説明

膀胱内薬物送達デバイスおよび方法

膀胱内投与および局所薬物送達のためのインプラントデバイス。デバイスは、生体適合材料で形成された中空管を含む本体と、薬物を収容する、管内に少なくとも1つのリザーバーと、薬物がそこを通して放出されることができる1つまたは複数の開口とを有する。デバイスは、膀胱などの体腔内への最小侵襲挿入のために構成される。中空管は、エラストマーであって、デバイスが、その初期形状から、カテーテルを通して通過するための細長い形状に弾性変形することを可能にし、こうした通過に続いて、デバイスが、初期形状に、または、初期形状の方に戻って、体腔内でのデバイスの保持を容易にすることができる。本体は、本体を必ずしも変形させることなく、カテーテルを通した薬物送達デバイスの挿入を可能にするのに効果的な狭く細長い形状を有し、体腔内での保持をもたらす柔軟突出部を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、埋め込み可能な薬物送達デバイスに関し、より詳細には、薬物の放出制御のための膀胱内デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達は、医薬治療の重要な態様である。多くの薬物の効力は、薬物が投与される方法に直接関連する。薬物送達の種々の全身的な方法は、経口的、経静脈的、経筋肉的、および経皮的である。これらの全身的な方法は、好ましくない副作用を生じる場合があり、また、生理的プロセスによる薬物の代謝をもたらす場合があり、最終的には、所望の部位に達する薬物の量を減少させる。したがって、全身的な薬物送達に伴う問題の多くに対処するために、より標的化した方法で、すなわち、局所的に薬物を送達するための種々のデバイスおよび方法が開発されてきた。
【0003】
近年、局所薬物送達のためのマイクロデバイスの開発は、着実に進んできた1つの領域である。薬物放出の起動は、受動的または能動的に制御されることができる。制御された薬物送達デバイスの例は、米国特許第5,797,898号、第6,730,072号、第6,808,522号、および第6,875,208号に開示される。
【0004】
これらのマイクロデバイスは、2つのカテゴリー、すなわち、吸収性ポリマー系デバイスおよび非吸収性デバイスにおおまかに分割されることができる。ポリマーデバイスは、生分解性である可能性があり、したがって、埋め込み後の取り出しの必要性が回避される。これらのデバイスは、通常、患者への投与に続く所定期間にわたり、ポリマーからの薬物の拡散による、かつ/または、ポリマーの分解による、インビボでの制御された薬物の放出を行うように設計されてきた。
【0005】
間質性膀胱炎(IC)および慢性前立腺炎/慢性骨盤内疼痛症候群(CP/CPPS)は、米国において、100,000人の女性について約67人(Curhanら,J. Urol. 161(2):549-552(1999))および100,000人の男性について7人(Collinsら,J. Urol. 159(4):1224-1228(1999))が罹患する慢性疼痛障害である。両方の病状は、慢性骨盤内疼痛、頻尿および、尿意切迫、ならびに、いろいろな程度の性機能障害を特徴とする。ペントサンポリサルフェート(PPS)は、現在、この病状を治療するのに使用される。しかし、薬物を送達するための従来の方法およびデバイスは、かなりの欠点がある。たとえば、経口送達(ELMIRON(商標)、Ortho-McNeil)は、初回通過効果が高いために生物学的利用能が3%程度に低くなり(Parsonら,J. Urol. 153(1):139-142(1990))、頭痛などの中程度のいくつかの副作用をもたらす。膀胱鏡検査によって(尿道にカテーテルが通された状態で)膀胱内に送達されたPPSは、薬物の副作用を低減しながら、治療効果を改善する可能性がある(Badeら,Br. J. Urol. 79(2):168-171(1997))。しかし、埋め込み手技は、痛みを伴い、3ヶ月の間、1週間に2回、手技を繰り返す必要がある。この手技の反復はまた本質的に、尿路感染症および菌血症の高いリスクを生じる。そのため、長い期間にわたる局所送達に必要とされる効果的な量のPPSまたは他の薬物を送達するのに必要な膀胱鏡検査手技の回数を実質的に減らすことになる膀胱内薬物送達デバイスについての著しい必要性が存在する。
【0006】
他の治療は、薬物の全身的送達に伴う副作用が我慢できないとき、かつ/または、経口投与による生物学的利用能が低過ぎるときなどに、特に、膀胱への薬物の局所送達が好ましいか、または、必要である場合に、改良された膀胱内薬物送達デバイスから利益を受けることができる。たとえば、過活動膀胱症候群の治療のために、オキシブチニンが使用される。現在のところ、オキシブチニンは、経口的に、または、経皮的に送達される。しかし、残念ながら、薬物を摂取する患者の約61%が副作用を経験し、患者の約7〜11%が、副作用の重症度のために実際に治療を中止する。
【0007】
Situs Corporationは、オキシブチニン(過活動膀胱の治療用)およびマイトマイシンC(膀胱癌の治療用)などの薬物の製剤溶液を送達するための膀胱内薬物送達システム(UROS注入デバイス)を開発した。UROS注入デバイスおよびデバイスを作製して埋め込む方法は、米国特許第6,171,298号、第6,183,461号、および第6,139,535号に記載される。UROS注入デバイスは、エラストマーの外部管を有し、両方の内部端を接続する伸張しないワイヤーを備える。デバイスは、膀胱内への膀胱鏡挿入中に直線形状を有し、デバイスの埋め込みおよびデバイスへの製剤溶液の充填の後、三日月形状に変化し、製剤溶液をすべて放出した後に直線形状に戻る。長期にわたる製剤溶液の放出は、管内部の圧力応答弁および/または流れ抵抗要素によって制御される。UROS注入デバイスのサイズは、それぞれの内部コンポーネントのサイズに依存し、内部容積のかなりの部分が、(薬物溶液ではなく)機械コンポーネントを収容するのに使用される。約10cmの長さと約0.6cmの外部直径を有する場合には、UROS注入デバイスの大きなサイズによって、特に、デバイスの泌尿器科学的な展開(deployment)および回収中に、患者にかなりの不快および疼痛をもたらす可能性がある。UROS注入デバイスはまた、埋め込み後に、デバイス内へ製剤溶液を充填するためのさらなる外科手技を必要とする。したがって、サイズがより小さく、患者の不必要な不快および疼痛をなくすための膀胱内薬物送達デバイスについての必要性が存在する。さらに、埋め込みに必要とされる外科手技の回数および治療期間にわたる薬物の送達を最小にすることができる膀胱内薬物送達デバイスを提供することが望ましいであろう。
【0008】
(発明の概要)
膀胱内投与および局所薬物送達のための薬物送達デバイスが提供される。一態様では、デバイスは、本体を有し、本体は、少なくとも1つの中空管であって、外部表面、内部表面、および、中空管内に画定された少なくとも1つのリザーバーを有する、少なくとも1つの中空管を備え、リザーバー内に収容される(1つの薬物を含む)製剤と、薬物送達デバイスから薬物を放出するための通路を提供する、1つまたは複数の開口とを有する。開口は、管の側壁を通ってもよく、または、管の端を通ってもよい。各開口の直径は、好ましくは、約20μm〜約300μmである。中空管は、透水性材料で形成されてもよい。デバイスは、体腔内への挿入および薬物の放出中における体腔内でのデバイスの保持を可能にするように構成される。
【0009】
一実施形態では、中空管は、エラストマーであり、それにより、管は、薬物送達デバイスの膀胱内挿入を可能にするように、弾性変形することができる。構成材料は、デバイスが、初期形状から、カテーテルを通した通過のための細長い形状に弾性変形することを可能にする。カテーテルを通した通過の後、デバイスは、初期形状に、または初期形状へと戻り、体腔内でのデバイスの保持を容易にする。別の実施形態では、本体は、薬物送達デバイスの、本体を必ずしも変形することのないカテーテルを通した挿入、および体腔内への挿入を可能にするのに効果的な、狭く細長い形状を有し、本体は、体腔内でのデバイスの保持を容易にする1つまたは複数の柔軟突出部を含む。種々の実施形態で、中空管は、エラストマー構成材料を有すると共に、保持用の柔軟突出部を含んでもよい。
【0010】
中空管がエラストマーである一実施形態では、管は、たとえば、楕円形またはドーナツ形であってよい環状形状を有する。別の実施形態では、管は、直線または円筒プロファイルを有する。直線の実施形態では、デバイスの開口は、少なくとも1つの中空管の一端に配設されたオリフィス構造内に位置してもよい。デバイスは、直線状に接続された2つ以上の中空管を含んでもよい。一実施形態では、中空管は、約300μm〜約500μmの内部直径、および、約600μm〜約900μmの外部直径を有する。
【0011】
一実施形態では、デバイスの本体は、特にデバイスが非吸収性である場合、デバイスを把持し、体腔から取り出すことを容易にするための回収機構をさらに含む。回収機構は、たとえば、デバイスの一端または両端から伸張するコイル、リング、またはピッグテールであってよい。
【0012】
管は、吸収性材料または非吸収性材料で構築され得る。一実施形態では、管は、シリコーンなどの生体適合性ポリマーで作られる。一実施形態では、デバイスはX線不透過材料を含み、これは、管内に含まれる充填材料であってよい。
【0013】
一実施形態では、デバイスは、中空管の側壁に、離間した位置に複数の開口を含む。管は、2つ以上のリザーバーを含んでもよく、各リザーバーは、管の内部表面および少なくとも1つの仕切りによって画定される。各リザーバーは、1つの開口または2つ以上の開口を有してもよい。仕切りは、吸収性であってよいポリマー材料を含んでもよい。仕切りは、回転楕円体の形態であってよい。
【0014】
一実施形態では、デバイスは、薬物放出の時間を制御するために、1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上に、またはそれぞれの開口内に配設された分解性膜をさらに含む。分解性膜は、生分解性ポリマー材料で形成されてもよく、また、約145μm〜約160μmの厚さを有し得る。
【0015】
一実施形態では、製剤は、固体または半固体の形態である。膀胱での使用に適合した一実施形態では、製剤および薬物用量は、過活動膀胱症候群、膀胱癌、または間質性膀胱炎を治療するのに効果的である。種々の実施形態で、製剤は、塩酸リドカイン、グリコサミノグリカン、ペントサンポリサルフェート、ジメチルスルホキシド、コンドロイチンサルフェートC、オキシブチニン、マイトマイシンC、またはその組合せからなる群から選択される薬物を含む。製剤は、麻酔薬、鎮痛薬、抗生物質、または、その組合せを含んでもよい。製剤は、さらに、1つまたは複数の製薬上許容可能な賦形剤を含んでもよい。
【0016】
別の態様では、患者に薬物を投与する方法が提供される。方法は、本明細書で述べた薬物送達デバイスのうちの1つを患者の体腔内に埋め込むこと、および、その後、薬物送達デバイスから体腔内に薬物を放出することを含む。一実施形態では、体腔は膀胱であり、埋め込みは、尿道内に挿入されたカテーテルを通して膀胱内薬物送達デバイスを通過させることによって実施される。本方法は、たとえば、間質性膀胱炎、過活動膀胱症候群、または膀胱癌を治療するために有用であり得る。
【0017】
別の態様では、埋め込み可能な薬物送達デバイスシステムを作る方法が提供される。一実施形態では、方法は、透水性であってよい生体適合材料で形成された中空管内に、薬物を含む材料を充填すること(sealing)、膀胱内薬物送達デバイスを形成するために、管の側壁、管の端、または、側壁と端の両方において、中空管に1つまたは複数の開口を設けること、および、体腔内での展開のためにカテーテルを通して通過することが可能な第1形状を有し、その後、体腔に関してデバイスの保持を容易にする第2形状をとるように、膀胱内薬物送達デバイスが構成されることを可能にすることを含む。1つまたは複数の開口を形成するステップは、管の側壁に1つまたは複数の穴をレーザー穿孔することを含んでもよい。レーザー穿孔は、管に薬物含有材料を装填するステップの前または後で行ってもよい。一実施形態では、管内に薬物包含材料を充填するステップは、液体媒体内に溶解したか、または分散した薬物を管内に装填する第1サブステップと、固体または半固体ロッドを形成するために、液体媒体を取り除く第2ステップとを含む。方法は、1つまたは複数の開口からの薬物放出の時間を制御するために、1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上に、またはそれぞれの開口内に分解性膜を形成するステップをさらに含んでもよい。
【0018】
(本発明の詳細な説明)
改良された膀胱内薬物送達デバイスが開発された。小型デバイスは、膀胱などの体腔内への送達に特に適する。デバイスは、長期にわたる製剤の制御された部位特異的な送達を提供する。デバイスは、ボーラス(一回)の、パルス型の、または、一定の薬物送達を必要とする治療について、事前プログラムされた方法で1つまたは複数の薬物を放出するように調整することができる。
【0019】
本デバイスは、有利なことには、膀胱鏡を用いた埋め込みおよび膀胱への薬物送達のために意図された従来のデバイスについて上述した欠点の多くに対処する。本デバイスは、一旦埋め込まれ、手術または頻繁な介入(従来のデバイスの薬物リザーバーを補充することなど)を必要とすることなく、長期にわたって、数回の薬物用量を放出することができる。治療プロセス中に患者に関して実施される必要がある手技の回数を制限することによって、本局所薬物送達システムは、治療プロセス中の患者の生活の質を改善すると共に、薬物の全身的投与に伴う可能性のある副作用を回避することができる。
【0020】
(I.膀胱内薬物送達デバイス)
一態様では、膀胱内投与のための薬物送達デバイスは、本体を含み、本体は、少なくとも1つの管であって、外部表面、内部表面、および、管内に画定された少なくとも1つのリザーバーを有する、少なくとも1つの中空管を備える。製剤は、リザーバー内に収容される。管は、薬物が、そこを通して放出される1つまたは複数の開口を有する。
【0021】
好ましい実施形態では、デバイスは、本質的に、浸透ポンプとして動作する。埋め込みの後、水が、管本体を通って浸透し、リザーバーに入り、製剤によって吸収される。可溶化された薬物は、リザーバー内の浸透圧により1つまたは複数の開口を通って、制御された速度でデバイスから吐出される。送達速度は、たとえば、Theeuwes,J. Pharm. Sci., 64(12):1987-1991(1975)に記載される、よく知られている原理に従って、特定の薬物送達システムを規定する物理化学的パラメーターから予測することができる。代替の実施形態では、デバイスは、本質的に、1つまたは複数の開口を通る薬物の拡散によって動作する。
【0022】
一実施形態では、管は、エラストマー材料で形成され、それにより、管は、薬物送達デバイスの膀胱内挿入を可能にするように、弾性変形することができる。たとえば、デバイスの一実施形態は、その初期形状から、カテーテルを通して通過するための管形状に弾性変形することができ、カテーテルを通した通過の後、デバイスは、初期形状または拡張形状に戻り、これは、体腔内でのデバイスの保持を容易にする。
【0023】
一実施形態では、製剤放出の時間、すなわち、放出が始動される時間を制御するために、1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上に、またはそれぞれの開口内に、分解性膜が配設されてもよい。
【0024】
(デバイス本体)
膀胱内薬物送達デバイスは、製剤の放出の後、デバイスの外植が全く必要とされないように、完全に、または部分的に吸収性であるように作られることができる。本明細書で使用されるように、「吸収性(resorbable)」という用語は、デバイスまたはデバイスの一部が、溶解、酵素加水分解、侵食、またはその組合せによって、インビボで分解することを意味する。この分解は、デバイスからの薬物放出の意図された薬物動態を妨げない時に起こる。たとえば、デバイス本体の実質的な吸収は、製剤が、実質的に、または完全に放出された後までは起こらないであろう。あるいは、膀胱内薬物送達デバイスは、製剤の放出の後にデバイス本体が取り出されることができるように、少なくとも部分的に非吸収性であることができる。デバイスは、完璧に吸収性である必要はない。たとえば、デバイスは部分的に吸収性であって、これにより、部分的な吸収の際、膀胱から排出されるのに十分に小さい非吸収性小片にばらばらに分割されることができる。有用な生体適合性のある吸収性材料または非吸収性材料の構成は、当技術分野で知られている。
【0025】
膀胱内薬物送達デバイスの厳密な構成および形状は、特定の埋め込み部位、特定の埋め込みルート、特定の薬物、特定の薬物投与計画、およびデバイスの特定の治療適応を含む種々の因子に依存して選択され得る。好ましくは、デバイスの設計は、治療的に有効な用量の薬物を患者に対して局所的に送達しながら、患者の疼痛および不快を最小にすることになる。
【0026】
一実施形態では、デバイス本体は、1つまたは複数の環状部分を含む。たとえば、管は、ドーナツまたは楕円リングの形状であってよい。この設計は、デバイスの泌尿器科学的展開および回収に特に有利である。ドーナツの直径は、不測の排尿を回避するために、内部尿道オリフィスより大きいものとなる。このデバイスは、エラストマーの性質があるため、膀胱鏡を用いて送達することができる。別の実施形態では、管は、直線状、たとえば、実質的に円柱形状であってよい。
【0027】
デバイス本体の中空管は、好ましくは、円柱状であり、すなわち、円形断面を有する。しかし、管の他の断面形状(たとえば、四角形、三角形、六角形、および他の多角形)が想定される。膀胱内薬物送達デバイスの本体は、1つの管または複数の接続した管を含んでもよい。中空管は、種々の形状および構成を有することができ、ある場合には、デバイス本体は、直線状に配置されて長く連なった複数の中空ビーズから形成された中空管を有することができる。
【0028】
2つ以上の管が、直線状に接続されてもよい。これは、薬物装填量を増やすために行われ得る。尿道を通したデバイスの膀胱鏡的展開および回収は、各Oリングが単一のOリング構成のように変形することができるため、可能である。複数のOリングの取り付けは、医療等級シリコーン接着剤または当技術分野で知られている他の手段によって行うことができる。このタイプの設計を作製する別の方法は、流し込み成形法、すなわち、硬化性シリコーンを型に注入することによる。
【0029】
図1A〜1Bは、直線管を備える本体を有する膀胱内薬物送達デバイスの一実施形態を示す。デバイス10は、管12を備える本体を含む。開口のアレイは、管に配設され、分解性タイミング膜14によって閉鎖される。管の端は、医療等級シリコーン接着剤、以下で述べる仕切り構造(たとえば、マイクロビーズ)、またはその組合せを使用して封止されてもよい。柔軟突出部16は、デバイス本体から伸張し、体腔内でのデバイスの保持を容易にする。
【0030】
図2A〜2Cは、単一環状管を備える本体を有する膀胱内薬物送達デバイスの一実施形態を示す。デバイス20は、ドーナツ管22を備える本体を含む。開口のアレイは、管に配設され、分解性タイミング膜24を充填される。リザーバー28は、製剤26を装填される。図2Bは、カテーテルを通した展開に適する圧縮形態のデバイスを示す。
【0031】
図3A〜3Bは、接続された3つの環状管を備える本体を有する膀胱内薬物送達デバイスの一実施形態を示す。デバイス30は、3つのドーナツ管32a、32b、32cを備える本体を含む。開口のアレイは、各管に配設され、別個の分解性膜34a、34b、34cによって覆われる。図3Bは、カテーテルを通した展開に適する圧縮形態のデバイスを示す。
【0032】
デバイスの楕円形状は、膜破断を防止するのに役立つ可能性がある。それは、オリフィス膜が、弾性デバイスの泌尿器科学的挿入および展開中に受けるひずみがより少ないからである。楕円形状はまた、把持器具による内視鏡的回収中に有利である。それは、カテーテル内で折り畳まれるためにデバイスが把持されるべき場所の明確な地点を楕円形状が提供するためである。楕円デバイスは、シリコーン成形法を採用することによって、または、より好都合には、ドーナツ本体に糸を導入することによって作ることができる。一実施形態では、環状管は、楕円形状を維持するために糸で接続される。デバイスの展開後に、Oリングは、糸によって、初期の円形状に回復することを制限される。図4は、複数の伸張しない糸47によって楕円形状に制限された単一環状管42を備える本体を有する膀胱内薬物送達デバイス40の一実施形態を示す。
【0033】
別の実施形態では、接続コンポーネントが、Oリングデバイスの一端または両端内に挿入される。あるいは、接続は、医療等級シリコーン接着剤および/またはシリコーン接続コンポーネントによって行うことができる。薬物は、中央セクションにだけ装填される。端(単数または複数)の閉じたセクション(単数または複数)を使用して、内視鏡デバイスの回収を容易にし、膀胱内でのデバイスの浮力を高めることができる。
【0034】
好ましい実施形態では、デバイス本体は、当技術分野で知られている生体適合性のある透水性材料で作られる。デバイス本体は、あるいは、実質的に非透水性であってよい。好ましい実施形態では、材料はエラストマー材料である。一実施形態では、デバイス本体は非吸収性である。非吸収性デバイスの一実施形態では、本体の管は、当技術分野で知られているような医療等級シリコーン管で形成される。適した非吸収性材料の他の例は、ポリ(エーテル)、ポリ(アクリラート)、ポリ(メタクリラート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアセタート)、ポリ(ウレタン)、セルロース、セルロースアセタート、ポリ(シロキサン)、ポリ(エチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、および他のフッ素化ポリマー、ポリ(シロキサン)、そのコポリマー、ならびにその組合せから選択される合成ポリマーを含む。別の実施形態では、デバイス本体は、吸収性である。吸収性デバイスの一実施形態では、本体の管は、生分解性ポリマーまたは生体侵食性ポリマーで形成される。適した吸収性材料の例は、ポリ(アミド)、ポリ(エステル)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、偽(pseudo)ポリ(アミノ酸)、そのコポリマー、およびその混合物から選択される合成ポリマーを含む。好ましい実施形態では、吸収性合成ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ((乳酸)-co-(グリコール酸))、ポリ(カプロラクトン)、およびその混合物から選択される。
【0035】
泌尿器科学的デバイスまたは他のインプラントデバイスのサイズは、重要である。デバイスが小さくなればなるほど、デバイスの挿入中および使用中、特に、デバイスの膀胱鏡的埋め込み中に患者が経験する疼痛と不快はより少なくなる。好ましい実施形態では、デバイス本体は、約1cm〜約10cmの長さを有し、また、挿入用の形状であるときには、約0.05cm〜0.07cmの有効外部直径(または、最大断面寸法)を有する。(10cm長のデバイスは、3.18cmの直径を有するリングを形成する。)一実施形態では、管の内部表面は、約300μm〜約500μmの直径を有し、管の外部表面は、約600μm〜約900μmの直径を有する。
【0036】
単一のデバイスから送達される薬物の速度および総量は、たとえば、デバイスの本体の表面積およびデバイス本体の構成材料の浸透性、ならびに使用される開口の数および装填薬物の総質量に依存することになる。特定の体腔および埋め込みルートについて、薬物の特定の目標治療用量および許容可能なインプラント寸法が与えられると、知られている理論的計算および/または日常の実験を使用して、当業者は、デバイスおよび製剤について、適切な構成材料および適切な構造設計を選択することができる。
【0037】
一実施形態では、デバイス本体(たとえば、シリコーン管)は、たとえば、デバイス本体の透水性を調節し(たとえば、減少させ)、したがって、デバイスからの薬物の放出速度を制御する(たとえば、遅くする)ために、コーティング材料で部分的にまたは全体的にコーティングされることができる。たとえば、コーティング材料は、パリレンコーティング、硬化可能なシリコーンコーティング、または、当技術分野で知られている別の生体適合性コーティング材料であってよい。コーティング厚は、特定のデバイスに応じて変わる可能性があるため、デバイス本体のある部分は、デバイス本体の他の部分に比べて透水性が高いか、または低い。ある場合には、各リザーバーに異なる薬物を収容するマルチリザーバーデバイスを用いて、第1リザーバーの周りの管は、第1の厚さの第1コーティング材料でコーティングされてもよく、一方、第2リザーバーの周りの管は、コーティングされなくてもよく、第2の(異なる)コーティング材料でコーティングされてもよく、または、第1コーティング材料を用いるが第2の(異なる)厚さでコーティングされてもよい。
【0038】
好ましい実施形態では、管は、好ましくは、埋め込み手技または外植手技の一部としてデバイスの検出または観察を容易にするための、少なくとも1つのX線不透過部分または構造を含む。一実施形態では、管は、硫酸バリウムまたは当技術分野で知られている別のX線不透過材料などのX線不透過充填材料を含む材料で構成される。
【0039】
シリコーン管は、管の加工処理中に、硫酸バリウムまたは他の適した材料などのX線不透過充填材を混合することによって、(X線撮像またはX線透視のために)X線不透過にされてもよい。超音波撮像はまた、シリコーンをインビボで検出することができるが、本発明のデバイスが小さく維持される場合、本発明のデバイスを正確に撮像することができるための分解能が欠如する場合がある。X線透視は、手技を実施する担当医に、デバイスの位置および向きの正確なリアルタイム撮像を提供することによる、非吸収性デバイスの展開/回収中の好ましい方法であってよい。
【0040】
(薬物リザーバー)
デバイス本体の1つまたは複数の管は、製剤を収容するための少なくとも1つのリザーバーを含む。一実施形態では、管の内部空間は、2つ以上の別個のリザーバーに仕切られる。複数の開口は、共通の薬物リザーバーを共有してもよく、または、別個のリザーバーを有してもよい。こうしたマルチリザーバーデバイスは、少なくとも2つの特定のタイプのデバイス実施形態、すなわち、(1)2つ以上の別個の製剤が、単一のデバイスから送達されるとき、または、(2)埋め込みの後、単一の薬剤が、2つの異なる速度で、または、異なる時間に送達されるとき(第1薬物用量が、第1の時間に放出されるように事前プログラムされ、第2用量が、後の第2の時間に放出されるように事前プログラムされる場合など)に有用である。この異なる事前プログラミングは、たとえば、管の内部表面と少なくとも1つの仕切りによって画定される2つ以上のリザーバーを用いて、異なるリザーバーについて異なるタイミング膜を使用することによって達成することができる。管内の仕切り構造は、セラミックビーズまたは他の微小球などの回転楕円体の形態であってよい。仕切り構造はまた、円板または円柱の形状であってよい。仕切りは、非吸収性であってもよく、または吸収性であってもよい。一実施形態では、仕切り構造は、生分解性ポリマーまたは生体侵食性ポリマーなどの生体適合性ポリマー材料で作られる。
【0041】
図7A〜7Bは、直線管72を含む本体を有する膀胱内薬物送達デバイス70を示す。管内の中空空間は、3つのリザーバー76a、76b、76cに仕切られ、リザーバーはそれぞれ、単一の対応する開口74a、74b、74cを有する。リザーバーは、管の内部表面(すなわち、管側壁)、および管の内部空間内での離間した球状仕切り構造78a、78b、78c、78dによって画定される。見てわかるように、仕切り構造は、伸張しないエラストマー管の内部直径より大きな直径を有することによって、管内部の所定場所に固定され、それにより、管が伸張して仕切り構造の周りにぴったり合い、各リザーバーを封止する。
【0042】
仕切られたリザーバーは、生分解がより速く進む膜を有する開口が、装填された薬物材料のほとんどを独占すること、および後続の放出オリフィス用には少しだけの薬物を残すことを防止することができる。そのため、各放出開口についての別個のリザーバーは、複数の生分解性タイミング膜の作用を最大にするであろう。
【0043】
好ましい実施形態では、リザーバー(または、組み合わされたリザーバー)の総容積は、1回の治療過程にわたる局所送達に必要とされる薬物のすべてを収容するのに十分である。すなわち、リザーバーは、望ましくは、予想される薬物用量のすべてを収容するため、所与の疾病または病状について処方された治療を遂行するためには、複数回の膀胱鏡手技は必要とされないか、または数/頻度が減少する。
【0044】
(開口)
一実施形態では、デバイス本体は、たとえば図1〜7に示すように、少なくとも1つの管の側壁を通る1つまたは複数の開口を含む。
【0045】
別の実施形態では、デバイス本体は、図14に示すように、直線管構造の端に配設されたオリフィス構造内に1つまたは複数の開口を含む。図14は、管状シリコーン本体82を有する薬物送達デバイス80を示し、精密オリフィス構造84(開口85を有する)が本体の中央ボアの一端を塞ぎ、マイクロビーズ86が反対端を塞ぎ、製剤88が、オリフィス構造とマイクロビーズとの間に画定されたリザーバー87内に配設される。オリフィス構造は、当技術分野で知られる精密オリフィス(たとえば、Bird Precision Orifices (Swiss Jewel Company)から入手可能)であってよい。オリフィスは、シリコーン管内に挿入されることができ、かつ/または、シリコーン接着剤によってシリコーン管に取り付けることができる。一例では、デバイスは、305μmの内部直径と635μmの外部直径を有するシリコーン管を含んでもよく、精密オリフィス構造は、ルビーまたはサファイアで作られ、また、約1.5mm以下の外部直径を有する。
【0046】
1つまたは複数の開口は、薬物送達デバイスから製剤を放出する通路を提供する。一実施形態では、デバイスは、管内の離間した位置に、2つ以上の別個の開口のアレイを含む。2つ以上の開口は、単一のリザーバーまたは複数のリザーバーに流体連通してもよい。膀胱鏡挿入中に折り畳まれることになる管の部分の近くへの開口の設置は、開口上でのポリマー生分解性膜の破断の可能性を防止するために回避される。
【0047】
開口のサイズは、薬物の放出速度を制御するのに重要である。デバイスが浸透ポンプとして動作する場合、デバイスは、開口を通した薬物の拡散によって行われる送達速度への寄与を最小にするのに十分に小さくあるべきであるが、開口は、リザーバー内の静水圧を最小にするのに十分大きくあるべきである。静水圧は、望ましくないことに、浸透フラックスを減少させ、かつ/または、リザーバー容積を増加させることになる。開口サイズに関するこれらの制約内で、必要とされる総合的な薬物放出速度を提供するために、単一のデバイスにおいて(または、単一のリザーバーにおいて)使用される、こうしたサイズの開口の数が変えられてもよい。例示的な実施形態では、開口の直径は、約20μm〜約300μm(たとえば、20〜100μm、25〜75μmなど)である。デバイスが、主に、拡散メカニズムによって動作する場合、開口は、この範囲またはそれ以上であってよい。
【0048】
単一のデバイスは、2つ以上の異なるサイズの開口を有してもよい。開口は、他の形状が可能であり想定されるが、通常、形状が円であり、また、通常、製造上の考慮事項に依存するであろう。
【0049】
一実施形態では、シリコーン管壁の開口は、レーザアブレーションによって穿孔され、その後、生分解性タイミング膜で覆われる。医療等級ポリマー内に明確に画定された穴を穿孔する能力は知られており、穴は、0.050mm程度の直径で穿孔されることができ、スルーホール穿孔ならびに深さ制御式穿孔が可能である。したがって、レーザアブレーションによるシリコーン穿孔は、管内への薬物装填の前または後で達成されることができる。
【0050】
(分解性膜)
1つまたは複数の開口は、製剤放出が始まる時間を制御するために、開口のそれぞれを覆って、またはそれぞれの中に配設された分解性膜を有する。一実施形態では、分解性膜は、デバイス本体の管の外部表面を覆う均一なコーティングの形態である。別の実施形態では、別個の分解性膜が、実質的に開口内に設けられる。2つ以上の分解性膜の組合せを使用して、1つの開口からの放出を制御してもよい。
【0051】
特定のシステムにおける分解性膜の厚さは、たとえば、分解性膜について選択された構成材料の化学的性質および機械的特性(主に、分解速度を左右する)、ならびに、特定の薬物送達デバイスについての薬物放出の所望の遅延時間に依存する。たとえば、Richards Graysonら「Molecular release from a polymeric microreservoir device: Influence of chemistry, polymer swelling, and loading on device performance」Wiley InterScience (6 April 2004)、Richards Graysonら「Multi-pulse drug delivery from a resorbable polymeric microchip device」Nature Materials, Advance Online Publication (19 October 2003)、米国特許第6,808,522号を参照されたい。一実施形態では、分解性膜は、約100μm〜約200μm(145μm〜160μmなど)の厚さを有する。
【0052】
膜は、生体適合材料で形成される。一実施形態では、膜は、ポリエステル、ポリ(無水物)、またはポリカプロラクトンなどの吸収性合成ポリマーで形成される。別の実施形態では、膜は、コレステロール、他の脂質および脂肪などの吸収性生物学的材料で形成される。
【0053】
短期間にわたって薬物を放出することを望まれるこれらのデバイスの実施形態の場合、分解性膜は、たとえば、高いグリコライド含有量を含むポリ(ラクチド-co-グリコライド)コポリマー、分解時間が速いポリ(ラクトン)のコポリマー、ある種のポリ(無水物)、ヒドロゲル、オリゴ糖、および多糖を含む急速崩壊材料から作製されてもよい。より長い放出時間または遅延した放出時間が望ましい適用では、分解性膜は、たとえば、コレステロール、他の脂質および脂肪などの吸収性生物学的材料、ならびに、脂質二重膜層、ポリ(カプロラクタン)またはある種のポリ(無水物)などのポリマー、および乳酸含有量が高いPLGAコポリマーといった、崩壊するのにより長くかかる材料から作製されてもよい。
【0054】
単一の薬物送達デバイスから、複雑な放出プロファイルが提供され得る。一実施形態では、これは、同じリザーバーまたは異なるリザーバーに対して、異なる開口を覆う異なる膜を有することによって達成されてもよい。ある場合には、膜のうちの1つが第1材料で形成され、少なくとも(複数の)膜のうちの他の膜が第2材料で形成され、第1材料は、第2材料に比較して、インビボで異なる分解速度を有する。別の場合には、膜のうちの1つが第1の厚さを有し、少なくとも2つの膜のうちの他の膜がより厚い第2の厚さを有する。これらの手法は、以下で述べるように、放出制御賦形剤材料を用いて薬物を製剤化することに基づいて、単独で、または薬物動態変更手法と組み合わせて、特定の放出プロファイルを設計するために組み合わされ、適合化されてもよい。
【0055】
(製剤)
製剤は、本質的に、体腔に対して局所的に送達されるのが有用であると思われる、任意の治療薬、予防薬、または診断薬を含むことができる。製剤は、薬物だけからなってもよく、または、1つまたは複数の製薬上許容可能な賦形剤を含んでもよい。
【0056】
好ましい実施形態では、製剤は、製剤の総容積を減らし、それによりデバイスのサイズを最小にするために、すなわち埋め込みの容易さを促進するために、固体または半固体の形態である。多くの実施形態では、製剤は、望ましくは、容積/サイズの最小化という同じ理由で、賦形剤を全く含まないか、または最少量の賦形剤を含む。
【0057】
他の実施形態では、製剤は、液体、溶液、懸濁液、乳剤、複数の乳剤、コロイド状懸濁液、スラリー、ヒドロゲルなどのゲル混合物、またはその組合せの形態であってよい。製剤は、たとえば、水和性固体または水溶性固体のような粉末または微粒子の形態であってよい。
【0058】
製薬上許容可能な賦形剤は当技術分野で知られており、粘度調整剤、バルク剤、界面活性剤、分散剤、浸透剤、希釈剤、ならびに、操作性、安定性、分散性、湿潤性、および/または、薬物(すなわち、活性医薬成分または診断剤)の放出動態を促進することが意図された他の不活性な製剤化成分を含んでもよい。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明の膀胱内薬物送達デバイスは、間質性膀胱炎、前立腺炎、および尿道炎などの炎症性病状を治療するのに使用される。これらの病状用の特定の薬物の代表的な例は、塩酸リドカイン、グリコサミノグリカン(たとえば、コンドロイチンサルフェート、スロデキシド)、ペントサンポリサルフェート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイトマイシンC、ヘパリン、フラボキセイト、またはその組合せを含む。
【0060】
別の実施形態では、膀胱内薬物送達デバイスは、患者に対して疼痛軽減を提供するのに使用される。種々の麻酔薬、鎮痛薬、およびその組合せが使用されてもよい。適したこうした薬剤の代表的な例は、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、サリチルアルコール、塩酸テトラカイン、塩酸フェナゾピリジン、アセトアミノフェン、アセチルサルチル酸、フルフェニサル、イブプロフェン、インドプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、コデイン、オキシコドン、およびクエン酸フェンタニルを含む。
【0061】
本発明の膀胱内薬物送達デバイスは、切迫尿失禁および神経性尿失禁を含む尿失禁を治療するのに使用することができる。使用され得る薬物は、抗コリン薬、抗痙攣薬、抗ムスカリン薬、β2アゴニスト、ノエピネフリン再取込み阻害剤、セロトニン再取込み阻害剤、カルシウムチャンネル阻害剤、カリウムチャンネル開口剤、および筋弛緩薬を含む。
【0062】
失禁の治療用に適した薬物の代表的な例は、オキシブチニン、S−オキシブチニン、エメプロニウム、ベラパミル、イミプラミン、フラボキセイト、アトロピン、プロパンテリン、トルテロジン、ロシベリン、クレンブテロール、ダリフェナシン、テロジリン、トロスピウム、ヒヨスチアミン、プロピベリン、デスモプレシン、バミカミド、YM−46303(Yamanouchi Co.(日本))、ランペリゾン(Nippon Kayaku Co.(日本))、イナペリゾン、NS−21(Nippon Shinyaku Orion, Formenti(日本/イタリア))、NC−1800(Nippon Chemiphar Co.(日本))、ZD−6169(Zeneca Co.(英国))、およびヨウ化スチロニウムを含む。
【0063】
別の実施形態では、本発明の膀胱内薬物送達デバイスは、膀胱癌および前立腺癌などの尿路癌を治療するのに使用される。使用され得る薬物は、抗増殖剤、細胞毒性薬、化学療法剤、または、その組合せを含む。尿路癌の治療用に適した薬剤の代表的な例は、BCG(Bacillus Calmette Guerin) ワクチン、シスプラチン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン、フルオロウラシル、ロイプロリド、フルタミド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メゲストロール、シプロテロン、フルタミド、およびシクロフォスファミドを含む。薬物治療は癌組織をターゲットとする従来の放射線療法または外科手術療法と組み合わせることができる。
【0064】
さらに別の実施形態では、本発明の膀胱内薬物送達デバイスは、膀胱、前立腺、および尿道に関連する感染症を治療するのに使用される。こうした感染の治療のために、抗生物質、抗菌剤、抗真菌剤、抗原虫薬、抗ウィルス剤、および他の抗感染症薬を投与することができる。感染症治療用に適した薬物の代表的な例は、マイトマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、メタナミン、ニトロフラントイン、アンピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、トリメトプリム、サルファ剤、トリメトプリムスルファメトキサゾール、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、カナマイシン、ペニシリン系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、およびアミノグリコシド系抗生物質を含む。
【0065】
他の薬物および賦形剤が、他の治療のために、また、他の膀胱以外の体腔部位において使用されてもよい。デバイス内の同じリザーバーまたは別個のリザーバー内に貯蔵された(および、そこから放出された)2つ以上の薬剤の組合せが想定される。
【0066】
製剤の賦形剤は、リザーバーからの薬物の放出速度を調節するか、または制御するために選択されたマトリクス材料であってよい。一実施形態では、マトリクス材料は、上述したように吸収性ポリマーまたは非吸収性ポリマーであってよい。別の実施形態では、賦形剤は、脂質(たとえば、脂肪酸および誘導体、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、油脂、ビタミン、ならびにテルペンから選択される)などの疎水性組成物または両親媒性組成物を含む。
【0067】
製剤は、時間的に調節された放出プロファイル、あるいは、より連続した、または一貫性のある放出プロファイルを提供してもよい。複数のリザーバーから、パルス型放出が達成され得る。たとえば、異なる分解性膜を使用して、いくつかのリザーバーのそれぞれからの放出を時間的にずらしてもよい。
【0068】
(他のデバイス特徴)
一実施形態では、膀胱内薬物送達デバイの本体は、体腔内でのデバイスの保持を容易にする1つまたは複数の柔軟突出部をさらに含む。これらの固定構造は、デバイスの挿入(または、回収)中に狭いデバイスプロファイルを提供するために、デバイス本体に対して折り畳むことができるが、膀胱または他の体腔からのデバイスの不慮の放出(たとえば、排尿)を防止するために、埋め込みの後、伸張構造に伸張する(またはそうでなければ、その元の圧縮されない状態に戻る)ことになる、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の「翼に似た(wing-like)」または「脚に似た(leg-like)」構造の形態であってよい。図1Bを参照されたい。
【0069】
一実施形態では、膀胱内薬物送達デバイの本体は、少なくとも1つの回収機構をさらに含む。回収機構は、たとえば、製剤の放出後に非吸収性デバイス本体を取り出すための、体腔からのデバイスの取り出しを容易にする構造である。回収機構の代表的な例は、コイル、リング、ピッグテールなどを含む。回収機構は、カテーテル内の開口内にデバイスを引き込むための折り畳みまたは圧縮を容易にするために、デバイスが外植のために折り畳み形態または圧縮形態にあるときに、デバイスの端部分に通常設けられる。
【0070】
デバイスは、従来の内視鏡把持器具によって取り出すことができる。ワニ口鉗子、3ピンまたは4ピンの光学把持器(three or four-pronged optical graspers)などの内視鏡操作器具を使用して、回収が必要とされるときに、膀胱からデバイスを取り出すことができる。デバイスがO形状またはらせん状の部分を有する場合、デバイスの取り出しは、これらの把持器具によって容易にされることができる。特に、Oリング形状デバイスは、対称形状であるため、内視鏡的回収中に有利である。
【0071】
図5A〜5Bは、種々の直線本体デバイスおよび環状本体デバイスを示し、回収リングが、細長い薬物送達デバイスの一端または両端に設けられる。デバイス50は、直線管52を備える本体を含む。開口のアレイは、管内に配設され、分解性タイミング膜54によって閉鎖される。回収リング57a、57bは、それぞれ、固定手段55a、55bによって管の両端に取り付けられる。固定手段は、たとえば、シリコーン接着剤であってよい。デバイス51は、デバイス50と同様であるが、管52の一端に固定手段55によって取り付けられた単一の回収リング57を含む。デバイス58および59は、それぞれデバイス50および51と同様であるが、直線形状本体ではなく環状管形状本体、および異なる固定手段を有する。楕円環状管152は、同じ管状本体からの回収リング156を形成するために、締め付け(constriction)コンポーネント154で締め付けられる。たとえば、締め付けコンポーネントは、管の一部分が、そこを通して引っ張られるか、またはねじ込まれる(threaded)穴を有するバンドまたはビーズであることができる。締め付けコンポーネントは、生体適合材料で作られ、弾性があってもよく、または剛性があってもよい。
【0072】
図6は、直線本体デバイスを示し、回収コイルが、細長い薬物送達デバイスの一端または両端に設けられる。デバイス60および61は、直線管62を備える本体を含む。開口のアレイは、管内に配設され、分解性タイミング膜64によって閉鎖される。回収リング67、67a、67bは、管62の両端から伸張する。
【0073】
デバイスは、一端または両端にピッグテール部分またはらせん状部分を有してもよい。このらせん状部分を使用して、取り込まれた空気によって膀胱内でのデバイスの浮揚を促進し、ならびにデバイスの回収を容易にすることができる。各放出オリフィスは、共通の薬物リザーバーを共有するか、またはそれぞれの仕切られたリザーバーを利用する。らせん状部分は、医療等級シリコーンまたはポリウレタンなどの弾性材料で作られることができる。そのため、ピッグテール部分は、デバイスの膀胱鏡的挿入中に広がり、展開後に元の形状に戻る。真っ直ぐな管セクションとピッグテール部分(単数または複数)との接続は、医療等級シリコーン接着剤によって行うことができる。生分解性タイミング膜で覆われた放出オリフィスは、膜の破断を回避するため、らせん状部分には位置しない。
【0074】
本インプラントデバイスのサイズは、排尿の切迫感を生じる原因となる膀胱三角の刺激を回避するか、または最小にするのに十分に小さく作られることができる。その結果、インプラントデバイスの浮力特性は、重要ではないと予想される。それでも、薬物装填のための容積の一部が犠牲になるが、低密度の構成材料の選択によって、またはデバイス内への空気または他のガスの取り込みによって、三角領域の刺激が最小にされてもよい。三角領域の刺激を最小にする別の方法は、低密度材料を使用することである。
【0075】
(II.デバイスの作製方法)
一態様では、埋め込み可能な薬物送達デバイスを作製するための方法が提供され、本方法は、外部表面、内部表面、および管の内部表面内に画定された少なくとも1つのリザーバーを有する少なくとも1つの管を設けることを含み、ここで管は、エラストマーであるか、透水性であるか、または、エラストマーでありかつ透水性であってもよい生体適合材料で形成され、製剤を管内のリザーバーに装填すること、管の側壁を貫通する1つまたは複数の開口を形成すること、および、1つまたは複数の開口を通るリザーバーからの製剤の放出時間を制御するために、1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上またはそれぞれの開口内に配設された分解性膜を形成することを含み、ここで管は弾性変形され、薬物送達デバイスの膀胱内挿入を可能にする。
【0076】
デバイス本体、管は、射出成形、圧縮成形、押出し成形、熱成形、流し込み、またはその組合せなどの従来の形成方法を使用して形成されてもよい。
【0077】
1つまたは複数の開口を形成するステップは、当技術分野で知られている技法を使用して、管の側壁に1つまたは複数の穴をレーザ穿孔することを含んでもよい。1つまたは複数の穴をレーザ穿孔することは、製剤を管内のリザーバーに装填するステップの前または後に行ってもよい。あるいは、開口は、たとえば、Richardsらの米国特許第6,808,522号に記載されるように、押し込み器(indenter)によって成形することによって、デバイス本体と同時に形成されてもよい。
【0078】
製剤は、固体形態または液体形態でリザーバー内に貯蔵されることができる。液体形態の場合、製剤は、開口またはその後封止される別の開口を通してリザーバー内に装填されてもよい。固体または半固体形態の場合、製剤は、管内の端開口を通してリザーバー内に、好ましくは固定形態で装填されてもよく、その開口はその後封止される。
【0079】
一実施形態では、製剤は、固体または半固体ロッドの形態で装填される。所与の容積についてその薬物濃度が高いために、また、デバイスの操作を容易にするために、薬物の固体形態が溶液形態と比べてよりよい。埋め込み式デバイスによって生じる可能性がある刺激を最小にするために、デバイスの小さいサイズが重要であることを考慮すると、高濃度の薬物装填が重要である。
【0080】
デバイスの構築および操作を容易にするために、製剤の固体または半固体ロッドを調製することが有用である場合がある。これは、製剤の剛性を増加させるために、多糖またはヘパリンナトリウム塩などの比較的純粋な薬物材料を用いて行われてもよく、または、別の賦形剤または薬物材料との組合せを必要としてもよい。たとえば、塩酸リドカインだけではこうした薬物ロッドを生成しないが、たとえば、コンドロイチンサルフェートCと70:30の混合比で混合されることにより、デバイスの操作性を高めるためのある程度の剛性を有する薬物ロッドが生成され得る。しかし、この混合比は、塩酸リドカインの最大装填量(payload)の一部を著しく犠牲にする。その犠牲が許容可能であるかどうかは、特定のデバイス設計および適用/使用に依存する。
【0081】
1つの薬物装填方法は、図15に示される。図は、精密オリフィスを有するデバイスに関して実施される薬物装填方法を示すが、この方法は、デバイス本体の管の側壁にレーザ穿孔した穴を有するデバイスにも適用されることができる。図15は、一番上から一番下の順序で、(i)精密オリフィスが一端に配設され、他端が開口している、空の直線管を設けること、(ii)管の中央ボア(リザーバー)が、薬物水溶液で装填されること、(iii)オリフィスを閉鎖するために、(たとえば、マイクロツィーザによって)オリフィスの近くの管が締め付けられ、その後、他端から空気圧が印加され、その間に水が気化する(シリコーン管を透過する)こと、(iv)濃縮された薬物のゲルまたは固体流し込みロッド形態の製剤をリザーバー内に得ること、(v)ガイドロッドを使用して、管の開口を通して、製剤に隣接する位置まで封止構造(たとえば、マイクロビーズ)が挿入されることを示す。こうして、薬物の充填の位置が制御されてもよい。
【0082】
種々の形態の固体薬物を形成するために、異なる形状のシリコーンを使用することができる。平坦シリコーン表面(または、溶液を湿潤させる他の材料)は、薬物溶液がシリコーン表面上に広げられ乾燥させられると、薬物の薄いフィルムを形成することができる。厚さおよび表面均一性のより厳しい制御は、シリコーンの2つのブロック間に既知の寸法の空間を作ることによって達成することができる。シリコーンが、型としての役割をするために必要に応じてそれ自体形作られ得るため、この空間は、ほとんどいずれの形状(薄いフィルムまたは円柱など)をも有することができる。シリコーンを使用することは、水はシリコーンを通り抜けて拡散するが、対象となる薬物材料(たとえば、多糖)は拡散しないという利点を有する可能性があり、したがって、本プロセスは一般的な流し込みプロセスと同様になる。型(shape)を完全に満たすために、型(mold)の内部に溶液を補充するためのチャンネルを設けることなどの、一般的な流し込み形状設計指針が、このプロセスにも適用される。溶液内の多糖の高い濃度は、補充の必要性を減らし得る。多糖の非常に高い濃度は、溶液に粘性をもたせる場合があり、それにより、成形プロセスは、ポリマー押出しプロセスと非常に似たものになる可能性があるが、溶液からの水の気化についての許容量が小さい。多糖または対象となる他の薬物を変性させない限りは、他の溶媒が、水の代わりに使用されてもよい。シリコーンは、型として使用することができる唯一の材料ではない。溶液と接触して溶解し、潜在的に有毒な化合物を形成しない限り、また、溶媒が溶液から気化するための経路が存在する限り、ほとんどいずれの材料も使用することができる。
【0083】
管本体内のリザーバー仕切りは、たとえばガイドワイヤーを使用して、単に、管内の所望の位置に仕切りを挿入することによって設置されることができる。これは、複数のリザーバーと仕切りとが使用される場合、製剤の装填と交互に行われてもよい。仕切りが管の内部直径より少し大きな外部直径を有する場合、その位置は、摩擦係合によって固定されることができる。別法として、または付加的に、仕切りを所定場所に固定するために、接着剤が使用されてもよい。
【0084】
分解性膜は、種々の技法を使用して形成され得る。一実施形態では、分解性膜は、開口の一端に、たとえば管の外部表面開口内/上に、膜を形成するための、流体のマイクロインジェクションまたはインクジェット印刷によって形成される。たとえば、流体は、溶媒内に溶解した吸収性材料を含む溶液、非溶媒内に吸収性材料を含む懸濁液、または吸収性液化材料であってよい。
【0085】
図8は、製造プロセスの一実施形態を示すものであり、種々のステップおよびステップの順序の可能性のある変形を示す。
【0086】
(III.デバイスの使用および応用)
膀胱内薬物送達デバイスを使用して、本質的に任意の体腔部位に局所的に薬物を送達することができる。好ましい実施形態では、体腔は、治療の必要な、男性または女性のヒトの患者の膀胱である。たとえば、膀胱内薬物送達デバイスは、間質性膀胱炎、過活動膀胱症候群、または膀胱癌の治療に使用することができる。デバイスはまた、薬物が膀胱に送達される必要があり、かつ全身的送達に伴う副作用が耐えられないか、または生物学的利用能が十分に高くない、他の病状の治療に使用されることができる。
【0087】
他の実施形態では、本膀胱内デバイスは、患者の他の体腔内で使用されてもよい。たとえば、小型デバイスは、膣、胃腔、腹膜腔、または眼球腔の空間内に埋め込まれることができる。
【0088】
一実施形態では、患者に薬物を投与する方法が提供され、本方法は、(1)膀胱内薬物送達デバイスを患者の体腔内に埋め込むステップを含み、ここで膀胱内薬物送達デバイスは、本体を備え、本体は、少なくとも1つの管であって、外部表面、内部表面、および少なくとも1つの管の内部表面内に画定された少なくとも1つのリザーバーを有する、少なくとも1つの管を含み、ここで少なくとも1つの管は、エラストマー材料で形成され、これにより、弾性変形して薬物送達デバイスの膀胱内挿入を可能にし、少なくとも1つのリザーバー内に収容される製剤と、少なくとも1つの管の側壁を通る1つまたは複数の開口と、製剤放出の時間を制御するために、1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上またはそれぞれの開口内に配設された分解性膜とを備え、また、(2)膀胱内薬物送達デバイスから体腔内に製剤を放出するステップを含む。一例では、埋め込みは、尿道内に挿入されたカテーテルを通して、直線形態(たとえば、折り畳み形態または圧縮形態)で、膀胱内薬物送達デバイスを通過させることによって実施され、デバイスは、膀胱内で放出される。米国特許第6,139,535号は、尿道を通して膀胱内に医薬デバイスを設置する方法および装置を述べる。
【0089】
一実施形態では、膀胱内薬物送達デバイスは、非吸収性であり、すなわち、普通なら、埋め込み後に取り外される必要がある。こうした場合には、先行する節に記載される方法は、(3)薬物の放出の後、体腔から膀胱内薬物送達デバイスを取り外すステップをさらに含む。特殊な回収デバイスが、当技術分野で知られているか、または、この目的のために、容易に作ることができる。米国特許第5,499,997号は、内視鏡的把持方法および装置を述べる。
【0090】
好ましい実施形態では、デバイスは、患者の膀胱に投与され(すなわち、膀胱内に埋め込まれ)、制御された方法で、膀胱に製剤を送達する。特に、製剤は、過活動膀胱症候群、膀胱癌、間質性膀胱炎の治療、または疼痛軽減処置に有用な1つまたは複数の薬物を含む。
【0091】
本発明の膀胱内薬物送達デバイスによる治療方法は、所望の(所定の)期間にわたる、所望量の薬物の、長期間の放出、連続放出、間欠的な放出、または周期的な放出を提供する。一実施形態では、デバイスは、長期間、たとえば24時間、5日間、7日間、10日間、14日間、あるいは20日間、25日間、30日間、45日間、60日間、または90日間あるいはそれ以上にわたって、所望の用量の薬物を送達することができる。送達速度および薬物用量は、送達される薬物および治療される疾病/病状に応じて選択することができる。デバイス内の開口の数とサイズを変化させると共に、異なる分解速度および/または賦形剤材料を使用することは、異なる薬物放出動態を有するようにデバイスを調整するのに使用することができる。
【0092】
インプラントデバイスは、特定の実施形態で必要である場合、当技術分野で知られている技法を使用して、体腔内に固定されてもよい。たとえば、デバイスは、生分解性であってもなくてもよい非刺激性接着剤を使用して、(たとえばデバイスのリングまたは他の部分を通して)縫合されることができる。
【0093】
本発明は、以下の非制限的な実施例を参照してさらに理解され得る。
【実施例】
【0094】
(実施例1:固体薬物ロッドの流し込み)
製剤の固体ロッドが、膀胱内薬物送達ベヒクルを装填するのに使用するために作られた。ロッドを作るのに使用されるプロセスステップは、図9に示される。シリコーン管が、エラストマーブロック上に置かれ、管の一端が、25重量%コンドロイチンサルフェートC(CS−C)の水溶液を含むバイアル内に浸された。円柱バーが、シリコーン管の長さ方向に沿って回転して、管の蠕動運動が誘発され、それにより、濃縮された薬物溶液で管が充填される。図10を参照されたい。管内の薬物溶液は、すべての水が気化するまで室温で一晩乾燥させられ、流し込まれた固体ロッドが残った。固体ロッドは、ツィーザを使用して管から取り出され、元の溶液の約17容積%であった。
【0095】
(実施例2:300μmの開口を有するデバイスからの多糖の放出)
埋め込み可能な薬物送達デバイスは、305μmの内部直径、635μmの外部直径、165μmの壁厚、および0.3cmの長さを有するシリコーン管を使用して調製された。放出オリフィスは、約300μmの直径を有する開口を作製するために、レーザアブレーションを使用してシリコーン管内に穿孔された。実施例1で述べたように調製されたコンドロイチンサルフェートC(CS−C)の316μgの固体ロッドが、シリコーン管内に挿入され、管は両端を閉鎖された。管は固定され、脱イオン水に浸された。脱イオン水内に放出されたCS−Cの濃度を決定するために、アリコートが回収され、1,9-ジメチルメチレンブルー(DMMB)を使用して比色定量法によって分析された。図11は、25時間にわたって放出された全薬物のパーセントを示す。
【0096】
(実施例3:50μmの開口を有するデバイスからの多糖の放出)
2cmの長さ、50μmの開口、および全薬物装填量が1.97mgのCS−Cを有するデバイスを使用して、実施例2で述べた試験が繰り返された。図12は、90時間にわたって放出された全薬物のパーセントを示す。
【0097】
(実施例4:20μmの開口を有するデバイスからの多糖およびリドカインの放出)
全薬物装填量がそれぞれ、890μgのCS−Cと801μgの塩酸リドカインについて、1cmの長さ、および管の端に設置された20μmの精密オリフィス(側壁のレーザ穿孔されたオリフィスではない)を有するデバイスを使用して、実施例2で述べた試験が2回繰り返された。図13は、160時間にわたって放出された全薬物のパーセントを示し、コンドロイチンサルフェートCと塩酸リドカインの両方の放出プロファイルを提供する。
【0098】
本明細書で引用する出版物および出版物が引用する資料は、参照により具体的に組み込まれる。本明細書に記載される方法およびデバイスの変更および変形は、先の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。こうした変更および変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1Aおよび図1Bは、直線形状を有する薬物送達デバイスの実施形態の平面概略図である。
【図2】図2Aは、Oリング形状を有する薬物送達デバイスの一実施形態の平面概略図である。図2Bは、デバイスが体腔内を通過することを可能にするための圧縮された構成の、図2Aの薬物送達デバイスを示す平面概略図である。図2Cは、線C−Cに沿って切り取った図2Aのデバイスの断面図である。
【図3】図3Aは、一連の接続されたドーナツ形状を有する薬物送達デバイスの一実施形態の平面概略図である。図3Bは、デバイスが体腔内を通過することを可能にするための圧縮された構成の、図3Aの薬物送達デバイスを示す平面概略図である。
【図4】図4は、楕円形状を有する薬物送達デバイスの一実施形態の平面概略図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、デバイスの一端または両端に回収リングを有する薬物送達デバイスの一実施形態を示す平面概略図である。
【図6】図6は、デバイスの一端または両端に回収コイルを有する薬物送達デバイスの一実施形態を示す平面概略図である。
【図7】図7Aは、複数の別個のリザーバーを作るために球状仕切りを有する、直線形状を有する薬物送達デバイスの一実施形態を示す斜視図である。図7Bは、図7Aの薬物送達デバイスの断面図である。
【図8】図8は、薬物送達デバイスを作製する方法を示すプロセスフロー図である。
【図9】図9は、固体薬物ロッドを作製する方法を示すプロセスフロー図である。
【図10】図10は、固体薬物ロッドを作製する装置の実施形態を示す略図である。
【図11】図11は、300μmの開口を用いてコンドロイチンサルフェートCを放出する1つの実験例において、膀胱内デバイスの一実施形態からの、インビトロでの、経時的に放出される全薬物装填量のパーセンテージを示すグラフである。
【図12】図12は、50μmの開口を用いてコンドロイチンサルフェートCを放出する1つの実験例において、膀胱内デバイスの一実施形態からの、インビトロでの、経時的に放出される全薬物装填量のパーセンテージを示すグラフである。
【図13】図13は、20μmの開口を用いてコンドロイチンサルフェートCおよび塩酸リドカインを放出する1つの実験例において、膀胱内デバイスの一実施形態からの、インビトロでの、経時的に放出される全薬物装填量のパーセンテージを示すグラフである。
【図14】図14は、精密オリフィスが管状シリコーン本体の中央ボアの一端を塞ぎ、マイクロビーズが反対端を塞ぎ、製剤がオリフィスとマイクロビーズとの間に画定されたリザーバー内に配設される、直線形状を有する薬物送達デバイスの一実施形態の断面図である。
【図15】図15は、図14のデバイスを組み立てる方法の一実施形態のプロセスステップを断面図で示す図である。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱内投与のための薬物送達デバイスであって、
本体を備え、前記本体は、少なくとも1つの中空管であって、外部表面、内部表面、および、少なくとも1つの中空管内に画定された少なくとも1つのリザーバーを有する、少なくとも1つの中空管を備え、
少なくとも1つの薬物を含み、前記少なくとも1つのリザーバー内に収容される製剤と、
前記少なくとも1つの管の側壁を通るか、または、前記少なくとも1つの管の端を通る1つまたは複数の開口であって、薬物送達デバイスから前記薬物を放出するための通路を提供する、1つまたは複数の開口とを備え、
前記少なくとも1つの中空管は、エラストマー材料で形成され、前記本体は、弾性変形することができ、これにより薬物送達デバイスの膀胱内挿入を可能にするデバイス。
【請求項2】
初期形状から、カテーテルを通した通過のための細長い形状に弾性変形し、また、カテーテルを通した前記通過の後、初期形状に戻って、体腔内でのデバイスの保持を容易にするように構成される請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記エラストマー材料が、透水性である請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの中空管が、環状形状を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記環状形状が、楕円形またはドーナツ形である請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
直線状に共に接続された2つ以上の中空管を備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記本体が、体腔内でのデバイスの保持を容易にする1つまたは複数の柔軟突出部をさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記本体が、コイル、リング、およびピッグテールからなる群から選択される少なくとも1つの回収機構をさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記エラストマー材料が、生体適合性ポリマーを含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記生体適合性ポリマーが、シリコーンである請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記生体適合性ポリマーが、吸収性である請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの管が、X線不透過充填剤をさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの中空管の側壁に、離間した位置に複数の前記開口を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記1つまたは複数の開口の直径は、約20μm〜約300μmである請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記薬物放出の時間を制御するために、前記1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上またはそれぞれの開口内に配設された分解性膜をさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記分解性膜が、生分解性ポリマー材料を含む請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記分解性膜が、約145μm〜約160μmの厚さを有する請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つの管は2つ以上のリザーバーを備え、前記リザーバーは前記管の内部表面および少なくとも1つの仕切りによって画定される請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記少なくとも1つの仕切りが、回転楕円体を備える請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの仕切りが、ポリマー材料を含む請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ポリマー材料が、吸収性である請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記製剤が、固体または半固体の形態である請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記製剤が、塩酸リドカイン、グリコサミノグリカン、ペントサンポリサルフェート、ジメチルスルホキシド、コンドロイチンサルフェートC、オキシブチニン、マイトマイシンC、またはその組合せからなる群から選択される薬物を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記製剤および薬物用量が、過活動膀胱症候群、膀胱癌、または間質性膀胱炎を治療するのに有効である請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記製剤が、麻酔薬、鎮痛薬、抗生物質、またはその組合せを含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記製剤が、1つまたは複数の製薬上許容可能な賦形剤をさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
前記少なくとも1つの中空管が、約300μm〜約500μmの内部直径、および約600μm〜約900μmの外部直径を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
膀胱内投与のための薬物送達デバイスであって、
本体を備え、前記本体は、少なくとも1つの中空管であって、外部表面、内部表面、および、少なくとも1つの中空管内に画定された少なくとも1つのリザーバーを有する、少なくとも1つの中空管を備え、前記本体は、カテーテルを介した薬物送達デバイスの膀胱内挿入を可能にするための、狭く細長い形状を有し、
少なくとも1つの薬物を含み、前記少なくとも1つのリザーバー内に収容される製剤と、
前記少なくとも1つの管の側壁を通るか、または、前記少なくとも1つの管の端を通る1つまたは複数の開口であって、薬物送達デバイスから前記薬物を放出するための通路を提供する、1つまたは複数の開口と、
前記本体から伸張可能な、前記薬物の放出中に前記体腔内でのデバイスの保持を容易にする1つまたは複数の柔軟突出部とを備えるデバイス。
【請求項29】
前記少なくとも1つの中空管が、透水性材料、エラストマー材料、または透水性のあるエラストマー材料で形成される請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記中空管が、生体適合性ポリマーで形成される請求項28に記載のデバイス。
【請求項31】
前記生体適合性ポリマーが、シリコーンである請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記生体適合性ポリマーが、吸収性である請求項30に記載のデバイス。
【請求項33】
前記少なくとも1つの中空管の側壁に、離間した位置に複数の前記開口を有する請求項28に記載のデバイス。
【請求項34】
前記1つまたは複数の開口が、前記少なくとも1つの中空管の一端に配設されたオリフィス構造内に位置する請求項28に記載のデバイス。
【請求項35】
前記1つまたは複数の開口の直径は、約20μm〜約300μmである請求項28に記載のデバイス。
【請求項36】
前記薬物放出の時間を制御するために、前記1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上またはそれぞれの開口内に配設された分解性膜をさらに備える請求項28に記載のデバイス。
【請求項37】
前記少なくとも1つの管は2つ以上のリザーバーを備え、前記リザーバーは前記管の内部表面および少なくとも1つの仕切りによって画定される請求項28に記載のデバイス。
【請求項38】
前記製剤が、固体または半固体の形態にある請求項28に記載のデバイス。
【請求項39】
患者に薬物を投与する方法であって、
請求項1〜38のいずれか1項に記載の前記薬物送達デバイスを患者の体腔内に埋め込むこと、および、
前記薬物送達デバイスから前記体腔内に前記薬物を放出することを含む方法。
【請求項40】
前記体腔は膀胱であり、前記埋め込みは、尿道内に挿入されたカテーテルを通して前記膀胱内薬物送達デバイスを通過させることによって実施される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
間質性膀胱炎、過活動膀胱症候群、または膀胱癌を治療するための、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
埋め込み可能な薬物送達デバイスを作製する方法であって、
透水性材料または他の生体適合材料で形成された中空管内に、薬物を含む材料を充填すること、
膀胱内薬物送達デバイスを形成するために、前記管の側壁、前記管の端、または、前記側壁と前記端の両方において、前記中空管に1つまたは複数の開口を設けること、および、
体腔内での展開のために、カテーテルを通して通過することが可能な第1形状を有し、その後、前記体腔に関して前記デバイスの保持を容易にする第2形状をとるように、前記膀胱内薬物送達デバイスが構成されることを含む方法。
【請求項43】
前記生体適合材料が、エラストマー材料である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記管が、第2形状で前記本体から伸張可能な1つまたは複数の柔軟突出部を含む請求項42に記載の方法。
【請求項45】
1つまたは複数の開口を形成するステップが、前記管の側壁に1つまたは複数の穴をレーザ穿孔することを含む請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記管内に前記薬物包含材料を充填するステップが、液体媒体内で溶解または分散した薬物を前記管内に装填する第1サブステップと、固体または半固体ロッドを形成するために、前記液体媒体を取り除く第2ステップとを含む請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記薬物放出の時間を制御するために、前記1つまたは複数の開口のそれぞれの開口上またはそれぞれの開口内に分解性膜を形成することをさらに含む請求項42に記載の方法。

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2009−504271(P2009−504271A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526239(P2008−526239)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/031428
【国際公開番号】WO2007/021964
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【出願人】(599086582)チルドレンズ・メディカル・センター・コーポレイション (9)
【氏名又は名称原語表記】Children’s Medical Center Corporation
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston, Massachusetts 02115, U.S.A.
【Fターム(参考)】