説明

脳障害関連疾患の診断方法

対象体から採取した体液中のA−FABP、E−FABP、H−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、核酸系ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択された少なくとも一つのポリペプチド、またはその変異体もしくは同族体を検出することによって、対象体における脳障害関連疾患を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳障害疾患の診断方法に関する。脳血管疾患、痴呆、神経組織変性症などの脳障関連疾患のルーチン検査のための生物学的マーカーは現在のところ無い。本発明は脳障害疾患の雛形として死亡患者から得た脳脊髄液を用いて、脳障害関連疾患のマーカーを発見し、診断に用いることに関わる。
【背景技術】
【0002】
ここ20年ほどの間に、脳障害関連疾患の患者の脳脊髄液(CSF)や血清で多くの生物学的マーカー(バイオマーカー)が研究されてきた。クレアチンキナーゼ−BB[1]、乳酸デヒドロゲナーゼ[2]、ミエリン塩基性蛋白[3]、S100蛋白質[4]、脳神経特異性エノラーゼ(NSE)[5]、神経膠原線維酸性蛋白[6]、そしてタウ(tau)[7]などである。それらの殆どが脳障害疾患の程度や、臨床状態や機能面での結果の正確な予測のための有益な指標であることを証明出来ていない。実際、それらの顕現が遅いこと、障害のあとの遅れる反応ピーク、感度や特異性の低さ、また、これらの分子のCFS、最終的には血清の中への放出を統制するメカニズムへの理解の不足などが脳障害関連疾患のバイオマーカーの価値の妨げになってきた。これらの限界のおかげで、脳障害疾患関連のバイオマーカーの使用は現在のところ研究段階に限定され、どれもがルーチン評価のために推奨されていない。
【0003】
WO01/42793は、体液サンプル中の心臓や脳の脂肪酸結合蛋白(H-FABP またはB-FABP)の濃度を決めるという、卒中の診断分析法に関連している。
【発明の開示】
【0004】
理想的には、脳障害関連疾患の診断、監視、予後のためのマーカーとしては少なくとも次のような特性を有しなければならない。(1)脳特異性であること。(2)患者からCSFサンプルを得ることが困難であることは明白なので、血清の検出が非常に望ましい。(3)早く顕現すること。(4)そのピークレベル、代替的には連続的な濃度カーブ下の領域が、脳障害の程度を反映すること。(5)機能上の結果を指し示すもの。我々はここで新たな脳障害関連疾患用バイオマーカーを論証し、この目的のために最も詳細に評価されている二つの分子、S100とNSEとの比較を行う。
【0005】
我々は、重い脳障害のモデルとしての死亡患者からのCSFをプロテオミクスベース(proteomics-based)の分析を用いて、いかに脳障害疾患用バイオマーカーを識別するかを述べる。また、1例として、急性脳卒中の患者に関して血清FABPレベルがELISA分析を用いて順序立てて決定されたあと得られた結果について、S100やNSEと比較してレポートする。
【0006】
本発明の第1の目的は、健康なドナーの脳脊髄液に比べ死亡患者の脳脊髄液のレベルが高まるポリペプチドを構成する成分を提供することである。同じ目的のために、上記ポリペプチドから誘引される抗体の組成を提供する。
【0007】
本発明の第2の目的は、脳血管疾患、痴呆、脳神経変性疾患を含む脳障害関連疾患の診断や予後において、創意に富む組成物を用いる方法を提供することである。
本発明は以下のものを提供する。
【0008】
・ 脳障害関連疾患もしくはその可能性を、罹病していると疑われる対象物において診断する方法であって、対象から取った体液サンプル中の、A−FABP、E−FABP
、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)の中から選択される少なくとも一つのポリペプチドまたはその変異体または同族体を検出することを含む方法。
【0009】
(2)ポリペプチドが、脳障害関連疾患に冒されている対象の体液中と脳障害関連疾患に冒されていない対象の体液中で差異的に含まれ、また、サンプル中のポリペプチドの濃度が脳障害関連疾患の診断と一致性を持っているかを決定することを含む1の方法。
【0010】
(3)濃度の検出または決定にポリペプチドの抗体を用いる1または2の方法。
(4)体液が、脳脊髄液、血漿、血清、血液、涙、尿、または唾液である1から3の内いずれかの方法。
【0011】
(5)ポリペプチドが、脳障害関連疾患に冒されている対象の体液中に存在して、脳障害関連疾患に冒されていない対象の体液中には存在しない、そのため体液サンプル中のポリペプチドの存在が脳障害関連疾患の表示となる、1から4の内いずれかの方法。
【0012】
(6)ポリペプチドが、脳障害関連疾患に冒されている対象の体液中に存在しないで、脳障害関連疾患に冒されていない対象の体液中には存在する、そのため体液サンプル中のポリペプチドの非存在が脳障害関連疾患の表示となる、1から4の内いずれかの方法。
【0013】
(7)サンプルの中に複数のペプチドが検出される1から6の内いずれかの方法。
(8)脳障害関連疾患に冒された対象と脳障害関連疾患に冒されていない対象の体液中で、ポリペプチドの遷移後の変性し易さ(subject to post-translational modification)が差異的であって、サンプル中のポリペプチドの遷移後変性(post-translational modification)を検出し、それが脳障害関連疾患の診断と一致するかどうかを決定する1から7の内いずれかの方法。
【0014】
(9)遷移後変性(post-translational modification)がN−グリコシラチオンを含む8の方法。
(10)脳障害関連疾患が卒中であって、ポリペプチドがユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)である1から9の内いずれかの方法。
【0015】
(11)脳障害関連疾患が卒中であって、ポリペプチドがRNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)である1から9の内いずれかの方法。
(12)脳障害関連疾患が卒中であって、ポリペプチドがヌクレオシドジホスファートキナーゼAである1から9の内いずれかの方法。
【0016】
(13)ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、RNA結合調節サブユニット、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、H−FABPに対する抗体のうち2個以上のマーカーを選択し、ELISAマイクロタイタープレート(microtiter plate)の一つのウェルに用いる10から12の内いずれかの方法。
【0017】
(14)一つのウェルに上記4つのマーカーをすべて用いる13の方法。
(15)ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein
1 homolog)、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、H−FABPから選択された2個以上のポリペプチドが個別に分析され、診断のために予測アルゴリズムを用いる10から12の内いずれかの方法。
【0018】
(16)A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体、または上記ポリペプチドの組み合わせの、脳障害関連疾患に関連する診断、予後、および治療の応用への使用方法。
【0019】
(17)上記ポリペプチドが、脳障害関連疾患に冒されている対象と脳障害関連疾患に冒されていない対象とで差異的に含まれている16記載の使用方法。
(18)A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質の、脳障害関連疾患に関する診断、予後、治療の応用への使用方法。
【0020】
(19)A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質の組み合わせを用いる18記載の使用方法。
【0021】
(20)上記物質が、抗体または抗体片である18または19記載の使用方法。
(21)上記物質が、A−FABPに対する抗体である20記載の使用方法。
(22)上記物質が、E−FABPに対する抗体である20記載の使用方法。
【0022】
(23)上記物質が、PGP9.5に対する抗体である20記載の使用方法。
(24)上記物質が、GFAPに対する抗体である20記載の使用方法。
(25)上記物質が、プロスタグランジンDシンターゼに対する抗体である20記載の使用方法。
【0023】
(26)上記物質が、ニューロモジュリンに対する抗体である20記載の使用方法。
(27)上記物質が、ニューロフィラメントLに対する抗体である20記載の使用方法。
【0024】
(28)上記物質が、カルシフォシンに対する抗体である20記載の使用方法。
(29)上記物質が、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)に対する抗体である20記載の使用方法。
【0025】
(30)上記物質が、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)に対する抗体である20記載の使用方法。
(31)上記物質が、ヌクレオシドジホスファートキナーゼAに対する抗体である20記載の使用方法。
【0026】
(32)上記物質が、グルタチオンSトランフェラーゼPに対する抗体である20記載の使用方法。
(33)上記物質が、カテプシンDに対する抗体である20記載の使用方法。
【0027】
(34)上記物質が、DJ−1蛋白質に対する抗体である20記載の使用方法。
(35)上記物質が、ペルオキシレドキシン5に対する抗体である20記載の使用方法。
【0028】
(36)上記物質が、ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)に対する抗体である20記載の使用方法。
(37)脳障害関連疾患に関する診断のために用いられる分析装置であって、A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質を含んだ場所を有する固形基板を含む分析装置。
【0029】
(38)上記固形基板が、A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質を各々含む複数の場所を有する37記載の分析装置。
【0030】
(39)上記物質が抗体または抗体片である37または38記載の分析装置。
(40)上記各抗体が特徴的に配置され、各ポリペプチド、または、どんなポリペプチドの組み合わせでも読み取りができる上記39記載の分析装置。
【0031】
(41)A−FABPに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
(42)E−FABPに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0032】
(43)PGP9.5に対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置

(44)GFAPに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0033】
(45)プロスタグランジンDシンターゼに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
(46)ニューロモジュリンに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0034】
(47)ニューロフィラメントLに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
(48)カルシフォシンに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0035】
(49)RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)に対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
(50)ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)に対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0036】
(51)ヌクレオシドジホスファートキナーゼAに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
(52)グルタチオンSトランフェラーゼPに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0037】
(53)カテプシンDに対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
(54)DJ−1蛋白質に対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0038】
(55)ペルオキシレドキシン5に対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
(56)ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)に対する抗体を含む、上記37から40の内いずれかの分析装置。
【0039】
(57)37から56記載のいずれかの分析装置と、対象から採取した体液サンプル中の一つ以上のポリペプチドの量を検出する手段とを含む、脳障害関連疾患診断に用いるキット。
【0040】
本発明に用いる新しいマーカーは以下のものである。
A-FABP(P15090)。これは以下のシーケンス(SEQ ID NO.1)を有する:
1 CDAFVGTWKLVSSENFDDYMKEVGVGFATRKVAGMAKPNMIISVNGDVITIKSESTFKNTEISFILGQEFDEVTADDRKVKSTITLDGGVLVHVQKWDGKSTTIKRKREDDKLVVECVMKGVTSTRVYERA 131
E-FABP(Q01469)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO.2)を有する:
1 MATVQQLEGRWRLVDSKGFDEYMKELGVGIALRKMGAMAKPDCIITCDGKNLTIKTESTLKTTQFSCTLGEKFEETTADGRKTQTVCNFTDGALVQHQEWDGKESTITRKLKDGKLVVECVMNNVTCTRIYEKVE 135
PGP 9.5 (P09936)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO.3)を有する:
1 MQLKPMEINP EMLNKVLSRL GVAGQWRFVD VLGLEEESLG SVPAPACALL LLFPLTAQHE 60
NFRKKQIEEL KGQEVSPKVY FMKQTIGNSC GTIGLIHAVA NNQDKLGFED GSVLKQFLSE 120
TEKMSPEDRA KCFEKNEAIQ AAHDAVAQEG QCRVDDKVNF HFILFNNVDG HLYELDGRMP 180
FPVNHGASSE DTLLKDAAKV CREFTEREQG EVRFSAVALCKAA 223
GFAP (14136)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO.4)を有する:
1MERRRITSAA RRSYVSSGEM MVGGLAPGRR LGPGTRLSLA RMPPPLPTRV DFSLAGALNA 60
GFKETRASER AEMMELNDRF ASYIEKVRFL EQQNKALAAE LNQLRAKEPT KLADVYQAEL 120
RELRLRLDQL TANSARLEVE RDNLAQDLAT VRQKLQDETN LRLEAENNLA AYRQEADEAT180
LARLDLERKI ESLEEEIRFL RKIHEEEVRE LQEQLARQQV HVELDVAKPD LTAALKEIRT240 QYEAMASSNM HEAEEWYRSK FADLTDAAAR NAELLRQAKH EANDYRRQLQ SLTCDLESLR 300
GTNESLERQM REQEERHVRE AASYQEALAR LEEEGQSLKD EMARHLQEYQ DLLNVKLALD 360
IEIATYRKLL EGEENRITIP VQTFSNLQIR ETSLDTKSVS EGHLKRNIVV KTVEMRDGEV 420
IKESKQEHKD VM 432
プロスタグランジンDシンターゼ (P41222)。これは以下のシーケンス (SEQ ID N0.5)を有する:
23 APEAQVSV QPNFQQDKFL GRWFSAGLAS NSSWLREKKA 60
ALSMCKSVVA PATDGGLNLT STFLRKNQCE TRTMLLQPAG SLGSYSYRSP HWGSTYSVSV 120
VETDYDQYAL LYSQGSKGPG EDFRMATLYS RTQTPRAELK EKFTAFCKAQ GFTEDTIVFL 180
PQTDKCMTEQ
ニューロモジュリン(P17677)。これは以下のシーケンス (SEQ ID N0.6)を有する:
1 MLCCMRRTKQ VEKNDDDQKI EQDGIKPEDK AHKAATKIQA SFRGHITRKK LKGEKKDDVQ 60
AAEAEANKKD EAPVADGVEK KGEGTTTAEA APATGSKPDE PGKAGETPSE EKKGEGDAAT 120
EQAAPQAPAS SEEKAGSAET ESATKASTDN SPSSKAEDAP AKEEPKQADV PAAVTAAAAT 180
TPAAEDAAAK ATAQPPTETG ESSQAEENIE AVDETKPKES ARQDEGKEEE PEADQEHA 238
ニューロフィラメントL(P07196)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO.7)を有する:
1 SSFSYEPYYS TSYKRRYVET PRVHISVRSG YSTARSAYSS YSAPVSSSLS VRRSYSSSSG 60
SLMPSLENLD LSQVAAISND LKSIRTQEKA QLQDLNDRFA SFIERVHELE QQNKVLEAEL 120
LVLRQKHSEP SRFRALYEQE IRDLRLAAED ATTNEKQALR GEREEGLEET LRNLQARYEE 180
EVLSREDAEG RLMERRKGAD EAALARAELE KRIDSLMDEI SFLKKVHEEE IAELQAQIQY 240
AQISVEMDVT KPDLSAALKD IRAQYEKLAA KNMQNAEEWF KSRFTVLTES AAKNTDAVRA 300
AKDEVSESRR LLKAKTLEIE ACRGMNEALE KQLQELEDKQ NADISAMQDT INKLENELRT 360
TKSEMARYLK EYQDLLNVKM ALDIEIAAYR KLLEGEETRL SFTSVGSITS GYSQSSQVFG 420
RSAYGGLQTS SYLMSTRSFP SYYTSHVQEE QTEVEETIEA SKAEEAKDEP PSEGEAEEEE 480
KDKEEAEEEE AAEEEEAAKE ESEEAKEEEE GGEGEEGEET KEAEEEEKKV EGAGEEQAAK 540
KKD 543
カルシフォシン(Q13938)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO.8)を有する:
1 MDAVDATMEK LRAQCLSRGA SGIQGLARFF RQLDRDGSRS LDADEFRQGL AKLGLVLDQA 60
EAEGVCRKWD RNGSGTLDLE EFLRALRPPM SQAREAVIAA AFAKLDRSGD GVVTVDDLRG 120
VYSGRAHPKV RSGEWTEDEV LRRFLDNFDS SEKDGQVTLA EFQDYYSGVS ASMNTDEEFV 180
AMMTSAWQL 189
RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)(014805)。これはRNA-BPとも称し、以下のシーケンス (SEQ ID NO.9)を有する:
1MASKRALVIL AKGAEEMETV IPVDMRRAG IKVTVAGLAG KDPVQCSRDV VICPDASLED 60
AKKEGPYDVV VLPGGNLGAQ NLSESAAVKE ILKEQENRKG LIAAICAGPT ALLAHEIGFG 120
SKVTTHPLAK DKMMNGGHYT YSENRVEKDG LILTSRGPGT SFEFALAIVE ALNGKEVAAQ 180
VKAPLVLKD 189
ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)(Q92890)。これはUFD1または UFDP1とも称し、以下のシーケンス (SEQ ID NO.10)を有する:
1 MFSFNMFDHP IPRVFQNRFS TQYRCFSVSM LAGPNDRSDV EKGGKIIMPP SALDQLSRLN 60
ITYPMLFKLT NKNSDRMTHC GVLEFVADEG ICYLPHWMMQ NLLLEEDGLV QLETVNLQVA 120
TYSKSKFCYL PHWMMQNLLL EEGGLVQVES VNLQVATYSK FQPQSPDFLD ITNPKAVLEN 180
ALRNFACLTT GDVIAINYNE KIYELRVMET KPDKAVSIIE CDMNVDFDAP LGYKEPERQV 240
QHEESTEGEA DHSGYAGELG FRAFSGSGNR LDGKKKGVEP SPSPIKPGDI KRGIPNYEFK 300
LGKITFIRNS RPLVKKVEED EAGGRFVAFS GEGQSLRKKG RKP 343
ヌクレオシドジホスファートキナーゼA(P15531)。これはNDK Aとも称し、以下のシーケンス (SEQ ID NO11)を有する:
1 MANCERTFIA IKPDGVQRGL VGEIIKRFEQ KGFRLVGLKF MQASEDLLKE HYVDLKDRPF 60
FAGLVKYMHS GPVVAMVWEG LNVVKTGRVM LGETNPADSK PGTIRGDFCI QVGRNIIHGS 120
DSVESAEKEI GLWFHPEELV DYTSCAQNWI YE 152
グルタチオンSトランフェラーゼP(P09211)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO.12)を有する:
1 PPYTVVYFPV RGRCAALRML LADQGQSWKE EVVTVETWQE GSLKASCLYG QLPKFQDGDL 60
TLYQSNTILR HLGRTLGLYG KDQQEAALVD MVNDGVEDLR CKYISLIYTN YEAGKDDYVK 120
ALPGQLKPFE TLLSQNQGGK TFIVGDQISF ADYNLLDLLL IHEVLAPGCL DAFPLLSAYV 180
GRLSARPKLK AFLASPEYVN LPINGNGKQ 209
カテプシンD(P07339)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO. 13)を有する:
65 GPIPEV LKNYMDAQYY GEIGIGTPPQ CFTVVFDTGS SNLWVPSIHC KLLDIACWIH 120
HKYNSDKSST YVKNGTSFDI HYGSGSLSGY LSQDTVSVPC QSASSASALG GVKVERQVFG 180
EATKQPGITF IAAKFDGILG MAYPRISVNN VLPVFDNLMQ QKLVDQNIFS FYLSRDPDAQ 240
PGGELMLGGT DSKYYKGSLS YLNVTRKAYW QVHLDQVEVA SGLTLCKEGC EAIVDTGTSL 300
MVGPVDEVRE LQKAIGAVPL IQGEYMIPCE KVSTLPAITL KLGGKGYKLS PEDYTLKVSQ 360
AGKTLCLSGF MGMDIPPPSG PLWILGDVFI GRYYTVFDRD NNRVGFAEAA RL 412
DJ−1蛋白質(Q99497)。これは以下のシーケンス (SEQ ID NO.14)を有する:
1 MASKRALVIL AKGAEEMETV IPVDVMRRAG IKVTVAGLAG KDPVQCSRDV VICPDASLED 60
AKKEGPYDVV VLPGGNLGAQ NLSESAAVKE ILKEQENRKG LIAAICAGPT ALLAHEIGCG 120
SKVTTHPLAK DKMMNGGHYT YSENRVEKDG LILTSRGPGT SFEFALAIVE ALNGKEVAAQ 180
VKAPLVLKD 189
ペルオキシレドキシン5(P30044)。これは以下のシーケンス (SEQ ID N0.15)を有する:1 MGLAGVCALR RSAGYILVGG AGGQSAAAAA RRCSEGEWAS GGVRSFSRAA AAMAPIKVGD 60
AIPAVEVFEG EPGNKVNLAE LFKGKKGVLF GVPGAFTPGC SKTHLPGFVE QAEALKAKGV 120
QVVACLSVND AFVTGEWGRA HKAEGKVRLL ADPTGAFGKE TDLLLDDSLV SIFGNRRLKR 180
FSMVVQDGIV KALNVEPDGT GLTCSLAPNI ISQL 214
ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(P05092)。これは以下のシーケンス(SEQ ID NO.16)を有する;
1 VNPTVFFDIA VDGEPLGRVS FELFADKVPK TAENFRALST GEKGFGYKGS CFHRIIPGFM 60
CQGGDFTRHN GTGGKSIYGE KFEDENFILK HTGPGILSMA NAGPNTNGSQ FFICTAKTEW 120
LDGKHVVFGK VKEGMNIVEA MERFGSRNGK TSKKITIADC GQLE 164
本発明に有用なポリペプチドは上記のシーケンスに限定されないで、その同族体、変異体も含まれる。同族体とは、ポリペプチドのシーケンスに自然に起こる変種で、与えられたシーケンスと高度の相同性を有し、かつ、実質的に同一の機能的、免疫学的な性状を持つものと定義する。変異体とは、人工的に創造された変種と定義する。高度の相同性とは、少なくとも90%、好適には95%、もっとも好適には99%の相同性を指す。変種は単一種内または異種間で起こる。上記シーケンスはヒト由来のものであるが、本発明は例えばウシ属など他の哺乳類の、対応するポリペプチドを含む。
【0041】
本発明で云う脳障害関連疾患は、以下を含む:
脳損傷(head trauma)、虚血性卒中、出血性卒中、くも膜下出血、頭蓋内出血、一過性虚血性発作、血管性痴呆、大脳皮質基底核神経節変成症、脳炎、てんかん、ランド-クレフナー症候群、水頭症、偽性脳腫瘍、視床疾患、脳膜炎、脊膜炎、運動障害、真性振戦、脊髄疾患、脊髄空洞症、アルツハイマー(早期発症)、アルツハイマー(遅発症)、多重梗塞性痴呆症、ピック症、ハンチントン病、パーキンソン病、パーキンソンシンドローム、前頭側頭型痴呆、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、ルーイ体(Lewy body)疾患、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、ダンディーウォーカーシンドローム、フリードライヒ(Friedreich)運動失調症、マカドヨセフ(Mach
ado-Joseph)病、偏頭症、統合失調症、情緒不安定(mood disorder)、およびうつ病。ヒト以外の哺乳類における対応する疾患、たとえばウシスポンジ状脳症(BSE)などの流行性スポンジ状脳症(TSE)やヒツジのスクレイピーなども含まれる。
【0042】
本発明において、H-FABP(P05413)とB-FABP(O15540)も、特に卒中やCJD以外の脳障害関連疾患とその可能性の診断に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明は、脳血管疾患、痴呆、神経変性疾患を含む脳障害関連疾患に冒された患者の、血液成分(例えば血漿や血清)や脳脊髄液などの体液中で増大または減少するポリペプチドを検出する物質成分とその方法に関する。
【0044】
脳障害の蛋白マーカーに対するポリペプチド、特にその蛋白結合領域が検出ツールとして適している。前に述べたような分子に対する抗体の性状を変えたり最適化するために、分子生物学的、また、バイオテクノロジーの方法が、ある特別の方法で利用される。加えて、抗体の安定性を増すために、アセチル化、カルバモイル化、ホルミル化、ビオチン化、アシル化、ポリエチレングリコールや親水性ポリマーによる誘導体化、など化学的に抗体に変更を加える。
【0045】
A−FABP、E−FABPや他のFABP、例えばH−FABP、B−FABP、およびPGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択される特異的なポリペプチドマーカーが、例えばそれらの抗体を用いて体液サンプル中に検出される。マーカーは、好適にはポリペプチドに対する抗体を用いて、抗原(ポリペプチド)/抗体反応の程度を測る免疫分析法で測定される。抗体はモノクロナール抗体でも、製造された(キメラ体の)ものでも良い。上記ポリペプチドに対する抗体は商業的に入手可能である。また、抗体を増殖するためにケーラーミルスタイン法が有効である。ポリクロナール抗体はあまり望ましくない。本発明における抗体とは、単鎖やFab片など抗体の結合片を含む。
【0046】
知られているどの免疫分析法でも利用可能である。サンドイッチ法では、ポリペプチドに対する抗体(例えばポリクロナール)が、プラスチック製のマイクロタイタープレートのウェルのような固層に結合され、サンプルおよび、検出すべきポリペプチドに特異的な、標識された第2の抗体と共にインキュベートされる。その代わりに、抗体補足法(間接免疫分析法)を用いても良い。この方法では、サンプルが固層に結合され、抗ポリペプチド抗体(ポリクロナールまたはモノクロナール)が加えられ、結合される。もしポリクロナール抗体の場合は、他の品種のポリペプチドとの間で交差反応が低いものが望ましい。非結合物質が洗い流されたあとに、固層に着いている抗体の量が第二の標識された抗体、すなわち抗−第一のもの、を用いて判定される。
【0047】
標識された抗−ポリペプチド抗体を用いて直接分析法が行われる。テストサンプルが固層に結合され、抗−ポリペプチド抗体が加えられる。非結合物質が洗い流されたあとに、固層に着いている抗体の量が判定される。標識は第2の抗体でなく、直接なされる。
【0048】
他の実施例では、サンプルと標識されたポリペプチドまたはそこから誘引されたペプチドとの間で競合法が行われる。この2つの抗原は固層に結合した少量の抗−ポリペプチド
抗体と量的に競合する。標識されたポリペプチドまたはペプチドは固層上で抗体と事前にインキュベートすることも出来、それによってサンプル中のポリペプチドは抗体に結合したポリペプチドまたはペプチドと部分的に置換する(displaces part)。
【0049】
さらに他の実施例では、二つの抗原が抗体とともに競合的にインキュベートされる。洗浄によって非結合の抗原が除かれ、支持体に結合した標識の量を検出し、サンプル中の蛋白量が事前に確立されている標準滴定曲線と比較して測定される。
【0050】
通して、標識は酵素が望ましい。酵素の基体は、発色性、蛍光発光、化学蛍光発光、電気化学的なものでありうる。また、可溶性でも凝結性のものでも良い。また、標識はラジオアイソトープや、例えば共役フルオレセインを用いた蛍光物質でも良い。
【0051】
酵素は、例えば、アルカリホスファタ−ゼやホースラディッシュペルオキシターゼや、色測定に便利な、例えば、アルカリホスファターゼと共に黄色発色基材としてP-ニトロフェニルリン酸塩を用いることも出来る。
【0052】
化学蛍光法では、抗体の標識にアクリジニウムエステルやホースラディッシュペルオキシターゼを用いることが出来る。後者は強調(enhanced)化学蛍光分析法(ECL)に用いられる。ホースラディッシュペルオキシターゼで標識された抗体は、ルミノールやペルオキシターゼおよびその化合物との化学蛍光反応に関与し、それは発光強度やその寿命を強化する。典型的には、4−ヨードフェノールや4−ヒドロキシ桂皮酸がそれである。
【0053】
免疫PCRのような増殖免疫分析法(amplified immunoassay)が利用される。この技術では、抗体はPCRプライマーを含む任意のDNA分子に共有結合され、抗体が組みこまれたDNAがポリメラーゼ連鎖反応によって増殖される。Hendrickson et al., Nucleic Acids Research 1995; 23, 522-529 (1995) または、T.Sano et al., in “Molecular Biology and Biotechnology” Robert A Meyers編集, VCH出版社(1995),458-460ページ参照。信号は前記のように読み取られる。
【0054】
ポリペプチド検出の一つの方法として、酵素結合免疫吸着法(enzyme-linked immunosorbent assay)(ELISA)が用いられる。
AMIのH-FABP検出のために開発されたrapid micro particle-enhanced turbidimetric免疫分析法は分析時間を特段に短縮した。M.Roberts et al., “Development of a rapid microparticle-enhanced turbidimetric immuassay for plasma fatty acid-binding protein, an early marker of acute microcardial infarction”, Clin.Chem. 1998;44:1564-1567参照。
【0055】
これによって、上記M.Roberts等 によって述べられているホフマンラロッシュのCOBAS
MIRA(登録商標)Plus system やアボットラボラトリー社のAxSYM(登録商標)で行われている全自動化が、脳障害関連疾患の日常的臨床検査でも可能になり、また適用されるに違いない。
【0056】
ポリペプチドの濃度は、免疫分析法以外でも測定できる。たとえば、サンプルを2次元ゲル電気泳動にかけ、ポリペプチド濃度をゲルの濃度測定走査やシミの濃度走査によってポリペプチドの量を評価する。しかし、分析は患者が迅速に処置されるよう、すばやく行われることが望ましい。
【0057】
原理的には、診断用サンプルとしてどんな体液でも可能であるが、望ましくは、脳脊髄液(CSF)、血清、血液、尿、涙、または唾液である。
本発明では、単一のポリペプチドまたは2つ以上のポリペプチドの組み合わせによって
脳障害関連疾患の診断を行う。
【0058】
本発明は、また、脳障害によって影響を受ける物質と、脳以外の障害によって影響を受ける物質に差異的に含まれるポリペプチドを、診断、予後、治療に供することに関する。これには、上記ポリペプチドに結合する、あるいはそれに対する親和性を有する物質を認識する物質を調製すること、また/もしくは、使用することを含む。そのような物質の例は、抗体や抗体片である。ここでいう「抗体」には、ポリクロナール抗血清、モノクロナール抗体、Fabのような抗体片、遺伝子操作で作られた抗体を含む。抗体は、非現実的なものでも良いし、単独種のものでも良い。上記「予後」応用は、例えば体液中の上記ポリペプチドの量を測定し、脳障害関連疾患のあり得そうな進行を検知することを含む。上記「治療追跡」応用には、例えば体液中の上記ポリペプチドの量を測定し(治療の働きとしてのレベル、能力障害が回復したかどうか、障害領域の大きさ等を評価し)脳障害関連疾患のあり得そうな進行を検知することを含む。上記「治療」応用とは、上記ポリペプチドに結合する、あるいはそれに対する親和性を有する物質を認識する物質を調製すること、使用することを含む。この場合、物質を変形して例えば、抗体と治療薬とを化合し、その薬を患者の特異的な場所に向かわせる。
【0059】
上記ポリペプチドの「存在、非存在」は、単に疾患サンプルと非疾患サンプルの間でポリペプチドの量に非常なる差があることを意味する。したがって、テストサンプル中のポリペプチドの「非存在」とは、ポリペプチドが実際には存在する可能性があるが、比較テストサンプルと比べて量が非常に少ないということを含む。本発明は、診断をポリペプチドの存在、非存在をベースに行っても良い。これには、ポリペプチドの量が比較テストサンプルに比べて非常に少ないか、非常に多いということを含む。
【0060】
上記ポリペプチドの「検出」には、量的変化の他に、成分の比較表やポリペプチドの遷移後変性体(post-translational modifications)を検出する方法が含まれる。例として、死後のものとコントロールのCSFに関し、プロスタグランジンDシンターゼの遷移後変性パターンに差があることが認められた。同様の差は、クロイツフェルトヤコブ病患者とコントロール患者のCSFでも観測される。このことは実施例5で述べる。したがって、本発明は、一般的に遷移後変性体を検出し、そのようなポリペプチドの変性が脳障害関連疾患の診断と合致しているかを決定することまで包含する。
【0061】
本発明では、脳障害関連疾患の診断に用いられる分析キットや装置を含む。これには、A−FABP、E−FABPや他のFABP、例えばH−FABP、B−FABPおよびPGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)の内から選択されるポリペプチドに対する抗体を含ませることが出来る。抗体は患者から採取された液体サンプル中で適合するポリペプチドと結合する。抗体は固体支持体の上に固定される。望ましくは、抗体の配置は特別なアクセスが可能な配置になっており、それによって、別々の分析法でサンプル中の各ポリペプチドおよび選択されたポリペプチドのどんな組み合わせでも読み出されようになっている。
【0062】
以下の実施例で発明を例示する。
[実施例1]
脳脊髄液(CSF)蛋白の2次元ゲル電気泳動による分離と、質量分析法によって、テーブル1に示す15のポリペプチドが、脳障害の大きな患者のCSF中で増大または減少
していることが判った。
【0063】
−対象員数とサンプルの取り扱い−
脳障害関連疾患用のマーカーを発見すべく、8つのCSFサンプルがプロテオミクスベース(proteomics-based)のアプローチにかけられた。このうち4つは、死体解剖で中枢神経に異常の無い、死後6時間の死体から得た。他の4つのサンプルは、存命中の、脳障害と関係の無い患者で、精密検査で良好な状態である患者(非定型的頭痛、突発性顔面周囲神経麻痺)から腰椎穿刺で集められた。CSFサンプルは採取後直ちに遠心分離にかけられ、分割され、分析まで−80℃で冷凍された。
【0064】
- CSF 2−DE-
すべての試薬、装置は他所に述べられている[9]。250μlのCSFと500μlの冷やされたアセトン(−20℃)を混合し、4℃下で10分間、1000gで遠心分離する。ペレットは10%SDS(w/v)、2.3%DTE(w/v)を含む溶剤と混合した。サンプルは95℃で5分間温められたのち、8Mの尿素、4%のCHAPS(w/v)、40mMのTris、65mMのDTEおよび僅かなブロモフェノールブルーを含む溶剤で、60μlに希釈された。この最終的に希釈されたサンプルの45μg対応分がIPGストリップの陰極端のカップに入れられた。2−DE分析が前述したように実施された[10]。簡単に述べれば、第1次方向の蛋白分離が、Amersham Bioscience(Uppsala, Sweden)製で、市販されている、pH3.5から10の非線形IPGを使用して行われた。第2次元方向の分離は、手製の縦階調のスラブゲル(vertical gradient slab gel)(9-16% T,2.6%C)の上で行われた。ゲルはアンモニア銀で染色され[11]、レーザー濃度計(Amersham Bioscience, Uppsala, Sweden)で走査され、MELANIE 3ソフトウェアパッケージ[12]で2−DE像のコンピュータ像解析がなされた。
【0065】
-質量分析による同定-
死体と健康体のCSF(n=4)の分析ゲルの比較から、スポットの現れ方が異なるということが見出された。その興味あるスポットは、matrix-assisted laser desorption/ionization 飛行時間計測式の質量分析器(Perspective Biosystems Voyger STR MALDI-TOF-MS, Framingham, MA, USA)を使用したペプチド質量フィンガープリント法で分析され[10]、PeptIdent (http://www.expasy.ch/sprot/peptident.html)で鑑定された。
【0066】
【表1】

[実施例2]
脳脊髄液(CSF)の2次元ゲル電気泳動(2−DE)分離と質量分析法によって、大きな脳損傷のモデルとして用いた死後のCSF中で、FABPが上昇しているのが観測された。H−FABPは、多くの機関の中に存在する一つのFABPであるが、脳の中にも集中しているので、卒中患者とコントロールの血清サンプルの中でH−FABPを検出するためのELISA法が行われた。しかし、H−FABPはまた、急性心筋梗塞(AMI)のマーカーでもあるので、並存する心臓障害を除くため、同時にトロポニン−Iとクレアチンキナーゼ−MB(CK−MB)のレベルが分析された。
【0067】
−対象員数とサンプルの取り扱い−
員数は、後に述べる色々なマーカーの血清を使用した評価のために、あらかじめ検討された患者64人(第2表)であり、等しく3つのグループに分けられた、すなわち、(1)抹消および中枢神経系に既知の症状が無い65才(範囲:34−86才)の、男性14人、女性8人のコントロールグループ。(2)65才(範囲:29−90才)の急性心筋梗塞患者、男性14、女性6人のグループ(AMIグループ);AMIの診断は、すべて典型的な心電計上の変化とCK−MBの上昇(カットオフ値9.3ng/ml以上)および、トロポニン−I(カットオフ値2ng/ml以上)の上昇によって行われた。(3)65才(範囲:30−87才)の急性卒中患者、男性14、女性8人のグループ(卒中グループ);卒中の診断は、訓練された医師によるものと、急性局所神経障害の発症と、およびそのあとの脳CTやMRIで症状に対応した損傷像によってなされた。ただし、眼に見える傷害が診断に必要の無い一過性虚血性脳卒中(TIA)は例外である。卒中グループは次のように分けられる、すなわち、卒中のタイプ(虚血性か出血性か)、傷害の場所(脳幹か脳半球か)および臨床的進行時間(TIAの場合、24時間以内のいつ完全に回復したか、または24以上にわたり神経学的欠損が存在しているか)。
【0068】
【表2】

3グループの各患者のサンプルは、入院時にヘパリン入りの乾燥した試験管に採取された。4℃下で15分間1500gで遠心分離されたあと、血清サンプルが分割され、分析時まで−20℃で貯蔵された。卒中グループに対しては、神経学的事件のあと24時間以内、48時間以内、48時間以後の3つのサンプルがさらに採取された。このグループでは、神経学的事件から最初の血液採取までの間隔は185分(範囲;40分から3日)であった。この因子はデータ分析時に考慮された。各患者またはその親族は登録に当たり事前に告知同意している。
【0069】
−FABPの測定−
H−FABPのレベルは、血清のサンドイッチELISA法で測定される。96ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレート(NUNC, Polylabo, CH)の各ウェルに、0.1MpH9.6のカルボナートバッファー中に20.4μg/mlで混合した100μlのポリクロナールヒツジ抗ヒト筋FABP(Spectral Diagnosis HC, Ontario, USA)を、4℃で一晩かけて固着した。プレートはBioRad NOVAPATH(登録商標) WASHER(Hercules, CA)を用いて、PBS(15mM NaPO−120mM NaCl−2.7mM KCL pH7.4、Sigma)で自動洗浄する。洗浄毎に新しいPBSで洗浄した。非特異結合部位はカルボネートバッファーに入れた2%カゼイン(w/v)で37℃下で2時間かけてブロックした。洗浄ステップ後、サンプルをウェル当り100μl注入した。プレートを37℃下で2時間インキュベートした。洗浄後、1%(w/v)のBSAを加えたBPSを0.3μg/ml比で混合した100μl/ウェルのマウス抗ヒト心臓FABP(clone 66E2、HyCult biotechnology b.v, Uden, Netherland)を、室温で1時間シェイクしつつインキュベートした。洗浄後、50μl/ウェルのホスファターゼ基材と、ジエタノールアミン中に1.5mg/μl比で混合したパラニトロフェニルフォスヘートを30分間インキュベートした。反応は100μl/ウェルの1M NaOHで停止した。発色を、MileniaTM kinetic
analyzer(DPC,LA,USA)で波長405nmを使って評価した。
【0070】
−CK−MBおよびトロポニン-I の測定−
血清サンプルは1500g下で15分間遠心分離され、分割されて−20℃で貯蔵された。血清CK−MBとトロポニン−Iのレベルは自動化学分析機AxSYS(登録商標) SyStem(ABBOT Laboratories, Abbot Park, IL)を用いて、蛍光マイクロプレート酵素免疫分析法(MEIA)によって行われた。蛍光物質の生成はサンプル中のトロポニン−Iと直に比例している。トロポニン−Iの検出限界は0.3μg/lである。CK−MBは蛍光プローブの量と比例しており、検出限界は0.7μg/lである。
【0071】
−NSEおよびS100の測定−
H−FABPの測定と同様、NSEとS100は卒中グループの4つの連続する血清サンプルで分析された。SMART−S100およびSMART−NSE用ELISAキットが使用された。両者はSkye Pharma Tech Inc.(Ontario, CA)から市販されている。NSEとS100の検出限界は各々1μg/lおよび0.01μg/lである。
【0072】
−統計分析−
H−FABPのレベルは光学濃度値で平均±標準偏差で表示される。組み換えH−FABPは入手できなかったので、別途の補正によって濃度単位で表示することは出来なかった。H−FABP、トロポニン−I、CK−MBの濃度は正常、卒中およびAMIのいずれのグループも、コルモロゴフ-スミルノフテストによるガウス分布の条件を満たさなかったので、3者の比較は、事後のダンの手法(post hoc Dann’s procedure)によるノンパラメトリック(non-parametric)クラスカル−ウォリステストによって行われた。卒中のサブグループ間の比較は、マン−ホイットニーUテストで行われ、H−FABPの濃縮時間の縦軸評価(longitudinal assessment)は繰り返し測定の分散分析(ANOVA)で行われた。卒中と正常患者を区別するためのH−FABPの比較限界は、受信者動作特性(receiver operating characteristic)(ROC)カーブ(マイクロソフトExcel(登録商標)用Analyser-It(登録商標)ソフト)を使用して詳細に描写された。引き続き、各時点での感度、特異性、陽性、陰性の予測値が計算された。統計上の有意性は0.05以下に設定された。
【0073】
−結果−
3グループのH−FABP分析の結果を第1図に示し、その詳細を第3表に示す。血清H−FABP濃度の平均は、コントロールグループで0.221±0.134OD、卒中グループで1.079±0.838、AMIグループで2.340±0.763ODであった。本ELISA法における変動係数は5.8%±3.8であった。クラスカル−ウォリステストによって、この3つのグループの濃度は互いに有意に異なる(p<0.001)ことが見出された。コントロールと卒中グループを識別する最良のカットオフ値は、H−FABPレベルのROCカーブ(データ不記載)から、OD>0.531とされた。このカットオフ値を使った卒中の診断におけるH−FABPの正当性測定の結果は次のようである:感度は卒中患者22人中15人がカットオフ値以上で68.2%、特異性は正常者22人すべてがカットオフ値以下で100%、陽性予測値は100%、陰性予測値は75.9%であった。
【0074】
【表3】

AMIグループと卒中患者グループを生物学的レベルで識別するために、トロポニン−IとCK−MKの分析がさらに行われた。トロポニン−I分析はAxSYMトロポニン−I分析において2ng/mlのカットオフ値で行われ、AxSYM CK−BM分析で3.8ng/mlのカットオフ値で行われた(表3)。期待されたように、これらAMIグループにおけるAMIマーカーはコントロール、卒中グループに比べて非常に高い(p<0.01)。あとの2グループ間では差が無い、このことは脳障害の結果によってトロポニン−IとCK−MBが増加することはないこと、また、卒中患者は卒中時に随伴性のAMIを維持しないことを証明している。これらのことから、H−FABP、トロポニン−I、及びCK−MB濃度は20人のAMI患者と15人の卒中患者を正しく識別する。一つの例外は、一人の卒中患者において、心電計の異常を伴わないでH−FABPレベルが上昇し、トロポニン−IとCK−MBレベルが徐々に上昇するという随伴性非AMIの心臓障害と一致するデータを示している。
【0075】
卒中グループにおいて、神経学的出来事のあといずれの時点においてもH−FABPレベルがOD0.531というカットオフ値を下回っている7つの偽陰性の結果が観測された。7人のうち、2人は神経欠損後24時間以内に完全回復し、これは一過性虚血性脳卒中(TIA)のケースと一致する。また、他の二人はラクナ型(lacunar) 卒中を起こしていたことがMRI像にあり、一人は脳幹の中であった。TIAやラクナ型卒中であることが、その患者の多くで見られるような偽陰性の結果を説明しているが、H−FABPの低レベルを示す残りの3人については一貫して説明できなかった。
【0076】
卒中後の連続的なH−FABP検出において、15人中10人(67%)の陽性患者は早期から(12時間以内)H−FABPの増大が認められた。さらに、第2図に示すように、すべての卒中患者を見たとき、傷害後平均H−FABP濃度は着実に下がって行き、そのピーク値は12時間以内に観測された。最初の測定と48時間以内、その後の3つの差は大きい(分散分析、p<0.05)。卒中グループのサブグループ間ではH−FABPレベルに統計的な有意差は認められなかった。虚血性(0.955±0.688、N=15)と出血性卒中(1.346±1.139、N=7)間、および、脳半球体(0.987±0.783、N=18)と脳幹卒中(1.493±1.080)ではH−FABPレベルは似ている。しかし、サンプル数が少ないため分析の統計としての重みは少ない。しかしながら、定着した卒中とTIA患者の場合の比較では、両者の差は有意ではない(マンホイットニーUテスト、p=0.24)が、前者(1.2002±0.892)は後者(0.652±0.499)のほぼ倍の値を示している。
【0077】
最後に、NSEとS100Bがコントロールと卒中グループで分析され、その結果がH−FABP分析と比較された。SMART−NSEとSMART−S100B蛋白ELISAテストの卒中診断用のカットオフ値は、それぞれNSEに対し10ng/ml、S100に対し0.02ng/mlである。NSEとS100のレベルは、卒中患者中グループ(各々14.12ng/mlと0.010ng/ml)の方がコントロールグループ(各々15.88ng/mlと0.004ng/ml)に比べてわずかに増加していた。表4に示すように、卒中診断においては、NSE,S100Bに対する特異性、感度、PPV(予測陽性値)、NPV(予測陰性値)はH−FABPに対するそれらに比べて大変低い。これらの差は、テストが同じサンプル上で行われているため関連がある。
【0078】
【表4】

[実施例3]
死亡患者から得たCSFサンプルで調製された2次元電気泳動で3つの蛋白質が同定された。これらの蛋白質は以前示したように、健康なコントロールに比べ死亡した患者からのCSF中で増大している。しかし、MALDI−TOFを使った質量分析では同定の試みは失敗している。今回の実験はESI−Ion Trap装置(DecalCQ XP, ThermoFinnigan)を使ったμLC−NS−MSによって行った。さらに、データベース中にデータ量を増やしたことで、以前特定できなかったスポットが成功裏に同定出来た。
【0079】
(1)RNA結合蛋白質調製サブユニット(RNA binding regulatory subunit)(O14805)/DJ−1蛋白質(Q99497)
RNA結合蛋白質調製サブユニット(RNA binding regulatory subunit)は以前死後のCSFサンプルのところで述べた(例1参照)。同様の同定結果が近傍のスポットで得られた(図3)。以前の同定結果を追認した。図1は、健康体のCSFと死んだCSFの2次元電気泳動マップの拡大図である。270μgの蛋白質がIPGゲル上(pH3.5−10NL,18cm)にセットされる。2次元目は縦階調のスラブゲル(vertical gradient
slab gel)(12%T)である。ゲルは蛍光染色体で染色される。上向きの矢印が、RNA結合調節サブユニットまたはDJ−1蛋白質に対応するスポットを示している。
【0080】
さらに、この結果はこれらのスポットが他の同族の蛋白質DJ−1に対応することを示している。RNA結合調節サブユニットとDJ−1蛋白質のシーケンスの違いはたった一つのアミノ酸である。本実験中に検出された一個のペプチドはこの特異的な残基を含まなかった。
【0081】
DI−1遺伝子の突然変異は常染色体退行性早期発症パーキンソン症候群と関係してい
る(Bonifati et al., Science, 2003)。DJ−1が細胞の酸性ストレス反応や神経変性症にかかわりがあるということを示唆する別の結果もある。(Bonigati et al., Science, 2003; Wilson et al., PNAS,2003)。
【0082】
(2)ペルオキシレドキシン5(P30044)
ぺルオキシレドキシン5の2―DEのスポットを図4に示す。これは、図3と同様に作られた健康体のCSFと死後のCSFの2−DEスポットマップの拡大図である。ぺルオキシレドキシン5に対応したスポットを右側矢印で示す。ぺルオキシレドキシン5は抗酸酵素であり、神経保護効果を持つ可能性がある(Plaisant et al., Free Radic. Biol. Med., 2003)。また、異なる神経変性疾患の患者の脳内で、ぺルオキシレドキシンファミリーに属する蛋白質が異常な現れ方をすることが述べられている(Krapfenbauer et al.,
Electrophoresis, 2002; Krapfenbauer et al., Brain Res., 2003)。
【0083】
(3)ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA、即ちシクロフィリンA(P05092)
2個のスポットがペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼAであることを同定している(図5)。これも図4同様、健康体のCSFと死後のCSFの2−DEスポットマップの拡大図である。シクロフィリンAに対応する基本的なスポットがぺルオキシレドキシン5のスポットの極近傍にある。
【0084】
シクロフィリンAは、抗酸酵素に対する神経保護因子として述べられている(Doyle et
al., Bichem J., 1999)。それはぺルオキシレドキシン酵素に結合し、ペルオキシダーゼの働きに加わることはない(Lee et al., J. Biol. Chem.,2001)。さらに、文献によれば、シクロフィリンAは酸性ストレスに反応して心臓平滑筋(VSMC)内に秘匿され、VSMCの成長を刺激する(Jin et al., Circ. Res., 2000)。これらのことは、シクロフィリンAが心臓疾患のプロセスに関わっていることを示唆する。抗酸酵素Cu/Zuスーパーオキサイドジスムターゼ−1に関連する筋萎縮性側索硬化症(神経変性病状)の家族型との関連も述べられている(Lee et al., PNAS, 1999)。シクロフィリンAは、SOD変異体誘引の細胞消滅に対する防護効果を有するように見える。
【0085】
[実施例4]
−序−
図6から図15に卒中患者の調査を行った結果を示す。ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(UFD1)、RNA結合調節サブユニット(RNA−BP)、ヌクレオチドジホスファートキナーゼA(NDK A)のELISA強度信号を、患者と陰性のコントロール患者の血清サンプルを使って得た。患者からの血清サンプルは、救急病院に到着してから24時間以内、または/および72時間以上経過後に採取し、コントロール患者サンプルと年齢、性別を一致させた。
【0086】
−プロトコル−
ELISAは 96-well Recti-BindTMとNeutrAvidinTMとを塗布したBlack Plates(Pierce, Rockford, IL)を使用して行った。プレートは、まず、NOVAPATHTM洗浄機(BIO-Rad, Hercules, CA)上で、ホウ酸バッファー食塩水(BBS)(100mM H3BO3,25mM Na2B4O7(Sigma, St Luis, MO, USA), 75mM NaCl(Merck, Darmastadt, Germany))で洗浄した。次に、pH7の溶解バッファAで調製された抗体ビオチン結合体(2μg/mL)が50μl加えられ、37℃で1時間インキュベートされた。バッファAの組成は、80%加水分解されたポリビニルアルコール、モル質量9,000-10,000(Aldrich, Milwaukee, WI,USA), MOPS(3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸(Sigma), NaCl, MgC12(Sigma), ZnC12(Aldrich),pH6.90,BSA30%Solution, Manufacturing Grade(Serologjcal Proteins Inc., Kankakee, IL)である。
【0087】
プレートはBBSのプレートウォッシャーで洗浄した。50μlの抗体が加えられ、37℃で1時間インキュベートされた。キャリブレーションカーブを取るため、組み換え型蛋白質抗原が希釈バッファAで各々100,50,25,12.5,6.25ng/mlに希釈された。血清サンプルがバッファAで適切な濃度に希釈される。洗浄ステップ後、50μlのアルカリホスハターゼ結合抗体が適切濃度でバッファAに希釈され、37℃で1時間インキュベートされた。96ウェルのプレートはBBSのプレートウォッシャーで3回洗浄され、50μlの蛍光 Attophos(登録商標)AP Fluorescent Substrate (Promega, Madison, WI)が加えられた。プレートは直ちにSpectraMax GEMINI-XS(Molecuar Devices Corporation, Sunnyvale,CA,U.S.A.)蛍光マイクロタイタープレートリーダー関連蛍光ユニット(RFU)(λexcitation=444 nm, λemission=555 nm)で読み取られた。
【0088】
プレートはSpectraMax GEMINI-XS(Molecuar Devices)蛍光マイクロタイタープレートリーダー(λexcitation=444 nm, λemission=555 nm)で読み取った。結果はRFUユニットに表示され、エンドポイントモード(一回だけの読み取り)か10分の運動モードで読み取った。運動モードは、各ウェル6回のフラッシュを用い、それを平均する、それを各ウェル6回、最小の間隔で読んだ。その結果、読み取り間隔は2分であった。評価するためのスロープを決定した。GraphPad Prism 4 ソフトで、コントロールと卒中グループ間(虚血性プラス出血性、虚血性対出血性)のベストなカットオフ値が求められた。
【0089】
−結論−
図7、10、13に、卒中患者のUFD1、RNA−BP、NDK A各々がコントロール患者と比較して十分に説明されている。各バイオマーカーに対し統計分析がなされ、テストの感度が1特異性の機能を有することを示すROCカーブ(GraphPad Prism 4 ソフト)が得られた(図8、11、14、各々UFD1、RNA−BP、NDK Aに対するもの)。卒中とコントロールとを区別するベストなカットオフ値がこれらのROCカーブから得られた。UFD1、RNA−BP、NDK A各々の感度として94.4%、94.4%、100%、各々の特異性として77.8%、72.2%、83.3%を得た。卒中とコントロールを比較するため、各マーカーに対しノンパラメトリックな(non parametric)マン-ホイットニーテストが行われた。3つのマーカーに対し、非常に低いp値を得た(UFD1とNDK Aはp<0.0001、RNA−BPはp=0.0003)、これは、卒中とコントロールの差が非常に大きいことを意味する。
【0090】
図6で、RNA−BPとNDK Aが発症後たった30分で卒中を検出出来ることに気がつく。これはこれらが非常に早期のマーカーであることを意味する。このことは、病院到着時と72時間後のあいだに信号の減少があることで確認された。患者202と239は到着時(0〜24時間)と72時間後で検査され、全マーカーの信号の大きな減少が見られる。このテスト結果は、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体(Ubiquitin fusion degradation protein 1 homolog)(UFD1)、RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)(RNA−BP)、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA(NDK
A)は、単独か組み合わせ、または他のバイオマーカーとの組み合わせの形で卒中の早期診断に有用であることを示している。
【0091】
[実施例5]
この実施例は、神経変性疾患に含まれる可能性のある遷移後変性症に関わる。対象員数、サンプルの取り扱い、CSFの2−DEは第1実施例と同じである。
【0092】
−2−DEイムノブロッティング分析−
2−DEで分離された蛋白質は、基本的にはTowen等が述べた[22]ように、PVDF膜の上にエレクトロブロッティング(electrobrotted)され、Amido Black で染色され、
水で脱染されるか乾燥される。対象の蛋白質が、特異的な抗体とECL(登録商標)ウェスタンブロット検出試薬(AmerSham BioScienceS, Uppsala, Sweden)を用いて前述[29]したように検出される。次のような抗体が使用された:抗ヒト−プロスタグランデンDシンセターゼ(リポカリンタイプ)ラビットポリクロナール抗体(Cayman chemical, Ann Arbor, MI)、1/250希釈。
【0093】
図16(A)は、死体およびコントロールの2−DEゲル上のスポット強度の比較を示す。45μlの蛋白質がIPGストリップ(pH3.5−10NL、18cm)上にセットされた。2次元目はアンモニア銀で染色された縦階調スラブゲル(vertical gradient slab gel)(9−16%T)上で行われた。Apolipoprotein AIとイタリック体で表示されたものも2つのサンプルで同様のレベルを示した。PGHDのスポットの場所は以前の識別(テスト)[31]から導き出された。死体からのほうのゲルでは、一般的に考えられているPGHDのスポット場所が与えられている。図16(B)は、死体およびコントロールからのCSFで調製された2−DEの免疫検出を示す。2−DEはAと同様に行われた。前述[29]したと同じ免疫検出が、抗ヒト−プロスタグランデンDシンセターゼ(リポカリンタイプ)ラビットポリクロナール抗体とECLTMウェスタンブロット検出試薬を用いて行われた。
【0094】
−結果−
プロスタグランジンDシンセターゼ(PGHD)は、N−グリコシル化による遷移後変性体(post-translationaly modified)として知られる(Hoffman A, et al., J.Neurochem.1994,63,2185-2196)塩基性蛋白(pI=8.37)である。健康な生きている患者からのCSFの2−DEゲル上には、5つのスポットが見られる。死後のCSFで調製された2−DEゲル上では、3つの酸性スポットが強く退行し、付随的に2つの基本スポットが強調されている(図16A)。
【0095】
この異なったスポットがPGHDに対応しているかどうかを確認するため、特異的な抗体を用いてウェスタンブロットを行った(図16B)。得られた結果は、死後のCSFには酸性のPGHDスポットは無く、基本スポットはまだ存在するということが確認された。さらに、Melanie 3 ソフトを用いた2つのゲルのスポット全容積測定では、2つのサンプルでPGHDレベルは同等である。これは、したがって、死後のCSF中でPGHDの脱グリコシル化が起こっているが、トータルのPGHDは一定であることを示している。
【0096】
−文献からのデータ−
ADに罹った患者のCSF中で、PGHDが減少することが見つかっている(Puchades
et al., Brain Res. Mol. Brain Res. 2003,118,140-146)。しかし、研究は2−DEで行われ、かつ酸性スポットのみが分析された。死体からのCSFに関する我々の結果では、分析したサンプル中で脱グリコシル化が起こっている可能性があり、結果、酸性スポットは消滅するがトータルの蛋白質量は変わらない。
【0097】
毛管等電合焦法(capillary isoelectric focusing)を用いて、Hiraokaらがさまざまな神経疾患に関連してCSFのPGHDが荷電微小不均一性(charge microheterogeneity)に変化が起こることを確認した(Hiraoka A et al.,Electrophoresis 2001,22,3433-3437)。ADや病理的脳萎縮を伴うPD、あるいは多硬化症で、塩基形/酸性形の比が増大することが見出された。このことから、これら遷移後変性(post tlanslational modification)がN−グリコシル化における変化とリンクしていることを示唆された。
【0098】
−クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)患者のCSFにおけるPGHD遷移後変性(PTM)パターン−
CJD患者と健康なコントロールから集めたCSFサンプル内のPGHDのPTMパタ
ーンを比較した。前述したように、蛋白質は2−DEで分離され、PVDF膜状に電気ブロッティングされ、PGHDが特異的抗体で検出された。CSFサンプルはランダムに集められた。コントロール患者は脳障害と関係の無いように、精密検査された。CSFサンプルは採取後直ちに遠心分離され、小分けされて分析するまで−20℃で保存された。
【0099】
図17はその結果で、ミニ2−DEのプロスタグランジンD2のスポット強度を、ヤコブ病患者のCSFで調製したゲルと健康な患者のCSFで調製したゲルとで比較したものである。45μlの蛋白質がIPGゲル上(pH3−10、7cm)にセットされた。2次元目は、縦階調スラブゲル(vertical gradient slab gel)(12%T)である。抗ヒトPGHD(リポカリンタイプ)ウサギポリクロナール抗体(Cayman chemical, Ann Arbor, MI)とECLTMウェスタンブロット検出試薬(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を用いて免疫検出が行われた。
【0100】
結果は、CJD患者のCSF中のPGHDのPTMパターンは、コントロールのものと明らかに異なっており、4つの殆どの酸性スポットが強い退行を示している(図17)。CJT患者のパターンは死んだCSFのものと良く似ている。これらのデータは、PGHDのPTMパターンの変化の、神経疾患マーカーとしての関心を支持する。
【0101】
[実施例6]
この実施例は、卒中とコントロール患者における、UFDP1の血清レベルを示す追加のデータを示す。図19は、コントロールと死んだ患者のCSFにおけるUFDP1のレベルを示す。追加データは、2つの患者とコントロールの群から得た、すなわち、ジュネーブのより小さい群とアメリカからはより広範囲からの群である。本例と、次の例7,8における分析手法は同じである、ただし、用いられる抗体の特異性は、問題とする蛋白質毎で異なっている。各検討の方法は例4で示したのと同様である。
【0102】
Black Plates(Pierce, Rockford, IL)をコートした96ウェルのRiacti-Bind(登録商標) NeutrAvidin(登録商標)を用いてELISAを行った。プレートは、まずNOVAPATH(登録商標) ウォッシャー(Bio-Rad, Hercules, CA)を使って、ホウ酸バッファ食塩水pH8.4(BBS)(100mM H3BO3,25mM Na2B4O7(Sigma, St Louis, MO, USA)、75mM NaCl(Merk, Darmastadt, Germany))中で洗浄された。次に、pH7希釈バッファAで調製された、関連バイオマーカーに特異性のある抗体−ビオチン結合体(2μg/mL)50μlを加え、37℃下で1時間インキュベーションした。バッファAの組成は;80%加水分解されたポリビニルアルコール、モル質量9,000-10,000(Aldrich, Milwaukee, WI,USA),MOPS(3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸(Sigma),NaCl,MgCl2(Sigma),ZnCl2(Aldrich),pH6.90,BSA30%Solution, Manufacturing Grade(Serological Proteins Inc.,Kankakee, IL)である。 次に、プレートをプレートウォッシャーでBBS中で3回洗浄した。抗原または血清を50μl加え37℃下で1時間インキュベーションした。キャリブレーションカーブを取るため、組み換え型蛋白質抗原が希釈バッファAで各々100,50,25,12.5,6.25,3.125,1.56ng/mlに希釈された。血清サンプルがバッファAで適切な濃度に希釈される。更なる洗浄ステップ後、50μlの関連バイオマーカーに特異性のあるアルカリホスハターゼ結合抗体が適切濃度でバッファAに希釈され、37℃で1時間インキュベートされた。96ウェルのプレートはBBSのプレートウォッシャーで3回洗浄され、50μlの蛍光 Attophos(登録商標)AP Fluorescent Substrate
(Promega, Madison, WI)が加えられた。プレートは直ちにSpectraMax GEMINI-XS (Molecuar Devices Corporation, Sunnyvale,CA,U.S.A.)蛍光マイクロタイター(microtiter)プレートリーダーで読み取られた。
【0103】
プレートは、蛍光をSpectraMax GEMINI-XS(Molecuar Devices)蛍光マイクロタイタープレートリーダー(λexcitation=444 nm, λemission=555 nm)で読み取った。結果はRFU
ユニットに表示され、エンドポイントモード(一回だけの読み取り)か10分の運動モードで読み取った。運動モードは、各ウェル6回のフラッシュを用い、それは平均され、それを各ウェル6回、最小の間隔で読んだ。その結果、読み取り間隔は2分であった。評価するためのスロープを決定した。GraphPad Prism 4 ソフトで、コントロールと卒中グループ間(虚血性プラス出血性、虚血性対出血性)のベストなカットオフ値をROCカーブによって決定した。
【0104】
結果を図20に示す。
[実施例7]
本実施例は、ポリペプチドがRNA−BPであることを除けば、例6に符合する。図21は、コントロールと死体患者のCSF中のRNA−BPレベルを示す。図22は、それぞれ卒中患者とコントロールを含む3回の検討における、ELISAによるRNA−BP血清中濃度を示す。
【0105】
[実施例8]
本例は、ポリペプチドがNDKAであることを除けば、例6に符合する。図23は、コントロールと死体患者のCSF中のNDKAレベルを示す。図24は、ジュネーブとアメリカの卒中患者およびコントロール群の、ELISAによるNDKA血清中濃度を示す。
【0106】
[実施例9]
各実施例6,7,8のデータからは、単なる卒中とコントロール間の識別に加えて、脳血管事故からサンプル採取までの時間の関係を分析することが出来る、または代替的に、虚血性、出血性、または一過性虚血性脳卒中(TLA)という卒中のタイプに関連付けて分析することが出来る。それぞれの分析を図25aと図25bに示す、また、卒中の診断において死んだCSFのマーカーが有用であることが示されている。このことは、特に事故後3時間以内に卒中の診断を行いTPAのような血栓除去薬を投与することが大切である臨床処置と関係する。また、テストは出血性と虚血性の卒中を識別出来ることが大切で、TPAは虚血性の処置に適しているが、出血性の卒中患者には破滅的な効果を与えてしまう可能性がある。
【0107】
[実施例10]
各死んだCSFマーカーが各々卒中診断に良い結果を示しているが、商品としては数種の蛋白質レベルの測定を要求される可能性がある。この「パネル」手法は2つの方法で行うことが出来る。より単純な方法としては、個別のマーカーに対する抗体が用意され、マイクロタイタープレートのウェルにコートされる。信号強度は各独立した強度の総和とすることが出来る。しかしこの場合、各マーカーの個別のレベルを決めることは出来ない。この方法で意味のあるカットオフ値を設定することは難題である。しかし、この方法はもっともユーザーフレンドリーな商品を提供する。
【0108】
図26に本例で使用されたマーカーを要約した。実験結果を図27に示す。死んだCSF蛋白質UDF1,RNA−BP,NDKA,H−FABPに対する各抗体は、例4のように同じ濃度で希釈された。しかし、これら抗体液は等量で混合され、上述した一つの検体標本中では最初の4分の1の濃度に希釈された。プロトコルは以下のようである。
【0109】
パネルアルゴリズムの問題を解決するために、直接混合した4つの抗体を各ウェル内で検査した。最初の抗体コートのステップで、各バイオマーカー特異性 ビオチン−抗体結合体を1ウェル当り12.5μLとした以外、プロトコルは各抗体に対して前述した(上記)のとまったく同じである。希釈バッファAで初期濃度が100、50,25.12.5、6.25、3.125ng/mlに調製された4つの組み換え型蛋白質抗原、UDF1,RNA−BP,NDKA,H−FABPを、キャリブレーションカーブを得るため同じプ
レート上のウェルに各々12.5μl入れ、スタンダードカーブが同様に構築された。血清サンプルは各バイオマーカーに対すると同じように、同じ希釈、同じ容量(ウェル当り50μl)用いられた。個別分析と同じ、バイオマーカー特異性 抗体−アルカリホスハターゼ結合体を用いて捕捉抗原の検出を行った、すなわち、スタンダード用および血清サンプル用の各ウェルに4つのバイオマーカー特異性抗体−アルカリホスハターゼ結合体が等量(12.5μl)ずつ加えられた。蛍光の測定は、上記の例で示した単一のバイオマーカー分析で述べたように行われた。
【0110】
卒中10とコントロール10(年齢性別非合致)の2倍希釈血清サンプルがテストされた(図27)。この試験では、感度100%特異性80%が得られた。2つの偽陽性サンプルは、患者のコントロール368,450に対応し、前立腺がんと脳障害候補を示す。
【0111】
この特異な例において、蛍光信号はアルカリホスハターゼ結合体を分析の検出サイドに使った各バイオマーカー特異性抗体によって発生した信号の総和に対応し、アルカリホスハターゼ結合体を分析の検出側に使った場合は全体の中で単一のバイオマーカーの相対的貢献を決めることは不可能である。本発明の一つの実施例としては、各バイオマーカー特異性抗体を励起放射波長が十分に異なる異なった蛍光団でラベリングすることが可能で、各抗体のレベルを干渉なしに検出できるということがある。この場合、一回のテストの一つのサンプルで4つまでの異なったバイオマーカーのレベルを正確に定量出来、サンプルの必要量の削減やスループットの向上をもたらす。
【0112】
[実施例11]
ある環境下では、単一のウェルの中で多数検体のレベルを測定することが望ましくないかもしれない。例えば、ある特殊な診断をする場合に必要な個別蛋白質の絶対レベルとか、複数蛋白質間のレベル比などである。この状況では、各検体レベルを別々の分析で測定することが望ましいかもしれない。各患者ごとの特殊な診断に供するために、この多因子のデータセットを解釈するための予測アルゴリズムが用いられる。この例では、異なった多検体バイオマーカーパネルの理論的な性能を予測するため統計アルゴリズムを使用した。
【0113】
卒中の診断のため、上記さまざまな例で得られた個別のバイオマーカーレベルのデータセットを用いて、死んだCSF蛋白質UDF1、RNA−BP、NDKA、H−FABPの各組み合わせにおける真陽性および真陰性の比率を専用アルゴリズムを使用して求めた。分析のため、サンプルの群(UDF1、RNA−BP、NDKA、H−FABPに対し、18コントロール、18卒中)を員数ランダムの2つのグループに分けた。80%のサンプルは、閾値トレーニング用として慎重に(by the technique of naive bayes)分析され、残りの20%は1000倍に希釈され、各マーカーおよびマーカーの組み合わせに対する閾値(感度と特異性)を評価するため用いられた。
【0114】
アルゴリズムが単一のマーカーに適用されたときは、感度および特異性は観察値と比較可能である。このデータセットの感度、特異性(カッコ内の数値)は、前述のROCカーブから決定された最適カットオフ値に基づいて計算されている。以下のデータの中で、カッコ内の最初の数値は標準偏差に該当する(例、0.93±0.15)。「1蛋白質」データの第2番目のカッコ内数値は、アルゴリズムを用いないで単純ROCカーブ(GraphPad Prism)を用いて得た感度(SE)および特異性(SP)に対応する。SE、SP値は、アルゴリズムありとなしの結果を比較するために示してある。
【0115】
アルゴリズム分析の結果は以下のようであった。

1蛋白質
トレーニングセットにおけるUFD1の真陽性比:0.93(0.15) (SE94%)
トレーニングセットにおけるUFD1の真陰性比:0.74(0.24) (SP78%)
トレーニングセットにおけるRNA−BPの真陽性比:0.85(0.21)(SE94%)
トレーニングセットにおけるRNA−BPの真陰性比:0.73(0.23)(SP72%)
トレーニングセットにおけるH−FABPの真陽性比:0.47(0.29)(SE39%)
トレーニングセットにおけるRNA−BPの真陰性比:0.80(0.23)(SP100%)
トレーニングセットにおけるNDK Aの真陽性比:0.79(0.16) (SE100%)
トレーニングセットにおけるNDK Aの真陰性比:0.89(0.16) (SP83%)

2蛋白質
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BPの真陽性比:0.90(0.17)
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BPの真陰性比:0.69(0.25)
トレーニングセットにおけるUFD1/H−FABPの真陽性比:0.82(0.22)
トレーニングセットにおけるUFD1/H−FABPの真陰性比:0.83(0.20)
トレーニングセットにおけるUFD1/NDK Aの真陽性比:0.92(0.16)
トレーニングセットにおけるUFD1/NDK Aの真陰性比:0.79(0.21)
トレーニングセットにおけるRNA−BP/H−FABPの真陽性比:0.81(0.24)
トレーニングセットにおけるRNA−BP/H−FABPの真陰性比:0.73(0.24)
トレーニングセットにおけるRNA−BP/NDK Aの真陽性比:0.91(0.16)
トレーニングセットにおけるRNA−BP/NDK Aの真陰性比:0.83(0.21)
トレーニングセットにおけるH−FABP/NDK Aの真陽性比:0.77(0.27)
トレーニングセットにおけるH−FABP/NDK Aの真陰性比:0.84(0.20)

3蛋白質
トレーニングセットにおけるRNA−BP/NDK A/H−FABPの真陽性比:0.96(0.11)
トレーニングセットにおけるRNA−BP/NDK A/H−FABPの真陰性比:0.83(0.20)
トレーニングセットにおけるUFD1/NDK A/H−FABPの真陽性比:0.92(0.17)
トレーニングセットにおけるUFD1/NDK A/H−FABPの真陰性比:0.83(0.21)
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BP/NDK Aの真陽性比:0.95(0.14)
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BP/NDK Aの真陰性比:0.82(0.20)
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BP/H−FABPの真陽性比:0.93(0.15)
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BP/H−FABPの真陰性比:0.75(0.23)

4蛋白質
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BP/H−FABP/NDK Aの真陽性比:0.93(0.13)
トレーニングセットにおけるUFD1/RNA−BP/H−FABP/NDK Aの真陰性比:0.73(0.23)

図28は、本例で4つのバイオマーカーの内2つの組み合わせの場合を図示したものである。図には診断のために決定したカットオフポイント(縦、横の線)を示す。
【0116】
[実施例12]
死後CSFマーカーであるUFD1,RNA−BPおよびNDK Aに関して、ジュネーブおよびUSAでさらに大規模な研究を行った。サンプルは、上記の例で前述したようなELISAを実施した(ジュネーブおよびUSA双方の検査で)。結果を図29〜38に示す。
【0117】

参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、対照(コントロール)グループ、急性心筋梗塞(AMI)のグループ、急性卒中の3グループH-FABPの分析結果(縦軸はOD単位)である。
【図2】図2は、急性心筋梗塞患者のグループのH-FABPレベルを、卒中後異なった時間間隔で連続検知した結果である。
【図3】図3は、健全なCSFと死後のCSFに対する2−DEマップの部分を示し、調製サブユニット結合RNAまたはDJ-1蛋白質に対応するスポットが上向きの矢印で示されている。健全なCSFと死後のCSFの2−DEマップの拡大図が示されている。45μgの蛋白がIPGゲル(ph 3.5-10 NL, 18cm)上に載せられた。第2のディメンジョン(dimension)は、縦階調のスラブゲル(vertical gradient slab gel)(9-16% T)である。ゲルは銀染色されている。RNA結合調節サブユニット(RNA binding regulatory subunit)またはDJ-1蛋白質に対応するスポットが上向きの矢印(赤)で示されている。
【図4】図4は、健全なCSFと死後のCSFに対する2−DEマップの部分を示し、ペルオキシレドキシン5に対応するスポットが右側の矢印で示されている。健全なCSF死後のCSFの2−DEマップの拡大図が示されている。45μgの蛋白がIPGゲル(ph 3.5-10 NL, 18cm)上に載せられた。第2のディメンジョン(dimension)は、縦階調のスラブゲル(vertical gradient slab gel)(9-16% T)である。ゲルは銀染色されている。ペルオキシレドキシン5に対応するスポットが右側の矢印(赤)で示されている。
【図5】図5は、健全なCSFと死後のCSFに対する2−DEマップの場所を示し、ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)に対応するスポットが右側2個の矢印で示されている。健全なCSFと死後のCSFの2−DEマップの拡大図が示されている。45μgの蛋白がIPGゲル(pH 3.5-10 NL, 18cm)上に載せられた。第2のディメンジョン(dimension)は、縦階調のスラブゲル(vertical gradient slab gel)(9-16% T)である。ゲルは銀染色されている。ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)に対応するスポットが右側2個の矢印(赤)で示されている。
【図6】図6は、卒中患者の調査で得られたマーカーポリペプチドのELISA法の強度値を示す。
【図7】図7は、上記検査からの血清サンプル中のUFD1の検出を示す。
【図8】図8は、図7のデータからのUDF1のROCカーブを示す。
【図9】図9は、図7に対応するUDF1の検出を示す。
【図10】図10は、上記調査の血清サンプル中のRNA-BPの検出を示す。
【図11】図11は、図10のデータからのRNA-BPのROCカーブを示す。
【図12】図12は、図10に対応するRNA-BPの検出を示す。
【図13】図13は、上記調査からの血清サンプル中のNDK Aの検出を示す。
【図14】図14は、図13のデータからのNDK AのROCカーブを示す。
【図15】図15は、図13に対応するNDK Aの検出を示す。
【図16】図16は、プロスタグランジンDシンターゼのレベルを表す、健全なCSFと死後のCSFに対する2−DEマップの場所を示す。
【図17】図17は、CJD患者からと、コントロールとして健康人から取ったCSFで調製されたミニ2−DEゲル上でのプロスタグランジンDシンターゼのスポット強度を示す。
【図18】図18は、卒中患者とコントロールグループのH-FABPに対するELISA法の強度値を示す。
【図19】図19は、コントロールおよび患者グループからのCSFで調製されたミニ2−DEゲル上でのUFDP-1のスポット強度を示す。
【図20】図20は、ジュネーブおよび米国の2集団の卒中患者のUFDP-1血清濃度をELISA法で測定したものを示す。
【図21】図21は、コントロールおよび疾患患者から得たCSFで調製したミニ2−DEゲル上のRNA-BPスポット強度を示す。
【図22】図22は、コントロールおよび卒中患者の3回の調査におけるRNA-BP血清濃度をELISA法で測定したものを示す。
【図23】図23は、コントロールおよび疾患患者から得たCSFで調製したミニ2−DEゲル上のNDK Aスポット強度を示す。
【図24】図24は、ジュネーブおよび米国の2集団の卒中患者のNDK A血清濃度をELISA法で測定したものを示す。
【図25a】図25aは、発症時間と、UFDP1,RNA-BPおよびNDK Aの卒中マーカー(SM)濃度を示す。各々コントロール患者、脳血管事故から3時間以内の卒中患者、脳血管事故から3時間以降の卒中患者に対するものである。
【図25b】図25bは、UFDP1,RNA-BPおよびNDK Aの卒中マーカー(SM)濃度を卒中タイプ別に示す。各々コントロール患者、出血性脳卒中患者、一過性虚血性脳卒中(TLA)患者、虚血性脳卒中患者に対するものである。
【図26】図26は、卒中用の血清用初期マーカーの集約情報を一覧にしたものである。
【図27】図27は、UFDP1,RNA-BP、NDK AおよびH-FABPを一つのウェルに混合した場合のELISA法の強度を示す。
【図28】図28は、図27における4つのバイオマーカーのうち2つの組み合わせと、診断時のカットオフ値を示す。
【図29A】図29Aは、37人の卒中患者と、年齢性別が一致するコントロール患者37人の血清サンプルに関する追加検査の情報を示す。診断(Diag)は次のように表されている、すなわち、I(虚血性脳卒中)、H(出血性脳卒中)、TLA(一過性虚血性脳卒中)、ctl(コントロール)。UFDP1,RNA-BPおよびNDK AのELISA法による濃度が示されている。ELISA法は前述したように行われた。
【図29B】図29Bは、37人の卒中患者と、年齢性別が一致するコントロール患者37人の血清サンプルに関する追加検査の情報を示す。診断(Diag)は次のように表されている、すなわち、I(虚血性脳卒中)、H(出血性脳卒中)、TLA(一過性虚血性脳卒中)、ctl(コントロール)。UFDP1,RNA-BPおよびNDK AのELISA法による濃度が示されている。ELISA法は前述したように行われた。
【図30】図30は、ジュネーブでテストした中から37人の卒中患者と37人のコントロール患者の血清サンプルを使ったUDFA1に対する上記追加テストの結果を示す。また、米国―1(コントロール患者は年齢性別が一致していない)のUDFA1に対するデータである。
【図31】図31は、ジュネーブでテストした中から37人の卒中患者と37人のコントロール患者の血清サンプルを使ったRNA-BPに対する上記追加テストの結果を示す。また、米国―1(コントロール患者は年齢性別が一致していない)および米国―2(コントロール患者は年齢性別が一致している)のRNA-BPに対するデータである。
【図32】図32は、米国―3の633人の患者に関するPNA-BPの大規模検査の結果を示す。
【図33】図33は、米国―3のRNA-BPに関する統計分析(クラスカル-ウォリス法)を示す。
【図34】図34は、ジュネーブでテストした中から33人の卒中患者と33人のコントロール患者の血清サンプルを使ったNDKAに対する上記追加テストの結果を示す。また、米国―1(コントロール患者は年齢性別が一致していない)のNDKAに対するデータである。
【図35】図35は、米国―3の622人の患者に関するNDKAの大規模検査の結果を示す。
【図36】図36は、米国―3のNDKAに関する統計分析(クラスカル-ウォリス法)を示す。
【図37】図37は、発症時間に関する働きとしての卒中マーカー濃度を示す(ジュネーブデータ、新たな37人の卒中患者と37人のコントロール患者の血清サンプル)。
【図38】図38は、米国―1のデータを用いた、卒中タイプに関する働きとしての卒中マーカー濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳障害関連疾患もしくはその可能性を、罹病していると疑われる対象において診断する方法であって、前記対象から取った体液サンプル中の、A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)の中から選択される、少なくとも1つのポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を検出することを含む方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが脳障害関連疾患である対象の体液中と脳障害関連疾患でない対象の体液中に差異的に含まれ、また、前記サンプル中のポリペプチドの濃度が脳障害関連疾患と一貫性を持っているかを決定することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記濃度の検出または決定にポリペプチドの抗体を用いる請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記体液が、脳脊髄液、血漿、血清、血液、涙、尿、または唾液である請求項1から3の内いずれかの方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドが脳障害関連疾患である対象の体液中に存在して、脳障害関連疾患でない対象の体液中には存在しない、そのため体液サンプル中のポリペプチドの存在が脳障害関連疾患の指標となる請求項1から4の内いずれかの方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが脳障害関連疾患である対象の体液中に存在しないで、脳障害関連疾患でない対象の体液中には存在する、そのため体液サンプル中のポリペプチドの非存在が脳障害関連疾患の指標となる請求項1から4の内いずれかの方法。
【請求項7】
前記サンプルの中に複数のペプチドが検出される請求項1から6の内いずれかの方法。
【請求項8】
脳障害関連疾患に冒された対象と脳障害関連疾患に冒されていない対象の体液中で、ポリペプチドの転移後の変性し易さが差異的であって、サンプル中のポリペプチドの転移後変性を検出し、それが脳障害関連疾患の診断と一致するかどうかを決定することを含む請求項1から7の内いずれかの方法。
【請求項9】
前記転移後変性が、N−グリコシル化を含む請求項8の方法。
【請求項10】
前記脳障害関連疾患が卒中であって、前記ポリペプチドがユビキチン融合分解蛋白質1同族体である請求項1から9の内いずれかの方法。
【請求項11】
前記脳障害関連疾患が卒中であって、前記ポリペプチドがRNA結合調節サブユニットである請求項1から9の内いずれかの方法。
【請求項12】
前記脳障害関連疾患が卒中であって、前記ポリペプチドがヌクレオシドジホスファートキナーゼAである請求項1から9の内いずれかの方法。
【請求項13】
ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、RNA結合調節サブユニット、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、H−FABPに対する抗体のうち2個以上のマーカーを選択し、ELISAマイクロプレートの一つのウェルに用いる請求項10から12の内いずれかの
方法。
【請求項14】
一つのウェルに上記4つのマーカーをすべて用いる請求項13の方法。
【請求項15】
ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、RNA結合調節サブユニット、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、H−FABPから選択された2個以上のポリペプチドが個別に分析され、診断のために予測アルゴリズムを用いる請求項10から12の内いずれかの方法。
【請求項16】
A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体、または上記ポリペプチドの組み合わせの、脳障害関連疾患に関連する診断、予後、および治療の応用への使用方法。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、脳障害関連疾患に冒されている対象の体液と脳障害関連疾患に冒されていない対象の体液とで差異的に含まれている請求項16記載の使用方法。
【請求項18】
A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質の、脳障害関連疾患に関する診断、予後、および治療の応用への使用方法。
【請求項19】
A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質の組み合わせを用いる請求項18記載の使用方法。
【請求項20】
前記物質が、抗体または抗体片である請求項18または19記載の使用方法。
【請求項21】
前記物質が、A−FABPに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項22】
前記物質が、E−FABPに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項23】
前記物質が、PGP9.5に対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項24】
前記物質が、GFAPに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項25】
前記物質が、プロスタグランジンDシンターゼに対する抗体である請求項20記載の使
用方法。
【請求項26】
前記物質が、ニューロモジュリンに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項27】
前記物質が、ニューロフィラメントLに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項28】
前記物質が、カルシフォシンに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項29】
前記物質が、RNA結合調節サブユニットに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項30】
前記物質が、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体に対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項31】
前記物質が、ヌクレオシドジホスファートキナーゼAに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項32】
前記物質が、グルタチオンSトランフェラーゼPに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項33】
前記物質が、カテプシンDに対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項34】
前記物質が、DJ−1蛋白質に対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項35】
前記物質が、ペルオキシレドキシン5に対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項36】
前記物質が、ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)に対する抗体である請求項20記載の使用方法。
【請求項37】
脳障害関連疾患の診断に用いられる分析装置であって、A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP、PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質を含んだ場所を持つ固形基板を含む分析装置。
【請求項38】
前記固形基板が、A−FABP、E−FABP、H−FABP、B−FABP,PGP9.5、GFAP、プロスタグランジンDシンターゼ、ニューロモジュリン、ニューロフィラメントL、カルシフォシン、RNA結合調節サブユニット、ユビキチン融合分解蛋白質1同族体、ヌクレオシドジホスファートキナーゼA、グルタチオンSトランフェラーゼP、カテプシンD、DJ−1蛋白質、ペルオキシレドキシン5、およびペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)から選択されたポリペプチドまたはその変異体もしくは同族体を認識する、またはそれに結合する、またはそれと親和性のある物質を各々含む複数の場所を有する請求項37記載の分析装置。
【請求項39】
前記物質が抗体または抗体片である請求項37または38記載の分析装置。
【請求項40】
前記各抗体が特徴的に配置され、各ポリペプチド、または、どんなポリペプチドの組み合わせでも読み取りができる請求項39記載の分析装置。
【請求項41】
A−FABPに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項42】
E−FABPに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項43】
PGP9.5に対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項44】
GFAPに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項45】
プロスタグランジンDシンターゼに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項46】
ニューロモジュリンに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項47】
ニューロフィラメントLに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項48】
カルシフォシンに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項49】
RNA結合調節サブユニットに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項50】
ユビキチン融合分解蛋白質1同族体に対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項51】
ヌクレオシドジホスファートキナーゼAに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項52】
グルタチオンSトランフェラーゼPに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項53】
カテプシンDに対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項54】
DJ−1蛋白質に対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項55】
ペルオキシレドキシン5に対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項56】
ペプチジル−プロリル・シス−トランス・イソメラーゼA(シクロフィリンA)に対する抗体を含む請求項37から40の内いずれか記載の分析装置。
【請求項57】
請求項37から56記載のいずれかの分析装置と、対象から採取した体液サンプル中の一つ以上のポリペプチドの量を検出する手段とを含む、脳障害関連疾患診断に用いるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25a】
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【図25b】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2007−506086(P2007−506086A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526704(P2006−526704)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/GB2004/050012
【国際公開番号】WO2005/029088
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506049655)エレクトロフォレティックス リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ELECTROPHORETICS LIMITED
【Fターム(参考)】