説明

膜ろ過装置の洗浄方法及びそのための洗浄設備

【課題】膜モジュールの薬液洗浄効果の更なる向上と洗浄設備の省スペース化を図ることのできる薬品洗浄方法を提供する。
【解決手段】膜モジュール11内及び該膜モジュールの1次側11aに連通したヘッダー管13内に洗浄薬液を充填した後、膜モジュールの1次側及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、洗浄薬液をヘッダー管13から膜モジュール方向に移送して、ろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液を、膜モジュールの1次側の上流に連通した密閉容器15内に移送する薬液移送工程1と、膜モジュールの1次側及び2次側に常に洗浄薬液が存在する状態で、前記密閉容器15内の洗浄薬液を、膜モジュール方向に移送して、膜モジュールのろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液をヘッダー管13内に移送する薬液移送工程2と、を交互に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種水処理に用いる膜ろ過装置のための洗浄方法、並びにそれを実施するための洗浄設備に関する。
【背景技術】
【0002】
膜モジュールを備える膜ろ過装置は、操作の簡便性や処理水水質の安定性等の利点から、浄水処理、各種産業用水処理、排水の水回収処理などに広く導入されている。例えば、河川水、湖沼水等の表流水、地下水等の伏流水、海水、産業廃水等を膜ろ過装置によってろ過して、産業用水や上水などとして利用することなどが行われている。
【0003】
このような膜ろ過装置は、上述のように操作の簡便性や処理水水質の安定性等の利点がある反面、処理を継続するうちに、ろ過膜面やろ過膜の細孔に固形物(「汚染物質」とも称する)が蓄積し、膜モジュール圧力の上昇や、処理水量の低下などの処理能力の低下を招くようになるという問題点を抱えていた。このため、膜ろ過装置の運転においては、一定のろ過時間毎に、又は膜モジュールの圧力が所定の値に達した時に、膜モジュール2次側から1次側へ処理水を逆流させ、堆積した汚染物質を剥離、除去させる逆洗が行われている。
【0004】
このような逆洗により、膜ろ過装置のろ過能力はある程度回復させることはできるが、
中長期に渡って運転を継続すると、逆洗では除去されない汚染物質がろ過膜に蓄積するようになり、膜ろ過性能が次第に低下し、最終的には処理の継続が困難になってしまう。そうなると、膜モジュールを交換しなければならないが、その交換費用は莫大であり、運転コストの大幅な上昇を招くことになる。
【0005】
そこで、このような膜ろ過性能の低下を回復させる方法として、薬品洗浄が行われている。
広く実施されている薬品洗浄方法としては、例えば洗浄薬液を一定時間膜モジュールに循環させる薬液循環洗浄や、一定時間薬液を浸漬させる薬液浸漬洗浄が行われている(特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−120963号公報
【特許文献2】特開2002−153736号公報
【特許文献3】特開2003−251159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の薬液循環洗浄および薬液浸漬洗浄に共通する課題として、薬液洗浄後の膜ろ過性能が運転初期の値まで回復しなかったり、ろ過性能が一旦回復したとしても、その後の運転において性能低下が著しく、次の洗浄までの期間が短くなったりする等、期待される洗浄効果が得られないという課題を挙げることができる。
【0008】
中でも、薬液循環洗浄の場合は、循環貯留槽により一般的に使用薬液量が多なる傾向があり、廃水処理の点において問題となることがあった。そればかりか、循環ポンプや循環貯留槽等の付帯設備も大型化する傾向にあり、これらの設置スペースおよび設備・運転コストが別途必要になる。
他方、浸漬洗浄の場合は、薬液を供給する手段があればよいので薬液循環洗浄のような循環ポンプや循環貯留槽といった付帯設備が不要であり、しかも洗浄排水量も比較的少ないというメリットはあるが、洗浄効果は一般的に薬液循環洗浄よりも低いという問題を抱えていた。
【0009】
そこで本発明は、膜モジュールの薬液洗浄効果の更なる向上、洗浄設備の省スペース化と低コスト化、薬液洗浄時の電力使用量の削減を図ることができる、新たな薬品洗浄方法及びそのために洗浄設備を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数本のケーシング型膜モジュール11と、各膜モジュール11の1次側11aの上流に連通したヘッダー管12と、各膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13と、各膜モジュール11の2次側11bの下流に連通したヘッダー管14とを備えた膜ろ過装置の洗浄方法であって、
膜モジュール11内及びヘッダー管13内に洗浄薬液を充填した後、
膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、前記の充填された洗浄薬液を、ヘッダー管13から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液を、膜モジュール11の1次側11aの上流に連通した密閉容器15内に移送する薬液移送工程1と、
膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、前記密閉容器15内の洗浄薬液を、密閉容器15から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液をヘッダー管13内に移送する薬液移送工程2と、を交互に繰り返すことを特徴とする膜ろ過装置の洗浄方法を提案する。
【0011】
本発明はまた、上記膜ろ過装置の洗浄方法を実施するための好適な洗浄設備として、複数本のケーシング型膜モジュール11と、各膜モジュール11の1次側11aの上流に連通したヘッダー管12と、各膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13と、各膜モジュール11の2次側11bの下流に連通したヘッダー管14とを備えた膜ろ過装置用の洗浄設備であって、ヘッダー管14に連通した洗浄薬液供給部30と、ヘッダー管12に連通した密閉容器15と、該密閉容器15、前記ヘッダー管13及びヘッダー管14に圧縮気体を供給し得る圧縮気体供給部33と、を備えた洗浄設備を提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明が提案する洗浄方法では、薬液移送工程1と薬液移送工程2とを交互に繰り返すことにより、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液とが接触する時間を長くすることができ、しかも、接触する方向を交互に変えることができるため、ろ過膜に付着した汚染物質を有効に剥離して溶解することができる。しかも、薬液移送工程1及び薬液移送工程2の間ずっと膜モジュールの1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態であるため、ろ過膜に付着した汚染物質の溶解率をより一層高めることができる。
また、薬液移送工程1及び薬液移送工程2では、膜モジュール11の1次側11aに連通したヘッダー管13と、同じく膜モジュール11の1次側11bに連通した密閉容器15との間で洗浄薬液を移送するため、膜モジュール11の1次側膜面の汚染物質を効率良く剥離して溶解できると共に、汚染物質が溶解した洗浄液が膜モジュール11の2次側11bには流通しないため、汚染物質が溶解した洗浄薬液がろ過膜を再汚染することもない。
このように、本発明が提案する膜ろ過装置の洗浄方法によれば、膜モジュールの薬液洗浄効果の更なる向上を図ることができる。
さらには、本発明が提案する洗浄設備の構成をみれば分かるように、洗浄設備の簡素化を図ることができるため、洗浄設備の省スペース化、低コスト化、薬液洗浄時の電力使用量の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る薬品洗浄設備を備えた膜ろ過装置の構成例を示す概略図である。
【図2】図1に示した膜ろ過装置の構成例の変形例を示す概略図である。
【図3】実施例1,2の試験結果を示すグラフである。
【図4】比較例1及び実施例3の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態の一例に係る薬液洗浄設備付き膜ろ過装置(「本膜ろ過装置」と称する)の構成及びその使用方法について詳細に説明する。但し、本発明の範囲が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態の一例に係る本膜ろ過装置10は、図1に示すように、膜ろ過設備と薬液洗浄設備を備えている。
【0016】
(膜ろ過設備)
本膜ろ過装置10は、膜ろ過設備として、図1に示すように、複数本のケーシング型膜モジュール11(以降「膜モジュール11」と称する)を備え、各膜モジュール11の1次側11aの上流に連通したヘッダー管12、各膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13、および各膜モジュール11の2次側11bの下流に連通したヘッダー管14を備えている。
【0017】
ヘッダー管12の上流側、すなわち被処理水がヘッダー管12に流入する際の上流側には、被処理水供給経路16が連通し、この被処理水供給経路16の中間部には開閉弁17が設けられる共に、開閉弁17よりもヘッダー管12側に逆洗水排水経路18が連通し、前記被処理水供給経路16には被処理水供給部19と供給ポンプ20とが設けられ、逆洗水排水経路18には逆洗排水手段21が設けられている。
ヘッダー管13には逆洗排水経路22が連通し、該逆洗排水経路22には逆洗排水手段23が設けられている。
ヘッダー管14の下流側、すなわち被処理水がヘッダー管14から流出する際の下流側には処理済水排水経路24が連通し、この処理済水排水経路24の中間部には開閉弁25が設けられる共に、開閉弁25よりもヘッダー管14側に逆洗水供給経路26が連通し、この逆洗水供給経路26には逆洗水供給部27と逆洗ポンプ28が設けられている。
【0018】
本発明において、「上流」「下流」とは、膜ろ過装置10の通常使用状態における上流又は下流、すなわち被処理液が膜モジュール11に流入してろ過された後の処理済液が排出される一連の流れにおける上流又は下流を意味する。
【0019】
膜モジュール11は、ケーシング型膜モジュールであれば、ろ過膜の種類(MF膜、UF膜、RO膜、NF膜など)、膜材質(ポリエステル、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、セラミック、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアミドなど)、膜形状(中空糸など)などを限定するものではなく、内圧型でも外圧型でもスパイラル型でもよい。
また、膜モジュール11の1次側11aとは、膜モジュール11内のろ過膜を透過する前の部分であり、膜モジュール11の2次側11bとは、膜モジュール11内のろ過膜を透過した後の部分である。
【0020】
ヘッダー管12,13,14は、複数の膜モジュール11、11・・に液を分配供給したり、複数の膜モジュール11,11・・から液を集めたりすることができる部材であればよく、例えば長尺な管の胴部分に長さ方向に適宜間隔をおいて、複数の膜モジュールと連通する連結口を備えた構成のものを挙げることができる。
【0021】
(薬液洗浄設備)
本膜ろ過装置10は、薬液洗浄設備として、図1に示すように、ヘッダー管14の下流側に連通した逆洗水供給経路26に洗浄薬液供給部30が設けられ、ヘッダー管12に薬液流通経路31が連通し、この薬液流通経路31の中間部には開閉弁32が設けられ、薬液流通経路31の末端部には密閉容器15が設けられている。
【0022】
ここで、洗浄薬品は、酸性溶液、アルカリ性溶液、酸化性溶液、還元性溶液の少なくとも1種類以上であり、汚染物質の種類や量などによって適宜選択するのが好ましいため、洗浄薬液供給部30は、異なる薬品を各々注入できる薬品注入手段を備えているのが好ましい。
【0023】
また、密閉容器15、ヘッダー管13及びヘッダー管14のそれぞれに圧縮気体を供給する圧縮気体供給経路34,35、36がそれぞれ連通し、全ての圧縮気体供給経路34、35、36が圧縮気体供給部33に連通し、さらに密閉容器15と圧縮気体供給部33とを結ぶ圧縮気体供給経路34には開閉弁37と大気開放手段38が設けられ、ヘッダー管13と圧縮気体供給部33とを結ぶ圧縮気体供給経路35には開閉弁39と大気開放手段40が設けられ、ヘッダー管14と圧縮気体供給部33とを結ぶ圧縮気体供給経路36には開閉弁41が設けられている。
【0024】
圧縮気体供給部33が供給する圧縮気体としては、圧縮空気のほか、例えば圧縮窒素ガス、圧縮アルゴンガスなどの圧縮不活性ガスを挙げることができる。
【0025】
(膜ろ過処理)
本膜ろ過装置10は、通常使用状態時には、被処理水供給部19及び供給ポンプ20によって被処理水が被処理水供給経路16を通じてヘッダー管12に移送され、ヘッダー管12から複数の膜モジュール11、11・・に分配供給される。そして、各膜モジュール11内において、被処理水は1次側11aからろ過膜を通過して2次側11bに移動し、この際に被処理水中の異物はろ過膜でろ過される。
そして、各膜モジュール11から排出された処理済水(透過水ともいう)は、ヘッダー管14内に流入し、処理済水排水経路24から排出される。
【0026】
(逆洗処理)
逆洗時には、逆洗水供給部27及び逆洗ポンプ28から逆洗水が供給され、逆洗水供給経路26を通じてヘッダー管14に移送され、ヘッダー管14から複数の膜モジュール11、11・・に分配供給される。各膜モジュール11内において、逆洗水は、2次側11bからろ過膜を通過して1次側11aに移動し、この際にろ過膜に付着している異物は剥離されろ過膜を通過した逆洗水とともにヘッダー管12、13内に流入し、逆洗排出経路18、22を通じて逆洗排出手段21、23から排出される。
【0027】
(薬液洗浄処理)
本膜ろ過装置10を使用すれば、次のような薬液洗浄処理を実施することができる。
【0028】
膜モジュール11内及び該膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13内に洗浄薬液を充填する(充填工程)。
次に、膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、充填された洗浄薬液をヘッダー管13から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液とを連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液を、膜モジュール11の1次側11aの上流に連通した密閉容器15内に移送する(薬液移送工程1)。
次に、膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、前記密閉容器15内の洗浄薬液を、密閉容器15から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液とを連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液をヘッダー管13内に移送する(薬液移送工程2)。
次に、前記薬液移送工程1と前記薬液移送工程2を交互に繰り返す(繰り返し工程)。
次に、このように薬液移送工程1と薬液移送工程2とを交互に繰り返した後、汚染物質が溶解していない洗浄薬液を膜モジュール11に供給し、該膜モジュール11内において洗浄薬液を2次側11bから1次側11aに流通させた後、系外に排出する(薬液移送工程3)。
その後、必要に応じて、系内に残留する洗浄薬液を洗浄排出するリンスを実施した後(リンス工程)、通常使用状態、すなわち被処理液のろ過処理を再開すればよい。
【0029】
(1)充填工程
充填工程では、膜モジュール11内、すなわち膜モジュール11の1次側11a、及び2次側11bと、ヘッダー管13内とに洗浄薬液を充填する必要がある。好ましくはヘッダー管14内、さらに好ましくはヘッダー管12内にも洗浄薬液を充填するのがよい。
【0030】
膜モジュール11内及びヘッダー管13内に洗浄薬液を充填する方法としては、例えば、膜ろ過処理或いは逆洗処理の運転を停止した後、洗浄薬液供給部30から逆洗水供給経路26を通じて洗浄薬液を逆洗方向、すなわち洗浄薬液供給部30からヘッダー管14方向に移送して、ヘッダー管14内、膜モジュール11内、ヘッダー管12内及び膜モジュールの1次側11aの下流に連通したヘッダー管13内に洗浄薬液を充填すればよい。この際、系内に残っている被処理液や逆洗水、すなわち膜モジュール11内、ヘッダー管13内、ヘッダー管12内などに残っている被処理液や逆洗水は、充填された洗浄薬液によって押し出されて逆洗排出経路18を通じて逆洗排出手段21から排出される。
【0031】
また、例えば薬液供給部30をヘッダー管12に連通して設けて、ヘッダー管12側から膜モジュール11の1次側11a,2次側11b、ヘッダー管13の順に充填するようにしてもよい。但し、このような順に充填すると、膜モジュール11のろ過膜の1次側に付着した汚染物質が洗浄薬液に溶解して、ろ過膜の内部及び2次側を汚染する可能性があるため、前者の方法で充填するのがより好ましい。
【0032】
このように膜モジュール11内及びヘッダー管13内に洗浄薬液を充填することにより、膜モジュール11の2次側11bから1次側11aに洗浄薬液が流通するため、膜モジュール11の1次側11aのろ過膜面のみならず、ろ過膜内部の細孔部に薬液を接触させることができる。
【0033】
充填後は、適宜時間そのまま充填状態を保持するようにしてもよいし、また、充填後すぐに次の薬液移送工程1に移行してもよい。洗浄薬液に対する汚染物質の溶解率を高める観点からは、充填後に適宜時間保持するのが好ましい。
【0034】
(2)薬液移送工程1
薬液移送工程1では、例えば膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、充填された洗浄薬液をヘッダー管13から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液とを連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液を、ヘッダー管12を通じてヘッダー管12に連通した密閉容器15内に移送するようにすればよい。
【0035】
具体的には、例えば圧縮気体供給部33からヘッダー管13内に圧縮空気を送り、ヘッダー管13内の洗浄薬液をヘッダー管13から膜モジュール11方向に移送させ、膜モジュール11の1次側11a内の洗浄薬液をヘッダー管12側に移送させ、ヘッダー管12内の洗浄薬液を密閉容器15に移送させるようにすればよい。
より具体的には、例えば洗浄薬液が前記の如く充填された後、開閉弁39、開閉弁32及び大気開放手段38を開とし、圧縮気体供給部33からヘッダー管13内に圧縮空気を供給すれば、ヘッダー管13、膜モジュール11の1次側11a及びヘッダー管12内に充填されている洗浄薬液を、密閉容器15の方へ移送させることができる。
このような薬液の移送により、膜モジュール11の1次側に付着している汚染物質は、ヘッダー管13からヘッダー管12の方向へ移動する洗浄薬液と連続的に接触し、効果的に溶かし出すことができる。
【0036】
薬液移送工程1で移送させる薬液の量は、特に限定するものではない。ヘッダー管13内の薬液の全量であってもその一部であってもよい。
薬液移送工程1に要する時間及び薬液の流速を特に制限するものではない。
【0037】
(3)薬液移送工程2
薬液移送工程2では、例えば膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、密閉容器15内の洗浄薬液を、密閉容器15から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液とを連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液を、ヘッダー管13内に移送して薬液移送工程1の開始状態に戻すようにすればよい。
【0038】
具体的には、例えば圧縮気体供給部33から密閉容器15内に圧縮空気を送り、密閉容器15内の洗浄薬液を膜モジュール11方向に移送し、ヘッダー管12内の洗浄薬液を膜モジュール11の1次側11a内に移送し、膜モジュール11の1次側11a内の洗浄薬液をヘッダー管12側に移送するようにすればよい。
より具体的には、開閉弁39及び大気開放手段38を閉とし、開閉弁37及び大気開放手段40を開とし、圧縮気体供給部33から密閉容器15内に圧縮空気を供給すると、密閉容器15、ヘッダー管12及び膜モジュール11の1次側11a内に充填されている洗浄薬液をヘッダー管13の方へ移送することができ、薬液移送工程1の開始状態に戻すことができる。
このような薬液の移送により、膜モジュール11の1次側に付着している汚染物質は、ヘッダー管12からヘッダー管13の方向へ移動する洗浄薬液と連続的に接触し、効果的に溶かし出すことができる。
【0039】
薬液移送工程2で移送させる薬液の量は、特に限定するものではない。密閉容器15内の薬液の全量であってもその一部であってもよい。
薬液移送工程2に要する時間及び薬液の流速を特に制限するものではない。
【0040】
(4)繰り返し工程
薬液移送工程2後、再び薬液移送工程1を実施し、その後、薬液移送工程2を実施するようにして、薬液移送工程1と薬液移送工程2を交互に繰り返すようにする。
薬液移送工程1と薬液移送工程2を交互に繰り返すことにより、洗浄薬液の流れ方向が交互に変化するため、洗浄薬液をろ過膜面の汚染物質と効率的に接触させることができるばかりか、ろ過膜面近傍の汚染物質濃度が高い領域が拡散されて、洗浄薬液のろ過膜内細孔部への移動をより促進させることができる。
【0041】
薬液移送工程1と薬液移送工程2を交互に繰り返す回数は特に限定するものではないが、例えば軽微に汚染された膜モジュールでは50〜100回、極端に汚染が進行した膜モジュールでは100〜300回を好適な例として挙げることができる。
【0042】
(5)薬液移送工程3
前述のように薬液移送工程1と薬液移送工程2を交互に繰り返して、最後の薬液移送工程2の後、汚染物質が溶解していないフレッシュな洗浄薬液を膜モジュール11に供給し、該膜モジュール11内において洗浄薬液を2次側11bから1次側11aに流通させた後、系外に排出するようにするのが好ましい。
【0043】
具体的には、開閉弁32,開閉弁37及び大気開放手段40を閉とし、開閉弁41を開として、圧縮気体供給部33からヘッダー管14内に圧縮空気を供給することにより、ヘッダー管14及び膜モジュール11の2次側11b内に充填されている洗浄薬液、すなわち汚染物質が溶解していないフレッシュな洗浄薬液を、ろ過膜を通じて膜モジュール11の1次側11aに移送させることができ、ヘッダー管12及び逆洗排水経路を通じて系外に排出させることができる。
【0044】
なお、汚染物質が溶解していないフレッシュな洗浄薬液を、洗浄薬液供給部30からヘッダー管14内に移送して膜モジュール11に供給し、ろ過膜内部を介して膜モジュール11の1次側11a側に移送させるようにしてもよい。
但し、前記の方法、すなわちヘッダー管14内および膜モジュール2次側にある洗浄薬液を移送する方が、後の薬液リンク工程で使用するリンス水量が少なくて済むため、この点では好ましい。
【0045】
このように汚染物質が溶解していないフレッシュな洗浄薬液のみを、膜モジュール11に供給し、該膜モジュール11内において洗浄薬液を2次側11bから1次側11aに流通させることにより、膜モジュール11の1次側11a内の使用済み洗浄薬液を系外に排出させることができ、しかも膜モジュール11の2次側11bの膜面を汚染させることなく、ろ過膜内細孔部に残存する汚染物質をも溶解および排出させることができる。
【0046】
(6)薬品リンス工程
薬液移送工程3実施後は、必要に応じて、系内に残存する洗浄薬液を排出させてリンスを行うのが好ましい。
リンス方法としては、例えば供給ポンプによって被処理水を押出すなどの一般的方法でよい。中でも、リンス工程の初期は、洗浄薬液が残存するヘッダー管12,13および膜モジュール1次側の薬液を押出し、排出させることが好ましい。
【0047】
(その他)
ろ過膜に付着している汚染物質は、大きく有機物と無機物に分類され、有機物は主にアルカリ溶液(例えば苛性ソーダなど)に溶解し、無機物は主に酸性溶液(例えばクエン酸やシュウ酸など)に溶解するため、汚染物質の種類によって洗浄薬液の種類を選択するのが好ましい。
例えば酸、アルカリ、酸化剤、還元剤の少なくとも1種類以上が溶解した2種類以上の洗浄薬液を用意し、そのうちの1種類の洗浄薬液による洗浄方法を実施した後、異なる種類の洗浄薬液による洗浄方法を実施するのが好ましい。より具体的には、上記のようにして、アルカリを溶解した洗浄薬液により薬液洗浄処理を行った後、次いで上記のようにして、酸を溶解した洗浄薬液による薬液洗浄処理を行い、これらを1回若しくは2回以上繰り返して行うようにすればよい。
【0048】
<実施形態2>
前記実施形態1は、圧縮気体供給部33から供給される圧縮空気によって、薬液を押し出すようにして移送させるものであるが、例えば膜モジュール11、ヘッダー管12、13,14、密閉容器15及び洗浄薬液供給部30を設置する高低差を利用して、一部の工程における洗浄薬液の移送を行うことが可能である。
例えば、密閉容器15をヘッダー管13よりも低い位置に設置することにより、圧縮気体供給部33からヘッダー管13内に圧縮空気を送らなくても、大気開放手段40及び34、並びに開閉弁32を開とすることにより、ヘッダー管13、膜モジュール11の1次側11a及びヘッダー管12内に充填されている洗浄薬液を、密閉容器15の方へ移送させることができる。
【0049】
<実施形態3>
図2は、図1に示した本膜ろ過装置10の変形例を示した図であり、密閉容器15の形状とこれを配置する位置が異なる装置である。すなわち、図2に示す密閉容器15は、ヘッダー管12などと同様に、長尺な管状に形成され、ヘッダー管12、ヘッダー管13及びヘッダー管14のいずれかと平行に並設されている。好ましくは、図2に示すように、密閉容器15を、膜モジュール11とヘッダー管12との間に組み込むようにすれば、薬液洗浄設備を膜ろ過設備内に組み込むことができ、より一層の省スペース化を図ることができる。この際、配管類も膜ろ過設備内に組み入れることも可能であるから、薬品洗浄設備の設置スペースを必要としない極めて画期的なものとすることができる。
なお、このような構成の膜ろ過装置は、膜ろ過処理、逆洗処理、薬液洗浄処理は上記例と同様に行うことができる。
【0050】
<効果>
上記の如き本実施形態によれば、先ず充填工程において、膜モジュール11の2次側11bから1次側11aに洗浄薬液を移送することにより、膜モジュール11の1次側11aのろ過膜面のみならず、ろ過膜内部の細孔部に薬液を接触させることができる。
そして次に、繰り返し工程において、膜モジュール11の2次側11b及びろ過膜と薬液が接触している状態を保持しつつ、膜モジュール11の1次側11a内において、薬液が双方向に移動することが繰り返されるため、ろ過膜面の2次側を汚染することなく、ろ過膜内細孔部およびろ過膜面への薬品の接触効率を向上させることができ、薬液洗浄効果を大幅に増大せしめることができる。
【0051】
また、薬液移送工程1及び2を繰り返した後、薬液移送工程3において、汚染物質が溶解していないフレッシュな薬液を、ろ過膜を通じて膜モジュール11の1次側11aへそのままの薬液濃度で供給することができるため、ろ過膜細孔部に残存する汚染物質や膜面の汚染物質を効率的に排出させることができるだけでなく、汚染物質の膜面への再付着を防止することができる。その結果、洗浄直後の膜ろ過性能の回復のみならず、次の洗浄作業までの期間を延長せしめることが可能となる。
【0052】
また、本膜ろ過装置10における薬液洗浄設備は、洗浄薬液供給部30と、密閉容器15と、圧縮気体供給部33と、これらに付属する配管及び弁類のみであり、とても簡素な構成とすることができ、洗浄設備の省スペース化と低コスト化、薬液洗浄時の電力使用量の削減を図ることができる。
しかも、この中でスペースを要するのは密閉容器15であるが、該容器15は密閉構造のため、その形状に特に制限は無い。そのため、膜ろ過装置内のスペースに容易に組み入れることが可能となり、極めて良好な省スペースが実現できる。例えば実施形態3の如く、密閉容器15をヘッダー管12などと同様の形状とし、ヘッダー管12などと並列に設置すれば、より一層の省素スペース化を図ることができる。
【0053】
さらにまた、本実施形態1及び2の如く、薬液洗浄に必要な駆動力は、薬液の液位差および圧縮気体による気体圧力のみである。しかも、必要気体圧力は、薬液が移動す該ヘッダー管と密閉容器間における液位差に相当する圧力でよいため、高くても数10kPa程度の圧力で足りるため、電力使用量を抑えることができる点でもメリットがある。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の洗浄設備を適用した薬品洗浄効果を、具体例を挙げて説明する。
【0055】
(膜モジュール有効圧力)
膜モジュールの有効圧力とは、膜の一次側平均圧力から2次側圧力を引いた圧力、つまり膜面に与えられる正味の圧力を意味する。定流量で膜ろ過処理を継続して膜が汚れてくる(詰まる)と、この有効圧力は高くなる。
1次側平均圧力は、膜モジュールの1次側でも、原水供給側と循環(濃縮)側では圧力が異なり、原水供給側が若干高い圧力となる。そのため、膜面1次側にかかる圧力はこれらの原水供給側と循環(濃縮)側の平均とする必要がある。
また、有効圧力は水温が変化すると水の粘度が変化し、膜の透水性能も変化する。そのため、定流量で膜ろ過処理しても、水温が高い場合、水の粘度が下がり有効圧力は低くなり、逆に水温が低いと有効圧力は高くなる。
このような事象から、膜の汚染状況を圧力で判断するためには、水温つまり粘度の影響を排除するために、温度補正(粘度補正)する必要がある。
具体的な補正方法としては、実水温における粘度と基準とする水温(実施例では25℃)の粘度の比を、有効圧力に掛けて算出した。
【0056】
(洗浄設備付き膜ろ過装置)
先ずは、下記実施例で使用した洗浄設備付き膜ろ過装置について説明する。
図1に示すように、3本のケーシング型膜モジュール(:膜面積10m2の内圧式PVC製中空糸UF膜モジュール)11と、各膜モジュール11の1次側11aの上流に連通したヘッダー管12(容量5L、φ100mm×600mmL)と、各膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13(容量5L、φ100mm×600mmL)と、各膜モジュール11の2次側11bの下流に連通したヘッダー管14(容量5L、φ100mm×600mmL)を備えたものである。
ヘッダー管12の上流側には、被処理水供給経路16が連通し、この被処理水供給経路16の中間部には開閉弁17が設けられる共に、開閉弁17よりもヘッダー管12側に逆洗水排水経路18が連通し、前記被処理水供給経路16には被処理水供給部19と供給ポンプ20とが設けられ、逆洗水排水経路18には逆洗排水手段21が設けられている。
ヘッダー管13には逆洗排水経路22が連通し、該逆洗排水経路22には逆洗排水手段23が設けられ、ヘッダー管14の下流側には処理済水排水経路24が連通し、この処理済水排水経路24の中間部には開閉弁25が設けられる共に、開閉弁25よりもヘッダー管14側に逆洗水供給経路26が連通し、この逆洗水供給経路26には逆洗水供給部27と逆洗ポンプ28が設けられている。
【0057】
また、薬液洗浄設備として、ヘッダー管14の下流側に連通した逆洗水供給経路26に洗浄薬液供給部30が設けられ、ヘッダー管12には薬液流通経路31が連通し、この薬液流通経路31の中間部には開閉弁32が設けられ、薬液流通経路31の末端部には密閉容器15(容量10L)が設けられている。
密閉容器15、ヘッダー管13及びヘッダー管14のそれぞれに、圧縮気体を供給する圧縮気体供給経路34,35、36がそれぞれ連通し、全ての圧縮気体供給経路34,35、36は圧縮気体供給部33に連通し、さらに密閉容器15と圧縮気体供給部33とを結ぶ圧縮気体供給経路34には開閉弁37と大気開放手段38とが設けられ、ヘッダー管13と圧縮気体供給部33とを結ぶ圧縮気体供給経路35には開閉弁39と大気開放手段40が設けられ、ヘッダー管14と圧縮気体供給部33とを結ぶ圧縮気体供給経路36には開閉弁41が設けられていた。
【0058】
(実施例1)
上記の洗浄設備付き膜ろ過装置を使用して、既存の工場の廃水処理水を被処理水として膜ろ過処理(ろ過Flux:1.0m/day、ろ過サイクル:30min/Cycle)を行うと共に、1Cycleに一度の頻度で逆洗を行った(逆洗Flux:3.0m/day、逆洗時間:30sec)。この条件で膜ろ過処理を継続し、膜ろ過処理時の膜モジュール有効圧力が100kPaに達した時点で薬液洗浄処理を実施するようにして、約3ヶ月間継続した。
この期間の膜モジュール有効圧力の経時変化を図3に示す。
【0059】
薬液洗浄処理は、塩酸を溶解した洗浄薬液(500mg/L、pH:1.5)による酸性薬液洗浄を実施し、リンス終了後、続いて苛性ソーダを溶解した洗浄薬液(500mg/L、pH:12.2)によりアルカリ性薬液洗浄を実施し、これら酸性薬液洗浄1回とアルカリ性薬液洗浄1回をまとめて1回の薬液洗浄としてカウントした。
【0060】
洗浄薬液供給部30から薬液を、逆洗方向、すなわち洗浄薬液供給部30からヘッダー管14方向に移送して、ヘッダー管14内、膜モジュール11内、ヘッダー管12内及びヘッダー管13内に洗浄薬液を充填した(:充填工程、薬液供給流量62L/min、供給時間1min)。
次に、圧縮気体供給部33から圧縮空気をヘッダー管13内に供給し、圧縮空気で押し出すようにして、ヘッダー管13内、膜モジュール11の1次側11a内及びヘッダー管12内の薬液全量を、逆洗方向、すなわちヘッダー管13から膜モジュール11方向に移送して密閉容器15内に移送した(:薬液移送工程1、薬液移送時間15sec)。この際、膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態であった。
次に、圧縮気体供給部33から圧縮空気を密閉容器15内に供給し、圧縮空気で押し出すようにして、密閉容器15内、ヘッダー管12内、膜モジュール11の1次側11a内の薬液全量を、密閉容器15から膜モジュール11方向に移送してヘッダー管13内に移送した(:薬液移送工程2、薬液移送時間15sec)。この際、膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態であった。
このようにして薬液移送工程1と薬液移送工程2を交互に繰り返した後(繰り返し回数120回、繰り返し時間:60min)、圧縮気体供給部33から圧縮空気をヘッダー管14内に供給し、圧縮空気で押し出すようにして、ヘッダー管14及び膜モジュール11の2次側11bに充填されていた洗浄薬液を膜モジュール11に供給し、該膜モジュール11内において、洗浄薬液を2次側11bから1次側11aに流通させた後、系外に排出させた(処理時間:30sec)。
そして、被処理液(工場廃水処理水)を系内に流通させてリンスを行った。
【0061】
(実施例2)
実施例1を約3ヶ月間継続した後、実施例1で処理した膜モジュールに対して実施例2の薬液洗浄処理を行った。この期間の膜モジュール有効圧力の経時変化を図3に示す。
実施例2では、薬液移送工程1と薬液移送工程2の繰り返し回数を60回、繰り返し時間を30minとした以外は、実施例1と同様に行った。
【0062】
(比較例1)
比較例1では、従来行われていた薬液循環洗浄方法を実施した。すなわち、実施例1で使用した薬液洗浄設備付膜ろ過装置から薬液洗浄設備を取り外し、ヘッダー管12とヘッダー管14に薬液循環タンク(循環タンク液量50L/min)及び循環ポンプを連通し、ヘッダー管12、膜モジュール11及びヘッダー管14に薬液を循環させる処理を行った(系内薬液量:90L、循環薬液流量:15L/min、循環時間:60min)。
【0063】
具体的には、実施例1と同様に既存の工場の廃水処理水を被処理水として膜ろ過処理(ろ過Flux:1.0m/day、ろ過サイクル:30min/Cycle)を行うと共に、1Cycleに一度の頻度で逆洗を行い(逆洗Flux:3.0m/day、逆洗時間:30sec)、さらに膜モジュール有効圧力が100kPaに達した時点で、上記の薬液循環洗浄処理を実施するようにして、約3ヶ月間継続した。この期間の膜モジュール有効圧力の経時変化を図4に示す。
この際、実施例1同様に、塩酸を溶解した洗浄薬液(500mg/L、pH:1.5)による酸性薬液洗浄を実施し、リンス終了後(使用水:被処理水)、続いて苛性ソーダを溶解した洗浄薬液(500mg/L、pH:12.2)によりアルカリ性薬液洗浄を実施し、これら酸性薬液洗浄1回とアルカリ性薬液洗浄1回をまとめて1回の薬液洗浄としカウントした。
【0064】
(実施例3)
上記のように比較例1を約3ヶ月間継続した後、比較例1で処理した膜モジュールに対して実施例1と同様に薬液洗浄処理を行った。この期間の膜モジュール有効圧力の経時変化を図4に示す。
【0065】
(結果)
図3から分かるように、実施例1によれば、薬品洗浄直後の温度補正有効圧力は3回の薬品洗浄において、ほぼ通水開始時の値まで回復した。更に3回実施した薬品洗浄において、その薬品洗浄間隔は全て27日前後であり、洗浄間隔が短くなる現象はほとんど認められず、良好な洗浄性能が得られた。
実施例2では、繰り返し洗浄時間を30minとして薬品洗浄を実施し、洗浄時間を実施例1に比べて短縮したにもかかわらず、実施例1と同様、良好な洗浄性能が得られ、非常に洗浄効率の良い洗浄設備および洗浄方法であることが認められた。
【0066】
比較例1では、従来の薬品循環洗浄を行った結果、図5から分かるように、洗浄間隔は13日程度と、実施例と比べ明らかに短く、かつ薬品洗浄直後の温度補正圧力は徐々に上昇した。
そして、実施例3では、比較例1として実施した通水試験後の膜モジュールに対して、実施例1の薬品洗浄条件で薬品洗浄を行い、その後通水を再開した。その結果、薬品洗浄直後の温度補正有効圧力は比較例の時よりも回復し、かつその後の通水において圧力上昇は緩やかになった。このことから、本発明による洗浄設備および洗浄方法は、より非常に洗浄効果の高い方法であることが分かる。
【0067】
以上、実施例および比較例からも分かるように、本発明の薬品洗浄設備および薬品洗浄方法は、極めて良好な洗浄効果を示し、更に装置としてシンプルな構造、省スペース、省電力、そしてスケールメリットをも得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 本膜ろ過装置
11 膜モジュール
11a 1次側
11b 2次側
12、13,14 ヘッダー管
15 密閉容器
16被処理水供給経路
18 逆洗水排水経路
19 被処理水供給部
20 供給ポンプ
21 逆洗排水手段
22 逆洗排水経路
23 逆洗排水手段
24 処理済水排水経路
26 逆洗水供給経路
27 逆洗水供給部
28 逆洗ポンプ
30 洗浄薬液供給部
31 薬液流通経路
17,25,32,34、35,36 圧縮気体供給経路
33 圧縮気体供給部
37、39、41 開閉弁
38、40 大気開放手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のケーシング型膜モジュール11と、各膜モジュール11の1次側11aの上流に連通したヘッダー管12と、各膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13と、各膜モジュール11の2次側11bの下流に連通したヘッダー管14とを備えた膜ろ過装置の洗浄方法であって、
膜モジュール11内及びヘッダー管13内に洗浄薬液を充填した後、
膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、前記の充填された洗浄薬液を、ヘッダー管13から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液を、膜モジュール11の1次側11aの上流に連通した密閉容器15内に移送する薬液移送工程1と、
膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、前記密閉容器15内の洗浄薬液を、密閉容器15から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液をヘッダー管13内に移送する薬液移送工程2と、を交互に繰り返すことを特徴とする膜ろ過装置の洗浄方法。
【請求項2】
複数本のケーシング型膜モジュール11と、各膜モジュール11の1次側11aの上流に連通したヘッダー管12と、各膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13と、各膜モジュール11の2次側11bの下流に連通したヘッダー管14とを備えた膜ろ過装置の洗浄方法であって、
ヘッダー管14の下流側に連通した洗浄薬液供給部30から洗浄薬液を移送して、ヘッダー管14内、膜モジュール11内、ヘッダー管12内及びヘッダー管13内に洗浄薬液を充填した後、
膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、前記の充填された洗浄薬液を、ヘッダー管13から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液を、ヘッダー管12を通じて該ヘッダー管12に連通した密閉容器15内に移送する薬液移送工程1と、
膜モジュール11の1次側11a及び2次側11bに常に洗浄薬液が存在する状態で、充填された洗浄薬液を、密閉容器15から膜モジュール11方向に移送して、膜モジュール11のろ過膜と洗浄薬液を連続的に接触させ、該接触後の洗浄薬液をヘッダー管13内に移送する薬液移送工程2と、を交互に繰り返すことを特徴とする膜ろ過装置の洗浄方法。
【請求項3】
薬液移送工程1と薬液移送工程2とを交互に繰り返した後、汚染物質が溶解していない洗浄薬液を膜モジュール11に供給し、該膜モジュール11内において洗浄薬液を2次側11bから1次側11aに流通させた後、系外に排出することを特徴とする請求項1又は2に記載の膜ろ過装置の洗浄方法。
【請求項4】
薬液移送工程1と薬液移送工程2とを交互に繰り返した後、ヘッダー管14及び膜モジュール11の2次側11bに充填されていた洗浄薬液を膜モジュール11に供給し、該膜モジュール11内において、洗浄薬液を2次側11bから1次側11aに流通させた後、系外に排出することを特徴とする請求項2に記載の膜ろ過装置の洗浄方法。
【請求項5】
洗浄薬液として、酸、アルカリ、酸化剤、還元剤の少なくとも1種類以上が溶解した2種類以上の洗浄薬液を用意し、そのうちの1種類の洗浄薬液による洗浄方法を実施した後、異なる種類の洗浄薬液による洗浄方法を実施することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の膜ろ過装置の洗浄方法。
【請求項6】
複数本のケーシング型膜モジュール11と、各膜モジュール11の1次側11aの上流に連通したヘッダー管12と、各膜モジュール11の1次側11aの下流に連通したヘッダー管13と、各膜モジュール11の2次側11bの下流に連通したヘッダー管14とを備えた膜ろ過装置用の洗浄設備であって、
ヘッダー管14に連通した洗浄薬液供給部30と、ヘッダー管12に連通した密閉容器15と、該密閉容器15、前記ヘッダー管13及びヘッダー管14に圧縮気体を供給し得る圧縮気体供給部33と、を備えた洗浄設備。
【請求項7】
前記密閉容器を管状に形成し、ヘッダー管12、ヘッダー管13及びヘッダー管14のいずれかと平行に当該密閉容器を並設することを特徴とする請求項6に記載の洗浄設備。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の洗浄設備を備えた膜ろ過装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−120936(P2012−120936A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271135(P2010−271135)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【Fターム(参考)】