説明

腫瘍特異的融合蛋白質の検出のための方法およびプローブ

本発明は、融合蛋白質の検出に関する。本発明は、少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを提供し、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記少なくとも第1および第2プローブの並列を可能にする反応基を備え、前記反応基は、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、前記プローブの並列を調節可能にする。単細胞レベルで細胞中の融合蛋白質の存在を検出可能にする方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、中でも腫瘍特異的融合蛋白質の検出に関する。より具体的には、本発明は、単細胞レベルでの融合蛋白質の存在を検出することによって染色体転座の存在を示す技術に関する。種々のタイプの癌、たとえば白血病、リンパ腫および固形癌の診断において、染色体異常は、予後関連サブグループへの分類に頻繁に用いられる1。これらの染色体異常の多くは、融合遺伝子、すなわち一方の遺伝子の上流部を介して他方の遺伝子の下流部に対してまたはその逆に結合される異常結合遺伝子を生じさせる。融合遺伝子は、融合遺伝子転写物に転写され、融合蛋白質に翻訳され得る。一般的に、融合蛋白質は、腫瘍形成過程において重要な役割を果たす。これまで、100を超える異なる融合遺伝子および融合蛋白質が、種々のタイプの癌において述べられてきた25
【0002】
用語「癌」は、異種グループの腫瘍を含み、各タイプは、悪性の可能性と治療に対する応答とを考慮すれば、特有の特性を有する。種々の癌タイプの正確な診断および分類が、最も効果的な治療の選択の助力に卓越していることは、明白である。さらに、治療の期間中の、正常な細胞の高い背景における少数の悪性細胞の検出を可能にする診断方法は、治療効果の評価および近い将来の再発の予想に不可欠である。
【0003】
染色体転座は、豊富な技術によって検出することができ、これらのほとんどが、近代的な生体分子技術を伴う。細胞遺伝技術は、従来の染色体バンド技術(核型分析)と、蛍光標識したプローブを用いる蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)とを含む。計画に基づくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、染色体転座、逆位および欠失において発見され得るような染色体切断点の融合を、この切断点の各側部に位置するプライマーを用いて検出するために用いられる。DNA増幅は、切断点が小さい領域に群集する染色体異常にしか用いることができない。ほとんどのケースにおいて、切断点は、大きいイントロン領域に亘って拡張するが、いくつかの転座、逆位および欠失は、逆転写ステップ後のPCR増幅(RT−PCR)に適した融合遺伝子および融合転写を生じさせる。
【0004】
特異的な染色体異常の検出を目的とする最も広く用いられる技術は、染色体または核酸(DNAもしくはRNA)レベルでの分析に関与する。かかる遺伝子融合マーカーの利点は、腫瘍形成への直接的な関与である。したがって、これらの存在は、疾患の進展全体に亘って不変である。しかしながら、融合マーカーの主要な欠点は、疾患の期間中、および特に治療の期間中、遺伝子転写および/または遺伝子翻訳のレベルの変化を、排除することができないという事実に関する。したがって、融合遺伝子転写物または融合蛋白質の発現の変化は、マーカーの検出レベルと悪性細胞の量とを関連付けることを困難にする。これは、融合遺伝子産生物の検出が、好ましくは、個々の細胞における蛋白質レベルで実行されることを暗示する。
【0005】
融合蛋白質は、当初分離された遺伝子に対応するとともに、その遺伝子によって本来転写され、かつその遺伝子から本来翻訳された少なくとも2つの蛋白質の部分を含む。融合蛋白質は、融合点によってユニークに特徴付けられ、この融合点において、2つの蛋白質は接触する。融合点は、しばしば抗原的に露出され、時々免疫学的に検出され得る区別可能なエピトープを含む。
【0006】
最初に、融合蛋白質の結合領域に対応するペプチドに対する抗体を生成することによって、融合蛋白質特異的な抗体を生じさせるような試みがなされる。このアプローチは、主として、融合蛋白質と排他的に反応し、細胞中で正常に産生される非融合蛋白質とは反応しない免疫試薬を見出すことが困難であるという事実に起因して、ほとんど成功しなかった。もし融合特異的抗体を得た場合、一般的に、これらを蛍光顕微鏡検査またはフローサイトメトリーに適用することはできなかった68。たとえば、BCR−ABL融合蛋白質に対するERP−EP1抗体は、ウエスタンブロッティング法手順において、好ましく機能するが、ヒトBCR−ABL陽性白血病における顕微鏡研究において成功しない6,7。さらに、染色体転座において見られる個々の再配列における大きい変化を考慮して、かつ(転座が同じ2つの遺伝子内に生じる場合であっても)異なる融合蛋白質が生成され得る非異常遺伝子における切断点の局在化次第で、融合蛋白質の各個別ケースにおいて、新しい融合点が生じるとおそらく考えられる。したがって、融合蛋白質の融合点エピトープの特異的免疫検出による融合蛋白質の検出は、決して幅広く適用することができなかった。
【0007】
融合蛋白質の特異的な検出に関する代替的な方法は、融合蛋白質の一方の部分を認識するいわゆる捕獲抗体(catching antibody)と、融合蛋白質の他方の部分を認識する標識化された検出抗体との適用に関与する。かかるシステムにおいて、捕獲抗体は、固体支持層、たとえばELISAプレートまたはディップスティック(dipstick)に結合される。捕獲抗体はまた、フローサイトメトリーによって分析され得るビーズに固定化され得る9。融合蛋白質を含有すると疑われる細胞溶解物とともに、捕獲抗体をインキュベーションした後、結合された融合蛋白質は、標識化した検出抗体によって検出される。的確かつ容易に実行されるけれども、捕獲/検出抗体システムは、細胞の完全性を崩壊することなく細胞内融合蛋白質を検出するように、事実上適用することができない。ほとんどの腫瘍特異的融合蛋白質は、細胞内で局在化され、たとえば、核転写因子、または細胞質に存在する、もしくは細胞質と核との間で往来するシグナル分子である。したがって、捕獲/検出抗体システムは、単細胞レベルでの細胞内融合蛋白質の検出を可能としない。
【0008】
融合蛋白質の2つの異なる部分に対する区別して標識化された2つの抗体の共局在化(co-localisation)が、単細胞中の融合蛋白質の存在を理論上証明することができた。局在化の完全な証明は、共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)による分析を要求する。その場合でさえ、影響されない染色体における正常遺伝子由来の認識された正常な蛋白質が、融合蛋白質の検出に干渉する背景染色を生じさせ得るので、2つの抗体の共局在化を評価することは、一般的に容易ではない。さらに、CLSMは、専門化され、かつ好ましく装備された実験室と、訓練され、かつ高度に熟練した人員とを必要とするという大きな不都合を有する。このような時間のかかる、高度に専門家された技術は、たとえば臨床設定における平凡な診断手順に望ましくない。
【0009】
上述した全ては、臨床実験室において好ましく用いることができる融合蛋白質の検出方法を改良する明確な必要性が存在することを示す。特に、単細胞レベルでの細胞内融合蛋白質の検出が課題である。
【0010】
本発明は、蛍光共鳴エネルギ転移(FRET)技術を、融合蛋白質の存在を検出するために用いることができるという見識を提供する。本発明は、少なくとも第1および第2分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法を提供し、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、プローブセットを提供することと、細胞を含む試料を提供することと、前記試料を、前記融合蛋白質において前記プローブの並列を可能にする条件下で前記プローブと接触させることと、あらゆる結合されないプローブおよびあらゆる非特異的に結合されたプローブを除去することと、前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを有する。また、少なくとも第1および第2分子プローブのセットが提供され、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記少なくとも第1および第2プローブの並列を可能にする反応基を備え、前記反応基は、前記プローブの並列を、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、調節可能にする。本発明に従って、分子プローブは、いわゆる結合ドメインを介して、関心ある生物学的分子に特異的に結合することができる。少なくとも第1および第2プローブの、結合ドメインを介する関心ある分子との結合の後、反応基は、並列を調節するために用いられ得る。反応基は、関心ある分子との結合のための結合ドメインに匹敵する傾向を有しないか、あるいは最小限の傾向を有する。このようにして、本発明のプローブセットは、ある抗原分子または複合体への単なる結合によって群集する、または並列する既知の抗体プローブセットと区別される。反応基は、好ましくは、プローブが関心ある分子と結合された後、並列されたプローブの空間的構造を調節するための利用可能性を維持する。1つの実施形態において、前記関心ある分子は蛋白質であり、好ましくは融合蛋白質であり、より好ましくは腫瘍形成融合蛋白質である。特に、第1および第2分子プローブのセットが好ましく、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位(エピトープ)を認識し、かつこれに結合することができる。もちろん、関心ある分子の異なるエピトープ(たとえば、融合蛋白質の融合領域のC末端およびN末端におけるエピトープ)に結合するプローブセットを用いるとき、前記異なるエピトープは、分子間または分子内のいずれのやり方でも互いに相互作用してはならず、なぜならば、これは、プローブの結合に明らかに干渉するからである。したがって、プローブセット内の異なるプローブは、異なる本質的に相互作用しないエピトープに結合することができる。これは、2つのプローブ(リポーター)の長所によって存在物を検出する方法に関する国際公開第01/75453号公報に記載された状況と異なっており、ここにおいて、2つのプローブは、存在物の同一の標的部位に、実質的に同時にもしくは順次に結合し得、または異なる標的部位に結合し得る。国際公開第01/75453号公報のリポーター/プローブは、キメラ融合蛋白質を検出するために用いられ得る。一方のリポーターは、好ましくは、SH2ドメインを結合し、他方のリポーターは、SH2結合部位に結合し、すなわち国際公開第01/75453号公報のプローブは、好ましくは相互作用するエピトープと結合する。かかるプローブおよび検出方法は、本発明と明らかに区別され、なぜならば、ここで提供されるFRETに基づく方法は、異なるプローブが、同一のエピトープまたは相互作用するエピトープのいずれかを対象とするプローブセットを用いるとき、単純に機能しないであろうからである。さらに、国際公開第01/75453号公報のプローブは、プローブを並列可能にする反応基を備えない。
【0011】
本発明は、本発明に従ったプローブセットを含む診断キットと、疾患の診断および/または分類において、ならびに疾患の治療前、治療中および治療後に、前記治療の有効性を評価するために、融合蛋白質の存在を検出するプローブセットを用いる方法とを提供する。
【0012】
また、本発明に従ったプローブセットを産生する方法が提供され、この方法は、各プローブを色素と、前記プローブと前記色素との間で複合体を形成するために接触させることと、前記複合体を精製することとを含み、少なくとも1つのプローブを、反応基またはその誘導体と、前記プローブと前記反応基との間で複合体を形成するために接触させることと、前記複合体を精製することとをさらに含む。
【0013】
蛍光共鳴エネルギ転移(FRET)は、電子励起状態の2つの色素分子間の間隔に依存する相互作用であり、ここで「ドナー」分子は、光源による励起の後、「アクセプター」分子にそのエネルギを転移する。一般的に、ドナー分子とアクセプター分子とは異なり、この場合において、FRETは、アクセプターの増感蛍光の出現によって、またはドナー蛍光の消光によって、検出され得る。ドナー色素およびアクセプター色素が同一の場合、FRETは、その結果生じる蛍光偏光解消によって検出され得る。エネルギ転移は、アクセプターの発光スペクトルが著しく重複している場合に生じる。共鳴エネルギ転移を達成するために、ドナーは、光を吸収するとともに、それを、アクセプターに対して、励起された電子の共鳴を通じて転移させなければならない1013。FRETは、通常、共に蛍光であるドナー色素とアクセプター色素との間の相互作用に基づく。しかしながら、非蛍光アクセプター色素も用いることができる。非蛍光アクセプター色素は、これらが直接的な(すなわち増感されていない)アクセプター励起から生じる背景蛍光を除去するので、好都合である。本発明において、蛍光ドナー色素および非蛍光アクセプター色素を用いて、融合蛋白質における並列されたプローブを監視することができる。プローブセットの、天然蛋白質、すなわち蛋白質Aおよび蛋白質Bへの特異的結合は、基礎的な蛍光シグナルを与えるであろう。A−B融合蛋白質におけるプローブセットの狭い並列において、プローブ間のFRETは、ドナー蛍光を消光させる。アクセプター蛍光の増加の測定よりはむしろ、非蛍光アクセプターの使用は、ドナー蛍光の減少の測定に関与する。一般的に言えば、シグナル減少の検出は、シグナル増加の検出と比較して、感度が低い。したがって、本発明に従った方法は、好ましくは、蛍光ドナーおよび蛍光アクセプター色素を用いて実行される。
【0014】
エネルギ転移を生じさせるために、ドナーの蛍光発光波長は、アクセプターの励起波長よりも低くしなければならない。すなわち、その過程は、エネルギ的に「下り坂」でなければならない。2つの色素の充分に狭い並列が、ドナー/アクセプターのペア間でのエネルギ転移に不可欠であり、一般的に100オングストロームより狭く、好ましくは50オングストロームより狭い。1オングストロームは、長さのメートル単位であって、0.1ナノメートルまたは10-10メートルと等しい。FRETエネルギ転移効率は、ドナーおよびアクセプター間の間隔の6乗に反比例する。この見識は、間隔に対するこの高い感度によって、FRETが、融合蛋白質における2つの異なる色素複合プローブの並列を検出するのに特に適していることを条件とする。
【0015】
本発明の好適な実施形態において、プローブセットは、少なくとも2つの色素複合抗体のセットを含み、各抗体は、融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができる。適切な抗体は、従来(ポリクローナルもしくはモノクローナル)の抗体、もしくは合成の抗体、またはこれと機能的に均等な結合断片、たとえばFab´、Fab、単鎖Fv断片、二重特異性抗体(diabody)(単鎖Fv二量体)およびその類似物を含む。たとえば、キメラ融合蛋白質A−Bは、色素複合プローブ、たとえば抗A抗体および抗B抗体を用いて、FRETを介して検出されることができる。好ましい実施形態において、試料は、2つの抗体と接触し、細胞試料におけるA−B融合蛋白質の存在を検出するために、一方は、融合蛋白質のドメインAに対して接触し、他方は、ドメインBに対して接触する。一方の抗体は、FRETドナー色素によって標識化され、他方は、FRETアクセプター色素によって標識化される。ドメインAがドメインBに極めて近接している場合にのみ、たとえば両方が同一の蛋白質分子の部分である場合に、2つの抗体は、共に充分近くなり(並列される)、ドナー/アクセプターのペアが、検出可能なFRET蛍光シグナルを誘導するのを可能にする。
【0016】
複数の異なる抗体の、同一の蛋白質分子との同時反応は、抗体の立体障害を防止するために、充分に分離される2つの異なる結合部位またはエピトープの認識を必要とする。たとえば、Tリンパ球の細胞表面におけるT細胞受容体(TRC)分子の可変(V)ドメインに対する抗体および定常(C)ドメインに対する抗体の同時適用は、信頼性のある、かつ再現可能性のある結果を生じさせない。しかしながら、Vドメイン抗体と、TCR分子と近接して関連する、CD3分子に対する抗体との同時適用は、フローサイトメトリーおよび顕微鏡の両方において、優れた染色結果を生じさせた14。これらのデータは、同じ蛋白質における2つのエピトープ間の間隔が、同時に認識するために、好ましくは約80オングストロームを超えなければならないことを示唆する。
【0017】
同一の融合蛋白質の異なる部分に対する2つの色素複合抗体の共局在化は、時々、必要とされるFRETエネルギ転移に充分ではない。完全な抗体は、大きいY型蛋白質分子であって、寸法が150kDa以下であり、2つの重鎖と2つの軽鎖とからなる。抗体分子の長さ(300〜400オングストローム)およびヒンジ領域の柔軟性に起因して、並列された抗体分子は、比較的大きい間隔を架橋することができる15。近接して並列されたFRETプローブは、一般的にFRETシグナルを得るのに充分である一方で、FRET効率を増加させるために、2つのプローブの並列を安定化し、かつ/または高めることが好都合である。たとえば、プローブまたは色素の寸法は、陰性の立体効果を介して、FRET分析に干渉し得る。また、抗体の柔軟性は、抗体プローブに複合されるFRET色素のペア間でのFRET出現の可能性を低下させ得る。蛍光プローブのような色素複合体を調製すると、一般的に複合の部位を制御することができない。たとえば、抗体複合の場合において、色素部分は、抗体分子の異なる部分に付着され得る。色素複合の部位によって、プローブにおける色素の空間的配向は、FRETエネルギ転移効率に関して好都合にも不都合にもなり得、すなわちプローブに付着される色素は、互いのエネルギ転移間隔内にある必然性を要しない。
【0018】
驚くべきことに、本発明は、一組のプローブの並列が、少なくとも1つのプローブを反応基に付与することによって、1対の色素間でのFRETエネルギ転移の可能性を高めるために調節されることができるという見識を提供する。本発明は、少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを提供し、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記第1および第2プローブの並列を可能にする反応基を含み、前記反応基は、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、前記プローブの並列を調節可能にする。かかるプローブセットの使用は、いずれの反応基をも含まないプローブの使用と比較して改良された感度によって、並列されたプローブを検出可能にする。
【0019】
本明細書において、用語「反応基」は、エネルギ転移が生じる可能性を高めるように、および/またはエネルギ転移効率を高めるように、FRET色素の空間的構造を調節可能にする部分を示す。この空間的構造は、色素間の間隔、およびこれらの相対的配向性の両方を示す。空間的構造の調節は、色素の空間的構造を調節し、かつ安定化させることを含む。エネルギ転移発生のための初期条件の1つは、ドナーおよびアクセプター分子が、極めて近接していなければならない、ということであり、典型的には10〜100Åである。好適な実施形態において、反応基は、100Åの相互間隔内に、より好ましくは50Åの相互間隔内に、最も好ましくは、20Åの相互間隔内に、前記色素を並列可能にする。したがって、反応基は、小さいのが好ましく、たとえば、10キロダルトン(kD)よりも小さいもの、より好ましくは5kDaよりも小さいもの、さらに好ましくは2kDaよりも小さいもの、または最も好ましくは1kDaよりも小さいものである。たとえば、反応基は、ビオチンである。
【0020】
前述したように、反応基は、他方のプローブと直接に相互作用することによって、色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、並列されたプローブを調節可能にする。たとえば、第1プローブの反応基は、FRETが生じるのに好都合な空間的配向において前記プローブ間の安定的な複合を形成するように、並列された第2プローブの部分に結合する。色素複合の部位に関して前述したように、しばしば、規定された部位の反応基によってプローブを選択的に修飾することができない。修飾の部位は、特定の残基の存在およびアクセス可能性によって主として決定され、この残基、たとえば、第一級アミン、またはチオール基を介して、反応基は、プローブに複合する。したがって、抗体プローブは、免疫グロブリンの定常領域および/または可変領域のいずれかにおいて、反応基を含有し得る。たとえば立体障害に起因して、いずれの部位でも第2プローブとの相互作用に等しく適しているとは限らないと考えられる。したがって、好ましくは、プローブは、他方のプローブと相互作用する能力を統計上増加させるために、種々の反応基を備える。たとえば、プローブは、2つもしくは3つ、または5つの反応基を備える。
【0021】
ここにおいて、少なくとも第1および第2分子プローブのセットを用いて細胞中で融合蛋白質の存在を検出する方法が提供され、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位をその結合ドメインを介して認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように前記少なくとも第1および第2プローブの並列を調節可能である反応基を備え、プローブセットを提供することと、細胞を含む試料を提供することと、前記試料を、前記融合蛋白質における前記プローブの並列を可能とする条件下で、前記プローブと接触させることと、あらゆる結合されないプローブおよびあらゆる非特異的に結合されたプローブを除去することと、前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを含む。第1プローブが少なくとも第2プローブと直接相互作用し得る場合、プローブ間の自己会合(self association)を回避するための広範囲の断続的な洗浄手順を有する連続ステップにおいて、前記試料を、各プローブと接触させることは好ましい。たとえば、融合蛋白質の一方の部分の認識およびこれとの結合を可能にするために、試料を、反応基を含むプローブAと接触させる。次いで、あらゆる結合されないプローブAおよびあらゆる非特異的に結合されたプローブAは、洗浄ステップを繰り返すことによって、除去される。続いて、前記試料を、前記融合蛋白質におけるプローブAおよびBの並列を可能にする条件下で融合蛋白質の他方の部分と反応するプローブBと接触させる。また、ここで、あらゆる結合されないプローブBおよびあらゆる非特異的に結合されたプローブBは、好ましくは洗浄ステップを繰り返すことによって、除去される。本発明の1つの実施形態において、プローブAの反応基は、色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように前記プローブに存在する色素の空間的配向を高め、かつ/または安定化させるために、少なくとも並列されたプローブBと相互作用する。この方法は、融合蛋白質の存在を検出するために用いられ得るけれども、複数の分離した接触ステップおよび洗浄ステップに関わるこのような手順が、むしろ難儀であり、かつ時間のかかるものであることは明らかである。さらに、もしプローブが互いに直接相互作用することができるなら、著しい背景染色が、融合遺伝子の代わりに正常な遺伝子に由来する正常な蛋白質のドメインと結合するプローブによって引き起こされることが予期され得る。前述の例において、天然蛋白質Aと結合されるプローブAの反応基は、プローブBを募り、これと相互作用するかもしれない。また、もし、全ての結合されないプローブAが、効果的に除去されないならば、プローブAおよびB間で望まれない相互作用が、前記試料とプローブBとの接触において生じ得る。いずれの出来事も、プローブBが融合蛋白質においてプローブAと並列しないという事実にもかかわらず、エネルギ転移シグナルを生じさせる。
【0022】
したがって、本発明の好適な実施形態において、第1プローブの反応基は、前記プローブの自己会合を回避するために、第2プローブと直接または即座に反応しない。これは、各プローブによる融合蛋白質の最適な認識および前記融合蛋白質における前記プローブの並列のために好都合である。さらに、直接に結合された、または多重結合されたプローブ間で生じる、場違いのエネルギ転移を回避し、特有の背景シグナルを減少させる。このことは、エネルギ転移シグナルが、並列したプローブを忠実に反映することを確実にするために重要である。
【0023】
本発明は、もし、第1プローブの反応基が、前記プローブの自己会合を回避するために少なくとも第2プローブと反応的でない場合、いわゆる「架橋」物質が、前記プローブ間の相互作用を調節するために用いられてもよく、前記プローブにおける色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように前記プローブの並列を調節可能にする。物質は、FRETに好都合となるように、並列されたプローブにおける色素の空間的構造を調節するために、プローブ、反応基および/または色素と結合またはこれらを修飾可能なあらゆる種類の化合物であってもよい。好ましくは、物質は、2〜100オングストローム以内の相互間隔で、前記色素の並列を可能にする。前記物質は、好ましくは、試料に加えられ、次いで、色素複合プローブが、並列されたプローブにおける前記色素の空間的構造を調節するのに効果的な量で、標的融合蛋白質に対して結合される。有利には、前記物質は、高い特異性および高い親和性をもって反応基に結合する。また、かかる物質は、比較的小さいのが好ましく、これによって、架橋物質は、色素のペア間の距離、および色素のペアの相対的な配向に最小限に影響するのみである。
【0024】
好適な実施形態において、少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法が提供され、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、前記少なくとも第1および第2のプローブの並列を調節可能にする反応基を備え、前記第1プローブの反応基は、前記第2プローブと直接反応せず、プローブセットを提供することと、細胞を含む試料を提供することと、前記融合蛋白質において前記プローブを並列可能にする条件下で、前記細胞を、前記プローブと接触させることと、あらゆる結合されないプローブおよびあらゆる非特異的に結合されたプローブを除去することと、前記プローブを、前記第1プローブの少なくとも反応基を前記第2プローブに結合可能な物質と接触させることと、前記融合蛋白質の存在を決定するために、前記プローブの並列を、FRETを介して検出することとを含む。
【0025】
プローブセットを用いる方法であって、少なくとも1つのプローブは、反応基を含み、プローブは、直接に相互作用せず、架橋物質を必要としない方法が幾分好都合である。第一に、直接に相互作用し得るプローブを用いる方法と比較して、特異性の向上および背景染色の低減が達成される。結局、反応基が架橋物質を介して効果を発揮するために、プローブは、前記物質の添加の前に、互いに近接して並列している必要があり、すなわち、1つのプローブが、同一の融合蛋白質において隣接する別のプローブと結合することによって生じる。第二に、手順は、速く、かつ簡単である。なぜならば、別々の接触/洗浄ステップが、各個別プローブに必要とされないからである。したがって、単一の行為において全て共に、試料とプローブの混合物とを接触させることが可能である。同様に、あらゆる結合されないプローブおよびあらゆる非特異的に結合されたプローブを、同時に除去することができる。詳細な説明においてここで例示されるように、少なくとも第1および第2の分子プローブのセットが、かなり好ましく、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、各プローブは、反応基を備える。物質は、好ましくは結合または「架橋」することができ、少なくとも2つの反応基である。好適な実施形態において、プローブセット内の各プローブは、同一の反応基を備える。また、プローブセット内の各プローブは、異なる反応基を備えるが、同一の反応性を有し得る。これによって、反応基のための少なくとも2つの同一の結合部位を有する1つのタイプの架橋物質の使用を可能にする。
【0026】
好適な実施形態において、プローブは、複数の反応基を備え、前記プローブを、架橋物質の複数の分子と相互作用させることができる。複数の反応基を有するプローブは、前記プローブと架橋物質との間の相互作用の可能性を理論的に高めるであろう。さらに、本発明の実施の容易さのために、適切な反応基またはその誘導体が、商業的に利用可能であるとともに、プローブに容易かつ効果的に付着され得る。
【0027】
本発明に従って、特に関心ある反応基はビオチンであり、特に適切な架橋物質は、アビジンまたはストレプトアビジンである。アビジンは、約68000ダルトンの分子量および8〜10オングストロームの直径を有する卵白由来の糖蛋白質である。これは、4つの同一のサブユニット鎖からなる。1つのアビジンまたはストレプトアビジン分子は、ビオチンの4つの分子と結合することができる。アビジンは、ビオチンに関して、非凡に高い親和性(親和性定数>1015M−1)を有する。この高い親和性は、アビジンとビオチン標識化プローブとの間の、迅速に形成され、かつ安定的な複合体の使用者を安心させる。蛋白質ストレプトアビジンは、細菌Streptomyces avidiniiによって産生され、アビジンと非常に類似する構造を有し、また、ビオチンと強固に結合する。それはしばしば、より低い非特異的結合を示し、したがって、アビジンの代わりに頻繁に用いられる。ビオチンアビジン複合が形成されると、その結合は、本質的に不可逆的である。ビオチンアビジン系は、幅広く用いられ、ビオチン化された抗体、レクチン、または核酸プローブを用いることによる抗原、複合糖質および核酸の検出ならびに局在化において非常に有用であることを証明した。前記のように、小さい寸法の反応基が、色素のペア間の狭い間隔を達成するのに有利である。ビオチンは、たった244ダルトンの分子量を有するビタミンである。また、多くのビオチン分子が蛋白質に結合されることができ、ビオチン化蛋白質は、アビジンの複数の分子を結合することができる。アビジン、ストレプトアビジンおよびビオチンは、多くの商業的な出所から入手可能である。ビオチン複合物を調製するための種々の標準的手順が、当業者によって知られており、このほとんどが1日以内に完了され得る。さらに、蛋白質ビオチン化のために必要な全ての構成物を含むビオチン化キットは商業的に入手可能である。
【0028】
各プローブが異なる反応基を備えるプローブセットが用いられる場合、適切な物質は、各反応基のうち少なくとも1つを結合することができる分子を含む。代替的に、かかる結合物質は、少なくとも2つの分子の複合体を含み、これらは、互いに共有結合して、または共有結合せずに、付着されることができ、各分子は、反応基と結合することができる。
【0029】
本発明は、本発明に従ったプローブセットを用いて単細胞レベルにおいて融合蛋白質を検出する方法を提供し、各プローブは、プローブの結合ドメインを介して前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位に結合可能であり、すなわち一方のプローブは、融合蛋白質のN末端断片を含む蛋白質断片を対象とし、他方のプローブは、同一の融合蛋白質のC末端断片を含む蛋白質断片を対象とする。融合蛋白質は、あらゆる種類の蛋白質性物質を含み、融合遺伝子の転写および翻訳後に形成される。融合遺伝子は、別の遺伝子またはこれに由来する部分と結合された1または複数の遺伝子の一部分を含む。融合蛋白質は、染色体転座、逆位または欠失の結果生じ得るものである。好適な実施形態において、提供される方法は、腫瘍特異的融合蛋白質を検出するために用いられる。融合蛋白質は、内生的に発現された蛋白質であるか、あるいは遺伝子操作の結果生じ得るものである。本発明に従った方法を用いて容易に検出され得る悪性腫瘍中の融合蛋白質は、表1に列挙されたものを含むが、これらに限定されない。
【0030】
本方法は、細胞内融合蛋白質の存在を検出するために、細胞完全性の破壊、たとえば、細胞溶解物の調製を必要としない点で、非常に適切である。細胞の形態完全性の保存は、単細胞レベルでの分析、たとえばフローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡検査を可能とする。フローサイトメトリーのFRETシグナルの検出は、異種集合における特定の個別の細胞の、迅速な多変量分析を実行する能力を提供する。フローサイトメトリーの主要な利点は、量的なデータを直接与えること、および非常に迅速であること(結果が数時間で得られる)である。
【0031】
本発明において提供される方法は、単細胞レベルでの融合蛋白質の検出を可能とする。好適な実施形態において、提供される方法は、単細胞レベルでの細胞内蛋白質を検出するために用いられる。細胞内融合蛋白質を検出するとき、細胞を含む試料は、材料の浸透化および形態の保存を得るように処理される。好適な処理は、細胞マトリクスおよび細胞中の蛋白質の形態完全性を固定かつ保存するのみならず、最も効率的な程度のプローブ、たとえば抗体の浸透を可能とするものである。
【0032】
たとえば、細胞表面または細胞溶解物における融合蛋白質の存在を検出するためにしか本質的に適用されることができない「捕獲/検出」方法とは異なり、本方法は、免疫表現型特性を介して細胞の混合物中に存在する細胞のサブセットのゲーティングを可能とする。したがって、ここで提供される方法は、正常な細胞の大きな背景において、悪性腫瘍細胞の稀な集合中の融合蛋白質の検出を可能とする。これは、治療効果の評価のために治療中または治療後に微小残存病変(MRD)を検出する場合において、融合陽性細胞の低い頻度を検出するのに本質的に好都合である。好適な実施形態において、提供される方法は、単細胞レベルでの融合蛋白質の存在を検出するために単細胞を同定および/または単離する多変量フローサイトメトリーを含む。提供される方法を実施するのに必要なものは、フローサイトメトリーの設備のみである。重要なことに、手順は、ありふれた技術を有する人員によって平凡な実験室において実行され得る。
【0033】
100を超える異なる融合遺伝子および融合蛋白質が、種々のタイプの癌において述べられてきた。前述のように、提供される方法は、単細胞レベルでの正常な蛋白質の存在と異常な融合蛋白質の存在とを区別可能にする。理論的に、融合蛋白質の2つの異なるドメインを認識する2つの抗体は、融合遺伝子の代わりに正常な遺伝子由来の正常蛋白質におけるドメインと結合することによる背景染色を生じさせ得る。しかしながら、一般的に、2つの正常な蛋白質のうち1つは、細胞表面および/または細胞内マーカーによって規定されるように、標的細胞集合における検出可能な発現レベルを達成する。さらに、正常な蛋白質および融合蛋白質は、しばしば、細胞内発現パターンを異にし、頻繁に、異なる亜細胞局在化を生じさせる16,17。これは、2つの異なる正常な蛋白質の同時発生の共局在化が、標的細胞集合における有効なレベルで生じる可能性は低いことを暗示する。特に、FRETシグナルに充分なプローブの同時発生の並列は、仮に生じるとしても正常な細胞において稀であろう。
【0034】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを産生する方法がここで提供され、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記第1および第2のプローブの並列を可能にする反応基を備え、この方法は、各プローブを色素と、前記プローブおよび前記色素の複合体を形成するために接触させることと、前記複合体を精製することとを含み、少なくとも1つのプローブを反応基またはその誘導体と、前記プローブおよび前記反応基の複合体を形成するために接触させることと、前記複合体を精製することとをさらに含む。フォレスター半径(Forester radius)(Ro)は、50%のエネルギ転移に対応する距離であって、ドナー/アクセプターの各ペアを特徴付ける。その値は、一般的に30〜60オングストロームである。本明細書中において、用語「色素」は、別の色素と併せて、FRET分析のようなエネルギ転移分析に用いることができる置換基を示す。前述したように、FRETは、通常、共に蛍光であるドナーおよびアクセプター色素間での相互作用に基づく。1つの実施形態において、本発明は、前記色素のうち少なくとも1つが蛍光色素であるプローブセットを用いる。しかしながら、非蛍光アクセプターが用いられてもよく、FRETはドナー蛍光の消光によって検出される。並列されたプローブの結果として、ドナー蛍光の減少を監視することはしばしば、アクセプター蛍光の増加ほど感度が高くない。したがって、好適な実施形態において、少なくとも2つの蛍光標識化されたプローブが、詳細な説明において例示したように、融合蛋白質の検出に用いられる。好適な蛍光色素の例は、従来のフローサイトメトリーによる分析に適したものであって、フルオレセインラベルを含むものである。たとえば、5−(および6)−カルボキシフルオレセイン(carboxyfluorescein)、5−または6−カルボキシフルオレセイン、6−(フルオレセイン)−5− (および6)−カルボキサミド(carboxamide)ヘキサン酸(hexanoic acid) およびフルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)、Alexa Fluor色素、たとえばAlexa Fluor 488またはAlexa Fluor 594、シアニン色素、たとえばCy2、Cy3、Cy5、Cy7、任意に置換されたクマリン(coumarin)、R−フィコエリトリン(R- phycoerythrin)、アロフィコエリトリン(allophycoerythrin)、テキサスレッド(Texas Red)およびプリンストンレッド(Princeston Red)、ならびにR−フィコエリトリンおよびたとえばCy5またはテキサスレッドの複合体およびフィコビリプロテイン(phycobiliproteins)のメンバーである。関心ある他の色素は、量子ドット色素であり、これらは、ほぼ無限の色のパレットに入ってくる。フローサイトメトリーによるエネルギ転移検出に適切なドナー/アクセプターのペアに関する広範囲の情報が、Szollosi et al.において発見され得る。蛍光色素の好適な組合せは、デュオクロム(duochromes)とも称される古典的なタンデム複合体において用いられるそれらの色素を含む19
【0035】
提供される方法は、細胞を含む試料を提供することを含み、これによって前記試料は、もし細胞内融合蛋白質が検出されるべきなら、固定および浸透化を任意に受ける。試料は、生物学的試料から得られる初代細胞を含んでもよい。生物学的試料は、血液、血清、尿、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液を含む体液試料であってもよい。また、組織試料、組織ホモジェネートであってもよい。試料は、培養された初代細胞である培養細胞を含み、たとえば、リンパ節生検から得た腫瘍細胞を含む。さらに、試料は、確立された実験室細胞系からの培養細胞、たとえばK562、KASUMI−1、REHまたはCEM細胞系を含み、これらは、American Type Culture Collection(ATCC;オンラインカタログはwww. atcc. org)などの多数の供給源から得ることができる。提供される方法は、細胞中の内生的な融合蛋白質および組み換え融合蛋白質の存在を検出するのに適している。
【0036】
細胞の浮遊物を含む試料を分析するために、好ましくは、試料は、プローブに対する関心ある分子の充分なアクセス可能性を確保することを目的として、材料の形態の保存と、浸透化とを得るように処理される。処理のタイプは、いくつかの要因に左右され、たとえば、用いられる固定液、固定の程度、ならびに関心ある分子のタイプおよび特性である。固定は、ホルムアルデヒドのような固定液によって行われ得る。
【0037】
初代細胞における融合蛋白質を検出するために、特に好都合な点は、関心ある標的細胞集合を規定するための追加のマーカーを用いることである。感染症における多数の重要な生物学的適用例、MRD検出および監視、ならびに遺伝子療法は、典型的に、大きい背景から稀な細胞(たとえば、造血性幹細胞/前駆細胞)を分析すること、および単離することを必要とする。本発明の1つの実施形態において、本方法は、細胞の混合物内の標的細胞集合を規定するための少なくとも1つの細胞マーカー、たとえば細胞表面マーカーまたは細胞内マーカーのために試料を染色することを含み、前記試料を、前記マーカーと選択的に結合することができる化合物と接触させることを含む。好適な実施形態において、かかる化合物は、蛍光色素によって直接に標識化される。適切な化合物は、蛍光標識化された抗体またはこれと機能的に均等な結合断片を含む。また、細胞マーカーに選択的に結合することができる化合物が用いられ、これは色素複合二次試薬(たとえば、蛍光標識化二次抗体)を用いて検出され得る。細胞マーカーは、細胞内マーカーまたは膜結合マーカーのいずれの種類も含み、これらは、細胞の混合物において細胞の部分母集団を区別するために用いられ得る。細胞の混合物は、生の細胞を含む。また、浸透化された細胞、および/または固定された細胞を含む。細胞マーカーは、cluster of differentiation(CD)抗原であってもよい。CDマーカーは、モノクローナル抗体を区別可能なとりわけ造血細胞の細胞表面分子である。造血細胞は、胸腺細胞、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、好中球、好酸球、胚中心B細胞、濾胞樹状細胞、プラズマ細胞、および骨髄細胞を含む。たとえば、適切な細胞マーカーは、CD1、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD33、CD34およびCD117を含む。多数のヒトCDマーカーを対象とするモノクローナル抗体は、種々の供給業者、たとえばBDバイオサイエンス(BD Biosciences)またはアンセルイムノロジーリサーチプロダクツ(Ancell Immunology Research Products)、ベイポート、米国から入手可能である。しばしば、最適な蛍光色素、たとえばCD10−PEまたはCD19−FITCと直接複合される抗体が入手可能であり、これは、本発明に従った方法を実施するための明らかに好適な選択である。
【0038】
好適な実施形態において、多変量フローサイトメトリー/細胞仕分技術を用いて稀な単細胞を同定および/または単離するとともに、関心ある融合蛋白質の存在または不存在によってこれらの細胞をさらに特徴付ける方法が提供される。かかる方法は特に、免疫システム開発、感染症、癌および遺伝子療法における多数の重要な問題に適用するのに適している。典型的には、細胞試料をプローブセットで染色する前に、細胞は、標的細胞集合を規定するために、標準の手順に従って、少なくとも1つの関連する色素複合抗体で標識化される。色素の選択は、これに限られないが好ましくは、融合蛋白質の検出のためのFRET色素に追加して免疫表現型を分類する2または3つの色素の使用方法を目的としなければならない。たとえば、本発明に従ったFRETプローブセットは、免疫表現型特性を介して、白血球サブセットゲーティングを仲介するために、別の色素と組み合わせることができ、たとえばCD10、CD19およびCD20は、骨髄中の前駆B細胞のサブセットを正確に規定し、またはCD1、CD4およびCD8は、胸腺細胞のサブセットを規定し、またはCD34および/もしくはCD117は、肝細胞/前駆細胞の集合を同定する。詳細な説明においてここで示すように、本発明は、細胞の非常に小さいサブセットにおける細胞内融合蛋白質の検出、すなわち癌治療の有効性を評価するのに不可欠なMRDの検出を可能とする方法を提供する。
【0039】
本発明は、細胞中の融合蛋白質の存在を検出するための診断検査キットを提供し、本発明に従ったプローブセットを含む。たとえば、かかるキットは、腫瘍特異的な融合蛋白質陽性細胞の検出を介して、悪性腫瘍細胞、たとえば白血病性細胞を監視かつ定量化するために用いられ得る。ここで提供される診断検査キットは、診断時のみならず、治療中および治療後において、適用された癌治療プロトコルの有効性を評価するのに有用である。
【0040】
【表1】

【0041】
詳細な説明
前述のように、本発明は、プローブセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を決定する方法に関する。この方法は、融合遺伝子を生じさせる染色体転座、逆位または欠失に関与する種々のタイプの癌を診断するために用いられ得る。たとえば、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性骨髄性白血病(CML)を有する成人患者の約35%は、特異的な染色体異常、すなわちフィラデルフィア(Ph)染色体を産生する染色体9と染色体22との間の転座に関連する。この転座は、ABLと呼ばれる蛋白質チロシンキナーゼのゲノム中の部位において生じ、異常なBCR−ABL融合蛋白質、すなわちABL遺伝子と、BCRと呼ばれる別の遺伝子とをin-frame融合した遺伝子産生物を産生する。一般的に、融合蛋白質は、腫瘍形成過程において重要な役割を果たす。たとえば、BCR−ABL融合蛋白質におけるABKのキナーゼ活性は、活性化かつ自由化され、ALL中およびCML中で観察される制御不能な細胞成長を促進する。急性リンパ性白血病が、患者において診断される場合、典型的には、Ph染色体の核型分析などの伝統的な細胞遺伝学的分析を含み、白血病性細胞の全数は、おおよそ1011〜1013である。患者の大部分は、化学療法の約5週間後に完全な回復に達する。完全な回復は、白血病性細胞が身体から全滅したことを意味するものではなく、これらのレベルが、古典的な細胞形態学的方法の感度レベル(たとえば1〜5%)を超えることを意味するものである。このときに、1010以下の悪性細胞が、患者にまだ残存し得る。これらは、微小残存病変(MRD)を示す。残存する悪性細胞の低い頻度の検出は、化学療法期間中における全身腫瘍組織量のより長い追跡検査を可能とし、したがって、治療に対する白血病性細胞の感度をより好ましく評価することを可能とする。MRDのレベルが最終の結果にとって力強い予後因子を示すことが確立される。その一方で、MRDレベルの増加の検出は、近い将来の再発予想を可能にする。本発明において提供される方法は、単細胞レベルでの正常な蛋白質の存在と異常な融合蛋白質の存在との区別を可能とする。
【0042】
この方法の一例として、我々は、TEL−AML1融合蛋白質の検出のためのプローブセットの調製について述べる。また、診断時に、およびMRDのレベルを検出するための追跡検査中に、ALL細胞中のTEL−AML1融合蛋白質の存在を検出するためのこのプローブセットを用いる方法について述べる。
【0043】
実施例
プローブセットの調製
好ましくは、本発明に従ったプローブセットは、2つの蛍光色素複合抗体のセットを含み、各抗体は、反応基を追加的に備える。抗体を産生する方法は、当業者に知られている。たとえば、ポリクローナル抗体を得るために、実験動物は、組み換え蛋白質または合成ペプチドのようなイムノゲンによって免疫にされる。動物の免疫応答は、検査採血および反応性の力価測定によって監視される。適切に高い力価が得られるとき、血液を、動物から得て、抗血清を調製する。蛋白質に対して反応する抗体の質を高めるために抗血清のさらなる分画が、必要に応じて行われてもよい。たとえば、Harlow et al. Antibodies. A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York (1988)を参照。モノクローナル抗体は、本技術分野において知られている種々の技術によって、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)の添加により、免疫にされたマウスの脾臓細胞を骨髄腫細胞系を融合させることによって、得ることができる。融合された細胞を、選択培地、たとえばヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンの混合物を含有する培地において培養する。この選択培地に生残する融合された細胞を、所望の抗体の産生のために(しばしばELISAのような固相免疫検定法によって)検査し、可能ならば、培養物を、各培養ウェルに1つの細胞のみが存在するようにクローン化する。これは、共に不死の単一の前駆細胞と、モノクローナル抗体の産生細胞とから、細胞のクローンを産生する。得た抗体を、従来の免疫学的診断を用いて、たとえば、組み換え融合蛋白質を発現する細胞の溶解物を用いるウエスタンブロッティング法、またはELISAによって、特徴付けることができる。
【0044】
抗体のビオチン化
ビオチンは、典型的に、第一級アミン(すなわちリジン)を介して、蛋白質と複合される。通常、3〜6のビオチン分子が、各抗体に複合される。100mMの炭酸塩(pH8.4)中の抗体を、カラムに亘って透析または交換する。緩衝液を均衡にした後の抗体濃度を測定する(IgGに関して、1mg/mLは1.4のA280を有する。)。もし、抗体濃度が1mg/mL未満である場合、複合は、おそらく最適状態には及ばないであろう。必要に応じて、抗体を、4mg/mLの濃度に希釈する。10mgsのビオチン(N−ヒドロキシコハク酸イミドビオチン(N-hydroxysuccinimidobiotin)、ピアース(Pierce)社製)を、使用の直前に1mLの無水DMSO(無水ジメチルスルホキシド、オールドリッチ(Aldrich)社製)中で溶解させる。反応性ビオチン分子は、不安定である。ビオチンを可溶化したら、即座に用いなければならない。ビオチンを、抗体1mgあたり80μgの割合になるまで加え、即座に混合する。試験管をホイルに包み、室温で2時間回転させる。反応しないビオチンを除去し、抗体を、10mMのTrispH8.2、150mMのNaCl、pHixni中に、交換する(95%エタノール中の5mg/mLのペンタクロロフェノール(10,000x、または1リットルあたり3〜4滴用いる)、シグマ(Sigma)社製)。
【0045】
抗体のFITC複合
FITCは、小さい有機分子であり、免疫グロブリンの第一級アミン(すなわちリジン)を介して蛋白質と典型的に複合される。通常、3〜6のFITC分子が、各抗体に複合され、複合が高くなるほど、溶解性の問題と、内部消光(および低減された輝度)とを生じさせ得る。したがって、抗体は、通常異なる量のFITCと、いくらかの並発反応において複合され、その結果生じる試薬は、最適な複合割合を選択するために、輝度(および背景の粘性)を比較される。全体の複合は、約半日で実行され得る。反応性のあるフルオレセイン分子、フルオレセインイソチオシアネートは不安定である。水薬瓶が割れ、FITCが安定化したら、即座に用いなければならない。FITCの単一の水薬瓶が、100mgs以下の抗体に充分な材料を含有するので、同日に複数のFITC複合を実行することは経済的である。
【0046】
1.抗体調製
500mMの炭酸塩pH9.5中で抗体を、カラムに亘って透析または交換する。緩衝液を均等にした後に抗体濃度を測定する。(IgGに関して、1mg/mLは、1.4のA280を有する。)もし、抗体濃度が、1mg/mL未満であれば、複合は、おそらく最適状態には及ばないであろう。必要に応じて、抗体を、4mg/mLの濃度に希釈する。
【0047】
2.共有結合複合
使用の直前に無水DMSO中でFITC(分子プローブ)の10mgs(1つの水薬瓶における全体の内容物。重さ測定の必要なし。)を溶解する。FITCを、抗体1mgあたり40〜80μgの割合になるまで加え、即座に混合する。試験管をホイルで包み、室温で1時間、インキュベーションし、かつ回転させる。反応しないFITCを除去し、ゲル濾過または透析によって、500mMの炭酸塩9.5pHに、抗体を交換する。
【0048】
3.複合体の特徴化
280および495nmで吸光度を測定することによって、F/Pおよび蛋白質濃度を決定する。IgG:1mg/mLは1.4のA(280)を有する。mw=150,000。IgM:1mg/mLは、1.2のA(280)を有し、mw=900,000。フルオレセイン:1mMは、68のA(495)と11.8のA(280)とを有する。3〜10のF/P値は、おそらく個々のIgGのいかなるものにも最適である。蛋白質濃度:IgG(mg/mL)=[A(280)−0.31*A(495)]/1.4IgM(mg/mL)=[A(280)−0.31*A(495)]/1.2
F/P割合:
IgG:3.1*A(495)/[A(280)−0.31*A(495)]
IgM:15.9*A(495)/[A(280)−0.31*A(495)]
【0049】
FRET分析の検出
骨髄試料を、ALL患者から得て、白血球を、標準的な手順に従って単離する。白血球を、免疫表現型特性を介しては血球のサブセットを規定するために、2つの細胞表面マーカーで標識化する。FITC複合モノクローナル抗ヒトCD19(FITC−CD19)と、PE複合モノクローナル抗ヒトCD10(PE−CD10)とを用いた。細胞を、その後標準的な手順に従って、細胞およびその内容物の完全性を保存するために、たとえば1%パラホルムアルデヒド中で固定する。プローブセットに内部アクセス可能な細胞を産生するために、細胞膜を、サポニンのような界面活性剤を用いて浸透化する。細胞を、本発明に従ったプローブセット(各プローブ0.1〜0.3μg/mL)を含有する混合物によって、暗闇内において4℃で1時間標識化し、これは、TELのヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフに対するCy3標識ビオチン複合抗体と、AMLのRuntドメインに対するCy5標識ビオチン複合抗体とを含む。結合されないプローブを除去するために細胞を洗浄した後、2つの異なる抗体の充分に近接し、かつ安定的な並列を誘導するために、細胞を、標識化されていないアビジンとインキュベーションする。その後、細胞を、フローサイトメトリーにおいて分析する。結果は、図4に示す。パネルAは、診断時に患者から得た前駆B−ALL細胞におけるTEL−AML1融合蛋白質の評価を示す。ALL芽細胞を、これらの光散乱特性に基づいてゲーティングする(前方散乱対側方散乱)。その後、CD19陽性芽細胞をゲーティングする(FL1対側方散乱)。TEL−AML1融合蛋白質の存在は、CD19+/CD10+ALL細胞のサブセットにおいて簡単に検出可能である。パネルBにおいて、治療の効果を評価するための、5週間治療プロトコル後の同一患者からの類似する分析を示す。CD10+芽細胞のたった3%が、TEL−AML1融合蛋白質について陽性であり、すなわち、全白血球のたった0.2%である。TEL−AML1陽性細胞のかかる低い頻度の検出(微小残存病変)は、これまでに示されなかった。
【0050】
我々は、ドナー/アクセプターのペアとしてCy3およびCy5を用いてFRET測定を実行するために、FacsCaliburを用いた。488nmの励起は、Cy3に最適でなく(543がより良い。)、632はCy5に最適であり、この設定を用いて、我々は、妥当で好ましいFRET分布曲線を得ることができた(実際これらは、自己蛍光が相当問題とならないので、FITC/TRITCペアによって得られるものよりも好ましい。)。さらに、我々は、細胞毎に基づく自己蛍光修正のために、488->520の帯域を用いることができた。データ取得および分析を、CellQuestProソフトウェアを用いて実行した。
【0051】



【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】遺伝子Aの上流(5´)部分と、遺伝子Bの下流(3´)部分とからなる融合遺伝子の概略図である。このA−B融合遺伝子は、A−BmRNAに転写され、A−B融合蛋白質に翻訳される。
【図2】ドナー色素である蛍光色素Xおよびアクセプター色素であるYによる蛍光共鳴エネルギ転移(FRET)の原理の概略図である。 A.アクセプター色素Yは、もし、XとYとの間隔が大きすぎる場合は、ドナー色素Xの放射光によって励起されないであろう。B.もしドナーおよびアクセプター色素が充分に小さい場合は(<80オングストローム、好ましくは<50オングストローム)、ドナー色素Xの放射光は、アクセプター色素Yを励起するであろう。
【図3】抗Aおよび抗B抗体プローブのセットによって認識されたA−B融合蛋白質の概略図である。 A.プローブAは、ドナー色素Xと複合され、プローブBは、アクセプター色素Yと複合される(図2を参照)。さらに、両方のプローブは、反応基としてビオチンと複合される。B.抗体プローブAおよびBとインキュベーションした後、これらのプローブは、2つのプローブが同一のA−B融合蛋白質を確かに認識し、かつこれと結合するという条件で、アビジンとのインキュベーションを介して共に結合され得る。2つの抗体のこの並列(ビオチン−アビジン系によって安定化された)は、FRET原理を介して検出可能である(図2を参照)。
【図4】ALL細胞中のTEL−AML1融合蛋白質のFRET仲介検出の実施例。 A.診断での前駆B−ALL細胞。光散乱特性によって規定されたALL芽細胞におけるフローサイトメトリーゲーティング(左)、その後のCD+19芽細胞におけるゲーティング(中央)、およびCD10+/CD19+ALL細胞内のTEL−AML1融合蛋白質の存在の評価(右)。B.追跡検査での前駆B−ALL細胞。治療効果の評価のための追跡検査中のTEL−AML1陽性細胞(微小残存病変)の低い頻度のフローサイトメトリー検出。CD10+芽細胞の3%のみがTEL−AML1融合蛋白質に関して陽性であり、すなわち全白血球の0.2%のみであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットであって、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能とし、少なくとも1つのプローブは、前記少なくとも第1および第2プローブの並列を可能にする反応基を備えることを特徴とするセット。
【請求項2】
前記反応基は、前記色素を、互いに100オングストローム以内の間隔で、好ましくは互いに50オングストローム以内の間隔で、より好ましくは互いに20オングストローム以内の間隔で並列可能にすることを特徴とする請求項1記載のセット。
【請求項3】
前記第1のプローブの反応基は、前記第2のプローブと直接に反応しないことを特徴とする請求項1または2記載のセット。
【請求項4】
少なくとも1つのプローブは、多数の反応基を備えることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のセット。
【請求項5】
前記プローブは、抗体またはこれと機能的に均等な結合断片であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のセット。
【請求項6】
前記色素のうち少なくとも1つは、蛍光色素であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のセット。
【請求項7】
前記蛍光色素は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、テキサスレッド(TR)、R−フィコエリトリン(R−PE)、アロフィコシアニン(APC)、フィコビリプロテインのメンバー、Cy3、Cy5、Cy5、Cy5.5、Cy7、シアニン色素、アレクサフルオール(Alexa Fluor)色素、これらの蛍光色素のタンデム複合体、および量子ドット色素からなる群から選択されることを特徴とする請求項6記載のセット。
【請求項8】
前記反応基は、ビオチンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセット。
【請求項9】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法であって、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能とし、
プローブセットを提供することと、
細胞を含む試料を提供することと、
前記融合蛋白質における前記プローブの並列を可能にする条件下で、前記試料を前記プローブセットと接触させることと、
前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法であって、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、前記少なくとも第1および前記第2のプローブの並列を調節可能な反応基を備え、
プローブセットを提供することと、
細胞を含む試料を提供することと、
前記融合蛋白質における前記プローブの並列を可能にする条件下で、前記試料を前記プローブセットと接触させることと、
前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法であって、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、前記少なくとも第1および前記第2のプローブの並列を調節可能な反応基を備え、前記第1のプローブの反応基は、前記第2のプローブと直接に反応せず、
プローブセットを提供することと、
細胞を含む試料を提供することと、
前記融合蛋白質における前記プローブの並列を可能にする条件下で、前記試料を前記プローブセットと接触させることと、
前記プローブを、前記第1のプローブの少なくとも反応基を前記第2のプローブに結合可能な物質と接触させることと、
前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記物質は、前記色素を、互いに2〜100オングストローム以内の間隔で並列可能にすることを特徴とすることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記反応基は、ビオチンを含み、前記物質は、アビジンまたはストレプトアビジンを含むことを特徴とする請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
標的細胞集合を規定するための少なくとも1つの細胞マーカーのために前記試料を染色することを含み、前記試料を、前記細胞マーカーに選択的に結合可能な化合物と接触させることを含み、前記細胞マーカーは、好ましくはcluster of differentiation(CD)抗原であることを特徴とする請求項9〜13のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記融合蛋白質は、腫瘍特異的融合蛋白質であることを特徴とする請求項9〜14のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
好ましくはフローサイトメトリーを用いて、単細胞レベルで検出を可能にする請求項9〜15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも第1および第2の色素複合プローブを提供する方法であって、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記第1および第2のプローブの並列を可能にする反応基を備え、
各プローブを、前記プローブと前記色素との複合体を形成するために適切な色素と接触させることを含み、
少なくとも1つのプローブを、前記プローブと前記反応基との複合体を形成するために、反応基またはその誘導体とを接触させることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記反応基は、ビオチンを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のプローブセットを含むことを特徴とする診断キット。
【請求項20】
疾患の治療前、治療中および治療後に、前記治療の有効性を評価するための、または疾患を診断および/もしくは分類するための、請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のプローブセットまたは請求項9〜16のうちいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項21】
細胞内融合蛋白質の存在を検出するためのエネルギ転移技術の使用であって、少なくとも第1および第2の分子プローブの使用を含み、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、好ましくは少なくとも1つのプローブは、前記プローブの並列を可能にする反応基を備えることを特徴とする使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットであって、各プローブは、関心ある分子と特異的に結合することができ、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能とし、少なくとも1つのプローブは、関心ある分子との結合に続いて、前記プローブの空間的構造を調節するための反応基を備え、前記反応基は、関心ある分子との結合に関与しないことを特徴とするセット。
【請求項2】
前記反応基は、前記プローブの空間的構造を調節し、前記色素の間隔を、互いに100オングストローム以内に、好ましくは互いに50オングストローム以内に、より好ましくは互いに20オングストローム以内にすることを特徴とする請求項1記載のセット。
【請求項3】
前記第1のプローブの反応基は、前記第2のプローブと直接反応しないことを特徴とする請求項1または2記載のセット。
【請求項4】
少なくとも1つのプローブは、多数の反応基を備えることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のセット。
【請求項5】
前記プローブは、抗体またはこれと機能的に均等な結合断片であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のセット。
【請求項6】
前記色素のうち少なくとも1つは、蛍光色素であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のセット。
【請求項7】
前記蛍光色素は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、テキサスレッド(TR)、R−フィコエリトリン(R−PE)、アロフィコシアニン(APC)、フィコビリプロテインのメンバー、Cy3、Cy5、Cy5、Cy5.5、Cy7、シアニン色素、アレクサフルオール(Alexa Fluor)色素、これらの蛍光色素のタンデム複合体、および量子ドット色素からなる群から選択されることを特徴とする請求項6記載のセット。
【請求項8】
前記反応基は、ビオチンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセット。
【請求項9】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法であって、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能とし、
プローブセットを提供することと、
細胞を含む試料を提供することと、
前記融合蛋白質に対する前記プローブの結合を可能にする条件下で、前記試料を前記プローブセットと接触させることと、
前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法であって、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、関心ある分子との結合後、前記プローブの空間的構造を調節可能な反応基を備え、前記反応基は、関心ある分子との結合に関与せず、
プローブセットを提供することと、
細胞を含む試料を提供することと、
前記融合蛋白質に対する前記プローブの結合を可能にする条件下で、前記試料を前記プローブセットと接触させることと、
前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
少なくとも第1および第2の分子プローブのセットを用いて細胞中の融合蛋白質の存在を検出する方法であって、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素をさらに備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、関心ある分子との結合後、前記プローブの空間的構造を調節可能な反応基を備え、前記第1のプローブの反応基は、関心ある分子との結合に関与せず、かつ前記第2のプローブと直接反応せず、
プローブセットを提供することと、
細胞を含む試料を提供することと、
前記融合蛋白質に対する前記プローブの結合を可能にする条件下で、前記試料を前記プローブセットと接触させることと、
前記プローブを、前記第1のプローブの少なくとも反応基を前記第2のプローブに結合可能な物質と接触させることと、
前記融合蛋白質の存在を決定するためにFRETを介して前記プローブの並列を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記物質は、前記色素の間隔を、互いに2〜100オングストローム以内にすることを特徴とすることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記反応基は、ビオチンを含み、前記物質は、アビジンまたはストレプトアビジンを含むことを特徴とする請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
前記試料を、標的細胞集合を規定するための少なくとも1つの細胞マーカーのために染色することを含み、前記試料を、前記細胞マーカーに選択的に結合可能な化合物と接触させることを含み、前記細胞マーカーは、好ましくはcluster of differentiation(CD)抗原であることを特徴とする請求項9〜13のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記融合蛋白質は、腫瘍特異的融合蛋白質であることを特徴とする請求項9〜14のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
好ましくはフローサイトメトリーを用いて、単細胞レベルで検出を可能にする請求項9〜15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも第1および第2の色素複合プローブを提供する方法であって、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、関心ある分子との結合後、前記プローブの空間的構造を調節可能にする反応基を備え、前記反応基は、関心ある分子との結合に関与せず、
各プローブを、前記プローブと前記色素との複合体を形成するために適切な色素と接触させることを含み、
少なくとも1つのプローブを、前記プローブと前記反応基との複合体を形成するために、反応基またはその誘導体とを接触させることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記反応基は、ビオチンを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のプローブセットを含むことを特徴とする診断キット。
【請求項20】
疾患の治療前、治療中および治療後に、前記治療の有効性を評価するための、または疾患を診断かつ/または分類するための、請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のプローブセットまたは請求項9〜16のうちいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項21】
細胞内融合蛋白質の存在を検出するためのエネルギ転移技術の使用であって、少なくとも第1および第2の分子プローブの使用を含み、各プローブは、前記融合蛋白質の融合領域の反対側に位置する結合部位を認識することができ、各プローブは、色素を備え、前記色素は、エネルギ転移を共に可能にし、好ましくは少なくとも1つのプローブは、前記色素間のエネルギ転移の可能性を高めるように、前記融合蛋白質との結合後、前記プローブの空間的構造を調節可能にする反応基を備え、前記反応基は、関心ある分子との結合に関与しないことを特徴とする使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−505774(P2006−505774A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549717(P2004−549717)
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000776
【国際公開番号】WO2004/042398
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(500534898)エラスムス ユニフェルシテイト ロッテルダム (3)
【氏名又は名称原語表記】Erasmus Universiteit Rotterdam
【住所又は居所原語表記】Dr.Molewaterplein 50,Rotterdam,NETHERLANDS
【Fターム(参考)】