説明

腸管洗浄用組成物

【課題】 腸管洗浄用組成物を服用しやすいものとする。
【解決手段】 液体香料を含有し且つ糖類を実質的に含有しない矯味矯臭剤を添加する。さらに、液体香料が消失しないように、内層が軟質のポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなりその上に硬質のポリオレフィン系熱可塑性樹脂を重層した容器であって、使用時に腸管洗浄用組成物を溶解するための水を入れるに十分な容積の包装体に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸内視鏡検査、注腸X線検査、大腸手術の前処置等に利用される腸管洗浄用組成物および包装された腸管洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大腸内視鏡検査や注腸X線検査、大腸手術等の前処置等は、低残渣、低脂肪のメニューを摂る食事制限と下剤の投与からなるブラウン(Brown)法が主流であった。しかし、ブラウン法の食事制限は患者にとってかなりの負担になり、さらに下剤が飲みにくく急激に下痢をきたすため、近年ブラウン法に替えて非分泌性非吸収性の経口腸管洗浄液による腸管洗浄法が広く用いられている。
【0003】
経口腸管洗浄法は、電解質等からなる粉末状組成物を一定量、例えば2リットル程度の水で溶解して調製した腸管洗浄液を2〜4時間かけて服用する。しかし、経口腸管洗浄液には電解質成分や浸透圧調整剤が配合されており、それらの特有のにおいや塩辛い味のため、患者は不快な「におい・味」を我慢しながら長時間にわたり服用を続けなければならない。
【0004】
したがって、経口腸管洗浄液の服用に際しての苦痛を軽減する改善策が臨床現場より望まれてきた。特に望まれているのが味、臭いの改善であり、その方法として腸管洗浄用組成物に矯味剤や矯臭剤等を添加し服用し易い製剤とすることが提案されている(特許文献1、2および3)。
【0005】
ところが矯味矯臭剤を糖に吸着させて製剤すると、その糖が腸管内で微量に残存し、腸内細菌によって分解され、腸管内に水素やメタンの可燃性(爆発性)ガスを発生することがある。この可燃性ガスは、手術中に電気メス等が使用された場合腸管内で爆発する危険性がある。したがって、腸管洗浄用組成物の矯味、矯臭には、可燃性ガスの発生を伴わない方法とすることが必要である。またその効果を維持できるよう腸管洗浄組成物から、矯味矯臭成分が消失しないよう留意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−228423号公報
【特許文献2】特許第3255641号公報
【特許文献3】特表平8−505609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、経口腸管洗浄用組成物を、腸管内で可燃性ガスの発生しない方法で矯味・矯臭し、さらにその矯味・矯臭効果を長期にわたり維持できる包装体に充填したものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前述の腸管洗浄法における腸管洗浄液服用の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
〔1〕晶質浸透圧調整剤および矯味矯臭剤を含有することを特徴とする腸管洗浄用組成物
において、液体香料を含有し且つ糖類を実質的に含有しないことを特徴とする腸管洗浄用組成物。
〔2〕追加成分として膠質浸透圧調整剤を含有し、水に溶解して浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として腸管洗浄に使用されることを特徴とする〔1〕の腸管洗浄用組成物。
〔3〕水に溶解したとき少なくとも以下の範囲の成分を含有することを特徴とする〔2〕の腸管洗浄用組成物。
ポリエチレングリコール 30〜80g/L
Na+ 30〜150mEq/L
+ 2〜20mEq/L
Cl+ 20〜70mEq/L
HCO3+ 10〜50mEq/L
SO42- 0〜120mEq/L
〔4〕腸管洗浄用組成物の0.001〜0.3質量%の液体香料を含むことを特徴とする請求項〔1〕〜〔3〕の腸管洗浄用組成物。
〔5〕液体香料がリモネンを含有することを特徴とする〔4〕の腸管洗浄用組成物。
〔6〕追加成分として糖類を含有しない甘味料を含むことを特徴とする〔4〕または〔5〕の腸管洗浄用組成物。
〔7〕リモネンの吸着量もしくは透過散逸量が、使用時までに一包装体当たり1000mg以下になるよう形成された包装体に収納されていることを特徴とする〔4〕〜〔6〕の腸管洗浄用組成物。
〔8〕包装体の内容物と接する層がポリオレフィン系の熱可塑性樹脂で形成され、包装体のガス透過度が0〜20cc/m2・day・atm(25℃)であることを特徴とする
〔7〕の腸管洗浄用組成物。
〔9〕内容物と接する層が100μm以下の膜厚を有するポリオレフィン系の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする〔7〕または〔8〕の腸管洗浄用組成物。
〔10〕リモネン吸着量/透過量の異なる2種以上のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂により形成されている包装体に充填されていることを特徴とする〔9〕の腸管洗浄用組成物。
〔11〕内容物と接する層が低密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなり、その外側に高密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂を有する包装体に収納されていることを特徴とする〔10〕の腸管洗浄用組成物。
〔12〕最内層(内容物と接する層)が低密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなり、その外側に高密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなる層、さらにその外側に低密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなる層を有する包装体に収納されていることを特徴とする〔10〕の腸管洗浄用組成物。
〔13〕ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂がポリエチレンであることを特徴とする〔8〕〜〔12〕の腸管洗浄用組成物。
〔14〕包装体の最内層、その外側の層およびさらにその外側の層のそれぞれの膜厚が20〜40μmであることを特徴とする〔12〕または〔13〕の腸管洗浄用組成物。
〔15〕ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂の外側にさらに他の樹脂層が重層されていることを特徴とする〔8〕〜〔14〕の腸管洗浄用組成物。
〔16〕包装体の内容量が腸管洗浄用組成物を溶解する水を収納できる容積を持ちかつ溶解する水の注入口を有することを特徴とする〔7〕〜〔15〕の腸管洗浄用組成物。
〔17〕包装体が、腸管洗浄用組成物を水に溶解したとき注入口を上にして立てることができる底面がついていることを特徴とする〔16〕の腸管洗浄用組成物。
〔18〕内層が熱可塑性樹脂からなり、外層が金属からなる包装体に収納されていることを特徴とする〔7〕の腸管洗浄用組成物。
〔19〕内層がポリエチレンであることを特徴とする〔18〕の腸管洗浄用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経口腸管洗浄用組成物は服用し易く、またガス透過性の少ない包装体に充填することにより矯味・矯臭効果を損なうことなく長期間保存することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
腸管洗浄用組成物は、腸管洗浄する際に血液の電解質バランスを大きく乱すことなく、優れた腸管内洗浄効果を示すために晶質浸透圧調整剤を含む。
【0012】
晶質浸透圧調整剤としては、電解質が用いられる。電解質とは、溶液中で解離してイオンとなる物質を言い、Na+、K+、Ca++、Mg++、Cl-、HCO3-、SO4--、HPO4--、有機酸基、有機塩基を挙げることができる。より具体的には、静脈投与される電解
質輸液などに用いられる化合物と同様のものを使用できる。ナトリウム源としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が、カリウム源としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム等が、カルシウム源としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム等が、マグネシウム源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム等が、リン源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム等が、塩素源としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が、また重炭酸イオン源としては、炭酸水素ナトリウム等がそれぞれ例示され、これらの化合物は水和物の形態であってもよい。
【0013】
電解質と糖類の混合物が浸透圧調整に用いられることもあるが、糖類は腸内細菌により醗酵されて腸内の水素ガス、メタンガス濃度を増加させる可能性がある。したがって、本発明の腸管洗浄用組成物においては糖類を含有しないことが重要である。
【0014】
晶質電解質の外に膠質電解質を用いることが好ましい。膠質浸透圧調整剤としては腸内細菌によって醗酵することのない高分子を配合することが好ましい。より具体的にはポリエチレングリコールであり、その分子量としては2000から8000のものが好ましく、より好ましくは3000から7000の範囲のものを使用するのがよい。
【0015】
本発明の腸管洗浄用組成物は、生体内の血清電解質バランスと浸透圧の変動を最小限に抑えるよう浸透圧調整剤を配合して用いる。その量は、患者の病状や腸内残留物量等により調整するが、水に溶解して浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として使用することが好ましい。より好ましくは、280〜320mOsm/Lの等張、もしくは等張に近い浸透圧範囲に調整可能なように各成分の種類と配合量を選択するのがよい。
【0016】
膠質浸透圧調整剤の使用量は、水1リットルに溶解する製剤中に5〜120グラム、好ましくは30〜90グラムである。腸管から吸収される電解質量と腸管内に分泌される電解質量を相殺させて血清電解質バランスを維持するため、腸管洗浄用組成物を水に溶解したとき、Na+:30〜150mEq/L、K+:2〜20mEq/L、Cl-:20〜70mEq/L、HCO3-:10〜50mEq/L、SO42-:0〜120mEq/Lとなるように電解質を添加するのが好ましい。水に溶解した腸管洗浄用組成物の腸管での水分および電解質の吸収を抑制し、腸管洗浄効率を上げるためにマグネシウムイオン、硫酸イオンのような難吸収性イオンを添加する。マグネシウムイオンの場合は、腸管洗浄用組成物を水に溶解したとき、40〜120mEq/Lとなるよう調整する。硫酸イオンの場合は、腸管洗浄用組
成物を水に溶解したとき、40〜120mEq/Lとなるよう調整する。
【0017】
本発明の腸管洗浄用組成物を使用するに当たっては、所定量を水に溶解して溶解液とする。成人の場合は、この溶解液を0.4〜4L、好ましくは1〜2L経口で服用する。服
用は1時間当たり約1Lの速度とするのが好ましい。そのように服用することによって、腸管内容物は排泄される。1週間の排便回数が平均4回未満の便秘がある場合は、便通改善を目的として腸管洗浄用組成物の溶解液200〜300mLを3〜5日間連続服用して便通を改善した後、1〜2L経口で服用することによって腸管内容物を排泄させることができる。
【0018】
腸管洗浄液の服用により腸管洗浄が十分に行なわれていれば、腸内細菌数は1/100から1/1000に減少し、腸内細菌による腸内の極微量残留物の分解に起因する水素ガス、メタンガスの生成は抑えられる。しかし、従来の腸管洗浄液が服用しずらい味、臭いを有していることから、悪心、嘔吐などにより洗浄に必要な十分な量を服用できない場合もある。服用を容易にするために、本発明では矯味矯臭剤を腸管洗浄用組成物に配合した。本発明の腸管洗浄用組成物は、液体香料を含有しかつ糖類を実質的に含まない矯味矯臭剤を含有する。
【0019】
本発明で用いる矯臭剤としては、経口で腸管洗浄用組成物溶液を摂取する際の晶質電解質および膠質電解質に起因する臭いをマスクするものであればよく特に限定されれない。しかし、食品香料が適当であり、特に果物の香料が適している。果物香料としては、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、レモンライム、マンダリンオレンジ、葡萄、いちご、さくらんぼ、林檎、杏、ラズベリー等の香料が挙げられる。そのうちでもレモン、オレンジ、グレープフルーツ、レモンライムのような柑橘系の香りはさわやかな飲み心地を与えるので最適である。香料としては、これらの果物から圧搾法や水蒸気蒸留によって得られる精油を用いることができる。また、リモネン、シトラール、シトロネラール、リナロール、オクタナール等を単独にあるいは配合して作ることができる。なかでもリモネンを含む柑橘系の香料を使用することが好ましい。このような香料は香料メーカーから市販されており、それを用いることが実際的である。なお、液体香料には香料成分を含水アルコール等で抽出したり溶解した水溶性の液体香料、および香料成分を油性溶剤に溶かした油溶性の液体香料が含まれる。さらに香料成分(精油)に保存剤等を加えたものが含まれる。液体香料としては、保存安定性の点から水溶性の液体香料より油溶性もしくは精油由来の香料を用いることが好ましい。
【0020】
液体香料を用いる際、各製造工程での揮散および包装体への吸着および包装体からの透過散逸を考慮して添加量を調整する必要がある。好ましい添加量は腸管洗浄用組成物の0.001〜0.3質量%である。本発明においては、液体香料を用い、電解質粉末に直接吸着させる。液体香料をあらかじめ糖類に吸着させて配合することは、水素ガスやメタンガスの発生の危険があるので避けなければならない。
【0021】
本発明で用いる矯味剤は、大量の腸管洗浄用組成物溶液を服用する際に飲みやすくするものであり、通常甘味剤が用いられる。甘味剤としては、腸内において水素ガスやメタンガスの発生がないか極めて少ないものでなければならない。具体的には、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファム−K、チクラメート(シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム)、アスパルテーム等を単独もしくは組み合わせて用いることが好ましい。これらの甘味料の好ましい添加量は腸管洗浄用組成物の0.001〜3質量%である。より好ましくは0.01〜0.3質量%である。
【0022】
このように、矯味矯臭剤を添加した腸管洗浄用組成物は、嚥下能力が低下したり、味・臭いに敏感で悪心、嘔吐しやすい患者でも容易に服用できる。
【0023】
本発明の腸管洗浄用組成物は、熱可塑性樹脂で内張りしたアルミニウム等の金属製の袋
ないし缶のような包装体、もしくは熱可塑性樹脂で形成したプラスチック製の包装体に充填される。この場合、リモネンを含有する香料は特にポリオレフィン系の熱可塑性樹脂に吸着されあるいはそれを通して透過散逸され易いいので使用時に十分な量の香料が残存するような包装体とする必要がある。包装体内面の面積とともに樹脂層の厚みも吸着量および透過散逸量を左右するので、包装体のシール強度の低下を招かないでしかも使用時に十分な量の香料が残存するような範囲で樹脂層の厚み等を設定する必要がある。特に、リモネンの吸着量あるいは透過散逸量が使用時までに一包装体当たり1000mg以下となるような包装体とすることが好ましい。
【0024】
本発明の腸管洗浄用組成物は、包装体から容器に移して水で溶解して服用することができる。しかし、包装体自身を必要な溶解水(例えば2リットル)を収納できるプラスチック製の容器とし、使用時に包装体の中に直接溶解水を入れて溶解し服用すれば、溶解用の容器を別途準備する必要がなくなるので便利である。この場合のプラスチック容器としては、ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂で形成されることが好ましい。ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンを挙げることができる。軟質ポリオレフィンは、容器の成型上必要な樹脂同士の接着性がよいが、リモネンを含有する香料のガス吸着性/透過性が高い。一方、硬質ポリオレフィンは、ガス吸着性/透過性は低いが、樹脂同士の接着性が悪い。したがって、成型上の要件とガス吸着性/透過性の要件の両者を満足させるためには、内層(腸管洗浄用組成物と接触する面)には軟質ポリオレフィンを用い、その上に硬質ポリオレフィンを重層させれば、全体としてガス吸着性/透過性が低く、接着性(成形性)が良く、しかも溶解用容器としても兼用できる大容量の包装体とすることができる。さらに、最内層(腸管洗浄用組成物と接触する面)に軟質ポリオレフィン、その外側に硬質ポリオレフィン、さらにその外側に軟質ポリオレフィンを重層して、合計3層としたものが特に好ましい。
【0025】
最内層には軟質ポリエチレン、特に直鎖状ポリエチレンを用いることが好ましい。その場合の最内層の厚みは、リモネンを含有する香料の吸着あるいは透過散逸による減少を抑えるため、100μm以下、好ましくは50μmのポリオレフィン系の熱可塑性樹脂で形
成されることが好ましい。軟質ポリオレフィンからなる内層と硬質ポリオレフィンからなる外層の2層でプラスチック製の包装体を形成する場合には、合計の厚みが70〜200μmとし、内層および外層のそれぞれの厚みを35〜100μmとするのが好ましい。軟質ポリオレフィンを最内層とし、その外側に硬質ポリオレフィンをさらにその外側に軟質ポリオレフィンを重層して3層からなるプラスチック製の包装体を形成する場合には、合計の厚みが70〜200μmとし、それぞれの層の厚みを15〜70μm、特に20〜40μmとするのが好ましい。
【0026】
有効成分のうち、炭酸水素ナトリウムが経時的に炭酸ガスを発生し含量が低下するのを抑えかつ、リモネンの包装体からの散逸を防止するという双方の目的を達成するために、包装体のガス透過度は20cc/m2・day・atm(25℃)以下でなければならな
い。
【0027】
前記の2層もしくは3層のポリエチレン層の更に外側に、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を積層して、包装体の落下衝撃や突き刺しに対する強度を高めた包装体を形成することが好ましい。
【0028】
包装体の形状は特に問わないが、溶解水を収納できるプラスチック製の容器を兼用する場合には、溶解水の注入口を備え、溶解した場合にそれを立てられるような底面を設けるのが好ましい。製造の便を考慮すると、底辺よりも高さの長い縦長のほぼ三角形の2枚の側壁、その側壁の上部に付けた注入口、その側壁の下部に付けた椿の葉のような形状を有する底面を有するものが好ましい。2枚の側壁と底面は柔軟性のあるプラスチックで構成
し、注入口は硬いプラスチックで構成し、注入口には蓋を付ける。2枚の側壁と底面を柔軟性のあるプラスチックで構成し、底面は溶解水を入れるまでは内部に折りたためる構造とすることにより、溶解水を注入する迄は、包装体(容器)から空気を排除しておけば全体をコンパクトにできるので、貯蔵、輸送に好都合である。2枚の側壁は内容量が眼で確認できるように透明または半透明のプラスチックで構成するのが好ましい。その側壁には溶解水の量を示す目盛りを付すことにより、溶解水の注入に計量器を必要とせず、服用に際して服用量を眼で確認できる。
【0029】
本発明の腸管洗浄用組成物は、所定の成分を従来公知の方法で混合して調製することができる。包装体に充填する場合には、空気をできるだけ排除しておくほうが、嵩張らないので保存、輸送に便利である。 また、長期保存が必要な場合には、本包装体をさらにアルミラミネートフィルム等で形成したガス非透過性の外装用袋に入れ密封することができる。
【0030】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
実施例1
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、
無水硫酸ナトリウム11.37g、ポリエチレングリコール118g、リモネンを主成分
とするレモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)0.137g、
サッカリンナトリウム0.0686gと混合して腸管洗浄用組成物を調製した。これを、
内面の表面積220cm2のプラスチックで内面をラミネートしたアルミニウム薄膜製の
袋に充填し密封した。この包装品1つは、別容器に入れた2Lの水に溶解して服用するものである。
【0032】
実施例2
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、
無水硫酸ナトリウム11.37g、ポリエチレングリコール118g、リモネンを主成分
とするレモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)0.137g、
サッカリンナトリウム0.0686gと混合して腸管洗浄用組成物を調製した。これを、内層が50μmの軟質ポリエチレンと外層が50μmの硬質ポリエチレンで製作された内容量2300mLの、注入口付きのプラスチック製の包装体に充填し、できるだけ空気を除いてから密栓した。この包装品は、使用時に2リットルの水を入れ溶解して服用するものである。
【0033】
実施例3
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、
無水硫酸ナトリウム11.37g、ポリエチレングリコール118g、リモネンを主成分
とするレモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)0.137g、
サッカリンナトリウム0.0686gと混合して腸管洗浄用組成物を調製した。これを、
最内層が33μmの軟質ポリエチレン、中層が33μmの硬質ポリエチレン、最外層が33μmの軟質ポリエチレンで製作された内容量2300mLの、注入口付きのプラスチック製の包装体に充填し、できるだけ空気を除いてから密栓した。この包装品は、使用時に2リットルの水を入れ溶解して服用するものである。
【0034】
実施例4
塩化ナトリウム1.465g、塩化カリウム0.745g、炭酸水素ナトリウム1.68
5g、無水硫酸ナトリウム5.685g、ポリエチレングリコール59g、リモネンを主
成分とするレモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)0.068
g、サッカリンナトリウム0.0343gと混合して腸管洗浄用組成物を調製した。これ
を、最内層が33μmの軟質ポリエチレン、中層が33μmの硬質ポリエチレン、最外層が33μmの軟質ポリエチレンで製作された内容量1200mLの、注入口付きのプラスチック製の包装体に充填し、できるだけ空気を除いてから密栓した。この包装品は、使用時に1リットルの水を入れ溶解して服用するものである。
【0035】
実施例5
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、
無水硫酸ナトリウム11.37g、ポリエチレングリコール118g、リモネンを主成分
とするレモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)0.137g、
サッカリンナトリウム0.0686gと混合して腸管洗浄用組成物を調製した。これを、
ポリエチレンテレフタレート層とナイロン層の2層からなる膜厚40μmの外層に、膜厚33μmの直鎖上低密度ポリエチレン、膜厚33μmの高密度ポリエチレンおよび膜厚33μmの直鎖上低密度ポリエチレンを順次積層した3層からなる内層を積層した、合計5層の熱可塑性樹脂で作成した内容量2300mLの注入口付きのプラスチック製の包装体(内表面積600cm2)に充填し、できるだけ空気を除いてから密栓した。さらにこれをアルミラミネートフィルムからなる外装用袋に収納、密封した。この包装品は、使用時に2リットルの水を入れ溶解して服用するものである。
【0036】
試験例1:矯味剤に関する官能試験
予備試験で評価の高かった3種類の矯味剤(1)レモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)、(2)オレンジ−22−222(大洋香料株式会社製)および(3)グレープフルーツ22−204B(大洋香料株式会社製)について、成人89名をパネラーとして官能試験を行った。その結果、46%のパネラーが(1)のレモンライム フレーバー 32−112を1位指名し、最も好ましい矯味剤であるとの結果を得た。
【0037】
試験例2:ポリエチレンのリモネンを含有する香料の吸着性/透過性の試験
試験に用いたリモネンを含有する香料:レモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)
試験に用いた包装体1:ポリエチレンテレフタレート層とナイロン層の2層からなる膜厚40μmの外層に、膜厚140μmの直鎖上低密度ポリエチレンの内層を積層して合計3層の熱可塑性樹脂で作成した内容量2300mLの包装体(内表面積600cm2
試験に用いた包装体2:ポリエチレンテレフタレート層とナイロン層の2層からなる膜厚40μmの外層に、膜厚33μmの直鎖上低密度ポリエチレン、膜厚33μmの高密度ポリエチレンおよび膜厚33μmの直鎖上低密度ポリエチレンを順次積層した3層からなる内層を積層した、合計5層の熱可塑性樹脂で作成した内容量2300mLの包装体(内表面積600cm2
試験に用いた腸管洗浄用組成物:塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37g、ポリエチレングリコール118g、リモネンを主成分とするレモンライム フレーバー 32−112(大洋香料株式会社製)0.137g、サッカリンナトリウム0.0686gと混合したもの。
【0038】
試験方法:腸管洗浄用組成物を包装体1および包装体2に充填、密栓し、さらにアルミラミネートフィルムからなる外装用袋に収納、密封し、20℃、湿度60%RHにおいて、リモネン含有量の経時的変化をガスクロマトグラフィーにて測定した。
【0039】
測定結果
【表1】

【0040】
この結果から、内層を軟質ポリエチレンだけで作成した包装体では、リモネンの消失が大きいが、内層に軟質ポリエチレンと硬質ポリエチレンを積層した包装体の場合には、リモネンは1週間後迄は減量するがその後はほぼ一定量が残存し使用時に十分量のリモネンが存在することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶解したとき少なくとも以下の範囲の成分を含有し、浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として腸管洗浄に使用される腸管洗浄用組成物であって、腸管洗浄用組成物の0.001〜0.3質量%のリモネンを含有し、リモネン吸着量/透過量の異なる2種以上のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂により形成され、内容物と接する層が低密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなり、その外側に高密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂を有する膜厚70〜200μmの包装体に収納されていることを特徴とする腸管洗浄用組成物。
ポリエチレングリコール 30〜80g/L
Na+ 30〜150mEq/L
+ 2〜20mEq/L
Cl+ 20〜70mEq/L
HCO3+ 10〜50mEq/L
SO42- 0〜120mEq/L
【請求項2】
高密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなる層のさらに外側に低密度ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなる層を有する包装体に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の腸管洗浄用組成物。
【請求項3】
ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂がポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の腸管洗浄用組成物。
【請求項4】
包装体の最内層、その外側の層およびさらにその外側の層のそれぞれの膜厚が20〜40μmであることを特徴とする請求項2または3に記載の腸管洗浄用組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなる包装体の外側にさらに他の樹脂層が重層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の腸管洗浄用組成物。
【請求項6】
包装体の内容量が腸管洗浄用組成物を溶解する水を収納できる容積を持ちかつ溶解する水の注入口を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の腸管洗浄用組成物。
【請求項7】
包装体が、腸管洗浄用組成物を水に溶解したとき注入口を上にして立てることができる底面がついていることを特徴とする請求項6に記載の腸管洗浄用組成物。
【請求項8】
水に溶解したとき少なくとも以下の範囲の成分を含有し、浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として腸管洗浄に使用される腸管洗浄用組成物であって、腸管洗浄用組成物の0.001〜0.3質量%のリモネンを含有し、内層が熱可塑性樹脂からなり、外層が金属からなる包装体に収納されていることを特徴とする腸管洗浄用組成物。
ポリエチレングリコール 30〜80g/L
Na+ 30〜150mEq/L
+ 2〜20mEq/L
Cl+ 20〜70mEq/L
HCO3+ 10〜50mEq/L
SO42- 0〜120mEq/L
【請求項9】
内層がポリエチレンであることを特徴とする請求項8に記載の腸管洗浄用組成物。

【公開番号】特開2011−162549(P2011−162549A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69301(P2011−69301)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【分割の表示】特願2004−109993(P2004−109993)の分割
【原出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】