説明

腎臓濾過および腎臓通過中のリソソーム分解に対して耐性を示す抗微生物性荷電ポリマー、その組成物および使用方法

哺乳動物における微生物感染を、硫酸化多糖を用いて治療または予防する方法および組成物であって、この硫酸化多糖における硫酸化の程度が、構成している硫酸基と、感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効であり、かつこの硫酸化多糖が、上記哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内で抗微生物活性を保持する方法および組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の微生物感染を、硫酸化多糖を用いて治療または予防する方法に関する。より詳細には、本発明は、硫酸化が特定範囲のパーセントである、荷電され、かつ柔軟な硫酸化多糖の治療上有効な量を、微生物感染の治療、予防または管理のために、ヒト患者の血流、リンパ系、および/または細胞外間隙に導入する方法であって、特に、上記範囲が、硫酸基と、感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効であり、上記硫酸化多糖が、上記哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内で抗微生物活性を保持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電多糖、特に硫酸化多糖は、生体外における強力な抗微生物活性が実証されている(Babaら、Antiviral Res 9:335〜343、1988年;Itoら、Antiviral Res. 7(36):1〜367、1987年)。例えば、デキストラン硫酸、ヘパリン、ペントサンポリ硫酸などの硫酸化多糖は、HIV、パラミクソウイルス、サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、セムリキウイルス(Luscher-Mattliら、Arch Virol 130:317〜326、1993年)、および単純ヘルペスウイルス(Babaら、Antimicrob. Agents Chemotherapy 32:1742〜45、1988年;Pancheva、Antiviral Chem Chemotherapy 4:189〜191、1993年)の、生体外における強力な阻害剤であることが報告されている。しかし、生体内では、これら公知の化合物は残念なほどに活性が低い。
【0003】
Itoら、Antiviral Res. 7: 361〜367、1987年、Deringerら(米国特許第5153181号)、ならびにUenoおよびKuno、Lancet 2:796〜97、1987年によって、まずデキストラン硫酸およびヘパリンがHIVの複製を生体外で阻害すると報告された。その後、他のいくつかの硫酸化多糖、例えば、ペントサン硫酸(Babaら、Antiviral Res 9: 335〜343、1988;Biesertら、Aids 2(6):449〜57、1988年)、フチオダン(fuciodan)(Babaら、Antiviral Res 9:335〜343、1988年)、ラムダ、カッパ、およびイオタカラジーナン(Babaら、Antiviral Res 9: 335〜343、1988年)、レンチナン硫酸(Yoshidaら、Biochem. Pharmacol. 37 (15):2887〜91、1988年)、マンナン硫酸(Itoら、Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 8: 191〜193、1989年)、デキストリン硫酸(Itoら、Antiviral Chem. Chemother. 2: 41〜44、1991年)、スルホエベルナン(sulfoevernan)(Weilerら、J Gen Virol 71:1957〜1963、1990年)、ならびに硫酸化シクロデキストリン(Scholsら、J Acquired Immune Def. Syndr 4: 677〜85、1991年)が、それらそれぞれの細胞毒性閾値以下であると考えられる濃度でHIVの複製を阻害することが示された。しかし、これらの化合物はすべて、生体内で効力がないと判明しており、高濃度では、血小板減少症、中枢神経系副作用、抜け毛、胃腸痛、抗凝血、および同様の症状を引き起こす(Flexnerら、Antimicrob Agents Chemotherapy 35:2544〜2550、1991年;Abramsら、Annals of Internal Medicine (1989) 110:183〜188;Hiebertら、J. Lab & Clin. Med. 133:161〜170 (1999))。
【0004】
特定の硫酸化多糖化合物では、抗菌活性(Daltonら、Bur J Biochem 195:179〜184、1991;Zarchaら、Current Microbiol. 34:6〜11、1997年;Pancakeら、J Cell Biol 117:1251〜1257、1992年;Clarkら、Glyco J 14:473〜9、1997年)、抗クラミジア活性(Heroldら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 41:2776〜2780、1997年、ならびにSuおよびCaldwel, Infection and Immunity 66:1258、1991年)、および抗寄生虫活性も実証されている。抗微生物活性および抗寄生虫活性が、再度、生体外で観測されたが、生体内ではこれらの化合物に効力がないことが判明した(Daltonら、Eur J Biochem 195:179〜184、1991年;Pancakeら、J Cell Biol 117:1251〜1257、1992年;Clarkら、Glyco J 14:473〜9,1997年)。
【0005】
従来のデキストラン硫酸、または市販のデキストラン硫酸は、硫酸化のパーセントが約17〜22%である。硫黄含有量を増大させると、この物質の活性が増強されることが広く認められている。例えば、硫黄含有量を増大させると、抗凝血活性が増強される(Hirataら、Biosci. Biotech. Biochem. 58(2):406〜407、1994年)。同様に、硫酸化多糖の硫黄含有量を増大させると、生体外におけるこれらの抗ウイルス活性が増強されることが広く認められている。例えば、Witvrouwら、General Pharmacology 29 (4): 497〜512、1997年;Nakashimaら、Jpn. J. Cancer Res. (Gann) 78:1164〜68、1987年;およびBabaら、J AIDS 493〜499、1990年を参照のこと。再度これらの研究でも、硫酸化の増加に伴った、硫酸化多糖における生体外活性の著しい増大が実証されたが、生体内における効果は依然として認められなかった。実際のところ、高度に硫酸化された化合物における、生体内効果の欠如、および生体内毒性は、現在まで解決されない問題であった。
【0006】
硫酸化のパーセントが低い硫酸化多糖に関して、特定の使用を目的とした研究が限られた数あったが、これらの物質は、それらの分子量、および硫酸化のパーセントの両方に関して特徴付けされていない。注目すべきことに、これらの物質は、硫酸化が17〜22%である多糖より、レトロウイルスに対する活性が低いと報告されている(同上)。さらに、欧州特許出願第0066379A2号に示されるように、特徴付けが不十分な(少しでも特徴付けされているとしたら)低分子量調製物に関して、ヘルペスウイルスに対する活性の研究が動物で行われ、限定的な成功がもたらされている。Pancheva SN、Antiviral Chem Chemotherapy 4:189〜191、1993年も参照のこと。
【0007】
デキストラン硫酸に生体内で活性がないことの主な理由の1つは、この物質が安定でないことにある。これに関しては、いくらかの指摘が以前に発表されている。トリチウム標識された分子量8000のデキストラン硫酸は、ラットの循環血液中で6〜24時間を越える時間中に脱重合されるようである(Hartman NR、Johns DG、Mitsuya H. AIDS Res Hum Retroviruses 6: 805〜811、1990年)。ヨウ化されたヘパリンおよびペントサンポリ硫酸は、ヒトにおける循環から迅速に除去され、脱硫酸された形態で帰還する(MacGregor IR、Dawes J、Paton L、Pepper DS、Prowse CV、Smith M.、Thromb Haem 51:321〜325、1984年)。
【0008】
硫酸化を増強するか、または従来物質の使用を改変することによって、生体内でのデキストラン硫酸の抗ウイルス活性を改善することにかなりの努力がそそがれた。一研究においては、デキストラン硫酸は経口吸収が悪いと報告されていることを考慮して、徴候的なHIV感染を患っている被験者に、最高14日間に及んで、持続注入によってデキストラン硫酸を許容される用量の最大限まで投与した(Flexnerら、Antimicrob Agents Chemotherapy 35:2544〜2550、1991年)。デキストラン硫酸の持続静脈内注入は毒性であることが判明した。この筆者は、毒性があること、および生体内におけるいかなる有益な影響の実証もなかったことの結果として、デキストラン硫酸がHIV治療における有益な効果を有する可能性は低いと結論した(同上)。実際に同筆者は、「症候性のHIV感染の治療として、非経口デキストラン硫酸をさらに臨床開発してもなんら保証がなく、有害であることが判明するかもしれない。この研究の結果に基いて、他のポリ硫酸化ポリアニオンの臨床評価においても慎重であることを勧める。」(同上、2549ページ)と警告した。
【0009】
本出願人は、糸球体内皮細胞によるデキストラン硫酸のプロセシングに関する主要な研究において、通常には、ヘパリン様多糖などの高度に硫酸化された多糖を認識するであろう細胞表面受容体に、デキストラン硫酸が結合することを発見した。この結合によって、デキストラン硫酸は、エンドサイトーシスされ、脱硫酸化されるが、リソソームスルファターゼによる脱重合はされず、脱硫酸化されたデキストラン硫酸としてエキソサイトーシスされる(Vyasら、Arch Biochem Biophys. 332 (2):205 12、1996年)。細胞によるデキストラン硫酸の摂取およびエンドサイトーシスは、グルコース残基あたりの硫黄含有量、すなわち硫酸置換の程度に決定的に依存していることが判明した。硫黄が13%より多いと、糸球体内皮細胞による摂取が相当量あり、一方、硫黄が13%より少ないと、摂取およびエンドサイトーシスが最小限となった。これは、ある特定の決定的な硫黄含有量、すなわち多糖糖鎖上の決定的な硫酸置換電荷密度を有する荷電多糖は、循環の際に接触する細胞によるプロセシングが異なっているかもしれないことを意味する。体内のどの器官でも、特にHIV産生が主として行われるリンパ管では、これらの細胞受容体認識、エンドサイトーシス、および分解の過程を模倣することによって、デキストラン硫酸における生体内での抗ウイルス剤としての活性が不活性となる。硫黄が17〜20%である市販のデキストラン硫酸などの高度に硫酸化された物質は、おそらく細胞によって迅速に摂取、脱硫酸化され、抗ウイルス活性に関して不活性とされ、一方、硫酸化が低い物質は、細胞によって摂取されず、それらの抗ウイルス活性を保持するのかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
要約すると、市販のデキストラン硫酸は、抗凝血および高脂血症に対して以前に日本で用いられたが、HIVに対しては生体内で不十分な活性しか示さないか、さもなければデキストラン硫酸は哺乳動物およびHIV患者においてかなりの毒性を有することが報告されている(Mathisら、Antimicrobial Agents & Chemotherapy 2147〜2150、1991年;Flexnerら、同上、2544〜2550 ;Abramsら、Annals of Internal Medicine 110:183〜188 (1989);Hiebertら、J Lab & Clin. Med. 133:161〜170(1999))。したがって、ウイルス感染、および他の感染に対するデキストラン硫酸の生体内活性化方法が依然として必要である。
【0011】
硫酸化多糖は、広い範囲の生体外活性を有するので、過去において抗微生物薬として魅力的な候補であったが、ウイルス感染、細菌感染、および寄生虫感染の治療または予防に生体内で有効な硫酸化多糖が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人は、柔軟な多糖における硫酸化の程度を低下させ、かつ制御すること、および任意選択で分子量を制御することによって、生体外および生体内の両方で抗微生物活性を有する組成物が得られることを見出した。このような組成物は、微生物感染を治療、予防、または管理する方法において、例えば、従来の硫酸化多糖の経口または非経口投与に伴った毒性など、有害な効果を減弱または回避しながら使用することができる。より詳細には、本出願人は、硫酸化が制御された範囲にある硫酸化α-1,6多糖、例えば硫黄の%が6%〜13%の硫酸化α-1,6多糖の調製物が、生体内で微生物感染に対する活性を有することを見出した。
【0013】
したがって、本発明は、従来のデキストラン硫酸と比較して硫酸化のパーセントが低い、そのような硫酸化多糖を用いた新規の治療方法、および新規の医薬組成物を包含する。例えば、本発明は、硫黄のパーセントが単糖残基に対して6%より大きくかつ13%より小さい、好ましくは約7%より大きくかつ13%より小さい、より好ましくは約9%より大きくかつ13%より小さい、最も好ましくは6%、7%、8%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.2%、12.5%、12.8%、または12.9%である硫酸化多糖を包含する。この硫酸化多糖は、α-1,6グリコシド結合を有する硫酸化デキストランであることが好ましい。
【0014】
本発明は、特に経口または非経口投与用に、分子量が500〜1000000の硫酸化多糖、好ましくは分子量が5000以上、より好ましくは25000以上、最も好ましくは40000以上の硫酸化多糖をさらに包含する。分子量が5000〜1000000、25000〜500000、および40000〜300000の範囲のものも、本発明に包含される。しかし、局所投与用には、この硫酸化多糖は、好ましい実施形態で分子量が500000より大きくなることもある。代替の一実施形態では、この組成物は、分子量の可変性が約10%のみであり、好ましくは約5%のみの変動を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、この硫酸化多糖は、セルロース硫酸でも、デキストリン硫酸でも、またはシクロデキストリンでもなく、制御された範囲の硫酸化を有し、任意選択で特定の範囲の分子量を有する硫酸化デキストランなどのα-1,6硫酸化多糖である。代替の一実施形態では、この硫酸化多糖は、分子量、硫酸化のパーセント、またはこれら両方に関して均質である。
【0016】
本発明の一態様では、哺乳動物の血流、リンパ系、および/または細胞外間隙組織に、治療上有効な量の硫酸化多糖またはその塩を導入する方法であって、生体外で抗微生物活性を有し、かつ硫酸化のパーセントが生体内で抗微生物活性を保持するのに十分である硫酸化多糖、または、その薬学的に許容される塩もしくは水和物の少なくとも1つを、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。この硫酸化多糖の硫酸化の範囲は、構成している硫酸基と、感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効であり、かつこの硫酸化多糖は、この哺乳動物における細胞受容体結合によって、実質上、エンドサイトーシスも、または分解もされず、それにより生体内における抗微生物活性を保持することが好ましい。
【0017】
本発明の別の態様では、微生物感染を治療または予防する方法であって、硫黄のパーセントが6%よりも大きく、かつ13%以下の硫酸化デキストランの治療上有効な量を患者に投与することを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、この硫酸化デキストランは、硫酸化のパーセントが6%以上か、あるいは、約6.5%以上、約7%以上、約7.5%以上、約8%以上、約8.5%以上、約9%以上、約9.5%以上、約10%以上、約10.5%以上、約11%以上、約11.5%以上、約12%以上、約12.2%以上、約12.5%以上、約12.8%以上、または13%未満である。好ましい実施形態では、この方法は、限定されるものではないが、DNAウイルスおよびRNAウイルス、特にエンベロープに囲まれたDNAウイルスまたはRNAウイルスを含めたウイルスの感染を治療または予防する方法である。別の好ましい方法では、治療されるべきウイルスには、二本鎖DNAウイルス、DNA逆転写ウイルス、RNA逆転写ウイルス、二本鎖RNAウイルス、マイナス鎖(negative-sense)一本鎖RNAウイルス、およびプラス鎖(positive-sense)一本鎖RNAウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、この硫酸化多糖が生体内における投与に適し、かつ生体内でウイルス感染に対して効果を有するように、多糖を合成するか、または硫酸化の程度を減少もしくは増強する方法を提供する。この方法は、高電荷密度ポリアニオン細胞受容体によるこの硫酸化多糖の結合および細胞内取り込み(internalization)を消滅または減弱させるのに十分か、これらの化合物を生体内で不活性化させるのが、抗微生物活性を提供するのに十分な硫酸化のパーセントを硫酸化多糖に提供すること、ならびに、この硫酸化多糖を哺乳動物に投与することを含む。言い換えれば、本発明は天然に存在する硫酸化多糖、または市販の硫酸化多糖の硫酸化を、微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効な硫酸化の範囲に改変することを包含し、ここで、この硫酸化多糖は、細胞受容体の結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されないものである。
【0019】
本発明の別々の態様は、治療上または薬学的に許容される量の本発明の硫酸化多糖を含んだ、患者への非経口投与に適した医薬組成物と、治療上または薬学的に許容される量の本発明の硫酸化多糖を含んだ、患者への経口投与に適した医薬組成物と、治療上または薬学的に許容される量の、分子量が500000より大きい本発明の硫酸化多糖を含んだ、患者への局所投与に適した医薬組成物とを包含する。
【0020】
本発明は、ウイルスまたは疾患の蔓延を予防するために、病院、実験室、洗面所、講堂、スタジアム、コンベンションセンター、レストラン、フィットネスセンター、地下鉄ターミナル、バスターミナル、空港、郵便局、オフィス、生活排水処理施設、下水、水処理施設、ポンプ場、自動車、飛行機、列車、家、ロッカーおよび家具における無生物を消毒するのに使用できる消毒薬としての本発明の硫酸化多糖の使用も包含することに留意するべきである。本発明は、本明細書に記載の硫酸化多糖の1つまたは複数を含んだ、溶液、スプレー、セッケン、フォームなどの消毒薬組成物も包含する。
【0021】
本発明の方法によって包含される微生物感染、特に、治療されるべき特定のウイルス、および使用されるべき特定の硫酸化デキストランに関して、以下に詳細に記載する。
【0022】
定義
本明細書において使用する、「患者」または「被験者」という用語は、動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなど)、好ましくは非霊長類および霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。特定の実施形態では、患者は、幼児、子供、青年、成人、または老人の患者である。さらに、患者には、HIV陽性患者、癌患者、および免疫療法を受けている患者などの免疫無防備状態の患者が含まれる。
【0023】
本明細書において使用する、「治療上有効な量」とは、疾患の治療上もしくは管理上の利点を提供するのに十分な、疾患に関連した症候を遅延させるか、もしくは最小にするのに十分な、あるいは、感染もしくは疾患、またはその原因を治癒するか、もしくは改善させるために十分な、本発明の化合物または他の有効成分の量のことをいう。治療上有効な量は、特に、生体内で治療効果を提供するのに十分な量を意味する。さらに、治療上有効な量は、疾患に関連した症候を遅延させるか、もしくは最小にするため、あるいは、感染もしくは疾患、またはその原因を治癒するか、もしくは改善させるために、疾患の治療上もしくは管理上の利点を提供する、本発明の化合物単独の量、または他の治療と組合せた量も意味する。加えて、治療上有効な量は、患者にとって毒性ではなく、感染または疾患の治療上または管理上の利点を提供する、治療薬の量も意味する。本発明の化合物の量に関して使用される際、この用語は、全体的に治療を向上させる量、疾患の症状もしくは原因を減弱もしくは回避させる量、または別の治療薬の治療効率を促進するか、もしくは別の治療薬との相乗作用を与える量を包含する。
【0024】
本明細書において使用する、「予防上有効な量」とは、感染または疾患の再発または蔓延を予防する結果となるのに十分な、本発明の化合物または他の有効成分の量のことをいう。予防上有効な量は、限定されるものではないが、疾患を引き起こすものを含めた、患者における初期感染、または初期疾患、または感染もしくは疾患の再発もしくは蔓延、または疾患の発生を予防するのに十分な量のことをいう。特に、本発明の化合物に関する予防上有効な量は、生体内における感染または疾患の再発または蔓延を予防する結果となるのに十分な量を意味する。予防上有効な量は、患者にとって毒性ではなく、感染または疾患を予防する上での利点を提供する量のことをいう場合もある。さらに、本発明の化合物に関する予防上有効な量は、感染または疾患の予防における予防上の利点を提供する、単独での量、または他の薬剤と組合せた量も意味する。本発明の化合物の量に関して使用される際、この用語は、全体的に予防を向上させる量、あるいは予防の有効性を促進するか、または別の予防薬もしくは治療薬との相乗作用を与える量を包含する。
【0025】
本明細書において使用する、「組合せた」とは、複数の予防薬および/または治療薬を同時に、または逐次的に、それらそれぞれの効果が付加的、または相乗的となる方法で使用することをいう。
【0026】
本明細書において使用する、「管理する」、「管理すること」、および「管理」という用語は、疾患を治癒することではなく、疾患の進行または悪化を遅延させるか、または予防することをいう。
【0027】
本明細書において使用する、「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、被験者における疾患の開始、再発、または蔓延を、疾患または感染が起こる前に有効成分を投与することの結果として予防することをいう。
【0028】
本明細書において使用する、「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、疾患もしくは感染それ自体、または疾患の原因、もしくは疾患に関連した症候の根絶または改善のことをいう。特定の実施形態では、これらの用語は、疾患または感染を患っている被験者に、1つまたは複数の予防薬または治療薬を投与することの結果として、そのような疾患または感染の蔓延または悪化を最小にすることをいう。
【0029】
本明細書において使用する、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容され、かつ毒性のない、無機酸、無機塩基、有機酸、および有機塩基を含めた、酸または塩基から調製される塩のことをいう。本発明の化合物に適した薬学的に許容される塩基付加塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、および亜鉛から調製された金属塩、または、リジン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、およびプロカインから調製された有機塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において使用し、別途に示されない限り、「光学的に純粋」、または「立体異性的に純粋」という用語は、ある化合物の立体異性体の1つを含み、その化合物の他の立体異性体を実質上含まない組成物を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性的に純粋な化合物は、その化合物の反対のエナンチオマーを実質上含まないであろう。典型的な、立体異性的に純粋な化合物は、この化合物の1つの立体異性体を約80重量%より多く含み、かつこの化合物の他の立体異性体を約20重量%より少なく含み、より好ましくは、この化合物の1つの立体異性体を約90重量%より多く含み、かつこの化合物の他の立体異性体を約10重量%より少なく含み、さらにより好ましくは、この化合物の1つの立体異性体を約95重量%より多く含み、かつこの化合物の他の立体異性体を約5重量%より少なく含み、そして最も好ましくは、この化合物の1つの立体異性体を約97重量%より多く含み、かつこの化合物の他の立体異性体を約3重量%より少なく含む。本発明の化合物は、D型またはL型で存在しうる糖から生成された多糖であるので、本発明は、D型糖もしくはL型糖、またはそれら両方を包含する。したがって、例えば、立体異性的に純粋なD型糖は、L型を実質上含まないであろう。代替の一実施形態では、L型の硫酸化デキストランを使用することによって、6%〜約20%の、より広い制御範囲の硫酸化を用いることが可能となる。したがって、本明細書に開示されている方法および組成物は、代替の実施形態において、そのような左旋性の糖、またはそれらから生成されるポリマーの使用も含む。
【0031】
本明細書において使用する、「硫酸化多糖」という用語は、10ユニットより多い単糖を有する硫酸化物質を意味する。この硫酸化多糖は、アルファ(1,6)結合された多糖であることが好ましい。本発明の硫酸化多糖においては、有意な毒性を伴わずに、生体外および生体内の両方で活性となるのに十分な硫黄のパーセントを有することも好ましい。
【0032】
本明細書において使用する、「デキストラン」という用語は、主としてα-D(1,6)結合されたD-グルコースユニットのバックボーンを含有し、かつ分岐の程度および鎖長においてのみ異なるα-D-グルコピラノシルユニットのみで構成された多糖を意味する。
【0033】
本明細書において使用する、「デキストラン硫酸ナトリウム」もしくは「デキストラン硫酸」、「従来のデキストラン硫酸」、または「市販のデキストラン硫酸」という用語は、別段の性質指定がない限り、グルコース分子あたり最大3つまでの硫酸基を有し、かつ約17%の硫黄を含有した、様々な範囲、例えば4000〜500000Daの分子量のα1,6-ポリグルコースを意味する。
【0034】
本明細書において使用する、「硫酸化パーセント」、「硫酸化のパーセント」、「硫酸置換のパーセント」、または「硫酸化」という用語は、問題の多糖中にある各単糖残基に対して分子量での硫黄のパーセントを意味し、場合によっては、対イオンも含められ、例えば組成物重量/全重量に対する硫酸化の分子量を意味する。好ましい実施形態では、硫黄のパーセントは、ナトリウムを対イオンとした、問題の多糖中にある硫酸化糖残基に関して分子量での硫黄のパーセントとして計算される。硫酸化のパーセントは、遊離硫黄を除去するために透析された物質、好ましくは、真空中、60℃で恒量まで乾燥された、湿分/揮発性物質を含まない物質の元素分析によって決定することができる。硫酸化のパーセントを決定する他の方法は、含水量分析および滴定を介したものである。硫酸化は、糖部分あたりの硫酸基数の尺度である、「置換の程度」または「当量」と区別するべきである。しかし、当業者であるならば、硫酸化パーセントを置換の程度、または当量に変換することができ、また、その逆もできることを認識するであろう。
【0035】
本明細書において使用する、「荷電基共存型(co-charged)デキストランポリアニオン」という用語は、カルボキシメチル基、硫酸基、およびスルホン酸基のいずれの組合せによってでも、様々な程度に置換されたデキストランのことをいう。
【0036】
本明細書において使用する、「過ヨウ素酸処理されたアニオン性多糖」という用語は、微生物との相互作用を増強させるために、過ヨウ素酸で処理されて、脱重合なしに糖環が開環されているか、または、他の方法で多糖の柔軟性が高められている、いかなるアニオン性多糖も意味するものである。
【0037】
本明細書において使用する、「抗微生物」という用語には、抗ウイルス、例えば、抗クラミジアなどの抗細菌;抗マラリア原虫などの抗寄生虫または抗真菌が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の一実施形態において、本出願人は、従来の硫酸化多糖の有害な作用、好ましくない作用、または毒性作用を、減弱させるか、または回避しながら、微生物感染、特にウイルス感染に対する、特定の硫酸化多糖の生体内効果を顕著に増大させる方法を見出した。これは、多糖における硫酸化のパーセントを、6%より大きいが、13%以下の範囲内になるように制御することによって、一部達成される。さらに、本発明は、代替の一実施形態において、顕著な毒性がなく、顕著な生体内効果を有する硫酸化多糖を得るために、分子量および/または硫酸化のパーセントを制御することも包含する。本発明の最も好ましい組成物および方法は、望ましい硫酸化のパーセントおよび/または分子量を有し、柔軟で、そのため様々なウイルスに対して有用な、硫酸化されたα-1,6結合多糖または硫酸化デキストランを利用する。最も好ましい実施形態では、硫黄化パーセントの範囲が、構成している硫酸基と、感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効であり、また、上記硫酸化多糖は、哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内で抗微生物活性を保持する。
【0039】
本出願人は、硫酸化の程度がより低い多糖を合成するか、または、従来のデキストラン硫酸などの硫酸化多糖における電荷密度の程度を低下させることによって、例えば腎臓において高電荷密度ポリアニオンの細胞受容体による硫酸化多糖の結合および細胞内取込みが消滅、または少なくとも顕著に減弱し、その結果、これらの化合物の生体内脱硫酸化が消滅、または顕著に減弱することも見出した。この結果、低電荷密度を有する、これらの硫酸化多糖は、それらの生体内における抗微生物活性を保持する。これは、微生物病または微生物感染を治療または予防する抗微生物活性を、生体外で顕著に有する安定した硫酸化多糖のヒトにおける全身使用、局所使用、経口使用、または直腸内使用を、生体内で初めて可能にするものである。
【0040】
したがって、本発明は、構造上の柔軟性、制御された程度の硫酸化、ならびに任意選択で、分子量に関する均質性、および従来のデキストラン硫酸と比較して低い程度の硫酸化を有する硫酸化多糖、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは立体異性体を用いて、微生物感染、特にウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、または真菌感染を、生体内で治療、予防、または管理する方法を包含する。
【0041】
本発明は、微生物感染を治療、予防、または管理する方法であって、6%超から13%以下の硫酸化を有する硫酸化多糖、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは立体異性体の治療上有効な量または予防上有効な量を、それを必要とする患者に投与することを含む方法も提供する。上述のように、そのような硫酸化多糖は、限定されるものではないが、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、または真菌感染を含めた、感染性の疾患または状態の治療に特に有効である。
【0042】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、本発明の方法または組成物において用いられる硫酸化多糖およびその薬学的に許容される塩、水和物、または立体異性体は、この化合物がヒトにおいて生体内抗微生物活性をもつのに十分な硫酸化パーセントを有するが、この硫酸化パーセントは、この化合物が高電荷密度ポリアニオンの細胞受容体による結合と、腎臓を通過した後の脱硫酸化とを回避するように制御されている。これは、毒性または有害な効果を引き起こすことなく、生体内における抗微生物活性の保持をもたらすものである。
【0043】
いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、本出願人は、硫酸化多糖の電荷密度がある範囲内にあるとき、この硫酸化多糖が生体外で抗微生物活性を示し、かつ生体内でも抗微生物活性を保持する範囲があると考える。本発明の好ましい実施形態では、本発明の硫酸化多糖は、硫酸化のパーセントが6%より大きく、かつ13%以下、好ましくは約7%より大きく、かつ13%以下、より好ましくは約8%および12.5%以下、最も好ましくは、±1%の範囲内で、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.2%、12.5%、または12.8%である。
【0044】
本発明の方法において使用される好ましい硫酸化多糖は、硫酸化されたデキストランまたはα-1,6結合されている多糖であり、この硫酸化多糖は、硫酸化のパーセントが適切となるように改変されている。本発明の硫酸化デキストランが含有する硫黄は、13%未満であり、12%未満、11%未満、約10%未満、9%未満、8%未満、および7%未満でもよいが、6%より多い。好ましい実施形態では、硫酸化デキストラン変異体は、硫酸化が13%より少なく、かつ6%より多く、より好ましくは約7.0%〜約12.8%、さらにより好ましくは約8.5%〜約12.8%、そして、最も好ましくは約9.5%から13%未満までである。硫酸化が約12.2%の硫酸化デキストランおよび約12.5%の硫酸化デキストランは、特に、レトロウイルス感染に対して有効である。
【0045】
本発明の硫酸化多糖、特に硫酸化デキストランは、公知の合成技法および試薬を用いて調製することができる。適切な程度の硫酸化が実現されるように、当技術分野で公知のいくつかの方法を改変することもできる。これらの方法には、図3に記載されるものも含まれる。しかし上述のように、硫酸化の程度も、分子量と同様、制御することができる。本出願人は、硫黄含有量が制御されており、かつ硫酸置換の程度も制御された硫酸化デキストランを、それらが高電荷多糖の細胞受容体によって取り込まれないようにすることを目的として合成した。これらの多糖は、生体外で示す活性と本質的には同じ高い抗ウイルス活性を生体内で示し、生体内における安定性および寿命が向上しており、細胞によって容易に取り込まれないので、毒性も低下している。硫黄含有量が制御されている硫酸化デキストランは、構成している硫酸基と、ウイルスタンパク質上の正電荷との最大の相互作用を可能にするが、アルブミンを含めた血漿タンパク質には顕著に結合しない特有の構造(本質的にはα-1、6グリコシド結合で構成された直鎖であり、これによって、より柔軟な多糖となる)のため、ウイルスの細胞付着阻害剤として特に適している。
【0046】
別の代替実施形態では、本発明は、均質な硫酸化多糖の使用を包含する。すなわち、本明細書に記載の方法に従って投与されるか、または医薬組成物および剤形で使用される硫酸化多糖は、実質上同一の硫酸化のパーセント、分子量、またはこれら両方を示すものである。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、硫酸化多糖においてグルコース残基あたりの硫黄置換のパーセントが6%超から13%未満までの範囲にある硫酸化多糖を含む組成物の治療上有効な量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含み、上記範囲における硫酸化のパーセントが、構成している硫酸基による、感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効であり、かつ上記硫酸化多糖が、前記哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内で抗微生物活性を保持する方法も包含する。この硫酸化多糖は、硫酸化デキストランであることが好ましい。
【0048】
本発明は、抗炎症疾患または障害、間質性膀胱炎、および抗関節炎の治療、予防または管理も包含する。本発明は、抗アルブミン尿薬剤(腎臓病で発症するアルブミン尿)としての本発明の硫酸化多糖の使用も包含する。
【0049】
本発明は、哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、硫酸化のパーセントが約6%〜約20%、好ましくは約6%〜約13%、より好ましくは約9%〜約13%の左旋性硫酸化多糖の有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む方法をさらに包含する。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、過ヨウ素酸処理されたアニオン性多糖の有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む方法を包含する。この過ヨウ素酸処理されたアニオン性多糖は、過ヨウ素酸処理された硫酸化デキストランであることが好ましい。
【0051】
本発明の別の実施形態では、本発明は、哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、微生物との最大の相互作用を可能にする硫酸化のパーセントを有する荷電基共存型アニオン性多糖の有効量を、そのような治療または予防を必要とする哺乳動物に投与することを含み、このアニオン性多糖が、上記哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内における抗微生物活性を保持する方法を包含する。好ましい実施形態では、この荷電基共存型アニオン性多糖は、カルボキシメチル基、スルホン酸基、硫酸基またはこれらの混合物によって荷電基共存型とされており(co-charged)、より好ましくは、この荷電基共存型アニオン性多糖は、カルボキシメチル基で荷電基共存型とされている。特定の一実施形態において、この荷電基共存型アニオン性多糖は、カルボキシメチルデキストラン硫酸またはカルボキシメチルセルロースである。
【0052】
1. 微生物感染の治療、予防、および管理の方法
一実施形態において、本発明の組成物および方法によって治療、予防、または管理される微生物感染は、ウイルス感染である。本発明の方法によって治療、予防、または管理することができるウイルス感染には、DNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の範囲内にあるDNAウイルスおよびRNAウイルスには、二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、DNA逆転写ウイルス、RNA逆転写ウイルス、二本鎖RNAウイルス、マイナス鎖一本鎖RNAウイルス、プラス鎖一本鎖RNAウイルス、およびアンビセンスRNAウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の一実施形態において、この方法および組成物は、限定されるものではないが、ピコルナウイルス、カリシウイルス、アストロウイルス、レオウイルス、ビルナウイルス、シルコウイルス(circovirus)、パルボウイルス、パポーバウイルス、およびアデノウイルスを含めた非エンベロープウイルスの感染を治療、予防、または管理するのに用いることができる。
【0053】
好ましい特定の実施形態では、この方法および組成物は、限定されるものではないが、トガウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス、パラミクソウイルス、オルソミクソウイルス、ブニアウイルス、アレナウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、イリドウイルス、およびアルテリウイルスを含めたエンベロープウイルスの感染を治療、予防、または管理するのに用いることができる。
【0054】
本発明の方法で治療、予防、または管理することができる特定のエンベロープ二本鎖DNAウイルスには、ヘルペスウイルスB型ウイルス(ミドリザルヘルペスウイルス1)、牛痘ウイルス、エプスタインーバーウイルス(ヒトヘルペスウイルス4)、B型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1および2(HSV-1、および-2)、ヒトサイトメガロウイルス(ヒトヘルペスウイルス5)、ヒトヘルペスウイルス6A、6B、および7、伝染性軟属腫ウイルス、サル痘ウイルス、偽牛痘ウイルス、タナポックスウイルス、ワクシニアウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、痘そうウイルス(天然痘ウイルス)、アフリカ豚コレラウイルス、ウシ乳頭炎ウイルス、ウシ血疹性口内炎ウイルス、カメヘルペスウイルス1、牛痘ウイルス、エクトロメリアウイルス(マウスポックスウイルス)、ウマ流産ウイルス(EHV1)、ウマ交疹ウイルス(EHV3)、ウマ鼻腔肺炎ウイルス(EHV4)、線維腫ウイルス(ウサギ、野ウサギ、およびリス)、カエルウイルス1〜3、5〜24、L2、L4、およびL5、鶏痘ウイルス、金魚ウイルス1〜2、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス(トリ)、リンパ嚢腫病ウイルス(サカナ)、マレック病ウイルス(トリ)、モーバーヘルペスウイルス(Movar herpesvirus)、粘液腫ウイルス、オルフウイルス(伝染性膿疱性皮膚炎ウイルス)、偽牛痘ウイルス(搾乳者小結節ウイルス)、仮性狂犬病ウイルス、ヒツジ痘ウイルス、豚痘ウイルス、ヤバポックスウイルス(Yabapox virus)、ならびにウッドチャック肝炎ウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の方法で治療、予防、または管理することができる特定の非エンベロープ二本鎖DNAウイルスには、アデノウイルス1〜49、サルアデノウイルス1〜27、ウシアデノウイルス1〜9、ブタアデノウイルス1〜4、ヒツジアデノウイルス1〜6、ウマアデノウイルス1〜2、マウスアデノウイルス1〜2、BKウイルス、JCウイルス、Kウイルス(ウサギ)、ウサギ腎臓液胞化ウイルス、乳頭腫ウイルス1〜60、シミアンウイルス12(SV12)、シミアンウイルス40(SV40)、ウシ乳頭腫ウイルス1、2、および4、イヌ口腔乳頭腫ウイルス、イヌアデノウイルス2、ウマ乳頭腫ウイルス、ヒツジ乳頭腫ウイルス、ウマアデノウイルス、胎児アカゲザル腎臓ウイルス、伝染性イヌ肝炎ウイルス、マウスポリオーマウイルス、アフリカミドリザルBリンパ指向性ポリオーマウイルス、ならびにショープ乳頭腫ウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の方法で治療、予防、または管理することができる特定の非エンベロープ一本鎖DNAウイルスには、パルボウイルスB-19、RA-1ウイルス、アリューシャン病ウイルス、イヌパルボウイルス、ミンク腸炎ウイルス、マウスのマイニュートウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、オウム嘴羽病ウイルス、およびブタシルコウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の方法で治療、予防、または管理することができる特定の非エンベローププラス鎖一本鎖RNAウイルスには、コクサッキーウイルスA1〜21、およびA24、コクサッキーウイルスB1〜6、エコーウイルス1〜7、9、11〜27、および29〜34、エンテロウイルス68〜71、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルスおよび類似のウイルス(サウサンプトンウイルス、スノーマウンテンウイルス、ハワイウイルス、トーントンウイルスなど)、ポリオウイルス1〜3、ライノウイルス1〜113、1A、および1B、ウシエンテロウイルス1〜7、脳心筋炎ウイルス、ネコカリシウイルス、口蹄病ウイルス、マウスポリオウイルス(タイラーウイルス)、マウス脳脊髄炎ウイルス、ブタエンテロウイルス1〜8、ウシエンテロウイルス1〜7、サルエンテロウイルス1〜18、ウサギ出血病ウイルス、ブタ水疱病ウイルス、水疱疹ウイルス1〜12(ブタ)、チンパンジーカリシウイルス(Pan-1)、サンミゲルアシカウイルス1〜8、ヨーロッパ茶色野ウサギ病ウイルス、ネコカリシウイルス、イヌカリシウイルス、ウシ腸カリシウイルス、ブタ腸カリシウイルス、ミンクカリシウイルス、は虫類カリシウイルス、セイウチカリシウイルス、トリカリシウイルス、ヒトアストロウイルス1〜5、ウシアストロウイルス1〜2、ヒツジアストロウイルス、ブタアストロウイルス、イヌアストロウイルス、ならびにアヒルアストロウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明の方法で治療、予防、または管理することができる特定のエンベローププラス鎖一本鎖RNAウイルスには、バーマフォレストウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、チクングニヤウイルス、デングウイルス1〜4、東部ウマ脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス1および2、ヒトTリンパ球向性ウイルス1および2、イグボオラウイルス(Igbo Ora virus)、日本脳炎ウイルス、キィアサヌアフォレストウイルス、マヤロウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、オニオニオンウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ロシオウイルス、ロスリバーウイルス、風疹ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス(ならびに、その変種のオケルボウイルス(Ockelbo virus)およびババンキウイルス(Babanki virus))、セントルイス脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリ肉腫ウイルスおよびトリ白血病ウイルス、ボーダー病ウイルス(ヒツジ)、ウシ免疫不全ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウシ下痢症ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ブタコレラウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、ゲタウイルス、ブタコレラウイルス、日本脳炎ウイルス、乳酸デヒドロゲナーゼ亢進ウイルス(マウス)、マエディ/ビスナウイルス(ヒツジ)、マウス肝炎ウイルス、マウス乳癌ウイルス、粘膜病ウイルス(ウシ)、マウス白血病ウイルス(アベルソン、AKR、フレンド、マローニー白血球ウイルスを含む)、ヒツジ進行性肺炎ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ラウシャーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス(アフリカミドリザル、スーティーマンガベイ、ベニガオザル、ブタオザル、アカゲザル、チンパンジー、およびマンドリルウイルスを含む)、サルD型レトロウイルス、サルT細胞リンパ指向性ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス(ヨーロッパおよび極東ダニ媒介性脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ならびにポーワッサンウイルスを含む)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ウェセルスブロンウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ならびにウーリーモンキー肉腫ウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明の方法で治療、予防、または管理することができる特定のエンベロープマイナス鎖一本鎖RNAウイルスには、アラゴアスウイルス、ブンヤムウェラウイルス、ブワンバウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、コンゴクリミア出血熱ウイルス、チャンディプラウイルス、ドウベンハーゲウイルス、グアヴァウイルス、グアナリトウイルス、ハンターンウイルス、インフルエンザウイルスA、BおよびC、イスファハンウイルス、ジェームズタウンキャニオンウイルス、フニンウイルス(アルゼンチン出血熱ウイルス)、ラゴスコウモリウイルス、ラクロスウイルス、ラッサ熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMウイルス)、マクポウイルス、マラバウイルス、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、モコラウイルス、ムエルトキャニオンウイルス、オリボカウイルス、オロポーチウイルス、パラインフルエンザウイルス1(センダイウイルス)、2、3、4a、および4b、ピキンデウイルス、ピリウイルス、プントトロウイルス、プーマラウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、サシチョウバエ熱・ナポリウイルス、サシチョウバエ熱・シチリアウイルス、ソウルウイルス、シンノンブルウイルス、タカリベウイルス、タヒナウイルス、タミアミウイルス、水疱性口内炎ウイルス(ニュージャージー株およびインディアナ株を含む)、アカバネウイルス、アイノウイルス、トリパラミクソウイルス2(ユカイパウイルス(Yucaipa virus))、3、4、5(クニタチウイルス)、6、7、8および9、ウシ一過性熱ウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、イヌジステンパーウイルス、イルカおよびネズミイルカジステンパーウイルス、エボラウイルス(ザイール、スーダン、およびレストンサブタイプを含む)、馬モルビリウイルス、感染性造血壊死ウイルス(サカナ)、ブタ、ウマ、アザラシ、およびトリのインフルエンザウイルス、コトンカンウイルス(Kotonkan virus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、マールブルグウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(トリ)、オボジアンウイルス(Obodhiang virus)、小反芻動物病ウイルス(ヒツジおよびヤギ)、マウス肺炎ウイルス、ブタルブラウイルス(ラピエダド・ミチョアカン・メキシコウイルス)、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、牛疫ウイルス、サルパラインフルエンザウイルス10、ならびに水疱性口内炎ウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明の方法で治療、予防、または管理することができる特定の二本鎖RNAウイルスには、コロラドダニ熱ウイルス、レオウイルス1〜3、オルンゴウイルス、ケメロボウイルス、ロタウイルスグループA〜F、エヤチウイルス(Eyach virus)、イバラキウイルス、ゴールデンシャイナーウイルス、チャブレオウイルス、アフリカウマ病ウイルス1〜9、伝染性出血性疾患ウイルス(シカ)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(トリ)、感染性すい臓壊死ウイルス(サカナ)、ヒトロタウイルスおよびレオウイルス1〜3が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
一実施形態において、本発明は、癌を引き起こすか、誘導するか、または癌に関連するウイルスの治療、予防または管理を包含する。さらに、本発明は、従来の抗ウイルス治療に耐性であるかまたは耐性を示すウイルス株の治療、予防または管理も包含する。特定の一実施形態において、好ましい方法は、B型肝炎ウイルス、HIV-1、HIV-2、HCMV、MCMV、VZV、EBV、麻疹ウイルス、プントトロaウイルス、VEEウイルス、西ナイルウイルス、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、アデノウイルス1型、HPIV、ヒトメタニュウモウイルス、出血性敗血症ウイルス、3型パラインフルエンザウイルス、ピキンデウイルス、およびライノウイルスに対してデキストラン硫酸の変異体を使用することを含む。
【0062】
本発明の特定の一実施形態において、治療されるべきウイルスは、ヘルペスウイルスではなく、すなわち、より詳細には、治療されるべきウイルスは、HSV-1でも、またはHSV-2でもない。さらに、別の代替実施形態では、治療されるべきウイルスはレトロウイルスではなく、すなわちより詳細には、治療されるべきウイルスはHIV-1でも、HIV-2でも、またはHTLVでもない。
【0063】
別の実施形態では、本発明の化合物および方法によって、治療、予防、または管理される微生物感染が細菌感染または寄生虫感染である。本明細書に記載の方法で治療、予防、または管理されうる特定の細菌および寄生虫には、クラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、ラクトバチルス(Lactobacilli)、プラスモジウム(Plasmodium sp.)、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカスヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、サッカロミセスセレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シュードモナスエルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、レジオネラニューモフィラ(Legionella pneumophila)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、サルマラリア原虫(Plasmodium knowlesi)、および熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明は、ウイルス感染、細菌感染、または寄生虫感染などの微生物感染の治療及び/又は予防において、治療上有効な量の硫酸化多糖、またはそのような硫酸化多糖の組合せを、患者の血流、リンパ系、および/または組織の細胞外間隙に導入する方法を提供する。この方法は、少なくとも、生体外で抗微生物活性を示す硫酸化多糖を哺乳動物に投与することを含み、この硫酸化多糖は、荷電多糖の生体内における抗微生物活性の保持をもたらす硫酸化、例えば、高電荷密度細胞受容体を有する細胞による摂取を最小にする硫酸化を有する。
【0065】
理論に拘泥するものではないが、本出願人は、本発明の硫酸化多糖がリンパ節に対して高い親和性を有し、したがって、リンパ系に生息または潜伏するウイルスに対してより強い活性をもつと考える。したがって、本発明は、本発明の硫酸化多糖を、患者のリンパ系に直接投与するか、またはこれを標的として投与する方法を包含する。
【0066】
しかし、疾患、感染または状態の急性管理または慢性管理における、本発明の硫酸化多糖、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、水和物、もしくは立体異性体の予防用用量または治療用用量の大きさは、疾患または感染の性質および重篤度、ならびに有効成分が投与される経路によって変動するであろう。用量、および恐らく投与頻度も、治療されるべき疾患または感染、個々の患者の年齢、体重、および反応に応じて変動するであろう。適切な処方計画は、そのような要因を的確に考慮した上で、当業者によって容易に選択できるものである。
【0067】
本発明の方法は、特に、ヒト患者に適している。詳細には、本発明の方法および用量は、限定されるものではないが、癌患者、HIV感染患者、および免疫変性疾患を患っている患者を含めた、免疫無防備状態の患者に有用でありうる。さらに、この方法は、現在、寛解状態にある免疫無防備状態の患者に有用でありうる。本発明の方法および用量は、他の抗ウイルス治療を受けている患者にも有用である。本発明による予防の方法は、微生物感染の危険をもつ患者に特に有用である。このような患者には、例えば、医師、看護婦、ホスピス介護者などの医療従事者、軍人、教師、保育労働者、社会支援従業者、宣教師、および外交官を含めた、外国の現場、特に第3世界の現場に旅行または居住する患者が含まれるが、これらに限定されるものではない。最後に、この方法および組成物は、逆転写酵素阻害剤、やプロテアーゼ阻害剤などに対する耐性など、治療に対して、不応性である患者、または耐性を有する患者の治療も含む。
【0068】
1.1. 用量
本発明の化合物が有する毒性および有効性は、細胞培養または実験動物において、例えば、LD50(集団の50%にとって致命的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)の測定など、標準的な薬学手法を行うことで決定できる。毒性効果をもつ用量と、治療効果をもつ用量との比が治療係数であり、LD50/ED50という比率として表すことができる。
【0069】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、この化合物をヒトに使用するための用量の範囲を公式化するのに用いることができる。そのような化合物の用量は、その循環濃度がED50を含む範囲にあり、毒性をほとんど伴わないか、または全く伴わないものであることが好ましい。用量は、使用される剤形および投与経路によって、この範囲の中で変化してもよい。本発明の方法で用いられるいかなる化合物に関しても、治療上有効な量を、まず細胞培養アッセイで推定することができる。動物モデルにおいて、細胞培養で測定されたIC50(すなわち、症候の抑制が最大限度の半分に達する試験化合物の濃度)を含めた血漿中循環濃度の範囲になるように、用量を処方することができる。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量を、より正確に決定するのに用いることができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0070】
本発明のプロトコールおよび組成物は、生体外で試験し、その後、ヒトで使用する前に、生体内で望ましい治療活性または予防活性を試験することが好ましい。例えば特定の治療プロトコールによる投与が指示されるかどうかを決定するのに用いることができる生体外アッセイには、生体外細胞培養アッセイが含まれるが、このアッセイでは、治療、予防、または管理されるべき微生物に感染されやすい細胞(例えば、初代細胞、形質転換細胞系、患者の組織サンプルなど)あるいは、治療、予防、または管理されるべき微生物が増殖することができる増殖培地(例えば、LBブロス/アガー、YTブロス/アガー、血液寒天培地など)を、本発明の化合物に曝露するか、または別の方法で投与し、そして微生物の増殖能に対する化合物の効果を評価する。本発明の方法で使用するための化合物は、ヒトで試験する前に、限定されるものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなどを含めた適当な動物モデル系で試験することができる。その後、化合物を適切な臨床試験に用いることができる。
【0071】
感染または状態の急性管理または慢性管理における、本発明の硫酸化多糖、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、水和物、もしくは立体異性体の予防用用量または治療用用量の大きさは、感染の性質および重篤度、ならびに有効成分が投与される経路によって変動するであろう。用量、および恐らく投与頻度も、治療されるべき感染、個々の患者の年齢、体重、および反応に応じて変動するであろう。適切な処方計画は、そのような要因を的確に考慮した上で、当業者によって容易に選択できるものである。一実施形態において、投与される用量は、使用されるべき特定の化合物、ならびに、患者の体重および状態に依存するものである。通常、1日あたりの用量は、約0.001mg/kg〜500mg/kgの範囲、好ましくは約0.01mg/kg〜200mg/kgの範囲、より好ましくは約0.005mg/kg〜100mg/kgの範囲にある。ウイルスに感染したヒトの治療では、1日あたり約0.1mg〜約15gを、1日あたりおよそ1分割から4分割で投与する。さらに、推奨される一日量は、単剤として、または他の治療薬と併用してサイクルで投与することができる。一実施形態において、一日量は、単一用量として投与するか、または等分された用量として投与する。
【0072】
当業者ならば容易に知るように、異なった感染には、異なった治療上有効な量を適用することができる。同様に、そのような感染を治療、または予防するのに十分であるが、従来の治療に関連した有害な影響を引き起こすのに十分でないか、または減弱させるのに十分な量も、上記の用量および投与頻度計画に包含されている。
【0073】
1.2. 併用療法
本発明の特定の方法は、追加治療薬(すなわち、本発明の化合物以外の治療薬)の投与をさらに含む。本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの他の治療薬と組み合わせて本発明の化合物を用いることができる。治療薬には、抗生物質、鎮吐薬、抗うつ薬、抗真菌薬、抗炎症薬、抗ウイルス剤、抗癌剤、免疫調節剤、β-インターフェロン、アルキル化剤、ホルモン、またはサイトカインが含まれるが、これらに限定はされない。
【0074】
本発明の硫酸化多糖は、抗生物質と組み合わせて投与または処方することができる。例えば、本発明の硫酸化多糖は、マクロライド(例えば、トブラマイシン(TOBI(登録商標))、セファロスポリン(例えば、セファレキシン(ケフレックス(登録商標))、セフラジン(VELOSEF(登録商標))、セフロキシム(セフチン(登録商標))、セフプロジル(CEFZIL(登録商標))、セファクロル(CECLOR(登録商標))、セフィキシム(スープラックス(登録商標))もしくはセファドロキシル(ドリセフ(登録商標))、クラリスロマイシン(例えば、クラリスロマイシン(バイアキシン(登録商標))、エリスロマイシン(例えば、エリスロマイシン(イーマイシン(登録商標))、ペニシリン(例えば、ペニシリンV(V-CILLIN K(登録商標)またはPEN VEE K(登録商標))、またはキノロン(例えば、オフロキサシン(FLOXIN(登録商標))、シプロフロキサシン(シプロ(登録商標))またはノルフロキサシン(ノロキシン(登録商標))、アミノグリコシド抗生物質(例えば、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸塩、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、およびスペクチノマイシン)、アムフェニコール抗生物質(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、およびチアンフェニコール)、アンサマイシン抗生物質(例えば、リファミドおよびリファンピン)、カルバセフェム(例えば、ローラカルベフ(loracarbef)); カルバペネム(例えば、ビアペネムおよびイミペネム)、セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファアンドール、セファトリジン、セファゼドン(cefazedone)、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、およびセフピロム)、セファマイシン(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、およびセフミノクス)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム、カルモナン、およびティゲモナム(tigemonam))、オキサセフェム(例えば、フロモキセフおよびモキサラクタム)、ペニシリン類(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン(fenbenicillin)、フロキサシリン、ペナメシリン(penamecillin)、ペネタメートハイドリオダイド、ペニシリンo-ベネタミン、ペニシリンO、ペニシリンV、ベンザチンペニシリンV、ヒドラバミンペニシリンV、ペニメピサイクリン(penimepicycline)、フェンシヒシリンカリウム(phencihicillin potassium));リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、およびリンコマイシン)、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンドラシジン(enduracidin)、エンビオマイシン、テトラサイクリン(例えば、アピサイクリン(apicycline)、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン(clomocycline)、およびデメクロサイクリン)、2,4-ジアミノピリミジン(例えば、ブロジモプリム)、ニトロフラン(例えば、フラルタドン、およびフラゾリウムクロライド(furazolium chloride))、キノロンおよびその類似体(例えば、シノキサシン、クリナフロクサシン(clinafloxacin)、フルメキン、およびグレパグロクサシン(grepagloxacin))、スルホンアミド(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド(noprylsulfamide)、フタリルスルファセタミド、スルファクリソイジン(sulfachrysoidine)、およびスルファシチン)、スルホン(例えば、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、およびソラスルホン)、サイクロセリン、ムピロシン、およびツベリン(tuberin)と共に処方することができる。
【0075】
本発明の硫酸化多糖は、鎮吐薬と組み合わせて投与または処方することもできる。適当な鎮吐薬には、メトクロプラミド、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンズアミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシンモノエタノールアミン、アリザプリド、アゼセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン(bietanautine)、ブロモプリド(bromopride)、ブクリジン、クレボプリド、シクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリジン、メタラタル(methallatal)、メトピマジン(metopimazine)、ナビロン、オキシペルンジル(oxyperndyl)、ピパマジン、スコポラミン、スルピリド、テトラヒドロカンナビノール、チエチルペラジン、チオプロペラジン、トロピセトロン、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明の硫酸化多糖は、抗うつ薬と組み合わせて投与または処方することができる。適当な抗うつ薬には、ビネダリン(binedaline)、カロクサゾン(caroxazone)、シタロプラム、ジメタザン(dimethazan)、フェンカミン、インダルピン(indalpine)、塩酸インデロキサジン、ネホパム、ノミフェンシン、オキシトリプタン、オキシペルチン、パロキセチン、セルトラリン、チアゼシム(thiazesim)、トラゾドン、ベンモキシン(benmoxine)、イプロクロジド(iproclozide)、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、オクタモキシン(octamoxin)、フェネルジン、コチニン、ロリサイプリン(rolicyprine)、ロリプラム、マプロチリン、メトラリンドール(metralindole)、ミアンセリン、ミルタゼピン、アジナゾラム、アミトリプチリン、アミトリプチリンオキシド、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン(demexiptiline)、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドチエピン、ドクセピン、フルアシジン(fluacizine)、イミプラミン、イミプラミンN-オキシド、イプリンドール(iprindole)、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン(metapramine)、ノルトリプチリン、ノキシプチリン(noxiptilin)、オピプラモール、ピゾチリン(pizotyline)、プロピゼピン(propizepine)、プロトリプチリン、キヌプラミン(quinupramine)、チアネプチン、トリミプラミン、アドラフィニル、ベナクチジン、ブプロピオン、ブタセチン(butacetin)、ジオキサドロール、ジュロキセチン、エトぺリドン(etoperidone)、フェバルバマート、フェモキセチン、フェンペンタジオール(fenpentadiol)、フルオキセチン、フルボキサミン、ヘマトポルフィリン、ハイペリシン、レボファセトペラン、メジフォクサミン(medifoxamine)、ミルナシプラン、ミナプリン、モクロベミド、ネファゾドン、オクサフロザン(oxaflozane)、ピベラリン(piberaline)、プロリンタン(prolintane)、ピリスクシデアノール(pyrisuccideanol)、リタンセリン、ロキシンドール(roxindole)、塩化ルビジウム、スルピリド、タンドスピロン、トザリノン(thozalinone)、トフェナシン、トロクサトン(toloxatone)、トラニルシプロミン、L-トリプトファン、ベンラファクシン、ヴィロキサジンおよびジメルジン(zimeldine)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明の硫酸化多糖は、抗真菌薬と組み合わせて投与または処方することができる。適当な抗真菌薬には、アムホテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、イントラセカル(intrathecal)、フルシトシン、ミコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、テルコナゾール、チオコナゾール、シクロピロクス、エコナゾール、ハロプログリン(haloprogrin)、ナフチフィン、テルビナフィン、ウンデシレン酸塩、およびグリセオフルジン(griseofuldin)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の硫酸化多糖は、抗炎症薬と組み合わせて投与または処方することができる。有用な抗炎症薬には、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサラート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビンプロフェン(flurbinprofen)、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム(droxicam)、ピボキシカム(pivoxicam)、テノキシカム、ナブメトメ(nabumetome)、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリン、アパゾン、およびニメスリドなどの非ステロイド性抗炎症薬;限定されるものではないが、ジロートン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム、およびオーラノフィンを含むロイコトリエン拮抗薬;限定されるものではないが、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバリン酸クロコルトロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン誘導体、デソニド、デスオキシマタゾン、デキサメタゾン、フルニソリド、フルコキシノリド(flucoxinolide)、フルランドレノリド、ハルシノシド(halcinocide)、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、フロン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブアテート、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンジアセテート、およびトリアムシノロンヘクサアセトニドを含むステロイド;ならびに、限定されるものではないが、メトトレキセート、コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン、およびベンズブロマロンを含む他の抗炎症薬が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
本発明の硫酸化多糖は、別の抗ウイルス剤と組み合わせて投与または処方することができる。有用な抗ウイルス剤には、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、およびヌクレオシド類似体が含まれるが、これらに限定されるものではない。抗ウイルス剤には、ジドブジン、アシクロビル、ガングシクロビル(gangcyclovir)、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、およびリバビリンが含まれ、同様に、フォスカーネット、アマンタジン、リマンタジン、サクイナビル、インジナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、α-インターフェロン、アデフォビル、クレバジン(clevadine)、エンテカビル、プレコナリルも含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
本発明の硫酸化多糖は、免疫調節剤と組み合わせて投与または処方することができる。免疫調節剤には、メトトレキセート、レフルノミド、シクロホスファミド、サイクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、ラパミシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナール、マロノニトリロアミド(例えば、レフルナミド)、T細胞受容体調節薬、サイトカイン受容体調節薬、ペプチドミメティック、および抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fvs、ScFvs、Fab、またはF(ab)2フラグメント、またはエピトープ結合性フラグメント)、核酸分子(例えば、アンチセンス核酸分子、および三重らせん)、小分子、有機化合物、ならびに無機化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。T細胞受容体調節薬の例には、抗T細胞受容体抗体(例えば、抗CD4抗体(例えば、cM-T412(Boeringer)、IDEC-CE9.1(登録商標)(IDECおよびSKB)、mAB 4162W94,オルソクローン、およびOKTcdr4a(Janssen-Cilag))、抗CD3抗体(例えば、ヌビオン(Nuvion)(Product Design Labs)、OKT3(Johnson & Johnson)、またはリツキサン(IDEC))、抗CD5抗体(例えば、抗CD5リシン結合免疫複合体)、抗CD7抗体(例えば、CHH-380(Novartis))、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体(例えば、IDEC-131(IDEC))、抗CD52抗体(例えば、CAMPATH 1H(Ilex))、抗CD2抗体、抗CD11a抗体(例えば、ザネリム(Xanelim)(Genentech))、および抗B7抗体(例えば、IDEC-114(IDEC))、ならびにCTLA4-免疫グロブリンが含まれるが、これらに限定されるものではない。サイトカイン受容体調節薬の例には、可溶性サイトカイン受容体(例えば、TNF-α受容体またはその断片の細胞外ドメイン、IL-1β受容体またはその断片の細胞外ドメイン、およびIL-6受容体またはその断片の細胞外ドメイン)、サイトカインまたはその断片(例えば、インターロイキン(IL)-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、TNF-α、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、およびGM-CSF)、抗サイトカイン受容体抗体(例えば、抗IFN受容体抗体、抗IL-2受容体抗体(例えば、ゼナパックス(Protein Design Labs))、抗IL-4受容体抗体、抗IL-6受容体抗体、抗IL-10受容体抗体、および抗IL-12受容体抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFN抗体、抗TNF-α抗体、抗IL-1β抗体、抗IL-6抗体、抗IL-8抗体(例えば、ABX-IL-8(Abgenix))、および抗IL-12抗体)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
本発明の硫酸化多糖は、サイトカインと組み合わせて投与または処方することができる。サイトカインの例には、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-18(IL-18)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポイエチン(Epo)、表皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、プロラクチン、およびインターフェロン(IFN) (例えば、IFN-αおよびIFN-γ)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
本発明の硫酸化多糖は、ホルモンと組み合わせて投与または処方することができる。ホルモンの例には、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出ホルモン、ACTH、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、視床下部放出因子、インスリン、グルカゴン、エンケファリン、バソプレッシン、カルシトニン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリン類似物質、合成および天然オピオイド、インスリン甲状腺刺激ホルモン、ならびにエンドルフィンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
本発明の硫酸化多糖は、限定されるものではないが、インターフェロンβ-1aおよびインターフェロンβ-lbを含めたβ-インターフェロンと組み合わせて投与または処方することができる。
【0084】
本発明の硫酸化多糖は、吸収促進薬、特にリンパ系を標的とするものと組み合わせて投与または処方することができ、そのような吸収促進薬には、グリココール酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、N-ロウリル-y-D-マルトピラノシド、EDTA、混合ミセル、および参照により全体として本明細書に組み込まれているMuranishi、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst.、7-1-33に報告されているものが含まれるが、これらに限定されるものではない。他の公知の吸収促進薬を用いることもできる。したがって、本発明は、本発明の1つまたは複数の硫酸化多糖と、1つまたは複数の吸収促進薬とを含む医薬組成物も包含する。
【0085】
本発明の硫酸化多糖は、アルキル化剤と組み合わせて投与または処方することができる。アルキル化剤の例には、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン類、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロマイドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
本発明の化合物および他の治療薬は、相加的に作用することができ、より好ましくは相乗的に作用することができる。好ましい実施形態において、本発明の化合物を含む組成物は、別の治療薬の投与と同時に投与され、この別の治療薬は、本発明の化合物を含む同一の組成物の一部として含まれても、またはこの組成物とは異なった組成物中にあってもよい。別の実施形態では、本発明の化合物は、別の治療薬の投与の前または後に投与される。別の実施形態では、本発明の化合物は、別の治療薬、特に抗ウイルス剤による治療を以前に受けていないか、または現在受けていない患者に投与される。
【0087】
一実施形態において、本発明の方法は、本発明の1つまたは複数の硫酸化多糖の投与を、追加治療薬なしで構成する。特定の実施形態において、本発明の方法は、繊維芽細胞増殖阻害剤の非存在下で、本発明の1つまたは複数の硫酸化多糖の投与を含むものである。
【0088】
2. 過ヨウ素酸処理および荷電基共存型アニオン性多糖
本発明は、細胞受容体によるエンドサイトーシスが減少するように、さらに、アニオン性荷電基を効率的に提示して、標的微生物上の領域と相互作用するのを可能にするため、多糖バックボーンの柔軟性が増強するように操作された硫酸化多糖を包含する。
【0089】
本発明によって包含される操作の一つは、過ヨウ素酸塩で硫酸化多糖を処理することである。過ヨウ素酸処理されたアニオン性多糖は、いくつかの糖残基、またはすべての糖残基が過ヨウ素酸酸化されたことによって柔軟性を増強した。この処理によって、ポリマーにおける回転の自由、および立体配座の柔軟性が増大され、生物学的相互作用を促進する柔軟な接合部の提供が可能となる。本発明の過ヨウ素酸処理された硫酸化多糖は、限定されるものではないが、ナトリウム、カルシウム、四級アンモニウム、およびカリウムを含めた、溶解性を確実にするいかなる対イオンも持つことができる。
【0090】
過ヨウ素酸処理され、本明細書に記載の方法および組成物中で使用されうる物質には、下記表1に記載の多糖が含まれる。
【0091】
他のバリエーションには、カルボキシメチル基やスルホン酸基などの非硫酸基の取込みが含まれる。スルホン酸基またはカルボキシメチル基のどちらかで、多糖の電荷置換度を低下させることによって、この多糖が高電荷受容体によってエンドサイトーシスされる可能性が大きく低下し、このためこの多糖の血漿中安定性が増大される。カルボキシメチルデキストラン硫酸は、他で採用された調製方法の改変法を用いることで調製することができる(McLaughlinおよびHirbst、Can. J. Res. 28B:731〜736、1950年;Brownら、Arkiv Kemi 22:189〜206、1964年)。約20gのデキストランを、イソプロパノール(350ml)と、3.85MのNaOH(40ml)との混合物中に懸濁し、混合装置中、5℃で、5分間撹拌する。クロロ酢酸ナトリウム(18g)を添加し、全混合物を窒素雰囲気下に、5℃で60分間撹拌し、この混合物を混合装置から取り出して、25℃で、3日間保存する。カルボキシメチル置換の程度は、25℃におく時間を1日から3日までの間で変化させることによって、また同様に、NaOHに対するCICH2COONaのモル比を1から1.4までの間に維持しながら、アンヒドログルコースに対するCICH2COONaのモル比を、1から4までの間で変化させることによって、調整することができる。中和の後、80%エタノールでサンプルを洗浄し、乾燥させる。
【0092】
好ましい一実施形態において、本発明は、哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、微生物との最大の相互作用を可能にする硫酸化のパーセントを有する荷電基共存型アニオン性多糖の有効量を、そのような治療または予防を必要とする哺乳動物に投与することを含み、このアニオン性多糖が、上記哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内における抗微生物活性を保持する方法を包含する。特定の実施形態において、荷電基共存型アニオン性多糖は、カルボキシメチル基、スルホン酸基、硫酸基、またはこれらの混合物で荷電基共存型とされており、より好ましくは、荷電基共存型アニオン性多糖はカルボキシメチル基で荷電基共存型とされている。特定の一実施形態において、この荷電基共存型アニオン性多糖は、カルボキシメチルデキストラン硫酸またはカルボキシメチルセルロースである。
【0093】
3. 生体内使用のために硫酸化多糖を活性化する方法
別の一実施形態において、本発明は、生体内で投与するために、天然に存在する硫酸化多糖の硫酸化を増大または減少させる方法であって、高電荷密度ポリアニオン細胞受容体によるこの硫酸化多糖の結合を消滅または減弱させるのに十分であり、かつこの硫酸化多糖に抗微生物活性を提供するのに十分な硫酸化をこの硫酸化多糖に提供することを含む方法を包含する。このような硫酸化の範囲は、硫酸化のパーセントが望ましい組成物を調製することによって実現できる。あるいは、天然に存在する物質を、化学的にまたは酵素によって改変するか、または制御することで、硫酸化の範囲の程度を、この硫酸化が、構成している硫酸基と、感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効であり、この硫酸化多糖が、哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内で抗微生物活性を保持する程度にすることができる。
【0094】
下記表1に記載されている化合物は、生体外で抗微生物活性をもつことが実証されているが、これらの化合物の細胞毒性レベル以下の用量において、生体内で抗微生物活性をもつことが以前に示されていない硫酸化多糖の例(デキストラン硫酸は含んでいない)である。
【表1】


【0095】
上記の硫酸化多糖のそれぞれは、また、生体外における抗微生物活性を有するいかなる他の硫酸化多糖も同様に、それらの硫酸化またはイオン電荷の程度が、本発明の方法または組成物における使用に適したレベルになるように改変することができる。
【0096】
本発明は、哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、セルローススルフェート、(14)-2-デオキシ-2-スルファミド-3-O-スルホ-(14)-β-D-グリコピラナン(キトサンの誘導体)、2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-スルホ(14)-β-D-グリコピラナン(キトサンの誘導体)、イノコズチ(Achranthese bidentata)多糖硫酸、オーリントリカルボン酸、カルシウムスピルラン 、カルボキシメチルキチン、化学的に分解されたヘパリン(Org31733)、コンドロイチンポリ硫酸、スルホン酸とジスルホン酸ビフェニル尿素(MDL10128)とのコポリマー、カードラン硫酸、シアノビリン-N(藍細菌由来)、フコイジン、ガラクタン硫酸、グルコサミン-6-硫酸(単糖)、グリチルリジン硫酸(Glycyrrhizin sulfate)、ヘパリン、イノシトールヘキサスルフェート、レンチナン硫酸 、マンナン硫酸、N-アシル化ヘパリンコンジュゲート、N-カルボキシメチルキトサン-N,O-スルフェート、オリゴヌクレオチド-ポリ(L-リジン)-ヘパリン複合体、ペントサンポリ硫酸(キシラノポリヒドロゲン硫酸)、ペプチドグリカンDS-4152、過ヨウ素酸分解されたヘパリン、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド、ポリアセタールポリ硫酸、ポリイノシン-ポリシチジル酸、インドカラムステセラタス(Indocalamus tesselatus)(タケの葉)由来の多糖、プルネリン、ラムナン硫酸、リボフラナン硫酸、ラウリル硫酸ナトリウム、硫酸ドデシルラミナラペンタオシド(アルキルオリゴ糖)、硫酸化された細菌グリコサミノグリカン、硫酸化ドデシルラミナリ-オリゴマー(アルキルオリゴ糖)、硫酸化ガングリオシド、ラミナラ-テトラオース、ラミナラ-ペンタオース、ラミナラ-ヘキサオースから合成された硫酸化ラミナラ-オリゴ糖グリコシド、硫酸化N-脱アセチル化キチン、硫酸化オクタデシルマルトヘキサオシド(アルキルオリゴ糖)、硫酸化オクタデシルリボフルナン、硫酸化オリゴキシラン(ヘパリンミメティック)、硫酸化キシロガラクタン、スルファチド(3'スルホガラクトシルセラミド)、スルホエベルナン(Sulfoevernan)、およびキシロマンナン硫酸から成る群から選択される1つまたは複数の化合
物を投与することを含み、この化合物の硫酸化のパーセントが、構成している硫酸基と感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするように改変または制御されている方法をさらに包含する。
【0097】
4. 医薬組成物および剤形
本発明の硫酸化多糖、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは立体異性体を含む医薬組成物および単一単位剤形も本発明によって包含される。本発明の個々の剤形は、経口投与、粘膜投与(舌下投与、頬側投与、直腸内投与、鼻腔内投与、または腟内投与を含む)、非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、ボーラス注入、動脈内投与、または、静脈内投与を含む)、経皮投与または局所的投与に適したものでもよい。本発明の医薬組成物および剤形は、通常、1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤も含む。無菌剤形も考慮される。
【0098】
代替の一実施形態では、この実施形態によって包含される医薬組成物が、本発明の硫酸化多糖またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは立体異性体と、少なくとも1つの追加治療薬とを含む。追加治療薬の例は上記に1.2節で記載されたものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
本発明の剤形の組成、形状、およびタイプは、通常、それらの使用に応じて変わるであろう。例えば疾患または関連疾患の急性治療に用いられる剤形は、それが含む1つまたは複数の有効成分を、同じ疾患の慢性治療で用いられる剤形より多量に含むことがある。同様に、非経口剤形は、それが含む1つまたは複数の有効成分を、同じ疾患または障害を治療するのに用いられる経口剤形より少量を含むことがある。その方法において本発明によって包含される特定の剤形が相互に異なるであろうこれらの方法や他の方法は、当業者には容易に明らかとなるであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。剤形の例には、錠剤;キャプレット;柔軟かつ弾性であるゼラチンカプセルなどのカプセル;カシェ剤;トローチ;ロゼンジ;分散剤;坐剤;軟膏剤;パップ剤(パップ);ペースト;粉末薬;ドレッシング;クリーム;硬膏;溶液;パッチ;エアゾール(例えば、スプレー式点鼻薬または吸入器);ゲル;懸濁液(例えば、水性もしくは非水性の液体懸濁液、水中油型エマルジョン、または油中水型液体エマルジョン)、溶液、およびエリキシルを含めた、患者に経口投与または粘膜投与するのに適した液体剤形;患者に非経口投与するのに適した液体剤形;ならびに患者に非経口投与するのに適した液体剤形を提供するために再構成することができる無菌固形(例えば、結晶固体または無定形固体)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
通常の医薬組成物および剤形は、1つまたは複数の担体、賦形剤、または希釈剤を含む。適当な賦形剤は、薬学分野の当業者に周知であり、また適当な賦形剤の非限定的な例は、本明細書にも提供される。特定の賦形剤が医薬組成物または剤形に組み入れるのに適しているかどうかは、限定されるものではないが、その剤形を患者に投与する方法を含めた、当技術分野において周知である様々な要因に依存するものである。例えば、錠剤などの経口剤形は、非経口剤形で使用に適さない賦形剤を含有することもある。また、特定の賦形剤の適性は、その剤形中の特定の有効成分にも依存しうる。
【0101】
水はいくつかの化合物の分解を促進することがあるので、本発明は、有効成分を含む、無水の医薬組成物および剤形を、さらに包含する。例えば、薬学分野においては、長期における製剤の貯蔵寿命または安定性などの特性を決定するために、長期貯蔵をシミュレーションする方法として、水(例えば、5%)を添加することが広く認められている。例えば、Jens T. Carstensen、Drug Stability;Principles & Practice, 第2版、Marcel Dekker, NY, NY、1995年、379〜80ページを参照のこと。実際、化合物によっては、水および熱によって、分解が加速する。すなわち、湿分および/または湿度は製剤の製造、取り扱い、包装、保存、出荷、および使用中に一般的に遭遇するので、製剤に対する水の効果は極めて重要なものとなりうる。
【0102】
本発明の無水の医薬組成物および剤形は、無水または含水量の低い成分、および低湿分または低い湿度の条件を用いることで調製できる。
【0103】
無水医薬組成物は、無水の性質が維持されるように、調製および保存されるべきである。従って、無水組成物は、それらを適当な定型キットに含めることができるように、水への露出を予防することが知られている物質を用いて包装することが好ましい。適当な包装の例には、密閉されたホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスター包装、およびストリップ包装が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
本発明は、有効成分が分解するであろう速度を減速させる1つまたは複数の化合物を含む医薬組成物および剤形をさらに包含する。本明細書において、「安定化剤」と呼ばれるそのような化合物には、アスコルビン酸、pH緩衝液、または塩緩衝液などの酸化予防剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
賦形剤の量およびタイプと同様に、剤形中の有効成分の量および特定タイプは、限定されるものではないが、それが患者に投与される経路などの要因によって変わってもよい。しかし、本発明の硫酸化多糖、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは立体異性体を含む本発明の典型的な剤形は、1日あたり約0.01mg/kg〜200mg/kgの用量を提供するために、1単位あたり0.1mg〜1500mgを含む。
【0106】
4.1 経口剤形
本発明の経口投与に適した医薬組成物は、限定されるものではないが、錠剤(例えば、そしゃく錠)、キャプレッツ、カプセル、および液体(例えば、味付きシロップ)などの個別の剤形で提供することができる。そのような剤形は、あらかじめ定められた量の有効成分を含有し、当業者に周知の調剤方法で調製することができる。概説として、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。
【0107】
本発明の典型的な経口剤形は、従来の調剤合成技法に従って、少なくとも1つの賦形剤との密接な混合物中に、有効成分を混合することによって調製される。賦形剤は、投与に望ましい製剤に依存して様々な形態を取ることができる。例えば、経口液剤またはエアゾール剤形での使用に適した賦形剤には、水、グリコール、油、アルコール、香料添加剤、保存剤、および着色剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。固体経口剤形(例えば、粉末薬、錠剤、カプセル、およびキャプレッツ)での使用に適した賦形剤の例には、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、および崩壊剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
それらの投与が容易であるため、錠剤およびカプセルは、最も有利な経口投薬単位形態を表し、この場合には、固体の賦形剤が利用される。望ましい場合には、水性または非水性の標準的な技法で錠剤をコーティングすることができる。そのような剤形は、いかなる製剤方法でも、調製することができる。一般的には、医薬組成物および剤形は、有効成分を一様かつ密接に液体担体、微細に分割された固体担体、またはこれら両方と混合し、必要ならば、その後産物を望ましい提示形態に形成することによって調製される。
【0109】
例えば、錠剤は、圧縮または成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、粉末薬または顆粒などの自由流動形態にある有効成分を、任意選択で賦形剤と混合し、適当な機械で圧縮することによって、調製することができる。成形錠剤は、加湿された粉末化合物と、不活性な液体希釈剤との混合物を適当な機械で成形することによって、調製することができる。
【0110】
本発明の経口剤形中で使用できる賦形剤の例には、結合剤、充填剤、崩壊剤、および潤滑剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。医薬組成物および剤形での使用に適した結合剤には、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、もしくは他のデンプン、ゼラチン、アカシアなどの天然ゴムもしくは合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアルゴム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、プレゼラチン化(pre-gelatinized)デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、No.2208、2906、2910)、微晶性セルロース、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
本明細書に開示された医薬組成物および剤形での使用に適した充填剤の例にはタルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末薬)、微晶性セルロース、粉末セルロース、デクストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、珪酸、ソルビトール、デンプン、プレゼラチン化デンプン、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物中の結合剤または充填剤は、通常、医薬組成物または剤形の約50重量パーセント〜約99重量パーセントの範囲で存在する。
【0112】
微晶性セルロースの適当な形態には、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105として販売されている物質(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の一結合剤としては、AVICEL RC-581として販売されている微晶性セルロースとナトリウムカルボキシメチルセルロースとの混合物がある。適当な無水または低湿分の賦形剤または添加物には、AVICEL-PH-103(登録商標)およびデンプン1500 LMが含まれる。
【0113】
崩壊剤は、本発明の組成物において、水性環境にさらされると崩壊する錠剤を提供するのに用いられる。あまりに多量の崩壊剤を含有する錠剤は保存中に崩壊するかもしれないし、一方、あまりに少量の崩壊剤を含有するものは、望ましい速度で崩壊しないか、または望ましい条件下でも崩壊しないかもしれない。したがって、有効成分の遊離量を不利に変化させるほど多すぎでもなく、また少なすぎでもない十分な量の崩壊剤を、本発明の固体経口剤形を形成するのに用いるべきである。使用される崩壊剤の量は、製剤のタイプによって異なり、当業者には容易に認識できるものである。通常の医薬組成物は、約0.5重量パーセント〜約15重量パーセントの崩壊剤を含み、具体的には約1重量パーセント〜約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0114】
本発明の医薬組成物および剤形で使用できる崩壊剤には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、ナトリウムデンプングリコレート、ジャガイモまたはタピオカデンプン、プレゼラチン化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴムおよびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
本発明の医薬組成物および剤形で用いることができる潤滑剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。別の潤滑剤には、例えば、サイロイドシリカゲル(AEROSIL 200、Baltimore, MDのW. R. Grace社が製造 )、合成シリカの凝固エアゾール(Plano, TXのDegussa社が販売)、CAB-0-SIL(Boston, MAのCabot社が販売する発熱性二酸化ケイ素製品)およびこれらの混合物が含まれる。少しでも用いるなら、潤滑剤は、通常、それらが組み込まれる医薬組成物または剤形の約1重量パーセント未満の量で使用される。
【0116】
4.2 遅延放出剤形
本発明の有効成分は、制御放出法、または当業者に周知の送達装置で投与することができる。このような例には、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3845770号、第3916899号、第3536809号、第3598123号、第4008719号、第5674533号、第5059595号、第5591767号、第5120548号、第5073543号、第5639476号、第5354556号、および第5733566号に記載されているものが含まれるが、これらに限定されるものではない。このような剤形は、様々な割合で所望の放出プロフィールを提供するために、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他の重合体マトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層被覆、マイクロ粒子、リポソーム、微細球、またはこれらの組合せを用いることで1つまたは複数の有効成分の遅延放出または制御放出を提供するのに利用することができる。本明細書に記載されているものを含めた、当業者に公知の適当な制御放出性製剤は、本発明の有効成分と併せて用いるために容易に選択することができる。したがって、本発明は、限定されるものではないが、制御放出用に適合されている、錠剤、カプセル、ジェルキャップ、キャプレッツなどの経口投与に適した単一単位剤形を包含する。
【0117】
すべての制御放出性医薬製品は、それらの非制御性の対応物で達成される薬物治療を、それ以上のものに向上させるという、共通の目標をもつ。理想的には、医療において、最適に設計された制御放出製剤の使用は、最小の時間で病状を回復するか、または制御するのに用いられる製剤原料が最少量であることを特徴とする。制御放出性製剤の利点には、薬剤活性の拡大、投与頻度の減少、および患者コンプライアンスの増強が含まれる。さらに、制御放出性製剤は、作用開始時間、または、薬物の血中レベルなどの他の特性に影響を与えるために用いることができ、したがって、副作用(例えば、有害効果)の発生に影響を与えることができる。
【0118】
大部分の制御放出性製剤は最初に望ましい治療効果を迅速にもたらす薬物(有効成分)の量を放出し、そして、このレベルの治療効果または予防効果を長期間維持するために、他の量を漸進的かつ継続的に放出するように設計される。薬物の体内レベルを一定に維持するためには、薬物が身体から代謝される量および排出される量を置換するであろう速度で、この剤形から薬物を放出しなければならない。
【0119】
有効成分の制御放出は、限定されるものではないが、pH、温度、酵素、水、または他の生理的条件もしくは化合物を含めた様々な条件で刺激することができる。
【0120】
4.3 非経口剤形
非経口剤形は、限定されるものではないが、皮下経路、静脈内経路(ボーラス注入を含む)、筋肉内経路、および動脈内経路を含めた様々な経路で患者に投与することができる。これらの投与では、通常、夾雑物に対する患者の自然な防御が迂回されるので、非経口剤形は、無菌であるか、患者に投与する前に殺菌できるものであることが好ましい。非経口剤形の例には、注入できる状態にある溶液、注入用の薬学的に許容される媒体に溶解または懸濁できる状態にある乾燥製品および/または凍結乾燥製品(再構成可能粉末薬)、注入できる状態にある懸濁液、およびエマルジョンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
本発明の非経口剤形を提供するのに用いることができる適当な媒体は当業者に周知である。その例には、注入用水(USP);限定されるものではないが、塩化ナトリウム注入液、リンゲル注入液、ブドウ糖注入液、ブドウ糖および塩化ナトリウムの注入液、ラクトリンゲル注入液などの水性媒体;限定されるものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどの水混和性媒体;ならびに、限定されるものではないが、コーン油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステート、および安息香酸ベンジルなどの非水性媒体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
本明細書に開示された有効成分の1つまたは複数の溶解性を増大させる化合物も、本発明の非経口剤形に組み込むことができる。
【0123】
4. 4 経皮剤形
経皮剤形には、「リザーバ型」または「マトリックス型」のパッチが含まれるが、これは、皮膚に適用し、特定な期間身につけていることで、望ましい量の有効成分が浸透するのを可能にするものである。
【0124】
本発明に包含される経皮剤形および局所的剤形を提供するのに使用できる適当な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)、および他の物質は、薬学分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物または剤形が適用される特定の組織に依存するものである。このような事実を考慮した上で、典型的な賦形剤には、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、鉱油、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
治療される特定の組織に応じて、本発明の有効成分による治療の前、同時、または後に別の成分を用いることができる。例えば、透過増強剤は、有効成分の組織への送達を補助するために用いることができる。適当な透過増強剤には、アセトン;エタノール、オレイル、およびテトラヒドロフリルなどの様々なアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;コリドングレード(ポピドン、ポリビドン);尿素;ならびにツイーン80(ポリソルベート80)およびスパン60(モノステアリン酸ソルビタン)などの様々な水溶性または水不溶性糖エステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
医薬組成物もしくは剤形、または医薬組成物もしくは剤形が適用される組織のpHは、1つまたは複数の有効成分の送達を改善するように調整することもできる。同様に、溶剤担体の極性、イオン強度、または張度も、送達を改善するように調整することができる。送達を改善するためには、ステアリン酸塩などの化合物を医薬組成物または剤形に添加して、1つまたは複数の有効成分の親水性または脂溶性を有利に変化させることもできる。この点において、ステアリン酸塩は、製剤のための脂質媒体として、または、乳化剤もしくは界面活性剤として、そして送達促進剤もしくは透過増強薬剤として機能することができる。有効成分の異なった塩、水和物、または溶媒和化合物を用いることで、その結果得られる組成物の特性をさらに調整することができる。
【0127】
4.5 局所的剤形
本発明の局所的剤形には、クリーム、ローション、軟膏剤、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁液、または当業者に公知の他の形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing, Easton PA (1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第4版、Lea & Febiger、Philadelphia (1985)を参照のこと。本発明の好ましい実施形態において、局所投与する際の本発明の硫酸化多糖は、分子量が約500000より大きいものである。
【0128】
本発明に包含される経皮剤形および局所剤形を提供するのに使用できる適当な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)、および他の物質は、薬学分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物または剤形が適用される特定の組織に依存するものである。このような事実を考慮した上で、典型的な賦形剤には、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1、3-ジオール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、鉱油、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
治療される特定の組織に応じて、本発明の有効成分による治療の前、同時、または後に別の成分を用いることができる。例えば、透過増強剤は、有効成分の組織への送達を補助するために用いることができる。適当な透過増強剤には、アセトン;エタノール、オレイル、およびテトラヒドロフリルなどの様々なアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;コリドングレード(ポピドン、ポリビドン);尿素;ならびにツイーン80(ポリソルベート80)およびスパン60(モノステアリン酸ソルビタン)などの様々な水可溶性または水不溶性糖エステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
4.6 粘膜剤形
本発明の粘膜剤形には、点眼液、スプレー、およびエアゾール、または当業者に公知の他の形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing, Easton PA (1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第4版、Lea & Febiger、Philadelphia (1985)を参照のこと。口腔内の粘膜組織を治療するのに適当な剤形は、口内洗浄剤として、または、経口ゲルとして製剤することができる。一実施形態では、エアゾールは担体を含む。別の実施形態では、エアゾールは無担体である。
【0131】
本発明の硫酸化多糖は、吸入により、直接肺に投与することもできる。吸入による投与では、硫酸化多糖を、多くの異なった装置を用いて、便利に肺に送達することができる。例えば、沸点の低い適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを含有するキャニスタを利用する計量投与吸入器(「MDI」)を用いて、硫酸化多糖を直接肺に送達することができる。MDI装置は、3M Corporation社、Aventis社、Boehringer Ingleheim社、Forest Laboratories社、Glaxo-Wellcome社、Schering Plough社、およびVectura社などの多数の供給元から入手できる。
【0132】
あるいは、乾燥粉末吸入器(DPI)装置を用いて、硫酸化多糖を肺に投与することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Raleighら、Proc. Amer. Assoc. Cancer Research Annual Meeting、1999年、40, 397を参照)。DPI装置は、通常、乾燥粉末の雲を、ガス炸裂などの機構を用いて、容器中に生成し、この後に、これを患者が吸入することができる。DPI装置も、当技術分野で周知であり、例えば、Fisons社、Glaxo-Wellcome社、Inhale Therapeutic Systems社、ML Laboratories社、Qdose社およびVectura社を含めた、多数の供給メーカーから購入できる。よく利用される変形として、反復投与DPI(「MDDPI」)システムがあるが、このシステムは複数の治療用量の送達を可能にするものである。MDDPI装置は、AstraZeneca社、Glaxo-Wellcome社、IVAX社、Schering Plough社、SkyePharma社、およびVectura社などの会社から入手できる。例えば、吸入器またはインサフレーターで使用するためのゼラチンカプセルおよびゼラチンカートリッジは、乳糖またはデンプンなど、これらのシステム用の適当な粉末ベースと化合物との粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0133】
硫酸化多糖を肺に送達するのに用いることができる別のタイプの装置には、例えば、Aradigm社が供給する液体噴霧装置がある。液体噴霧システムは、極めて小さい噴口を用いて、その後直接肺に吸入することができる液体薬物製剤を煙霧化する。
【0134】
好ましい実施形態では、硫酸化多糖を肺に送達するのに、噴霧装置を用いる。噴霧装置は、容易に吸入できる微粒子を形成するのに、例えば超音波エネルギーを用いることによって、液体薬物製剤からエアゾールを生成する(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Verschoyleら、British J. Cancer、1999年、80, Suppl 2, 96を参照)。噴霧装置の例には、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery社(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Armerら、米国特許第5954047号;van der Lindenら、米国特許第5950619号;van der Lindenら、米国特許第5970974号)、Aventis社、およびBatelle Pulmonary Therapeutics社が供給する装置が含まれる。
【0135】
特に好ましい実施形態では、電気流体力学(「EHD」)エアゾール装置が硫酸化多糖を肺に送達するのに用いられる。EHDエアゾール装置は、電気エネルギーを用いて、液体薬物溶液または懸濁液を煙霧化する(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Noakesら、米国特許第4765539号;Coffee、米国特許第4962885号;Coffee、PCT出願WO94/12285;Coffee、PCT出願WO94/14543;Coffee、PCT出願WO95/26234;Coffee、PCT出願WO95/26235;Coffee、PCT出願WO95/32807を参照)。硫酸化多糖製剤の電気化学特性は、この薬物を肺にEHDエアゾール装置で送達する際、これを最適化するための重要パラメータとなりうるものであって、このような最適化は、当業者が慣行的に行うことである。EHDエアゾール装置は、既存の肺送達技術より、薬物を効率的に肺に送達しうるものである。硫酸化多糖を肺内送達する他の方法も、当業者に公知であり、本発明の範囲内にある。
【0136】
噴霧装置、液体噴霧装置、およびEHDエアゾール装置を用いた使用に適した液体薬物製剤は、通常、硫酸化多糖を薬学的に許容でされる担体と共に含むだろう。この薬学的に許容される担体は、アルコール、水、ポリエチレングリコール、またはペルフルオロカーボンなどの液体であることが好ましい。硫酸化多糖の溶液または懸濁液のエアゾール特性を変化させるために、任意選択で、別の物質を添加することができる。この物質は、アルコール、グリコール、ポリグリコール、または脂肪酸などの液体であることが好ましい。エアゾール装置での使用に適した液体薬物溶液または懸濁液を製剤化する他の方法は、当業者に公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Biesalski、米国特許第5112598号;Biesalski、米国特許第5556611号を参照)。硫酸化多糖は、例えば、ココアバターや他のグリセリドなどの従来の坐剤ベースを含有する、坐剤または保持浣腸剤などの直腸用または腟内用組成物中に製剤化することもできる。
【0137】
上に記載された製剤に加えて、硫酸化多糖をデポ製剤として製剤化することができる。そのような長時間作用する製剤は、移植(例えば、皮下移植または筋肉内移植)または筋肉内注射で投与することができる。したがって、例えば、この化合物は、適当なポリマーもしくは疎水性物質(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂と共に製剤化するか、または、難溶性誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化することができる。
【0138】
あるいは、他の製薬送達システムを利用することもできる。リポソームおよびエマルジョンは、硫酸化多糖を送達するのに使用できる送達媒体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなど、特定の有機溶媒を利用することもできるが、通常、より強い毒性が代償として伴う。硫酸化多糖は制御放出システムでも送達できる。一実施形態では、ポンプを用いることができる(Sefton、CRC Crit. Ref Biomed Eng、1987年、14, 201;Buchwaldら、Surgery、1980年、88, 507;Saudekら、N. Engl. J. Med.、1989年、321, 574)。別の実施形態では、重合物質を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise (編)、CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, SmolenおよびBall (編)、Wiley, New York (1984);RangerおよびPeppas、J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem.、1983年、23, 61を参照;Levyら、Science、1985年、228, 190;Duringら、Ann. Neurol.、1989年、25,351;Howardら、1989年、J. Neurosurg. 71, 105も参照)。さらに別の実施形態では、制御放出システムを本発明の化合物の標的、例えば、肺の近傍に配置し、それにより全身用量の一部のみが必要となるようにすることができる(例えばGoodson, in Medical Applications of Controlled Release、同上、第2巻、115ページ (1984))。他の制御放出システムを用いることもできる(例えば、Langer、Science、1990年、249,1527を参照)。
【0139】
本発明に包含される粘膜剤形を提供するのに使用できる適当な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)、および他の物質は、薬学分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物または剤形が投与される特定の部位および方法に依存するものである。このような事実を考慮した上で、典型的な賦形剤には、水、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、鉱油、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらは非毒性であり、薬学的に許容される。そのような追加成分の例は当技術分野で周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。
【0140】
医薬組成物もしくは剤形、または医薬組成物もしくは剤形が適用される組織のpHは、1つまたは複数の有効成分の送達を改善するように調整することもできる。同様に、溶剤担体の極性、イオン強度、または張度も、送達を改善するように調整することができる。送達を改善するためには、ステアリン酸塩などの化合物を医薬組成物または剤形に添加して、1つまたは複数の有効成分の親水性または脂溶性を有利に変化させることもできる。この点において、ステアリン酸塩は、製剤のための脂質媒体として、または、乳化剤もしくは界面活性剤として、そして送達促進剤もしくは透過増強薬剤として機能することができる。有効成分の異なった塩、水和物、または溶媒和化合物を用いることで、その結果得られる組成物の特性をさらに調整することができる。
【0141】
4.7 コンドームおよび予防用具
本発明の好ましい実施形態では、本発明の硫酸化多糖は、コンドーム用または他の予防用具用のコーティングとして用いることができる。同様に、この硫酸化多糖は、限定されるものではないが、ゴム手袋、手術用マスク、CPR補助装置、舌圧子、包帯、スポンジ、ナプキン、歯科用具、および温度計プローブカバーを含めた、手術器具用および保護用具用のコーティングとして用いることができる。本明細書に記載のコーティングとして用いられる際に、本発明の硫酸化多糖は、分子量が500000より大きいものであることが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の硫酸化多糖は、手術用手袋を裏打ちするのに用いられる滑石潤滑剤粉末と併用される。本発明の硫酸化多糖をコーティングとして用いる方法は、当業者に周知であるだろう。本明細書に、参照により組み込まれている米国特許第4869270号に類似の方法を見いだすことができる。
【0142】
4.8. 消毒薬と洗浄薬
本発明の一実施形態において、本発明の硫酸化多糖をウイルスまたは疾患の蔓延を予防するために、病院、実験室、洗面所、講堂、スタジアム、コンベンションセンター、レストラン、フィットネスセンター、地下鉄ターミナル、バスターミナル、空港、郵便局、オフィス、生活排水処理施設、下水、水処理施設、ポンプ場、自動車、飛行機、列車、家、ロッカーおよび家具における無生物を消毒するのに使用できる。
【0143】
消毒薬組成物は、本発明の1つまたは複数の硫酸化多糖を、粉末、ペースト、濃縮物、溶液、スプレー、セッケン、フォーム、ゲル、ローション、クリーム、ハンドウォッシュ、口内洗浄剤、処理済みタオル、処理済みウェットティッシュ、処理済み綿棒、または処理済みパッドの形態で含む。
【0144】
特定の実施形態では、本発明の硫酸化多糖は、限定されるものではないが、血液、血漿、卵子、精子、または精液を含めた、体液を消毒するのに用いることができる。本発明の硫酸化多糖は、直接体液に添加することも、または、限定されるものではないが、プラスチックビーズ、ガラスビーズ、またはフィルターを含めた固形支持体に結合させ、この固形支持体を体液に接触させて配置することもできる。
【0145】
4.9 栄養製品および栄養補助食品
硫酸化多糖は、限定されるものではないが、一般用の食物組成物および栄養補助食品を含めた栄養製品に組み入れることもできる。硫酸化多糖は、同時に消費されるように、各種食物に添加することもできる。本発明の硫酸化多糖は、食品添加物として、従来の食品添加物と同様の方法で用いてもよく、従って、味を向上させるために他の成分と混ぜる必要があるだけである。味の増進には、食物の本来の味に加えて、新鮮さ、活力、清潔さ、品位、またはすがすがしさを食物に与えることが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
この栄養補助食品は、医薬組成物と同じ製剤成分を使用しなくとも、または同程度の無菌性および他のFDA要件を持たなくともよいことが、理解されるであろう。栄養補助食品は、液体形態、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液であってもよいし、あるいは、使用前に、水または他のいかなる適当な液体によってでも再構成するような製品の形態にあってもよい。そのような液体調製物は、茶、健康飲料、飲用シェーク、濃縮液、または、飲料方法が、液体可溶性の錠剤、カプセル、錠剤、または粉末を、液体中に溶解させること、およびこの結果得られた飲料を消費することによって、用意されるような、液体可溶性の錠剤、カプセル、丸薬、もしくは粉末など、従来の方法で調製されたものでもよい。あるいは、この栄養補助食品は、従来の方法で調製された錠剤またはカプセルの形態にあり、任意選択で、上で論じたような、ビタミン、鉱物、他のハーブ補助食品、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、または、湿潤剤を含めた他の栄養補助食品を含む。この錠剤は、当技術分野で周知の方法で、コーティングすることもできる。好ましい実施形態では、この栄養補助食品は、経口消費用の液体中で溶解されるカプセルまたは粉末の形態を取ることができる。
【0147】
飲料中、または食物製品に組み入れられる硫酸化多糖の量は、飲料、食物、および所期の効果の種類に依存するだろう。一般に、1回分は、食物組成物の約0.1%〜約50%、好ましくは約0.5%〜約20%の量を含む。食物製品は、食物組成物の約1重量%〜約10重量%の量の硫酸化多糖を含むことが、より好ましい。
【0148】
食物の例には、甘味(キャンディ、ゼリー、ジャムなど)、ガム、味噌類、焼かれた製菓もしくは成型された製菓(クッキー、ビスケットなど)、蒸された製菓、カカオもしくはカカオ製品(チョコレートおよびココア)、冷凍製菓(アイスクリーム、氷など)、飲料(果汁、ソフトドリンク、炭酸飲料)、健康ドリンク、健康バー、および茶(緑茶、紅茶など)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
5. アッセイおよび動物モデル
本発明の硫酸化多糖、組成物、および剤形は、生体外または生体内で、当技術分野で公知の、様々な抗微生物活性を試験する方法によって試験することができる。例えば、以下に論じる方法と、実施例全体で用いられた方法を参照されたい。
【0150】
本発明の化合物の抗微生物活性の程度を決定するために、本発明に従って、細胞培養、動物モデル、およびヒト被験者に対する投与など、多くのアッセイを利用することができる。本明細書に記載のアッセイは、本発明の化合物の存在下における微生物の増殖特性を決定するために、時間経過に対する微生物増殖をアッセイするのに用いることができる。
【0151】
一実施形態では、微生物および本発明の化合物は、許容的な細胞系(例えば、一次細胞、形質転換細胞系、患者の組織サンプルなど)、または増殖培地(例えば、LBブロス/寒天培地、YTブロス/寒天培地、血液寒天培地など)に添加される。微生物の増殖/感染は、本発明の化合物の非存在下における、微生物の増殖/感染と比較することができる。本発明の化合物の抗微活性は、本発明の化合物の存在下における微生物増殖/感染の減弱によって実証される。限定されるものではないが、免疫蛍光染色、免疫ブロットまたは微生物特異的な核酸の検出(例えば、in situハイブリダイゼーション、または、細胞溶解後に、サザンブロットもしくはRT-PCR分析)、増殖/感染による細胞変性効果の目視検査/顕微鏡検査(例えば、微生物がウイルスの場合では、細胞円形化、細胞脱離、細胞溶解、多核シンシチウムの形成)、微生物力価(例えば、プラーク形成単位、コロニー形成単位など)、プラーク/コロニー数を含めた、当技術分野で公知のいかなる方法も、増殖/感染を決定するのに用いることができる。特定の実施形態では、微生物および本発明の化合物は、同時に細胞または増殖培地に添加される。別の特定の実施形態では、微生物は、本発明の化合物の前に、細胞または増殖培地に添加される。別の特定の実施形態では、本発明の化合物は、微生物の前に、細胞または増殖培地に添加される。
【0152】
別の実施形態では、微生物および本発明の化合物は、微生物に感染されやすい動物被験者に投与する。感染の発生回数、重篤度、期間、微生物負荷率、死亡率などは、微生物だけを被験者に投与したとき(本発明の化合物の非存在下)に観察される感染の発生回数、重篤度、期間、微生物負荷率、死亡率などと比較することができる。本発明の化合物の抗微生物活性は、本発明の化合物の存在下における、感染の発生回数、重篤度、期間、微生物負荷率、死亡率などの減少によって実証される。特定の実施形態では、微生物および本発明の化合物は、同時に動物被験者に投与される。別の特定の実施形態では、微生物は、本発明の化合物の前に、動物被験者に投与される。別の特定の実施形態では、本発明の化合物は、微生物の前に動物被験者に投与される。
【0153】
別の実施形態では、微生物の増殖率は、本発明の化合物の存在下または非存在下において、感染後の複数の時点に、ヒトまたは動物被験者由来の細胞培地または体液/臨床サンプル(例えば、鼻の吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液、または血清)をサンプリングし、微生物レベルを測定することによって、試験することができる。特定の実施形態では、微生物の増殖率は、細胞培養での増殖、許容的な増殖培地での増殖、または被験者での増殖後にサンプル中における微生物の存在を、限定されるものではないが、例えば、アッセイされる微生物を免疫特異的に認識する抗体を用いた免疫検定法(例えば、ELISA;ELISAに関する考察は、例えば、Ausubelら編、1994年、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc.、New York、11.2.1を参照)、免疫蛍光染色、またはイムノブロット分析、あるいは微生物特異的な核酸を検出(例えばサザンブロット、やRT-PCR分析などで)などの当技術分野で周知のいかなる方法を用いて、評価することによって、アッセイされる。
【0154】
他の特定の実施形態では、微生物の増殖率は、被験者における増殖の後にアッセイされる。一実施形態では、微生物はウイルスである。生体内の抗ウイルス活性の標準モデルには、第一感染マカクザルモデル(Le Grandら、Symp. Nonhum Primate Models AIDS. 1993年9月、19〜22、11);ならびに、限定されるものではないが、サイトメガロウイルス感染モルモットモデル;サイトメガロウイルス感染ラットCMVモデル;ヒトサイトメガロウイルス感染のSCID-hu(thy/liv)マウスモデル;SCID-huマウスモデルにおける目のサイトメガロウイルス感染;サル水痘モデル;SCID-huマウスモデルにおけるT細胞および皮膚の水痘帯状疱疹感染;インフルエンザウイルス感染のマウスモデル;インフルエンザウイルス感染のフェレットモデル;呼吸器合胞体ウイルスのコットンラットモデル;HBV感染のトランスジェニックマウスモデル;B型肝炎感染のアヒルモデル;B型肝炎ウイルス感染のウッドチャックモデル;ロタウイルスの成体マウスモデル;SIV感染のマカクモデル;HIV感染のSCID-hu thy-livマウスモデル;およびHIV-1感染のチンパンジーモデルを含めた、The Handbook of Animal Models of Infection (ZakおよびSande編、Academic Press、第1版(1999))に記載のもの が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
特定の実施形態では、ウイルスの力価は、細胞培地、または、感染細胞もしくは感染した被験者由来の体液/臨床サンプルを採取し、サンプルの連続希釈を調製し、そして、感染されやすい細胞の単層を、シングルプラークの出現を可能にするウイルスの希釈率のウイルスで感染させることによって測定できる。その後、プラークを計数し、ウイルス力価を1mlサンプルあたりのプラーク形成単位として表す。
【0156】
別の実施形態では、微生物は寄生虫である。生体内における抗寄生虫活性の標準モデルには、限定されるものではないが、膣トリコモナス感染の腟内マウスモデルを含めた、The Handbook of Animal Models of Infection (ZakおよびSande編、Academic Press、第1版(1999))に記載のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0157】
別の実施形態では、微生物は真菌である。生体内における抗真菌活性の標準モデルには、限定されるものではないが、カンジダ菌敗血症のげっ歯類モデル;ラットにおける全身カンジダアルビカンス(candida albicans)感染モデル;マウスモデルにおける腔咽頭および胃腸カンジダ感染;局部カンジダ症の足浮腫モデル;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症のマウスモデル;マウスモデルにおける肺クリプトコッカス感染;ラットモデルにおける肺クリプトコックスネオフォルマンス感染;侵入性肺アスペルギルス症のラットモデル;カンジダ菌角膜真菌症のウサギモデル;クリプトコックス性髄膜炎のウサギモデル;カンジダアルビカンスによる斜上腎盂腎炎のラットモデル;カンジダ菌膣感染症のラットモデル;およびカンジダ菌腟感染のマウスモデルを含めた、The Handbook of Animal Models of Infection (ZakおよびSande編、Academic Press、第1版(1999))に記載のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
別の実施形態では、微生物は細菌である。生体内における抗細菌活性の標準モデルには、限定されるものではないが、マウス腹膜炎/敗血症モデル;マウス大腿感染モデル;マウス皮下綿木綿糸モデル;マウス腹膜炎モデル;異物が関与する腹膜炎マウスモデル;ラット腹膜炎複数菌感染モデル;カンピロバクタジェジュニ感染のマウスモデル;腸炎大腸菌感染のサックリングマウスモデル;細菌性赤痢のウサギモデル;腸ビブリオコレラ感染のRITARDウサギモデル;ヘリコバクターピロリ感染のマウスモデル;ヘリコバクターのフェレットモデル;梅毒のハムスターモデル;後天性梅毒および先天性梅毒のモルモットモデル;レジオネラ病のモルモットモデル;結核のマウスモデル;播種性トリ結核菌複合感染のベージュマウスモデル;アルマジロハンセン病モデル;ハンセン病のマウスモデル;ライム関節炎のハムスターモデル;細菌性結膜炎のウサギモデル;細菌性角膜炎のマウスモデル;細菌性角膜炎のウサギイントラストマル(intrastomal)感染モデル;急性中耳炎のゲルビルモデル;細菌性外耳炎のモルモットモデル;耳炎培地のチンチラモデル;急性中耳炎のモルモットモデル;細菌性副睾丸炎のラットモデル;マイコプラズマ生殖器感染のマウスモデル;上行尿路感染のマウスモデル;短期および長期の留置カテーテルが関与する上行UTIのマウスモデル;無症状腎盂腎炎のラットモデル;慢性膀胱炎のラットモデル;マウス肺炎球菌性肺炎モデル;マイコプラズマ肺感染のハムスターモデル;脛骨の細菌性骨髄炎のラットモデル;造血骨髄炎のラットモデル;脛骨の細菌性骨髄炎のウサギモデル;関節形成のラットモデル;関節形成のウサギモデル;大便連鎖球菌のマウスモデル細菌性心内膜炎のウサギモデル;髄膜炎の成体ラットモデル;および細菌性髄膜炎のウサギモデルを含めた、The Handbook of Animal Models of Infection (ZakおよびSande編、Academic Press、第1版(1999))に記載のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
特定の一実施形態では、被験者中の微生物の増殖速度は、被験者中の微生物に対する抗体の力価によって、推計することができる。抗体血清力価は、当技術分野で周知のいかなる方法でも決定することができ、限定されるものではないが、例えば、血清サンプル中の抗体または抗体フラグメントの量を、例えば、ELISAで定量することができる。さらに、硫酸化多糖の生体内活性は、化合物を直接試験動物に投与し、体液(例えば、鼻の吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液、または血清)を採取し、この体液を抗微生物活性について試験することによって決定することができる。
【0160】
微生物レベルをアッセイするためのサンプルが体液/臨床サンプル(例えば、鼻の吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液、または血清)である実施形態では、サンプルに無傷細胞が含有されていても、されていなくてもよい。被験者から得たサンプルに無傷細胞が含有される場合、このサンプルを直接処理することができるが、無傷細胞が得られていない単離株は、まず、許容的な細胞系(例えば、一次細胞、形質転換細胞系、患者の組織サンプルなど)、または、増殖培地(例えば、LBブロス/寒天培地、YTブロス/寒天培地、血液寒天培地など)で、培養してもよいし、しなくてもよい。細胞懸濁液は、例えば、300xg、室温で、5分間、遠心分離することによって、分離することができ、その後、pH7.4のPBS(Ca++も、Mg++も含まない)を用い、同じ条件下で、洗浄が行われる。細胞ペレットは、分析用の小量のPBSに再懸濁することができる。無傷細胞を含有する主要な臨床単離株は、PBSで混合し、300xgで5分間、室温で遠心分離することができる。無菌ピペットチップを用いて境界面から粘液を取り除き、細胞ペレットを、もう一度、PBSを用いて、同じ条件下で洗浄することができる。その後、ペレットは、分析用の小量のPBSに再懸濁することができる。
【0161】
別の実施形態では、本発明の化合物は、微生物に感染したヒト被験者に投与される。感染の発生回数、重篤度、期間、ウイルス負荷、死亡率などを、本発明の化合物の非存在下、またはプラセボの存在下に、微生物に感染したヒト被験者で観測される感染の発生回数、重篤度、期間、ウイルス負荷、死亡率などと比較することができる。本発明の化合物の抗微生物活性は、本発明の化合物の存在下における、感染の発生回数、重篤度、期間、ウイルス負荷、死亡率などの減少によって実証される。上記のものなど、当技術分野で公知のいかなる方法も、被験者の抗微生物活性を決定するのに用いることができる。
【0162】
さらに、硫酸化多糖の生体内活性は、化合物を直接、動物またはヒトの被験者に投与し、体液/臨床サンプル(例えば、鼻の吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液、または血清)を採取し、この体液/臨床サンプルの抗ウイルス活性について試験(例えば、微生物の存在下に、培養細胞に添加することによって)することによって、決定することができる。
【0163】
通常、生体内安定性は、当業者に公知である様々なモデルによって、決定することができる。具体的には、生体内安定性を腎臓潅流アッセイで決定することができる。いずれのタイプの分析においても、試験化合物は、例えば、トリチウムで標識することができる。腎臓潅流法は、Tayら(Am. J. Physiol., (1991), 260:F549〜F554)に詳細に記載されている。簡潔には、例えば、雄Sprague-Dawleyラットからのラット腎臓を、5%のウシ血清アルブミン(BSA)と共に、アミノ酸を含む改変クレブズヘンセレイト緩衝液中に灌流し、95%O2-5%CO2ガスを持続的に供給する。灌流されたサンプルは、例えばセファロースQの19×1/cm2カラムを用いて、イオン交換クロマトグラフィーに供することができる。サンプルは、6M尿素、0.05M Tris、0.005%(w/v) CHAPS、pH7.0中でカラムに供し、同一緩衝液中の0.15〜2.5M NaCl線形勾配によって、流速0.5ml/分で溶出させる。この技法を用いると、非常に良い回収が得られる。
【0164】
本発明の適切かつ重要な特徴を、上記に明示した。当業者であるなら、多数の変形形態および実施形態が創出されうることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての変形形態および実施形態を包含するものである。
【0165】
以下の実施例は、例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例1】
【0166】
9.5%の硫酸化を有する硫酸化デキストランの合成
デキストランT20(平均分子量20000)を、真空中60℃で、終夜乾燥させた。乾燥させた化合物(100g)を、640mlのホルムアミド(FA)中に溶解させた。クロロスルホン酸(CSA) 80mlを、三口フラスコ中の最高45℃のFA 200mlに添加し、その後、氷水で冷却した。CSAの量は、硫酸化デキストランの最終の硫酸化を決定するものである(180ml CSAを200ml FAに添加すると、約17%の硫黄が得られる)。CSA/FA混合物を、40℃の温度でデキストランにゆっくり(2時間かけて)添加した。CSA/FAをすべて添加した後、45℃の温度で、混合物を15分間撹拌した。混合物を25℃まで冷却し、pHを7.5〜8.5とするために、28% NaOHを最高温度50℃で、ゆっくり添加した。第1の沈殿では、3Lのエタノールを撹拌しながら添加した。撹拌を停止した後、混合物を静置した。上清をデカントで除去し、沈殿を1.5Lの水に再溶解させた。第2の沈殿では、1.5Lのエタノールを撹拌しながら添加し、その後混合物を2時間静置した。上清をデカントで除去し、沈殿を900mlの水に再溶解させ、これに17gのNaClを添加した。第3の沈殿では、800mlのエタノールを撹拌しながら添加し、混合物を2時間静置した。旋光性最大を測定した。上清をデカントで除去し、残渣を500mlの水に再溶解させた。2.8gのNa2HPO4と、2.6gのNaH2PO4とを添加した。最後の沈殿では、5Lのエタノールを添加して、沈殿をガラスフィルターで濾過し、真空中、50℃で乾燥させた。
【実施例2】
【0167】
過ヨウ素酸酸化
Sandy JD、Biochem J.、177:569〜574、1979年で用いられたSmith分解の変法に従って、コロンドロイチン硫酸(240mg)を0.25M NaClO4(47ml)中に室温で溶解させた。5mlの0.5M NaIO4を添加し、混合物をpH5に調整するためにKOHを用いた。暗中で、72時間、反応を進行させた。その後、過ヨウ素酸塩を取り除くために、混合物をビスキングチューブ中で透析した。
【実施例3】
【0168】
カルボキシメチルデキストランへの陰イオン硫黄基の導入
9.5%の硫黄含有量を有する硫酸化形態のカルボキシメチルデキストラン(平均分子量20000)
カルボキシメチルデキストラン(CMD)を、真空中、60℃で、終夜乾燥させる。CMD(100g)を640mlのホルムアミド(FA)に溶解させる。クロロスルホン酸(CSA)80mlを、三口フラスコ中の最高45℃のFA 200mlに添加し、その後、氷水で冷却する。CSAの量はCMDの最終硫黄含有量を決定するであろう(180ml OSAを200ml FAに添加すると、約17%の硫黄が得られる)。CSA/FA混合物を、40℃の温度でCMDにゆっくり(2時間かけて)添加した。CSA/FAをすべて添加した後、15分間、45℃の温度で、混合物を撹拌した。混合物を25℃まで冷却し、pHを7.5〜8.5とするために、28%NaOHを最大温度50℃で、ゆっくり添加した。第1の沈殿では、3Lのエタノールを撹拌しながら添加する。上清をデカントで除去し、残渣を1.5Lの水に再溶解させる。第2の沈殿では、1.5Lのエタノールを撹拌しながら添加し、その後2時間静置する。上清をデカントで除去し、残渣を900mlの水に再溶解させ、次に17gのNaClに添加する。第3の沈殿では、800mlのエタノールを撹拌しながら添加し、2時間静置する。旋光性最大は0.3であるべきである。上清をデカントで除去し、残渣を500mの水に再溶解させる。2.8gのNa2HPO4と、2.6gのNaH2PO4とを添加する。最後の沈殿では、5Lのエタノールを添加して、ガラスフィルターで濾過し、真空中、50℃で乾燥させる。
【0169】
硫酸化形態のカルボキシメチルデキストラン(平均分子量20000)
ステップ1.5gのデキストランを水中に溶解させる。100mgのボロヒドリドを添加し、30分、室温で撹拌する。
【0170】
ステップ2.水酸化ナトリウムペレット(10g)を添加し、溶解するまで撹拌し、その後スルホン酸塩(12g)を添加する。
【0171】
ステップ3.70℃で、7時間加熱する。3時間後にさらに3gのスルホン酸塩を添加する。加熱を4時間継続する。
【0172】
ステップ4.5M HClでpH7.5に中和し(全体積(T)=75ml)、よく撹拌しながら200mlのエタノールを添加する。撹拌を停止し、1時間静置させる。
【0173】
ステップ5.上清をデカントで除去し、水中に再溶解させ(T=60ml)、よく撹拌しながら150mlのエタノールを添加する。1時間、静置させる。
【0174】
ステップ6.ステップ5の通りに反復する。
【0175】
ステップ7.上清をデカントで除去し、残渣を60mlの水中に再溶解させ、600mlのエタノール中で沈殿させる。沈殿を補助するために、濃縮塩化ナトリウム溶液を混合物に添加してもよい。
【0176】
ステップ8.濾過し、真空中で乾燥させる。収量は約6gである。
【実施例4】
【0177】
生体内抗ウイルス活性
デキストラン硫酸および硫酸化デキストランの変異体の生体内抗ウイルス活性を薬物動態試験で評価した。この薬物動態試験では、分子量40000を有する市販の(約17%硫黄)デキストラン硫酸(DS)(グループ1);分子量500000を有するDS(グループ2);分子量40000を有するデキストラン硫酸(12.2%硫酸化)(DES6)(グループ3);分子量500000を有するDES6(グループ4)を、3匹の雄ラットと3匹の雌ラットを60mg/kgで単回静脈内投与し、分子量500000を有するDES6が3匹の別のラットのグループ(グループ5)に複数日、60mg/kgを注入する。ラットはSprague-Dawleyであり、事前に大動脈中にカニューレ挿入された。注入後の様々な時間に採血し、HIV-1 RFウイルスおよびCEN-SS細胞を用いた急性感染細胞防御アッセイシステムで、細胞生存率についてMTS染色法を用いて、抗HIV活性を評価した(Witvrouwら、J.Acqur. Immun. Def. Syndr., 3:343〜347、1990年に基づく)。図2に示される結果は、予想されたように、DSがこれらの用量で強い毒性をもち、24時間を越えて生存したラットが1頭のみであったことを示す。対照的に、DES6で処置されたラットでは、注入後120時間に及ぶ良好な生存と、循環抗HIV活性が観察された。
【0178】
図2は、5つのグループの動物から得られたデータの概要を示す。各データポイントは、注入後の各時点での、循環抗ウイルス活性の濃度を表す。濃度は、血液中における化合物のIC50を決定することによって、計算した。生データから計算できるように、両方の分子量のDES6は、血液中の半減期が12時間〜18時間延長され、抗ウイルス性の活性(IC50を超える循環濃度)も72時間を越えるまでに延長されていることを示した。グループ5の動物では、3回の反復注入で濃度が定常状態に達した。結果を図2に示す。
【0179】
カニューレ挿入されなかった動物のMTDが>850mg/kgであったため、これらのデータは、DES6に関連したいかなる死亡率も、おそらくカニューレ挿入に関連した合併症によるものであったことを示す。
【実施例5】
【0180】
プロトロンビン/トロンビンと活性化部分トロンボプラスチン時間とに対する影響
上述のように、凝固の阻害は、繰り返し観測された硫酸化多糖処理、特に従来のデキストラン硫酸処理の副作用である。この研究の目的は、プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)に対するDES6の影響を、市販のDSと比較して評価することであった。すべての検体は、臨床病理検査室に提出する前に試験化合物で「スパイク(spiked)」された。検体は、Sigma社から購入された再構成ヒト血漿と共に配送した。分析の直前に、各検体に600μlのSigmaヒト血漿を添加した。
【0181】
Bio-Merieux Coag A-Mate MTX II分析機を用いて、プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定した。使用されたPT試薬はシンプラスチンLであり、使用されたAPTT試薬は、プラテリンLであったが、すべての試薬はBio-Merieux社から入手したものである。すべての検体を二重に分析した。凝固対照サンプルは、試験の直前に分析した。
【0182】

【0183】
検体処理
いくつかの検体では、凝固時間が得られなかった。PTの測定時間は、5秒で開始して、60秒で停止した。aPTT測定時間は、5秒で開始して、130秒で停止した。これらの時間枠では、凝塊は全く検出されなかった。結果を以下の表2に示す。
【表2】



【0184】
血小板減少症および凝固
様々な分子量のDSおよびDES6の注入による凝固パラメータへの影響を決定する実験を行った。5mg/kgまたは50mg/kg(i.v.)の各化合物を、ラットに10日間連日投与した。11日目に、用量を5mg/kgから1mg/kgへと、50から100mg/kgへと変更し、連日の静脈内注入を継続した。0、5、10、および15日目に、採血し、aPTTおよび血小板数を評価した。結果を以下の表3に示す。
【表3】

【0185】
最大耐性量
DES6の多数毒性用量(multiple toxicity dose, MTD)は、5頭のラットからなるグループに分子量500000を有するDES6を100mg/kgまたは200mg/kg投与する一連の実験で評価した。体重および全体的な行動の評価は、注入後の5日間に測定した。観察および体重測定値から判定して、毒性を示すいかなる明白な徴候もみられなかった。続いて、ラットに500mg/kgの注入を施し、さらに5日間観測したが、毒性の徴候はみられなかった。最後に、850mg/kgの用量を動物に与えた。結果を以下の表4に示す。
【表4】

【実施例6】
【0186】
硫酸化多糖の生体外抗ウイルス性評価
この研究は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)における、500μg/mlの高試験濃度での、5つの試験化合物の評価を含んでいた。
【0187】
方法
すべての試験化合物、#3(デキストラン硫酸17〜20%)、#4(硫酸化デキストラン、9.5%硫黄、分子量30000)、および#6(硫酸化デキストラン、12.2%硫黄、分子量36000)は、H20に40mg/mlとなるように可溶化した。これら化合物は、目視において完全に可溶化され、無色であった。化合物は光から保護され、アッセイは、偶発的な光が最小となる方法で行われた。化合物は、溶媒和の後、-20℃に保存した。
【0188】
ウイルス
継代回数の少ない小児由来単離株RoJoは、Southern Research Instituteの研究室で得られたものであった。RoJoは、サブタイプB型ウイルスであると推測されている。
【0189】
PBMC単離およびブラスティング(blasting)
末梢血単核細胞(PBMC)は、フィコールハイパック勾配分離法で、肝炎およびHIV-1に対して陰性である正常なドナーから採取した。単核細胞は、残った分離媒体を除去するために洗浄し、計数、生存率測定を行い、15%FBS(熱不活性化)、2mML-グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、および10μg/mLゲンタマイシンで補完され、2μg/mLフィトヘマグルチニン(PHA)を含むRPMI 1640培地中に1X106細胞/mlとなるように再懸濁した。細胞は、37℃、5%CO2で、48時間から72時間培養した。インキュベーションの後、細胞を遠心分離で回収し、洗浄し、さらに15%FBS(熱不活性化)、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、10μg/mLゲンタマイシンで補完され、20 U/mLの組換え型IL-2(R & D Systems社、Minneapolis、MN)を含むRPMI 1640中に再懸濁した。IL-2は、PHA有糸分裂刺激によって開始された細胞分裂を維持するために培地に含められた。次いで培養は、使用するまで、新しいIL-2を含む培地を用いて、3日ごとに、1/2培養体積を交換して、維持した。
【0190】
PBMCアッセイ
最低2人のドナーから得られたヒト末梢血単核細胞を、PHAおよびIL-2でブラスティングした後、計数し、トリパンブルー色素排除試験で生存率を測定し、等しい比率で混合した。個々のドナー間で観測される変動を最小にするため、プールされたドナーが用いられたが、このような変動は、HIV感染およびPHAおよびIL-2に対する主要リンパ球集団の全体的な反応における定量的および定性的な相違から生じるものである。細胞は、15%ウシ胎児血清(熱不活性化)、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、10μg/mLゲンタマイシン、およびIL-2(20 U/mL、R & D Systems社、Minneapolis、MN)で補完され、フェノールレッドを含まないRPMI 1640中に1X106細胞/mLとなるように再懸濁した。その後、50μlの細胞を、Southern Research InstituteのInfectious Disease Research部門で開発された標準フォーマットで、96ウェル丸底マイクロタイター培養プレートの内側60ウェルに分注した。各プレートは、細胞対照ウェル(細胞のみ)、ウイルス対照ウェル(細胞+ウイルス)、および実験ウェル(薬物+細胞+ウイルス)を含有する。連続希釈された化合物をマイクロタイタープレートに添加し、続いて、あらかじめ力価決定したHIV-1RoJoの適当な希釈物を添加した。すべてのサンプルは、三重でアッセイされ、化合物の毒性を判定するために、ウイルスを含まない複製プレートを1つ備えていた。1ウェルあたりの最終体積は200μlであった。アッセイは、37℃、5%CO2の加湿雰囲気中で6日間インキュベートして行い、この後、上清はRT活性の分析用に回収し、姉妹プレートはMTS色素減少による細胞生存率の分析に用いられた。ウェルは、顕微鏡でも検査され、いかなる異常も記録された。
【0191】
細胞生存率のためのMTS染色
アッセイプレートは、細胞生存率を決定して、化合物の毒性を定量化するために、アッセイ終了時に、テトラゾリウムベースの可溶性色素MTS(CellTiter96(登録商標)試薬、Promega社)で染色した。MTSは、代謝が活性な細胞のミトコンドリア酵素によって、可溶性のホルマザン産物に代謝され、このため、細胞生存率と、化合物による細胞毒性との急速な定量分析を可能にするものである。この試薬は、使用前に調製を必要としない単一の安定した溶液である。アッセイ終了時に、ウェルあたり20μLのMTS試薬を添加し、37℃で4時間、インキュベートした。ふたの代わりに粘着性プレートシーラーを用い、密封されたプレートを可溶性のホルマザン産物を混合するために数度反転させ、プレートをMolecular Devices社のVmaxプレートリーダーを用いて、分光光学的に490nmで読み取った。
【0192】
培養上清の逆転写酵素アッセイ
逆転写酵素(RT)活性は、細胞を含まない上清を用いて測定した。トリチウム化したチミジン三リン酸(NEN社)(TTP)を、蒸留水中に5Ci/mlとなるように再懸濁した。ポリrAおよびオリゴdTは、保存用液として調製され、-20℃で維持した。RT反応緩衝液は、毎日新たに調製し、125μL 1.0M EGTA、125μL dH2O、110μL 10% SDS、50μL 1.0M Tris(pH7.4)、50μL 1.0M DTT、および40μL 1.0M MgCl2から成るものである。これら3つの溶液は、TTPを2部、ポリrA:オリゴdTを1部、そして反応緩衝液を1部の比率で併せて混合した。この反応混合物の10μlを丸底マイクロタイタープレートに入れ、15μlのウイルス含有上清を添加し、混合した。プレートは、水浴中で37℃で、60分間インキュベートした。この際、プレートの潜水を予防するために、固形支持体を用いた。反応の後、全反応体積をDE81紙上に滴下し、5%リン酸ナトリウム緩衝液中で各5分間を5回、蒸留水中で各1分間を2回、70%エタノール中で各1分間を2回洗浄し、その後、乾燥させた。各サンプルにOpti-Fluor Oを添加し、取り込まれた放射能は、Wallac 1450 Microbetaplus液体シンチレーションカウンターを用いて、定量化した。
【0193】
データ分析
IC50(ウイルス複製の50%阻害)、TC50(細胞生存率の50%低下)、および治療係数(TI, TC50/IC50)を提供する。
【0194】
結果
IC50値およびTC50値は、線形回帰法で計算した。TIは、TC50/IC50の比率を表し、化合物間の相対的有効性を決定するのに用いられる。グラフ表示は、対照である、化合物なしのウイルス、または化合物なしの細胞のパーセントとしてそれぞれ表される、抗ウイルス効果(VC%)と、化合物の毒性(CC%)との関係を示す。
【0195】
試験化合物を評価するのに用いられたすべてのPBMCアッセイは、三重内変動および総ウイルス複製を含めた、個々のアッセイ規格および内部アッセイ評価基準を満たした。対照化合物であるAZT(RT阻害剤)および従来のデキストラン硫酸(ウイルス侵入/付着阻害剤)は、HIV複製を、予想された有効性(AZT: IC50が1nM〜10nM;デキストラン硫酸: IC50が0.1μg/ml〜2μg/ml)で阻害した。したがって、提示された評価は有効であり、試験された化合物の抗ウイルス活性を表すものである。
【0196】
データの概要を表5に示す。
【表5】


【0197】
表5はPBMCの以前と、現在との抗ウイルス性評価を比較するものである。17〜20%の硫酸化を有するDESのIC50および抗ウイルス有効性は、以前に同定されているが、これらの実験で確認され、IC50は0.5μg/mlであった。これは、PBMCアッセイに関して、標準的であると予測されている、3倍の誤差の範囲内である。さらに、第2の実験によって、化合物#3は、500μg/mlで、PBMCに対して毒性でないことが実証された。
【0198】
このセットの評価では、9.5%硫酸化のDESと、12.5%硫酸化のDESとに関して、抗ウイルス性の初期評価を行った。両方の化合物は、500μg/mlで細胞毒性を示さず、50%抑制濃度が得られた。12.5%硫酸化を有するDESは、17〜20%硫酸化を有するDESと同程度の抗ウイルス活性を示したが、これは、IC50の計算値がそれぞれ1.6μg/ml対0.5μg/mlであることに基づくものである。さらに、抗ウイルス有効性曲線の分析は、2つの化合物が同等の効力のものであることを示唆する。対照的に、9.5%硫酸化を有するDESは、17〜20%硫酸化を有するDESと比較して39倍活性が弱く、12.5%硫酸化を有するDESと比較して12倍活性が弱い。
【実施例7】
【0199】
硫酸化多糖の生体外抗ウイルス性評価
以下の化合物の生体外抗ウイルス活性を試験した。すなわち、サンプル3(デキストラン硫酸、17〜20%硫黄、分子量39700)、サンプル4(デキストラン硫酸、9.5%硫黄、分子量30000)、およびサンプル6(デキストラン硫酸、12.2%硫黄、分子量36000)である。3つの化合物すべてが、HIV-1 RoJoウイルスに対して、顕著な抗ウイルス活性を示した。
【0200】
9.5%硫酸化を有するDES、および12.5%硫酸化を有するDESに関しては、サブタイプ代表単離株であるSIVおよびHIV-2を含めた様々なHIV-1臨床単離株に対する評価も行った。単球/マクロファージにおける、HIV-1ADA、およびBaLに対する複製阻害も評価した。
【0201】
9.5%硫酸化を有するDES、および12.5%硫酸化を有するDESは、上記実施例4で記載した通りに調製した。
【0202】
7.1 ウイルス
ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)株Ba-L、ADA、SIVmac251、HIV-2 (CDC3 10319)、および代表的なサブタイプ株(表6)は、NIAID AIDS Research and Reference Reagent Programから入手した。継代回数の少ない小児由来単離株であるSLKA、WeJo、およびTeKiはSouthern Research Instituteの研究室で得られたものである。多重薬物耐性ウイルスMDR-769は、抗レトロウイルスの経験が極めて多い患者から得られたものであり、表7に概要として示される耐性プロフィールおよび遺伝子型を示す。
【表6】

【0203】
【表7】

【0204】
表7における太字の突然変異は、示された遺伝子における主要な耐性突然変異を表す。
【0205】
PBMCの単離およびブラスティング
末梢血単核細胞(PBMC)は、実施例6で記載された通りに採取した。
【0206】
PBMCアッセイ
PBMCアッセイは、実施例6で記載された通りに実施した。
【0207】
単球の単離、培養、および感染
末梢血単球は、PBMCに関して上述されているように、HIV-1陰性である正常なドナーから、バフィーコートのフィコールハイパック精製と、それに続くプラスチック付着法で単離した。多くの場合、PBMC集団を産生するのに用いられた同一のドナーが、単球/マクロファージを産生するのにも用いられた。しかし、PBMC集団とは異なり、単球/マクロファージのドナーはプールされなかった。10%ヒト貯蔵AB血清(熱不活性化)、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、10μg/mL ゲンタマイシンで補完され、フェノールレッドを含まないRPMI 1640中で2時間付着させた後、培養物を洗浄して、非付着細胞を除去した。単球は、Ca2+およびMg2+を含まないPBSで、激しくピペッティングすることによって、プラスチックから遊離させた。接着細胞は、非特異的エステラーゼ染色(a-ナフチル酪酸特異的エステラーゼ、Sigma Chemical社)による純度、および/またはトリパンブルー色素排除による生存率について評価し、さらに計数し、1mlあたり1x106単球となるように、10%ウシ胎児血清(熱不活性化)、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、10μg/mLゲンタマイシンで補完されたRPMI 1640に再懸濁した。その後、単球(0.2cmウェルあたり1x105)を6日間培養して、細胞をマクロファージ様の表現型に成熟させた。6日目に、いかなる非接着細胞も除去されるように、培養物を3回洗浄し、連続希釈された試験化合物を添加し、ウェルの顕鏡観察で単球/マクロファージの単層が70%以上の集密状態を示したならば、それに続いて、あらかじめ力価測定された量のHIV-1ウイルスを添加した。感染の24時間後に、培養物の最後の洗浄を行い、培地を除去し、新たな化合物を添加し、さらに6日間、培養を継続した。アッセイは、標準化されたマイクロタイタープレートフォーマットを用いて行った。このフォーマットでは、アッセイを行う目的に、96ウェルプレートの内側60ウェルのみを用いる。外側の列は培地を含有し、蒸発に対するバリアーとして機能する。各プレートは、細胞対照ウェル(細胞のみ)、ウイルス対照ウェル(細胞+ウイルス)、および実験ウェル(薬物+
細胞+ウイルス)を含有する。アッセイ終了時に、ウイルス複製を評価するために、HIV p24抗原含量を、無細胞上清における市販のp24ELISAアッセイ(Coulter)で測定し、化合物の細胞毒性を、MTS色素減少によって測定した。HIV-1のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤であるAZTと、付着阻害剤であるデキストラン硫酸を陽性対照化合物として用い、各測定を並行して行った。アッセイの終了時に、培養プレートをインキュベーターから取り出し、顕微鏡で観察した。いかなる特有の発見も、記録した。
【0208】
細胞生存率のためのMTS染色
MTS染色は、実施例6で記載した通りに行った。
【0209】
培養上清の逆転写酵素アッセイ
逆転写酵素(RT)活性は、実施例6で記載されたように、無細胞上清中で測定した。
【0210】
p24抗原ELISA
ELISAキットは、Coulter Electronics社から購入した。アッセイは製造元の指示書に従って行った。各サンプル中のp24抗原の量を正確に定量するために、対照曲線を各アッセイで作成した。データは、Molecular Devices Vmaxプレートリーダーを用いて、450nmで分光光度法分析することによって取得した。最終濃度は、Molecular Devices Soft Maxソフトウェアパッケージを用いて、光学密度値から計算した。
【0211】
結果
IC50(ウイルス複製の50%阻害)、TC50(細胞生存率の50%低下)、および治療係数(TI、TC50/IC50)を計算した。結果の概要を表8に示す。
【0212】
各試験における抗ウイルス性のデータには、ウイルス複製(PBMCではRT(cpm)、単球ではp24(pg/ml))と、MTS色素減少による細胞生存率(OD490)に関する三重試験から得られた、関連する生データ値も含まれる。IC50値およびTC50値は、線形回帰法で計算した。TIは、TC50/IC50の比率を表し、化合物間の相対的有効性を決定するのに用いられる。グラフ表示は、対照である、化合物なしのウイルス、または化合物なしの細胞のパーセントとしてそれぞれ表される、抗ウイルス効果(VC%)と、化合物の毒性(CC%)との関係を示す。
【表8】

【0213】
表8は、12.5%硫酸化を有するDESが、9.5%硫酸化を有するDESより強力なHIV-1複製の阻害剤であったことを示す。9.5%硫酸化を有するDESのIC50は、5.1μg/mlから>100μg/mlまでの範囲(19倍)にあり、12 5%硫酸化を有するDESでは0.6μg/mlから11.7μg/mlまでの範囲(19倍の範囲)にあった。したがって、これらのウイルスパネルに対する有効性の範囲は同等のものであった。2つの化合物の間では、活性における基底に相違があったが、全般的には、両方の化合物とも、試験した広範囲のHIV-1単離株に対して活性であり、同様に、多重薬物耐性ウイルス、SIV、およびHIV-2に対しても活性を示した。したがって、これらの化合物は、広範囲の抗レトロウイルス性である。
【0214】
12.5%硫酸化を有するDESは、試験したすべてのウイルスに対して活性であった。この化合物は、サブタイプC(IC50が10.3μg/ml)およびサブタイプG(IC50が11.7μg/ml)のウイルスに対して最も活性が低かった。この化合物は、HIV-1 ADAの複製を効率的に阻害した。12.5%硫酸化を有するDESも、HIV-2の臨床単離株と、SIVのSIVmac251単離株とに良好な抗ウイルス活性を示した。この化合物は、多重薬物耐性ウイルス単離株MDR769に対しても、有意な活性を示した。したがって、12.5%硫酸化を有するDESは、広範囲のHIV-1臨床単離株、多重薬物耐性ウイルス、および他のレトロウイルスに対して活性である。
【0215】
9.5%硫酸化を有するDESは、試験された様々なウイルスに対する反応が不均等であり(IC50の変動)、活性の範囲は不活性から活性まで及んだ。9.5%硫酸化を有するDESは、HIV-1RoJoに感染したPBMCにおいて、12.5%硫酸化を有するDESより活性が弱いことが以前に実証されているが、この相違はこの実施例においても改めて実証された(37倍活性が弱い)。9.5%硫酸化を有するDESが不活性であったウイルス(ADA、Ba-L、およびサブタイプGウイルス)に対する抗ウイルス曲線を分析したところ、さらに高い試験濃度では活性であるであろうことが示唆される。9.5%硫酸化を有するDESは、MDR769HIV-1株(IC50が13μg/ml)およびHVI-2の臨床単離株(IC50 5.1μg/ml)に対しても活性であった。したがって、全般的に有効性がより低いにもかかわらず、この化合物は多重薬物耐性のHIV-1およびHIV-2に対して極めて有効である。
【0216】
9.5%硫酸化を有するDESおよび12.5%硫酸化を有するDESは、様々なHIV-1臨床単離株と、2つの他のレトロウイルス(HIV-2およびSIV-1)とに対して試験され、広範囲の抗レトロウイルス性であることが判明した。さらに、これらの結果は、これらの化合物が、RT阻害剤に対する多重薬物耐性を与えるT215Y突然変異を有する耐性臨床単離株に対しても活性であることを示す。データは、IC50を基準とした場合、12.5%硫酸化を有するDESは、9.5%硫酸化を有するDESより、有効性が高いが、これらの化合物がウイルスパネルに対して示したIC50の範囲は、匹敵するものであったことも実証した。したがって、両方の化合物は、匹敵する作用機序を介してウイルス複製を阻害する可能性が高い。最後に、これらの化合物がHIV-2およびSIV-1に対して活性であることが実証されたことは、これらの化合物が他のレトロウイルスにも適用可能であることを示すものである。
【実施例8】
【0217】
本発明の化合物の生体分布
Charles River Laboratories (Raleigh, NC)から入手された雄のSprague-Dawleyラット(約377〜402g)に、[3H]Des6 40Kを静脈内ボーラスまたは経口胃管法で投与した。血漿、リンパ液、および頚部リンパ節における総トリチウム含有量の分布を、投薬6時間後または12時間後に採取したサンプルにおいて定量した。
【0218】
研究計画の概要を表9に示す。ラットは、3つの治療投与グループに分割した。用量は、おおよその体積が1.8mL/kg(iv)および2.1mL/kg(経口胃管)でそれらを送達するようにリン酸緩衝生理食塩水の媒体(pH=7.4)中に処方した。
【0219】
投薬6時間後または12時間後の生物学的サンプル採取時間の前に、動物をケタミン/キシラジン(7:1、約120mg/kg)で麻痺させ、Waynforth, H. B.およびFlecknell, P. A. (1992)、Experimental and Surgical Technique in the Rat、第2版、Academic Press、New York.の記載に従い、胸部リンパ本幹にカニューレ挿入を行った。サンプル分析の時点で、心臓の穿刺によって採血を行い、リンパ液はリンパ本幹カニューレを通して採取した。血漿を得るために血液を10分間、約1000gで遠心分離で処理した。頚部リンパ節は、表9で指定された時点において、各動物から採取した。特に記載がない限り、採取したすべての生物学的サンプルの総放射能を、液体シンチレーション分光法によって二重で定量した。
【表9】

【0220】
研究の結果を表10に記載する。血漿、リンパ液、およびリンパ節の総放射能標識含量の列挙に加えて、各動物におけるリンパ液:血漿の比と、リンパ節:血漿の比も提供する。全般に、[3H]Des6 40K関連総放射能の濃度は、経口投与と比較して、静脈内投与で処置された動物で最も高く、血漿中およびリンパ液中では、12時間後と比較して、6時間後に最も高い濃度を示した。12時間後における、[3H]Des6 40K-当量(eq)の血漿中濃度およびリンパ液中濃度は、6時間後に得られた濃度の約1〜2%であった。しかし、静脈内投与後におけるリンパ節の総放射能の濃度は、これら2つの時点間で同様のものであった。グループ2の動物G961は、麻酔の後、リンパ液を採取するための胸管へのカニューレ挿入の前に死亡した。この動物からリンパ液を採取することはできなかったが、血漿およびリンパ節は総放射能を定量するために採取した。これらの採取された生物学的媒体の総放射能は、手術を通して生存した他の2頭のラットより、顕著に大きいことが判明した。この動物のリンパ節は、グループ2における他の2頭の動物より大きいことが観察された。
【0221】
[3H]Des6 40Kの経口投与後の、血漿総放射能濃度は、静脈内投与の12時間後に得られた濃度に匹敵した。経口投与後におけるリンパ液中の平均総放射能は、静脈内投与の12時間後に得られたものの約63%であったが、リンパ節中の総放射能は、静脈内投与後に得られたものの約0.4%でしかなかった。
【0222】
ラットにおけるリンパ液:血漿の比は、静脈内投与後、6時間の時点と12時間の時点との間で増大した(6時間の時点に対する12時間の時点での比は、それぞれ、0.14および0.64に対して1.7および1.3である)が、これは血漿総放射能が顕著に低下するためである。経口投与後のリンパ液/血漿の比は、約1であったが、これは、これらの2つの媒体における総放射能が12時間で等しい分布であることを示す。
【0223】
リンパ節:血漿の比は、6時間の時点と比較して、12時間の時点では、はるかに大きな程度まで増大していた。時間の経過によるこの増大は、リンパ液において同じ時間経過で得られたものよりはるかに大きなものであった。これらのデータは、[3H]Des6 40Kに付随する放射能が、リンパ節中に強度に分布し、この組織からの排除速度が遅いことを示唆するものである。
【0224】
対照的に、経口投与後では、リンパ節中の分布プロフィールが異なり、リンパ節:血漿は、約0.50〜0.82でしかなく、経口経路によるリンパ節への総放射能の分布が、より少ないことを実証する。
【表10】

【0225】
本発明の適切かつ重要な特徴を上記に明示した。当業者であるなら、多数の変形形態および実施形態が創出されうることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての変形形態および実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】図1は、Sprague‐Dawleyラットの血漿(n=3)における、循環血漿中の市販のデキストラン硫酸の脱硫酸化の量を、時間の関数として示すグラフである。24時間までの値は、ゼロ時間におけるボーラス静脈内注入の後に血漿中に存在するデキストラン硫酸に基づいた。168時間における平均値は、Sprague-Dawleyラットの皮下に移植した定常状態浸透ポンプから得た。
【図2】図2は、多糖物質の抗ウイルス活性が有効な濃度を、ゼロ時間におけるボーラス静脈内注入(172mg/kg)後の時間に対して、示すグラフである。グループ1:市販のデキストラン硫酸、mw=40000(n=1〜3);グループ2:市販のデキストラン硫酸、mw=500000(n=3);グループ3:硫酸化デキストラン12.6%(DES6 40k)(N=4〜6);グループ4:硫酸化デキストラン12.2%(DES6 500k)(N=6);グループ5:172mg/kg/日で6日間(n=4)のDES6 40kを毎日注入。
【図3】図3は、特定の硫酸化のパーセントと、分子量とを有する硫酸化デキストランの調製を記載する概要フローチャートである。
【図4】図4は、硫酸置換の程度が高度に均質であることを示す、イオン交換クロマトグラフィーにおける、陽イオン交換樹脂から、線形塩化ナトリウム勾配で溶出された、トリチウム標識された分子量40000の硫酸化デキストランのクロマトグラフィープロフィールである。
【図5】図5は、硫酸置換の程度が高度に均質であることを示す、イオン交換クロマトグラフィーにおける、陽イオン交換樹脂から、線形塩化ナトリウム勾配で溶出された、トリチウム標識された分子量50000の硫酸化デキストランのクロマトグラフィープロフィールである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける微生物感染を治療または予防する方法であって、単糖残基に対して、硫黄のパーセントが6%〜13%の硫酸化多糖の治療上有効な量を、それを必要とするヒトに投与することを含み、前記硫酸化多糖の分子量が5000g/mol以上であり、かつ前記感染がヘルペス感染ではない、前記方法。
【請求項2】
ヒトにおける微生物感染を治療または予防する方法であって、単糖残基に対して、硫黄のパーセントが6%〜13%の硫酸化多糖の治療上有効な量を、それを必要とするヒトに投与することを含み、前記硫酸化多糖の分子量が40000g/mol以上である、前記方法。
【請求項3】
上記硫黄のパーセントが7%〜13%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記硫黄のパーセントが8%〜13%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記硫黄のパーセントが9%〜13%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記微生物感染がウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染または真菌感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記ウイルス感染がDNAウイルスによって引き起こされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記ウイルス感染がRNAウイルスによって引き起こされる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記DNAウイルスが二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記RNAウイルスが二本鎖RNAウイルス、マイナス鎖一本鎖RNAウイルス、プラス鎖一本鎖RNAウイルス、またはアンビセンスRNAウイルスである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
上記二本鎖DNAウイルスがヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、イリドウイルス、パポーバウイルス、またはアデノウイルスである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
上記一本鎖DNAウイルスがシルコウイルスまたはパルボウイルスである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
上記二本鎖RNAウイルスがレオウイルスまたはビルナウイルスである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
上記マイナス鎖一本鎖RNAウイルスがラブドウイルス、フィロウイルス、パラミクソウイルス、オルソミクソウイルス、ブニアウイルス、またはアレナウイルスである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
上記プラス鎖一本鎖RNAウイルスがピコルナウイルス、カリシウイルス、アストロウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レトロウイルス、またはアルテリウイルスである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
上記ウイルス感染がエンベロープウイルスによって引き起こされる、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
上記ウイルス感染がヘルペスウイルス感染ではない、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
上記ウイルス感染がHSV-1感染でも、HSV-2感染でもない、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
上記ウイルス感染がレトロウイルス感染ではない、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
上記ウイルス感染がHIV-1感染でも、HIV-2感染でもない、請求項6に記載の方法。
【請求項21】
上記ウイルス感染がHIV-1またはHIV-2感染である、請求項6に記載の方法。
【請求項22】
上記ウイルス感染がレトロウイルス感染である、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
上記レトロウイルス感染がHIV-1またはHIV-2感染である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記ウイルス感染がヘルペスウイルス感染である、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
上記ヘルペスウイルス感染がHSV-1またはHSV-2感染である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記硫酸化多糖が荷電基共存型アニオン性多糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
上記荷電基共存型アニオン性多糖がカルボキシメチル基、スルホン酸基、硫酸基、またはこれらの組合せで荷電基共存型とされている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記ウイルス感染がレトロウイルス感染である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
上記レトロウイルス感染がHIV-1またはHIV-2感染である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記ウイルス感染がヘルペスウイルス感染である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
上記ヘルペスウイルス感染がHSV-1またはHSV-2感染である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記硫酸化多糖が左旋性である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
上記硫酸化多糖が約5000〜約1000000の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
上記硫酸化多糖が25000以上の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
上記硫酸化多糖が40000以上の分子量を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
上記硫酸化多糖が500000より大きい分子量を有し、かつ局所的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
上記硫酸化多糖が、α-1,6結合によって結合されたD-グルコピラノース残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
上記硫酸化多糖がL-グルコピラノース残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
上記硫酸化多糖が硫酸化デキストランである、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
上記硫酸化多糖がデキストリン硫酸でも、シクロデキストリンでも、カラジーナンでもない、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
ヒトにおける微生物感染を治療または予防する方法であって、硫黄のパーセントが6%〜13%の硫酸化デキストランの治療上または予防上許容される量を、それを必要とするヒトに投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
ヒトにおける微生物感染を治療または予防する方法であって、40000以上の分子量を有し、かつ硫黄のパーセントが6%〜13%の硫酸化デキストランの治療上または予防上許容される量を、それを必要とするヒトに投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
上記硫酸化デキストランが5000以上の分子量を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
上記硫酸化デキストランが25000以上の分子量を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
上記硫酸化デキストランが7%〜13%の硫黄のパーセントを有する、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
上記硫酸化デキストランが8%〜13%の硫黄のパーセントを有する、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
上記硫酸化デキストランが9%〜13%の硫黄のパーセントを有する、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
上記デキストラン硫酸がカルボキシメチル基、スルホン酸基、硫酸基、またはこれらの組合せで荷電基共存型とされている、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
上記微生物感染がウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、または真菌感染である、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
上記ウイルス感染がDNAウイルスによって引き起こされる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
上記ウイルス感染がRNAウイルスによって引き起こされる、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
上記ウイルス感染がエンベロープウイルスによって引き起こされる、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
上記DNAウイルスが二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスである、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
上記RNAウイルスが二本鎖RNAウイルス、マイナス鎖一本鎖RNAウイルス、プラス鎖一本鎖RNAウイルス、またはアンビセンスRNAウイルスである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
上記二本鎖DNAウイルスがヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、イリドウイルス、パポーバウイルス、またはアデノウイルスである、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
上記一本鎖DNAウイルスがシルコウイルスまたはパルボウイルスである、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
上記二本鎖RNAウイルスがレオウイルスまたはビルナウイルスである、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
上記マイナス鎖一本鎖RNAウイルスがラブドウイルス、フィロウイルス、パラミクソウイルス、オルソミクソウイルス、ブニアウイルス、またはアレナウイルスである、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
上記プラス鎖一本鎖RNAウイルスがピコルナウイルス、カリシウイルス、アストロウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レトロウイルス、またはアルテリウイルスである、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
上記ウイルス感染がヘルペスウイルスによって引き起こされるものではない、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
上記ウイルス感染が、HSV-1またはHSV-2によって引き起こされるものではない、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
上記ウイルス感染が、レトロウイルスによって引き起こされるものではない、請求項49に記載の方法。
【請求項63】
上記ウイルス感染が、HIV-1またはHIV-2によって引き起こされるものではない、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
上記ウイルス感染がHIV-1またはHIV-2によって引き起こされる、請求項49に記載の方法。
【請求項65】
哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、硫酸化多糖におけるグルコース残基あたりの硫黄置換のパーセントが、6%超から13%までの範囲にある前記多糖を含む組成物の治療上有効な量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含み、前記範囲の硫黄のパーセントが、構成している硫酸基と、感染を引き起こす微生物との最大の相互作用を可能にするのに有効であり、前記硫酸化多糖が、前記哺乳動物の細胞受容体結合によって、実質上エンドサイトーシスまたは分解されず、それにより生体内での抗微生物活性を保持する、前記方法。
【請求項66】
上記硫酸化多糖が硫酸化デキストランである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
上記微生物感染がウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染または真菌感染である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
上記哺乳動物がヒトである、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
上記組成物が無菌である、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
哺乳動物における微生物感染を治療または予防する方法であって、過ヨウ素酸処理されたアニオン性多糖の治療上有効な量を、前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項71】
上記過ヨウ素酸処理された多糖が硫酸化多糖である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
上記硫酸化多糖が硫酸化デキストランである、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
上記哺乳動物がヒトである、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
上記微生物感染がレトロウイルス感染である、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
上記レトロウイルス感染がHIV-1またはHIV-2感染である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
上記微生物感染がヘルペスウイルス感染である、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
上記ヘルペスウイルス感染がHSV-1またはHSV-2感染である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
追加の治療薬または吸収促進薬の投与をさらに含む、請求項1、2、41、42、65、または70に記載の方法。
【請求項79】
上記治療上有効な量または予防上有効な量が、1日あたり約0.001mg/kg〜200mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項80】
上記多糖の治療上有効な量または予防上有効な量が、1日あたり約0.005mg/kg〜100mg/kgである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
上記硫酸化多糖の治療上有効な量または予防上有効な量が、約0.1mg/kg/日〜約1500mg/kg/日である、請求項1に記載の方法。
【請求項82】
上記ヒトが免疫無防備状態のヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項83】
上記硫酸化多糖の治療上有効な量または予防上有効な量を非経口的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項84】
上記硫酸化多糖の治療上有効な量または予防上有効な量を経口的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項85】
上記硫酸化多糖の治療上有効な量または予防上有効な量を局所的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項86】
哺乳動物に全身投与されるべき硫酸化多糖の硫酸化を制御する方法であって、抗微生物活性を維持しながら、高電荷密度ポリアニオン細胞受容体による硫酸化多糖の結合を消滅または減弱させるのに十分な硫酸化を硫酸化多糖に提供すること、および前記硫酸化多糖を哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項87】
微生物感染を治療するための医薬組成物であって、硫黄のパーセントが6%より大きく、かつ13%より小さい硫酸化多糖の治療上有効な量と、好適な担体とを含む、前記医薬組成物。
【請求項88】
微生物感染を治療するための医薬組成物であって、硫黄のパーセントが6%より大きく、かつ13%より小さく、かつ分子量が25000より大きい硫酸化デキストランの治療上有効な量と、好適な担体とを含む、前記医薬組成物。
【請求項89】
微生物感染を治療するための医薬組成物であって、硫黄のパーセントが6%より大きく、かつ13%より小さく、かつ分子量が40000より大きい硫酸化デキストランの治療上有効な量と、好適な担体とを含む、前記医薬組成物。
【請求項90】
上記硫酸化多糖が、硫黄のパーセント、分子量、またはこれらの両方に関して均質である、請求項87、88、または89に記載の医薬組成物。
【請求項91】
硫黄のパーセントが6%〜13%の硫酸化多糖でコーティングされている予防用具。
【請求項92】
硫黄のパーセントが6%より大きく、かつ13%より小さい硫酸化多糖を含み、ゲル、フォーム、ローション、クリーム、溶液、ペースト、または粉末の形態にある消毒薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−502129(P2006−502129A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526493(P2004−526493)
【出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【国際出願番号】PCT/AU2003/000488
【国際公開番号】WO2004/014400
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(304044531)モナシュ ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】