別装置へ還元するための還元コンベア22を備える。
【0072】
この構成により、二番処理装置44で処理された処理物を選別装置まで確実に還元することができる。
【0073】
また、前記還元コンベア22は、図3や図4等に示すように、その中心軸線が二番コンベア24の中心軸線と直交するように設けられている。
【0074】
この構成により、二番コンベア24の動力を図5に示すようにベベルギアを用いて還元コンベア22へ伝達することで、還元コンベア22を駆動できる。従って、還元コンベア22の駆動のための構成を簡素化できる。
【0075】
また、前記二番処理装置44は、図4や図6に示すように、脱穀機14の機枠側板(側壁90)の内外に跨って設けられている。
【0076】
このように二番処理装置44の一部を機外に出るように配置することで、二番処理装置44の枝梗処理能力を維持しながらセカンドファン55の長さを確保し、十分な強度の補助風を生起させることができる。
【0077】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0078】
上記の実施形態では、跳出し羽根87を備える放出装置54によって揺動選別装置32に処理物を還元する構成であるが、この構成に代えて、還元コンベア22が上方の適宜位置まできたところで搬送方向を揺動選別装置32の前方に向かうように還元コンベアを構成してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、二番コンベア24の終端部に送穀羽根56を備える構成であるが、二番コンベア24から二番処理装置44に二番物を受け渡す構成は適宜変更することができる。例えば、二番コンベア樋27の側面でなく底面に連通路41の入口を開口し、送穀羽根56を省略することができる。
【0080】
二番処理装置44をセカンドファン55の動力伝達上流側に配置し、二番処理装置44の駆動力をセカンドファン55に伝達して当該セカンドファン55を駆動する構成に変更することができる。また、還元コンベア22を二番コンベア24の動力伝達上流側に配置し、還元コンベア22の駆動力を二番コンベア24に伝達して当該二番コンベア24を駆動する構成に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインに備えられる脱穀機の構成を示す側面図。
【図4】脱穀機の平面図。
【図5】コンバインの動力伝達構成を示すスケルトン図。
【図6】脱穀機内での二番物の搬送経路を示す平面図。
【図7】二番処理装置及び連通路の様子を示す断面図。
【図8】二番還元装置による選別装置への還元の様子を示す平面図。
【符号の説明】
【0082】
10 コンバイン
14 脱穀機
16 フィードチェーン
19 揚穀筒
20 還元筒
21 揚穀コンベア
22 還元コンベア
23 一番コンベア
24 二番コンベア
30 扱胴
31 送塵口処理胴
38 唐箕ファン
41 連通路
42 二番処理胴
44 二番処理装置
54 放出装置
55 セカンドファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別装置によって選別された二番物を前記選別装置に還元搬送する脱穀機の二番還元装置において、
前記脱穀機は、前記選別装置の下方に配置される唐箕ファンと、前記唐箕ファンから前記選別装置の搬送方向下流側に行くに従って順に配置される一番コンベアと、セカンドファンと、二番コンベアと、を備え、
前記セカンドファンと同軸状に二番処理装置を備えることを特徴とする脱穀機の二番還元装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱穀機の二番還元装置であって、
前記二番処理装置は、前記二番コンベアの終端部から二番物を受け入れるための連通路を備えることを特徴とする脱穀機の二番還元装置。
【請求項3】
請求項2に記載の脱穀機の二番還元装置であって、
前記二番処理装置で処理された処理物を選別装置へ還元するための還元コンベアを備えることを特徴とする脱穀機の二番還元装置。
【請求項4】
請求項3に記載の脱穀機の二番還元装置であって、
前記還元コンベアは、その中心軸線が前記二番コンベアの中心軸線と直交するように設けられることを特徴とする脱穀機の二番還元装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の脱穀の二番還元装置であって、
前記二番処理装置は前記脱穀機の機枠側板の内外に跨って設けられることを特徴とする脱穀機の二番還元装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−112274(P2009−112274A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290724(P2007−290724)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】