説明

脱臭装置

【課題】簡単な構成で吸収液中のアンモニア性窒素を長期にわたって効率よく除去することができる脱臭装置を提供する。
【解決手段】排気ガス中のアンモニア性窒素を吸収液に吸収させる排気洗浄装置11と、アンモニア性窒素を吸収した吸収液を曝気処理してアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素とする硝化装置12と、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素と残留するアンモニア性窒素とを含む硝化液中の硝酸性窒素を嫌気性アンモニア酸化細菌により還元して亜硝酸性窒素にするとともに、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて脱窒する無機窒素除去装置13とを備え、硝化装置内の硝化液におけるアンモニア性窒素の濃度を、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度の1.3倍以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭装置に関し、詳しくは、排気ガス中のアンモニア性窒素を吸収液に吸収させることにより排気ガス中から除去して脱臭処理するとともに、吸収液に吸収したアンモニア性窒素を生物学的に除去する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス中の臭気成分であるアンモニア性窒素を吸収液に吸収させて排気ガス中から除去することにより、排気ガスの脱臭処理を行うとともに、アンモニア性窒素を吸収した吸収液中のアンモニア性窒素の一部を亜硝酸化細菌によって硝酸が生成しないように亜硝酸化して亜硝酸アンモニウムを生成し、アナモックス細菌によってアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを生物学的に反応させて脱窒処理することにより、アンモニア性窒素を除去することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−34726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたものでは、硝酸が生成しないように亜硝酸化するようにしているが、亜硝酸化細菌を完全に排除することは不可能であり、亜硝酸化の際に硝酸が生成することは避けられないため、運転の継続により系内に硝酸が蓄積して次第にpHが低下し、所定の脱臭処理や脱窒処理が困難になるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構成で吸収液中のアンモニア性窒素を長期にわたって効率よく除去することができる脱臭装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の脱臭装置は、排気ガス中に含まれるアンモニア性窒素を吸収液に吸収させる排気洗浄装置と、該排気洗浄装置で前記アンモニア性窒素を吸収したアンモニア吸収液を曝気処理することにより前記アンモニア性窒素の一部を硝化して亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を生成する硝化装置と、該硝化装置で生成した亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素と残留するアンモニア性窒素とを含む硝化液中の前記硝酸性窒素を嫌気性アンモニア酸化細菌により還元して亜硝酸性窒素にするとともに、前記アンモニア性窒素と前記亜硝酸性窒素とを前記嫌気性アンモニア酸化細菌により反応させて前記硝化液中から除去する無機窒素除去装置とを備え、前記硝化装置内の硝化液における前記アンモニア性窒素の濃度が、前記亜硝酸性窒素及び前記硝酸性窒素の合計濃度の1.3倍以上に設定されていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の脱臭装置は、前記硝化装置内の硝化液の少なくとも一部を前記排気洗浄装置に吸収液として供給する経路を備えていること、また、前記硝化装置内の硝化液における前記硝酸性窒素の濃度が、前記亜硝酸性窒素の濃度の20%以下に設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脱臭装置によれば、硝化装置における曝気処理によってアンモニア性窒素の一部を所定の濃度範囲で亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素とし、生成した硝酸性窒素は、次の無機窒素除去装置で嫌気性アンモニア酸化細菌により還元して亜硝酸性窒素にするので、系内に硝酸が蓄積することはなく、長期間の連続運転が可能となる。また、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の生成によりpHが低下した硝化装置内の硝化液の少なくとも一部を吸収液として使用することにより、排気ガス中のアンモニア性窒素の吸収効率を向上させることができるとともに、排気ガス中の酸素と硝化液とが接触することにより、硝化液中のアンモニア性窒素を酸化して亜硝酸性窒素や硝酸性窒素とすることができるので、曝気処理における曝気量を少なくすることができる。さらに、硝酸性窒素の濃度を亜硝酸性窒素の濃度に比べて低く抑えることにより、無機窒素除去装置での還元処理や脱窒処理を、より効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の脱臭装置の第1形態例を示す系統図である。
【図2】本発明の脱臭装置の第2形態例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図1に示す第1形態例の脱臭装置は、排気ガス中に含まれるアンモニア性窒素を吸収液に吸収させる排気洗浄装置11と、該排気洗浄装置11で前記アンモニア性窒素を吸収したアンモニア吸収液(以下、単に吸収液ということがある。)を曝気処理する硝化装置12と、該硝化装置12からの硝化液を嫌気性アンモニア酸化細菌により生物学的に処理して脱窒処理を行う無機窒素除去装置13とを備えている。
【0011】
臭気成分であるアンモニア性窒素を含む排気ガスは、排気ガス導入経路21から排気洗浄装置11に導入され、吸収液導入経路22から排気洗浄装置11に導入される吸収液と気液接触し、アンモニア性窒素が吸収液中に吸収されて脱臭処理が行われる。脱臭処理後の排気ガスは、洗浄済み排気経路23を通って排気洗浄装置11から排出される。
【0012】
アンモニア性窒素を吸収して溶解した吸収液は、アンモニア含有吸収液経路24を通って硝化装置12に導入され、該硝化装置12に設けられた曝気装置によって曝気処理が行われる。アンモニア吸収液中のアンモニア性窒素は、曝気空気中の酸素と反応して硝化され、アンモニア性窒素の一部が亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素となる。
【0013】
NH+ 3/2O→NO + HO + 2H
NO + 1/2O→NO
この硝化装置12では、吸収液中のアンモニア性窒素の全量を硝化させずに、アンモニア性窒素の濃度が、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度の1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上になるように曝気処理量を調節する。さらに、硝化装置12内の硝酸性窒素の濃度は、亜硝酸性窒素の濃度の20%以下になるように調整することが好ましい。また、好ましい亜硝酸性窒素濃度は300〜500mg/Lであり、硝化装置12にpH計やORP計を設置し、これらの計測値の変動に基づいて亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の濃度を推測し、曝気量の制御にフィードバックすることにより、硝化装置12内の硝化液における前記アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素の濃度を最適な範囲に制御することができる。例えば、硝化装置12内の硝化液のpHを測定し、pHが7.0〜7.5の範囲に収まるように曝気量を調節することにより、効果的に硝化反応させることができる。
【0014】
硝化装置12で硝化処理された硝化液は、少なくともその一部が前記吸収液導入経路22を経て排気洗浄装置11に導入され、排気ガス中のアンモニア性窒素を吸収するための吸収液として用いられる。硝化液は、亜硝酸及び硝酸の生成によりpHが低くなっているため、排気洗浄装置11におけるアンモニア性窒素の吸収効率を高めることができるとともに、排気ガス中の酸素と硝化液とが接触することにより、硝化液中のアンモニア性窒素を酸化して亜硝酸性窒素や硝酸性窒素とすることができるので、曝気処理における曝気量を少なくすることができ、曝気に要するエネルギーを削減することができる。
【0015】
硝化装置12の硝化液の残部は、硝化装置12から硝化液経路25を通って無機窒素除去装置13に送られる。この無機窒素除去装置13内には、嫌気性アンモニア酸化細菌が投入されており、無機窒素除去装置13内に流入した硝化液中に残存しているアンモニア性窒素と、前記硝化処理で生成した亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素とが嫌気性アンモニア酸化細菌の作用で反応して窒素分が硝化液中から除去される。窒素分が除去された処理液は、循環経路26を通って硝化装置12に循環する。
【0016】
このときのアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素との嫌気性アンモニア酸化反応は、
NH + 1.32NO → 1.02N + 0.26NO
であり、同時に、
NO → NO
という反応が進行して硝酸性窒素が亜硝酸性窒素に還元され、この還元反応で生成した亜硝酸性窒素は、前記嫌気性アンモニア酸化反応でアンモニア性窒素と反応して脱窒される。
【0017】
したがって、無機窒素除去装置13での脱窒に必要なアンモニア性窒素濃度は、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度に対して、
NH・N = 0.76(NO・N) + 0.76×0.26(NO・N) = 0.95N
であり、理論的には、アンモニア性窒素濃度が亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度と同等でよいことになるが、実験を通じて得た実際の反応では、アンモニア性窒素濃度を、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度に対して1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上になるように前記硝化装置12における処理条件を設定することにより、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の脱窒を効率よく行うことができる。また、このときの無機窒素除去装置13内は、pH7.5〜8.0であることが好ましい。
【0018】
なお、無機窒素除去装置13に流入する硝化液中の亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度に対するアンモニア性窒素濃度が高すぎる場合は、アンモニア性窒素の処理量が低下するため、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度に対するアンモニア性窒素濃度は、2.0倍以下に設定することが好ましく、通常は、1.5倍になるように硝化装置12における曝気処理条件を設定することが望ましい。また、亜硝酸性窒素濃度が低すぎたり、高すぎたりしても嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒効率が低下するため、亜硝酸性窒素濃度は、前述のように100〜500mg/Lに調整することが好ましい。
【0019】
このように、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計濃度に対するアンモニア性窒素濃度を1.3倍以上に設定して嫌気性アンモニア酸化細菌の作用で脱窒処理を行うことにより、生成した亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を効果的に除去することができ、系内での硝酸の蓄積を防止して長期間の連続運転を可能とすることができる。
【0020】
また、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の生成によりpHが低下した硝化装置12内の硝化液の少なくとも一部を排気洗浄装置11の吸収液として使用することにより、排気洗浄装置11での排気ガス中のアンモニア性窒素の吸収効率を向上させることができるとともに、排気ガス中の酸素と硝化液とが接触することにより、硝化液中のアンモニア性窒素を酸化して亜硝酸性窒素や硝酸性窒素とすることができるので、硝化装置12での曝気処理における曝気量を少なくすることができる。
【0021】
さらに、硝化装置12において、生成する硝酸性窒素の濃度が亜硝酸性窒素の濃度の20%以下になるように調整することにより、無機窒素除去装置13での脱窒処理を効率よく行うことができ、硝酸が系内に蓄積することをより確実に防止することができる。
【0022】
また、図2に示すように、吸収液導入経路22に補給水導入経路27を設けるとともに、循環経路26に排水経路28を設けることにより、系内の液量などを調整することができる。
【符号の説明】
【0023】
11…排気洗浄装置、12…硝化装置、13…無機窒素除去装置、21…排気ガス導入経路、22…吸収液導入経路、23…洗浄済み排気経路、24…アンモニア含有吸収液経路、25…硝化液経路、26…循環経路、27…補給水導入経路、28…排水経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中に含まれるアンモニア性窒素を吸収液に吸収させる排気洗浄装置と、該排気洗浄装置で前記アンモニア性窒素を吸収したアンモニア吸収液を曝気処理することにより前記アンモニア性窒素の一部を硝化して亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を生成する硝化装置と、該硝化装置で生成した亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素と残留するアンモニア性窒素とを含む硝化液中の前記硝酸性窒素を嫌気性アンモニア酸化細菌により還元して亜硝酸性窒素にするとともに、前記アンモニア性窒素と前記亜硝酸性窒素とを前記嫌気性アンモニア酸化細菌により反応させて前記硝化液中から除去する無機窒素除去装置とを備え、前記硝化装置内の硝化液における前記アンモニア性窒素の濃度が、前記亜硝酸性窒素及び前記硝酸性窒素の合計濃度の1.3倍以上に設定されていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
前記硝化装置内の硝化液の少なくとも一部を前記排気洗浄装置に吸収液として供給する経路を備えていることを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記硝化装置内の硝化液における前記硝酸性窒素の濃度が、前記亜硝酸性窒素の濃度の20%以下に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−274160(P2010−274160A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126705(P2009−126705)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【出願人】(500119905)伊藤忠林業株式会社 (2)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】