説明

脱穀装置

【課題】処理物を横断流ファンの前方側の揺動選別棚上に拡散して選別効率を向上させる。
【解決手段】扱室(15)の扱口(19)の右外側に沿わせて挟持杆(16)とフィードチェン(17)とからなる挟持搬送装置(18)を設け、揺動選別棚(3)の下方の位置に、選別方向の上手側から圧風唐箕(20)と一番移送螺旋(21)と二番移送螺旋(22)を順に配置し、揺動選別棚(3)の後端部の上方には横断流ファン(5)を横向きに軸架し、横断流ファン(5)の吸塵口(6)を下方に向けると共に排塵口(33)を機外に向けて設け、揺動選別棚(3)よりも上側であって脱穀装置(1)の左側の部位に、処理歯(40)を備えた処理胴(10)を設け、処理胴(10)の回転によって処理物を横断流ファン(5)の前方側の揺動選別棚(3)上に拡散する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の脱穀装置は、選別室の上部位置に揺動選別棚が設けられ、その下方に、選別方向の上手側から圧風唐箕、一番移送螺旋、二番移送螺旋を順番に軸架して構成されている。そして、揺動選別棚の終端部の上方には広幅の横断流ファンが、若干右寄りに位置して横軸に軸架された構成となっている。
【0003】
例えば、本件の出願前に公開され、本件出願人が特許文献1として提示した特開平11−155348号公開特許公報には、扱室、排塵処理室、揺動選別棚、横断流ファン等を装備した従来型の脱穀装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−155348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の脱穀装置は、上記した特許文献1に見られるように、横断流ファンを、揺動選別棚の後部に近い上方位置に横向きにして機体の右側寄り(左端を排塵処理室から離して)に配置して横軸に軸架した構成としている。
【0006】
したがって、従来の装置は、選別室側に排出された処理物の処理が不充分で、揺動選別棚上への拡散作用や、藁屑、及び塵埃等の排塵物を適確に機外へ排出する排塵作用(排塵能力)に課題があった。そのため、選別室の左側に排出された排塵物は、横断流ファンで吸塵されて機外へ排出される量が少なく、大部分の排塵物が二番移送螺旋側に落下して二番処理室に還元され、二番処理室の負荷を増大し、脱穀選別作用全体の効率を大幅に阻害する課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
請求項1記載の発明は、内部に扱胴(14)を軸架した扱室(15)の前側に穀稈供給口(13)を開口し、該穀稈供給口(13)から連続して開口させた扱口(19)の右外側に沿わせて挟持杆(16)とフィードチェン(17)とからなる挟持搬送装置(18)を設け、揺動選別棚(3)を備えた選別室(2)を扱室(15)の下方から後方にわたって設け、該揺動選別棚(3)の下方の位置に、選別方向の上手側から圧風唐箕(20)と一番移送螺旋(21)と二番移送螺旋(22)を順に配置し、前記揺動選別棚(3)の前部を扱室(15)の下方に臨ませて配置し、該揺動選別棚(3)の後端部の上方には横断流ファン(5)を横向きに軸架し、該横断流ファン(5)の吸塵口(6)を下方に向けると共に排塵口(33)を機外に向けて設け、前記圧風唐箕(20)からの選別風が一番移送螺旋(21)の上方を通り揺動選別棚(3)内を通過して横断流ファン(5)側に向かう構成とし、前記揺動選別棚(3)よりも上側であって脱穀装置(1)の左側の部位に、処理歯(40)を備えた処理胴(10)を設け、該処理胴(10)の回転によって処理物を横断流ファン(5)の前方側の揺動選別棚(3)上に拡散する構成としたことを特徴とする脱穀装置とした。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記処理胴(10)を脱穀装置(1)の左側の側板(9)に接近した部位に配置し、該処理胴(10)の回転によって処理物を横断流ファン(5)の前方側の揺動選別棚(3)上に向けて斜め前方側へ拡散する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置とした。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記処理胴(10)を脱穀装置(1)の左側の側板(9)の外側に設けた処理胴駆動ケース(43)に軸架したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置とした。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記処理胴(10)をニ番移送螺旋(22)に連動して回転する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2又は請求項3に記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によると、処理胴(10)の回転によって処理物を横断流ファン(5)の前方側の揺動選別棚(3)上に拡散し、風選作用と揺動選別作用とを与え、軽い藁屑や塵埃を横断流ファン(5)の吸塵作用によって機外に排塵することができる。即ち、処理胴(10)を脱穀装置(1)の左側の部位に配置しながら、拡散機能が発揮でき、選別効率を向上させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、処理胴(10)を脱穀装置(1)の左側の側板(9)に接近させながら、充分な拡散機能が発揮でき、選別効率を向上させることができる。これにより、二番還元物を減少させることができると共に、機外へ飛散する穀粒量を少なくしてロスを低減することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加え、拡散処理胴(10)を、脱穀装置の左の側板(9)の外に設けた強固な拡散処理胴駆動ケース(43)に支持し、処理物の停滞やひっかかり等の不具合を解消することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によると、上記請求項1または請求項2または請求項3に記載の発明の効果を奏するうえで、処理胴(10)をニ番移送螺旋(22)に連動して回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】脱穀装置の正断面図
【図2】脱穀装置の平断面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の正断面図
【図5】脱穀装置の正断面図
【図6】一部を断面した側面図
【図7】脱穀装置の背断面図
【図8】片側吸引式ファンの側面図
【図9】拡散処理胴の平面図
【図10】拡散処理胴の側面図
【図11】脱穀装置の平断面図
【図12】一部を断面して示す側面図
【図13】脱穀装置の伝動機構図
【図14】脱穀装置の背断面図
【図15】横断流ファンと片側吸引式ファンの背面図
【図16】脱穀装置から横断流ファンを取出した背面図
【図17】脱穀装置から横断流ファンを取出した右側面図
【図18】主変速操作レバーの側面図
【図19】脱穀装置の正断面図
【図20】脱穀装置の一部破断した左側面図
【図21】脱穀装置の右側面図
【図22】脱穀装置の正断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、本件出願の明細書中に記載した左側、及び右側の表現は、脱穀装置1の穀稈供給口13側(図1や図4に示す正面視)から見た状態を基準にして左右を判断し、記載している。
【0017】
つぎに、脱穀装置1は、図3、及び図4に示すように、一方に穀稈供給口13を開口して内部に扱胴14を軸架した扱室15の下方に、選別室2を設け、前記穀稈供給口13から連続して開口させた扱口19には、外側に沿わせて挟持杆16とフィードチェン17とからなる挟持搬送装置18を設けて構成している。そして、選別室2は、図3に示すように、上記扱室15の下方から後方に延長し、後述する排塵処理室8の終端部から脱穀装置1の排塵側にまで延長した構成としている。そして、選別室2は、図3に示すように、上側に揺動選別棚3を設け、その下方位置に、選別方向の上手側から圧風唐箕20、一番移送螺旋21、二番移送螺旋22の順に配置してそれぞれ横軸に軸架して伝動可能に構成している。
【0018】
そして、前記揺動選別棚3は、図2、及び図3に示すように、始端部分を前記扱室15の下方に臨ませて位置させ、この部位に移送棚3aを設け、続いてチャフシーブ3bを配置しており、終端部分にはストローラック3cを配置して設け、揺動機構23に接続して前後方向に揺動しながら選別する構成としている。そして、選別風路24は、図3から解るように、選別室2内に形成するが、基部を前記圧風唐箕20に連通させ、一番移送螺旋21や二番移送螺旋22の上方を通し、前記揺動選別棚3内を通過させて後部の横断流ファン5側に向けて構成している。
【0019】
したがって、選別風は、圧風唐箕20で起風されて選別風路24に吹き出されると、一番選別、二番選別を行いながら選別棚3のチャフシーブ3bの間を吹き抜けて後部で排塵選別を行い、横断流ファン5側とストローラック3c上に達して後部の排塵口25から機外に排塵するのである。26は寄せ板であって、移送棚3a上に設けている。
【0020】
つぎに、二番処理室28と排塵処理室8とは、図3、乃至図6に示すように、二番処理室28を扱室15の左側に沿わせて配置し、更に、排塵処理室8を、始端部を扱室15後部に連通させて後方に延長して、選別室2の上方左側に位置させて配置した構成としている。そして、二番処理室28は、二番処理胴29を内装して軸架し、前記二番移送螺旋22の終端部に連通した二番揚穀装置30によって二番物が揚穀されて還元され、二番処理作用を行う構成としている。そして、排塵処理室8は、図3、及び図6に示すように、排塵処理胴31を内装軸架して設け、始端部を前記扱室15の終端部左側に開口連通させて扱室15から受け継いだ未処理の排塵物を処理しながら後方へ搬送して選別室2に漏下し、終端部には排塵口32を開口して排塵する構成としている。
【0021】
そして、上記排塵処理胴31は、図6に示すように、前部処理胴31aと後部処理胴31bとの2つに分割されて一体の如く軸架されており、前部処理胴31aは、前側の二番処理胴29から入力され、後部処理胴31bは、これとは別に後部側から入力される構成としている。
【0022】
なお、伝動機構については、まとめて後述する。
そして、横断流ファン5は、図1、及び図2に示すように、揺動選別棚3の終端部分でストローラック3cの上方に横向きに軸架して設け、吸塵口6を下方に向け、排塵口33を機外に向けて構成している。そして、片側吸引式ファン4は、図面から解るように、上記横断流ファン5の左横側で排塵処理室8に近い側に配置して、横断流ファン5との間の仕切壁34を設けて区画し、別軸に軸受けさせた構成としている。
【0023】
この場合、片側吸引式ファン4は、後述するケーシング38に取り付けた左側の支持板35と右側の上記仕切壁34との間にあって、両者によって軸受支持され、左側から伝動される構成としており、一方、前記横断流ファン5は、左側の端部を前記仕切壁34に軸受支持し、右側が右機体側板(側板)9に軸受けさせた構成とし、両ファン4,5をそれぞれ別軸に支持している。
【0024】
そして、支持板35は、図1、及び図2に示すように、中心の軸受部位を右側(片側吸引式ファン4の中心側)に凹状にオフセットさせた形状として伝動スプロケット36を右に寄せて、後述する拡散処理胴10をできるだけ長く形成するために工夫した構成としている。そして、片側吸引式ファン4は、図8に示すように、上記支持板35に吸塵口7を開口して排塵処理室8側に臨ませ、排塵口37を後部で機外に向けて開口した構成としている。
【0025】
そして、上記片側吸引式ファン4と前記横断流ファン5とは、図1、乃至図3、及び図5に示すように、両ファン4,5の外径を略同等に形成して、外周を覆うケーシング38、及び出口側(排塵口33、37)に設ける分離板39を共用する構成としている。
【0026】
つぎに、拡散処理胴10は、図面に示すように、前記片側吸引式ファン4より低い位置で揺動選別棚3の上面に接近させて位置させ、しかも、左側の機体側板9側に寄せて、その側板9の外に設けた拡散処理胴駆動ケース(処理胴駆動ケース)43に片持ち状態に軸架して構成している。そして、実施例の場合、拡散処理胴10は、図1に示す正面視や図12の側面視において、前記片側吸引式ファン4と左側の機体側板9との間に位置し、更に、前記排塵処理室8の下方位置で処理物の落下位置にある構成としている。
【0027】
このように、拡散処理胴10は、左の機体側板9の外に設けた強固な拡散処理胴駆動ケース43(図2、図6、図9、及び図10参照)に片持状に支持したから、右側が開放されて処理物の停滞やひっかかり等の不具合が解消され、片側吸引式ファン4への伝動を取ることもできる構成となっている。
【0028】
そして、拡散処理胴10は、図9、及び図10に示すように、回転方向にリード角を持たせた複数のツース歯(処理歯)40を設け、揺動選別棚3上の左側部分に盛り上がっている一定の層厚以上に高い部分の排塵物や、排塵処理室8から落下してくる排塵物を横断流ファン5の前方側の棚上に、斜め前方側へ拡散できる構成としている。そして、拡散処理胴10は、図1で解るように、左側の一定範囲にツース歯40を設けない範囲11を形成して、その部分11を揺動選別棚3の側壁41に接近させて設け、側面視で側壁41とツース歯40とが左右にラップする状態に構成している。
【0029】
このように構成すると、拡散処理胴10は、左側の機体側板9に接近させながら、揺動選別棚3側との上下関係も接近できて全体の機体高さを低くし、充分な拡散機能が発揮できて選別効率を上げる事ができる。そして、拡散処理胴10は、稲の品種や熟度によっても異なるが、揺動選別棚3の左側に未処理物の堆積層が厚くなると、これらを、回転にともなってリード角を持つツース歯40によって斜め前方で、横断流ファン5の前方側の棚3上に拡散することができる。その結果、本案の拡散処理胴10は、従来の拡散処理胴のない脱穀装置に比較すると、二番還元量を大幅に減少するとともに、排塵物として機外へ飛散する穀粒量を少なくしてロスを低減することができる特徴がある。
【0030】
そして、拡散処理胴4は、図3に矢印で示すように、横断流ファン5と同方向で右側の機体側板9側からみて時計回りに回転している。
なお、拡散処理胴10は、図11に示すように、ツース歯40に代えて螺旋処理歯42を取り付けた構成にしても良い。この螺旋処理歯42は、揺動選別棚3上の処理物が一定層以上の高さに達すると、その高い部分に連続的に作用して確実に横断流ファン5の前方側の棚3上に向けて斜めに跳ね出しながら送ることができる特徴がある。
【0031】
更に、螺旋処理歯42は、連続する螺旋形状のために、穀粒を含む処理物への衝突回数が、不連続のツース歯40に比較すると少なくなり、損傷粒の発生を大幅に少なくできる特徴がある。
【0032】
つぎに、脱穀装置1の伝動機構について説明する。
まず、エンジン60は、図13に示すように、出力する回転動力を二手に分岐して、一方を静油圧式無段変速装置61を経由して走行ミッション装置62に入力し、他方を脱穀装置1に入力する構成としている。そして、脱穀装置1は、唐箕軸63に入力された動力を、扱胴14、及び二番処理胴29側と、揺動選別装置3の揺動機構23とフィードチェン17側と、更に、圧風唐箕20は勿論のこと、一番、二番の移送螺旋21,22側に分岐して伝動する構成としている。
【0033】
そして、排塵処理胴31は、図13に示すように、前部処理胴31aが二番処理胴29と一体に伝動される構成としている。そして、後部処理胴31bは、二番移送螺旋22を経由し、更に、変速プーリ65から第一伝動ケース66を経由して伝動される構成としている。そして、第二伝動ケース67は、前記第一伝動ケース66から伝動されて、拡散処理胴10を経由して片側吸引式ファン4まで伝動する構成としている。
【0034】
一方、横断流ファン5は、図13に示すように、二番移送螺旋22からカウンター軸69、変速プーリ70を経由して伝動される構成としている。
このように、横断流ファン5と、拡散処理胴10、及び片側吸引式ファン4とは、前者が右側の機体側板9側から入力して駆動され、後者が左側の機体側板9側から入力して駆動される伝動の配置構成としている。
【0035】
したがって、脱穀装置1の伝動機構は、機体の左側に設けた拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とを、左側から入力した動力で駆動し、機体の右側に寄せて軸架している横断流ファン5を、右側の機体側板9から入力して駆動するから、伝動機構が比較的簡潔となり、コスト的にも安く製作できる特徴がある。
【0036】
上記構成によって、片側吸引式ファン4は、横断流ファン5に影響を与えることなく、独立して変速ができるから、処理量に応じて変速が可能であって、通常、横断流ファン5より高速で回転しながら吸塵、排塵作用を行っている。
【0037】
既に説明したように、排塵処理室8においても、排塵処理胴31は、前部処理胴31aと後部処理胴31bとの伝動経路を前後から入力する別経路に構成したから、前部処理胴31aは、扱室15から受け継いだ排塵物の処理にあたり、穀粒の脱プや損傷を抑制しながら比較的低い回転速度で回り、枝梗付着粒等の単粒化を促進して藁屑を分離し、後部処理胴31bは、前部処理胴31aより高速回転にして藁屑等の細断化を促進することができる特徴がある。
【0038】
そして、後部処理胴31bと片側吸引式ファン4とは、図13の伝動機構図、及び図14に示すように、変速プーリ65より伝動下手側の第一伝動ケース66で動力を両側に分岐して処理胴駆動ベルト72とファン駆動ベルト73でそれぞれ伝動する構成を取っているから、両者をシンクロさせた状態で変速することが可能であり、双方への入力回転や回転方向の調整や設定等が容易になる利点がある。そして、上記した後部処理胴31bと片側吸引式ファン4とは、それぞれ駆動ベルト72,73を使用したから、両者の一方に過負荷状態や異物混入等で回転低下が発生しても、ベルト伝動の特性でスリップが起こり、他方側への悪影響、被害等を最低に止めることができる利点もある。
【0039】
つぎに、横断流ファン5と片側吸引式ファン4とを、脱穀装置1に対して着脱する構成について説明する。
まず、横断流ファン5と片側吸引式ファン4とは、図15に示すように、機体内部のケーシング38に摺動自由に支持している仕切壁34に、それぞれベヤリング75、75を介して軸受け支持した2つの支持軸76,77を設け、一方の短い支持軸76に片側吸引式ファン4を軸着し、他方の長い支持軸77に横断流ファン5を軸着して構成している。そして、短い支持軸76は、図16で解るように、ケーシング38側の支持板35(外側)に固定する軸受装置78と伝動スプロケット36とを着脱自由に軸着するカップリング部79を形成した構成としている。そして、長い支持軸77は、端部(外側)に軸受装置80を支持して設け、この軸受装置80に取付側板81を一体に支持して構成している。そして、該軸受装置80は、その外側に一対の噛合したカウンターギヤ82,83と、変速プーリ70とを一体に支持した構成としている。
【0040】
そして、脱穀装置1は、図17に示すように、後部の右側の機体側板9に、片側吸引式ファン4と横断流ファン5とを挿し込みができる程度の直径の挿入孔85を形成して、上記2つのファン4,5を挿入し、引き出しができる構成としている。この場合、片側吸引式ファン4と横断流ファン5とは、上記挿入孔85に挿入するとき、機体内部のケーシング38の内空に沿わせながら、脱穀装置1の右側の機体側板9から挿入し、支持軸76の端部(左端部)を支持板35に固着している軸受装置78に挿し通して支持し、支持軸77の端部に固着している取付側板81を右側の機体側板9の外側に重ね合わせてねじ締めして固着する構成としている。
【0041】
以上述べたように、横断流ファン5は、図17に示す駆動ベルト86を外し、続いて機体側板9からねじを緩めて取付側板81を外すだけの操作で外側に引き出し、清掃やメンテナンスができる。更に、実施例は、図15に示すように、取付側板81に一対のカウンターギヤ82,83や変速プーリ70を支持したまま取り外しが可能であって、伝動機構を分解する等の手間がかからず比較的簡単に着脱ができる特徴がある。
【0042】
そして、実施例の場合、片側吸引式ファン4は、これを支持する短い支持軸76の軸端にカップリング部79を形成することによって、伝動スプロケット36を着脱自在として、横断流ファン5側と一体に取り外しを可能にしたから、清掃やメンテナンスが横断流ファン5と一緒にできるものとなった。この場合も、片側吸引式ファン4の伝動機構の分解や取外しが、不必要であり、着脱時の手間がほとんどかからない利点がある。
【0043】
更に、実施例は、両ファン4,5を仕切る仕切壁34を一体に外すから、ケーシング38の内部空間を大きく開放することが可能となって、内側の隅々まで清掃が可能となり、メンテナンス性が大幅に向上した優れた特徴がある。
【0044】
つぎに、後部処理胴31bと拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とを伝動する一方の伝動系と、横断流ファン5を伝動する他方の伝動系について、車速(この場合「作業速度」と同一である。以下同じ)に追従させて変速制御する構成について説明する。これらの各装置は、コンバインの車速を高速側に変速して作業能率を上げると、当然のことながら脱穀処理量が増大するから、これに適確に対応して処理するためには、各装置の回転速度を増大させて処理能力を高める必要がある。
【0045】
そこで、図外のコンバインは、図18に示すように、主変速操作レバー90が設けられ、これの操作によって、既に説明した図13に示す伝動機構図の静油圧式無段変速装置61を変速操作して走行ミッション装置62を経由した回転動力がクローラに伝達されて車速が変速される構成としている。そして、上記主変速操作レバー90の変速操作量は、図面から解るように、接続して設けているポテンショメータ89によって検出され、図外のコントローラに入力する構成としている。
【0046】
そこで、後部処理胴31bと拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とを伝動する伝動系が、車速に追従して変速制御する構成について説明する。
まず、制御モータ91は、図19、及び図20に示すように、ピニオンギヤ92をラックギヤ93に噛合させて設け、連動アーム94を介して制御ロット95を押し引き操作して変速プーリ65のベルト伝動径を拡縮調節する構成としている。96はテンションプーリを示している。
【0047】
そして、二番移送螺旋22の左プーリ97は、図19、及び図20(図13参照)に示すように、上記変速プーリ65との間に巻回した伝動ベルト98を前記テンションプーリ96が常時張圧した状態で伝動する構成としている。
【0048】
以上の構成において、変速プーリ65は、回転径が拡大されると減速され、縮小されると増速されて、回転動力を、図13に示す第一伝動ケース66に入力して、一連の後部処理胴31bと拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とを変速できる構成となっている。この場合、前記制御モータ91は、前記した図示しないコントローラから出力される制御信号に基づいて、回転方向と回転範囲が制御されて、ピニオンギヤ92を駆動し、ラックギヤ93、連動アーム94、制御ロット95を介して変速プーリ65を操作することになる。
【0049】
このように、一つの伝動系で構成している後部処理胴31bと拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とは、主変速操作レバー90の変速操作によって変速される車速、すなわち、作業速度に追従して自動的に増・減速制御されて処理量の増減に対応しながら適確に処理ができる。したがって、各装置は、高速走行時には高速側に制御されて、処理物の停滞をなくして高能率で処理し、低速時にはそれに合った回転速度に減速されて適確に処理して、損傷粒の発生を未然に防止できるものとなった。
【0050】
なお、上記実施例は、後部処理胴31bと拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とは、一つの伝動系にあるから、変速率は略同等であって、平行的に変速する構成になっている。
【0051】
そして、上記後部処理胴31bと拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とは、最低速度を中間の速度(どんな場合でも必要な最低の処理能力を持つ回転速度)を下限に設定して、それより高速側でのみ変速制御をする構成にするのが望ましい。
【0052】
つぎに、横断流ファン5は、図21に示すように、制御モータ91が駆動するピニオンギヤ92をラックギヤ93に噛合させて、連動アーム94を介して制御ロット95を押し引き操作して、変速プーリ70の伝動径を拡縮調節する構成としている。そして、変速プーリ70は、図13で説明したように、カウンタ軸69のプーリ99から駆動ベルト86で伝動され、途中位置にテンションプーリ96が設けられている。
【0053】
このように、横断流ファン5は、図21(図13参照)に示すように、図示しないコントローラから出力される制御信号によって制御モータ91が制御されて車速に追従して変速制御されるものである。
【0054】
以上述べたように、横断流ファン5は、車速(作業速度)の変速に追従して変速制御することによって、増・減する処理量に対応じて処理能力を合わせながら作業ができる特徴がある。そして、横断流ファン5は、先に説明したように、拡散処理胴4が作業速度の変速に対応して変速されて処理物を横断流ファン5の前方の揺動選別棚3上に拡散したとき、これに対応することができて、適確な排塵処理作用が可能となった。
【0055】
このように、変速制御機構は、前記後部処理胴31bと拡散処理胴10と片側吸引式ファン4とを変速する機構は、脱穀装置1の左側の機体側板9に装置し、横断流ファン5を変速する機構は、右側の機体側板9に装置しているから、構成が比較的シンプルになって低コストで製作できると共に、メンテナンスも容易になる特徴がある。
【0056】
つぎに、揺動選別棚3上を流動する処理物や二番処理室28内を流動する二番処理物の量をセンサで検出し、その検出情報に基づいて片側吸引式ファン4や横断流ファン5を変速制御する実施例について説明する。
【0057】
まず、層厚センサ105は、図22(図3参照)に示すように、揺動選別棚3の上方において、棚3の左右両側部分を流動する処理物を別々に検出できるように、左層厚センサ105aと右層厚センサ105bとを垂下状態に設けて、処理物の層厚を接触式で検出して、図外のコントローラに入力する構成としている。
【0058】
この場合、左層厚センサ105aと右層厚センサ105bとは、図22(図3参照)に示すように、基部を扱室15の後部で下部に位置する後板106に取り付けて下方に延長し、先端部分の検出部位で、揺動選別棚3上を流動する左右両側の処理物が、一定以上の高さになったとき、その層厚を左右別々に検出できる構成としている。
【0059】
そして、コントローラは、上記左右の層厚センサ105a,105bから検出情報が入力されると、記憶保持している基準値等と比較演算しながら、左層厚センサ105aの検出情報に基づく制御信号を左側の前記制御モータ91(図20参照)に出力し、右層厚センサ105bの検出情報に基づいて出力される制御信号を右の制御モータ91(図21参照)に出力して制御する構成としている。
【0060】
このように、第1実施例は、図22と図1とを参照しながら作用を説明すると、図22に示す左層厚センサ105aが検出した情報に基づいてコントローラから出力される制御信号では、拡散処理胴10と片側吸引ファン4と後部処理胴31bとが変速制御される。そして、右側寄りの横断流ファン5は、図22に示す右側の右層厚センサ105bの検出情報に基づいて増・減速の制御が行われることになる。
【0061】
以上述べたように、第1実施例は、揺動選別棚3上の処理物が、二番還元量(この場合は二番処理室28から直接揺動選別棚3上の左側に落下する処理物の意味)の大小や、処理物中の水分含量、機体の傾斜などのために棚3上の処理物が、全面均一な層にならない場合が多く、左右の層厚に差が生じて処理物が偏った場合に対応して処理することができる。
【0062】
つぎに、第2実施例は、右層厚センサ105bの検出情報に基づいて横断流ファン5の変速制御が行われ、左層厚センサ105aの検出情報に基づく制御信号では、左右両側の制御モータ91が制御される構成にしている。
【0063】
このように、第2実施例では、横断流ファン5は、左右両方の層厚センサ105a,105bのどちらが検出しても、変速制御が行われる構成になっており、例えば、左層厚センサ105aのみが高い層厚を検出して左側の変速制御が行われると、拡散処理胴10が拡散した処理物が横断流ファン5の前方の揺動選別棚3上に拡散されるから、これらの排塵処理量が増大するのに対応するために横断流ファン5を変速制御する必要が生じるのである。
【0064】
したがって、横断流ファン5は、揺動選別棚3上に処理物が増加すると、右側、左側に関係なく、常に増速する必要がある。
つぎに、二番処理室28に二番検出センサ107を設けて室内の処理量の増・減を検出して変速制御を行う構成を説明する。
【0065】
まず、二番検出センサ107は、図4に示すように、二番処理室28の上部位置に設け、室内の二番物の量を検出してコントローラに検出情報を入力する構成としている。そして、図外のコントローラは、二番検出センサ107から検出情報が入力されると、記憶している基準値等と比較演算しながら制御モータ91に制御信号を出力する構成としている。この場合、コントローラは、左右両側に装置している2つの制御モータ91,91に制御信号を出力して片側吸引式ファン4と横断流ファン5との両方を変速制御する構成としている。
【0066】
このように、片側吸引式ファン4と横断流ファン5とは、二番処理室28内に二番物が増えてくると、変速制御されて回転速度が増速され、排塵処理能力を増大して二番処理室28に還元する二番物の量を減少させて脱穀装置1の内部に詰まりが発生する前に、未然に防止することができる特徴がある。
【0067】
以上、本件出願に係る発明のいろいろな実施態様を説明したが、第一の特徴は、横断流ファン5の左側に片側吸引式ファン4を併設した構成にあり、機体側部の排塵処理室8から漏下、及び排塵された排塵物中の軽い藁屑や塵埃を、片側吸引式ファン4によって吸塵して機外に排塵し、二番還元物を大幅に少なくし、脱穀選別効率を向上して二番処理の負荷を軽減できるものとした点にある。
【0068】
そして、第二の特徴は、排塵処理室8から排出された排塵物の軽いものは、上記説明の通り、上側の片側吸引式ファン4で吸引して機外に排塵するが、下方まで落下してくる穀粒の混入している重い排塵物は、拡散処理胴10の回転にともなってツース歯40によって右前方(横断流ファン5の吸引側前方の意味)の揺動選別棚3上に拡散し、揺動選別を受けながら横断流ファン5によって吸塵選別させることが可能になった。
【0069】
そして、第三の特徴は、片側吸引式ファン4と拡散処理胴10とは、横断流ファン5の伝動経路とは別の伝動経路によって伝動され、それぞれ近い側の機体側板9側から入力して伝動される構成にしたから、伝動機構を交差させる必要もなく、単純化できるものとなった。
【0070】
そして、片側吸引式ファン4と拡散処理胴10とを駆動する伝動経路と、他方の横断流ファン5を駆動する伝動経路とは、各々独立した別経路にしているから、それぞれの処理量に対応させて、処理速度を別々に変速できるものとした点にある。
【0071】
そして、第四の特徴は、2つのファン4,5の外径を略同等に形成したから、外周を覆うケーシング38や出口側に設ける分離板39を共用することができ、これらの剛性を大幅に向上して強度を確保できると共に、2器のファン4,5を設けるものでありながら部品点数を増加することなく製作できる点にある。
【符号の説明】
【0072】
1 脱穀装置
2 選別室
3 揺動選別棚
5 横断流ファン
6 吸塵口
9 機体側板(側板)
10 拡散処理胴(処理胴)
13 穀稈供給口
14 扱胴
15 扱室
16 挟持杆
17 フィードチェン
18 挟持搬送装置
19 扱口
20 圧風唐箕
21 一番移送螺旋
22 ニ番移送螺旋
24 選別風路
33 排塵口
40 ツース歯(処理歯)
43 拡散処理胴駆動ケース(処理胴駆動ケース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に扱胴(14)を軸架した扱室(15)の前側に穀稈供給口(13)を開口し、該穀稈供給口(13)から連続して開口させた扱口(19)の右外側に沿わせて挟持杆(16)とフィードチェン(17)とからなる挟持搬送装置(18)を設け、揺動選別棚(3)を備えた選別室(2)を扱室(15)の下方から後方にわたって設け、該揺動選別棚(3)の下方の位置に、選別方向の上手側から圧風唐箕(20)と一番移送螺旋(21)と二番移送螺旋(22)を順に配置し、前記揺動選別棚(3)の前部を扱室(15)の下方に臨ませて配置し、該揺動選別棚(3)の後端部の上方には横断流ファン(5)を横向きに軸架し、該横断流ファン(5)の吸塵口(6)を下方に向けると共に排塵口(33)を機外に向けて設け、前記圧風唐箕(20)からの選別風が一番移送螺旋(21)の上方を通り揺動選別棚(3)内を通過して横断流ファン(5)側に向かう構成とし、前記揺動選別棚(3)よりも上側であって脱穀装置(1)の左側の部位に、処理歯(40)を備えた処理胴(10)を設け、該処理胴(10)の回転によって処理物を横断流ファン(5)の前方側の揺動選別棚(3)上に拡散する構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記処理胴(10)を脱穀装置(1)の左側の側板(9)に接近した部位に配置し、該処理胴(10)の回転によって処理物を横断流ファン(5)の前方側の揺動選別棚(3)上に向けて斜め前方側へ拡散する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記処理胴(10)を脱穀装置(1)の左側の側板(9)の外側に設けた処理胴駆動ケース(43)に軸架したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記処理胴(10)をニ番移送螺旋(22)に連動して回転する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2又は請求項3に記載の脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−103894(P2011−103894A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17328(P2011−17328)
【出願日】平成23年1月29日(2011.1.29)
【分割の表示】特願2008−221806(P2008−221806)の分割
【原出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】