説明

脳浮腫を治療するステロイド節約法

本発明は、浮腫の治療、管理、又は予防のために設計された治療計画又はプロトコルに関する。特に、本発明は、ステロイド節約効果を達成する治療有効量の酢酸コルチコレリンの投与を含む、脳腫瘍に伴う浮腫を治療又は管理する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.0 導入)
本発明は、浮腫の治療、管理、又は予防のために設計された治療計画又はプロトコルに関する。特に、本発明は、ステロイド節約効果を達成する治療有効量の酢酸コルチコレリンの投与を含む、脳腫瘍に伴う浮腫を治療、管理、又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.0 背景)
(2.1 浮腫)
浮腫又は腫大は、体の特定の部位における間質液の増大によって引き起こされる。浮腫は、血管壁を隔てた浸透圧と静水圧との均衡のいずれの崩壊によっても引き起こされる可能性がある。例えば、炎症など、血管の外側の膠質浸透圧を増加させるもの、又は心不全など、血管内の静水圧を増加させるものは何でも、浮腫を引き起こし得る。浮腫はまた、ガン又はリンパ節の腫脹による圧力、あるいは放射線治療によるリンパ管の破壊、又は感染症によるリンパ管の侵襲に起因する、リンパ系の閉塞によって引き起こされる間質液の異常な除去によって引き起こされる可能性もある。
【0003】
特に、脳浮腫は、ナトリウム及び水分含有量の増大に由来する脳体積の増大によって引き起こされる。脳浮腫は、悪性脳腫瘍患者と良性脳腫瘍患者において共通の発生頻度であり、こうした患者における罹患及び死亡の主な原因である。一般に2種類の脳浮腫:すなわち細胞内浮腫及び細胞外浮腫が存在する。
【0004】
細胞内浮腫は、細胞内の水分含有量の増大によって引き起こされる。このタイプの浮腫は、脳虚血又は外傷など、細胞毒性損傷の結果であることが多く、時として「細胞毒性浮腫」と呼ばれる。細胞毒性浮腫の第一の機序は、ナトリウム-カリウムATPアーゼポンプ(ナトリウムを細胞内空間に蓄積させ、浸透勾配をもたらし、水が細胞に入るようにする)を駆動するATPの喪失である。
【0005】
細胞外浮腫は、脳脊髄液又は間質液中の水分の増加によって引き起こされる。血管原性浮腫、水頭症性浮腫、浸透圧性浮腫、静脈還流における腫瘍、流体力学プロセス(ここでは流体は腫瘍に由来する)、及び髄膜腫における排出性分泌機序(ここでは、腫瘍によって生じた物質は、腫瘍周囲の組織中に出現する)によって誘発される鬱血を含めた、様々なタイプの細胞外浮腫が存在する。血管原性浮腫は、脳腫瘍に由来する最も一般的なタイプの浮腫であり、これには、腫瘍周囲浮腫及び腫瘍性浮腫が含まれる。血管原性浮腫は、血管から細胞外区画までの圧力勾配を形成させ、流体を脳実質に漏出させる、脳の毛細血管透過性の増大に由来する。
【0006】
水頭症性浮腫は、脳脊髄液流の閉塞の結果である。このタイプの浮腫では、脳室と脳実質との間に静水圧勾配が形成される。浸透圧性浮腫は、血漿と間質液との間の浸透勾配が変化した結果である。圧迫の部位での鬱血を伴う、静脈還流部位における腫瘍(例えば、腫瘍による隣接する皮質静脈の圧迫)によって誘発される鬱血は、腫瘍周囲浮腫をもたらす。
【0007】
(2.2 ステロイドを用いた浮腫の治療)
過去数十年の間、医師は、ステロイドであるデキサメタゾンを用いて脳浮腫を治療してきた。デキサメタゾンは、浮腫を引き起こす血管内皮成長因子(VEGF)(これは、毛細血管透過性の低下をもたらす)の発現を低下させる。通常、脳浮腫を患う患者は、長期にわたる高用量のデキサメタゾンにさらされ、こうした暴露によって、患者は副作用を生じやすい。高用量のデキサメタゾンの投与に伴う副作用としては、重い筋障害、筋萎縮、骨粗鬆症、無腐性壊死、食欲増大、体重増加、消化管穿孔又は出血、薄い又は弱い皮膚、紫斑、出血斑、創傷治癒の阻害、座瘡、発疹、高血糖、体脂肪の再分布、末梢性浮腫、並びに人格変化及び不眠症から精神病までの範囲に及ぶ行動的影響が挙げられる。さらに、デキサメタゾンは、悪性の神経膠腫細胞のアポトーシス死を妨げ、化学療法薬及び治療的照射に対する部分的な耐性を誘発する可能性がある。多くの場合、デキサメタゾンの投与から患者が受ける副作用は、脳腫瘍及び浮腫によってもたらされる神経学的影響よりも消耗性であるので、研究者達は、浮腫を治療するための、こうした消耗性の副作用を引き起こさない、より有効な方法を探し求めていた。
【0008】
(2.3 酢酸コルチコレリン)
ヒト副腎皮質刺激ホルモン放出因子(酢酸コルチコレリン)は、末梢性の非内分泌機能によって介在される浮腫及び炎症の強力阻害剤としての生物活性を有することが示されている、内因性の41アミノ・ペプチドである(Wei, E. T.らの文献、Ciba Foundation Symposium 172:258-276 (1993))。これは、一連の実験で確認されており、これらの実験では、酢酸コルチコレリンの全身投与は、損傷又は炎症メディエーターに応答する血漿成分の血管漏出及びそれに伴う組織腫大を阻害することが示されている(Wei, E. T.らの文献、European J. of Pharm. 140:63-67 (1987)、Serda, S. M.らの文献、Pharm. Res. 26: 85-91 (1992)、及びWei, E. T.らの文献、Regulatory Peptides 33:93-104 (1991))。
【0009】
酢酸コルチコレリンの抗炎症作用に関して、酢酸コルチコレリンは、皮膚における後毛細管細静脈に対して選択的に作用すると考えられる様々な炎症メディエーターによって誘発される血管漏出を予防する。酢酸コルチコレリンはまた、筋肉、脳の微小血管、及び肺の肺胞毛細血管における、毛細管からの損傷誘発性及び炎症メディエーター誘発性の漏出を阻害する。これらの知見は、酢酸コルチコレリンが、内皮細胞の完全性を維持又は復元するために、微小循環全体を通して作用し、それによって、流体の放出、並びに血管内腔からの白血球輸送、及び損傷の部位での蓄積を阻害することを示唆している。
【0010】
酢酸コルチコレリンは、ヒトにおける様々な異なる用途について、安全で有用な医薬品であることが示されている。特に、酢酸コルチコレリンのインビボでの投与は、ヒトにおける高-及び低-コルチゾール(cortisolemic)状態の原因を解明するのを助けるために広く使用されており、内因性うつ病及びクッシング病を含めた視床下部-下垂体-副腎系に影響を及ぼす他の様々な障害のための、極めて有用な診断及び調査用ツールである(Chrousos, G.らの文献、N. Eng. J. Med. 310:622 (1984)、及びLytras, N.らの文献、Clin. Endocrinol. 20:71 (1984))。実際、酢酸コルチコレリンのインビボでの投与は、下垂体前葉機能の障害が疑われるあらゆる症例において、下垂体前葉の副腎皮質刺激機能を試験するために有用である。これは、下垂体腫瘍又は頭蓋咽頭腫を患う患者、下垂体機能不全、汎下垂体機能低下症、又はエンプティセラ症候群が疑われる患者、並びに下垂体領域の外傷性又は術後損傷を患う患者、及び下垂体領域の放射線治療を受けている患者にあてはまる。したがって、酢酸コルチコレリンは、視床下部-脳下垂体-副腎(HPA)軸の診断用分析に対する有用性を有し得る。
【0011】
酢酸コルチコレリンの静脈内注入が、ネズミにおける腫瘍周囲脳浮腫の発生を低下又は阻害できることも、研究によって示されている。酢酸コルチコレリンは、RG2神経膠腫腫瘍細胞を脳に移植されたネズミにおいて、腫瘍性浮腫及び腫瘍周囲浮腫を軽減させ、慢性的に投与されると、デキサメタゾン単独の投与よりも生存を有意に延長させることが示された。Tjuvajev J.らの文献、「副腎皮質刺激ホルモン放出因子は、血管原性脳浮腫を減少させる(Corticotropin-Releasing Factor Decreases Vasogenic Brain Edema)」(Cancer Res. 1996 Mar. 15; 56(6): 1352-60)。
【0012】
また、研究により、酢酸コルチコレリンの静脈内注入が、ネズミにおけるデキサメタゾンの抗浮腫効果を増強することが判明している。インビボ研究では、デキサメタゾン単独と、酢酸コルチコレリンと組み合わせた抗浮腫効果が評価された。大脳内にW256乳ガンを有するネズミでは、酢酸コルチコレリンが、研究上の最も低い用量の酢酸コルチコレリンでさえ、デキサメタゾンの抗浮腫効果を実質的に増強することが判明した。Tjuvajev Jの文献、「デキサメタゾンの抗浮腫性用量応答プロフィールに対するhCRFの効果:インビボでの実験的研究(The Effect of hCRF on the Anti-edematous Dose Response Profile of Dexamethasone: an In Vivo Experimental Study)」(New York, New York:Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, 1996)。
【0013】
さらに、酢酸コルチコレリンは、ヒトにおいて良好な寛容性を示すことが示されている。第一相試験に参加した腫瘍周囲脳浮腫患者は、神経症状又は理学的所見の改善を示した(ここでは彼らは、酢酸コルチコレリンの静脈内ボーラス及び持続注入を受けた)。しかし、酢酸コルチコレリンの静脈内投与は、頭痛、低血圧症、顔面潮紅、下痢、息切れ、吐き気、及び嗜眠を含めた、ある種の副作用を確かにもたらした。Villalona M.A.らの文献、「腫瘍周囲脳浮腫患者におけるヒト副腎皮質刺激ホルモン-放出因子(hCRF)の第一相試験(A Phase I Trial of Human Corticotrophin-releasing Factor (hCRF) in Patients with Peritumoral Brain Edema)」(Annals of Oncology 9: 71-79, 1998)。
【0014】
さらなる実験的研究及び臨床的研究では、酢酸コルチコレリンがまた、浮腫を治療するのに必要とされるステロイドの量を低下させ、ステロイド使用に伴う副作用を低下させる、ステロイド節約効果も有し得ることが示される。進行中の延長研究(extension study)では、20人の対象が、酢酸コルチコレリンを少なくとも4週間服用した。これらの対象のうち11人は、研究中のデキサメタゾン投薬量が減り、2人は、併用するデキサメタゾンを服用しなかった。ベースラインでステロイド関連の状態を患う18人の対象のうち8人(45%)に、こうした状態の改善又は回復が観察された。「腫瘍周囲脳浮腫の治療のためのXERECEPT(商標)(酢酸コルチコレリン注入)の安全性及びステロイド節約の潜在的可能性、第三相プログラムの一部としての非盲検研究の中間報告」(Safety and Steroid-Sparing Potential of XERECEPT TM (corticorelin acetate injection) for Treatment of Peritumoral Brain Edema an Interim Report of an Open-Label Study as Part of a Phase III Program)、神経腫瘍学会(SNO)の第11回年次総会(11th Annual Meeting of the Society For Neuro-Oncology(SNO)),(Orlando、Florida 2006年11月15〜19日)。
【0015】
この明細書の全体にわたって記述するすべての参考文献は、その内容全体を参照により本明細書に組み込むものとし、引用又は議論される参考文献はいずれも、先行技術として解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0016】
(3.0 要約)
本発明は、浮腫を予防、治療、又は管理する方法に関する。こうした方法には、酢酸コルチコレリンを投与することを含む、浮腫の治療、管理、又は予防のために設計された治療計画又はプロトコルが含まれる。本発明はまた、ステロイド節約治療を提供する方法も含む。本発明のある態様は、現在ステロイド、例えばコルチコステロイド又はデキサメタゾンを受けているヒトに、ステロイド節約的利益を提供する方法であって、酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を含む。ステロイド節約的利益には、より低い用量のステロイドの投与、及び、ステロイドが投与される状態の臨床学的又は神経学的改善又は安定を含めた、ステロイドの有効性を含まない、ステロイドの服用に伴う副作用の低下が含まれる。
【0017】
本発明者らは、酢酸コチコレリンの皮下ボーラス注射が、腫瘍周囲浮腫を治療するのに有効であることを発見した。これは、酢酸コルチコレリンの短い半減期や、この化合物が一般的に、持続注入を介して投与されることを考慮すると、予想外の発見であった。本発明者らは、腫瘍周囲脳浮腫患者に、酢酸コルチコレリン単独の皮下注射を施すことによって、浮腫を管理又は治療することができ、患者は、ステロイド療法に伴う副作用のうちの多くを経験しないことを発見した。本発明者らは、デキサメタゾンを受けている脳浮腫患者に酢酸コルチコレリンの皮下注射を施すことによって、酢酸コルチコレリンの非存在下で患者が受けてきたであろうデキサメタゾンの量を減らすことができることも発見した。デキサメタゾンのこの低下によって、患者が受けるデキサメタゾンに伴う副作用が低下する。
【0018】
したがって、本発明の種々の態様は、脳浮腫の治療又は管理のための酢酸コルチコレリンの皮下ボーラス注射を含む。本発明のある実施態様では、本発明は、皮下用量の治療有効量の酢酸コルチコレリンを投与の必要のあるヒトに投与することによって、ヒトにおける脳浮腫を治療する方法を包含する。
【0019】
本発明の他の態様は、ステロイドと組み合わせた酢酸コルチコレリンの皮下投与を含む。ここでは、酢酸コルチコレリンは、ステロイドの有効性を損なわずに、投与されるステロイドの量を低下させる、ステロイドの投与の頻度を低下させる、又は患者がステロイドに暴露される時間を減少させるのに十分な量で投与される。ある実施態様では、本明細書に記述する方法は、脳浮腫を治療又は管理する方法であって、酢酸コルチコレリンと、デキサメタゾンなどのステロイドとの組み合わせを、投与の必要のあるヒトに投与することを含む前記方法を含む。ここでは、酢酸コルチコレリンと組み合わせるステロイドの量は、浮腫を治療又は管理するのに十分である。
【0020】
他の実施態様では、本明細書に記述する方法は、脳浮腫を治療又は管理する方法であって、投与の必要のあるヒトに、酢酸コルチコレリン及びステロイドを投与することを含む前記方法を含む。ここでは、酢酸コルチコレリンの量は、酢酸コルチコレリンの非存在下で投与されるステロイドの量よりも低い用量でステロイドの所望の効果を提供するのに十分なものである。
【0021】
本発明の別の態様は、酢酸コルチコレリンと組み合わせてステロイドを投与することを含む治療計画を含む、脳浮腫を治療するための方法を包含する。ここでは、患者のステロイドへの総暴露量は、酢酸コルチコレリンの投与によって低下する。ステロイドの所望の効果とは、脳浮腫の予防、治療、又は管理であり、これらは、臨床学的及び神経学的試験を使用して評価することができ、その例を、以下にさらに詳細に議論する。
【0022】
本発明はまた、現在ステロイドを受けている患者に、ステロイド節約的利益を提供する方法であって、患者がより低い用量のステロイドを受け、副作用の低下を受けながらも治療効果を達成することができるのに有効な量の酢酸コルチコレリンを患者に投与することを含む前記方法を含む。
【0023】
ある実施態様では、本明細書に記述する方法は、脳浮腫のステロイド節約治療の必要のあるヒトにおける脳浮腫のステロイド節約治療のための方法であって、亜臨床的有効量のステロイドと酢酸コルチコレリンの組み合わせをヒトに投与することを含む前記方法を含む。ここでは、この組み合わせは、浮腫を治療するのに有効である。
【0024】
本発明はまた、酢酸コルチコレリンとステロイドを投与することを含む治療計画を用いて、ヒトにおけるステロイド由来の副作用を低下させる方法を含む。ここでは、酢酸コルチコレリンの量は、ステロイドの治療効果を、より低い用量のステロイド、例えば、酢酸コルチコレリンの非存在下で投与されるステロイドの用量の半分以下で達成させるのに十分である。
【0025】
本発明はまた、抗炎症剤又は抗ガン剤の用量節約の必要のあるヒトにおける、抗炎症剤又は抗ガン剤の用量節約法であって、酢酸コルチコレリンの非存在下で投与される抗炎症又は抗ガン剤の量よりも低い量で、抗炎症又は抗ガン剤の効果を達成させるのに十分である量の酢酸コルチコレリンをヒトに投与することを含む前記方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
(4.0 図面の簡単な説明)
【図1】延長研究の研究デザインを表す流れ図である。延長研究は、第6.0節でさらに詳細に述べる。
【0027】
【図2】延長研究に登録された20人の患者すべてについての、時間経過に伴うデキサメタゾン投薬を示す。
【0028】
【図3】延長研究に登録された20人の患者すべてについての、デキサメタゾン用量及びステロイド関連有害事象の正味の累積的変化を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(5.0 詳細な説明)
(5.1 定義)
本明細書で用いられる語句「ステロイド節約効果」は、ステロイドと同時投与された場合にステロイドの有益効果を損なわずにステロイドの投薬量の低下を可能にする、薬の効果を指す。
【0030】
本明細書で用いられる語句「ステロイド逓減」は、ある一定期間に患者に投与されるステロイドの量の低下を指す。
【0031】
本明細書では、「プロトコル」には、投薬スケジュール及び投薬計画が含まれる。本明細書では、プロトコルは、使用の方法である。
【0032】
用語「治療する」、「治療された」、「治療すること」、又は「治療」は、本明細書で同義的に使用され、障害と診断された又は障害を有する個人、及びまだ診断されていない個人における障害のいずれの治療も指し、それだけには限らないが、以下が含まれる:(1)障害と診断された、又は障害を負う個人を看護すること;(2)障害と診断された、又は障害を負う個人を治療する又は治癒させること;(3)個人における障害を元に戻すこと;(4)個人における障害の状態を軽減する、改善する、減少させる、又は停止させること;(5)個人における障害によって引き起こされる、又は個人における障害に伴う症状を軽減する、減少させる、又は停止させること;(6)動物における障害によって引き起こされる、又は動物における障害に伴う症状発現の頻度、回数、又は重症度を軽減すること;(7)臨床検査によって確認される障害の原因又は状態の臨床的改善を成し遂げること;あるいは、(8)神経学的試験によって確認される障害の原因又は状態の神経学的改善を成し遂げること。
【0033】
本明細書で使用される語句「臨床的改善」は、それだけには限らないが、筋障害、筋萎縮、骨粗鬆症、無腐性壊死、食欲増大、体重増加、腹部膨満、水分貯留、膵炎、肝臓肥大、高血糖、カリウム欠乏、消化管穿孔又は出血、薄い又は弱い皮膚、紫斑、出血斑、創傷治癒の阻害、座瘡、発疹、高血糖、体脂肪の再分布、又は末梢性浮腫を含めた、障害又は障害の治療に伴う重篤有害事象(「SAE」)、有害事象(「AE」)、又は臨床的合併症の軽減又は回復を指す。
【0034】
本明細書で使用される語句「神経学的改善」は、神経学的試験スコアの上昇、又は観察される神経症状の改善もしくは軽減を指すことができる。
【0035】
用語「管理する」、「管理される」、「管理すること」、又は「管理」は、本明細書では同義的に使用され、こうした障害と診断された、又は障害を負う個人における、障害のいずれの治療も指し、それだけには限らないが、以下が含まれる:(1)個人における障害のさらなる発症又は進行を停止すること;又は(2)個人における障害の進行を遅くすることである。
【0036】
本明細書では、用語「含むこと」、「含む」、「〜が含まれる」、及び「などの」は、制約のない、非限定的な意味で使用される。
【0037】
本明細書で使用される用語「約」は、およそ、又は、ほぼ、又は前後を指す。例えば、用語「約」が、特定の投薬量又は範囲に関して使用される場合、用語「約」は、指定される投薬量又は範囲が、およその投薬量又は範囲であり、これが、実際に指定された量又は範囲だけでなく、挙げられた量又は範囲の若干外側の、安全かつ有効な量であり得る量又は範囲も含むことを示す。
【0038】
本明細書では、用語「患者」は、ヒトを意味する。さらに、本明細書では、「患者」、「個人」、「対象」、及び「ヒト」は、同義的に使用され、医師の治療下にある個人に限定されない。
【0039】
本明細書では、用語「ステロイド節約的利益」は、低下された用量のステロイドを受けている患者における、より高用量のステロイドに伴う治療効果を受けながらの、ステロイドに伴う副作用の軽減を指す。
【0040】
本明細書では、「亜臨床的に有効な量」は、単独で投与された場合には、治療有効投薬量で確実に治療する疾患又は状態を、予防、管理、又は治療しないであろう治療薬の投薬量である。
【0041】
本明細書では、特に明記しない限り、「治療有効量」は、疾患もしくは状態、又は疾患もしくは状態に伴う1以上の症状を予防、治療、又は管理する、あるいはその再発を予防するのに十分な、化合物単独の、又は別の化合物と組み合わせた量を意味する。「治療有効量」は、疾患又は状態に伴う副作用の重症度又は頻度を低下させるのに十分な、化合物単独の、又は別の化合物と組み合わせた量も包含し得る。
【0042】
(5.2 酢酸コルチコレリン)
酢酸コルチコレリンは、当技術分野で、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、コルチコリベリン、コルチコレリン、及びCRF-41としても公知であり、間接的に視床下部-下垂体-副腎(HPA)系とも、直接的にCRF受容体とも相互作用する41アミノ酸ペプチドである。酢酸コルチコレリンは、視床下部室傍核の小細胞性(小さな細胞の)ニューロンに高濃度で見られ、HPA軸が最終的にコルチゾール産生を刺激するように影響を与える。酢酸コルチコレリンはまた、末梢組織によって直接的に産生される。
【0043】
酢酸コルチコレリン神経ペプチドは、羊の視床下部抽出物から最初に分離され(OCRF; Vale, W.らの文献、Science 213:1394-1397 (1981))、その後、ラット(rCRF;Rivier, J.らの文献、Proc. Natl. Acad. Sci USA 80:4851-4855 (1983))、ブタ(PCRF;Schally, A.らの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5197-5201 (1981)、及びヒト(hCRF;Shibahara, S.らの文献、EMBO J. 2:775-779の(1983))を含めた、数多くの他の哺乳類の視床下部から同定及び単離されている。ヒツジ、ラット、及びヒト由来の酢酸コルチコレリンペプチドのアミノ酸配列の比較によって、ラットペプチドとヒトペプチドが同一であり、どちらもヒツジペプチドとは7アミノ酸位で異なり、その違いはほとんど、ペプチドのC末端領域中に存在することが示されている(Hermus, A.らの文献、J. Clin. Endocrin. and Metabolism 58:187-191 (1984)、及びSaphier, P.らの文献、J. Endocrin. 133:487-495 (1993))。
本明細書に記述される方法のある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、合成である。例えば、商標名XERECEPT(商標)によって特定される合成酢酸コルチコレリンの注射可能な医薬組成物は、第三相試験を受けている。本発明のある実施態様では、使用する酢酸コルチコレリンは、XERECEPT(商標)である。本明細書に記述される方法の他の実施態様では、酢酸コルチコレリンの誘導体、類似体、及び結合体を使用することができる。酢酸コルチコレリンの結合体の例は、(その内容全体を参照により本明細書に組み込む、「半減期が延長されたCRF結合体(CRF Conjugates with Extended Half-Lives)」というタイトルの、2007年5月25日に出願された)米国出願第60/931,786号に記載されている、PEG結合酢酸コルチコレリンである。
【0044】
(5.3 治療の方法)
本発明は、浮腫を予防、治療、又は管理する方法に関する。こうした方法には、酢酸コルチコレリンを投与することを含む、浮腫の治療、管理、又は予防のために設計された治療計画又はプロトコルが含まれる。本発明はまた、ステロイド節約治療を提供する方法を含む。本発明のある態様は、現在ステロイドを受けているヒトに、ステロイド節約的利益を提供する方法であって、酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を含む。本発明はまた、用量節約治療を提供する方法も含む。本発明のある態様は、現在抗ガン又は抗炎症治療を受けているヒトに、用量節約的利益を提供する方法であって、酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を含む。
【0045】
(5.3.1 浮腫を治療する方法)
本発明は、浮腫を治療又は管理する方法を対象とする。本明細書に記述する方法は、浮腫を治療又は管理する方法であって、患者に酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を含む。ここでは、酢酸コルチコレリンは、浮腫を治療又は管理するのに十分な量で投与される。ある種の実施態様では、治療は、下の第5.3.2章で述べる通り、患者の臨床的又は神経学的改善をもたらす。本明細書に記述する方法は、1回以上の皮下ボーラス用量の治療有効量の酢酸コルチコレリンを、投与の必要のあるヒトに投与することによって、ヒトにおいて脳浮腫を治療するための方法を含む。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、浮腫を軽減するのに十分な量で投与される。他の実施態様では、酢酸コルチコレリンは、浮腫を管理する、及び浮腫が増大していくのを予防する、すなわち、さらなる間質液の流入を予防するのに十分な量で投与される。
【0046】
本発明はまた、脳に対する外傷、損傷、毒素、又は疾患(外傷性の頭部外傷、開頭術、血餅、脳嚢胞、炎症、又は感染症など)の結果である脳浮腫を治療又は管理する方法を包含する。ある実施態様では、本発明は、浮腫を治療又は管理する方法であって、脳組織の炎症を軽減するのに十分な量の酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を包含する。脳組織の炎症を測定する方法は、下の第5.3.3章に記述する。
【0047】
本発明はまた、水及びナトリウム量の増加に起因する脳体積の膨張を引き起こす、力学的な、循環的な、浸透圧性の、又は代謝的な病理に起因する脳浮腫を治療又は管理する方法を包含する。こうした病理は、細胞内又は細胞外の浮腫をもたらす可能性がある。本明細書に記述する方法で治療することができる細胞内及び細胞外の脳浮腫のタイプとしては、細胞毒性、水頭症性、並びに間質性及び血管原性タイプの浮腫が挙げられる。
【0048】
本発明には、浮腫を予防するための方法であって、投与の必要のある患者に酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法も包含される。ここでは、酢酸コルチコレリンは、浮腫を予防するのに十分な量で投与される。こうした実施態様では、患者は、浮腫を発症する危険がある可能性がある。浮腫を発症する危険があるこうした患者は、下の第5.3.2章で述べる方法を含めた、当技術分野で公知である任意の方法によって特定することができる。浮腫を発症する危険がある患者としては、手術を受けた患者、手術から回復しつつある患者、手術を現在受けている患者、手術を受けることが予期される患者が挙げられる。浮腫を発症する危険がある患者としては、外傷、損傷、毒素、又は疾患(それだけには限らないが、外傷性の頭部外傷、開頭術、血餅、脳嚢胞、炎症、又は感染症など)の脳への結果として、間質液の恒常性バランスが崩壊した患者も挙げられる。ある実施態様では、本明細書に記述される発明は、皮下用量の酢酸コルチコレリンを、投与の必要のあるヒトに投与することによって、ヒトにおける脳浮腫を予防する方法を含む。
【0049】
本発明は特に、浮腫の発生を予防する、あるいは脳腫瘍に伴う脳浮腫を治療又は管理する方法を包含する。こうした脳腫瘍は、原発性又は転移性であり得る。本発明はまた、手術の副作用に伴う浮腫を含めた、脳腫瘍の治療に伴う脳浮腫を予防、治療、又は管理する方法を包含する。したがって、本発明は、切除術、すなわち脳腫瘍の外科的除去から回復しつつある患者における脳浮腫を治療又は管理する方法を含む。
【0050】
本発明はまた、手術に加えて、放射線療法、化学療法、又はそれらの組み合わせの副作用に伴う脳浮腫を予防、治療、又は管理する方法を包含する。こうした方法には、化学療法又は放射線療法を同時に受けている、又は受けることから回復しつつある患者における脳浮腫を予防、治療、又は管理する方法が含まれる。例えば、本発明の一態様は、放射線壊死を有する患者における脳浮腫を治療又は管理するための方法である。
【0051】
本発明はまた、浮腫の発生を予防する、あるいは血液脳関門の破壊に伴う脳浮腫を治療又は管理する方法を包含する。脳浮腫は、内皮細胞間の密着結合が開かれて、毛細管開窓が誘発され、飲作用胞が増加することにより、血液脳関門の透過性が変更されることによって引き起こされる可能性がある。したがって、本発明はまた、浮腫を治療又は管理する方法であって、血液脳関門を再構築するのに十分な量の酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を指向するものである。血液脳関門を再構築することは、内皮細胞間の接合部を再び締めることを含み得る。さらに他の実施態様では、本発明は、浮腫を治療又は管理する方法であって、血管保護効果を誘発するのに十分な量の酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を包含する。
【0052】
本発明に包含される他の態様は、脳浮腫を治療又は管理する方法であって、酢酸コルチコレリンとステロイドの組み合わせを投与することを含む前記方法を含む。本発明は、皮下に投与される酢酸コルチコレリンが、浮腫の治療のためのステロイドの治療的利益を増強又は向上させることができるという認識に、ある程度基づいている。したがって、本発明は、ステロイドと組み合わせて、酢酸コルチコレリンを皮下に投与することを含む方法及び組成物を包含する。特に、本発明は、当技術分野で公知の方法によって決定される通りの、i)単独で投与されるステロイドのプロフィールよりも優れた治療プロフィール;ii)浮腫に対するステロイド治療に伴う可能性がある臨床的又は神経学的副作用の管理、軽減、又は安定化;あるいはiii)酢酸コルチコレリンの非存在下で同じ又はより優れた治療的結果を必要とされるであろうステロイドへの暴露と比較した場合の、ステロイドへの暴露の減少;を提供する治療計画及び投与の方法を包含する。好ましい実施態様では、ステロイドは、デキサメタゾンである。
【0053】
本発明によって包含されるある実施態様では、脳浮腫を治療又は管理する方法は、投与の必要のあるヒトに酢酸コルチコレリンとステロイドの組み合わせを投与することを含む。ここでは、酢酸コルチコレリンと組み合わせられるステロイドの量は、浮腫を治療又は管理するのに十分なものである。本発明のある種の実施態様では、酢酸コルチコレリンは、浮腫を予防、管理、又は治療するために酢酸コルチコレリンの非存在下で投与する必要があったであろうステロイド用量よりも低い用量のステロイドと組み合わせて患者に投与される。より低い用量のステロイドの投与は、ステロイドに伴う副作用を発症する患者のリスクを低下させる。一実施態様では、1以上の以下のステロイドの副作用が、軽減及び/又は排除される:クッシング様顔貌、多尿症、筋障害、周囲浮腫、筋萎縮、骨粗鬆症、無腐性壊死、食欲増大、体重増加、挫創、視力低下、腹部膨張、点状出血、圧迫骨折、腹部膨満、消化管穿孔又は出血、薄い又は弱い皮膚、皮膚線条、紫斑、出血斑、創傷治癒の阻害、座瘡、発疹、帯状疱疹発疹、高血糖症、体脂肪の再分布、末梢性浮腫、足部浮腫、ステロイド依存、並びに人格変化及び不眠症から精神病までの範囲に及ぶ行動的影響、並びに化学療法誘発性アポトーシスの阻害である。したがって、ステロイドと共に酢酸コルチコレリンが投与される、本明細書に記載する脳浮腫を治療する方法では、亜臨床用量のステロイドを、治療を受けている患者に投与することができる。亜臨床ステロイド用量は、単独で投与される場合には、浮腫を予防、管理、又は治療しないであろうステロイドの投薬量である。
【0054】
ある実施態様では、本明細書に記載される方法は、脳浮腫を治療又は管理する方法であって、投与の必要のあるヒトに、酢酸コルチコレリンとステロイドを投与することを含む前記方法を含む。ここでは、酢酸コルチコレリンは、酢酸コルチコレリンの非存在下で投与されるステロイドの量よりも低い量で、ステロイドの効果を達成させるのに十分である。本発明の別の態様は、酢酸コルチコレリンと組み合わせてステロイドを含み、その結果、ステロイドの投与の総暴露又は頻度が、酢酸コルチコレリンの投与によって低下させられる治療計画の適用を含む、脳浮腫を治療するための方法を包含する。
【0055】
酢酸コルチコレリンは、ステロイド節約薬剤として投与することも可能であり、したがって、本明細書に記載する方法は、浮腫を治療又は予防する方法であって、酢酸コルチコレリンとステロイドを含む治療計画を、施す必要のある患者に施すことを含む前記方法も含む。ここでは、酢酸コルチコレリンは、ステロイド節約薬剤として投与される。酢酸コルチコレリンとステロイドを、投与の必要のあるヒトに投与することができる。ここでは、酢酸コルチコレリンは、ステロイドの有効性を損なわずにステロイドの投薬量を低下させるのを可能にする量で投与される。
【0056】
本発明のある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、既にステロイド療法中の患者に投与される、又は、ステロイドと同時に患者に投与される。ステロイドを含む本明細書に記載される治療に関して、適切なステロイドとしては、それだけには限らないが、コルチコステロイドが含まれる。コルチコステロイドとしては、糖質コルチコイド及び鉱質コルチコイド、例えば、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デオキシコルチコステロン、デソニド、デソキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール、ヒドロコルチゾンアセポネート、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、ウロベタゾール、及びそれらの組み合わせなどが含まれる。
【0057】
酢酸コルチコレリンの非存在下で浮腫を治療するのに有効な量で投与されるステロイドに伴う副作用も、軽減させることができる。ある実施態様では、本明細書に記載される発明は、投与の必要のある患者に酢酸コルチコレリンを投与することによって、ステロイドの投与に伴う副作用の重症度又は頻度を低下させる方法を含む。さらに、酢酸コルチコレリンを一旦、こうした患者に投与すると、患者が受けるステロイドの量を低下させることができる。ある実施態様では、患者は、浮腫を有する、又は既にステロイド療法中である、及び/又は浮腫を発症する危険がある。ステロイドの投与に伴う副作用は、上で述べている。
【0058】
酢酸コルチコレリンはまた、ステロイド補充療法の一部として患者に投与することができる。ある実施態様では、本発明は、浮腫を治療する方法であって、ステロイド補充療法として酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を含む。酢酸コルチコレリンの投与を含むステロイド補充療法は、抵抗性の患者に適用することができる。例えば、本発明は、ステロイド療法に対して抵抗性の患者における脳浮腫の治療又は管理のための酢酸コルチコレリンの投与を含む。ステロイド療法に対して抵抗性の患者とは、脳浮腫の治療のためにステロイドを投与されてきたが、治療を受ける脳浮腫が、i)ある期間にわたってステロイド療法に対する応答を示さなかった、又はii)応答を示したが、ステロイド療法中のある時点で応答を示すのをやめた、又はiii)脳浮腫が増大し続けた患者である。ある実施態様では、本明細書に記載する方法は、脳浮腫を管理する必要のある患者において脳浮腫を管理するための方法であって、治療有効量の酢酸コルチコレリンを、ステロイド療法に応答しない患者に施すことを含む前記方法を含む。
【0059】
(5.3.2 浮腫の改善を評価すること)
本明細書に記載される方法のある実施態様では、浮腫を治療する方法は、浮腫の臨床的及び/又は神経学的改善をもたらす。浮腫の臨床的改善などの本発明の方法の治療的利益は、CTスキャン及びMRIなどの医学画像によって測定することができる。CT及びT1強調MRIでは、脳浮腫は、低密度又は高強度病変として視覚化することができる。脳脊髄液などの水分含有量が高い脳浮腫及び他の構造は、T2強調MRIでは高強度である。流体減衰反転回復MR画像は、脳浮腫が、同強度又は高強度背景に対する高強度病変として明らかに視覚化されるので、追加の情報を提供する。流体減衰反転回復MRIは、髄膜腫を患う患者において、T2強調MRIと比較されているが、T2強調画像よりも腫瘍描写、すなわち脳実質に対する腫瘍の対比に関して優れている。
【0060】
腫瘍周囲脳浮腫における生化学的な変化を示すために、様々な方法を使用することができる。灌流の変化は、ダイナミック灌流強調MRIを用いて研究することができる。腫瘍周囲浮腫における血流、酸素、及びグルコースの有意な低下は、陽電子射出断層撮影法を使用して評価することができる。手術中研究は、腫瘍周囲組織の酸素レベルの増大を示すために使用することができる。
【0061】
浮腫の神経学的改善は、NCI神経学的検査、カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)、及びミニメンタルステート検査(MMSE)スコアによって測定することができる。NCI神経学的検査は、人の精神状態、協調、歩く能力、筋肉の調子の程度、感覚系、及び深部腱反射作用を検査することによって、脳、脊髄、及び神経機能をチェックするために使用することができる。KPSは、患者が通常の作業を実施する能力を測定するために使用することができる。カルノフスキー・パフォーマンス・ステータスは、0〜100の範囲である。より高いスコアは、患者が、1日の活動をより良く行うことが可能であることを意味する。したがって、ある実施態様では、酢酸コルチコレリンを用いて浮腫を治療することによって、患者のKPSスコアを増加させるという治療的利益をもたらすことが可能である。MMSEは、認知機能の5つの領域:見当識、記憶(registration)、注意力及び計算、想起、及び言語における患者の認知改善を追跡するために使用することができる。MMSEは、最大スコアが30である。したがって、ある実施態様では、酢酸コルチコレリンを用いて浮腫を治療することによって、患者のMMSEスコアを増加させることができる。特定の実施態様では、本発明の方法は、MMSEによって評価されるものとしての認知機能の1以上の領域の治療的利益をもたらす
【0062】
本明細書に記載される方法のある実施態様では、患者における浮腫を治療する方法は、患者の一般状態、生活の質、及び/又は当技術分野で公知の任意の方法によって測定されるものとしての一般的幸福の改善をもたらす。患者の一般状態を測定する方法は、当技術分野で周知であり、身体、機能、及び症状コントロール、並びに心理的及び社会的指標の定量的測定が含まれる。生活の質を測定するための尺度としては、カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス・スケール(上述)、Zubrodスケール(ECOG)、及びLanskyスコアが挙げられる。したがって、ある実施態様では、酢酸コルチコレリンを用いて浮腫を治療することによって、当技術分野で公知の任意の定量方法によって測定されるものとしての患者の一般状態を増進させるという治療的利益をもたらすことができる。
【0063】
また、本明細書に記載されるある実施態様では、浮腫を治療する方法は、患者が受けるステロイドに伴う副作用の軽減をもたらす。副作用の軽減には、患者が受ける副作用の回数の減少、副作用の重症度の軽減、副作用の期間の縮小、又は副作用が起こる頻度の低下が含まれ得る。ステロイドに伴う副作用には、下の第5.3.1章で論じられるものが含まれる。
【0064】
(5.3.3 ステロイド節約治療)
本発明はまた、浮腫を治療するのに有効である薬剤を現在受けているヒトに、用量節約的利益を提供する方法を目的とする。ある実施態様では、本発明は、ステロイドを現在受けているヒトに、ステロイド節約的利益を提供する方法であって、酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を目的とする。ステロイドを現在受けている、又はステロイド療法中である患者への酢酸コルチコレリンの投与は、ステロイドの有益効果を低下させずに、患者が暴露されるステロイドのレベルを低下させ、同時に、患者が受けるステロイドに伴う副作用の重症度、頻度、期間、又は回数を低下させることを可能にする。
【0065】
例えば、本発明は、ステロイドを現在受けているヒトに、ステロイド節約的利益を提供する方法であって、酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を包含する。ここでは、酢酸コルチコレリンの量は、酢酸コルチコレリンの非存在下で投与されるステロイドの量よりも低い量で、ステロイドの効果を達成させるのに十分である。例えば、4mg/dのデキサメタゾン又は他のステロイドを受けている患者に、ステロイドの効果を損なわずに、患者が受けるデキサメタゾンの量を3mg/d以下に低下させる量の酢酸コルチコレリンを投与することができる。一実施態様では、ステロイド療法を受けている患者は、ステロイド節約を達成する量の酢酸コルチコレリンを投与され、最終的にはステロイドを受けないこととなる。本発明の一実施態様では、ステロイドは、デキサメタゾンである。デキサメタゾンが、16mg/日などの高用量で投与されることは稀ではない。デキサメタゾンはまた、40mg/日の用量で投与することもできる。したがって、本発明の一目的は、高用量のデキサメタゾン(例えば、1ヶ月のうちの4日間、20又は40mg/日)を受けている患者への、患者に投与されるデキサメタゾンの用量を逓減することができるような量の酢酸コルチコレリンの投与である。したがって、本発明の一実施態様は、16〜40mg/日のベースライン投薬量でデキサメタゾンを受けている患者への酢酸コルチコレリンの投与を包含する。ここでは、デキサメタゾンのその後の投薬量は、一定の時間間隔で減少させる。例えば、本発明の一実施態様では、酢酸コルチコレリンは、16mg/日のデキサメタゾンを受けている患者に投与される。したがって、患者は、16mg/日のデキサメタゾンを2日間投与され、それに続く2〜4日間の14mg/日のデキサメタゾンの投与、それに続く2〜4日間の12mg/日のデキサメタゾンの投与、それに続く2〜4日間の8mg/日のデキサメタゾンの投与、それに続く2〜4日間の6mg/日のデキサメタゾンの投与、それに続く2〜4日間の4mg/日のデキサメタゾンの投与、それに続く2〜4日間の2mg/日のデキサメタゾンの投与を受ける。このように、デキサメタゾンの出発ベースライン投薬量(これは、それだけには限らないが、16〜40mg/日を含めた、当技術分野で公知のデキサメタゾンの任意の投薬量であり得る)を、次第に、より低い用量又はゼロ用量に逓減させることができる。投与される組成物の経路、頻度、及び量は、所望の結果を達成するために、任意の公知のガイドラインによって、当業者によって調節することができる。主張する方法の一実施態様では、本発明の組成物は、脳浮腫の症状が鎮静するような治療計画で投与される。
【0066】
患者が投与される酢酸コルチコレリンの量は、患者が受けるステロイドの量に依存することに留意するべきである。また、患者が酢酸コルチコレリンを受けている期間全体を通して、そのステロイド節約効果を増大させるために、酢酸コルチコレリンの量を増大させることができる、すなわち、患者が受けるステロイドの用量が次第に低下するにつれて、酢酸コルチコレリンの用量を次第に増大させことができる。代替実施態様では、患者が受ける酢酸コルチコレリンの量は、患者が受けるステロイドの用量が低下しても、一定のままであり得る。また、患者が投与される酢酸コルチコレリンの量を、ステロイドに伴う副作用の増減に応じて調節することができる。
【0067】
ある実施態様では、患者は、その患者の酢酸コルチコレリンの最初の投与の前に、0.75〜9mg/日の投薬量のデキサメタゾンを受けている。一実施態様では、患者は、再発性又は手術不能な脳腫瘍と診断され、2mg用量のデキサメタゾンを、1日につき2〜3回受けている。別の実施態様では、患者は、脳浮腫と診断され、初回量のデキサメタゾン10mgを静脈内に、続いて脳浮腫の症状が鎮静するまで6時間ごとに4mgを筋肉内に投与されている。
【0068】
ある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、ステロイド節約効果を提供するための量で投与される場合、患者が受けるステロイドに伴う副作用を排除することができる。他の実施態様では、本明細書に記載される方法は、ステロイド節約治療の必要のあるヒトにおけるステロイド節約治療のための方法であって、亜臨床的に有効量のステロイドと酢酸コルチコレリンの組み合わせをヒトに投与することを含む前記方法を含む。
【0069】
本発明のある方法では、患者への酢酸コルチコレリンの投与は、患者が、例えば抗生物質又は抗潰瘍剤などの追加の医薬品を服用する必要性を排除する。したがって、本発明の方法は、患者に投与される抗生物質の頻度又は投薬量を低下させるための方法であって、ステロイド治療を受けている患者に、その患者に投与されるステロイドの頻度又は投薬量が次第に低下させ、かつその患者に投与される抗生物質の頻度又は投薬量が次第に低下させるような量の酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法を包含する。一実施態様では、抗生物質の投薬量は、ゼロまで減じられる。本発明の抗生物質は、当技術分野で公知であり、それだけには限らないが、アミノグリコシド抗生物質(例えば、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ネチルミシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソミシン、及びスペクチノマイシン)、アムフェニコール抗生物質(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、及びチアンフェニコール)、アンサマイシン抗生物質(例えば、リファミド及びリファンピン)、カルバセフェム(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム(例えばビアペネム及びイミペネム)、セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、及びセフピロム)、セファマイシン(例えば、セフブペラゾン、セフィネタゾール、及びセフミノクス)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム、カルモナム、及びチゲモナム)、オキサセフェム(例えば、フロモキセフ、及びモキサラクタム)、ペニシリン(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ペナムシリン(penamccillin)、ヨウ化水素酸ペネタメート(penethamate hydriodide)、ペニシリンo-ベネタミン、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピサイクリン、及びフェンシヒシリン(phencihicillin)カリウム)、リンコサミド、(例えば、クリンダマイシン及びリンコマイシン)、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリソマイシン(clarithomycin)、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、及びエリスロマイシンアシストラート)、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンドウラシジン(enduracidin)、エンビオマイシン、テトラサイクリン(例えば、アピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、及びデメクロサイクリン)、2,4-ジアミノピリミジン(例えばブロジモプリム)、ニトロフラン(例えば、フラルタドン、及び塩化フラゾリウム)、キノロン及びその類似体(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、フルメキン、及びグレパグロキサシン)、スルホンアミド(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド、フタリルスルファセタミド、スルファクリソイジン、及びスルファシチン)、スルホン(例えば、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、及びソラスルホン)、サイクロセリン、ムピロシン、及びツベリンが含まれる。本発明の方法はまた、患者に投与される抗潰瘍剤の頻度又は投薬量を低下させるための方法であって、患者に投与されるステロイドの頻度又は投薬量が次第に低下させられ、かつ患者に投与される抗潰瘍剤の頻度又は投薬量が次第に低下させられるような量の酢酸コルチコレリンを、ステロイド治療を受けている患者に投与することを含む前記方法を包含する。一実施態様では、抗潰瘍剤の投薬量は、ゼロまで低下させられる。抗潰瘍剤は、当技術分野で公知であり、それだけには限らないが、ベラドンナアルカロイド、合成抗コリン剤、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、プロスタグランジン(17,20-ジメチル-6-オキソプロスタグランジン-E1メチルエステル、15-メチル-プロスタグランジンE2、16-メチル-16-ヒドロキシ15-デヒドロキシプロスタグランジンE1メチルエステル、7-チアプロスタグランジンE1メチルエステル、及び17,20-ジメチル-7-チアプロスタグランジンE1メチルエステルなど)が含まれる。
【0070】
本発明は、さらに、ステロイド療法を受けている患者において、こうした療法に対する補充療法を提供する方法であって、ステロイド節約量の酢酸コルチコレリンの投与を含む前記方法を含む。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンを、ステロイドに代わるものとして患者に投与することができる。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンの投与を含むステロイド補充療法を、抵抗性の患者に施すことができる。例えば、本発明は、ステロイド療法に対して抵抗性の患者への酢酸コルチコレリンの投与を含む。本発明の方法はまた、ステロイドと抗糖尿病的医薬品を同時に受けている患者にデキサメタゾンを投与することを含む。抗糖尿病薬は、当技術分野で周知である。
【0071】
(5.3.4 炎症又はガンの治療のために投与される追加の薬剤の用量節約)
本発明は、ステロイドを現在受けているヒトに、ステロイド節約的利益を提供する方法であって、酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法に向けられたものであるが、本発明はまた、抗炎症又は抗ガン剤の用量節約の必要のあるヒトにおける抗炎症又は抗ガン剤の用量節約の方法であって、抗炎症又は抗ガン剤の効果を、酢酸コルチコレリンの非存在下での量よりも、より低い量で達成できるようにするのに十分である量の酢酸コルチコレリンをヒトに投与することを含む前記方法も包含する。
【0072】
抗炎症剤としては、それだけには限らないが、ループ利尿薬、浸透圧利尿薬近位利尿薬、遠位尿細管利尿薬及び皮質集合管利尿薬などの利尿薬が含まれる。例えば、適切な利尿薬としては、それだけには限らないが、グルコース、マンニトール、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン、ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ホスホジエステラーゼ、クロルタリドン、カフェイン、メトラゾン及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0073】
抗ガン剤としては、それだけには限らないが、抗新生物形成、抗増殖、抗縮瞳剤(パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポシロン、メトトレキセート、アザチオプリン、アドリアマイシン、及びマイトマイシン(mutamycin);エンドスタチン、アンジオスタチン、及びチミジンキナーゼ阻害剤、クラドリビン、タキソール及びその類似体又は誘導体、パクリタキセル並びにその誘導体、類似体、又はタンパク質と結合したパクリタキセルなど)が含まれる。他の抗ガン剤としては、カルボプラチン、Temodar(登録商標)(テモゾロマイド)、6-ベンジルグアニン、ラパチニブ(GW572016)、トポテカン、ベバシズマブ、及びイリノテカン(カンプトサー(Camptosar))が含まれる。
【0074】
酢酸コルチコレリンが、抗炎症剤又は抗ガン剤と共に投与される場合、酢酸コルチコレリンと、抗ガン剤又は抗炎症剤は、連続的に、周期的に、又は同時に投与することができる。連続的に投与される場合、投与の順序は変動的である。
【0075】
(5.4 標的患者集団)
本発明によれば、酢酸コルチコレリンは、浮腫と診断された患者に投与することができる。ある実施態様では、本発明の方法は、脳浮腫と診断された患者に、浮腫の進行を軽減する、安定化する、又は遅らせるために、酢酸コルチコレリンを投与することを含む。脳浮腫患者には、細胞内又は細胞外脳浮腫患者が含まれる。細胞内浮腫には、細胞毒性浮腫が含まれる。細胞外浮腫には、血管原性浮腫、水頭症性浮腫、浸透圧性浮腫、静脈還流における腫瘍、流体力学プロセス(ここでは流体は腫瘍に由来する)、及び髄膜腫における排出性分泌機序によって誘発される鬱血が含まれる。したがって、一実施態様では、本発明の方法は、浮腫を発症するリスクを低下させるために、患者に酢酸コルチコレリンを投与することを包含する。
【0076】
他の実施態様では、酢酸コルチコレリンが投与される患者は、間質液の恒常性バランスが崩壊するという事実に起因して、浮腫を発症する危険がある患者である。間質液の恒常性バランスをモニタリングする方法は、当技術分野で公知であり、下の第5.3.3章に論じる臨床的及び神経学的試験方法が含まれる。
【0077】
酢酸コルチコレリンは、脳浮腫と診断された患者、あるいは、外傷、損傷、毒素、又は疾患(外傷性の頭部外傷、開頭術、血餅、脳嚢胞、炎症、又は感染症など)の脳への結果として脳浮腫を発症する危険がある患者に投与することができる。脳浮腫と診断された患者、あるいは、力学的な、循環的な、浸透圧性の、又は代謝的な破壊に起因して脳浮腫を発症する危険がある患者にも、酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0078】
本発明はまた、脳腫瘍を有する患者、又は再発性の脳腫瘍を患い、その上、脳浮腫と診断される、あるいは脳浮腫を発症するリスクがある患者に酢酸コルチコレリンを投与することを包含する。こうした脳腫瘍は、原発性又は転移性であり得る。本発明はまた、手術を受けることが予期される又は準備されている、手術を現在受けている、あるいは脳腫瘍に伴う手術から回復しつつある患者への酢酸コルチコレリンの投与を含む。ある実施態様では、切除術、すなわち脳腫瘍の外科的除去が予期される又は準備されている、切除術を現在受けている、あるいは切除術から回復しつつある患者に、酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0079】
さらに、化学療法が予期される又は受ける計画がある、化学療法を現在受けている、あるいは化学療法から回復しつつある患者は、浮腫を発症する危険にさらされている可能性がある、又は浮腫と診断される可能性がある。したがって、一実施態様では、本発明の方法は、化学療法を受ける計画がある、化学療法を現在受けている、又は化学療法から回復しつつある患者に酢酸コルチコレリンを投与することを包含する。さらに、手術又は化学療法の副作用に伴う浮腫を患う患者に、酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0080】
さらに、放射線療法が予期される又は受ける計画がある、放射線療法を現在受けている、あるいは放射線療法から回復しつつある患者は、浮腫を発症する危険にさらされている可能性がある、又は浮腫と診断される可能性がある。したがって、一実施態様では、本発明の方法は、放射線療法を受ける計画がある、放射線療法を現在受けている、又は放射線療法から回復しつつある患者に酢酸コルチコレリンを投与することを包含する。さらに、手術又は放射線療法の副作用に伴う浮腫を患う患者に、酢酸コルチコレリンを投与することができる。例えば、放射線壊死を伴う脳浮腫と診断される患者に、酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0081】
また、本発明によれば、酢酸コルチコレリンは、ステロイドも受けている、又はステロイド療法を受けている患者に投与することができる。本発明のある種の実施態様では、患者は、ステロイド治療を長期間にわたって受けている。したがって、本発明の方法は、1ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、又は2年以上の間、ステロイド療法を受けている患者に酢酸コルチコレリンを投与することを含む。他の実施態様では、患者は、高用量のステロイド治療を受けている。一実施態様では、患者は、20〜24mg/dのステロイドを受けている。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、ステロイド治療の結果として神経学的又は臨床的衰弱を患う患者に投与される。神経学的又は臨床的衰弱は、それだけには限らないが、臨床的及び神経学的試験を含めて、当技術分野で公知である任意の方法によって測定することができる。本発明の方法と共に使用できる臨床試験には、CTスキャン、MRI、及び血清コルチゾールレベルの測定などの医学画像が含まれる。神経学的試験には、NCI神経学的検査、カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)、及びミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが含まれる。
【0082】
さらに、本発明の方法及び組成物は、ステロイド治療を中断する試みに成功しなかった患者、あるいはステロイドの投与の量又は頻度を低下させる試みに成功しなかった患者の治療に有用である。
【0083】
酢酸コルチコレリンはまた、ステロイド治療に伴う望まれない副作用を受けている患者に投与することができる。ステロイド療法に伴う副作用は、下の第5.3.1章で論じる。
【0084】
本発明の別の態様では、本発明の方法及び組成物は、ステロイド療法に対して不都合又は抵抗性の患者の治療に有用である。ある実施態様では、脳浮腫と診断された患者、及びステロイドに対して抵抗性である患者が、酢酸コルチコレリンを投与される。ある実施態様では、ステロイド療法に対して抵抗性の患者とは、浮腫などの疾患の治療のためにステロイドを投与されてきたが、治療を受ける疾患が、i)ある期間、ステロイド療法に対する応答を示さなかった、又はii)応答を示したが、ステロイド療法中のある時点で応答を示すのをやめた、又はiii)疾患が進行し続けた患者である。患者がステロイド治療に対して抵抗性かどうか測定する方法は、当技術分野で公知である。例えば、患者がステロイド療法に対して抵抗性かどうかという評価は、臨床的又は神経学的試験によって測定することができる。臨床試験には、CTスキャン及びMRIなどの医学画像;血清コルチゾールレベルの測定が含まれる。神経学的試験には、NCI神経学的検査、カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)、及びミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが含まれる。ある実施態様では、脳浮腫と診断され、55歳以上であり、ステロイドに対して抵抗性である患者に、酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0085】
(5.6 投薬計画)
上記の方法のいずれかにおいて、酢酸コルチコレリンは、1日1回又は1日複数回投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンの投薬は、1時間ごと、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、又は12時間ごとに適用することができる。あるいは、酢酸コルチコレリンは、2、3、4、5、又は6日ごとに1回投与することができる。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、週に1回、又は2、3、もしくは4週ごとに1回、あるいは月に1回投与することができる。
【0086】
さらに、下の実施例に示す通り、長期間にわたって投与される場合、酢酸コルチコレリンは、良好な寛容性を示すことが示されている。したがって、酢酸コルチコレリンを投与される患者を、患者が長期間にわたってコルチコレリンを受けるような投薬計画に置くことができる。ある実施態様では、患者は、1週、2週、3週、4週、又はそれ以上の期間にわたって、酢酸コルチコレリンの投与を受けることができる。さらに他の実施態様では、患者は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、又はそれ以上の期間にわたって、酢酸コルチコレリンを受けることができる。ある例では、患者は、少なくとも1年の期間にわたって、酢酸コルチコレリンを受けることができる。浮腫がもはや存在しなくなるまで、患者が酢酸コルチコレリンを投与されることが理想的である。
【0087】
上記の方法のいずれかにおいて、酢酸コルチコレリンの総1日量は、1μgから10mgの範囲であり得る。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンの総1日量は、0.1mgから5mg、又は0.3mgから2mgであり得る。例えば、酢酸コルチコレリンの総1日量は、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約4mg、又は約5mgである。酢酸コルチコレリンは、酢酸コルチコレリンの所望の1日量に達するまで、1日1回又は1日複数回投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンの1mg又は2mgの総1日量を達成するために、0.5mg又は1.0mgの酢酸コルチコレリンを、1日につき2回投与することができる。あるいは、酢酸コルチコレリンの2mg又は4mgの総1日量を達成するために、0.5mg又は1.0mgの酢酸コルチコレリンを、1日につき4回投与することができる。
【0088】
本発明は、ステロイドの治療結果を改善するための方法であって、ステロイドの投与と併用して酢酸コルチコレリンを投与することを含む前記方法をさらに提供する。一実施態様では、本発明は、ステロイドと酢酸コルチコレリンとの投与が、追加の効力又は追加の治療効果を有する方法を包含する。本発明はまた、治療有効性が相加的結果よりも大きい、相乗的結果を包含する。好ましくは、ステロイドと酢酸コルチコレリンとのこうした投与は、望まれない又は有害な影響も低下又は回避させる。本発明を考慮すると、ある実施態様では、ステロイドの用量は、低下させる、又は低頻度で投与することができ、好ましくは患者のコンプライアンスを増大させる、治療を改善する、及び/又は望まれない又は有害な影響を低下させる。具体的実施態様では、ステロイドが酢酸コルチコレリンと共に投与される場合、望まれない効果を減じる又は回避するために、より少ない又はより低頻度の用量のステロイドが投与される。
【0089】
酢酸コルチコレリンは、ステロイドを用いる治療計画に先行して、治療計画と重複して、及び/又は治療計画に続いて、ある期間にわたって投与することができる。酢酸コルチコレリンは、ステロイドの投与と同時に、投与の前に、又は投与の後に投与することができる。一実施態様では、本発明は、ステロイドの投与前に、投与と同時に、又は投与後に、患者に酢酸コルチコレリンを投与することを含む方法を提供する。具体的実施態様では、酢酸コルチコレリンは、ステロイドの治療的利益を増大させ、治療の結果を改善することができる。具体的実施態様では、酢酸コルチコレリンは、ステロイドの投与前に投与される。別の具体的実施態様では、ステロイドは、酢酸コルチコレリンの投与前に投与される。他の実施態様では、酢酸コルチコレリンは、最初にステロイドの最初の投与と同時に患者に投与される。好ましい実施態様では、ステロイドは、デキサメタゾンである。
【0090】
ある実施態様では、ステロイドを投与しない場合の酢酸コルチコレリンの投与、又は酢酸コルチコレリンを投与しない場合のステロイドの投与は、治療的に有効ではない。具体的実施態様では、酢酸コルチコレリン又はステロイドの量は、単独では治療的に有効であるのに不十分な量で投与される。代替実施態様では、単独で投与される場合、酢酸コルチコレリン又はステロイドの両方又は少なくとも1つは、治療的に有効である。
【0091】
種々の具体的実施態様では、上記方法は、ステロイドで治療される患者への酢酸コルチコレリンの投与を含む。ここでは、単独で投与されるステロイドは、患者を治療するのに臨床的に適しておらず、その結果、患者は、さらなる有効な治療を必要とする。例えば、患者は、酢酸コルチコレリンの投与無しではステロイドに対する感受性が鈍い。こうした実施態様には、ステロイドを受けている患者に酢酸コルチコレリンを投与することを含む方法が含まれる。ここでは、前記患者は、治療に応答しているが、依然として副作用を患う、再発する、耐性を示す、等々である。こうした患者は、ステロイド単独での治療に応答しない、又は抵抗性である可能性がある。これらの実施態様は、ステロイド単独に対して抵抗性の患者への酢酸コルチコレリンの投与を含む本発明の方法が、本発明の方法によって意図される通りに施された場合、ステロイドの治療的有効性を改善できることを提供する。
【0092】
具体的実施態様では、酢酸コルチコレリンは、浮腫の治療のためにステロイドを受けている患者に投与される。ここでは、患者は、ステロイド単独での治療に対して非応答性又は抵抗性である(例えば、浮腫が進行している)可能性がある。ステロイドの有効性の決定は、当技術分野で公知の方法を使用して、また、下の第5.3.3章で論じる方法を使用して、インビボ又はインビトロで分析することができる。一実施態様では、間質液の体積が有意に低下しなかった、又は、ある期間にわたって増大していた場合に、浮腫は、抵抗性又は非応答性である。抵抗性又は非応答性である患者を特定するための様々な方法は、第5.3.3章におけるモニタリングの方法を含めて、当技術分野で周知である。
【0093】
ある具体的実施態様では、酢酸コルチコレリンは、既にステロイド療法(例えば、1日1〜24mg投与されるデキサメタゾン)を受けている患者に投与される。こうした実施態様では、酢酸コルチコレリンは、デキサメタゾンに加えて酢酸コルチコレリンを投与する2日、2日から1週間、1週から1か月、1ヶ月から6か月、6ヶ月から1年前に、酢酸コルチコレリンの非存在下でデキサメタゾンを既に受けていた患者に、最初に投与される。具体的実施態様では、酢酸コルチコレリンは、デキサメタゾン単独での治療に対して耐性を示す患者に投与される。
【0094】
酢酸コルチコレリンはまた、ステロイド逓減を容易にする、ステロイド節約薬剤として投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンは、既にステロイド療法を受けている患者、好ましくはヒトに投与することができる。ここでは、酢酸コルチコレリンを受けると、患者が受けているステロイド用量を低下させることができる。ある実施態様では、現在デキサメタゾンを受けている患者に、酢酸コルチコレリンを投与することができる。ここでは、酢酸コルチコレリンは、ステロイド逓減を容易にするために患者に投与され、患者が受けているデキサメタゾンの量は、低下させることができる。例えば、1mg/d、2mg/d、3mg/d、4mg/d、5mg/d、6mg/d、7mg/d、8mg/d、9mg/d、10mg/d、11mg/d、12mg/d、13mg/d、14mg/d、15mg/d、16mg/d、17mg/d、18mg/d、19mg/d、20mg/d、21mg/d、22mg/d、23mg/d、又は24mg/dのデキサメタゾンを受けている患者に、ステロイド逓減を容易にする量の酢酸コルチコレリンを投与して、その結果、患者が受けるデキサメタゾンの量を、1mg/d、2mg/d、3mg/d、4mg/d、5mg/d、6mg/d、7mg/d、8mg/d、9mg/d、10mg/d、11mg/d、12mg/d、13mg/d、14mg/d、15mg/d、16mg/d、17mg/d、18mg/d、19mg/d、20mg/d、21mg/d、22mg/d、23mg/d、又は24mg/d、ある種の実施態様では0mg/日未満のデキサメタゾンに低下させることができる。
【0095】
ある実施態様では、患者に投与されるステロイドの量が低下するにつれて、酢酸コルチコレリンの量は増大する。例えば、6mg/dのデキサメタゾンを受けている患者に、3日間、1mg/dの酢酸コルチコレリンを投与することができる。3日間の終了時に、患者は、さらなる3日間、4mg/日のデキサメタゾン及び2mg/日の酢酸コルチコレリンを受けることができる。6日間の終了時に、患者に、さらなる3日間、4mg/日のデキサメタゾン及び3mg/日の酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0096】
他の実施態様では、患者が受けるステロイドの量は低下するが、投与されるコルチコレリンの量は一定のままである。例えば、6mg/dのデキサメタゾンを受けている患者に、3日間、1mg/dの酢酸コルチコレリンを投与することができる。3日間の終了時に、患者は、さらなる3日間、2mg/日のデキサメタゾン及び1mg/日の酢酸コルチコレリンを受けることができる。6日間の終了時に、患者に、さらなる3日間、4mg/日のデキサメタゾン及び1mg/日の酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0097】
さらに他の実施態様では、患者が受けるステロイドの量が低下するにつれて、投与される酢酸コルチコレリンの量も低下させることができる。上記実施態様のいずれかにおいて、一旦、患者が投与されるステロイドの量が、0mg/dに到達すると、患者が受ける酢酸コルチコレリンの量も減少させることができる。
【0098】
具体的実施態様では、酢酸コルチコレリンは、浮腫の治療のためにステロイドを受けている患者に投与される。ここでは、患者は、ステロイド単独での治療に対して望まれない又は有害な影響を受ける可能性がある。例えば、ステロイドは、単独で投与される場合、その有効量で、有毒又は有害である可能性がある。本発明を考慮すると、酢酸コルチコレリンは、酢酸コルチコレリンと併用して投与される場合に、ステロイドの投薬量又は投与の頻度を低下させることができるように、ステロイドの治療的利益を改善することができる。好ましい実施態様では、酢酸コルチコレリンは、ステロイド単独の望まれない又は有害な影響を低下又は回避するために、患者に投与される。ここでは、酢酸コルチコレリンの投与により、より少ない及び/又はより低頻度の用量のステロイドが可能になる。
【0099】
上で述べたものなどの様々な実施態様では、酢酸コルチコレリン及びステロイドは、1時間未満で、約1時間あけて、1時間から2時間あけて、2時間から3時間あけて、3時間から4時間あけて、4時間から5時間あけて、5時間から6時間あけて、6時間から7時間あけて、7時間から8時間あけて、8時間から9時間あけて、9時間から10時間あけて、10時間から11時間あけて、11時間から12時間あけて、多くとも24時間又は多くとも48時間あけて、多くとも1週間もしくは2週間又は1ヶ月もしくは3ヶ月あけて投与される。他の実施態様では、酢酸コルチコレリンとステロイドは、2から4日あけて、4から6日あけて、1週間あけて、1から2週間あけて、2から4週間あけて、1ヶ月あけて、1から2ヶ月あけて、又は、2ヶ月以上あけて投与される。好ましい実施態様では、酢酸コルチコレリンとステロイドは、両方ともまだ活性である期間中に投与される。当業者は、投与される各成分の半減期を測定することによって、こうした時間を決定することが可能であろう。前述の実施態様では、酢酸コルチコレリンとステロイドは、2週、1ヶ月、6ヶ月、1年、又は5年未満あけて投与される。好ましくは、ステロイドは、酢酸コルチコレリンの前に投与される。
【0100】
一実施態様では、酢酸コルチコレリンとステロイドは、同じ患者の診察時間内に投与される。一実施態様では、ステロイドは、酢酸コルチコレリンの投与前に投与される。代替実施態様では、ステロイドは、ステロイドの投与後に投与される。
【0101】
ある実施態様では、酢酸コルチコレリンとステロイドは、患者に周期的に投与される。周期的治療は、一定期間のステロイドの投与、それに続く、一定期間の酢酸コルチコレリンの投与、及びこの連続した投与の繰り返しを含む。周期的治療は、ステロイドに対する耐性の発生を低下させる、かつ/又はステロイド療法の副作用を回避又は低下させる、かつ/又は治療の有効性を改善することができる。こうした実施態様では、本発明は、ステロイドの投与、それに続く酢酸コルチコレリンの交互の投与を意図する。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンとステロイドは、2週ごとに1回、10日ごとに1回、又は毎週1回という、3週未満のサイクルで交互に投与される。他の実施態様では、酢酸コルチコレリン及びとステロイドは、2週ごとに1回、10日ごとに1回、又は毎週1回という、3週未満のサイクルで交互に投与される。
【0102】
さらに、酢酸コルチコレリンは、手術を受ける可能性がある、又は手術から回復しつつある、又は手術を現在受けている、又は手術を受けることが予期される患者に投与することができる。こうした手術は、ガン;脳腫瘍(切除術など);又は脳浮腫などの浮腫の治療に伴われる可能性がある。
【0103】
酢酸コルチコレリンはまた、さらなる抗ガン又は抗炎症治療と併用して、こうした治療の副作用を低下させるために投与することができる。適切な抗炎症治療には、それだけには限らないが、抗炎症剤の投与が含まれる。抗炎症薬には、それだけには限らないが、第5.3.4章に論じたものなどの利尿薬が含まれる。
【0104】
抗ガン治療には、放射線療法、化学療法、光感作療法、手術、又は他の免疫療法が含まれる。化学療法には、第5.3.4章に論じたものなどの、抗新生物形成、抗増殖、抗縮瞳剤の投与が含まれ得る。
【0105】
別の好ましい実施態様では、酢酸コルチコレリンは、ガンの治療のために放射線療法を受けている患者に投与される。放射線治療については、放射線は、ガンマ線又はX線であり得る。この方法は、外照射療法、放射性同位元素(I-125、パラジウム、インジウム)、ストロンチウム-89などの放射性同位元素の組織内刺入、胸部放射線療法、腹腔内P-32放射線療法、及び/又は全腹部及び骨盤放射線療法などの放射線療法を受けている患者に、酢酸コルチコレリンを投与することを包含する。放射線療法の一般概要については、Hellmanの文献、第16章:ガン管理の原則(Chapter 16: Principles of Cancer Management):放射線療法、第6版(Radiation Therapy, 6th edition)(2001、DeVitaら編、J.B. Lippencott Company Philadelphia)を参照のこと。
【0106】
ある実施態様では、ガン治療のために放射線療法、化学療法、光感作療法、手術又は他の免疫療法又は化学療法を受けている個人、及び浮腫を有する又は浮腫を発症するリスクがある個人に、浮腫の治療のために、放射線療法、化学療法、光感作療法、又は手術と併用して、有効量の酢酸コルチコレリンを投与することができる。
【0107】
酢酸コルチコレリンが、抗炎症剤又は抗ガン剤と共に投与される場合、酢酸コルチコレリンと、抗ガン剤又は抗炎症薬剤は、連続的又は同時に投与することができる。連続的に投与される場合、投与の順序は変動的である。
【0108】
(5.7 投与)
上記方法は、酢酸コルチコレリンを含む投薬計画を含む。好ましくは、上記方法のいずれかにおいて、酢酸コルチコレリンは、皮下ボーラス注射などの皮下注射によって投与される。本発明者らは、酢酸コルチコレリンが皮下ボーラス注射として投与される場合、浮腫を管理するための治療的に有効な治療計画、並びに酢酸コルチコレリンのステロイド節約効果を含む、予想外の結果を達成した。さらに、一実施態様では、皮下の酢酸コルチコレリンの投与により、必要とされる酢酸コルチコレリンの投与頻度がより少なく、投与による患者への負担がより小さくなり、それによって、患者のコンプライアンスが増し、療法が改善されるという事実により、静脈内投与経路などのさらなる投与経路よりも、皮下注射が好ましい。他の実施態様では、皮下投与によって、それだけには限らないが、頭痛、低血圧症、顔面潮紅、下痢、息切れ、吐き気、及び嗜眠などの、静脈内注入に伴われる副作用をより少なくすることが可能である。
【0109】
ある実施態様では、本明細書に記載する酢酸コルチコレリンは、0.1μg/kgから1000μg/kgの量で、皮下注射によって投与される。酢酸コルチコレリンは、1μg/kgから500μg/kg、2μg/kgから100μg/kg、2μg/kgから80μg/kg、4μg/kgから40μg/kg、又は5μg/kgから20μg/kgの量で、皮下に投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンは、10μg/kg、30μg/kg、60μg/kg、100μg/kg、及び300μg/kgの用量で投与することができる。
【0110】
他の実施態様では、本明細書に記載する酢酸コルチコレリンは、1μgから100mgの量で、皮下注射によって投与することができる。酢酸コルチコレリンは、1μgから80mg、10μgから50mg、100μgから40mg、300μgから10mg、600μgから1mg、及び800μgから1mgの量で、皮下に投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンは、100μg、300μg、600μg、1mg、2mg、4mg、及び5mgの用量で、皮下に投与することができる。
【0111】
皮下に投与される酢酸コルチコレリンは、1日1回又は1日複数回投与することができる。例えば、皮下に投与される酢酸コルチコレリンの投薬は、1時間ごと、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、又は12時間ごとに適用することができる。あるいは、酢酸コルチコレリンは、2、3、4、5、又は6日ごとに1回投与することができる。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、週に1回、又は2、3、もしくは4週ごとに1回、あるいは月に1回投与することができる。1週間又はそれより長い期間に1回投与される酢酸コルチコレリンの投薬は、デポーの形で適用することができる。例えば、本発明は、脳浮腫を管理又は治療する方法であって、投与の必要のある患者、好ましくはヒトに、治療有効量のコルチコレリンを皮下注射によって投与することを含む前記方法を含む。ある実施態様では、脳浮腫と診断された患者は、1日2回、1mgの酢酸コルチコレリンの皮下注射を施される。
【0112】
酢酸コルチコレリンの皮下投与が好ましいが、コルチコレリンはまた、それだけには限らないが、皮内及び筋肉内注射、並びに静脈内又は骨内注入などの、他の非経口的投与経路によって投与することもできる。例えば、酢酸コルチコレリンは、0.1μg/kg/hから100μg/kg/hの量で、静脈内注入によって投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンは、1μg/kg/hから100μg/kg/h、又は2μg/kg/hから80μg/kg/h、又は2μg/kg/hから50μg/kg/h、又は4μg/kg/hから40μg/kg/h、又は5μg/kg/hから20μg/kg/hの量で、静脈内に投与することができる。
【0113】
他の実施態様では、酢酸コルチコレリンは、1μg/kgから1000μg/kgの量で、静脈内に投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンは、1μg/kgから100μg/kg、又は2μg/kgから80μg/kg、又は2μg/kgから50μg/kg、又は4μg/kgから40μg/kg、又は5μg/kgから20μg/kgの量で、静脈内に投与することができる。例えば、酢酸コルチコレリンは、0.5μg/kgから1μg/kg、又は2μg/kgから8μg/kg、又は4μg/kgから8μg/kg、又は5μg/kgの用量で投与することができる。
【0114】
酢酸コルチコレリンは、1時間又は1時間未満の時間をかけて、静脈内に投与することができる。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンは、1時間以上の時間をかけて、静脈内に投与することができる。例えば、上で述べた、静脈内に投与される酢酸コルチコレリンの投薬は、10分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、又は72時間の時間をかけて適用することができる。
【0115】
ある実施態様では、投薬計画は、第5.3.1章中に論じたステロイドなどのステロイドと共に酢酸コルチコレリンを投与することを含む。酢酸コルチコレリンとステロイドは、連続的又は同時に投与することができる。連続的に投与する場合、投与の順序は変動的である。具体的実施態様では、酢酸コルチコレリンは、皮下に投与される。別の具体的実施態様では、デキサメタゾンなどのステロイドは、経口投与される。
【0116】
(5.8 医薬組成物)
本発明は、本明細書に記載する方法に従って投与される有効成分として酢酸コルチコレリンを含有する医薬組成物に関する。酢酸コルチコレリンは、医薬として許容し得る担体と共に配合することができる。本発明の医薬製剤は、酢酸コルチコレリン、及び医薬として許容し得る希釈剤、補助薬、又は担体を含む、溶液、懸濁液、エマルジョンという形をとることができる。ある実施態様では、本発明の医薬製剤は、皮下ボーラス注射のために調製される。
【0117】
浮腫の治療のために提供される皮下注射のために調製される酢酸コルチコレリンを含む医薬製剤は、他のタイプの非経口投与のために調製される酢酸コルチコレリン製剤と比較して、ある種の利点を提供することができる。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンの皮下製剤の投与は、酢酸コルチコレリンの他の皮下でない製剤の投与よりも、酢酸コルチコレリンの投与頻度を、より少なくすることができる。酢酸コルチコレリンの投与頻度がより低くなると、患者のコンプライアンスをより大きくすることができる。さらに、他の実施態様では、酢酸コルチコレリンの皮下の製剤の投与は、酢酸コルチコレリンの皮下でない製剤の投与に伴う副作用よりも、副作用を少なくすることができる。
【0118】
本発明の医薬製剤は、酢酸コルチコレリンの皮下製剤に加えて、それだけには限らないが、皮内及び筋肉内注射、並びに静脈内又は骨内注入を含めた、他のタイプの非経口投与のために調製することもできる。本発明の医薬製剤は、投与経路に応じて、酢酸コルチコレリン、及び医薬として許容し得る希釈剤、補助薬、又は担体を含む、溶液、懸濁液、エマルジョンという形をとることができる。
【0119】
本発明の医薬組成物は、本発明の治療用量の酢酸コルチコレリンを送達するために調製される。医薬製剤中に含有される酢酸コルチコレリンの用量は、1μgから10mgの範囲であり得る。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンの用量は、0.1mgから5mg、又は0.3mgから2mgの範囲である。ある実施態様では、酢酸コルチコレリンの用量は、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約4mg、又は約5mgである。用量は、当技術分野で公知の方法によって測定することができ、また、本発明の医薬製剤は、当技術分野で公知の方法によって決定される通りの、i)浮腫のためのステロイド治療に伴う可能性がある臨床的又は神経学的副作用の低下又は安定化;又はii)酢酸コルチコレリンの非存在下又は皮下投与される酢酸コルチコレリンの非存在下で同じ又はより優れた治療結果を達成するのに必要とされるであろうステロイドへの暴露と比較した場合のステロイドへの暴露の減少;を達成するために、単独で、又は組み合わせで投与することができる。
【0120】
本発明はまた、投与の必要のある患者に、酢酸コルチコレリン及び追加の治療剤を投与することによって、浮腫を治療する方法に向けられたものである。追加の治療剤は、浮腫を軽減することができる、又は酢酸コルチコレリンと組み合わせた場合に追加の治療剤の浮腫に対する効果を改善することができる、いずれの薬剤でもあり得る。
【0121】
適切な追加の治療剤としては、それだけには限らないが、コルチコステロイド、利尿薬;抗新生物形成;抗増殖;及び抗縮瞳剤などの抗炎症剤が含まれる。コルチコステロイド、利尿薬;抗新生物形成;抗増殖;及び抗縮瞳剤の例は、第5.3.1及び5.3.4章に論じている。さらに、本明細書に記載される酢酸コルチコレリンを、放射線療法、化学療法、光感作療法、手術、又は他の免疫療法などの他の抗ガン治療と同時投与することができる。
【0122】
酢酸コルチコレリンと追加の治療剤は、連続的に、周期的に、又は同時に投与することができる。連続的に投与される場合、投与の順序は変動的である。例えば、酢酸コルチコレリンは、追加の治療剤の投与の前に投与することができる。あるいは、追加の治療剤の投与は、酢酸コルチコレリンの投与に先行することができる。
【0123】
各組成物は、別の組成物として、又は1つの組成物で投与されるかどうかに関係なく、医薬として投与に適していることが好ましい。さらに、酢酸コルチコレリンと追加の治療剤は、別々に投与される場合、同じ又は別々の投与様式によって投与することができる。
【実施例】
【0124】
(6.0 実施例)
原発性又は二次性の脳腫瘍を有する適格患者(2人のうち1人は、無作為化された二重盲検の第三相試験に以前参加していた。)を、今度はオープンラベル延長研究に登録した。延長研究の設計は、図1に示す。図1に示す通り、1日2回、1mgのXERECEPT(酢酸コルチコレリン)とデキサメタゾン、又はプラセボとデキサメタゾン、又はデキサメタゾン単独を受けた、第三相研究に参加した患者を、オープンラベル延長研究に登録した。オープンラベル研究の目標の1つは、各患者における最大のデキサメタゾン低下を調査することであった。
【0125】
オープンラベル延長研究では、患者を、4週間隔で元に戻し、評価(これには、有害事象、デキサメタゾン用量、及びステロイド副作用が含まれる)を完了した。研究中、デキサメタゾンは、耐えられる限り最大限に低下させたが、酢酸コルチコレリン用量は、増大させなかった。各患者についてのデキサメタゾン用量の正味の累積的変化(NCD)を、各診察に対して、デキサメタゾン用量のベースラインからの変化によって測定した。これらの変化の正味の合計は、デキサメタゾン用量変化の期間、用法、及び量を明らかにした。
【0126】
延長研究において4週間以上酢酸コルチコレリンを服用した、最初の20人の患者の人口統計学的及びベースライン特性を、表1に示す。調査される20人の患者のうち、14人は男性であり、6人は女性であった。患者は、33〜67歳の範囲であり、年齢の中央値は53であった。無作為研究の前に、デキサメタゾン治療の軽減を、20人の患者のうちの19人に試みたが、19人の患者のうち、デキサメタゾン用量を低下させる試みは、16人(84%)の患者において成功しなかった。
【表1】

【0127】
データ抽出では、これらの20人の患者は、2人の患者(デキサメタゾンの中断後の1日2回の投薬に関する安定な改善が理由で、それぞれ、その用量を、12又は20週後に、1日1回1.0mgに低下させた)を除いて、1日2回皮下に投与される酢酸コルチコレリン1.0mgに対する、18.5週という中央値(4から48週)を達成した。12週後に用量を低下させた患者は、デキサメタゾン中断後の安定的改善の継続が理由で、8週後に、酢酸コルチコレリンの投与をやめた。
【0128】
表2は、研究された20人の患者の、試験治療下で発現した有害事象(AE)の概要を示す。
【表2】

【0129】
4人の患者は、酢酸コルチコレリンの最後の投与の1〜40日後に死亡した。すべて、薬物の研究には関連しない状態:原発性肺ガンの進行(2患者);進行性のGBM(1患者);深部静脈血栓症(1患者)が原因であった。関連するAEが原因で、酢酸コルチコレリンを低下又は中断した患者はいなかった。8人の患者が、12のSAEを患っていたが、これらはいずれも、酢酸コルチコレリンに起因するものではなかった。
【0130】
16人の患者について、経時的な血清コルチゾールレベルを取得したが、これは、16人の患者のうちの15人(94%)において、正常又は低かった。ある患者では、2.5mg/dのデキサメタゾン用量では、AM血清コルチゾール(基準範囲5〜25μg/dL)が低かったが、4週間のデキサメタゾンの中断の後、穏やかに上昇し(39μg/dL)、その後、デキサメタゾンを中断してから16週後に標準になり(25μg/dL)、7.0〜8.0mg/dのデキサメタゾンを再開して8週後に、再び低くなった(0.4μg/dL)。
【0131】
20人の患者のうちの11人(55%)において、NCDの低下が観察されたのに対し、20人の患者のうちの7人(35%)において、NCDの増大が判明した。20人の患者のうちの2人(10%)は、ベースラインから≧24週まで、0.0mg/dのデキサメタゾンを服用した。NCDが低下した11人の患者では、ベースラインからの変化の最大割合の中央値は、-87%(-11から-100%)であり、5人の患者は、完全にデキサメタゾンを中断した。NCDが増大した7人の患者では、ベースラインからの変化の最大割合の中央値は、+100%(+50〜+200%)であった。
【0132】
NCDが低下した11人の患者においては、登録時の平均デキサメタゾン用量は、6.2mg/dであり;中央値は6.0mg/d(2.5から12.0mg/d)であった。平均NCDは、-10.7mg/dであり; NCD中央値は、-3.0mg/d(-0.5から-36mg/d)であった。
【0133】
NCDが増大した7人の患者においては、登録時の平均デキサメタゾン用量は、6.3mg/dであり;中央値は3.0mg/d(2.0から24.0mg/d)であった。平均NCDは、+10.7mg/dであり;NCD中央値は、+5.0mg/d(+2.0mg/dから+46.0mg/d)であった。図2は、20人の患者のそれぞれについての、経時的デキサメタゾン投薬を示す。
【0134】
17のステロイド関連状態の改善又は回復が、ベースライン時点でこうした状態を患う18人の患者のうちの8人(45%)に観察された。これらの8人の患者において、平均NCDは-9.8mg/dであり;NCD中央値は-6.5mg/d(0から-36mg/d)であった。
【0135】
ベースラインの平均デキサメタゾン用量は、NCDが低下した患者(6.2mg)とNCDが増大した患者(6.3mg)で同様であった。ベースラインのステロイド関連状態の改善又は回復は、NCDと相関関係があった。図3に示す通り、こうした改善は、NCDが低下した患者、又は、ベースラインからデータ抽出までデキサメタゾンを服用しなかった患者にのみ観察された。図3は、デキサメタゾン用量とステロイド関連の有害事象の、正味の累積的変化を表す流れ図である。対照的に、ステロイド関連AEの悪化又は新たな開始は、NCDが増大した患者に限定された(1つ例外−ベースラインの≦2週前にデキサメタゾンを開始した患者)。改善が最も高頻度で観察されたのは、クッシング様顔貌(5AE)、筋障害(4AE)、及び不眠症(2AE)、それに続いて、体重増加、腹部膨満、足部浮腫、多尿症、皮膚線条、及び帯状疱疹発疹(それぞれ1AE)であった。ステロイド関連状態の最初の改善までの時間の中央値は、12週(1から36週)であった。
【0136】
デキサメタゾンを成功裏に低下させた一般的抵抗性患者には、55歳の8人の患者のうちの5人(62.5%)、10人の再発性の脳腫瘍患者のうちの7人(70%)、及び16人の以前のデキサメタゾン低下が成功しなかった患者のうちの11人(69%)が含まれていた。
【0137】
デキサメタゾン増大は、a)脳腫瘍の進行(2人の患者において致命的であった);b)腫瘍の外科的切除を必要としている脳浮腫(酢酸コルチコレリンに関する神経学的改善が理由で、デキサメタゾンは後に、1日1回1.0mgまで減少させた);c)酢酸コルチコレリンの服用の不履行;に伴う神経学的悪化によって促進された。
【0138】
酢酸コルチコレリンを用いる長期間治療は、安全かつ良好な寛容性を示した。48週までの酢酸コルチコレリン投薬は、副腎皮質ホルモン過剰症を誘発しなかった。デキサメタゾン用量を低下させた一般的抵抗性患者には、55歳である、再発性の疾患を患う、又はデキサメタゾン低下を以前に試みたが失敗した患者が含まれていた。
【0139】
ステロイド関連状態の改善は、酢酸コルチコレリンを用いる長時間治療中、NCDが低下した患者、又はデキサメタゾンを服用しなかった患者に限られた。NCDが増大した患者では、また、ベースライン前の2週間以内にデキサメタゾン治療を開始したある患者では、新規又は悪化しているステロイド関連AEが発生した。酢酸コルチコレリン治療は、デキサメタゾンへの暴露の減少、及び腫瘍周囲脳浮腫患者におけるステロイド関連副作用の改善と関連性があった。
【0140】
本明細書に含まれる記述及び実施例は、詳細な説明を目的とするものであり、限定のためのものではない。記述にある実施態様に対し変更及び改変を行うことができ、それらも本発明の範囲内である。さらに、明白な変更、改変、又は変形が、当業者に思い当たるであろう。また、先に引用されたすべての参考文献は、この開示に関連するあらゆる目的のために、その内容全体が本明細書に組み込まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳浮腫を治療する必要がある患者において脳浮腫を治療する方法であって、酢酸コルチコレリンとステロイドの組み合わせを患者に投与することを含み、ここで、酢酸コルチコレリンと組み合わせるステロイドの量は、浮腫を軽減させるのに十分である、前記方法。
【請求項2】
前記ステロイドが、コルチコステロイドである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、同時に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、連続的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記酢酸コルチコレリンが、皮下投与される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記酢酸コルチコレリンが、1日2回投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
投与される酢酸コルチコレリンの量が1mgである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
治療計画により脳浮腫の治療の必要のある患者において脳浮腫を治療する方法であって、該治療計画が、ステロイドを酢酸コルチコレリンと組み合わせて患者に投与することを含み、それにより、該治療計画の間に患者に投与されるステロイドの総用量が、酢酸コルチコレリンの投与によって低下される、前記方法。
【請求項10】
前記ステロイドが、コルチコステロイドである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、同時に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、連続的に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記酢酸コルチコレリンが、皮下に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記酢酸コルチコレリンが、1日2回投与される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
投与される酢酸コルチコレリンの量が1mgである。請求項11記載の方法。
【請求項17】
ステロイドを現在受けている、ステロイド節約的利益を提供する必要のある患者に、ステロイド節約的利益を提供する方法であって、酢酸コルチコレリンと、酢酸コルチドレリンの非存在下で投与された場合よりも低い用量のステロイドとを患者に投与することを含み、ここで、該酢酸コルチコレリンの用量は、酢酸コルチコレリンの非存在下でステロイドの治療効果を提供するのに十分である、前記方法。
【請求項18】
前記ステロイドが、コルチコステロイドである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、同時に投与される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、連続的に投与される、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記酢酸コルチコレリンが、皮下投与される、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記酢酸コルチコレリンが、1日2回投与される、請求項17記載の方法。
【請求項24】
投与される酢酸コルチコレリンの量が1mgである、請求項17記載の方法。
【請求項25】
脳浮腫のステロイド節約治療の必要のある患者における脳浮腫のステロイド節約治療の方法であって、酢酸コルチコレリンと亜臨床的に有効量のステロイドとを患者に投与することを含み、ここで、該組み合わせは浮腫に伴う症状を軽減させるのに有効である、前記方法。
【請求項26】
脳浮腫に伴う前記症状が、灌流の変化、血流の減少、酸素の減少、グルコースの減少、NCI神経学的検査スコアの低下、カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)スコアの低下、ミニメンタルステート検査スコアの低下、Zubrodスケール(ECOG)スコアの低下、又はLanskyスコアの低下である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記ステロイドが、コルチコステロイドである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、同時に投与される、請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記酢酸コルチコレリンと前記デキサメタゾンが、連続的に投与される、請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記酢酸コルチコレリンが、皮下に投与される、請求項25記載の方法。
【請求項32】
酢酸コルチコレリンが、1日2回投与される、請求項25記載の方法。
【請求項33】
投与される酢酸コルチコレリンの量が1mgである、請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−529199(P2010−529199A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512215(P2010−512215)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/007473
【国際公開番号】WO2008/156719
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509342197)ネウトロン エルティーディー. (1)
【Fターム(参考)】