説明

腰痛体操の効果が期待できるウエアー

【課題】 ウエアーの着用により筋活動に変化を与え、姿勢を制御する補整機能を持ち合わせ、腰痛を防止・改善・緩和する腰痛体操の効果が期待できるウエアーを提供する。
【解決手段】 下半身に着用のウエアーで、ウエアーの本体部分の編地26をパワーネットからなる強緊締性の編地から形成し、さらに、このウエアーの腰回りに、前身頃の腹部の骨盤の左右の腸骨の内側上に縦方向の非伸縮性の前部ボーン14を縫着し、かつ、後身頃の中央臀部の左右の骨盤間の仙骨付近に縦方向の非伸縮性の後部ボーン15を縫着し、これら前部ボーン14と後部ボーン15の間の側部腰部に下端部を自由開放端としたネット状の編地27の強緊締性の編地とし、このネット状の編地27を上記パワーネットからなる強緊締性の編地の本体部分の編地26の上端部に重ねて縫着し、このウエアーの股下部をパンツ形状とし、パンツ形状の左右の大腿部周辺を緊締保持可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は腰痛を生じなくし、あるいは生じた腰痛の改善を図るために下着あるいは外装用衣類として着用する、姿勢を制御する機能を持ち合わせた体型補整機能を有する腰痛体操の効果が期待できるウエアーに関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛を訴える人は多く、その原因も様々である。その大半は保存的治療や生活指導で、体力の維持・改善を図っている。しかし、容易に再発を引き起すことが腰痛の最大の問題となっている。このような腰痛の原因の疾患は種々あるが、最も多いのは、X線やその他の検査に異常が見られないにもかかわらず、筋力不足や姿勢不良などにより腰部への負荷の集中や、疲労の蓄積などからくる、いわゆる腰痛症で、これには運動療法がその適応となる。この腰痛症では、通常、安静臥床で疼痛は軽減されることは多いが、現代型の生活・経済環境においては、安静臥床は困難であり、症状をさらに悪化させることも増えて来ている。
【0003】
上半身の重みを支える腰椎は身体の略中央に位置し、上半身の重みを支えると同時に、床反力の影響を受け、応力が腰椎に集中する。したがって、体重が増加することで当然腰椎への負担は大きくなる。腰椎は生理的前弯が本来あるが、この前弯が強まると骨盤は前傾し、椎間板に掛かる力は剪断力として働き、傍脊柱筋や靱帯にストレスが加わって腰痛が起こりやすくなる。また腰痛は、仙腸関節のズレが原因で起こるともいわれている。すなわち、骨盤は二つの腸骨と一つの仙骨からできている。この関節は可動関節と異なり、平面関節あるいは不動関節と呼ばれるものであり、動きの中心の部分である。この仙腸関節を含む骨盤が斜めになると真っ直ぐに立っていられなくなる。そこで骨盤を後傾させて腰椎前弯を減少させるために働く筋肉は主に腹筋群であり、腹筋が強いと腹圧が高まって腰椎や傍脊柱筋に加わる力を分散できる。
【0004】
従来のコルセットに関する報告にある、腰痛サポーター、腰部バンドなどである腰部固定帯は、整形外科領域の診療において処方されているものであり、医療機関以外でも腰部疾患の有無に関わらずスポーツ選手においても広く使用されている。これらを利用する目的は、(1)脊椎分節運動の制限、(2)腹腔内圧の上昇による脊椎負荷の軽減、(3)体幹筋活動の抑制、(4)体幹筋疲労の抑制、(5)保温効果が考えられる。1997年の研究によると、急性期の腰痛症における腰部固定帯の効果を表面筋電図により検討した結果、背筋筋活動を減少させ、疲労を軽減する効果があることを示している。しかし、固定帯を長期に連用すれば、背筋の廃用を招くとともに腰椎可動性が低下し、慢性腰痛症に移行する危険性を指摘し、一定期間の着用による痛みの軽減後は、運動療法の重要性を示している。コルセットの利点でもある上記の目的については明確であり、特に腹腔内圧の上昇による脊椎負荷の軽減については腰痛改善・予防に重要なことは一般的に知られている。
【0005】
これらの効果を高める方法としてウィリアムズにより提唱されたウィリアムズ体操がある。これは腰痛に対する運動療法のうち最も一般的な方法で、規則的な運動により姿勢を矯正し、関節機能を回復し、筋力を増強し、筋の協調および耐久力を増進し、運動速度の増大を目指している。すなわち腰仙椎部の筋肉、靱帯、椎間関節包などの支持性、可動性を正常化し、姿勢を矯正し、腰痛の治療に役立てようとするものである。このような腰痛体操には種々のものがあり、その共通原則は、腰背部および下肢の筋肉や靱帯、滑膜や繊維膜からなる関節包などの伸張運動と体幹筋の筋力増強である。特に腰椎前弯を減少させ腹圧を高める腹筋の強化が重視されているものが多い。
【0006】
さらに従来技術では、大腿部を持ち上げた際に臀部および大腿部後部の皮膚の伸張量の高伸張領域対応する背面の所定領域に、背の高さ方向の弾性率がその領域以外の背面の領域および少なくとも腹部および大腿部前部に対応する前面の領域よりも高い高弾性部を有するパンツが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
さらに、股関節の安定性を向上し、若々しい体型および姿勢を造り、腰痛を緩和し、高齢者の転倒を防止する伸縮性編地からなるガードルが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
さらに、腰ベルトのように、腰痛の緩和を図る腰ベルトなどが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
【特許文献1】特開2006−89856号公報
【特許文献2】特開2001−192903号公報
【特許文献3】特開2002−345866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記したウィリアムズ体操である腰痛体操を根気よく続けうる人は殆どおらず、再び時間と環境を整えて運動を行うことは困難である。そこで腰痛体操の理論に基づき、日々の生活の中で腰背部筋と下肢後面筋の補助と伸張、腹筋および下肢前面筋の強化を目的としたウエアーの開発が望まれており、これまでは、筋や骨格構造を補助するウエアーが開発されてきている。さらにウィリアムズなどの腰痛体操の理論を基に日々の生活環境において腰痛体操の効果を期待できるウエアーを開発することが望まれている。
【0011】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、着用によって腰痛改善や腰痛治療で提唱されている腰痛体操の効果が期待でき、姿勢を制御する機能を持ち合わせた体型補整機能を有するウエアーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の手段について説明する。本発明の手段では、請求項1の発明では、下半身に着用のウエアーである。このウエアー本体の編地はパワーネットからなる強緊締性の編地から形成している。さらに、このウエアーの前身頃に有る腸骨の内側に左右の縦方向の非伸縮性の芯材である前部ボーンを縫着しており、後身頃の中臀筋より背骨側の左右の位置に縦方向の非伸縮性の芯材である後部ボーンを縫着している。これら前部ボーンと後部ボーンの間の側部から腰部と中臀筋にかけて内側の本体の編地のパワーネットと外側の強緊締性であるネット状の編地の折り返しからなる編地の3重構造としている。さらに、前身頃の臍周辺部の編地を本体の編地の折り返し編地内にネット状の編地を内在する3重構造とし、かつ、臍周辺部の下部の腹部は外側の本体の編地のパワーネットと内部のネット状の編地の2重構造としており、これらの3構造の編地の腰部と3重構造の編地の臍周辺部とによって、腰部の構造と合わせて腰痛予防や改善で一般的に言われている腹圧を上げる効果を狙っている。さらに、腰部のネット状の編地によって骨盤を後ろに引っ張り骨盤を正しい位置に補整することによって、仙骨が前に出やすくなり、腰椎の生理的前弯を減少させる効果が期待できる。その構造として、上記本パワーネットからなる強緊締性の本体の編地と強緊締性のネット状の編地の折り返し編地の2重構造とからなる3重構造の上端部を重ねて縫着し、強緊締性のネット状の編地の折り返しの2重構造の下端部を自由開放端とした構造を持たせている。さらに、上記の構造として腰部のハイウエスト化することにより、着用することで姿勢を制御する機能を持ち合わせたウエアーとし、このウエアーの股下部をパンツ形状として、このパンツ形状の左右の各下端部を大腿部周辺に緊締保持可能としたことを特徴とする下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果が期待できるウエアーである。
【0013】
請求項2の発明では、上記の下半身に着用のウエアーにおいて、後身頃の腰回りから下部の中臀筋から仙骨及び腰椎の背骨部分の編地を本体の編地のパワーネットのみからなる強緊締性の編地とする。さらに後身頃の左右の後部ボーン間の背部中央の腰部をネット状の編地のみの編地から形成してウエアーのフィット感を高める。さらに前身頃の骨盤部分の前部ボーンと後部ボーンの間の腰部の編地を後部ボーン側に引っ張り緊締したことを特徴とする請求項1の手段の下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果が期待できるウエアーである。
【0014】
請求項3の発明では、上記の下半身に着用のウエアーにおいて、パンツ形状の大腿部背部の編地を本体の編地のパワーネットからなる強緊締性の編地とネット状の編地の強緊締性の編地の2重構造の編地として、歩行時のもも上げ時に引っ張りによる負荷を付与する構造としていることを特徴とする請求項1またや2の手段の下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果が期待できるウエアーである。このように、このウエアーは腰痛体操の理論に基づいた日々の生活の中で腰背部筋と下肢後面の補助と伸張、腹筋および下肢前面筋の強化が期待できる。
【0015】
請求項4の発明では、上記の下半身に着用のウエアーにおいて、ウエアーの本体の編地のパワーネットからなる強緊締性の編地及びネット状の強緊締性の編地は、JIS法で定められている伸張弾性試験において、それぞれが30%引っ張り時に490mN以上の引っ張り強さを有する編地から形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項の手段の下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果の期待できるウエアーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の手段の下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果の期待できる構造のウエアーとしたことで、この下着を着用することで、ウエアーの構造により良姿勢が取れ、前かがみとなることなく身体のゆがみを整直化して身体の左右を均等に引っ張ることにより体重による脊椎や腰椎への負担を軽減することができ、さらに腹圧を高め腰部への負担を軽減させ、歩行時の身体の筋活動に変化を与え、体前面の筋活動の向上や体後面の筋活動の低下を促し、また、さらに全体的な筋活動の変化により腰痛の発生を抑制し、さらに腰痛のある場合には、その腰痛を軽減するなど、本発明は従来にない極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明を実施するための形態について以下に説明する。図1〜図4に示すように、この実施の形態は、着用することで体型補整機能を有した腰痛体操の効果の期待できるウエアーとして編地から形成してウエアー1に適用した例である。このウエアー1は腹部2および臀部6からなる身体の胴部1aと、その下部の大腿部中央部8と大腿部外側部9とその大腿部背部10からなる身体の肢部1bに着用する形状からなっている。このウエアー1を形成する編地は本体の編地26の部分をパワーネットからなる強緊締性の編地から形成し、さらに前部ボーン14と後部ボーン15の間の腰部と大腿部背部10の部分をネット状の編地27の強緊締性の編地で形成して本体の編地26に重ね、さらに後部の左右のボーン間をネット状の編地27の強緊締性の編地のみから形成している。これらのウエアーの本体の編地のパワーネットからなる強緊締性の編地26とネット状からなる強緊締性の編地27は、それぞれが30%引っ張り時に490mN以上の引っ張り強さを有する編地から形成している。しかし、これらは、例えば、編み方で平編、ゴム編、パール編、両面編、デンビー編、アトラス編、コード編、ハーフトリコット、パワーネット、マーキゼット、ラッセル、サテン、リバー、ジャガード、ドビー、丸編など、その編み方により引っ張り強さは変化し、必要に応じて適宜に選択できる。
【0018】
このように、本発明のウエアーは本体の編地26とネット状の編地27の2種の編地からなるものである。このうち本体の編地26はポリウレタン弾性糸からなる経方向よりも緯方向の伸縮割合の大きい強緊締率のメッシュ調のパワーネットから形成しており、30%引っ張り時に490mN以上の引っ張り強さを有する編地である。一方、ネット状の編地27はポリウレタン弾性糸からなる経方向および緯方向の伸縮割合が略等しいポリウレタン弾性糸からなる編地から形成している。このウエアー1としては、図1に示すように、前身頃の胴部1aでは、腹部2の中央部方向に左右が狭まった形状の臍周辺部3を形成しており、この縫い目17の上側の臍周辺部3は表側の編地および身体の肌側に面する内面編地を本体の編地26とし、それらの間に1枚のネット状の編地27を内在する3重編地から形成されている。臍周辺部3の縫い目17の下部の腹部2は表側の編地を本体の編地26とし、その内面側の編地を図3に示すようにネット状の編地27としている。
【0019】
さらに側腹部4を表側編地の本体の編地26と内面編地のネット状の編地27からなる2重編地に形成している。これら前身頃の表側編地は側腹部4、例えば左側の側腹部4の本体の編地26からなり、この編地はそのまま脇腹部5を回動して後身頃の臀部6に延び、さらに右側の臀部6から脇腹部5を回動して前身頃の右側の側腹部4となる一体化された編地から形成されている。この側腹部4の本体の編地26とネット状の編地27の2重構造として形成されており、これらの左右の下部は後身頃の左右の臀部下部7に延ばされて一体化されている。
【0020】
ついで上記のウエアー1の胴部1aの下部に継目22を介して続く左右の肢部1bについて説明する。上記の腹部2の2重編地の下部に継目22を介して続く、左右の大腿部中央部8の部分は本体の編地26からなる1重編地のみから形成されている。さらに上記の左右の側腹部4の表側編地の本体の編地26と図3に示す縫い目20を介して臀部側の内面編地のネット状の編地27の下部に継目22を介して続く大腿部外側部9の部分では、その表側編地は左右の大腿部中央部8の表側編地と縫い目19を介して一体的な本体の編地26から形成されている。しかし、大腿部外側部9の部分の内面は、図3に示すように内面編地のネット状の編地27を有し、それらで2重編地を形成して、図4に示すように、後身頃の大腿部背部10に延びている。これらの左右の大腿部背部10の表側編地と内面編地からなる2重編地には、図2に示すように、上記の左右の大腿部中央部8の部分の本体の編地26からなる1重編地が太ももの内側を回動して大腿部背部内側部11となって継目23で大腿部背部10と縫い合わされている。さらに左右の大腿部および大腿部背部10の下端には、継目25で下端折返部12が縫い付けられている。これらの下端折返部12は本体の編地26から形成され、その下端は折返部とされている。
【0021】
さらに前身頃の左右の腰部13およびそれらに続く後身頃の腰部13の部分には、下部を折返部とし、上端をゴム紐16を縫い目18で縫い付けているネット状の編地27の2重編地から形成されている。これらの下部の折返部は後身頃の中央部のみがその下部の本体の編地26に継目24として縫い付けられているが、その他の部分の下端の折返部はその本体の編地26に縫い付けられることなく、本体の編地26から浮いて配設されている。さらに前身頃の腹部2の弓状の側部と側腹部4の境界の継目21の部分の上半部には、芯地あるいは硬質樹脂からなる薄い細板状のボーンからなる前部ボーン14が挿着されている。さらに後身頃の臀部6の上半部に芯地あるいは硬質樹脂からなる薄い細板状のボーンからなる後部ボーン15が挿着されている。これらの前部ボーン14は、腰痛体操を期待できるウエアーを着用した際に着用者の腰部の左右の骨盤の端部の内側に係止されて腰痛体操を期待できるウエアーの編地が左右の脇腹部から引っ張られても、前身頃の腹部2の弓状の側部と側腹部4の境界の部分が左右に移動しないように固定する作用を有する。後部ボーン15は、同じく腰痛体操を期待できるウエアーを着用した際に着用者の後身頃の腰部の左右の身体の固有背筋の内側に後身頃の臀部6の内側にすなわち後身頃の臀部6の左右の骨盤間の左右の仙骨の付近に、縦方向の非伸縮性の後部ボーンを縫着して係止し、背側が左右から引っ張られても、左右に移動しないように固定する作用も有している。これらの固定作用と非伸縮性のボーンの縫着により着用者の身体の腰椎の安定化筋群を安定にサポートし、構造のハイウエスト化により体型を一層的確に維持して着用時に姿勢を制御し、腰痛体操の効果が期待できるものとなっている。
【0022】
本発明は上記のように着用時に歩行動作により身体に負荷を及ぼすことで、着用者の筋活動に変化をもたらし、さらに下半身部における腹直筋、屈筋群の筋活動を高め、その結果、腰椎の安定化筋群の筋力維持および向上やその改善をもたらす腰痛体操の効果が期待できるものとなっており、腰痛が予防されあるいは腰痛が緩和される。
【0023】
これらの効果を確認するため、本発明の手段からなるウェストサイズ64cm、70cm、79cmのウエアー1を準備し、この腰痛体操の効果が期待できるウエアーを被検者15名が着用した場合と、着用しなかった場合において、歩行時における筋活動について検証試験を実施した。自社での客観的な検証が困難なため国立大学に依頼を行い、腰痛体操の効果が期待できるウエアーの検証を実施した。被験者の身体的特徴を表1に示す。この検証試験では、筋活動は表面筋電図法によるものとし、身体を触診することにより身体の胴部における筋電図測定部位を選定した。この選定による計測部位は、腸肋筋、腹直筋、中臀筋、大臀筋、外側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋、腓腹筋の8箇所とした。試験は10mの歩行路を本発明の腰痛体操の効果が期待できるウエアーの装着状態および非装着状態により5歩行を7回繰り返して実施した。この場合、歩調および歩幅は規定せずに普段どおりの歩行とした。
【0024】
【表1】

【0025】
被検者15名の腸肋筋、腹直筋、中臀筋、大臀筋、外側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋および腓腹筋の8箇所の肌表面に筋電位測定用の電極を装着するため、前処理として電極貼付箇所の肌の周囲を剃毛し、エタノールによる脱脂を行い、小粒子を含むクリームにより肌の表皮表面を削り、除電アースを胸部に貼付して準備した。筋電図のデータは多用途テレメータ(WEB−5500 日本光電社製)の送信機から受信機に測定データを送信して、AD変換器(MP−System BIOPAC System社製)により変換し、生体情報解析プログラム(AcqKnowledge BIOPAC System社製)を利用してサンプリング周波数を1000Hzとして、各歩行時の筋活動を測定した。
【0026】
解析方法は、表面筋電図測定により得られた波形から積分筋電図解析を行って、サンプル間の測定電位の筋放電量を定量化した。図5に示すように、本発明のウエアーを着用し歩行した場合と本発明のウエアーを着用しない場合について試験をし、解析区間は10m歩行の中間の5回歩行を行うものとし、歩行の5歩行分を1試技とし、これを7試技実施し合計した35歩行分の筋放電量をその筋活動とした。すなわち、図6に示すように、例えば中臀筋の測定において、(a)に示す生波形から、(b)に示すように、50Hzのハイカットフィルターにより交流ノイズをカットし、その後、(c)に示すように、整流化を行い、次いで(d)に示すように、1試技が5歩行分の波形を積分して波形処理した。これらの測定および波形処理を上記の腸肋筋、腹直筋、中臀筋、大臀筋、外側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋、腓腹筋の8箇所の全てに対して実施した。
【0027】
【表2】

【0028】
この表2により、本発明品の腰痛予防効果が期待される基準として、以下の3つを定め基準に該当する人数と割合を確認する。
【0029】
基準については、以下のとおりとする。
基準1.
「非着用歩行時と着用歩行時」のデータ間で、重要部分(体前面の筋肉:腹直筋、外側広筋、大腿直筋)における筋活動が少なくとも一箇所で統計的有意差がある向上をしているケース。
基準2.
「非着用歩行時と着用歩行時」のデータ間で、体表面の筋肉である箇所(腸肋筋、大臀筋、大腿二頭筋、腓腹筋)の2箇所の筋活動において、統計的有意差がある低下を示したケース。
基準3.
「非着用歩行時と着用歩行時」のデータ間で、筋活動の変化が統計的有意差を8箇所中5箇所以上で見受けられたケース。
【0030】
上記の条件で検証を実施した結果は、基準で示した体前面の筋である腹直筋、外側広筋、大腿直筋のいずれかの筋活動が向上したのは15名中5名が該当した。また、基準で示した体後面の筋である腸肋筋、大臀筋、大腿二頭筋、腓腹筋のうち2つ以上の筋活動が低下した被検者は15中6名が該当した。また、筋活動の変化が統計的有意差を8箇所中5箇所以上で見受けられた被検者は15中7名であった。
【0031】
結論として、本発明品の着用により姿勢を制御し歩行時の筋活動に変化をもたらし、検証結果で全体対象者15名中11名において、基準1〜3のいずれかに該当し、本発明品により73.3%の対象者において筋活動の変化による腰痛改善・緩和に役立つと国立大学の検証結果として報告を受けている。
【0032】
【表3】

【0033】
さらに、本発明品を上記の実施の形態のウエアー1と異なり、外装用のパンツやスパッツに適用することができる。この場合は、図1〜図4に示す形状のウエアー1を外装用のパンツやスパッツの裏生地としてパンツやスパッツの適宜腰部の所用箇所の内部に縫着するものとする。また、男子用としての不便さを考慮すると、適宜に前身頃部の前立て部分を必要とし、この場合は前立て部分をファスナーなどにより開閉自在として、編地の引っ張り強さを保持するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の腰痛体操の効果が期待できるウエアーの正面図である。
【図2】本発明の腰痛体操の効果が期待できるウエアーの背面図である。
【図3】本発明の腰痛体操の効果が期待できるウエアーを裏返して内面を見た正面図である。
【図4】本発明の腰痛体操の効果が期待できるウエアーを裏返して内面を見た背面図である。
【図5】腰痛体操の効果が期待できるウエアーを着用した歩行試験を示す模式図である。
【図6】歩行試験における中臀筋の筋活動の波形処理手順における波形図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ウエアー
1a 胴部
1b 肢部
2 腹部
3 臍周辺部
4 側腹部
5 脇腹部
6 臀部
7 臀部下部
8 大腿部中央部
9 大腿部外側部
10 大腿部背部
11 大腿部背部内側部
12 下端折返部
13 腰部
14 前部ボーン
15 後部ボーン
16 ゴム紐
17 縫い目
18 縫い目
19 縫い目
20 縫い目
21 継目
22 継目
23 継目
24 継目
25 継目
26 本体の編地
27 ネット状の編地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下半身に着用のウエアーとして、ウエアーの本体の編地をパワーネットからなる強緊締性の編地から形成し、該ウエアーの前身頃の腹部骨盤の左右にある腸骨の内側に縦方向の非伸縮性の芯材である前部ボーンを縫着し、かつ、後身頃の中臀筋より背骨側の左右の位置に縦方向の非伸縮性の芯材である後部ボーンを縫着し、これら前部ボーンと後部ボーンの間の側部から後部と中臀筋にかけての腰周りの部分を上記のパワーネットからなる強緊締性の本体の編地に強緊締性のネット状の編地の折り返しを重ねて3重構造の腰部とし、前身頃の臍周辺部の編地を本体の編地の折り返し編地内にネット状の編地を内在する3重構造とし、さらに臍周辺部の下部の腹部は外側の本体の編地のパワーネットと内部のネット状の編地の2重構造とし、これらの3構造の編地の腰部と3重構造の編地の臍周辺部とによって、腰痛予防・改善の効果を狙った腹圧を高める構造とし、さらに、骨盤の両側部を後に引っ張る効果を持たせることにより仙骨を前に出やすくして腰椎の生理的前弯を減少させるため、上記パワーネットからなる強緊締性の本体の編地と強緊締性のネット状の編地の折り返しの2重構造とからなる3重構造の上端部を重ねて縫着し、かつ、強緊締性のネット状の編地の折り返しの2重構造の下端部を自由開放端とし、さらに、このウエアーの股下部をパンツ形状とし、このパンツ形状の左右の各下端部を大腿部周辺に緊締保持可能としたことを特徴とする下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果が期待できるウエアー。
【請求項2】
上記の下半身に着用のウエアーにおいて、後身頃の腰回りから下部は本体の編地のパワーネットのみからなる強緊締性の編地とし、後身頃の左右の後部ボーン間の背部中央の腰部を強緊締性のネット状の編地の折り返しの2重構造から形成してフィット感を高めると共に前身頃の骨盤部分の前部ボーンと後部ボーンの間の腰部の編地を後部ボーン側に引っ張り緊締したことを特徴とする請求項1に記載の下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果が期待できるウエアー。
【請求項3】
上記の下半身に着用のウエアーにおいて、パンツ形状の大腿部背部の編地を本体の編地のパワーネットからなる強緊締性の編地とネット状の編地の強緊締性の編地の2重構造の編地として歩行時のもも上げ時に引っ張りによる負荷を付与する構造としていることを特徴とする請求項1または2に記載の下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果の期待できるウエアー。
【請求項4】
上記の下半身に着用のウエアーにおいて、ウエアーの本体の編地のパワーネットからなる強緊締性の編地及びネット状の強緊締性の編地は、それぞれが30%引っ張り時に490mN以上の引っ張り強さを有する編地から形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の下半身に着用の体型補整機能を有した腰痛体操の効果の期待できるウエアー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−206795(P2008−206795A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47242(P2007−47242)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【特許番号】特許第4024287号(P4024287)
【特許公報発行日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(306040230)株式会社エヌ・エル・シーコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】