説明

脱穀装置

【課題】脱穀装置に多くの負荷が作用するのを低減させる。
【解決手段】扱室33内に扱胴31を軸架して設け、前記扱室33の下方に揺動選別棚38を設け、該揺動選別棚38の下方には選別風送り方向上手側から唐箕43、一番ラセン46、二番ラセン47を設け、フィードチェン15で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置9において、前記扱胴31と略平行状態であって複数の切刃59を有する切刃回転軸58を設け、該切刃回転軸58を固定状態と回転状態とに切り換え可能に構成したことを特徴とする脱穀装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインやハーベスタに搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内に扱胴を軸架して設け、この扱室の下方に揺動選別棚を設け、揺動選別棚の下方には選別風送り方向上手側から唐箕、一番ラセン、二番ラセンを設け、フィードチェンで穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置において、扱室内に切刃を設けるにあたり、この切刃の抵抗が増大しないように切刃の設置を工夫する技術が開示されている。即ち、扱胴の扱歯の列に対して平面視で交互に位相をずらして対向するように切刃を設ける技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−14374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の技術では、切刃はあくまでも固定状態であるので、扱室内に多量の穀稈が投入された場合は切刃自体が抵抗となってしまい、扱室内や扱胴軸の負荷軽減に対応できなくなるという不具合が発生していた。そして、扱胴軸に多くの負荷が作用することで、脱穀装置から異音が発生したり、最悪の場合伝動系に不具合が生じて作業を中断しなくてはならなかった。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消する脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
即ち、請求項1記載の発明では、扱室33内に扱胴31を軸架して設け、前記扱室33の下方に揺動選別棚38を設け、該揺動選別棚38の下方には選別風送り方向上手側から唐箕43、一番ラセン46、二番ラセン47を設け、フィードチェン15で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置9において、前記扱胴31と略平行状態であって複数の切刃59を有する切刃回転軸58を設け、該切刃回転軸58を固定状態と回転状態とに切り換え可能に構成したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
請求項1の作用は、フィードチェン15にて搬送されてきた穀稈は扱室33内の扱胴31で脱穀され、脱穀された被処理物は揺動選別棚38上に落下する。揺動選別棚38上に落下しなかった被処理物は扱室33の終端部まで搬送されて揺動選別棚38上に落下する。
【0007】
揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風により選別された穀粒は、一番ラセン46から回収されていく。この一番ラセン46の後方の二番ラセン47に回収された二番物は、扱室33内又は揺動選別棚38上に還元されて再処理される。
【0008】
そして、脱穀装置9内の負荷が増大すると、切刃回転軸58を回転状態、即ちフリー状態にして切刃59による抵抗を少なくする。
請求項2記載の発明では、扱室33内に扱胴31を軸架して設け、前記扱室33の下方に揺動選別棚38を設け、該揺動選別棚38の下方には選別風送り方向上手側から唐箕43、一番ラセン46、二番ラセン47を設け、フィードチェン15で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置9において、前記扱胴31と略平行状態であって複数の切刃59を有する切刃回転軸58を設け、該切刃回転軸58を所定角度回転させることで、切刃59が作用する本数を変更可能に構成したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0009】
請求項2の作用は、脱穀装置9内の負荷が増大したり、負荷の増大が予想される場合においては、切刃回転軸58を回転させて、扱室33内に作用する切刃59の本数を少なくする。
【0010】
請求項3記載の発明では、前記切刃回転軸58を所定角度変更可能にするレバー60を設けたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置としたものである。
請求項3の作用は、請求項2の作用に加え、切刃回転軸58を回転させて、扱室33内に作用する切刃59の本数を少なくする場合に、レバー60を操作して切刃回転軸58を回転させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の効果は、脱穀装置9内の負荷が増大すると切刃回転軸58を回転状態、即ちフリー状態にして切刃59による抵抗を少なくする。これにより、脱穀装置9の負荷増大を軽減することができ、作業を中断することなくスムーズな脱穀を継続することが可能となる。
【0012】
請求項2記載の発明においては、脱穀装置9内の負荷が増大したり、負荷の増大が予想される場合においては、切刃回転軸58を回転させて、扱室33内に作用する切刃59の本数を少なくするので、脱穀作業を中断することなく作業を継続できるようになる。また、ベルトなど脱穀装置9の伝動系の寿命を長くすることができるようになる。
【0013】
請求項3記載の発明においては、請求項2の効果に加え、扱室33内に作用する切刃59の本数を容易に変更できるようになり、作業能率が向上するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2には、本発明を具現化した農業機械であるコンバインが示されている。
走行装置1を有する車台2の前方には、刈取装置3が設けられている。この刈取装置3には、植立穀稈を分草する複数の分草具4と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置5と、植立穀稈を刈り取る刈刃6と、該刈刃6にて刈り取られた穀稈を挟持して後方に搬送する搬送装置7が設けられている。この搬送装置7は刈刃6後方の株元搬送装置8と該株元搬送装置8から搬送されてくる穀稈を引き継いで脱穀装置9に供給する供給搬送装置10とから構成されている。
【0015】
前記刈取装置3は、車台2の前部に立設する懸架台11の上方に設ける回転軸11aを支点にして上下動する刈取装置支持フレーム12にて、その略左右中間部で支持されている。そして、刈取装置3は操作部13に設ける操向レバー14を前後方向に傾動させることによって刈取装置支持フレーム12と共に上下動する構成である。
【0016】
車台2の上方には、前記供給搬送装置10から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン15を有する脱穀装置9と、該脱穀装置9の右側方であって、この脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16と、該グレンタンク16の前方に位置していてコンバインの各種操作を実行する操作部13が載置されている。また、車台2の前部には走行装置1を駆動する走行伝動装置17が設けられている。
【0017】
脱穀装置9の後方には、前記フィードチェン15から搬送されてくる排稈を引き継いで搬送する排稈チェン18と、該排稈チェン18の終端部下方には排稈を切断するカッター装置19が設けられている。また、この実施例のカッター装置19の後方には、排稈を結束するノッター等の他の作業機を装着してもよい。
【0018】
前記グレンタンク16内の穀粒量が満杯となると、揚穀筒20と穀粒排出オーガ21から穀粒を機外へと排出する。揚穀筒20は電気モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ21は油圧シリンダ22にて昇降可能に構成されている。そして、穀粒排出オーガ21は揚穀筒20の上部に連結されて一体的に構成され、揚穀筒20が旋回すると、穀粒排出オーガ21も一緒に旋回する構成となっている。
【0019】
また、コンバインは操作部13に設ける副変速レバー23を操作して走行伝動装置17内の副変速の位置を決定し、その後、走行変速レバー24を操作してエンジン(図示せず)からの動力を油圧無段変速装置及び走行伝動装置17を介して走行装置1の左右のクローラ26、26に伝動して任意の速度で走行する構成である。このように、前記走行変速レバー24の操作量によって速度が変速されるとともに、走行変速レバー24の前方向と後方向の操作によってコンバインが前後進する構成である。
【0020】
また、コンバインは操作部13に設ける前記操向レバー14を左右方向に傾倒操作することによって左右方向に旋回する構成であり、さらに、操向レバー14の左右方向への傾倒操作量によって旋回半径が決定される構成である。
【0021】
このようなコンバインを前進させて刈取作業をすると、圃場面に植立している穀稈は、分草具4にて分草され、その後、引起装置5にて引き起こされて刈刃6にて刈り取られる構成である。その後、刈り取られた穀稈は株元搬送装置8にて後方へ搬送され、供給搬送装置10へと引き継ぎ搬送される。この供給搬送装置10に引き継がれた穀稈は、さらに後方へと搬送されて、脱穀装置9のフィードチェン15へと引継ぎ搬送され、穀稈はフィードチェン15で後方へ搬送されながら脱穀装置9にて脱穀選別される構成である。
【0022】
このように脱穀選別された穀粒は、一番揚穀筒27からグレンタンク16内へと搬送されて一時貯留され、このグレンタンク16内に貯留される穀粒量が満杯になると、操作部13の報知手段(ブザーや表示装置)でオペレータに報知される構成である。その後、刈取作業を中断して、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出する作業を開始する。コンバインを任意の位置(トラック近傍位置)へと移動させ、穀粒排出オーガ21をオーガ受け28から離脱させて穀粒排出口21aをトラックの荷台等の位置へ移動させる。そして、操作部13に設けている穀粒排出レバー29を入り状態として、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出し、グレンタンク16内の穀粒排出が終了すると、穀粒排出オーガ21は再びオーガ受け28へと収納されていく構成である。
【0023】
前記脱穀装置9について、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は脱穀装置9の側面図、図4は脱穀装置9の平面図、図5は図4に示すA−A断面図である。
【0024】
脱穀装置9内には、扱網30を有する扱胴31を扱胴軸32で軸架した扱室33と、該扱室33の一側には、扱室33の後部からの処理物を受け入れて処理する排塵処理網34を有する排塵処理胴35を排塵処理胴軸36で軸架した排塵処理室37が設けられている。そして、扱室33と排塵処理室37の下方には揺動選別棚38を設けている。
【0025】
また、排塵処理胴35の前方には、二番処理胴39と二番処理胴受樋40(本実施例では網であるが、格子状のものでもよい。)からなる二番処理室41が構成されている。二番処理胴39は、本実施例では扱胴31の一側(グレンタンク16側)であって、排塵処理胴35の前方にこの排塵処理胴35と一体的に構成されている。この二番処理胴39は基本的には二番物を処理するものである。この二番処理胴39は二番処理胴軸42にて支持されている構成であるので、前記排塵処理胴35と二番処理胴39とは一体的に排塵処理胴軸36と二番処理胴軸42とで支持されている構成である。
【0026】
さらに、図5の断面図に示すように、扱網30から漏れた被処理物は二番処理室41内に取り込まれる構成であるので、前記二番処理胴39は二番物の他に、扱室33内から入り込んできた被処理物も一緒に処理する構成となっている。前記扱網30と二番処理胴受樋40と排塵処理網34は、それぞれ扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35の下方に設けられている。
【0027】
前記扱室33と二番処理室41と排塵処理室37の下方には、落下してくる被選別物を受けて選別する揺動選別棚38が設置されていて、該揺動選別棚38の下方には、選別風送り方向始端側に唐箕43を設け、該唐箕43から送風される選別風の送り方向下手側には、風路44と風路45が設けられていて、この風路44と風路45の下手側に一番ラセン46を設け、該一番ラセン46の選別風送り方向下手側には二番ラセン47を設けている。この二番ラセン47にて収集された二番物を前記二番処理室41へ揚穀するための二番揚穀筒48が設けられている。
【0028】
前記揺動選別棚38の構成について説明する。揺動選別棚38は、選別送り方向の始端側から順番に、落下した脱穀物を後方に移送する移送棚49,脱穀物を選別するグレンシーブ38a(本実施例ではクリンプ網),二番物を選別するチャフシーブ38b,排塵物をほぐしてササリ粒を回収すると共に排塵物を機外に移送して放出するストローラック38cとから構成されている。該ストローラック38cの下方は、二番物を二番ラセン47内へ案内する二番棚先47aで構成されていて、この二番棚先47aの終端部近傍まで前記排塵処理胴35が延出している構成である。横断流ファン50aは、通常シロッコファンと呼ばれるもので、選別室50内の軽い塵埃を機外に排出するためのものである。そして、横断流ファン50aは、扱胴31に対して排塵処理胴35の反対側に設けられている構成である。前記グレンシーブ38aは略一番ラセン46の上方に位置するものであり、チャフシーブ38bは略二番ラセン47の上方に位置するものである。
【0029】
前記刈取装置3から搬送されてきた穀稈は、脱穀装置9のフィードチェン15の始端部に引き継がれると共に、該フィードチェン15に引き継がれた穀稈は、後方に搬送されながら、扱胴31と扱網30により脱穀される。脱穀された脱穀物の一部は揺動選別棚38上に落下して、該揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの風選作用により選別され、一番ラセン46内へと取り込まれていき、該一番ラセン46に取り込まれた穀粒は、グレンタンク16内に一時貯溜される構成である。脱穀後の排稈はフィードチェン15の終端部から、排稈チェン18の始端部に引き継がれて搬送されていき、その後、カッター19に送られて切断され下方の圃場上に放出されていく構成となっている。
【0030】
扱室31の残りの脱穀物は、後方へと搬送されていくが、その途中において一部の脱穀物は二番処理室41内に取り込まれていく。該二番処理室41内に取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向上手側に搬送されながら、二番処理胴39と二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀(特に、枝梗粒が処理される)されて、下方の揺動選別棚38上に落下していく。扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35は、共に選別風送り方向上手側から下手側を見た状況(脱穀装置9の正面視)において、時計回りで回転する構成である。従って、二番処理胴39の処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着している。本実施例の処理歯39aは連続ラセンで構成されているが、非連続ラセンであってもよい。
【0031】
即ち、該処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0032】
前記排塵処理胴35の始端部の排塵処理歯35aは、扱室33の後部からの脱穀物を選別風送り方向の下手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例では、該排塵処理歯35aは、排塵処理胴35の外周面に巻回いされているラセン形状となっている。
【0033】
本実施例では、排塵処理網34の目合いが荒い網で構成されているので、一部の短い藁屑は揺動選別棚38上に落下し、落下しなかった長い藁屑は排塵処理室37の終端部まで搬送されて、排塵処理胴35の終端部の羽根35bにてストローラック38c上に強制的に排出される。そして、このように被処理物が排塵処理室37内にて搬送される間に、排塵処理胴35とこの排塵処理胴35の設けられている処理歯35cと排塵処理網34との相互作用で、さらに脱穀されるとともに、脱穀物はほぐされて中に混在している穀粒(いわゆるササリ粒)が取り出されて下方の揺動選別棚38上に落下し、さらに二番ラセン47内へと回収されていく構成である。
【0034】
前述のように、扱室33内の脱穀物で、揺動選別棚38上に落下せず、二番処理室41内にも取り込まれなかった残りの脱穀物は、扱室33の終端部まで搬送される。この扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物は、排塵処理室37内に取り込まれ、取り込まれた脱穀物は選別風送り方向下手側に搬送されていく。
【0035】
また、扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物のうち、排塵処理室37内に取り込まれなかった脱穀物は、下方の揺動選別棚38上に落下していく構成である。
扱室33内の終端部から排塵処理室37内に脱穀物を送る際において、脱穀物が詰まらないように、扱室33から排塵処理室37への引継ぎ部分において、排塵処理胴35の外周にラセン形状の排塵処理歯35aを設けられているので、排塵処理歯35aの送り作用で引継ぎ部に脱穀物が詰まらないように構成されている。
【0036】
このような、揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風の作用にもかかわらず、一番ラセン46内に取り込まれなかった残りの穀粒は、他の排塵物と共にさらに後方に送られ、二番ラセン47内へと取り込まれていく。該二番ラセン47内に取り込まれた二番物は、二番揚穀筒48にて前記二番処理室41の選別風送り方向下手側に還元されて、扱室33からの脱穀物と合流し、その後、選別風送り方向の上手側に搬送されながら、二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀処理されながら搬送され、終端部の羽根39bにより下方の揺動選別棚38上に強制的に落下していく構成である。
【0037】
前記扱胴31の後方にはササリ落し胴51を設ける構成とする。ササリ落し胴51においては、扱歯31aと同じような形状をしたササリ落し歯51bを設ける構成とする。そして、このササリ落し胴51部分においては、フィードチェン15をササリ落し胴51の軸芯51aと略平行状態となるように構成する。これにより、フィードチェン15で搬送される排藁に対してササリ落し歯51bが効率良く作用するので、ササリ粒の回収率が向上するようになる。
【0038】
また、前記ササリ落し胴51の軸芯51aは、扱胴軸32から動力伝達するように構成しているので、伝動系が簡素になる。
58は切刃59を複数個設けている切刃回転軸であり、この切刃回転軸58は扱胴軸32と略平行に設けられている構成である。そして、扱胴31の負荷が大きくなると前記切刃回転軸58を回転させて切刃59を扱室33から退避させて切刃59が作用しないようにする。扱胴31に負荷が作用すると、脱穀装置9からゴトゴトと異音が発生するので、作業者はこの音を目安にする。また、車速が速い状態であったり、濡れ扱ぎ状態であって、明らかに扱胴軸32や扱室33内に負荷が作用することが予想される場合には、切刃59に負荷が作用しないようにする。また、扱胴31の負荷は扱胴軸32のトルクを測定することで得られるので、モーター等で自動的に切刃回転軸58を回転させるようにしてもよい。これにより、切刃59の寿命が長くなって切刃59の交換頻度も少なくなる。
【0039】
また、前述の構成では切刃回転軸58を回転させて切刃59を扱室33から退避させて切刃59が作用しないようにする構成であったが、切刃回転軸58の固定状態を解除して切刃回転軸58を回転可能な状態、即ち、切刃回転軸58をフリー状態となるようする。この実施例の詳細については後述する。
【0040】
また、図5に示されているように、前記切刃回転軸58は二番処理胴39の上方に設ける構成としているので、この二番処理胴39上方の空間部を有効的に活用可能となり、脱穀装置9の全体形状が大きくなるのを防止できるようになる。
【0041】
図6は、前記切刃回転軸58に対する切刃59の取り付け位置を表したものである。即ち、B列には切刃59を2本配置し、C列には切刃59を3本配置し、D列には切刃59を4本配置するように構成している。もちろん、大型の脱穀装置の場合であって、扱室33の長さが長くなる場合には、切刃59の本数は多くなる。また、本実施例では、B列,C列,D列と3列構成であるが、切刃の大きさのもよるが4列〜5列構成してもよい。そして、前述したように、脱穀装置9から異音が発生したり、明らかに扱室33内で負荷の増大が予想される場合においては、切刃59の本数が少ないC列に変更したりする。
【0042】
図4及び図7のレバー60は、切刃回転軸58に設けられており、レバー60を回すと切刃回転軸58が回転する構成である。図7に示すレバー60の実線の位置は、切刃のC列(3本)が扱室33に作用している状態である。そして、扱胴軸32のトルクに余裕があればレバー60を回して切刃のD列(4本)を扱室33内に作用させるようにする。一方、扱胴軸32のトルクに余裕がない状態、即ち、扱胴軸32にトルクが作用している状態においては、レバー60を回して切刃のB列(2本)を扱室33内に作用させるようにする。
【0043】
このように、扱室33内の負荷状況によって、切刃59を作用させる本数を容易に変えることができるようになる。
前記レバー60をコンバインに設ける場合においては、作業者が操作部13から操作可能な範囲内に設けることで、操作性が向上するようになる。
【0044】
また、前記切刃回転軸58をフリー状態とするためには、図4に示す爪クラッチ61の接続を解除するようにする。例えば、藁屑発生が多い条件においては、切刃回転軸58をフリー状態にする。これにより、条件適応性がより向上するようになる。そして、切刃回転軸58をフリー状態にすると、図5に示すように切刃回転軸58は扱胴31の回転の影響を受けてE方向に回転するようになるが、切刃59は扱室33内の被処理物に対してほとんど影響を与えない。
【0045】
次ぎに、図8について説明する。
62は二番処理胴39を駆動するギヤボックスであるが、このギヤボックス62から切刃回転軸58を積極的に回転させるようにする。この切刃回転軸58の回転方向は、図5に示すように扱胴31と同じ回転方向ではあるが、扱歯31aと切刃59の作用が互いに衝突する方向に作用させるようにする。即ち、図5に示すように、扱胴31はF方向に回転しており、これに対して切刃回転軸58はG方向に回転させるように構成する。これにより、切刃59の切断作用がより向上するようになる。また、二番処理胴39を駆動させるギヤボックス62から駆動するように構成しているので、伝動系が簡素になって廉価に構成できるようになる。
【0046】
また、前記切刃59の周速は、扱歯31aの周速よりも遅くなるように構成する。これにより、切刃59に大きな負荷が作用するのを防止できるようになる。
刈刃回転軸58を積極的に回転させる場合においては、図9に示すように、切刃59をスパイラル仮想線上に位置するように配置する。これにより、複数の切刃59は、同時に作用せず一個ずつ作用するので、急激な負荷変動や振動を防止できるようになる。
【0047】
図8に示す63は、ベルト式無段変速装置であるが、このベルト式無段変速装置63で変速した動力で、切刃回転軸58を積極的に回転させるようにする。これにより、条件適応性がより向上するようになる。例えば、扱胴軸32のトルクが小さい場合には速く回転させて、切断性能を向上させるようにする。また、扱胴軸32のトルクが大きい場合には、遅く回転させて切断性能よりも負荷の増大を防止するようにする。
【0048】
図10に示すように、本実施例のコンバインは走行伝動装置17を介して走行装置1を無段変速するための油圧式無段変速装置64を設ける構成としているが、この油圧式無段変速装置64で無段変速された動力を利用して切刃回転軸58を回転させるようにする。具体的には、エンジン65の一定回転動力が、プーリ65a,ベルト65b,プーリ65cを介して油圧式無段変速装置64の可変式油圧ポンプ64aへと入力され、この可変式油圧ポンプ64aで調整された油量によって定量式油圧ポンプ64bに接続された軸65cが無段に変速される。そして、軸65cの回転数が、プーリ66,ベルト67,プーリ68及び動力変換ギヤボックス69を介して前記切刃回転軸58を回転させる構成である。
【0049】
これにより、切刃回転軸58は車速の増減に応じて増減速するようになる。この場合においては、車速が速くなって多量に穀稈が投入される状況になると、切刃回転軸58も速く回転させて切断性能を向上させようとする考え方である。また、車速が遅くなって投入される穀稈量が少ない状況になると、切刃回転軸58を遅く回転させて藁屑発生を少なくさせるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平面図
【図5】脱穀装置の一部の断面図
【図6】切刃回転軸の正面及び展開図
【図7】正面図
【図8】脱穀装置の一部の平面図
【図9】切刃回転軸の展開図
【図10】脱穀装置の平面図
【符号の説明】
【0051】
9 脱穀装置
15 フィードチェン
31 扱胴
33 扱室
38 揺動選別棚
43 唐箕
46 一番ラセン
47 二番ラセン
58 切刃回転軸
59 切刃
60 レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(33)内に扱胴(31)を軸架して設け、前記扱室(33)の下方に揺動選別棚(38)を設け、該揺動選別棚(38)の下方には選別風送り方向上手側から唐箕(43)、一番ラセン(46)、二番ラセン(47)を設け、フィードチェン(15)で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置(9)において、前記扱胴(31)と略平行状態であって複数の切刃(59)を有する切刃回転軸(58)を設け、該切刃回転軸(58)を固定状態と回転状態とに切り換え可能に構成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
扱室(33)内に扱胴(31)を軸架して設け、前記扱室(33)の下方に揺動選別棚(38)を設け、該揺動選別棚(38)の下方には選別風送り方向上手側から唐箕(43)、一番ラセン(46)、二番ラセン(47)を設け、フィードチェン(15)で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置(9)において、前記扱胴(31)と略平行状態であって複数の切刃(59)を有する切刃回転軸(58)を設け、該切刃回転軸(58)を所定角度回転させることで、切刃(59)が作用する本数を変更可能に構成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
前記切刃回転軸(58)を所定角度変更可能にするレバー(60)を設けたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−204237(P2006−204237A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23120(P2005−23120)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】