説明

膜分離装置、膜分離装置の運転管理方法

【課題】ペルトン水車を用いたときより、高い効率で逆浸透膜カートリッジからのリジェクトが有するエネルギーを回収でき、造水性能(脱塩率)の維持、適切な逆浸透膜の洗浄タイミング及びエネルギー回収装置の故障を判断できる膜分離装置とその運転管理方法を提供すること。
【解決手段】逆浸透膜カートリッジ4より濃縮水を導入し、供給される原水の一部を加圧する容積形エネルギー回収装置5を用い、加圧された原水を高圧ポンプ3と逆浸透膜カートリッジ4を接続する高圧ライン10の高圧原水に合流させる供給海水バイパスライン15と、該バイパスライン15中を流れる原水を加圧するブースタポンプ6と、逆浸透膜カートリッジ4に供給する原水流量を制御する制御手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜カートリッジに海水等の原水を高圧ポンプで加圧して供給し、淡水等の希薄水を得る膜分離装置、及びその運転管理方法にある。
【背景技術】
【0002】
上記膜分離装置を海水淡水化設備で説明すると、海水淡水化設備は主として、前処理装置、高圧ポンプ、逆浸透膜カートリッジから構成されている。取水された海水は、前処理装置により一定水質の条件に整えられた後、高圧ポンプにより加圧され、逆浸透膜カートリッジへと圧送される。逆浸透膜カートリッジ内の高圧海水の一部は逆浸透圧に打ち勝って逆浸透膜を通過し、塩分が除去された淡水として取り出される。その他の海水は、塩分濃度が高くなり濃縮された状態で逆浸透膜カートリッジからリジェクトとして排出される。海水淡水化設備における最大の運用コストである使用する電力の半分以上は、高圧ポンプによる海水の加圧に費やされる。従って、逆浸透膜カートリッジから排出された高塩分濃度のリジェクトが保有する圧力エネルギーを回収する方法が、特許文献1乃至3等で紹介されている。
【0003】
上記特許文献1乃至3に示す膜分離装置では、エネルギー回収にペルトン水車を用い流量制御弁を介して逆浸透膜カートリッジからのリジェクトをペルトン水車に供給し、この水車の回転力で、高圧ポンプの回転力を助成するように構成されている。また、エネルギー回収に逆転ポンプを用いたものもある。このようにエネルギー回収にペルトン水車や逆転ポンプを用いるものはエネルギー回収効率が低いという問題があった。
【0004】
一方、容積形エネルギー回収装置(例えば、容積形ピストンポンプ)は、一般的にエネルギー回収効率が高く、海水淡水化設備のエネルギー回収装置に容積形を用いているものもある。しかしながら、エネルギー回収装置に容積形を用いた既存のものは、エネルギー回収装置自体のエネルギー回収効率や動作のみに関しての着眼に基づくものであり、逆浸透膜の浸透圧特性を考慮した流量調整を行うものではなかった。また、エネルギー回収装置に容積形を用いた場合、故障項目としては回収装置内での濃縮水の漏れが考えられる。濃縮水の漏れが多くなると相対的に脱塩率は下がり海水淡水化設備の性能の低下に繋がる。
【0005】
また、従来の逆浸透膜カートリッジを用いた海水淡水化装置では、逆浸透膜カートリッジの逆浸透膜は運転時間の経過と伴に蓄積物が堆積し、膜特性が低下していくため洗浄が必要であるが、洗浄のタイミングは個々の作業者の判断に任されており、逆浸透膜の劣化により洗浄を必要とする適切な時期に行われていなかった。
【特許文献1】特開昭59−189910号公報
【特許文献2】特開昭59−199004号公報
【特許文献3】国際公開第1985/001221号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、エネルギー回収にペルトン水車や逆転ポンプを用いたときより、高い効率で逆浸透膜カートリッジからの濃縮水(リジェクト)が有するエネルギーを回収でき、脱塩水性能(脱塩率)の維持、適切な逆浸透膜の洗浄タイミングとエネルギー回収装置の故障の判断ができる膜分離装置、膜分離装置の運転管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、供給された原水を加圧する高圧ポンプと、逆浸透膜カートリッジと、逆浸透膜カートリッジより濃縮水側下流に配置したエネルギー回収手段とを備え、高圧ポンプで加圧された高圧原水を逆浸透膜カートリッジに導入し、希薄水と濃縮水に分離する膜分離装置において、エネルギー回収手段として逆浸透膜カートリッジより濃縮水を導入し、供給される原水の一部を加圧する容積形エネルギー回収装置を用い、容積形エネルギー回収装置で加圧された原水を高圧ポンプと逆浸透膜カートリッジを接続する高圧ラインを流れる高圧原水に合流させるバイパス管と、バイパス配管の途中に設けられ該バイパス配管中を流れる原水を加圧するブースタポンプと、逆浸透膜カートリッジに供給される原水流量を制御する原水流量制御手段と、当該膜分離装置の各部の状態を検出する状態検出手段と、状態検出手段が検出した各部の不具合に応じて対応する不具合対応制御手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記膜分離装置において、原水流量制御手段は、高圧ポンプ及び/又はブースタポンプの回転数を制御して逆浸透膜カートリッジに供給される原水流量を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記膜分離装置において、高圧ライン、バイパスライン、逆浸透膜カートリッジから吐出された濃縮水を容積形エネルギー回収装置に導く濃縮ライン、該容積形エネルギー回収装置から濃縮水を排水する排水ライン、濃縮ラインから容積形エネルギー回収装置をバイパスして濃縮水を排水する濃縮水バイパスラインにそれぞれ流量制御弁を設け、原水流量制御手段は、流量制御弁の少なくとも一つを制御して逆浸透膜カートリッジに供給される原水流量を制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記膜分離装置において、希薄水の濃度を検出する第1の濃度センサ、バイパス管を流れる濃縮水の濃度を検出する第2のセンサ、供給原水の濃度を検出する第3の濃度センサ、及び原水の温度を検出するセンサを設け、状態検出手段が各センサの出力から容積形エネルギー回収装置の故障及び/又は逆浸透膜カートリッジの逆浸透膜劣化を検出する機能を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記膜分離装置において、逆浸透膜カートリッジより容積形エネルギー回収装置に導入される濃縮水を該容積形エネルギー回収装置をバイパスして排水する濃縮水バイパスラインと、該濃縮水バイパスラインに設けた流量制御弁と、を設け、状態検出手段が容積形エネルギー回収装置の故障を検出した場合、不具合対応制御手段は濃縮水バイパスラインに設けた流量制御弁を開いて濃縮水を排水することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記膜分離装置において、状態検出手段が容積形エネルギー回収装置の故障を検出した場合、不具合対応制御手段はブースタポンプを停止して、高圧ポンプのみの運転で逆浸透膜カートリッジに原水を供給することを特徴とする。
【0013】
上記のようにエネルギー回収手段として逆浸透膜カートリッジより濃縮水を導入し、供給される原水の一部を加圧する容積形エネルギー回収装置を採用することにより、逆浸透膜カートリッジから吐出された高圧濃縮水の圧力エネルギーを効果的に回収できる。
【0014】
また、例えば、状態検出手段が容積形エネルギー回収装置の故障を検出した場合、不具合対応制御手段により、濃縮水バイパスラインに設けた流量制御弁を開いて濃縮水を排水し、濃縮水が容積形エネルギー回収装置内に閉じ込められることを防止したり、ブースタポンプを停止して、高圧ポンプのみの運転で逆浸透膜カートリッジに原水を供給したり、高圧ポンプをバックアップするためのバックアップポンプがある場合はブースタポンプを停止して、バックアップポンプを運転し、高圧ポンプとバックアップポンプの運転で逆浸透膜カートリッジに原水を供給する等の対策を素早くとることができる。
【0015】
また、例えば、状態検出手段が逆浸透膜カートリッジの逆浸透膜劣化を検出した場合、適正な時期に逆浸透膜の洗浄又は交換が可能となる。
【0016】
また、本発明は、供給された原水を加圧する高圧ポンプと、逆浸透膜カートリッジと、逆浸透膜カートリッジより濃縮水側下流に配置したエネルギー回収手段とを備え、高圧ポンプで加圧された高圧原水を逆浸透膜カートリッジに導入し、希薄水と濃縮水に分離する膜分離装置の運転管理方法において、エネルギー回収手段として容積形エネルギー回収装置を用いると共に、ブースタポンプを設け、逆浸透膜カートリッジより濃縮水を容積形エネルギー回収装置に導入し、供給される原水の一部を加圧し、該加圧した原水をブースタポンプで加圧し、該加圧した原水を高圧ポンプと逆浸透膜カートリッジを接続する接続管を流れる高圧原水に合流させると共に、逆浸透膜カートリッジに供給する原水流量を制御し、当該膜分離装置の各部の状態を検出する状態検出手段で監視し、該状態検出手段が各部の不具合を検出したら不具合対応制御手段でその不具合に応じて各部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、下記のような優れた効果が期待できる。
・逆浸透膜カートリッジから吐出された高圧濃縮水の圧力エネルギーを効果的に回収できるので、膜分離装置の所要エネルギーが少なく、運用コストが安価となる。
・容積形エネルギー回収装置の故障を検出できることにより、その修理や交換等の速やかな対応が可能となる。
・逆浸透膜カートリッジの逆浸透膜の劣化が検出できるから、適切な時期にその洗浄又は交換が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。膜分離装置として海水淡水化装置を例に説明する。図1は本発明に係る海水淡水化装置の第1の態様を示す模式図である。図示するように本海水淡水化装置は、取水ポンプ1、前処理装置2、高圧ポンプ(HP)3、逆浸透膜カートリッジ4、容積形エネルギー回収装置(ER)5、ブースタポンプ(BP)6、制御装置7を備えている。
【0019】
取水ポンプ1により取水された海水100は、前処理装置2により所定の水質条件に整えられた後、供給ライン9を通って電動モータ8により駆動される高圧ポンプ(HP)3に供給され、該高圧ポンプ(HP)3で加圧され、高圧ポンプ(HP)3と逆浸透膜カートリッジ4を接続する接続管である高圧ライン10を通って逆浸透膜カートリッジ4に流入する。逆浸透膜カートリッジ4の高圧室11内の海水の一部は、逆浸透圧力に打ち勝って逆浸透膜4aを通過し、溶質(塩分)が除去され、希薄水(脱塩水)102として取り出される。その他の海水は、塩分濃度が高くなり濃縮された状態で逆浸透膜カートリッジ4から濃縮海水ライン13へ排出される。
【0020】
逆浸透膜カートリッジ4から排出された高圧の濃縮水であるリジェクト103(濃縮海水)が保有する圧力エネルギーは容積形エネルギー回収装置(ER)5に導入され、圧力エネルギーを失ったリジェクト103(濃縮海水)は、エネルギー回収された低圧濃縮海水(リジェクト)104として排水ライン14を通って廃棄される。容積形エネルギー回収装置(ER)5としては、例えば後に詳述する容積形ピストンポンプ等が使用されており、該容積形ピストンポンプで供給ライン9の海水の一部がポンプアップされ、供給海水バイパスライン15へと排出され、最終的には高圧ライン10を通る高圧海水に合流する。
【0021】
逆浸透膜カートリッジ4や濃縮海水ライン13の圧力損失、容積形エネルギー回収装置(ER)5の制御弁や切替弁等における圧力損失、エネルギー回収チャンバーと内部ピストンとの間の漏れ損失等により、供給海水バイパスライン15中の海水の圧力は高圧ライン10を通って逆浸透膜カートリッジ4に流入する海水の圧力より低い。そこで、供給海水バイパスライン15中を通る海水と高圧ライン10中を通る海水を合流させるために、供給海水バイパスライン15の途中に電動モータ16で駆動されるブースタポンプ(BP)6を設置し、上記圧力損失分だけ供給海水バイパスライン15中の海水を加圧する。このブースタポンプ(BP)6は、高圧ポンプ(HP)3に比べて小さい電気容量で供給海水バイパスライン15中を通る海水を高圧ライン10中を通る海水に合流させることができる圧力に昇圧できる。
【0022】
制御装置7には、高圧ポンプ(HP)3の吐出流量Q0-1とブースタポンプ(BP)6の吐出流量Q0-2を算出するポンプ吐出流量(供給海水流量)算出部20、理想の希薄水流量を設定希薄水量QS1として設定する希薄水流量設定部21、ブースタポンプ(BP)6の回転数を選定するBP回転数選定部22−1、及びブースタポンプ(BP)6のQ−H曲線と高圧ポンプ(HP)3のQ−H曲線を記憶する記憶部23を備えている。なお、ここでは、高圧ポンプ(HP)3の回転数を一定としブースタポンプ6の回転数を制御して所定の希薄水流量Q1を得る場合であるが、後に詳述するが図12及び図13に示すように、バルブ開度選定部22−2、22−3を設け、高圧ポンプ(HP)3及びブースタポンプ(BP)6の設定吐出流量に対してバルブの開閉度を制御する場合、図14に示すようにブースタポンプ(BP)6の回転数を一定とし、HP回転数選定部22−4を用いて高圧ポンプ(HP)3の回転数を制御する場合もある。
【0023】
ポンプ吐出流量算出部20には圧力センサ26で検出した高圧ポンプ(HP)3の吐出圧力P0-1と圧力センサ27で検出したブースタポンプ(BP)6の吐出圧力P0-2、及び圧力センサ19で検出された逆浸透膜カートリッジ4の高圧室11側の圧力P2が入力されるようになっている。ポンプ吐出水流量算出部20は逆浸透膜カートリッジ4の逆浸透膜4aの膜特性変化及び海水100中の海水溶質(塩分)濃度等を考慮し、逆浸透膜カートリッジ4で処理する希薄水流量Q1が希薄水流量設定部21で設定された設定希薄水量QS1になるように、供給海水流量(ポンプ吐出流量)Q0を算出する。即ち希薄水流量Q1が設定希薄水流量QS1になるように、高圧ポンプ(HP)3の吐出流量Q0-1とブースタポンプ(BP)6の吐出流量Q0-2を算出する。
【0024】
BP回転数選定部22−1は、記憶部23に記憶されている高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)6のQ−H曲線を参照して、ポンプ吐出流量算出部20で算出したポンプ吐出流量Q0(Q0-1+Q0-2)が得られるようにブースタポンプ(BP)6の回転数を選定する(ここでは高圧ポンプ(HP)3の吐出流量Q0-1を所定の一定値としブースタポンプ(BP)6の回転数を制御して所定のポンプ吐出流量Q0を得る)。この選定された回転数はドライバ(ここではインバータ24)を介して、電動モータ16に送られ、ブースタポンプ(BP)6は選定された回転数で回転する。
【0025】
なお、図1において、P0-1は高圧ポンプ(HP)3の吐出圧力、Q0-1は高圧ポンプ(HP)3の吐出流量、C0-1は高圧ライン10の溶質(塩分)濃度、P0-2はブースタポンプ(BP)6の吐出圧力、Q0-2はブースタポンプ(BP)6の吐出流量、C0-2は供給海水バイパスライン15の溶質(塩分)濃度、P1は逆浸透膜カートリッジ4の希薄水側(脱塩水側)圧力、Q1は希薄水(脱塩水)の流量、C1は希薄水の溶質(塩分)濃度を夫々示す。
【0026】
図2は制御装置7の機能ブロック図であり、制御装置7は、DW−T機能部7−1、ΔP−Q1機能部7−2、π−CM機能部7−3、Q−H機能部7−4を備えている。DW−T機能部7−1は、図示するように縦軸にDW/T(DWは逆浸透膜4aの水の拡散係数)を横軸に供給海水の温度Tを示すデータを備えている。ΔP−Q1機能部7−2は縦軸に逆浸透膜4aの逆浸透圧πを越える圧力ΔPを横軸に希薄水流量Q1を示すデータを備えている。π−CM機能部7−3は縦軸に浸透圧πを横軸に海水濃度CMを示すデータを備えている。Q−H機能部7−4は縦軸に高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)の合成水頭圧Hを横軸に吐出流量Qを示すデータ(Q−H曲線)を備えている。
【0027】
次に、図2の機能ブロック図に基づいて制御装置7の作用を説明する。DW−T機能部7−1はTとDW/Tの関係式曲線55から温度センサ43で検出した供給海水の温度TよりDW/Tを算出しており、逆浸透膜カートリッジ4の逆浸透膜4aの種類により定まる係数Kは下式から求まる。
K=K0(DW/T)
(但し、K0は逆浸透膜4aの種類で定まる既知の定数、DWは水の拡散係数)
ここで、設定変更前の吐出圧力(供給海水圧力)P0が仮設定されている。
また、π−CM機能部7−3は、上記のように縦軸に浸透圧πを横軸に海水溶質(塩分)濃度CMを示しており、曲線54は海水溶質(塩分)濃度CMと浸透圧πの関係を示す。曲線54の関係から海水溶質(塩分)濃度CMが求まれば、供給海水の海水浸透圧πMが求まる。
【0028】
また、逆浸透膜カートリッジ4の供給側の海水溶質(塩分)濃度CMは、近似的にCM≒(C0+C2)/2で定まる。海水溶質(塩分)濃度C0、濃縮海水溶質(塩分)濃度C2は回収率Q1/Q0が著しく変化しない限り、上記近似式でよい。従って、逆浸透膜カートリッジ4に供給される海水の海水溶質(塩分)濃度C0、濃縮海水溶質(塩分)濃度C2は特に装置の通常運転中は定数とみなすことができる。
【0029】
また、π−CM機能部7−3とQ−H機能部7−4は縦軸が同スケールで示してあり、逆浸透膜カートリッジ4の供給側圧力PMは仮設定した吐出圧力P0から逆浸透膜カートリッジ4での供給側高圧ライン10の海水の管路による損失ヘッドPL1を減じたものである。逆浸透膜カートリッジ4の希薄水側圧力P1は略一定であり、また希薄水の溶質(塩分)濃度C1は一定とみてよいから希薄水の浸透圧π1は一定としてよい。そこで逆浸透圧ΔPは、
ΔP=(PM−P1)−(πM−π1
と算出される。(この関係はπ−CM機能部7−3とQ−H機能部7−4の間に取り出して示している)
【0030】
ΔP−Q1機能部7−2はπ−CM機能部7−3とQ−H機能部7−4と縦軸のスケールを等しくしており、逆浸透膜カートリッジ4の希薄水流量Q1は、直線56で示される下記式で求まる。
1=AMKΔP (1)
(但し、AMは逆浸透膜4aの面積、ΔPは逆浸透膜カートリッジ4に供給される海水の浸透圧πMを越える逆浸透膜4a近傍の圧力である)
【0031】
制御装置7のQ−H機能部7−4は、縦軸に圧力Hを横軸に流量Qを示したものであり、ポンプのQ−H曲線(図3に詳細を示すように、合成Q−H曲線53、53’は高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)6の合成Q−H曲線を、曲線51は高圧ポンプ(HP)3のQ−H曲線を、曲線52、曲線52’はブースタポンプ(BP)6のQ−H曲線)と、逆浸透膜カートリッジ4への吐出圧力P0に対応する逆浸透圧カートリッジ4の希薄水流量Q1の曲線57を同スケールで示した図となっている。
【0032】
制御装置7で逆浸透膜カートリッジ4に供給する供給海水流量Q0を制御する制御処理手順を説明する。ここでは、高圧ポンプ(HP)3の回転数を一定とし、ブースタポンプ(BP)6の吐出流量、即ちブースタポンプ(BP)6の回転数を制御して逆浸透膜カートリッジ4に供給する海水の流量を制御する処理手順である。
【0033】
(ステップST1)
先ず、理想の希薄水流量Q1(=QS1)を希薄水流量設定部21から設定する。
【0034】
(ステップST2)
次に、ブースタポンプ(BP)6の回転数Nが仮定される。図3はQ−H機能部7−4の詳細を示す図である。ここでは、逆浸透膜カートリッジ4に供給する海水の流量制御を高圧ポンプ(HP)3の回転数を固定とし、ブースタポンプ(BP)6の回転数Nを変えることで行う場合のQ−H曲線を示している。図示するように、高圧ポンプ(HP)3の回転数を固定したQ−H曲線51に対して、ブースタポンプ(BP)6の(濃縮海水ライン13側圧力を含めた)Q−H曲線を曲線52から曲線52’に変えると高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)6の合成したQ−H曲線は合成Q−H曲線53から合成Q−H曲線53’へと変化する。
【0035】
(ステップST3)
上記式(1)により算出された希薄水流量Q1をQ1CALCとする。
【0036】
(ステップST4)
上記設定した設定希薄水流量QS1の値と上記算出した希薄水流量Q1CALCとを比較する。そしてこの誤差が大きいときは上記ステップST2に戻りブースタポンプ(BP)6の回転数Nを再仮定してステップST2〜ST4をループとして繰り返し、希薄水流量Q1と算出した希薄水流量Q1CALCの誤差が小さくなるまで繰り返す。つまり、先にステップST2で仮定した吐出圧力P0で求まるQ1CALCが、Q1CALC−QS1>0になるときは、再仮定の吐出圧力P0を小さくするように、Q1CALC−QS1<0になるときは、再仮定の吐出圧力P0の値が大きくなるようにブースタポンプ(BP)6の回転数Nを変更し、Q−H曲線を曲線52から曲線52’と変化することで全体のQ−H曲線(合成Q−H曲線)を曲線53から曲線53’にし、吐出圧力P0を曲線57において設定値QS1になるような値に持っていく。また、吐出圧力P0を曲線57において希薄水流量の最大値Q1maxになる吐出圧力値P01に持っていくことにより、希薄水流量を最大値Q1maxにすることができる。
【0037】
逆浸透膜カートリッジ4に供給する吐出圧力P0が曲線57に対して上記設定した希薄水流量QS1になるようにするために、具体的な制御方法としてはBP回転数選定部22−1により、ブースタポンプ(BP)6の回転数を選定し、ドライバ24(ここではインバータ)に出力する。ドライバ24は電動モータ16の回転数を制御してブースタポンプ(BP)6の回転数を制御し、回転数Nを変化させブースタポンプ(BP)6のQ−H曲線が曲線52から曲線52’と変化することで、相対的に全体のQ−H曲線も曲線53から曲線53’に変化する。
【0038】
上記のように制御装置7は希薄水流量Q1の値を設定すると供給海水の濃度と浸透圧の関係が定まっているため、高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)6の合成Q−H曲線をブースタポンプ(BP)6の回転数を変更する事で任意に設定した希薄水の流量に合わせることができる。つまり高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)6の運転点と希薄水流量Q1との関係は一義的に決定される。また、希薄水流量Q1の設定値を逆浸透膜カートリッジ4(逆浸透膜4a)の曲線57における希薄水流量の最大値Q1max点に合せると、該最大値Q1max点での希薄水流量が得られる。
【0039】
図4は容積形エネルギー回収装置(ER)5の一例として、容積形のピストンポンプの構成例を示す図である。容積形のピストンポンプ30は制御切替弁31、切替弁32、2個のエネルギー回収チャンバー33、34を備えている。制御切替弁31の流入口には濃縮海水ライン13が接続され、流出口には排水ライン14が接続されている。また、切替弁32の流入口には供給ライン9が接続され、流出口には供給海水バイパスライン15が接続されている。
【0040】
上記構成の容積形ピストンポンプ30において、制御切替弁31を図4(a)に示すように切り替えると、濃縮海水ライン13からの高圧のリジェクト(濃縮海水)103はエネルギー回収チャンバー33に流入し、ピストン33aを矢印Bの方向に押圧移動させると共に、該エネルギー回収チャンバー33の内に供給ライン9及び切替弁32を通って供給されていた海水は、ピストン33aに押圧されてリジェクト103(濃縮海水)とほぼ同じ圧力に加圧され切替弁32を通って、供給海水バイパスライン15に吐出される。一方、供給海水バイパスライン15に圧力エネルギーを伝達したエネルギー回収チャンバー34には、供給ライン9の海水が切替弁32を通って流入し、ピストン34aを矢印Cの方向に押圧移動させると共に、圧力の消失したリジェクト(濃縮海水)104は排水ライン14に吐出される。
【0041】
制御切替弁31を図4(b)に示すように切り替えると、濃縮海水ライン13からの高圧のリジェクト(濃縮海水)103はエネルギー回収チャンバー34に流入し、ピストン34aを矢印Fの方向に押圧移動させると共に、該エネルギー回収チャンバー34の内の海水は、ピストン34aに押圧されてリジェクト(濃縮海水)103とほぼ同じ圧力に加圧され切替弁32を通って、供給海水バイパスライン15に吐出される。一方供給ライン9の海水は切替弁32を通ってエネルギー回収チャンバー33に流入し、ピストン33aを矢印Eの方向に押圧移動させると共に、圧力の消失したリジェクト(濃縮海水)104は排水ライン14に吐出される。
【0042】
上記のように、逆浸透膜カートリッジ4や濃縮海水ライン13の圧力損失、容積形エネルギー回収装置(ER)5である容積形ピストンポンプ30の制御切替弁31や切替弁32等における圧力損失、エネルギー回収チャンバー33、34と内部ピストン33a、34aとの間の漏れ損失等により、供給海水バイパスライン15中の海水の圧力は高圧ライン10を通って逆浸透膜カートリッジ4に流入する海水の圧力より低い。ブースタポンプ6は供給海水バイパスライン15中の海水を加圧してこの圧力損失を補償し、高圧ライン10中の海水と合流させるために設けられている。従って、ブースタポンプ6は高圧ポンプ3より小さい電気容量のポンプで済む。
【0043】
上記構成の海水淡水化装置において、逆浸透膜カートリッジ4の逆浸透膜4aの脱塩率は、膜特性、即ち温度、圧力、透過流量から予測される。また、容積形エネルギー回収装置(ER)5の構造上の特徴として、上記容積形ピストンポンプ30のように、濃縮海水と供給海水とを隔離する工夫はなされているが、ピストン33a、34a等の要素の磨耗等により漏れを完全に持続的に封止することが難しい。また、水質管理のため、逆浸透膜カートリッジ4の希薄水側(脱塩水側)12に塩分検出器として例えば導電率計40を設けて塩分をモニターし、希薄水(脱塩水)102の脱塩率を監視している。経年変化の影響の少ない設置初期において、脱塩率が予測された値よりも低下した場合は容積形エネルギー回収装置(ER)5における故障(濃縮海水の漏れ)による急増の可能性が高い。
【0044】
また、補助測定として供給ライン9、供給海水バイパスライン15にも塩分検出器として導電率計41、42を設けて、後に詳述するように、脱塩水側の導電率計40で測定した塩分とを照合することにより、容積形エネルギー回収装置(ER)5の漏れ状況を把握できる。そして規定値以上に脱塩率が予測値と離れた場合は、軽故障表示と共に、BP回転数選定部22−1ではブースタポンプ(BP)6の回転数を減らして供給海水バイパスライン15側の水量を減らす制御を行う。また、逆浸透膜カートリッジ4の経年変化による膜の劣化(逆浸透膜4aには時の経過と共に、蓄積物が堆積し膜特性(脱塩能力)が低下する)に関しても、後に詳述するように判定することが可能であり、逆浸透膜4aの洗浄時期(又は交換時期)を自動的に設定することができる。
【0045】
図5は高圧ライン10に設けた温度センサ43、逆浸透膜カートリッジ4の脱塩水側に設けた導電率計40、供給ライン9に設けた導電率計41、供給海水バイパスライン15に設けた導電率計42の出力により、容積形エネルギー回収装置(ER)の故障、逆浸透膜4aの膜の劣化を検出するための処理フローを示す図である。逆浸透膜カートリッジ4の回収率(%)、塩透過比率(%)、脱塩率(%)は下式で表される。
回収率(%)={(希薄水流量)/(供給海水流量)}×100
塩透過比率(%)={(希薄水の溶質(塩分)濃度)/(供給海水溶質(塩分)濃度)}×100
脱塩率(%)=100−塩透過比率
また、逆浸透膜は温度によって希薄水流量及び脱塩率が図6に示すように変化する。なお、温度が上昇すると希薄水(脱塩水)流量及び塩透過比率は上昇する性質を持っている。
【0046】
図5において、温度センサ43による高圧ライン10中の海水検出温度と、圧力センサ26、27によって高圧ライン10及び供給海水バイパスライン15の圧力を測定する(ステップST11)。次に記憶部23に記憶されている高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)6のQ−H曲線を参照して、上記ステップST11で測定された高圧ライン10及び供給海水バイパスライン15の圧力から高圧ポンプ(HP)3とブースタポンプ(BP)6のそれぞれの流量を算出する(ステップST12)。次に図6に示すような、逆浸透膜カートリッジ4の逆浸透膜4aの膜特性(脱塩率vs温度・圧力)を予め保存してあったデータから取得し(ステップST13)、制御装置7によって各(ポンプの吐出及び希薄水の)流量は想定される。よって上記膜特性と海水検出温度、各流量のデータから溶質(塩分)濃度CCALを算出(ステップST14)する。次に導電率計40の出力より実際の希薄水の溶質(塩分)濃度C1を算出する(ステップST15)。続いて|CCAL−C1|>閾値かを判断し(ステップST16)、Noであったら正常とする(ステップST17)。
【0047】
Yesであったら、導電率計41及び導電率計42の出力により、供給海水バイパスライン15及び供給ライン9の海水の夫々溶質(塩分)濃度C0-2、C0-1を測定し(ステップST18)、続いて|C0-2−C0-1|>閾値で、且つ(C0-2−C0-1)>0かを判断し(ステップST19)、Noであったら逆浸透膜カートリッジ4の逆浸透膜4aの膜劣化とし(ステップST20)、Yesであったら、容積形エネルギー回収装置(ER)の故障とする(ステップST21)。この逆浸透膜カートリッジ4の逆浸透膜4aの膜劣化、及び容積形エネルギー回収装置(ER)の故障は図示しない表示装置や警報装置で警報すると共に、逆浸透膜4aの劣化の場合はその洗浄(又は場合によっては交換)をし、容積形エネルギー回収装置(ER)5の故障の場合は、修理や交換、更には下記の対策を採る。
【0048】
(容積形エネルギー回収装置(ER)の故障の場合の対策)
高圧ポンプ(HP)3がブースタポンプ(BP)6分の流量が減っても対応可能な設計仕様となっている場合は、ブースタポンプ(BP)6の吐出側に設けたバルブV3を閉じると共に、濃縮海水排水バイパスライン17のバルブV5を開いて、図7に示すように希薄水流量(脱塩水量)の制御目標値Q1を、容積形エネルギー回収装置(ER)5が故障と判定された時点T1でQ2にまで下げる。即ち、図8の破線で示すように、(系全体としては)高圧ポンプ(HP)3+ブースタポンプ(BP)6の揚程曲線(HP+BP)の運転していたものを、実線で示すように、高圧ポンプ(HP)3のみの揚程曲線(HP)の運転に切り換える。
【0049】
高圧ポンプ(HP)3をバックアップするため、図11に示すように電動モータ29で駆動されるバックアップ用高圧ポンプ(BHP)28が備わっている場合は、容積形エネルギー回収装置(ER)5が故障と判定された時点T1で、バルブV3を閉じて図9に示すように、バックアップ用高圧ポンプ(BHP)28を運転する。即ち、図10の実線で示す高圧ポンプ(HP)3の揚程曲線の運転(バルブV3を閉じ、バルブV5を開いて高圧ポンプ(HP)3による運転状態)から、点線で示す高圧ポンプ(HP)3+バックアップ用高圧ポンプ(BHP)28の揚程曲線(HP+BHP)の運転とする。
【0050】
なお、脱塩率の誤差から容積形エネルギー回収装置(ER)5からの漏れ量を推定することができる。従って、容積形エネルギー回収装置(ER)5において、予め漏れ量と封止部分の磨耗量との関係をデータベース化しておけば容積形エネルギー回収装置(ER)5の交換及び修繕時期が予測可能となる。
【0051】
上記実施形態例では、ドライバ(ここではインバータ)24により、電動モータ16の回転数、即ちブースタポンプ(BP)6の回転数を制御する場合を示したが、図12に示すようにドライバ24により、濃縮海水ライン13に設けた流量調整用のバルブ(流量制御弁)V1、排水ライン14に設けた流量調整用のバルブ(流量制御弁)V2、供給海水バイパスライン15に設けた流量調整用のバルブ(流量制御弁)V3、及び高圧ライン10に設けた流量調整用のバルブ(流量制御弁)V4の開度を制御して、その流量を制御してもよい。また、図13に示すように、濃縮海水ライン13中を流れる濃縮海水を容積形エネルギー回収装置(ER)5をバイパスして排水する濃縮海水排水バイパスライン17を設け、該濃縮海水バイパスライン17に流量を調整するバルブ(流量制御弁)V5を設け、ドライバ24で該バルブV5の開度を制御して容積形エネルギー回収装置(ER)5に導入する濃縮海水流量を制御するようにしてもよい。
【0052】
更に、図14に示すようにドライバ(ここではインバータ)24により高圧ポンプ(HP)3を駆動する電動モータ8の回転数を制御して、高圧ポンプ(HP)3から吐出される海水流量(逆浸透膜カートリッジ4に供給する海水流量)を制御してもよい。図15に示すように、ブースタポンプ(BP)6のQ−H曲線52に対して、高圧ポンプ(HP)3のO−H曲線を51から51’に変化させた場合、ブースタポンプ(BP)6と高圧ポンプ(HP)3の合成O−H曲線は53から53’となる。目標の希薄水流量(目標の脱塩水流量)Q1の設定値を逆浸透膜カートリッジ4の逆浸透膜4aの曲線57の希薄水の最大値Q1MAXに合わせることにより、逆浸透膜カートリッジ4を逆浸透膜4aの最大希薄水点で運転できる。
【0053】
なお、上記例では膜分離装置の各部の状態を検出する状態検出手段として、高圧ライン10に設けた温度センサ43、逆浸透膜カートリッジ4の脱塩水側に設けた導電率計40、供給ライン9に設けた導電率計41、供給海水バイパスライン15に設けた導電率計42の出力を監視し、容積形エネルギー回収装置(ER)の故障、逆浸透膜4aの膜劣化を検出する例を示したが、状態検出手段はこれに限定されるものではなく、膜分離装置の他の部分を監視するためのセンサを設け、その出力から各部の状態を検出するようにしてもよい。また、不具合対応制御手段も、容積形エネルギー回収装置(ER)の故障、逆浸透膜4aの膜劣化に対応するものではなく、他の部分の不具合に対応できるようにしてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。また、上記実施形態では容積形エネルギー回収装置(ER)5として容積形ピストンポンプ30を説明したが、容積形エネルギー回収装置(ER)5は容積形ピストンポンプに限定されるものではなく、例えば特表2004−500502号公報に開示されている圧力交換装置でもよい。即ち、限られた空間内でエネルギー伝達をしている装置であれば、どのようなものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る海水淡水化装置の第1の態様を示す模式図である。
【図2】本発明に係る海水淡水化装置の制御装置の機能ブロック図である。
【図3】高圧ポンプ(HP)とブースタポンプ(BP)のQ−H曲線を示す図である。
【図4】容積形エネルギー回収装置として容積形ピストンポンプの構成例を示す図である。
【図5】逆浸透膜の劣化及び容積形エネルギー回収装置の故障判定の処理フローを示す図である。
【図6】逆浸透膜の希薄水流量と脱塩率と温度の関係を示す図である。
【図7】容積形エネルギー回収装置の故障の対策例を説明するための図である。
【図8】容積形エネルギー回収装置の故障の対策例を説明するための図である。
【図9】容積形エネルギー回収装置の故障の対策例を説明するための図である。
【図10】容積形エネルギー回収装置の故障の対策例を説明するための図である。
【図11】本発明に係る海水淡水化装置の第2の態様を示す模式図である。
【図12】本発明に係る海水淡水化装置の第3の態様を示す模式図である。
【図13】本発明に係る海水淡水化装置の第4の態様を示す模式図である。
【図14】本発明に係る海水淡水化装置の第5の態様を示す模式図である。
【図15】高圧ポンプ(HP)とブースタポンプ(BP)のQ−H曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 取水ポンプ
2 前処理装置
3 高圧ポンプ(HP)
4 逆浸透膜カートリッジ
4a 逆浸透膜
5 容積形エネルギー回収装置(ER)
6 ブースタポンプ(BP)
7 制御装置
7−1 DW−T機能部
7−2 ΔP−Q1機能部
7−3 π−CM機能部
7−4 Q−H機能部
8 電動モータ
9 供給ライン
10 高圧ライン
11 高圧室
12 希薄水側
13 濃縮海水ライン
14 排水ライン
15 供給海水バイパスライン
16 電動モータ
17 濃縮水バイパスライン
19 圧力センサ
20 ポンプ吐出流量算出部
21 希薄水流量設定部
22−1 BP回転数選定部
22−2 バルブ開度選定部
22−3 バルブ開度選定部
22−4 HP回転数選定部
23 記憶部
24 ドライバ
26,27 圧力センサ
28 バックアップ用高圧ポンプ(BHP)
29 電動モータ(BHP用)
30 容積形のピストンポンプ
31 制御切替弁
32 切替弁
33,34 エネルギー回収チャンバー
33a,34aピストン
40〜42 導電率計
43 温度センサ
0 海水溶質(塩分)濃度
1 希薄水の溶質(塩分)濃度
2 濃縮海水の溶質(塩分)濃度
M 海水溶質(塩分)濃度
0 吐出圧力(供給海水圧力)
1 逆浸透膜カートリッジ4の希薄水側(脱塩水側)圧力
2 逆浸透膜カートリッジ4の濃縮海水側圧力
M 逆浸透膜カートリッジ4の供給側圧力
0 供給海水流量(ポンプ吐出流量),合成吐出流量
1 希薄水流量(脱塩水流量)
2 濃縮海水流量
1MAX 最大の希薄水流量
0-1 高圧ライン10の溶質(塩分)濃度
0-2 供給海水バイパスライン15の溶質(塩分)濃度
0-1 高圧ポンプ(HP)3の吐出圧力
0-2 ブースタポンプ(BP)6の吐出圧力
0-1 高圧ポンプ(HP)3の吐出流量
0-2 ブースタポンプ(BP)6の吐出流量
T 海水温度
V1〜V5 バルブ(流量制御弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された原水を加圧する高圧ポンプと、逆浸透膜カートリッジと、前記逆浸透膜カートリッジより濃縮水側下流に配置したエネルギー回収手段とを備え、前記高圧ポンプで加圧された高圧原水を前記逆浸透膜カートリッジに導入し、希薄水と濃縮水に分離する膜分離装置において、
前記エネルギー回収手段として前記逆浸透膜カートリッジより濃縮水を導入し、前記供給される原水の一部を加圧する容積形エネルギー回収装置を用い、
前記容積形エネルギー回収装置で加圧された原水を前記高圧ポンプと前記逆浸透膜カートリッジを接続する高圧ラインを流れる高圧原水に合流させるバイパス管と、
前記バイパス配管の途中に設けられ該バイパス配管中を流れる原水を加圧するブースタポンプと、
前記逆浸透膜カートリッジに供給される原水流量を制御する原水流量制御手段と、
当該膜分離装置の各部の状態を検出する状態検出手段と、
前記状態検出手段が検出した各部の不具合に応じて対応する不具合対応制御手段を設けたことを特徴とする膜分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の膜分離装置において、
前記原水流量制御手段は、高圧ポンプ及び/又はブースタポンプの回転数を制御して前記逆浸透膜カートリッジに供給される原水流量を制御することを特徴とする膜分離装置。
【請求項3】
請求項1に記載の膜分離装置において、
前記高圧ライン、前記バイパスライン、前記逆浸透膜カートリッジから吐出された濃縮水を前記容積形エネルギー回収装置に導く濃縮ライン、該容積形エネルギー回収装置から濃縮水を排水する排水ライン、前記濃縮ラインから前記容積形エネルギー回収装置をバイパスして濃縮水を排水する濃縮水バイパスラインにそれぞれ流量制御弁を設け、
前記原水流量制御手段は、前記流量制御弁の少なくとも一つを制御して前記逆浸透膜カートリッジに供給される原水流量を制御することを特徴とする膜分離装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の膜分離装置において、
前記希薄水の濃度を検出する第1の濃度センサ、前記バイパス管を流れる濃縮水の濃度を検出する第2のセンサ、前記供給原水の濃度を検出する第3の濃度センサ、及び前記原水の温度を検出するセンサを設け、
前記状態検出手段が前記各センサの出力から前記容積形エネルギー回収装置の故障及び/又は前記逆浸透膜カートリッジの逆浸透膜劣化を検出する機能を備えていることを特徴とする膜分離装置。
【請求項5】
請求項4に記載の膜分離装置において、
前記逆浸透膜カートリッジより前記容積形エネルギー回収装置に導入される濃縮水を該容積形エネルギー回収装置をバイパスして排水する濃縮水バイパスラインと、該濃縮水バイパスラインに設けた流量制御弁と、を設け、
前記状態検出手段が前記容積形エネルギー回収装置の故障を検出した場合、前記不具合対応制御手段は前記濃縮水バイパスラインに設けた流量制御弁を開いて前記濃縮水を排水することを特徴とする膜分離装置。
【請求項6】
請求項5に記載の膜分離装置において、
前記状態検出手段が前記容積形エネルギー回収装置の故障を検出した場合、前記不具合対応制御手段は前記ブースタポンプを停止して、前記高圧ポンプのみの運転で前記逆浸透膜カートリッジに原水を供給することを特徴とする膜分離装置。
【請求項7】
請求項5に記載の膜分離装置において、
前記高圧ポンプをバックアップするためのバックアップポンプを設け、
前記状態検出手段が前記容積形エネルギー回収装置の故障を検出した場合、前記不具合対応制御手段は前記ブースタポンプを停止して、前記バックアップポンプを運転し、前記高圧ポンプと前記バックアップポンプの運転で前記逆浸透膜カートリッジに原水を供給することを特徴とする膜分離装置。
【請求項8】
供給された原水を加圧する高圧ポンプと、逆浸透膜カートリッジと、前記逆浸透膜カートリッジより濃縮水側下流に配置したエネルギー回収手段とを備え、前記高圧ポンプで加圧された高圧原水を前記逆浸透膜カートリッジに導入し、希薄水と濃縮水に分離する膜分離装置の運転管理方法において、
前記エネルギー回収手段として容積形エネルギー回収装置を用いると共に、ブースタポンプを設け、
前記逆浸透膜カートリッジより濃縮水を前記容積形エネルギー回収装置に導入し、前記供給される原水の一部を加圧し、該加圧した原水を前記ブースタポンプで加圧し、該加圧した原水を前記高圧ポンプと前記逆浸透膜カートリッジを接続する接続管を流れる高圧原水に合流させると共に、前記逆浸透膜カートリッジに供給する原水流量を制御し、
前記当該膜分離装置の各部の状態を検出する状態検出手段で監視し、該状態検出手段が各部の不具合を検出したら不具合対応制御手段でその不具合に応じて各部を制御することを特徴とする膜分離装置の運転管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−89036(P2010−89036A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263216(P2008−263216)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】