説明

腹膜透析を実施するためのシステムおよび方法

【課題】複数回通過連続流透析療法を行なうためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、カテーテルを介して患者に接続され、それにより流体ループを画定する流体回路を備え、透析液を含む治療流体は、前記流体ループに沿って患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出して連続的に循環し、治療上効果的な量の過剰な水分、および尿毒症毒素を含む溶質を除去することが可能である。流体ループ内への治療流体の供給量および排出量は、流体ループ内における流体の循環量に比例して制御可能に調節することができ、治療流体は、流体ループに沿って複数回通過した後に排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(優先権主張)
本願は、2002年7月19日に出願された米国仮特許出願第60/397,268号「Systems And Methods For Performing Peritoneal Dialysis」の利益を主張し、この特許の内容全体は、本明細書中に参考として援用する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、概して、腹膜透析を行なうためのシステムおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、連続流腹膜透析を行なうためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
疾病、発作またはその他の原因により、人の腎臓系は不全になる可能性がある。何らかの原因による腎不全では、いくつかの生理的障害がある。水分、無機物および日常の代謝負荷のバランスは、腎不全の場合は不可能になる。腎不全では、有毒な窒素代謝の最終生成物(たとえば、尿素、クレアチニン、尿酸およびその他)が血液および組織中に蓄積する可能性がある。
【0004】
腎機能障害および腎機能低下は、透析で処置されてきた。透析は、さもなければ正常に機能する腎臓により除去されていたはずの老廃物、毒素および過剰な水分を人体から除去する。腎機能補充のための透析治療は、この治療が救命処置であるというため、多くの人にとって重大である。機能不全腎を有する人は、少なくとも腎臓の濾過機能を補充しなければ、生存し続けることはできないであろう。
【0005】
血液透析および腹膜透析は、腎機能の損失を治療するために一般に使用されている2種類の透析療法である。血液透析処置は、老廃物、毒素および過剰な水分を直接患者の血液から除去する。患者は、血液透析機械に接続され、患者の血液はこの機械を通してポンピングされる。たとえば、ニードルまたはカテーテルは、患者の静脈および動脈内に挿入され、血液透析機械との間で血流を接続する。血液が血液透析機械内の透析装置を通過すると、透析装置は、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血液から除去し、血液を返して患者の体内に逆に注入する。多量、たとえば約90〜120リットルの透析液は、殆どの血液透析機械により、1回の血液透析療法で血液を透析するために使用される。その後、使用済み透析液は廃棄される。血液透析処置は数時間持続し、一般に、処置センターにおいて毎週約3回実施される。
【0006】
もう1つのタイプの血液透析療法は、再生式血液透析である。この療法は、透析液を再生するためのカートリッジを備える血液透析システムを使用する。こうしたカートリッジは、オクラホマ州、オクラホマ市のSorb TechnologyがREDYTMの名称で製造している。このシステムでは、事前に透析液流体の流路を適切に浄化しなければ、血液透析機械を別の患者に使用することはできない。また、透析液流体の流路は、閉鎖システムではない。これに関して、透析液流体流路は大気に対して開放しているため、空中に浮遊する病原体がシステム中の流体に接触し、システム中における細菌の成長を促進する可能性がある。したがって、こうした透析システムの汚染は問題である。したがって、REDYTMカートリッジを出る透析液流体は、腹膜透析に適さない。
【0007】
腹膜透析は、無菌の透析溶液つまり「透析液(dialysate)」を使用し、これは、患者の腹腔内に、患者の腹膜に接触して注入される。老廃物、毒素および過剰な水分は、患者の血流から腹膜を通過して透析液中に至る。血流から透析液中への老廃物、毒素および過剰な水分の移送は、透析液中の浸透圧剤が膜全体に浸透圧格差を生じる時に、滞留期間における拡散および浸透により行なわれる。使用済みの透析液は、後に患者の腹腔から排出されて、老廃物、毒素および過剰な水分が患者から除去される。
【0008】
様々なタイプの腹膜透析療法があり、連続的な歩行可能腹膜透析(「CAPD」)および自動化腹膜透析が挙げられる。CAPDは、手動の透析処置であり、患者はカテーテルを新たな透析液のバッグに接続し、手動で新たな透析液をカテーテルから患者の腹腔内に注入する。患者は、カテーテルを新たな透析液バッグから取り外して、透析液を腹腔内に滞留させて、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血流から透析液溶液中に移送することができる。滞留期間の終わりに、患者は、使用済みの透析液を排水し、手動透析手順を繰り返す。溶液および排水バッグ用の「Y」コネクタを有する管類の集合が使用可能であり、これは、患者が行なわなければならない接続回数を減少させることができる。管類の集合は、事前に取り付けられるバッグ、たとえば空のバッグおよび透析液を充填されたバッグを備えることができる。
【0009】
CAPDでは、患者は、排水、充填および滞留サイクルを数回、日中、たとえば1日当たり約4回行なう。排水、充填および滞留を含む各々の処置サイクルは、約4時間を要する。患者が行なう手動腹膜透析は、非常に多量の時間および努力を患者に要求する。この手順は、患者の生活水準(quality of life)を改善するために、改善および治療強化の余地がある。
【0010】
自動化腹膜透析が、透析処置が排水、充填および滞留サイクルを含むという点で、連続的な歩行可能腹膜透析に類似する。しかし、透析機械は、3〜4回のサイクルの腹膜透析処置を一般的に夜間に、患者の睡眠中に自動的に実施する。
【0011】
自動化腹膜透析の場合、自動化透析機械は埋め込みカテーテルに流動的に接続される。自動化透析機械は、新たな透析液源またはバッグ、および流体排水管にも流動的に接続される。透析機械は、使用済み透析液を腹腔からカテーテルを通して排水管にポンピングする。透析機械は次に、新たな透析液を透析液源からカテーテルを通して患者の腹腔内にポンピングする。自動化機械は、透析液が腹腔内に滞留することを可能にし、その結果、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血流から透析液溶液中に移送することができる。コンピュータは、患者が透析機械に接続された時に、たとえば患者の睡眠中に、透析処置が自動的に行なわれるように自動化透析機械を制御する。つまり、透析システムは、流体を腹腔内に自動的かつ連続的にポンピングし、流体を滞留させて、腹腔からポンピングし、この手順を繰り返す。
【0012】
数回の排水、充填および滞留サイクルは、処置時に行なわれる。また、比較的少量の「最後の充填」は、一般に、自動化透析処置の終わりに使用され、日中、患者が透析機械から外された時に患者の腹腔内に留まる。自動化腹膜透析は、日中に排水、滞留および充填ステップを手動で行なう必要から患者を解放する。自動化透析は、患者の透析処置を改善し、CAPDに比べて患者のクオリティオブライフを確実に改善することができる。
【0013】
「連続流動」腹膜透析(「CFPD」)システムは、1970年代以降考えられてきた。これらのシステムは、一般に、流体の流入および流体の流出を有する。つまり、透析液はカテーテルの内腔中に流入して腹膜を貫流し、別のカテーテルの内腔から排水ラインに流出する。「使用済み」の透析液(老廃物を含む透析液)は、排水バッグ内に収集され、廃棄されるか、または家庭用もしくはその他の排水管中に送り込まれる。公知のCFPDシステムは、一般に、ある量の透析液を1回使用した後、その透析液を廃棄する。これに関して、連続流を1回使用するかまたは1回通過させるシステムで、処置を行なうために必要な透析液の量は多量になり、日常的に使用するコストは非常に高価になる。たとえば、透析液の量は、1回通過CFPDシステムの場合、120リットルを超える可能性がある。
【0014】
別のタイプのCFPDシステムは、特許文献1に開示されている。このシステムでは、透析液が患者の腹膜を通過した後、再構成デバイスを使用して、老廃物を透析液から除去する必要がある。特に、再構成デバイスは、尿素を使用して酵素的に尿素をアンモニアに転換する尿素除去カラムを備える。次に、アンモニアは、腹腔内に再導入される前に透析液から除去され、患者の健康および安全が図られる。しかし、アンモニアの除去は問題が多く、絶対に安全な対策であると実証されない。さらに、透析液からのアンモニアの除去をモニターするために、追加のセンサを使用しなければならない。これは、治療の複雑さを増し、その結果、治療に関連するコストを増加させる。
【0015】
CFPDは、概して、その他の形式の腹膜透析療法と比べて効果的であることが公知であり、こうした腹膜透析療法としては、たとえば、処置時に新たな透析液を複数回交換する必要があるCAPDおよびAPDなど、より伝統的な形式の腹膜透析療法が挙げられる。上記のとおり、数回の排水、充填および滞留サイクルは、一般に、CAPDおよびAPDの際に行なわれる。より伝統的な形式の腹膜透析療法の変更に関する一実施例は、特許文献2に開示されている。CAPDの場合のように、患者の腹腔に無菌透析液を充填することを可能にする装置が開示されている。滞留期間後、透析液は、患者の血液からの代謝老廃物を保持する。代謝老廃物を含む透析液の一部は、腹腔からポンピングされて透析装置を通過し、代謝老廃物が透析液から除去される。次に、透析液は、逆に腹腔内にポンピングされて再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第3,707,967号明細書
【特許文献2】米国特許第4,618,343号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、改善された透析システムを提供する必要性が存在する。特に、使用済み透析液を再利用することが可能な閉ループ透析システムを提供する必要性が存在する。このシステムは、患者が、家庭内でこの手順を行うことを可能にし、過度な量の新たな透析液バッグを保管する必要性をなくす。このシステムは、患者が睡眠中の夜間に、この手順の大部分を実施することができるように、さらに自動化するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
本発明は、概して、透析療法に関する。特に、本発明は、腹膜透析時などに連続流透析療法を実施することが可能なシステムおよび方法を提供する。
【0019】
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
腹膜透析を患者に提供するためのシステムであって、
患者の腹腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
前記カテーテルと連通し、その結果、患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出するように治療流体を循環させることが可能な流体ループを画定する流体回路と、
前記流体回路に結合された透析液の供給源と、
透析液をある供給量で前記流体回路内にポンピングし、前記流体ループに沿って、ある循環量で前記透析液を循環させて、治療上効果的な量の溶質および過剰な水分を患者から除去するためのサイクラーと、
前記流体ループに結合された排出流体流路であって、治療流体は、前記流体ループを通ってある排出量で前記流体回路から排水され、前記排出量は、治療流体が、排出前に前記流体ループに沿って複数回循環することを可能にする循環量未満である排出流体流路とを備えるシステム。
(項目2)
前記供給量および排出量が循環量未満である、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記供給量および排出量は、前記透析液が前記流体ループに沿って約2回循環することを可能にする循環量の約半分である、ほぼ等量で維持される、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記供給量および排出量は、前記透析液が前記流体ループに沿って約3回循環することが可能であるように、循環量の約3分の1である、ほぼ等量に維持される、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記循環量が毎分約300ml以下である、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記透析液の供給源が、約25リットル以下の前記透析液を含む、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記透析液が、約8時間以下の処置期間全体にわたって、連続的に供給されて循環し、排水される、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記透析液の最初の容積が患者の腹腔内に注入され、前記透析液の追加の容積が、その後連続的に、処置時に流体回路内に供給される、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記透析液の最初の容積が、最初の処置期間に前記流体ループに沿って循環し、前記透析液の追加の容積は前記流体ループ内に連続的に供給されず、前記治療流体は前記流体ループから連続的に排出されない、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記流体ループと連通するチャンバをさらに備え、前記流体ループが、処置時における治療流体の可変増加に適応することができる、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記治療流体の可変増加は、前記透析液が患者を透析する時に、前記流体ループに限外濾過液が追加されることによるものである、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記供給量および前記排出量が交互に可変であり、干満CFPDを生成する、項目1に記載のシステム。
(項目13)
腹膜透析を患者に提供するシステムであって、
患者の腹腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
前記カテーテルと連通し、その結果、患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出するように治療流体を循環させることが可能な流体ループを画定する流体回路と、
透析液の供給源と、
前記流体ループに結合されたチャンバであって、透析液が、前記流体ループを通って前記流体ループ内に、ある供給量で供給されるチャンバと、
前記透析液を前記流体ループ内にポンピングし、前記流体ループに沿って、ある循環量で前記透析液を循環させて、治療上効果的な量の溶質および過剰な水分を患者から除去するためのサイクラーと、
前記流体ループに結合された排出流体流路であって、治療流体は、前記流体ループを通って、ある排出量で前記流体回路から排水され、前記排出量は、治療流体が、排出前に前記流体ループに沿って複数回循環するのに効果的である排出流体流路とを備えるシステム。
(項目14)
前記透析液供給源が約25リットル以下の前記透析液を含む、項目13に記載のシステム。
(項目15)
前記透析液が、各々が約6リットル以下の容量を有する4個の別個の供給容器内に収用される、項目14に記載のシステム。
(項目16)
前記循環量が約毎分約300ml以下である、項目13に記載のシステム。
(項目17)
前記チャンバが前記透析液を混合および加熱することが可能である、項目13に記載のシステム。
(項目18)
前記チャンバが、流体供給路を介して前記流体ループに結合される、項目13に記載のシステム。
(項目19)
前記供給量および排出量が、前記循環量未満のほぼ等しい量に維持され、その結果、前記透析液が前記流体ループに沿って複数回循環することが可能である、項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記チャンバは前記流体ループに直接結合される、項目13に記載のシステム。
(項目21)
前記透析液が流体ループに沿って複数回循環し、前記回数が、前記供給量を前記循環量と前記排出量との間の差で除算した値にほぼ等しい、項目20に記載のシステム。
(項目22)
前記透析液が、約8時間以下の処置期間全体にわたって、前記流体ループ内に連続的に供給されて前記流体ループ内を循環し、前記流体ループから排水される、項目13に記載のシステム。
(項目23)
前記チャンバが、処置時における治療流体の可変増加に適応するように構成可能である、項目13に記載のシステム。
(項目24)
腹膜透析を患者に提供するためのシステムであって、
患者の腹腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
前記カテーテルと連通し、その結果、腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出するように治療流体を循環させることが可能な流体ループを画定する流体回路と、
前記流体ループに結合された透析液の供給源と、
前記透析液をある供給量で前記流体ループ内にポンピングし、前記流体ループに沿って、ある循環量で前記透析液を循環させて、治療上効果的な量の溶質および過剰な水分を患者から除去するためのサイクラーと、
浄化流路を介して前記流体ループに結合された浄化デバイスであって、前記透析液を含む治療流体は、前記流体ループ内に再導入される前に、ある浄化量で浄化流路内に供給されて浄化され得る浄化デバイスと、
前記流体ループに結合された排出流体流路であって、前記治療流体を排出前に前記流体ループに沿って複数回循環させるのに効果的なある排出量で、前記排出流体ループを通して治療流体を排水する排出流体流路とを備えるシステム。
(項目25)
前記流体ループが、前記透析液供給源、前記浄化流体流路および前記排出流体流路に結合される、項目24に記載のシステム。
(項目26)
前記サイクラーが、ポンピング機構に結合された流体回路と、複数のバルブとを備え、その結果、前記サイクラーが、処置時に前記流体ループ内に流入し、前記流体ループから流出する透析液の流量を自動的に制御することが可能な、項目25に記載のシステム。
(項目27)
前記浄化デバイスが、再使用の前に、溶質を前記透析液から非選択的に除去することが可能な吸着材料を含む、項目24に記載のシステム。
(項目28)
前記吸着材料が、炭素、活性炭およびこれらの組合せから成る群から選択される、項目27に記載のシステム。
(項目29)
前記透析液供給源が、約25リットル以下の透析液を含む、項目24に記載のシステム。
(項目30)
前記流体ループに結合され、処置時における治療流体容積の可変増加に適応することが可能なチャンバをさらに備える、項目24に記載のシステム。
(項目31)
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
流体回路を患者の腹膜内のカテーテルと連通させて結合し、それにより流体ループを画定し、治療流体が、前記流体ループに沿って腹膜内に流入して貫流し、腹膜から流出するように循環させることを可能にするステップと、
透析液源を前記流体ループに、ある供給量で供給するステップと、
前記透析液を含む治療流体を前記流体ループに沿って、ある循環量で循環させ、治療上効果的な量の過剰な水分および溶質を患者から除去するステップと、
前記治療流体の流体ループをある排出量で排水するステップと、
前記透析液を排出前に前記流体ループに沿って複数回循環させるステップとを含む方法。
(項目32)
前記供給量および排出量が、循環量の約半分のほぼ等しい量で維持され、前記治療流体が、排出前に前記流体ループに沿って約2回循環することが可能である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記供給量および排出量が、循環量の約3分の1のほぼ等しい量で維持され、前記透析液が、排出前に前記流体ループに沿って約3回循環することが可能である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記循環量が毎分約300ml以下に維持される、項目31に記載の方法。
(項目35)
約25リットル以下の前記透析液が、処置時に前記流体ループ内に連続的に供給される、項目31に記載の方法。
(項目36)
前記透析液が、約8時間以下の処置期間にわたって連続的に供給されて循環し、排出される、項目31に記載の方法。
(項目37)
前記透析液を含む治療流体を浄化してから、前記流体ループに沿って患者の腹膜内に流入して貫流し、腹膜から流出するように循環させて、溶質の少なくとも一部分を治療流体から除去するステップをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目38)
炭素、活性炭およびこれらの組合せから成る群から選択した吸着材料を使用して、溶質を前記治療流体から非選択的に除去する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記流体ループに流入し、前記流体ループから流出する治療流体の流量を自動的に制御するステップをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目40)
サイクラーを使用して、前記流体ループに流入し、前記流体ループから流出する治療流体の流量を自動的に制御し、前記サイクラーが、前記流体ループに流入および流出する流量を調節する複数のバルブを有する一連の流体ラインに結合されたポンピング機構を備えるステップをさらに含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記流体ループが、処置時における治療流体の容積の可変増加に適応するように調節することができる、項目31に記載の方法。
(項目42)
前記可変増加が、治療流体が患者を透析する時に、限外濾過液が前記流体ループに追加されることによる、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記透析液の最初の容積を患者に注入し、透析液の最初の容積を注入した後の処置時に、透析液の追加の容積を追加するステップをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目44)
前記透析液の最初の容積が、透析液の追加の容積を追加する前、および流体を前記流体ループから排出する前の最初の処置期間中に循環する、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記供給量および排出量が交互に変化して、干満CFPDを生成する、項目31に記載の方法。
(項目46)
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
流体回路を患者の腹膜内のカテーテルと連通させて結合し、それにより流体ループを画定し、治療流体が、前記流体ループに沿って腹膜内に流入して貫流し、腹膜から流出するように循環させることを可能にするステップと、
チャンバを前記流体ループに結合するステップと、
透析液の供給源を、前記チャンバを通して前記流体ループに、ある供給量で供給するステップと、
前記透析液を含む治療流体を前記流体ループに沿って、ある循環量で循環させ、治療上効果的な量の過剰な水分および溶質を患者から除去するステップと、
排出前に透析液を前記流体ループに沿って複数回循環させるのに効果的なある排出量で、治療流体を流体ループから排水するステップとを含む方法。
(項目47)
約25リットル以下の透析液が、腹膜透析時に前記流体ループ内に連続的に供給される、項目46に記載の方法。
(項目48)
透析液が、各々が約6リットル以下の容量を有する4個の別個の供給容器内に収用される、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記循環量が毎分約300ml以下に維持される、項目46に記載の方法。
(項目50)
前記透析液が、チャンバを通過して前記流体ループ内に流入する時に、混合および加熱される、項目46に記載の方法。
(項目51)
前記透析液が前記チャンバから供給経路を介して前記流体回路内に供給される、項目46に記載の方法。
(項目52)
前記供給量および排出量が、循環量未満のほぼ等しい量で維持される、項目46に記載の方法。
(項目53)
前記透析液が、前記チャンバから前記流体回路内に直接供給される、項目46に記載の方法。
(項目54)
前記透析液が、前記流体ループに沿って連続的に、前記供給量を前記循環量と前記排出量との間の差で除算した値にほぼ等しい回数だけ循環される、項目46に記載の方法。
(項目55)
前記透析液が、約8時間以下の処置期間全体にわたって、前記流体ループ内に連続的に供給されて循環し、前記流体ループから排水される、項目46に記載のシステム。
(項目56)
前記透析液を含む治療流体を浄化してから、前記流体ループに沿って患者の腹膜内に流入して貫流し、腹膜から流出するように循環させて、溶質の少なくとも一部分を治療流体から除去するステップをさらに含む、項目46に記載の方法。
(項目57)
前記流体ループに流入し、前記流体ループから流出する治療流体の流量を自動的に制御するステップをさらに含む、項目46に記載の方法。
(項目58)
前記流体ループが、処置時おける治療流体の容積の可変増加に適応するように調節することが可能な、項目46に記載の方法。
(項目59)
透析療法に使用する透析液の量を減少させる方法であって、
流体回路を患者の腹膜内のカテーテルと連通させて結合し、それにより流体ループを画定し、治療流体が、前記流体ループに沿って腹膜内に流入して貫流し、腹膜から流出するように循環させることを可能にするステップと、
約25リットル以下の量の透析液の供給源を、ある供給量で前記流体ループに供給するステップと、
透析液を含む治療流体を前記流体ループに沿って循環させ、治療上効果的な量の限外濾過液および溶質を患者から除去するステップと、
治療流体の前記流体ループを、ある排出量で排水するステップと、
排出前に透析液を前記流体ループに沿って複数回循環させるステップとを含む方法。
(項目60)
治療流体の容積の増加に適応するように、前記流体ループの容積容量を増加させるステップをさらに含む、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記流体の容積の増加が、前記限外濾過液を患者から除去することによるものである、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記流体の容積の増加が、前記流体ループに追加される1種類または複数の溶液であって、患者内に流入して貫流し、患者から流出するように再循環させる前に、前記透析液の拡散特性を強化することができる溶液によるものである、項目60に記載の方法。
(項目63)
前記溶液が、2.5%のデキストロースベースの溶液、3.5%のデキストロースベースの溶液、4.25%のデキストロースベースの溶液、4.25%を超えるデキストロースベースの溶液、およびこれらの組合せから成る群から選択される浸透圧剤溶液を含む、項目62に記載の方法。
(項目64)
患者内に流入して貫流し、患者から流出するように再循環させて、溶質の少なくとも一部分を治療流体から除去する前に、透析液を含む治療流体を浄化するステップをさらに含む、項目59に記載の方法。
(項目65)
炭素、活性炭およびこれらの組合せから選択される吸着材料を使用して、溶質の部分を治療流体から非選択的に除去する、項目64に記載の方法。
【0020】
本発明による連続流透析療法のシステムおよび方法は、一般に、患者に接続され、それにより流体ループまたは経路を画定する流体回路であって、透析液またはその他の適切な治療流体を、患者の腹膜に流入して貫流し、腹膜から流出する循環させ、治療上効果的な量の過剰な水分、尿毒症毒素および/またはその他を含む溶質を除去することが可能な流体回路を備える。
【0021】
一実施態様では、透析液は、流体ループに沿ってある循環量で循環し、好ましくは連続的に循環する時に、ある供給量で供給され、ある排出量で排出される。供給量、排出量および循環量は、透析液が排出前に流体ループに沿って複数回循環し、再利用されたることが可能であるように制御可能に調節することができる。これに関して、透析液の量は効果的に最小限にすることができ、しかも、尿素、クレアチニンまたはその他の溶質の浄化を臨床上許容可能な基準、またはこうした基準を超えるように維持することが可能であると考えられる。
【0022】
供給量および排出量は、一実施態様では、循環量未満の量にほぼ等しい量に維持することができる。これに関して、透析液を流体ループに沿って循環させることができる回数は、循環量に対する供給量または排出量の比率に比例して増加させることができる。たとえば、循環量が、供給量および排出量の両方に比べて約2倍多い場合、透析液は、排出前に流体ループに沿って約2回通過することが可能である。一実施態様では、透析液は、排出前に、流体ループ内を約2回、3回またはその他の適切な回数だけ通過することが可能である。
【0023】
本発明は、たとえば、患者の使用に関連するクオリティオブライフ問題を向上させるために自動化することができる。一般に、透析液の流量は、制御可能に調節することができる。たとえば、サイクラーを使用して、流体ループに流入し、流体ループから流出する透析液の量を自動的に制御し、患者が、処置時に透析液の多数の供給バッグを手動で交換する必要性をなくすことができる。一実施態様では、サイクラーは、ポンピング機械に結合されたマルチパス流体回路と、流体ループに流入し、流体ループから流出する透析液を自動的に制御する一連のバルブとを備える。
【0024】
一実施態様では、透析液は、患者の腹膜に流入して貫流し、腹膜から流出して再循環する前に浄化することができる。これは、溶質および過剰な水分を患者から除去することを容易にする。これに関して、効果的な処置を行なうのに必要な透析液の量は、再利用前の透析液の浄化により、さらに最小限になる。一実施態様では、溶質を透析液から非選択的に除去することが可能な吸着材料を使用することができる。この種の材料は、たとえば炭素、活性炭および/またはその他の適切な材料を含むことができる。
【0025】
本発明はまた、処置時における治療流体量の増加に適応するように構成することも可能である。これに関して、循環流体ループ内に供給される新たな透析液の量を含む治療流体の量は、最適に使用される。たとえば、本発明は、透析液が患者の腹膜に流入して貫流し、腹膜から流出して循環する時に、流体ループ内を通過可能な限外濾過液を追加することにより、治療流体の量の増加に適応するように構成することができる。これに関して、流体回路に対する限外濾過液の追加は、実際上、追加量と流体ループとの接触を維持することにより、溶質を除去する能力を高めることができる。
【0026】
本発明の利益は、透析療法を行なうための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0027】
本発明の別の利点は、連続流腹膜透析のための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の利点は、透析液を含む治療流体を処置時に再利用できるシステムおよび方法を提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の利点は、効果的な処置に必要な透析液の量を効果的に最小限にするか、または減少させることが可能な透析療法のシステムおよび方法を提供することである。
【0030】
本発明のさらに別の利点は、家庭の環境で、患者が安全かつ便利に管理することが可能な透析療法を行なうための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0031】
本発明のさらに別の利点は、透析液が患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出して複数回循環することが可能で、透析液の循環量に比例する制御された量で供給および排出されるシステムおよび方法を提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の利点は、透析液を含む治療流体を処置時に最適に利用できるように、治療流体の量の増加に適応することが可能なシステムおよび方法を提供することである。
【0033】
本発明のさらに他の特徴および利益は、以下の本発明の詳細な説明および図面に記載されており、これらの説明および図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の一実施態様の略図を示す。
【図2】図2は、本発明のもう1つの実施態様の略図を示す。
【図3A】図3Aは、4個のポンプを使用する可変量システムに関する本発明の一実施態様の略図を示す。
【図3B】図3Bは、3個のポンプを使用する可変量システムに関する本発明の一実施態様の略図を示す。
【図4A】図4Aは、自動化に適応するサイクラーを使用し、浄化流体ループを備えない連続流システムに関する本発明の一実施態様の略図を示す。
【図4B】図4Bは、自動化に適応するサイクラーを使用し、浄化ループを備える連続流システムに関する本発明の一実施態様の略図を示す。
【図5A】図5Aは、アキュムレータバッグを使用する連続流腹膜透析システムの略図で、本発明の一実施態様による流体ループからの流出、アキュムレータバッグ内への流入を示す。
【図5B】図5Bは、アキュムレータバッグを使用して流体を流体ループ内に、または流体ループから移動させる連続流腹膜透析システムの略図で、本発明の一実施態様による流体ループ内への流入、およびアキュムレータバッグからの流出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明は、概して、透析患者に接続されて、流体ループを画定する流体回路であって、透析液が処置時に流体ループ内に供給され、流体ループに沿って循環し、流体ループから排出されることが可能な流体回路を備える。透析液は、流体ループに沿って循環する時に、流体ループに接続された患者の腹腔または腹膜内に流入して貫流し、腹腔または腹膜から流出する。これは、過剰な水分(たとえば、限外濾過液)、並びに尿毒症毒素、たとえば尿素、クレアチニン、尿酸および/またはその他の類似成分を含む溶質を患者の血液から効果的に除去する。
【0036】
一実施態様では、透析液の流量は、流体ループ内に供給され、流体ループに沿って循環して流体ループから排出される時に、制御可能に調節され、その結果、透析液は、排出される前に、循環または流体ループに沿って複数回通過することが可能である。これに関して、透析液の量は、クレアチニンおよび尿素などの溶質の効果的なな浄化レベルを維持しつつ、最低限にすることができる。従来の単一処理量連続流透析療法と比較して、効果的な処置に必要な透析液の量は、少なくとも半分であると考えられる。したがって、処置に必要な透析液の量は必然的に比較的少量であるため、コストの節約を実現することができる。
【0037】
本明細書で使用する場合、腹膜透析などの透析療法に適用される「連続流」という用語、またはその他の類似の用語は、透析液を含む治療流体が、処置時に患者の腹膜に絶えず同時に流入し、腹膜から流出することを意味する。これに関して、CAPDおよびAPDなどの代表的な腹膜透析療法に関連する腹膜内における透析液の滞留期間は、効果的に除去される。
【0038】
本発明の連続流体の流れは、処置時における適切なレベルの断続的、不連続、バッチ、干満またはその他の流体の流れを含むことが可能である点を認識するべきである。たとえば、本発明は、処置、治療の短期間の滞留時間または中断、および/またはその他の類似する適切な状態の前に、ポンプチャンバ、流体ループ、患者および/またはその他の充填時などに、短時間の断続的な流体の流れを提供することができる。これに関して、本発明は、必要に応じて、多様かつ多数の適切な透析療法を提供するように制御することができる。したがって、透析システムが連続流を提供できるにも関わらず、本発明は、不連続流またはバッチシステムおよび処理も提供することができる。一実施態様では、腹腔に入り、腹腔から出る連続流は、好ましくは主な治療処置時に生じるため、たとえば、最後のバッグにおける一時停止は、連続流の特徴を損なわない。
【0039】
本発明の透析システムおよび方法は、その他の透析システムおよび治療に比べて、たとえば臨床上の利益、経済的利益、およびクオリティオブライフに関する利益などの利益を提供する。本発明は、臨床上の利益を有すると考えられ、たとえば血圧調節の改善、流量調節の改善、腎財団(National Kidney Foundation)のDOQI基準などの公知の臨床基準で評価した治療性能の改善、浄化効率の向上、グルコース吸収の低下、グルコースのプロファイリングおよび限外濾過液の管理、カテーテルの流路形成の減少などが挙げられる。
【0040】
また、本発明は、経済的利益、たとえば、1回通過CFPDと比較した場合の治療コストの削減などを提供することができる。さらに、本発明は、クオリティオブライフに関する利益を有すると考えられ、たとえば、透析デバイスから解放されている覚醒時間の増加、患者が利用する機会の改善、複雑さの減少、薬品の自己管理の減少、治療訓練の減少、家庭用の水のインフラストラクチャを有する必要性の解消、患者が操作および管理しなければならない流体の量の減少、並びに患者を透析センターに運ぶ必要性の解消が挙げられる。
【0041】
本発明の透析システムおよび方法は、断続的な透析療法と比較して、より密接に連続的な腎機能をシミュレートおよび補充する。その結果、これは、患者のライフスタイルに対する影響が最低限であるように、臨床転帰の改善に役立つ。本発明の効果および利便性は、比較的制限のない腎臓補充療法を患者に提供する。これは、透析デバイスおよび療法により生じる制限から患者をさらに解放することを可能にする。本発明は、透析療法を早期に比較的容易に開始することを可能にし、つまり、このシステムは、医師が、患者のライフスタイルに対する影響が最低限な状態で、治療をモニターすることを可能にするからである。
【0042】
本発明の連続流透析システムおよび方法は、溶質および過剰な水分を患者から効果的に除去するための様々な異なる構成部品および構成を備えることができ、しかも効果的な処置に必要な透析液の量を最小限にする。図1に示すように、本発明は、腹膜透析を受ける患者14内に挿入可能なカテーテル12と連通する流体回路10を備える。これは流体ループ16を画定し、透析液は、この流体ループ16に沿って、患者の腹膜に流入して貫流し、腹膜から流出して連続的に循環し、過剰な水分、並びに尿毒症毒素、たとえば尿素、クレアチニン、尿酸、および/またはその他の類似の成分を含む溶質を処置時に患者から効果的に除去することができる。
【0043】
(カテーテル)
任意の適切なカテーテル、または医学的に許容可能なその他の刺入デバイスを使用することができる。好ましい一実施態様では、流入内腔および流出内腔を有する2重内腔カテーテルを使用できる。二重内腔カテーテルは、患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出する連続流を提供する。このため、二重内腔カテーテルは、患者内に埋め込まれる。本発明の透析システムに使用するカテーテルの一実施例は、2000年10月12日に出願された米国特許出願第09/689,508号「Peritoneal Dialysis Catheter」に開示されており、この特許の開示事項は、参考として本明細書に援用する。しかし、2個の単一内腔カテーテルは、1個の単一内腔カテーテル同様に使用できる点に注意するべきである。
【0044】
透析液は、概して、それぞれの供給量、循環量および排出量で、処置時に好ましくは連続的に流体ループ内に供給されて循環し、流体ループから排出される。流体ループ内への透析液の供給、および流体ループからの透析液の排出は、処置時に連続的に行なわれるほか、断続的にも行なうことができる点を認識するべきである。たとえば、患者を含む流体ループ内に新たな透析液源を最初に充填した後、透析液は、流体ループに沿って循環することができるため、流体ループ内に追加の量の透析液を注入し、流体を流体ループから排出する必要はない。この最初の循環期間は、治療開始時の適切な時間量で、たとえば約30分間で生じ得る。最初の循環期間後、透析液は次に、残りの処置時間で、好ましくは連続的に流体ループ内に供給され、流体ループから排水される。
【0045】
一実施態様では、供給量、循環量および排出量は、透析液が、処置時に、患者の腹膜に出入りして複数回循環した後に、排出されるように、制御可能に調節される。これは、特に、透析液が腹膜内に流入して貫流し、腹膜から流出する単一処理量式または1回通過式を利用する従来の連続流透析療法と比較して、効果的な処置に必要な透析液の量を最小限にすることができる。
【0046】
一実施態様では、供給量および排出量は、循環量未満のほぼ等量に維持される。その結果、透析液は、循環量を供給量または排出量で除算した値にほぼ等しい回数だけ、流体ループを複数回通過する。たとえば、供給量および排出量が、循環量の約半分である場合、透析液は、流体ループに沿って約2回通過した後、排出することができる。一実施態様では、透析液は約2回、3回、または供給量もしくは循環量を排出量で除算した値に比例する任意の適切な回数だけ循環することが可能である。
【0047】
供給量、循環量および排出量は、任意の適切な方法で制御可能に維持または調節することができる。一実施態様では、透析液は、流体ループに接続された供給流路18を介して流体ループ内に供給される。図1に示すように、新たな透析液源20は、それぞれ供給流路に沿ってチャンバ24に結合された4個の別個の供給容器22内に収用される。チャンバ24は、新たな透析液源を加熱した後に、流体ループ16内を通過するように構成することができる。以下で述べるとおり、特定の実施態様ではインライン加熱を行なう。しかし、本発明は、バッチタイプの加熱で動作することも可能な点を認識するべきであり、その場合、治療前に、たとえば1個または複数の供給容器22が加熱される。バルブ26および供給ポンプ28は、チャンバ24の下流に配置され、流体ループ16内に流入する新たな透析液を調節する。任意の適切なバルブ、ポンプおよび/またはその他の適切なデバイスを使用して、流れを調節できることを認識するべきである。
【0048】
(透析液)
新たな透析液溶液源は、任意の適切なタイプの透析液溶液、好ましくは、腹膜透析療法に特に適するタイプの溶液を含む。一実施態様では、新たな透析液溶液源は、任意の適切かつ効果的な量のデキストロースまたはその他の浸透圧剤を含む。効果的な治療に必要なデキストロースの量は、患者ごとに異なる点を認識するべきである。これに関して、浸透圧剤の量は、患者の特定の必要性を満たす上で異なり、臨床上許容可能な任意のレベル、たとえば約1.5%、約2.5%、約3.5%、約4.25%以上を含むことができる。透析液は、たとえばカルシウム、ナトリウム、カリウム、類似の成分、およびこれらの組合せを含む浸透圧剤のほかに、任意の適切な量およびタイプの電解質を含むことができる。
【0049】
上記のとおり、本発明は、効果的な処置に必要な量の透析液を最小限にすることができる。一実施態様では、処置に必要な新たな透析液は約25リットル以下である。好ましい実施態様では、新たな透析液源は、図1に示すように、各々が約6リットル以下の用量を有する4個の別個の容器22内に保存される。透析液供給容器としては、適切なタイプの容器、たとえば、任意の適切かつ医療上許容可能な材料、たとえば任意の適切なタイプのプラスチック材料から成るバッグなどが挙げられる。
【0050】
(加熱器)
上記のとおり、チャンバ24は、新たな透析液源を加熱してから、循環流体ループ16内に供給するように構成することができる。これに関して、最初にシステムに充填する時の透析液の温度は、流体を低い周囲温度で保管した場合は非常に低く、たとえば5℃〜10℃からである可能性がある。一実施態様では、流体加熱器は、流体を所望の温度まで加熱するインライン加熱器(連続流加熱器)であり、流体は、連続的に加熱器を通過して流動する。その他の実施態様では、インライン加熱器以外の加熱器を使用することができ、たとえば、バルク加熱器、赤外加熱器およびプレート加熱器の両方を備えることが可能な二重加熱器、並びにその他の適切な加熱デバイスが挙げられる。
【0051】
一実施態様では、流体加熱器は、赤外加熱器およびプレート加熱器を含む二重加熱器(図示しない)である。こうした二重加熱器の一実施例は、「Medical Fluid
Heater Using Radiant Energy」という表題の特許出願第10/051,609号に開示されており、この出願は、参考として本明細書に援用する。赤外加熱器およびプレート加熱器は共に、連続的に加熱器を通過して流れる医療流体を加熱するインライン加熱器である。放射エネルギーまたは赤外加熱器は、患者ループ内の流体に方向付けられて、こうした流体により吸収される赤外エネルギーを放射し、それにより流体を加熱する。放射エネルギーまたは赤外加熱器は、短時間で、比較的多量の低温流体を所望の温度まで加熱することができる一次加熱器または高能力加熱器である。
【0052】
プレート加熱器は、赤外加熱器に対して比較的低い加熱能力を有する二次加熱器または保守加熱器である。プレート加熱器は電気抵抗を使用して、プレートの温度を上昇させ、その結果プレート付近を流動する流体を加熱する。
【0053】
高能力および低能力の加熱器の両方を備える加熱器は、様々な流体加熱要件に適応する効率的な加熱器構造を提供する。たとえば、放射または赤外加熱器は、最初のシステム充填時、または透析処置時に著しい熱損失があった場合に、透析システムに供給される低温透析液(熱エネルギー需要が高度)を迅速に加熱する際に特に有用である。初期のシステム充填時における透析液の温度は、流体を低い周囲温度で保存する場合は非常に低く、たとえば5℃〜10℃である。
【0054】
プレート加熱器は、たとえば、透析処置時における通常量の熱損失のために、患者に供給される流体の所望の温度(熱エネルギー需要より低い)を維持する上で特に有用である。赤外加熱器は、少量の流体曝露空間における高度の熱需要に備え、プレート加熱器は保守熱需要に備え、赤外加熱器または放射加熱器に比べて、比較的少量の投入エネルギーを要する。さらに、赤外加熱器およびプレート加熱器を一緒に使用して流体を加熱する場合、加熱器の加熱容量は増加する。
【0055】
赤外加熱器およびプレート加熱器は、互いに対して様々な構成で配列することができる。一実施態様における加熱器は、流体が加熱器の側を連続的に通過するように(たとえば、先ず放射加熱器もしくは赤外加熱器、次にプレート加熱器、またはこの逆)配列される。一実施態様では、流体は、各加熱器の側を同時に(両方の加熱器を同時に)通過する。加熱器を通過する流体流路は、両方の加熱器に共通の流路であるか、または各加熱器に個々の流路を備えて良い。放射または赤外、電気抵抗加熱器のほかに、その他のタイプの加熱、たとえば対流、マイクロ波、赤外(「IR」)または誘導加熱を使用しても良い。
【0056】
一実施態様では、温度センサ(図示しない)は、所望の場所に、たとえば流体ループに沿って設けることができる。温度センサは、加熱器に対応する流体温度を制御するために使用できる様々な流体温度をモニターすることができる。赤外加熱器およびプレート加熱器など、2個以上の加熱器を設ける場合、一実施態様におけるシステムは、各加熱器に別個の温度センサを備えるため、各加熱器を個々に制御することができる。
【0057】
透析液は、流体ループ内に供給された後、一定の循環量で循環する。患者の腹膜内に流入して腹膜を貫流し、腹膜から流出する透析液の循環量は、任意の適切な方法で制御することができる。図1に示すように、1個のポンプ32のほかに、多数のバルブ30が流体ループ16に沿って配置され、透析液を含む治療流体の流れを制御することができる。一実施態様では、循環量は、毎分約300ml以下、好ましくは毎分約100ml〜毎分約200mlの範囲に維持される。
【0058】
一旦透析液が流体ループに沿って複数回通過すると、図1に示すように流体ループ16に接続された排出流体流路34を介して流体ループから排水される。ポンプ36は排出流路に接続されて、透析液の排出量を制御する。
【0059】
(モニター)
本発明のシステムおよび方法は、任意の適切な数およびタイプの構成部品を使用して、患者の効果的な処置を促進し、クオリティオブライフ、経済、処置効率、並びにその他の類似の処置条件およびパラメーターを強化することを認識するべきである。たとえば、本発明は、任意の数および適切なタイプのデバイスを使用して、処置時における流体ループをモニターすることができる。一実施態様では、本発明は、任意の適切な数およびタイプのデバイスであって、流体ループ内における空気、水分およびその他の環境汚染の有無をモニターすることが可能なデバイスを備えることができる。一実施態様では、本発明は、酸素および二酸化炭素を含む大気ガスをモニターするための気体センサ38を備えることができる。汚染を検出する場合、本発明は、本発明のシステムから気体を除去し、気体を大気に排出するために任意の適切なデバイスを備えることができる。これは、治療流体に対する細菌汚染などの汚染を防止するために必要である。
【0060】
本発明は、一実施態様では、その他の適切なパラメーターをモニターするために、その他の様々なセンサも備えることができる。たとえば、圧力センサ40は、図1に示すように、流体ループに結合して、流体ループに沿った特定の位置における圧力をモニターすることができる。次に、この情報は、制御装置(図示しない)に送信され、その結果、ポンプ、バルブおよびその他が調節されて、患者内に入って患者から出て行くループ内の所望の流体圧力を取得および維持することができる。
【0061】
一実施態様では、圧力センサは、非侵襲的圧力センサである。こうした圧力センサは、医療流体または透析液に物理的に接触しない(おそらく、これらを汚染しない)。当然、その他の流量測定装置、たとえば流量センサ、圧力ゲージ、流量計、圧力調整器、オリフィスプレート、質量流量計、容量センサ、または当業者が周知しているその他の適切な流量測定デバイスを適切な個数だけ設けて、流体回路に適応させることができる。
【0062】
一実施態様では、静電容量センサを備える流量測定または容積感知デバイスが設けられ、静電容量センサは、ポンプチャンバ(図示しない)などのチャンバを通ってポンピングされる流体の容積を測定する。容量流体センサは、「Capacitance Fluid Volume Measurement」という表題の特許出願第10/054,487号に詳細に開示されており、この特許出願は、参考として本明細書に援用する。
【0063】
2個のコンデンサプレート間の静電容量Cは、関数C=k×(S/d)に従って変化し、ここで、kは誘電定数、Sは個々のプレートの表面積、dはプレート間の距離である。プレート間の静電容量は、関数1/(R×V)に従って比例的に変化し、ここで、Rは既知の抵抗、Vはコンデンサプレートを横断して測定された電圧である。
【0064】
静電容量センサの一実施態様では、センサは、サイクラーポンプチャンバと協働して動作する。一実施態様におけるサイクラーポンプチャンバは、一定および既知の容積を画定するシェルまたは壁部、並びにシェル間で動作する1対の可撓性膜とを備え、この膜は、膨張して流体が充填され、収縮して流体が排出される。静電容量センサは、ポンプチャンバの対向側部上に配置されたコンデンサプレートを備える。チャンバまたは流体ポンプ内の流体の容積が変化すると(つまり、ポンプチャンバが充填されるか、または空になると)、静電容量プレート間で変化する流体の誘電特性が変化する。たとえば、透析液および空気の結合誘電定数は、チャンバの一定容積のシェル内で、透析液が空気と置換すると(または空気が透析液と置換すると)変化する。全体的な誘電定数の変化は、静電容量プレートの変化に影響し、電圧の対応する変化は、電圧感知デバイスにより感知することができる。制御装置は、電圧感知デバイスにより電圧の変化をモニターし、静電容量の変化と、チャンバを通ってポンピングされる流体の量とを相互に関連付ける(センサの校正後)。
【0065】
別の実施態様では、チャンバまたはポンプチャンバの容積は、たとえば、チャンバの一方または両方のシェルの移動により変化することができる。この実施態様では、コンデンサプレート間の静電容量は、プレート間の距離dが変化するか、および/または1個または複数のプレートの表面積Sが変化すると変化し、この場合、一方の流体のみが常時コンデンサプレート間に存在するため、誘電定数kは変化しない。測定デバイスのさらに他の別法による実施態様では、コンデンサプレート間の静電容量Cは、誘電定数k、距離dおよび表面積Sの変化の何らかの組合せ、または3つの変化すべてに基づいて変化する。
【0066】
制御装置は、複数のチャンバの充填および排水サイクルによる静電容量の変化から電圧信号の振幅を収集し、ある長さの時間またはある回数のポンプサイクルにわたってポンピングされた医療流体全体の容積を計算する。静電容量センサは、実時間に基づいて、非侵襲的な方法でポンプチャンバに流入するか、またはポンプチャンバから流出する医療流体、たとえば透析液をモニターする。
【0067】
静電容量センサは、透析システムが、患者に提供される流体の容積を望ましい量および流量に維持することを可能にする。患者に対する流量を望ましいレベルに維持することは、腹膜透析療法には特に有利である。
【0068】
患者に提供される流体を適切な生理的レベルに維持することも望ましい。生理的な制御、たとえば流体のパラメーターの感知および/または調節は、透析システム内の様々な場所で行なうことができる。このため、システムは、生理的レベルの多くの異なるタイプのセンサを何らかの組合せで備えることができる。たとえば、システムは、1個または複数のpHセンサを備えることができる。一実装例では、図3Aおよび図3Bに関連して以下で説明するカートリッジは、流体を調節して、所望の生理的レベルに維持するpHセンサを備えることができる。
【0069】
図2に示すように、チャンバ24は、流体ループ16に直接結合することができ、透析液は、患者の腹膜内に流入して腹膜を貫流し、腹膜から流出して再循環する前に、チャンバ24を通過することが可能である。これに関して、チャンバは、透析液、特に新たな透析液源を加熱すると共に、使用済み透析液が流体ループに沿って循環する時に、新たな透析液を使用済み透析液と混合するように構成することができる。本明細書で使用する場合、「新たな透析液」またはその他の類似の用語は、流体ループ内に最初に供給される何らかの適切な量およびタイプの透析液であって、患者からのあるレベルの溶質および/または過剰な水分を保持する前の透析液を意味する。本明細書で使用する場合、「使用済み透析液」またはその他の類似の用語は、何らかの適切な量およびタイプの透析液であって、処置時に患者の腹膜内に流入して腹膜を貫流し、腹膜から流出して循環し、その結果、患者からの一定レベルの溶質および過剰な水分を保持している透析液を意味する。
【0070】
任意の適切かつ様々な数のポンプ、バルブ、感知デバイスおよびその他の適切な流体回路の構成部品は、透析液の流れが、患者の腹膜内に複数回出入りして通過することができるように、流れを制御するために使用することができる。一実施態様では、透析液の流れを制御するために使用される流体回路の構成部品は、図1に示す構成部品に類似する。図2に適用すると、透析液が流体ループを通って再循環する回数は、供給量を循環量と排出量との間の差で除算した値にほぼ等しい。たとえば、供給量が毎分約50ml、循環量が毎分約102ml、排出量が毎分約52mlである場合、透析液は、排出前に、流体ループに沿って約2回再循環することが可能である。
【0071】
(容量可変システム)
本発明は、多くの異なる適切な構成部品を使用して、効果的に処置に必要な透析液の量を最小限にすることができる。たとえば、本発明は、処置時における治療流体の容積の変化に対応し、透析液を含む治療流体の使用を最適化できるように構成することができる。本明細書で使用する場合、「治療流体」という用語、またはその他の類似の用語は、透析療法を行なう時に管理することが可能な任意の適切な流体または溶液を意味する。治療流体としては、たとえば、治療の際に使用されていない新たな透析液溶液源、治療時に患者から除去された溶質および代謝老廃物を含む老廃物または使用済み透析液、吸着材料またはその他により浄化された清潔な透析液源、処置時に、患者から流入して、透析液と混合される限外濾過液源、治療流体の拡散特性を強化するのに十分な量の浸透圧剤を含む溶液、その他の適切な溶液、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0072】
一実施態様では、本発明は、図3Aおよび図3Bに示すように、患者に接続された流体ループに容量可変連続流を提供するように構成することができる。これに関して、本発明は、上記のとおり、処置時における治療流体の容積の可変増加に適応するように構成することができる。容量可変システムは、任意の適切な数のポンプ、バルブ、流体ラインおよび/またはその他を備えて、処置時における治療流体の使用可能量を増加することができる。これは、たとえば、透析液が患者を透析する時に、流体ループまで通過する限外濾過液の量により、使用可能な治療流体の容積が増加することに適応するために必要である。流体ループに対する限外濾過液および/またはその他の適切な溶液の追加は、実際上、追加の容積が流体ループに接触する状態を維持することにより、溶質を除去する能力を増加することができる。これは、効果的な処置に必要な新たな透析液の量を減少させる効果も有する。
【0073】
(追加の浸透圧剤)
一実施態様では、透析液および限外濾過液のほかに追加することができる流体源は、1種類以上の溶液、たとえばデキストロースまたはその他の浸透圧剤を含む水性溶液などを、処置時における治療流体の拡散特性を補うのに十分な量だけ含むことができる。浸透圧剤の量としては、約2.5重量%、約3.5重量%、約4.25重量%以上およびこれらの組合せなどの適切な量が挙げられる。追加の溶液源は、許容可能なレベルおよびタイプの成分、たとえば、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなど、およびこれらの組合せを含む電解質も含むことができる。一実施態様では、流体回路に追加されるデキストロースの量は約6リットル以下である。浸透圧剤溶液は、適切な方法でモニターしつつ、閉鎖流路内に連続的に供給するか、または断続的に供給することができる。
【0074】
効果的な処置を促進するために必要な浸透圧剤溶液、たとえばデキストロースベースの溶液などの量およびタイプは、患者ごとに異なる可能性があることを認識するべきである。一実施態様では、既存の治療流体と比べてより高レベルの浸透圧剤および電解質を含む溶液を、約1リットル以下などの任意の適切な容量で流体回路に供給することができる。一実施態様では、浸透圧剤および電解質の溶液濃縮物は、約4.25重量%以上のデキストロース、および治療溶液中における既存レベルより高度の濃縮レベルの電解質を含むことができ、したがって、治療溶液中のレベルは、再利用の前に、最適かつ生理的に許容可能なレベルになるように調節することができる。
【0075】
一実施態様では、溶液濃縮物は、流体ループ内に個々に注入することができる。その構成要素としては、たとえば、デキストロース、重炭酸塩、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、類似の成分、およびこれらの組合せなどの浸透圧剤を含有する透析液溶液中に一般に含まれるタイプの成分が挙げられる。流体ループ内に供給される個々の成分の量は、任意の適切な方法で調節および制御することができる。
【0076】
図3Aに示すように、本発明の流体ループ42は、2個のポンプの2個の直列集合44を含むことができる。ポンプ44の集合は、カテーテル48を介して患者46に接続された流路の流入側および流出側に配置される。流体ループ42は、処置時における治療流体の容積の増加を蓄積するように動作可能なチャンバ49も備える。このチャンバは、治療流体の蓄積に適する任意のデバイス、たとえば、透析療法に一般に使用されるバッグなどを備えることができる。同様に、新たな透析液の供給物(図示しない)は、使用時にアキュムレータバッグ49内に供給することができる。これに関して、アキュムレータバッグ49は、新たな透析液を加熱して、および/または流体ループに沿って循環する透析液と混合するように構成することもできる。別法によると、別個のチャンバ(図示しない)を流体ループに結合して、上記のとおり、新たな透析液源を流体ループ内に通過させることができる。
【0077】
一実施態様では、各々のポンプは、毎分約150mlで作動し、平均超過時間で毎分約300mlの循環量を流体ループに沿って提供することができる。これに関して、ポンプの速度は、アキュムレータバッグ49が十分な量の流体容量を有し、透析液が患者の腹膜に流入して貫流し、腹膜から流出する時に、流体ループ内に限外濾過液が流入するために増加する治療流体の量に適応できるように、処置時に調節することが望ましい。患者に出入りする循環量の差は、患者の健康および安全を犠牲にするほど大きくてはならないことを認識するべきである。
【0078】
(カートリッジ)
上記のとおり、透析液は、患者の腹膜内に流入して腹膜を貫流し、腹膜から流出して再循環する前に浄化することができる。これは、効果的な処置に必要な透析液の量を効果的に最小限にするか、または減少させるために使用することもできる。適切な量およびタイプの材料を使用して、再使用の前に透析液を効果的に浄化する任意のタイプのデバイスを使用することができる。一実施態様では、浄化デバイスは、治療時に患者から除去された透析液の溶質を非選択的に除去することが可能な材料を含む。好ましくは、こうした材料は、炭素、活性炭などの任意の適切な吸着材料、またはカートリッジなどの適切な筐体内に何らかの許容可能な方法で収用されるその他の類似材料を含む。
【0079】
一実施態様では、本発明は、溶質を透析液から非選択的に除去することが可能なタイプの材料のほかに、その他の材料を含むことができる。追加のその他の材料としては、たとえば、一定の溶質またはその他を選択的に溶液から除去することができる材料が挙げられる。一実施態様では、追加の材料として、尿素を選択的に除去することが可能な結合材または反応性吸着材料、リン酸塩および/またはその他を選択的に除去することが可能な吸着材料が挙げられる。上記のとおり、溶質、特に尿素の選択的除去が可能な材料を使用すると、本発明のシステムの浄化効率を強化して、効果的な処置に必要な透析液の量を最小限にすることができる。
【0080】
溶質を溶液から選択的に除去することが可能な材料、たとえば結合材料としては、様々な適切かつ異なる材料、たとえば、溶液中の尿素、クレアチニン、その他の類似代謝老廃物および/またはその他などの窒素含有化合物を除去することが可能なポリマー材料が挙げられる。全体として、こうしたタイプの材料は、尿素またはその他の類似溶質と化学的に結合する官能基を含む。
【0081】
たとえば、それぞれ参考として本明細書に援用される米国特許第3,933,753号および第4,012,317号には、尿素を化学的に結合するように機能することが可能なフェニルグリオキサールを含有するアルケニル芳香族ポリマーが開示されている。一般に、フェニルグリオキサールポリマー材料は、米国特許第3,933,753号および第4,012,317号に開示されているように、たとえばニトロベンゼン中で行なわれるアセチル化、次に、アセチル基のハロゲン化、およびジメルチルスルホキシドによる処置を介して製造される。尿素などの溶質を溶液から選択的に除去することができるポリマー材料のもう1つの実施例としては、参考として本明細書に援用する米国特許第4,897,200号に開示されているように、通常ニンヒドリンとして周知されているカルボニル基が3個の官能基を含むポリマー材料が挙げられる。しかし、本発明は、上記のとおり、尿素などの溶質を溶液から選択的に除去するために、任意の適切なタイプの材料またはその組合せを含むことができる。
【0082】
本発明の浄化カートリッジは、溶質を透析液から除去することが可能な吸着材料のほかに、多くの構成要素を含むことができる。たとえば、浄化カートリッジは、ナトリウム、カリウムまたはその他などの電解質のすべてまたは一部分を透析液溶液から除去する能力を有する。この場合、溶液中の追加の電解質源は、浄化後に透析液の補充を必要とする。カートリッジは、使用する吸着材料に応じて、重炭酸塩またはその他をシステム内に放出するように構成しても良い。これは、透析液のpH調節を容易にすることができる。必要な場合、カートリッジは、タンパク質、粒子状物質または類似の成分がカートリッジから透析液中に浸出または流出するのを防止するため、フィルタを設けると良い。
【0083】
図3Aに示すように、浄化カートリッジ50は、浄化流体ループ52を介して循環ループ42に結合することができる。カートリッジ50は、炭素層54、リン結合剤層56および尿素結合剤層58など、3個の別個の層を備えることができる。浄化流路52は、浄化流体ループ52を貫流する流量を制御するために、背圧調整器59および/またはその他の適切な構成部品を備えることができる。一実施態様では、浄化流体ループを貫流する透析液の流量、たとえば浄化流量は、循環量より少ない。たとえば、浄化流量および循環量は、それぞれ毎分150mlおよび毎分300mlに維持することができる。
【0084】
図3Bは、本発明の容量可変システムのもう1つの実施態様を示す。このシステムは、処置期間中、平均毎分約120mlで動作する3個のポンプを備える。第1ポンプ60は並列流路62に結合されるため、治療流体をチャンバ64内に供給し、チャンバ64から排出することができる。2個のポンプの直列集合66も、流体ループ68に結合される。ポンプは、図3Bに示すように、患者の腹膜内に流入して貫流し、腹膜から流出する循環量を任意の適切な量、たとえば毎分約300mlの量に制御するように調節することができる。浄化カートリッジ70は、循環流体ループ72を介して循環流体ループ68に結合することができる。浄化カートリッジは、上記のとおり、炭素層74、リン結合剤層76および尿素結合剤層78を備えることができる。上記のとおり、背圧調整器79を設けることも可能である。
【0085】
透析液が流路に沿って循環する時の、患者内における透析液の量の不確実さは、処置時における循環流量を制御するために使用される構成部品の数およびタイプに応じて変化する可能性があることを認識するべきである。たとえば、循環時の患者内における透析液の量の不確実さは、図3Bに示すポンプが3個の容量可変システムに比べて、図3Aに示すポンプが4個の容量可変システムの場合に大きい。患者の体積の不確実さは、連続流容量可変システムを設計するに当たり、重要な検討材料である。これに関して、不確実さは、治療時のある時点で、患者の体積がどの程度変化する可能性があるかを評価することを要する。システムの調節は、患者の健康および安全を犠牲にしないように、不確実さの計算に基づいて行なうことができる。
【0086】
上記のとおり、本発明は、患者が、処置時に新たな透析液のバッグを手動で交換する必要がないように自動化することができる。自動化の特徴は、夜間、または患者が通常睡眠する日中の他の時間に使用するのに特に有利である。本発明は、任意の適切な方法、たとえば、任意の数および適切なタイプのデバイスであって、透析液が流体ループ内に連続的に供給され、流体ループ内で循環して流体ループから排出される時に、透析液を含む治療流体の流量を自動的に制御するように構成することができるデバイスを使用することにより自動化することができる。
【0087】
(サイクラー)
一実施態様では、透析液は、サイクラーとして一般に周知されているデバイスを使用して自動的に流体回路内に供給し、流体回路内を循環し、流体回路から排出することができる。本明細書で使用する場合、「サイクラー」という用語、またはその他の類似する用語は、任意の適切な方法で1個または複数の流路に結合されて、流量を自動的に制御できる1個または複数の圧力駆動式ダイアフラム型可変容量ポンプを意味する。サイクラーは、供給される液体の容量を、ポンピング行程前後におけるポンピングチャンバの容積の差として決定することができる。ポンピングチャンバは、一般に、可撓性ダイアフラムにより分割された2個の部分であって、一方の側に空気、他方に流体を有する部分を備える。空気圧が増加すると、液体がチャンバから押し出され、空気側の容積が膨張する。
【0088】
サイクラーの実施例は、米国特許出願「Peritoneal Dialysis Systems and Methods Employing a Liquid Distirbution and Pumping Cassette That Emulates Gravity Flow」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/027,328号、米国特許第5,350,357号;「Liquid Pumping Mechanisms for Peritoneal Dialysis Systems Employing Fluid Pressure」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/027,485号、米国米国特許第5,431,626号;「Peritoneal Dialysis Systems and Methods Employing Pneumatic Pressure and Temperature−Corrected Liquid Volume Measurements」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/026,458号、米国特許第5,474,683号;「Improved User Interface and Monitoring Functions for Automated Peritoneal Dialysis」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/025,531号、米国特許第5,438,510号;並びに「Improved User Interface Automated Peritoneal Dialysis Systems」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/025,547号、米国特許第5,324,422号;および「Peritoneal Dialysis Cycler」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/006,426号、米国特許第D351,470号に開示されており、これらすべての特許の開示事項は、参考として本明細書に援用する。
【0089】
本発明の一実施態様によるサイクラーの流体概略図80を図4Aに示す。サイクラーは、第1サイクラーポンプ84と、第2サイクラーポンプ86と、流体ラインに結合されて、透析液を含む治療流体の流量を自動的に制御する一連のバルブ88とを有するマルチライン流体回路82を備える。サイクラーの自動化は、制御装置(図示しない)またはその他の適切なインテリジェンスデバイスにより行なわれる。図4Aに示すように、透析液供給経路90、排出流路92、および循環ループ94は、5個の別個の流体ラインを備えるサイクラーのマルチライン流体回路82に結合される。新たな透析液源96は、チャンバ100を介してサイクラーの第1流体ライン98に結合される。チャンバ100は、上記のとおり、加熱器、混合機および/またはアキュムレータとして動作することができる。
【0090】
一実施態様では、新たな透析液源は、各々がチャンバ100と連通する5個の別個の容器102内に保存される。新たな透析液容器の各々は、約5リットル以下の容積容量を有する。好ましい実施態様では、処置時に約25リットル以下の新たな透析液を使用する。サイクラーの第2流体ライン104は、排出流体流路92に結合される。透析液は、排出された後、処分されるか、または別法により再生してから使用することができる。
【0091】
サイクラーの第3流体ライン106は容器108に結合され、新たな透析液源は、連続流療法が完了した後、容器106から患者の腹膜腔内に供給することができる。これに関して、容器108は、透析液の最後のバッグとして機能し、効果的な時間量にわたって患者内に投与し、滞留してから排出することができる。
【0092】
サイクラーの第4流体ライン110および第5流体ライン112は、流体ループ94の流出流路114および流入流路116に接続され、その結果、連続流療法時に、透析液が患者の腹膜内に流入して腹膜を貫流し、腹膜から流出して循環することを可能にする。サイクラーは、透析液が、好ましくは連続的に流体ループ内に流入してループ内を循環し、使用後排出するように構成することができる。これに関して、透析液の流量は、透析液が流体ループ内を複数回循環してから、排出するように制御される。サイクラーは、任意の適切な方法で連続流システムに結合することができ、たとえば、患者と流体回路との間の流体界面として使用できる任意の適切な使い捨てカートリッジを使用すると、自動化腹膜透析およびその変更に一般的に使用されるように、患者を流体回路に迅速かつ容易に結合することができる。
【0093】
一実施態様では、流体ループ94に出入りする透析液の供給量および排出量は、流体ループ内の透析液の循環量未満であるほぼ等しい量に維持される。これに関して、透析液を流体ループ94内で循環させることが可能な複数の回数は、循環量を供給量または排出量で除算した値にほぼ等しい。たとえば、図4Aに示すように、供給量および排出量が毎分約50mlに等しく、循環量が毎分約100mlに等しい場合、透析液は、排出前に約2回、患者の腹膜内に流入して循環し、腹膜から流出して循環する。透析液は、任意の適切な回数だけ流体ループに沿って通過することができ、この回数は、循環量を供給量または排出量で除算した値にほぼ等しい。
【0094】
図4Bに示すように、浄化デバイス118は、サイクラー80を介して循環流体ループ94に結合される浄化流体ループ120または流路に結合される。一実施態様では、図4Aに示すサイクラーの第3流体ライン106は、連続流療法が完了すると、使用時の別個の時点において、浄化流体ループ120内に流入する透析液、および最後のバッグから流体ループ94内に流入する新たな透析液源に適応するように変更される。これは、一度に1個が開放する2個のバルブ122またはその他、たとえばクランプを使用して行なわれる。
【0095】
図4Bに示す流体回路のその他の構成部品は、図4Bの構成部品および流体回路と本質的に同じである。やはり、主な相違は、図4Bは浄化流体ループ120を提供することである。こうしたシステムでは、透析液の流量は、新たな透析液、または浄化ループからの浄化済み透析液と混合された新たな透析液の供給量、浄化ループを貫流する透析液の流量、浄化流体ループからの透析液の排出量、および循環流体ループに沿った透析液の循環量により制御される。一般に、浄化ループの流量は、循環量よりも少量に維持される。たとえば、透析液は、図4Bに示すように、浄化量が毎分約50ml、供給量が毎分約100ml、患者ループから浄化ループ内に流入する流量が毎分約100ml、流体ループに沿って腹膜内に流入する透析液の流入量が毎分約100ml、流体ループに沿って腹膜から流出する透析液の流出量が毎分約103ml、透析液の排出量が毎分約3mlである場合、排出前に循環ループに沿って約2回通過することが可能である。透析液の流量は、透析液が複数回にわたって患者の腹膜内に流入し、腹膜から流出した後に排出するように、任意の適切な量に制御および維持することができることを認識するべきである。
【0096】
上記のとおり、本発明のシステムおよび方法は、処置時における治療流体の容積の可変性に適応することが可能である。たとえば、容積の増加は、上記のとおり、患者からの限外濾過液の除去、浸透圧剤溶液の追加、および/またはその他による。本発明のシステムは、任意の数の適切な方法で治療流体の増加に適応し、処置時にシステムを使用できるように構成することができる。
【0097】
一実施態様では、システムは、図5Aおよび図5Bに示すように、第1ポンプ126および第2ポンプ128のほかに、第3ポンプ124などの3個のポンプを備えることができる。これらのポンプは、多数の対応する流体ライン132を介して流体回路130に接続される。多数のバルブ134は、処置時における治療流体の流量を制御および調節するために、流体回路130にも結合される。流体回路130は、患者136内に挿入されたカテーテル138を介して患者136に結合される。浄化カートリッジ140は、上記のとおり、再使用のために治療流体を浄化するために流体回路130にも結合される。任意の適切な数およびタイプの追加のその他の構成部品を流体回路130に結合することができる。たとえば、1個または複数の温度センサ142および圧力センサ144は、任意の所望の位置で流体回路に結合することができる。さらに、流体回路130は、クレアチニンのレベルまたはその他を検出するためのセンサ146などの化学センサを備えることができる。変換器147は、センサ146付近で流体回路に結合することができる。
【0098】
透析液は、供給源148を介して流体回路130内にポンピングされる。供給源148は、流体回路130に結合されると共に、使用前に透析液を保存することが可能な任意の適切な容器を備えることができる。一実施態様では、透析液は、約6リットル以下または任意の適切な量の浸透圧剤を含む。透析液は、たとえばカリウム、カルシウム、ナトリウムまたはその他、および/またはこれらの組合せなど、任意の適切な数、タイプおよび量のその他の構成要素を含むことができる。濃縮物源150も、流体回路130に結合することができる。濃縮物源150は、浸透圧剤の濃度が好ましくは透析液源より大きい浸透圧剤溶液などの濃縮物を保存することができる任意の適切な容器を備える。一実施態様では、濃縮物は、約4.25重量%以上の浸透圧剤、たとえばデキストロースを含む。濃縮物は、任意の適切な量、タイプおよび数のその他の構成要素、たとえば電解質も含むことができる。一実施態様では、濃縮物の容積は約3リットル以下である。
【0099】
治療流体の最後のバッグ152も、流体回路に結合することができる。最後のバッグの治療流体は、任意の適切な量およびタイプの新たな透析液源を含む。最後のバッグの透析液の容積は、複数回処置の終わりに患者の腹腔内にポンピングされ、そこで所望の期間だけ滞留した後、患者から除去された何らかの代謝老廃物および限外濾過液と共に、腹腔から排水される。次に、複数回処置、最後のバッグの充填、滞留および排水サイクルを含む処置サイクルを繰り返すことができる。
【0100】
収集チャンバ154も、流体回路に結合することができる。このチャンバは、治療流体のサンプルを所望の期間で収集するために使用することができる。好ましくは、治療流体は24時間ごとに収集する。このサンプルを分析すると、透析の浄化レベルを検出するなど、処置性能を評価することができる。流体回路は排水経路156をさらに備え、患者に結合された流体回路は、この排水経路156を通して治療流体を排水することができる。
【0101】
複数回処置の開始時に、最初の透析液源148は、流体回路130内にポンピングされる。これは、用途に応じて連続的、断続的、不連続的またはその他の方法で行なうことができる。次に、透析液は、患者136に結合された流体回路130により画定される流体ループに沿って循環し、透析液は、患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出して、代謝老廃物および限外濾過液を除去することができる。透析液は、任意の適切な流量で循環することができ、流量の一実施例を図5Aおよび図5Bに示す。
【0102】
透析液が患者136から代謝老廃物および限外濾過液を除去すると、治療流体は容積が増加する可能性がある。さらに、濃縮物150は、処置時の任意の適切な時間に流体回路130内にポンピングし、上記のとおり、代謝老廃物および限外濾過液の除去を促進する。濃縮物の追加も、治療流体の容積を増加させる可能性がある。
【0103】
治療流体の容積が増加すると、透析液源の容器148は、こうした治療流体の増加に適応するために使用することができる。これに関して、治療流体の部分は、図5Aに示すように、流体ライン160に沿って、第2ポンプ128を介して透析液源の容器148内にポンピングすることができる。治療流体の当該部分は、透析液源の容器148内に任意の適切な時間だけ留まり、その後、この部分は、図5Bに示すように、流体ライン162に沿って第3ポンプ124を介して逆に流体回路130内に逆にポンピングすることができる。透析液源の容器148に出入りする治療流体の部分は、治療流体の残余部分が引き続き流体回路130に沿って循環する状態でポンピングを行なうことができる。つまり、透析液源の容器は、流体回路に沿った治療流体の残余部分の循環と並行して、治療流体の一部分を充填するかまたは排水することができる。
【0104】
システムは、任意の適切なタイプのポンピング機構を任意の適切な方法で使用し、透析液源容器に流入および/または流出するの並行して、治療流体を流体回路に沿って循環させることができる点を認識するべきである。以下では、この種の流れを干満CFPD流と呼ぶ。これに関して、図5Aおよび図5Bは、本発明の一実施態様によるシステム内で行なわれる干満流の具体的な実施例を示す。本発明のシステムは、任意の適切な方法で構成および動作させて、システムが治療流体容積の可変増加に適応することを可能にする所望の干満流を達成することができる。たとえば、このシステムは追加のポンプ、つまり合計4個のポンプを備えて、システムのポンピング効率を増加させることができる。
【0105】
このシステムは、任意の適切なの数およびタイプの追加のその他の構成部品を備えることができる。たとえば、このシステムは、図5Aおよび図5Bに示す逆流調整器164を備えることができる。このシステムは、治療流体の温度を調節するための加熱機構をさらに備えることができる。たとえば、このシステムは、図5Aおよび図5Bに示すインライン加熱器166を備えることができる。加熱器166は、フィルタまたはその他の適切な構成部品、たとえば空気センサ(図示しない)を備えることも可能である。任意の適切なタイプおよび/または数のフィルタは、任意の適切な方法で、任意の適切な位置において流体回路に結合できる点を認識するべきである。たとえば、フィルタ(図示しない)は、再循環流体を連続的に濾過するように、浄化カートリッジ140と一体にすることができる。一実施態様では、フィルタ(図示しない)は、源148、150および152からの流体がシステム130内に引き込まれる時に流体を濾過するように、供給ライン162に配置することができる。
【0106】
フィルタは、任意の適切な材料から製造し、任意の適切なフィルタサイズを有することが可能である。一実施態様では、フィルタのサイズは約0.3μ、好ましくは、0.22μである。これは、フィルタサイズが約0.3μの場合、サイズが約0.3μ以上である溶液中の溶質を除去することができ、フィルタサイズが約0.22μの場合、約0.22μ以上の溶質を除去できることを意味する。このフィルタは、様々な方法で動作し、本発明の透析システムの性能を強化することができる。
【0107】
たとえば、このフィルタは、UV汚染除去技術またはその他の代わりに使用すると、治療流体を殺菌した後、治療流体を患者内に流入および貫流させ、患者から流出させることができる。これは、処置の結果としての患者の感染、たとえば、治療時に汚染物に接触することにより感染する可能性がある腹膜炎などを効果的になくすか、または少なくとも大幅に減少させることができる。
【0108】
1個または複数のフィルタは、任意の適切な位置において流体回路に結合できる点を認識するべきである。患者の流入側では、フィルタは、上記のように患者内に流入する前に、透析液を殺菌するために動作することができる。1個または複数のフィルタは、排出流路にも結合する。この位置では、フィルタは、排出する前に、治療流体から栄養物を除去するために使用することができる。次に、フィルタは、たとえば、適切な溶液を逆流させて浄化し、濾過された栄養物を取り出して再利用し、患者内に再循環させることができる。フィルタは、その濾過効率を強化するために、任意の適切な方法で構成することができる。
【0109】
本発明の流路、流体回路および/または流体ループは、任意の適切な方法で相互に接続された1本または複数の流体ラインから製造することができる点を認識するべきである。流体ラインは、可撓性の無菌および不活性プラスチック、たとえばポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよび/またはこれらの組合せを含む任意の適切な材料を含むことができる。一般に、流体ラインは、ラインを通る流体の流れを目視観察できるように透明である。
【0110】
本明細書で説明されている本発明の好ましい実施態様に対する様々な変更および改良は、当業者に明らかであることを理解するべきである。このような変更および改良は、本発明の意図および範囲を逸脱することなく、その意図された利益を損なうことなく成され得る。したがって、このような変更および改良は、添付の特許請求の範囲により網羅することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析を患者に提供するためのシステムであって、
該患者の腹腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
該カテーテルと流体連通する流体回路であって、該流体回路が、以下:
流体ループであって、該流体ループが、該腹腔への流入量よりも多い該腹腔からの流出量で、該患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出するように透析液を循環させるように構成された、流体ループ、
該流体回路に結合された透析液の供給源、および
(i)該流体ループに結合されたチャンバであって、該透析液が、該流体ループを通って該流体ループ内に、ある供給量で供給され得るチャンバ、および(ii)浄化流路を介して該流体ループに結合された浄化デバイスであって、該透析液が、該流体ループ内に再導入される前に、ある浄化量で該浄化流路内に供給されて浄化され得る浄化デバイス
を備える流体回路と、
該流体ループに結合された排出流体流路と、
該透析液をある供給量で該流体回路内にポンピングし、該流体ループに沿って、ある循環量で該透析液を循環させて、治療上効果的な量の溶質および過剰な水分を該患者から除去するためのサイクラーであって、該サイクラーが、さらに、該循環量未満でかつ該流出量と該流入量との間の差に少なくともほぼ等しい排出量で、該透析液を該流体回路から排水されるように構成され、該透析液が排出前に該流体ループに沿って複数回循環することを可能にする、サイクラーと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記流体回路に結合された圧力を感知するための少なくとも1つの圧力センサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サイクラーが2つのポンプを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記浄化デバイスが尿素、リン酸塩およびクレアチニンのうちの少なくとも1つを吸着するための吸着剤を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記浄化デバイスが少なくとも3つの層を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記チャンバによって、前記流体ループが、処置の間、前記透析液の可変増加に適応することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記透析液の可変増加は、前記透析液が患者を透析するときに、前記流体ループに限外濾過液が追加されることによるものである、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記カテーテルを前記流体回路に結合する少なくとも1つのバルブをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
腹膜透析を患者に提供するためのシステムであって、
患者の腹腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
該カテーテルと流体連通する流体回路であって、それによって、該腹腔への流入量よりも多い該腹腔からの流出量で、該腹腔内に流入して貫流し、該腹腔から流出するように透析液を循環させることが可能な1個の流体ループを画定し、該流体回路が、以下:
該流体ループに結合された透析液の供給源;
浄化流路を介して該流体ループに結合された浄化デバイスであって、該透析液が、該流体ループ内に再導入される前に、ある浄化量で該浄化流路内に供給されて浄化され得る浄化デバイス;および
該流体ループに結合された排出流体流路
を備える、流体回路と、
該透析液をある供給量で該流体ループ内にポンピングし、該流体ループに沿って、ある循環量で該透析液を循環させて、治療上効果的な量の溶質および過剰な水を該患者から除去するためのサイクラーであって、該サイクラーが、さらに、該流出量と該流入量との間の差にほぼ等しい排出量で、該透析液を排水するように構成され、該排出量が、該透析液を排出前に該流体ループに沿って複数回循環させるのに有効である、サイクラーと、
を備えるシステム。
【請求項10】
前記流体ループが、サイクラーを介して前記透析液供給源、前記浄流路および前記排出流体流路に結合される、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記サイクラーが、ポンピング機構に結合された流体回路と、複数のバルブとを備え、その結果、該サイクラーが、処置の間に前記流体ループ内に流入し、該流体ループから流出する透析液の流量を自動的に制御することが可能である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記浄化デバイスが、再使用の前に、溶質を前記透析液から非選択的に除去することが可能な吸着材料を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記吸着材料が、炭素、活性炭およびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記浄化デバイスが、溶質を前記透析液から選択的に除去することが可能な吸着材料を含む、請求項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−106078(P2012−106078A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46987(P2012−46987)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2009−187893(P2009−187893)の分割
【原出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】