腫瘍分類のためのIR−A及びIR−Bの定量
制限なく、本開示は、組織試料中のインスリン受容体アイソフォームA(IR−A)及び/又はインスリン受容体アイソフォームB(IR−B)の発現を検出及び定量するための組成物及び方法に関する。本開示はまた、組織試料中のインスリン受容体アイソフォームA(IR−A)及び/又はインスリン受容体アイソフォームB(IR−B)の発現を検出及び定量することに少なくとも部分的に基づく診断及び分類の方法にも関する。このような分類に基づいて対象を治療する方法は、本明細書中で提供される開示のさらなる態様の中に含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体において参照により組み込まれる2009年10月12日出願の米国仮出願第61/250,780号に対する優先権を主張する。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式でEFSウェブを介して提出され、その全体において参照により組み込まれる配列表を含む。2010年9月8日作成のこのASCIIコピーの名称はMED540.PCT.txtであり、サイズは48,948バイトである。
【0003】
発明の分野
制限なく、本開示は、組織試料などの試料中のインスリン受容体アイソフォームA(IR−A)及び/又はインスリン受容体アイソフォームB(IR−B)の発現を検出及び定量するための組成物及び方法に関する。本開示はまた、組織試料などの試料中のインスリン受容体アイソフォームA(IR−A)及び/又はインスリン受容体アイソフォームB(IR−B)の発現を検出及び定量することに少なくとも一部基づく診断及び分類の方法にも関する。このような分類に基づき対象を治療する方法は、本明細書中で提供される開示のさらなる態様に含まれる。
【背景技術】
【0004】
関連技術に関する記述
インスリン受容体(INSR)は、エネルギー代謝の制御に関与する膜貫通チロシンキナーゼ受容体である。INSRは、単一のINSR遺伝子から発現されるサブユニット、α及びβを含む。IR−A及びIR−Bと呼ばれる2種類のアイソフォームは、mRNAの選択的スプライシングによるものである。IR−Aは、INSR遺伝子から転写されるmRNAの選択的スプライシングにより生じ、エクソン11が省かれているが、このエクソン11はIR−BのmRNAには含まれる(図1A−1B)。このように、IR−Aは、INSRα−サブユニットのカルボキシ末端のアミノ酸残基のストレッチ部が欠如しているため、IR−Bとは異なっている。IR−A及びIR−Bの同一性は99%を超える(図2)。この2種類のアイソフォームの発現プロファイルは異なるが、これらのアイソフォームは細胞において同時発現される。IR−A及びIR−Bの相対的存在量は発生段階及び組織に特異的な因子により制御される。
【0005】
例えば、IR−Aは胎児及び癌細胞で主に発現され、一方IR−Bは、分化したインスリン標的細胞で主に発現される。IR−Aは、インスリンに対して高い親和性を示し、IGF−IIに対する親和性は中程度であり、IGF−Iに対する親和性は低い。IGF−IIは、同程度の親和性でIGFのI型受容体(IGF−IR)及びIR−Aに結合する。IR−Bはインスリンに対する特異性の高い受容体である。
【0006】
現在、患者試料中のIR−A及びIR−Bレベルを調べる方法については、有効かつ正確な検出手段がないことが障壁になっている。現在のところ、特定的にIR−A発現を測定するために利用可能な唯一の方法は、Sciaccaら(Oncogene 21(54):8240−50;2002 Nov 28)に記載されている。この方法は、PCR及びゲル分離を行い、それに続いて、得られたバンドを定量測定することに基づく。この方法は、大きな労力を要し、定量的に正確ではなく、ハイスループット又は臨床の場においてその使用は限定的なものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者の組織がその薬物の分子標的を発現するか否かの判定に基づき、薬物に対する患者の反応を予測することができる改善された診断試験が必要とされている。IR−A及びIR−Bの発現を正確に検出及び/又は定量するための方法が必要とされている。患者試料中の各アイソフォームの発現の検出及び定量を可能とする能力は、個人対応の治療計画を患者に提供するのに有用である。このような個人対応の治療計画によって、患者に対する治療的有用性を最大限にできる可能性が生まれ、同時に、例えば代替的な有効性がより低い治療計画に伴い得る副作用を最小限に抑えることができるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生体材料の試料が、ヒトIR−A及び/又はIR−Bを含むIR−A及び/又はIR−Bを発現する細胞を含有するか否かを検出及び/又は定量するための有用な組成物及び方法ならびにこのような方法での使用のためのキットが、本明細書中で開示される。これらの方法は、組織試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を測定するために特定のオリゴヌクレオチドが使用できるという知見に一部基づく。これらのオリゴヌクレオチドは、ハイスループット及び臨床の場で本方法が使用できるように、試料中のIR−A及び/又はIR−B発現のレベルを迅速かつ定量的に区別するために使用することができる。これらの組成物及び方法は、組織試料、例えば腫瘍組織試料を分類するための方法において有用であり得る。このような方法の結果は、患者がINSR、IGF1R又はIGFのアンタゴニストもしくはアゴニストなどの薬物にどのように応答するかということの指標として、腫瘍又は癌患者を分類する際の要因として使用することができる。治療に対する候補を選択する方法及び癌患者を治療する方法において、これらの方法及び得られた分類を使用することができる。
【0009】
有用なオリゴヌクレオチドは、IR−A及び/又はIR−Bを選択的に増幅するために使用することができる合成核酸を含み得る。このような有用なオリゴヌクレオチドは10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列を含み得、この場合この合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含むものが開示される:(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;(ii)配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は(iv)配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。この合成核酸配列は、以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成され得る:(i)配列番号3(TGAGGATTACCTGCACAACG)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はその変異形;(ii)配列番号4(GATGTTGGGA ATGTGACGGT)、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;(iii)配列番号5(TTGAGGATTACCTGCACAACGT)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は(iv)配列番号6(AAACGCAGGTCCCTTGGC)、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形。
【0010】
有用な合成核酸配列は、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形又は、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形であり得る。別の有用な合成核酸配列は、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形又は、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形から基本的に構成され得る。上述の合成核酸配列の何れかを含む組成物も有用であり得る。
【0011】
生体試料中の標的ヒトIR−A核酸の有無を判定するために有用であるプライマーセットも本明細書中で開示され、このプライマーセットは、以下の少なくとも1つの、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列の中から選択され得る少なくとも1つの合成核酸配列を含む:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)又はその相補的な核酸配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。この合成核酸配列は、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択され得るヌクレオチド配列を有し得る。
【0012】
(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で上述のものなどのプライマーセットと生体試料を接触させる工程;(b)増幅された標的IR−A核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列の有無を判定するための方法も本明細書中で開示される。例として、生体試料は、腫瘍試料などの組織試料又は組織もしくは細胞試料由来の核酸を含む試料であり得る。
【0013】
プライマーセットは、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得る。別の例において、本プライマーセットは、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得る。ある例において、ポリメラーゼによる増幅は定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)である。
【0014】
プライマー及びプローブセットは、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;配列番号4(配列番号21)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;検出可能な標識も含み得、クエンチャーをさらに含み得る、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と、を含み得る。別の例において、プライマー及びプローブセットは、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;検出可能な標識も含み得、クエンチャーをさらに含み得る、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と、を含み得る。一般に増幅産物は100塩基未満である。
【0015】
有用な合成核酸配列は10から30個の連続ヌクレオチドを含み得、この合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む:配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形。ある例において、本核酸配列は、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形から基本的に構成される。上記の合成核酸配列の何れか1以上を含む組成物も有用であり得る。
【0016】
生体試料中のIR−Bの有無を判定するためのプライマーセットは、以下の少なくとも1つの10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列を含み得る:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、INSR遺伝子のエクソン11の塩基(配列番号9)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列又は、INSR遺伝子のエクソン10及びエクソン11を架橋する配列、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下でそれともしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50塩基(配列番号10)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号10もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列。プライマーセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び配列番号12、その相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択され得るヌクレオチド配列を有する少なくとも1つの合成核酸配列を含み得る。
【0017】
生体試料中の標的IR−B核酸配列の有無を判定するための方法は、(c)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で上記のプライマーセットと生体試料を接触させる工程、(d)増幅された標的IR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含み得る。例として、生体試料は、腫瘍試料などの組織試料からの核酸を含む試料であり得る。別の例において、ポリメラーゼによる増幅は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応によるものであり得る。プライマー及びプローブセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び、検出可能な標識も含み得、さらにクエンチャーを含み得る、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み得る。別の例において、プライマー及びプローブセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得る。
【0018】
別の例において、プライマーセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得;さらに、検出可能な標識も含み得、クエンチャーをさらに含み得る、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み得る。一般に増幅産物は100塩基未満である。
【0019】
生体試料中の標的IR−A及びIR−B核酸の有無を判定するための方法は、ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で上述のようなIR−Aプライマーセットと生体試料を接触させ;ポリメラーゼ反応による増幅に適切な条件下で上述のようなIR−Bプライマーセットと生体試料を接触させる工程;増幅された標的IR−A及びIR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含み得る。この方法は、IR−A及びIR−Bの相対発現レベルを計算することをさらに含み得る。
【0020】
生体試料中のIR−Aの有無を判定するためのキットは、上述の少なくとも1つの合成核酸配列と、本明細書中に記載の1以上の方法を行うための説明書と、を含み得る。このようなキットにおいて、少なくとも1つの合成核酸配列は、本明細書中で開示されるIR−Aプライマー及びプローブの中から選択されるヌクレオチド配列又はそれらの何らかのセットを有し得る。キットはまた、適切なPCR試薬;及び場合によってはIR−Aの有無を判定するための陽性及び/又は陰性対照も含み得る。
【0021】
生体試料中のIR−Bの有無を判定するためのキットは、上述のような少なくとも1つの合成核酸配列と、本明細書中に記載の1以上の方法を行うための説明書と、を含み得る。このようなキット中の合成核酸は、IR−B核酸の中から選択されるヌクレオチド配列を有し得る。このキットはまた、適切なPCR試薬;及び場合によってはIR−Bの有無を判定するための陽性及び/又は陰性対照も含み得る。
【0022】
IGFI/IIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニストもしくはアゴニストに反応性がある患者を選択するための方法は、癌に罹患しているか又はその疑いのある対象から生体試料を入手することと;その試料中のIR−Aの存在を検出及び/又は定量することと、を含み得る。IR−Aの有無は、IGFI/IIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニストもしくはアゴニストを対象に投与すべきか否かに関する指標である。このように、患者を治療する方法は、患者から得られた患者におけるIR−Aの存在を検出及び/又は定量することと、IGFI/IIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニスト又はアンタゴニストをその患者に投与することと、を含み得る。例として、IGFI及びIIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニストは抗体であり得る。
【0023】
IR−A及び又はIR−Bの発現に従うか又はIR−A及びIR−Bの相対量により腫瘍を分類することができる。このようにして腫瘍を分類することにより、IR−A及び/又はIR−Bを過剰発現している腫瘍又はIR−Bに対するIR−Aの変動もしくはその逆を有する腫瘍を同定することができるようになる。腫瘍を分類する方法は、腫瘍組織試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現又はIR−Bに対するIR−Aの量もしくはその逆を定量することと、その定量に基づいて分類を行うことと、を含み得る。腫瘍がある患者を治療する方法は、腫瘍組織試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現又はIR−Bに対するIR−Aの量又はその逆を定量することにより腫瘍を分類することと、IR−A及び/又はIR−Bの発現又はIR−Bに対するIR−Aの量もしくはその逆の定量に基づき分類を割り当てることと、その分類に従い、IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニスト又はアゴニストを患者に投与することと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1A−1BはIR−A及びIR−Bを示す。図1Aは、IR−A及びIR−Bのゲノム構造を示す。図1Bは、左にエクソン位置を示し、右に機能ドメイン位置を示す、INSRホモ二量体のα及びβサブユニットの概略図である。
【図2】ヒトIR−A(配列番号16)及びIR−B(配列番号17)の配列アラインメントであり、このアラインメントは、エクソン11がIR−Aから欠落していることを除き、同一であることを示す。
【図3】強い及び弱いリガンド相互作用を説明するIGF−1R/IR受容体の概略図である。
【図4】例えばIR−Aアッセイのためのプライマー及びプローブ位置の概略を示す。
【図5】図5は、例えばIR−Aアッセイのためのプライマー及びプローブ位置の概略を示す。
【図6】例えばIR−Bアッセイのためのプライマー及びプローブ位置の概略を示す。
【図7】IR−A、IR−B又は空のベクター対照の何れかのプラスミドDNAのおよそ107から10コピーの連続希釈液を用いた、IR−A又はIR−B qRT−PCRアッセイの結果を示す。Y軸はサイクル閾値(cycle−threshold(Ct)値)を表し、X軸はlogDNA複製数を表す。IR−Aアッセイに対する標準希釈曲線の傾斜及び相関係数(r2値)はそれぞれ−3.259及び0.9992である。IR−Bアッセイに対する標準希釈曲線の傾斜及び相関係数(r2値)はそれぞれ−3.155及び0.9989である。
【図8】正常乳房組織に対する、原発乳癌におけるインスリン受容体及びそのアイソフォームのmRNA相対発現レベルを示す。TaqMan遺伝子発現アッセイによって、正常(n=19)と腫瘍(n=42)乳房組織試料との間のINSR(トータル)、IR−A及びIR−Bの相対量(RQ)の差を決定した(log2ベースのスケール)。各試料に対する倍単位の変化の差を計算するために、平均正常ΔCt値を使用した。ウェルチの両側t−検定分析によって、INSR及びIR−Bの両方に対して正常試料と腫瘍試料との間の有意差が確認されたが(P<0.001)、その一方でIR−Aについては差が見られなかった(P=0.45)。バーは特定の遺伝子標的及び組織型の組み合わせ内のlog2RQの中央値を表す。
【図9】対応する正常乳房及び乳癌検体におけるIR−A発現の割合を示す。2(−ΔCt)の計算により算出した、試料内の総インスリン受容体組成物(即ちIR−A+IR−B)に対するインスリン受容体アイソフォーム−A(IR−A)の割合。対応のある試料t−検定分析から、対応する正常試料と腫瘍試料との間のIR−Aの割合の計算値について有意差があることが示された(P<0.001)。黒いバーは、正常(46.60±4.74、平均%±95%CI)及び腫瘍(75.24±5.03、平均%±95%CI)組織内のIR−Aの割合の中央値(%)に相当する。
【図10】原発性乳癌におけるIR−A:IR−B比の上昇を示す。正常(n=19)及び腫瘍(n=42)乳房試料におけるインスリン受容体アイソフォームIR−A及びIR−BのΔCtの差の計算値。正規化のために試料内参照遺伝子パネル(平均Ct)を利用して、全試料に対してΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)の値を計算した。ウェルチの両側t−検定分析によって、実際のIR−A:IR−BのΔCt差に関して、正常試料と腫瘍試料との間で有意差が認められた(P<0.001)。黒いバーは特定組織型内のIR−A:IR−BΔCt差の中央値を示す。
【図11】qPCR cDNAアレイからの乳癌試料中のIR−A:IR−B比の上昇を示す。正常(n=15;10名の個別ドナー由来の試料)、乳癌cDNAパネル(n=165)及び2倍超のエストロゲン受容体(ER)過剰発現がある、これらのcDNAパネル由来の乳房腫瘍(n=83)におけるインスリン受容体アイソフォームIR−A及びIR−B(Y軸)のΔCt差の計算値。正規化のために試料内参照遺伝子パネル(平均Ct)を用いて、全試料に対して、ΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)値を計算した。ウェルチの両側t−検定分析によって、実際のIR−A:IR−BΔCt差に関して、正常試料と腫瘍試料との間で有意差が認められた(P<0.0001)。バーは、特定の組織型内の平均IR−A:IR−BΔCt差の平均値を表す。
【図12】増殖遺伝子の発現とIR−A:IR−BΔCt差の相関を示す。IR−A:IR−BΔCt差の計算値(Y軸)とプールした増殖マーカーパネル(AURKA、BIRC5、CCNB1、KI67及びMYBL2)(X軸)との間の関係の線形回帰分析。特定試料に対する全マーカーにわたるΔCt平均値をとることによって、増殖パネルサマリー値を計算した。正常及び腫瘍試料の両方に対する結果の概要を示す。この線形回帰分析の結果から、2つのサマリー値の間の正相関が示唆される(補正R2=0.595)。
【図13】図13(A及びB)はER+乳癌のサブタイプにおけるIR−A:IR−BΔCt差を示す。収縮重心分類手段(shrunken centroid classifier)に基づく方法(A)及び2試料間のウェルチ検定分析(B)により判定された試料サブタイプ(正常、luminal− A又はluminal−B)分類に関する、IR−A:IR−BΔCt差の計算値の散布図。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差(2試料t検定、p<0.001)が示される。バーは、特定の試料サブタイプ内のIR−A:IR−BΔCt差の中央値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下のプライマー及びプローブ配列に本明細書中で言及する。
【0026】
配列番号1(TTTAGGAAGA CGTTTGAGGA TTACCTGCAC
AACGTGGTTT TCGTCCCCAG)INSRエクソン10 C末端
【0027】
配列番号2(GCCATCTCGG AAACGCAGGT CCCTTGGCGA
TGTTGGGAAT GTGACGGTGG CCGTGCCCAC)
INSRエクソン12 N末端
【0028】
配列番号3(TGAGGATTACCTGCACAACG)IR−Aプライマー
【0029】
配列番号4(GATGTTGGGA ATGTGACGGT)IR−Aプライマー(逆相補的 配列番号21)
【0030】
配列番号5(TTGAGGATTA CCTGCACAACGT)IR−Aプライマー
【0031】
配列番号6(AAACGCAGGTCCCTTGGC)IR−Aプライマー(逆相補的 配列番号22)
【0032】
配列番号7(TCCCCAGGCCATCT)IR−Aプローブ
【0033】
配列番号8(TTTTCGTCCCCAGGCCA)IR−Aプローブ
【0034】
配列番号9(AAAAACCTCT TCAGGCACTG GTGCCCAGGA
CCCTAG)INSRエクソン11
【0035】
配列番号10(GCCATCTCGG AAACGCAGGT CCCTTGGCGA
TGTTGGGAAT GTGACGGTGG)INSRエクソン12 N末端
【0036】
配列番号11(CGTCCCCAGAAAAACCTCTTC)IR−Bプライマー
【0037】
配列番号12(GGACCTGCGTTTCCGAGAT)IR−Bプライマー
【0038】
配列番号13(ACTGGTGCCGAGGAC)IR−B特異的プローブ
【0039】
配列番号14(CCGAGGACCCTAGGC)IR−B特異的プローブ
【0040】
配列番号15(TGCCGAGGACCCTAG)IR−B特異的プローブ
【0041】
さらなるプライマー及びプローブ配列には、表3及び4にあるものが含まれる。熟練者は、本明細書中で開示されるプライマーから、PCR反応で核酸配列を増幅できるプライマー対を選択することができる(例えば、逆鎖にアニーリングし、正しい方向にDNA合成を開始させる。)。熟練者はこのようなプライマーの相補体を例えば陰性対照として使用することができることを理解するであろう。
【0042】
IR−AとIR−Bとの間に高い配列同一性があるにもかかわらず、試料中のヒトIR−A及びヒトIR−Bの発現を検出及び定量するためのアッセイにおいて、これらの核酸配列及び本明細書中に記載の関連配列を使用することができる。このようにして、初めて、迅速かつ高感度の、試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を調べるための方法が発見された。これらの配列を用いて記載される方法は定量的に正確であり、ハイスループット及び臨床の場で使用することができる。
【0043】
試験試料においてIR−A及び/又はIR−Bの発現を特定するために使用することができる合成核酸配列又はオリゴヌクレオチドは、それらが所望の反応において依然として機能可能である限り、塩基部分、糖部分又は骨格が修飾され得、その他の付属基、標識又はクエンチャーを含み得る、DNA、RNA、それらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾体であり得る。合成核酸配列は、少なくとも1つの修飾リン酸骨格、例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホルアミドチオアート、ホスホルアミダート、ホスホルジアミダート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル及びホルムアセタール又はそれらの類似体などを含み得る。
【0044】
A.IR−A核酸配列
適切なIR−A合成核酸配列には、表3及び4で出現するものが含まれる。
【0045】
INSR遺伝子のエクソン10の最後の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号1)又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、INSR遺伝子のエクソン12の最初の60、55、50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号2)又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列で出現するIR−A核酸配列を含む合成核酸は、試料中のIR−Aの発現レベルを調べるための定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)(リアルタイムPCR又は動力学的PCRとしても知られる。)などのポリメラーゼによる増幅及び検出において使用することができる。
【0046】
IR−A配列を含む合成核酸は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の連続ヌクレオチドを含み得、同時にこの合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個の連続ヌクレオチドを含む:
(i)配列番号3(TGAGGATTAC CTGCACAACG)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4(GATGTTGGGA ATGTGACGGT)、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5(TTGAGGATTA CCTGCACAAC GT)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6(AAACGCAGGT CCCTTGGC)、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0047】
ある例において、生体試料中の標的IR−A核酸配列の有無を判定するためのプライマーセットは、以下うち少なくとも1つの10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列の中から選択され得る少なくとも1つの合成核酸配列を含み得る:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60、55、50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。このプライマーセットは、(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又は、(ii)配列番号5又はその相補的配列;及び配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み得る。通常、プライマーセットは、約50から150bpの生成物を生成させるためにPCRで使用される。プローブは、配列番号7もしくは8又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくは8又はその相補体の何れかとハイブリッド形成可能である配列を含み得、適切な標識及びクエンチャーの組み合わせも含み得る。
【0048】
例として、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)に有用なプライマーセットは:
配列番号3又はそれに相補的な核酸配列;
配列番号4又はそれに相補的な核酸配列(配列番号21);及びクエンチャーも含み得る検出可能な標識を有する、さらなる合成核酸又はプローブを含む。ある例において、さらなる核酸は、10から50ヌクレオチドの間の1本鎖核酸配列であり、配列番号3及び4の2つのPCRプライマー間でIR−A cDNA又はその相補体のDNA配列に特異的に結合するように設計されている。さらなる核酸は、通常、その5’及び3’末端で共有結合する、6−カルボキシフルオレセイン(FAM)又はテトラクロロフルオレシン(fluorescin)(TET)などの蛍光レポーター又はフルオロフォア及び、テトラメチルローダミン(TAMRA)などのクエンチャーを有する。この例において、特異的PCR生成物のみが蛍光シグナルを発する。この例において、さらなる核酸は、10から50塩基であり得、配列番号7又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含む。
【0049】
別の例において、プライマーセットは、
配列番号5又はそれに相補的な核酸配列;
配列番号6又はそれに相補的な核酸配列(配列番号22);及びクエンチャーも含み得る検出可能な標識を有するさらなる核酸を含む。さらなる核酸は、10から32ヌクレオチドの間の1本鎖核酸配列であり得、配列番号5及び6の2つのPCRプライマー間でIR−A cDNA又はその相補体のDNA配列にのみ結合するように設計される。この例において、さらなる核酸は10から32塩基であり得、配列番号8又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含む。
【0050】
B.IR−B核酸配列
適切なIR−B合成核酸配列には、表3及び4で出現するものが含まれる。
【0051】
IR−Bの発現レベルを調べるための本明細書中で開示される方法、特にPCRに基づく方法において、(a)エクソン10の最後の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号1)もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、INSR遺伝子のエクソン11(配列番号9)もしくはそれに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又は、エクソン10及び11を架橋する配列又はストリンジェントな条件下でエクソン10及び11を架橋する領域もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列で出現するIR−B核酸配列を使用することができる。
【0052】
ある例において、IR−B配列を含む合成核酸は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の連続ヌクレオチドを含み得、この場合、この合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個の連続ヌクレオチドを含む:
(i)配列番号11又はそれに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12又はそれに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0053】
別の例において、生体試料中の標的IR−B核酸配列の有無を決定するためのプライマーセットは、以下のうち少なくとも1つの10から27個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列の中から選択され得る少なくとも1つの合成核酸配列を含み得る:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)中の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基及びエクソン11(配列番号9)又はそれに相補的な配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号10)又はそれに相補的な配列。プライマーセットは、配列番号11又はそれに相補的な合成核酸配列;及び配列番号12又はそれに相補的な合成核酸配列の中から選択され得るヌクレオチド配列を含み得る。
【0054】
プライマーセットがqPCRなどのPCRで使用される場合、プライマーセットは、配列番号11又はそれに相補的な合成核酸配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号12又はそれに相補的な合成核酸配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;クエンチャーも含み得る検出可能な標識を含むさらなる核酸と、を含み得る。さらなる核酸は、10から27ヌクレオチドの間の1本鎖核酸配列であり得、配列番号11及び12の2つのPCRプライマーの間でIR−B cDNAの配列もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下でその領域もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と特異的に結合するように設計されている。例として、さらなる核酸は、10から27個の塩基であり得、配列番号13もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5から14個の塩基を含み得る。さらなる核酸は、10から30個の塩基であり得、配列番号14もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含み得る。さらに別の例において、さらなる核酸は10から30個の塩基であり得、配列番号15もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含み得る。さらなる核酸は、通常、その5’及び3’末端で共有結合する、6−カルボキシフルオレセイン(FAM)及びテトラクロロフルオレシン(fluorescin)(TET)などの蛍光レポーター又はフルオロフォア及びテトラメチルローダミン(TAMRA)などのクエンチャーを有する。
【0055】
有用な合成核酸配列はまた、上記で開示される配列の変異形又は本明細書中で開示される核酸と実質的に同様である配列も含む。変異形は、1以上の塩基、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の塩基により改変されるが、対象のIR−A標的配列の特異的位置になおアニーリング可能である配列を含む。「実質的に同様」という用語は、アニーリング又はハイブリッド形成に関して使用される場合、プライマーなどの合成核酸配列が、ストリンジェントな条件下でその個々の核酸とハイブリッド形成するか又はアニーリングするのに十分に相補的であるはずであることを意味する。この合成核酸配列は、その個々の核酸の正確な配列を反映する必要はなく、実際には「変性物」であってもよい。その合成核酸配列がハイブリッド形成を可能とするようにその配列と十分な相補性を有するならば、非相補的な塩基又は他の配列が合成核酸配列中に散在し得る。従って、例として、PCR増幅に使用されるプライマーは、増幅しようとする特異的配列に「実質的に」相補的となるように選択され得る。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「ハイブリッド形成」という用語は、塩基対形成を通じて核酸鎖が相補鎖と連結する過程ならびに例えばPCR技術において行われる場合の増幅の過程を指す。ある種のヌクレオチド配列の相補体とハイブリッド形成可能なヌクレオチド配列は一般に機能的に同等であり、本明細書中に記載の方法の目的のためにそのヌクレオチド配列と置き換えることができる。
【0057】
このようにして、この開示により特に高感度で特異的であることが分かった特異的プライマー及びプローブを特定するが、当業者は、有用なプライマーには、本明細書中で開示される例示するプライマーとほぼ同じ位置でポリメラーゼ反応を開始させることができるいかなるプライマーも含まれることを理解するであろう。即ち、INSR遺伝子のエクソン10及びエクソン12において重合反応を開始させるプライマーを使用して、診断用の配列を増幅させることができる。IR−B配列のエクソン10−エクソン11連結部に及ぶプライマーを使用して、IR−B配列を特異的に増幅させることができる。同様に、増幅させたIR−A又はIR−B標的配列に特異的に結合する、IR−AとIR−Bとを区別するさらなるプローブを合成し得る。一般に、より相補的な残基を含むより長い配列ほど、より多くの変化を含有し得る。
【0058】
「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」とは、ストリンジェンシーの低い条件、ストリンジェンシーが中程度の条件及びストリンジェンシーが高い条件の何れかであり得る。一般に、「ストリンジェンシーの低い条件」は、例えば、32℃での、5xSSC;5xデンハルト液;0.5%(w/v)SDS;及び50%(w/v)ホルムアミドを含む溶液中でのハイブリッド形成である。「ストリンジェンシーが中程度の条件」は、例えば、42℃での、5xSSC;5xデンハルト液;0.5%(w/v)SDS;及び50%(w/v)ホルムアミドを含む溶液中でのハイブリッド形成である。「ストリンジェンシーが高い条件」とは、例えば、50℃での、5xSSC;5xデンハルト液;0.5%(w/v)SDS;及び50%(w/v)ホルムアミドを含む溶液中でのハイブリッド形成である。ハイブリッド形成のストリンジェンシーは、温度、核酸濃度、核酸の長さ、イオン強度、時間及び塩濃度などの複数の因子により影響を受ける。これらは、様々なレベルのストリンジェンシーを産み出す例となる条件にすぎない。当業者は、PCR反応での所望のストリンジェンシーに対してこのような条件を調整することを含め、ハイブリッド形成条件を適切に調整することによって同様のストリンジェンシーを実現することが可能であろう。
【0059】
合成核酸配列は、非特異的に核酸を切断する化学物質もしくは酵素又は部位特異的制限エンドヌクレアーゼを用いたより大きい核酸断片の切断により、又は例えば市販の自動DNA合成装置及び標準的なホスホラミダイト化学の使用によるものなどの当技術分野で公知の標準的な方法による合成によって得ることができる。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するためのある方法は米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0060】
所望の合成核酸が合成されたら、核酸を合成した固体支持体から切り離し、存在する保護基を全て除去するために、当技術分野で公知の方法によって、処理すことができる。次に、抽出及びゲル精製を含む当技術分野で公知の何らかの方法によってこの合成核酸を精製することができる。オリゴヌクレオチドの濃度及び純度は、例えばアクリルアミドゲル上でオリゴヌクレオチドを調べることによって、HPLCによって又は分光光度計において260nmでの光学密度を測定することによって、試験することができる。
【0061】
本発明の合成核酸配列は、IR−A及びIR−Bの発現の存在について調べるために使用されるあらゆるアッセイにおいて使用することができる。ある例において、本明細書中で開示されるような単離核酸を増幅プロセスで使用することができる。増幅とは、インビトロで核酸鎖を増加させるためのプロセスを指す。代表的技術はPCRであり、これは核酸分子を指数関数的に増幅させる。PCRは、米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号に記載されている。PCRは標的核酸配列ポリヌクレオチドの特異的検出及び定量に広く使用されており、分子生物学においては標準的な方法である。PCRは、試験試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を調べるために使用することができる。この方法は単離核酸配列対、「プライマー」を使用し、これはIR−A又はIR−B DNA分子における特異的位置に特異的にアニーリングする。IR−A又はIR−B DNAを熱変性し、増幅しようとするDNAの逆鎖における標的配列を取り囲む2つのオリゴヌクレオチドをハイブリッド形成させる。これらのオリゴヌクレオチドは、DNAポリメラーゼとともに使用するためのプライマーとなる。このDNAは、プライマー伸長によりコピーされ、両鎖の第二のコピーが作製される。熱変性、プライマーハイブリッド形成及び伸長のサイクルを繰り返すことによって、標的IR−A又はIR−B DNAを約2〜4時間で百万倍以上に増幅することができる。PCRは、増幅の結果を判定するための検出技術と組み合わせて使用されるべき分子生物学ツールである。PCRの長所は、およそ4時間で百万から十億倍、標的DNAの量を増幅することによって感度を向上させることである。
【0062】
下記で考察し、実施例で説明するように、IR−Aプライマー及びプローブを使用する有用な方法は定量的PCRである。定量的PCRは、蛍光の光シグナルの検出を用いて増幅反応をリアルタイムで監視できるようにするために蛍光化学とPCR反応を組み合わせる方法を指す。ある例において、この方法は、SYBR greenなどの配列非特異的蛍光レポーター色素を使用する(Wittwer C.T.ら、Biotechniques.1997年1月;22(1):176−81)。別の例において、この方法は、TAQMANプローブなどの配列特異的蛍光レポーターを使用する(Heid C.A.ら、Genome Res.1996,October;6(10):986−94)。PCRサイクリングプログラムの実行中、光源を用いて試料を励起させる。生成されるPCR増幅産物の量の指標となる蛍光シグナルは、光検出器又はCCD/CMOSカメラを用いて各反応ウェル中で監視する。反応中の試料中の蛍光を監視することによって、正確な定量的測定を行うことができる。プローブを利用したPCR法は、SYBR green法よりも正確であると考えられる。PCR又はqPCRは通常、プラスチック製の96又は384ウェルマイクロタイタープレート中で行われ、各反応物の体積は5〜50μLの規模である。しかし、PCRは、非常に小さい(ナノリットル)体積で行うことができる。
【0063】
「プライマー」又は「プライマー対」という用語は、本明細書中で使用される場合、重合反応を開始させるためにPCRで使用される短いオリゴヌクレオチド(通常は10から30bp)を指す。特異的プライマーを、標的配列の特異的位置において重合を開始させることによって増幅しようとするIR−A又はIR−B DNA配列を選択するために使用することができる。
【0064】
本明細書中に記載の方法は、IR−A及び/又はIR−Bを含有する少量のDNAの、再現性がありロバストな増幅のための方法を提供する。本明細書中に記載の核酸プライマーを用いてqPCRを行うことによって、0.1ピコグラムのDNA(1000複製)から又は35複製のDNAから、IR−A又はIR−Bを特異的に検出することができる。
【0065】
生体試料は、この方法の一部の実施においてcDNAに最初に転写されるRNAを含み得る。細胞総RNA、細胞質RNA又はポリ(A)+RNAを使用し得る。総RNA及びポリ(A)+RNAを調製するための方法は周知であり、Sambrookら(1989,Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(第2版)、vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.)及びAusubelら編(1994,Current Protocols in Molecular Biology,vol.2,Current Protocols Publishing,New York)に全般的に記載されている。好ましくは、Chirgwinら(1987)、Chomczynski&Sacchi(1987)、Sambrookら(1989)又はFarrell Jr.(1993)により記載される技術によって総RNAを調製し、多くの高品質の市販キットも利用可能である。より好ましくは、Chirgwinら(1987)のグアニジンチオシアナート法を用いて、使用する総RNAを調製する。総RNAの完全性は当技術分野で公知の様々な方法を用いて確認することができる。例として、RNAゲル電気泳動法(例えばホルムアルデヒド/アガロースゲル)又はAgilent LabChipを用いてRNAを分析し得る。哺乳動物総RNAの場合、およそ4.5及び1.9kbの2本のバンドが見えるはずであり;これらのバンドは28S及び18SリボソームRNAにそれぞれ相当し、これらのバンドの強度比は通常は1.5〜2.5:1となるはずである。
【0066】
マイクロスケールのRNA調製のためのRNA精製キットは、多くの市販業者から入手可能である(例えばAbsolutely RNA(商標)Nanoprep、Stratagene;PicoPureTM、Arcturus;RNeasy(登録商標)、Qiagen;RNAqueousTM Microkit、Ambion)。
【0067】
第一鎖cDNA合成のためのcDNA合成オリゴヌクレオチドは、約60℃から90℃の温度で、好ましくは約70℃で、約5分間、適切な緩衝液中でRNAとハイブリッド形成させることができ、次いで、約4℃に冷却し、その後、逆転写酵素を添加する。cDNA合成オリゴヌクレオチドのRNAとのハイブリッド形成後、第一のcDNA鎖が合成される。このcDNAの第一鎖は、好ましくは逆転写のプロセスを通じて生成され、DNAは、当業者に良く知られる方法に従い、逆転写酵素を用いてRNAから生成される。
【0068】
伸長後に酵素がデオキシリボヌクレオチドを3’末端に付加する限り(Varmus,Science 240:1427−1435(1988))及び酵素がRNaseH活性を欠く限り、RNAをDNAに転写するために何らかの逆転写酵素を使用することができる。好ましくは、逆転写酵素はRNaseH活性を欠くが、より長いcDNAが合成され得るように野生型ポリメラーゼ活性を保持している。逆転写酵素は、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素又はその突然変異形であり得る。逆転写酵素はPowerScript(商標)逆転写酵素(BD Biosciences Clontech)であり得る。逆転写酵素はSuperscript III(商標)であり得る。
【0069】
当業者に理解されるように、使用される逆転写酵素の量は変動し得る。例えば、およそ1時間、逆転写酵素とともに適切な温度で温置することによって、逆転写が行われるが、この温度は、逆転写酵素が酵素活性を保持する温度範囲でなければならない。この反応は、37℃と55℃の間、好ましくは37℃から42℃の間で行われ得る。最も好ましくは、この反応は、約42℃など、至適酵素活性で行われる。逆転写反応は、反応混合物を95℃に約5分間加熱して酵素を不活性化し、場合によっては続いて氷上で冷却することによって、停止させることができる。
【0070】
C.IGFアンタゴニスト/アゴニスト
本明細書中で使用される場合、IGF剤は、IGF−1R/IRシグナル伝達経路の何れかの成員の発現又は活性に影響を与える薬剤を指し、これにはIGF−1R、IR、INSR又はIGFI/IIアンタゴニストもしくはアゴニストが含まれる。IGF−1R、IR、INSR又はIGFI/IIアンタゴニストもしくはアゴニストは、ペプチド模倣体、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子、抗体又はその他の薬物候補であり得る。IGF−R1アンタゴニストの例は当技術分野で周知であり、これには、IGF−1Rに拮抗するアンチセンス及び核酸が含まれ、例えば、Wraightら、Nat.Biotech.,18:521−526(2000);米国特許第5,643,788号;米国特許第6,340,674号;US2003/0031658号;米国特許第6,340,674号;米国特許第5,456,612号;米国特許第5,643,788号;米国特許第6,071,891号;国際公開第2002/101002号;国際公開第1999/23259号;国際公開第2003/100059号;US2004/127446号;US2004/142895号;US2004/110296号;US2004/006035号;US2003/206887号;US2003/190635号;US2003/170891号;US2003/096769号;米国特許第5,929,040号;米国特許第6,284,741号;US2006/0234239号;及び米国特許第5,872,241号に記載されている。
【0071】
さらに、US2005/0255493は、低分子2本鎖RNAを用いたRNA干渉によるIGF−1R発現低下を開示する。さらに、IGF−1Rを標的とする阻害ペプチドが、インビトロ及びインビボで抗増殖活性を保持するように作製されている(Pietrzkowskiら、Cancer Res.,52:6447−6451(1992);Haylorら、J.Am.Soc.Nephrol、11:2027−2035(2000))。IGF−1RのC末端ペプチドは、アポトーシスを誘導し、腫瘍成長を顕著に抑制することが示されている(Reissら、J.Cell.Phys.,181:124−135(1999))。また、可溶性形態のIGF−1Rは、インビボで腫瘍成長を抑制する(D’Ambrosioら、Cancer Res.,56:4013−4020(1996))。IGF−IRに対する低分子阻害剤は、例えばGarcia−Echeverriaら、Cancer Cell,5:231−239(2004);Mitsiadesら、Cancer Cell,5:221−230(2004);及びCarboniら、Cancer Res,65:3781−3787(2005)に記載されている。
【0072】
このような低分子阻害剤に関する開示のさらなる例としては、国際公開第2002/102804号;国際公開第2002/102805号;国際公開第2004/55022号;米国特許第6,037,332号;国際公開第2003/48133号;US2004/053931号;US2003/125370号;米国特許第6,599,902号;米国特許第6,117,880号;国際公開第2003/35619号;国際公開第2003/35614号;国際公開第2003/35616号;国際公開第2003/35615号;国際公開第1998/48831号;米国特許第6,337,338号;US2003/0064482号;米国特許第6,475,486号;米国特許第6,610,299号;米国特許第5,561,119号;国際公開第2006/080450号;国際公開第2006/094600号;及び国際公開第2004/093781号が挙げられる。国際公開第2007/099171号(ビシクロ−ピラゾール阻害剤)及び国際公開第2007/099166号(ピラゾロ−ピリジン誘導体阻害剤)も参照のこと。Abbott Corporationの分子A−928605に対する、(Hubbardら、AACR−NCI−EORTC Int Conf Mol Targets Cancer Ther(10月22−26日、San Francisco)2007年、Abst A227)も参照のこと。
【0073】
IGF剤の例としては、IGF−I/IIアゴニスト又はアンタゴニストが挙げられる。特異的IGF−IIアンタゴニストも当技術分野で公知であり、これには、IGF−I及び/又はIGF−IIに結合する抗体が含まれる。このようなアンタゴニストは、国際公開第2007022172号及び欧州特許第492552号で開示されている。IGF−I及びIGF−IIの両方に結合する抗体の例としては、国際公開第2007070432号、国際公開第05/18671号、国際公開第03/093317号、国際公開第05/027970号及び国際公開第05/028515号に記載のものが挙げられる。
【0074】
IGFアンタゴニストとして有用な抗体の具体例には、表1及び2で列挙される重鎖及び軽鎖成分が含まれる。これらの抗体は、その全体において本明細書中に参照により組み込まれるWO2007070432に開示されている。特定の抗体としては、7.159.1、7.158.1及び7.34.1と呼ばれるものが挙げられる。上記で開示される薬剤及び抗体は、それらの全体において本願に組み込まれる。
【表1】
*ハッチ表記(#)は生殖細胞系列におけるスペースを指し、この表で示される抗体配列との適正なアラインメントを示すために使用される。
**上記の表で示される生殖細胞系列配列は、アラインメントを目的とするものであり、各個別の抗体領域が、インビボで免疫グロブリン生殖細胞系列DNAセグメントの可変領域内でそれ自身の位置に存在することを理解されたい。
【表2】
*ハッチ表記(#)は生殖細胞系列におけるスペースを指し、この表で示される抗体配列との適正なアラインメントを示すために使用される。
**上記の表で示される生殖細胞系列配列は、アラインメントを目的とするものであり、各個別の抗体領域が、インビボで免疫グロブリン生殖細胞系列DNAセグメントの可変領域内でそれ自身の位置に存在することを理解されたい。
【0075】
D.IR−A及びIR−B発現を検出及び/又は定量する方法
試料中のIR−A又はIR−Bレベルを調べるために、上で開示されるIR−A及びIR−B合成核酸配列、プライマー及びプローブセットを使用することができる。このアッセイの感度を考慮すると、本発明の分子は多くの用途を有し得る。
【0076】
好ましいアプローチは、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR、qPCR、qrt−PCR又はRTQ−PCRなど様々に略称される)又は動力学的ポリメラーゼ連鎖反応(KPCR)とも呼ばれるリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を使用することである。細胞又は組織中のメッセンジャーRNA及び非コードRNAを定量するために、逆転写とリアルタイムPCRが組み合わせられることが多い。逆転写PCRによって、予めcDNAを調製することなくRNA含有試料から開始することができるようになる。リアルタイム逆転写PCRは、しばしばqRT−PCR、RRT−PCR又はRT−rtPCRと表記される。これによって、DNA試料中の1以上の特異的配列の検出及び定量の両方が可能になる(DNA投入量又はさらなる正規化遺伝子に対して正規化する場合の、絶対的コピー数又は相対量として)。
【0077】
この手順は、ポリメラーゼ連鎖反応の一般過程に従う。しかし、増幅されたDNAは、リアルタイムに反応進行とともに検出される。リアルタイムPCRにおける生成物の検出のための2つの一般的な方法は、(1)何らかの2本鎖DNAに挿入される非特異的蛍光色素及び(2)プローブとその相補的DNA標的とのハイブリッド形成後にのみ検出が可能となる蛍光レポーターで標識されるオリゴヌクレオチドからなる配列−特異的DNAプローブである。
【0078】
蛍光レポータープローブは、プローブ配列を含有するDNAのみを検出し;従って、レポータープローブを使用すると特異性が顕著に向上し、非特異的DNA増幅が存在しても定量が可能となる。蛍光プローブは、標的とされる遺伝子が全て同様の効率で増幅されるならば、様々な色の標識を有する特異的プローブに基づき、同じ反応中のいくつかの遺伝子の検出のために、多重アッセイにおいて使用することができる。
【0079】
本方法は、一般に、プローブの片方の末端に蛍光レポーターが付加されており、プローブの他方の末端に蛍光のクエンチャーが付加されているDNAに基づくプローブを使用する。クエンチャーへのレポーターの近接近によりその蛍光の検出が妨げられ;ポリメラーゼの5’から3’方向のエクソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断によってレポーターがクエンチャーから離され、それ故に蛍光発光が抑制されなくなる。従って、各PCRサイクルでのレポータープローブが標的とする生成物が増加すると、プローブの切断及びレポーターの放出によって蛍光の比例した増加が起こる。
【0080】
PCR試料は通常と同様に調製し、レポータープローブを付加する。反応が開始されると、PCRのアニーリング段階中にプローブ及びプライマーの両方がDNA標的にアニーリングする。
【0081】
新しいDNA鎖の重合はプライマーから開始され、ポリメラーゼがプローブに到達すると、その5’−3’−エクソヌクレアーゼがプローブを分解し、蛍光レポーターをクエンチャーから物理的に引き離し、その結果蛍光が増強する。蛍光は、リアルタイムPCRサーモサイクラーにおいて検出され、測定され、生成物の指数関数的増加に対応するその幾何級数的増加は、各反応における閾値サイクル(threshold cycle(CT))を決定するために使用される。
【0082】
反応の指数期中に存在するDNAの相対濃度は、対数スケールでサイクル数に対して蛍光をプロットすることにより調べることができる(指数関数的に量が増加すると直線になる)。バックグラウンドを上回る蛍光の検出に対する閾値が決定される。試料からの蛍光が閾値を越えるサイクルをサイクル閾値、Ctと呼ぶ。指数期中、DNAの量は、理論的にはサイクルごとに2倍になり、DNAの相対量を計算することができ、例えばCtが別の試料よりも3サイクル小さい試料は、23=8倍多い鋳型を有する。全てのプライマーセットが同じように良好に機能するわけではないので、最初に反応効率を計算しなければならない。このようにして、基数としてこれを使用し、指数としてサイクルの差(cycle difference)C(t)を用いることによって、開始時の鋳型の差を(2x効率%)Ctとして計算することができる。
【0083】
次いで、結果を公知の量のRNA又はDNAの連続希釈物(例えば未希釈、1:4、1:16、1:64)のリアルタイムPCRにより作成した標準曲線と比較することによって、RNA又はDNAの量を決定することができる。遺伝子発現を正確に定量するために、対象となる遺伝子からのRNAの測定量を同じ試料において測定したハウスキーピング遺伝子からのRNA量で除して、様々な試料間のRNAの量及び質の起こり得る変動に対して正規化する。正規化で使用される参照遺伝子の発現が全試料にわたり非常に類似しているならば、この正規化によって、様々な試料間の対象となる遺伝子の発現の正確な比較が可能となる。
【0084】
MAK2など、機序に基づくqPCR(mechanism based qPCR)定量法も記載されている。これらは、定量のための標準曲線を必要としない。これらの機序に基づく方法は、元の試料濃度の推定を行うためのポリメラーゼ増幅プロセスに関する知識を利用している。
【0085】
相対量及び絶対量を調べるためにリアルタイムPCRを使用することができる。相対定量は、標的量における倍単位での差(2x、3xなど)の尺度である。絶対量は、公知の標準物質と比較することによって、存在する正確な標的分子数を与える。
【0086】
E.腫瘍の診断分類
腫瘍を分類する方法は、腫瘍試料を提供することと;その試料を合成IR−A特異的オリゴヌクレオチドと接触させることと;腫瘍中のIR−A量を検出又は定量することと、を含み得る。腫瘍におけるIR−A量を対照組織試料と又は正常組織に対する母集団平均と比較し得る。例えば、乳癌腫瘍試料を、同じ患者の疾患のない乳房由来の試料と又は非罹患乳房組織に対する母集団平均と比較し得る。IR−Aの発現の上昇は、その腫瘍がIR−A発現腫瘍であることを示す。
【0087】
あるいは、腫瘍を分類する方法は、対照試料又は母集団平均と比較して、腫瘍におけるIR−B量を検出及び/又は定量することを含み得る。このようにして、腫瘍を分類する方法は、腫瘍試料を提供することと;その試料を合成IR−B特異的オリゴヌクレオチドと接触させることと;腫瘍中のIR−B量を検出又は定量することと、を含み得る。腫瘍におけるIR−B量を対照組織試料と又は正常組織に対する母集団平均と比較し得る。例えば、乳癌腫瘍試料を、同じ患者の疾患のない乳房由来の試料と又は非罹患乳房組織に対する母集団平均と比較し得る。IR−Bの発現の上昇は、その腫瘍がIR−B発現腫瘍であることを示す。
【0088】
腫瘍を分類する方法は、IR−A及びIR−Bの相対発現レベルを決定することを含み得る。相対発現は、IR−A:IR−B mRNAの比として又は総IR mRNAの割合としての何れかの%として、例えばIR−Aの%として記述することができる。IR−A及びIR−Bの相対発現はまた、qPCRにおける閾値サイクルの差、例えば(IR−AΔCt)−(IR−BΔCt)=ΔΔCtにより示すこともでき、試料中のIR−B mRNAに対するIR−A mRNAの比は2−ΔΔCtとほぼ等しい。ΔCtの計算の場合、実験によるCt値は、内部標準に対して正規化することができる。例えば、1以上のハウスキーピング遺伝子の平均Ctなど、遺伝子発現パネルの試料内の平均(即ちIR−A及び/又はIR−B発現と同じ試料から得られる。)Ct値をIR−A及びIR−Bに対するCt値の正規化のために使用して、ΔCt値を計算することができる。
【0089】
腫瘍組織試料など、組織試料を分類するために、総INSR発現に対するIR−Aの%に基づき、組織型におけるIR−Aの%の平均及び標準偏差を最初に計算する。別のアプローチにおいて、平均の信頼範囲が、予め選択された信頼区間、例えば95%、97.5%、99%又は99.9%の信頼に対して統計的に決定される。次に、組織試料中の総INSR発現に対するIR−Aの%を組織試料において決定する。総INSR発現からのIR−Aの%が平均よりも大きい場合、この組織は、IR−A発現の割合が上昇していると言うことができる。総INSR発現中のIR−Aの割合が1〜3標準偏差を超えて、より大きい場合、例えば2標準偏差を超えて大きい場合、その試料は、IR−Aの割合が実質的に上昇していると言うことができる。同様に、総INSR発現中のIR−Aの割合が予め選択された信頼レベルに対する平均値の信頼区間の上限よりも大きい場合、その組織はIR−Aの割合が異常に高いと言うことができる。組織のタイプに対して、平均値の95%、97.5%、99%又は99.9%信頼区間の1、2又は3倍を超える組織試料に分類が割り当てられ得る。
【0090】
あるいは、腫瘍の既知の分類に対して、総INSR mRNAに対するIR−A mRNAの割合の平均及び予め選択した信頼レベルに対する信頼区間を決定し得る。組織試料のIR−Aの%測定値が信頼区間内に収まる場合、その測定は腫瘍分類と合致すると言うことができる。
【0091】
例として、正常乳房組織は、95%信頼で、総INSR mRNAに対する割合として46.6±4.7%のIR−A mRNAを含有すると決定されている。乳房腫瘍組織は、±5%の95%信頼区間で、総INSR mRNAに対して75.24%のIR−Aを含有することが見出されてた。これらの測定は、有意差があるとされている(p<0.0001)。46.6%よりも大きい組織試料IR−A%は、IR−Aの平均%よりも高いことを示すと言うことができ得る。しかし、正常組織の平均値と腫瘍組織の平均値との間のほぼ中間点であり、個々の95%信頼範囲を優に超える約60%に閾値を設定すると、不正確に分類される試料の数が最小限に抑えられる。熟練者は、47〜75%の範囲で閾値を調整し得、例えば、比較的包括的な分類を容易にするために、55%から65%の範囲で閾値を選択する。
【0092】
別の例として、IR−A及びIR−BのΔCt値を任意の型の正常組織に対して決定し得る。平均値より、1、2、3標準偏差またはそれ以上低い(IR−AΔCt)−(IR−BΔCt)の差を有すると決定された組織試料は、IR−B発現に対してIR−A発現のレベルが不均衡であるものとして分類され得る。一方、正のΔCt差は、IR−B発現レベルが不均衡であることを示す。例証するために、正常及び原発腫瘍乳房試料においてIR−A:IR−BΔCt差を決定した。平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは正常の場合0.20±0.23(n=19)であり、原発腫瘍では、平均IR−A:IR−BΔΔCt差±95%CIは−1.81±0.27(n=42)であった。従って、IR−A:IR−BΔΔCt<約0.2である組織試料は、平均IR−A:IR−BΔΔCtよりも高い値を有すると言うことができ、IR−A発現の割合の平均値よりも高いことが示される。しかし、閾値を約−0.4、−0.6、−0.8、−1.0又は−1.2に設定することによって、信頼レベルが向上する。中間点(この例において約−0.7から−0.9のIR−A:IR−BΔΔCt)付近に閾値を設定することにより、正しくない分類の数が最小限に抑えられる。言うまでもなく、熟練者は、より包括的に、またはより包括的でないように、分類のための必要性のバランスを取るために、平均値の間の範囲の何れかに閾値を調整し得る。従って、IR−A:IR−BΔΔCt差が、IR−Bに対するIR−Aの量が変化している乳房腫瘍組織と合致するものとして試料を分類するための閾値は、0.2から−1.8の範囲に設定され得、例えば95%信頼区間に基づき、約0.4から約−1.54の間に設定される。
【0093】
別の例として、IR−A及びIR−Bの相対発現は、腫瘍サブタイプ、例えばluminal A及びluminal B乳癌を分類するために使用され得る。例えば、正常、luminal A及びluminal BにおけるIR−A:IR−BΔCt差を比較した。平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは、正常の場合0.27±0.30(n=15)であった。luminal Aに分類される乳癌では、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−1.09±0.34(n=13)であった。luminal Bに分類される乳癌では平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−2.12±0.34(n=27)であった。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差が示される(2−試料t検定、p<0.001)。従って、正常とluminal A腫瘍組織との間のIR−A:IR−BΔΔCt分類に対する閾値は、約0.3から−1.4の間の範囲、例えば約−0.2、約−0.4又は約−0.6に設定され得る。luminal Aとluminal B腫瘍組織との間のIR−A:IR−BΔΔCt分類のための閾値は、約−1.1から約−2.1の範囲、例えば約−1.5から−1.75の範囲又は約−1.55、約−1.6、約−1.65又は約−1.7に設定され得る。
【0094】
GeneChip発現プロファイルに基づき、正常、luminal−A及びluminal−Bに対する分類スキームを用いて、正常、luminal−A及びluminal−Bに分類された腫瘍試料におけるIR−A:IR−BΔCt差を比較した。正常において、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは0.32±0.25(n=15)であった。luminal−Aと予測される乳癌においては、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−1.05±0.19(n=18)であった。luminal−Bと予測される乳癌において、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−2.42±0.32(n=22)であった。このスキームによると、luminal Aとluminal B腫瘍組織との間のIR−A:IR−BΔΔCt分類に対する閾値は、約−1.1から約−2.4の範囲、例えば約−1.4から−2.1の範囲又は約−1.4、約−1.6、約−1.7、約−1.8又は約−1.9に設定され得る。サブタイプ分類をさらに改良するために、IR−A:IR−BΔΔCtを他の発現プロファイルと組み合わせることができる。
【0095】
例えば増殖スコアを決定するために、特に他の癌増殖の予測因子と組み合わせて、癌増殖の予測因子として、組織中のIR−A及びIR−Bの相対発現レベルを使用することができる。予測される増殖比率から、個々の癌の予後及び悪性度に対する有用な情報が提供され得る。上記データから、IR−ATR−BΔCt差と増殖スコアとの間の正相関が示される。このようにして、腫瘍組織をスコア化するための方法は、IR−A及びIR−B発現の相対的比率を調べることと、IR−A及びIR−Bの相対発現に少なくとも一部基づき、増殖スコアを割り当てることと、を含み得る。
【0096】
これらの方法を用いた分類のための腫瘍試料は、肺、乳房、前立腺、結腸、卵巣、膵臓、脳、食道、子宮内膜、子宮頸部、消化管又は皮膚由来の試料を含むいずれの適切な腫瘍試料でもあり得る。腫瘍試料は、IGF−R1/IR−Aなどの細胞表面受容体を通じてのみ、又は一部それを通じて腫瘍活性が媒介される何れかの患者から採取することができる。例えば、腫瘍は、白血病、多発性骨髄腫又はリンパ腫などの非固形腫瘍であってもよいし、固形腫瘍、例えば胆管、骨、膀胱、脳/CNS、乳房、結腸直腸、子宮頸部、子宮内膜、胃、頭頸部、肝臓、肺、筋肉、神経、食道、卵巣、膵臓、胸膜/腹膜、前立腺、腎臓、皮膚、精巣、甲状腺、子宮及び外陰部の腫瘍であってもよい。ある例において、腫瘍は、乳房の腫瘍である。別の例において、腫瘍は膀胱の腫瘍である。別の例において、腫瘍は肝臓の腫瘍である。
【0097】
適切な腫瘍試料は当技術分野で公知のように調製することができる。例えば、針生検を介して生きている腫瘍細胞を得て、次いで標準的手順に従いインビトロで培養する。あるいは、吸引後に腫瘍細胞をすぐに固定するか又は腫瘍を(全体又は一部)を摘出し、免疫組織学的染色用に切片を調製し得る。
【0098】
腫瘍細胞をインビトロで培養することにより、刺激後の内在化動態の測定が可能となり、一方で試料をすぐに固定すると、腫瘍内の受容体の静的な局在性をアッセイできる。
【0099】
F.治療方法
IGF−1受容体(IGF−IR)経路は複雑であり、複数の因子が含まれる(図3参照)。IGF−1Rは、インスリン受容体(INSR)とハイブリッド受容体を形成することができ、実際に形成する。IGFリガンドであるIGF−I及びIGF−IIは、最初にIGF−1Rと相互作用し、様々な細胞内シグナル伝達カスケードを活性化することによって、それらの様々な効果を発揮する。具体的には、IGF−Iは、IGF−IRを活性化することによって主に機能し、一方でIGF−IIはIGF−IRを通じて又はIR−Aアイソフォームを通じての何れかで作用し得る。IGF−1R、そのIGFリガンド及びIR−Aは、乳癌及び前立腺癌の両方を含む多くの癌に関与しており、癌治療における使用のための多くのアンタゴニストが、IGF−IR及びIGFリガンドを標的とするために開発されている。
【0100】
IGF経路を標的とする現在利用可能な多数のアンタゴニストがあることを考えると、患者が反応する可能性があるか又は反応性が高いアンタゴニストの選択が所望される。例えば、IGF−1Rアンタゴニストには、これらのアンタゴニストがIR−A経路を阻害しないという欠点がある。文献において、IR−Aは、癌において過剰発現される場合、IGF−1Rアンタゴニストに対する耐性に関与し得ることが示唆されていることを考えると、IGF−1RだけではなくIR−Aも標的とするアンタゴニストを投与することが望ましい。このようなアンタゴニストの例は、特異的にIGF−IIを標的とし、IGF−Iと交差反応し得る抗体である。
【0101】
これらのIGF−I及びIIアンタゴニストは、IGF−IR及びIR−Aシグナル伝達の両方に対する阻害能を有し、その結果、IGF−1Rよりも臨床における活性が幅広く、低分子IGF−1R/IR−A/IR−B阻害剤と比較して毒性が低くなる。例としては、IGF−I及び/又はIGF−IIに対する抗体が挙げられるが、これには国際公開第2007070432号で開示されるものが含まれる。特に関心が高いものは、ハイブリドーマ7.159.1、7.158.1及び7.34.1により産生される抗体のアミノ酸配列を有する抗体である。
【0102】
特定のIGFアンタゴニスト又はアゴニストに反応する可能性が高いことを予測するために、IGFアンタゴニスト又はアゴニストを用いた治療に対する候補となる患者を選択する方法は、上記方法の何れかを用いてIR−A及び/又はIR−B発現を定量することと、正常対象に対して又は癌患者集団に対してIR−A及び/又はIR−Bの発現量が上昇もしくは低下している患者を選択することと、を含み得る。患者は、IR−B発現に対するIR−Aの相対量の変化によっても選択され得る。
【0103】
具体例において、実施者は、腫瘍がIR−A及び/又はIR−Bを発現するか否かの決定に基づいて、特定のIGFアンタゴニストを予め選択し得る。IR−Aを過剰発現すると決定されている腫瘍の特定によって、IGFI/IIアンタゴニストに対する反応性が高い可能性が最も高い患者を選択する機会が与えられる。
【0104】
ある例において、アンタゴニストは、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、表1及び2で示されるように、配列番号45及び53のCDR配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む抗体を含む。別の例において、アンタゴニストは、配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む抗体を含む。
【0105】
本方法はまた、IGF−1R又はIGFの特定の阻害剤がインスリン受容体を活性化させているか又は阻害しているかを判定するためにも使用することができる。例えば、IGF−1Rキナーゼの低分子阻害剤はインスリン受容体を交差阻害することが多いことが知られている。これは代謝性合併症をもたらし得る。ある例において、腫瘍などの試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を決定し、それらの発現を対照と比較する方法である。対照と比較してIR−Bの発現が低下しており、IR−Aの発現が対照と比較して上昇している場合、IGF−I/IIアンタゴニストなどの代替となるIGFアンタゴニストを選択することが必要となり得る。このように、患者を治療する方法は、例えば患者からの組織試料に対してIR−A:IR−BΔCt差を調べることによってIR−A及びIR−Bの相対発現をけっていすることと、IR−Bに対するIR−Aの割合が閾値よりも低い場合にIGF−I/IIアンタゴニストを投与することと、を含み得る。
【0106】
別の例において、ある方法により癌患者のサブセットの分類が可能になる。現在、IR−Aが乳癌において過剰発現され得ることが知られている。治療のために患者のサブセットを選択する方法は、IR−Aを過剰発現するか又はIR−Bに対してIR−Aを不均衡に発現し、従ってIGFI/IIアンタゴニストに対する応答が高くなっている可能性がある乳癌患者のサブセットを特定することを含み得る。IGFI/IIアンタゴニストに対する応答が高い可能性がある癌患者を治療する方法は、腫瘍組織試料に対してIR−A:IR−BΔCt差を測定することと、腫瘍組織試料のIR−A:IR−BΔCt差が閾値よりも低く、正常よりも高いIR−AのIR−Bに対する割合を示す場合に、有効量のIGFI/IIアンタゴニストを投与することと、を含み得る。アンタゴニストの例には、IGF−I及び/又はIGF−IIに結合する抗体が含まれる。ある例において、アンタゴニストは、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、表1及び2で示されるように、配列番号45及び53のCDR配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む抗体を含む。別の例において、アンタゴニストは、配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む抗体を含む。
【0107】
応答性が高い又は応答者とは、特定のIGF剤の投与後に反応するか又はより正の方向に反応する患者を意味する。応答者及び無応答者は、Union International Contre le Cancer/World Health Organization(U ICC/WHO)基準に従い、客観的腫瘍反応を測定することによって決定することができる。基準は以下のようにカテゴリー分けされる:完全寛解(CR):評価可能な全病変部で遺残腫瘍なし;部分寛解(PR):測定可能な全病変部の合計のベースラインのもと、遺残腫瘍が化学療法により50%以上縮小し、新たな病変なし;安定疾患(SD):CRとして判定されない遺残腫瘍;及び進行性疾患(PD):測定可能な全病変部の合計のベースラインのもと、遺残腫瘍が25%以上増大しているか又は新たな病変が出現。本明細書中で定義されるように、無応答者はPDである。本方法は、CR又はPRである患者を判定するために特に有効である。このようにして、本方法により、個々の患者に治療を適合させ、利用可能なIGFアンタゴニストのタイプの使用をより有効にすることによって、癌患者の予後及びクオリティーオブライフが改善される。
【0108】
G.糖尿病
インスリン受容体を介してシグナル伝達を破壊及び/又は低下させる物質/化合物に対するスクリーニングのための方法。試料中のIR−A又はIR−Bの相対的発現を決定することをスクリーニングツールとして使用して、例えばβ細胞において及び末梢組織において、IR−A又はIR−B−特異的シグナル伝達カスケードの何れかを選択的に活性化する、低分子化合物及び/又はインスリン模倣体などの薬剤を同定することができる。古典的なインスリン標的組織における顕著なIR−Bの発現は、これらの組織におけるIR−Bシグナル伝達カスケードの重要性を示す。その結果、IR−Bシグナル伝達カスケードを選択的に刺激する化合物は、β細胞の機能(グルコース応答性及び、従ってインスリン分泌)ならびに末梢インスリン標的組織の機能(グルコース取り込み及び利用、タンパク質合成、脂質合成)を向上させ、従ってインスリン非依存性糖尿病(NIDDM、2型糖尿病)の2つの主要な原因、即ち末梢インスリン抵抗性及びβ細胞機能不全を対象にする治療を提供する可能性がある。
【0109】
このように、インスリンシグナル伝達を調節する薬剤を同定する方法は、試験薬剤と細胞を接触させることと、その試験薬剤によってIR−B発現が上昇するか又は低下するか否かを決定することと、が含まれる。IR−B発現を上昇させる薬剤の同定は、2型糖尿病を治療することにおいてその薬剤が有用であり得ることの指標となる。
【0110】
H.キット
生体試料中のIR−A又はIR−Bの存在を検出するためのキットは、IR−A及び/又はIR−Bプローブ又はプライマーを含み得る。本明細書中に記載の方法における使用のための材料は、キットの調製のために理想的に適している。例えば、キットは、腫瘍試料中のIR−A又はIR−Bを検出することが可能な、本明細書中で開示されるような核酸配列と;対照試料と;細胞表面受容体の検出方法に関する説明書と、を含み得る。このようなキットは、例えば緩衝液、適切なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTP及びdTTP;又はrATP、rCTP、rGTP及びUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及び1以上のオリゴヌクレオチドを含む、本方法で使用される、それぞれ1以上の様々な試薬(通常は濃縮形態)入りの容器を含み得る。
【0111】
容器中のオリゴヌクレオチドはいかなる形態、例えば、凍結乾燥形態又は溶液形態(例えば、蒸留水又は緩衝溶液)などでもあり得る。同じ増幅反応で即時使用できるオリゴヌクレオチドを1つの容器中で組み合わせてもよいし、個別の容器中に入れてもよい。本キットは、場合によっては、別個の容器中で、RNAポリメラーゼプロモーターに特異的なRNAポリメラーゼ及び/又はPCR用の緩衝液及び/又はDNAポリメラーゼをさらに含む。本キットは、場合によっては対照核酸をさらに含む。通常は一連の説明書も含まれる。
【0112】
本明細書中で開示される方法は、別段の指示がない限り、当業者の能力の範囲内である、化学、分子生物学、微生物学、組み換えDNA及び免疫学の従来技術を使用する。このような技術は、文献で説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch及びT.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,1−3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら(1995及びperiodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,第9,13及び16章,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);B.Roe、J.Crabtree及びA.Kahn、1996、DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach、Irl Press;及びD.M.J.Lilley及びJ.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis及びPhysical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Pressを参照のこと。これらの各一般的教科書はそれらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、本明細書中に記載の方法を実施するにあたり当業者の一助となるものであり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0114】
I.代表的な具体例
以下の実施態様のリストは代表的なものであり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0115】
1.合成核酸配列が以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0116】
2.以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸配列:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0117】
3.配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0118】
4.配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0119】
5.実施態様1−4の何れか1つに記載の合成核酸配列を含む組成物。
【0120】
6.(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と;
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【0121】
7.少なくとも1つの合成核酸配列が、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様6に記載のプライマーセット。
【0122】
8.(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で実施態様6に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させる工程;
(b)増幅された対象とするIR−A核酸配列を検出及び/又は定量する工程
を含む、生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するための方法。
【0123】
9.生体試料が腫瘍試料から調製される、実施態様8に記載の方法。
【0124】
10.プライマーセットが、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、実施態様8から9の何れか1つに記載の方法。
【0125】
11.プライマーセットが、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、実施態様8に記載の方法。
【0126】
12.前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応である、実施態様8から11の何れかに記載の方法。
【0127】
13.プライマーセットが、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様12に記載の方法。
【0128】
14.プライマーセットが、
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様12に記載の方法。
【0129】
15.増幅産物が100塩基未満である、実施態様8から14の何れかに記載の方法。
【0130】
16.合成核酸配列が、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0131】
17.以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0132】
18.配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0133】
19.配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0134】
20.配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0135】
21.実施態様1−4及び16−20の何れか1つに記載の合成核酸配列を含む組成物。
【0136】
22.(a)(i)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列、
(a)(ii)INSR遺伝子のエクソン11(配列番号9)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列;又は
(a)(iii)エクソン10及び11を架橋する塩基、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下でそれともしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列;と、
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50塩基(配列番号10)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号10もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【0137】
23.少なくとも1つの合成核酸配列が、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様22に記載のプライマーセット。
【0138】
24.(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で実施態様22又は23に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させる工程;
(b)増幅された標的IR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程
を含む、生体試料中のIR−B核酸を検出及び/又は定量するための方法。
【0139】
25.生体試料が腫瘍試料である、実施態様24に記載の方法。
【0140】
24.プライマーセットが:
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様24に記載の方法。
【0141】
25.前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)である、実施態様24に記載の方法。
【0142】
26.プライマーセットが:
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様25に記載の方法。
【0143】
27.プライマーセットが:
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様25に記載の方法。
【0144】
28.プライマーセットが;
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み、さらに、
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含む、実施態様25に記載の方法。
【0145】
29.増幅産物が100塩基未満である、実施態様24から28の何れかに記載の方法。
【0146】
30.ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させること(この場合、プライマーセットは実施態様6に記載のプライマーセットを含む)及び/又はポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させることと(この場合、プライマーセットは実施態様22に記載のプライマーセットを含む)、
増幅された標的IR−A又はIR−B核酸配列を検出及び/又は定量することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及び/又は標的IR−B核酸配列の有無を決定するための方法。
【0147】
31.実施態様1から15の何れかに記載の少なくとも1つの合成核酸配列と使用説明書とを含む、生体試料中のIR−Aの有無を決定するためのキット。
【0148】
32.少なくとも1つの合成核酸配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、該配列の1つに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の1つもしくはその相補体とハイブリッド形成可能な配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様31に記載のキット。
【0149】
33.合成核酸配列が以下のプライマーセットの中から選択される、実施態様31に記載のキット:
(1)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(2)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0150】
34.適切なPCR試薬と;場合によっては、IR−Aの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、実施態様31に記載のキット。
【0151】
35.実施態様16−23の何れかに記載の少なくとも1つの合成核酸配列と使用説明書とを含む、生体試料中のIR−Bの有無を決定するためのキット。
【0152】
36.合成核酸配列が、配列番号11、配列番号12、該配列の何れかと相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の何れかもしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様35に記載のキット。
【0153】
37.合成核酸配列が以下のプライマーセットから選択される、実施態様35に記載のキット:
(1)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;または
(2)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する配列番号14;又は
(3)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0154】
38.適切なPCR試薬と;場合によっては、IR−Bの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、実施態様35に記載のキット。
【0155】
39.実施態様8に従い、試料中のIR−A発現を検出及び/又は定量することと、
実施態様24に従い、試料中のIR−B発現を検出及び/又は定量することと、を含み、
IR−A及びIR−Bの発現が、IGFI/IIリガンド又はIGFIR受容体アンタゴニストを対象に投与するべきか否かの指標である、IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストに応答性のある患者を選択するための方法。
【0156】
40.IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストが抗体である、実施態様39に記載の方法。
【0157】
41.抗体が、表1及び表2に列挙される配列成分を含む、実施態様40に記載の方法。
【0158】
42.ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、実施態様6に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させることと、
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、実施態様22に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させることと;
増幅されたIR−A及びIR−B核酸配列を定量することと;
それによって生体試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を判定することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及びIR−B核酸配列の相対的な有無を決定するための方法。
【0159】
43.実施態様42に記載の方法によって腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準により腫瘍を分類することと、
を含む、腫瘍を分類する方法。
【0160】
44.実施態様42に記載の方法によって患者の組織中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準により患者を分類し、それによりIGFアンタゴニストに対する患者の相対的な応答性を予測することと、
を含む、IGFアンタゴニストで治療するための患者を選択する方法。
【0161】
45.IR−Aの発現がIR−Bに対して上昇している、実施態様39、43及び44の何れかに記載の方法。
【0162】
46.実施態様42に記載の方法によって組織試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって患者を分類することと;
該分類に従いIGFアンタゴニストを投与することと、
を含む、IGFアンタゴニストを用いて患者を治療する方法。
【0163】
47.IR−Aの発現がIR−Bと比較して上昇している、実施態様46に記載の方法。
【0164】
48.IGFアンタゴニストが抗体である、実施態様44又は47に記載の方法。
【0165】
49.抗体が、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、実施態様40、41及び48に記載の方法。
【0166】
50.抗体が、表1及び2で示されるような配列番号45及び53のCDR配列を含む、実施態様40、41及び48の何れかに記載の方法。
【0167】
51.抗体が、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む、実施態様40、41及び48に記載の方法。
【0168】
52.抗体が配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む、実施態様40、41及び48の何れかに記載の方法。
【0169】
53.総インスリン受容体に対するIR−Aの%が46.6%より大きい、実施態様45及び47の何れかに記載の方法。
【0170】
54.IRA:IR−BΔΔCtが約0.2未満である、実施態様45及び47の何れかに記載の方法。
【0171】
55.IR−Aに対するlog2ベースのスケールでの相対量の差の平均が、約−0.07±0.29であり、IR−Bに対して約−2.08±0.25である、実施態様45及び47の何れかに記載の方法。
【0172】
56.実施態様42に記載の方法によって乳癌腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対的発現を判定することと;IR−A:IR−B比が閾値よりも低い場合にluminal Bとして乳癌サブタイプを分類することと、を含む、乳癌腫瘍サブタイプを分類する方法。
【0173】
57.IR−A:IR−BΔΔCtを計算することをさらに含み、閾値が、約−1.1から約−2.4の範囲に設定されるIR−A:IR−BΔΔCt値である、実施態様56に記載の方法。
【0174】
58.閾値が約−1.4から−2.1の範囲である、実施態様54に記載の方法。
【0175】
59.IR−A:IR−BΔΔCtの決定が、サブタイプ分類を決定することにおいて他の発現プロファイルと組み合わせられ得る、実施態様57に記載の方法。
【0176】
60.実施態様42に記載の方法により、腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、より高いIR−A:IR−B比がより高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、を含む、腫瘍に対する増殖スコアを決定する方法。
【0177】
61.IR−A:IR−BΔΔCtを計算することと、より低いIR−A:IR−BΔΔCt値が、より高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、をさらに含む、実施態様60に記載の方法。
【0178】
62.試料中のIR−A及びIR−Bの相対レベルを決定することを含み、IR−Bに対するIR−Aの量の上昇が、luminal−Bである腫瘍の指標となる、luminal−A又はluminal−Bとして乳癌試料を分類する方法。
【0179】
II.実施例
実施例1:IR−A及びIR−Bプライマー及びプローブ設計
市販のアッセイは、IR−A及びIR−B発現を区別し、定量することができなかった。そこで、新規プローブが必要であった。インスリン受容体(INSR)短(NM_001079817)及び長(NM_000208)アイソフォームに対する成熟mRNA転写配列をNational Center for Biotechnology Information(NCBI)Entrez Nucleotideデータベースから入手した。INSR短アイソフォームをIR−Aと呼び、INSR長アイソフォームをIR−Bと呼ぶ。この2つのアイソフォーム間の違いは、成熟転写物におけるエクソン11、36ヌクレオチド領域が存在するか(IR−B)又は存在しないか(IR−A)である。エクソン11はIR−A型には存在しないが、IR−B型は成熟mRNA転写物においてエクソン11配列を含有する。IR−A mRNAの検出に特異的であるプライマー及びプローブの設計のために、エクソン10/12連結領域を遺伝子特異的プローブに対する標的とした。エクソン10又はエクソン12コード領域内にそれぞれ位置するいくつかのプライマー対(フォワード及びリバース)を設計した。IR−B設計の場合、エクソン11/12連結部を標的とし、遺伝子特異的プローブに対してはエクソン11内部領域を標的とした。エクソン10内又はエクソン10/11連結部及びエクソン12コード領域にそれぞれ位置するいくつかのプライマー対(フォワード及びリバース)を設計した。プライマー/プローブ設計は全てPrimer Express(ABI)ソフトウェアツールにインポートし、確実にTaqMan遺伝子発現アッセイ法における利用に最適な設計となるようにした。プローブは全て、小溝結合(MGB)部分を取り込むように設計し、検出用の蛍光色素(FAM)及び非蛍光クエンチャーで標識した。設計した全プライマー/プローブの組み合わせの配列を表3及び4に示す。
【表3】
【表4】
【0180】
実施例2:プライマー及びプローブの特異性
INSR長(クローンSC311328)及び短(クローンSC315880)転写物に対する全長cDNAクローンを含有する市販のプラスミドをOriGene Technologies、Inc.から購入した。各INSRクローンの配列確認を行った。様々な複製数(102〜107複製)の投入量のINSR長又は短アイソフォームクローンの何れかの存在下で、全TaqMan遺伝子発現アッセイ設計の特異性及び感度を試験した。全プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせに対して384ウェル形式で標準的なTaqMan遺伝子発現アッセイを行った。反応液は、384ウェルプレートの最終体積15μL/ウェルに対して、7.5μLのTaqMan Universal Master Mix、1.5μLの10x遺伝子発現アッセイ混合液及び6μLの様々な複製数のINSR長又は短型cDNAクローンの何れかから構成されていた。各プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせを少なくとも3回繰り返した。標準設定(95℃で10分間温置し、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクルという構成のサイクリングプログラム)を用いて、全アッセイプレートをApplied Biosystems 7900HT検出システムで試験した。SDSv2.0ソフトウェアツール(ABI)を用いてデータ値(Ct値)を各回のアッセイの実行から抽出した。データ抽出及び分析後、以下のプライマー及びプローブアッセイ設計によって発明者らの目的に対して十分な感度及び特異性が得られると決定した:IR−A1、IR−A3、IR−B3、IR−B4及びIR−B5。
【0181】
IR−A1及びIR−A3アッセイは、約35コピーの複製数閾値でIR−Aアイソフォーム配列を検出することができた。これらのアッセイはまた、これらが利用された何れの複製数投入量でもIR−Bアイソフォームの存在を検出できなかったことから、IR−Aアイソフォームに非常に特異的であることも分かった。あるいは、IR−B3、IR−B4及びIR−B5設計は、約35コピーの複製数閾値でIR−Bアイソフォーム配列を検出することができた。これらの設計物はまた、約35複製の閾値以下でIR−Aアイソフォームの存在を検出できず、これらが利用された何れのコピー数投入量でもIR−Aアイソフォームの存在を検出できなかったことから、IR−Bアイソフォームに非常に特異的であることも分かった。
【0182】
リアルタイムPCRのためのBioMark(商標)Dynamic Array(Fluidigm Corporation)マイクロフルイディクスシステムを用いて、これらの特異性実験を繰り返した。このシステムにより、変動性が低く、従来のRT−PCRとよく相関する高品質データをもたらすハイスループットのリアルタイムPCR(プレートあたり2304の個別の反応が可能)が可能となる。この技術を用いるために、製造者の説明書に従い、TaqMan Pre−Amp Master Mixを用いてcDNA試料を予め増幅した。反応液には、20μLの最終体積に対して、5μLのcDNA、10μLのPre−Amp Master Mix及び5μLの0.2x遺伝子発現アッセイミックス(アッセイしようとする全プライマー/プローブから構成)が含有された。推奨されるプログラムを用いて14サイクルにわたり反応サイクルを繰り返し、次いでTE緩衝液で1:5に希釈した。予め増幅したcDNAをすぐに使用するか又は必要になるまで−20℃で保存した。
【0183】
48x48ダイナミックアレイチップ(Fluidigm)に投入するための試料を調製するために、反応混合液は、2.5μLの2xUniversal Master Mix(Applied Biosystems)、0.25μLのSample Loading Buffer(試料ローディング用緩衝液)(Fluidigm Corporation)及び2.25μLの予め増幅したcDNAを含有した。プライマー/プローブを調製するために、反応混合液は、2.5μLの20xTaqman遺伝子発現アッセイ及び2.5μLのAssay Loading Buffer(アッセイローディング緩衝液)(Fluidigm Corporation)を含有した。試料及びアッセイ試薬を注入口に投入する前に、IFC Controllerにおいてチップの準備を行った。記載のように調製した5μLの試料をダイナミックアレイチップの各試料注入口に投入し、5μLの10x遺伝子発現アッセイミックスを各検出器の注入口に投入した。投入及び混合のために、チップをIFC Controller上に置いた。およそ1時間後、温度サイクリングのためにチップをBioMark(商標)リアルタイムPCRシステムに投入した(95℃で10分間、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクル)。試料の反復数及び組成は、特定の実験によって変動したが、三重未満にはならなかった。設計されるプローブ感度及び特異性を決定するために平均Ct値を使用した。
【0184】
Fluidigm systemを用いて、従来のリアルタイムPCRを用いて得られた結果を検証した。IR−A1、IR−A3、IR−B3、IR−B4及びIR−B5はIR−A又はIR−Bの何れかに対して特異的であり、約35コピーの複製数閾値で適切な受容体アイソフォームを検出することができた。
【0185】
さらなる分析においても、IR−AもしくはIR−Bの何れかを過剰発現することが知られているか又はIR−Aを過剰発現するように改変されている細胞株からのcDNA鋳型を利用した。2つの内因対照遺伝子(GAPDH及びACTIN)の平均CTを標的遺伝子の平均Ctから差し引くことによって、各試料に対するΔ比較閾値(ΔCt)を計算した。結果から、これらのプライマー/プローブ設計が、cDNAクローンを用いて観察されるのと同じように、細胞株においてIR−A又はIR−Bの何れかを再現性よく特異的に検出したことが示された。まとめると、これらの結果から、cDNA又は組織試料のさらなるハイスループット分析に対するFluidigm技術の使用が有効であることが確認され、IR−A及びIR−Bプライマー/プローブ設計の特異性が検証された。複数のプライマー/プローブ設計の品質確認後、発明者らは、多数の一連の乳癌におけるIR−A及びIR−Bの発現状態を測定するためにIR−A1及びIR−B4を選択した。
【0186】
100pgのIR−A又はIR−Bの鋳型保存溶液(DNA鋳型およそ107複製)で開始してIR−A又はIR−B qRT−PCRアッセイを行うことによって、プローブの感度を検証した。l0−4pg(およそ10コピーのDNA鋳型)までDNAを連続希釈した。2つ組で各試料を試験した。標準鋳型希釈曲線の傾斜は、logDNA複製数の関数としてサイクル−閾値(Ct)値をプロットすることによって計算した。この結果を図7で示す。log[濃度]と、その個々の対応する標準鋳型を用いて試験した各アッセイに対して得られたCt値と、の間で強い相関が認められた。相関係数(r2値)は全て0.999以上(p≦0.0001)であった。両アッセイにおいて上述のDNA濃度範囲において直線性が維持され、このことから、幅広いダイナミックレンジが示され、正確なCt値が得られる。この結果から、約35コピーのDNAに対してIR−A及びIR−Bアッセイの両方が高い感度で適切なアイソフォームを検出していることが示された。
【0187】
IR−B DNA鋳型の存在下でIR−Aアッセイを、IR−A DNA鋳型の存在下でIR−Bアッセイを、それぞれ試験することによってもアッセイの特異性を評価した。IR−Aアッセイは、10から107複製のIR−B DNAという試験範囲でIR−B DNA鋳型を増幅しない。同様に、IR−Bアッセイは、試験範囲でIR−A DNA鋳型を増幅しない。
【0188】
両アッセイに対する標準希釈曲線の傾斜によってアッセイ効率を評価した(図7)。その傾斜は、IR−Aに対して−3.259であり、IR−Bに対して−3.155であった。この2つの傾斜は非常に類似しており、これにより、プローブ効率の差はあまりないことが示唆される。
【0189】
実施例3:乳癌患者における発現プロファイリング
A.一般手法
42例のグレードIからIIIの浸潤性乳管癌をILSbio(Chestertown、MD)から購入した。19例の対応する正常な隣接乳房組織試料も入手した。患者の年齢は31歳から88歳の範囲であった。乳癌試料は全て、IHCによれば、ER及びPR陽性であり、HER2陰性である。いずれの処理を開始する前にも、全試料を新鮮凍結し、回収した。腫瘍試料に対してマクロダイセクションを行い正常組織を除去し、正常試料に対してマクロダイセクションを行って非腺組織を除去した。マクロダイセクション後、全試料における腫瘍純度は85%超である。
【0190】
4種類の乳癌組織qPCR cDNAアレイ(BCRT101、BCRT102、BCRT103、BCRT104)をOriGene Technologies(Rockville、MD)から購入した。qPCRアレイは、15検体の正常乳房組織(10名の独自のドナー由来)及び165検体の乳腺癌組織由来のcDNAを含有する。腫瘍ステージはIからIVまで様々であり、これらの組織は50から90%の腫瘍から構成された。
【0191】
ZR RNA MicroPrepキット(Zymo Research、Orange、CA)を用いて総RNAを急速凍結組織標本から抽出した。分光光度法でRNA純度及び濃度を測定した(260/280>1.9)。RNA6000 Nano LabChip(登録商標)を用い、Agilent 2100 BioanalyzerにおいてRNAの品質を評価した。
【0192】
以下のの実施例のために、IR−Aアッセイに対するフォワードプライマーの配列は5’−TGAGGATTACCTGCACAACG−3’(配列番号3)であり、リバースプライマーの配列は5’−ACCGTCACATTCCCAACATC−3’(配列番号4の相補体)であり、プローブは5’−TCCCCAGGCCATCT−3’(配列番号7)である。IR−Bアッセイのためのフォワードプライマーの配列は5’−CGTCCCCAGAAAAACCTCTTC−3’(配列番号11)であり、リバースプライマーの配列は5’−GGACCTGCGTTTCCGAGAT−3’(配列番号12)であり、プローブの配列は5’CCGAGGACCCTAGGC−3’(配列番号14)である。
【0193】
陽性及び陰性対照には、IR−Aの全長cDNAクローン(pCMV6−XL4中でクローニング)及びIR−Bの全長cDNAクローン(pCMV6−XL5中でクローニング)を含有する市販のcDNAクローンをOriGene Technologies、Incから購入した(IR−A:SKU#.SC311328;IR−B:SKU#SC315880)。IR−A及びIR−Bアッセイに対する陰性対照DNAとしてそれぞれ空のpCMV6−XL4及びpCMV6−XL5のプラスミドを使用した。
【0194】
プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせ全てに対して、384ウェル方式で標準的TaqMan遺伝子発現アッセイを行った。反応液は、384ウェルプレートのウェルあたり10μLの最終体積に対して、5μLのTaqMan Universal Master Mix、0.5μLの10x遺伝子発現アッセイMix及び4.5μLの様々な複製数のIR−B又はIR−A cDNAクローンの何れかから構成された。各プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせを少なくとも3回繰り返した。標準設定(95℃で10分間温置し、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクルから構成されるサイクリングプログラム)を用いて、全アッセイプレートをApplied Biosystems 7900HT検出システムで試験した。SDSv2.0ソフトウェアツール(ABI)を用いてデータ値(サイクル閾値(Ct)値)を各回のアッセイ実行から抽出した。
【0195】
他の遺伝子の発現レベルの評価のために、TaqMan遺伝子発現アッセイをABI(Forest city、CA)から購入した。このアッセイには、INSR(アッセイID:Hs00961554_m1)、ER(アッセイID:Hs00174860_m1)、PR(アッセイID:Hs01556707_m1)、ERBB2(HER2、アッセイID:Hs01001580_m1)、腫瘍増殖遺伝子(Pike Sら、2004):BIRC5(アッセイID:Hs00153353_m1)、AURKA(STK15、アッセイID:Hs01582073_m1)、CCNB1(アッセイID:Hs00259126_m1)、Ki67(アッセイID:Hs01032443_m1)、MYBL2(アッセイID:Hs00942543_m1)及び参照又は「ハウスキーピング」遺伝子:ACTB(Hs99999903_m1)、GUSB(アッセイID:Hs99999908_ml)、GAPDH(アッセイID:Hs99999905_m1)、RPLP0(アッセイID:Hs99999902_m1)、TFRC(アッセイID:Hs99999911_m1)が含まれる。
【0196】
BioMark(商標)Dynamic Array(Fluidigm Corporation)マイクロフルイディクスシステムにより、変動性が低く従来のRT−PCRと強く相関する高品質のデータを生成させる、ハイスループットリアルタイムPCR(プレートあたり2304の個々の反応が可能)が可能になる。Superscript(登録商標)III First Strand Synthesis SuperMix(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて総RNAから1本鎖cDNAを生成させた。製造者の説明書に従い、TaqMan Pre−Amp Master Mixを用いてcDNA試料を予め増幅した。反応液は、20μLの最終体積に対して、5μLのcDNA、10μLのPre−Amp Master Mix及び5μLの0.2x遺伝子発現アッセイミックス(アッセイしようとする全プライマー/プローブから構成)を含有した。推奨されるプログラムを用いて14サイクルにわたり反応を繰り返し、次いでTE緩衝液で1:5に希釈した。予め増幅したcDNAをすぐに使用するか又は必要になるまで−20℃で保存した。
【0197】
48x48ダイナミックアレイチップ(Fluidigm)に投入するための試料を調製するために、反応混合液は、2.5μLの2xUniversal Master Mix(Applied Biosystems)、0.25μLのSample Loading Buffer(試料ローディング緩衝液)(Fluidigm Corporation)及び2.25μLの予め増幅したcDNAを含有した。プライマー/プローブを調製するために、反応混合液は、2.5μLの20xTaqman遺伝子発現アッセイ及び2.5μLのAssay Loading Buffer(アッセイローディング緩衝液)(Fluidigm Corporation)を含有した。試料及びアッセイ試薬を注入口に投入する前に、IFC Controllerにおいてチップの準備を行った。記載のように調製した5μLの試料をダイナミックアレイチップの各試料注入口に投入し、5μLの10x遺伝子発現アッセイミックスを各検出器注入口に投入した。投入及び混合のために、チップをIFC Controllerに置いた。およそ1時間後、温度サイクリングのためにチップをBioMark(商標)リアルタイムPCRシステムに投入した(95℃で10分間、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクル)。試料の反復数及び組成は、特定の実験によって変動したが、三重未満となることはなかった。設計されたプローブの感度及び特異性を決定するために平均Ct値を使用した。試料内の全ての利用可能な参照遺伝子アッセイの平均Ct値をΔCtの計算のために使用した。
【0198】
MessageAmp(商標)Premier RNA増幅キット(Ambion、Austin、TX)を用いて、75ngの総RNAからビオチン標識された増幅cRNAを生成させた。分光光度法でcRNA生成物の純度及び濃度を決定した。Affymetrix Human Genome U133 Plus 2.0 GeneChip(登録商標)アレイにおいてハイブリッド形成のために15μgの各ビオチン標識cRNAを断片化した。全GeneChip(登録商標)洗浄、染色及びスキャン手順をAffymetrixの標準装置により行った。データ捕捉及び最初のアレイ品質評価は、GeneChip Operating Software(GCOS)ツールを用いて行った。全試料にわたりシグナル強度が25未満であるプローブは全て分析から排除した。
【0199】
Affymetrix Human Genome U133 Plus 2.0 GeneChip(登録商標)アレイにおいて、ER+、PR+及びHer2−原発乳房腫瘍のサブセット(n=40)及び対応する正常な隣接乳房組織試料(n=15)のプロファイルを調べた。Fluidigmプラットフォームで分析した2検体の原発乳房試料及び4検体の対応する正常な隣接乳房組織試料は、RNA量が不十分であったためGeneChipによる処理を行わなかった。発明者らのゲノムアレイデータ全体を使用して、luminal−A及びluminal−Bサブタイプに関する乳癌分子サブタイプ分類を行った。
【0200】
推定試料分類を判定するための2種類の方法を実施した。第一の分類方法では、試料サブタイプ分類(正常、基底膜細胞型(basal−like)、HER2、luminal−A又はluminal−B)の目的で、公開されているPAM50−遺伝子収縮重心分類手段(Weigeltら、2010)を用いた。この分析に対してMAS5で正規化したGeneChipデータを使用した(公開されている分類法がこのタイプの規模のデータを用いて確立されてることを考慮して)。スピアマンの順位相関係数(50遺伝子強度ベクター対サブタイプ重心分類法)に従い、試料を分類し、最大相関値を有するサブタイプを特定の試料に割り当てた。第二の方法では、2試料のウェルチt−検定分析によって発現が異なる転写物のパネルを特定するために、GC−RMAで正規化したGeneChipデータを使用した。統計学的分析を行う前に、病理学的評価に基づき試料を2群(正常又は腫瘍)に分けた。教師なし階層型クラスター分析のために、倍単位での変化の差が3超であり、p値が1.0x10−12未満であるプローブ(n=459プローブ)を使用した。転写パネル組成物の関数として、特定されたサブ集団を正常、luminal−A又はluminal−Bとして分類した。
【0201】
B.結果
乳癌におけるIR−A及びIR−B
乳癌、42ER及びPR陽性及びHer2陰性原発乳房組織試料及び19検体の対応する正常隣接乳房組織におけるIR−A及びIR−BのmRNA発現状態を試験した。ランダムヘキサマープライマーによってcDNAを予め増幅し、TaqMan qPCR(Fluidigm)によってIR−A、IR−B及び総インスリン受容体(INSR)転写物の発現レベルについてアッセイした。上述のように5種類のハウスキーピング遺伝子の平均に対して試料を正規化した。結果を図8で示す。正常におけるINSR、IR−A及びIR−Bの平均相対量(RQ)の差(log2ベースのスケール)±95%CIはそれぞれ1.03xl0−8±0.17、−7.37xl0−9±0.24及び3.37xl0−8±0.18(n=19)であった。腫瘍におけるINSR、IR−A及びIR−Bの平均相対量(RQ)の差(log2ベースのスケール)±95%CIは、それぞれ−0.88±0.25、−0.07±0.29及び−2.08±0.25(n=42)であった。ウェルチの両側t−検定分析から、正常乳房組織と比較した場合に、試験した乳房腫瘍セットにおいてINSR及びIR−BのmRNAレベルが有意に低いことが示される(p<0.0001)。あるいは、正常と比較した場合、乳癌におけるIR−AのmRNAレベルで有意差は観察されなかった(p=0.4501)。
【0202】
2(−ΔCt)によって、対応する腫瘍及び正常の対において、総インスリン受容体組成物(即ちIR−A+IR−B)に対するIR−Aの割合を計算した。結果を図9で示す。正常パネルに対する平均IR−A転写物の割合(%)±95%CIは46.60%±4.74%(n=19)であり、一方、対応する腫瘍試料に対する平均IR−A転写物の割合(%)±95%CIは75.24%±5.02であった。対応のある試料t−検定分析から、対応する正常試料と比較した場合、腫瘍試料中のIR−Aの割合の計算値が有意に上昇していることが示された(p<0.0001)。結果から、腫瘍におけるIR−Bレベルの有意な低下が、正常と比較した場合の腫瘍試料におけるIR−Aの割合の全体的な上昇に関与することが示唆される。
【0203】
IR−A及びIR−BのmRNA転写物の比率を評価するために、発明者らは、正常及び原発腫瘍乳房試料におけるIR−A及びIR−BのΔCt差を計算した。正規化のために試料内参照遺伝子(ハウスキーピング)パネル(平均Ct)を使用して、全試料に対してΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)値を計算した。平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは正常の場合0.20±0.23(n=19)であり、原発腫瘍では、平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.81±0.27(n=42)であった。ウェルチの両側t−検定分析により、観察されたIR−A:IR−BΔCtに関して、正常と腫瘍試料との間で有意差が認められた(p<0.0001)(図10)。この結果から、乳房腫瘍においてIR−AのIR−Bに対する比率の有意な上昇が示された。
【0204】
上記の結果をさらに確認するために、発明者らは、さらなる乳癌組織試料におけるIR−A及びIR−BのmRNA発現比率を評価した。15検体の正常乳房組織及び165検体の乳腺癌組織由来のcDNAを含有するPCRアレイを使用した。等量のcDNAを予め増幅し、Taqman qPCR(Fluidigm)によりIR−A、IR−B及びERの発現レベルについてアッセイした。正規化のために試料内参照遺伝子パネル(ACTB、GUSB、GAPDH)を用いて全試料に対してΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)値を計算した。結果を図11で示す。正常組織では平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは0.51±0.37(n=15)であった。平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは、試験した全乳癌にわたり−1.19±0.17(n=165)であった。
【0205】
次に、発明者らは、乳癌試料から、正常乳房組織に対して2倍のエストロゲン受容体過剰発現を示した乳癌試料を分け、それらのIR−A:IR−BΔCt差を正常組織及び全乳癌試料と比較した。結果を図11で示す。ER+乳癌では平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.48±0.39(n=83)であり、これは乳癌データセット全体にわたり観察されたものと非常に近い。ウェルチの両側t−検定分析により、観察されたIR−A:IR−BΔCt差に関して正常と腫瘍試料との間の有意差が認められた(p<0.0001)。
【0206】
乳癌増殖に関与する遺伝子とIR−A:IR−B比の相関
Ki67、STK15、サバイビン、CCNB1、MYBL2は、乳癌増殖に関与する、特徴がよく分かっている遺伝子である。これらの遺伝子の複合発現スコアはOncotype DXで使用されており、多くの患者において乳癌再発に関与する重要な因子となっている。発明者らは、回帰分析及び相関分析を用いて、原発乳癌試料のセットにおいてIR−A:IR−B比と増殖スコアとの関係を調べた。IR−A:IR−BΔCt差の計算値とプールされた増殖マーカーのパネル(AURKA、BIRC5、CCNB1、KI67及びMYBL2)との間の関係を定量するために、線形回帰分析を行った。特定の試料に対して全マーカーにわたる平均ΔCtをとることによって、増殖パネルのサマリー値を計算した。正常及び腫瘍試料の両方に対するサマリーの結果を与える。線形回帰分析の結果から、2つのサマリー値の間の正相関が示唆される(補正r2=0.595)(図12)。IR−ATR−BΔCt差は、増殖スコアとの正相関を示す(図12)。この結果から、腫瘍でのIR−B発現の低下及びIR−A比率発現の上昇がER+PR+及びHer−乳癌において腫瘍増殖に寄与し得ることが示唆される。
【0207】
乳癌サブタイプにおけるIR−A:IR−BΔCt差
乳癌は、分子的変化、細胞組成及び臨床的な転帰に関して不均一な疾患である。固有の遺伝子リストを用いて、階層的クラスター分析によってER陽性乳癌をluminal−A及びluminal−Bサブタイプにさらに分類することができる(Perou CM、2000)。Luminal−A癌は、組織学的に低悪性度であり、ネオアジュバント内分泌療法に感受性がある(Creighton Cら、2008)。一方、luminal−B癌は、組織学的に悪性度が高いことが多く、ネオアジュバント内分泌療法に対する感受性が低く、より短期間で不良転帰となる(Creighton Cら、2008)。Creightonの報告によると、IGF−Iという特徴はluminal−B乳癌で明白であり、この特徴は多くの不良予後因子と高い相関があり、尚且つ疾患転帰の最強の指標の1つである。IR−AアイソフォームはIGFシグナル伝達に関与する重要な成分の1つであるので、発明者らはIR−A:IR−Bの比率の変化がluminal−A及びluminal−B乳癌を比較した際に明白となり得るという仮説を検証した。
【0208】
この疑問に取り組むために、発明者らは、40検体のER+PR+及びHer2−陰性乳癌及び15検体の正常乳房試料に対して全ゲノムアレイ分析を行った。発明者らは最初に、公開されているPAM50−遺伝子収縮重心分類手段(Weigeltら、2010)を利用した。スピアマンの順位相関係数に従い、luminal A又はluminal Bとして試料を分類し、最大相関値を有するサブタイプを特定の試料に割り当てた。次に、正常、luminal−A及びluminal−BにおけるIR−A:IR−BΔCt差を比較した。試料サブタイプ(正常、luminal−A又はluminal−B)に関するIR−A:IR−BΔCt差の計算値の散布図を図13Aで示す。正常において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは0.27±0.30(n=15)であった。luminal−Aに分類された乳癌において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.09±0.34(n=13)であった。luminal−Bに分類された乳癌において平均IR−A:R−BΔCt±95%CIは−2.12±0.34(n=27)であった。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差が示される(2−試料t検定、p<0.001)。この結果から、luminal−B患者におけるIR−A:IR−B比が、luminal−A患者よりも大幅に変化したことが示された。
【0209】
収縮重心分類手段に加えて、発明者らは、2−試料ウェルチt−検定分析によって発現が異なる転写物のパネルを特定するためにGC−RMAで正規化したGeneChipデータを使用した。統計学的分析を行う前に、病理学的評価に基づき、試料を2群(正常又は腫瘍)に分けた。転写物パネル組成の関数として、教師なし階層的クラスター分析によって同定されたサブ集団を、正常、luminal−A又はluminal−Bに分類した。正常、luminal−A及びluminal−BにおけるIR−A:IR−BΔCt差も比較した。この結果を図13Bで示す。正常において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは0.32±0.25(n=15)であった。luminal−Aと予測された乳癌において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.05±0.19(n=18)であった。luminal−Bと予測された乳癌における平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−2.42±0.32(n=22)であった。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差が示される(2−試料t−検定、p<0.001)。
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Sciaccaら,Oncogene.Nov 28;21(54):8240−50.9,2002。
【0225】
本発明の好ましい態様を参照しながら詳細に上記の開示を提供してきたが、当業者にとって、本開示及び特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得、同等物が使用され得ることは明白であろう。引用される文献は全て、それらの全体が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体において参照により組み込まれる2009年10月12日出願の米国仮出願第61/250,780号に対する優先権を主張する。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式でEFSウェブを介して提出され、その全体において参照により組み込まれる配列表を含む。2010年9月8日作成のこのASCIIコピーの名称はMED540.PCT.txtであり、サイズは48,948バイトである。
【0003】
発明の分野
制限なく、本開示は、組織試料などの試料中のインスリン受容体アイソフォームA(IR−A)及び/又はインスリン受容体アイソフォームB(IR−B)の発現を検出及び定量するための組成物及び方法に関する。本開示はまた、組織試料などの試料中のインスリン受容体アイソフォームA(IR−A)及び/又はインスリン受容体アイソフォームB(IR−B)の発現を検出及び定量することに少なくとも一部基づく診断及び分類の方法にも関する。このような分類に基づき対象を治療する方法は、本明細書中で提供される開示のさらなる態様に含まれる。
【背景技術】
【0004】
関連技術に関する記述
インスリン受容体(INSR)は、エネルギー代謝の制御に関与する膜貫通チロシンキナーゼ受容体である。INSRは、単一のINSR遺伝子から発現されるサブユニット、α及びβを含む。IR−A及びIR−Bと呼ばれる2種類のアイソフォームは、mRNAの選択的スプライシングによるものである。IR−Aは、INSR遺伝子から転写されるmRNAの選択的スプライシングにより生じ、エクソン11が省かれているが、このエクソン11はIR−BのmRNAには含まれる(図1A−1B)。このように、IR−Aは、INSRα−サブユニットのカルボキシ末端のアミノ酸残基のストレッチ部が欠如しているため、IR−Bとは異なっている。IR−A及びIR−Bの同一性は99%を超える(図2)。この2種類のアイソフォームの発現プロファイルは異なるが、これらのアイソフォームは細胞において同時発現される。IR−A及びIR−Bの相対的存在量は発生段階及び組織に特異的な因子により制御される。
【0005】
例えば、IR−Aは胎児及び癌細胞で主に発現され、一方IR−Bは、分化したインスリン標的細胞で主に発現される。IR−Aは、インスリンに対して高い親和性を示し、IGF−IIに対する親和性は中程度であり、IGF−Iに対する親和性は低い。IGF−IIは、同程度の親和性でIGFのI型受容体(IGF−IR)及びIR−Aに結合する。IR−Bはインスリンに対する特異性の高い受容体である。
【0006】
現在、患者試料中のIR−A及びIR−Bレベルを調べる方法については、有効かつ正確な検出手段がないことが障壁になっている。現在のところ、特定的にIR−A発現を測定するために利用可能な唯一の方法は、Sciaccaら(Oncogene 21(54):8240−50;2002 Nov 28)に記載されている。この方法は、PCR及びゲル分離を行い、それに続いて、得られたバンドを定量測定することに基づく。この方法は、大きな労力を要し、定量的に正確ではなく、ハイスループット又は臨床の場においてその使用は限定的なものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者の組織がその薬物の分子標的を発現するか否かの判定に基づき、薬物に対する患者の反応を予測することができる改善された診断試験が必要とされている。IR−A及びIR−Bの発現を正確に検出及び/又は定量するための方法が必要とされている。患者試料中の各アイソフォームの発現の検出及び定量を可能とする能力は、個人対応の治療計画を患者に提供するのに有用である。このような個人対応の治療計画によって、患者に対する治療的有用性を最大限にできる可能性が生まれ、同時に、例えば代替的な有効性がより低い治療計画に伴い得る副作用を最小限に抑えることができるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生体材料の試料が、ヒトIR−A及び/又はIR−Bを含むIR−A及び/又はIR−Bを発現する細胞を含有するか否かを検出及び/又は定量するための有用な組成物及び方法ならびにこのような方法での使用のためのキットが、本明細書中で開示される。これらの方法は、組織試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を測定するために特定のオリゴヌクレオチドが使用できるという知見に一部基づく。これらのオリゴヌクレオチドは、ハイスループット及び臨床の場で本方法が使用できるように、試料中のIR−A及び/又はIR−B発現のレベルを迅速かつ定量的に区別するために使用することができる。これらの組成物及び方法は、組織試料、例えば腫瘍組織試料を分類するための方法において有用であり得る。このような方法の結果は、患者がINSR、IGF1R又はIGFのアンタゴニストもしくはアゴニストなどの薬物にどのように応答するかということの指標として、腫瘍又は癌患者を分類する際の要因として使用することができる。治療に対する候補を選択する方法及び癌患者を治療する方法において、これらの方法及び得られた分類を使用することができる。
【0009】
有用なオリゴヌクレオチドは、IR−A及び/又はIR−Bを選択的に増幅するために使用することができる合成核酸を含み得る。このような有用なオリゴヌクレオチドは10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列を含み得、この場合この合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含むものが開示される:(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;(ii)配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は(iv)配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。この合成核酸配列は、以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成され得る:(i)配列番号3(TGAGGATTACCTGCACAACG)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はその変異形;(ii)配列番号4(GATGTTGGGA ATGTGACGGT)、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;(iii)配列番号5(TTGAGGATTACCTGCACAACGT)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は(iv)配列番号6(AAACGCAGGTCCCTTGGC)、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形。
【0010】
有用な合成核酸配列は、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形又は、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形であり得る。別の有用な合成核酸配列は、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形又は、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形から基本的に構成され得る。上述の合成核酸配列の何れかを含む組成物も有用であり得る。
【0011】
生体試料中の標的ヒトIR−A核酸の有無を判定するために有用であるプライマーセットも本明細書中で開示され、このプライマーセットは、以下の少なくとも1つの、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列の中から選択され得る少なくとも1つの合成核酸配列を含む:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)又はその相補的な核酸配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。この合成核酸配列は、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択され得るヌクレオチド配列を有し得る。
【0012】
(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で上述のものなどのプライマーセットと生体試料を接触させる工程;(b)増幅された標的IR−A核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列の有無を判定するための方法も本明細書中で開示される。例として、生体試料は、腫瘍試料などの組織試料又は組織もしくは細胞試料由来の核酸を含む試料であり得る。
【0013】
プライマーセットは、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得る。別の例において、本プライマーセットは、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得る。ある例において、ポリメラーゼによる増幅は定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)である。
【0014】
プライマー及びプローブセットは、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;配列番号4(配列番号21)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;検出可能な標識も含み得、クエンチャーをさらに含み得る、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と、を含み得る。別の例において、プライマー及びプローブセットは、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と;検出可能な標識も含み得、クエンチャーをさらに含み得る、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形と、を含み得る。一般に増幅産物は100塩基未満である。
【0015】
有用な合成核酸配列は10から30個の連続ヌクレオチドを含み得、この合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む:配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形。ある例において、本核酸配列は、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形;又は、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれらの変異形から基本的に構成される。上記の合成核酸配列の何れか1以上を含む組成物も有用であり得る。
【0016】
生体試料中のIR−Bの有無を判定するためのプライマーセットは、以下の少なくとも1つの10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列を含み得る:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、INSR遺伝子のエクソン11の塩基(配列番号9)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列又は、INSR遺伝子のエクソン10及びエクソン11を架橋する配列、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下でそれともしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50塩基(配列番号10)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号10もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列。プライマーセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び配列番号12、その相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択され得るヌクレオチド配列を有する少なくとも1つの合成核酸配列を含み得る。
【0017】
生体試料中の標的IR−B核酸配列の有無を判定するための方法は、(c)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で上記のプライマーセットと生体試料を接触させる工程、(d)増幅された標的IR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含み得る。例として、生体試料は、腫瘍試料などの組織試料からの核酸を含む試料であり得る。別の例において、ポリメラーゼによる増幅は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応によるものであり得る。プライマー及びプローブセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び、検出可能な標識も含み得、さらにクエンチャーを含み得る、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み得る。別の例において、プライマー及びプローブセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得る。
【0018】
別の例において、プライマーセットは、配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含み得;さらに、検出可能な標識も含み得、クエンチャーをさらに含み得る、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み得る。一般に増幅産物は100塩基未満である。
【0019】
生体試料中の標的IR−A及びIR−B核酸の有無を判定するための方法は、ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で上述のようなIR−Aプライマーセットと生体試料を接触させ;ポリメラーゼ反応による増幅に適切な条件下で上述のようなIR−Bプライマーセットと生体試料を接触させる工程;増幅された標的IR−A及びIR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含み得る。この方法は、IR−A及びIR−Bの相対発現レベルを計算することをさらに含み得る。
【0020】
生体試料中のIR−Aの有無を判定するためのキットは、上述の少なくとも1つの合成核酸配列と、本明細書中に記載の1以上の方法を行うための説明書と、を含み得る。このようなキットにおいて、少なくとも1つの合成核酸配列は、本明細書中で開示されるIR−Aプライマー及びプローブの中から選択されるヌクレオチド配列又はそれらの何らかのセットを有し得る。キットはまた、適切なPCR試薬;及び場合によってはIR−Aの有無を判定するための陽性及び/又は陰性対照も含み得る。
【0021】
生体試料中のIR−Bの有無を判定するためのキットは、上述のような少なくとも1つの合成核酸配列と、本明細書中に記載の1以上の方法を行うための説明書と、を含み得る。このようなキット中の合成核酸は、IR−B核酸の中から選択されるヌクレオチド配列を有し得る。このキットはまた、適切なPCR試薬;及び場合によってはIR−Bの有無を判定するための陽性及び/又は陰性対照も含み得る。
【0022】
IGFI/IIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニストもしくはアゴニストに反応性がある患者を選択するための方法は、癌に罹患しているか又はその疑いのある対象から生体試料を入手することと;その試料中のIR−Aの存在を検出及び/又は定量することと、を含み得る。IR−Aの有無は、IGFI/IIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニストもしくはアゴニストを対象に投与すべきか否かに関する指標である。このように、患者を治療する方法は、患者から得られた患者におけるIR−Aの存在を検出及び/又は定量することと、IGFI/IIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニスト又はアンタゴニストをその患者に投与することと、を含み得る。例として、IGFI及びIIリガンド、INSR又はIGFR1受容体アンタゴニストは抗体であり得る。
【0023】
IR−A及び又はIR−Bの発現に従うか又はIR−A及びIR−Bの相対量により腫瘍を分類することができる。このようにして腫瘍を分類することにより、IR−A及び/又はIR−Bを過剰発現している腫瘍又はIR−Bに対するIR−Aの変動もしくはその逆を有する腫瘍を同定することができるようになる。腫瘍を分類する方法は、腫瘍組織試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現又はIR−Bに対するIR−Aの量もしくはその逆を定量することと、その定量に基づいて分類を行うことと、を含み得る。腫瘍がある患者を治療する方法は、腫瘍組織試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現又はIR−Bに対するIR−Aの量又はその逆を定量することにより腫瘍を分類することと、IR−A及び/又はIR−Bの発現又はIR−Bに対するIR−Aの量もしくはその逆の定量に基づき分類を割り当てることと、その分類に従い、IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニスト又はアゴニストを患者に投与することと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1A−1BはIR−A及びIR−Bを示す。図1Aは、IR−A及びIR−Bのゲノム構造を示す。図1Bは、左にエクソン位置を示し、右に機能ドメイン位置を示す、INSRホモ二量体のα及びβサブユニットの概略図である。
【図2】ヒトIR−A(配列番号16)及びIR−B(配列番号17)の配列アラインメントであり、このアラインメントは、エクソン11がIR−Aから欠落していることを除き、同一であることを示す。
【図3】強い及び弱いリガンド相互作用を説明するIGF−1R/IR受容体の概略図である。
【図4】例えばIR−Aアッセイのためのプライマー及びプローブ位置の概略を示す。
【図5】図5は、例えばIR−Aアッセイのためのプライマー及びプローブ位置の概略を示す。
【図6】例えばIR−Bアッセイのためのプライマー及びプローブ位置の概略を示す。
【図7】IR−A、IR−B又は空のベクター対照の何れかのプラスミドDNAのおよそ107から10コピーの連続希釈液を用いた、IR−A又はIR−B qRT−PCRアッセイの結果を示す。Y軸はサイクル閾値(cycle−threshold(Ct)値)を表し、X軸はlogDNA複製数を表す。IR−Aアッセイに対する標準希釈曲線の傾斜及び相関係数(r2値)はそれぞれ−3.259及び0.9992である。IR−Bアッセイに対する標準希釈曲線の傾斜及び相関係数(r2値)はそれぞれ−3.155及び0.9989である。
【図8】正常乳房組織に対する、原発乳癌におけるインスリン受容体及びそのアイソフォームのmRNA相対発現レベルを示す。TaqMan遺伝子発現アッセイによって、正常(n=19)と腫瘍(n=42)乳房組織試料との間のINSR(トータル)、IR−A及びIR−Bの相対量(RQ)の差を決定した(log2ベースのスケール)。各試料に対する倍単位の変化の差を計算するために、平均正常ΔCt値を使用した。ウェルチの両側t−検定分析によって、INSR及びIR−Bの両方に対して正常試料と腫瘍試料との間の有意差が確認されたが(P<0.001)、その一方でIR−Aについては差が見られなかった(P=0.45)。バーは特定の遺伝子標的及び組織型の組み合わせ内のlog2RQの中央値を表す。
【図9】対応する正常乳房及び乳癌検体におけるIR−A発現の割合を示す。2(−ΔCt)の計算により算出した、試料内の総インスリン受容体組成物(即ちIR−A+IR−B)に対するインスリン受容体アイソフォーム−A(IR−A)の割合。対応のある試料t−検定分析から、対応する正常試料と腫瘍試料との間のIR−Aの割合の計算値について有意差があることが示された(P<0.001)。黒いバーは、正常(46.60±4.74、平均%±95%CI)及び腫瘍(75.24±5.03、平均%±95%CI)組織内のIR−Aの割合の中央値(%)に相当する。
【図10】原発性乳癌におけるIR−A:IR−B比の上昇を示す。正常(n=19)及び腫瘍(n=42)乳房試料におけるインスリン受容体アイソフォームIR−A及びIR−BのΔCtの差の計算値。正規化のために試料内参照遺伝子パネル(平均Ct)を利用して、全試料に対してΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)の値を計算した。ウェルチの両側t−検定分析によって、実際のIR−A:IR−BのΔCt差に関して、正常試料と腫瘍試料との間で有意差が認められた(P<0.001)。黒いバーは特定組織型内のIR−A:IR−BΔCt差の中央値を示す。
【図11】qPCR cDNAアレイからの乳癌試料中のIR−A:IR−B比の上昇を示す。正常(n=15;10名の個別ドナー由来の試料)、乳癌cDNAパネル(n=165)及び2倍超のエストロゲン受容体(ER)過剰発現がある、これらのcDNAパネル由来の乳房腫瘍(n=83)におけるインスリン受容体アイソフォームIR−A及びIR−B(Y軸)のΔCt差の計算値。正規化のために試料内参照遺伝子パネル(平均Ct)を用いて、全試料に対して、ΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)値を計算した。ウェルチの両側t−検定分析によって、実際のIR−A:IR−BΔCt差に関して、正常試料と腫瘍試料との間で有意差が認められた(P<0.0001)。バーは、特定の組織型内の平均IR−A:IR−BΔCt差の平均値を表す。
【図12】増殖遺伝子の発現とIR−A:IR−BΔCt差の相関を示す。IR−A:IR−BΔCt差の計算値(Y軸)とプールした増殖マーカーパネル(AURKA、BIRC5、CCNB1、KI67及びMYBL2)(X軸)との間の関係の線形回帰分析。特定試料に対する全マーカーにわたるΔCt平均値をとることによって、増殖パネルサマリー値を計算した。正常及び腫瘍試料の両方に対する結果の概要を示す。この線形回帰分析の結果から、2つのサマリー値の間の正相関が示唆される(補正R2=0.595)。
【図13】図13(A及びB)はER+乳癌のサブタイプにおけるIR−A:IR−BΔCt差を示す。収縮重心分類手段(shrunken centroid classifier)に基づく方法(A)及び2試料間のウェルチ検定分析(B)により判定された試料サブタイプ(正常、luminal− A又はluminal−B)分類に関する、IR−A:IR−BΔCt差の計算値の散布図。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差(2試料t検定、p<0.001)が示される。バーは、特定の試料サブタイプ内のIR−A:IR−BΔCt差の中央値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下のプライマー及びプローブ配列に本明細書中で言及する。
【0026】
配列番号1(TTTAGGAAGA CGTTTGAGGA TTACCTGCAC
AACGTGGTTT TCGTCCCCAG)INSRエクソン10 C末端
【0027】
配列番号2(GCCATCTCGG AAACGCAGGT CCCTTGGCGA
TGTTGGGAAT GTGACGGTGG CCGTGCCCAC)
INSRエクソン12 N末端
【0028】
配列番号3(TGAGGATTACCTGCACAACG)IR−Aプライマー
【0029】
配列番号4(GATGTTGGGA ATGTGACGGT)IR−Aプライマー(逆相補的 配列番号21)
【0030】
配列番号5(TTGAGGATTA CCTGCACAACGT)IR−Aプライマー
【0031】
配列番号6(AAACGCAGGTCCCTTGGC)IR−Aプライマー(逆相補的 配列番号22)
【0032】
配列番号7(TCCCCAGGCCATCT)IR−Aプローブ
【0033】
配列番号8(TTTTCGTCCCCAGGCCA)IR−Aプローブ
【0034】
配列番号9(AAAAACCTCT TCAGGCACTG GTGCCCAGGA
CCCTAG)INSRエクソン11
【0035】
配列番号10(GCCATCTCGG AAACGCAGGT CCCTTGGCGA
TGTTGGGAAT GTGACGGTGG)INSRエクソン12 N末端
【0036】
配列番号11(CGTCCCCAGAAAAACCTCTTC)IR−Bプライマー
【0037】
配列番号12(GGACCTGCGTTTCCGAGAT)IR−Bプライマー
【0038】
配列番号13(ACTGGTGCCGAGGAC)IR−B特異的プローブ
【0039】
配列番号14(CCGAGGACCCTAGGC)IR−B特異的プローブ
【0040】
配列番号15(TGCCGAGGACCCTAG)IR−B特異的プローブ
【0041】
さらなるプライマー及びプローブ配列には、表3及び4にあるものが含まれる。熟練者は、本明細書中で開示されるプライマーから、PCR反応で核酸配列を増幅できるプライマー対を選択することができる(例えば、逆鎖にアニーリングし、正しい方向にDNA合成を開始させる。)。熟練者はこのようなプライマーの相補体を例えば陰性対照として使用することができることを理解するであろう。
【0042】
IR−AとIR−Bとの間に高い配列同一性があるにもかかわらず、試料中のヒトIR−A及びヒトIR−Bの発現を検出及び定量するためのアッセイにおいて、これらの核酸配列及び本明細書中に記載の関連配列を使用することができる。このようにして、初めて、迅速かつ高感度の、試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を調べるための方法が発見された。これらの配列を用いて記載される方法は定量的に正確であり、ハイスループット及び臨床の場で使用することができる。
【0043】
試験試料においてIR−A及び/又はIR−Bの発現を特定するために使用することができる合成核酸配列又はオリゴヌクレオチドは、それらが所望の反応において依然として機能可能である限り、塩基部分、糖部分又は骨格が修飾され得、その他の付属基、標識又はクエンチャーを含み得る、DNA、RNA、それらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾体であり得る。合成核酸配列は、少なくとも1つの修飾リン酸骨格、例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホルアミドチオアート、ホスホルアミダート、ホスホルジアミダート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル及びホルムアセタール又はそれらの類似体などを含み得る。
【0044】
A.IR−A核酸配列
適切なIR−A合成核酸配列には、表3及び4で出現するものが含まれる。
【0045】
INSR遺伝子のエクソン10の最後の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号1)又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、INSR遺伝子のエクソン12の最初の60、55、50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号2)又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列で出現するIR−A核酸配列を含む合成核酸は、試料中のIR−Aの発現レベルを調べるための定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)(リアルタイムPCR又は動力学的PCRとしても知られる。)などのポリメラーゼによる増幅及び検出において使用することができる。
【0046】
IR−A配列を含む合成核酸は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の連続ヌクレオチドを含み得、同時にこの合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個の連続ヌクレオチドを含む:
(i)配列番号3(TGAGGATTAC CTGCACAACG)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4(GATGTTGGGA ATGTGACGGT)、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5(TTGAGGATTA CCTGCACAAC GT)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6(AAACGCAGGT CCCTTGGC)、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0047】
ある例において、生体試料中の標的IR−A核酸配列の有無を判定するためのプライマーセットは、以下うち少なくとも1つの10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列の中から選択され得る少なくとも1つの合成核酸配列を含み得る:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60、55、50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。このプライマーセットは、(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又は、(ii)配列番号5又はその相補的配列;及び配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み得る。通常、プライマーセットは、約50から150bpの生成物を生成させるためにPCRで使用される。プローブは、配列番号7もしくは8又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくは8又はその相補体の何れかとハイブリッド形成可能である配列を含み得、適切な標識及びクエンチャーの組み合わせも含み得る。
【0048】
例として、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)に有用なプライマーセットは:
配列番号3又はそれに相補的な核酸配列;
配列番号4又はそれに相補的な核酸配列(配列番号21);及びクエンチャーも含み得る検出可能な標識を有する、さらなる合成核酸又はプローブを含む。ある例において、さらなる核酸は、10から50ヌクレオチドの間の1本鎖核酸配列であり、配列番号3及び4の2つのPCRプライマー間でIR−A cDNA又はその相補体のDNA配列に特異的に結合するように設計されている。さらなる核酸は、通常、その5’及び3’末端で共有結合する、6−カルボキシフルオレセイン(FAM)又はテトラクロロフルオレシン(fluorescin)(TET)などの蛍光レポーター又はフルオロフォア及び、テトラメチルローダミン(TAMRA)などのクエンチャーを有する。この例において、特異的PCR生成物のみが蛍光シグナルを発する。この例において、さらなる核酸は、10から50塩基であり得、配列番号7又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含む。
【0049】
別の例において、プライマーセットは、
配列番号5又はそれに相補的な核酸配列;
配列番号6又はそれに相補的な核酸配列(配列番号22);及びクエンチャーも含み得る検出可能な標識を有するさらなる核酸を含む。さらなる核酸は、10から32ヌクレオチドの間の1本鎖核酸配列であり得、配列番号5及び6の2つのPCRプライマー間でIR−A cDNA又はその相補体のDNA配列にのみ結合するように設計される。この例において、さらなる核酸は10から32塩基であり得、配列番号8又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含む。
【0050】
B.IR−B核酸配列
適切なIR−B合成核酸配列には、表3及び4で出現するものが含まれる。
【0051】
IR−Bの発現レベルを調べるための本明細書中で開示される方法、特にPCRに基づく方法において、(a)エクソン10の最後の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号1)もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列及び、INSR遺伝子のエクソン11(配列番号9)もしくはそれに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又は、エクソン10及び11を架橋する配列又はストリンジェントな条件下でエクソン10及び11を架橋する領域もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列で出現するIR−B核酸配列を使用することができる。
【0052】
ある例において、IR−B配列を含む合成核酸は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の連続ヌクレオチドを含み得、この場合、この合成核酸配列は、以下の配列の何れか1つの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個の連続ヌクレオチドを含む:
(i)配列番号11又はそれに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12又はそれに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0053】
別の例において、生体試料中の標的IR−B核酸配列の有無を決定するためのプライマーセットは、以下のうち少なくとも1つの10から27個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列の中から選択され得る少なくとも1つの合成核酸配列を含み得る:(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)中の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基及びエクソン11(配列番号9)又はそれに相補的な配列;及び(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50、45、40、35、30、25もしくは20個の塩基(配列番号10)又はそれに相補的な配列。プライマーセットは、配列番号11又はそれに相補的な合成核酸配列;及び配列番号12又はそれに相補的な合成核酸配列の中から選択され得るヌクレオチド配列を含み得る。
【0054】
プライマーセットがqPCRなどのPCRで使用される場合、プライマーセットは、配列番号11又はそれに相補的な合成核酸配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;配列番号12又はそれに相補的な合成核酸配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;クエンチャーも含み得る検出可能な標識を含むさらなる核酸と、を含み得る。さらなる核酸は、10から27ヌクレオチドの間の1本鎖核酸配列であり得、配列番号11及び12の2つのPCRプライマーの間でIR−B cDNAの配列もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下でその領域もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と特異的に結合するように設計されている。例として、さらなる核酸は、10から27個の塩基であり得、配列番号13もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5から14個の塩基を含み得る。さらなる核酸は、10から30個の塩基であり得、配列番号14もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含み得る。さらに別の例において、さらなる核酸は10から30個の塩基であり得、配列番号15もしくはその相補体又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の少なくとも5〜14塩基を含み得る。さらなる核酸は、通常、その5’及び3’末端で共有結合する、6−カルボキシフルオレセイン(FAM)及びテトラクロロフルオレシン(fluorescin)(TET)などの蛍光レポーター又はフルオロフォア及びテトラメチルローダミン(TAMRA)などのクエンチャーを有する。
【0055】
有用な合成核酸配列はまた、上記で開示される配列の変異形又は本明細書中で開示される核酸と実質的に同様である配列も含む。変異形は、1以上の塩基、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の塩基により改変されるが、対象のIR−A標的配列の特異的位置になおアニーリング可能である配列を含む。「実質的に同様」という用語は、アニーリング又はハイブリッド形成に関して使用される場合、プライマーなどの合成核酸配列が、ストリンジェントな条件下でその個々の核酸とハイブリッド形成するか又はアニーリングするのに十分に相補的であるはずであることを意味する。この合成核酸配列は、その個々の核酸の正確な配列を反映する必要はなく、実際には「変性物」であってもよい。その合成核酸配列がハイブリッド形成を可能とするようにその配列と十分な相補性を有するならば、非相補的な塩基又は他の配列が合成核酸配列中に散在し得る。従って、例として、PCR増幅に使用されるプライマーは、増幅しようとする特異的配列に「実質的に」相補的となるように選択され得る。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「ハイブリッド形成」という用語は、塩基対形成を通じて核酸鎖が相補鎖と連結する過程ならびに例えばPCR技術において行われる場合の増幅の過程を指す。ある種のヌクレオチド配列の相補体とハイブリッド形成可能なヌクレオチド配列は一般に機能的に同等であり、本明細書中に記載の方法の目的のためにそのヌクレオチド配列と置き換えることができる。
【0057】
このようにして、この開示により特に高感度で特異的であることが分かった特異的プライマー及びプローブを特定するが、当業者は、有用なプライマーには、本明細書中で開示される例示するプライマーとほぼ同じ位置でポリメラーゼ反応を開始させることができるいかなるプライマーも含まれることを理解するであろう。即ち、INSR遺伝子のエクソン10及びエクソン12において重合反応を開始させるプライマーを使用して、診断用の配列を増幅させることができる。IR−B配列のエクソン10−エクソン11連結部に及ぶプライマーを使用して、IR−B配列を特異的に増幅させることができる。同様に、増幅させたIR−A又はIR−B標的配列に特異的に結合する、IR−AとIR−Bとを区別するさらなるプローブを合成し得る。一般に、より相補的な残基を含むより長い配列ほど、より多くの変化を含有し得る。
【0058】
「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」とは、ストリンジェンシーの低い条件、ストリンジェンシーが中程度の条件及びストリンジェンシーが高い条件の何れかであり得る。一般に、「ストリンジェンシーの低い条件」は、例えば、32℃での、5xSSC;5xデンハルト液;0.5%(w/v)SDS;及び50%(w/v)ホルムアミドを含む溶液中でのハイブリッド形成である。「ストリンジェンシーが中程度の条件」は、例えば、42℃での、5xSSC;5xデンハルト液;0.5%(w/v)SDS;及び50%(w/v)ホルムアミドを含む溶液中でのハイブリッド形成である。「ストリンジェンシーが高い条件」とは、例えば、50℃での、5xSSC;5xデンハルト液;0.5%(w/v)SDS;及び50%(w/v)ホルムアミドを含む溶液中でのハイブリッド形成である。ハイブリッド形成のストリンジェンシーは、温度、核酸濃度、核酸の長さ、イオン強度、時間及び塩濃度などの複数の因子により影響を受ける。これらは、様々なレベルのストリンジェンシーを産み出す例となる条件にすぎない。当業者は、PCR反応での所望のストリンジェンシーに対してこのような条件を調整することを含め、ハイブリッド形成条件を適切に調整することによって同様のストリンジェンシーを実現することが可能であろう。
【0059】
合成核酸配列は、非特異的に核酸を切断する化学物質もしくは酵素又は部位特異的制限エンドヌクレアーゼを用いたより大きい核酸断片の切断により、又は例えば市販の自動DNA合成装置及び標準的なホスホラミダイト化学の使用によるものなどの当技術分野で公知の標準的な方法による合成によって得ることができる。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するためのある方法は米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0060】
所望の合成核酸が合成されたら、核酸を合成した固体支持体から切り離し、存在する保護基を全て除去するために、当技術分野で公知の方法によって、処理すことができる。次に、抽出及びゲル精製を含む当技術分野で公知の何らかの方法によってこの合成核酸を精製することができる。オリゴヌクレオチドの濃度及び純度は、例えばアクリルアミドゲル上でオリゴヌクレオチドを調べることによって、HPLCによって又は分光光度計において260nmでの光学密度を測定することによって、試験することができる。
【0061】
本発明の合成核酸配列は、IR−A及びIR−Bの発現の存在について調べるために使用されるあらゆるアッセイにおいて使用することができる。ある例において、本明細書中で開示されるような単離核酸を増幅プロセスで使用することができる。増幅とは、インビトロで核酸鎖を増加させるためのプロセスを指す。代表的技術はPCRであり、これは核酸分子を指数関数的に増幅させる。PCRは、米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号に記載されている。PCRは標的核酸配列ポリヌクレオチドの特異的検出及び定量に広く使用されており、分子生物学においては標準的な方法である。PCRは、試験試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を調べるために使用することができる。この方法は単離核酸配列対、「プライマー」を使用し、これはIR−A又はIR−B DNA分子における特異的位置に特異的にアニーリングする。IR−A又はIR−B DNAを熱変性し、増幅しようとするDNAの逆鎖における標的配列を取り囲む2つのオリゴヌクレオチドをハイブリッド形成させる。これらのオリゴヌクレオチドは、DNAポリメラーゼとともに使用するためのプライマーとなる。このDNAは、プライマー伸長によりコピーされ、両鎖の第二のコピーが作製される。熱変性、プライマーハイブリッド形成及び伸長のサイクルを繰り返すことによって、標的IR−A又はIR−B DNAを約2〜4時間で百万倍以上に増幅することができる。PCRは、増幅の結果を判定するための検出技術と組み合わせて使用されるべき分子生物学ツールである。PCRの長所は、およそ4時間で百万から十億倍、標的DNAの量を増幅することによって感度を向上させることである。
【0062】
下記で考察し、実施例で説明するように、IR−Aプライマー及びプローブを使用する有用な方法は定量的PCRである。定量的PCRは、蛍光の光シグナルの検出を用いて増幅反応をリアルタイムで監視できるようにするために蛍光化学とPCR反応を組み合わせる方法を指す。ある例において、この方法は、SYBR greenなどの配列非特異的蛍光レポーター色素を使用する(Wittwer C.T.ら、Biotechniques.1997年1月;22(1):176−81)。別の例において、この方法は、TAQMANプローブなどの配列特異的蛍光レポーターを使用する(Heid C.A.ら、Genome Res.1996,October;6(10):986−94)。PCRサイクリングプログラムの実行中、光源を用いて試料を励起させる。生成されるPCR増幅産物の量の指標となる蛍光シグナルは、光検出器又はCCD/CMOSカメラを用いて各反応ウェル中で監視する。反応中の試料中の蛍光を監視することによって、正確な定量的測定を行うことができる。プローブを利用したPCR法は、SYBR green法よりも正確であると考えられる。PCR又はqPCRは通常、プラスチック製の96又は384ウェルマイクロタイタープレート中で行われ、各反応物の体積は5〜50μLの規模である。しかし、PCRは、非常に小さい(ナノリットル)体積で行うことができる。
【0063】
「プライマー」又は「プライマー対」という用語は、本明細書中で使用される場合、重合反応を開始させるためにPCRで使用される短いオリゴヌクレオチド(通常は10から30bp)を指す。特異的プライマーを、標的配列の特異的位置において重合を開始させることによって増幅しようとするIR−A又はIR−B DNA配列を選択するために使用することができる。
【0064】
本明細書中に記載の方法は、IR−A及び/又はIR−Bを含有する少量のDNAの、再現性がありロバストな増幅のための方法を提供する。本明細書中に記載の核酸プライマーを用いてqPCRを行うことによって、0.1ピコグラムのDNA(1000複製)から又は35複製のDNAから、IR−A又はIR−Bを特異的に検出することができる。
【0065】
生体試料は、この方法の一部の実施においてcDNAに最初に転写されるRNAを含み得る。細胞総RNA、細胞質RNA又はポリ(A)+RNAを使用し得る。総RNA及びポリ(A)+RNAを調製するための方法は周知であり、Sambrookら(1989,Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(第2版)、vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.)及びAusubelら編(1994,Current Protocols in Molecular Biology,vol.2,Current Protocols Publishing,New York)に全般的に記載されている。好ましくは、Chirgwinら(1987)、Chomczynski&Sacchi(1987)、Sambrookら(1989)又はFarrell Jr.(1993)により記載される技術によって総RNAを調製し、多くの高品質の市販キットも利用可能である。より好ましくは、Chirgwinら(1987)のグアニジンチオシアナート法を用いて、使用する総RNAを調製する。総RNAの完全性は当技術分野で公知の様々な方法を用いて確認することができる。例として、RNAゲル電気泳動法(例えばホルムアルデヒド/アガロースゲル)又はAgilent LabChipを用いてRNAを分析し得る。哺乳動物総RNAの場合、およそ4.5及び1.9kbの2本のバンドが見えるはずであり;これらのバンドは28S及び18SリボソームRNAにそれぞれ相当し、これらのバンドの強度比は通常は1.5〜2.5:1となるはずである。
【0066】
マイクロスケールのRNA調製のためのRNA精製キットは、多くの市販業者から入手可能である(例えばAbsolutely RNA(商標)Nanoprep、Stratagene;PicoPureTM、Arcturus;RNeasy(登録商標)、Qiagen;RNAqueousTM Microkit、Ambion)。
【0067】
第一鎖cDNA合成のためのcDNA合成オリゴヌクレオチドは、約60℃から90℃の温度で、好ましくは約70℃で、約5分間、適切な緩衝液中でRNAとハイブリッド形成させることができ、次いで、約4℃に冷却し、その後、逆転写酵素を添加する。cDNA合成オリゴヌクレオチドのRNAとのハイブリッド形成後、第一のcDNA鎖が合成される。このcDNAの第一鎖は、好ましくは逆転写のプロセスを通じて生成され、DNAは、当業者に良く知られる方法に従い、逆転写酵素を用いてRNAから生成される。
【0068】
伸長後に酵素がデオキシリボヌクレオチドを3’末端に付加する限り(Varmus,Science 240:1427−1435(1988))及び酵素がRNaseH活性を欠く限り、RNAをDNAに転写するために何らかの逆転写酵素を使用することができる。好ましくは、逆転写酵素はRNaseH活性を欠くが、より長いcDNAが合成され得るように野生型ポリメラーゼ活性を保持している。逆転写酵素は、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素又はその突然変異形であり得る。逆転写酵素はPowerScript(商標)逆転写酵素(BD Biosciences Clontech)であり得る。逆転写酵素はSuperscript III(商標)であり得る。
【0069】
当業者に理解されるように、使用される逆転写酵素の量は変動し得る。例えば、およそ1時間、逆転写酵素とともに適切な温度で温置することによって、逆転写が行われるが、この温度は、逆転写酵素が酵素活性を保持する温度範囲でなければならない。この反応は、37℃と55℃の間、好ましくは37℃から42℃の間で行われ得る。最も好ましくは、この反応は、約42℃など、至適酵素活性で行われる。逆転写反応は、反応混合物を95℃に約5分間加熱して酵素を不活性化し、場合によっては続いて氷上で冷却することによって、停止させることができる。
【0070】
C.IGFアンタゴニスト/アゴニスト
本明細書中で使用される場合、IGF剤は、IGF−1R/IRシグナル伝達経路の何れかの成員の発現又は活性に影響を与える薬剤を指し、これにはIGF−1R、IR、INSR又はIGFI/IIアンタゴニストもしくはアゴニストが含まれる。IGF−1R、IR、INSR又はIGFI/IIアンタゴニストもしくはアゴニストは、ペプチド模倣体、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子、抗体又はその他の薬物候補であり得る。IGF−R1アンタゴニストの例は当技術分野で周知であり、これには、IGF−1Rに拮抗するアンチセンス及び核酸が含まれ、例えば、Wraightら、Nat.Biotech.,18:521−526(2000);米国特許第5,643,788号;米国特許第6,340,674号;US2003/0031658号;米国特許第6,340,674号;米国特許第5,456,612号;米国特許第5,643,788号;米国特許第6,071,891号;国際公開第2002/101002号;国際公開第1999/23259号;国際公開第2003/100059号;US2004/127446号;US2004/142895号;US2004/110296号;US2004/006035号;US2003/206887号;US2003/190635号;US2003/170891号;US2003/096769号;米国特許第5,929,040号;米国特許第6,284,741号;US2006/0234239号;及び米国特許第5,872,241号に記載されている。
【0071】
さらに、US2005/0255493は、低分子2本鎖RNAを用いたRNA干渉によるIGF−1R発現低下を開示する。さらに、IGF−1Rを標的とする阻害ペプチドが、インビトロ及びインビボで抗増殖活性を保持するように作製されている(Pietrzkowskiら、Cancer Res.,52:6447−6451(1992);Haylorら、J.Am.Soc.Nephrol、11:2027−2035(2000))。IGF−1RのC末端ペプチドは、アポトーシスを誘導し、腫瘍成長を顕著に抑制することが示されている(Reissら、J.Cell.Phys.,181:124−135(1999))。また、可溶性形態のIGF−1Rは、インビボで腫瘍成長を抑制する(D’Ambrosioら、Cancer Res.,56:4013−4020(1996))。IGF−IRに対する低分子阻害剤は、例えばGarcia−Echeverriaら、Cancer Cell,5:231−239(2004);Mitsiadesら、Cancer Cell,5:221−230(2004);及びCarboniら、Cancer Res,65:3781−3787(2005)に記載されている。
【0072】
このような低分子阻害剤に関する開示のさらなる例としては、国際公開第2002/102804号;国際公開第2002/102805号;国際公開第2004/55022号;米国特許第6,037,332号;国際公開第2003/48133号;US2004/053931号;US2003/125370号;米国特許第6,599,902号;米国特許第6,117,880号;国際公開第2003/35619号;国際公開第2003/35614号;国際公開第2003/35616号;国際公開第2003/35615号;国際公開第1998/48831号;米国特許第6,337,338号;US2003/0064482号;米国特許第6,475,486号;米国特許第6,610,299号;米国特許第5,561,119号;国際公開第2006/080450号;国際公開第2006/094600号;及び国際公開第2004/093781号が挙げられる。国際公開第2007/099171号(ビシクロ−ピラゾール阻害剤)及び国際公開第2007/099166号(ピラゾロ−ピリジン誘導体阻害剤)も参照のこと。Abbott Corporationの分子A−928605に対する、(Hubbardら、AACR−NCI−EORTC Int Conf Mol Targets Cancer Ther(10月22−26日、San Francisco)2007年、Abst A227)も参照のこと。
【0073】
IGF剤の例としては、IGF−I/IIアゴニスト又はアンタゴニストが挙げられる。特異的IGF−IIアンタゴニストも当技術分野で公知であり、これには、IGF−I及び/又はIGF−IIに結合する抗体が含まれる。このようなアンタゴニストは、国際公開第2007022172号及び欧州特許第492552号で開示されている。IGF−I及びIGF−IIの両方に結合する抗体の例としては、国際公開第2007070432号、国際公開第05/18671号、国際公開第03/093317号、国際公開第05/027970号及び国際公開第05/028515号に記載のものが挙げられる。
【0074】
IGFアンタゴニストとして有用な抗体の具体例には、表1及び2で列挙される重鎖及び軽鎖成分が含まれる。これらの抗体は、その全体において本明細書中に参照により組み込まれるWO2007070432に開示されている。特定の抗体としては、7.159.1、7.158.1及び7.34.1と呼ばれるものが挙げられる。上記で開示される薬剤及び抗体は、それらの全体において本願に組み込まれる。
【表1】
*ハッチ表記(#)は生殖細胞系列におけるスペースを指し、この表で示される抗体配列との適正なアラインメントを示すために使用される。
**上記の表で示される生殖細胞系列配列は、アラインメントを目的とするものであり、各個別の抗体領域が、インビボで免疫グロブリン生殖細胞系列DNAセグメントの可変領域内でそれ自身の位置に存在することを理解されたい。
【表2】
*ハッチ表記(#)は生殖細胞系列におけるスペースを指し、この表で示される抗体配列との適正なアラインメントを示すために使用される。
**上記の表で示される生殖細胞系列配列は、アラインメントを目的とするものであり、各個別の抗体領域が、インビボで免疫グロブリン生殖細胞系列DNAセグメントの可変領域内でそれ自身の位置に存在することを理解されたい。
【0075】
D.IR−A及びIR−B発現を検出及び/又は定量する方法
試料中のIR−A又はIR−Bレベルを調べるために、上で開示されるIR−A及びIR−B合成核酸配列、プライマー及びプローブセットを使用することができる。このアッセイの感度を考慮すると、本発明の分子は多くの用途を有し得る。
【0076】
好ましいアプローチは、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR、qPCR、qrt−PCR又はRTQ−PCRなど様々に略称される)又は動力学的ポリメラーゼ連鎖反応(KPCR)とも呼ばれるリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を使用することである。細胞又は組織中のメッセンジャーRNA及び非コードRNAを定量するために、逆転写とリアルタイムPCRが組み合わせられることが多い。逆転写PCRによって、予めcDNAを調製することなくRNA含有試料から開始することができるようになる。リアルタイム逆転写PCRは、しばしばqRT−PCR、RRT−PCR又はRT−rtPCRと表記される。これによって、DNA試料中の1以上の特異的配列の検出及び定量の両方が可能になる(DNA投入量又はさらなる正規化遺伝子に対して正規化する場合の、絶対的コピー数又は相対量として)。
【0077】
この手順は、ポリメラーゼ連鎖反応の一般過程に従う。しかし、増幅されたDNAは、リアルタイムに反応進行とともに検出される。リアルタイムPCRにおける生成物の検出のための2つの一般的な方法は、(1)何らかの2本鎖DNAに挿入される非特異的蛍光色素及び(2)プローブとその相補的DNA標的とのハイブリッド形成後にのみ検出が可能となる蛍光レポーターで標識されるオリゴヌクレオチドからなる配列−特異的DNAプローブである。
【0078】
蛍光レポータープローブは、プローブ配列を含有するDNAのみを検出し;従って、レポータープローブを使用すると特異性が顕著に向上し、非特異的DNA増幅が存在しても定量が可能となる。蛍光プローブは、標的とされる遺伝子が全て同様の効率で増幅されるならば、様々な色の標識を有する特異的プローブに基づき、同じ反応中のいくつかの遺伝子の検出のために、多重アッセイにおいて使用することができる。
【0079】
本方法は、一般に、プローブの片方の末端に蛍光レポーターが付加されており、プローブの他方の末端に蛍光のクエンチャーが付加されているDNAに基づくプローブを使用する。クエンチャーへのレポーターの近接近によりその蛍光の検出が妨げられ;ポリメラーゼの5’から3’方向のエクソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断によってレポーターがクエンチャーから離され、それ故に蛍光発光が抑制されなくなる。従って、各PCRサイクルでのレポータープローブが標的とする生成物が増加すると、プローブの切断及びレポーターの放出によって蛍光の比例した増加が起こる。
【0080】
PCR試料は通常と同様に調製し、レポータープローブを付加する。反応が開始されると、PCRのアニーリング段階中にプローブ及びプライマーの両方がDNA標的にアニーリングする。
【0081】
新しいDNA鎖の重合はプライマーから開始され、ポリメラーゼがプローブに到達すると、その5’−3’−エクソヌクレアーゼがプローブを分解し、蛍光レポーターをクエンチャーから物理的に引き離し、その結果蛍光が増強する。蛍光は、リアルタイムPCRサーモサイクラーにおいて検出され、測定され、生成物の指数関数的増加に対応するその幾何級数的増加は、各反応における閾値サイクル(threshold cycle(CT))を決定するために使用される。
【0082】
反応の指数期中に存在するDNAの相対濃度は、対数スケールでサイクル数に対して蛍光をプロットすることにより調べることができる(指数関数的に量が増加すると直線になる)。バックグラウンドを上回る蛍光の検出に対する閾値が決定される。試料からの蛍光が閾値を越えるサイクルをサイクル閾値、Ctと呼ぶ。指数期中、DNAの量は、理論的にはサイクルごとに2倍になり、DNAの相対量を計算することができ、例えばCtが別の試料よりも3サイクル小さい試料は、23=8倍多い鋳型を有する。全てのプライマーセットが同じように良好に機能するわけではないので、最初に反応効率を計算しなければならない。このようにして、基数としてこれを使用し、指数としてサイクルの差(cycle difference)C(t)を用いることによって、開始時の鋳型の差を(2x効率%)Ctとして計算することができる。
【0083】
次いで、結果を公知の量のRNA又はDNAの連続希釈物(例えば未希釈、1:4、1:16、1:64)のリアルタイムPCRにより作成した標準曲線と比較することによって、RNA又はDNAの量を決定することができる。遺伝子発現を正確に定量するために、対象となる遺伝子からのRNAの測定量を同じ試料において測定したハウスキーピング遺伝子からのRNA量で除して、様々な試料間のRNAの量及び質の起こり得る変動に対して正規化する。正規化で使用される参照遺伝子の発現が全試料にわたり非常に類似しているならば、この正規化によって、様々な試料間の対象となる遺伝子の発現の正確な比較が可能となる。
【0084】
MAK2など、機序に基づくqPCR(mechanism based qPCR)定量法も記載されている。これらは、定量のための標準曲線を必要としない。これらの機序に基づく方法は、元の試料濃度の推定を行うためのポリメラーゼ増幅プロセスに関する知識を利用している。
【0085】
相対量及び絶対量を調べるためにリアルタイムPCRを使用することができる。相対定量は、標的量における倍単位での差(2x、3xなど)の尺度である。絶対量は、公知の標準物質と比較することによって、存在する正確な標的分子数を与える。
【0086】
E.腫瘍の診断分類
腫瘍を分類する方法は、腫瘍試料を提供することと;その試料を合成IR−A特異的オリゴヌクレオチドと接触させることと;腫瘍中のIR−A量を検出又は定量することと、を含み得る。腫瘍におけるIR−A量を対照組織試料と又は正常組織に対する母集団平均と比較し得る。例えば、乳癌腫瘍試料を、同じ患者の疾患のない乳房由来の試料と又は非罹患乳房組織に対する母集団平均と比較し得る。IR−Aの発現の上昇は、その腫瘍がIR−A発現腫瘍であることを示す。
【0087】
あるいは、腫瘍を分類する方法は、対照試料又は母集団平均と比較して、腫瘍におけるIR−B量を検出及び/又は定量することを含み得る。このようにして、腫瘍を分類する方法は、腫瘍試料を提供することと;その試料を合成IR−B特異的オリゴヌクレオチドと接触させることと;腫瘍中のIR−B量を検出又は定量することと、を含み得る。腫瘍におけるIR−B量を対照組織試料と又は正常組織に対する母集団平均と比較し得る。例えば、乳癌腫瘍試料を、同じ患者の疾患のない乳房由来の試料と又は非罹患乳房組織に対する母集団平均と比較し得る。IR−Bの発現の上昇は、その腫瘍がIR−B発現腫瘍であることを示す。
【0088】
腫瘍を分類する方法は、IR−A及びIR−Bの相対発現レベルを決定することを含み得る。相対発現は、IR−A:IR−B mRNAの比として又は総IR mRNAの割合としての何れかの%として、例えばIR−Aの%として記述することができる。IR−A及びIR−Bの相対発現はまた、qPCRにおける閾値サイクルの差、例えば(IR−AΔCt)−(IR−BΔCt)=ΔΔCtにより示すこともでき、試料中のIR−B mRNAに対するIR−A mRNAの比は2−ΔΔCtとほぼ等しい。ΔCtの計算の場合、実験によるCt値は、内部標準に対して正規化することができる。例えば、1以上のハウスキーピング遺伝子の平均Ctなど、遺伝子発現パネルの試料内の平均(即ちIR−A及び/又はIR−B発現と同じ試料から得られる。)Ct値をIR−A及びIR−Bに対するCt値の正規化のために使用して、ΔCt値を計算することができる。
【0089】
腫瘍組織試料など、組織試料を分類するために、総INSR発現に対するIR−Aの%に基づき、組織型におけるIR−Aの%の平均及び標準偏差を最初に計算する。別のアプローチにおいて、平均の信頼範囲が、予め選択された信頼区間、例えば95%、97.5%、99%又は99.9%の信頼に対して統計的に決定される。次に、組織試料中の総INSR発現に対するIR−Aの%を組織試料において決定する。総INSR発現からのIR−Aの%が平均よりも大きい場合、この組織は、IR−A発現の割合が上昇していると言うことができる。総INSR発現中のIR−Aの割合が1〜3標準偏差を超えて、より大きい場合、例えば2標準偏差を超えて大きい場合、その試料は、IR−Aの割合が実質的に上昇していると言うことができる。同様に、総INSR発現中のIR−Aの割合が予め選択された信頼レベルに対する平均値の信頼区間の上限よりも大きい場合、その組織はIR−Aの割合が異常に高いと言うことができる。組織のタイプに対して、平均値の95%、97.5%、99%又は99.9%信頼区間の1、2又は3倍を超える組織試料に分類が割り当てられ得る。
【0090】
あるいは、腫瘍の既知の分類に対して、総INSR mRNAに対するIR−A mRNAの割合の平均及び予め選択した信頼レベルに対する信頼区間を決定し得る。組織試料のIR−Aの%測定値が信頼区間内に収まる場合、その測定は腫瘍分類と合致すると言うことができる。
【0091】
例として、正常乳房組織は、95%信頼で、総INSR mRNAに対する割合として46.6±4.7%のIR−A mRNAを含有すると決定されている。乳房腫瘍組織は、±5%の95%信頼区間で、総INSR mRNAに対して75.24%のIR−Aを含有することが見出されてた。これらの測定は、有意差があるとされている(p<0.0001)。46.6%よりも大きい組織試料IR−A%は、IR−Aの平均%よりも高いことを示すと言うことができ得る。しかし、正常組織の平均値と腫瘍組織の平均値との間のほぼ中間点であり、個々の95%信頼範囲を優に超える約60%に閾値を設定すると、不正確に分類される試料の数が最小限に抑えられる。熟練者は、47〜75%の範囲で閾値を調整し得、例えば、比較的包括的な分類を容易にするために、55%から65%の範囲で閾値を選択する。
【0092】
別の例として、IR−A及びIR−BのΔCt値を任意の型の正常組織に対して決定し得る。平均値より、1、2、3標準偏差またはそれ以上低い(IR−AΔCt)−(IR−BΔCt)の差を有すると決定された組織試料は、IR−B発現に対してIR−A発現のレベルが不均衡であるものとして分類され得る。一方、正のΔCt差は、IR−B発現レベルが不均衡であることを示す。例証するために、正常及び原発腫瘍乳房試料においてIR−A:IR−BΔCt差を決定した。平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは正常の場合0.20±0.23(n=19)であり、原発腫瘍では、平均IR−A:IR−BΔΔCt差±95%CIは−1.81±0.27(n=42)であった。従って、IR−A:IR−BΔΔCt<約0.2である組織試料は、平均IR−A:IR−BΔΔCtよりも高い値を有すると言うことができ、IR−A発現の割合の平均値よりも高いことが示される。しかし、閾値を約−0.4、−0.6、−0.8、−1.0又は−1.2に設定することによって、信頼レベルが向上する。中間点(この例において約−0.7から−0.9のIR−A:IR−BΔΔCt)付近に閾値を設定することにより、正しくない分類の数が最小限に抑えられる。言うまでもなく、熟練者は、より包括的に、またはより包括的でないように、分類のための必要性のバランスを取るために、平均値の間の範囲の何れかに閾値を調整し得る。従って、IR−A:IR−BΔΔCt差が、IR−Bに対するIR−Aの量が変化している乳房腫瘍組織と合致するものとして試料を分類するための閾値は、0.2から−1.8の範囲に設定され得、例えば95%信頼区間に基づき、約0.4から約−1.54の間に設定される。
【0093】
別の例として、IR−A及びIR−Bの相対発現は、腫瘍サブタイプ、例えばluminal A及びluminal B乳癌を分類するために使用され得る。例えば、正常、luminal A及びluminal BにおけるIR−A:IR−BΔCt差を比較した。平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは、正常の場合0.27±0.30(n=15)であった。luminal Aに分類される乳癌では、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−1.09±0.34(n=13)であった。luminal Bに分類される乳癌では平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−2.12±0.34(n=27)であった。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差が示される(2−試料t検定、p<0.001)。従って、正常とluminal A腫瘍組織との間のIR−A:IR−BΔΔCt分類に対する閾値は、約0.3から−1.4の間の範囲、例えば約−0.2、約−0.4又は約−0.6に設定され得る。luminal Aとluminal B腫瘍組織との間のIR−A:IR−BΔΔCt分類のための閾値は、約−1.1から約−2.1の範囲、例えば約−1.5から−1.75の範囲又は約−1.55、約−1.6、約−1.65又は約−1.7に設定され得る。
【0094】
GeneChip発現プロファイルに基づき、正常、luminal−A及びluminal−Bに対する分類スキームを用いて、正常、luminal−A及びluminal−Bに分類された腫瘍試料におけるIR−A:IR−BΔCt差を比較した。正常において、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは0.32±0.25(n=15)であった。luminal−Aと予測される乳癌においては、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−1.05±0.19(n=18)であった。luminal−Bと予測される乳癌において、平均IR−A:IR−BΔΔCt±95%CIは−2.42±0.32(n=22)であった。このスキームによると、luminal Aとluminal B腫瘍組織との間のIR−A:IR−BΔΔCt分類に対する閾値は、約−1.1から約−2.4の範囲、例えば約−1.4から−2.1の範囲又は約−1.4、約−1.6、約−1.7、約−1.8又は約−1.9に設定され得る。サブタイプ分類をさらに改良するために、IR−A:IR−BΔΔCtを他の発現プロファイルと組み合わせることができる。
【0095】
例えば増殖スコアを決定するために、特に他の癌増殖の予測因子と組み合わせて、癌増殖の予測因子として、組織中のIR−A及びIR−Bの相対発現レベルを使用することができる。予測される増殖比率から、個々の癌の予後及び悪性度に対する有用な情報が提供され得る。上記データから、IR−ATR−BΔCt差と増殖スコアとの間の正相関が示される。このようにして、腫瘍組織をスコア化するための方法は、IR−A及びIR−B発現の相対的比率を調べることと、IR−A及びIR−Bの相対発現に少なくとも一部基づき、増殖スコアを割り当てることと、を含み得る。
【0096】
これらの方法を用いた分類のための腫瘍試料は、肺、乳房、前立腺、結腸、卵巣、膵臓、脳、食道、子宮内膜、子宮頸部、消化管又は皮膚由来の試料を含むいずれの適切な腫瘍試料でもあり得る。腫瘍試料は、IGF−R1/IR−Aなどの細胞表面受容体を通じてのみ、又は一部それを通じて腫瘍活性が媒介される何れかの患者から採取することができる。例えば、腫瘍は、白血病、多発性骨髄腫又はリンパ腫などの非固形腫瘍であってもよいし、固形腫瘍、例えば胆管、骨、膀胱、脳/CNS、乳房、結腸直腸、子宮頸部、子宮内膜、胃、頭頸部、肝臓、肺、筋肉、神経、食道、卵巣、膵臓、胸膜/腹膜、前立腺、腎臓、皮膚、精巣、甲状腺、子宮及び外陰部の腫瘍であってもよい。ある例において、腫瘍は、乳房の腫瘍である。別の例において、腫瘍は膀胱の腫瘍である。別の例において、腫瘍は肝臓の腫瘍である。
【0097】
適切な腫瘍試料は当技術分野で公知のように調製することができる。例えば、針生検を介して生きている腫瘍細胞を得て、次いで標準的手順に従いインビトロで培養する。あるいは、吸引後に腫瘍細胞をすぐに固定するか又は腫瘍を(全体又は一部)を摘出し、免疫組織学的染色用に切片を調製し得る。
【0098】
腫瘍細胞をインビトロで培養することにより、刺激後の内在化動態の測定が可能となり、一方で試料をすぐに固定すると、腫瘍内の受容体の静的な局在性をアッセイできる。
【0099】
F.治療方法
IGF−1受容体(IGF−IR)経路は複雑であり、複数の因子が含まれる(図3参照)。IGF−1Rは、インスリン受容体(INSR)とハイブリッド受容体を形成することができ、実際に形成する。IGFリガンドであるIGF−I及びIGF−IIは、最初にIGF−1Rと相互作用し、様々な細胞内シグナル伝達カスケードを活性化することによって、それらの様々な効果を発揮する。具体的には、IGF−Iは、IGF−IRを活性化することによって主に機能し、一方でIGF−IIはIGF−IRを通じて又はIR−Aアイソフォームを通じての何れかで作用し得る。IGF−1R、そのIGFリガンド及びIR−Aは、乳癌及び前立腺癌の両方を含む多くの癌に関与しており、癌治療における使用のための多くのアンタゴニストが、IGF−IR及びIGFリガンドを標的とするために開発されている。
【0100】
IGF経路を標的とする現在利用可能な多数のアンタゴニストがあることを考えると、患者が反応する可能性があるか又は反応性が高いアンタゴニストの選択が所望される。例えば、IGF−1Rアンタゴニストには、これらのアンタゴニストがIR−A経路を阻害しないという欠点がある。文献において、IR−Aは、癌において過剰発現される場合、IGF−1Rアンタゴニストに対する耐性に関与し得ることが示唆されていることを考えると、IGF−1RだけではなくIR−Aも標的とするアンタゴニストを投与することが望ましい。このようなアンタゴニストの例は、特異的にIGF−IIを標的とし、IGF−Iと交差反応し得る抗体である。
【0101】
これらのIGF−I及びIIアンタゴニストは、IGF−IR及びIR−Aシグナル伝達の両方に対する阻害能を有し、その結果、IGF−1Rよりも臨床における活性が幅広く、低分子IGF−1R/IR−A/IR−B阻害剤と比較して毒性が低くなる。例としては、IGF−I及び/又はIGF−IIに対する抗体が挙げられるが、これには国際公開第2007070432号で開示されるものが含まれる。特に関心が高いものは、ハイブリドーマ7.159.1、7.158.1及び7.34.1により産生される抗体のアミノ酸配列を有する抗体である。
【0102】
特定のIGFアンタゴニスト又はアゴニストに反応する可能性が高いことを予測するために、IGFアンタゴニスト又はアゴニストを用いた治療に対する候補となる患者を選択する方法は、上記方法の何れかを用いてIR−A及び/又はIR−B発現を定量することと、正常対象に対して又は癌患者集団に対してIR−A及び/又はIR−Bの発現量が上昇もしくは低下している患者を選択することと、を含み得る。患者は、IR−B発現に対するIR−Aの相対量の変化によっても選択され得る。
【0103】
具体例において、実施者は、腫瘍がIR−A及び/又はIR−Bを発現するか否かの決定に基づいて、特定のIGFアンタゴニストを予め選択し得る。IR−Aを過剰発現すると決定されている腫瘍の特定によって、IGFI/IIアンタゴニストに対する反応性が高い可能性が最も高い患者を選択する機会が与えられる。
【0104】
ある例において、アンタゴニストは、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、表1及び2で示されるように、配列番号45及び53のCDR配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む抗体を含む。別の例において、アンタゴニストは、配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む抗体を含む。
【0105】
本方法はまた、IGF−1R又はIGFの特定の阻害剤がインスリン受容体を活性化させているか又は阻害しているかを判定するためにも使用することができる。例えば、IGF−1Rキナーゼの低分子阻害剤はインスリン受容体を交差阻害することが多いことが知られている。これは代謝性合併症をもたらし得る。ある例において、腫瘍などの試料中のIR−A及び/又はIR−Bの発現を決定し、それらの発現を対照と比較する方法である。対照と比較してIR−Bの発現が低下しており、IR−Aの発現が対照と比較して上昇している場合、IGF−I/IIアンタゴニストなどの代替となるIGFアンタゴニストを選択することが必要となり得る。このように、患者を治療する方法は、例えば患者からの組織試料に対してIR−A:IR−BΔCt差を調べることによってIR−A及びIR−Bの相対発現をけっていすることと、IR−Bに対するIR−Aの割合が閾値よりも低い場合にIGF−I/IIアンタゴニストを投与することと、を含み得る。
【0106】
別の例において、ある方法により癌患者のサブセットの分類が可能になる。現在、IR−Aが乳癌において過剰発現され得ることが知られている。治療のために患者のサブセットを選択する方法は、IR−Aを過剰発現するか又はIR−Bに対してIR−Aを不均衡に発現し、従ってIGFI/IIアンタゴニストに対する応答が高くなっている可能性がある乳癌患者のサブセットを特定することを含み得る。IGFI/IIアンタゴニストに対する応答が高い可能性がある癌患者を治療する方法は、腫瘍組織試料に対してIR−A:IR−BΔCt差を測定することと、腫瘍組織試料のIR−A:IR−BΔCt差が閾値よりも低く、正常よりも高いIR−AのIR−Bに対する割合を示す場合に、有効量のIGFI/IIアンタゴニストを投与することと、を含み得る。アンタゴニストの例には、IGF−I及び/又はIGF−IIに結合する抗体が含まれる。ある例において、アンタゴニストは、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、表1及び2で示されるように、配列番号45及び53のCDR配列を含む抗体である。別の例において、アンタゴニストは、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む抗体を含む。別の例において、アンタゴニストは、配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む抗体を含む。
【0107】
応答性が高い又は応答者とは、特定のIGF剤の投与後に反応するか又はより正の方向に反応する患者を意味する。応答者及び無応答者は、Union International Contre le Cancer/World Health Organization(U ICC/WHO)基準に従い、客観的腫瘍反応を測定することによって決定することができる。基準は以下のようにカテゴリー分けされる:完全寛解(CR):評価可能な全病変部で遺残腫瘍なし;部分寛解(PR):測定可能な全病変部の合計のベースラインのもと、遺残腫瘍が化学療法により50%以上縮小し、新たな病変なし;安定疾患(SD):CRとして判定されない遺残腫瘍;及び進行性疾患(PD):測定可能な全病変部の合計のベースラインのもと、遺残腫瘍が25%以上増大しているか又は新たな病変が出現。本明細書中で定義されるように、無応答者はPDである。本方法は、CR又はPRである患者を判定するために特に有効である。このようにして、本方法により、個々の患者に治療を適合させ、利用可能なIGFアンタゴニストのタイプの使用をより有効にすることによって、癌患者の予後及びクオリティーオブライフが改善される。
【0108】
G.糖尿病
インスリン受容体を介してシグナル伝達を破壊及び/又は低下させる物質/化合物に対するスクリーニングのための方法。試料中のIR−A又はIR−Bの相対的発現を決定することをスクリーニングツールとして使用して、例えばβ細胞において及び末梢組織において、IR−A又はIR−B−特異的シグナル伝達カスケードの何れかを選択的に活性化する、低分子化合物及び/又はインスリン模倣体などの薬剤を同定することができる。古典的なインスリン標的組織における顕著なIR−Bの発現は、これらの組織におけるIR−Bシグナル伝達カスケードの重要性を示す。その結果、IR−Bシグナル伝達カスケードを選択的に刺激する化合物は、β細胞の機能(グルコース応答性及び、従ってインスリン分泌)ならびに末梢インスリン標的組織の機能(グルコース取り込み及び利用、タンパク質合成、脂質合成)を向上させ、従ってインスリン非依存性糖尿病(NIDDM、2型糖尿病)の2つの主要な原因、即ち末梢インスリン抵抗性及びβ細胞機能不全を対象にする治療を提供する可能性がある。
【0109】
このように、インスリンシグナル伝達を調節する薬剤を同定する方法は、試験薬剤と細胞を接触させることと、その試験薬剤によってIR−B発現が上昇するか又は低下するか否かを決定することと、が含まれる。IR−B発現を上昇させる薬剤の同定は、2型糖尿病を治療することにおいてその薬剤が有用であり得ることの指標となる。
【0110】
H.キット
生体試料中のIR−A又はIR−Bの存在を検出するためのキットは、IR−A及び/又はIR−Bプローブ又はプライマーを含み得る。本明細書中に記載の方法における使用のための材料は、キットの調製のために理想的に適している。例えば、キットは、腫瘍試料中のIR−A又はIR−Bを検出することが可能な、本明細書中で開示されるような核酸配列と;対照試料と;細胞表面受容体の検出方法に関する説明書と、を含み得る。このようなキットは、例えば緩衝液、適切なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTP及びdTTP;又はrATP、rCTP、rGTP及びUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及び1以上のオリゴヌクレオチドを含む、本方法で使用される、それぞれ1以上の様々な試薬(通常は濃縮形態)入りの容器を含み得る。
【0111】
容器中のオリゴヌクレオチドはいかなる形態、例えば、凍結乾燥形態又は溶液形態(例えば、蒸留水又は緩衝溶液)などでもあり得る。同じ増幅反応で即時使用できるオリゴヌクレオチドを1つの容器中で組み合わせてもよいし、個別の容器中に入れてもよい。本キットは、場合によっては、別個の容器中で、RNAポリメラーゼプロモーターに特異的なRNAポリメラーゼ及び/又はPCR用の緩衝液及び/又はDNAポリメラーゼをさらに含む。本キットは、場合によっては対照核酸をさらに含む。通常は一連の説明書も含まれる。
【0112】
本明細書中で開示される方法は、別段の指示がない限り、当業者の能力の範囲内である、化学、分子生物学、微生物学、組み換えDNA及び免疫学の従来技術を使用する。このような技術は、文献で説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch及びT.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,1−3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら(1995及びperiodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,第9,13及び16章,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);B.Roe、J.Crabtree及びA.Kahn、1996、DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach、Irl Press;及びD.M.J.Lilley及びJ.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis及びPhysical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Pressを参照のこと。これらの各一般的教科書はそれらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、本明細書中に記載の方法を実施するにあたり当業者の一助となるものであり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0114】
I.代表的な具体例
以下の実施態様のリストは代表的なものであり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0115】
1.合成核酸配列が以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0116】
2.以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸配列:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列(配列番号21)又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列(配列番号22)又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0117】
3.配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0118】
4.配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0119】
5.実施態様1−4の何れか1つに記載の合成核酸配列を含む組成物。
【0120】
6.(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と;
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【0121】
7.少なくとも1つの合成核酸配列が、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様6に記載のプライマーセット。
【0122】
8.(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で実施態様6に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させる工程;
(b)増幅された対象とするIR−A核酸配列を検出及び/又は定量する工程
を含む、生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するための方法。
【0123】
9.生体試料が腫瘍試料から調製される、実施態様8に記載の方法。
【0124】
10.プライマーセットが、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、実施態様8から9の何れか1つに記載の方法。
【0125】
11.プライマーセットが、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、実施態様8に記載の方法。
【0126】
12.前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応である、実施態様8から11の何れかに記載の方法。
【0127】
13.プライマーセットが、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様12に記載の方法。
【0128】
14.プライマーセットが、
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様12に記載の方法。
【0129】
15.増幅産物が100塩基未満である、実施態様8から14の何れかに記載の方法。
【0130】
16.合成核酸配列が、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0131】
17.以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0132】
18.配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0133】
19.配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0134】
20.配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される合成核酸配列。
【0135】
21.実施態様1−4及び16−20の何れか1つに記載の合成核酸配列を含む組成物。
【0136】
22.(a)(i)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列、
(a)(ii)INSR遺伝子のエクソン11(配列番号9)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列;又は
(a)(iii)エクソン10及び11を架橋する塩基、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下でそれともしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列;と、
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50塩基(配列番号10)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号10もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【0137】
23.少なくとも1つの合成核酸配列が、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様22に記載のプライマーセット。
【0138】
24.(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で実施態様22又は23に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させる工程;
(b)増幅された標的IR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程
を含む、生体試料中のIR−B核酸を検出及び/又は定量するための方法。
【0139】
25.生体試料が腫瘍試料である、実施態様24に記載の方法。
【0140】
24.プライマーセットが:
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様24に記載の方法。
【0141】
25.前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)である、実施態様24に記載の方法。
【0142】
26.プライマーセットが:
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様25に記載の方法。
【0143】
27.プライマーセットが:
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、実施態様25に記載の方法。
【0144】
28.プライマーセットが;
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含み、さらに、
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含む、実施態様25に記載の方法。
【0145】
29.増幅産物が100塩基未満である、実施態様24から28の何れかに記載の方法。
【0146】
30.ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させること(この場合、プライマーセットは実施態様6に記載のプライマーセットを含む)及び/又はポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させることと(この場合、プライマーセットは実施態様22に記載のプライマーセットを含む)、
増幅された標的IR−A又はIR−B核酸配列を検出及び/又は定量することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及び/又は標的IR−B核酸配列の有無を決定するための方法。
【0147】
31.実施態様1から15の何れかに記載の少なくとも1つの合成核酸配列と使用説明書とを含む、生体試料中のIR−Aの有無を決定するためのキット。
【0148】
32.少なくとも1つの合成核酸配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、該配列の1つに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の1つもしくはその相補体とハイブリッド形成可能な配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様31に記載のキット。
【0149】
33.合成核酸配列が以下のプライマーセットの中から選択される、実施態様31に記載のキット:
(1)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(2)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0150】
34.適切なPCR試薬と;場合によっては、IR−Aの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、実施態様31に記載のキット。
【0151】
35.実施態様16−23の何れかに記載の少なくとも1つの合成核酸配列と使用説明書とを含む、生体試料中のIR−Bの有無を決定するためのキット。
【0152】
36.合成核酸配列が、配列番号11、配列番号12、該配列の何れかと相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の何れかもしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施態様35に記載のキット。
【0153】
37.合成核酸配列が以下のプライマーセットから選択される、実施態様35に記載のキット:
(1)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;または
(2)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する配列番号14;又は
(3)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【0154】
38.適切なPCR試薬と;場合によっては、IR−Bの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、実施態様35に記載のキット。
【0155】
39.実施態様8に従い、試料中のIR−A発現を検出及び/又は定量することと、
実施態様24に従い、試料中のIR−B発現を検出及び/又は定量することと、を含み、
IR−A及びIR−Bの発現が、IGFI/IIリガンド又はIGFIR受容体アンタゴニストを対象に投与するべきか否かの指標である、IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストに応答性のある患者を選択するための方法。
【0156】
40.IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストが抗体である、実施態様39に記載の方法。
【0157】
41.抗体が、表1及び表2に列挙される配列成分を含む、実施態様40に記載の方法。
【0158】
42.ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、実施態様6に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させることと、
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、実施態様22に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させることと;
増幅されたIR−A及びIR−B核酸配列を定量することと;
それによって生体試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を判定することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及びIR−B核酸配列の相対的な有無を決定するための方法。
【0159】
43.実施態様42に記載の方法によって腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準により腫瘍を分類することと、
を含む、腫瘍を分類する方法。
【0160】
44.実施態様42に記載の方法によって患者の組織中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準により患者を分類し、それによりIGFアンタゴニストに対する患者の相対的な応答性を予測することと、
を含む、IGFアンタゴニストで治療するための患者を選択する方法。
【0161】
45.IR−Aの発現がIR−Bに対して上昇している、実施態様39、43及び44の何れかに記載の方法。
【0162】
46.実施態様42に記載の方法によって組織試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって患者を分類することと;
該分類に従いIGFアンタゴニストを投与することと、
を含む、IGFアンタゴニストを用いて患者を治療する方法。
【0163】
47.IR−Aの発現がIR−Bと比較して上昇している、実施態様46に記載の方法。
【0164】
48.IGFアンタゴニストが抗体である、実施態様44又は47に記載の方法。
【0165】
49.抗体が、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、実施態様40、41及び48に記載の方法。
【0166】
50.抗体が、表1及び2で示されるような配列番号45及び53のCDR配列を含む、実施態様40、41及び48の何れかに記載の方法。
【0167】
51.抗体が、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む、実施態様40、41及び48に記載の方法。
【0168】
52.抗体が配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む、実施態様40、41及び48の何れかに記載の方法。
【0169】
53.総インスリン受容体に対するIR−Aの%が46.6%より大きい、実施態様45及び47の何れかに記載の方法。
【0170】
54.IRA:IR−BΔΔCtが約0.2未満である、実施態様45及び47の何れかに記載の方法。
【0171】
55.IR−Aに対するlog2ベースのスケールでの相対量の差の平均が、約−0.07±0.29であり、IR−Bに対して約−2.08±0.25である、実施態様45及び47の何れかに記載の方法。
【0172】
56.実施態様42に記載の方法によって乳癌腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対的発現を判定することと;IR−A:IR−B比が閾値よりも低い場合にluminal Bとして乳癌サブタイプを分類することと、を含む、乳癌腫瘍サブタイプを分類する方法。
【0173】
57.IR−A:IR−BΔΔCtを計算することをさらに含み、閾値が、約−1.1から約−2.4の範囲に設定されるIR−A:IR−BΔΔCt値である、実施態様56に記載の方法。
【0174】
58.閾値が約−1.4から−2.1の範囲である、実施態様54に記載の方法。
【0175】
59.IR−A:IR−BΔΔCtの決定が、サブタイプ分類を決定することにおいて他の発現プロファイルと組み合わせられ得る、実施態様57に記載の方法。
【0176】
60.実施態様42に記載の方法により、腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、より高いIR−A:IR−B比がより高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、を含む、腫瘍に対する増殖スコアを決定する方法。
【0177】
61.IR−A:IR−BΔΔCtを計算することと、より低いIR−A:IR−BΔΔCt値が、より高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、をさらに含む、実施態様60に記載の方法。
【0178】
62.試料中のIR−A及びIR−Bの相対レベルを決定することを含み、IR−Bに対するIR−Aの量の上昇が、luminal−Bである腫瘍の指標となる、luminal−A又はluminal−Bとして乳癌試料を分類する方法。
【0179】
II.実施例
実施例1:IR−A及びIR−Bプライマー及びプローブ設計
市販のアッセイは、IR−A及びIR−B発現を区別し、定量することができなかった。そこで、新規プローブが必要であった。インスリン受容体(INSR)短(NM_001079817)及び長(NM_000208)アイソフォームに対する成熟mRNA転写配列をNational Center for Biotechnology Information(NCBI)Entrez Nucleotideデータベースから入手した。INSR短アイソフォームをIR−Aと呼び、INSR長アイソフォームをIR−Bと呼ぶ。この2つのアイソフォーム間の違いは、成熟転写物におけるエクソン11、36ヌクレオチド領域が存在するか(IR−B)又は存在しないか(IR−A)である。エクソン11はIR−A型には存在しないが、IR−B型は成熟mRNA転写物においてエクソン11配列を含有する。IR−A mRNAの検出に特異的であるプライマー及びプローブの設計のために、エクソン10/12連結領域を遺伝子特異的プローブに対する標的とした。エクソン10又はエクソン12コード領域内にそれぞれ位置するいくつかのプライマー対(フォワード及びリバース)を設計した。IR−B設計の場合、エクソン11/12連結部を標的とし、遺伝子特異的プローブに対してはエクソン11内部領域を標的とした。エクソン10内又はエクソン10/11連結部及びエクソン12コード領域にそれぞれ位置するいくつかのプライマー対(フォワード及びリバース)を設計した。プライマー/プローブ設計は全てPrimer Express(ABI)ソフトウェアツールにインポートし、確実にTaqMan遺伝子発現アッセイ法における利用に最適な設計となるようにした。プローブは全て、小溝結合(MGB)部分を取り込むように設計し、検出用の蛍光色素(FAM)及び非蛍光クエンチャーで標識した。設計した全プライマー/プローブの組み合わせの配列を表3及び4に示す。
【表3】
【表4】
【0180】
実施例2:プライマー及びプローブの特異性
INSR長(クローンSC311328)及び短(クローンSC315880)転写物に対する全長cDNAクローンを含有する市販のプラスミドをOriGene Technologies、Inc.から購入した。各INSRクローンの配列確認を行った。様々な複製数(102〜107複製)の投入量のINSR長又は短アイソフォームクローンの何れかの存在下で、全TaqMan遺伝子発現アッセイ設計の特異性及び感度を試験した。全プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせに対して384ウェル形式で標準的なTaqMan遺伝子発現アッセイを行った。反応液は、384ウェルプレートの最終体積15μL/ウェルに対して、7.5μLのTaqMan Universal Master Mix、1.5μLの10x遺伝子発現アッセイ混合液及び6μLの様々な複製数のINSR長又は短型cDNAクローンの何れかから構成されていた。各プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせを少なくとも3回繰り返した。標準設定(95℃で10分間温置し、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクルという構成のサイクリングプログラム)を用いて、全アッセイプレートをApplied Biosystems 7900HT検出システムで試験した。SDSv2.0ソフトウェアツール(ABI)を用いてデータ値(Ct値)を各回のアッセイの実行から抽出した。データ抽出及び分析後、以下のプライマー及びプローブアッセイ設計によって発明者らの目的に対して十分な感度及び特異性が得られると決定した:IR−A1、IR−A3、IR−B3、IR−B4及びIR−B5。
【0181】
IR−A1及びIR−A3アッセイは、約35コピーの複製数閾値でIR−Aアイソフォーム配列を検出することができた。これらのアッセイはまた、これらが利用された何れの複製数投入量でもIR−Bアイソフォームの存在を検出できなかったことから、IR−Aアイソフォームに非常に特異的であることも分かった。あるいは、IR−B3、IR−B4及びIR−B5設計は、約35コピーの複製数閾値でIR−Bアイソフォーム配列を検出することができた。これらの設計物はまた、約35複製の閾値以下でIR−Aアイソフォームの存在を検出できず、これらが利用された何れのコピー数投入量でもIR−Aアイソフォームの存在を検出できなかったことから、IR−Bアイソフォームに非常に特異的であることも分かった。
【0182】
リアルタイムPCRのためのBioMark(商標)Dynamic Array(Fluidigm Corporation)マイクロフルイディクスシステムを用いて、これらの特異性実験を繰り返した。このシステムにより、変動性が低く、従来のRT−PCRとよく相関する高品質データをもたらすハイスループットのリアルタイムPCR(プレートあたり2304の個別の反応が可能)が可能となる。この技術を用いるために、製造者の説明書に従い、TaqMan Pre−Amp Master Mixを用いてcDNA試料を予め増幅した。反応液には、20μLの最終体積に対して、5μLのcDNA、10μLのPre−Amp Master Mix及び5μLの0.2x遺伝子発現アッセイミックス(アッセイしようとする全プライマー/プローブから構成)が含有された。推奨されるプログラムを用いて14サイクルにわたり反応サイクルを繰り返し、次いでTE緩衝液で1:5に希釈した。予め増幅したcDNAをすぐに使用するか又は必要になるまで−20℃で保存した。
【0183】
48x48ダイナミックアレイチップ(Fluidigm)に投入するための試料を調製するために、反応混合液は、2.5μLの2xUniversal Master Mix(Applied Biosystems)、0.25μLのSample Loading Buffer(試料ローディング用緩衝液)(Fluidigm Corporation)及び2.25μLの予め増幅したcDNAを含有した。プライマー/プローブを調製するために、反応混合液は、2.5μLの20xTaqman遺伝子発現アッセイ及び2.5μLのAssay Loading Buffer(アッセイローディング緩衝液)(Fluidigm Corporation)を含有した。試料及びアッセイ試薬を注入口に投入する前に、IFC Controllerにおいてチップの準備を行った。記載のように調製した5μLの試料をダイナミックアレイチップの各試料注入口に投入し、5μLの10x遺伝子発現アッセイミックスを各検出器の注入口に投入した。投入及び混合のために、チップをIFC Controller上に置いた。およそ1時間後、温度サイクリングのためにチップをBioMark(商標)リアルタイムPCRシステムに投入した(95℃で10分間、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクル)。試料の反復数及び組成は、特定の実験によって変動したが、三重未満にはならなかった。設計されるプローブ感度及び特異性を決定するために平均Ct値を使用した。
【0184】
Fluidigm systemを用いて、従来のリアルタイムPCRを用いて得られた結果を検証した。IR−A1、IR−A3、IR−B3、IR−B4及びIR−B5はIR−A又はIR−Bの何れかに対して特異的であり、約35コピーの複製数閾値で適切な受容体アイソフォームを検出することができた。
【0185】
さらなる分析においても、IR−AもしくはIR−Bの何れかを過剰発現することが知られているか又はIR−Aを過剰発現するように改変されている細胞株からのcDNA鋳型を利用した。2つの内因対照遺伝子(GAPDH及びACTIN)の平均CTを標的遺伝子の平均Ctから差し引くことによって、各試料に対するΔ比較閾値(ΔCt)を計算した。結果から、これらのプライマー/プローブ設計が、cDNAクローンを用いて観察されるのと同じように、細胞株においてIR−A又はIR−Bの何れかを再現性よく特異的に検出したことが示された。まとめると、これらの結果から、cDNA又は組織試料のさらなるハイスループット分析に対するFluidigm技術の使用が有効であることが確認され、IR−A及びIR−Bプライマー/プローブ設計の特異性が検証された。複数のプライマー/プローブ設計の品質確認後、発明者らは、多数の一連の乳癌におけるIR−A及びIR−Bの発現状態を測定するためにIR−A1及びIR−B4を選択した。
【0186】
100pgのIR−A又はIR−Bの鋳型保存溶液(DNA鋳型およそ107複製)で開始してIR−A又はIR−B qRT−PCRアッセイを行うことによって、プローブの感度を検証した。l0−4pg(およそ10コピーのDNA鋳型)までDNAを連続希釈した。2つ組で各試料を試験した。標準鋳型希釈曲線の傾斜は、logDNA複製数の関数としてサイクル−閾値(Ct)値をプロットすることによって計算した。この結果を図7で示す。log[濃度]と、その個々の対応する標準鋳型を用いて試験した各アッセイに対して得られたCt値と、の間で強い相関が認められた。相関係数(r2値)は全て0.999以上(p≦0.0001)であった。両アッセイにおいて上述のDNA濃度範囲において直線性が維持され、このことから、幅広いダイナミックレンジが示され、正確なCt値が得られる。この結果から、約35コピーのDNAに対してIR−A及びIR−Bアッセイの両方が高い感度で適切なアイソフォームを検出していることが示された。
【0187】
IR−B DNA鋳型の存在下でIR−Aアッセイを、IR−A DNA鋳型の存在下でIR−Bアッセイを、それぞれ試験することによってもアッセイの特異性を評価した。IR−Aアッセイは、10から107複製のIR−B DNAという試験範囲でIR−B DNA鋳型を増幅しない。同様に、IR−Bアッセイは、試験範囲でIR−A DNA鋳型を増幅しない。
【0188】
両アッセイに対する標準希釈曲線の傾斜によってアッセイ効率を評価した(図7)。その傾斜は、IR−Aに対して−3.259であり、IR−Bに対して−3.155であった。この2つの傾斜は非常に類似しており、これにより、プローブ効率の差はあまりないことが示唆される。
【0189】
実施例3:乳癌患者における発現プロファイリング
A.一般手法
42例のグレードIからIIIの浸潤性乳管癌をILSbio(Chestertown、MD)から購入した。19例の対応する正常な隣接乳房組織試料も入手した。患者の年齢は31歳から88歳の範囲であった。乳癌試料は全て、IHCによれば、ER及びPR陽性であり、HER2陰性である。いずれの処理を開始する前にも、全試料を新鮮凍結し、回収した。腫瘍試料に対してマクロダイセクションを行い正常組織を除去し、正常試料に対してマクロダイセクションを行って非腺組織を除去した。マクロダイセクション後、全試料における腫瘍純度は85%超である。
【0190】
4種類の乳癌組織qPCR cDNAアレイ(BCRT101、BCRT102、BCRT103、BCRT104)をOriGene Technologies(Rockville、MD)から購入した。qPCRアレイは、15検体の正常乳房組織(10名の独自のドナー由来)及び165検体の乳腺癌組織由来のcDNAを含有する。腫瘍ステージはIからIVまで様々であり、これらの組織は50から90%の腫瘍から構成された。
【0191】
ZR RNA MicroPrepキット(Zymo Research、Orange、CA)を用いて総RNAを急速凍結組織標本から抽出した。分光光度法でRNA純度及び濃度を測定した(260/280>1.9)。RNA6000 Nano LabChip(登録商標)を用い、Agilent 2100 BioanalyzerにおいてRNAの品質を評価した。
【0192】
以下のの実施例のために、IR−Aアッセイに対するフォワードプライマーの配列は5’−TGAGGATTACCTGCACAACG−3’(配列番号3)であり、リバースプライマーの配列は5’−ACCGTCACATTCCCAACATC−3’(配列番号4の相補体)であり、プローブは5’−TCCCCAGGCCATCT−3’(配列番号7)である。IR−Bアッセイのためのフォワードプライマーの配列は5’−CGTCCCCAGAAAAACCTCTTC−3’(配列番号11)であり、リバースプライマーの配列は5’−GGACCTGCGTTTCCGAGAT−3’(配列番号12)であり、プローブの配列は5’CCGAGGACCCTAGGC−3’(配列番号14)である。
【0193】
陽性及び陰性対照には、IR−Aの全長cDNAクローン(pCMV6−XL4中でクローニング)及びIR−Bの全長cDNAクローン(pCMV6−XL5中でクローニング)を含有する市販のcDNAクローンをOriGene Technologies、Incから購入した(IR−A:SKU#.SC311328;IR−B:SKU#SC315880)。IR−A及びIR−Bアッセイに対する陰性対照DNAとしてそれぞれ空のpCMV6−XL4及びpCMV6−XL5のプラスミドを使用した。
【0194】
プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせ全てに対して、384ウェル方式で標準的TaqMan遺伝子発現アッセイを行った。反応液は、384ウェルプレートのウェルあたり10μLの最終体積に対して、5μLのTaqMan Universal Master Mix、0.5μLの10x遺伝子発現アッセイMix及び4.5μLの様々な複製数のIR−B又はIR−A cDNAクローンの何れかから構成された。各プライマー/プローブ及び鋳型の組み合わせを少なくとも3回繰り返した。標準設定(95℃で10分間温置し、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクルから構成されるサイクリングプログラム)を用いて、全アッセイプレートをApplied Biosystems 7900HT検出システムで試験した。SDSv2.0ソフトウェアツール(ABI)を用いてデータ値(サイクル閾値(Ct)値)を各回のアッセイ実行から抽出した。
【0195】
他の遺伝子の発現レベルの評価のために、TaqMan遺伝子発現アッセイをABI(Forest city、CA)から購入した。このアッセイには、INSR(アッセイID:Hs00961554_m1)、ER(アッセイID:Hs00174860_m1)、PR(アッセイID:Hs01556707_m1)、ERBB2(HER2、アッセイID:Hs01001580_m1)、腫瘍増殖遺伝子(Pike Sら、2004):BIRC5(アッセイID:Hs00153353_m1)、AURKA(STK15、アッセイID:Hs01582073_m1)、CCNB1(アッセイID:Hs00259126_m1)、Ki67(アッセイID:Hs01032443_m1)、MYBL2(アッセイID:Hs00942543_m1)及び参照又は「ハウスキーピング」遺伝子:ACTB(Hs99999903_m1)、GUSB(アッセイID:Hs99999908_ml)、GAPDH(アッセイID:Hs99999905_m1)、RPLP0(アッセイID:Hs99999902_m1)、TFRC(アッセイID:Hs99999911_m1)が含まれる。
【0196】
BioMark(商標)Dynamic Array(Fluidigm Corporation)マイクロフルイディクスシステムにより、変動性が低く従来のRT−PCRと強く相関する高品質のデータを生成させる、ハイスループットリアルタイムPCR(プレートあたり2304の個々の反応が可能)が可能になる。Superscript(登録商標)III First Strand Synthesis SuperMix(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて総RNAから1本鎖cDNAを生成させた。製造者の説明書に従い、TaqMan Pre−Amp Master Mixを用いてcDNA試料を予め増幅した。反応液は、20μLの最終体積に対して、5μLのcDNA、10μLのPre−Amp Master Mix及び5μLの0.2x遺伝子発現アッセイミックス(アッセイしようとする全プライマー/プローブから構成)を含有した。推奨されるプログラムを用いて14サイクルにわたり反応を繰り返し、次いでTE緩衝液で1:5に希釈した。予め増幅したcDNAをすぐに使用するか又は必要になるまで−20℃で保存した。
【0197】
48x48ダイナミックアレイチップ(Fluidigm)に投入するための試料を調製するために、反応混合液は、2.5μLの2xUniversal Master Mix(Applied Biosystems)、0.25μLのSample Loading Buffer(試料ローディング緩衝液)(Fluidigm Corporation)及び2.25μLの予め増幅したcDNAを含有した。プライマー/プローブを調製するために、反応混合液は、2.5μLの20xTaqman遺伝子発現アッセイ及び2.5μLのAssay Loading Buffer(アッセイローディング緩衝液)(Fluidigm Corporation)を含有した。試料及びアッセイ試薬を注入口に投入する前に、IFC Controllerにおいてチップの準備を行った。記載のように調製した5μLの試料をダイナミックアレイチップの各試料注入口に投入し、5μLの10x遺伝子発現アッセイミックスを各検出器注入口に投入した。投入及び混合のために、チップをIFC Controllerに置いた。およそ1時間後、温度サイクリングのためにチップをBioMark(商標)リアルタイムPCRシステムに投入した(95℃で10分間、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を40サイクル)。試料の反復数及び組成は、特定の実験によって変動したが、三重未満となることはなかった。設計されたプローブの感度及び特異性を決定するために平均Ct値を使用した。試料内の全ての利用可能な参照遺伝子アッセイの平均Ct値をΔCtの計算のために使用した。
【0198】
MessageAmp(商標)Premier RNA増幅キット(Ambion、Austin、TX)を用いて、75ngの総RNAからビオチン標識された増幅cRNAを生成させた。分光光度法でcRNA生成物の純度及び濃度を決定した。Affymetrix Human Genome U133 Plus 2.0 GeneChip(登録商標)アレイにおいてハイブリッド形成のために15μgの各ビオチン標識cRNAを断片化した。全GeneChip(登録商標)洗浄、染色及びスキャン手順をAffymetrixの標準装置により行った。データ捕捉及び最初のアレイ品質評価は、GeneChip Operating Software(GCOS)ツールを用いて行った。全試料にわたりシグナル強度が25未満であるプローブは全て分析から排除した。
【0199】
Affymetrix Human Genome U133 Plus 2.0 GeneChip(登録商標)アレイにおいて、ER+、PR+及びHer2−原発乳房腫瘍のサブセット(n=40)及び対応する正常な隣接乳房組織試料(n=15)のプロファイルを調べた。Fluidigmプラットフォームで分析した2検体の原発乳房試料及び4検体の対応する正常な隣接乳房組織試料は、RNA量が不十分であったためGeneChipによる処理を行わなかった。発明者らのゲノムアレイデータ全体を使用して、luminal−A及びluminal−Bサブタイプに関する乳癌分子サブタイプ分類を行った。
【0200】
推定試料分類を判定するための2種類の方法を実施した。第一の分類方法では、試料サブタイプ分類(正常、基底膜細胞型(basal−like)、HER2、luminal−A又はluminal−B)の目的で、公開されているPAM50−遺伝子収縮重心分類手段(Weigeltら、2010)を用いた。この分析に対してMAS5で正規化したGeneChipデータを使用した(公開されている分類法がこのタイプの規模のデータを用いて確立されてることを考慮して)。スピアマンの順位相関係数(50遺伝子強度ベクター対サブタイプ重心分類法)に従い、試料を分類し、最大相関値を有するサブタイプを特定の試料に割り当てた。第二の方法では、2試料のウェルチt−検定分析によって発現が異なる転写物のパネルを特定するために、GC−RMAで正規化したGeneChipデータを使用した。統計学的分析を行う前に、病理学的評価に基づき試料を2群(正常又は腫瘍)に分けた。教師なし階層型クラスター分析のために、倍単位での変化の差が3超であり、p値が1.0x10−12未満であるプローブ(n=459プローブ)を使用した。転写パネル組成物の関数として、特定されたサブ集団を正常、luminal−A又はluminal−Bとして分類した。
【0201】
B.結果
乳癌におけるIR−A及びIR−B
乳癌、42ER及びPR陽性及びHer2陰性原発乳房組織試料及び19検体の対応する正常隣接乳房組織におけるIR−A及びIR−BのmRNA発現状態を試験した。ランダムヘキサマープライマーによってcDNAを予め増幅し、TaqMan qPCR(Fluidigm)によってIR−A、IR−B及び総インスリン受容体(INSR)転写物の発現レベルについてアッセイした。上述のように5種類のハウスキーピング遺伝子の平均に対して試料を正規化した。結果を図8で示す。正常におけるINSR、IR−A及びIR−Bの平均相対量(RQ)の差(log2ベースのスケール)±95%CIはそれぞれ1.03xl0−8±0.17、−7.37xl0−9±0.24及び3.37xl0−8±0.18(n=19)であった。腫瘍におけるINSR、IR−A及びIR−Bの平均相対量(RQ)の差(log2ベースのスケール)±95%CIは、それぞれ−0.88±0.25、−0.07±0.29及び−2.08±0.25(n=42)であった。ウェルチの両側t−検定分析から、正常乳房組織と比較した場合に、試験した乳房腫瘍セットにおいてINSR及びIR−BのmRNAレベルが有意に低いことが示される(p<0.0001)。あるいは、正常と比較した場合、乳癌におけるIR−AのmRNAレベルで有意差は観察されなかった(p=0.4501)。
【0202】
2(−ΔCt)によって、対応する腫瘍及び正常の対において、総インスリン受容体組成物(即ちIR−A+IR−B)に対するIR−Aの割合を計算した。結果を図9で示す。正常パネルに対する平均IR−A転写物の割合(%)±95%CIは46.60%±4.74%(n=19)であり、一方、対応する腫瘍試料に対する平均IR−A転写物の割合(%)±95%CIは75.24%±5.02であった。対応のある試料t−検定分析から、対応する正常試料と比較した場合、腫瘍試料中のIR−Aの割合の計算値が有意に上昇していることが示された(p<0.0001)。結果から、腫瘍におけるIR−Bレベルの有意な低下が、正常と比較した場合の腫瘍試料におけるIR−Aの割合の全体的な上昇に関与することが示唆される。
【0203】
IR−A及びIR−BのmRNA転写物の比率を評価するために、発明者らは、正常及び原発腫瘍乳房試料におけるIR−A及びIR−BのΔCt差を計算した。正規化のために試料内参照遺伝子(ハウスキーピング)パネル(平均Ct)を使用して、全試料に対してΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)値を計算した。平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは正常の場合0.20±0.23(n=19)であり、原発腫瘍では、平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.81±0.27(n=42)であった。ウェルチの両側t−検定分析により、観察されたIR−A:IR−BΔCtに関して、正常と腫瘍試料との間で有意差が認められた(p<0.0001)(図10)。この結果から、乳房腫瘍においてIR−AのIR−Bに対する比率の有意な上昇が示された。
【0204】
上記の結果をさらに確認するために、発明者らは、さらなる乳癌組織試料におけるIR−A及びIR−BのmRNA発現比率を評価した。15検体の正常乳房組織及び165検体の乳腺癌組織由来のcDNAを含有するPCRアレイを使用した。等量のcDNAを予め増幅し、Taqman qPCR(Fluidigm)によりIR−A、IR−B及びERの発現レベルについてアッセイした。正規化のために試料内参照遺伝子パネル(ACTB、GUSB、GAPDH)を用いて全試料に対してΔCt差(IR−AΔCt−IR−BΔCt)値を計算した。結果を図11で示す。正常組織では平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは0.51±0.37(n=15)であった。平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは、試験した全乳癌にわたり−1.19±0.17(n=165)であった。
【0205】
次に、発明者らは、乳癌試料から、正常乳房組織に対して2倍のエストロゲン受容体過剰発現を示した乳癌試料を分け、それらのIR−A:IR−BΔCt差を正常組織及び全乳癌試料と比較した。結果を図11で示す。ER+乳癌では平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.48±0.39(n=83)であり、これは乳癌データセット全体にわたり観察されたものと非常に近い。ウェルチの両側t−検定分析により、観察されたIR−A:IR−BΔCt差に関して正常と腫瘍試料との間の有意差が認められた(p<0.0001)。
【0206】
乳癌増殖に関与する遺伝子とIR−A:IR−B比の相関
Ki67、STK15、サバイビン、CCNB1、MYBL2は、乳癌増殖に関与する、特徴がよく分かっている遺伝子である。これらの遺伝子の複合発現スコアはOncotype DXで使用されており、多くの患者において乳癌再発に関与する重要な因子となっている。発明者らは、回帰分析及び相関分析を用いて、原発乳癌試料のセットにおいてIR−A:IR−B比と増殖スコアとの関係を調べた。IR−A:IR−BΔCt差の計算値とプールされた増殖マーカーのパネル(AURKA、BIRC5、CCNB1、KI67及びMYBL2)との間の関係を定量するために、線形回帰分析を行った。特定の試料に対して全マーカーにわたる平均ΔCtをとることによって、増殖パネルのサマリー値を計算した。正常及び腫瘍試料の両方に対するサマリーの結果を与える。線形回帰分析の結果から、2つのサマリー値の間の正相関が示唆される(補正r2=0.595)(図12)。IR−ATR−BΔCt差は、増殖スコアとの正相関を示す(図12)。この結果から、腫瘍でのIR−B発現の低下及びIR−A比率発現の上昇がER+PR+及びHer−乳癌において腫瘍増殖に寄与し得ることが示唆される。
【0207】
乳癌サブタイプにおけるIR−A:IR−BΔCt差
乳癌は、分子的変化、細胞組成及び臨床的な転帰に関して不均一な疾患である。固有の遺伝子リストを用いて、階層的クラスター分析によってER陽性乳癌をluminal−A及びluminal−Bサブタイプにさらに分類することができる(Perou CM、2000)。Luminal−A癌は、組織学的に低悪性度であり、ネオアジュバント内分泌療法に感受性がある(Creighton Cら、2008)。一方、luminal−B癌は、組織学的に悪性度が高いことが多く、ネオアジュバント内分泌療法に対する感受性が低く、より短期間で不良転帰となる(Creighton Cら、2008)。Creightonの報告によると、IGF−Iという特徴はluminal−B乳癌で明白であり、この特徴は多くの不良予後因子と高い相関があり、尚且つ疾患転帰の最強の指標の1つである。IR−AアイソフォームはIGFシグナル伝達に関与する重要な成分の1つであるので、発明者らはIR−A:IR−Bの比率の変化がluminal−A及びluminal−B乳癌を比較した際に明白となり得るという仮説を検証した。
【0208】
この疑問に取り組むために、発明者らは、40検体のER+PR+及びHer2−陰性乳癌及び15検体の正常乳房試料に対して全ゲノムアレイ分析を行った。発明者らは最初に、公開されているPAM50−遺伝子収縮重心分類手段(Weigeltら、2010)を利用した。スピアマンの順位相関係数に従い、luminal A又はluminal Bとして試料を分類し、最大相関値を有するサブタイプを特定の試料に割り当てた。次に、正常、luminal−A及びluminal−BにおけるIR−A:IR−BΔCt差を比較した。試料サブタイプ(正常、luminal−A又はluminal−B)に関するIR−A:IR−BΔCt差の計算値の散布図を図13Aで示す。正常において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは0.27±0.30(n=15)であった。luminal−Aに分類された乳癌において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.09±0.34(n=13)であった。luminal−Bに分類された乳癌において平均IR−A:R−BΔCt±95%CIは−2.12±0.34(n=27)であった。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差が示される(2−試料t検定、p<0.001)。この結果から、luminal−B患者におけるIR−A:IR−B比が、luminal−A患者よりも大幅に変化したことが示された。
【0209】
収縮重心分類手段に加えて、発明者らは、2−試料ウェルチt−検定分析によって発現が異なる転写物のパネルを特定するためにGC−RMAで正規化したGeneChipデータを使用した。統計学的分析を行う前に、病理学的評価に基づき、試料を2群(正常又は腫瘍)に分けた。転写物パネル組成の関数として、教師なし階層的クラスター分析によって同定されたサブ集団を、正常、luminal−A又はluminal−Bに分類した。正常、luminal−A及びluminal−BにおけるIR−A:IR−BΔCt差も比較した。この結果を図13Bで示す。正常において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは0.32±0.25(n=15)であった。luminal−Aと予測された乳癌において平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−1.05±0.19(n=18)であった。luminal−Bと予測された乳癌における平均IR−A:IR−BΔCt±95%CIは−2.42±0.32(n=22)であった。全サブタイプのペアワイズ比較から、有意差が示される(2−試料t−検定、p<0.001)。
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Sciaccaら,Oncogene.Nov 28;21(54):8240−50.9,2002。
【0225】
本発明の好ましい態様を参照しながら詳細に上記の開示を提供してきたが、当業者にとって、本開示及び特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得、同等物が使用され得ることは明白であろう。引用される文献は全て、それらの全体が参照により組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成核酸配列が以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項2】
以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸配列:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項3】
配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項4】
配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の合成核酸配列を含む組成物。
【請求項6】
(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列と;
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−A核酸を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【請求項7】
少なくとも1つの合成核酸配列が、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項6に記載のプライマーセット。
【請求項8】
(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で請求項6に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させる工程;
(b)増幅された標的IR−A核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含む、生体試料中のIR−A核酸を検出及び/又は定量するための方法。
【請求項9】
前記生体試料が腫瘍試料から調製される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プライマーセットが、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、請求項8から請求項9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記プライマーセットが、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記プライマーセットが、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列(これは検出可能な標識も有する)と、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プライマーセットが、
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列(これは検出可能な標識も有する)と、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
増幅産物が100塩基未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
合成核酸配列が、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項17】
以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項18】
配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項19】
配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項20】
配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項21】
請求項16から請求項20の何れか1項に記載の合成核酸配列を含む、組成物。
【請求項22】
(a)(i)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列、
(a)(ii)INSR遺伝子のエクソン11(配列番号9)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列、の10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列;
(a)(iii)エクソン10及び11を架橋する塩基、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下でそれともしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列と、
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50塩基(配列番号10)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号10もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【請求項23】
少なくとも1つの前記合成核酸配列が、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項22に記載のプライマーセット。
【請求項24】
(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で請求項22に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製される核酸を接触させる工程;
(b)増幅された標的IR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程
を含む、生体試料中のIR−B核酸を検出及び/又は定量するための方法。
【請求項25】
前記生体試料が腫瘍試料である、請求項24に記載の方法。
[請求項24]
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、請求項24に記載の方法。
[請求項25]
前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;を含み、さらに、
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
増幅産物が100塩基未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させること(該プライマーセットは、請求項6に記載のプライマーセットを含む)及び/又は、ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させること(該プライマーセットは、請求項22に記載のプライマーセットを含む)と、
増幅された標的IR−A又はIR−B核酸配列を検出及び/又は定量することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及び/又は標的IR−B核酸配列の有無を判定するための方法。
【請求項31】
請求項1に記載の少なくとも1つの合成核酸配列と、使用説明書と、を含む、生体試料中のIR−Aの有無を決定するためのキット。
【請求項32】
前記少なくとも1つの合成核酸配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、該配列の1つに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の1つもしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記合成核酸配列が、以下のプライマーセットの中から選択される、請求項31に記載のキット:
(1)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(2)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項34】
適切なPCR試薬と;場合によってはIR−Aの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【請求項35】
請求項16に記載の少なくとも1つの合成核酸配列と、使用説明書と、を含む、生体試料中のIR−Bの有無を決定するためのキット。
【請求項36】
前記合成核酸配列が、配列番号11、配列番号12、該配列の何れかに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の何れかもしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記合成核酸配列が、以下のプライマーセットから選択される、請求項35に記載のキット:
(1)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(2)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する配列番号14;又は
(3)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項38】
適切なPCR試薬と;場合によってはIR−Bの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項39】
請求項8に従い、試料中のIR−A発現を検出及び/又は定量し;
請求項24に従い、試料中のIR−B発現を検出及び/又は定量することを含み、
IR−A及びIR−Bの発現が、IGFI/IIリガンド又はIGF1R受容体アンタゴニストを対象に投与するべきか否かの指標である、IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストに応答する患者を選択するための方法。
【請求項40】
IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストが抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が表1及び表2で挙げられる配列成分を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、生体試料又は生体試料から調製された核酸を請求項6に記載のプライマーセットと接触させることと、
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、生体試料又は生体試料から調製された核酸を請求項22に記載のプライマーセットと接触させることと;
増幅されたIR−A及びIR−B核酸配列を定量することと;
それによって生体試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及び標的IR−B核酸配列の相対的な有無を決定するための方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法によって腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって腫瘍を分類することと、
を含む、腫瘍を分類する方法。
【請求項44】
請求項42に記載の方法によって患者組織中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を判定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって該患者を分類することと、
それによってIGFアンタゴニストに対する患者の相対応答性を予測することと、
を含む、IGFアンタゴニストによる治療に対して患者を選択する方法。
【請求項45】
IR−Aの発現がIR−Bと比較して上昇している、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項42に記載の方法によって組織試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を判定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって患者を分類することと;
該分類に従いIGFアンタゴニストを投与することと、
を含む、IGFアンタゴニストを用いて患者を治療する方法。
【請求項47】
IR−Aの発現がIR−Bと比較して上昇している、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記IGFアンタゴニストが抗体である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、表1及び2で示されるような配列番号45及び53のCDR配列を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体が配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
総インスリン受容体に対するIR−Aの%が46.6%より大きい、請求項45及び請求項47の何れかに記載の方法。
【請求項54】
IRA:IR−BΔΔCtが約0.2未満である、請求項45及び請求項47の何れかに記載の方法。
【請求項55】
IR−Aに対するlog2ベースのスケールでの相対量の差の平均が、約−0.07±0.29であり、IR−Bに対して約−2.08±0.25である、請求項45及び請求項47の何れかに記載の方法。
【請求項56】
請求項42に記載の方法によって乳癌腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、IR−A:IR−B比が閾値よりも低い場合にluminal Bとして乳癌サブタイプを分類することと、を含む、乳癌腫瘍サブタイプを分類する方法。
【請求項57】
IR−A:IR−BΔΔCtを計算することをさらに含み、閾値が、約−1.1から約−2.4の範囲に設定されるIR−A:IR−BΔΔCt値である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
閾値が約−1.4から−2.1の範囲である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
IR−A:IR−BΔΔCtの決定が、サブタイプ分類を決定することにおいて、他の発現プロファイルと組み合わせられ得る、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
請求項42に記載の方法により腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、より高いIR−A:IR−B比が、より高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、を含む、腫瘍に対する増殖スコアを決定する方法。
【請求項61】
IR−A:IR−BΔΔCtを計算することと、より低いIR−A:IR−BΔΔCt値が、より高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項1】
合成核酸配列が以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項2】
以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸配列:
(i)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(ii)配列番号4、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号4もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
(iii)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(iv)配列番号6、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号6もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項3】
配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項4】
配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の合成核酸配列を含む組成物。
【請求項6】
(a)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列と;
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の60塩基(配列番号2)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号2もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−A核酸を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【請求項7】
少なくとも1つの合成核酸配列が、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項6に記載のプライマーセット。
【請求項8】
(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で請求項6に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸を接触させる工程;
(b)増幅された標的IR−A核酸配列を検出及び/又は定量する工程を含む、生体試料中のIR−A核酸を検出及び/又は定量するための方法。
【請求項9】
前記生体試料が腫瘍試料から調製される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プライマーセットが、配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、請求項8から請求項9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記プライマーセットが、配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記プライマーセットが、
配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列(これは検出可能な標識も有する)と、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プライマーセットが、
配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列(これは検出可能な標識も有する)と、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
増幅産物が100塩基未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
合成核酸配列が、以下の配列の何れか1つの少なくとも10から20個の連続ヌクレオチドを含む、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項17】
以下の核酸配列の何れか1つから基本的に構成される合成核酸:
(i)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(ii)配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項18】
配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項19】
配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項20】
配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列から基本的に構成される、合成核酸配列。
【請求項21】
請求項16から請求項20の何れか1項に記載の合成核酸配列を含む、組成物。
【請求項22】
(a)(i)INSR遺伝子のエクソン10の最後の50塩基(配列番号1)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列、
(a)(ii)INSR遺伝子のエクソン11(配列番号9)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号9もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列、の10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列;
(a)(iii)エクソン10及び11を架橋する塩基、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下でそれともしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む、合成核酸配列と、
(b)INSR遺伝子のエクソン12の最初の50塩基(配列番号10)、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号10もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列又はそれに相補的な配列の、10から30個の連続ヌクレオチドを含む合成核酸配列と、
を含む、生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセット。
【請求項23】
少なくとも1つの前記合成核酸配列が、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列
の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項22に記載のプライマーセット。
【請求項24】
(a)ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で請求項22に記載のプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製される核酸を接触させる工程;
(b)増幅された標的IR−B核酸配列を検出及び/又は定量する工程
を含む、生体試料中のIR−B核酸を検出及び/又は定量するための方法。
【請求項25】
前記生体試料が腫瘍試料である、請求項24に記載の方法。
[請求項24]
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、請求項24に記載の方法。
[請求項25]
前記ポリメラーゼによる増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号14、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号14もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と、
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記プライマーセットが、
配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;を含み、さらに、
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
増幅産物が100塩基未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−A核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させること(該プライマーセットは、請求項6に記載のプライマーセットを含む)及び/又は、ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で生体試料中のIR−B核酸配列を検出及び/又は定量するためのプライマーセットと生体試料又は生体試料から調製された核酸の試料を接触させること(該プライマーセットは、請求項22に記載のプライマーセットを含む)と、
増幅された標的IR−A又はIR−B核酸配列を検出及び/又は定量することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及び/又は標的IR−B核酸配列の有無を判定するための方法。
【請求項31】
請求項1に記載の少なくとも1つの合成核酸配列と、使用説明書と、を含む、生体試料中のIR−Aの有無を決定するためのキット。
【請求項32】
前記少なくとも1つの合成核酸配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、該配列の1つに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の1つもしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記合成核酸配列が、以下のプライマーセットの中から選択される、請求項31に記載のキット:
(1)配列番号3、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号3もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号21、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号21もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号7、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号7もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(2)配列番号5、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号5もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;
配列番号22、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号22もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;及び
検出可能な標識も有する、配列番号8、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号8もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項34】
適切なPCR試薬と;場合によってはIR−Aの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【請求項35】
請求項16に記載の少なくとも1つの合成核酸配列と、使用説明書と、を含む、生体試料中のIR−Bの有無を決定するためのキット。
【請求項36】
前記合成核酸配列が、配列番号11、配列番号12、該配列の何れかに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で該配列の何れかもしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列の中から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記合成核酸配列が、以下のプライマーセットから選択される、請求項35に記載のキット:
(1)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する、配列番号13、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号13もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列;又は
(2)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識を有する配列番号14;又は
(3)配列番号11、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号11もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
配列番号12、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号12もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列と;
検出可能な標識も有する、配列番号15、それに相補的な配列又はストリンジェントな条件下で配列番号15もしくはその相補体とハイブリッド形成可能である配列。
【請求項38】
適切なPCR試薬と;場合によってはIR−Bの有無を決定するための陽性及び/又は陰性対照と、をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項39】
請求項8に従い、試料中のIR−A発現を検出及び/又は定量し;
請求項24に従い、試料中のIR−B発現を検出及び/又は定量することを含み、
IR−A及びIR−Bの発現が、IGFI/IIリガンド又はIGF1R受容体アンタゴニストを対象に投与するべきか否かの指標である、IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストに応答する患者を選択するための方法。
【請求項40】
IGFI/IIリガンド又はIGFR1受容体アンタゴニストが抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が表1及び表2で挙げられる配列成分を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、生体試料又は生体試料から調製された核酸を請求項6に記載のプライマーセットと接触させることと、
ポリメラーゼによる増幅に適切な条件下で、生体試料又は生体試料から調製された核酸を請求項22に記載のプライマーセットと接触させることと;
増幅されたIR−A及びIR−B核酸配列を定量することと;
それによって生体試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
を含む、生体試料中の標的IR−A核酸配列及び標的IR−B核酸配列の相対的な有無を決定するための方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法によって腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって腫瘍を分類することと、
を含む、腫瘍を分類する方法。
【請求項44】
請求項42に記載の方法によって患者組織中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を判定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって該患者を分類することと、
それによってIGFアンタゴニストに対する患者の相対応答性を予測することと、
を含む、IGFアンタゴニストによる治療に対して患者を選択する方法。
【請求項45】
IR−Aの発現がIR−Bと比較して上昇している、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項42に記載の方法によって組織試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を判定することと、
IR−A及びIR−Bの相対発現を含む基準によって患者を分類することと;
該分類に従いIGFアンタゴニストを投与することと、
を含む、IGFアンタゴニストを用いて患者を治療する方法。
【請求項47】
IR−Aの発現がIR−Bと比較して上昇している、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記IGFアンタゴニストが抗体である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、配列番号45及び53のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、表1及び2で示されるような配列番号45及び53のCDR配列を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、配列番号45からの3個のCDR及び軽鎖を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体が配列番号53からの3個のCDR及び重鎖を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
総インスリン受容体に対するIR−Aの%が46.6%より大きい、請求項45及び請求項47の何れかに記載の方法。
【請求項54】
IRA:IR−BΔΔCtが約0.2未満である、請求項45及び請求項47の何れかに記載の方法。
【請求項55】
IR−Aに対するlog2ベースのスケールでの相対量の差の平均が、約−0.07±0.29であり、IR−Bに対して約−2.08±0.25である、請求項45及び請求項47の何れかに記載の方法。
【請求項56】
請求項42に記載の方法によって乳癌腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、IR−A:IR−B比が閾値よりも低い場合にluminal Bとして乳癌サブタイプを分類することと、を含む、乳癌腫瘍サブタイプを分類する方法。
【請求項57】
IR−A:IR−BΔΔCtを計算することをさらに含み、閾値が、約−1.1から約−2.4の範囲に設定されるIR−A:IR−BΔΔCt値である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
閾値が約−1.4から−2.1の範囲である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
IR−A:IR−BΔΔCtの決定が、サブタイプ分類を決定することにおいて、他の発現プロファイルと組み合わせられ得る、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
請求項42に記載の方法により腫瘍試料中のIR−Bに対するIR−Aの相対発現を決定することと、より高いIR−A:IR−B比が、より高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、を含む、腫瘍に対する増殖スコアを決定する方法。
【請求項61】
IR−A:IR−BΔΔCtを計算することと、より低いIR−A:IR−BΔΔCt値が、より高い増殖スコアを示す因子であるとみなすことと、を含む、請求項60に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−507144(P2013−507144A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534265(P2012−534265)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/052173
【国際公開番号】WO2011/046871
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/052173
【国際公開番号】WO2011/046871
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【Fターム(参考)】
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