説明

脱臭材の再粉化方法およびそれを用いた電気掃除機

【課題】脱臭性能を容易に増減でき、安定した脱臭効果を得ることができる脱臭材の再粉化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】脱臭粉体とバインダーと水を混合、成形、乾燥および焼成して固形化した空気質浄化用の脱臭材1を備え、この脱臭材1の表層に対して再粉化手段4により脱臭材1の一部を元の粉体状態に戻すようにしたものである。これにより、固形化した脱臭材1を部分的に元の粉体状態に戻すので、再粉化量も定量的に調整でき、再粉化した脱臭粉体は新品の状態と同等の安定した脱臭効果を発現し、効果的な臭気除去を行うこととなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気質浄化用の脱臭材を備えた脱臭材の再粉化方法およびそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住環境の快適性が求められる中、塵埃、臭気、細菌などに対する低減、除去については関心が高い。したがって、電気掃除機においても、クリーン機能向上へのニーズが年々高まっており、特に、排気に含まれる臭気対策として、集塵室内の空間に消臭芳香剤を設置したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2810090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、消臭芳香剤は、周囲温度により気化放散量が増減するため、臭気レベルに応じて気化放散量を制御することができず、消臭効果が年間を通じて安定しないという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、脱臭性能を容易に増減でき、安定した脱臭効果を得ることができる脱臭材の再粉化方法およびそれを用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の脱臭材の再粉化方法は、脱臭粉体とバインダーと水を混合、成形、乾燥および焼成して固形化した空気質浄化用の脱臭材を備え、この脱臭材の表層に対して物理的接触を加えることで脱臭材の一部を元の粉体状態に戻すようにしたものである。
【0006】
これにより、固形化した脱臭材を部分的に元の粉体状態に戻すので、再粉化量も定量的に調整でき、再粉化した脱臭粉体は新品の状態と同等の安定した脱臭効果を発現し、効果的な臭気除去を行うこととなる。
【0007】
また、本発明の電気掃除機は、脱臭材の再粉化方法により再粉化した脱臭粉体を、吸引した塵埃に混合させるようにしたものである。
【0008】
これにより、臭気発生の原因となる塵埃に、脱臭材から部分的に再粉化させた脱臭粉体を混合させることができ、塵埃の臭気の放出を封じ込め、電気掃除機の排気に含まれる臭気を大幅に低減させることとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の脱臭材の再粉化方法およびそれを用いた電気掃除機は、脱臭性能を容易に増減でき、安定した脱臭効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、脱臭粉体とバインダーと水を混合、成形、乾燥および焼成して固形化した空気質浄化用の脱臭材を備え、この脱臭材の表層に対して物理的接触を加えることで脱臭材の一部を元の粉体状態に戻す脱臭材の再粉化方法とすることにより、固形化した脱臭材を部分的に元の粉体状態に戻すので、再粉化量も定量的に調整でき、再粉化した脱臭粉体は新品の状態と同等の安定した脱臭効果を発現し、効果的な臭気除去を行うこととなる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、物理的接触を加える手段は、脱臭材の表面に線接触し、かつ前記表面を剪断的に移動する再粉化手段を用いて、脱臭材を粉体状態に戻すことにより、脱臭材の一定幅の表面部分を精度良く元の粉体状態に戻し、再粉化した脱臭粉体の粒度のばらつきも少なくすることができ、再粉化後も固形前と同等の脱臭性能を得ることができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、物理的接触は、脱臭材の下面部分に対して接触を加えることにより、脱臭材の自重により再粉化手段に対して密着し易くなり、より再粉化の効率が高まる。
【0013】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明において、再粉化手段は、脱臭材表面上を剪断的に移動する方向軸に対して、線接触部の長手方向の角度を10度から90度の範囲に保持したことにより、脱臭材の固さや形状に応じて、再粉化手段が脱臭材に接触する際の剪断抵抗を任意に調整でき、脱臭材と再粉化手段間の剪断動作を安定的に行うことができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第2〜第4のいずれか1つの発明において、再粉化手段の線接触部は、脱臭材表面に接触している先端の厚みが1ミリメートル以内であることにより、脱臭材表層をできる限り薄く剪断することになり、再粉化後の脱臭粉体を固形化前の状態により近づけることができるのに加え、1ミリメートル以内で先端の厚みを変化させることで、細かい粒度を維持しながら、剪断単位毎の再粉化量を調整することができる。
【0015】
第6の発明は、特に、第2〜第5のいずれか1つの発明において、再粉化手段の線接触部の先端は、脱臭材表面の法線方向軸に対して0度から90度の範囲内の角度保持して線接触していることにより、再粉化後の粒度のばらつきを任意に調整することができ、脱臭材の固形化強度に応じて、粒度分布を最適に維持することができる。
【0016】
第7の発明は、特に、第2〜第6のいずれか1つの発明において、再粉化手段の線接触部と並行に、先端が起毛処理された起毛接触部を設けたことにより、再粉化手段により剪断された脱臭材の表面を連続して起毛接触部が通過するため、再粉化後に脱臭材表面に残留している脱臭粉体も確実に脱離させることができ、剪断単位毎の再粉化の効率を高めることができる。
【0017】
第8の発明は、特に、第2〜第7のいずれか1つの発明において、脱臭材と再粉化手段の少なくとも一方に振幅動作を発生させるようにしたことにより、脱臭機能を必要とするアプリケーションの使用条件に柔軟に対応し、確実に脱臭材を再粉化させて臭気の除去に供することができる。
【0018】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明における脱臭材の再粉化方法を用い、吸引した塵埃に脱臭粉体を混合させるようにした電気掃除機とすることにより、臭気発生の原因となる塵埃に、脱臭材から部分的に再粉化させた脱臭粉体を混合させることができ、塵埃の臭気の放出を封じ込め、電気掃除機の排気に含まれる臭気を大幅に低減させることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1〜図7は、本発明の実施の形態1における脱臭材の再粉化方法を示している。
【0021】
図1は、固形化した空気質浄化用の脱臭材1は、脱臭粉体2と脱臭粉体2を粉体単位で結着させるバインダー3と水とを混合、成形、乾燥および焼成して構成されている。
【0022】
前記脱臭粉体2としては、物理吸着作用を持つ活性炭、ゼオライトなど、また化学吸着作用を持つ二酸化マンガン、酸化銅、酸化コバルト、無機酸化物などを用い、脱臭対象の臭気の種類に応じて選択することで最良の脱臭効果を得ることができる。また、脱臭粉体2として用いる原料の一次粒子径に関しては、30ミクロン未満のものを用いるのが好ましく、特に、脱臭特性、固形化時の寸法、臭気を発生する物質に対する付着性などに影響する、比表面積、嵩密度、帯電性などの物性を考慮すると、10ミクロン未満の粒子径の粉体を原料として、用いると尚好ましい。
【0023】
前記バインダー3としては、水ガラス、コロイダルシリカ、リン酸アルミニウムなどを用い、各種バインダー3を組み合わせて使用したり、脱臭粉体2への配合比を増減させたりして脱臭粉体2を固形化し、脱臭材1を作製することで、固形後の脱臭材1に一定の切削応力を加えた際の再粉化量、および脱臭材1の耐衝撃強度を最適化することができる。
【0024】
本実施の形態では、脱臭粉体2としてゼオライト、バインダー3としてコロイダルシリカを使用し、配合比をゼオライト100重量部に対して、コロイダルシリカ20重量部を加水しながら添加し、混練後、角型状に成形し、150℃で乾燥後、続けて600℃で焼成し、質量20g、容積35ccの脱臭材1を得た。なお、前記ゼオライトは、一次粒子径が10ミクロン未満のゼオライトを使用した。
【0025】
本実施の形態における脱臭材の再粉化方法は、このようにして固形化した脱臭材1の表層に対して物理的接触を加えることで脱臭材1の一部を元の粉体状態に戻すものである。この物理的接触を加える手段としては、図2に示すように、脱臭材1の表面に線接触し、かつ前記表面を剪断的に移動する再粉化手段4を用いて、脱臭材1を粉体状態に戻すようにしている。
【0026】
前記再粉化手段4は、脱臭材1に対して切削板5が四角枠内に複数枚均等に組み込まれた構成であり、前記構成により切削板5の端面が脱臭材1に対する線接触部6となり、並んだ切削板5の上に脱臭材1を置き、例えば、図3に示すように、再粉化手段4を脱臭材1に対して、剪断的に動かすことで、切削板5の線接触部6が脱臭材1の下面部分の表面層を一定幅削り、削られた脱臭材1は、構造中のバインダー3の結合を崩壊し、脱臭粉体2の状態に戻りながら、切削板5間の隙間を通過して落下することとなる。
【0027】
また、切削板5は、図2(a)に示すように、剪断的に移動する方向軸と切削板5の長手方向との間が所定の角度で維持されており、本実施の形態では、前記角度は60度の角度になるように固定されている。またさらに、切削板5は、図2(b)に示すように接する脱臭材1表面の法線方向軸に対しても所定の角度が維持されており、本実施の形態では、前記角度は、45度の角度になるように固定されている。これらの切削板5の設置角度は、剪断毎の単位粉化量、剪断時の動作抵抗、再粉化後の脱臭粉体における粒度分布の調整などに重要な因子となるため、脱臭材1の形状や、固形化状態に応じて最適な角度を設定するのが好ましい。
【0028】
また、切削板5の厚み、つまり脱臭材1に線接触する幅は、1ミリメートル以下とするのが、脱臭材1全体を崩壊させずに表面層のみを局所的に切削できる点で好ましく、本実施の形態では、厚みが0.3ミリメートルの切削板5を用いている。なお、前記切削板5の材質に関しては、金属、樹脂、セラミックなどを用いることができ、耐久性の点より金属を用いるのがより好ましい。
【0029】
以上の様な構成を用いて、本実施の形態における脱臭材の再粉化方法の効果について検討する。
【0030】
(実験例1)
上記の脱臭材1、再粉化手段4を組み合わせた治具例を、図4に示す。図4(a)は、脱臭材1と再粉化手段4を所定の収納枠7に組み込み、前記収納枠7の壁面に設置したガイド8に沿って再粉化手段4がスライドし、脱臭材1を再粉化させる構造であり、さらに再粉化手段4のスライド方向の両端には、バネなどの弾性手段9が取り付けてあり、外部より治具に対して一定の力が加わり、再粉化手段4に振幅動作が発生すると、前記振幅動作が弾性手段9の作用により継続する構成となっている。
【0031】
図4(b)は、図4(a)とは逆に、外部より治具に対して一定の力が加わった場合に、脱臭材1が再粉化手段4上を剪断的に移動し、再粉化を行う構成である。
【0032】
以上に示したように、脱臭材1、または再粉化手段4を剪断的に動作させることができれば、脱臭材1を、切削板5により表層を削り、部分的に脱臭粉体2に戻すことができ、上記作用を発現させる構成であれば、図4(a)、図4(b)の構成に限定されるものではない。
【0033】
本実験例では、図4(a)の治具を用い、脱臭材1を再粉化させた。治具を手動で揺すると、再粉化手段4が振幅を連続的に繰り返し、治具下面より粉体が落下した。1分間再粉化動作を繰り返した結果、約0.3gの脱臭粉体2が回収できた。
【0034】
この再粉化させた脱臭粉体2を、ガロン瓶に封入し、ガロン瓶内に臭気物質として、アセトアルデヒドを注入し、内部の濃度が500ppmになるように調整し、24時間、25℃雰囲気で放置した。同様に、新品の脱臭粉体2も同量をガロン瓶に封入し、同様のガロン瓶試験を行い比較例とした。
【0035】
24時間後、ガロン瓶内のアセトアルデヒド濃度を測定した結果、実験例が、1.8ppm、比較例が1.6ppmとなっており、再粉化させた脱臭粉体2は、新品時のものとほぼ同等の脱臭性能が確保できることを確認した。
【0036】
(実験例2)
本実施の形態の再粉化させた脱臭粉体2の粒度分布を測定した。比較例として、新品の脱臭粉体2の粒度分布も測定した。
【0037】
図5に示す脱臭粉体2の粒度分布の測定結果より、本実施の形態の粒度分布は、10ミクロン未満の分布が大半を占めており、新品の脱臭粉体2の比較例に近い分布を確保できていることがわかった。これにより、本実施の形態により、固形化された脱臭材1から再粉化した脱臭粉体2は、新品の状態に近い粒度まで戻すことができる。
【0038】
(実験例3)
本実施の形態の再粉化手段4における切削板5の取付角度、線接触部6となる板の厚みを変化させた場合の再粉化特性を測定した。
【0039】
図6は、本実施の形態の再粉化手段4において、剪断的に移動する方向軸と切削板5の長手方向との間の角度を変化させた場合に脱臭材1と切削板5間に発生する抵抗力を測定したものである。測定結果より、角度が75度より大きくなるにしたがい、抵抗力が急激に増加し、再粉化手段4がスムーズに動かなくなることを確認した。
【0040】
以上のことから、剪断的に移動する方向軸と切削板5の長手方向との間の角度は、75度より小さい角度を維持するのが、脱臭材1の再粉化を効率よく行う点でより好ましいが、10度から90度の範囲に保持することにより、脱臭材1の固さや形状に応じて、再粉化手段4が脱臭材1に接触する際の剪断抵抗を任意に調整できる。
【0041】
図7は、本実施の形態の再粉化手段4において、切削板5が脱臭材1に線接触している幅、つまり切削板5の板厚を変化させた場合の、剪断動作1回あたりの再粉化量を測定した結果である。また、図7には、脱臭材1に接する面の法線方向軸に対する切削板5の角度を変化させて、同様の粉化量を測定した結果も示す。
【0042】
切削板5の厚みが増すと、再粉化量は、一定の割合で増加するが、特に、1ミリメートル以上の厚みになると、急激に再粉化量が増し、再粉化後の脱臭粉体2中にも顆粒状のものも観られ、脱臭材1が粉化されずに欠けなどが生じやすいことが判った。このことから、切削板5の厚みは1ミリメートル以内で設定することで、再粉化量を安定的に調節することができる点で好ましい。
【0043】
また、脱臭材1に接する切削板5の接触角度は、切削面の法線方向軸に対して0度、つまり切削面に対して垂直に接する場合には、非常に再粉化量が少なく、45度から90度の範囲内では、再粉化量の大幅な変化が起きないことが判った。このことから、切削板5の接触角度は、0度から90度の範囲内で設定することができるが、45度から90度の範囲内で設定すれば、再粉化量を安定的に調節することができるのでより好ましい。
【0044】
以上のように、本実施の形態は、脱臭材1を切削板5の端面で線接触させて剪断的に動かすことにより、得られる脱臭粉体2は、新品の脱臭粉体2の粒度分布と同等レベルまで再粉化されており、脱臭性能も新品と同等性能を確保できる。また、切削板5の取付角度、板厚を最適化することで、再粉化量の調節も容易に行うことができる。
【0045】
なお、脱臭作用を有する粉体を固形化した脱臭材1の表面に物理的接触を加えて、部分的に元の脱臭粉体2に戻す方法を用いることで、粉化させる量を調節できるため、脱臭性能を容易に増減できる。また、従来のように消臭芳香剤を気化放散させる方式と異なり、粉化させた量を目視などでも認識できるため、脱臭実施の有無も容易に判定できる。さらに、無臭の脱臭材1を用いれば、粉体に戻した場合でもそれ自体が異臭の原因になることはない。
【0046】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における脱臭材の再粉化方法を示すものである。実施の形態1と基本構成は同じであるので、相違点を中心に説明する。
【0047】
本実施の形態における脱臭材の再粉化方法は、再粉化手段4の線接触部、すなわち各切削板5と並行に、先端が起毛処理された起毛接触部10を設けたものである。起毛接触部10は柔軟で、線径の細い起毛を用いるのが好ましい。
【0048】
これにより、再粉化手段4により剪断された脱臭材1の表面を連続して起毛接触部10が通過するため、再粉化後に脱臭材1表面に残留している脱臭粉体2も確実に脱離させることができ、剪断単位毎の再粉化の効率を高めることができる。
【0049】
(実験例1)
本実施の形態における起毛接触部10を有する再粉化手段4を用いて、脱臭材1を再粉化した。比較例として起毛接触部10が無い再粉化手段4を用いて、同様に再粉化した。50回剪断後の再粉化量を測定した結果、本実施の形態は約1g、比較例は約0.8gの再粉化量となり、本実施の形態によれば、脱臭材1の剪断面の脱臭粉体2を効率よく脱離させることができることを確認した。
【0050】
以上のように、再粉化手段4により剪断された脱臭材1の表面を連続して起毛接触部10が通過するため、再粉化後に脱臭材1表面に残留している脱臭粉体2も確実に脱離させることができ、剪断単位毎の再粉化の効率を高めることができる。
【0051】
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3における電気掃除機を示している。
【0052】
本実施の形態における電気掃除機は、実施の形態1または2における脱臭材の再粉化方法を用い、吸引した塵埃に脱臭粉体を混合させるようにしたものである。
【0053】
具体構成は、電気掃除機の本体11内に、集塵袋を備えた集塵室12および電動送風機13が配置されており、また、本体11前部に、集塵室12と連通して、吸引口14が開口しており、床面などから塵埃を吸引、導入するための吸引管15が接続されている。掃除作業は、電動送風機13の作動により吸引風を発生させて、塵埃を吸引することにより、吸引管15を経て、塵埃が集塵室12に貯留し、除塵手段を通過して細塵が除去された状態で吸引気流のみが本体11外へ排出される。そして、集塵室12以前の吸引管15の連通上部には、脱臭材1を再粉化するための再粉化手段4が脱臭材1とともに収納枠7内に組み込まれており、図4(a)の治具と同様の構成および動作で脱臭材1を再粉化し、再粉化後の脱臭粉体2が吸引管15中に投入される構成である。
【0054】
以上の構成により、電動送風機13を作動させて掃除作業を行った場合、本体11が移動した際の振動により、再粉化手段4が振幅し、脱臭材1から部分的に再粉化させるため、再粉化後の脱臭粉体2は、吸引管15を経て集塵室12に到達し、集塵室12に吸引された臭気発生の原因となる塵埃に混合させることができる。これにより、塵埃の臭気の放出を封じ込め、電気掃除機の排気に含まれる臭気を大幅に低減させることができる。
【0055】
次に、本実施の形態における脱臭材の再粉化方法を用いた電気掃除機の効果について検討する。
【0056】
(実験例1)
上記構成の電気掃除機を用いて、実部屋の掃除を15分間行った。対照実験として、脱臭材1なし条件の電気掃除機を用いての実部屋の掃除も15分間行い、この実部屋掃除を、30日間続けた。排気臭気に対して官能的に意識しながら、掃除作業を継続した結果、脱臭材1なしの対照実験の電気掃除機は、7日目くらいから運転開始直後の排気の臭気が気になったが、本実施の形態の電気掃除機は、実験開始30日目の試験終了時点でも、運転開始時、運転中とも排気の臭気が気になることはなかった。
【0057】
次に、これらの電気掃除機を、1mの密閉チャンバー内にセットし、1日静置したのち30秒間運転させた。チャンバー内の空気を男女混成の官能評価パネラー6名で、臭い嗅ぎ官能評価を行った。結果は、本実施の形態では、平均の臭気強度が0.6であったのに対して、対照実験の脱臭材1なし条件のものは、平均の臭気強度は3.0であり、定量的にも臭気強度が大幅に低減されていることを確認した。臭気強度1が臭いの検知閾値であることを考慮に入れると、本実施の形態は、臭気のない排気を実現している。
【0058】
また、本実施の形態のものも対象実験のものもも、集塵室12内の塵埃は、ほぼ70g吸引しており、一方、脱臭材1の重量を測定すると、0.72g重量が減少していた。つまり、集塵室12内の塵埃に対して約1wt%投入されたことになる。排気臭の官能評価の結果と併せて考えると、脱臭材1の投入量は、塵埃量に対して1wt%投入されていれば十分であることがわかる。
【0059】
以上の結果より、本実施の形態のように、脱臭材の再粉化方法を電気掃除機に搭載し、掃除作業を行うことで、脱臭材1は、確実に部分的な再粉化が起きて、集塵室12に投入され、集塵気流の影響により塵埃と均一に混じり合い、また、再粉化後の脱臭粉体2は、新品時とほぼ同等の状態まで再粉化されているため、塵埃から発生する臭気を抑制することができ、掃除作業時において、室内の空気環境が悪化することはない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる脱臭材の再粉化方法およびそれを用いた電気掃除機は、脱臭性能を容易に増減でき、安定した脱臭効果を得ることができるので、家庭用掃除機の他に業務用掃除機、さらには生ゴミ処理機などの脱臭用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1における脱臭材の再粉化方法の脱臭材を示す斜視図
【図2】(a)同脱臭材の再粉化手段を示す上面図(b)同再粉化手段を示す側断面図
【図3】同脱臭材と再粉化手段の動作の流れを示す動作説明図
【図4】(a)同脱臭材と再粉化手段を組み合わせた治具の一例を示す側断面図(b)同他の例を示す側断面図
【図5】同治具を用いて再粉化させた脱臭粉体と比較例との粒度分布を示す図
【図6】同治具の切削板の設置角度と脱臭材剪断時の抵抗力の関係を示すグラフ
【図7】同治具の切削板の板厚と再粉化量の関係を示すグラフ
【図8】本発明の実施の形態2における脱臭材の再粉化方法の再粉化手段を示す側断面図
【図9】本発明の実施の形態3における脱臭材の再粉化方法を用いた電気掃除機の断面図
【符号の説明】
【0062】
1 脱臭材
2 脱臭粉体
3 バインダー
4 再粉化手段
5 切削板
6 線接触部
10 起毛接触部
11 本体
12 集塵室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭粉体とバインダーと水を混合、成形、乾燥および焼成して固形化した空気質浄化用の脱臭材を備え、この脱臭材の表層に対して物理的接触を加えることで脱臭材の一部を元の粉体状態に戻す脱臭材の再粉化方法。
【請求項2】
物理的接触を加える手段は、脱臭材の表面に線接触し、かつ前記表面を剪断的に移動する再粉化手段を用いて、脱臭材を粉体状態に戻す請求項1に記載の脱臭材の再粉化方法。
【請求項3】
物理的接触は、脱臭材の下面部分に対して接触を加える請求項1または2に記載の脱臭材の再粉化方法。
【請求項4】
再粉化手段は、脱臭材表面上を剪断的に移動する方向軸に対して、線接触部の長手方向の角度を10度から90度の範囲に保持した請求項2または3に記載の脱臭材の再粉化方法。
【請求項5】
再粉化手段の線接触部は、脱臭材表面に接触している先端の厚みが1ミリメートル以内である請求項2〜4のいずれか1項に記載の脱臭材の再粉化方法。
【請求項6】
再粉化手段の線接触部の先端は、脱臭材表面の法線方向軸に対して0度から90度の範囲内の角度保持して線接触している請求項2〜5のいずれか1項に記載の脱臭材の再粉化方法。
【請求項7】
再粉化手段の線接触部と並行に、先端が起毛処理された起毛接触部を設けた請求項2〜6のいずれか1項に記載の脱臭材の再粉化方法。
【請求項8】
脱臭材と再粉化手段の少なくとも一方に振幅動作を発生させるようにした請求項2〜7のいずれかに1項に記載の脱臭材の再粉化方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱臭材の再粉化方法を用い、吸引した塵埃に脱臭粉体を混合させるようにした電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−35119(P2006−35119A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219728(P2004−219728)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】