説明

脱穀装置

【課題】脱穀機における処理室内での、処理物の分離効率を高めること。
【解決手段】脱穀装置1は、扱胴を内在した扱室12と、扱室12からの処理物を受け入れる送塵口16、送塵口から受け入れた処理物を分離する処理胴17、及び分離された処理物の一部が漏下される漏下体60を有する処理室18と、を備えている。処理胴17は、送塵口16に臨む部位に処理物を処理して後流側に送るラセン52を有している。そして、ラセン52の直後の処理室18内に、処理胴17に対して直交する向きの抵抗体71を処理胴17の回転方向の一部分に向けて突設してある。処理胴によって分離処理された処理物の一部が抵抗体に引っ掛かって、処理室から漏下することが多くなる。したがって、脱穀装置の処理室内での、処理物の分離効率が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴を内在した扱室と、処理胴を内在して扱室からの処理物を受け入れる処理室とを備えた脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀装置は、扱胴を内在した扱室と、処理胴を内在して扱室で処理できなかった穂切れ等の処理物を送塵口から受け入れる処理室と、を備えている(特許文献1)。そして、脱穀装置は、処理胴の送塵口に臨む部位に設けられたラセンの送り作用により、扱室から送塵口を介して順次処理室に送られてくる処理物を処理室の送塵口部位から速やかに後方に移送するようになっている。
【0003】
処理胴は、処理室内で回転して、処理物を1番物(例えば、穀粒)と2番物(穀粒以外のもの)とに分離するようになっている。処理室には、1番物の漏下を許容する網状の漏下体が設けられている。1番物は、漏下体から漏下して、2番物から分離される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−49935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の脱穀装置は、処理室内の処理物をラセンにより勢いよく後方へ送るようになっている。このため、処理物の処理が不充分になり、処理物中の穀粒が、漏下体から落下することなく漏下体上を素通りして処理室後方の排塵口から排出されて3番飛散となる問題があった。
【0006】
このため、従来の脱穀装置は、処理室における処理物の分離効率が悪かった。
【0007】
本発明は、処理室内での、処理物の分離効率を高めた脱穀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、
扱胴を内在した扱室(12)と、
前記扱室(12)からの処理物を受け入れる送塵口(16)、前記送塵口(16)から受け入れた処理物を分離する処理胴(17)、及び分離された処理物の一部が漏下される漏下体(60)を有する処理室(18)と、を備え、
前記処理胴(17)は、前記送塵口(16)に臨む部位に処理物を処理して後方に送るラセン(52)を有した脱穀装置(10)において、
前記ラセン(52)の直後の前記処理室(18)内に、前記処理胴(17)に対して直交する向きの抵抗体(71,171)を前記処理胴(17)の回転方向の一部分に向けて突設した、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記ラセン(52)の直後に設けられた前記抵抗体(71,171)より後方側の処理室(18)内に、複数の前記抵抗体(71,171,72,172)を、前記処理胴(17)を間にし、かつ前記後方に間隔をおいて交互に突設した、ことにある。
【0010】
上記括弧内の符号は、図面を参照するために付したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、ラセン直後の抵抗体により、送塵口より後方の比較的早い段階で、ラセンによる送り作用を弱めることができて、処理室内で処理物を充分に処理することができる。したがって、請求項1に係る発明は、処理室内での処理物の分離効率を高めことができる。また、3番飛散を防止することもできる。
【0012】
請求項2に係る発明は、抵抗体を交互に設けて、処理物の通路を確保したので、抵抗体を処理室の処理胴回転方向全周に設けた場合と比較して、処理物が後方へ移送されずに詰まるようなことがない。したがって、請求項2に係る発明は、処理室内での処理物の分離処理を円滑に行うことができる。また、処理物が抵抗体に引っ掛かる率が高くなり、処理物の分離効率を高めることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である脱穀装置の断側面図である。図2は、図1における扱室と処理室との平面図である。
【0015】
脱穀装置10は、前側板14と後側板15、及び下方側を前後の受網11で囲まれた扱室12を有している。扱室12には、扱胴13が装置の前後方向を向いて回転自在に支持されている。扱室12の前部には穀稈供給口51が形成されている。穀稈供給口51に連通して扱室12の前面には不図示の扱口が形成されている。この扱口に沿ってフィードチェン25が配設されている。扱室12の後部には、穀稈排出口29が形成されている。穀稈排出口29の後方には、排ワラ搬送装置30が配設されている。排ワラ搬送装置30の終端側の下方には、排ワラを切断処理するカッタ装置35が取り付けられている。
【0016】
扱口側と反対側の扱室12の後部には、送塵口16が形成されている。送塵口16は、扱室12の側方において、扱室12と並設された処理室18に連通している。そして、扱胴13は、送塵口16が形成された位置よりも後方にまで延設されている。また、処理室18内には、前後方向を向いて処理胴17が回転自在に支持されている。処理室18には、網状の漏下体59,60が設けられている。処理室18と処理胴17の詳細な構成は、後述する。
【0017】
受網11の下方には、扱胴13の軸芯方向に沿った揺動選別体20が配設されている。揺動選別体20は、前後方向に揺動自在に脱穀装置10の本体19に支持されている。揺動選別体20は、主に、受網11の下方に架設された揺動流板21及びスイングシーブ22と、スイングシーブ22の下方で1番樋36の上方に臨ませて架設されたグレンシーブ23と、グレンシーブ23の後端側に連設されたストローラック24とで構成されている。
【0018】
また、揺動選別体20の前部下方には、唐箕ファン31が配設されている。唐箕ファン31の後方には、横断流ファン32が配設されている。脱穀装置の後部には、排塵ファン33が配設されている。これら唐箕ファン31、横断流ファン32、及び排塵ファン33によって、扱室12の下方から排塵選別室34に亘る選別風路が形成されている。
【0019】
さらに、揺動選別体20の下方には、1番ラセン37が収容された1番樋36が設けられている。1番樋36の後方で、ストローラック24の下方には、2番流板38が傾斜配置されている。この2番流板38の傾斜下端部に、2番ラセン39が収容された2番樋40が設けられている。1番樋36に収容された穀粒は、揚穀筒42を介して揚上移送され穀粒タンク43に一時的に貯留されるようになっている。
【0020】
2番樋40に収容された2番ラセン39の搬送終端側には、2番物還元筒44が配設されている。2番物還元筒44内には、下端部を伝動ケース45に支持され上端部を軸承された不図示の縦搬送ラセンが収容されている。縦搬送ラセンの上端部には、縦搬送された2番物を跳ね出す跳ね出し板46が形成されている。また、2番物還元筒44の上端部には、跳ね出し板46を収容しかつ揺動選別体20の上方に向けて開口する排出口47が形成されている。そして、跳ね出し板46により跳ね出された2番物は、排出口47を通って揺動選別体20上に還元されるようになっている。
【0021】
以上の構成において、本脱穀装置10は、扱室12の前面に形成された不図示の扱口に沿ったフィードチェン25により穀稈を搬送して、扱胴13によって脱穀処理する。この処理によって得られた処理物は、受網11を介して排塵選別室34に落下する。また、本脱穀装置10は、扱胴13で処理することができず、扱室12側から処理室18に送った穂切れ等の処理物を処理胴17によって脱穀処理する。この処理によって得られた処理物は、漏下体59,60を介して排塵選別室34に落下する。
【0022】
揺動選別体20は、扱室12及び処理室18から排塵選別室34に落下した処理物を、揺動して順次後方に送り、スイングシーブ22、グレンシーブ23、ストローラック24によって濾過する。そして、唐箕ファン31及び横断流ファン32が、選別風によって、処理物を1番物と2番物とに風選する。風選された1番物は1番樋36に収容される。また、2番物は2番樋40に収容される。
【0023】
そして、1番ラセン37は、1番樋36に収容された1番物を1番樋36の端部に搬送して、揚穀筒42に受け継がせ、揚穀筒42によって穀粒タンク43に排出する。2番ラセン39は、2番樋40に収容された2番物を2番樋40の端部に搬送して、2番物還元筒44に受け継がせ、還元筒44内の還元ラセンを介して揺動選別体20に還元する。このような脱穀処理時に、脱穀装置10の本体19内で発生する藁屑等の塵芥は、上記選別風によって誘導されて、排塵ファン33に吸引されて排塵口から装置外に排出される。
【0024】
次に、処理室18を説明する。
【0025】
図2に示すように、扱室12の後方には、扱室12に対して左右方向にオフセットして処理室18が設けられている。扱室12と処理室18は、扱室12の後方部分と処理室118の前方部分とにおいて、送塵口16によって連通している。
【0026】
処理室18には、処理胴17が回転自在に軸支されて内装されている。
【0027】
処理胴17は、扱胴13の後方側に扱胴13に対して左右方向にオフセット配置されている。処理胴17は、ラセン52と、処理環53とで構成されている。ラセン52は、円筒状の軸54にラセン状の羽根55を複数枚設けて形成されている。処理環53は、軸54にU字状の処理歯56、及び山形状の処理歯57が設けられて形成されている。
【0028】
図2乃至図5に示すように、処理室18は、処理胴17の外側を覆うカバー体58と、カバー体58に設けられて処理胴17の外方側部の約下半分を形成する外方漏下体59と、処理胴17の内方側部を形成する内方漏下体60とで構成されている。なお、カバー体58は、脱穀装置10の本体19の一部分である。処理室18の後方には、脱穀されて残った処理物が排塵選別室34に排出される排塵口61(図2)が形成されている。また、ラセン52(図3)に対向する処理室18の一部分に、扱室12から移送された処理物をラセン52とともに、後方へ送る移動体48が設けられている。
【0029】
外方漏下体59と内方漏下体60は、揺動選別体20上への処理物の漏下を許容する網状の部材であり、処理胴17の外周に沿って断面円弧状に形成されている。外方漏下体59の前後方向の長さは、内方漏下体60の前後方向の長さより短く設定されている(図2)。内方漏下体60の上部は、本体19に取付け部材64によって取り付けられている。外方漏下体59と内方漏下体60との下部は、本体19の一部、或いは固定の部品等の固定部材62に取付け部材65によって取り付けられている。
【0030】
ラセン52の後方直後で、かつ外方漏下体59の前方の部分に、図5に示すような弓の形状をした平板からなる外方抵抗体71が、処理胴17に対して直交する向きに処理胴17の回転方向の一部分に対向させて突設されている。さらに、ラセン52の直後に設けられた抵抗体71より後方の処理室内にも、図2に示すように、複数の抵抗体72,71が、処理胴17を間にし、かつ後方に間隔をおいて交互に突設されている。
【0031】
符号72で示す抵抗体は、内方漏下体60に位置する内方抵抗体であり、図5に示すように弓の形状をした平板である。最も、後方に位置する外方抵抗体71と内方抵抗体72は、外方漏下体59と内方漏下体60の後端近傍に突設してある。なお、外方、内方抵抗体71,72は、回転する処理胴17の処理歯56,57と干渉しない位置に設けられているのは勿論である。
【0032】
このように、処理胴17内に外方、内方抵抗体71,72を突設すると、扱室12で処理できなかった穂切れ等の処理物が、処理胴17によって1番物(穀粒)と2番物(穀粒以外の藁、屑等)に分離されて、外方、内方抵抗体71,72に引っ掛かりながら後方へ移送される。このため、1番物と2番物とが外方漏下体59と内方漏下体60との上に留まる時間が長くなる。その分、1番物が外方漏下体59と内方漏下体60とから漏下する確率が高くなる。したがって、排塵口61から排出されて3番飛散となる1番物の量が少なくなる。
【0033】
よって、脱穀装置は、処理室内での、処理物の分離効率を高めることができる。
【0034】
以上の処理室18は、断面円形状に形成されているが、図6に示す処理室118のように、カバー体158と、外方漏下体159と、内方漏下体160とを屈曲させて、断面多角形状にしてもよい。この場合、外方抵抗体171、内方抵抗体172の外縁の形状は、外方漏下体159と、内方漏下体160との屈曲形状に合わせて形成されている。
【0035】
処理室118を、断面多角形にすると、外方、内方漏下体159,160と処理歯56,57との間に空間部63が生じる。このように、空間部63を設けると、空間部63において、1番物と2番物とが分散され易くなる。その分、1番物が外方漏下体159と内方漏下体160とから漏下する確率が高くなる。したがって、排塵口61から排出されて3番飛散となる1番物の量が少なくなる。
【0036】
よって、脱穀装置は、処理室内での、処理物の分離効率を高めることができる。
【0037】
なお、外方漏下体59,159は、必ずしも設ける必要がない。特に、小型の脱穀装置の場合には、設ける必要がない。
【0038】
また、外方、内方抵抗体71,72,171,172の各々の、処理環53の回転方向の外周に向いた長さ(突出長さ)は、処理環53の約半周(約180度)であるが、半周よりも短くてもよい。少なくとも、処理室18の底部に設けるのが好ましい。
【0039】
さらに、ラセン52に最も近い外方抵抗体71,171の突出長さ(高さ)は、他の外方抵抗体71,171や、内方抵抗体72,172の突出長さ(高さ)より、短く(低く)してもよい。また、処理室18の前方から後方に向かって、外方、内方抵抗体71,171,72,172の突出長さ(高さ)を順次長く(高く)してもよい。このようにすると、処理室18の前方や、処理室18の途中に処理物が詰まるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態である脱穀装置の断側面図である。
【図2】図1における扱室と処理室との平面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面である。
【図4】図2のB−B矢視断面である。
【図5】図2のC−C矢視断面である。
【図6】処理室の他の形態の図であり、図5に相当する図である。
【符号の説明】
【0041】
10 脱穀装置
12 扱室
13 扱胴
16 送塵口
17 処理胴
18 処理室
19 本体
20 揺動選別体
52 ラセン
53 処理環
55 羽根
56 処理歯
57 処理歯
58 カバー体
59 外方漏下体
60 内方漏下体
61 排塵口
71 外方抵抗体
72 内方抵抗体
158 カバー体
159 外方漏下体
160 内方漏下体
171 外方抵抗体
172 内方抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を内在した扱室と、
前記扱室からの処理物を受け入れる送塵口、前記送塵口から受け入れた処理物を分離する処理胴、及び分離された処理物の一部が漏下される漏下体を有する処理室と、を備え、
前記処理胴は、前記送塵口に臨む部位に処理物を処理して後方に送るラセンを有した脱穀装置において、
前記ラセンの直後の前記処理室内に、前記処理胴に対して直交する向きの抵抗体を前記処理胴の回転方向の一部分に向けて突設した、
ことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記ラセンの直後に設けられた前記抵抗体より後方側の処理室内に、複数の前記抵抗体を、前記処理胴を間にし、かつ前記後方に間隔をおいて交互に突設した、
請求項1に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−27935(P2009−27935A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192221(P2007−192221)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】