説明

腫瘍関連抗原としての拡張I型スフィンゴ糖脂質鎖

【課題】癌の診断に対する現在のアプローチにおける困難性のために、当該分野におい
て改善された組成物および方法を提供すること。
【解決手段】新規のヒト腫瘍関連抗原であって、より詳細には、例えばその1つの実施形態において、拡張1型スフィンゴ糖脂質鎖およびその使用(例えば、免疫原および腫瘍マーカーとしての使用)に関する腫瘍関連抗原としての拡張I型スフィンゴ糖脂質鎖であり、概して癌の検出に関する化合物および方法を提供するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、概して新規のヒト腫瘍関連抗原に関する。本発明は、より詳細には
、拡張1型スフィンゴ糖脂質鎖およびその使用(例えば、免疫原および腫瘍マー
カーとしての使用)に関する。
【0002】
(発明の背景)
財源および人材の莫大な投資にも関わらず、癌は、依然として死亡の主要な原
因の1つのままである。最新の癌治療は、悪性腫瘍を発症する患者の約50%の
みを治療する。大部分のヒト悪性疾患において、転移は死亡の主要な原因である

【0003】
転移は、遠隔部位における第2の腫瘍コロニーの形成である。大部分のヒト悪
性疾患において、遠隔転移は、しばしばあまりにも小さすぎて、原発腫瘍が処置
される時点では検出されない。さらに、転移性コロニーの広範囲な開始は、通常
、転移性疾患の臨床的症状が明らかである前に起こる。転移におけるサイズおよ
び年齢の変化、それらの分散した解剖学的位置、およびそれらの不均質な組成は
、外科的除去を妨げ、転移性コロニーに送達され得る抗ガン剤の濃度を抑える全
ての因子である。それ故に、原発部位からの腫瘍細胞の播種前の悪性疾患の検出
が、現在の癌治療の効果を向上させるのに必要とされる。
【0004】
異常なグリコシル化は、大部分の癌の型について一般的な特徴であることが観
察されてきた。ヒト癌の診断のために使用される糖質抗原の大部分は、ポリラク
トサミン構造を有し、すなわち、それらはGalβ1→3/4GlcNAcを含
む。ポリラクトサミンは、通常、それらのポリラクトサミン単位構造に従って、
2つのカテゴリーに分類される。Galβ1→3GlcNAc構造を有するポリ
ラクトサミンは、1型鎖と呼ばれ、Galβ1→4GlcNAc構造を有するポ
リラクトサミンは、2型鎖と呼ばれる。主なヒト癌に見出される最も一般的な腫
瘍関連抗原は、ラクト系列2型鎖構造を有し、これは通常、シアリル化および/
またはフコシル化されている。1型鎖抗原は、正常の細胞および組織において豊
富であり、また癌と関連する。例えば、2→3シアリル化Le抗原(N19−
9抗体によって規定されるCA19−9抗原)は、癌関連1型鎖−抗原である。
しかし、これらの公知の抗原の検出に基づく癌診断方法は、高い偽陽性発生数お
よび/または高い偽陰性発生数によって妨害されている。
【0005】
癌の診断に対する現在のアプローチにおける困難性のために、当該分野におい
て改善された組成物および方法が必要とされる。本発明は、この要求を満たし、
さらに他の関連した利点を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって以下が提供されます。
(1) フコシル残基および/またはシアリル残基を含むかまたは含
まない、単離された化合物であって、該化合物は、以下の式:
Galβ1→3GlcNAcβ1→3Galβ1→3GlcNAcβ1→(
3Galβ1→3GlcNAcβ1→)n3Galβ1→4Glcβ1→1Ce

を有し、ここで、nは0または1以上の整数であり、そしてn=1である場合、
少なくとも2つのフコシル残基および/または1つ以上のシアリル残基が存在し
、Galは、ガラクトースを表し、GlcNAcは、N−アセチルグルコサミン
を表し、Glcは、グルコースを表し、そしてCerは、セラミドを表し、そし
てここで、該少なくとも2つのフコシル残基は、α1→4連結を介して該Glc
NAc残基に連結され、かつ/またはα1→2連結を介して該末端Gal残基に
連結され、そして該1以上のシアリル残基は、α2→3連結を介して末端Gal
残基に連結され、かつ/またはα2→6連結を介して1つ以上の末端近傍Glc
NAc残基に連結される、単離された化合物。
(2) 少なくとも2つのシアリル残基が存在する、項目1に記載
の単離された化合物。
(3) 以下の式:
【化1】



3Galβ1→4Glcβ1→1Cer
を有する、項目1に記載の単離された化合物であって、
ここでFucは、フコースを表し、そしてNeuAcは、N−アセチルノイラミ
ン酸を表す、単離された化合物。
(4) 以下の式:
【化2】



を有する、項目1に記載の単離された化合物であって、
ここでFucは、フコースを表し、そしてNeuAcは、N−アセチルノイラミ
ン酸を表す、単離された化合物。
(5) 以下の式:
【化3】



を有する、項目1に記載の単離された化合物であって、
ここでFucは、フコースを表し、そしてNeuAcは、N−アセチルノイラミ
ン酸を表す、単離された化合物。
(6) 以下の式:
【化4】



を有する項目1に記載の単離された化合物であって、
ここでFucがフコースを表す、単離された化合物。
(7) 以下の式:
【化5】



を有する、項目1に記載の単離された化合物であって、
ここでFucがフコースを表す、単離された化合物。
(8) 以下の式:
【化6】



を有する、項目1に記載の単離された化合物であって、
ここでNeuAcが、N−アセチルノイラミン酸を表し、そしてFucがフコー
スを表す、単離された化合物。
(発明の要旨)
簡単に述べると、本発明は、単離された化合物およびこのような化合物を検出
することによって癌をスクリーニングする方法を提供する。1局面において、本
発明は、フコシル残基および/またはシアリル残基を有しても有さなくてもよい
、以下:
【0007】
【化7】



【0008】
の式を有する単離された化合物を提供し、
ここで、nは0または1以上の整数であり、少なくとも2個のフコシル残基お
よび/または1個以上のシアリル残基が存在し、Galはガラクトースを表し、
Glcはグルコースを表し、GlcAcはN−アセチルグルコサミンを表し、C
erはセラミドを表し、ここで、上記少なくとも2個のフコシル残基は、α1→
4結合を介してGlcNAcに連結し、および/またはα1→2結合を介して末
端Gal残基に連結し、そして上記1個以上のシアリル残基は、α2→3結合を
介して末端Gal残基に連結し、および/またはα2→6結合を介して末端付近
の1個以上のGlcNAc残基に連結する。
【0009】
さらなる局面において、本発明は、以下:
【0010】
【化8】



【0011】
の式を有する上記の単離された化合物を提供し、
ここで、Fucはフコースを表し、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を
表す。
【0012】
別の局面において、本発明は、以下:
【0013】
【化9】



【0014】
の式を有する最初に記載された化合物を提供し、
ここで、Fucはフコースを表し、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を
表す。
【0015】
別の局面において、本発明は、以下:
【0016】
【化10】



【0017】
の式を有する最初に記載された化合物を提供し、
ここで、Fucはフコースを表し、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を
表す。
【0018】
なおさらなる実施形態において、本発明は、以下:
【0019】
【化11】



【0020】
の式を有する単離された化合物を提供する。
【0021】
なおさらなる局面において、本発明は、以下:
【0022】
【化12】



【0023】
の式を有するエピトープを含む単離された化合物を提供する。
【0024】
なお他の局面において、本発明の化合物のいずれかは、ポリクローナル抗体ま
たはモノクローナル抗体の産生のための免疫原として使用され得る。
【0025】
本発明の別の局面において、癌をスクリーニングするための方法が提供される
。本方法は、(a)温血動物から生物学的サンプルを単離する工程;および(b
)化合物の存在または量についてサンプルを試験する工程を包含する。
【0026】
(発明の詳細な説明)
本発明は、概して癌の検出に関する化合物および方法に関する。より具体的に
は、本発明の開示は、ラクト系列の1型鎖が癌組織における拡張された形態で生
じることを示す。
【0027】
上で示されるように、1型ラクトサミン鎖(Galβ1→3GlcNAc)は
、正常な細胞および組織において豊富であることが公知である。拡張2型鎖(す
なわち、Galβ1→4GlcNAcコア構造が繰り返される)を有するポリラ
クトサミン抗原が検出されたが、拡張1型鎖を有するポリラクトサミン抗原は検
出されなかった。従って、ラクト系列1型鎖は、伝統的に拡張形態で生じないと
考えられてきた。
【0028】
本発明において開示されるように、ラクト系列I型鎖の拡張形態(すなわち、
Galβ1→3GlcNAβ1→[3Galβ1→3GlcNAcβ→]3G
alβ1→R、シアリル残基および/またはフコシル残基を有しても有しなくて
もよい)は癌組織内に存在する。2つの代表的な拡張形態のラクト系列1型鎖は
、(腫瘍細胞から抽出された)糖脂質画分を分取カラムおよび薄層クロマトグラ
フィーに供することによって単離された。
【0029】
ゆっくりと移動するシアル酸−Lewis(sLe)活性スフィンゴ糖脂
質(GSL)を、結腸腺癌細胞系統Colo205のモノシアリルガングリオシ
ド画分から精製して均質にした。この化合物を、2種の異なる溶媒系でHPLC
および分取HPTLCによって精製し、α−sLeαモノクローナル抗体(MA
b)NKH−1を使用するTLC免疫染色によって強く染色した。穏やかな酸加
水分解(1%酢酸、100℃で1時間)により、二量体−Leα標準GSLと共
に移動し、α−二量体LeαMAb ST−421によって強く染色された、よ
り早く移動する成分を得た。この構造は、H−NMR分光法によって、シアリ
ル−二量体Leα(以下の構造を参照のこと)であると確認された。
【0030】
【化13】



【0031】

【0032】
上述した特定の糖脂質に加え、Le−LeエピトープおよびLe−Le
エピトープは、追加の[3Galβ1→3GlcNAcβl→]単位を有す
る拡張1型として提供され得る。さらに、Le−LeエピトープおよびLe
−Leエピトープは、糖タンパク質(例えば、高分子量ムチン様血清糖タン
パク質)によって運搬され得る。
【0033】
本明細書中に提供される教示によれば、他の拡張形態のラクト系列1鎖化合物
が生物学的出発物質(例えば、癌組織)から単離され得るか、または構造的同定
を伴って化学的に(および/または酵素的に)合成され得ることが当業者に明ら
かである。簡単に述べれば、脂質またはタンパク質のいずれかに結合した炭水化
物の構造は、分解、質量分析法(電子直接試料導入(EI))および高速原子衝
撃(FAB)を含む)、およびメチル化分析(以下に記載される技術、例えば、
Nudelmanら.,J.Biol.Chem.261:5487−5495
,1986)に基づいて、決定され得る。分解分析は、化学的に、および/また
は酵素的に(例えば、グリコシダーゼによって)達成され得る。分解分析によっ
て示唆される糖質配列は、メチル化分析(例えば、Hakomori,J.Bi
ochem.55:205−208,1964)、続いて、過メチル化糖の化学
イオン化質量分析(例えば、Stellnerら、Arch.Biochem.
Biophys.155:464−472,1974;Leveryら,Met
h.Enzymol.138:13−25,1987)によって決定され得る。
代替的に、またはこれらの技術と組み合わせて、EI質量分析法は、過メチル化
グリカン上で、またはインタクトなグリカンの適切な分解後に実施され得る(例
えば、Kannagiら、J.Biol.Chem.259:8444−845
1,1984;Nudelmanら,J.Biol.Chem.263:139
42−13951,1988)。糖質配列の均質性は、種々の化学的および物理
的基準(インタクトなグリカン、またはメチル化したグリカンのプロトンNMR
分光法、およびFAB質量分析法)を含む)に基づいて実証され得る。一旦、糖
質構造が実証されれば、この糖質またはその誘導体あるいはその非糖質官能性等
価物は、当業者に周知の技術を使用して合成され得る。
【0034】
本発明の化合物は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体(MAb)
の産生のための免疫原として使用され得る。ポリクローナル抗体は、標準方法に
よって産生され得る。例えば、簡単に述べれば、ポリクローナル抗体は、本発明
の化合物による動物の免疫化およびその血清の後の回収によって産生され得る。
一般に、血清回収前に、初期免疫化後に1回以上の追加免疫を行うことが好まし
い。MABは、一般に、KohlerおよびMilstein(Nature2
56:495−497,1975;Eur.J.Immunol.6:511−
519,1976)の方法によって産生され得る。簡単に述べれば、本発明の化
合物で免疫化した動物のリンパ節および/または脾臓は、骨髄腫細胞と融合され
て、ハイブリッド細胞系統(「ハイブリドーマ」または「クローン」)を形成す
る。各ハイブリドーマは、単一の型の免疫グロブリンを分泌し、骨髄腫細胞と同
様に、無限な細胞分裂のための能力を有する。ハイブリドーマを介するMAbの
産生の代替は、バクテリオファージおよびバクテリアを使用するMAb発現ライ
ブラリーの形成である(例えば、Sastryら、Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA86:5728,1989;Huseら.,Science
246:1275,1989)。所望された特異性を示す抗体の選択は、当業者
に周知の種々の方法で実施され得る。
【0035】
本発明の化合物の免疫原性を増加させるために、その化合物をキャリアと合わ
せることが所望され得る。適切なキャリアとして、不活化した細菌、カサガイヘ
モシアニン(keyhole limpet hemocyanin)、サイロ
グロブリン、ウシ血清アルブミンおよびそれらの誘導体が挙げられる。例えば、
GSLsLe−LeまたはLe−Leの糖質残基の全てまたは一部は、
キャリアと合わせられ得る。本発明の化合物は、種々の手段(吸着および共有結
合を含む)によってキャリアと合わせられ得る。
【0036】
免疫原としての本発明の化合物の使用の代表例は、Le/Le抗原による
マウスの免疫化である。簡単に述べれば、Colo205細胞から単離したLe
/Leを、酸処理したSalmonella minnesotaeの懸濁
液と合わせ、尾静脈を介してBALB/cマウスに注射し、そしてこの注射を1
0日間の間隔で3回繰り返した。最終注射後、免疫化したマウスの脾細胞を採取
し、骨髄腫細胞と融合した。免疫原と優先的な反応性を示したハイブリドーマ、
IMH2を樹立し、ATCC(American Type Culture
Collection,10801 University Boulevar
d, Manassas, Virginia 20110 USA)にATC
C番号HB11026として寄託した。このハイブリドーマは、IgG3アイソ
タイプを有するMAb 1MH2を産生する。
【0037】
Le−Le抗原および/またはLe−Le抗原のような拡張形態のI
型鎖抗原を検出するための方法は、癌についてスクリーンするために使用され得
る。例えば、GSL Le−LeおよびGSL Le−Leを、種々の
腫瘍サンプルから調製した中性糖脂質画分のそれぞれMAb 1MH2およびM
Ab NCC−ST−421で免疫染色するTLC(Watanabeら,Jp
n.J.Cancer Res(Gann)76:43−52,1985に従っ
て確立された)によって検出した。このようなサンプルとして、結腸癌、乳癌、
ホジキン病、胆嚢癌および胎児性横紋筋肉腫由来の組織が挙げられる。例えば、
GSL Le−Leは、脾臓、肝臓、腎臓、胎盤および肺由来の正常の組織
から、糖脂質画分内で検出されなかった。本明細書中に提供される教示によれば
、腫瘍関連拡張1型抗原を検出するための種々の手段(GSL Le−Le
およびLe−Leのような腫瘍関連拡張I型抗原に対して特異的な結合パー
トナーの使用を含む)が本発明の方法内で使用され得ることは、当業者にとって
明らかである。例えば、Le−LeまたはLe−Leエピトープについ
て特異的な抗体は、上記のように産生され得、免疫複合体の存在は、免疫複合体
の形成を可能にするのに十分な条件下および時間で、このような抗体の生物学的
サンプルとの接触(例えば、インキュベーション)後、試験され得る。
【0038】
上記の抗原とこの抗原に対して特異的な抗体との間で形成された免疫複合体の
存在の検出は、種々の公知の技術(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)お
よび酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA))によって達成され得る
。適切なイムノアッセイとして、Davidら(米国特許第4,376,110
号)の二重モノクローナル抗体サンドウィッチイムノアッセイ技術;モノクロー
ナル−ポリクローナル抗体サンドウィッチアッセイ(Wideら、Kirkha
m and Hunter編,Radioimmunoassay Metho
ds E.and S.Livingstone,Edinburgh,197
0);Gordonら(米国特許第4,452,901号)の「ウエスタンブロ
ット」法;標識されたリガンドの免疫沈降法(Brownら,J.Biol.C
hem.255:4980−4983,1980);例えば、Raines a
nd Ross(J.Biol.Chem.257:5154−5160,19
82)によって記載されるような酵素結合イムノソルベントアッセイ;免疫細胞
学技術(蛍光色素の使用(Brooksら,Clin.Exp.Immunol
.39:477,1980)を含む);および活性の中性化(Bowen−Po
peら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:2396−2
400,1984)が挙げられる。上記のイムノアッセイに加えて、多数の他の
イムノアッセイ(米国特許第3,817,827号;同第3,850,752号
;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,5
33号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;および同第4
,098,876号に記載されるイムノアッセイを含む)が利用可能である。
【0039】
検出の目的のために、抗体は標識されてもよいし、標識されなくてもよい。標
識されていない場合、抗体は凝集アッセイにおける使用を見出す。さらに、非標
識抗体は、免疫複合体と反応性である標識された分子と組み合わせて、あるいは
、免疫グロブリンに対して特異的な抗体のような、この化合物に対して指向され
た抗体と反応性である標識された抗体(二次抗体)と組み合わせて、使用され得
る。あるいは、この抗体は直接標識され得る。それらが標識される場合、レポー
ター基は、ラジオアイソトープ、蛍光色素、酵素、発光体(luminesce
r)、または色素粒子を含み得る。これらの標識および他の標識は、当該分野に
おいて周知であり、例えば、以下の米国特許第3,766,162号;同第3,
791,932号;同第3,817,837号;同第3,996,345号;お
よび同第4,233,402号に記載される。
【0040】
免疫複合体を検出するための1つの好ましい実施形態において、レポーター基
は、抗体に結合される。免疫複合体を検出する工程は、実質的に全ての非結合抗
体を除去する工程、および次いでこのレポーター基の存在を検出する工程を包含
する。非結合抗体は、この抗原に結合しなかった抗体である。
【0041】
別の好ましい実施形態において、レポーター基は、この抗原に対して特異的な
抗体に結合し得る二次抗体に結合する。免疫複合体を検出する工程は、(a)実
質的に全ての非結合抗体(すなわち、この抗原に結合しなかった抗体)を除去す
る工程、(b)二次抗体を加える工程、(c)実質的に全ての結合していない二
次抗体を除去する工程、および、次いで(d)このレポーター基の存在を検出す
る工程を包含する。例えば、抗原に対して特異的な抗体がマウス由来である場合
、二次抗体は抗マウス抗体である。
【0042】
免疫複合体を検出するための第3の好ましい実施形態において、レポーター基
は、この免疫複合体に結合し得る分子に結合する。この検出する工程は、(a)
この分子を添加する工程、(b)実質的に全ての非結合分子を除去する工程、お
よび、次いで、(c)このレポーター基の存在を検出する工程を包含する。免疫
複合体に結合し得る分子の例は、プロテインAである。
【0043】
免疫複合体と反応性である標識された抗体、標識された第2の抗体または標識
された分子の使用の代替は、一般的には標識された抗原を使用するイムノアッセ
イである。このようなアッセイ(「間接的」または「競合的」)において、サン
プル中に存在する抗原は、この抗体について標識された抗原と競合する。
【0044】
免疫複合体を検出するための種々の方法が本発明において使用され得ることは
、当業者にとって明らかである。この方法のいずれかにおける使用に適切なレポ
ーター基として、ラジオアイソトープ、蛍光色素、酵素、発光体、および色素粒
子が挙げられる。さらに、本発明の腫瘍関連拡張1型抗原に対して特異的な結合
パートナー(抗体を除く)は、このような抗原について試験するために使用され
得、このような結合パートナーと抗原との間で形成された複合体は、免疫複合体
について上に記載された技術に類似の技術によって検出され得る。
【0045】
以下の実施例は、例示のために提供され、限定するためではない。
【0046】
(実施例)
(実施例1)
(腫瘍組織および正常組織から調製された中性糖脂質のMAB NCC−ST
−421を用いるHPTLC免疫染色およびイムノアッセイ)
(A.モノクローナル抗体およびイムノアッセイ)
MAb ST−421を、以前に記載されたとおりに樹立した(Watana
beら,Jpn.J.Cancer Res.(Gann)76:43−52,
1985)。MAb MNH−1(1型N−アセチルラクトサミン鎖(Galβ
1→3GlcNAcβ1→R)を規定する)を、本発明者らの研究室で調製した
;MAb 1B2(2型N−アセチルラクトサミン鎖(Galβ1→4GlcN
Acβ1→R)を規定する)を、以前に記載されるとおりに樹立した(Youn
gら,J.Biol.Chem.256:10967−10972,1981)
。抗LeMAbを、Chembiomed Ltd.(Edmonton,A
lberta,Canada)から得た。抗LeMAb AH6を、以前に記
載されるように樹立し(Abeら,J.Biol.Chem.258:1179
3−11797,1983)、そしてこれは、Leとの交差反応性を示さなか
った。抗LeMAbを、Chembiomed Ltd.(Edmonton
,Alberta,Canada)から購入し、そしてこれは、1型H鎖との交
差反応性を示した。別の抗LeMAbを、Monocarb(Lund,Sw
eden)から購入し、そしてこれは、Le、1型H鎖、およびLeとの反
応性を示した。HPTLC免疫染色を、Whatman HPTLCプレート(
HP−KF)を使用して、元々Magnaniら(Magnaniら,Anal
.Biochem.109:399−402,1980)により記載された方法
の改変版(Kannagiら,J.Biol.Chem.257:4438−4
442,1982;Kannagiら,J.Biol.Chem.257:14
865−14874,1982)により実施した。
【0047】
(B.糖脂質調製)
使用された全ての糖脂質サンプルを、単離するかまたは酵素的に合成した。V
NeuAcnLc、IVNeuAcIIIFucLc、VIFu
cnLc、およびIVFucLcを、それぞれヒト胎盤、肝臓腺癌、ヒト
O型赤血球、およびブタ腸から、IHW(55:25:20)での抽出、次いで
Folch分配、DEAE−Sephadexクロマトグラフィー、およびIa
trobeads 6RS−8010カラムでのHPTLCの後、単離した(M
agnaniら,J.Biol.Chem.257:14365−14369,
1982;Watanabeら,J.Biol.Chem.254:8223−
8229,1979;Hakomoriら,J.Immunol.98:31−
38,1967;Stellnerら,Biochemistry 12:65
6−661,1973)。nLcおよびIIIFucLcを、100℃で
1時間1%酢酸中でサンプルを加熱することによる、それぞれVINeuAc
nLcおよびIVNeuAcIIIFucLcの脱シアリルにより調製
した。IVGlcNAcnLc、IVGalβ1→3−GlcNAcnL
、IVGalβ1→3[Fuc1→4]GlcNAcnLcおよびIV
Galβ1→3[Fuc1→4]GlcNAcIIIFucnLc4(Le
−Le)を、酵素的合成により調製した。IVGalβ1→3GlcNA
cIIIFucnLcを、IVGalβ1→3[Fuc1→4]GlcN
AcIIIFucnLcのα−フコシダーゼ処理により調製した;すなわち
、100μgの糖脂質を、0.05単位のウシ腎臓α−L−フコシダーゼ(Si
gma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)を含む0.2
Mのクエン酸緩衝液(pH4.5)と共に2時間37℃でインキュベートした。
IVIIIFucLc、VIIIFucnLc、およびVI
FucnLcを、Colo2O5由来のα1→3/4フコシルトランス
フェラーゼを使用して、基質としてIVFucLc、nLc、およびVI
FucnLc(それぞれ)のα1→3フコシル化により生合成的に調製した
。α1→3/4フコシルトランスフェラーゼを、4℃にて2容量の50mM H
epes緩衝液(pH 7.0)、0.5Mスクロース、1mM EDTA、お
よび1%Triton CF−54中、Potter−Elvehjemホモジ
ナイザーでColo2O5細胞から可溶化した。このホモジネートを、100,
000×gで1時間遠心分離し、そしてその上清を透析により細胞の元の容積ま
で濃縮した。この酵素調製物を−80℃で必要になるまで保存した。
【0048】
酵素的α1→3/4フコシル化を、1mlの全容積中に1mgのスフィンゴ糖
脂質(GSL)基質、1mgのデオキシタウロコール酸塩、10μmolのMn
Cl、25μmolのHepes緩衝液(pH7.0)、5μmolのCDP
−コリン、6μmolのGDP−フコース、および500μlの酵素調製物を含
む反応混合物中で行った。この反応混合物を、37℃で16時間インキュベート
し、次いで凍結乾燥し、イソプロパノール−ヘキサン−水(IHW)(55:2
5:20)で超音波処理により抽出し、そして遠心分離した。その上清を、Ia
trobeads6RS−8010カラムで55:40:5〜55:25:20
のIHW勾配溶出を使用して200分間にわたってHPLCにかけた。2mlず
つのフラクションを収集し、そして最終生成物を含むチューブを、クロロホルム
−メタノール−水50:40:10中のHPTLC移動度に従ってプールした。
GSLバンドを、オルシノールスプレー試薬により可視化した。
【0049】
規定された構造を有する各GSLを、特定のMAb(単数または複数)との反
応性により特徴付けた(すなわち、抗LeMAbと反応するが抗LeMAb
AH6とは反応しないLe/Le抗原;AH6とは反応するが抗Le
Abとも抗LeMAbとも反応しないLe/Le;抗LeMAbおよび
MAb ST−421と反応するLe/LeおよびLe/Le)。
【0050】
(C.TLC免疫染色)
種々の腫瘍サンプルから調製された中性糖脂質フラクションのTLC免疫染色
は、−Le−活性セラミドペンタサッカリドよりも遅く移動するポジティブな
バンドの存在、および抗LeMAbとの交差反応を示した。このバンドは、M
Ab NCC−ST−421により強く染色され、そして以前に試験された腫瘍
の大部分に見られた。結腸癌、乳癌、ホジキン病、胆嚢癌、および胎児性横紋筋
肉腫由来の例。
【0051】
(実施例2)
(ダイマーLe抗原およびLe−Le抗原の単離)
(A.腫瘍組織の調製)
Colo205細胞(ATCC)(Sempleら,Cancer Res.
38:1345−1355,1978)を、10%ウシ胎児血清を含有するRP
MI1640培地中で増殖した。細胞を採取し、そしておよそ7日間毎に継代し
た。採取された細胞をトリプシン処理し、遠心分離し、リン酸緩衝化生理食塩水
(pH7.4)で2回洗浄し、そして血球計を使用して計数した。4×10
の細胞を、6匹の無胸腺症(ヌード)マウスの各々に皮下注射した。腫瘍(それ
ぞれ約2ml)を、2週間後に切除し、そして必要になるまで−80℃で凍結保
存した。
【0052】
(B.Colo205腫瘍由来の移動遅延性Le活性成分(ダイマーLe
)の単離)
約200gの腫瘍を、イソプロパノール−ヘキサン−水(IHW)(55:2
5:20)で抽出し、次いでFolch分配、DEAE−sephadexクロ
マトグラフィー、そしてIatrobeads 6RS−8010カラムのHP
LCにかけた。上相中性フラクションの勾配溶出を、55:40:5〜55:2
5:20のIHWで200分間にわたって行った。2mlずつのフラクションを
収集し、そしてクロロホルム−メタノール−水(50:40:10)中のHPT
LC移動度に従ってプールした。遅延移動性Le活性フラクション(TLC免
疫染色により示される)を、Merck HPTLCプレート(Silica
Gel 60,Merck,Darmstadt,Germany)の分取TL
Cによりさらに精製し、そして構造特徴付けに使用した。
【0053】
(C.Le−Le抗原の単離)
ダイマーLe抗原の直ぐ下に移動するポジティブなバンド(実施例1に従う
MAb NCC−ST−421を用いた免疫染色による)を、上記のB節に記載
される方法を使用して精製する。
【0054】
(実施例3)
(ダイマーLe抗原およびLe−Le抗原の特徴付け)
(A.酵素分解)
1mgのダイマーLeの酵素分解を、0.5単位のα−フコシダーゼ(ウシ
腎臓)、0.5単位のβ−ガラクトシダーゼ(ナタマメ)、および0.5単位の
β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(ウシ精巣)(Sigma Chemic
al Co.,St.Louis,Mo.)を用いて逐次的に加水分解により行
った。全ての反応を0.2Mクエン酸ナトリウム(pH4.5)中4時間37℃
で振盪しながら水浴中で行った。各分解産物の精製を、分取HPTLCにより行
った。
【0055】
(B.IMH2のインビトロ細胞傷害性)
(1.細胞株)
Colo2O5を、最初にAmerican Type Culture C
ollection(ATCC)から入手し、そして10%のウシ胎児血清、m
MのL−グルタミン、100IU/mlのペニシリン、および10μg/mlの
ストレプトマイシンを補充したRPMI−1640培地で培養した。ヒト類表皮
癌A431細胞株(MacLeodら,J.Cell.Physiol.127
:175−182,1986)は、元々Carol MacLeod博士(Gi
ldred Cancer Facility,UCSD School of
Medicine,San Diego,CA)から提供された。この細胞株
は、EGFレセプター上でLe、Le、Le、LeおよびALeを発
現する(Gooiら,Biosci.Reports 5:83−94,198
5)。A431細胞を、5%ウシ胎児血清、1mMのグルタミン、110mg/
lのピルビン酸ナトリウム、100IU/mlのペニシリン、および10μg/
mlのストレプトマイシンを補充したDulbecco改変Eagle培地(I
rvine Scientific,Santa Ana,CA)中で培養した
。細胞(約5×10/ml)を、接種し、そしてEDTA処理次いでCa2+
およびMg2+を含有するPBSでの洗浄による集密度で採取した。これらをイ
ンビトロ細胞傷害性アッセイにおける標的細胞として使用するか、または5×1
個の細胞の皮下接種によるムードマウスにおける腫瘍形成を試験するために
使用した。ヒト赤白血病K562細胞(Lozzioら;Blood 45:3
21−334,1975)を、アッセイ系で使用されるリンパ球のナチュラルキ
ラー(NK)活性についてのコントロールとして使用した。
【0056】
(2.抗体依存性細胞の細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷害性
(CDC))
ADCCアッセイのために、ヒト末梢血リンパ球(HPBL)(エフェクター
細胞として使用される)を、健康な志願ドナー由来の血液のバフィーコートフラ
クションから得た。簡単には、単核細胞を、Ficoll−Hypaque勾配
溶液による2000rpmで20分間の遠心分離により分離した(Mishel
lら,Mishell,B.BおよびShiigi,S.M.(編),Sele
cted Methods in Cellular Immunology,
pp.3−27,W.H.Freeman&Co.,San Francisc
o,CA,1980)。マウス脾臓細胞およびマウス腹膜マクロファージ(エフ
ェクター細胞)を、以下のようないくつかの改変をしてMishellらにより
以前に記載されたように調製した。標的細胞(5×10個)を、100μlの
51Crと共に90分間37℃でインキュベートすることにより標識した。洗浄
(3回)およびインキュベーション(37℃で1時間)の後、細胞(1×10
/ml)を、25mMのHEPES緩衝液および3%のウシ血清アルブミンを補
充したRPMI−1640中に懸濁した。20μlの標識した細胞、100μl
のIMH2またはST−421、および100μlのエフェクター細胞懸濁液を
ミクロタイターU底プレート(Corning,NY)中に混合した。非特異的
マウスIg(Sigma,St.Louis,MO)をネガティブコントロール
として使用した。4時間のインキュベーションの後、これらのプレートを、遠心
分離機に組み立てられた懸垂プレートホルダーを用いて遠心分離し(500×g
、2分間)、そして各ウェル中の100μlの上清における放射能をγ線計数器
で測定した。各実験群を3回試験した。特異的溶解%を、式([A−B]×10
0)/C(ここで、A=溶解した実験細胞中のcpm;B=未溶解の標的細胞中
のcpm;C=全標的細胞中のcpm)に従って計算した。自発性放出は、放出
可能な最大の標識放射能の15%を超えなかった。
【0057】
CDCに関して、51Cr放出アッセイを、エフェクター細胞の代わりに補体
源として100μlの希釈ヒト血清を加えたことを除いて、ADCCと同様な手
順を使用して行った。この血清を56℃で30分間不活化し、そしてコントロー
ルとして使用した。特異的溶解%を、上記のように計算した。
【0058】
Colo2O5細胞は、拡張1型Le/Le鎖抗原およびLe/Le
抗原を発現すると特徴付けられていたので(これらは、それぞれMAb ST−
421およびIMH2と強く反応する)、IMH2のColo2O5に対する細
胞傷害性効果を評価し、ST−421の細胞傷害性効果と比較した。両方のMA
bは、Colo20S細胞の顕著なADCC殺傷を示した。この殺傷は、エフェ
クター細胞:標的細胞(E:T)比およびMAb濃度と相関があった。この細胞
傷害性効果は、100:1〜200:1のE:T比、および35〜70μg/m
lのMAb濃度で最大であった。コントロールマウスIgGおよび他の非特異的
MAbは、E:T比またはMAb濃度にかかわらず細胞傷害性効果を示さなかっ
た。同じ細胞傷害性試験をマウス脾臓細胞で行った場合、対応する値は、わずか
7%溶解および17%溶解(E:T比200:1、Mab濃度30μg/ml)
であった。MAbは、A431細胞に対して弱い細胞傷害性効果を示した(表)
。Colo205細胞、A431細胞、およびK562細胞の最大IMH2依存
性溶解の比較を表に示す。高い溶解値(例えば、それぞれIMH2およびST−
421を用いたColo205細胞の65%溶解および94%溶解)は、HPB
Lの存在下でのみ顕著であり;ST−421で以前に観察されたように、値は、
マウス脾臓細胞では非常に低かった(Watanabeら,Cancer Re
s.51:2199−2204,1991)。IMH2およびST−421によ
り媒介されるCDCは、同様に補体濃度およびMAb濃度と相関した。
(表 MAb ST−421およびIMH2による、Colo205細胞、A4
31細胞、およびK562細胞に対するMAb依存性細胞傷害性効果)
【0059】
【表1】



【0060】
a.IMH2(35μg/ml)およびST−421(×100希釈腹水)を用
いて、100:1のE:T(エフェクター細胞:標的細胞)比における溶解パー
セント。
b.フローサイトメトリーにより決定。+、ポジティブ;±、弱いポジティブ;
−、ネガティブ。
c.K562細胞の高い細胞傷害性効果はまた、MAbの非存在下で観察され、
そしてこれは、ナチュラルキラー細胞活性を反映すると考えられる。
【0061】
(C.インビボ腫瘍抑制)
インビボ実験に使用されるColo205細胞およびA431細胞を、インビ
トロで増殖し、培地で2回洗浄し、そしてPBS中で所望の細胞密度で再形成し
た。細胞(5×10/100μl)を、5〜7週齢の無胸腺症BALB/cマ
ウスの背部に皮下注射し、そしてMAbの腹腔内投与を注射の直後に開始した。
IgGの対応する濃度(1.1〜1.2ng/ml)を有する、腹水液中の精製
されたIMH2(1.1mg/ml)またはST−421を、0.2ml/動物
の投薬量で、2週間にわたって1回/日で腹腔内注入した。腫瘍の幅および長さ
を、同一の観察者により3回/週で測定した。腫瘍重量を、(幅×長さ)/2
として見積もった。コントロール動物に、BALB/cマウスにおけるマウス骨
髄腫細胞株NS1により作製された腹水タンパク質を投与した。1群あたり7匹
のマウスを、各実験に使用し、そして実験を2回行った。2回の実験に基づく平
均腫瘍重量値をプロットした。
【0062】
MAb IMH2およびST−421の両方は、ヌードマウスにおけるCol
o205腫瘍増殖の顕著な阻害を示した。対照的に、両方のMAbは、A431
腫瘍増殖に対して最小の阻害効果を示した。従って、規定された抗原の高い発現
は、インビボでの腫瘍増殖の抗体依存性阻害に対する感受性に必須であると思わ
れる。
【0063】
(D.種々の腫瘍組織および正常組織とのIMH2の反応性)
種々の腫瘍組織および隣接正常組織を、ホルマリンで固定しそしてパラフィン
に包埋した外科標本から得た。さらに、脳、胸腺、肺、肝臓、胃、結腸、腎臓、
副腎、腺、脾臓、膵臓、子宮(子宮内膜を含む)、および皮膚由来の正常組織お
よびいくつかの腫瘍組織を、事故犠牲者からの新しい剖検から得た。外科標本お
よび剖検標本の両方は、Department of Pathology,S
wedish Medical Center,Seattle,WAおよびT
he Biomembrane InstituteのMs.Debbie B
ennettからの無料提供であった。サンプルを薄片に切り(厚さ3μM)、
キシレン(zylene)でパラフィンを除去し、エタノールで脱水し、一次M
Abで処理して、ビオチン化二次MAbおよびペルオキシダーゼ結合体化アビジ
ンで続けて処理し、そして3’,3’−ジアミノベンジジンで染色した。内因性
ペルオキシダーゼ活性を、切片を0.3%Hで20分間処理することによ
りブロックした。いくつかの切片をネガティブコントロールとしてマウスIgG
と共にインキュベートした。ビオチン化ヤギ抗マウスIgM、アビジン、および
ビオチンは、Vectastain(Burlingame,CA)由来であっ
た。
【0064】
Mab IMH2は、結腸、直腸、肝臓、膵臓、および子宮内膜由来の腫瘍と
、強くかつ高い発生率で反応した(表I)。対照的に、遠位結腸および直腸の正
常粘膜(陰窩領域および杯細胞を含む)とは反応性を示さなかった。肺腺癌とは
反応したが、大細胞癌または小細胞癌とは反応しなかった。5件の扁平上皮癌の
うち1つは、強いポジティブの反応性を示した。MAb IMH2は、正常な脳
、肺、脾臓、皮膚の組織、または顆粒球を含む種々の血球と反応しなかった。
【0065】
強い染色が観察された正常組織の場所は、以下の通りである:胸腺のハッサル
体および上皮細網細胞(胸腺細胞はネガティブである);胃粘膜の粘膜上皮およ
び分泌腺(固有層、漿膜、および筋層はネガティブであった);副腎の髄質およ
び皮質の両方。中程度から弱いポジティブ染色を有する正常組織の場所は、以下
である:腎臓の近位回および遠位回の上皮細胞(その他の部分はネガティブであ
った);膵臓のランゲルハンス島の細胞(膵臓のその他の部分はネガティブであ
った);盲管粘膜;尿路上皮。非常に弱い染色が肝細胞に関して観察された(肝
臓のその他の部分、小葉間結合組織、中心静脈、胆管、およびクップファー細胞
は、ネガティブであた)。これらの結果を表Iに要約する。
表I.MAb IMH2による正常組織および癌の免疫組織学的染色
【0066】
【表2】



【0067】
(E.既知のルイス状態および分泌状態を有する患者由来の結腸および膀胱の
正常組織および悪性組織とのIMH2の反応性)
LeおよびLe決定基の発現は、個体の分泌状態と相関し(Sakamo
toら,Molec.Immun.21:1093−1098,1984;Oe
rntoftら,J.Urol.138:171−176,1987)、他方、
いくつかの腫瘍におけるルイス抗原の発現は、宿主のルイス状態と関連しない(
Oerntoftら、Lab.Invest.58:576−583,1988
;Oerntoftら,Blood 77:1389−1396,1991)。
従って、既知のルイス状態および分泌状態を有する患者由来の結腸および膀胱の
正常組織および悪性組織とのMab IMH2の反応性を調べた。結果を表II
および表IIIに要約する。IMH2は、直腸腫瘍と反応性であるが、正常直腸
組織とは反応性ではなく、そしてこの反応性は、分泌状態とは関係がない。逆に
、IMH2は、正常盲端とは反応性であったが、調べられた単一の盲端腫瘍サン
プルとはそれほど反応性ではなかった。これらの結果は、結腸正常組織および悪
性組織におけるIMH2エピトープ発現の傾向は、ABH抗原の十分に確立され
ている発現パターンと類似していることを示唆する。真性ルイスネガティブ(L
a−b−)の個体(Oerntoftら,Lab.Invest.58:57
6−583,1988)は、結腸正常組織および悪性組織の両方においてIMH
2エピトープを発現した(表IIおよびIII)。
【0068】
IMH2エピトープは、正常尿路上皮において発現されるが、その発現は、膀
胱腫瘍の程度の変化に対して減少する。これらは、腹水の段階との相関と思われ
る。すなわち、IMH2エピトープ発現は、高度に侵襲性の腫瘍において最も低
い。また、この傾向は、膀胱正常組織および悪性組織におけるABH抗原の発現
の傾向と類似する。しかし、結腸組織と対照的に、血液型群Aの個体由来の膀胱
組織におけるIMH2エピトープ発現は、分泌状態と相関する。真性ルイスネガ
ティブ(Lea−b−)の個体は、膀胱正常組織および悪性組織の両方において
IMH2エピトープを発現した。
表II.結腸正常組織および悪性組織のMAb IMH2による免疫組織学的染
色:宿主ルイス状態との関係。
【0069】
【表3】



【0070】
数字は、試験された合計標本で割ったポジティブ標本を示す。ND=決定されな
い。Lea−b−個体(真性および非真性)について、表現型状態を、唾液にお
けるα1→4フコシルトランスフェラーゼ活性、ならびに抗LeMAbおよび
抗LeMAbとの赤血球反応性により決定した。表現型の定義は、Holme
sら,Arch.Biochem.Biophys.274:14−25,19
89、およびOerntoftら,Lab.Invest.58:576−58
3,1988に見出され得る。
非分泌者
表III.膀胱正常組織および悪性組織のMAb IMH2による免疫組織学的
染色:宿主ルイス状態との関係
【0071】
【表4】



【0072】
主な脚注は表IIのとおり。
【0073】
(F.拡張シアリル−Le(すなわちSLe−Le)の単離)
Colo205細胞のモノシアロ−ガングリオシドフラクションの試験は、高
性能薄層クロマトグラフィー技術による1つの主要なガングリオシドの単離をも
たらすかまたは単離を生じた。この主要なバンドを抽出して特徴付けした。構造
を以下:
【0074】
【化14】



【0075】
と同定した。
【0076】
この構造は、H−NMR分光法により確認した。
【0077】
SLe−Le構造上の拡張シアリル−Leを、シアリダーゼを用いる酵
素分解により確認して、薄層クロマトグラフィーおよびモノクローナル抗体ST
−421での免疫染色により確認された場合のLe−Leと同じ化合物を得
た。元々のシアリルLe−Leまたは拡張Leは、MAb ST−421
との反応性を示さない。しかし、この化合物は、N−19−9、NKH−1およ
びNKH−2のようなシアリル−Leに特異的なMAbとの反応性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、糖I(Glc)、II(Gal)、III(GlcNAc)、IV(Gal)、V(GlcNAc)およびVI(GalおよびFIIIとして同定されるIII GlcNAcに結合したフコース、およびFIVによって示されるようなVGlcNAcに結合したフコース)をカバーする4.20ppm〜5.60ppmにおける化学シフトからの、拡張シアリルLeH−NMRスペクトルである。このスペクトルにおいて、FおよびFIIIの全てのアノマープロトンスペクトルは、F−1およびFIII−1として示される。さらに、フコースのスペクトルC5プロトンは、FIII−5およびF−5によって示されるように、多重カップリングによって示される。Cisとして示されるスペクトルは、スフィンゴシンのCis二重結合であり、R−5およびR−4は、スフィンゴシンのスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願発明に記載されるような、腫瘍関連抗原としての拡張I型スフィンゴ糖脂質鎖。

【図1】
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【公開番号】特開2007−191490(P2007−191490A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96954(P2007−96954)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【分割の表示】特願2002−506748(P2002−506748)の分割
【原出願日】平成12年7月3日(2000.7.3)
【出願人】(503009177)ザ バイオメンブレイン インスティチュート (1)
【Fターム(参考)】