説明

脳脊髄液パラメータの測定及び調整装置及び方法

個々の患者の脳脊髄液(CSF)動力学を特徴付けるために、脊柱管内の圧力及び流量を測定し、調整する方法及び装置。流圧及び小型圧力センサの新しい位置を制御するために使用されるコンピュータ調整の自動ソレノイドピンチ弁を有する独特の使い捨てチューブセットプレートによって分析プロセスを全自動制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々の患者の脳脊髄液(CSF)動力学を特徴付けるために脊柱管内の圧力及び流量を測定し、調整する自動化された新しい方法の使用に関する。これを達成するために、流圧及び小型圧力センサの移動位置を制御するコンピュータ調整のソレノイドピンチ弁を有する独特の使い捨てチューブセットプレートによってシステムを全自動制御することができる。
【背景技術】
【0002】
水頭症とは、脳脊髄液の循環を適切に調整することができない人に作用する状態である。脳室系によって産生される脳脊髄液(CSF)は、通常、静脈系に吸収される。水頭症を患っている人では、脳脊髄液がこの方法で吸収されず、代わりに患者の脳の脳室(自由空間)に蓄積する。正常圧水頭症(NPH)とは、腰椎穿刺部に正常圧がかかる状態で脳室のサイズが病的に拡大する状態を意味する。治療しないままにしておくと、増加した流体の体積が患者の頭蓋内圧を上昇させることがあり、脳組織の圧迫及び脳への血流障害のような深刻な医学的症状につながることがある。
【0003】
水頭症に関する最初の記述はヒポクラテス(466〜377BC)に帰するとされており、頭痛、嘔吐及び視覚障害のような症状を指摘している。ペルガモンのクラウディウス・ガレノス(130〜200AD)及び中世のアラブの医者達も水頭症について記述し、脳外に蓄積した水によるものと考えられていた。
【0004】
脳髄液系の液体の蓄積を低減する外科手術は Le Cat によって1744年に最初に実施されたが、十分な病態生理学的知識及び無菌状態が得られる19世紀後期までは水頭症の治療に外科手術処置が真に導入されていたわけではなかった。1960年代に、シリコーンと人工弁の発明とが治療上の飛躍的進歩をもたらした。余分な流体を迂回させる植え込み式シャントシステムが開発されて、水頭症は致命的な病気から治療可能なものとなった(A.Aschoff他、「水頭症及びその治療の科学史(The scientific history of hydrocephalus and its treatment)」、Neurosurg Rev 22:67-93;考察94-5、1999年)。1965年に、Hakim及びAdamsは、水頭症を患っているように見えるが、シャント手術の恩恵を受けて脳脊髄液圧が正常となった、新しく発見された患者のカテゴリについて記述している(S.Hakim及びRD.Adams、「正常な脳脊髄液圧の症候性水頭症の特殊な臨床的問題。脳脊髄液の流体力学の観察(The special clinical problem of symptomatic hydrocephalus with normal cerebrospinal fluid pressure.Observations on cerebrospinal fluid hydrodynamics)」、J Neurol Sci 2:307-27、1965年)。この症候群は正常圧水頭症(NPH)と命名され、それ以来、シャント植え込み手術により改善するNPHの患者を識別する新しい方法を発見し、発展させるために広範囲の研究がされてきた。今日、例えば交通性及び非交通性水頭症、さらにシャント形成異常のために、脳室シャント手術は最も一般的に実施される神経外科手術処置の一つである。年間術数は、地域の診療所により住民10万人につき2.3人から6.3人と異なる(M.Tisell他、「スウェーデンにおける成人水頭症の国及び地域別手術数(National and regional incidence of surgery for adult hydrocephalus in Sweden)」、Acta Neurol Scand、2005年8月;112(2):72−5)。
【0005】
シャント手術は、水頭症の人の予後を劇的に変化させ、その多くは正常平均余命の恩恵を受け、基準知能を回復する。しかし、シャントを使用したことにより、大部分の水頭症患者にとって頻繁なシャントの修正が通例となっており、シャント依存という多くの独特の問題が引き起こされている。シャント合併症は、あらゆる神経外科医の尽力の大部分を占めている。
【0006】
CSFシャント植え込み手術は、自然の経路の障害物を迂回するためにCSFの流量の副経路を確立することを含む。シャントは、CSFを脳室又はクモ膜下腔から右心房又は腹膜腔などの別の吸収部位へと、カテーテルとして周知である小さいチューブのシステムを介して排液できるように位置決めされる。圧力に応じて、CSFの流量を調整するために、カテーテルの経路に調整装置(弁として周知である)を挿入することができる。この排液によって、脳内の余分なCSFを排出し、それにより頭蓋内の圧力を低下させることができる。
【0007】
CSFの圧力及び流動力学を測定する手段のうち現在受け入れられているものは、腰部注入検査及びCSFタップ検査として周知である二部臨床検査である。これらの検査は、CSFの圧力及び流量の測定及び調整を標準化することができず、検査の最初から最後まで手作業で調整する必要があるという点で制限がある。注入検査は、CSF系の動力学を調査するものであって、IAHSのシャント治療は、CSFの動力学系に変化を与えることを含むので、治療前の系の機能を調べることが自然である。注入検査は、安静時の患者の頭蓋内圧(ICP)、及びCSF流出のコンダクタンス(Cout、流出抵抗Routの逆数)を決定する。注入検査は、すでに手術を実施した患者のシャント機能を判定するために使用することもできる。注入検査の問題は、研究施設が異なると、異なる方法で実行、分析及び解釈されることである。Cout(又はRout)の判定に使用される最も一般的な方法の幾つかは、カッツマンの定速注入検査と様々な変形、大量注射及びサーボ制御定圧注入を含む。大量検査は他の方法よりも高いCoutが出ることが周知であり、これらはすべて臨床的有用性があるとされるが、Coutの閾値レベルが異なる。シャント手術のための予測部としてのCoutの有用性に関しては意見が一致していない。多くの研究がそれを裏付けているが、同じく多くの研究が選択プロセスにおいてそのパラメータが有用であると認めていない。このタイプの測定の問題は、頭蓋脊椎系の血管容積の変動に関連して、ICPの周期的な生理学的変動が往々にして大きく、正味注入流量が少ないことである。これを低信号対雑音比と見なすことができる。また、変動の大きさは患者によって非常に異なる。これは、変動が小さい患者から入手した結果が、変動が大きい患者からの結果よりも信頼性が高くなるという点で個人の注入検査に影響する。注入検査を実施するために現在使用されている方法の中で、ディスプレイ又はプリントアウトの形態などで個人の調査の信頼性を懸念する使用者に何らかの数値フィードバックを与えるものはない。このため、Coutの値はすべて、生理学的背景にかかわらず等しく信頼できると考えられている。このようなデータに基づくと、個人のCout値の分析及び解釈は困難であり、予測部としてのCoutの有用性に関して意見が一致しないのは、個人の注入検査における未知の不確実さの結果であり得る。本願の自動チューブセットの発明の主要な利点の1つは、使用者が所望の測定値を得るために、これらの様々な成分(一定圧力、一定流量、又は大量注射)を組み合わせることができるという意味で、システムの融通性である。
【0008】
圧力及び流量の情報を体系的に生成又は提供する従来の機械の発明(WO2006/091164号)を使用して、水頭症の診断を確認するために患者の流体力学パラメータを決定する。特に、脳及び脊髄を囲む流体系の流体力学的特性を判定する従来のこの機械は、人工脳脊髄液、例えばリンゲル酢酸塩を注入するためのホースポンプ、ポンプホース、頭蓋内圧を連続的に記録する圧力変換器、脳脊髄液系との流体接触を生成する侵襲的接触物体、及びコンピュータ化した採取及び分析、さらにポンプ速度の制御のためのソフトウェアを有するコンピュータを備える機械であり、上記ソフトウェアの一部を形成する計算ユニットが、実際のレベルで圧力及び流量の測定時間と測定精度の間の関係が十分である場合に、それをリアルタイムで計算するために、各圧力流レベルで測定の時間及び患者の生理学的信号の変動を考慮する適応性のある方法を使用して制御されるように設計され、上記ソフトウェアが、実際のレベルで測定時間と測定精度の間の上記関係が十分である場合に、所定のプロトコルに従って、次に圧力流レベルを開始するように設計されてリアルタイムで分析するために、上記ソフトウェアが、調査からの圧力流情報から、不確実な推定値で患者の流体力学的パラメータを決定し、説明するように設計されることを特徴とする。この機械に関して、本願の発明の新しい使い捨ての全自動チューブセットは、CSFの圧力及び流動力学をさらに正確且つ簡単に、全自動且つ無菌状態で測定するために使用することができる。
【0009】
標準化された半自動注入検査を実行するために、上述したタイプの装置が、WO2006/091164号で Sundstroem によって開発された。装置は、コンピュータ画面及びトラックボールで構成されたユーザインタフェースに基づくPCであった(WO2006/091164号の図1参照)。これは、また電子制御ユニット、2つの圧力変換器(PMSET 1TNF-R、BD Critical Care Systems Pte Ltd.、シンガポール)、蠕動ポンプ(Reglo-Analog-E、MS/CA1-E/12-160、Ismatec、スイス)、人工CSF用ボトルホルダ、緊急停止装置及び一組のチューブ類も含んでいた。データの収集、及びソフトウェアとハードウェア間の連絡は、2つのデータ取得カード、すなわちPCI−MIO−16XE−50及びPCI−6503(National Instruments,Inc.、米国テキサス州オースチン)を使用して実行された。電子制御ユニットは、圧力増幅器、ICPが危険なほど高い又は低い場合にポンプを停止するアナログ安全チェック、及びPCとの連絡を確実にする信号を含んでいた。患者に対する機器のゼロレベル位置合わせに、内蔵の水平レーザ線を使用した。構成要素を電気で操作するピラーに装着し、ピラーを車輪に装着してシステムを可動式にした。
【0010】
本願の発明の自動チューブセットを使用すると、これらの測定値を収集する従来の方法を改善する。以前は、検査期間の最初と最後に8つの調整可能な弁を介して圧力流レベルを手動で設定していた。半自動システムの手動で調整可能な止水栓を使用するのではなく、本願の発明は、コンピュータソフトウェアを使用して調整される自動磁気ソレノイドピンチ弁を有する。すなわち、自動チューブセットはオペレータの変動性に影響されず、したがって本願の発明は患者にとって以前の方法よりも安全である。これにより、CSFの圧力及び流動力学を測定する分析プロセス全体が自動化される。
【0011】
本願の発明は、従来の方法よりもオペレータによる装着がはるかに簡単且つ迅速になる。以前のチューブセットでは、使用者は約8つの異なる部品を接続する方法を知っていなければならないが、本発明では、装着するためにプレートを計器にカチッと嵌めるだけでよい。
【0012】
さらに、従来技術では正確な測定値を取得するのに必要な時間が分からない、又は標準化されていなかったが、自動化したチューブセットは、検査の最初から最後まで患者に合わせて自動的に調整することによってこの変動を解消する。本願の自動チューブセットの技術の別の利点は、全自動化された方法であるので、様々な訓練レベルの人が使用できることである。これは簡素化を改善し、それにより結果の正確さを改善する。それと同時に、センサの位置をチューブ及び患者に近づけた状態で、流体を機械に引き込むことを必要とせずに、正確さ及び簡素化も改善される。ユニットは使い捨てでもあり、つまり個々の患者毎に無菌及び安全な状態に維持することが容易である。新しく、より小さい圧力センサを使い捨てチューブセットに直接配置することで無菌性の問題も改善される。
【0013】
同様の技術、すなわちプレート又はカセット上にあるチューブセットは蠕動ポンプ装置に見られるが、これは開心手術及び透析中の生命維持のために、この数十年間広く使用されてきた。蠕動ポンプでは、1つのチューブを前進運動で圧縮するが、チューブは逆止弁及び搬送機構の両方として作用する。蠕動ポンプは基本的に、血液生成物の給送に使用される。通常、蠕動ポンプは、2つのローラがある回転子を有し、これがチューブの円形軌跡に対してチューブを圧搾する。本発明のチューブセットプレートは、例えば本発明のチューブセットが、圧力流パラメータに従って開閉する自動弁によって調整されるという点で、以前のチューブセット技術とは異なる。圧力流は、CSFの圧力を電気信号に変換し、これは測定結果を生成する。
【0014】
米国特許第6,531,061号では、第1の可撓性ポリマーシートと第2の可撓性ポリマーシートとを組み合わせて接着し、半剛性フレームを形成することによって透析カセットを組み立てる。これは、平坦、可撓性、自閉式で、タンパク質、DNA、RNA、又は他の分子を含有する溶液に適用可能である使い捨て透析カセットである。透析カセットは、第1及び第2の透析半透膜、又は筒状透析膜を取り入れ、可撓性フレームで密閉されて、ピペット又は他の配量機構によって透析サンプルを導入するための自閉流路を有する透析室を形成する。しかし、このシステムは、本発明として自動的に開かず、圧力流パラメータではなく浸透勾配に基づいて機能する。
【0015】
米国特許公開第2007/0217933号では、蠕動ポンプのチューブカセットのために、自身を通って延在する可撓性ポンプホース区画を含むカートリッジハウジングを備える蠕動ポンプのホースカートリッジが設けられる。ポンプホース区画の両端は、カートリッジハウジングの第1の前面の区域に配置された第1の固定部材及び第2の固定部材によってカートリッジハウジングに固定される。カートリッジハウジングは、カートリッジハウジングの内部にあるポンプのローラホイールが係合する凹部を備える。この場合、流体は、本発明のように、患者の自動圧力流パラメータではなくホースポンプを介して搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2006/091164号
【特許文献2】米国特許第6,531,061号
【特許文献3】米国特許公開第2007/0217933号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】A.Aschoff他、「The scientific history of hydrocephalus and its treatment」、Neurosurg Rev 22:67-93;考察94-5、1999年
【非特許文献2】S.Hakim及びRD.Adams、「The special clinical problem of symptomatic hydrocephalus with normal cerebrospinal fluid pressure.Observations on cerebrospinal fluid hydrodynamics」、J Neurol Sci 2:307-27、1965年
【非特許文献3】M.Tisell他、「National and regional incidence of surgery for adult hydrocephalus in Sweden」、Acta Neurol Scand、2005年8月;112(2):72−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、使い捨てチューブセットプレートを使用することによって、CSFの圧力及び流動力学の測定を全自動化する改良型の簡素化した方法を提供することである。他の目的及び利点は、以下の開示からさらに十分に明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、個々の患者の脳脊髄液(CSF)動力学を特徴付けるために、脊柱管内の圧力及び流量を測定して調整する自動化された新しい方法及び装置を提供する。これを達成するために、流体圧力、及び小型圧力センサの移動位置を制御するためにコンピュータで調整するソレノイドピンチ弁を有する独特の使い捨てチューブセットプレートが、分析プロセスの全自動制御を可能にする。本明細書でCELDA(商標)ツールと呼ぶ本発明以外では、この技術に匹敵する全自動の方法は知られていない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のチューブセットプレートの拡大図である。
【図2a】本発明のチューブセットプレートの前面図を示す。
【図2b】本発明のチューブセットプレートの背面図を示す。
【図3】本発明の自動使用の例の圧力と時間の関係を示すグラフである。
【図4】チューブセットプレートが固定される計器板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、CSFの圧力及び流動力学の測定を自動化する新しい方法について記載する。特に、本発明のCELDA(商標)ツールは、CELDA(商標)ユニットの計器ハウジングの前方に取り付けられた1回使用の無菌チューブセットで構成される。CELDA(商標)ユニットは、チューブセットに加えて、電子機器、ポンプ、ソフトウェアなどを含む完全な計器を含む。本明細書において使用するソフトウェアは、本発明の方法を達成するために、当技術分野で周知であるような以前のソフトウェアから調整される。
【0022】
図1から図2に示すように、チューブセットは、計器ハウジングの前方に取り付けられた使い捨てのポリカーボネート製プレート1と、ポンプチューブ7と、2つの圧力センサ23、24と、圧力較正チューブ22と、連結チューブと、患者用チューブ3、4と、患者用チューブの遠位端にある30mLの液体容器19とで構成される。
【0023】
本明細書に記載される本発明、及び適宜その提供者の候補の構成要素は、以下を含むことが好ましい。
1.使い捨て(プラスチック成形)ベースプレート
2.成形プラスチックの圧力センサハウジング
3.患者用IPチューブ(Optima AB,Gunstagatan 16,SE-75324,Uppsala、スウェーデン)
4.患者用ICPチューブ(Optima)
5.ピンチチューブ(Raumedic AG,Hermann-Staudinger-StraBe 2,95233 Helmbrechts、ドイツ)
6.ピンチチューブ(Raumedic)
7.ポンプチューブ(Raumedic)
8.ポンプチューブの延長部(Optima)
9.IPチューブの延長部(Optima)
10.較正チューブの接続部(Raumedic)
11.四部十字継手(Value Plastics Inc.、米国、80525、コロンビア州フォートコリンズ、South Timberline Rd.3325)
12.直線状の貫通径違いコネクタ(Value Plastics)
13.直線状の貫通コネクタ(Value Plastics)
14.雄型ルアーロック−返しコネクタ(Qosina Inc.、米国、11717-8329、ニューヨーク州エッジウッド、Executive Drive 150-Q)
15.雌型ルアーロックを有する非通気型スパイク(Qosina)
16.通気型キャップ(Qosina)
17.スライドクランプ(Qosina)
18.多孔プラグ(Porex Inc.、米国、30213-4747、ジョージア州フェアバーン、Bohannon Road 500)
19.液体容器(Specialplast AB,Gillinge 18691 Vallentuna、スウェーデン)
20.チューブ固定スリーブ
21.ソレノイドピンチ弁(Raumedic)
22.圧力較正チューブ(Raumedic)
23、24.圧力センサ(Freescale Inc.、米国、78735、テキサス州オースチン、William Cannon Drive West 6501)
25.中央円錐形のバヨネット取付具(プラスチック成形)
26.ガイドピン用プレートの穴
27.計器上のガイドピン
28.ソレノイドコック
29.圧力センサソケット
30.蠕動ポンプ
31.緊急停止装置
【0024】
本発明は、個々の患者の脳脊髄液(CSF)動力学を特徴付けるために脊柱管内の圧力及び流量を測定し、調整する方法及び装置に関する。これを達成するために、流圧及び可能な限り患者に近い圧力センサの位置を制御するコンピュータ調整の自動ソレノイドを有する独特の使い捨てチューブセットプレートによって以前の解決策より高い精度で分析プロセスを全自動制御することができる。
【0025】
実施例1:
チューブセットの装着
本発明のチューブセット、すなわちCELDA(商標)ツールを装着するには、オペレータは包装を開け、圧力センサハウジング2から保護フィルムを外す。これで、チューブセットは中央円錐形のバヨネット取付具25を使用して特許WO2006/091164号の計器に容易にクリップ留めされる。チューブセットは、ここではガイドピンで計器27に取り付けられている計器上のピンを案内する2つの穴26、及び計器への正確な装着を確実にし、チューブセットが回転して所定の位置から外れるのを防止するバヨネット取付具25も有する。次にポンプチューブ7を解いて、計器上の蠕動ポンプに装着する。ポンプチューブ7の端部にあるスパイクが、計器の一方側に吊り下げられたリンゲル酢酸塩の袋(図示せず)に挿入される。
【0026】
実施例2:
プライミング:
オペレータは計器から開始し、これは自己検査手順を経て、次にチューブセットを自動的にプライミングする。プライミングの目的は、チューブにリンゲル酢酸塩を充填することである。ポンプは連続的に動作し、ソフトウェアはソレノイドピンチ弁を自動的に調整して、流量を異なるチューブ、すなわち患者のIP(注入圧)チューブ3及び患者のICP(頭蓋内圧)チューブ4に誘導し、これらは1つずつ充填される。チューブの端部には、小さい特注の袋である液体容器19が取り付けられて、プライミングからのいかなる漏れも防止する。プライミングの最終段階は、圧力較正チューブ22の特定のレベルまで液体を給送することで構成される。この圧力較正チューブ22もCELDA(商標)ツールの一体部品である。レベルが正確であるか否かをオペレータが容易に見られるように、レベルに線でマークが付けられる。自動プロセスが終了すると、オペレータには、弁及びポンプを手動制御して、残留気泡をすべて除去するか、又は圧力較正チューブ22内のレベルを微調整する機会が与えられる。
【0027】
実施例3:
患者での適用:
較正:
オペレータは、チューブ内に気泡がなく、較正レベルが正確であることに満足した後、較正を開始することができる。これも自動プロセスであり、圧力センサ23及び24が圧力較正チューブ22に接続されるように、ソレノイドピンチ弁21が設定される。次に、圧力を圧力較正チューブ22のレベルのゼロに合わせる。チューブセットは、レベルが計器から放出されるレーザ線に対応するように構築される。これで、その線を後で使用して、水平時に計器のゼロ圧が患者の脊柱のレベルにあることを確実にすることができる。次に圧力較正チューブ22を使用して、ポンプの流量が正確に較正されていることをチェックする。計器は、事前設定時間中に液体を圧力較正チューブ22まで汲み上げ、測定された圧力差を予測圧力と比較することによってこれを実行する。
【0028】
これらの検査に通過すると準備が終了したと考えられ、患者に接続することができる。
【0029】
調査:
患者は、病棟内か、外来患者用施設内にいて、患者の背中にアクセスできるようにする穴がある椅子又はベッドに座ることができる。2つの針をL3/L4スペース間に配置して、CSFと接触できるようにする。CELDA(商標)ツールの2つの長いチューブ、すなわち患者のIPチューブ3及び患者のICPチューブ4を解き、脊柱管内の針に接続する。患者を水平の姿勢にし、計器の高さを調整して、ゼロレベルを設定する。次に、オペレータに様々な調査プロトコルから選択するように促す。全プロトコルについて、ソレノイドピンチ弁21は自動的に右位置に設定され、CELDA(商標)ツールに一体化された圧力センサ23、24を使用して圧力が測定される。圧力センサ24は、流体圧力情報を電子信号に変換する。安静時圧力を測定する。人工CSFの自動注入を開始し、ソレノイドピンチ弁21がチューブセットを通過する流体を誘導する。患者の圧力は、通常、正常時より高い値まで増加し、約10分で吸収が生じて圧力が基準に戻る。
【0030】
プロトコルに応じて、20〜50分後に結果を測定することができる。結果を測定する3つの方法は、一定圧力、一定流量、又は大量注入を含む。最後の方法は、オペレータが、ポンプによって最高速度で注入されるリンゲル酢酸塩の体積を選択することを含む。事前設定された選択体積は1、2、3、4又は5mLである。注入が終了すると、ICPは自動的に静止時圧力レベルに戻る。プロトコルは5分後に自動的に終了する。
【0031】
取り外し:
チューブセットには、リンゲル酢酸塩の袋を外す場合にポンプチューブ7を閉鎖するスライドクランプ17が同梱されている。圧力較正チューブ22には多孔プラグ18が取り付けられ、これはチューブセットを廃棄する間に束の間逆さまになった場合に液体が漏れるのを防止する。
【0032】
実施例4:
本発明の自動システムの様々なフェーズ:
図3は、プロセスを表す概略的なグラフであり、CSFパラメータを調整して測定する本発明の全フェーズが自動的に制御されることを示す。グラフは、圧力と時間の関係を示す。A1〜A2は、プロセスが終了するまで、調査時間がプロセスの始めから自動的に制御されることを示す。A1〜SA1は、弁の自動充填及び開放フェーズである。SA1〜SA2は、以前の半自動システムで使用されるようなCSFの流量及び測定の調整フェーズである。SA2〜A2は、弁の自動閉鎖であり、これで検査は完了する。
【0033】
本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、多数の変形、修正及び実施形態が可能であり、したがってこのような変形、修正、及び実施形態はすべて本発明の精神及び範囲内に含まれることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング及びポンプを有して、圧力及び流量の情報を体系的に提供する計器とともに使用するために、患者の脊柱管内の脳脊髄液の流体パラメータを測定し、調整する装置であって、
a)前記計器のハウジングに取り付け可能な使い捨てチューブセットであって、使い捨ての1回使用のチューブセットプレート、圧力較正チューブを含む複数のチューブ、及び流体の流圧を制御するコンピュータ調整の自動磁気ソレノイドピンチ弁を備える使い捨てチューブセットと、
b)前記チューブセットに配置されて、脳脊髄液の圧力情報を提供する小型圧力センサと、
c)前記流体圧力情報を電子信号に変換する圧力センサと、
を備え、
前記自動磁気ソレノイドピンチ弁が、前記電子信号に応答して自動的に開閉し、流体の流量を制御して患者の測定結果を生成する装置。
【請求項2】
前記使い捨てチューブセットが、中央円錐形のバヨネット取付具を使用して前記チューブセットを前記計器にクリップ留めすることによって前記計器に取り付け可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チューブセットが、ポンプチューブをさらに備え、前記複数のチューブが、連結チューブ、患者のチューブ、及び前記患者のチューブの遠位端にある液体容器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記チューブセットプレートが、ポリカーボネートで作成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、患者の検査の最初から最後まで、前記患者への流体流量を自動的に調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記チューブセット上の前記圧力センサの位置によって、流体を前記計器に引き込む必要がなくなり、患者の検査の無菌性が改善される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、個々の患者の調査の信頼性を懸念する使用者に数値フィードバックを与える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
患者の脊柱管内の脳脊髄液の圧力及び流量を測定し、調整する方法であって、
a)請求項1に記載の装置を提供するステップと、
b)前記チューブセットを前記計器にクリップ留めするステップと、
c)自己検査手順を受ける前記計器を始動させ、次に前記チューブセットを自動的にプライミングして、前記チューブセットの前記チューブに人工脳脊髄液を充填するステップと、
d)前記ポンプを連続的に動作させるステップと、
e)1つずつ充填される前記チューブに流体流量を誘導するために、前記ソレノイドピンチ弁を調整するステップと、
f)前記液体を前記圧力較正チューブの特定のレベルまで給送するステップと、
g)いかなる残留気泡も除去するか、又は前記圧力較正チューブ内の前記レベルを微調整するために、必要に応じて前記計器及びチューブセットを調整するステップと、
h)前記圧力センサが前記圧力較正チューブに接続されるように前記ソレノイドピンチ弁を設定して、前記圧力を前記較正チューブの前記レベルに設定することによって自動的に較正するステップと、
i)前記圧力較正チューブを使用して、前記ポンプの流量が正確に較正されていることをチェックするステップと、
j)前記チューブセットからのチューブを患者に接続するステップと、
k)調査プロトコルを選択するステップと、
l)前記選択された調査プロトコルに合わせて前記ソレノイドピンチ弁を自動的に設定し、前記小型圧力センサを使用して圧力を測定するステップと、
m)前記ソレノイドピンチ弁が前記チューブセットを通して前記流体を自動的に誘導する状態で、人工脳脊髄液の自動注入を開始するステップと、
n)前記患者の調査中に患者の脳脊髄液の圧力及び流量パラメータを測定するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記患者の調査の結果が、一定圧力、一定流量、及び大量注入からなる群から選択されるパラメータによって評価される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
事前設定時間中に前記液体を前記圧力較正チューブまで汲み上げ、前記測定した圧力差を予測圧力と比較することによって、前記ポンプの流量の前記較正がチェックされる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記チューブセットが、中央円錐形のバヨネット取付具を使用して前記計器にクリップ留めされる、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−531993(P2012−531993A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518968(P2012−518968)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059644
【国際公開番号】WO2011/003909
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512004800)リクヴォール アーベー (1)
【Fターム(参考)】