説明

腫瘍動態を評価するための循環変異型DNA

体細胞突然変異を含有するDNAは高度に腫瘍特異的であり、したがって、理論上は、最適なマーカーを提供できる。しかし、循環変異遺伝子フラグメントの数は循環正常DNAフラグメントの数と比較して少なく、有意味な臨床使用のために必要とされる感度でそれらを検出および定量することを困難にしている。本発明者らは、患者の生体サンプル中の循環腫瘍DNA(ctDNA)を定量するために高感度手法を適用する。ctDNAの測定値は、癌を有する患者、特に、手術または化学療法を受けている患者における腫瘍動態を確実にモニタリングするために使用できる。この個別化遺伝子手法は広汎に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国政府による財政的支援を用いてなされた。米国政府は、第CA43460号、第CA62924号、および第CA57345号に記載された条件にしたがって本発明に所定の権利を留保するものである。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、癌の分野に関する。詳細には、本発明は、癌の診断、予後診断、治療薬およびモニタリングに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌は、細胞増殖を制御する遺伝子の連続的変化の結果として発生する。例えば結腸もしくは乳腺の腫瘍などの充実性腫瘍では、平均するとおよそ80個の遺伝子が、実質的にすべての腫瘍細胞中には存在するが正常細胞中には存在しないわずかな突然変異を持っていることが示されている1。このことにより、これらの体細胞突然変異は、高度の特異的バイオマーカーとして機能する潜在力を有している。体細胞突然変異は、理論上では、これまでに記載された任意の他のバイオマーカーより新生物にとってはるかに特異的な指標である。このため現代の癌研究にとっての1つの課題は、体細胞突然変異をツールとして活用して疾患の検出を改善し、かつ最終的には個々の転帰に積極的に影響を及ぼすことである。
【0004】
腫瘍細胞は、進行癌を有する個体の循環においてしばしば見いだすことができる2,3。腫瘍由来の変異型DNAは、癌を有する人々の無細胞血液分画中でも検出できることが示されている4-6。この変異型DNAの大多数は循環腫瘍細胞には由来せず4-6、突然変異の特異性を考慮に入れると、循環変異型DNAフラグメント自体を使用して疾患を追跡できる可能性を生じさせる。しかし、そのような変異型DNAフラグメントを高い信頼性で検出するには課題が多い7。詳細には、循環変異型DNAは全循環DNAのほんの一部分にしか相当せず、時には0.01%未満にしか相当しない8
【0005】
本研究では、本発明者らは、結腸直腸癌を有する被験者から連続的に採取した血漿サンプル中でctDNAを定量するためにBEAMing(Beads, Emulsion, Amplification and Magnetics:ビーズ、エマルジョン、増幅、および磁気学))8,9と呼ばれる技術の修正バージョンを開発した。本発明者らは、そのような測定がこれらの被験者において疾患の経過中の腫瘍量の動態に関する情報を提供できるかどうかを決定することに関心を抱いた。
【0006】
当技術分野においては、患者が癌の再発を経験するか否かをより明確に決定する方法に対して継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの態様によると、腫瘍量をモニタリングするための方法が提供される。癌患者の試験サンプル中でのDNAフラグメントのコピー数が測定される。当該DNAフラグメントは、患者の腫瘍組織中には存在するが正常組織中には存在しない突然変異を有する。コピー数は、患者における腫瘍量の指数である。
【0008】
別の態様によると、DNA分析を実施するための方法が提供される。以下の工程が含まれる:
a.鋳型DNA分析物を第1のプライマーセットおよび第2のネステッドプライマーセットを用いて増幅させる工程であって、該第2のネステッドプライマーセットの第1のメンバーが5'側の配列

を含み、かつ該増幅させる工程が高忠実度DNAポリメラーゼを使用する、工程;
b.水性媒体中で第3のプライマーセットを使用して該増幅鋳型を増幅させる工程であって、該第3のプライマーセットの第1のメンバーが、5'側の配列

を含み、該第3のプライマーセットの第2のメンバーが、5'側の配列

、および

オリゴヌクレオチドでコーティングされたストレプトアビジンビーズを含む、工程;
c.水相としての該水性媒体および油/乳化剤混合物を使用して油中水型エマルジョンを調製する工程;
該ビーズ上で該鋳型を増幅させるために該エマルジョンを熱サイクル処理する工程;
界面活性剤を使用して該エマルジョンを破壊して油相を除去する工程;
d.該ビーズ上の該増幅鋳型と突然変異特異的プローブ、対応する野生型プローブ、ならびに該鋳型の一部分に対して相補的である、該突然変異特異的プローブおよび該対応する野生型プローブとは異なるアンプリコン特異的プローブとの混合物を形成する工程であって、該プローブの各々が蛍光標識され、該プローブの各々が別個の発光スペクトルを有する、工程;
e.該混合物中の該増幅された鋳型を熱変性させ、かつ該プローブを該鋳型にハイブリダイズさせるために該混合物を塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の存在下で冷却する工程;
f.フローサイトメトリーを用いて、該ビーズ上の該増幅鋳型にハイブリダイズした蛍光標識プローブ各々の量を検出するために、該ハイブリダイズした鋳型を分析する工程。
【0009】
本明細書を読めば当業者には明白になるであろうこれらの態様および他の態様は、癌患者の管理およびモニタリングのために有用な方法を当技術分野に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A〜1Cは、ctDNAの測定を示す図である。図1Bは、被験者の腫瘍に由来するDNAの従来型Sangerシークエンシング法を描出しており、本分析の第1工程を提示している。血漿サンプル中の腫瘍由来DNAを定量するための手法は、図1Cに示した。リアルタイムPCRが血漿中のDNAフラグメントの総数を測定するために使用されている一方、BEAMingは、蛍光プローブであるCy5およびCy3で標識された野生型フラグメントに対する突然変異体の比率を測定する。
【図2】図2A〜2Dは、BEAMingから得られた典型的なフローサイトメトリーデータを示す図である。4枚のグラフは、治療中の相違する時点に被験者6(APC G4189T)から入手したデータを例示している。北西四半分のドットおよび南東四半分のドットは、各々野生型および変異型フラグメントに結合したビーズを表す。北東四半分のドットは、野生型および突然変異両方のDNA鋳型を含有していたエマルジョン微液滴中に包含されていた結果として野生型および変異型フラグメント両方に結合したビーズを表す15。各四半分内の数は、測定した各集団についてのビーズの絶対計数を表す。(図2A)術前には、変異型DNAフラグメントの割合は13.4%であった。(図2B)術後(第3日)には、変異型DNAフラグメントの割合は0.015%へ低下した。(図2C)術後(第48日)には、変異型DNAフラグメントの割合は0.11%へ増加し、疾患の再発を示唆した。(図2D)第244日に、被験者は進行性疾患を有し、変異型DNAフラグメントの割合はさらに0.66%へ増加した。
【図3】図3A〜3Bは、ctDNAおよびCEAによって検出される、無再発生存率を示す図である。(図3A)検出可能な術後ctDNAレベルを有する被験者対検出不能な術後ctDNAレベルを有する被験者における無再発生存率の相違(P=0.006、Mantel-Cox対数順位検定による)。(図3B)検出可能な術後CEAレベルを有する被験者対検出不能な術後CEAレベルを有する被験者における無再発生存率の相違(P=0.03、Mantel-Cox対数順位検定による)。
【図4】図4A〜4Cは、個々の試験被験者におけるctDNA、CEAおよびイメージング動態の比較を示す図である。各被験者について、上方、中央、および下方のグラフは、ctDNAレベル、イメージング法によって評価した腫瘍容量、およびCEAレベルを表す。水平の線は正常レベルの上限を表す:ctDNAレベルについてはサンプル1例当たり1個の変異型DNAフラグメント、腫瘍直径については0.0cm、およびCEA存在量については5.0ng/mL-1。図4C:患者8は、S状結腸腺癌および左右両方の肝葉への単発性転移を有していた。この被験者は、S状結腸切除術および左側肝区域切除術を受けた(手術1)。右側の肝転移はそのまま残されたが、被験者は全身性化学療法により治療された(化学療法1)。120日目に、右肝切除術が実施された(手術2)。術後、被験者は4カ月にわたり全身性化学療法により治療された(化学療法2)。図4B:患者11は、S状結腸腺癌および2つの肝転移を有していたので術前に全身性化学療法により治療された(化学療法1)。この被験者は、S状結腸切除術、左肝葉切除術および単発性右側肝病巣のRFA(高周波アブレーション)を受けた(手術1)。2カ月後のイメージング試験は、肝臓での再発を示し、この被験者は右肝切除術を受けた(手術2)。再発の高リスクを考慮して、化学療法が再開始された(化学療法2)。8カ月後に、イメージング法は3つの再発性肝病巣および疑わしい腹腔リンパ節を示した。この被験者はこれらの病変へのRFAおよび腹腔リンパ節の切除術を受けた(手術3)。術後、この被験者は追加の化学療法を受けた(化学療法3);しかしその後のイメージング法で多発性肺転移が明らかになった。図4A:患者5は、本試験への登録時点(第0日)に再発性疾患のために左肝切除術を受けた。左上葉内の疑わしい肺結節を除いて、手術直後に疾患の証拠は見られなかった。15カ月後、疾患再発が認められ、肝臓および肺の両方に病巣が見いだされた。
【図5】図5A〜5Bは、結腸直腸癌を有する患者由来の糞便サンプル中で変異型DNAを検出するためのBEAMingに基づく手法を示す略図である。(図5A)全糞便DNAから出発する、本プロセスにおける段階を示す図である。工程1は、変異型および野生型一本鎖DNA分子の配列特異的捕捉の結果を示している。クエリーされた突然変異部位を含む遺伝子フラグメントをPCRにより増幅した後に、当該DNAをPCR産物内の配列に相補的なオリゴヌクレオチド(球体上のスパイク)に結合した磁性ビーズ(球体)と混合する(工程2)。工程3では、この混合物は油中水型エマルジョン中の数十億個の微小区画に分離される。これらの区画の小さな部分は単一ビーズおよび単一DNA鋳型分子を含有するが、大多数の区画はどちらも含有していない(例えば、中央の空の気泡)。工程4においてこれらのエマルジョンに対してPCRが実施されると、個々のDNAフラグメントはそれらを含有する微小区画内で増幅させられ、ビーズの表面に共有結合するようになる。結果として生じるビーズは、同一DNAフラグメントの何万個ものコピーでコーティングされる。工程5では、ビーズはエマルジョンから回収され、結合した当該DNAの配列が、パネルに示したように対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(ASH)によって判読される(図5B)。(図5B)BEAMingによって磁性マイクロビーズ上で増幅したDNAは、非共有結合DNAストランドを取り除くために最初に変性させる。様々に標識された蛍光プローブは、ビーズに共有結合した相補的標的DNAにハイブリダイズさせる。次にフローサイトメトリーを使用してビーズを個別に計数し、それによって糞便または血漿サンプル中に最初に存在する変異型対野生型フラグメントの比率を決定する。
【図6】図6A〜図6Dは、フローサイトメトリーによって分析したビーズの散布図を示している。正常リンパ球DNA(図6A)または患者4由来の糞便DNA(図6B)を用いたAPC C4132T突然変異についてのBEAMingアッセイ。リンパ球DNAについては分析したビーズの総数(全四半分)は253,723個であり、変異型DNAを含有するビーズはなかった(南西四半分、すなわち第4四半分)。患者4について分析したビーズの総数は192,513個であり、その内747個は突然変異体であった。(図6C)患者12由来の糞便DNAを用いたKRAS G38AについてのBEAMingアッセイを示す図であるが、この患者の腫瘍はこの突然変異を含有していなかった。初期増幅のために使用したDNAポリメラーゼによって導入され、陰性と判定された305,449個の分析したビーズ中に5個の変異型ビーズが存在した。(図6D)腫瘍にKRAS G38Aが含有されていた患者7由来の糞便DNAのアッセイを示す図である。計333,630個のビーズを分析したが、その内685個のビーズが変異型であった。
【図7】図7A〜7Dは、CRCを用いて患者の糞便から単離した正常および変異型DNAの質および量を示す図である。(図7A)実験の設計の略図。糞便DNAは、患者特異的DNA突然変異を含む、サイズの相違するプライマー対を用いて増幅させた。リアルタイムPCRを使用して、各アンプリコンサイズに対して得られた糞便DNAフラグメントの総数を決定した。増幅したフラグメントは、引き続いてBEAMingによって分析され、正常(図7B)および変異型(図7C)DNAフラグメントの総数ならびに糞便中に存在する変異型対正常分子の割合(図7D)が決定された(-●-患者2、-■-患者4、-▲-患者7、-▼-患者14)。
【図8】糞便DNA内の突然変異およびTNMステージを示す図である。水平のバーは変異型DNAのメジアン(中央値)割合を示している。ひげは、各指定のステージについて見いだされた最小値および最大値を表す。
【図9】糞便DNAおよび血漿DNAの増幅のために使用したプライマー。フォワードプライマーおよびリバースプライマーの対(SEQ ID NO:10〜53);Tag 1(SEQ ID NO:54)、Tag 2(SEQ ID NO:55)。
【図10A−1】対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションのためのプローブの配列、SEQ ID NO:56〜154。
【図10A−2】対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションのためのプローブの配列、SEQ ID NO:56〜154。
【図10B】対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションのためのプローブの配列、SEQ ID NO:56〜154。
【図11】フラグメントサイジングのために使用したプライマー、SEQ ID NO:155〜182;Tag 1、SEQ ID NO:183。
【図12】感度の概略。
【図13A】SBEおよびシークエンシングによって決定した腫瘍DNAおよび糞便DNA中の突然変異を示す図である。
【図13B】SBEおよびシークエンシングによって決定した腫瘍DNAおよび糞便DNA中の突然変異を示す図である。
【図14】切除後のctDNAクリアランスを示す図である。y軸は、患者9の血漿中のctDNAのレベルを示している。x軸は、切除からの経過時間を表しており、ゼロは腫瘍切除時点である。半減期を計算するために、Marquardt-Levenbergアルゴリズムに基づいてカーブフィッティング(f(t)=a-λt)を実施したところ、114分間の半減期を得た。
【図15】術前および術後の血漿中の全DNAフラグメントを示す図である。箱ひげ図は、ベースライン時(第0日)、術後(第1日)、退院日(第2〜5日)、および初回フォローアップ時(第13〜56日)にリアルタイムPCRによって推定した、血漿2mL中のDNAフラグメントの総数を示している。
【図16】図16A-1〜図16E-3は、図4に示したデータに加えて、全患者についての分子生物学的、臨床的、および放射線学的データを示す図である。
【図17】同一血漿サンプル中での血漿CEAとctDNAレベルの比較を示す図である。個別クラスタリングについて補正した、CEAおよびctDNAレベルを比較した偏残差プロット(partial residual plot)を示している。この比較には、全患者のCEAおよびctDNA値を使用した。患者内のクラスタリングについて補正した後には、CEAレベルとctDNAレベルとの間に穏当な全相関が見られた(r2=0/2、P<0.001)。
【図18】血漿採取のスケジュールを示す図である。
【図19】評価した18例の結腸直腸癌患者の特徴を列挙した図である。
【図20A】ダイレクトシークエンシングによって分析した26個のアンプリコンを示す図である。フォワードプライマー(SEQ ID NO:184〜235)。リバースプライマー(SEQ ID NO:236〜287)。Tag 1(SEQ ID NO:288)。Tag 2(SEQ ID NO:289)。
【図20B】ダイレクトシークエンシングによって分析した26個のアンプリコンを示す図である。フォワードプライマー(SEQ ID NO:184〜235)。リバースプライマー(SEQ ID NO:236〜287)。Tag 1(SEQ ID NO:288)。Tag 2(SEQ ID NO:289)。
【図21】アンプリコンの各試験のBEAMingのために使用したプライマーを示す図である。フォワードプライマー(SEQ ID NO:290〜305)。リバースプライマー(SEQ ID NO:306〜321)。Tag 1(SEQ ID NO:322)。Tag 2(SEQ ID NO:323)。
【図22A】アンプリコンの各試験のために使用したプローブを示す図である(各々、SEQ ID NO:324〜383)。
【図22B】アンプリコンの各試験のために使用したプローブを示す図である(各々、SEQ ID NO:324〜383)。
【図23】本試験の1つにおける患者の特徴を示す図である。
【図24A】相違する患者についてCEAおよびctDNAレベルを比較した図である。
【図24B】相違する患者についてCEAおよびctDNAレベルを比較した図である。
【図24C】相違する患者についてCEAおよびctDNAレベルを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
結腸直腸癌(CRC)は、米合衆国内の癌関連死の2番目に多い原因である。CRCは、肝臓およびその他の臓器への遠隔転移前の任意の段階で検出された場合、一般には外科的切除によって治癒させることができる。残念なことに約35%の患者は、潜在性もしくは検出可能いずれかのそのような遠隔転移を診断時点に有しており、この疾患からの実質的に全死亡の原因となっている。結腸直腸新生物に対するスクリーニング試験、詳細には大腸内視鏡検査の重要性は、最近数年間における大衆の意識を高める様々な運動において強調されてきた。これはCRC関連死の減少に寄与してきた可能性が高いが、しかし今なお極めて多数の人々が外科的に治癒不能な癌を有すると診断されていることは、この問題に関する現在の努力が不十分であるという事実を証明している。具体的には、大腸内視鏡検査やその他の侵襲性手技を補完することができ、そのような不都合かつ侵襲性の手技を受けることを躊躇する患者に提供することができる非侵襲性試験が、緊急に必要とされている。この必要性は、バーチャル大腸内視鏡検査、血便についての改良されたアッセイ、糞便中の癌細胞もしくはタンパク質についての免疫組織学的試験、および遺伝的もしくはエピジェネティック変化についてのDNAをベースとする試験を含む、早期検出のための新規試験の開発を刺激してきた(Ouyang DL, Chen JJ, Getzenberg RH, Schoen RE. Noninvasive testing for colorectal cancer:a review. Am J Gastroenterol 2005;100:1393-403)。
【0012】
変異型DNA分子は、それらが極めて特異的であるために癌関連バイオマーカーより優れた固有の利点を提供する。突然変異は個別の正常細胞中では低い比率(約10-9〜10-10突然変異/bp/世代)で発生するが、そのような突然変異は全正常DNA中においてこれまでに記載されてきたあらゆる試験(本試験で使用した試験を含む)の検出限界より数桁低い極めて小さな割合に相当する。特異的体細胞突然変異が任意の臨床サンプル中に感知できる量で存在するのは、唯一の状況である:クローン様式で発生する場合、すなわちこの突然変異が特定集団の全細胞中に存在する場合には、結果として新生腫瘍病変が規定される。
【0013】
幾つかの研究は、変異型DNAがCRC患者の糞便、尿、および血液中で検出できることを証明している(Osborn NK, Ahlquist DA. Stool screening for colorectal cancer:molecular approaches. Gastroenterology 2005;128:192-206)。さらに、そのようなアッセイの感度を限定してきた技術的因子は、徐々に克服されつつある。例えば糞便をベースとする試験についての改良には、排便後のDNA安定化(Olson J, Whitney DH, Durkee K, Shuber AP. DNA stabilization is critical for maximizing performance of fecal DNA-based colorectal cancer tests. Diagn Mol Pathol 2005;14:183-91)、PCR阻害因子および細菌DNAの除去、分析のための十分な量のヒトDNAの対費用効果の高い精製(Whitney D, Skoletsky J, Moore K, Boynton K, Kann L, Brand R, Syngal S, Lawson M, Shuber A. Enhanced retrieval of DNA from human fecal samples results in improved performance of colorectal cancer screening test. J Mol Diagn 2004;6:386-95)および評価可能な変異型遺伝子の連続的描出(Kann L, Han J, Ahlquist D, Levin T, Rex D, Whitney D, Markowitz S, Shuber A. Improved marker combination for detection of de novo genetic variation and aberrant DNA in colorectal neoplasia. Clin Chem 2006;52:2299-302)が含まれる。さらに、各鋳型分子を個別にクエリーする、突然変異を検出するためのアッセイが開発されてきたが、これらのアッセイは信号対雑音比を劇的に増加させる。そのような「デジタル」アッセイは、例えば糞便もしくは血漿などの臨床サンプル中のDNAの分析に特に適合するが、それはそのようなサンプル中の変異型DNAフラグメントの数が正常DNAフラグメントを大きく上回るからである。
【0014】
本発明者らは、癌患者における腫瘍量をモニタリングするための方法を開発した。患者における循環腫瘍DNAの検出によって、腫瘍再発に関する予測を立てることができる。この予測に基づいて、治療およびサーベイランスの決定を下すことができる。例えば、将来の再発を予示する循環腫瘍DNAは、追加またはより積極的な療法ならびに追加またはより精巧なイメージングおよびモニタリングを導くことができる。循環DNAは、腫瘍に対して異所性のDNAを意味する。
【0015】
「循環」腫瘍DNAについてモニタリングできるサンプルには、血液および糞便が含まれる。血液サンプルは、例えば、血清もしくは血漿などの血液の1画分であってよい。同様に、糞便は他の成分から分別してDNAを精製することができる。腫瘍サンプルは、身体の他の場所における腫瘍マーカーとして使用できる腫瘍内の体細胞突然変異した遺伝子を同定するために使用される。したがって例えば、腫瘍中の特定の体細胞突然変異は、当技術分野において公知の任意の標準的手段によって同定できる。典型的な手段には、対立遺伝子特異的プローブを使用する腫瘍DNAのダイレクトシークエンシング、対立遺伝子特異的増幅、プライマー伸長などが含まれる。体細胞突然変異が同定されると、身体の他の細胞由来のDNAから腫瘍由来DNAを識別するために身体の他の区画においてそれを使用できる。体細胞突然変異は、同一患者の身体の正常組織中では発生しないことを決定することによって確証される。この方法でモニタリングできる腫瘍のタイプは、実質的に無限である。血液もしくは糞便または他の体液中に細胞および/またはDNAを投じる(shed)任意の腫瘍を使用できる。そのような腫瘍には、結腸直腸腫瘍に加えて、乳腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、胃、脳、頭頸部、リンパ管、卵巣、子宮、骨、血液などの腫瘍が含まれる。
【0016】
試験サンプル中の全DNAは、当技術分野における任意の手段によって決定できる。全DNAを測定するためには多数の手段がある。以下に詳述するように、使用できる1つの方法は、リアルタイムPCRアッセイである。任意の遺伝子または遺伝子セットを増幅させることができる。LINE-1遺伝子ファミリーが使用されたのは、これが高度に繰り返されており、そのため測定に必要とされるのが小さなサンプルであるためである。全DNAは、患者から相違する時点に採取された腫瘍DNAの測定を標準化できるように測定される。全DNA含有量を表示するための1単位としてゲノム当量を使用できるが、他の測定単位も限定されることなく使用できる。
【0017】
サンプル中の異所性腫瘍DNAの量は極めてわずかであるので、高感度の測定手段が望ましい。以下で詳細に記載する測定手段は、エマルジョン中のビーズ上での増幅を利用する。BEAMingと呼ばれるこの測定手段は、結腸直腸癌を有する患者由来の糞便および血漿DNA中での突然変異を検出することができる(図5A〜5B)。BEAMingは、その構成要素であるビーズ、エマルジョン、増幅、および磁気学にちなんで名付けられており、本質的には単一DNA鋳型分子を該鋳型の数万個の正確なコピーを含有する単一ビーズに変換させる(Dressman D, Yan H, Traverso G, Kinzler KW, Vogelstein B. Transforming single DNA molecules into fluorescent magnetic particles for detection and enumeration of genetic variations. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003;100:8817-22;米国特許出願第10/562,840号)。この方法により、同一患者の血漿もしくは糞便由来のDNAから検出できる突然変異の発生頻度を決定すること、ならびに将来において臨床的に適用できるDNAをベースとする試験を設計する際に有用であろう他のパラメーターを調査することが可能になる。他の測定手段も十分に高感度であれば使用できる。患者の腫瘍DNA中で最初に同定される変異型配列は、例えば血液(例、血清もしくは血漿)または糞便などの異所性生体サンプル中でアッセイされる。容易に採取されるサンプルが望ましい。異所性生体サンプルは、患者における特定タイプの腫瘍がその中に排出されるであろうサンプルである。他の生体サンプルには、唾液、気管支肺胞洗浄液、リンパ液、乳汁、涙液、尿、脳脊髄液などを含むことができる。
【0018】
患者の腫瘍DNA中において体細胞突然変異したと同定される配列は、異所性生体サンプル中で特異的に決定される。同様に、患者の他の生体サンプル中で見いだされる対応する配列もまた特異的に決定される。したがって、例えば、遺伝子ABCのヌクレオチドXでの腫瘍突然変異が該腫瘍内のGヌクレオチドおよび他の生体組織内のTヌクレオチドである場合は、遺伝子ABCのヌクレオチドXのGバージョンおよびTバージョンはどちらも異所性生体サンプル中で特異的に測定および定量することができる。これらを評価する1つの手段は、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションプローブを用いる。十分な感度を達成する他の技術も使用できる。
【0019】
変異型配列の数(または変異型配列対非変異型配列の比率)の計算は、任意で総DNA含有量に、例えばゲノム当量に標準化することができる。腫瘍量指数は、試験サンプル中に存在する変異型(腫瘍)DNA分子の数を反映する。サンプル中の非変異型DNA分子の数は、比率を形成するために腫瘍量指数の計算に含めることができる。標準化および/または比率は、専用コンピュータまたは汎用コンピュータまたはヒトの手によって計算することができる。この比率は、紙、磁気記憶媒体、または他のデータ記憶手段上に記録することができる。標準化された数値は、個人の全身における腫瘍量を評価するためのデータポイントである。様々な時点での追加の評価は、増加、減少、または安定性の指標を得るために任意に行うことができる。これらの時点は、手術、化学療法、放射線療法、または他の形態の療法と関連して設定できる。
【0020】
腫瘍切除後、完全に切除された場合は、腫瘍量の劇的な減少が観察される。しかし残存腫瘍が残っている場合は、腫瘍量指数は依然として高いか、または検出可能となる。例えば血液中における異所性DNAの半減期は相当に短いために、この技術を使用すると迅速に手術の結果を評価できる。この手段を用いると、不完全な切除は、2時間後、4時間後、8時間後、12時間後、16時間後、24時間後、2日後、3日後、5日後、7日後、14日後、21日後、28日後、56日後などに検出できる。不完全な腫瘍切除は、モニタリングの増加、追加の手術、追加の化学療法、追加の放射線療法、または治療様式の組み合わせにつながることがある。追加の療法には、用量や頻度の増加、または他の積極的な手段を含むことができる。
【0021】
突然変異を同定できる遺伝子は、患者の腫瘍内で体細胞突然変異を受けている遺伝子である。アッセイの開発を容易にするために、そのような突然変異をしばしば受ける遺伝子を使用できる。これらには、腫瘍抑制因子または癌遺伝子である遺伝子、細胞周期に関係する遺伝子などが含まれる。癌において共通して変異する、使用できる遺伝子のいくつかは、APC、KRAS、TP53、およびPIK3CAである。このリストは、排他的ではない。
【0022】
突然変異を検出する任意の手段を使用できるが、対立遺伝子特異的核酸プローブへのハイブリダイゼーションが有効であることが見いだされている。ハイブリダイゼーション前に、典型的には二本鎖ハイブリダイゼーション試薬が2本の鎖を変性または分離するために加熱され、それらが他方のパートナーへハイブリダイゼーションするのを接近可能および利用可能にする。緩徐な冷却、すなわち少なくとも1℃/秒程度に緩徐、少なくとも0.5℃/秒程度に緩徐、少なくとも0.25℃/秒程度に緩徐、少なくとも0.1℃/秒程度に緩徐、または少なくとも0.05℃/秒程度に緩徐な冷却が有用であることが見いだされている。さらに、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)試薬の存在もまた、特にハイブリダイゼーションのパートナーの一方がビーズに付着させられる場合に有用であることが見いだされている。
【0023】
本発明者らの試験結果は、ctDNAが転移性結腸直腸癌を有する患者における療法の経過を追跡するための前途有望なバイオマーカーであることを証明している。ctDNAは術前の全被験者において検出可能であり、連続血液サンプリングにより、手術切除の程度と相関するctDNAのレベルにおける振幅が明らかになった。術後に検出可能なctDNAを有した被験者は、一般に1年以内に再発した。ctDNAは、この患者コホートにおける現行の標準バイオマーカー(CEA)よりはるかに高信頼性かつ高感度の指標であると思われた。
【0024】
本発明者らの試験は、癌、特に進行腫瘍を有する被験者においてctDNAを検出できることを証明した他の研究者らの試験6と一致している。しかし、そのような以前の試験の大多数は、本試験において評価した被験者の多数において見出された低レベルのctDNAを検出するために十分に高感度の技術を使用していなかった。さらに、本発明者らの手法の極めて重大で際だった特徴の1つは、ctDNAが検出可能か否かを単純に決定するのではなくctDNAのレベルを正確に測定する能力にある。
【0025】
本発明者らの試験の結果は、完全な手術の後にはctDNAレベルが減少し、新規病変が放射線検査により明白になるときには一般に増加するという点で、ctDNAレベルが総全身腫瘍量を反映することを示唆している。しかし、現時点では全身腫瘍量を測定するための独立した方法が存在しないため、ctDNAレベルが全身腫瘍量と正確に比例するかどうかを明確に決定することはできない。放射線写真は不正確であるが、これはイメージングで観察される病巣が生存新生腫瘍細胞、死滅新生腫瘍細胞および様々な量の非新生腫瘍細胞(間質線維芽細胞、炎症細胞、脈管系など)から構成されるためである11。任意の病巣におけるこれらの細胞タイプの比率は不明である。さらに、総計すると全身腫瘍量に大きく寄与する可能性がある数ミリメートルより小さい微小転移病巣は、ポジトロン放出断層撮影法、コンピュータ断層撮影法または磁気共鳴イメージングスキャン法によって検出することはできない。
【0026】
本発明者らの試験で使用した手法は、「個別化ゲノミクス」の1つの形態であると見なすことができる。したがって、この手法は利点と欠点の両方を有する。他のバイオマーカーに比した利点はその特異性にあり、それは、被験者の身体内のどこかに残存腫瘍細胞が存在しない限り、クエリーされた突然変異は決して見いだされないからである。欠点は、各被験者に特異的なマーカーを開発しなければならないことである。これは、予備工程として被験者の腫瘍内での突然変異の同定を必要とする(図1A〜1B)。本発明者らはこの工程をパラフィン包埋組織由来DNAのダイレクトシークエンシングを用いて実施してきたが、これは例えば突然変異ホットスポットをクエリーするマイクロアレイなどのより単純な技術を用いて実施することができよう12,13。第2工程である突然変異特異的プローブの設計および試験もまた、現在の技術開発段階ではやはり多大な時間を必要とする。しかしこれもまた、最も多く見られる突然変異を表すプローブのストックを前もって容易に調製することができるという点で、単純化できよう。この戦略はまた、この手法の様々な用途、すなわち突然変異状態が前もっては公知ではない場合の健常集団における癌スクリーニングにおいて、特に有用である可能性がある。
【0027】
これらをまとめると、本発明者らは、腫瘍動態の尺度として循環腫瘍DNAを使用するための枠組みを提示する。その論理的根拠は、ウイルス核酸が無症候性疾患をモニタリングするために定量的に評価され、そして個々の必要に合わせて療法を調整するために使用される、HIV患者の看護に使用される根拠と同様である。本発明者らは、HIVを有する個人の治療において臨床判断決定に影響を及ぼすのに役立つのと同様に、ctDNAは多数のタイプの癌を非侵襲的にモニタリングするために使用できると想定している。シークエンシング技術が向上するにつれて、実質的にあらゆる癌においてそのような突然変異を同定することが相当に単純になるであろう。実際に、そのような診断用途は、癌ゲノムアトラス(Cancer Genome Atlas)プロジェクトの大きな目標の1つである。
【0028】
上記の開示は、本発明を一般的に説明したものである。本明細書に開示した全ての参考文献は、参照により明示的に組み入れられる。例示する目的でのみ本明細書に提供されており、本発明の範囲を限定することは意図されていない下記の特定の実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができる。
【実施例】
【0029】
実施例1:方法
被験者および試験設計。本試験は、the Johns Hopkins Medical Institutionsの施設内治験審査委員会によって承認された。被験者は、the Johns Hopkins Sidney Kimmel総合癌センターで外科的に治療されている原発性または転移性結腸直腸癌を有する場合に適格であった。2005年10月から2006年7月までの間に、患者31例が結腸直腸癌を有すると診断され、手術の可能性についての術前評価中にスクリーニング検査を受けた。28例の被験者が本試験に参加することに同意したが、これらの内7例は治療の候補者ではないと見なされ、被験者2例はフォローアップ中に死亡し、被験者1例は結腸直腸癌以外の医学的状態を有することが見いだされ、18例の参加者が残った。各被験者は、手術の前後および2007年10月までの彼らの術後経過中の既定間隔中に入手された血漿サンプル中でctDNAを評価する(図18)ことに同意した。本発明者らは、被験者18例から162例の血漿サンプルを予め採取した。ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織が各被験者から入手され、The Johns Hopkins Medical Institutesの外科病理学研究室によって通常の方法を使用して処理された。本発明者らは、臨床評価が完了すると盲験法で腫瘍組織および血漿サンプルの分析を実施した。腫瘍のサイズをコンピュータ断層撮影法を用いて放射線学的に測定し、腫瘍量を推定するためにはcm単位の断面積測定値を使用した。
【0030】
血漿由来DNAの単離および定量。本発明者らは、末梢血をEDTA試験管(Becton Dickinson社)内に採血した。1時間以内に、これらの試験管を820gで10分間にわたり遠心分離にかけた。血漿のアリコート1mLを1.5mLの試験管に移し、16,000gで10分間にわたり遠心し、残っている細胞破片をペレット化した。上清を新しい試験管に移し、-80℃で保存した。QIAamp MinEluteウイルス真空キット(Qiagen社)を製造業者の取扱説明書にしたがって用いて血漿アリコート2mLから全ゲノムDNAを精製した。本発明者らは、以前に記載したように14、ヒトLINE-1定量的リアルタイムPCRアッセイの修正バージョンを用いて血漿から単離した全DNAの量を定量した。詳細は、 に提供されている。
【0031】
腫瘍組織由来DNAの突然変異分析。本発明者らは、パラフィン包埋組織から精製したDNA中の遺伝子4個の突然変異状態を決定した。10μmの切片を作製し、H&Eで染色した。これらの切片から新生腫瘍細胞を獲得するためにはレーザーキャプチャーマイクロダイセクションを使用した。切開した材料はプロテイナーゼK(Invitrogen社)を用いて一晩消化させ、QIAamp Microキット(Qiagen社)を用いてそれからゲノムDNAを精製した。全26種のPCR産物は、ダイレクトシークエンシングによって分析した。DNAの増幅およびシークエンシングに関するさらなる詳細は、実施例6に記した。
【0032】
血漿由来DNAの突然変異分析。本発明者らは、血漿中における各被験者の腫瘍組織のシークエンシングによって同定された少なくとも1つの突然変異をクエリーした。手短には、高忠実度DNAポリメラーゼ(New England BioLabs社)を用いた初回増幅工程のために突然変異を含有する領域を増幅させることのできるプライマーを設計した。この増幅産物をその後のBEAMingアッセイにおける鋳型として使用した。各試験のために使用したプライマーおよびプローブの配列は、実施例6に列挙した。BEAMingの実験の基本的特徴は以前に記載されており15、本試験で使用した修正については実施例6に記載した。血漿2mLから精製したDNAを各BEAMing アッセイのために使用した。各測定は、少なくとも2回繰り返した。
【0033】
本発明者らは、陽性コントロールとして各被験者の腫瘍から精製したDNAを使用した。各アッセイにおいて、癌を有していない被験者由来のDNAを用いて実施した陰性コントロールもまた含めた。クエリーされる突然変異に依存して、これらの陰性コントロールサンプル中の変異特異的プローブに結合したビーズのパーセンテージは、0.0061%〜0.00023%の間で変動した。この割合は、以前に詳細に説明されたように16、初回PCR工程中に高忠実度DNAポリメラーゼによって導入された配列エラーを提示した。実験サンプルにおいて陽性と判定されるためには、変異型フラグメントに結合したビーズの割合が陰性コントロールにおいて見出された割合より高くなければならず、サンプル1例当たりの変異型DNAフラグメントの平均値+1SD(標準偏差)は>1.0でなければならなかった。本発明者らは、BEAMingによって生成されたビーズ集団を各血漿サンプルについて少なくとも2回分析した。
【0034】
癌胎児性抗原の測定。本発明者らは、the Johns Hopkins Medical Institutionsの臨床化学研究検査室でAbbott ARCHITECT i2000機器(Abbott Laboratories社)を用いて2段階化学発光微粒子イムノアッセイによってCEA存在量について分析した。
【0035】
統計的分析。本発明者らは、術後の平均減少率として、ctDNAにおける術後変化をその標準偏差とともに定量した。Studentの対応のないt検定を用いてCEAにおける相対変化をctDNA値と比較した。1標本t検定を用いてベースライン時からの変化を評価した。CEAとctDNAレベルとの間の相関は、患者内クラスタリングを考慮に入れて、線形回帰からの部分残余から計算した。再発は、放射線学的および臨床的所見に基づいて規定した。95%水準での全信頼区間を計算した。計算は、JMP 6.0ソフトウエア(SAS Institute社)およびSigmaPlot 10.0.1(Systat Software社)を使用して実施した。
【0036】
実施例2:ctDNAの測定
BEAMingによる循環変異型ctDNAの定量は、癌を有する被験者における疾患を評価するための個別化手法を提示する。このプロセスにおける第1工程は、被験者の腫瘍における体細胞突然変異の同定である(図1A〜1B)。図19は、本試験で評価された結腸直腸癌を有する被験者の特徴を列挙している。4種の遺伝子を被験者18例由来の腫瘍におけるダイレクトシークエンシングによって評価すると、腫瘍の各々は少なくとも1つの突然変異を有することが見いだされた(図20)。
【0037】
本プロセスにおける第2工程は、リアルタイムPCRによる血漿中のDNAフラグメントの総数の推定である(図1A〜1C)。術前(第0日)には、上述した被験者18例における血漿1mL当たりメジアン4,000個のフラグメントが存在した(第10〜第90パーセンタイルの範囲、DNAフラグメント1,810〜12,639個/mL-1)。
【0038】
第3の最終工程は、クエリーした突然変異を含有する所定遺伝子のDNAフラグメントの割合の決定である。そのような変異型DNAフラグメントは、循環中の全DNAフラグメントの小さな割合にしか相当しないと予想される。そのような希少な腫瘍由来DNAフラグメントを検出するために必要とされる高感度を達成するために、本発明者らは、BEAMingの改良バージョンを開発した(実施例6に詳述した)。これらの改良により、高い信号対雑音比が達成され、同一条件下での単純なハイブリダイゼーションプローブによって多数の様々な突然変異の検出が可能になった。本発明者らは、被験者18例に対して少なくとも1つの、28種のアッセイを設計することを試みて、各場合において成功が得られた。本試験で評価した95例の陽性サンプル中の変異型DNAフラグメントのメジアンパーセンテージは0.18%(範囲:第10〜第90パーセンタイル、0.005〜11.7%)であった。代表的被験者から連続的に採取した血漿からの典型的アッセイの実施例は、図2A〜2Dに示した。
【0039】
分析した血漿量中の遺伝子のDNAフラグメントの総数(リアルタイムPCRによって決定する)に変異型フラグメントの割合(BEAMingによって決定する)を掛けると、その血漿量中の変異型フラグメントの数(ctDNA数)が得られる(図1C)。本試験で評価した95例の陽性サンプル中の変異型DNAフラグメントのメジアン数は39個(範囲:第10〜第90パーセンタイル、1.3〜1,833.0個)であった。
【0040】
これらのアッセイの正確度を同一被験者における2種の相違する遺伝子に由来する変異型DNAフラグメントの数の測定によって評価した。本発明者らは、試験被験者9例に由来する43例のサンプル中で2種の相違する遺伝子における突然変異をアッセイすることができた。2種の変異遺伝子に対応するctDNAレベルは、顕著に類似することが見いだされた(相関係数R2=0.95、図14)。
【0041】
実施例3:療法を受けている癌を有する被験者におけるctDNAの動態
本発明者らは、本試験の経過中に計22例の手術後に被験者18例を評価した(図19)。術前(第0日)に決定したctDNAレベルは、サンプル1例当たり1.3〜23,000個の変異鋳型の範囲内で大きく変動した(サンプル1例当たりメジアン99個の変異鋳型;範囲:第10〜第90パーセンタイル、3〜2,837個)。これらの手術中17例は全顕性腫瘍組織の完全切除を含んでいたが、5例は不完全切除であった。完全切除を受けた全被験者では退院日(手術から2〜10日後)までのctDNAレベルにおける急落が観察され、これはctDNAにおける99.0%のメジアン減少(範囲:第10〜第90パーセンタイル、58.9〜99.8%;図24A〜24C)であった。この減少は手術の24時間後に既に明白であった(96.7%のメジアン減少、範囲:第10〜第90パーセンタイル、31.4〜100.0%)。完全切除後の初期の複数回の時点に血漿がサンプリングされた被験者の評価を通して、本発明者らは、術後のctDNAの半減期が114分間であると推定した(図15)。
【0042】
不完全切除であった5症例では、ctDNAにおける変化は極めて相違していた。これらの症例中2例では、変異型フラグメントの数は24時間後にわずかのみ減少したが(55〜56%)、残り3例では、数は実際的に増加した(141%、329%および794%)。この増加はおそらく、その後のDNAの遊離を伴う、外科手技中の残存腫瘍組織の傷害に起因した。外科的に誘発された組織傷害は血漿中のDNAの総量(変異型+正常)が全被験者において手術直後に増加したという観察所見と一致している(図16A-1〜16E-3)。
【0043】
ctDNAの量は術後には減少したが、大多数の症例において検出不能なレベルへは減少しなかった。血漿サンプルは、20例において初回フォローアップ来院時、手術13〜56日後に入手できた。ctDNAはこれらの20例中16例では依然として検出可能であり、これら16例中の1例を除く全例で再発が発生した(図24A〜24C)。極めて対照的に、初回フォローアップ来院時にctDNAが検出不能であった被験者4例では再発は発生しなかった(図24A〜24C)。初回フォローアップ時に検出不能なctDNAを有する、および有さない被験者間の再発率の相違は統計的有意であった(P=0.006、Mantel-Cox対数順位検定による、図3a)。
【0044】
被験者2例に関する臨床データおよび放射線学データを含むctDNAの代表的な時間経過は図4B〜4Cに提供し、その他全被験者に関する類似のデータは図17に示した。被験者8および11は本試験中に2回以上の外科手技を受けたので、腫瘍量の反復制御操作後のctDNAにおける変化を評価するために特別の機会を提供した。これらの被験者はどちらも初回手術における切除が不完全であり、彼らのctDNAレベルは減少しなかった(図4B〜4C)。彼らは第2回手術において完全切除を受け、その後にctDNA存在量は急激に減少した。ctDNA存在量はその後、次の数カ月間にわたってより高レベルに上昇した(図4B〜4C)。
【0045】
本発明者らのコホート中の11例の被験者は、本試験の経過中に化学療法を受けた。これらの被験者中3例では、ctDNAレベルは治療中に下降した。1つの例は被験者8によって提供される:ctDNAは99.9%より大きく減少したが、腫瘍容積(間質細胞に加えて生存および死滅新生腫瘍細胞から構成された)はほんのわずかしか減少しなかった(図4A〜4C)。被験者6例では、被験者8および11における初回化学療法後(図4A〜4C)ならびに被験者1、4、10、および12(図17)において明らかであるように、化学療法の中止直後にctDNAの上昇が生じた。
【0046】
実施例4:癌胎児性抗原との比較
癌胎児性抗原(CEA)は、結腸直腸癌を有する被験者において疾患を追跡するための標準バイオマーカーであり、この疾患の管理において通常使用されている10。試験登録前には、被験者18例中10例だけが>5ng/mL-1(正常範囲の限界値)のCEAレベルを有していた(図23)。2つのアッセイ(ctDNA対CEA)間の感度におけるこの相違は、統計的有意であった;各々56%対100%(P=0.008、McNemar検定)。さらに、術前に陽性CEAレベルを有していた被験者においてさえ、完全腫瘍切除はctDNAを用いて観察されたより少ない有意なCEAの減少を生じさせた(各々ctDNA対CEAにおける99.0%対32.5%のメジアン減少;P<0.001、Studentのt検定)。患者内のクラスタリングについて補正後には、CEA存在量とctDNAレベルとの間に穏当な全相関が見られた(r2=0.20、P<0.001、図17)。最後に、第24〜48日の初回術後フォローアップ来院時に測定すると、CEAレベルが再発疾患を予測する能力はctDNAレベルの能力ほど顕著ではなかった(P=0.03、Mantel-Cox対数順位検定による、図3b)。
【0047】
実施例5:試験設計および臨床サンプルの採取
本試験のために、以前の試験を通して獲得されていた、結腸直腸癌を有する被験者由来の標本を評価した7。被験者は、家族歴によって決定されるCRCに対する平均リスク状態にあり、いずれのタイプの癌についても個人歴は有していなかった。非特異的腹部症状または皮膚の基底細胞癌もしくは扁平上皮癌の病歴を有する患者は除外しなかった。糞便および血液標本は大腸内視鏡検査の6〜12日後およびその後の手術のための任意の腸管前処置の前に採取した。本試験には、以前に同定された癌症例40例中25例を含めたが7、これは15症例が不適正な量の残留物を有していたからである。患者の特徴は、表1に要約した:患者中7例はステージI、7例はステージII、8例はステージIII、2例はステージIVそして1例はステージ未確定の癌を有していた。血液サンプルは、患者25例中16例からEDTAを含むBD Vacutainer試験管(Becton Dickinson社、米合衆国ニュージャージー州フランクリンレイクス(Franklin Lakes, NJ USA))中に採血した。血漿は、1380gでの30分間にわたる血液の遠心分離によって調製した。上清を新しい試験管に移し、再遠心した。遠心分離後、血漿は、残留している細胞破片を除去するためにMillipore Ultrafree-MC 0.45μフィルターデバイス(Millipore社、米合衆国マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,MA,USA))へ移した。フィルターデバイスに1,380gで15分間にわたる遠心分離にかけた。透明になった血漿を新規試験管に移し、処理するまで-20℃で保管した。
【0048】
腫瘍組織中での突然変異の同定
以前に報告されたように、外科的切除後に得られた組織を突然変異分析のために使用した5,4。手短には、急速冷凍またはパラフィン包埋した顕微解剖腫瘍組織は、QIAamp DNAミニキット(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア(Valencia,CA))を用いて腫瘍DNAを単離するために使用した。全DNAサンプルは、一塩基伸長(SBE)アッセイを用いて、そしてPIK3CAのエクソン9および20、CTNNBlのエクソン3、ならびにAPCのエクソン15についてのシークエンシング手法を用いて、APC、TP53、およびKRASにおける22の共通突然変異を分析した。シークエンシングは、4つの別個のシークエンシング反応において各々がR110標識AcyloTerminatorヌクレオチド(PerkinElmer社)ならびにThermoSequenase(GE社)およびAcycloPol(PerkinElmer社)の混合物を含有する一本鎖DNA鋳型を使用して実施した。結合した2つのマーカーパネルは、本試験のために入手できる24例の腫瘍サンプル中での少なくとも1つの突然変異を同定することができた(表2)。SBEおよびシークエンシングの感度は、各々75%(18/24)および79%(19/24)であった(図13)。
【0049】
糞便DNAの単離および定量
標的遺伝子に富んでいるヒトDNA(APC、TP53、KRAS、およびPIK3CA)は、可逆的電気泳動捕捉親和性プロトコル(RECAP)8を使用して全糞便DNAから精製した。
【0050】
各糞便サンプルから回収した遺伝子フラグメントのコピー数は、iCycler(商標)IQリアルタイムPCR検出システム(Biorad社、米合衆国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules,CA,USA))を用いて定量した。2つずつの反応液(50μL)は、5μLのDNA、10×PCRバッファー(Takara Bio社;米合衆国ワイオミング州マディソン(Madison,WI,USA))、0.2mMのdNTP(Promega社、米合衆国ワイオミング州マディソン(Madison,WI,USA))、0.5μMの配列特異的プライマー(要請に応じて入手できる配列)および2.5単位のLATaq DNAポリメラーゼ(Takara Minis Bio社、米合衆国ワイオミング州マディソン(Madison,WI,USA))から構成された。PCRパラメーターは、変性のためには95℃で3.5分間、その後に40サイクルの95℃で1分間、55℃で1分間、および72℃で1分間であった。
【0051】
血漿DNAのDNA単離および定量
DNAは、QIAamp MinEluteウイルス真空キット(Qiagen社)を製造業者が推奨するとおりに使用して2mLの血漿から精製した。DNAは、EBバッファー(Qiagen社)中に溶出させ、-20℃で保存した。以前に記載したように9、血漿から単離した全DNAの量は、ヒトLINE-1定量的リアルタイムPCRアッセイの修正バージョンを用いて定量した。詳細は、実施例6に記した。
【0052】
BEAMingによる突然変異分析
血漿および糞便DNAをBEAMingによって体細胞突然変異について分析した。総計すると、33種の相違する突然変異分析のために18の増幅プライマーセットを設計した。各糞便サンプルについて、計30,000のゲノム当量を分析した。1ゲノム当量は3.3pgのゲノムDNAであると規定され、半数体細胞中に存在するDNA量と同等である。2mLの血漿から精製されたDNAに対応する量を各BEAMingアッセイのために使用した。初回増幅は、各々が250μLの血漿と同等の鋳型DNAまたは糞便DNAの3,750ゲノム当量を含有する、複数の50μLのPCR反応液中で実施した。各反応は、5×Phusion高忠実度バッファー、1.5単位のHotstart Phusionポリメラーゼ(どちらもNEB社)、0.2μMの各プライマー、0.25mMの各dNTP、および0.5mMのMgCl2から構成された。ネステッドPCR反応は、選択した標的領域のために実施した;第2回増幅のためには、2μLの初回PCRを、相違するプライマーを使用した以外は上記に記載したものと同一の構成の20μLのPCR反応液に加えた。プライマー配列およびサイクリング条件は図9に列挙した。PCR産物をプールし、希釈し、PicoGreen dsDNAアッセイ(Invitrogen社)を使用して定量した。BEAMing方法については以前に記載されており10、本試験において使用した修正については本明細書に記載した。
【0053】
高スループットオートサンプラーを装備したLSR IIフローサイトメトリーシステム(BD Bioscience社)を各ビーズ集団の分析のために使用した。平均すると、5×106個のビーズを各血漿サンプルについて分析した。フローサイトメトリーデータをゲートしたので、分析のためには伸長産物(コントロールプローブによって指示される)を備える単一ビーズだけを使用した。突然変異頻度は変異型配列に付着したゲートビーズの数を、変異型もしくは野生型配列のいずれかを含有するビーズの数で割ることによって計算した。アッセイを陽性であると判定するためには、2つの基準を満たさなければならなかった。第一に、変異型ビーズの割合は、増幅中に発生するポリメラーゼエラーから発生するバックグラウンドより高くなければならなかった。本発明者らは、Poison分布を使用して、正常リンパ球DNAに由来するDNA鋳型を用いて観察されるバックグラウンドにおいて予測される変動を推定した。「陽性」アッセイは、割合が0.01%より高かったアッセイとして判定された。第2の基準は、分析のために使用した鋳型中の変異型配列の算定数が≧1でなければならないというものであった。例えば、サンプル中で1,000ゲノム当量しか分析されなかった場合、それでも変異型配列に結合したビーズの算定割合は0.05%(2,000個中1個)であったが、このサンプルは、変異鋳型分子の数は1未満である0.5(0.05%×1,000)に過ぎなかったので陰性と判定された。
【0054】
BEAMingによる体細胞突然変異の検出
本発明者らは、APC(20)、KRAS(4)、PIK3CA(4)、またはTP53(5)のいずれかにおける33種の相違する塩基変化を検出するためのBEAMingの性能を評価した。BEAMing法は、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(ASH)手法がビーズ結合DNAの分析のために開発されたという重要な相違以外は以前に記載されたとおりに実施した(図1A〜1C)。ハイブリダイゼーションは、固定化した野生型もしくは変異型DNA配列に相補的な、等モル濃度の蛍光標識オリゴヌクレオチドを用いて実施した。全33種の塩基変化についての最適対立遺伝子識別には、初期変性工程、その後の塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)をベースとするバッファー中での緩徐な冷却プロセス11によって達した。本発明者らが評価することを試みた全突然変異(1〜5bpの範囲内の転位、塩基転換、挿入または欠失)は、この単一TMACに基づくハイブリダイゼーション法を使用すると、高い信号対騒音比で上首尾で検出された。
【0055】
BEAMingによって生成されたビーズに適用されたASHの例は、図6に示した。陽性コントロールDNA集団は、中心に突然変異を伴う、ゲノム配列を表す長いオリゴヌクレオチドを使用して調製した。陰性コントロールは、健常ドナーのリンパ球から単離したDNAから調製した。ポリメラーゼは完全にエラーがないわけではないので、初期増幅工程中に導入された突然変異は、変異型DNA鋳型がサンプルDNA中に存在しない場合でさえ変異型DNA配列を備える少数のビーズを作り出す12。本試験では、試験したあらゆる市販されている酵素の中で最低エラー率を有することが証明されていたので、Phusion DNAポリメラーゼ(NEB)を使用した12。このバックグラウンドは、本試験において分析された各突然変異について個別に決定した。正常リンパ球DNAにおけるポリメラーゼエラーから起こる突然変異のメジアンバックグラウンドは、0.0009%(範囲:0.01%〜0.00013%)であった。バックグラウンド率における変動は遺伝子間および遺伝子内で観察されたが、これはおそらくポリメラーゼエラーの非ランダムの性質を反映している。したがって、所定のサンプルについてのアッセイは、突然変異の割合が保存的および統計的有意な境界によってバックグラウンドより高かった場合にのみ「突然変異について陽性」であると判定された(方法の項を参照)。さらに、サンプルは、変異型配列に結合したビーズの算定数が、方法の項においてより詳細に説明するように、本アッセイで使用したゲノム当量によって規定される閾値より高かった場合にのみ陽性と判定された。
【0056】
糞便から精製したDNAの量および質
BEAMingは変異型DNA鋳型を検出するためだけではなくそれらの存在量を精密に定量するためにも使用できるので、CRC患者の糞便中に存在する無細胞変異型および正常DNAの量および質の両方を決定するために使用できた。このため本発明者らは、CRC患者の糞便中に存在する変異型DNAフラグメントのサイズを分析することによって本試験を開始した。このために、6つのPCRプライマーセットは、局所性結腸直腸癌を有する患者4例において見出された様々なAPC突然変異を含むDNAフラグメントの増幅のために設計された。患者中2例はステージIの癌を有し、2例はステージIIの癌を有していた(図11)。これらのプライマーを用いて得られたアンプリコンのサイズは104bp〜1,197bpの間で変動し、突然変異は各アンプリコンの中央に位置した(図7A)。各アッセイにおいて等質量(181mg)の糞便から精製したDNAを使用した。変異型もしくは正常鋳型分子の数は、変異型もしくは正常DNA配列に結合したビーズの各割合に定量的リアルタイムPCRによって測定したDNA濃度を掛けることによって計算した。全4例の患者において、増幅可能な正常DNAフラグメントの数は、アンプリコンのサイズが増加するにつれて減少した。患者2では、この減少は3倍に過ぎなかったが、他の3例の患者ではこの減少は1,000倍までとより激しかった(図7B)。変異型DNAフラグメントはサイズとともに、類似ではあるが同一ではない方法で減少した(図7C)。結果として、変異型DNAフラグメントの割合は最小アンプリコン中で最高であった(図7D);患者4および14では、最大アンプリコンサイズ(1200bp)が使用された場合には変異型DNAフラグメントを検出できなかった。これらの知見は、糞便DNA中の突然変異についての試験の感度が小さなアンプリコンを使用することによって最適化できることを示唆した点で重要であった。この結果に基づいて、本試験のその後の段階で使用した全BEAMingアッセイは、可能である場合は必ず約100bpの、そして決して126bpを超えないアンプリコンを用いて実施した(図9)。
【0057】
BEAMingによる糞便DNA中の突然変異の検出
本試験に含まれた患者25例の臨床病理学的特徴を表1にまとめた。
【0058】
(表1)患者の特徴

【0059】
腫瘍のサイズは12〜80mmの範囲内で、平均サイズは41mm(メジアン40mm)であった。14例(56%)の患者は初期(第IまたはII期)、10例(40%)は後期(第IIIまたはIV期)にあり、患者1例のステージは不明であった。上記に略述したように、腫瘍組織を入手できた患者24例中、全例が原発性腫瘍中に少なくとも1つの突然変異を有していた(図13)。組織を入手できなかった患者25については、SBEアッセイによって糞便DNA中で2つの突然変異が同定された(図13)。
【0060】
45例のBEAMingアッセイは、これらのサンプル中での33種の相違する突然変異を評価するために実施した(患者13例は別の患者において見出された少なくとも1つの突然変異を有していた;表2)。患者25例中、23例(92%、CI:74%、99%)は、彼らの糞便サンプル中で検出可能なレベルの変異型DNAを有していた。突然変異は、後期癌(第III期および第IV期)を有する患者におけるように、初期結腸直腸癌(ステージIおよびステージII)において容易に検出された(図12)。興味深いことに、変異型DNAフラグメントを糞便中で検出できなかった患者2例中1例では、正常DNAの量が極めて高かった(患者5)。
【0061】
糞便サンプル中に存在する変異型DNAのメジアン割合は0.32%であったが、広く変動した(範囲、0.0062%〜21.1%;表2)。
【0062】
(表2)

【0063】
2つの突然変異を同一糞便サンプル中で評価できた症例の大多数では、変異型DNA分子の割合は類似であった。しかし4症例(患者7、8、20および25)では、別の遺伝子中の変異型DNAフラグメントと比較して1つの遺伝子由来の変異型DNAフラグメントの割合における5倍を超える相違が存在した。
【0064】
別の重要な観察は、糞便サンプル中の変異型DNAフラグメントのメジアン割合が患者の腫瘍のステージを超えて統計的有意には変動しなかったことであった;ステージI、ステージII、ステージIII、およびステージIV各々について0.83%、0.31%、0.20%、および0.62%(図8)。
【0065】
最後に、これらの糞便サンプル中でのBEAMingアッセイの結果を以前に入手したサンプルと、修正シークエンシング手法5および一塩基伸長法(SBE)7を使用して比較することは興味深かった(図13)。本試験で評価した患者25例中、結合したこれらのアッセイは患者15例(分析した25例中で60%)中でしか少なくとも1つの突然変異を検出できなかったが、BEAMingは23例(同一患者25例の92%)で検出した。この相違は、統計的有意であった(表2、p=0.008、精密McNemar検定)。APC、TP53、およびKRASにおける22の特異的突然変異を評価する市販されているDNA試験の構成要素を含むSBEアッセイは単独で、シークエンシングをベースとするアッセイとほぼ同様に機能した(60%(12/20)対56%(10/18))。本発明者らのデータはさらに、BEAMingと比較してSBEおよびシークエンシング試験の感度が低いことについての潜在的根拠も解明した。これらの試験では検出されなかった突然変異は、分析したフラグメントの0.11%±3.0%を構成した。これとは対照的に、SBEまたはシークエンシングを用いて検出可能であった突然変異は、9倍以上豊富であった(メジアン1.0%±5.0%)。
【0066】
BEAMingによる糞便DNAおよび血漿DNA中の突然変異の検出
血液および血漿の16対の適合サンプルを分析のために入手できた。各サンプルについて、患者の腫瘍内で見いだされた突然変異の1つを分析のために選択した。表2において認められるように、これらの患者16例中14例(87.5%)は、検出可能なレベルで突然変異を含有していた。変異型DNAフラグメントは血漿サンプルの小さな比率で見いだされた(16例中8例[50%];血漿および糞便アッセイにおける陽性患者の数間の相違についてのp値は、精密McNemar検定によると0.07であった)。両方の試験について陰性であったのは患者1例(患者5)だけで、患者1例は陰性糞便試験結果を有したが、血漿試験結果は陽性であった(患者16)。陽性と判定された患者では、変異型DNAのメジアン割合は糞便(0.37%)および血漿(0.42%)中で類似であった。
【0067】
以前の多数の試験が糞便DNA中の突然変異の存在について報告しているが、本試験は、それらを初めて高度の感度および定量的方法で分析した。同様に、他の刊行物は血漿または血清中での遺伝子変化の同定について報告しているが、同一技術を使用して循環DNAについて得られた結果を糞便DNAについて得られた結果と比較したものはなかった。本明細書に報告した比較および定量は、将来結腸直腸腫瘍のための高感度かつ特異的な非侵襲性スクリーニング試験の開発を誘導するために重要である。
【0068】
糞便DNAの定量的分析は、この分野における今後の研究のために重要な幾つかの問題を浮き彫りにした。第一に、アンプリコンが小さい場合、最適には100bp未満である場合に最高感度が実現された(図7A〜7D)。これは明白に、インサイチューでアポトーシスもしくは壊死を受ける癌細胞、またはそれらが糞便流内に放出された後のいずれかに発生するDNA分解に起因する。血漿中では、DNA変異検出についての類似のサイズ依存性が記載されている13。この観察は、結腸直腸のマーカーとしてDNA完全性の増加を使用できることを証明している試験14とは矛盾しないことに留意されたい。癌患者の糞便中に存在する変異型DNAは全DNAのほんのわずかな割合(メジアン0.32%;平均1.89%)を表すので、このため全(変異型+正常)DNAの完全性の測定にはほとんど影響を及ぼさない。癌患者において観察されるDNA完全性の増加は、腫瘍環境内の正常細胞から糞便流内へのより大きなDNAフラグメントの遊離によって誘発される可能性が極めて高い。実際に、最近の試験結果は、癌は、正常配列の相当に大きなDNAフラグメントに帰すことができると考えられる特定タイプの炎症細胞で通常は浸潤されることを証明している15
【0069】
第二に、本試験の結果は、BEAMingによって提供される感度を実現するために入手しなければならないDNA鋳型分子の数が極めて少ないことを明白にしている。分析される突然変異のいずれかについてのBEAMingの感度は、少なくとも1つの変異鋳型を10,000個の正常鋳型から検出できる(0.01%)ほどの感度である。一部の突然変異に対しては、感度は800,000個の正常鋳型間で1個の変異鋳型(0.0013%)というほど高い。この感度は、初回増幅で使用されるポリメラーゼのエラー率によってのみ限定される12。この高い技術的感度を利用するには、実際には適正数のDNA鋳型を必要とする。例えば、1アッセイ当たり2,000個の鋳型しか使用されない場合は、達成できる最高感度は0.01%ではなく0.05%である。この数の鋳型を入手することは糞便サンプルを用いた場合は問題ではないが、血漿については問題となることが多い。本試験では、2mLの血漿はメジアン4,590のDNAのゲノム当量を含有していた。これは、血漿をベースとするアッセイ(60%)が同一患者における糞便をベースとするアッセイ(88%)より感度が低かった理由である可能性がある。血漿から30,000個(糞便をベースとするアッセイで使用された数)のゲノム当量を通常の方法で入手するためには、50mLの血液が必要となるであろう。これは将来のプロスペクティブ試験では実行可能かも知れないが、本発明者らの試験などのレトロスペクティブ試験では入手できる可能性が低い。
【0070】
糞便はDNAのほぼ無制限の供給を提供するが、アッセイ結果に影響を及ぼす他の技術的問題がある。例えば、糞便は様々なPCR阻害因子および極めて過剰の細菌DNAを含有しているので、ヒトゲノムDNAの配列特異的捕捉を不可欠にする。そのような捕捉のための対費用効果の高い方法は開発されており、本試験において使用された。しかしそれらの方法は関心対象の突然変異を含有する小さなDNAフラグメントを単離するためには未だ最適化されていない。図7A〜7Dに示したように、特異的遺伝子領域に対応する正常および変異型DNAフラグメントのサイズは、必ずしも同一ではない。サイズの関数としての変異型フラグメントの割合は、患者特異的方法での特定突然変異に伴って変動する可能性が高いが、これは正常DNAの起源ならびに腫瘍DNAフラグメントの変性の程度の両方に左右されるからである。この問題は、2つの方法で本発明者らの試験結果に影響を及ぼした可能性がある。第一に、一部の被験者(例えば、表2における患者7)における2つの相違する遺伝子内で観察された変異型フラグメントの割合間の広汎な変動の原因となったであろう。第二に、本発明者らが一部の患者において突然変異を検出できなかった理由を説明してくれるであろう。例えば、これらの2例の患者中1例(患者5)は、糞便中の極めて多数の正常フラグメントを有しており、これは任意の他の患者の正常フラグメントの2倍を超えていた。捕捉プローブの最適化は、将来において感度を本試験で得られた92%より上に増加させることができよう。
【0071】
新規の結果はさらにまた、初期検出のための糞便対血漿の相対的利点および欠点に関する考察も与えてくれる。上述したように、血漿より糞便からの方が十分量のDNAを入手することが容易である。しかし、血漿は通常の来院中に入手できるので実際的観点からは採取するのがより便宜的であり、糞便よりも血漿からの方がDNAを精製するのが容易である。結腸直腸癌患者由来の血漿中で突然変異を検出する感度(50%)は糞便中におけるより低いが、これはおそらく各アッセイにおいてより多くの血漿を使用することによって増加させることができよう。しかし血漿と比較して糞便の最大の利点は、様々なステージの腫瘍を有する患者の糞便中で観察された突然変異の相対的割合にある。図8および12に示したように、早期患者の糞便中における突然変異の割合は、後期患者と同様に高かった。これとは対照的に、本発明者らの以前の試験は、早期患者の血漿中の突然変異の割合は後期患者より相当に低いことを証明している(本試験では、陽性血漿サンプルを有する患者数が少数であったために明白ではない)13。さらに、この状態は大きな腺腫を有する患者においてはいっそう顕著である可能性が高いが、それは変異型DNAはこれらの良性であるが臨床的に重要な新生腫瘍を有する患者の糞便中におけるより血漿中で検出することがはるかに困難であるからである。
【0072】
本発明者らの試験は現在市販で利用できるよりも高い感度および定量的アッセイの臨床的実行に向かう新規の工程を表しているが、この目標を実現するためには幾つかの追加の工程が必要となるであろう。様々なステージの結腸直腸腫瘍を有する多人数の患者および同等に多人数のコントロールを使用する臨床試験に加えて、克服すべき技術的問題が依然としてある。詳細には、BEAMingを用いて1パネルの遺伝子マーカーをクエリーするための対費用効果の高い方法が開発されなければならない。これに関連して、本試験において全25例の患者における突然変異が相当に少数の共通突然変異の試験によって解明されたことは注目に値する。本発明者らは、結腸直腸癌または大きな腺腫のいずれかを有する患者の86%近くは、最も一般的な突然変異100種中の少なくとも1つを持っているであろうと想定している。そのようなアッセイの実行は、約10エクソンの同時捕捉および引き続いてのこれらのDNAフラグメントの多重PCR増幅を含むであろう。突然変異検出のための新規に記載されたハイブリダイゼーションをベースとする手法もまた、容易に自動化できるという点で利点を有する。次世代シークエンシングは、この手法をいっそう単純化できる可能性を有する;BEAMingによって得られたビーズは、フローサイトメトリーではなくむしろシークエンシングによって分析できる16。さらに、突然変異マーカーパネルは、エピジェネティックマーカーを含めることによってサイズを減少させることができよう17。実際に、本試験から学んだ貴重な経験は、メチル化をベースとするBEAMingまたは将来開発される腫瘍特異的DNA変動に対する任意の他の試験のために定量的アッセイを最適化するために適用できよう。
【0073】
実施例5のための参考文献(ここに挙げた参考文献は全部が明示的に本明細書に組み入れられる)



【0074】
実施例6:ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織からのDNAの単離
18例の腫瘍標本を肝臓または結腸手術後に採取し、ホルマリン中で固定し、パラフィン中に包埋した。10μmの切片を作製し、PEN膜スライド(Palm GmbH社、独国ベルンリート(Bernried, Germany))上に載せた。切片は脱パラフィン化し、ヘマトキシリン&エオシンで染色した。全標本について、MicroBeamレーザー顕微解剖機器(Palm社)を用いて完全に乾燥させた標本から切除した腫瘍組織の存在を確認するために組織学検査を実施した。切除した腫瘍組織は15μLのATLバッファー(Qiagen社)および10μLのプロテイナーゼK(20mg/mL;Invitrogen社)中で一晩かけて60℃で消化させた。DNAは、QIAamp DNAマイクロキット(Qiagen社)を製造業者のプロトコルにしたがって使用して単離した。単離したDNAは、以下に記載するようにhLINE-1定量的PCRによって定量した。
【0075】
腫瘍組織から単離したDNAのPCR増幅およびダイレクトシークエンシング
腫瘍組織から単離した全DNAサンプルをAPC(19)の26領域、KRAS(1)の1領域、PIK3CA(2)の2領域、およびTP53(4)の4領域においてダイレクトSangerシークエンシングを使用して突然変異について分析した。FFPE組織中のDNAの変性に起因して、アンプリコンサイズは、長さ74〜132bpとなるように選択した。初回PCRは、鋳型DNAの50〜100ゲノム当量(GE)(1GEは3.3pgのヒトゲノムDNAと同等である)、0.5単位のPlatinum Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)、1×PCRバッファー(67mMのTris-HCl、pH8.8、67mMのMgCl2、16.6mMの(NH4)2SO4、および10mMの2-メルカプトエタノール)、2mMのATP、6%(v/v)のDMSO、1mMの各dNTP、ならびに0.2μMの各プライマーを含有する10μLの反応容量中で実施した。プライマーセットの配列は、図20に列挙した。増幅は、以下の条件下で実施した:94℃で2分間;94℃で15秒間、68℃で30秒間、70℃で15秒間の3サイクル;94℃で15秒間、65℃で30秒間、70℃で15秒間の3サイクル;94℃で15秒間、62℃で30秒間、70℃で15秒間の3サイクル;94℃で15秒間、59℃で30秒間、70℃で15秒間の40サイクル。次に1μLの初回増幅液を、相違するプライマーを使用した以外は上記に記載したものと同一構成の第2の10μLのPCR反応混合液に加えた(図10)。第2回(ネステッド)PCR反応は、以下の条件を使用して温度サイクル処理にかけた:94℃で2分間;95℃で15秒間、58℃で30秒間、70℃で15秒間の15サイクル。PCR産物はAMpureシステム(Agencourt社、マサチューセッツ州ベバリー(Beverly, MA))を使用して精製し、BigDye Terminator v3.1(Applied Biosystems社)を使用して両方向からシークエンシングした。シークエンシングに使用したプライマーは、最初の30塩基についての配列の質を向上させるために5'側先端に付着した30bpのpolyTタグを有していた(Tag 1プライマー:

;M13プライマー:

)。シークエンシング反応は、自動96-キャピラリーDNAシークエンサー(Spectrumedix社、ペンシルベニア州ステートカレッジ(State College,PA))上で分解させた。データ分析は、Mutation Explorer(SoftGenetics社、ペンシルベニア州ステートカレッジ(State College,PA))を用いて実施した。
【0076】
定量的リアルタイムPCRによる全血漿DNAの定量
血漿サンプルから単離した全DNAの量は、ヒトLINE-1定量的リアルタイムPCRアッセイの修正バージョン1を用いて定量した。ヒトLINE-1ファミリーの最も豊富なコンセンサス領域内のサイズが様々に相違する領域を増幅させるために3種のプライマーセットを設計した(79bpのフォワード:

、79bpのリバース:

;97bpのフォワード:

、97bpのリバース:

;127bpのフォワード:

、127bpのリバース:

)。PCRは、2μLの血漿と同等の鋳型DNA、0.5単位のPlatinum Taq DNAポリメラーゼ、1×PCRバッファー(上記参照)、6%(v/v)のDMSO、1mMの各dNTP、1:100,000の希釈率のSYBR Green I(Invitrogen社)、および0.2μMの各プライマーからなる25μLの反応容量で実施した。増幅は、iCycler(Bio-Rad社)内で以下のサイクリング条件を使用して実施した:94℃で1分間;94℃で10秒間、67℃で15秒間、70℃で15秒間の2サイクル;94℃で10秒間、64℃で15秒間、70℃で15秒間の2サイクル;94℃で10秒間、61℃で15秒間、70℃で15秒間の2サイクル;94℃で10秒間、59℃で15秒間、70℃で15秒間の35サイクル。標準として保存するために、各プレート構成には様々な希釈率の正常ヒトリンパ球DNAを組み入れた。閾値サイクル数は、Bio-Rad分析ソフトウエアを使用してPCRベースライン値を減じて決定した。各定量は、2回ずつ実施した。全DNAは、突然変異について評価されるアンプリコンのサイズに最も近いLINE-1アンプリコンを用いて計算した(図11)。アンプリコンが2つの相違するLINE-1アンプリコンへ同等に近い場合は、平均濃度を使用した。血漿を用いたコントロール実験では、本発明者らは、LINE配列のアッセイによって評価されたゲノム当量の数がAPC、KRAS、PIK3CA、またはRASのゲノム当量(GE)の数と高度に相関することを見いだした。GEを測定するためにこれらの個別遺伝子ではなくむしろLINE配列をベースとするアッセイを選択したのは、ゲノム内での高度の繰返しの性質のゆえに、後者の方が前者よりも、GEを測定するのに必要な血漿がはるかに少量であったためである。
【0077】
BEAMing
20個の突然変異を分析するために、相違する12種のプライマーセットを設計した(図11)。2mLの血漿から精製されたDNAを各BEAMingアッセイのために使用した。高忠実度DNAポリメラーゼを用いた初回増幅は、8つの別個の50μLのPCR反応液中で実施したが、これらは各々250μLの血漿からの鋳型DNA、5×Phusion高忠実度PCRバッファー(NEB社)、1.5単位のHotstart Phusionポリメラーゼ(NEB社)、0.2μMの各プライマー、0.25mMの各dNTP、および0.5mMのMgCl2を含有していた。温度サイクル処理は、図11に記載したように実施した。図11に列挙したプライマーを使用して、第2回PCR(ネステッド)は、最初の構成と同一構成の20μLのPCR反応液に2μLの初回増幅液を加えることによって実施した。PCR産物をプールし、希釈し、PicoGreen dsDNAアッセイ(Invitrogen社)を使用して定量した。蛍光強度はCytoFluorマルチウエルプレートリーダー(PE Biosystems社)を使用して測定し、DNA量はλファージDNA参照標準を用いて計算した。
【0078】
エマルジョンPCRは、以前に記載されたように実施した2。手短には、18pgの鋳型DNA、40単位のPlatinum Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)、1×PCRバッファー(上記参照)、0.2mMのdNTPs、5mMのMgCl2、0.05μMのTag 1

、8μMのTag 2

およびTag 1オリゴヌクレオチド

がコーティングされた約6×107の磁性ストレプトアビジンビーズ(MyOne、Invitrogen社)を含有する150μLのPCR混合液を調製した。150μLのPCR反応液、600μLの油/乳化剤ミックス(7%のABIL WE09、20%の鉱油、73%のTegosoft DEC(Degussa Goldschmidt Chemical社、バージニア州ホープウェル(Hopewell,VA))、および1個の5mm径スチール製ビーズ(Qiagen社)を96ディープウエルプレート1.2mL(Abgene社)に加えた。エマルジョンは、このプレートをTissueLyser(Qiagen社)内において15Hzで10秒間、次に17Hzで7秒間攪拌することによって調製した。エマルジョンは、8個のPCRウエル内に分注し、94℃で2分間;94℃で10秒間、68℃で45秒間、70℃で75秒間の3サイクル;94℃で10秒間、65℃で45秒間、70℃で75秒間の3サイクル、94℃で10秒間、62℃で45秒間、70℃で75秒間の3サイクル;94℃で10秒間、59℃で45秒間、70℃で75秒間の50サイクルで温度サイクル処理にかけた。
【0079】
エマルジョンを破壊するために、150μLの破壊バッファー(10mMのTris-HCl(pH7.5)、1%のTriton-X 100、1%のSDS、100mMのNaCl、1mMのEDTA)を各ウエルに添加し、TissueLyserを20Hzで20秒間にわたり用いて混合した。ビーズは、懸濁液を3,200gで2分間回転させ、油相を除去することによって回収した。破壊工程は、2回繰り返した。8個のウエルからの全ビーズを統合し、150μLの洗浄バッファー(20mMのTris-HCl(pH8.4)、50mMのKCl)で洗浄した。ビーズ上のDNAは、0.1MのNaOHを用いて5分間にわたり変性させた。最後に、ビーズを150μLの洗浄バッファーで洗浄し、150μLの同一バッファー中に再懸濁させた。
【0080】
ビーズに結合したDNAの突然変異状態を対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションによって決定した。変異型および野生型DNA配列に対して相補的な蛍光標識プローブを、20個の相違する突然変異に対して設計した。プローブのサイズは、標的領域のGC含有量に依存して15bp〜18bpの範囲に及んだ。全変異プローブは5'側末端上でCy5(商標)蛍光体を用いて合成し、全野生型プローブはCy3(商標)蛍光体に結合させた(Integrated DNA Technologies社、アイオワ州コラルビル(Coralville,IA)、またはBiomers社、独国ウルム(Ulm,Germany))。さらに、アンプリコン内の別個の場所に結合したオリゴヌクレオチドは陽性コントロールとしてのあらゆる伸長したPCR産物を標識するために使用した。これらのアンプリコン特異的プローブは、それらの5'側末端に付着したROX(商標)蛍光体を用いて合成した。プローブ配列は、図12に列挙した。各対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション反応液は、30μLの洗浄バッファー(上記参照)中に存在する約1×107個のビーズ、66μLの1.5×ハイブリダイゼーションバッファー(4.5Mの塩化テトラメチルアンモニウム、75mMのTris-HCl(pH7.5)、6mMのEDTA)、および4μLの、各々がTEバッファー中で5μMである変異型、野生型、および遺伝子特異的蛍光プローブの混合液を含有していた。ハイブリダイゼーション混合液は70℃へ10秒間加熱し、35℃へ緩徐に(0.1℃/秒)冷却した。35℃で2分間インキュベートした後、この混合液を室温へ冷却した(0.1℃/秒)。ビーズは磁石を用いて採取し、未結合プローブを含有する上清はピペットを使用して除去した。ビーズは100μLの1×ハイブリダイゼーションバッファー中に再懸濁させ、48℃へ5分間加熱して未結合プローブを除去した。加熱工程後、ビーズは再び磁石によって分離し、100μLの洗浄バッファーを用いて1回洗浄した。最終工程で、上清を除去し、フローサイトメトリー分析のためにビーズを200μLのTEバッファー中に再懸濁させた。
【0081】
高スループットオートサンプラーを装備したLSR IIフローサイトメトリーシステム(BD Bioscience社)を各ビーズ集団の分析のために使用した。平均5×106個のビーズを各血漿サンプルに対して分析した。伸長産物を含まないビーズは、分析から除外した。癌を有していない患者由来のDNAを用いて実施した陰性コントロールを各アッセイに含めた。クエリーされる突然変異に依存して、これらの陰性コントロールサンプル中の変異特異的プローブに結合したビーズの割合は、0.0061%〜0.00023%の間で変動した。この割合は、以前に詳細に説明されたように3、初回PCR工程中に高忠実度DNAポリメラーゼによって導入された配列エラーを提示した。実験サンプルにおいて陽性と判定されるためには、(i)変異型フラグメントに結合したビーズの割合が陰性コントロールにおいて見出された割合より高くなければならず、そして(ii)サンプル1例当たりの変異型DNAフラグメントの平均値+1SD(標準偏差)は>1.0でなければならなかった。BEAMingによって生成したビーズ集団は、各血漿サンプルに対して少なくとも2回分析した。
【0082】
実施例6だけのための参考文献(ここに挙げた参考文献は全部が明示的に本明細書に組み入れられる)

【0083】
個々の患者の概要
図16A-1〜16E-3も参照されたい。
患者1は、最初は直腸癌のために低位前方切除術を受けたが、PET/CTスキャニングを用いて複数の肝転移を有することが見いだされた。この患者は5-フルオロウラシル、オキサリプラチン(FOLFOX)およびベバシズマブを用いる術後化学療法(化学療法)を2サイクルにわたり受けたところ、反復イメージングによって良好な応答が明らかになった。本試験登録時に、この患者は右肝切除術および左肝葉楔状切除術および胆嚢摘出術を受け(手術)、その後に5-フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンおよびベバシズマブを用いる化学療法を受けた(化学療法)。反復イメージングは、複数の新規肺病巣および2つの新規肝病巣を明らかにした。様々な他の化学療法レジメンを利用したが、疾患の継続的進行が生じた。この患者は現在は第I相臨床試験に参加することが検討されている。
【0084】
患者2は、最初はT3N0M0結腸腺癌であると診断され、左半結腸切除術を受けた。本試験登録時、この患者は右肝葉切除術および転移性疾患のために部分隔膜切除術を受けた(手術)。反復イメージングは、この肝葉切除術の3カ月後に進行性疾患を明らかにし、この患者はその後まもなく疾患が原因で死亡した。
【0085】
患者3は、最初は単一肝転移を伴う転移性粘液性結腸腺癌T2N1M1を有することが見いだされ、肝切除の計画を伴う右半結腸切除術を受けた(手術)。しかしこの患者は、手術時点に広汎性腹膜病変(peritoneal implant)を有することが見いだされたので、肝切除は実施されなかった。術後CTスキャンにより、拡大中の肝病巣および新規肺結節を有する進行性疾患の証拠が明らかになった。患者は対症療法だけを進めることを選択し、手術のおよそ1年後に疾患が原因で死亡した。
【0086】
患者4は、転移性結腸腺癌を有すると診断された。初回手術の12カ月後であった本試験登録時に、患者は5-フルオロウラシル、オキサリプラチンおよびベバシズマブを用いる術前化学療法を受けた。この患者はその後に、再発性転移性腺癌を併発する病理を伴う境界部の高周波アブレーションとともに2つの肝病巣の部分肝切除術を受けた(手術)。その後のCTスキャンは、現在まで疾患再発の証拠を明らかにしていない。
【0087】
患者6は、最初にT3N1M1結腸腺癌を示し、試験登録時点に右肝切除術および右肺下葉楔状切除術を受けた(手術)。フォローアップCTスキャンは疾患の証拠を明らかにせず、患者は化学療法を開始した。8カ月後、反復イメージングは、新規な肝転移を明らかにした。この患者はその後、イリノテカン、5 -フルオロウラシルおよびベバシズマブに切り換えたが(化学療法1)、4カ月間の治療にもかかわらず、フォローアップCTスキャン上では持続性疾患を有していた。患者はその後、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンおよびベバシズマブを開始した(化学療法2)。
【0088】
患者7は、以前にT3N2M1直腸S状結腸腺癌切除歴を有していた。本試験登録時に、この患者は2つの再発性肝病巣の外科的切除を受け、さらに4つの肝病巣は高周波アブレーションを用いて治療された(手術)。術後イメージングは疾患の証拠を明らかにしなかったが、3カ月後のイメージングは新規な肝疾患および新規な肺転移を明らかにした。この患者はイリノテカン、セツキシマブ、およびベバシズマブ療法を開始した(化学療法)。化学療法にも関わらず、フォローアップイメージングでは、患者は持続性および進行性疾患を有することが認められた。
【0089】
患者9は、最初はT3N1M0結腸腺癌を示し、アジュバントの5-フルオロウラシルおよびロイコボリンによって治療された。本試験登録時に、単発性肝病巣が認められ、この患者は右肝切除術を受けたが、病理検査で再発性腺癌が明らかになった(手術)。この患者には術後5-フルオロウラシル、オキサリプラチンおよびベバシズマブ(化学療法)が与えられ、フォローアップイメージングは、疾患再発の証拠を明らかにせず、完全に再生した肝臓の証拠が得られた。
【0090】
患者10は、最初は肝臓への転移性結腸直腸腺癌を有すると診断され、5-フルオロウラシル、オキサリプラチンおよびベバシズマブを用いて4カ月間治療された(化学療法)。右肝切除術および右半結腸切除術が実施された(手術1)。肝切除は、境界陽性であった。術後イメージングは、疾患の証拠を明らかにしなかった。3カ月後に実施された反復イメージングは、3つの新規な左肝病巣を明らかにし、この患者はその後に境界部への高周波アブレーションを伴う左肝切除術を受けた(手術2)。術後イメージングは、疾患の証拠を明らかにしなかった。2カ月後のフォローアップ時に、この女性患者はT7圧迫骨折を伴う骨転移を有することが見いだされ、そのためにこの女性患者は外照射療法を受けた。
【0091】
患者12は、最初は転移性結腸腺癌を有すると診断された。本試験登録時に、患者は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、およびオキサリプラチン(化学療法)を用いて疾患のある程度の安定化が達成された後に、高周波アブレーションを伴う反復部分肝切除術を受けた(手術)。術後スキャンは、肝臓内の疾患の証拠を明らかにしなかった。しかし、胸部のCTスキャンは多数の新規の肺病巣を明らかにし、フォローアップPETは同様に新規な肝病巣を明らかにした。この患者はその後、第I相臨床試験を紹介された。
【0092】
患者13は、S状結腸、肝臓および剣状突起から切除された転移性結腸癌の病歴を有した。最初の診断からおよそ14カ月後、CTスキャンは肝臓内の1cmの病巣を明らかにし、フォローアップPETスキャンは左肝葉近くで2つの隣接疾患病巣を証明した。3カ月後に実施されたCTスキャンは、肝病巣のサイズの増加および新規な腹膜病変を証明した。その後に部分肝切除術、部分胃切除術、および部分大網切除術により再発性疾患の切除術を受けた(手術)。手術の1年後に実施されたフォローアップCTスキャンは、肝臓および大網の再発を証明した。
【0093】
患者14は、CTスキャンを用いたスクリーニング大腸内視鏡検査で結腸腺癌を有することが見いだされたが、遠隔転位の証拠は証明されなかった。患者はS状結腸切除術を受け(手術)、病理検査でT3N0M0腫瘍が明らかになった。アジュバント化学療法は行われず、連続CTスキャンで追跡された。最終CTスキャンは、疾患の証拠を示さなかった。
【0094】
患者15は、T3NlMx盲腸腫瘤(mass)および臍部再発の完全切除術歴を有していた。原発性腫瘍の切除の3年後、腹部のCTスキャンは単発性肝転移を明らかにした。この患者は右肝切除術を受けた(手術)。1カ月後のフォローアップCTスキャンは疾患の証拠を明らかにしなかったが、患者は再発性転移性疾患からおよそ1年後に疾患が原因で死亡した。
【0095】
患者16は、直腸からの鮮紅色の出血のための精密検査を受けた後のCTで直腸S状部の腫瘤を有することが明らかになり、S状結腸切除術を受けた(手術)。この女性患者は、5-フルオロウラシル、ロイコボリンおよびオキサリプラチンを開始し、これをその後5カ月間継続した(化学療法)。療法完了後のフォローアップCTスキャンは、疾患再発の証拠を示さなかった。
【0096】
患者17は、右葉に孤立性肝転移を有することがPET CTによって見いだされた結腸直腸癌の切除歴を有する患者であった。患者は右肝切除術を受け(手術)、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンおよびアバスチンを用いる術後化学療法を受けた(化学療法)。この女性患者は、手術7カ月後に再発を有することが見いだされた。
【0097】
患者18は、直腸腫瘤に対する低位前方切除術を受けた後にT3NlMx腺癌を有することが見いだされた。3年後、患者はCTスキャンイメージングで発見された左肝葉病巣を有することが認められた。この患者は腹腔鏡下肝切除術を受けた(手術)。患者は追加の化学療法を受けず、現在は疾患を有していない。
【0098】
実施例5および6を除く本出願のための参考文献
ここに挙げた各参考文献の開示は、明示的に本明細書に組み入れられる。


【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、腫瘍量をモニタリングするための方法:
癌患者の血液もしくは糞便の試験サンプル中において、突然変異を有する遺伝子のDNAフラグメントのコピー数を測定する工程であって、該突然変異が、該癌患者の腫瘍組織中には存在するが該患者の正常組織中には存在せず、該コピー数が、該患者における腫瘍量の指標である、工程。
【請求項2】
腫瘍組織中の遺伝子における突然変異を検出する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
正常組織中の遺伝子における突然変異の非存在を決定するために患者の正常組織を試験する工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子が、腫瘍中では突然変異していることが多いが、ヒトの正常組織中では変異していない、請求項1記載の方法。
【請求項5】
試験サンプル中の突然変異を有していない遺伝子のDNAフラグメントのコピー数を測定する工程;および
比率を提供するために、該突然変異を有するDNAフラグメントのコピー数を、該試験サンプル中の該突然変異を有していない遺伝子のDNAフラグメントのコピー数で割る工程
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
癌患者の試験サンプル中のDNAの総量を測定してDNAの該総量に対する比率を標準化する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
突然変異を有する遺伝子のDNAフラグメントが腫瘍切除から2カ月以内に検出された場合にアジュバント療法を勧告する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
突然変異を有する遺伝子のDNAフラグメントが腫瘍切除から1週間以内に検出された場合にアジュバント療法を勧告する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
突然変異を有する遺伝子のDNAフラグメントが腫瘍切除から1日以内に検出された場合にアジュバント療法を勧告する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
突然変異を有する遺伝子のDNAフラグメントが腫瘍切除から2日後に検出された場合にアジュバント療法を勧告する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
突然変異を有する遺伝子のDNAフラグメントが腫瘍切除から2日後に検出された場合に腫瘍再発を予測する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
突然変異を有する遺伝子のDNAフラグメントが腫瘍切除から4時間より後に検出された場合にアジュバント療法を勧告する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
突然変異が、癌患者の腫瘍DNAのヌクレオチドシークエンシングによって検出される、請求項2記載の方法。
【請求項14】
突然変異が、突然変異特異的核酸プローブへのハイブリダイゼーションによって検出される、請求項2記載の方法。
【請求項15】
突然変異が、APC、KRAS、TP53、およびPIK3CAからなる群から選択される遺伝子内にある、請求項1記載の方法。
【請求項16】
突然変異が、腫瘍抑制遺伝子または発癌遺伝子内にある、請求項1記載の方法。
【請求項17】
測定する工程が、対立遺伝子特異的核酸プローブへのハイブリダイゼーションを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
測定する工程が、エマルジョン中のビーズ上での増幅を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
DNAフラグメントが、エマルジョン中での増幅の前に増幅させられる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
DNAフラグメントが、対立遺伝子特異的核酸プローブへのハイブリダイゼーションの前に熱変性させられ、かつ塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の存在下で冷却される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
冷却する工程が、少なくとも0.1℃/秒程度に緩徐である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
試験サンプルが血液である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
試験サンプルが糞便であり、かつ腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
測定する工程が、腫瘍量の増加、減少、または安定性をモニタリングするため複数の時点に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
以下の工程を含む、DNA分析を実施する方法:
第1のプライマーセットおよび第2のネステッドプライマーセットを用いて鋳型DNA分析物を増幅させる工程であって、該第2のネステッドプライマーセットの第1のメンバーが5'側の配列

を含み、かつ該増幅させる工程が高忠実度DNAポリメラーゼを使用する、工程;
水性媒体中で第3のプライマーセットを使用して該増幅鋳型を増幅させる工程であって、該第3のプライマーセットの第1のメンバーが、5'側の配列

を含み、該第3のプライマーセットの第2のメンバーが、5'側の配列

、および

オリゴヌクレオチドでコーティングされたストレプトアビジンビーズを含む、工程;
水相としての該水性媒体および油/乳化剤混合物を使用して油中水型エマルジョンを調製する工程;
該ビーズ上で該鋳型を増幅させるために該エマルジョンを熱サイクル処理する工程;
界面活性剤を使用して該エマルジョンを破壊して油相を除去する工程;
該ビーズ上の該増幅鋳型と突然変異特異的プローブ、対応する野生型プローブ、ならびに該突然変異特異的プローブおよび該対応する野生型プローブとは異なる該鋳型の一部分に対して相補的であるアンプリコン特異的プローブとの混合物を形成する工程であって、該プローブの各々が蛍光標識され、該プローブの各々が別個の発光スペクトルを有する、工程;
該混合物中の増幅された鋳型を熱変性させ、かつ該プローブを該鋳型にハイブリダイズさせるために該混合物を塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の存在下で冷却する工程;
フローサイトメトリーを用いて、該ビーズ上の増幅鋳型にハイブリダイズした蛍光標識プローブ各々の量を検出するために該ハイブリダイズした鋳型を分析する工程。
【請求項26】
ストレプトアビジンビーズが、

を含む

オリゴヌクレオチドでコーティングされる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
エマルジョンを破壊する工程が3回実施される、請求項25記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10A−1】
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【図10A−2】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A−1】
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【図16A−2】
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【図16A−3】
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【図16B−1】
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【図16B−2】
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【図16B−3】
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【図16C−1】
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【図16C−2】
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【図16C−3】
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【図16D−1】
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【図16D−2】
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【図16D−3】
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【図16E−1】
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【図16E−2】
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【図16E−3】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【公表番号】特表2011−529691(P2011−529691A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521359(P2011−521359)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/052436
【国際公開番号】WO2010/014920
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(506321481)ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】