説明

脱臭体および脱臭装置

【課題】有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、吸着除去できる脱臭体を提供する。
【解決手段】物理吸着作用を有する物理吸着剤4と、コバルトを含み触媒作用を有する触媒酸化物5と、前記物理吸着剤4および前記触媒酸化物5とを担持する担体3とから構成され、前記触媒酸化物5でアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、前記物理吸着剤4で吸着除去するもので、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着剤4により吸着除去でき、特に有害なアルデヒド類を触媒酸化物5の触媒作用により常温でカルボン酸へ転化し、物理吸着剤4により吸着除去できる脱臭体を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋や車などの生活空間の気体に含まれる臭気物質を吸着除去する脱臭体および脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白金属を用いた触媒を高温(200℃以上)で作動させ、臭気物質などを水や二酸化炭素などへ分解する白金系の熱触媒が広く知られている。また、マンガンを主体とする遷移金属による複合酸化物を用いた脱臭用の触媒もある(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1によるとマンガンとコバルトの複合酸化物により、50℃でアセトアルデヒドを80%分解されるとしている。
【0003】
さらには、常温での臭気の分解触媒として、比表面積が大きな担体に光触媒を担持した光触媒脱臭フィルターとしたものもある(例えば、特許文献2及び3参照)。
【特許文献1】特開平10−180108号公報
【特許文献2】特開平6−343875号公報
【特許文献3】特開2003−53196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の白金系の触媒や特許文献1に開示されたような脱臭体では、作動温度が高く、空気調和機や空気清浄機などに応用できないという課題があり、また特許文献2、3に開示されたような光触媒は、吸着剤などと比較して脱臭速度が遅いことや、光源が必要であるためサイズを小さくできず、コストも高く、また耐衝撃性が弱いなどの多くの課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、安価な構成で脱臭性能に優れた脱臭体及び脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような従来の課題を解決するために、本発明の脱臭体は、物理吸着作用を有する吸着剤と、コバルトを含み触媒作用を有する酸化物と、前記吸着剤および前記酸化物とを担持する担体とから構成され、前記酸化物でアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、前記吸着剤で吸着除去するもので、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤により吸着除去でき、特に有害なアルデヒド類を酸化物の触媒作用により常温でカルボン酸へ転化し、吸着剤により吸着除去できる脱臭体を実現できる。
【0007】
また、本発明の脱臭装置は、吸気口と、前記吸気口を通して少なくとも臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した前記空気に含まれる臭気を脱臭する請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱臭体と、前記脱臭体により脱臭された前記空気を室内あるいは車内へ導入する導入口と、前記脱臭体から脱着した臭気を室外あるいは車外へ排気する排気口とを備えたもので、通常は、脱臭体で浄化した空気を導入口より室内或いは車内に戻すようにし、脱臭体が汚れてきたときに適宜、吸着剤を担持した脱臭体に通気することにより、飽和吸着に達した吸着剤から脱着した臭気を室外もしくは車外に排気できるので、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脱臭体及び脱臭装置は、部屋や車などの生活空間で発生する臭気、特に有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、効率よく吸着除去できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、物理吸着作用を有する吸着剤と、コバルトを含み触媒作用を有する酸化物と、前記吸着剤および前記酸化物とを担持する担体とから構成され、前記酸化物でアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、前記吸着剤で吸着除去するもので、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤により吸着除去でき、特に有害なアルデヒド類を酸化物の触媒作用により常温でカルボン酸へ転化し、吸着剤により吸着除去できる脱臭体を実現できる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の吸着剤が疎水性ゼオライトからなるもので、シリカ分を高めたゼオライトは極性が小さくなるため、非極性の臭気分子を吸着できるようになり、また雰囲気の湿度に依存することなく臭気分子を吸脱着できるようになるため、多様な臭気分子を吸着除去できる脱臭体を実現できる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の担体を有機繊維から構成されるハニカム構造体としたもので、耐衝撃性が高く、通気抵抗が小さく、比表面積が大きいため、圧損を抑え、臭気の吸脱着効率が高く衝撃に強い脱臭体を実現できる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の酸化物を少なくとも吸着剤の表面に担持したもので、さらに触媒作用を有する酸化物の分散性を高め、比表面積を大きくすることができ、また吸着剤と近接しているため転化により生成したカルボン酸を速やかに吸着剤へ移動させることで酸化物表面が清浄になるためにカルボン酸への転化率の高い脱臭体を実現できる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明の吸着剤に吸着されたカルボン酸を通気により脱着するようにしたもので、吸脱着しやすい吸着剤であるゼオライトを担持した脱臭体に通気することにより、飽和吸着に達したゼオライトが脱着再生され、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭体を実現できる。
【0014】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか一つの発明の酸化物をスピネル型構造としたもので、スピネル型構造の酸化物触媒がアルデヒド類を酸化し岩塩型構造となり、次に岩塩型構造が空気中の酸素により酸化されスピネル型構造に戻り、その繰り返しで触媒作用を発揮するため、スピネル型構造を選択することでアルデヒド類をカルボン酸へ転化する性能が高く、カルボン酸への転化率の高い脱臭体を実現できる。
【0015】
第7の発明は、特に、第1、4又は6のいずれか一つの発明の酸化物中のナトリウムおよびカリウム成分の含有率を1wt%未満としたもので、ナトリウムやカリウムなどが陽イオンの状態で存在すると、電子の授受を阻害し触媒作用の低下をまねくため、その量を1wt%未満に制限することでアルデヒド類をカルボン酸へ効率良く転化できる脱臭体を実現できる。
【0016】
第8の発明は、特に、第1の発明のアルデヒド類はアセトアルデヒドであり、カルボン酸は酢酸であることを特徴とするもので、アセトアルデヒドはタバコや建材の接着剤等に多く含まれ、発ガン性を有すると言われている有害な物質で、それを有害性の少ない酢酸に転化し、ゼオライトにより除去できる脱臭体を実現できる。
【0017】
第9の発明は、吸気口と、前記吸気口を通して少なくとも臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した前記空気に含まれる臭気を脱臭する請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱臭体と、前記脱臭体により脱臭された前記空気を室内あるいは車内へ導入する導入口と、前記脱臭体から脱着した臭気を室外あるいは車外へ排気する排気口とを備えたもので、通常は、脱臭体で浄化した空気を導入口より室内或いは車内に戻すようにし、脱臭体が汚れてきたときに適宜、吸着剤を担持した脱臭体に通気することにより、飽和吸着に達した吸着剤から脱着した臭気を室外もしくは車外に排気できるので、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭装置を提供することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態における脱臭体を示す外観模式図であり、(b)は脱臭体表面の拡大模式図である。
【0020】
本実施の形態における脱臭体1は、担体3と、担体3の表面に担持された物理吸着作用を有する吸着剤4(以下、本実施の形態では物理吸着剤4という)および触媒作用を有する酸化物5(以下、本実施の形態では触媒酸化物5という)から構成されている。
【0021】
担体3は、ポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステル繊維やセルロース繊維などの有機繊維から構成される平板3aおよび波形板3bを交互に積層されたハニカム構造体であり、通気方向2へ低い通気抵抗で通気することができる。
【0022】
物理吸着剤4や触媒酸化物5を担体3にアンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により結合させ、担持している。このときバインダを添加し、前記効果を高めると良いが、添加量が多い場合、吸着効果や触媒活性を低下させる原因となり、少ない場合、担体3との密着力が低下し、剥がれ落ちやすくなる。
【0023】
望ましくは、物理吸着剤4とバインダとの固形分が重量比で1:1〜20:1程度にするのが望ましい。また、無機系のバインダとしては、ナトリウムやカリウム成分を極力除去したコロイダルシリカ、リン酸アルミニウムなどが適しており、有機系のバインダとしては、水に酢酸ビニル、アクリル、エチレン、ビニルアルコール、変性ウレタンなどの樹脂粒子や、これらの樹脂からなる共重合樹脂粒子を分散させた水系エマルジョン型接着剤を用いるのが望ましい。
【0024】
この有機系バインダは、水を蒸発させることにより、樹脂粒子や共重合樹脂粒子の濃度が高くなり、そしてこれら粒子の表面同士がくっつき始め、粒子表面が互いに溶け合い、被膜を形成することで接着作用が発揮される。このように樹脂皮膜となるため、有機繊維に担持後も加工性に優れる一方で、無機系バインダより触媒性能は劣るという短所もある。
【0025】
物理吸着剤4は、ゼオライト、シリカゲル、セピオライト、アルミナ、活性炭等の物理吸着作用を有する物質が用いられるが、臭気物質の吸脱着速度が速いゼオライトが最も望ましく、特にシリカ/アルミナ比が大きいため極性が小さい疎水性ゼオライトを用いるとよい。これにより、非極性の臭気分子も吸着するようになり、また雰囲気の湿度に依存することなく臭気分子を吸脱着できるため、多様な臭気分子を吸脱着できる脱臭体を実現できる。また、ゼオライトやセピオライト等にはナトリウムやカリウム成分を極力除去したものを用いることが望ましい。これによりアルデヒド類からカルボン酸への転化率が向上する。
【0026】
本実施の形態で用いた疎水性ゼオライトは、0.1〜10μm程度の径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きくとることができるので好ましい。さらに、物理吸着剤4の形は図中にあるような球状に限定されるものではなく、また実際は物理吸着剤4の一次粒子が集まり、二次粒子を形成したり、さらには三次粒子を形成したりした粒子が担体3へ担持されていると考えられる。また、脱臭体1の表面に凹凸を設けるようにすれば、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0027】
本実施の形態では、脱臭体1に有機繊維で構成される平板3aおよび波形板3bを交互に積層したハニカム構造体を用いたが、物理吸着剤4と触媒酸化物5との混合物を格子状に押出成型して形成したハニカム構造体を用いても良い。これにより、バインダを用いることがなくハニカム構造体全体を物理吸着剤4と触媒酸化物5にすることができるので、吸着効果およびカルボン酸への転化率が高い脱臭体1を実現できる。
【0028】
触媒酸化物5は、コバルトを主成分とする酸化物でスピネル型の結晶構造のCo3O4とすることが望ましい。その他、Mn、Fe、Ni、Cu、Znなどの遷移金属を加え、スピネル型構造の複合酸化物としても良い。これは、スピネル型構造の酸化物触媒がアルデヒド類を酸化し岩塩型構造となり、次に岩塩型構造が空気中の酸素により酸化されスピネル型構造に戻り、その繰り返しで触媒作用を発揮するため、スピネル型構造を選択することでアルデヒド類をカルボン酸へ転化する性能が高く、カルボン酸への転化率の高い脱臭体を実現できる。
【0029】
また、本実施の形態で用いた触媒酸化物5も0.1〜10μm程度の径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きくとることができるので好ましい。さらに、触媒酸化物5の形も図中にあるような球状に限定されるものではなく、また実際は触媒酸化物5の一次粒子が集まり、二次粒子を形成したり、さらには三次粒子を形成したりした粒子が担体3へ担持されていると考えられる。触媒酸化物5も、アンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により、担体3あるいは物理吸着剤4に担持されている。
【0030】
次に担持方法について説明する。物理吸着剤4と触媒酸化物5の担体3への担持方法については、スプレーなどを用いた噴霧法、ディップ法などがあるが、担体3が無機繊維の場合、物理吸着剤4と触媒酸化物5を必要に応じてバインダを水や溶剤などに分散させ、ハニカム構造体をそのスラリーに浸漬することで担持するディップ法が望ましい。また担体3が有機繊維の場合、抄紙工程中に有機繊維に加えて物理吸着剤4と触媒酸化物5とを混合して抄紙を行い、これらを担持させることができる。
【0031】
ディップ法の場合、粉末状の物理吸着剤4と触媒酸化物5とを分散させスラリーを作製するが、物理吸着剤4および触媒酸化物5の平均径は小さい方が望ましく、一次粒子の平均径で1μm以下程度にするのが望ましい。さらには、なるべく凝集が起こらないように水や溶媒に分散させることが望ましく、必要に応じて分散剤を添加すると良い。
【0032】
以下、脱臭体1に対する実験例を示す。
【0033】
(実験1)
疎水性ゼオライトと、四三酸化コバルトCo3O4(以下、「コバルト触媒A」という)を水に分散させ、バインダとして固形分濃度20wt%のナトリウムフリーのコロイダルシリカ(以下、「バインダA」という)を加え、水と疎水性ゼオライトとコバルト触媒AとバインダAとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、「スラリーA」という)を作製した。
【0034】
また、疎水性ゼオライトと、コバルト触媒Aを水に分散させ、バインダとしてナトリウム安定型コロイダルシリカ(以下、「バインダB」という)を加え、水と疎水性ゼオライトとコバルト触媒AとバインダBとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、「スラリーB」という)を作製した。
【0035】
また、コバルト触媒Aを水に分散させ、バインダAを加え、水とコバルト触媒AとバインダAとの比が4:1:1のスラリー(以下、「スラリーC」という)を作製した。
【0036】
次に、セルロース繊維からなるハニカム構造体(120×36×t10、160セル/inch)を3つ用意した(以下、それぞれ、「ハニカムA」、「ハニカムB」、「ハニカムC」という)。ハニカムAをスラリーAへ、ハニカムBをスラリーBへ、ハニカムCをスラリーCへ各々浸漬し、130℃での乾燥を2回繰り返し、各々に0.1g/ccで担持した。なおハニカムBは、重量が9.8gで計算上ナトリウム分が約1wt%含有しているものである。
【0037】
また、白金を30mg担持したセルロース繊維からなるハニカム構造体と、マンガン:コバルトが3:1の複合酸化物を0.05g/cc担持したハニカム構造体(120×36×t10、160セル/inch)を用意した(以下、それぞれ「ハニカムD」、「ハニカムE」という)。
【0038】
作製した3種類および用意した2種類のハニカムサンプルそれぞれにアセトアルデヒドを空間速度(以下、SVという)1200、濃度100ppmで連続通気を行い、入口側と出口側のアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフ(検出器FID)により測定した。また、出口側の酢酸濃度を検知管により測定した。結果を表1に示す。なお、ハニカムAを用いた実験が実施例1、ハニカムBを用いた実験が実施例2、ハニカムCを用いた実験が実施例3、ハニカムDを用いた実験が比較例1、ハニカムEを用いた実験が比較例2である。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より、コバルト触媒Aは、アセトアルデヒドを酢酸に変える触媒として働き、また白金などと比較して高い活性を有している。また、アセトアルデヒドから変わった酢酸はゼオライトに吸着保持されることが可能である。さらには、ナトリウムを含む実施例2は一度活性が落ち、また元に戻っている。これは、ナトリウムがイオン状態となり、コバルト触媒A、酸素、アセトアルデヒド間の電子の授受を阻害するためであると考えられ、酢酸ナトリウムなどの化合物を形成することでカチオンが少なくなり、電子授受の影響をなくすことができると考えられる。
【0041】
(実験2)
疎水性ゼオライトとコバルト触媒Aを水に分散させ、バインダAを加え、水と疎水性ゼオライトとコバルト触媒AとバインダAとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、「スラリーD」という)と、活性炭とコバルト触媒Aとを水に分散させ、バインダAを加え、水と活性炭とコバルト触媒AとバインダAとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、「スラリーE」という)を作製した。
【0042】
次に、セルロース繊維からなるハニカム構造体(120×36×t10、160セル/inch)を2つ用意した(以下、「ハニカムD」、「ハニカムE」という)。ハニカムDをスラリーDへ、ハニカムEをスラリーEへ各々浸漬し、130℃での乾燥を2回繰り返し、各々に0.1g/ccで担持した。
【0043】
作製した2種類のハニカムサンプルにファンを取り付け、各サンプルをそれぞれ10ppmのアセトアルデヒド濃度に調整した40L容器の中へ入れた。容器内の温度は約20℃であった。270L/minの流量でサンプルを通過するようにファンを調整し、実験開始から60分後の酢酸濃度を検知管により測定した。
【0044】
実験後、それぞれのサンプルを容器から取り出し、臭気のない場所でファンを作動させ、約20℃で40分間通気を行った。その後、上記実験を行った。これら一連の実験、通気を10回繰り返した。表2に実験結果を示す。なお、ハニカムDを用いた実験が実施例4、ハニカムEを用いた実験が比較例3である。なお「N.D」は検出限界(0.05ppm)以下を示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2より、実施例4については10回目の酢酸濃度が0.1ppmと小さく、比較例3は1.0ppmと大きい。これは、ゼオライトは活性炭と比較して、通気により酢酸が脱着され再生率が高いことを示している。
【0047】
これらより、酸化コバルト触媒とゼオライトによりアセトアルデヒドを常温で酢酸へと転化し、吸着除去できる脱臭体1を実現でき、また通気による脱着で物理吸着作用を有する吸着剤を再生させることができるので、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭体を提供することができる。
【0048】
(実施の形態2)
図2は、本発明の第2の実施の形態における脱臭装置の模式図である。なお、上記第1の実施の形態における脱臭体と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本実施の形態における脱臭装置11は、部屋あるいは車10内部に設置されるもので、吸気手段13と、吸気口14と、上記第1の実施の形態における脱臭体1と同一構成で脱臭用のフィルター15と、脱臭された空気を部屋あるいは車内に戻す導入口17と、臭気を含む空気20を部屋あるいは車内から外部に排気する排気口19から構成されている。また、導入口17と排気口19との間には、これらを切り替える切替弁18がある。なお、本実施の形態における脱臭装置11は、エアコンや換気扇等に取り付けて、あるいは組み込んで用いることもできる。
【0050】
吸気手段13として、シロッコファン、ターボファン、プロペラファン、クロスフローファン、貫流ファン等が一般に使用され、特に限定するものではない。本実施の形態ではプロペラファンを用いた。また、吸気手段13はフィルター15に空気を送る送風手段としても用いることができる。
【0051】
次に上記構成による脱臭装置11の動作について説明する。
【0052】
部屋あるいは車10内で臭気が発生した場合、脱臭装置11は、臭気を含む空気12を吸気手段13により吸気口14を通して吸い込み、吸引された空気はフィルター15を通り脱臭され、脱臭された空気16は導入口17を通り、部屋あるいは車10へ戻される。フィルター15が飽和吸着に達し、部屋あるいは車10内に臭気がない場合、切替弁18によって空気の通気方向を室外あるいは車外へ排出する排気口19側へ切り替え、吸気手段13を作動させ通気させることにより、臭気が飽和吸着した物理吸着作用を有する物理吸着剤4から臭気を脱着させ、脱着させた臭気を含む空気20を室外あるいは車外へ排出することができる。
【0053】
したがって、この動作を繰り返すことにより、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭装置11を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる脱臭体および脱臭装置は、生活空間で発生する臭気を吸着除去でき、特に有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、吸着除去できる脱臭体を提供することができ、また人の手を煩わすことなく自動的に吸脱着を制御し、メンテナンスフリーで長期間使用できるもので、エアコン、生ごみ処理機、VOC分解機、介護用脱臭機などへ搭載することにより、メンテナンスフリーで長期間利用できる脱臭機能、有害物質分解機能を付加することができるものである。また、脱臭装置を部屋に設置されたエアコンや換気扇、車のカーエアコン等と連動させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態における脱臭体を示す外観模式図(b)同脱臭体の表面の拡大模式図
【図2】本発明の第2の実施の形態における脱臭装置を示す断面模式図
【符号の説明】
【0056】
1 脱臭体
3 担体
4 物理吸着剤(吸着剤)
5 触媒酸化物(酸化物)
10 部屋あるいは車
11 脱臭装置
12、16、20 空気
13 吸気手段
14 吸気口
15 フィルター(脱臭体)
17 導入口
18 切替弁
19 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理吸着作用を有する吸着剤と、コバルトを含み触媒作用を有する酸化物と、前記吸着剤および前記酸化物とを担持する担体とから構成され、前記酸化物でアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、前記吸着剤で吸着除去することを特徴とした脱臭体。
【請求項2】
吸着剤が疎水性ゼオライトからなる請求項1に記載の脱臭体。
【請求項3】
担体を有機繊維から構成されるハニカム構造体とした請求項1又は2に記載の脱臭体。
【請求項4】
酸化物を少なくとも吸着剤の表面に担持した請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱臭体。
【請求項5】
吸着剤に吸着されたカルボン酸を通気により脱着するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱臭体。
【請求項6】
酸化物をスピネル型構造とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱臭体。
【請求項7】
酸化物中のナトリウムおよびカリウム成分の含有率を1wt%未満とした請求項1、4、又は6のいずれか1項に記載の脱臭体。
【請求項8】
アルデヒド類はアセトアルデヒドであり、カルボン酸は酢酸である請求項1に記載の脱臭体。
【請求項9】
吸気口と、前記吸気口を通して少なくとも臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した前記空気に含まれる臭気を脱臭する請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱臭体と、前記脱臭体により脱臭された前記空気を室内あるいは車内へ導入する導入口と、前記脱臭体から脱着した臭気を室外あるいは車外へ排気する排気口とを備えた脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−37670(P2007−37670A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223639(P2005−223639)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】