説明

脱穀機

【課題】処理胴から排出される排塵物を、排塵板を介して吸引排塵ファンによる吸引排出を直接的に行なわせることにより、排塵物の還元量を少なくし揺動選別体による選別精度と能率を向上させることができる脱穀機を提供する。
【解決手段】扱室2と処理室4の下方で、前側の送風ファン5と後側の吸引排塵ファン6によって形成される選別風路中に脱穀物を受けて選別する揺動選別体7を設け、該揺動選別体7の後部上方に形成される排塵選別室21の左右に、吸引排塵ファン6の吸引口25と処理室4の排塵口15とを対向して設けた脱穀機であって、前記吸引排塵ファン6の吸引口25と処理室4の排塵口15との間に、該排塵口15から排出される排塵物を受けて吸引口25側に誘導する排塵板30を設けるに、該排塵板30の吸引口側30aを吸引口25の上下幅の中途に位置させて設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載可能な脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の走行機体に搭載される脱穀機は、扱室と処理室から漏下した穀粒や藁屑等の脱穀物を受けて選別する揺動選別体を、前側の送風ファンと後側の吸引排塵ファンによって形成される選別風路中に揺動自在に設けると共に、排塵選別室内で吸引排塵ファンの吸引口と処理室の排塵口との間に吸引ダクトを介装し、で吸引排塵ファンの排塵を促進するようにしたものが既に公知である(例えば特許文献1。)。
【特許文献1】特開2003−52231号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示される脱穀機は、吸引排塵ファンと処理室の排塵口との間に介装した吸引ダクトに、揺動選別体のストローラックの上に臨んで開口する吸込口を設けるので、ストローラック上の藁屑類の吸引排出を促進し揺動選別体7の揺動選別負荷を軽減することができる利点がある。然し、排塵選別室内で処理室は排塵口から排塵物をストローラック上に直接的に排出して揺動選別を受けさせるため、例えば濡れ材や多量の穀稈を脱穀する際に、多量の排塵物が投擲されてストローラック上で団塊状になり滞積した状態で揺動選別が行なわれる。従って、湿気を含み十分に解されないままの藁屑類の吸引排出が困難になる。また排塵選別室内で排塵物の詰まりを生じやすい欠点があり、且つ排塵物の還元量を増大させるので揺動選別負荷が大きくなり選別精度を低下させる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明による脱穀機は、第1に、扱室2と処理室4の下方で、前側の送風ファン5と後側の吸引排塵ファン6によって形成される選別風路中に脱穀物を受けて選別する揺動選別体7を設け、該揺動選別体7の後部上方に形成される排塵選別室21の左右に、吸引排塵ファン6の吸引口25と処理室4の排塵口15とを対向して設けた脱穀機1において、前記吸引排塵ファン6の吸引口25と処理室4の排塵口15との間に、該排塵口15から排出される排塵物を受けて吸引口25側に誘導する排塵板30を設けるに、該排塵板30の吸引口側30aを吸引口25の上下幅の中途に位置させて設けた脱穀機。
【0005】
第2に、排塵板30の排塵口側31を、排塵口15に対し排塵物を風選別する間隙Lを有して対設し、該間隙Lの上方に排塵口15から排出される排塵物の一部を接当させて間隙Lに指向させる排塵接当ガイド29を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記構成を備えた脱穀機は次のような効果を奏する。吸引排塵ファンの吸引口と処理室の排塵口との間に、該排塵口から排出される排塵物を受けて吸引口側に誘導する排塵板を設けるに、該排塵板の吸引口側を吸引口の上下幅の中途に位置させて設けたことにより、排塵口から排出される藁屑類を排塵板を介し吸引排塵ファンによる吸引排出を直接的に行なうので、処理室から排出される藁屑類の揺動選別体による処理量を少なくし選別精度と能率を向上させることができる。
また排塵板の吸引口側を吸引口の上下幅の中途に位置させるので、排塵板の下方に吸引排塵ファンの吸引口と送風ファンによる風流を形成させて、揺動選別体上の藁屑類を速やかに排出することができる。
【0007】
また排塵板の排塵口側を、排塵口に対し排塵物を風選別する間隙を有して対設し、該間隙の上方に排塵口から排出される排塵物の一部を接当させて間隙に指向させる排塵接当ガイドを設けたことにより、排塵口から排出される排塵物は排塵接当ガイドとの接当により、排塵物中に混在する穀粒を間隙を介して揺動選別体に還元して回収することができ選別精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1,2において符号1はコンバインやハーベスタ等に搭載可能な脱穀機である。この脱穀機1は扱室2に沿ってフィードチェン3を前後方向に張設し、フィードチェーン3で搬送される穀稈を扱室前後側板間(前側板1a,後側板1b)に支持した扱胴2aの回動により脱穀処理する。扱室2の後方側方には処理胴4aと処理網4bにより形成される処理室4を連通し、扱室下方には前後に配置された送風ファン5と吸引排塵ファン6により選別風路を形成している。
【0009】
上記脱穀機1は選別風路中に揺動選別体7を前後揺動可能に装架しており、扱室2の受網2bと処理網4bを漏下した脱穀物を揺動選別体7の篩選別と風選別とにより選別し、籾は一番ラセン8を介して穀粒タンク(図示なし)に収容し、未選別物は二番ラセン9を介して揺動選別体7上に還元し、藁屑は本発明に関る吸引排塵構造を備えた吸引排塵ファン6により、後述するように機外に吸引排出する構成としている。また扱室後側板1bの後方には穀粒を回収する4番口10、及び4番漏斗壁11を設け、脱粒処理された排稈をフィードチェーン3から排稈搬送装置12へ受け継ぎ搬送し、後方のカッター等の排稈処理装置(図示せず)により処理するように構成している。
【0010】
次に図1〜図3を参照し排塵物の吸引排塵構造について説明する。この吸引排塵構造は揺動選別体7の後部側に従来のものと同様に、図1,図3で示す脱穀機体を構成する左側壁16と右側壁17を、前方の4番漏斗壁11と該4番漏斗壁11に連なる天板壁19と後壁20で接続して閉鎖室状の排塵選別室21を構成し、吸引排塵ファン6と処理室4の排塵口15を吸塵間隔を有して左右に対向配置している。この際排塵口15は揺動選別体7の後端より前側寄りに開口させることが望ましい。
【0011】
図示例の吸引排塵ファン6は左側壁16に、内部に複数の羽根板を有するファン22を回転自在に軸支するドラム状のファンケース23を取付固定しており、ファンケース23は排塵選別室21内に向けて開口する吸引口25と、吸引された排塵物を後方に向けて排出する排出筒部26を有している。
またファンケース23は、円形又は変形円形状に形成される吸引口25の下部壁にダクト板27を突設している。このダクト板27は揺動選別体7の最後部に複数列設されるストローラック28によって跳ね上げられる藁屑や穀粒等を、吸引口25が直接的に吸引することを防止するようにしている。
【0012】
処理室4は右側壁17側に膨出形成される処理室ケース内で扱胴2aの終端から後壁20の近傍に至る長さの処理胴4aを図3で示す矢印方向に回転駆動自在に軸支し、前端の送塵口4cと終端の排塵口15との間に処理網4bを張設し、処理網4bの後端に排塵口15を形成している。そして、処理胴4aは処理歯列の後部に複数の羽根板4dを突設し排塵口15に臨ませている。これにより処理室4は扱胴2aの送塵口4cから送り込まれる処理物を処理胴4aの回転によって処理し、混在する穀粒を処理網4bから濾過させて揺動選別体7によって回収すると共に、排塵物を羽根板4dの回転によって排塵選別室21に排出する。
【0013】
次に排塵選別室21の吸引排塵構造について説明する。吸引排塵ファン6の吸引口25と処理室4の排塵口15とで形成される吸塵間隔の下方に、揺動選別体7のストローラック28を位置させており、該ストローラック28の上方に前記排塵口15から排出される排塵物を受けて吸引排塵ファン6による吸引排出を促進させる排塵板30を設けている。
この排塵板30は広幅に形成した平板の吸引口側30aをファンケース23の前面に設けるにあたり、側面視において吸引口25の上下幅の下半分位置で該吸引口25を横断する方向に取付固定し、吸引口25を排塵板30の上下で大面積の上吸引口25aと小面積の吸引口25bを形成している。これにより排塵選別室21には排塵板30の上下で、送風ファン5と吸引排塵ファン6で形成される風流を整然と区画形成することができる。
【0014】
また排塵板30は狭幅に形成した排塵口側31を排塵口15の開口上下幅の中程で、該排塵口15と排塵物の間隙Lを有して対設している。この間隙Lは前記大面積の上吸引口25aと送風ファン5によって形成される主排塵風路を形成することができ、排塵口15から排出される排塵物中の比重が大きいささり粒や穀粒を下方に風選落下させて、揺動選別体7による再選別をして穀粒の回収を図ると共に、比重の小さい藁屑類を間隙Lから落下させることなく、処理胴4aの排出力と主排塵風の共同作用によって排塵板30に移動させ該排塵板30を介して吸引排塵ファン6による排出を速やかに行わせることができる。
【0015】
上記間隙Lの上方には天板壁19から排塵口15に対向させて下向きに所定長さで突出させた排塵接当ガイド29を設けている。この排塵接当ガイド29は、処理室4の上壁に沿って勢いよく排出される排塵物を主として接当させることにより、排塵物中に混在して比重が大きく処理室4の上壁に沿って移動排出される穀粒を接当させることができ、間隙Lから下方の揺動選別体7に落下させて再選別回収をすることができる。このとき比重の小さい藁屑は排塵接当ガイド29で下向きに落下指向するが、排塵板30の上方に排塵口15と吸引口25を連通し強い整流となって形成される吸引風路によって、間隙Lからの落下を抑制し排塵板30上に移動して吸引排塵ファン6から機外に排出される。
【0016】
また排塵板30は図2で示すように、平面視において、後退状に傾斜させた前辺部32と4番漏斗壁11との間に吸風間隔を形成し、且つ後退状に傾斜させた後辺部33と後壁20との間に吸風間隔を形成し、送風ファン5と連通する選別風路を排塵板30の前後で形成するようにしている。
そして、排塵板30は後辺部33の排塵口側31を吸引口側30aより高くなる位置で後壁20に支持することにより、下り傾斜をなす斜面によって排塵口15から排出される排塵物を受けて、吸引排塵ファン6側への移動をスムーズに誘導案内することができる。
【0017】
以上のように構成される脱穀機1は、扱室2と処理室4によって脱穀処理された脱穀物を下方の揺動選別体7で受け、送風ファン5と吸引排塵ファン6による選別風路中で揺動選別をし、穀粒を回収すると共に排塵物(藁屑類)を吸引排塵ファン6によって機外に排出する。このような脱穀処理において排塵選別室21には、吸引排塵ファン6の吸引口25と処理室4の排塵口15との間に設ける排塵板30を、側面視において吸引口側30aを吸引口25の上下幅の中途に設けると共に、排塵口側31を排塵口15と間隙Lを有して対設しているので、排塵口15から排出される排塵物に風選別を付加して排塵板30に受け渡し移動することができ、排塵物中に混在する穀粒やささり粒を揺動選別体7で再選別処理することができる。また排塵板30で受けた排塵物は下方に落下させることなく、大面積の上吸引口25aから速やかに機外に吸引排出するので、揺動選別体7に対する排塵物の還元量を低減させることができる。
【0018】
また排塵板30の下方では送風ファン5からの風流と吸引排塵ファン6の吸引口25bの吸引排出によって、揺動選別体7のストローラック29で送られる排塵物と間隙Lから落下する処理室4からの穀粒を含む排塵物を風選別して藁屑類を速やかに排出することができる。
従って、処理胴4aから排出される排塵物は主として排塵板30で受け吸引排塵ファン6によって直接的に吸引し機外に速やかに排出することができるので、揺動選別体7による処理室4から排出される排塵物の処理量を少なくし、選別負荷の大きい濡れ材や大量穀稈に対する脱穀も選別精度を上げながら高能率に行うことができる。
【0019】
また排塵板30の排塵口側31と排塵口15の間に上方から突出する排塵接当ガイド29を対設しているので、排塵口15から排出される排塵物中に混在する穀粒を揺動選別体7に還元して回収することができるので、脱穀処理の精度及び能率をあげることができる。
尚、排塵板30は図示例では下り傾斜させたものを示したが、排塵口15の位置及び形状に適応させた角度及び水平状態に設定することができる。また排塵板30は断面を凹入させる例えば湾曲形状にすると、排塵板30を断面形状によって補強することができると共に、排塵物を凹入面で確実に誘導案内することができ吸引排塵ファン6による吸引排出をより速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用された脱穀機の断側面図である。
【図2】図1の脱穀機の構成を示す平断面図である。
【図3】図1の脱穀機の要部の構成を示す背断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 脱穀機
4 処理室
5 送風ファン
6 吸引排塵ファン
7 揺動選別体
15 排塵口
25 吸引口
28 ストローラック
29 排塵接当ガイド
30 排塵板
31 排塵口側
L 間隙



【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(2)と処理室(4)の下方で、前側の送風ファン(5)と後側の吸引排塵ファン(6)によって形成される選別風路中に脱穀物を受けて選別する揺動選別体(7)を設け、該揺動選別体(7)の後部上方に形成される排塵選別室(21)の左右に、吸引排塵ファン(6)の吸引口(25)と処理室(4)の排塵口(15)とを対向して設けた脱穀機(1)において、前記吸引排塵ファン(6)の吸引口(25)と処理室(4)の排塵口(15)との間に、該排塵口(15)から排出される排塵物を受けて吸引口(25)側に誘導する排塵板(30)を設けるに、該排塵板(30)の吸引口側(30a)を吸引口(25)の上下幅の中途に位置させて設けた脱穀機。
【請求項2】
排塵板(30)の排塵口側(31)を、排塵口(15)に対し排塵物を風選別する間隙(L)を有して対設し、該間隙Lの上方に排塵口(15)から排出される排塵物の一部を接当させて間隙(L)に指向させる排塵接当ガイド(29)を設けた請求項1記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−77653(P2009−77653A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249406(P2007−249406)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】