説明

膜厚測定装置

【課題】長尺帯状や長大な検査試料に対して簡単な構成で容易に且つ正確に膜厚を測定する。
【解決手段】ポリエステルフィルム11に導電性薄膜が形成された検査試料に対して当該導電性薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置である。ローラ検査部2に、前記ポリエステルフィルム11の表面に対して、設定された隙間を隔てた状態で支持される検査ヘッド10と、前記ポリエステルフィルム11の導電性薄膜と前記検査ヘッド10との間に介在した状態でローラ検査部2の外周に設けられると共に前記導電性薄膜に直接的に又は間接的に接触して当該導電性薄膜と前記検査ヘッド10との間隔を設定間隔に支持する隔離膜14とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査ヘッドを検査試料の表面に対して設定間隔を保って走査させて膜厚を測定する膜厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の材料の表面に導電性薄膜を形成したものの薄膜の膜厚を測定する手段としては通常、特許文献1に記載のような装置を用いる。特許文献1は非接触型抵抗率測定装置である。この非接触型抵抗率測定装置は、図2に示すように、C字型に形成されてその両端部を半導体ウエハ41の両側面に向けて配設されたコア42と、このコア42を励磁する励磁コイル43と、コア42の一側端部に設けられた検出用コイル44と、定電流発生装置45と、演算機46とから構成されている。この構成により、C字型のコア42の両端部の間に半導体ウエハ41が通されて、抵抗率が測定される。このときコア42の両端部は、半導体ウエハ41の表面と僅かな隙間を保った状態で、半導体ウエハ41の表面に沿って正確に走査される。
【0003】
この構成により、前記非接触型抵抗率測定装置では抵抗率を測定するが、抵抗率(ρ)とシート抵抗(ρs)とが予め分かっていれば、関係式[t=ρ/ρs]から膜厚(t)を測定することができる。即ち、シート状の材料の表面の導電性薄膜の膜厚を測定することができる。
【特許文献1】特開平01−92666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来技術の非接触型抵抗率測定装置の場合は、広い検査試料や長い検査試料には対応することができない。
【0005】
これに対しては、検査試料の片面だけに前記コア42や検出用コイル44等を走査させるものもあるが、この場合、検査試料の表面の導電性薄膜との間隔を調整するのが難しく、大がかりな装置が必要となる。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、長尺帯状や長大な検査試料に対して簡単な構成で容易に且つ正確に膜厚を測定することができる膜厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために第1の発明に係る膜厚測定装置は、基材に導電性薄膜が形成された検査試料に対して当該導電性薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、前記検査試料の表面に対して、設定された隙間を隔てた状態で支持される検査ヘッドと、前記検査試料の導電性薄膜と前記検査ヘッドとの間に介在すると共に前記導電性薄膜に直接的に又は間接的に接触して当該導電性薄膜と前記検査ヘッドとの間隔を前記設定された間隔に支持する隔離膜とを備えて構成されたことを特徴とする。
【0008】
前記構成により、前記隔離膜が前記導電性薄膜に直接的に又は間接的に接触して当該導電性薄膜と前記検査ヘッドとの間隔を前記設定された間隔に支持して、当該検査ヘッドで前記導電性薄膜の膜厚を測定する。
【0009】
第2の発明に係る膜厚測定装置は、前記検査ヘッドを内部に1又は複数個装着して、前記隔離膜を外側表面に貼付した回転ローラを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記構成により、回転ローラを前記検査試料の表面に接触させて回転させることで、前記検査試料全体の導電性薄膜の膜厚を測定する。
【0011】
第3の発明に係る膜厚測定装置は、前記回転ローラが、前記検査ヘッドを内蔵した肉厚の円盤状の測定ユニットを1又は複数個連結して構成されたことを特徴とする。
【0012】
前期構成により、肉厚円盤状の測定ユニットは、検査試料の横幅に応じた個数だけ互いに連結して前記回転ローラを構成する。
【0013】
第4の発明に係る膜厚測定装置は、前記回転ローラ内の前記検査ヘッドと外部装置とをスリップリングで接続したことを特徴とする。
【0014】
前記構成により、回転ローラと共に前記検査ヘッドも回転するが、この検査ヘッドでの検出信号は、スリップリングで外部装置に確実に出力される。
【0015】
第5の発明に係る膜厚測定装置は、前記検査ヘッドを内部に1又は複数個装着して、前記隔離膜を前記検査試料側表面に貼付した平板状本体を備えたことを特徴とする。
【0016】
前記構成により、前記平板状本体の隔離膜を前記検査試料に接触させて、前記検査試料の表面の導電性薄膜の膜厚を測定する。前記平板状本体の大きさが前記検査試料の大きさよりも大きい場合は、前記平板状本体を移動させながら前記検査試料に接触させて、前記導電性薄膜の膜厚を測定する。
【0017】
第6の発明に係る膜厚測定装置は、前記基材が長尺帯状の合成樹脂シート又は長大な硬質の板材であることを特徴とする。
【0018】
前記構成により、長尺帯状の合成樹脂シート又は長大な硬質の板材からなる前記基材の表面に、ローラ状の膜厚測定装置を転がしながら、又は平板状の膜厚測定装置を接触させながら、検査試料全体の薄膜の膜厚を測定する。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、本発明の薄板収納容器によれば、次のような効果を奏する。
【0020】
(1) 前記隔離膜が前記導電性薄膜に直接的に又は間接的に接触して当該導電性薄膜と前記検査ヘッドとの間隔を前記設定された間隔に支持して、当該検査ヘッドで前記導電性薄膜の膜厚を測定するため、前記導電性薄膜の膜厚を容易にかつ正確に測定することができる。
【0021】
(2) 回転ローラを前記検査試料の表面に接触させて回転させることで、前記検査試料全体の導電性薄膜の膜厚を容易に測定することができるため、広い薄膜の場合も、膜厚全体を短時間で容易に且つ正確に測定することができる。
【0022】
(3) 肉厚円盤状の測定ユニットが検査試料の横幅に応じた個数だけ互いに連結して前記回転ローラを構成するため、当該回転ローラを検査試料に当接して当該検査試料の一端から他端まで1回だけ転がすだけで、又は前記検査試料を前記回転ローラに当接して当該検査試料の一端から他端まで1回だけ移動させるだけで、前記検査試料の導電性薄膜の膜厚を容易に測定することができる。
【0023】
(4) 回転ローラと共に前記検査ヘッドも回転するが、この検査ヘッドでの検出信号は、スリップリングで外部装置に確実に出力されるため、回転ローラ式の膜厚測定装置で正確に膜厚を測定することができる。
【0024】
(5) 前記平板状本体の隔離膜を前記検査試料に接触させて、前記検査試料の表面の導電性薄膜の膜厚を測定するため、前記導電性薄膜の膜厚を正確に測定することができる。前記平板状本体の大きさが前記検査試料の大きさよりも大きい場合は、前記平板状本体を移動させながら前記検査試料に接触させて、広い前記導電性薄膜の膜厚を正確に測定することができる。
【0025】
(6) 長尺帯状の合成樹脂シート又は長大な硬質の板材からなる前記基材の表面に、ローラ状の膜厚測定装置を転がしながら、又は平板状の膜厚測定装置を接触させながら、検査試料全体の薄膜の膜厚を測定するため、長尺の又は長大な検査試料の膜厚を短時間で効率的に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態に係る膜厚測定装置を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
本実施形態に係る膜厚測定装置は、基材の表面に導電性薄膜が形成された検査試料に対して当該導電性薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置である。ここでは、基材として、長尺帯状の合成樹脂シートを例に説明する。この合成樹脂シートとしては、ポリエステルフィルムを用いた。このポリエステルフィルムの表面の導電性薄膜としては、Cu蒸着膜を用いた。
【0028】
本実施形態の膜厚測定装置は、回転ローラ型の装置である。この膜厚測定装置1は、図1に示すように、ローラ検査部2と、制御部3(図9参照)とから構成されている。
【0029】
ローラ検査部2は、図1、3〜5に示すように主に、本体部4と、回転軸5とから構成されている。本体部4は主に、測定ユニット6と、電源ユニット7と、連結部8とから構成されている。
【0030】
測定ユニット6は、検査ヘッド10等を内蔵したユニットである。測定ユニット6は、全体を肉厚の円盤状に形成されて、検査試料であるポリエステルフィルム11の横幅に応じた個数だけ互いに連結される。ここでは、5個の測定ユニット6が連結されて、ローラを構成している。なお、測定ユニット6の個数としては、検査したい間隔に応じても異なってくる。この場合は、後述する間隔調整板12を各測定ユニット6の間に挿入して測定ユニット6の間隔を調整して、ポリエステルフィルム11の幅に合わせた個数に設定する。
【0031】
測定ユニット6は主に、肉厚の円盤状の筐体部6Aと、この筐体部6A内の収納された測定機器(検査ヘッド10以外は図示せず)とから構成されている。
【0032】
筐体部6Aは、測定ユニット6の外殻を構成する部材である。この筐体部6Aが複数個互いに連結される。各筐体部6Aは連結棒やネジ棒等の連結具(図示せず)によって互いに連結される。各筐体部6Aの間には、間隔調整板12が適宜設けられて、ポリエステルフィルム11上の測定位置が適宜調整される。測定位置の間隔を広げたい場合は間隔調整板12の厚さや枚数を増やし、狭めたい場合は間隔調整板12の厚さや枚数を減らす。また、ポリエステルフィルム11の全長方向の測定位置を調整する場合は、筐体部6Aの直径を変えたり、検査ヘッド10の個数を変えたりして、ポリエステルフィルム11の全長方向の測定位置の間隔を調整する。筐体部6Aの外周面にはその全週に亘って、後述する隔離膜14が貼付されている。
【0033】
筐体部6A内の検査機器は、ポリエステルフィルム11の導電性薄膜の膜厚を測定するための装置である。この検査機器は、検査ヘッド10やその周辺機器(図示せず)で構成されている。検査ヘッド10は、筐体部6A内に組み込まれた状態で、正確に位置決めされて設けられている。具体的には、検査ヘッド10が筐体部6A内に組み込まれた状態で、検査ヘッド10が筐体部6Aの外周面の隔離膜14の外側表面に対して設定された間隔になるように正確に位置決めして設けられている。これは、前記隔離膜14の外側表面と、前記ポリエステルフィルム11とが当接して、当該ポリエステルフィルム11の導電性薄膜の位置を正確に把握するためである。即ち、検査ヘッド10と前記隔離膜14の外側表面との距離S1(図5参照)が正確に分かっていれば、この隔離膜14の外側表面と前記ポリエステルフィルム11の導電性薄膜との間隔を特定することで、前記検査ヘッド10と導電性薄膜との距離を特定することができる。なお、前記隔離膜14の外側表面と前記ポリエステルフィルム11の導電性薄膜との間隔は、前記隔離膜14の外側表面が前記ポリエステルフィルム11の導電性薄膜に直接に当接しているときは「0」となり、前記隔離膜14の外側表面が前記ポリエステルフィルム11の反対面に当接しているときは「前記ポリエステルフィルム11の膜厚S2」となる。このため、検査ヘッド10は、本体部10の隔離膜14の外側表面に対して設定された間隔になるように正確に位置決めして設けられている。
【0034】
なお、前記隔離膜14は、ポリエステルフィルム11の導電性薄膜と検査ヘッド10との間に介在されて、前記導電性薄膜に直接的に又は間接的に接触して当該導電性薄膜と前記検査ヘッド10との間隔を設定間隔に支持するための膜である。この隔離膜14に前記導電性薄膜が直接的に又は間接的に接触して、これら検査ヘッド10と導電性薄膜とが設定された間隔に正確に調整される。
【0035】
検査ヘッド10は、前記従来技術と同様に、コア、励磁コイル、検出用コイル等によって構成されている。ここでは、検査ヘッド10を測定ユニット6の筐体部6A内に1個だけ内蔵しているが、筐体部6A内の空間に余裕があれば、2個以上設けてもよい。配設位置も円周方向と軸方向に適宜設定してよい。例えば、2個の場合は円周方向に180°ずらして、3個の場合は円周方向に120°ずらして等間隔に配設してもよい。また、一定間隔を空けて軸方向に並べて配設してもよい。軸方向と円周方向とにそれぞれずらして配設してもよい。また、測定ユニット6の筐体部6A内には、ドリフト調整のためのリードスイッチやマグネット等も適宜配設されている。
【0036】
この測定ユニット6は5個、必要に応じて間隔調整板12を介在させて連結具で互いに連結されて、電源ユニット7及び連結部8と共に一体的に固定される。
【0037】
電源ユニット7は、各測定ユニット6に電源を供給するための部材である。各測定ユニット6は、互いに連結されることで電気的にも連結されて電源ユニット7に電源を供給する。5個連結された測定ユニット6の一端部に電源ユニット7が直接連結されて、一端部の測定ユニット6から他端部の測定ユニット6まで全てに電源が供給されるようになっている。また、検出信号も同様に、連結された各測定ユニット6を介して外部の制御部3に接続されている。この回路の一例を図6及び図7に示す。ここでは、5個の測定ユニット6を連結しているため、コイル等からなるセンサ16を備えたセンサアンプ17が5個並列に接続されている。各センサ16は、前記隔離膜14の外側表面との距離が設定値になるように正確に位置決めして設けられている。各センサアンプ17は、互いに電気的に接続されて、電源が供給されると共に、検出信号が外部に出力される。
【0038】
さらに、各センサアンプ17は、外部装置とスリップリング(図示せず)で接続されている。このスリップリングは、ローラ検査部2内の検査ヘッド10と外部装置とを、互いの回転を許容した状態で電気的に接続するための装置である。このスリップリングによって、検査ヘッドのセンサ16及びセンサアンプ17で検出した検出信号が外部装置に確実に出力される。
【0039】
スリップリングとしては公知のものを用いることができる。ここではその一例としてのスリップリングを用いている。このスリップリングは図7に示すように主に、高周波発振器19と、絶縁トランス20と、自動電圧調整器21と、V/Fコンバータ22と、光電変換素子(図示せず)と、光ファイバーロータリージョイント(図示せず)とから構成されている。これにより、絶縁トランス20と光ファイバーロータリージョイントで回転を許容して、ローラ検査部2と外部装置とを電気的に接続している。
【0040】
電源ユニット7には、回転軸5と連結するための連結部7Aが一体的に設けられている。この連結部7Aは、軸挿入部7Bと、フランジ部7Cとから構成されている。軸挿入部7Bは、回転軸5が挿入されて互いに固定されるための筒部である。フランジ部7Cは、5個連結された測定ユニット6の一端部の測定ユニット6に連結する部材である。
【0041】
連結部8は、回転軸5と連結するための部材である。この連結部8は、前記電源ユニット7の連結部7Aと同様に、軸挿入部8Aと、フランジ部8Bとから構成されている。軸挿入部8Aは、回転軸5が挿入されて互いに固定されるための筒部である。フランジ部8Bは、5個連結された測定ユニット6の他端部の測定ユニット6に連結する部材である。フランジ部8Bは、測定ユニット6と同じ大きさの円盤状に形成され、他端部の測定ユニット6を回転可能に支持する。そして、この連結部8と前記電源ユニット7の連結部7Aとで、5個連結された測定ユニット6全体を回転可能に支持している。
【0042】
回転軸5は、本体部4を回転可能に支持するための軸である。この回転軸5は、本体部4の両側の連結部7A、8にそれぞれ固定されて、外部装置の支持アーム(図示せず)等によって回転可能に支持されている。回転軸5内には信号線24等が配設されている。
【0043】
制御部3は、ローラ検査部2で検出した検出信号を処理して、導電性薄膜の膜厚を計算する処理部である。この制御部3では、次のような処理がなされる。
【0044】
まず、導電性薄膜の膜厚測定の原理を説明する。
【0045】
この膜厚測定の原理は、電磁誘導作用により、導電性薄膜の表面に発生する渦電流を利用して抵抗率を測定し、予め分かっている導電性薄膜のシート抵抗との比から導電性薄膜の膜厚を測定するものである。
【0046】
コイルに高周波の電圧をかけると、そのコイルから高周波周期で変化する磁場が発生する。この磁場中に導電性薄膜を置くと、その導電性薄膜の表面に渦電流が発生する。渦電流は、時間的に変化する磁場中におかれた導電性薄膜の内部に電磁誘導によって生ずる渦状の電流である。電流が磁束方向に垂直な面内を渦状に流れてジュール熱を発生させ、電磁エネルギーの熱損失が起こる。この電磁誘導作用を利用することにより、導電性薄膜の抵抗率/シート抵抗を測定することが可能である。
【0047】
高周波発振器19によって検査ヘッド10に数MHzの高周波を加えることにより、各検査ヘッド10のギャップに高周波で変化する磁場が生ずる。従って、この検査ヘッド10のギャップに導電性薄膜を貼付したポリエステルフィルム11を入れると、高周波誘導結合により導電性薄膜に渦電流が発生する。発生した渦電流は、ジュール熱となって失われる。即ち、高周波電力の一部が導電性薄膜内で、ジュール熱への変換という形をとって吸収される。そして、導電性薄膜内での高周波電力の吸収と導電率(抵抗率の逆数)および試料の形状(厚さ)とは、正の相関を持っているため、これを利用することにより、導電性薄膜の[抵抗率/シート抵抗]を測定することが出来る。
【0048】
前記導電性薄膜で消費される高周波電力は、
P=E×I=E(Ie+Io) ……(1)
但し、
P=高周波電力
E=高周波電圧
I=高周波電流
Io=導電性薄膜なし時の高周波電流
Ie=導電性薄膜を入れることにより増加した高周波電流
導電性薄膜をギャップに入れることにより増加する高周波電力は、
Pe=E×Ie ……(2)
試料の導電率=σ 導電性薄膜の膜厚=t コイルの結合係数=K とすると、
Pe=E×Ie=K×E2×σ×t ……(3)
上式より
Ie=K×E×σ×t=K×E×(t/ρ) ……(4)
従って、低抗率は、
ρ=K×(E/Ie)×t (Ω-cm) ……(5)
抵抗率(ρ)とシート抵抗(ρs)と膜厚(t)との関係は、
t=ρ/ρs=K×(E/Ie)/ρs ……(6)
従って、あらかじめ抵抗率(ρ)が既知の導電性薄膜を使用して、シート抵抗(ρs)を測定すれば、前記(6)式より、導電性薄膜の膜厚tを算出することができる。
【0049】
以上の原理に基づいて、制御部3の処理部を構成する。
【0050】
具体的な寸法例を次に示す。ポリエステルフィルム11の厚さは100μm〜120μm、ポリエステルフィルム11の幅は700〜1000mm、導電性薄膜としてはCu蒸着膜を用い、そのCu蒸着膜の厚さは1μm、移動スピードは1000mm/分(16mm/秒)、抵抗率は約0.1Ω/□、ポリエステルフィルムの幅方向測定位置は5点とした。
【0051】
導電性薄膜と検査ヘッド10との間隔は、図8のグラフに基づいて設定した。図8は、前記間隔の変化とセンサ出力電圧の減少率との関係を示すグラフである。「0」〜「600」μmまでの間隔における減少率において、間隔が「0」に近づくと、接触してしまうおそれがあり、離れすぎるとセンサ出力電圧が小さくなり過ぎる。このため、ここでは、300μm±50の範囲で間隔を設定した。ここで設定した範囲に合わせて、隔離膜14の膜圧を調整した。
【0052】
以上のように設定された膜厚測定装置1は、例えば図9のようにして使用される。図9は、ローラに巻かれた長尺帯状のポリエステルフィルム11の一側面に蒸着されたCu蒸着膜の膜厚を測定する装置である。
【0053】
図中の26は前記ポリエステルフィルム11が巻かれた繰出ローラである。27はポリエステルフィルム11の表面にCu蒸着膜を蒸着する蒸着装置である。28は蒸着されたポリエステルフィルム11を巻き取る巻取ローラである。膜厚測定装置1は、蒸着装置27の下流側に設けられている。膜厚測定装置1のローラ検査部2が、蒸着装置27の下流側において、ポリエステルフィルム11にローラ検査部2が図5のように接触して配設されている。制御部3は、ローラ検査部2からの検出信号に基づいてCu蒸着膜の膜厚を算出し、設定値からのズレ量を補正する制御信号を蒸着装置27に出力する。蒸着装置27では、制御部3からの制御信号に基づいて蒸着膜の膜厚を調整する。
【0054】
このとき、ローラ検査部2が回転しながらポリエステルフィルム11に常に接触して、ポリエステルフィルム11の全面のCu蒸着膜の膜厚を測定する。即ち、5個の検査ヘッド10が、ポリエステルフィルム11の横方向に5箇所の位置で、かつローラ検査部2の円周の長さの間隔で、ポリエステルフィルム11の全面のCu蒸着膜の膜厚を測定する。
【0055】
さらに、このとき、検査ヘッド10とポリエステルフィルム11のCu蒸着膜との間隔は、300μm±50の範囲で隔離膜14によって正確に維持されるため、Cu蒸着膜をポリエステルフィルム11の全面に亘って、容易にかつ正確に測定する。
【0056】
以上のように、隔離膜14がポリエステルフィルム11の導電性薄膜に直接的に又は間接的に接触して当該導電性薄膜と前記検査ヘッド10との間隔を前記設定された間隔に支持して、当該検査ヘッド10で前記導電性薄膜の膜厚を測定するため、前記導電性薄膜の膜厚を容易にかつ正確に測定することができる。
【0057】
回転ローラ型のローラ検査部2をポリエステルフィルム11の表面に接触させて回転させることで、前記ポリエステルフィルム11全体の導電性薄膜の膜厚を容易に測定することができるため、広い薄膜を、膜厚全体を短時間で容易に且つ正確に測定することができる。
【0058】
肉厚円盤状の測定ユニット6がポリエステルフィルム11の横幅に応じた個数だけ互いに連結して前記回転ローラ型のローラ検査部2を構成するため、ローラ検査部2をポリエステルフィルム11に当接して当該ポリエステルフィルム11の一端から他端まで1回だけ転がすだけで、又はポリエステルフィルム11を前記ローラ検査部2に当接して当該ポリエステルフィルム11の一端から他端まで1回だけ移動させるだけで、前記ポリエステルフィルム11の導電性薄膜の膜厚を容易に測定することができる。
【0059】
また、ローラ検査部2と共に検査ヘッド10も回転するが、この検査ヘッド10での検出信号は、スリップリングで外部装置に確実に出力されるため、回転ローラ式の膜厚測定装置1で正確に膜厚を測定することができる。
【0060】
[変形例]
前記実施形態では、基材としてのポリエステルフィルム11の表裏面のうちの一側面にCu蒸着膜を形成したものを例に説明したが、例えばラミネートシート等のように、内部である中間層に導電性薄膜を形成した場合でも本発明を提供することができる。この場合も、前記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0061】
前記実施形態では、膜厚測定装置1として円形状ローラを用いたが、多面体状ローラを用いても良い。
【0062】
また、前記実施形態では、検査試料として、柔軟な帯状の合成樹脂を用いたが、本発明はこれに限らず、ガラス基板等の長大な硬質の板材でもよい。この場合は、図10に示すように、ローラ検査部2を板材31の表面に転がして板材31の全面を走査させる。長尺帯状の板材の場合は、その板材の幅に合わせてローラ検査部2を構成して、長尺の板材の一端から他端まで1回で走査する。この場合も、前記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0063】
また、前記実施形態では、膜厚測定装置1として円形状ローラを用いたが、図11に示すように、平板状の装置を用いても良い。この平板状の膜厚測定装置32は、その内部に1又は複数個の検査ヘッド(図示せず)が装着され、検査試料33側の表面(下側面)に隔離膜が貼付されている。この膜厚測定装置32は、検査試料33よりも大きく形成されている。そして、膜厚測定装置32が、検査試料33にその上側面から一回だけ接触して、検査試料33の全面の導電性薄膜の膜厚を測定する。これにより、検査試料33の全面の導電性薄膜の膜厚を容易にかつ正確に測定することができる。
【0064】
また、前記実施形態では、膜厚測定装置1として円形状ローラを用いたが、検査試料に対して膜厚測定装置1の直径が遙かに大きい場合は、円形状ローラでなくても、そのローラの一部として円弧状に形成しても良い。この場合も、前記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る膜厚測定装置のローラ検査部を示す斜視図である。
【図2】従来の非接触型抵抗率測定装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る膜厚測定装置のローラ検査部を示す分解図である。
【図4】本発明に係る膜厚測定装置のローラ検査部とポリエステルフィルムが接触した状態を示す概略側面図である。
【図5】本発明に係る膜厚測定装置のローラ検査部とポリエステルフィルムが接触した状態を示す概略側面図である。
【図6】本発明に係る膜厚測定装置の回路例を示す回路図である。
【図7】本発明に係る膜厚測定装置の回路例を示す回路図である。
【図8】検査ヘッドとポリエステルフィルムの導電性薄膜との間隔の変化とセンサ出力電圧の減少率との関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る膜厚測定装置の使用例を示す模式図である。
【図10】本発明の変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1:膜厚測定装置、2:ローラ検査部、3:制御部、4:本体部、5:回転軸、6:測定ユニット、7:電源ユニット、8:連結部、10:検査ヘッド、11:ポリエステルフィルム、12:スペーサ、14:隔離膜、16:センサ、17:センサアンプ、19:高周波発振器、20:絶縁トランス、21:自動電圧調整器、22:V/Fコンバータ、24:信号線、26:繰出ローラ、27:蒸着装置、28:巻取ローラ、
31:板材、32:膜厚測定装置、33:検査試料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に導電性薄膜が形成された検査試料に対して当該導電性薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
前記検査試料の表面に対して、設定された隙間を隔てた状態で支持される検査ヘッドと、
前記検査試料の導電性薄膜と前記検査ヘッドとの間に介在すると共に前記導電性薄膜に直接的に又は間接的に接触して当該導電性薄膜と前記検査ヘッドとの間隔を前記設定された間隔に支持する隔離膜と
を備えて構成されたことを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の膜厚測定装置において、
前記検査ヘッドを内部に1又は複数個装着して、前記隔離膜を外側表面に貼付した回転ローラを備えたことを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の膜厚測定装置において、
前記回転ローラが、前記検査ヘッドを内蔵した肉厚の円盤状の測定ユニットを1又は複数個連結して構成されたことを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の膜厚測定装置において、
前記回転ローラ内の前記検査ヘッドと外部装置とをスリップリングで接続したことを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の膜厚測定装置において、
前記検査ヘッドを内部に1又は複数個装着して、前記隔離膜を前記検査試料側表面に貼付した平板状本体を備えたことを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の膜厚測定装置において、
前記基材が長尺帯状の合成樹脂シート又は長大な硬質の板材であることを特徴とする膜厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−240458(P2007−240458A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66572(P2006−66572)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(592177096)ナプソン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】