説明

腸内有害物質吸着剤及びその製造方法

【課題】例えば便秘等の副作用を低減させることができるとともに、例えばざらつき感が無く、少量の水で済む等、摂取を容易にした腸内毒素吸着剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の腸内毒素吸着剤は、ゼリー状又はゲル状の剤型であり、ヤシ殻由来の植物炭末及び熱硬化性樹脂由来の炭末から選ばれる少なくとも一種の活性炭、並びにローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも一種の多糖類を含有する。好ましくは、植物炭末は、水蒸気賦活されたヤシ殻由来の植物炭末である。好ましくは、多糖類は、少なくともポリデキストロースを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤシ殻由来の植物炭末及び熱硬化性樹脂由来の炭末から選ばれる少なくとも一種の活性炭を含有するとともに、腸内で生成される食事由来及び体内で生成した毒素を吸着する腸内毒素吸着剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、活性炭、例えば植物由来の炭末及び樹脂由来の炭末は、表面細孔により比表面積が大きいため、医薬品及び化学品等の産業分野において吸着剤として利用されている。また、活性炭は、経口摂取又は経腸投与された場合、腸内の食事由来の有害成分、又は腸内細菌や体内で生成される有害成分、例えば尿毒症性物質、食中毒原因物質、アレルゲン及び残留農薬を吸着する作用を発揮する。ところで、腎疾患又は肝疾患の患者は、有害物質を解毒したり、排出することが困難なため、有害物質により尿毒症や意識障害等を引き起こす場合がある。活性炭は、例えば腎疾患又は肝疾患の患者に対し、尿毒症等の症状改善に使用されている。
【0003】
しかしながら、活性炭は、吸着成分の選択性が低いため、生体有害成分のみならず、消化酵素等の消化に必要な物質も吸着してしまい、消化不良を起こす場合があった。そこで、従来より、消化酵素の吸着を抑制するとともに、腸管で発生する毒素を選択的に吸着する球状特殊吸着活性炭として、特許文献1に開示される吸着剤、及び医薬品として尿毒症治療剤(クレメジン(平均粒子径0.25〜0.45mm):クレハ社製)が知られている。特許文献1の吸着剤及びクレメジンは、合成樹脂由来の炭素源を原料として製造され、比表面積等を特定の数値に規定している。
【0004】
また、飲食品の分野においては、特許文献2に開示される吸着剤及び市販の活性炭加工食品(ヘルスカーボン:MKコーポレーション社製)が知られている。特許文献2の吸着剤及びヘルスカーボンは、活性炭を、グリセリンを含有するアルギン酸等からなるゲル状物質で被覆した後、凍結処理し、ついでグリセリンを除去することにより得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3835698号公報
【特許文献2】特許第3914265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の吸着剤及びクレメジンは、副作用として便秘が生ずる場合があるという問題があった。また、経口摂取する場合、活性炭由来のざらつき等のため、服用に不快感があり、毎日飲み続けるのは苦痛を伴うという問題があった。また、カプセル剤として摂取する場合においても、一回10カプセルを一日3回摂取する必要があった。必要摂取用量の増加に伴い、摂取のための水も多くなるため、飲用者にとって負担であった。特に、腎不全の患者は、体内の水分排出能が低下するため、水の摂取量が制限される場合があり、摂取のため水を多く飲むことが出来ず、多量のカプセル剤を摂取することが容易でないという問題があった。
【0007】
特許文献2の吸着剤及びヘルスカーボンは、便秘の副作用は軽減されているが、服用時のざらつき、多量の水を必要とするという問題は依然として解決されていない。また、グリセリンを除去する工程が必要であり、製造方法が煩雑であるという問題があった。
【0008】
本発明は、ヤシ殻由来の植物炭末及び熱硬化性樹脂由来の炭末から選ばれる少なくとも一種の活性炭と特定の多糖類を併用することにより、上記問題が解決されることを見出したことに基づくものである。本発明の目的とするところは、例えば便秘等の副作用を低減させることができるとともに、例えばざらつき感が無く、少量の水で済む等、摂取を容易にした腸内毒素吸着剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の腸内毒素吸着剤は、ゼリー状又はゲル状の剤型である腸内毒素吸着剤において、ヤシ殻由来の植物炭末及び熱硬化性樹脂由来の炭末から選ばれる少なくとも一種の活性炭、並びにローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも一種の多糖類を含有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の腸内毒素吸着剤において、前記活性炭は、ヤシ殻由来の植物炭末であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の腸内毒素吸着剤において、前記植物炭末は、水蒸気賦活処理された植物炭末であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の腸内毒素吸着剤において、前記多糖類は、少なくともポリデキストロースを含むことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の腸内毒素吸着剤において、腎疾患若しくは肝疾患の患者用、又は解毒用の食品又は医薬品であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、ゼリー状又はゲル状の剤型である腸内毒素吸着剤の製造方法において、水、ヤシ殻由来の植物炭末及び熱硬化性樹脂由来の炭末から選ばれる少なくとも一種の活性炭、並びにローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも一種の多糖類を混合し、加熱溶解後、冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば便秘等の副作用を低減させることができるとともに、例えばざらつき感が無く、少量の水で済む等、摂取を容易にした腸内毒素吸着剤及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の腸内毒素吸着剤を具体化した実施形態を説明する。
本実施形態において用いられる活性炭は、表面に微細な空孔を持ち、腸内毒素を選択的に吸着する。活性炭は、ヤシ殻由来の植物原料又は熱硬化性樹脂由来の樹脂原料を、公知の方法を用い高温にて焼成したものを使用することができる。活性炭の原料として、好ましくはヤシ殻由来の植物原料が用いられる。ヤシ殻は天然物であるため、生体への適用に関し、安全性をより向上させることができる。また、腸内毒素の選択吸着性を向上させることができる。
【0015】
ヤシ殻から植物炭末を製造するには、公知の方法を採用することができる。具体的には、植物原料を不活性ガス雰囲気中で例えば400〜700℃に加熱し、原料中の炭素、水素、及び酸素等を揮発分の一部として除去する炭化処理を経ることにより製造することができる。本実施形態において用いられる活性炭は、さらに賦活処理をすることが好ましい。賦活処理は、上記炭化処理で得られた植物炭化物を例えば600〜1000℃の高温で賦活ガス及び化学薬品等を用い反応させ、炭化物中の揮発成分又は有機物をガス化し、微細孔構造をさらに発達させる処理である。賦活処理により、内部表面積を拡大させ、物質の吸着力を向上させることができる。賦活ガスとしては、例えば水蒸気、炭酸ガス、及び空気が挙げられる。賦活処理としては、生体へ適用する観点から水蒸気で賦活する方法が好ましい。
【0016】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びエポキシ樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂として、さらにイオン交換樹脂を用いることができる。イオン交換樹脂としては、例えばジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体からなり、三次元網目骨格をもつ共重合体母体に、イオン交換基が結合した構造を有する化合物が挙げられる。イオン交換基の種類は特に限定されず、例えばスルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する弱酸性イオン交換樹脂、第四級アンモニウム塩を有する強塩基性イオン交換樹脂、第一級又は第三級アミンを有する弱塩基性イオン交換樹脂が挙げられる。
【0017】
熱硬化性樹脂由来の樹脂原料から樹脂炭末を製造するには、公知の方法を用いて製造することができる。具体的には、予め球状体に成形された熱硬化性樹脂原料を炭化処理、賦活処理、酸化処理及び還元処理の各工程を得て製造される。炭化処理は、熱硬化性樹脂原料を不活性ガス雰囲気中で例えば300〜1000℃に加熱し、原料中の炭素、水素、及び酸素等を揮発分の一部として除去する処理である。賦活処理は、かかる炭化処理で得られた樹脂炭化物を例えば700〜1000℃の高温で賦活ガス、例えば水蒸気、炭酸ガス、及び空気を用い反応させ、炭化物中の揮発成分又は有機物をガス化し、微細孔構造をさらに発達させる処理である。尚、賦活処理を行う前に予備焼成を行ってもよい。上記の賦活処理された球状活性炭について、選択吸着性を一層向上させる観点から、更に酸素を含有する雰囲気下で例えば300〜800℃の温度で酸化処理し、次いで窒素等の不活性化ガスの雰囲気下において例えば800〜1200℃の温度下で加熱反応により還元処理することが好ましい。
【0018】
本実施形態に用いられる多糖類としては、消化器官で食物繊維の機能、例えば整腸作用を発揮するとともに、ゼリー状又はゲル状態での摂取時における味や食感が良好なものが適用される。具体的には、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムが挙げられる。アガロース及びアガロペクチンを使用する場合、寒天を原料として使用してもよい。これらの多糖類は、食物繊維として活性炭の炭末を摂取したときに生ずる便秘症状を緩和し、整腸作用を発揮する。また、これらの多糖類は、水溶性食物繊維のため、ゼリー状態又はゲル状態で活性炭とともに摂取した場合、炭末由来のざらつき等の摂取時の不快感を緩和する。これらの多糖類のうち、腸管の微生物での分解が少なく、膠質浸透圧を維持できるポリデキストロースが好ましい。よって、多糖類中において、ポリデキストロースの比率が最も高くなるよう配合することが好ましい。
【0019】
本実施形態の腸内毒素吸着剤の摂取形態は、摂取する水の量を少なくするために、ゲル状又はゼリー状の製剤として構成される。かかる構成とすることにより、ゲル状又はゼリー状の製剤をそのまま食することも可能である。弾力のある固いゲルを形成するために、カラギーナン、ペクチン、アガロース、及びアガロペクチンを配合することが好ましい。また、ゲル状又はゼリー状の製剤とするために、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上記多糖類以外に公知のゲル化剤を併用してもよい。
【0020】
腸内毒素吸着剤中における活性炭の配合量は、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%、さらに好ましくは8〜12質量%である。配合量が3質量%未満であると、水分の構成比率が大きくなるため、必要な活性炭の服用量に伴い、水分の摂取量が多くなるおそれがある。一方、配合量が20質量%を超えると、摂取時における活性炭由来のざらざら感が気になるおそれがある。
【0021】
腸内毒素吸着剤中における多糖類の配合量は、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜30質量%、さらに好ましくは20〜28質量%である。配合量が10質量%未満であるとゲル又はゼリーの弾力が低下し、摂取時における活性炭由来のざらざら感が気になるおそれがある。一方、配合量が40質量%を超えると、ゲル又はゼリーの弾力が強くなり、摂取が困難になるおそれがある。
【0022】
腸内毒素吸着剤中における活性炭と多糖類の配合比率は、特に限定されないが、好ましくは1:0.5〜4、より好ましくは1:1〜3、さらに好ましくは1:2〜2.8である。かかる範囲内に規定することにより、活性炭由来のざらつきを抑え、摂取時の食感をより向上させることができる。
【0023】
本実施形態の腸内毒素吸着剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、まず活性炭と多糖類と溶媒とを混合し、加熱により多糖類を溶解させ、所定容量の容器内に注いだ後、最後に冷却することにより調製することができる。溶解温度は、多糖類の種類により適宜設定される。溶媒としては、溶解性及び安全性の観点から水が好ましく用いられる。
【0024】
本実施形態の腸内毒素吸着剤は、消化管内において、毒素を吸着及び排出する作用を有する。例えば腎疾患又は肝疾患の患者は、有害物質を解毒したり、排出することが困難なため、有害物質により尿毒症や意識障害等を引き起こす場合がある。本実施形態の腸内毒素吸着剤は、例えば腎疾患又は肝疾患の患者に対し、尿毒症等の各種症状の改善又は予防に好ましく適用することができる。
【0025】
本実施形態の腸内毒素吸着剤は、腸内毒素の吸着及び排出を目的とした飲食品、医薬品及び医薬部外品等の各種分野において好ましく適用することができる。本実施形態の腸内毒素吸着剤を飲食品として適用する場合は、従来品と区別するために、上記作用・効果、例えば腸内毒素の吸着・排出の促進、腎疾患又は肝疾患の患者に対する各種症状の緩和、及び解毒等の効果を得ることを目的とする旨の表示を付すことが好ましい。
【0026】
本実施形態の腸内毒素吸着剤を飲食品に適用する場合、腸内毒素吸着剤を飲食品そのものとして、又は種々の食品素材又は飲料品素材に配合して使用することができる。前記飲食品としては、その他の成分としてゲル化剤含有食品、糖類、香料、甘味料、油脂、基材、賦形剤、食品添加剤、副素材、増量剤等を適宜配合してもよい。甘味料としては、例えばソルビトール及びマルチトールのような緩下作用を有する糖、整腸作用のあるオリゴ糖が挙げられる。オリゴ糖は大腸で微生物代謝活動により短鎖脂肪酸の生成を促進し、腸管のpHを下げることにより、腸内環境を改善し、尿毒素の生成を抑える効果が知られている。本実施形態の腸内毒素吸着剤にオリゴ糖を配合することにより、腸内毒素を減少させる効果の促進が期待される。また、その他の甘味料として、緩下剤作用の発揮が期待されるプルーン末やりんご粉末等を使用してもよい。但し、これは飲食品に特に限定されない。
【0027】
本実施形態の腸内毒素吸着剤を医薬品として使用する場合は、ゲル状又はゼリー状の製剤として服用(経口摂取)することができる。必要により、添加剤として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。
【0028】
腸内毒素吸着剤の投与量は、服用する人の健康状態等により適宜設定されるため、特に限定されないが、優れた効能を発揮する観点から、有効成分である炭末量として1〜10g/日で投与されることが好ましい。
【0029】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の腸内毒素吸着剤は、多糖類としてローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも一種を含有する。したがって、炭末を摂取したときの便秘等の副作用の発生を軽減することができる。また、経口摂取時における不快感を緩和させ、摂取を容易にすることができる。つまり、腸内毒素吸着剤を経口摂取する際、活性炭由来のざらつき等の不快感を低減させることができる。また、摂取する水分量を減少させることができる。
【0030】
(2)活性炭の吸着性は、炭化原料の種類によって大きく異なることが知られている。本実施形態の腸内毒素吸着剤は、活性炭としてヤシ殻由来の植物炭末又は熱硬化性樹脂由来の樹脂炭末を使用する。したがって、選択吸着性により消化酵素等の消化に必要な物質を吸着することなく、腸内において食事由来の有害成分、又は腸内細菌や体内で生成される有害成分を吸着する作用を発揮する。
【0031】
(3)好ましくは、活性炭として、ヤシ殻由来の植物炭末が用いられる。これにより、容易に且つ安全に生体に対し適用することができる。また、ヤシ殻由来の活性炭と本発明の特定の多糖類を併用することにより尿毒素の吸着性を維持したまま、消化酵素等の必要成分の吸着性を低下させることができる。つまり、腸内毒素吸着剤の選択吸着性をより向上させることができる。
【0032】
(4)好ましくは、炭末として水蒸気賦活処理された炭末が用いられる。これにより、活性炭の内部表面積を拡大させ、物質の吸着力を向上させることができる。
(5)好ましくは、多糖類は、少なくともポリデキストロースを含んで構成される。これにより、優れた整腸作用を発揮するとともに、腸管の微生物による分解が少なく、膠質浸透圧を維持できる。
【0033】
(6)好ましくは、腸内毒素吸着剤は、腎疾患又は肝疾患の患者用の食品として適用される。したがって、腎疾患又は肝疾患の患者に対し、便秘等の副作用を抑制しながら疾患由来の各種症状の緩和を期待することができる。
【0034】
(7)本実施形態の腸内毒素吸着剤は、水、活性炭、及び多糖類を混合し、加熱溶解後、冷却することにより得ることができる。したがって、腸内毒素吸着剤を簡便且つ容易に製造することができる。
【0035】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の腸内毒素吸着剤は、ヒトが摂取する飲食品又は医薬品等に対して適用することができるのみならず、ペット、家畜等の飼養動物に対する飼料、薬剤等に適用してもよい。
【0036】
・上記実施形態の腸内毒素吸着剤について、炭末の形状は、特に限定されず、例えば粉末状、顆粒状及び繊維状の構成が挙げられる。炭末の粒子径は、摂取可能な大きさであれば、特に限定されない。平均粒子径は、ざらつき等の摂取時における不快感を軽減し、摂取しやすくする観点から、好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは1μm〜10μm、さらに好ましくは1μm〜5μmである。尚、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器を用いて測定された粒度分布から得られたメジアン径により求めることができる。
【0037】
・上記実施形態の腸内毒素吸着剤において、原料から炭末の粒子を製造するためには、予め原料を粒子状に成形してから炭化処理を行ってもよく、炭化処理後に得られた炭化物を粉砕処理することにより粒子状に成形してもよい。
【0038】
・上記実施形態の腸内毒素吸着剤は、好ましくは腎疾患又は肝疾患の患者に対し、かかる疾患の各種症状を緩和するために適用される。しかしながら、摂取者及び適用目的は、特に限定されず、健常者に適用してもよく、例えばアレルゲン又はその他毒性成分の緩和や解毒のために適用してもよい。
【0039】
・上記実施形態の腸内毒素吸着剤において、活性炭が、腎不全患者の尿毒症治療に用いられる場合、活性炭を洗浄処理し、活性炭中のミネラル分の含有量を低下させることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ヤシ殻植物から作られ、水蒸気賦活処理された植物炭末(平均粒子径4μm)を10質量部、ローカストビーンガム0.28質量部、カラギーナン0.15質量部、ペクチン0.1質量部、ラクチュロース5質量部、ポリデキストロース25質量部、還元麦芽糖水飴12.5質量部、及び酸味料1質量部からなる配合成分に水を加え、混合物全体を100質量部とした。そして、混合物を90℃で加熱溶解した後、20gずつの小袋に充填、冷却することにより、実施例1のゼリー状の腸内毒素吸着剤を調製した。
【0041】
(実施例2)
ヤシ殻植物から作られ、水蒸気賦活処理された植物炭末(平均粒子径4μm)を10質量部、寒天1質量部、ラクチュロース5質量部、ポリデキストロース25質量部、還元麦芽糖水飴12.5質量部、及び酸味料1質量部からなる配合成分に水を加え、混合物全体を100質量部とした。そして、混合物を90℃で加熱溶解したものを、20gずつの小袋に充填、冷却することにより、実施例2のゼリー状の腸内毒素吸着剤を調製した。
【0042】
(実施例3)
ヤシ殻植物から作られ、水蒸気賦活処理された植物炭末(平均粒子径4μm)を10質量部、カラギーナン0.44質量部、キサンタンガム0.16質量部、ローカストビーンガム0.16質量部、ラクチュロース5質量部、ポリデキストロース25質量部、還元麦芽糖水飴12.5質量部、酸味料1質量部からなる配合成分に水を加え、混合物全体を100質量部とした。そして、混合物を90℃で加熱溶解したものを、20gずつの小袋に充填、冷却することにより、実施例3のゼリー状の腸内毒素吸着剤を調製した。
【0043】
(実施例4)
ヤシ殻植物から作られ、水蒸気賦活処理された植物炭末(平均粒子径15μm)を使用した以外、実施例1と同様に製造することにより、実施例4のゼリー状の腸内毒素吸着剤を調製した。
【0044】
(実施例5)
実施例1と同様の方法にてヤシ殻炭末の代わりに、熱硬化性樹脂由来の炭素源を原料として製造された球状活性炭末(商品名クレメジン:クレハ社製)を用いて、実施例5のゼリー状の腸内毒素吸着剤を調製した。
【0045】
(比較例1)
まず、水蒸気賦活処理されたヤシガラ炭末(平均粒子径4μm)16質量部とコンニャク粉16質量部に5%グリセリン水溶液750質量部を加えて90℃で加熱して溶解させ、その後、40℃まで冷却させた。これに、酸化カルシウム0.64質量部を40℃のお湯50質量部に溶いたものを加えよく攪拌する。これを型に入れて加熱して凝固させる。これを水にさらしてグリセリンを除去した後、熱風乾燥し、さらに粉砕して比較例1の植物炭末50%含有コンニャク粉末を得た。
【0046】
(比較例2)
水蒸気賦活ヤシガラ炭末(平均粒子径4μm)を1号ハードカプセルに充填することにより比較例2のカプセル状の腸内毒素吸着剤を製造した。ハードカプセル内における水蒸気賦活ヤシガラ炭末の内容量は、400mgである。
【0047】
(比較例3)
実施例1と同様の方法にてヤシ殻炭末の代わりに、植物炭末として市販の竹炭末(平均粒子径4μm)を用いて、比較例3のゼリー状の腸内毒素吸着剤を調製した。
【0048】
(比較例4)
クレメジンの顆粒状物を比較例4の腸内毒素吸着剤とした。
(比較例5)
クレメジンの顆粒状物を1号ハードカプセルに充填することにより比較例5のカプセル状の腸内毒素吸着剤を製造した。ハードカプセル内におけるクレメジンの内容量は、400mgである。
【0049】
(比較例6)
ヤシ殻植物から作られ、水蒸気賦活処理された植物炭末のみからなる腸内毒素吸着剤を比較例6とした。
【0050】
(比較例7)
市販の竹炭粉末(賦活処理なし)を比較例7の腸内毒素吸着剤とした。
(比較例8)
市販の備長炭末(賦活処理なし)を比較例8の腸内毒素吸着剤とした。
【0051】
(比較例9)
市販の備長炭末を水蒸気賦活処理したものを比較例9の腸内毒素吸着剤とした。
<試験例1:尿毒素吸着試験>
実施例1,2,5、比較例3,4,6〜9の腸内毒素吸着剤を用い、尿毒素及び消化酵素に対する吸着性について試験した。
【0052】
試験方法は、吸着対象物を含有する水溶液に各例の腸内毒素吸着剤を添加し、所定時間放置後に水溶液中に残存する吸着対象物を求める方法により試験した。
吸着対象物としてクレアチニンとp−ヒドロキシフェニル酢酸を使用する場合、クレアチニンとp−ヒドロキシフェニル酢酸をそれぞれ10mg/dLの水溶液として調製し、この水溶液に各例の腸内毒素吸着剤を植物炭末又は活性炭としてそれぞれ2.5g/50mL量加え、37℃で3時間攪拌した。攪拌後の上清部の吸光度を測定するとともに、腸内毒素吸着剤を加えてない場合の吸光度と比較し、吸着率を求めた。吸着対象物としてキモトリプシン(消化酵素)を使用する場合、キモトリプシンを10mg/dLの水溶液として調製し、この水溶液に各例の腸内毒素吸着剤を植物炭末又は活性炭として0.125g/50mL量加え21℃で3時間攪拌した。攪拌後、同様に上清部の吸光度を測定するとともに、植物炭末又は活性炭を加えてない場合の吸光度と比較し、吸着率を求めた。その結果を表1,2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

表1に示されるように、実施例1,2は、いずれも消化酵素の吸着を抑制しつつ、尿毒素の吸着性に優れることが確認された。クレメジンをゼリー状に調製した実施例5は、p−ヒドロキシフェニル酢酸の吸着率は高いことが確認されたが、クレアチニンの吸着率はやや劣っていた。竹炭末をゼリー状に調製した比較例3は、いずれの物質の吸着率も低いことが確認された。
【0055】
ヤシ殻植物から作られ、水蒸気賦活処理した植物炭末のみからなる比較例6は、消化酵素の吸着率がやや高いことが確認された。実施例1,2及び比較例6の結果より、ヤシ殻由来の活性炭と本発明の特定の多糖類を併用することにより尿毒素の吸着性を維持したまま、消化酵素(キモトリプシン)の吸着性を低下できることが確認された。市販の備長炭末を水蒸気賦活処理した植物炭末のみからなる比較例9は、消化酵素の吸着率が高いことが確認された。水蒸気賦活処理されていない植物炭末のみからなる比較例7,8は、尿毒素の吸着率が劣ることが確認された。
【0056】
<試験例2:腸内毒素吸着剤を経口摂取する際の食感等に関する試験>
実施例1〜5、比較例1,2,4,5の腸内毒素吸着剤について、経口摂取する際の味覚、ざらつき感(食感)、及び摂取するのに必要な水分量について評価した。各例の腸内毒素吸着剤は、植物炭末又は活性炭として2gを経口摂取することにより評価した(n=5の平均値)。
【0057】
(味覚の評価)
表中の○は、食べやすい、△は、やや食べづらい、×は、非常に食べづらい、を示す。
(ざらつき感の評価)
表中の○は、殆どざらつきなし、△は、ややざらつきが気になる、×は、強くざらつきを感じる、を示す。
【0058】
【表3】

表3に示されるように、植物炭末50%含有コンニャク粉末である比較例1の腸内毒素吸着剤は、味覚及び食感の評価が悪く、摂取に要する水分量が多いことが確認された。また、水蒸気賦活処理されたヤシ殻炭末のカプセル状物である比較例2は、摂取に要する水分量が多いことが確認された。クレメジンの顆粒状物である比較例4は、味覚及び食感が悪く、摂取に要する水分量が多いことが確認された。クレメジンのカプセル状物である比較例5は、摂取に要する水分量が多いことが確認された。実施例4は、実施例1に比べ、原料炭末の平均粒子径が大きいため、ややざらつきが感じられた。また、クレメジンをゼリー状に調製した実施例5は、比較例4に比べ、味覚が改善され、摂取水分量が大幅に減少した。しかしながら、ざらつきについては、比較例4に比べ、改善が認められてものの、実施例1に比べると依然ざらつきは認められた。
【0059】
<試験例3:腸内毒素吸着剤を経口摂取した際の便秘の発生頻度に関する試験>
実施例1,5と比較例2,4の腸内毒素吸着剤について、一日に植物炭末又は活性炭として6g摂取した場合の便秘の発生頻度について試験した。腸内毒素吸着剤は、20人に1回摂取させ、便秘の発生人数を求めた。便秘の発生数については、摂取後、翌日中に便が出ない場合を便秘として、その発生人数をカウントした。
【0060】
【表4】

水蒸気賦活ヤシガラ炭末のカプセル状物である比較例2及びクレメジンの顆粒状物である比較例4は、実施例1に対し、便秘の発生頻度が著しく高いことが確認された。一方、クレメジンをゼリー状に調製した実施例5は、便秘の副作用が改善していることが確認された。実施例1の腸内毒素吸着剤は、便秘の副作用はほとんど生じないことが確認された。
【0061】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について効果とともに、以下に追記する。(イ)前記多糖類は、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも一種のみから構成される前記腸内毒素吸着剤。(ロ)コンニャク由来の多糖類を含有しない前記腸内毒素吸着剤。かかる(イ)又は(ロ)の構成によると、腸内毒素吸着剤の味覚及び食感をより低下させることがない。
【0062】
(ハ)製造工程において、グリセリンを使用しないことを特徴とする前記腸内毒素吸着剤の製造方法。かかる(ハ)の構成によると、グリセリンを除去する必要がなく容易に腸内毒素吸着剤を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー状又はゲル状の剤型である腸内毒素吸着剤において、
ヤシ殻由来の植物炭末及び熱硬化性樹脂由来の炭末から選ばれる少なくとも一種の活性炭、並びにローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも一種の多糖類を含有することを特徴とする腸内毒素吸着剤。
【請求項2】
前記活性炭は、ヤシ殻由来の植物炭末であることを特徴とする請求項1に記載の腸内毒素吸着剤。
【請求項3】
前記植物炭末は、水蒸気賦活処理された植物炭末であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腸内毒素吸着剤。
【請求項4】
前記多糖類は、少なくともポリデキストロースを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の腸内毒素吸着剤。
【請求項5】
腎疾患若しくは肝疾患の患者用、又は解毒用の食品又は医薬品であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の腸内毒素吸着剤。
【請求項6】
ゼリー状又はゲル状の剤型である腸内毒素吸着剤の製造方法において、
水、ヤシ殻由来の植物炭末及び熱硬化性樹脂由来の炭末から選ばれる少なくとも一種の活性炭、並びにローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、ポリデキストロース、アガロース、アガロペクチン及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも一種の多糖類を混合し、加熱溶解後、冷却することを特徴とする腸内毒素吸着剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−136484(P2012−136484A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291145(P2010−291145)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【出願人】(502367236)株式会社生活文化舎 (2)
【Fターム(参考)】