説明

脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置及びこれを用いる引戸装置

【課題】車輪の高さ調整を容易に行うことができながら、脱輪を防止して引戸の安全性向上を図ることができ、構造的に簡素で耐久性に優れ、又、引戸の下部の強度向上を図り得る戸車装置を具備する引戸装置を提供する。
【解決手段】引戸5の下部の両側に設けられた収容凹部6,6に戸車装置1,1が付設されている。引戸5の上部の両外側部分に、引戸の上端126の上方に突出して引戸の浮き上がり量を規制する規制突出片127が着脱可能に設けられている。戸車装置1は、下のレール7に沿って走行する車輪9を下方向に突出させて車輪9の高さを調整可能となされた車輪高さ調整装置10と、これを収容させる補強収容筐体11と、車輪9が下のレール7に常に接した状態となるように車輪9を下方向に付勢する押圧付勢具12を具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置に関するものであり、又、これを用いる引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学校や病院、福祉施設等における間仕切り用の引戸としては、高さが高く重量のある引戸が用いられている。例えば学校間仕切り用の引戸は、高さが1900〜3500mm程度と大きく、又、30〜50kg程度の重量物であり、図26、図27に示すように、該引戸aの下部の長さ方向の両側に設けられた下端開放の収容凹部b,bに戸車c,cが組み込まれている。かかる構成の引戸aは、間仕切り開口部を縁取る引戸枠にけんどん式に建て込まれ、又、該引戸枠からけんどん式に取り外される。
【0003】
より詳しく説明すれば、該引戸枠は、左右の縦枠の上端相互が上横枠で連結されると共にその下端相互が下横枠で連結されてなり、該上横枠の下面に上のレールが固定されると共に、該下横枠の上面に下のレールが固定されている。そして前記引戸を該引戸枠に建て込むに際しては、該引戸の上部を該上のレールのレール溝に嵌め入れて後、該引戸を降ろして前記戸車を前記下のレールに載せて行う。一方、該引戸を該間仕切り枠から取り外すに際してはこれと逆の操作を行う。
【0004】
この種の引戸aに用いられている戸車cには、図26(A)に示すような普通戸車c1と、図27(A)に示すような調整戸車c2があった。該普通戸車c1は、通常は図26(A)(B)に示すように、4〜5mm程度の比較的深い溝深さの周溝dを有する溝付きの車輪eが、支持枠fの対向する支持板部g,gで支持された支持軸hに回転自在に設けられてなるものであった。そして、該普通戸車c1を前記収容凹部bに取り付けるに際しては、図26(C)に示すように、該車輪eを該収容凹部bに収容した状態で、該支持枠fの両側に突設されている固定片j,jを、該収容凹部bの両側の固定面k,kにビス固定することとしていた。その際における車輪eの高さ調整は、該固定片jと該固定面kとの間に、例えば1mm厚さの調整プレートmの所要枚数を介在させて行っていたが、介在させる調整プレートmの枚数を変えながら何回か戸車を仮取付けして調整具合を見る必要があった。かかることから、車輪eの高さ調整に手間を要して作業性が悪い問題があった。
【0005】
一方前記調整戸車c2は、図27(A)(B)(C)に示すように、対向する側壁板部n,nを有する収容筐体p内に枠状のアームqが収容されてなり、該アームqの一端側sが、該側壁板部nで支持された枢軸tで該枢軸の軸線回りに上下方向で回動可能に枢着されていた。又、該アームqの他端側uの枠内部には、2.5mm程度の比較的浅い溝深さの周溝vを有する溝付きの車輪wが納められ、該車輪wは、該アームqの対向する支持板部x,xで支持された支持軸yに回転自在に設けられていた。
【0006】
そして該アームqは、常時は上方向に回動するようにコイルバネzにより付勢されると共に、高さ調整ネジa1の回転操作により、前記車輪wの高さを所要に調整できその調整状態を固定可能となされていた。そのため、かかる調整戸車c2によるときは、前記通常戸車c1とは異なり、戸車を引戸aに取り付けた状態で車輪の高さ調整をドライバーを用いて容易に行うことができる利点があった。
【0007】
又、前記収容筐体pの下端には、前記車輪wの走行方向の両側で固定片b1が突設されていた。そして該調整戸車c2を構成する車輪wの溝深さは、前記普通戸車c1の車輪eの溝深さ4〜5mm程度に比し浅く、2.5〜3mm程度であった。その理由は、前記普通戸車c1にあっては、車輪eを支持する支持枠fそのものが前記収容凹部bに収容されるのに対して、該調整戸車c2にあっては、車輪wを支持するアームqを収容する前記収容筐体pが前記収容凹部bに収容されることから、該調整戸車c2の車輪wの厚さは前記普通戸車c1の車輪に比して薄く、従って、その車輪wの溝深さは浅くならざるを得なかったのである。もしも、該調整戸車c2において車輪wの溝深さをより深く形成せんとする場合は、車輪の厚さが小さいために車輪が衝撃で割れる恐れがあったことから、かかる調整戸車の車輪wは、溝深さをそれ程深く形成できない事情があったのである。
【0008】
普通戸車c1の車輪eと調整戸車c2の車輪wの溝深さの違いから、引戸aが浮き上がったときには、調整戸車c2が付設されてなる引戸の方が、普通戸車c1が付設されてなる引戸よりも、車輪が下のレールd1から脱輪する恐れが高く、脱輪によって引戸が転倒する危険もあった。
【0009】
このような引戸の浮き上がりは、例えば次のような場合に生じやすかった。その一つとして、引戸を勢いよく閉めた際の跳ね返りによって脱輪する恐れがあった。特に学校間仕切りの引戸は頻繁に開け閉めされるために脱輪の恐れが高かった。又、引戸にその側面側から衝撃的な横荷重が加わったときも、引戸が浮き上がったり引戸が撓んだりして脱輪する恐れがあった。
【0010】
又、前記調整戸車c2は、間仕切り用の引戸aの下部に設けられた収容凹部bに収容され、前記調整戸車c2の固定片a1,a1が該収容凹部bの両側の固定面e1,e1にビス固定されることになるが、重量物である引戸の全重量が両側の調整戸車c2,c2で支持されることになるために、引戸aを開閉する際の衝撃荷重によって、前記対向する支持板部x,xや前記対向する側壁板部n,nが外側に異常に膨らんで前記枢軸tが該側壁板部n,nから外れる恐れがあり、調整戸車c2がその機能を失なう恐れがあった。
【0011】
又、前記引戸aは前記上下のレールにけんどん式に建て込まれるものであることから、前記上のレールのレール溝における引戸上端部分の引っ掛かり量は8mm程度と浅かった。かかることから、前記対向する支持板部x,xや側壁板部n,nが外側に膨らむことによって前記枢軸tが外れないまでも、かかる膨らみ変形によって引戸がその分だけ下がるため、引戸が浮き上がった場合の浮き上がり量が多くなり、これにより引戸aが外れ易くなる問題があった。
【0012】
特に引戸aが木製であるときは、前記固定片b1,b1が比較的小片であって前記固定面e1,e1に対する当接面積が小さいことから、重量のある引戸aに衝撃荷重が加わった場合に該固定片b1,b1が該固定面e1,e1にめり込む恐れもあり、このようにめり込んだ場合は、その分だけ引戸aが下がって、引戸aの上端とレール溝の溝底との間隔が大きくなり、引戸の浮き上がり量が多くなって引戸が外れ易くなった。
【0013】
又、このようにめり込んだときは、レール溝における引戸上端部分の引っ掛かり量が更に少なくなる問題が発生した。加えて前記のように、前記調整戸車c2の車輪wの溝深さが浅かったこともあり、引戸aの側面部に人がぶつかる等して衝撃的な横荷重が加わった場合に、引戸aが撓んで該引戸aが上下のレールから外れて転倒する恐れがあり、大変危険であった。
【0014】
又、前記普通戸車c1が組み込まれてなる引戸にあっても、前記調整戸車c2が組み込まれてなる引戸にあっても、前記収容凹部bの両側壁部e1,e1の肉厚は比較的薄く、従って、引戸の下部が横荷重に対して強度的に不安定化する恐れもあった。
【0015】
ところで、網戸が浮き上がる等の現象が生じてもこれがサッシ枠から外れないように構成された網戸用戸車が特開2006−342591号公報(特許文献1)や特開2005−9077号公報(特許文献2)等で提案されている。
【0016】
特許文献1記載の戸車は、戸車がスプリングにより下のレール側に付勢されることにより網戸が浮き上がる等の現象が生じてもサッシ枠から外れないように構成されており、且つ、建て込み時に戸車が邪魔にならないようにスプリングの付勢がロックされるようになされており、網戸の建て込み後には、ロックを解除して戸車を付勢方向に移動可能とするものであった。そして、サッシ枠への網戸の建て込みを完了後、網戸を持って戸車ユニットを下のレールに押圧せしめて車輪に荷重を加える操作を行うことにより、車輪のロック状態を解除する構成のものであった。
【0017】
又、特許文献2記載の戸車は、引戸に固定される外枠と該外枠に上下移動自在に取り付けられた内枠と、該内枠に取り付けられた車輪と、該引戸の重量を支え得る力よりも小さい力で内枠を下方に付勢するバネと、戸取外禁止位置と戸取外許容位置に切り換えられ且つ該各位置に保持され得るように外枠に取付けられたスライダーからなる切換部材とを具えており、引戸が持ち上げられても、内枠がバネの付勢力により下方に移動して車輪及び内枠が下のレールから外れないようになされていた。そして引戸を取り外すに際しては、前記スライダーを戸取外許容位置に移動させてその位置に保持させることにより、引戸を持ち上げることにより該引戸を窓枠から取外すことができるようになされていた。又、取り外された引戸を窓枠に取り付けた後は、前記スライダーを戸取外禁止位置に切り換えるだけで該引戸を使用状態にすることができる構成のものであった。
【0018】
このように従来の網戸用の戸車は、それ自体にロック解除機構が設けられていたことから、ロック状態を解除することにより、けんどん式により網戸の建て込みと取り外しを容易に行い得る利点があったが、これらの網戸用戸車を前記間仕切り用引戸に応用したとすれば、次のような問題を招来することになる。
【0019】
即ち、特許文献1に係る戸車を間仕切り用の引戸に応用したときは、子供が引戸で遊んで引戸にぶら下がったり、老人が引戸を伝い歩きする等して引戸に下方向に体重が掛かる等、引戸に下方向の荷重が加わった場合に、前記ロック状態が解除されてしまい、その結果、前記した引戸の浮き上がり現象が生じたときに車輪が脱輪して引戸の転倒を招く恐れがある。かかる戸車が、軽量な網戸に付設されている場合は、脱輪して例え網戸が転倒したとしても危険は少ないが、間仕切り用の引戸は前記のように重量物であるために、脱輪して引戸が転倒すると大変危険である。
【0020】
又、特許文献2記載の戸車にあっても、前記スライダーが引戸の下端側に設けられていたため、子供の悪戯や大人の不用意さ等によって前記スライダーが戸取外許容位置に移動されてしまうと、前記と同様の現象により引戸が浮き上がった場合に、車輪が脱輪して引戸の転倒を招く恐れがある。
【0021】
このように従来の網戸用の戸車は、網戸の外れ防止機能は発揮できても、安全性の観点から、これをそのまま間仕切り用の引戸に応用することはできなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006−342591号
【特許文献2】特開2005−9077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、車輪の高さ調整を容易に行うことができながら脱輪を防止して引戸の安全性向上を図り得る脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置の提供を課題とするものである。又、構造的に簡素で然も耐久性に優れる脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置の提供を課題とするものである。更に、戸車を付設するための収容凹部が設けられた引戸の下部の強度向上を図り得る脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置の提供を課題とするものである。又、引戸の建て込みとその取り外しを容易に行うことができながら、引戸の外れ防止、引戸の転倒防止を図り得る引戸装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置(以下戸車装置という)は、下のレールに沿って走行する車輪を下方向に突出させて車輪の高さを調整可能となされた車輪高さ調整装置と、該車輪高さ調整装置を収容させる補強収容筐体と、該車輪が前記下のレールに常に接した状態となるように該車輪を下方向に付勢する押圧付勢具を具えている。そして前記車輪高さ調整装置は、対向する側壁板部を有する収容筐体内にアームが収容されており、該アームの一端側が、前記対向する側壁板部で支持された枢軸で該枢軸の軸線回りに上下方向で回動可能に枢着されると共に、該アームの他端側には車輪が回転自在に設けられており、該アームは、常時は上方向に回動するように第1の付勢部材によって付勢されると共に、高さ調整具により、前記アームを下方向又は上方向に回動させて前記車輪の高さを所要に調整できると共にその調整状態を固定可能となされており、又、前記収容筐体の下端には、前記車輪の走行方向の両側で固定片が突設されている。又、前記補強収容筐体は、引戸の下部に設けられた下端開放の収容凹部に収容されるものであり、対向する側板部間で収容空所が形成され、該両側板部の上端相互が上面継ぎ部で連結されると共に、該対向する側板部の下端相互の両端側が夫々、下面継ぎ部で連結されて該下面継ぎ部間が導入開口部とされており、前記収容筐体を、該導入開口部を通して前記収容空所に収容させることができると共に、該収容された状態で、前記収容筐体が前記対向する側板部で挾持される如くなされ、この状態で、該収容筐体の前記固定片が前記下面継ぎ部にビス固定される如くなされており、又、前記上面継ぎ部は、前記収容凹部の頂面部にビス固定される如くなされている。又、前記押圧付勢具は、前記上面継ぎ部に設けられた押圧用ネジ孔に螺合されるネジ軸の下端に押圧軸が突設されてなり、該押圧軸は、該ネジ軸に設けられた第2の付勢部材の付勢作用に逆らって前記下端からの突出量が減少できる如くなされており、前記押圧用ネジ孔に前記ネジ軸が所要状態に螺合されることによって、前記押圧軸の下端が、前記収容筐体内に収容されている前記アームの、前記枢着されている側と反対側の上面部を下方向に弾性的に押圧して、該アームを、前記第1の付勢部材の付勢作用に逆らって下方向に所要角度分だけ回動させる如くなされている。又、前記車輪を前記下のレールに載せて前記引戸を前記上のレールと前記下のレールとの間に建て込んだ状態では、該引戸の自重により、前記押圧軸の前記ネジ軸の下端からの突出量が前記第2の付勢部材の付勢作用に逆らって減少し前記アームが前記所要角度分だけ上方向に回動する如くなされ、この状態で、前記高さ調整具により、前記車輪の高さが調整可能となされ、該引戸が浮き上がった時には、前記車輪が前記下のレールに接した状態となるように、前記アームが、前記押圧付勢具により下方向に弾性的に押圧されて下方向に回動できることを特徴とするものである。
【0025】
前記戸車装置において、前記補強収容筐体は、鋼板をコ字状に屈曲してなる第1のコ字状部材と第2のコ字状部材とを組み合わせて構成するのがよい。この場合、該第1のコ字状部材は、側板部の上端の全長に亘って上屈曲片が水平に屈曲形成されると共に、該側板部の下端の左右側部分において、下屈曲片が水平に屈曲形成され、該上屈曲片と該下屈曲片とは、同一側で平行しており、該下屈曲片間に導入開口部形成用欠切部が設けられたものとし、又、前記第2のコ字状部材は、前記側板部の上端において、前記上屈曲片に重なる上屈曲片が屈曲形成されると共に、該側板部の下端の左右側部分において、前記第1のコ字状部材の前記下屈曲片に重なる下屈曲片が水平に屈曲形成され、該上屈曲片と該下屈曲片とは、同一側で平行しており、該下屈曲片間に導入開口部形成用欠切部が設けられたものとし、又、前記上屈曲片相互が一体化されると共に左右に位置する前記下屈曲片相互が一体化されることによって、前記上面継ぎ部と前記下面継ぎ部が構成され、前記第1、第2のコ字状部材の前記導入開口部形成用切欠部の組み合わせによって前記導入開口部が形成されるようにする。
【0026】
前記戸車装置において、前記高さ調整具は、前記収容筐体を挿通して前記アームの高さ調整用螺合部のネジ孔に螺合される調整ネジを含んで構成されたものとし、該高さ調整用螺合部に対する該調整ネジの螺合状態を変化させて前記アームを下方向又は上方向に回動させ、これによって、前記収容筐体と該高さ調整用螺合部との間の規制ネジ軸部の長さを所要に設定することにより、前記車輪の高さを所要に調整できると共にその調整状態を固定可能となすのがよい。
【0027】
前記各戸車装置において、前記押圧軸の下端は丸味を帯びたものとして構成するのがよい。
【0028】
本発明に係る引戸装置は、前記補強収容筐体の前記収容空所に前記車輪高さ調整装置が収容されてなる前記脱輪防止機能を有する戸車装置が、前記引戸の下部の長さ方向の両側に設けられた前記収容凹部に収容されると共に、前記上面継ぎ部が該収容凹部の頂面部にビス固定されてなり、前記引戸の上部の両外側部分に、該引戸の上端の上方に突出する規制突出片が着脱可能に設けられており、該引戸は、その上端部分と前記規制突出片が上のレールのレール溝部に嵌め入れられた状態で前記車輪が前記下のレールを走行可能となされている。又、前記規制突出片の上端と前記レール溝部の溝底との間には所要間隙が形成されており、該所要間隙の範囲内で引戸が浮き上がったとき、前記アームが前記押圧付勢具により下方向に弾性的に押圧されて前記車輪が前記下のレールに常に接した状態となるようになされており、前記規制突出片を引戸から取り外すことによって、けんどん式で、該引戸を上のレールと下のレールに建て込みでき、且つ、該上のレールと該下のレールから該引戸を取り外しできることを特徴とするものである。
【0029】
前記引戸装置において、前記収容凹部を、引戸の下の横框と縦框とに股がって設けるのがよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る戸車装置は、下のレールに沿って走行する車輪を下方向に突出させて車輪の高さを調整可能となされた車輪高さ調整装置と、該車輪高さ調整装置を収容させる補強収容体と、該車輪が前記下のレールに常に接した状態となるように該車輪を下方向に付勢する押圧付勢具を具えているため、車輪の高さを容易に調整できながら、引戸を勢いよく閉めた際の跳ね返り等によって引戸が浮き上がったときも、該押圧付勢具の付勢作用によって車輪が下のレールに常に接した状態となし得る。
かかることから、車輪が下のレールから脱輪するのを防止でき、引戸の転倒等の危険を回避でき、学校間仕切り等の安全性向上を達成できる。加えて、引戸の建て込み作業の能率化を達成できる。
【0031】
(2) 前記補強収容筐体は、その収容空所に前記車輪高さ調整装置を収容させる構成であるため、重量のある引戸を車輪が支持した場合においても、車輪高さ調整装置を構成する収容筐体の対向する側壁板部の異常な膨らみ変形に伴う前記枢軸の外れ防止を図ることができる。
又、引戸の下部に設けた収容凹部の頂面部に対して補強収容筐体を固定する際は、その上面継ぎ部の上面を該頂面部に当接させて行うことができるため、該頂面部に対する当接面積を大きく確保できる。従って、従来の戸車装置を木製引戸に取り付ける場合のような当接片のめり込みを防止して補強収容筐体を収容凹部に安定的に付設できる。かかることから、調整された車輪高さを変わらないようになし得、この点からも脱輪の恐れを回避できる。
又、車輪高さ調整装置を該補強収容筐体を介して引戸の収容凹部に取付けることから、該収容凹部の両側壁部を内側から補強でき、これによって、引戸(木製や金属製等)に対する横方向の衝撃荷重に対して引戸の下部を効果的に補強できる。
【0032】
(3) 前記押圧付勢具は、前記車輪高さ調整装置に組み込まれるのではなく前記補強収容筐体に設けられている。加えて本発明は、常時は上方向に回動するように付勢される前記アームの枢着機構を利用して構成することとし、該押圧付勢具により該アームの上面部を下方向に弾性的に押圧することによって該アームを下方向に回動させる構成を採用している。
かかることから、車輪を下のレールに常に接した状態となるように該車輪を下方向に付勢する手段を、市販の車輪高さ調整装置を用いて簡素に構成可能であり、特別な車輪高さ調整装置を設計、製作する必要がない。
【0033】
(4) 特に、前記補強収容筐体を、前記第1のコ字状部材と前記第2のコ字状部材とを組み合わせて構成する場合は、前記車輪高さ調整装置を構成する収容筐体を前記収容空所に収容するための導入開口部を、加工性よく形成でき、補強収容筐体の製造の簡易化を図り得る。
又、前記上面継ぎ部を、上下の屈曲片の重なりによって厚く形成できると共に、前記下面継ぎ部も、上下の屈曲片の重なりによって厚く形成できるため、前記頂面部にビス固定される上面継ぎ部の強度向上を図り得ると共に、前記固定片を固定するための下面継ぎ部の強度向上を図り得る。
【0034】
(5) 本発明に係る引戸装置は、引戸の下部に設けられた前記収容空所に前記戸車装置が付設されると共に、引戸の上部の両外側部分には、引戸の上端の上方に突出する規制突出片が着脱可能に設けられている。そして、該規制突出片の上端と前記上のレールのレール溝部の溝底との間には所要間隙が形成される如くなされ、該所要間隙の範囲内で引戸が浮き上がったときには、前記アームが前記押圧付勢具により下方向に弾性的に押圧されることによって前記車輪が前記下のレールに常に接した状態となるように構成されている。
かかることから、該規制突出片によって、引戸の浮き上がり量を所要に規制できながら、前記車輪を前記下のレールに常に接した状態とするために必要な車輪の下方向への突出量を極力小さく設定できる。
又、このように規制突出片を引戸に設けることから、引戸に横方向の衝撃荷重が加わった場合には、該規制突出片が前記レール溝部の溝壁部に係合することによって、引戸の上部が上のレールから外れるのを防止できる。
そして該規制突出片を引戸から取り外すことによって、けんどん式で、該引戸を上下のレールに容易に建て込むことができると共に、該上下のレールから該引戸を容易に取り外すことができる。
加えて、引戸の取り外しを許容する規制突出片を引戸の上部に設けているため、該規制突出片が、子供の悪戯等によって取り外ずされる恐れがない。
このように本発明の引戸装置は、引戸の上部に規制突出片を設ける構成を採用しているため、上下のレールの取り付け施工の容易化を達成できながら、前記作用効果を奏して、安全性の高い学校間仕切り等における引戸装置を構成できることとなる。
【0035】
(6) 前記引戸の下部に前記収容凹部を設けるに際し、該収容凹部を、引戸の下の横框と縦框とに股がって設けるときは、前記車輪高さ調整装置の高さ調整具の調整操作を、縦框の幅方向に設けたドライバー挿通孔にドライバーを挿通して行う場合、該ドライバー挿通孔の長さを極力短くでき、これによって、通常長さのドライバーを用いて調整操作を行い得ることとなる。
又、引戸の下部の左右両側に設ける車輪間の間隔を極力大きくして引戸の横移動をより安定化させ得ることともなる。加えて、特に引戸が木製である場合、前記横框における木の繊維の方向は横方向であるのに対して前記縦框における木の繊維の方向は縦方向であることから、収容凹部の全体を横框に設ける場合に比し、収容凹部を設けたことによって生ずる引戸の下部の強度低下を極力防止できることとなる。
【0036】
(7) 学校間仕切りのような重量のある引戸にあっては転倒等に対する安全性が強く要求されるが、本発明に係る引戸装置は、規制突出片を引戸の上部に設けるため、従来の戸車装置におけるような前記した不用意なロック解除の問題を発生させず、引戸の安全性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る引戸装置を用いて構成された学校間仕切りを示す斜視図である。
【図2】その正面図である。
【図3】本発明に係る間仕切り装置を示す正面図である。
【図4】その部分拡大図である。
【図5】間仕切り装置を構成する引戸と戸車装置を示す分解斜視図である。
【図6】戸車装置の分解斜視図である。
【図7】車輪高さ調整装置を構成するアームを示す斜視図である。
【図8】戸車装置を引戸に付設した状態を示す横断面図である。
【図9】その縦断面図である。
【図10】車輪高さ調整装置の構成と、車輪高さの調整要領を示す断面図である。
【図11】車輪高さ調整装置の構成と、車輪高さの調整要領を示す断面図である。
【図12】補強収容筐体を構成する第1、第2のコ字状部材を示す斜視図である。
【図13】戸車装置を示す断面図と斜視図及び、押圧付勢具を示す部分断面図である。
【図14】引戸を上下のレールに建て込んだ状態を示す断面図である。
【図15】規制突出片が付設された引戸を示す部分斜視図である。
【図16】引戸の上部の外側部分の構成と規制突出片を示す斜視図、及び、規制突出片が付設された引戸の上部を上のレールに嵌め入れた状態の部分正面図である。
【図17】戸車装置が付設された引戸の上部を上のレールに嵌め入れた状態を示す断面図と、その状態における戸車装置の車輪突出状態を示す断面図である。
【図18】その引戸を下ろして該引戸を上下のレールに建て込んだ状態を示す断面図と、その状態における戸車装置を示す断面図である。
【図19】建て込まれた引戸の車輪の高さ調整を行った状態を示す側面図と、その状態における戸車装置を示す断面図である。
【図20】引戸が浮き上がった状態を示す断面図と、その状態における戸車装置を示す断面図である。
【図21】規制突出片が設けられていない引戸装置をその作用と共に示す断面図である。
【図22】補強収容筐体の他の構成を説明する斜視図である。
【図23】その補強収容筐体を用いて構成された戸車装置を示す斜視図である。
【図24】車輪高さ調整装置を構成する車輪の他の態様を示す側面図である。
【図25】補強収容筐体のその他の態様を示す側面図である。
【図26】従来の普通戸車の斜視図とその使用状態を示す断面図である。
【図27】従来の調整戸車を示す斜視図とその使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0038】
図1〜5は、本発明に係る戸車装置1が付設された引戸装置2を示すものであり、例えば学校間仕切り3に用いられる引戸5の下部の長さ方向(引戸の左右方向)の両側に設けられた下端開放の収容凹部6,6に該戸車装置1,1が収容状態で付設されている。該引戸装置2は、図3〜5に示すように、下のレール7に沿って走行する車輪9を下方向に突出させて車輪9の高さを調整可能となされた車輪高さ調整装置10と、該車輪高さ調整装置10を収容させる補強収容筐体11と、該車輪9が前記下のレール7に常に接した状態となるように該車輪9を下方向に付勢する押圧付勢具12を具えている。
【0039】
前記車輪高さ調整装置10は、図5〜10に示すように、対向する側壁板部13,13を有する収容筐体15内にアーム16が収容されており、該アーム16の一端側17が、前記対向する側壁板部13,13で支持された枢軸19で該枢軸19の軸線回りに上下方向で回動可能に枢着されると共に、該アーム16の他端側には前記車輪9が回転自在に設けられている。該アーム16は、常時は上方向に回動するように第1の付勢部材20によって付勢されると共に、高さ調整具21により、該付勢作用に逆らって前記アーム16を下方向に回動させて前記車輪9の高さを所要に調整できると共にその調整状態を固定可能となされており、又、前記収容筐体15の下端には、前記車輪9の走行方向の両側で固定片22,22が突設されている。
【0040】
これをより具体的に説明すれば、前記収容筐体15は、図5〜6、図9に示すように、全体が偏平な直方体筒状を呈しており、所要間隔を隔てて平行に対向する前後の側壁板部13,13の、前記引戸の縦框110側の端部(以下、右端ともいう)23,23相互が、側部連結片25で連結されている。そして、該前後の側壁板部13,13の上部分の、該側部連結片25に近い部位において枢軸支持孔26,26が設けられると共に、前記側部連結片25の稍下側に位置させて調整ネジ挿通孔27(図10(B))が設けられている。又、図5〜6に示すように、該両側壁板部13,13の下端29,29の、前記車輪の走行方向(以下、左右方向ともいう)Fの両側部分が、固定片22,22で連結されており、該固定片22,22は、前記側壁板部13,13の左右方向の両側で稍突出している。該固定片22,22は、本実施例においては、図6に示すように、基板部31の前後縁で補強小片32,32が上方に屈曲されており、夫々にビス挿通孔34,34が設けられている。
【0041】
前記アーム16は図6〜7、図9に示すように、対向する前後の支持板部33,33の上端相互が上連結片28で連結されてなる偏平な直方体枠状を呈している。そして該アーム16は、該前後の支持板部33,33が、前記前後の側壁板部13,13と対向した状態で、前記収容筐体15内に収容されている。
【0042】
そして該アーム16を構成する前記支持板部33,33の上端側の右側部位(アームの一端側17)に、円形軸状を呈する前記枢軸19を挿通させる挿通孔36,36(図7)が設けられている。該枢軸19は該挿通孔36,36に挿通されその両端部分が前記枢軸支持孔26,26(図6)に固定状態で支持されている。これにより、前記アーム16は、その一端側17が、該枢軸19の軸線回りに上下方向で回動可能に枢着されている。又、図7、図10に示すように、前記両支持板部33,33の前記枢軸19の稍下方部位において、両支持板部33,33相互が、例えば円形軸状を呈して軸線回りに回転可能な、高さ調整用螺合部37としての、連結軸37aで連結されている。そして該連結軸37aには、前記調整ネジ挿通孔27を挿通する調整ネジ39のネジ軸40を螺合させるネジ孔41が貫設されている。該調整ネジ39は、前記高さ調整具21の一つの構成要素である。該調整ネジ39を該ネジ孔41に螺合する際、前記側部連結片25と前記連結軸37aとの間に、図10に示すように、コイルバネ20aとしての前記第1の付勢部材20を稍圧縮状態で介在させる。そして、該調整ネジ39の前記ネジ孔41から突出した部分の先側には屈曲抜け止め部44が形成されている。前記アーム16は、常時、前記コイルバネ20aの付勢作用によって上方向に回動するように付勢されている。
【0043】
然して、図10(B)に示すように、ドライバー43の先端係合部45を、前記調整ネジ39の、前記調整ネジ挿通孔27の右端周縁部分46に当接状態にあるネジ頭部47に設けられたプラスのドライバー係合凹部49に係合させて該ドライバー43を回転操作することにより、図10、図11に示すように、前記連結軸37aの前記ネジ孔41に対するネジ軸40の螺合状態を変化させることができ、これにより、前記アーム16の、下方向又は上方向への回動状態を調整できる。そして、該回動に伴う前記アーム16の水平線に対する傾斜角度は、前記ネジ頭部47が前記調整ネジ挿通孔27の右端周縁部分46に当接した状態において前記側部連結片25と前記連結軸37aとの間に存する規制ネジ軸部50の長さL1によって決まる。前記調整ネジ39を螺進させるに伴い該規制ネジ軸部50の長さを短くでき、これによって前記アーム16を前記枢軸19の軸線回りに下方向に回動させることができる。一方、前記調整ネジ39を螺退させるに伴い該規制ネジ軸部50の長さを長くでき、これによって、前記アーム16を前記枢軸19の軸線回りに上方向に回動させることができる。
【0044】
このようにしてアーム16の傾斜角度が所要に設定された状態で、前記車輪9の高さが所要に調整される。そして、該規制ネジ軸部50の長さに規制されて該アーム16の上方向への回動が阻止されるため、図3に示すように、所要に高さ調整された該車輪9は引戸5の自重を支持できることとなる。車輪9の高さがこのように調整された状態でも、該アーム16の下方向への回動は、前記コイルバネ42が更に圧縮状態となることによって許容される。そして該アーム16が下方向に回動するに伴い、前記調整ネジ挿通孔27を挿通した前記調整ネジ39は、図13に示すように、前記規制ネジ軸部50の長さが減少しつつ前記調整ネジ39の前記ネジ頭部47側の部分51が前記側部連結片25の外面52から外方に突出状態となる。
【0045】
そして前記アーム16の他端側には、車輪9が、図7、図9に示すように、前記支持板部33,33の先側部分(左端側部分)53,53に支持された支持軸55に、該支持軸の軸線回りに回転自在に設けられている。該車輪9は、本実施例においては図5、図9に示すように、2.5mm程度の溝深さを有する周溝56が周設された溝付き車輪として構成されている。
【0046】
前記補強収容筐体11は、図5〜6に示すように、横断面が上下に長い長方形状を呈し且つ左右方向に長い角筒状を呈し、対向する前後の側板部57,57間で収容空所59が形成されており、該両側板部57,57の上端60,60相互が上面継ぎ部61で連結されると共に、該前後の側板部57,57の下端62,62相互の両端側(左右端側)が夫々、下面継ぎ部63,63で連結されて、該下面継ぎ部63,63間が導入開口部65とされている。そして図9に示すように、前記収容筐体15を、該導入開口部65を通して前記収容空所59に収容させることができると共に、該収容された状態で、前記収容筐体15が、前記対向する側板部57,57で挾持される如くなされている。そしてこの状態で、図8に示すように、該収容筐体15の前記両固定片22,22が前記下面継ぎ部63,63にビス固定される如くなされている。又、前記上面継ぎ部61は、図8に示すように、前記引戸5の下部に設けられた前記収容凹部6の頂面部66に面接触状態でビス137で固定される。
【0047】
該補強収容筐体11は、本実施例においては図12、図5〜6に示すように、鋼板をコ字状に屈曲してなる第1のコ字状部材69と第2のコ字状部材70とを組み合わせて構成されている。該第1のコ字状部材69は、図12に示すように、側板部57の上端の全長に亘って上屈曲片71が水平に屈曲形成されると共に、該側板部57の下端の左右側部分において、下屈曲片72,72が水平に屈曲形成され、該上屈曲片71と該下屈曲片72,72とは、同一側で平行している。そして、該下屈曲片72,72間に導入開口部形成用欠切部73が設けられている。又、前記第2のコ字状部材70は、図12に示すように、側板部57の上端の全長に亘って、前記上屈曲片71の下面75に重なる上屈曲片76が屈曲形成されると共に、該側板部57の下端の左右側部分において、前記第1のコ字状部材69の前記下屈曲片72,72の上面77,77に重なる下屈曲片79,79が水平に屈曲形成され、該上屈曲片76と該下屈曲片79,79とは、同一側で平行している。そして、該下屈曲片79,79間に導入開口部形成用欠切部80が設けられている。
【0048】
前記上屈曲片71,76相互及び左右に位置する下屈曲片72,79、72,79相互が、夫々、例えばスポット溶接により一体化されることによって、図5〜6に示すように、前記上面継ぎ部61と前記下面継ぎ部63が構成され、前記第1、第2のコ字状部材69,70の前記導入開口部形成用欠切部73,80の組み合わせによって、前記導入開口部65(図5)を構成できる。又、該上面継ぎ部61の両端側の例えば対角位置には、図6に示すように、前記上下の上屈曲片71,76の夫々に設けられている透孔81,82の合致によって、ビス挿通孔83,83が設けられると共に、該上面継ぎ部61の該一方のビス挿通孔83a(図6に示す左側のビス挿通孔83)寄りには、前記上下の上屈曲片71,76を貫通して押圧用ネジ孔85が設けられている。又、前記左右の下面継ぎ部63,63の夫々には、図5に示すように、前記収容筐体15の前記固定片22,22に設けられたビス挿通孔34,34と位置合わせして、前記上下の下屈曲片79,72を貫通してネジ孔86,86が設けられている。
【0049】
又、前記押圧付勢具12は、例えば図6、図13に示すようなプランジャボルト87を以て構成されており、前記押圧用ネジ孔85に前記上面継ぎ部61の上側から螺合される押圧ネジ軸89の下端部90に押圧軸91が突設されてなる。該押圧ネジ軸89の上端には六角形孔92が設けられており、該六角形孔92にレンチ係合端部を挿入して六角レンチを回すことにより、該押圧ネジ軸89を所要にねじ込むことができる。そして該押圧軸91は、図13(C)に示すように、前記ネジ軸89に収容されており、該押圧ネジ軸91に内蔵された圧縮コイルバネ93a等としての第2の付勢部材93の付勢作用に逆らって、該下端部90からの突出量が減少できるように構成されている。本実施例においては、該押圧軸91の下端95は半球面状に丸みを帯びた形態とされている。
【0050】
図13(A)(B)は、前記車輪高さ調整装置10の前記収容筐体15を前記導入開口部65を通して前記補強収容筐体11の前記収容空所59に収容した状態を示すものであり、該収容筐体15は、前記枢軸19を前記補強収容筐体11の右端側に位置させた状態で収容されている。そして前記左右の固定片22,22が、前記左右の下面継ぎ部63,63にビス67,67を用いて固定されている。この状態で、図9に示すように、前記前後の側板部57,57が、前記前後の側壁板部13,13に当接乃至近接した状態となって、前記収容筐体15は、該前後の側板部57,57で挟持された状態となる。その後、前記押圧用ネジ孔85に前記押圧ネジ軸89の下側部分を螺合し、前記押圧軸91が前記収容空所59に所要長さ突出した状態とする。これにより、前記収容筐体15内に収容されている前記アーム16の、前記枢着されている側と反対側の上面部(前記上連結片28の上面部)97を下方向に押圧して、該アーム16を下方向に所要角度分だけ回動させる。
【0051】
補強収容筐体11に押圧付勢具12が付設されていない状態では、例えば図10(A)に示すように、前記車輪9は、前記固定片22の下方に5mm程度突出した状態にある。図13(A)は、前記アーム16が前記押圧軸91の下端95で下方向に押圧された状態を示し、前記車輪9が前記固定片22の下方に例えば13mm程度突出した状態にある。
【0052】
次に、前記戸車装置1を前記引戸5の前記収容凹部6に取り付ける要領を説明するが、それに先立ち、学校間仕切り3の引戸枠99と該引戸枠99に建て込まれる引戸5の構成を説明する。
【0053】
該引戸枠99は、図1〜4、図14に示すように、間仕切り開口部100を縁取る縦枠101,101(図1〜2では、左側の縦枠のみが記載されている)と、対向する縦枠101,101の上端相互を連結する上の横枠102と、該縦枠101,101の下端相互を連結する下の横枠103とからなる横長の矩形枠状に構成されている。そして上の横枠102の下面に上のレール105が固定されると共に、下の横枠103の上面に下のレール7が固定されている。該下のレール7は、図14に示すように、前記車輪9を走行させる4条の山形状レール部106,106,106,106が平行して設けられている。又、前記上のレール105は、前記引戸5の上部107を嵌め入れる4条のレール溝部109,109,109,109が平行して設けられている。そして、上下対向するレール溝部109と山形状レール部106に前記引戸5がけんどん式に建て込まれる。図14においては、1本の引戸5のみが建て込まれている状態が示されている。そして、該上のレール105には、夫々の引戸5を移動させるための移動範囲を考慮して、適宜の位置に戸当り(図示せず)が設けられている。
【0054】
前記引戸5は、本実施例においては木製であり、図3〜5、図15に示すように、両縦框110,110、両横框111,111とで構成された縦長の長方形枠状部112を有しており、図4に示すように、横框111の端部に設けられたほぞ113が、縦框110に設けられたほぞ孔115に嵌め込まれている。該引戸5は、高さが1900〜3500mmと高く、又、30〜50kg程度の重量物であって、前記上下のレール105,7に案内されて横移動できる。そして、該引戸5の下部116の左右側の、横框111と縦框110の接続部分において、該横框111と該縦框110に股がるように、下端開放の収容凹部6,6が設けられている。該収容凹部6の前記頂面部66は水平面に形成されており、該頂面部66に、図5に示すように、前記押圧ネジ軸89を収容させるための収容孔部118が上方向に延長して設けられている。
【0055】
又前記縦框110の下端部分117には、ドライバー挿通孔124が、該収容凹部6に連通するように該縦框110を横方向に貫通して設けられている。本実施例においては図5、図15に示すように、前記引戸枠99の前記縦枠101と向き合う縦框110aの外側面116には戸当りカバー119が設けられている。該戸当りカバー119の上端120は、図16に示すように、前記縦框110の上端121よりも下方に位置されており、前記ドライバー挿入孔124は、図4〜5に示すように、該戸当りカバー119を貫通するように設けられている。
【0056】
そして、前記引戸5の上部122の両外側部分(本実施例においては、両縦框110,110の上端部分123,123の外側部分)125,125には、図4、図15に示すように、前記引戸5の上端126の上方に突出する規制突出片127が着脱可能に設けられている。該規制突出片127は、本実施例においては、図16(A)(B)に示すような鋼板製のコ字状金具129を用いて構成されている。該コ字状金具129は、縦框110の上端部分123の外側面128を覆う基片131の前後の縁部で、前記上端部分123の前後面123a,123bを覆う側片127,127を折曲形成してなるコ字状片を具え、該基片131が上方に延長されると共に先端で折り返されて、1枚板状を呈する折り曲げ二重片132からなる上方突出の前記規制突出片127が設けられている。該コ字状金具129は、図15に示すように、前記基片131に設けられた前後のビス孔132,132を挿通するビス133,133を用いて、前記上部122の外側部分125に固定されている。
【0057】
本実施例においては、図16(C)に示すように、該規制突出片127は前記引戸5の上端126の上方に10mm程度突出している。該規制突出片127をこのように折り曲げ二重片132によって形成しているのは、規制突出片127の強度向上を図ることによって、引戸5が浮き上がって該規制突出片127の上端135がレール溝部109の溝底136に衝撃的に当たった場合の反力に耐えることと、引戸5に横方向の衝撃荷重が加わったときにそれに耐えられるようにするためである。又、該上端135を丸く形成することによって、引戸5の浮き上がり等によって該上端135が該溝底136を擦ったとしても、レール塗装面を損傷しないようにするためである。
【0058】
次に、前記構成を有する引戸5の前記収容凹部6に前記戸車装置1を付設する要領を図8〜9に基づいて説明する。先ず、前記補強収容筐体11を前記収容凹部6に収容する。この収容により、前記押圧ネジ軸89は、該収容凹部6の頂面部66に設けられた収容孔部118に収容された状態となる。その後、該補強収容筐体11は、前記上面継ぎ部61が前記頂面部66に面接触した状態で、図8に示すように、前記ビス挿通孔83,83を挿通するビス137,137を用いて該頂面部66に固定される。その後、前記車輪高さ調整装置10を前記導入開口部65を通して前記補強収容筐体11の収容空所59に収容するのであるが、その際、前記調整ネジ39のネジ頭部47が前記走行方向で見た外側(図8においては右側)に位置するように、前記収容筐体15の向きを設定する。その後、前記収容筐体15の前記左右の固定片22,22を、前記左右の下面継ぎ部63,63にビス67,67で固定する。この収容状態で、図9に示すように、前記前後の側板部57,57が該収容凹部6の対向する側壁部139,139の内面140,140に密接乃至近接状態で、前記収容筐体15が前記前後の側板部57,57で挟持された状態となる。本実施例においては、前後の側板部57,57が該収容凹部6の対向する側壁部139,139の内面140,140に接着されている。これにより、図4に示すように、引戸5の下部116の左右両側に戸車装置1,1が付設された状態が得られる。
【0059】
そしてこの状態で、前記ドライバー挿通孔124にドライバー43を挿通して図8、図10〜11に示すように、その先端係合部45を前記調整ネジ39のドライバー係合孔部49に挿入でき、これにより該ドライバー43で該調整ネジ39の回転操作を行うことができる。
【0060】
このようにして戸車装置1が付設されると共に前記規制突出片127を有するコ字状金具129が取り外されてなる引戸5を、前記間仕切り開口部100の上下に設けられた上のレール105と下のレール7にけんどん式に建て込む。前記アーム16の下方向への所要角度の回動に伴い前記車輪9が引戸5の下端141の下方に稍大きく突出した状態(図17においては、この突出量は、前記押圧付勢具12の前記押圧ネジ軸89の前記押圧用ネジ孔85へのねじ込み量の調節によって13mm程度に設定されている)となるが、規制突出片127を取り外した状態では、このように車輪9が引戸5の下端141の下方に稍大きく突出していても、引戸5を上下のレール105,7にけんどん式により容易に建て込むことができる。図18は、引戸5を建て込んだ状態を示している。このように建て込んだ状態では該引戸5の自重により、前記押圧軸91の前記押圧ネジ軸89の下端部90からの突出量が前記第2の付勢部材93(図13(C))の付勢作用に逆らって減少し、前記アーム16が前記所要角度分だけ上方に回動され、引戸5の自重が左右の車輪9,9で下方から支持される。
【0061】
この状態で、図4、図8に示すように、前記ドライバー挿通孔124と前記補強収容筐体11の端部開放部142にドライバー43を挿入してその先端係合部45を前記調整ネジ39のドライバー係合凹部49に挿入し、該ドライバー43で調整ネジ39を正方向に又は逆方向に適宜回転させて前記車輪9の高さを前記のようにして調整する。図19はその調整された状態を示すものであり、車輪9の下端143が、前記引戸5の下端141から7.5mm下方に位置されている。その後、図19に示すように、前記引戸5の上部122の両外側部分125,125にコ字状金具129をビス固定し、規制突出片127を上方に突出状態に設ける。
【0062】
図20は、引戸5を勢いよく閉めた際の跳ね返り等の衝撃荷重によって引戸5が浮き上がった状態を示すものである。このように引戸5が浮き上がったときは、前記アーム16が、前記押圧軸91で弾性的に押圧されて下方向に回動し、その結果、前記車輪9が前記下のレール7に接した状態が維持されることになる。これにより、引戸5が浮き上がったときにも車輪9の脱輪が防止される。なお、押圧軸91の下端95は前記のように丸味を帯びているため、前記アーム16の上面部97が傾斜したときにも無理なく該上面部97を下方向に弾性的に押圧できる。
【0063】
前記のように規制突出片127が設けられた状態で、該規制突出片127の上端135と前記レール溝部109の溝底136との間に、図19(A)に示すように、3〜5mm程度、例えば3mm程度の隙間L2が形成されるようになされている。該規制突出片127によって引戸5の浮き上がり量を規制できる。そして、このように隙間L2が形成されるようになされているため、上のレール105の取付施工誤差があったとしても、該規制突出片127の上端135が該溝底136と接触する恐れなく、引戸5を円滑に移動させることができる。
【0064】
ここで、前記構成を有する引戸装置2の有利性の主要なものについて説明する。第1には、戸車装置1及び収容凹部6の強度的な安定性に関してである。前記車輪高さ調整装置10を構成する前記収容筐体15は、前記補強収容筐体11の前記収容空所59に収容された状態で、対向する前後の側板部57,57で挾持状態とされている(図9)。そして、該補強収容筐体11が前記収容凹部6に収容された状態にある。特に本実施例においては、前後の側板部57,57が該収容凹部6の対向する前後の側壁部139,139の内面140,140に接着されている。
【0065】
かかることから、引戸5の自重が車輪9に掛かって、前記アーム16の前後の支持板部33,33や、前記収容筐体15の前後の側壁板部13,13が異常な膨らみ傾向となったときには、前記補強収容筐体11の対向する前後の側板部57,57が該側壁板部13,13の膨らみ変形を防止できる。それ故、前記枢軸19が側壁板部13,13から外れてしまう等の事態を招く恐れがない。
【0066】
又、前記補強収容筐体11の荷重支持作用によって、かかる側壁板部13,13の膨らみ変形が前記収容凹部6の前記薄肉の側壁部139,139を変形させる恐れもない。これによって、引戸5の下部116を該補強収容筐体11によって補強できることともなる。又、収容凹部6が設けられている前記下部116の強度が該補強収容筐体11によって引戸内側から補強されているため、引戸5に横方向の衝撃荷重が加わったときは、該補強収容筐体11の荷重支持作用によって該下部116の破損を防止できる。特に本実施例においては、前後の側板部57,57と前後の側壁部139,139とが接着一体化されているため、前記補強収容筐体11によって薄肉の側壁部139,139をより効果的に補強できることとなる。
【0067】
第2には、収容凹部6周辺の強度低下の防止と、前記車輪9の高さ調整の容易性に関してである。前記収容凹部6を図4〜5、図15に示すように、引戸5の縦框110と横框111とに股がって設けているため、該収容凹部6周辺の強度低下を極力生じさせない。これは、横框111は、木の繊維の方向が横方向であるのに対し、縦框110は、木の繊維の方向が縦方向であることから、引戸5に加わる横方向の荷重に対しては、横框111よりも縦框110の方が強い。従って、前記収容凹部6の全体を横框111に設けるよりも、縦框110と横框111とに股がって設けた方が、収容凹部6周辺の強度を向上させ得る。
【0068】
そして、このように引戸5の縦框110と横框111とに股がって収容凹部6を設けることとすれば、該収容凹部6が縦框110側に位置する分だけ前記調整ネジ39のネジ頭部47を縦框110の外側面(図4に示す右側面)143に接近させることができ、従って、縦框110に設ける前記ドライバー挿通孔124の長さを極力短く設定できる。これにより、通常長さのドライバーを用いて前記調整ネジ39の回転操作を行うことができる。もしも、前記収容凹部6の全体を横框111に設けたとすると、縦框110の幅は100mm程度はあるために、前記縦框110に設けるドライバー挿通孔124の長さが長くなり、特別な長いドライバーを用いざるを得ないばかりか、前記調整ネジ39の回転操作が不安定化しやすくなって好ましくない。
【0069】
又、縦框110と横框111とに股がって前記収容凹部6を設けることとすれば、左右の車輪9,9間の間隔をより大きく設定できるため、引戸5の走行状態をより安定化させ得ることとなる。
【0070】
第3には、引戸5に衝撃的な横荷重が加わった場合における引戸5の転倒防止に関してである。引戸5が上下のレール間に建て込まれた状態においては、前記規制突出片127が引戸5の上端126よりも上方に突出した状態となる。従って、該規制突出片127が設けられていないとすれば、前記上のレール105の前記レール溝部109内に存する引戸の上部122の挿入量は比較的小さいために、引戸5に人がぶつかる等して衝撃的な横荷重が加わった場合、該引戸5が撓んで上下のレール105,7から外れて転倒する恐れがある。しかし前記のように、引戸の下部116にあっては、前記アーム16の下方向への回動に伴い前記車輪9が下のレール7に接した状態を維持することと、引戸の上部122にあっては、該規制突出片127が引戸5の上端126よりも上方に突出するため、該規制突出片127が前記レール溝部109の溝壁部145(図14)に当たることによって、この衝撃的な横荷重が上下のレール105,7で支持されることになる。これによって、引戸5が上下のレールから外れるのを防止できる。このような引戸の上下における外れ防止作用の連携によって、かかる横方向からの荷重に対して引戸が該上下のレールから外れるのを防止できる。
【0071】
第4には、子供の悪戯等に起因する引戸の転倒事故の防止に関してである。上下のレール105,7間に建て込まれた引戸5は、引戸5の上部122に設けられた前記規制突出片127を取り外さない限り該上下のレールから取り外すことができない。学校間仕切り用の引戸は高さが高いことから、高位置にある規制突出片127が子供の悪戯等によって取り外される恐れはない。かかることから、脱輪防止機能を具えた前記従来の網戸用の戸車装置(特許文献1や特許文献2等が開示するもの)における場合のような不用意なロック解除による引戸の転倒事故を防止できることとなる。又、引戸に子供がぶら下がる等して引戸に下方向の大きな荷重が加わった場合にも、脱輪を招来して引戸の転倒を招く等といった事故を防止できる。
【0072】
第5には、前記収容凹部6の頂面部66に対する前記補強収容筐体11の固定の安定性に関してである。前記補強収容筐体11は、その上面継ぎ部61を頂面部66に広い面積で当接させることができるため、引戸が木製であっても、従来の戸車装置におけるような固定片のめり込みを防止でき、車輪の高さが変わる恐れを回避できる。
【0073】
特に、該補強収容筐体11を、第1のコ字状部材69と第2のコ字状部材70とを組み合わせて構成する場合は、前記上面継ぎ部61は、上下の屈曲片71,76の重なりによって厚く形成できると共に、前記下面継ぎ部63も、上下の屈曲片79,72の重なりによって厚く形成できる。かかることから、前記収容凹部6の頂面部66にビス固定される上面継ぎ部61の強度向上が図られると共に、前記車輪高さ調整装置10の前記固定片22が固定される下面継ぎ部63の強度向上も図られて好ましい。
【実施例2】
【0074】
図21(A)は、本発明に係る引戸装置2の他の実施例を示すものであり、引戸5に前記規制突片127が設けられていない点で実施例1における場合と相違する。このように構成する場合は、けんどん式で、上下のレール105,7に引戸5を建て込み、又、取外しできるようにするために、引戸5の上端126と上のレール105のレール溝部109の溝底136との間に所要の隙間が必要になる。この隙間の範囲で引戸5が、図21(B)に示すように、最大に浮き上がったときにも前記車輪9が下のレール7に接した状態となるためには、前記アーム16の下方向への回動に伴う車輪9の下方向への突出量を大きくすればよい。このように車輪9の下方向への突出量を大きくしても、前記車輪高さ調整装置10が前記補強収容筐体11内に収容されていることから、該補強収容筐体11の前記した補強作用によって、車輪9の下方向への突出を安定状態で行わせることができる。
【0075】
但し、前記押圧付勢具12の付勢作用によって、引戸5が建て込まれる前は、該引戸5の下端141の下方への車輪9の突出量が大きいために、引戸5の建て込み時に、下方に突出した車輪9が邪魔になるが、この突出した車輪9を指等で持ち上げて建て込みを行えばよい。又、引戸を取外す際も、突出した車輪9を指等で持ち上げて行えばよい。
【実施例3】
【0076】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0077】
(1) 前記補強収容筐体11は、例えば鋼製の角筒パイプを所要長さに切断して形成した図22(A)に示す角筒部材146を用いて構成することもできる。そのために、図22(B)に示すように、該角筒部材146の下面の長さ方向中央部分に導入開口部65を設けると共に、その両側に位置する下面継ぎ部63,63に、前記戸車高さ調整装置10の前記固定片22,22を固定するためのネジ孔86,86を設ける。又、図22(C)に示すように、該角筒部材146の上面としての上面継ぎ部61に、前記と同様構成の押圧ネジ軸89を螺合させるための押圧用ネジ孔85を設けると共に、該上面継ぎ部61を前記頂面部66にビス固定するためのビス挿通孔83,83を設ける。図23は、前記と同様構成の車輪高さ調整装置10を該補強収容筐体11に収容した状態を示している。
【0078】
(2) 前記補強収容筐体11や前記規制突出片127は、その強度面から金属製、特にスチール製が好ましいが、引戸5の重量や用途に応じ、所要強度を発揮する硬質樹脂や、樹脂と金属との複合素材等を用いて構成することもできる。
【0079】
(3) 前記押圧付勢具12は、前記車輪9が前記下のレール7に常に接した状態となるように前記アーム16を下方向に回動させるものであればよく、前記第2の付勢部材93としてはコイルバネや板バネ、弾性ゴム等を採用できる。
【0080】
(4) 前記押圧軸91の下端95は、前記収容筐体15内に収容されている前記アーム16の、前記枢着されている側と反対側の上面部97を下方向に弾性的に押圧するものであればよく、その押圧位置は前記したものに限定されない。
【0081】
(5) 前記車輪高さ調整装置10を構成する車輪9としては、図24(A)に示すような、周面147がフラットに形成された車輪9aや、図24(B)に示すような、周面147が凸面として形成された戸車9b等、引戸用として一般に用いられている各種の車輪を採用できる。又、図24(C)は、前記溝付き車輪9を平坦な下のレール7に走行させる場合を示している。
【0082】
(6) 前記引戸5は、前記した木製引戸としての他、スチール製等の金属製引戸としても構成され得る。
【0083】
(7) 前記補強収容筐体11を、前記第1のコ字状部材69と前記第2のコ字状部材70とを組み合わせて構成する場合は、該第1のコ字状部材69と該第2のコ字状部材70を、図25に示すように、該第1のコ字状部材69を構成する上屈曲片71の下面149と下屈曲片72の下面150を、前記第2のコ字状部材70の上屈曲片76の上面151と下屈曲79の上面152に重ねて構成することもできる。
【0084】
(8) 前記高さ調整具21は、前記収容筐体15を挿通して前記アーム16の高さ調整用螺合部37のネジ孔41に螺合される調整ネジ39を含んで構成することができる。そして、該高さ調整用螺合部37に対する該調整ネジ39の螺合状態を変化させて前記アーム16を、下方向又は上方向に回動させ、これによって、前記収容筐体15と該高さ調整用螺合部37との間の規制ネジ軸部50の長さを所要に設定することにより、前記車輪9の高さを調整できると共にその調整状態を固定可能とするのがよい。
【0085】
(9) 本発明に係る引戸装置2は、学校や医療施設、老人ホーム、介護施設、工場、作業場等における、間仕切り用の引戸や出入口用の引戸等、各種の引戸に応用でき、又、本発明に係る戸車装置1は、これらの引戸に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 戸車装置
2 引戸装置
3 学校間仕切り
5 引戸
6 収容凹部
7 下のレール
9 車輪
10 車輪高さ調整装置
11 収容筐体
12 押圧付勢具
13 側壁板部
15 収容筐体
16 アーム
19 枢軸
20 第1の付勢部材
21 高さ調整具
22 固定片
25 側部連結片
33 支持板部
37 高さ調整用螺合部
37a 連結軸
39 調整ネジ
40 ネジ軸
41 ネジ孔
47 ネジ頭部
50 規制ネジ軸部
59 収容空所
61 上面継ぎ部
63 下面継ぎ部
65 導入開口部
66 頂面部
69 第1のコ字状部材
70 第2のコ字状部材
71 上屈曲片
72 下屈曲片
73 導入開口部形成用切欠部
76 上屈曲片
79 下屈曲片
80 導入開口部形成用欠切部
87 プランジャボルト
89 押圧ネジ軸
91 押圧軸
93 第2の付勢部材
97 アームの上面部
105 上のレール
107 引戸の上部
109 レール溝部
110 縦框
111 横框
123 上端部分
124 ドライバー挿通孔
126 引戸の上端
127 規制突出片
129 コ字状金具
136 溝底
139 側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下のレールに沿って走行する車輪を下方向に突出させて車輪の高さを調整可能となされた車輪高さ調整装置と、該車輪高さ調整装置を収容させる補強収容筐体と、該車輪が前記下のレールに常に接した状態となるように該車輪を下方向に付勢する押圧付勢具を具えており、
前記車輪高さ調整装置は、対向する側壁板部を有する収容筐体内にアームが収容されており、該アームの一端側が、前記対向する側壁板部で支持された枢軸で該枢軸の軸線回りに上下方向で回動可能に枢着されると共に、該アームの他端側には車輪が回転自在に設けられており、該アームは、常時は上方向に回動するように第1の付勢部材によって付勢されると共に、高さ調整具により、前記アームを下方向又は上方向に回動させて前記車輪の高さを所要に調整できると共にその調整状態を固定可能となされており、又、前記収容筐体の下端には、前記車輪の走行方向の両側で固定片が突設されており、
又、前記補強収容筐体は、引戸の下部に設けられた下端開放の収容凹部に収容されるものであり、対向する側板部間で収容空所が形成され、該両側板部の上端相互が上面継ぎ部で連結されると共に、該対向する側板部の下端相互の両端側が夫々、下面継ぎ部で連結されて該下面継ぎ部間が導入開口部とされており、前記収容筐体を、該導入開口部を通して前記収容空所に収容させることができると共に、該収容された状態で、前記収容筐体が前記対向する側板部で挾持される如くなされ、この状態で、該収容筐体の前記固定片が前記下面継ぎ部にビス固定される如くなされており、又、前記上面継ぎ部は、前記収容凹部の頂面部にビス固定される如くなされており、
又、前記押圧付勢具は、前記上面継ぎ部に設けられた押圧用ネジ孔に螺合されるネジ軸の下端に押圧軸が突設されてなり、該押圧軸は、該ネジ軸に設けられた第2の付勢部材の付勢作用に逆らって前記下端からの突出量が減少できる如くなされており、
前記押圧用ネジ孔に前記ネジ軸が所要状態に螺合されることによって、前記押圧軸の下端が、前記収容筐体内に収容されている前記アームの、前記枢着されている側と反対側の上面部を下方向に弾性的に押圧して、該アームを、前記第1の付勢部材の付勢作用に逆らって下方向に所要角度分だけ回動させる如くなされており、
又、前記車輪を前記下のレールに載せて前記引戸を前記上のレールと前記下のレールとの間に建て込んだ状態では、該引戸の自重により、前記押圧軸の前記ネジ軸の下端からの突出量が前記第2の付勢部材の付勢作用に逆らって減少し前記アームが前記所要角度分だけ上方向に回動する如くなされ、この状態で、前記高さ調整具により、前記車輪の高さが調整可能となされ、該引戸が浮き上がった時には、前記車輪が前記下のレールに接した状態となるように、前記アームが、前記押圧付勢具により下方向に弾性的に押圧されて下方向に回動できることを特徴とする脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置。
【請求項2】
前記補強収容筐体は、鋼板をコ字状に屈曲してなる第1のコ字状部材と第2のコ字状部材とを組み合わせて構成されており、該第1のコ字状部材は、側板部の上端の全長に亘って上屈曲片が水平に屈曲形成されると共に、該側板部の下端の左右側部分において、下屈曲片が水平に屈曲形成され、該上屈曲片と該下屈曲片とは、同一側で平行しており、該下屈曲片間に導入開口部形成用欠切部が設けられており、又、前記第2のコ字状部材は、前記側板部の上端において、前記上屈曲片に重なる上屈曲片が屈曲形成されると共に、該側板部の下端の左右側部分において、前記第1のコ字状部材の前記下屈曲片に重なる下屈曲片が水平に屈曲形成され、該上屈曲片と該下屈曲片とは、同一側で平行しており、該下屈曲片間に導入開口部形成用欠切部が設けられており、又、前記上屈曲片相互が一体化されると共に左右に位置する前記下屈曲片相互が一体化されることによって、前記上面継ぎ部と前記下面継ぎ部が構成され、前記第1、第2のコ字状部材の前記導入開口部形成用切欠部の組み合わせによって前記導入開口部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置。
【請求項3】
前記高さ調整具は、前記収容筐体を挿通して前記アームの高さ調整用螺合部のネジ孔に螺合される調整ネジを含んで構成されており、該高さ調整用螺合部に対する該調整ネジの螺合状態を変化させて前記アームを下方向又は上方向に回動させ、これによって、前記収容筐体と該高さ調整用螺合部との間の規制ネジ軸部の長さを所要に設定することにより、前記車輪の高さを所要に調整できると共にその調整状態を固定可能となされていることを特徴とする請求項1記載の脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置。
【請求項4】
前記押圧軸の下端が丸味を帯びていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置。
【請求項5】
前記補強収容筐体の前記収容空所に前記車輪高さ調整装置が収容されてなる請求項1記載の脱輪防止機能を有する引戸用戸車装置が、前記引戸の下部の長さ方向の両側に設けられた前記収容凹部に収容されると共に、前記上面継ぎ部が該収容凹部の頂面部にビス固定されてなり、
前記引戸の上部の両外側部分に、該引戸の上端の上方に突出する規制突出片が着脱可能に設けられており、該引戸は、その上端部分と前記規制突出片が上のレールのレール溝部に嵌め入れられた状態で前記車輪が前記下のレールを走行可能となされており、
又、前記規制突出片の上端と前記レール溝部の溝底との間には所要間隙が形成されており、該所要間隙の範囲内で引戸が浮き上がったとき、前記アームが前記押圧付勢具により下方向に弾性的に押圧されて前記車輪が前記下のレールに常に接した状態となるようになされており、
前記規制突出片を引戸から取り外すことによって、けんどん式で、該引戸を上のレールと下のレールに建て込みでき、且つ、該上のレールと該下のレールから該引戸を取り外しできることを特徴とする引戸装置。
【請求項6】
該収容凹部を、引戸の下の横框と縦框とに股がって設けることを特徴とする請求項5記載の引戸装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−1919(P2012−1919A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135886(P2010−135886)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(394006679)山金工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】