説明

膜の製造方法

固体層の形成ための合成溶液を用いて、基板の被覆側を処理することによって少なくとも1層の固体層を多孔性基板の一方の側に含む膜を製造する方法であって、多孔性基板への固体層の製造において、基板それ自体に不活性な流体を部分的に又は完全に満たし、多孔性基板の非被覆側と接触する場所を不活性な流体で満たし、且つ流体の圧力及び温度は、合成溶液と多孔性基板の非被覆側との接触が実質的に防止されるように選択されることを特徴とする膜の製造方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成溶液を用いて基板の被覆側を処理することによって、少なくとも1層の機能層を少なくとも1種の多孔性基板上に含む膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜の製造方法は知られている。例えば、特許文献1は、ゼオライト膜の製造方法について開示し、かかる方法では、少なくとも1μmの粒径を有する分子篩結晶を基板材料と接触させ、これにより被覆された基板材料を分子篩合成溶液と接触させ、被覆された基板を最終的に熱水合成に付している。
【0003】
特許文献2は、ゼオライト膜の製造方法について開示し、分子篩の微結晶を第1工程で単層として基板材料に施している。次の第2処理工程で、基板材料上に薄く、連続した高密度膜を得るように結晶成長が行われる。
【0004】
従来技術による両方の方法は、ゼオライトの結晶が熱水条件下で形成する溶液(合成溶液)と基板材料を接触させるように行われるのが一般的である。
【0005】
特許文献3は、メソ多孔性及び/又はマクロ多孔性のセラミック多溝チューブに多孔性膜を製造する方法を開示し、溝だけでなく、材料の外側も被覆される。かかる製造処理では、合成溶液と、多孔性基板材料の所定の表面と、の接触を回避させるか、或いは合成溶液を含まない基板材料の細孔構造を保持して、載置される層でかかる表面が被覆されないようにすることを目的としている。
【0006】
特許文献4は膜の製造方法を開示し、この目的は、多孔性基板材料に不活性溶液を含浸させた後、その基板材料を合成溶液と接触させることによって達成される。
【0007】
特許文献1及び特許文献2は、基板の一部に一時又は永続バリア層を設けることによって目的を達成し、その部分は、基板を合成溶液と接触させる前に被覆されない。かかるバリア層により、被覆が行われない基板のその部分の細孔に合成溶液が浸透することを防止する。一時バリア層は、基板を合成溶液で処理した後、再び取り除かれる。これは、例えば蒸発によって行うことができる。一時バリア層の適例は、水又はグリコールである。他方、永続バリア層は、基板材料を合成溶液と接触させた後も多孔性基板に残っている。例示は、金属酸化物である。
【0008】
【特許文献1】US6090289
【特許文献2】US6177373
【特許文献3】WO00/20105
【特許文献4】EP1144099
【発明の開示】
【0009】
上述したバリア層は、その塗布において、追加の操作を必要とする点において不都合である。一時バリア層の場合、追加の操作としては、バリア層の除去を更に必要とする。
【0010】
従って、本発明の目的は、基板材料の所定の領域のみ被覆することが可能となり且つ従来技術の複雑な処理を回避する膜の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明者等は、上記目的が、固体層の形成ための合成溶液を用いて基板の被覆側を処理することによって少なくとも1層の固体層を多孔性基板の一方の側に含む膜を製造する方法によって達成されることを見出した。
【0012】
新規な方法において、多孔性基板に固体層を製造している間、基板それ自体を不活性な流体で部分的に又は完全に満たし、そして多孔性基板の非被覆側と接触する空間を上記の流体で満たし、その際に、流体の圧力及び/又は温度は、合成溶液と多孔性基板の非被覆側との接触が実質的に防止されるように選択される。合成溶液なる用語は、透明な溶液に限定されるものではなく;むしろ、新規な方法において、合成溶液は、コロイド状又は粒子状の成分を含んでいても良い。
【0013】
本願発明の場合、「実質的に」は、多孔性基板の非被覆側の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%が合成溶液で被覆されないことを意味するとして理解される。
【0014】
新規な方法は、物質の分離に用いられる複合膜の製造に特に好適である。かかる膜は、1層以上のマクロ細孔性及び/又はメソ細孔性の層から構成される基板と、細孔非含有又はミクロ細孔性であるか、又は基板の細孔より小さな細孔を有する分離層と、から構成されるのが一般的である。膜厚の小部分だけの原因となるのが一般的である分離層は、物質の分離を行い、一方、基板材料は、膜の機械的安定性を保証する。新規な方法により製造される膜は、有機、有機/無機又は無機であるのが好ましい。膜が無機である場合に特に好ましい。
【0015】
[被覆処理]
新規な方法において、合成溶液を用いて、多孔性基板の被覆側を処理することによって、膜が製造され、その際に、基板それ自体に不活性な流体を部分的に又は完全に満たし、多孔性基板の非被覆側と接触する空間を上記の流体で満たし、そして流体の圧力及び/又は温度は、合成溶液と多孔性基板の非被覆側との接触が実質的に防止されるように選択される。
【0016】
流体の状態は、流体の圧力に基づき確立されるのが望ましい。例えば、流体の圧力は、合成溶液と基板材料により形成される接触角が90°未満となる場合の合成溶液の圧力に少なくとも対応する値で保持されることが特に好ましい。合成溶液と基板材料との接触角が90°を超える場合、流体の圧力は、合成溶液の圧力以下に相当する値で保持されることが好ましい。合成溶液と基板材料の接触角が90°である場合、流体の圧力は、合成溶液の圧力に等しくなる。接触角の定義に関して、Kohlrausch, Praktische Physik, 第21版 1960, 第I巻, 188頁を参照されたい。
【0017】
合成水溶液を用いる場合、以下のようにするのが適当である:基板が親水性である場合、接触角は90°未満とする。なぜなら、膜は湿潤するからである。基板が疎水性である場合、接触角は90°を超えるようにする。
【0018】
圧力は所望の手法に基づき確立可能であり、例えば、流体静力学的配置、ポンプ、バルブ、圧縮気体容器又はこれらの好適な組み合わせによって行うことができる。
【0019】
本発明の他の実施の形態において、流体と合成溶液との間の温度差が20℃以下、特に好ましくは10℃以下、特に5℃以下である場合に望ましい。
【0020】
合成溶液の成分が流体及び/又は反対方向に拡散可能である場合、合成溶液及び/又は流体を上記の成分で完全に又は部分的に予備飽和させることが可能であり、かかる成分の拡散は、各々場合で防止され又は減速される。合成溶液又は流体の部分予備飽和は、成分の飽和限界に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも99%で予備飽和されることを意味するとして理解され、その成分の拡散は、各流体において、又は合成溶液の流体に対して、防止され又は減速される。
【0021】
例えば、合成水溶液及び気体の流体を使用する場合、気体の流体を水で予備飽和させてから、層を基板に対して載置させることができる。流体又は合成溶液を他の基板であるが、不活性な基板に対して飽和させることも可能である。
【0022】
合成溶液を基板に被覆する間、合成溶液は、静止可能であり、1回以上移動可能であり、又は交換可能であり、或いは本発明の特に好ましい実施の形態において、分離層の製造に必要とされる時間の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%に亘って特定の方向に移動させ続けることも可能である。これにより、合成溶液と基板との接触時間中に生じる膜形成性材料の局所空乏(local depletion)と、このようにして、対流及び濃度の変動がもたらされることにより生じる局所的な密度差を防ぎ、かかる密度差は、その効果を計算することが困難であり且つ特に極めて薄い分離層の再生可能な製造をより困難なものとする。特定の方向への移動を伴う上記の膜合成は、例えば以下の文献に記載されている:すなわち、2002年6月23日から26日に中国の大連で開催された第7回無機膜に関する国際会議で発表されたH. Richter, I. Voigt, G. Fischer, P. Puhlfuerss等によるSeparation and Purfication Technology 32 (2003), 133-138頁。
【0023】
新規な方法において、合成溶液を特定の方向に移動させる場合、合成溶液の流速は、0.001〜100cm/分とするのが好ましく、特に好ましくは0.01〜10cm/分であり、特に0.01〜5cm/分である。新規な方法の他の好ましい実施の形態において、流速は、基板に対する流動と同時に生じる合成溶液の圧力損失が好ましくは0.1バール未満となり、特に好ましくは0.01未満となり、特に0.002未満となるように確立される。
【0024】
合成溶液は、単一パスで流れても良く、すなわち、かかる溶液は、重力によって、又はポンプを用いて、貯蔵容器から基板に対して供給され、そこから収集容器に供給される。しかしながら、或いは、ポンプを用いて合成溶液を基板に対して循環させることも可能である。更に、合成溶液を、2基の貯蔵容器の間においてポンプ又はガス圧力を用いて基板に対して行ったり来たりさせることも可能である。
【0025】
被覆は、100〜250℃で行われるのが好ましく、特に好ましくは140〜210℃であり、特に170〜190℃である。
【0026】
合成溶液の膜形成性材料を用いた被覆中、基板を装置中に設置するのが好ましい。
【0027】
製造処理中、基板材料の被覆面を装置に対して直立に、斜めに、又は水平に設置可能であり、最後の変形(水平設置)は、合成溶液と流体との間の圧力差を均等化させるので特に有効である。
【0028】
合成溶液を用いて基板の被覆側を処理することによって少なくとも1層の層を少なくとも1種の多孔性基板に含む膜を製造する新規な方法は、膜を製造する処理全体に組み込むことができる。新規な方法より先に行われる工程は、結晶核を基板に施すことであっても良い。下流側の工程は、例えば、揮発成分又は熱分解性成分を除去と、洗浄後に適宜行われる熱安定性を与える成分を除去するための膜の熱処理であっても良い。
【0029】
新規な方法の前に結晶核を施す場合、例えば、熱水結晶化により行うことができる。従って、ゼオライトのシード層を熱水合成する方法は、当業者等によりそれ自体公知である。この場合に好適な溶液は、ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、テンプレート及び水を含んでいても良い。これの例は、SiO2、NaOH、テンプレートとしてのテトラプロピルアンモニウム化合物及び水の使用である。
【0030】
被覆の後、適宜、製造された膜を、例えば水、好ましくは蒸留水で洗浄することも可能である。
【0031】
流体で満たした空間に対して合成溶液で満たした空間を封止するのは、ポリマーの有機膜を含むシール、例えばPTFE、エラストマーのヴィトン(Vition)(登録商標)若しくはカルレズ(Kalrez)(登録商標)、又はグラファイト若しくは複合材料を含むシールを用いて行うことができる。或いは、例えば多孔性のセラミック基板が完全なセラミックモジュールの一部である配置の場合のように、基板は、合成溶液で満たした空間を流体で満たした空間から分離させる本体部の一部とすることも可能である。
【0032】
上述した熱による後処理は、適宜、これにより製造された膜を、被覆に用いられる装置から取り除いた後、例えば、封止の方法の関数として行うことができる。しかしながら、或いは、基板が被覆中に設置された装置を加熱することも可能である。
【0033】
[固体層]
新規な方法で多孔性基板に施される固体層は、細孔非含有若しくはミクロ細孔性であるか、又は基板層(支持体層)の細孔より小さな細孔を有するのが好ましい。本発明の特定の実施の形態において、新規な方法で基板に形成される層の粒径は、0.3〜100nmの範囲であり、特に好ましくは0.4〜10nmの範囲であり、特に0.4〜1nmの範囲である。
【0034】
多孔性基板に施される層は、物質の分離に特に好適である。これの例示は、ガス分離、例えば水素又は酸素の気体混合物からの分離、水蒸気の蒸気若しくは気体混合物からの分離、オレフィンとパラフィンの分離、芳香族化合物と脂肪族化合物の分離、そして直鎖の炭化水素と分岐の炭化水素の分離である。
【0035】
更に、層は、パーベーパレーションによる水の液体混合物からの分離、そして流体混合物のナノろ過、精密ろ過又は限外ろ過に好適であることも望ましい。
【0036】
新規な方法で多孔性基板に施される層が結晶性又は無定形の材料から構成される場合に特に好ましい。層が結晶性材料からなる場合、かかる材料は、ゼオライト又はペロブスカイト又はペロブスカイト様構造を有する導電性混合酸化物からなる群から選択されるのが好ましい。基板材料に施される層が無定形材料(非晶質材料)からなる場合、かかる無定形材料は、金属酸化物、例えば非晶質シリカ、チタニア又はジルコニアからなる群から選択されるのが好ましい。
【0037】
[流体]
新規な方法で使用される流体は、液体又はガス状であるのが好ましい。
【0038】
新規な方法で用いられる流体がガス状である場合、空気及び窒素からなる群から選択されるのが好ましい。液体の流体を新規な方法で使用する場合、液体は、膜形成性材料(membrane-forming material)を含んでいないのが好ましい。液体の場合、流体は、例えば水、及び合成溶液と混和性ギャップを形成する液体から選択可能である。
【0039】
[基板]
新規な方法で使用される多孔性基板(多孔性支持体)は、酸化アルミニウム、(二)酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、金属及び炭素からなる群から選択される材料から構成されているのが好ましい。更に、基板材料が、焼結処理された多孔性本体部の形の金属を含むのが望ましい。基板材料は、本発明により製造される膜の機械的安定性を実質的に保証する必要がある。
【0040】
多孔性基板の材料は、1nm〜100μmの範囲の孔径を有しているのが好ましく、特に好ましくは5nm〜10μmの範囲であり、好ましい実施の形態において、基板は、相互に異なる平均孔径を有する複数の領域から構成され、平均孔径は、基板の被覆側に向かって小さくなっている。
【0041】
新規な方法によって被覆される基板材料は、特有のチューブ(管)の形を有していても良く、その際に、外側が被覆されるか、又は特に好ましくは内側が被覆される。しかしながら、或いは、当業者等にそれ自体公知である全ての多溝材料を用いることも可能であり、その場合、被覆は溝部の内側に対して行われるのが一般的である。更に、基板材料は、毛細管又は平坦な本体部を含んでいても良く、その際に、外側が被覆され、又は特に毛細管の場合に特に好ましくは内側が被覆される。
【0042】
基板の端部は予備処理されているのが好ましく、これにより、基板の被覆面側(被覆側)と非被覆側との間おいて、基板の被覆面側又は基板の被覆側を介して起こらない物質移動は抑制される。これは、例えば、高密度材料、例えばそれ自体公知のガラスはんだを施すことによって行うことが可能であり、高密度材料は、基板の少なくとも合成中に封止される部分と新規な方法により製造される膜が封止される部分とを覆う。基板においてチューブ又は多溝の幾何形状の場合、高密度材料は、チューブ又は多溝材料の端面も覆うのが好ましい。
【0043】
更に本発明は、新規な方法によって製造され且つ固体層を多孔性基板に含む膜に関する。
【0044】
更に本発明は、新規な方法によって製造される膜を、ガス分離、例えば水素又は酸素の気体混合物からの分離、水蒸気の蒸気若しくは気体混合物からの分離、オレフィンとパラフィンの分離、芳香族化合物と脂肪族化合物の分離、そして直鎖の炭化水素と分岐の炭化水素の分離に使用する方法に関する。新規な方法によって製造される膜の他の使用法は、パーベーパレーションを用いる水の液体混合物からの分離及び流体混合物のナノろ過、限外ろ過及び精密ろ過である。
【0045】
更に、新規な方法によって製造される膜又は新規な膜は、少なくとも1種の反応物質、例えば水素又は酸素が膜を介して反応空間、例えば触媒床に供給されるか、又は少なくとも1種の反応生成物、例えば水素が膜を介して反応空間、例えば触媒床から取り除かれる膜反応器において使用可能である。
【0046】
以下の実施例で本発明を説明する。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
α−Al23(外径10mm、内径7mm、長さ300mm)を含み、内側の平均孔径が60nmであり、非対称構造を有するInocermic社製(Hermsdorf、ドイツ)の単一溝チューブ(両端部が長さ20mmに亘ってガラス被覆されている)を、最初の以下のようにシード処理した:
シード懸濁液を、Persson等による方法(Zeolites 14 (1994), 557頁以降)に基づき、60℃の条件下、以下のモル組成:
9のテトラプロピルアンモニウムの水酸化物(1Mの水溶液、Sigma社製)、
25のSiO2(Koestrosol 0830、Chemiewerk Koestritz社製)、
360のH2O、
100のEtOH、
を有する溶液から2週間に亘る熱水結晶化によって調製した。
【0048】
コロイドのシード結晶を遠心分離によって母液から分離し、水で数回洗浄し、その後、固体含有量を2質量%とした。
【0049】
上述した単一溝チューブのシード処理を、Hudlund等(H. Chon, S.-K. Ihm, Y.S. Uh (Eds.)におけるProgress in Zeolites and Microporous Material, Elsevier, Amsterdam, 1997, 2203頁以降)による方法に基づき行い、その際に単一溝チューブを、カチオン性ポリマーのレジフロク(Redifloc)4150(Nobel AB社製、スウェーデン)の0.4質量%濃度溶液中に10分間沈め、その後、シード溶液中に更に10分間沈めた。各々の操作後、基板を蒸留水で洗浄した。このようにして処理された単一溝チューブを、乾燥させるために、室温条件下、空気中に12時間放置し、その後、1K/分で450℃まで加熱し、450℃で1時間保持し、その後、1K/分で再び冷却した。
【0050】
その後、単一溝チューブを装置Aに設置することにより、チューブが、装置の内部体積を内部チューブ空間と外部チューブ空間に分割し、これらは、2種類のガラス被膜の領域でチューブを包囲する2種類のOリング(ヴィトン(登録商標))を用いて相互に封止された。装置は、チューブの一方の端部に内部チューブ領域までの供給管及び他方の端部に外部チューブ領域からの排出管と、外部チューブ領域までの供給管と、を有していた。かかる装置は、合成装置の一部を形成し、当該合成装置が直立し、内部チューブ領域までの下部供給管が配管を介して貯蔵容器Bに連結され、そして外部チューブ領域からの上部排出管が配管を介して凝縮器K(冷却水に沈められたコイル管)に連結されるように合成装置は設計され、これに、圧力を維持するための装置、例えばニードルバルブが連結されている。貯蔵容器Bは、最上部に供給管を有している。かかる供給管及び装置Aの外部チューブ領域までの供給管は、配管及びT字形部品を介して、窒素シリンダーの減圧弁に連結されている。装置A及び内部チューブ領域に導く供給管に通じる約300mmの配管を、温度自動調節可能なオイルバスに沈めた。
【0051】
以下の組成:すなわち、
0.035のテトラプロピルアンモニウムブロミド(プラム(purum)、Fluka社製)、
1のSiO2(Koestrosol 0830、Chemiewerk Koestritz社製)、
85のH2O、
0.35のNa2O(NaOHペレットとして、Merck社製)、
を有する合成溶液を貯蔵容器に導入した。
【0052】
貯蔵容器Bへの供給管及び装置Aの外部チューブ領域までの供給管を、配管を介して、2個の窒素シリンダーの減圧弁に別個に連結した。9バールの圧力(ゲージ圧)を、貯蔵容器Bへの配管に連結された減圧バルブで確立し、そして9.5バールの圧力(ゲージ圧)を、装置Aの外部チューブ領域までの供給管に連結されている減圧弁で確立した。装置Aが存在するオイルバスを150℃まで加熱した。凝縮器Kの下流側に在るニードルバルブを操作して、装置A及び凝縮器Kを経由する容器Bからの配列を通過する流れを生じさせた。ニードルバルブは、0.25cm/分の流速が単一溝チューブにおいて生じるように調節され、通過する流量は、ニードルバルブの下流側に設けられた較正収集容器を用いることによって測定された。流れを72時間保持した。その後、オイルバスの温度を30分で90℃まで下げた。膜を装置Aから取り出し、5L(リットル)の蒸留水で綿密に洗浄し、その後、1K/分にて450℃まで加熱することにより空気下に450℃で加熱し、450℃で1時間保持し、その後、1K/分にて再び冷却した。
【0053】
これにより製造された膜は、水素及び六フッ化硫黄を用いた浸透測定に使用された。膜をヴィトン製のOリングで封止した試験セル中で測定を行った。最初に、セルを110℃まで加熱した。その後、試験セルの供給空間(膜チューブの内側)及び浸透空間(膜チューブの外側)の空気を抜いて10-4ミリバール(絶対圧)とし、この圧力を30分間保持した。その後、供給側に測定ガス(H2又はSF6)を充填して、1バールの絶対圧の供給圧を得た。各気体のパーミアンスQを、浸透側での時間の関数として、圧力増加の変量から計算した。これは、以下の等式:
【0054】
【数1】

に基づく時間の関数として、浸透圧の変量における当初の増加により得られた。
【0055】
結果を表1に示す。
【0056】
表に記載されたパーミアンスは、膜間圧で割った各気体の流束密度(線束)として定義された。
【0057】
[実施例2](比較実施例)
手順は実施例1と同様であるが、テフロン(登録商標)テープで単一溝チューブの周囲を囲んでから装置Aに設置し、そして合成中に外側を合成溶液と接触させた。
【0058】
このようにして製造された膜を用いた浸透測定の結果を同様に表1に示す。
【0059】
測定データを比較すると、新規な方法に基づき製造された膜は、ほぼ同じ選択透過性において、両方の物質に関して実質的に高いパーミアンスを有していることが示された。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体層の形成ための合成溶液を用いて、基板の被覆側を処理することによって多孔性基板の一方の側に形成された少なくとも1層の固体層を含む膜を製造する方法であって、
多孔性基板への固体層の製造において、多孔性基板それ自体に不活性な流体を部分的に又は完全に満たし、多孔性基板の非被覆側と接触する空間を不活性な流体で満たし、且つ流体の圧力及び温度は、合成溶液と多孔性基板の非被覆側との接触が実質的に防止されるように選択されることを特徴とする膜の製造方法。
【請求項2】
基板が、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、金属及び炭素からなる群から選択される材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流体が気体であり、空気及び窒素から選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
流体が液体であり、水、及び合成溶液と混和性ギャップを形成する液体からなる群から選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
固体層の製造中における流体の圧力は、合成溶液と基板材料により形成される接触角が90°未満となる場合の前記合成溶液の圧力に対応する値で保持される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
固体層の製造中における流体の圧力は、合成溶液と基板材料により形成される接触角が90°を超える場合の合成溶液の圧力以下に対応する値で保持される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
層は、ゼオライト又はペロブスカイト若しくはペロブスカイト様構造を有する導電性混合酸化物からなる群から選択される結晶性材料から構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
層は、金属酸化物からなる群から選択される非晶質材料から構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項の方法により得られる膜。
【請求項10】
請求項9に記載の膜を、ガス透過又はパーベーパレーションによる物質の分離及び流体混合物のナノろ過、限外ろ過又は精密ろ過に使用する方法。

【公表番号】特表2007−533432(P2007−533432A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548264(P2006−548264)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000270
【国際公開番号】WO2005/068056
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】