説明

脱穀装置の開閉構造

【課題】 脱穀経路で穀稈詰まりが生じた場合であっても、上部ケースの作業位置での固定解除を容易に行えるようにして、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行えるようにする。
【解決手段】 受網16を備えた下部ケース11に、扱胴18を備えた上部ケース12を、扱胴18が受網16に近接する作業位置と扱胴18が受網16から離間するメンテナンス位置とにわたって開閉操作可能に連結し、上部ケース12の作業位置からの開操作を阻止する固定状態と開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段58を備え、固定手段58を切り換え駆動する切換駆動手段68,70を装備してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受網を備えた下部ケースに、扱胴を備えた上部ケースを、前記扱胴が前記受網に近接する作業位置と前記扱胴が前記受網から離間するメンテナンス位置とにわたって開閉操作可能に連結し、前記上部ケースの前記作業位置からの開操作を阻止する固定状態と前記開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段を装備してある脱穀装置の開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような脱穀装置の開閉構造としては、上部構造体(上部ケース)に揺動自在に装備した一対のロック杆や、主構造体(下部ケース)に固設した一対のロックピンなどから、各ロック杆のフック部が対応するロックピンに係合することで、上部構造体を下降閉じ位置(作業位置)にロックし、各ロック杆のフック部が対応するロックピンとの係合を解除することで、上部構造体の下降閉じ位置でのロックを解除するように構成されたロック機構(固定手段)を備え、そのロック機構のロック解除操作を、一対のロック杆を連結するハンドル杆を利用した人為操作で行うように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−190137号公報(段落番号0030〜0031、図2、図4、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成では、受網と扱胴の間に形成される脱穀経路において刈取穀稈の詰まりが発生すると、その詰まりに起因してフック部とロックピンとの係合が強固になる不都合が派生して、それらの係合解除を人為操作で行うことが困難になることから、上部ケースの作業位置での固定解除に手間取るようになる。その結果、上部ケースをメンテナンス位置に開操作した場合に可能となる、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処が遅れることになり、作業効率の低下を招くようになる。
【0004】
本発明の目的は、脱穀経路で穀稈詰まりが生じた場合であっても、上部ケースの作業位置での固定解除を容易に行えるようにして、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、受網を備えた下部ケースに、扱胴を備えた上部ケースを、前記扱胴が前記受網に近接する作業位置と前記扱胴が前記受網から離間するメンテナンス位置とにわたって開閉操作可能に連結し、前記上部ケースの前記作業位置からの開操作を阻止する固定状態と前記開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段を備え、前記固定手段を切り換え駆動する切換駆動手段を装備してある。
【0006】
この特徴構成によると、受網と扱胴の間に形成される脱穀経路において刈取穀稈の詰まりが発生し、その詰まりに起因して、固定手段による上部ケースの作業位置での固定が強固になったとしても、固定手段の固定状態から解除状態への切り換えを切換駆動手段の作動で容易に行えるようになり、上部ケースの作業位置からメンテナンス位置への開操作を速やかに行える。
【0007】
従って、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行えるようになり、結果、作業効率の向上を図ることができる。
【0008】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記下部ケースの上方で、かつ、前記上部フレームよりも脱穀処理方向下手側の位置に、前記下部ケースに備えた下部搬送体と前記上部ケースに備えた上部搬送体とで挟持搬送された刈取穀稈を受け取って搬送する排ワラ搬送装置を配備し、前記下部ケースに、穀稈搬送経路を迂回しながら前記排ワラ搬送装置の搬送始端部を支持するように形成された支持フレームを装備し、前記上部ケースに、前記支持フレームに向けて延出するフレームを備え、前記支持フレームと前記フレームとを連結する連結状態と、その連結を解除する解除状態とに切り換え可能に構成された連結手段を装備し、前記固定手段の固定状態から解除状態への切り換えに伴って前記連結手段が連結状態から解除状態に切り換わり、前記固定手段の解除状態から固定状態への切り換えに伴って前記連結手段が解除状態から連結状態に切り換わるように、前記固定手段と前記連結手段とを連動連結してある。
【0009】
この特徴構成によると、固定手段を解除状態から固定状態に切り換えて、上部ケースの作業位置からの開操作を阻止すると、それに伴って、連結手段が、解除状態から連結状態に切り換わって、下部ケースの支持フレームと上部ケースのフレームとを連結して、排ワラ搬送装置の搬送始端部を、下部ケースの支持フレームだけでなく、その支持フレームと上部ケースのフレームとで支持させるようになる。
【0010】
又、固定手段を固定状態から解除状態に切り換えて、上部ケースの作業位置からの開操作を許容すると、それに伴って、連結手段が、連結状態から解除状態に切り換わって、下部ケースの支持フレームと上部ケースのフレームとの連結を解除して、上部ケースの作業位置からの開操作を許容するようになる。
【0011】
つまり、固定手段によって上部ケースを作業位置に固定した場合には、連結手段を解除状態から連結状態に切り換える手間を要することなく、排ワラ搬送装置の搬送始端部を、下部ケースの支持フレームと上部ケースのフレームによって、より高い支持強度で、より安定性良く支持することができる。
【0012】
又、固定手段による固定を解除して上部ケースの作業位置からの開操作を許容した場合には、連結手段を連結状態から解除状態に切り換える手間を要することなく、連結手段による下部ケースの支持フレームと上部ケースのフレームとの連結を確実に解除することができ、上部ケースの作業位置からの開操作を速やかに行える。
【0013】
しかも、連結手段を切り換え駆動する専用の切換駆動手段を設ける必要がないことから、その分、構成の簡素化やコストの削減を図れるようになる。
【0014】
従って、構成の簡素化やコストの削減を図りながら、上部ケースを開閉操作する際の操作性の向上を図れる上に、上部ケースを作業位置に固定する作業時や移動時における排ワラ搬送装置の支持強度や安定性を向上させることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記上部ケースを開閉駆動する開閉駆動手段を装備してある。
【0016】
この特徴構成によると、固定手段による固定を解除して上部ケースを作業位置からメンテナンス位置に開操作する、又は、上部ケースをメンテナンス位置から作業位置に閉操作して固定手段で固定する、といった一連の操作を切換駆動手段と開閉駆動手段の作動で容易かつ速やかに行える。
【0017】
従って、上部ケースを開閉操作する際の操作性の向上をより効果的に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1には自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が示されており、このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成した車体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2を配備し、車体フレーム1の前部に刈取搬送装置3を昇降揺動可能に連結し、車体フレーム1の左半部に脱穀装置4を搭載し、脱穀装置4の後部に排ワラ搬送装置5と排ワラ細断装置6とを連結し、車体フレーム1の右後部に穀粒タンク7を搭載し、穀粒タンク7にスクリュー搬送式の穀粒排出装置8を備え、車体フレーム1の右前部にエンジン9を搭載するとともに搭乗運転部を形成するキャビン10を配備して構成されている。
【0019】
図示は省略するが、左右のクローラ式走行装置2は、エンジン9から主変速装置や副変速装置などを介して伝達される動力で駆動され、搭乗運転部に備えた主変速レバーや副変速レバーの操作に基づいて変速され、その駆動状態では、搭乗運転部に備えた十字揺動式で中立復帰型の操縦レバーの左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速駆動される直進状態と、それらが差動する旋回走行状態とに切り換えられる。
【0020】
刈取搬送装置3は、エンジン9からの動力が主変速装置や刈取クラッチなどを介して伝達され、搭乗運転部に備えた刈取クラッチレバーの操作に基づいて、刈取クラッチが断続操作されることで、作動状態と停止状態とに切り換えられ、その作動状態では、車体の走行に伴って、刈取対象となる所定条数の植立穀稈を分草して引き起こすとともに、それらの株元側を切断し、切断後の植立穀稈(刈取穀稈)を、起立姿勢から横倒れ姿勢に姿勢変更しながら後方の脱穀装置4に向けて搬送する。又、操縦レバーの前後方向への揺動操作に基づいて刈取昇降機構が作動することで昇降する。
【0021】
脱穀装置4は、エンジン9からの動力が脱穀クラッチなどを介して伝達され、搭乗運転部に備えた脱穀クラッチレバーの操作に基づいて、脱穀クラッチが断続操作されることで、作動状態と停止状態とに切り換えられ、その作動状態では、刈取搬送装置3から刈取穀稈を受け取り、その刈取穀稈の穂先側に対して脱穀処理を施しながら、後方の排ワラ搬送装置5に向けて搬送し、その脱穀処理で得られた処理物に対して選別処理を施し、その選別処理によって1番物として選別された単粒化穀粒を穀粒タンク6に供給し、2番物として選別された枝梗付き穀粒などの未脱穀粒に対しては再び脱穀処理及び選別処理を施し、3番物として選別された切れワラやワラ屑などの塵埃は車外に排出する。
【0022】
排ワラ搬送装置5は、脱穀装置4からの動力で駆動され、その駆動状態では、脱穀装置4から脱穀処理後の刈取穀稈(排ワラ)を受け取って、排ワラ細断装置6の上方に向けて搬送する。排ワラ細断装置6は、脱穀装置4からの動力で駆動され、排ワラ細断装置6からの排ワラを、そのまま車体後方に案内して車外に放出する長ワラ放出状態と、細断処理を施して車外に放出する細断放出状態とに切り換え可能に構成されている。
【0023】
穀粒排出装置8は、エンジン9からの動力が排出クラッチなどを介して伝達され、搭乗運転部に備えた排出スイッチの操作に基づいて、排出クラッチが断続操作されることで、穀粒タンク7に貯留した単粒化穀粒を車外に排出する作動状態と停止状態とに切り換えられる。又、搭乗運転部に備えた昇降スイッチの操作に基づいて、排出昇降機構が作動することで排出筒8A(図1及び図2参照)が昇降揺動し、搭乗運転部に備えた旋回スイッチの操作に基づいて、排出旋回機構が作動することで排出筒8Aが旋回し、よって、穀粒タンク7に貯留した単粒化穀粒を、トラックの荷台などの所望の排出位置に排出することができる。
【0024】
図3〜11に示すように、脱穀装置4は、車体フレーム1に連結される下部ケース11と、その下部ケース11に開閉操作可能に連結される上部ケース12とで形成される処理空間に、脱穀部13と選別部14と回収部15とを備えて構成されている。
【0025】
脱穀部13は、下部ケース11の左側上部に着脱可能に敷設した受網16と上部ケース12とで扱室17が形成され、上部ケース12に備えた扱胴18と受網16との間に脱穀経路19が形成され、下部ケース11の左端上部に配備したフィードチェーン(下側搬送体の一例)20と、上部ケース12の左端下部に配備した挟持レール(上側搬送体の一例)21とで、刈取穀稈の穂先側が脱穀経路19を通るように刈取穀稈の株元側を後方に向けて挾持搬送する挾持搬送機構22が構成されている。
【0026】
受網16は、扱胴18の外周に沿って湾曲する円弧状に形成され、かつ、扱胴18の周方向に2分割可能に構成された格子状のコンケーブ受網であって、その前端部が、下部ケース11の前壁11Aに備えた円弧状の支持フレーム23に、扱胴18の周方向に相対摺動可能に支持され、その後端部が、下部ケース11の補助壁11Bに備えた円弧状の支持フレーム24に、扱胴18の周方向に相対摺動可能に支持され、下部ケース11に対する固定を解除して、前後の支持フレーム23,24に沿って移動させることで、下部ケース11に対してその左端部から着脱することができる。
【0027】
下部ケース11の前壁11Aは、上部ケース12の前壁12Aを受け止め支持する支持部材として機能し、下部ケース11の補助壁11Bは、上部ケース12の後壁12Bを受け止め支持する支持部材として機能するように構成されている。
【0028】
扱胴18は、上部ケース12の前壁12Aと後壁12Bとにわたって前後向きに架設した支軸25に、第1処理胴18Aと第2処理胴18Bとを相対回動可能に支持させて構成した前後2分割構造で、それらの処理胴18A,18Bが支軸25を支点にして回転駆動されることで、それらの外周部に備えた複数の扱歯18a,18bで、脱穀経路19に搬送された刈取穀稈の穂先側に対して脱穀処理を施しながら、その脱穀処理で得られた処理物を受網16から選別部14に向けて漏下させ、受網16から漏下しなかった処理物を、後側の支持フレーム24の底部に形成した送塵口26から選別部14に向けて排出する。
【0029】
第1処理胴18Aは、その前端部に一体装備した入力プーリ27に、脱穀クラッチを介して脱穀装置4に伝達されたエンジン動力が、第1伝動ベルト28などを介して分配供給されることで、支軸25を支点にして、第2処理胴18Bよりも遅い速度で正面視右回りに回転する。
【0030】
第2処理胴18Bは、その後端部に一体装備した入力プーリ29に、第1伝動ベルト28で分配されたエンジン動力が、前後向きの伝動軸30や第2伝動ベルト31などを介して伝達されることで、支軸25を支点にして、第1処理胴18Aよりも速い速度で正面視右回りに回転する。
【0031】
選別部14は、粗選別部32Aと精選別部32Bとを上下に備えた揺動選別機構32、選別風を生起する主唐箕33と第1副唐箕34と第2副唐箕35、送塵口26からの処理物などに作用する拡散胴36、及び、選別風で吹き分けられたワラ屑などの塵埃を吸引して車外に排出する排塵ファン37、などを備えて構成され、それらには、脱穀クラッチを介して脱穀装置4に伝達されたエンジン動力が、図外の伝動ベルトなどを介して分配供給されている。
【0032】
揺動選別機構32は、分配動力で揺動駆動されることで、粗選別部32Aが、脱穀部13の受網16から漏下した処理物や送塵口26から搬出された処理物に対して篩い選別処理を施して、それらの処理物のうちの、単粒化穀粒や未脱穀粒などは漏下させながら、切れワラやワラ屑などを、下部フレーム11の後壁11Cに形成した排塵口11aに向けて移送し、排塵口11aから車外に排出する。又、精選別部32Bが、粗選別部32Aから漏下した単粒化穀粒や未脱穀粒などに篩い選別を施して、単粒化穀粒を漏下させながら未脱穀粒などを後方(選別処理方向下手側)に向けて移送する。
【0033】
主唐箕33は、分配動力で回転駆動されることで、精選別部32Bの前下方から排塵口11aに向けて流動する選別風を生起して、粗選別部32Aからの処理物に含まれたワラ屑などの塵埃を排塵口11aに向けて風力搬送する。
【0034】
第1副唐箕33は、分配動力で回転駆動されることで、粗選別部32Aの前部下方から排塵口11aに向けて流動する選別風を生起して、受網16からの処理物に含まれたワラ屑などの塵埃を排塵口11aに向けて風力搬送する。
【0035】
第2副唐箕35は、分配動力で回転駆動されることで、精選別部32Bの後部下方から排塵口11aに向けて流動する選別風を生起して、粗選別部32Aの後部からの処理物に含まれたワラ屑などの塵埃を排塵口11aに向けて風力搬送する。
【0036】
拡散胴36は、分配動力で回転駆動されることで、送塵口26から粗選別部32Aに排出された処理物などをほぐして、その処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱穀粒などの粗選別部32Aからの漏下を促進させる。
【0037】
排塵ファン37は、分配動力で回転駆動されることで、選別風で風力搬送されたワラ屑などの塵埃を吸引して排塵口11aから車外に排出する。
【0038】
これによって、脱穀部13からの処理物を、精選別部32Bから漏下する1番物としての単粒化穀粒、精選別部32Bの後方に供給される2番物としての未脱穀粒などを含む混在物、及び、排塵口11aから車外に排出される3番物としての切れワラやワラ屑などの塵埃、などに精度良く選別することができる。
【0039】
回収部15は、精選別部32Bから漏下した単粒化穀粒を、精選別部32Bの下方に形成した1番回収部38で回収し、精選別部32Bから漏下しなかった未脱穀粒や、粗選別部32Aの後部から漏下した未脱穀粒などを、1番回収部38の後方に形成した2番回収部39で回収する。
【0040】
回収部15には、脱穀クラッチを介して脱穀装置4に伝達されたエンジン動力が、図外の伝動ベルトなどを介して分配供給されており、この動力で、1番回収部38の底部に備えた1番スクリュー40と、その右端部と穀粒タンク7の上端部とにわたって立設した1番縦スクリュー41とが駆動されることで、1番回収部38で回収した単粒化穀粒を穀粒タンク7に向けて供給搬送する。又、2番回収部39の底部に備えた2番スクリュー42と、その右端部と選別部14の上部とにわたって立設した2番還元スクリュー43とが駆動されることで、2番回収部39で回収した混在物を2番還元スクリュー43の上端部に向けて搬送し、その上端部から揺動選別機構32の前部に向けて放出還元する。
【0041】
2番還元スクリュー43には、2番回収部39で回収した混在物に対して再脱穀処理を施す2番処理銅(図示せず)が装備されている。
【0042】
下部ケース11の右上部には、その前壁11Aと補助壁11Bとを連結することで下部ケース11の上部を補強する補強フレーム44が配備されている。補強フレーム44は、伝動軸30を内装する伝動ケースとしての機能と、上部ケース12を上下揺動可能に支持する支軸としての機能とを有するように、丸パイプ材などによって構成されている。
【0043】
上部ケース12は、その前壁12A及び後壁12Bが、補強フレーム44の前後両端部に相対回動可能に支持されたブラケット45,46に連結されており、これによって、補強フレーム44を支点にした下部ケース11に対する上下揺動が許容されている。
【0044】
つまり、上部ケース12は、補強フレーム44を支点にした上下揺動で、下部ケース11に対して開閉操作されるように、下部ケース11に連結されている。
【0045】
上部ケース12は、前後のブラケット45,46にわたって架設した角パイプ材などからなる補強フレーム47によって、その揺動支点部が補強されている。
【0046】
図4〜15に示すように、上部ケース12の開閉操作は、指令手段48からの開閉操作指令と、開閉検出手段49によって検出される上部ケース12の開閉操作位置とに基づいて、マイクロコンピュータなどを備えて構成された制御装置50が、上部ケース12を開閉駆動する開閉駆動手段51の作動を制御することで行われる。
【0047】
指令手段48は、搭乗運転部に備えた自動復帰型の押しボタンスイッチからなる開スイッチ52と閉スイッチ53とで構成されている。開スイッチ52は、押圧操作が行われるごとに制御装置50に開操作指令を出力し、閉スイッチ53は、押圧操作が行われるごとに制御装置50に閉操作指令を出力する(図12参照)。
【0048】
開閉検出手段49は、回転式のポテンショメータからなり、前側のブラケット45に対する上方からの接当状態が維持されるようにバネ付勢された連係アーム54などを介して、補強フレーム44を支点にした前側のブラケット45の揺動角度を上部ケース12の開閉操作位置として検出するように構成されている(図13〜15参照)。
【0049】
制御装置50には、開スイッチ52又は閉スイッチ53からの指令情報と、開閉検出手段50からの検出情報に基づいて、上部ケース12が、予め設定した作業位置と第1メンテナンス位置と第2メンテナンス位置の3位置のうちの指令情報に対応する位置に切り換え保持されるように、開閉駆動手段51の作動を制御する開閉制御手段50Aが制御プログラムとして備えられている(図12参照)。
【0050】
作業位置は、下部ケース11の前壁11A及び補助壁11Bによって、上部ケース12の前壁12A及び後壁12Bが受け止め支持される全閉位置であり、この位置では、挟持搬送機構22による刈取穀稈の挾持搬送が可能となるように挟持レール21がフィードチェーン20に近接し、かつ、扱胴に18よる刈取穀稈に対する脱穀処理が可能となるように扱胴18が受網16に近接する(図5〜9及び図13参照)。
【0051】
第1メンテナンス位置は、開閉駆動手段51の作動で上部ケース12が下部ケース11から最も離れる全開位置であり、この位置では、受網16と扱胴18との間が大きく開放されるように、扱胴18及び挟持レール21が受網16及びフィードチェーン20から離間する(図11及び図15参照)。
【0052】
第2メンテナンス位置は、扱胴18の最下部が、挟持レール21に対向するフィードチェーン20の搬送面側の高さ位置と略同じ高さに位置する開閉途中位置であり、この位置では、扱胴18及び挟持レール21が、受網16及びフィードチェーン20から、それらの間の脱穀経路19に詰まった刈取穀稈の除去を可能にする程度に比較的小さく離間する(図10及び図14参照)。
【0053】
つまり、脱穀作業を行う場合には、上部ケース12を作業位置に位置させることで、刈取穀稈の穂先側が受網16と扱胴18との間を通るように、刈取穀稈の株元側を挟持搬送機構22によって挾持搬送することができ、その穂先側に対して扱胴18による脱穀処理を適切に施すことができる。
【0054】
又、受網16や扱胴18の清掃あるいは受網16の交換などを行う場合には、上部ケース12を第1メンテナンス位置に位置させることで、受網16や扱胴18の清掃、受網16の交換、あるいは、扱歯18a,18bの補修、といった受網16や扱胴18などに対するメンテナンスを容易に行える。
【0055】
そして、脱穀経路19において刈取穀稈の詰まりが生じた場合には、上部ケース12を第2メンテナンス位置に位置させることで、詰まった刈取穀稈を脱穀経路19から取り除いてフィードチェーン20の搬送始端部に載置する、などの詰まり穀稈に対する適切な処置を容易に施すことができる。
【0056】
しかも、その第2メンテナンス位置では、挟持搬送機構22で挾持搬送されていた刈取穀稈が長稈であることや、刈取穀稈の株元側に泥が付着していることで、上部ケース12の第2メンテナンス位置への開操作に伴って、刈取穀稈が、そのフィードチェーン20から外方に延出する株元側の重みで、フィードチェーン20を支点にして、穂先側が浮き上がる外下がり方向に姿勢変更するようになっても、その穂先側が扱胴18によって受け止められて、扱胴18とフィードチェーン20とで支持された状態になることから、穂先側を大きく浮き上がらせた外下がり傾斜姿勢への刈取穀稈の姿勢変更が阻止されるようになり、結果、その姿勢変更に起因した刈取穀稈の車体外方への滑落を未然に回避することができ、滑落した刈取穀稈を拾い集める手間を無くすことができる。
【0057】
図4及び図7〜12に示すように、開閉駆動手段51は、下部ケース11と上部ケース12とにわたって架設した復動型の油圧シリンダ55、油圧シリンダ55に対する作動油の流動を制御する電磁制御弁56、及び、電磁制御弁56に向けて作動油を圧送する油圧ポンプ57、などによって、上部ケース12を油圧で開閉駆動する油圧駆動式に構成されている。
【0058】
油圧シリンダ55は、後側の支持フレーム24と、その右外方に立設した2番還元スクリュー43との間に、支持フレーム24の前後幅内に位置するように配置されている。
【0059】
つまり、油圧シリンダ55は、受網16から揺動選別機構32への処理物の漏下、支持フレーム24の底部に形成した送塵口26から揺動選別機構32への処理物の排出、及び、2番還元スクリュー43の上端部から揺動選別機構32の前部側への混在物の放出還元、などに差し障りのないように配備されている。
【0060】
電磁制御弁56は、3位置切り換え式で、第1制御手段50Aの制御作動によって、油圧シリンダ55を伸長させて上部ケース12を上昇揺動させる上昇位置と、油圧シリンダ55を収縮させて上部ケース12を下降揺動させる下降位置と、油圧シリンダ55の伸縮を停止させて上部ケース12の昇降揺動を停止させる停止位置とに切り換わる。
【0061】
油圧ポンプ57は、エンジン9からの動力で駆動されるようにエンジン9に連動連結されている(図12参照)。つまり、上部ケース12は、エンジン動力で駆動される油圧ポンプ57からの作動油で開閉駆動されるように構成されている。
【0062】
図5〜8及び図12に示すように、脱穀装置4には、上部ケース12の作業位置からの開操作を阻止する固定状態と、上部ケース12の作業位置からの開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段58が装備され、固定手段58は、前後一対の固定機構59,60によって構成されている。
【0063】
前側の固定機構59は、下部ケース11の前壁11Aに前後向きの支軸61を介して上下揺動可能に装備した第1フック62と、上部ケース12の前壁12Aから下部ケース11の前壁11Aに向けて延設した延出部材63の延出端に前向きに突設した第1ピン64によって構成されている。後側の固定機構60は、下部ケース11の補助壁11Bに後向きに突設した第2ピン65と、上部ケース12の後壁12Bに前後向きの支軸66を介して上下揺動可能に装備した第2フック67によって構成されている。
【0064】
第1フック62は、下部ケース11の前壁11Aに備えた第1電動モータ(切換駆動手段の一例)68で駆動されるピニオンギヤ69と噛合するセクタギヤ62Aが一体装備され、第1電動モータ68の作動で、第1ピン64に対して上方から係合する係合位置と、第1ピン64との係合を解除する非係合位置とにわたって、支軸61を支点にして揺動駆動される。
【0065】
第2フック67は、上部ケース12の後壁12Bに備えた第2電動モータ(切換駆動手段の一例)70で駆動されるピニオンギヤ71と噛合するセクタギヤ67Aが一体装備され、第2電動モータ70の作動で、第2ピン65に対して下方から係合する係合位置と、第2ピン65との係合を解除する非係合位置とにわたって、支軸66を支点にして揺動駆動される。
【0066】
つまり、固定手段58は、第1電動モータ68及び第2電動モータ70の作動で、第1フック62及び第2フック67が係合位置に向けて揺動駆動されることで固定状態に切り換わり、第1フック62及び第2フック67が非係合位置に向けて揺動駆動されることで解除状態に切り換わるように構成されている。
【0067】
これによって、脱穀経路19において刈取穀稈の詰まりが生じたことで、第1ピン64又は第2ピン65に対する第1フック62又は第2フック67の係合が強固になった場合であっても、第1電動モータ68及び第2電動モータ70の作動で、それらの係合を容易に解除することができ、脱穀経路19での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行える。
【0068】
図5〜8及び図12に示すように、固定手段58の切り換え操作は、開スイッチ52又は閉スイッチ53からの指令情報と、開閉検出手段49からの検出情報と、作動検出手段72によって検出される固定手段58の作動状態とに基づいて、開閉制御手段50Aが、第1電動モータ68及び第2電動モータ70の作動を制御することで行われる。
【0069】
作動検出手段72は、下部ケース11の前壁11Aに備えた第1位置センサ73と、上部ケース12の後壁12Bに備えた第2位置センサ74とで構成され、第1位置センサ73は、支軸61を支点にした第1フック62の揺動操作位置を、連係リンク75を介して検出する回転式のポテンショメータで構成され、第2位置センサ74は、支軸66を支点にした第2フック67の揺動操作位置を、連係リンク76を介して検出する回転式のポテンショメータで構成されている。
【0070】
つまり、作動検出手段72は、第1位置センサ73が第1フック62の係合位置への到達を検出し、かつ、第2位置センサ74が第2フック67の係合位置への到達を検出することで、固定手段58の固定状態を検出し、又、第1位置センサ73が第1フック62の非係合位置への到達を検出し、かつ、第2位置センサ74が第2フック67の非係合位置への到達を検出することで、固定手段58の解除状態を検出するように構成されている。
【0071】
図1〜3、図7,図8、図16及び図17に示すように、排ワラ搬送装置5は、挟持搬送機構22で搬送された排ワラを受け取るために、その搬送始端部が、挟持搬送機構22の搬送終端部が位置する下部ケース11の後部左上方に配置されている。下部ケース11には、排ワラ搬送装置5の搬送始端部を支持する支持フレーム77が装備されている。支持フレーム77は、下部ケース11の左後端部に立設した後フレーム78の上部から、排ワラ搬送装置5の搬送始端部に向けて、排ワラ搬送装置5の排ワラ搬送経路(穀稈搬送経路)79を迂回しながら延出するように形成した丸パイプ材からなる前後向きの第1フレーム80、及び、下部ケース11の右上部に前後向きに配備した右上フレーム81から、排ワラ搬送装置5の搬送始端部に向けて延設した丸パイプ材からなる左右向きの第2フレーム82、などで構成されている。第1フレーム80と第2フレーム82は、それらの延出端部が溶接されている。
【0072】
上部ケース12において、その左上部に前後向きに配備した角パイプ材からなる左上フレーム(フレームの一例)83は、その延出端部(後端部)が第1フレーム80の延出端部(前端部)と重合するように、第1フレーム80の延出端部に向けて延出し、その重合する左上フレーム83の延出端部と第1フレーム80の延出端部との間に、上部ケース12が作業位置に位置する場合に、左上フレーム83を第1フレーム80に着脱可能に連結する連結手段84が装備されている。
【0073】
つまり、連結手段84によって、下部ケース11の支持フレーム77に上部ケース12の左上フレーム83を連結することができ、これによって、排ワラ搬送装置5の搬送始端部を、下部ケース11の支持フレーム77と上部ケース12の左上フレーム83によって、より高い支持強度で、より安定性良く支持することができる。
【0074】
連結手段84は、第1フレーム80の延出端部に前後向きに備えた固定ピン85と、左上フレーム83に備えた前後向きの回動軸86の後端部に一体装備したフック87によって構成されている。
【0075】
回動軸86は、第2フック67の係合位置への操作に連動してフック87が固定ピン85に係合し、第2フック67の非係合位置への操作に連動してフック87が固定ピン85との係合を解除するように、その前端部が屈曲リンク88を介して第2フック67に連動連結されている。
【0076】
つまり、連結手段84は、第2電動モータ70の作動で、後側の固定機構60が固定状態に切り換わるのに伴って、支持フレーム77に左上フレーム83を連結する連結状態に切り換わり、後側の固定機構60が解除状態に切り換わるのに伴って、支持フレーム77に対する左上フレーム83の連結を解除する解除状態に切り換わるように構成されている。
【0077】
これによって、連結手段84を人為操作式に構成する場合に比較して操作性の向上を図れるようになり、又、連結手段84を切り換え駆動する専用の切換駆動手段を設ける場合に比較して構成の簡素化やコストの削減を図れるようになり、更に、連結手段84の操作を独立して行う場合に招く虞のある連結手段84の操作忘れを未然に回避することができる。
【0078】
又、排ワラ返送経路79の上方に位置する上部ケース12に、固定手段58の第2フック67、第2電動モータ70、及び、連結手段84のフック87を装備したことで、それらの連係を、それらを下部ケース11に装備する場合のように排ワラ返送経路79を迂回しながら行う、といった手間を要することなく行えるようになり、結果、連係構成の簡素化を図ることができる。
【0079】
図4〜6、図12〜15及び図18に示すように、脱穀装置4には、上部ケース12の第1メンテナンス位置及び第2メンテナンス位置からの落下を防止する落下防止機構89が装備されている。落下防止機構89は、前側のブラケット45、そのブラケット45に形成した第1凹部45a及び第2凹部45bに対する前方からの係合が可能となるように下部ケース11の前壁11Aに前後方向に出退可能に装備した係合ピン90、及び、係合ピン90に形成した雌ネジ部90Aに螺合するネジ軸91を介して係合ピン90を出退操作する電動モータ92、などによって構成されている。
【0080】
第1凹部45aは、前側のブラケット45における、上部ケース12が第1メンテナンス位置まで開操作された場合に係合ピン90と対向する位置に形成され、第2凹部45bは、前側のブラケット45における、上部ケース12が第2メンテナンス位置まで開操作された場合に係合ピン90と対向する位置に形成されている。
【0081】
つまり、落下防止機構89は、係合ピン90を第1凹部45aに係合することで、上部ケース12の第1メンテナンス位置からの落下を防止し、係合ピン90を第2凹部45bに係合することで、上部ケース12の第2メンテナンス位置からの落下を防止する。これによって、上部ケース12を第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置に位置させた場合に作動油のリークが生じても、それらの位置に上部ケース12を確実に維持することができる。
【0082】
係合ピン90の出退操作は、開スイッチ52又は閉スイッチ53からの指令情報と、開閉検出手段50からの検出情報と、係合ピン90の出退位置を検出する出退検出手段99からの検出情報とに基づいて、開閉制御手段50Aが、電動モータ91の作動を制御することで行われる。
【0083】
出退検出手段99は、連係リンク100などを介して係合ピン90の予め設定した突出限界位置及び退避限界位置への到達を検出する回転式のポテンショメータで構成されている。突出限界位置は、係合ピン90がブラケット45の第1凹部45a又は第2凹部45bと確実に係合する位置であり、退避限界位置は、係合ピン90がブラケット45の第1凹部45a又は第2凹部45bとの係合を確実に解除する位置である。
【0084】
開閉制御手段50Aの制御作動について説明すると、開閉制御手段50Aは、開スイッチ52から上部ケース12の開操作が指令されると、開閉検出手段49からの検出情報に基づいて上部ケース12の現在位置を判別する。
【0085】
上部ケース12の現在位置が作業位置である場合には、そのときの開スイッチ52からの開操作指令が、上部ケース12を作業位置から第2メンテナンス位置に開操作するためのものであると判断し、その判断に基づいて、固定手段58が固定状態から解除状態に切り換わるように第1電動モータ68及び第2電動モータ70を逆転作動させる。その逆転作動で固定手段58が解除状態に切り換わったことを作動検出手段72が検出すると、その検出に基づいて第1電動モータ68及び第2電動モータ70を停止させ、その後、上部ケース12が作業位置から第2メンテナンス位置に向けて開操作(上昇駆動)されるように開閉駆動手段51の油圧シリンダ55を伸長作動させる。その伸長作動によって上部ケース12が第2メンテナンス位置に到達したことを開閉検出手段50が検出すると、その検出に基づいて、油圧シリンダ55を停止させるとともに、電動モータ91を正転作動させて係合ピン90を第2凹部45bに向けて突出させる。この突出操作で係合ピン90が突出限界位置に到達したことを出退検出手段99が検出すると、電動モータ91を停止させるとともに、搭乗運転部に備えた第1報知灯93を点灯させて、上部ケース12の第2メンテナンス位置への到達を運転者に報知する(図14参照)。
【0086】
上部ケース12の現在位置が第2メンテナンス位置である場合には、そのときの開スイッチ52からの開操作指令が、上部ケース12を第2メンテナンス位置から第1メンテナンス位置に開操作するためのものであると判断し、その判断に基づいて、電動モータ91を逆転作動させて係合ピン90を第2凹部45bから離れる方向に退避させる。この退避操作で係合ピン90が退避限界位置に到達したことを出退検出手段99が検出すると、電動モータ91を停止させるとともに、上部ケース12が第2メンテナンス位置から第1メンテナンス位置に向けて開操作(上昇駆動)されるように開閉駆動手段51の油圧シリンダ55を伸長作動させる。その伸長作動によって上部ケース12が第1メンテナンス位置に到達したことを開閉検出手段50が検出すると、その検出に基づいて、油圧シリンダ55を停止させるとともに、電動モータ91を正転作動させて係合ピン90を第1凹部45aに向けて突出させる。この突出操作で係合ピン90が突出限界位置に到達したことを出退検出手段99が検出すると、電動モータ91を停止させるとともに第1報知灯93を消灯させ、かつ、搭乗運転部に備えた第2報知灯94を点灯させて、上部ケース12の第1メンテナンス位置への到達を運転者に報知する(図15参照)。
【0087】
上部ケース12の現在位置が第1メンテナンス位置である場合には、その開操作指令が誤操作によるものであると判断して、上部ケース12を第1メンテナンス位置に保持する。
【0088】
又、閉スイッチ53から上部ケース12の閉操作が指令されると、開閉検出手段50からの検出情報に基づいて上部ケース12の現在位置を判別する。
【0089】
上部ケース12の現在位置が第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置である場合には、そのときの閉スイッチ53からの閉操作指令が、上部ケース12を第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置から作業位置に閉操作するためのものであると判断し、その判断に基づいて、電動モータ91を逆転作動させて係合ピン90を第1凹部45aから離れる方向に退避させる。この退避操作で係合ピン90が退避限界位置に到達したことを出退検出手段99が検出すると、電動モータ91を停止させるとともに、上部ケース12が第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置から作業位置に向けて閉操作(下降駆動)されるように開閉駆動手段51の油圧シリンダ55を収縮作動させる。その収縮作動によって上部ケース12が作業位置に到達したことを開閉検出手段50が検出すると、その検出に基づいて、油圧シリンダ55を停止させるとともに、固定手段58が解除状態から固定状態に切り換わるように第1電動モータ68及び第2電動モータ70を正転作動させる。その正転作動で固定手段58が固定状態に切り換わったことを作動検出手段72が検出すると、その検出に基づいて第1電動モータ68及び第2電動モータ70を停止させるとともに、第2報知灯94又は第1報知灯93を消灯させて、上部ケース12の作業位置での固定保持を運転者に報知する(図13参照)。
【0090】
上部ケース12の現在位置が作業位置である場合には、その閉操作指令が誤操作によるものであると判断して、上部ケース12を作業位置に保持する。
【0091】
つまり、上部ケース12の開閉操作位置を把握し難い搭乗運転部からの上部ケース12の開閉操作であっても、開スイッチ52又は閉スイッチ53の操作に基づく開閉制御手段50Aの制御作動で、上部ケース12を、予め設定した作業位置と第1メンテナンス位置と第2メンテナンス位置の3位置のうちの開スイッチ52又は閉スイッチ53からの指令に対応する位置に、その位置に上部ケース12が到達するまで開スイッチ52又は閉スイッチ53の操作を継続する手間を要することなく、簡便かつ確実に位置させることができる。
【0092】
又、上部ケース12が作業位置に位置する場合には、開スイッチ52からの開操作指令に基づく開閉制御手段50Aの制御作動によって、上部ケース12が必ず第2メンテナンス位置に位置することになる。その結果、上部ケース12の第1メンテナンス位置への開操作を指令する専用のスイッチと、第2メンテナンス位置への開操作を指令する専用のスイッチとを装備した場合に招く虞のある、作業中に発生した脱穀経路19での穀稈詰まりに対する処置を行おうとした際のスイッチの誤操作で、上部ケース12が作業位置から第1メンテナンス位置まで一挙に開操作されて、挟持搬送機構22で挾持搬送されていた刈取穀稈が、その株元側の重みで、フィードチェーン20を支点にして、穂先側を大きく浮き上がらせた外下がり傾斜姿勢に姿勢変更しながら車体外方に滑落する不都合の発生を未然に回避することができる。
【0093】
しかも、開スイッチ52及び閉スイッチ53を搭乗運転部に備えたことで、例えば、脱穀装置4に対するメンテナンスを行う場合には、油圧による上部ケース12の開操作を可能にするためのエンジン9の始動操作と、固定手段58の固定状態から解除状態への切り換えと、連結手段84の連結状態から解除状態への切り換えと、上部ケース12の作業位置から第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置への開操作と、開操作後のエンジン9の停止操作とを、搭乗運転部に居ながらの一連の操作で行えるようになる。又、脱穀装置4に対するメンテナンスを終了した場合には、油圧による上部ケース12の閉操作を可能にするためのエンジン9の始動操作と、上部ケース12の第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置から作業位置への閉操作と、固定手段58の解除状態から固定状態への切り換えと、連結手段84の解除状態から連結状態への切り換えと、作業位置での固定後のエンジン9の停止操作とを、搭乗運転部に居ながらの一連の操作で行えるようになる。
【0094】
その結果、上部ケース12を開閉操作する際の操作性の向上を図れる上に、受網16や扱胴18の清掃又は受網16の交換、あるいは、詰まった刈取穀稈を脱穀経路19から取り除いてフィードチェーン20の搬送始端部に載置する、などの脱穀装置4に対するメンテナンスを行う際の作業性の向上を図ることができる。
【0095】
図12に示すように、制御装置50には、脱穀クラッチの作動状態を検出する脱穀クラッチセンサ95からの検出情報に基づいて、脱穀クラッチの入り状態を検知している場合には、開閉制御手段50Aの制御作動による固定手段58及び連結手段84の切り換え操作と上部ケース12の開閉操作とを阻止するとともに、搭乗運転部に備えた第3報知灯96を点灯させて、脱穀クラッチが入り状態であることを運転者に報知し、又、脱穀クラッチの切り状態を検知している場合には、開閉制御手段50Aの制御作動による固定手段58及び連結手段84の切り換え操作と上部ケース12の開閉操作とを許容する牽制手段50Bが制御プログラムとして備えられている。
【0096】
これによって、上部ケース12を第1メンテナンス位置や第2メンテナンス位置に開操作する場合には、脱穀クラッチを切り状態に切り換える必要が生じることになり、その結果、上部ケース12を第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置に開操作して、脱穀装置4に対するメンテナンスを行う場合には、開閉駆動手段51の構成から、上部ケース12の開操作を行う際にエンジン9を作動させる必要があっても、又、その開操作後にエンジン9の停止操作を忘れたとしても、上部ケース12を開操作する前の段階から扱胴18やフィードチェーン20などが停止した脱穀装置4の作動停止状態が現出されることになり、脱穀装置4に対するメンテナンスを脱穀装置4の作動停止状態で行えるようになる。
【0097】
脱穀クラッチセンサ95は、脱穀クラッチレバーの切り位置への操作によって押圧操作されるリミットスイッチで構成されている。
【0098】
牽制手段50Bは、穀粒排出装置8の排出筒8Aの操作位置を検出する排出位置件手段97からの検出情報に基づいて、排出筒8Aが予め設定した上部ケース開操作用の退避位置に位置していないことを検知している場合には、開閉制御手段50Aの制御作動による固定手段58及び連結手段84の切り換え操作と上部ケース12の開閉操作とを阻止するとともに、搭乗運転部に備えた第4報知灯98を点灯させて、排出筒8Aが退避位置に操作されていないことを運転者に報知し、退避位置に位置していることを検知している場合には、開閉制御手段50Aの制御作動による固定手段58及び連結手段84の切り換え操作と上部ケース12の開閉操作とを許容するように構成されている。
【0099】
これによって、上部ケース12を第1メンテナンス位置や第2メンテナンス位置に開操作する際に、上部ケース12と排出筒8Aとが接触して損傷する虞を未然に回避することができる。
【0100】
排出位置件手段97は、排出筒8Aの昇降揺動角度を検出する回転式のポテンショメータと、排出筒8Aの旋回角度を検出する回転式のポテンショメータとから構成されている。
【0101】
〔別実施形態〕
【0102】
〔1〕上部ケース12としては、下部ケース11に対する上下摺動によって開閉操作されるように構成したものであってもよい。又、その開閉操作を人為操作で行うように構成したものであってもよい。
【0103】
〔2〕受網16として樹脂網やクリンプ網などを採用してもよい。
【0104】
〔3〕扱胴18として、単一の処理胴から構成されたものを採用してもよく、又、螺旋歯を備えたものを採用してもよい。
【0105】
〔4〕下側搬送体20として挟持レールを採用し、上側搬送体21としてフィードチェーンを採用するようにしてもよい。
【0106】
〔5〕開閉駆動手段51としては、単動型の油圧シリンダ、油圧モータ、電動シリンダ、又は電動モータ、などの作動で上部ケース12を開閉駆動するように構成したものであってもよい。
【0107】
〔6〕開閉駆動手段51としては、上部ケース12を作業位置と第1メンテナンス位置とにわたって開閉駆動するように構成したものであってもよく、又、上部ケース12を作業位置と、第1メンテナンス位置と、それらの間の任意の位置への開閉駆動が可能となるように構成したものであってもよい。
【0108】
〔7〕固定手段58を、前側の固定機構59又は後側の固定機構60のみで構成するようにしてもよい。
【0109】
〔8〕固定手段58としては、前側の固定機構59における第1フック62を上部ケース12の前壁12Aに装備し、かつ、第1ピン64を下部ケース11の前壁11Aに突設したものであってもよい。又、後側の固定機構60における第2ピン65を上部ケース12の後壁12Bに突設し、第2フック67を下部ケース11の補助壁11Bに装備したものであってもよい。
【0110】
〔9〕固定手段58としては、下部ケース11と上部ケース12のいずれか一方に出退操作可能に装備した挿通ピンと、下部ケース11と上部ケース12のいずれか他方に形成した挿通孔とから、挿通ピンの挿通孔への挿通で上部ケース12を作業位置からの開操作を阻止し、挿通ピンの挿通孔への挿通解除で上部ケース12を作業位置からの開操作を許容するように構成したものであってもよい。
【0111】
〔10〕切換駆動手段68,70として、電動シリンダなどを採用するようにしてもよく、又、切換駆動手段68,70を、油圧シリンダ又は油圧モータなどの油圧アクチュエータや、その油圧アクチュエータに対する作動油の流動を切り換える切換弁などを備える油圧式に構成してもよい。
【0112】
〔11〕切換駆動手段68,70の作動で上部ケース12の開閉操作を行うように構成してもよい。
【0113】
〔12〕単一の切換駆動手段68(又は切換駆動手段70)で、固定手段58における前後の固定機構59,60を固定状態と解除状態とに切り換えるように構成してもよい。
【0114】
〔13〕連結手段84としては、その連結状態と解除状態との切り換えを人為操作で行うように構成したものであってもよく、又、専用の切換駆動手段の作動で行うように構成したものであってもよい。又、専用の切換駆動手段を設ける場合には、固定手段58との連動を制御装置50の制御作動などで行うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】自脱型コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】脱穀部の横断平面図
【図5】固定手段で上部ケースを作業位置に固定した状態を示す脱穀装置の正面図
【図6】固定手段による上部ケースの作業位置での固定を解除した状態を示す脱穀装置の正面図
【図7】固定手段で上部ケースを作業位置に固定した状態を示す脱穀装置の縦断背面図
【図8】固定手段による上部ケースの作業位置での固定を解除した状態を示す脱穀装置の縦断背面図
【図9】上部ケースが作業位置に位置する状態を示す脱穀装置の縦断正面図
【図10】上部ケースが第2メンテナンス位置に位置する状態を示す脱穀装置の縦断正面図
【図11】上部ケースが第1メンテナンス位置に位置する状態を示す脱穀装置の縦断正面図
【図12】上部ケースの開閉操作に関する制御構成を示すブロック図
【図13】上部ケースの作業位置での開閉検出手段と落下防止機構の状態を示す要部の縦断正面図
【図14】上部ケースの第2メンテナンス位置での開閉検出手段と落下防止機構の状態を示す要部の縦断正面図
【図15】上部ケースの第1メンテナンス位置での開閉検出手段と落下防止機構の状態を示す要部の縦断正面図
【図16】連結手段の構成及び操作構造を示す要部の縦断側面図
【図17】連結手段の連結状態と連結解除状態とを示す要部の縦断背面図
【図18】落下防止機構の構成を示す要部の縦断側面図
【符号の説明】
【0116】
5 排ワラ搬送装置
11 下部ケース
12 上部ケース
16 受網
18 扱胴
20 下部搬送体
21 上部搬送体
51 開閉駆動手段
58 固定手段
68 切換駆動手段
70 切換駆動手段
77 支持フレーム
79 穀稈搬送経路
83 フレーム
84 連結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受網を備えた下部ケースに、扱胴を備えた上部ケースを、前記扱胴が前記受網に近接する作業位置と前記扱胴が前記受網から離間するメンテナンス位置とにわたって開閉操作可能に連結し、
前記上部ケースの前記作業位置からの開操作を阻止する固定状態と前記開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段を備え、
前記固定手段を切り換え駆動する切換駆動手段を装備してあることを特徴とする脱穀装置の開閉構造。
【請求項2】
前記下部ケースの上方で、かつ、前記上部フレームよりも脱穀処理方向下手側の位置に、前記下部ケースに備えた下部搬送体と前記上部ケースに備えた上部搬送体とで挟持搬送された刈取穀稈を受け取って搬送する排ワラ搬送装置を配備し、
前記下部ケースに、穀稈搬送経路を迂回しながら前記排ワラ搬送装置の搬送始端部を支持するように形成された支持フレームを装備し、
前記上部ケースに、前記支持フレームに向けて延出するフレームを備え、
前記支持フレームと前記フレームとを連結する連結状態と、その連結を解除する解除状態とに切り換え可能に構成された連結手段を装備し、
前記固定手段の固定状態から解除状態への切り換えに伴って前記連結手段が連結状態から解除状態に切り換わり、前記固定手段の解除状態から固定状態への切り換えに伴って前記連結手段が解除状態から連結状態に切り換わるように、前記固定手段と前記連結手段とを連動連結してあることを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置の開閉構造。
【請求項3】
前記上部ケースを開閉駆動する開閉駆動手段を装備してある請求項1又は2に記載の脱穀装置の開閉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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