説明

膜ろ過を用いた養液栽培培養液の除菌装置及びその方法

【課題】小規模な養液栽培システムにも用いることができる、安価で簡便な培養液除菌装置および除菌方法を提供する。
【解決手段】養液栽培培養液除菌装置1は、ろ過槽2と、ろ過槽2内に設けられ、精密ろ過膜または限外ろ過膜を用いた平板型膜モジュール3と、平板型膜モジュール3の下方に設けられた散気装置5とを有する。モジュールが安価であり、除菌装置の構成が簡便であり、長期間にわたって膜モジュールの交換なしに連続運転を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培、ロックウール栽培などの養液栽培において、作物の病害を防止するための培養液の除菌装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物、花など植物の養液栽培は、培地を使用しないで、または土の代わりにロックウール等を培地として使用して、植物に必要な養分やミネラル成分を培養液で供給する栽培方法である。土耕と比べて、連作障害がないこと、除草などの作業が省略できること、肥料の流失等がなく養分の利用効率が高くできることなどから、普及が進んでいる。
【0003】
しかし、培養液を長期間使用すると、病菌が繁殖し、短時間のうちに病害が拡大して作物が全滅する場合がある。そのため、培養液を循環再利用しないかけ流し方式が採用されたり、経験的に病菌が発生する期間の前に薬剤による消毒や培養液の入れ替え等の対策が取られることが多く、養分が無駄に廃棄されることが多かった。また、使用済みの培養液は窒素、リンその他の無機塩類を多量に含むので、これを河川等へ放流することは環境負荷の増大を招き、好ましくなかった。
【0004】
使用した培養液を除菌・再利用することができれば、病菌の繁殖を防ぐとともに、培養液の使用量を低減することができ、また使用済み培養液の廃棄量を低減することができる。そこで、膜ろ過を用いて培養液を除菌・再利用する方法の開発が古くから行われてきた。
【0005】
特許文献1には、限外ろ過膜を用いて養液栽培培養液を浄化する方法が記載されている。特許文献2には、培養液の循環系に精密濾過膜を設けて、水耕栽培の培養液を除菌する方法が記載されている。特許文献3には、養液栽培装置において、培養液用原水を逆浸透膜を用いてろ過することが記載されている。特許文献4には、培養液循環路に限外濾過装置を組み込んだ水耕栽培装置が記載されている。特許文献5には、養液循環路に除菌のための逆浸透膜等を用いた中空糸膜濾過装置を備えた水耕栽培装置が記載されている。特許文献6には、膜ろ過による培養液浄化装置において、エアスクラビングと薬洗によってろ過膜の交換頻度を低下させることが記載されている。特許文献7には、植物の栽培システムにおいて、膜孔径が0.5nm〜0.5μmであるろ過膜を用いて、液体に含まれる養分は通過させるが植物病原菌は除去する栽培システムが記載されている。
【0006】
上記特許文献のほとんどは、ろ過膜面積が大きい等の理由から、中空糸膜を用いた装置ないしは方法を開示している。特許文献1では、ろ過膜が限外ろ過膜であること以外にはろ過膜やモジュールの形式に関する記載はない。また、特許文献4では、膜の形状として管状膜、平板膜、スパイラル膜、中空糸膜が列挙されているものの、実施例で具体的に開示されているのは、明細書に記載された限外濾過膜の製品番号から、中空糸膜を用いた装置および方法であることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭53−75032号公報
【特許文献2】特開昭63−294717号公報
【特許文献3】実開平03−018743号公報
【特許文献4】特開平09−107826号公報
【特許文献5】特開2001−346460号公報
【特許文献6】特開2002−204933号公報
【特許文献7】特開2007−195410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、培養液の除菌装置に中空糸膜や、平膜であってもスパイラル型やプリーツ型のろ過モジュールを用いる場合には、モジュールが高価である他、根毛等の異物が詰まったときにろ過性能を回復させることが難しく、残根の腐敗に伴う養液の酸性化や、モジュールの交換頻度が高くなるという問題があった。また、処理液の供給圧力を高くしたり制御するために設備全体が複雑で高価になるという問題があった。そのため、小規模な養液栽培システムにこのような除菌装置を採用することは経済的に難しかった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、小規模な養液栽培システムにも用いることができる、安価で簡便な培養液除菌装置を提供することを目的とする。併せて、その除菌装置を用いた除菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の養液栽培培養液の除菌装置は、ろ過槽と、前記ろ過槽内に設けられ、精密ろ過膜または限外ろ過膜を用いた平板型膜モジュールと、前記平板型膜モジュールの下方に設けられた散気装置とを有する。
【0011】
精密ろ過膜または限外ろ過膜を用いた、スパイラル型やプリーツ型に比べ構造が単純な平板型の膜モジュールを用いるため、モジュール自体の価格が安価であり、除菌装置全体の構成も簡便なものとなる。また、前記散気装置からの散気によるクロスフロー方式によって、ろ過膜面を効率的に洗浄しながらろ過処理を行うことができるので、ろ過膜の一次側と二次側との圧力差である膜間差圧は時間の経過とともにある値に収斂し、長期間にわたって膜モジュールの交換なしに連続運転を行うことができる。加えて、平板型であるため、根毛等の異物が詰まりにくく、連続運転への寄与や、異物の回収がし易いため、残根の腐敗に伴う養液の酸性化を防止する効果、さらに、散気によって培養液中の溶存酸素濃度が高くなるので、作物の生育が促進され、根の病原菌に対する抵抗性が高まるという効果が得られる。
【0012】
また前記除菌装置は、好ましくは、前記ろ過槽内の培養液を撹拌する撹拌装置をさらに有することを特徴とする。
これにより、培養液に膜面の洗浄助剤を添加した場合に、クロスフローによるろ過膜面の洗浄効果をより大きなものとし、より安定した状態で、長期間にわたって膜モジュールの交換なしに連続運転を行うことができる。
【0013】
また、さらに好ましくは、前記撹拌装置は、前記ろ過槽内の培養液を循環させる循環ポンプおよび配管からなることを特徴とする。
これによって、装置の構成がより簡便となる。
【0014】
本発明の養液栽培培養液の除菌方法は、前記いずれかの除菌装置を用い、前記ろ過槽に膜面の洗浄助剤である粉体を添加し、前記散気装置を連続的に作動させながら、前記撹拌装置を連続的または断続的に作動させながら、クロスフロー方式によって培養液をろ過することを特徴とする。
【0015】
本発明では平板型膜モジュールを用いるので、散気装置を稼働させることによって、ろ過槽内の培養液がろ過膜面に沿って上昇するクロスフローが生じ、ろ過膜面を洗浄する効果が得られる。また、培養液に添加された膜面の洗浄助剤である粉体はろ過膜面の堆積物を掻き取る機能を有し、撹拌装置を可動させることによって、該粉体がろ過槽内で沈降するのを防いで培養液中に分散させることができる。これにより、本発明の除菌方法によれば、長期間にわたって膜モジュールの交換なしに連続運転を行うことができる。さらに、散気によって培養液中の溶存酸素濃度が高くなるので、作物の生育が促進され、根の病原菌に対する抵抗性が高まるという効果が得られる。
【0016】
また前記除菌方法は、好ましくは、前記膜面の洗浄助剤である粉体が中性であることを特徴とする。これにより、粉体を添加することによる培養液のpHの変動を抑制し、作物の生育に悪影響が及ばないようにすることができる。
また、さらに好ましくは、前記膜面の洗浄助剤である中性の粉体が珪藻土であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上の通り、本発明の養液栽培培養液の除菌装置および除菌方法によれば、ろ過モジュールが安価であり、装置の構成が簡便であり、長期間にわたって膜モジュールの交換なしに連続運転を行うことができるので経済的であることから、小規模な養液栽培システムでも培養液を除菌・再利用することが可能となり、かつ培養液中の溶存酸素濃度が高くなるので作物の生育が促進され、根の病原菌に対する抵抗性が高まるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である培養液除菌装置を利用した水耕栽培システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の培養液除菌装置の一実施形態を図1に基づいて説明する。
【0020】
図1に本実施形態の除菌装置を利用した水耕栽培システムの構成を示す。水耕栽培棚11から排出された培養液は、送液ポンプ12によって培養液循環経路中に設けられた培養液除菌装置1に送られ、除菌された培養液は再利用されて水耕栽培棚11に戻される。
【0021】
本実施形態の培養液除菌装置1は、ろ過槽2、ろ過槽2内に設けられた平板型膜モジュール3、その下方に設けられた散気管5、ろ過槽内の培養液を循環させる循環ポンプ6および循環配管7、ならびに吸引ろ過のための吸引ポンプ9を有している。
【0022】
前記平板型膜モジュール3には、種々の公知の構造のものを用いることができる。例えば、平膜(シート状膜)の精密ろ過膜または限外ろ過膜をろ板の両面に配した平板型膜エレメントを垂直にして、1枚または複数枚を間隔をあけて面方向に並べたものを用いることができる。
【0023】
前記ろ過膜の構造は、平膜であれば、種々の公知のものを用いることができる。例えば、合成樹脂製の不織布の表面に多数の細孔を有する高分子膜が形成されたものを用いることができる。
【0024】
前記ろ過膜の種類は、精密ろ過膜または限外ろ過膜を用いる。
ここで、精密ろ過膜および限外ろ過膜については、孔径等で表される確立した定義がなく、両者の境界も明確ではない。理化学辞典(第5版、岩波書店)によれば、ろ別されるものの粒径が0.02〜10μmの場合を精密ろ過、0.001〜1μm(分子量1000〜300000)の場合を限外ろ過としている。そのため、同程度の孔径を有するろ過膜が、精密ろ過膜とも限外ろ過膜とも称されることもある。
本明細書中では、精密ろ過、限外ろ過の語を一応上記定義に従って用いるが、孔径についてより正確に規定すべきときは、公称孔径を用いる。なお、公称孔径とは、そのサイズの粒子を98%捕捉できる場合の、その粒子径をいう。
【0025】
本発明で用いるろ過膜は、培養液中の病菌を除去することが目的であるから、その目的のために適当なろ過膜を選択する必要がある。病菌のおおよその大きさは、菌類が数μm以上、細菌が0.5〜2μm程度である。養液栽培では、作物の根を侵す地下部の病害が重要であり、これらの病菌のうち、もっとも発生頻度の高いのがいわゆる水生菌(卵菌目鞭毛菌類)であるとされる(例えば、草刈眞一著、「養液栽培の病害と対策」、農山漁村文化協会、2009年、p.21)。
したがって、前記ろ過膜は、公称孔径が1μm以下であることが好ましい。公称孔径が1μm以下であれば、養液栽培で重要な根を侵す病害の原因となる菌類を効率よく除去することができるからである。また、前記ろ過膜は、公称孔径が0.5μm以下であることがさらに好ましい。公称孔径が0.5μm以下であれば、菌類よりも小さな細菌をも効率的に除去することができるからである。逆に孔径が小さすぎると、ろ過抵抗が大きくなってろ過処理量が少なくなる等の問題を生じるので、公称孔径が0.1μm以上であることが好ましい。
【0026】
前記散気管5は、平板型膜モジュール3の下方に設けられている。散気管5が送風機4により外部から取り込んだ空気を散気することによって、ろ過槽2内の培養液がろ過膜面に沿って上昇するクロスフローを生じさせることができる。散気管5には、一方の端を閉じたパイプの上面に多数の小孔を設けたもの等、種々公知の構造のものを用いることができる。
【0027】
前記循環ポンプ6および循環配管7は、ろ過槽2内の培養液を、ろ過槽2の下部から吸引して上部に戻して循環させるように設けられている。
【0028】
次に、上記実施形態の除菌装置を用いた除菌方法を図1を用いて説明し、本除菌方法で用いる膜面の洗浄助剤について説明する。
【0029】
本実施形態の除菌方法は、ろ過槽2内の培養液を膜モジュール3でろ過することによって行われる。ろ過槽2には膜面の洗浄助剤である粉体を添加する。循環ポンプ6を作動させて、ろ過槽2の下部から培養液を吸引し、循環配管7を通ってろ過槽2の上部に戻す。送風機4によって散気管5から散気を行うことによって、散気管5周辺の培養液は膜モジュール3のろ過膜面に沿って上昇するクロスフローを生ずる。ろ過吸引ポンプ9を作動させて吸引ろ過を行うことにより、ろ過槽2内の培養液が除菌されて、再び水耕栽培棚に施用される。
【0030】
クロスフロー方式のろ過では、ろ過膜面の堆積物が増えるとクロスフローの流体抵抗が増えるため、堆積物層の厚さおよび膜間差圧が、時間の経過とともにある値に収斂する傾向を示す。中空糸膜やスパイラル型、プリーツ型等のモジュールでは、膜間に異物が詰まると、液が他の部分へ優先的に流れるため、クロスフローによっても異物が除去されにくいことがある。これに対して平板型膜モジュールでは、その構造上、堆積物層の厚さおよび膜間差圧が収斂しやすい。そのため、平板型膜モジュールでは、長期間にわたって膜モジュールを交換することなく、薬品洗浄や膜モジュールを槽外に取り出して行う物理洗浄等を実施することなく、連続運転を行うことができる。
【0031】
前記膜面の洗浄助剤である粉体の機能は、摩擦によりろ過膜面の堆積物を掻き取ることによって、クロスフローによるろ過膜面の洗浄効果を増強することである。用いるろ過膜の孔径が病菌を除去するのに十分な程度に小さいので、ろ過膜表面にプレコート層を形成するなどの、一般的なろ過助剤の機能は必要としない。また、培養液中に混入した何らかの成分を吸着除去する機能は必要としない。本発明の除菌方法においては、吸着除去機能等を併せ持つ粉体を用いることや吸着除去機能等を有する粉体を併用することを排除するものではないが、少なくとも膜面の洗浄機能を有する粉体を用いる必要がある。
【0032】
前記膜面の洗浄助剤である粉体は、ろ過膜を通過して除菌装置1の外に流出しないため、またろ過膜の細孔を詰まらせないために、粒径がろ過膜の公称孔径以上であることが好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、該粉体が培養液中によく分散するように、粒径が50μm以下であることが好ましい。
【0033】
前記膜面の洗浄助剤である粉体としては、珪藻土、コロイダルシリカ、活性炭、セルロースパウダー等を用いることができるが、中でも中性のものを用いることが好ましく、中性の珪藻土を用いることがさらに好ましい。
ここで、粉体が中性であるとは、粉体の水懸濁液のpHが中性であることをいう。水懸濁液のpHは、例えばJIS K5101の方法に準拠して求めることができる。
【0034】
粉体が中性でない場合には、該粉体の添加によって培養液のpHが変動し、作物の生育に悪影響を与えるおそれがある。そのため、粉体を添加した後に、培養液のpHが安定するのを待って、pHを作物に適した範囲に再調整するなどの処置が必要となる。例えば活性炭を用いる場合は、その酸性度が製造条件によって異なり、安定しないことが多いので、pHの変動を注意深く監視すべきである。
【0035】
これに対して珪藻土では、その酸性度が中性で安定したものが容易に入手可能である。また、珪藻土は、自然由来で食品工業や医薬品の分野で多用されており、かつ安価に入手できる点でも好ましい。
【実施例】
【0036】
本発明の除菌装置および除菌方法の効果を実施例に基づいて説明する。
本実施例の試験は、リーフレタスの水耕栽培システムを用いて行った。その構成を図1に示す。水耕栽培棚11は計350Lの培養液を満たして栽培する仕様である。従来は、このうちの10%にあたる培養液35Lを毎日入れ替え廃棄していた。
【0037】
試験は、栽培棚11の培養液を除菌装置1に送液し、ろ過された培養液の全量を栽培棚11に戻すことにより行った。ろ過槽1の容量は7Lであった。膜モジュール3には、公称孔径が0.25μm、膜面積0.05mの平膜タイプの精密ろ過膜をろ板の両面に配した平板型膜エレメント1枚を用いた。ろ過運転は、ろ過線速0.35m/日(1日当たりに得られるろ液量が35L)、散気量3.5L/分を初期条件として実施した。
【0038】
ろ過槽2には、培養液に添加してもpHの変動がごく僅かな中性の珪藻土(昭和化学工業株式会社、ラヂオライト#500)を0.6質量%添加した。珪藻土の平均粒子径は30μmであった。この珪藻土は、ろ過膜の微細径と比較して大きいため、ろ液に混じる等により除菌装置の外に漏洩、流出することはない。なお、試験期間中に珪藻土の追加の添加は行わなかった。
【0039】
珪藻土は、散気よってろ過槽2内で生じる培養液の循環流によって分散されるが、試験中は循環ポンプ6を常時作動させて、より高度に珪藻土の分散を行った。
【0040】
表1に、試験期間中のろ過流量、膜吸引圧、培養液のpHの変化を示す。ろ過流量は図1のろ液流量計10で、膜吸引圧は同じく膜吸引側圧力計8で測定した値である。
65日間の試験期間中、培養液を追加投入することなく、2275Lの培養液を再利用し、廃棄量を削減することができた。ただし、栽培棚11は開放系であるため、作物からの蒸散等による培養液中の水分の減少を補うために、36日および63日経過後に純水を追加した。
【0041】
試験期間中、栽培棚での病菌の発生はなく、膜による除菌効果が維持できていたことを確認した。また、試験期間中、培養液のpHが低下する傾向が見られたが、純水の追加投入量によって調整できる範囲であった。表1に示すように、純水の追加によって、酸性の方向に変化したpHは、ほぼ中性に回復した。
【0042】
試験期間中の膜吸引圧の下降(膜間差圧の上昇)は−15kPaと緩やかであり、終始安定したろ過運転ができた。また、膜間差圧の変動が緩やかであるため、ろ過吸引ポンプの制御も簡単であった。また、膜モジュールの交換なしに長期間にわたって連続運転可能であることが確認できた。
【0043】
また、循環ポンプ6を停止すると、珪藻土はろ過槽2底部へ徐々に沈降するが、その場合でも、クロスフローのみによってもろ過膜面の洗浄効果が得られること、散気によって沈降した珪藻土の一部が巻き上げられることから、膜間差圧が急速に上昇することはない。前述の通り、平板型膜モジュールでは、中空糸膜モジュール等と比べて、クロスフローによる膜面の洗浄効果が格段に大きいからである。
したがって、循環ポンプは必ずしも連続的に作動させなくとも、断続的に作動させることによっても、所期の機能を発揮できる。
【0044】
【表1】

【0045】
なお、本発明は以上の実施形態または実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
例えば、散気装置は、散気管以外にも、種々公知のものを用いることができる。また、培養液の撹拌装置は、ろ過槽内に設けた羽根式の撹拌装置であってもよい。また、膜面の洗浄助剤の粒径が小さく、比重が軽く、添加量が少量で十分であるなどの場合は、散気管からの散気によって十分に撹拌できるので、撹拌装置を省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の養液栽培培養液の除菌装置および除菌方法は、種々の作物の栽培に利用することができる。また、水耕栽培、ロックウール栽培、礫耕栽培、ポット栽培など、各種の養液栽培に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 培養液除菌装置
2 ろ過槽
3 平板型膜モジュール
4 送風機
5 散気管
6 ろ過槽内培養液循環ポンプ
7 循環配管
8 膜吸引側(二次側)圧力計
9 ろ液吸引ポンプ
10 ろ液流量計
11 水耕栽培棚
12 送液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過槽と、
前記ろ過槽内に設けられ、精密ろ過膜または限外ろ過膜を用いた平板型膜モジュールと、
前記平板型膜モジュールの下方に設けられた散気装置と、
を有する養液栽培培養液の除菌装置。
【請求項2】
前記ろ過槽内の培養液を撹拌する撹拌装置をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の養液栽培培養液の除菌装置。
【請求項3】
前記撹拌装置は、前記ろ過槽内の培養液を循環させる循環ポンプおよび配管からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の養液栽培培養液の除菌装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の除菌装置を用いた養液栽培培養液の除菌方法であって、
前記ろ過槽に膜面の洗浄助剤である粉体を添加し、
前記散気装置を連続的に作動させながら、前記撹拌装置を連続的または断続的に作動させながら、クロスフロー方式によって培養液をろ過する
ことを特徴とする養液栽培培養液の除菌方法。
【請求項5】
前記膜面の洗浄助剤である粉体が中性である
ことを特徴とする請求項4に記載の養液栽培培養液の除菌方法。
【請求項6】
前記膜面の洗浄助剤である粉体が珪藻土である
ことを特徴とする請求項5に記載の養液栽培培養液の除菌方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−9644(P2013−9644A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145790(P2011−145790)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(503442592)株式会社ユアサメンブレンシステム (28)
【Fターム(参考)】