説明

脱臭断熱建材パネル

【課題】全体の断熱特性を均一化すると共に、吸水率のアンバランスを少なくして、室内空気を最適な環境にコントロールする。
【解決手段】脱臭断熱建材パネルは、通気性のある表面層35の裏面に炭層30を設けている。炭層30は、表面層35の裏面に固定され、かつ複数の区画チャンバー32を設けてなる多孔質通気性基材31と、この多孔質通気性基材31に設けている区画チャンバー32に充填してなる炭状粒33とを備えている。多孔質通気性基材31は、無数の繊維を立体的に集合して繊維の間に無数の空隙を設けてなる繊維質材料からなる通気性のある基材であって、表面層35側に開口するように所定のピッチで複数の区画チャンバー32を設けている。炭状粒33は、チップ状に破砕された木材を焼いてなる消炭3で、この消炭3を多孔質通気性基材31の区画チャンバー32に充填して、表面層35で区画チャンバー32の開口部を閉塞している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建材に使用される脱臭断熱建材パネルに関し、とくに脱臭特性と断熱特性の優れた板材に関する。
【背景技術】
【0002】
表面層の裏面に炭層を設けている建材は開発されている。(特許文献1及び2参照)
これ等の公報に記載される建材を図1に示す。この建材は、棒状部材を矩形状または正方形状に接続してなる枠部90及び該枠部90の内側を縦横に複数の空間部92が形成されるように区画する縦桟91A及び横桟91Bを有する枠体91と、この枠部90の表面側に、長手方向に直交させて互いの隣接部を所定の間隔で離間させて並設した複数の帯状板材95Aからなる表面板材95と、枠体91の裏面に配設される裏面板材94と、前記表面板材95と裏面板材94とにより囲まれた枠体91の各空間部92に装填される袋詰めされた多孔性物質体93とを備えている。さらに、この公報は、枠体91の空間部92に充填される多孔性物質として、木炭、活性炭などの炭素系の顆粒または粉末からなる炭素系物質や、硫酸亜鉛によりコーティング処理したナノセラミックスカーボン等を使用することを記載している。
【特許文献1】特開2007−277991号公報
【特許文献2】実用新案登録第3105036号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の公報に記載される建材は、空間部に装填している炭素系物質やナノセラミックカーボンなどの作用で、建物の壁などに使用されて、断熱、脱臭及び吸放湿性能を向上できる。ただ、この構造の建材は、枠体の内側を、縦桟と横桟で区画して中空部を設けて、この中空部に炭素系物質を装填しているので、縦桟と横桟によって、部分的に断熱特性が低下する欠点がある。それは、炭素系物質に比べて縦桟や横桟の断熱特性が低下するからである。部分的に断熱特性の低下した建材は、たとえば、壁材に使用されると、断熱特性の低下した部分の表面に結露する欠点がある。それは、断熱特性の低下する部分は、その表面が外側から冷却されて表面温度が低下して、表面に接触する空気の相対湿度が高くなるからである。とくに、冬期に室内を加湿しながら暖房する状態においては、屋外の空気が低温で、室内の空気の絶対湿度が高くなることから、この状態が発生しやすくなる。建材の表面に局部的に発生する結露は、建材表面の一部を変色する原因となり、さらにカビなどが発生して不衛生になる欠点もある。
【0004】
さらに、以上の公報の建材は、縦桟と横桟で中空部を区画するので、各々の中空部に装填される炭素系物質などは、相互に湿度や吸湿性を均等化する作用がなく、たとえば建物の壁材に使用されると、下部の中空部に装填される炭素系物質が過剰に空気中の水分を吸水して、上部の炭素系物質の吸水率が低くなり、上部と下部の炭素系物質の吸水率がアンバランスになりやすい欠点もある。吸水率がアンバランスになると多量の水分を吸湿する部分が過湿状態となって、カビなどが発生しやすくなる。さらに、炭素系物質が吸湿する全体の水分量も減少して、室内空気を快適に調整する作用も低下する。
【0005】
さらにまた、以上の公報に記載する建材は、枠体の空間部に充填される多孔性物質として、木炭、活性炭、ナノセラミックスカーボン等を使用する。これ等の多孔性物質は、製造コストが高くなることに加えて、建材に使用して十分に満足できる断熱特性と吸水特性を満足するのが難しい。木炭や活性炭は、木材を焼いて製造される。木炭や活性炭は、微細な空隙があって吸湿性がある。木炭は、天然の木を炭窯で乾留して製造される備長炭等があり、活性炭は、木炭を赤熱して水蒸気で活性化して製造される。この方法で製造される木炭は燃料に、活性炭は吸着剤に利用されるが、優れた断熱特性と、多量の水分を吸湿できる優れた吸水性は、建材として要求される特性を十分に満足すものではない。ナノセラミックスカーボンは、高価な活性炭よりもさらに製造コストが高く、これを多量に使用して建材とすることは、特別な用途を除いて到底に使用できない。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、全体の断熱特性を均一化すると共に、複数の区画チャンバーに充填している消炭の吸水率のアンバランスを少なくして、区画チャンバーに充填している全ての消炭で有効に室内空気を最適な環境にコントロールできる脱臭断熱建材パネルを提供することにある。
さらに、本発明の他の大切な木材は、原料コストと製造コストを低減して、安価に多量生産しながら、優れた脱臭特性と断熱特性を実現できる脱臭断熱建材パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、通気性のある表面層35の裏面に炭層30を設けている。炭層30は、表面層35の裏面に固定され、かつ複数の区画チャンバー32を設けてなる多孔質通気性基材31と、この多孔質通気性基材31に設けている区画チャンバー32に充填してなる炭状粒33とを備えている。多孔質通気性基材31は、無数の繊維を立体的に集合して繊維の間に無数の空隙を設けてなる繊維質材料からなる通気性のある基材であって、表面層35側に開口するように所定のピッチで複数の区画チャンバー32を設けている。炭状粒33は、チップ状に破砕された木材を焼いてなる消炭3としている。脱臭断熱建材パネルは、この消炭3を多孔質通気性基材31の区画チャンバー32に充填して、通気性のある表面層35で区画チャンバー32の開口部を閉塞している。
【0008】
以上の脱臭断熱建材パネルは、複数の区画チャンバーに充填している消炭の吸水率のアンバランスを少なくして、区画チャンバーに充填している全ての消炭で有効に室内空気を最適な環境にコントロールできる特徴がある。とくに、以上の脱臭断熱建材パネルは、多孔質通気性基材の区画チャンバーに充填してなる炭状粒を、チップ状に破砕された木材を焼いてなる消炭とする。消炭は、チップ状に破砕した木材を燃える状態とした後、酸素の供給を停止して製造される。この方法で製造される消炭は、製造コストを極めて安価にできることに加えて、簡単な焼却炉で製造できることから、たとえば、建物を壊して発生する多量の廃材や間伐材を原料として有効に再利用できる。とくに、消炭は、木材を燃やして炭にしたものであるから、廃材に含まれる種々の有機物や雑菌が完全に消失できる。このため、廃棄木材を消炭として利用することで、有効に利用されていない多量の廃棄木材を有効に再利用できる。とくに、廃棄木材を脱臭断熱建材パネルとして有効利用することで、健康で快適な建物を実現できる。消炭は、燃料に使用して発生熱量が少ないことから、燃料として決して優れたものではないが、木炭に比較すると比重が極めて軽く、空隙率が高いので優れた断熱特性を示し、また、空隙に多量の水分を吸着する優れた作用がある。
【0009】
消炭は、たとえば、図6と図7に示す焼却炉10で製造される。焼却炉10に木材をチップ状に破砕した木材チップ2を充填する。空気穴15の開閉蓋16を開いた状態で上の木材チップ2に着火する。開閉蓋16は、バネ(図示せず)で閉じる方向に引っ張られているが、割り箸などの木材ロッド19を先端に固定している突張棒23で突っ張って開口されている。割り箸の木材ロッド19が消失すると空気穴15はバネに引っ張られて閉塞される。木材チップ2の上に着火された火は、次第に下の木材チップ2を燃やし、底の木材チップ2が燃えるようになると、割り箸の木材ロッド19が燃えて開閉蓋16が閉じられる。開閉蓋16が閉じられると空気の供給が停止される。この状態で冷却すると消炭ができる。以上の方法で製造される消炭は、燃える状態で酸素の供給を停止することから、木炭や活性炭に比較して柔らかくて、多孔質な状態となって優れた吸湿性と断熱特性を実現する。
【0010】
以上の脱臭断熱建材パネルは、炭状粒に消炭を使用することに加えて、多孔質通気性基材を、無数の繊維を立体的に集合して繊維の間に無数の空隙を設けてなる繊維質材料からなる通気性のある基材とする。通気性のある多孔質通気性基材は、区画チャンバーを互いに通気できる状態で区画する。隣接する区画チャンバーが互いに通気することは、隣接する区画チャンバーに充填している消炭の吸水率のアンバランスを解消する。このことは、各々の消炭の吸水量を均一化して、特定の消炭が過湿状態となるのを解消し、消炭全体の吸水量を相当に増大できる。
【0011】
さらに、繊維質材料からなる多孔質通気性基材は、優れた断熱特性があって、区画チャンバーを区画する領域での断熱特性の低下を防止できる。したがって、断熱特性の低下した部分の表面に結露することがなく、結露によるカビの発生や変色を有効に防止できる。又、全面の断熱特性を向上できることから、脱臭断熱建材パネル全体の断熱特性を向上できる。
【0012】
以上の脱臭断熱建材パネルは、多孔質通気性基材に 繊維質材料を使用することから、多孔質通気性基材の強度は低くなる。ただ、以上の脱臭断熱建材パネルは、区画チャンバーに充填する炭状粒に極めて軽い消炭を使用することから、これを充填する多孔質通気性基材に、強い強度が要求されない。脱臭断熱建材パネルを建物の壁材などに垂直姿勢で使用して、軽い消炭の重量を支える強度で足りるからである。したがって、以上の脱臭断熱建材パネルは、炭状粒に軽い消炭を使用することで断熱特性を向上すると共に、多孔質通気性基材にも優れた断熱特性の繊維質材料を使用することで、全体の断熱特性を著しく向上できる特徴を実現する。しかも、炭状粒を消炭とし、また、多孔質通気性基材を繊維質材料とすることで、全体を相当に軽くできる特徴も実現する。
【0013】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、多孔質通気性基材31を、1cmよりも厚く、5cmよりも薄い板状とすることができる。
【0014】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、多孔質通気性基材31を、天然の繊維又は合成繊維のいずれかからなる繊維を立体的に集合してなる繊維質材料とすることができる。
【0015】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、消炭3を、表面をエマルジョンタイプの接着剤からなる通気性を有する薄膜コーティング層7で被覆して、互いに分離された粒状として区画チャンバー32に充填することができる。
【0016】
この脱臭断熱建材パネルは、軽くて破損しやすい消炭の表面を、通気性を有する薄膜コーティング層で被覆しているので、消炭の吸水特性を低下させることなく、消炭表面の破損を防止できる。消炭は、空隙率が高くて全体が極めて柔軟なことから、優れた断熱特性と吸水特性を有するが、取り扱い工程で表面から割れて、粉状の黒い粉が多量に発生しやすい。破損した黒い粉の量が多く、また、これが非常に小さく、さらにまた、繊維質材料の空隙が大きいと、多孔質通気性基材の空隙に侵入し、また、これを通過して表面や裏面に漏れやすい弊害がある。さらに、消炭が破損されて粉末状になって、粉末状で区画チャンバーに充填されると、空隙率が小さくなって断熱特性と吸水特性が低下する弊害がある。このように、独特の物性を有する消炭は、表面を通気性のある薄膜コーティング層で被覆することで、断熱特性と吸水特性を低下することなく、被覆から破損しやすい消炭の欠点を解消できる。また、表面を薄膜コーティング層で表面して破損しやすくなった消炭は、この状態で区画チャンバーに充填することで、種々の大きさの区画チャンバーに簡単に能率よく、高い空隙率を保持しながら充填できる。また、区画チャンバーの形状に合わせて成形する必要がないので、区画チャンバーの形状や大きさに関係なく、簡単かつ容易に、しかも、消炭の優れた特性を保持しながら区画チャンバーに充填して、優れた断熱特性と吸水特性を実現できる。
【0017】
さらに、木材を特定の大きさのチップ状に破砕した木材チップを焼いて得られる消炭は、消炭になる工程で突出する角が少なくなる。この消炭が粒状に分離する状態で区画チャンバーに充填されると、角のある木炭のようにブリッジになり難く、区画チャンバーに充満される状態で充填されて、断熱特性と吸水特性を向上できる。
【0018】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、消炭3の表面を被覆してなる薄膜コーティング層7を、酢酸ビニル樹脂とすることができる。
この脱臭断熱建材パネルは、エマルジョンタイプの酢酸ビニル樹脂からなる薄膜コーティング層で消炭の表面を被覆することから、柔らかくて表面が破損しやすい消炭の欠点のを解消しながら、溶媒などの環境に悪いガスを発生することがなく、環境に優しくて健康的な建材にできる。また、薄膜コーティング層の酢酸ビニル樹脂は水溶性であるから、水で薄めて消炭の表面に付着することで膜厚を極めて薄く調整できる。すなわち、水で薄める倍率をコントロールすることで、消炭の表面に付着する状態での通気性を最適な状態にできる。
【0019】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、消炭3を、所定の形状に固化して、多孔質通気性基材31の区画チャンバー32に充填することができる。
この脱臭断熱建材パネルは、消炭を所定の形状に成形して区画チャンバーに充填するので、区画チャンバーに極めて簡単に能率よく充填して多量生産できる。
【0020】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、消炭3を、繋ぎ繊維とバインダー4とで固化して区画チャンバー32に充填することができる。
以上の脱臭断熱建材パネルは、バインダーに加えて繋ぎ繊維で消炭を固化するので、バインダーの使用量を少なくして固化できる。このため、消炭を固化しながら、固化することで断熱特性と吸水特性が低下するのを有効に防止できる。
【0021】
本発明の脱臭断熱建材パネルは、多孔質通気性基材31の区画チャンバー32に、消炭3に加えて炭酸カルシウムを充填することができる。
以上の脱臭断熱建材パネルは、消炭に炭酸カルシウムを添加するので、耐火特性や防炎特性を向上できる。それは、炭酸カルシウムが消炭の燃焼を阻止するからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための脱臭断熱建材パネルを例示するものであって、本発明は脱臭断熱建材パネルを以下のものに特定しない。
【0023】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0024】
本発明の脱臭断熱建材パネルの分解斜視図を図2と図3に示す。これらの図に示す脱臭断熱建材パネルは、通気性のある表面層35の裏面に炭層30を設けている。炭層30は、複数の区画チャンバー32を設けてなる多孔質通気性基材31と、この多孔質通気性基材31に設けている区画チャンバー32に充填してなる炭状粒33とを備えている。炭層30は、多孔質通気性基材31の区画チャンバー32に炭状粒33を充填して、表面層35の裏面に固定している。炭状粒33は、チップ状に破砕された木材を焼いてなる消炭3としている。図2の脱臭断熱建材パネルは、消炭3を分離する粒状で多孔質通気性基材31に設けた区画チャンバー32に充填し、図3の脱臭断熱建材パネルは、消炭3を板状に成形して区画チャンバー32に充填している。脱臭断熱建材パネルは、炭状粒33である消炭3を多孔質通気性基材31の区画チャンバー32に充填して、通気性のある表面層35で区画チャンバー32の開口部を閉塞している。
【0025】
図2の脱臭断熱建材パネルに使用する消炭3は、図4に示す工程で製造され、図3に示す脱臭断熱建材パネルに使用する消炭3は、図5に示す工程で製造される。図4の製造工程は、木材9をチップ状に加工する破砕工程と、破砕された木材チップ2を焼いて消炭3とする消炭工程と、焼かれた消炭3を回転容器に入れて回転して、消炭3の突出部を円滑化する円滑工程と、円滑化された円滑消炭3’の表面を薄膜コーティング層7で被覆するコーティング工程とで消炭3を製造する。
【0026】
図5の製造工程は、木材9をチップ状に加工する破砕工程と、破砕された木材チップ2を燃やして消炭3とする消炭工程と、焼かれた消炭3を回転容器に入れて回転して、消炭3の突出部を円滑化する円滑工程と、円滑化された円滑消炭3’を成形型20に入れて、バインダー4で円滑消炭3’の接点を接着して板状に成形する成形工程と、バインダー4が硬化した後、成形型20から脱型する脱型工程とで板状に固化された消炭3を製造する。
【0027】
破砕工程は、針葉樹、落葉樹、竹などの木材9を刃物で破砕してチップ状に加工する。この工程は、木材に加えて、バークを添加することもできる。また、木材9には、建物を壊して得られる廃棄木材を使用し、あるいは間伐材を使用することで有効に利用されていない木材を有効利用することができる。破砕工程は、木材9を、5mm以上であって2cm以下の木材チップ2に破砕する。木材チップを5mm以下に破砕すると、消炭に加工する工程での歩留まりが悪くなる。反対に木材チップを2cmよりも大きくすると、区画チャンバー32に隙間なく充填するのが難しくなる。したがって、破砕工程において、好ましくは、木材9を約1cmの木材チップ2に破砕する。
【0028】
消炭工程は、木材を、備長炭のように硬い木炭に加工するのではない。木材チップ2は、図6と図7に示す焼却炉10で消炭3とする。この焼却炉10は、上を開口して底を閉塞する金属筒11で、上の開口部12を供給蓋13で閉塞している。金属筒11は、100リットル〜1000リットルの木材チップ2を充填できる大きさで、高さを1m〜3mとしている。この焼却炉10は、金属筒11の上端に煙突14を設けて、供給蓋13を閉じる状態で煙突14から排気する。供給蓋13を開いて木材チップ2が金属筒11に充填される。
【0029】
図の焼却炉10は、内部に空気を供給できるように、金属筒11の底部の側面に吸気口27を開口している。この吸気口27には、金属筒11の内部に空気を供給するガイド具17を挿入している。図のガイド具17は、金属筒11の内部に挿入される挿入部17Aと、金属筒11の外側に配置される筒部17Bとからなる。挿入部17Aは、上面を開口してなる溝型で、両側面と底面には、5〜10mm程度の孔を無数に開口している。この挿入部17Aは、吸気口27から金属筒11の内部に挿入された状態で、図7に示すように、金属筒11に充満される木材チップ2が上方から供給される。筒部17Bは、挿入部17Aよりも大きな外形の筒体で、挿入部17Aの後端に連結している。筒部17Bは、後端面に空気穴15を開口しており、この空気穴15を開閉蓋16で開閉できるようにしている。開閉蓋16は、バネ(図示せず)に引っ張られて弾性的に閉塞されるように、上縁を蝶番18で筒部17Bに連結している。この開閉蓋16は、先端に木材ロッド19を連結している突張棒23で突っ張って開かれる。突張棒23は金属ロッドで、割り箸のように燃える木材ロッド19を、先端に挿入して連結している。この突張棒23は、木材ロッド19を挿入部17Aの内部に挿入する状態で、その両端で挿入部17Aの先端面と開閉蓋16とを突っ張って、開閉蓋16が空気穴15を開いた状態とする。この状態で、図7に示すように、木材チップ2を充填して木材チップ2の底部にガイド具17の挿入部17Aを埋設する。
【0030】
さらに、図の焼却炉10は、金属筒11の底から多少上方に離れた位置に多孔板24を配設して、金属筒11の底部に空気室25を設けている。多孔板24は、金属板に、木材チップが落下しない程度の小さな孔を無数に開口したものである。ただ、多孔板は、金網とすることもできる。多孔板24は、金属筒11の底に配設した受け具26の上面に水平な姿勢で配設して、その下側に空気室25を設けている。さらに、この多孔板24の上面に、ガイド具17の挿入部17Aを配置している。この構造は、空気穴15から供給される空気を、ガイド具17を介して空気室25に供給して、空気室25から、金属筒11に充満される木材チップ2の全体に供給できる特徴がある。
【0031】
以上の焼却炉10は、内部に木材チップ2を充填した後、木材チップ2の上に着火して、供給蓋13を閉じる。木材チップ2は、空気穴15から流入する空気が空気室25から供給されるので、上から下に着火して全体に着火する。木材チップ2の全体に着火すると、挿入部17Aの内側の木材ロッド19が消失して、突張棒23が開閉蓋16を突っ張ることができなくなり、開閉蓋16はバネで閉塞される。この状態になると、金属筒11に空気が供給されなくなり、着火された木材チップ2の火が消えて消炭となる。図6と図7の焼却炉は、木材チップ2に空気を供給しながら完全に着火した後、空気の供給を遮断して消火するので、木材チップ2は燃えがらである消炭3となる。
【0032】
円滑工程は、図8に示すように、消炭工程で製造された消炭3を回転容器22に入れて回転して、消炭3の突出部を円滑化する。図に示す回転容器22は、円筒状の金属筒体22Aである。金属筒体22Aである回転容器22は、たとえば、傾斜する姿勢で配設されて、内側に消炭3が供給される状態で回転される。回転容器22に供給される消炭3は、金属筒体22Aの内部を転がりながら、供給側から排出側へと移送されて表面が円滑化される。金属筒体22Aは、図示しないが、多孔質な金属板で製作することができる。この金属筒体は、消炭から削り取られる微細な屑や小片を表面の孔から排出しながら移送できる。金属筒体22Aの内部を転動する消炭3は、金属筒体22Aの内面に接触して、あるいは、多数の消炭3が互いに接触し合って表面の突出部が削られて円滑になる。木材チップから得られる消炭は、焼けて消炭になる工程で突出する角が少なくなるが、破砕工程で生じた表面の突出部が、消炭となった後も残存することがある。また、消炭は、その表面がもろくなって崩れやすい状態となることもある。この円滑工程では、消炭3の表面に残存する突出部や、表面のもろくなった部分を取り除いて消炭3の表面を円滑にする。このように、表面を円滑にしてなる円滑消炭3’は、区画チャンバー32の充填効率が高く、断熱特性と吸水特性を向上できる。それは、ブリッジにならず、消炭3の間にできる隙間を少なくできるからである。ただ、消炭3は、木材チップ2を燃やす工程で角が少なくなるので、この円滑工程は必ずしも必要ではなく、この工程を省略することもできる。
【0033】
区画チャンバー32に分離された粒状で充填される消炭3は、コーティング工程で表面を薄膜コーティング層7で被覆する。コーティング工程は、円滑消炭3’を水で希釈されたエマルジョンタイプの接着剤の液に浸漬し、ザルで水切りして乾燥する。このコーティング工程は、エマルジョンタイプの接着剤に酢酸ビニル樹脂を使用する。消炭3の表面をコーティングする薄膜コーティング層7の膜厚は、接着剤を水で希釈する倍率でコントロールする。好ましくは、エマルジョンタイプの接着剤を25倍〜30倍に希釈して、すなわち、接着剤に、重量比で25倍〜30倍の水を添加して撹拌し、この希釈接着剤液に消炭3を浸漬した後、ザルに上げて水切りし、乾燥して通気性のある薄膜コーティング層7を設けることができる。薄膜コーティング層7が厚すぎると、通気性が悪くなって吸水特性が低下し、薄すぎると消炭表面をコーティングする作用が低下して消炭の表面が破損しやすくなる。したがって、希釈接着剤液は、たとえば、接着剤を、重量比で10倍〜40倍、このましくは25倍〜30倍に希釈して、通気性のある薄膜コーティング層7を設ける。接着剤には、酢酸ビニル樹脂が使用できる。ただ、接着剤には、エマルジョンタイプの他の全ての接着剤を使用することもできる。エマルジョンタイプの接着剤は、乾燥状態で水に接触して接着力を失うもの、すなわち乾燥状態で水に接触して水に溶解される酢酸ビニル樹脂などの接着剤を使用する。この接着剤からなる薄膜コーティング層7は、区画チャンバー32に消炭3を充填するまでの工程で、消炭表面の破損を防止できる。区画チャンバー32に充填された消炭3は、表面が破損することがなく、この状態で薄膜コーティング層7は消炭3の表面を保護する必要はない。区画チャンバー32に充填された消炭3は、表面をより広い面積で露出させて、吸水特性を向上することが大切である。水に溶解されるエマルジョンタイプの接着剤は、消炭3の表面に付着する水で溶解されて、消炭3の表面をより広い面積で露出して、消炭3の吸水特性を向上する。したがって、薄膜コーティング層7は、水で溶解されるエマルジョンタイプの接着剤を使用することで、消炭3を破損しない状態で区画チャンバー32に充填しながら、区画チャンバー32に充填する状態では消炭3の吸水特性を向上できる。
【0034】
図2の脱臭断熱建材パネルは、以上の工程で製造される、表面を薄膜コーティング層7で被覆して粒状となっている消炭3を区画チャンバー32に充填している。
【0035】
さらに、脱臭断熱建材パネルは、多孔質通気性基材の区画チャンバーに、消炭に加えて炭酸カルシウムを充填することができる。この脱臭断熱建材パネルは、消炭に炭酸カルシウムを添加するので、炭酸カルシウムで消炭の燃焼を阻止して、耐火特性や防炎特性を向上できる。
【0036】
図3の脱臭断熱建材パネルは、成形工程で消炭3を板状に固化して、区画チャンバー32に充填する。成形工程は、円滑工程で円滑化された後、あるいは、円滑化することなく、成形工程において板状に成形される。消炭3は、図9の成形型20で板状に成形される。この成形型20は、上方を開口して底を閉塞する成形室21を有する。成形室21の内形は、消炭3を板状に固化する寸法とする。この成形型20は、水平に置かれて、板材5の上にバインダー4を混合している消炭3を充填する。バインダー4には、好ましくはエマルジョンタイプの接着剤、好ましくは酢酸ビニル樹脂を使用する。エマルジョンタイプの接着剤は、乾燥状態で消炭3を結合しているが、水に接触すると、水に溶融されて接着力を失うものを使用する。このバインダー4は、区画チャンバー32に充填するときには消炭3を板状に固化して、消炭3の吸水特性を向上できる。吸水する水でバインダー4が溶解されて、消炭3の表面を広い面積で露出させるからである。酢酸ビニル樹脂からなるバインダーは、安価で、水に希釈して消炭3を確実に板状に固化できる。エマルジョンタイプのバインダー4は、たとえば、水で2倍〜10倍に、好ましくは2倍〜5倍に希釈して消炭3に混合する。水で希釈している希釈バインダーの使用量は、たとえば、板状に消炭3を成形する体積に対して約50g/リットル〜100g/リットルとする。酢酸ビニル樹脂のを水で希釈し、これを消炭3に混合して撹拌して、成形室21に充填する。バインダー4が未硬化な状態で、成形型20の上面と同一面になるように水平に均してバインダー4を硬化させる。バインダー4が硬化すると、脱型工程で成形型20から脱型されて、図10に示す板状に固化された消炭3が製造される。
【0037】
板状に固化される消炭は、バインダーに加えて繋ぎ繊維を添加して板状に固化することもできる。繊維には、合成繊維や天然繊維、さらに無機繊維などが使用できる。また、消炭に網材を埋設して補強することもできる。網材には、ガラス繊維や金網などを使用することができる。
【0038】
表面層35は、多数の通気穴36を貫通している合板を使用する。合板は薄くて十分な強度にできる。表面層には、石膏ボードや珪酸カルシウム板なども使用できる。さらに、表面層は、合板や石膏ボードなどの表面に通気性のあるクロスを接着したものも使用できる。さらにまた、表面層は、不織布、紙、布等の繊維質材やプラスチック発泡体等の通気性のあるシートも使用できる。通気性のあるシートは通気穴を設ける必要がない。
【0039】
多孔質通気性基材31は、無数の繊維を立体的に集合して繊維の間に無数の空隙を設けてなる繊維質材料からなる通気性のある基材である。繊維質材料は、天然の繊維又は合成繊維のいずれかからなる繊維を立体的に集合してなる不織布が使用できる。この多孔質通気性基材31は、消炭3を充填するために、表面層35側に開口するように所定のピッチで複数の区画チャンバー32を設けている。多孔質通気性基材31は、両面に貫通するように裁断して区画チャンバー32を設け、底面に閉塞シート34を接着して底面を閉塞して、表面層35側を開口することができる。閉塞シート34には、多孔質通気性基材31と同じ材質のものを使用し、あるいは合板、石膏ボード、不織布等であって、区画チャンバー32に充填している消炭3が漏れないように底面を閉塞できる全てのシートを使用する。
【0040】
多孔質通気性基材31は、縦横に並べて複数の区画チャンバー32を設けている。図の多孔質通気性基材31は、碁盤状に区画壁31Aを設けて、区画壁31Aの間に縦横に並べて区画チャンバー32を設けている。多孔質通気性基材31は、区画チャンバー32の大きさを、たとえば6.6cm又は12.8cmの正方形として、区画壁31Aの幅を2cmとして、外形を180cm×90cm又は、180cm×45cmの長方形とする表面層35の裏面に接着している。この脱臭断熱建材パネルは、種々の寸法に裁断して便利に使用できる。ただし、本発明は、区画チャンバー32の大きさを以上の寸法に特定するものではない。区画チャンバーは、消炭の充填に好ましい寸法、たとえば、一辺を3cmよりも大きく、45cmよりも小さい四角形とすることができる。区画チャンバーを大きくすると、区画壁の間隔が広くなって、表面層に多孔質通気性基材を接着する強度が低くなる。したがって、区画チャンバーの寸法は、表面層と多孔質通気性基材との接着強度と用途を考慮して、前述の範囲で最適寸法とする。区画チャンバー32の深さは、充填できる消炭量を特定する。区画チャンバー32の深さは、たとえば1cm〜5cm、好ましくは約2cm〜3cmとする。区画チャンバーを深くして、消炭の充填量を多く、断熱特性と吸水特性を向上できる。区画チャンバーの深さは、用途を考慮して、用途に要求される断熱特性と吸水特性から前述の範囲で最適値に設定される。
【実施例1】
【0041】
廃棄木材を1cmのチップ状に破砕し、この木材チップ2を、図6と図7に示す焼却炉10で消炭3に加工し、得られた消炭3を、図9に示す成形工程で、一辺が12.8cmの正方形で、厚さを3cmとする板状に成形して固化する。板状に固化された消炭3を、図3に示すように、繊維質材料からなる多孔質通気性基材31の区画チャンバー32に充填する。多孔質通気性基材31は、板状の消炭3を充填できるように、一辺を12.8cm、深さを3cmの正方形とする区画チャンバー32を設けて、区画壁31Aの幅を2cmとしている。表面層35は、外形寸法を180cm×90cmの長方形とし、厚さを3mmとする合板で、3cmのピッチで5mmの通気穴36を設けている。この脱臭断熱建材パネルは、常温で湿度75%の室内に2日置いて、450gの水分を吸着する。
【0042】
さらに、この脱臭断熱建材パネルを、外形寸法を45cm×45cm×45cmの中空状の正方形としての中心に温度センサを挿入して、95℃の恒温槽に入れて2時間後の中心温度を測定すると、55℃となった。比較に発泡スチロールとロックウールを同じ形状として同じ恒温槽に入れて中心温度を測定すると、発泡スチロールとロックウールの中心温度が70℃となった。このことから、本発明の脱臭断熱建材パネルは、発泡スチロールやロックウールに比較して中心の温度上昇が約15℃も低く、発泡スチロールやロックウールよりも極めて優れた断熱特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の建材の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる脱臭断熱建材パネルの分解斜視図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかる脱臭断熱建材パネルの分解斜視図である。
【図4】図2に示す脱臭断熱建材パネルに使用する消炭の製造工程を示す概略工程図である。
【図5】図3に示す脱臭断熱建材パネルに使用する消炭の製造工程を示す概略工程図である。
【図6】消炭を製造する焼却炉の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示す焼却炉の垂直断面図である。
【図8】円滑工程を示す概略斜視図である。
【図9】成形工程を示す断面図である。
【図10】成形工程で板状に固化された消炭を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
2…木材チップ
3…消炭 3’…円滑消炭
4…バインダー
7…薄膜コーティング層
9…木材
10…焼却炉
11…金属筒
12…開口部
13…供給蓋
14…煙突
15…空気穴
16…開閉蓋
17…ガイド具 17A…挿入部
17B…筒部
18…蝶番
19…木材ロッド
20…成形型
21…成形室
22…回転容器 22A…金属筒体
23…突張棒
24…多孔板
25…空気室
26…受け具
27…吸気口
30…炭層
31…多孔質通気性基材 31A…区画壁
32…区画チャンバー
33…炭状粒
34…閉塞シート
35…表面層
36…通気穴
90…枠部
91…枠体 91A…縦桟
91B…横桟
92…空間部
93…多孔性物質体
94…裏面板材
95…表面板材 95A…帯状板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性のある表面層(35)の裏面に炭層(30)を設けている脱臭断熱建材パネルであって、
前記炭層(30)が、表面層(35)の裏面に固定され、かつ複数の区画チャンバー(32)を設けてなる多孔質通気性基材(31)と、この多孔質通気性基材(31)に設けている区画チャンバー(32)に充填してなる炭状粒(33)とを備えており、
前記多孔質通気性基材(31)は、無数の繊維を立体的に集合して繊維の間に無数の空隙を設けてなる繊維質材料からなる通気性のある基材であって、表面層(35)側に開口するように所定のピッチで複数の区画チャンバー(32)を設けており、
前記炭状粒(33)は、チップ状に破砕された木材を焼いてなる消炭(3)で、この消炭(3)が前記多孔質通気性基材(31)の区画チャンバー(32)に充填されて、通気性のある表面層(35)で区画チャンバー(32)の開口部を閉塞してなることを特徴とする脱臭断熱建材パネル。
【請求項2】
前記多孔質通気性基材(31)が、1cmよりも厚く、5cmよりも薄い板状である請求項1に記載される脱臭断熱建材パネル。
【請求項3】
前記多孔質通気性基材(31)が、天然の繊維又は合成繊維のいずれかからなる繊維を立体的に集合してなる繊維質材料である請求項1に記載される脱臭断熱建材パネル。
【請求項4】
前記消炭(3)が、表面をエマルジョンタイプの接着剤からなる通気性を有する薄膜コーティング層(7)で被覆されて、互いに分離された粒状で前記区画チャンバー(32)に充填されてなる請求項1に記載される脱臭断熱建材パネル。
【請求項5】
前記消炭(3)の表面を被覆してなる薄膜コーティング層(7)が酢酸ビニル樹脂である請求項4に記載される脱臭断熱建材パネル。
【請求項6】
前記消炭(3)が、所定の形状に固化されて多孔質通気性基材(31)の区画チャンバー(32)に充填されてなる請求項1に記載される脱臭断熱建材パネル。
【請求項7】
前記消炭(3)が、繋ぎ繊維とバインダー(4)とで固化されて前記区画チャンバー(32)に充填されてなる請求項6に記載される脱臭断熱建材パネル。
【請求項8】
前記多孔質通気性基材(31)の区画チャンバー(32)に、消炭(3)に加えて炭酸カルシウムを充填してなる請求項1に記載される脱臭断熱建材パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−156163(P2010−156163A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335585(P2008−335585)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(509006174)
【出願人】(306012628)
【Fターム(参考)】