説明

膜厚計測治具及び方法

【課題】検査対象物の角部の塗装膜厚を正確に計測することを可能にする塗装膜厚計測治具等を提供する。
【解決手段】塗装膜厚計測治具1は、検査対象物の検査対象部位である角部を挟む二面とそれぞれ当接する二つの当接部2a、2bを有する第1の部材2と、検査対象物の検査対象部位である角部の中心2dを軸として回動可能であり、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される二つの当接部2a、2bの交差部2dに連通する孔を有する第2の部材3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚を計測するための膜厚計測治具及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の塗装完了後の塗装膜厚計測に、電磁膜厚計が用いられている。電磁膜厚計では、橋梁の平面部の塗装膜厚を計測できることとされている。しかし、塗装の弱点部は、塗装膜厚が薄くなる角部であることが指摘されている。従って、橋梁の耐久性を考えた場合、角部における塗装膜厚管理が重要であると考えられる。しかしながら、下記の非特許文献1には、角、孔、突起物などの位置では膜厚を測定できないことが記載されている。これは、角等の位置では、測定対象物と電磁膜厚計のプローブとの相対位置を安定させることが難しいためと考えられる。
【0003】
なお、電磁膜厚計には、検査対象物が磁性金属(鉄、鋼等)の場合に用いる電磁誘導式のプローブと、検査対象物が非磁性(非鉄)金属の場合に用いる渦電流式のプローブと、が用意されており、検査対象物の材質に応じてプローブを選択し、塗装膜厚を計測する。関連する技術として、下記の特許文献1には、平面塗膜全般の膜厚測定を補助する膜厚測定用補助具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−12167号公報
【非特許文献1】「鋼道路橋塗装・防食便覧」、社団法人 日本道路協会、平成17年12月、p.II−77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検査対象物の角部の膜厚を正確に計測することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る膜厚計測治具は、検査対象物の検査対象部位である角部を挟む二つの面とそれぞれ当接する二つの当接部と、前記二つの当接部の交差部に連通し、電磁膜厚計のプローブが挿嵌される孔と、を有し、前記角部と前記プローブの軸とが所定の相対位置となるように、前記角部と前記プローブとを当接させることを特徴とする。
【0007】
上記構成により、本発明に係る膜厚計測治具は、検査対象物の角部に対するプローブの相対位置を安定して保持することができる。これにより、検査対象物の角部の膜厚を正確に計測することができる。
【0008】
本発明の好ましい態様としては、前記二つの当接部を有する第1の部材と、前記検査対象物の検査対象部位の軸又は前記二つの当接部の交差部を軸として回動可能であり、前記プローブが挿嵌される前記孔を有する第2の部材と、を備えることが好ましい。
【0009】
上記構成により、検査対象物の角部とプローブの軸とのなす角度を容易に変更することができる。これにより、様々な角度で角部の塗装膜厚を計測することができる。
【0010】
また、本発明に係る膜厚計測治具は、自身を前記検査対象物に固着させる固着手段を備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、本発明に係る膜厚計測治具は、検査対象物の角部に対するプローブの相対位置をより安定して保持することができる。これにより、検査対象物の角部の膜厚をより正確に計測することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る膜厚計測治具は、前記固着手段は、磁石、吸盤又は前記検査対象物に係合する係合部であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る膜厚計測方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜厚計測治具を、前記検査対象部位である角部と同一形状の部位を有する校正用部材に当接させる第1の工程と、前記電磁膜厚計を校正する第2の工程と、前記膜厚計測治具を前記検査対象部位に当接させる第3の工程と、前記電磁膜厚計を用いて前記検査対象部位の膜厚を計測する第4の工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、本発明に係る膜厚計測方法は、検査対象物の角部に対するプローブの相対位置を安定させることができる。これにより、検査対象物の角部の膜厚を正確に計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、検査対象物の角部の塗装膜厚を正確に計測することを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1−1】図1−1は、本発明の第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の概略構成図である。
【図1−2】図1−2は、本発明の第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の概略構成図である。
【図3−1】図3−1は、検査対象物の検査対象部位が凸状の場合の磁力線を示す図である。
【図3−2】図3−2は、検査対象物の検査対象部位が凹状の場合の磁力線を示す図である。
【図4−1】図4−1は、平面部(F)、角部(3R)、角部(2R)のそれぞれの部位で校正を行った電磁膜厚計を用いて、それぞれの部位で膜厚を計測したときの実測値を真値で除した値を示す図である。
【図4−2】図4−2は、図4−1の値をグラフに表した図である。
【図5−1】図5−1は、膜厚計測結果の頻度を示す図である。
【図5−2】図5−2は、膜厚計測結果の基本統計量を示す図である。
【図5−3】図5−3は、平面部(F)の膜厚計測結果のヒストグラムを示す図である。
【図5−4】図5−4は、角部(3R)の膜厚計測結果のヒストグラムを示す図である。
【図5−5】図5−5は、角部(2R)の膜厚計測結果のヒストグラムを示す図である。
【図6−1】図6−1は、試験片の側断面のマクロ撮影による膜厚計測結果と、電磁膜厚計による膜厚計測結果を示す図である。
【図6−2】図6−2は、角部(2R)の切断面における計測値を示すグラフである。
【図6−3】図6−3は、角部(3R)の切断面における計測値を示すグラフである。
【図7−1】図7−1は、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の概略構成図である。
【図7−2】図7−2は、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の変形例の概略構成図である。
【図7−3】図7−3は、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の変形例の概略構成図である。
【図7−4】図7−4は、本発明の第3の実施形態に係る塗装膜圧計測治具の概略構成図である。
【図8−1】図8−1は、本発明の第4の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の概略構成図である。
【図8−2】図8−2は、本発明の第4の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の変形例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0018】
図1−1は、本発明の第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の側視図であり、図1−2は、図1−1中のII方向から塗装膜厚計測治具1を見た図である。この塗装膜厚計測治具1は、図1−1及び図1−2に示すように、第1の部材2と、第2の部材3と、を含んで構成される。
【0019】
第1の部材2は、図1−1に示すように、概略くの字状の側視形状を有している。第1の部材2は、その内周側に当接部2a及び2bを有している。当接部2aと当接部2bとは、互いに直交しており、検査対象物20の検査対象部位である角部20aを挟み直交する面20b及び20cに、それぞれ当接するように配置される。この当接部2a及び2bは、面20b及び20cに対し、面で当接する形態、又は複数の点や線で当接する形態がある。面20b及び20cに対して複数の点や線で当接する形態の当接部2a及び2bは、面20b及び20cに対して当接する点や線を仮想の面上に置いた場合に、当該面が直交することとなる。なお、面20b及び20cが直交している場合(角部20aの角度が90度である場合)には当接部2a及び2bは直交するように形成されるが、面20b及び20cが直交しない場合には当接部2a及び2bは面20b及び20cがなす角部20aの角度と同じ角度をなすように形成される。すなわち、第1の部材2は、当接部2a及び2bの交差部が、角部20aの稜線と平行となるように検査対象物20に対して設置される。
【0020】
第1の部材2の外周側の面2cは、検査対象物20の角部20aの中心2dを軸(中心)とする円弧状の側視形状を有している。また、第1の部材2は、その外周側の面2cに、検査対象物20の角部20aの中心2dを軸(中心)とする2つの溝2e及び2fが形成されている。この溝2e及び2fには、ナット10及び11が、当該溝2e及び2fに沿って検査対象物20の角部20aの中心2dを軸(中心)として図中A―B方向に移動可能に設けられている。また、第1の部材2は、2つの溝2e及び2fの間にて、外周側の面2cから当接部2a及び2bに至り連通し、かつ外周側の面2cの円弧状に沿って形成された連通溝2gが形成されている。
【0021】
第2の部材3は、第1の部材2の外周側の面2cに取り付けられている。第2の部材3は、第1の部材2の外周側の面2cに当たる面が、当該面2cの円弧状に沿うように凹設された円弧状に形成されている。この第2の部材3には、孔3a及び3bが形成されている。孔3a及び3bには、ボルト12及び13がそれぞれ挿入され、ナット10及び11にそれぞれ螺合されている。このため、第2の部材3は、ボルト12及び13とナット10及び11との螺合によって第1の部材2の外周側の面2cに取り付けられる。また、第2の部材3は、ナット10及び11が、第1の部材2の溝2e及び2fに沿って検査対象物20の角部20aの中心2dを軸(中心)に移動するため、このナット10及び11の移動に伴って検査対象物20の角部20aの中心2dを軸(中心)として図中A―B方向に移動する。図1−1においては、第2の部材3は、検査対象物20の角部20aの中心2dを軸(中心)として、第1の部材2の面2cの円弧状に沿って図中A―B方向(時計回り及び反時計回り)に回動可能である。この第2の部材3は、検査対象物20の角部20aの中心2dの軸に直交する方向に貫通すると共に、第1の部材2の連通溝2gを介して当接部2a及び2bの交差部に連通する孔3cが形成されている。この孔3cは、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される。孔3cにプローブPが挿嵌された状態では、プローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの中心2dの軸に直交する配置となる。すなわちプローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。そして、図1−1に示すように、孔3cにプローブPが挿嵌された状態では、検査対象物20の面20cとプローブPの軸Xとが平行の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が0°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部20aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を、検査対象物20の角部20aに施されている塗装膜(図示せず)に当接させる。
【0022】
図2は、図1−1に示す第2の部材3を、第1の部材2の面2cの円弧状に沿って図中A方向(図中時計回り)に回動させた状態を示す図である。この図2においては、検査対象物20の面20cとプローブPの軸Xとが45°の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が45°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部20aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を施された塗装膜(図示せず)に角部20aに当接させる。
【0023】
図2に示す状態において、第2の部材3は、検査対象物20の角部20aの中心2dを軸(中心)として、第1の部材2の面2cに沿って図中A−B方向(時計回り及び反時計回り)に回動可能である。なお、第2の部材3は、第1の部材2の面2cに沿って連続的に回動可能としても良いし、第1の部材2と第2の部材3との間にノッチ等を設けることにより、検査対象物20の面20cとプローブPの軸Xとのなす角度が所定の角度(例えば0°、22.5°、45°等)となるように段階的に回動可能としても良い。
【0024】
このように、塗装膜厚計測治具1によれば、プローブPの計測基準となる軸Xが検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。このように、検査対象物20の角部20aに対するプローブの相対位置を安定して保持することが可能になる。このため、検査対象物20の角部20aの膜厚を正確に計測することができる。この結果、従来は計測できないこととされていた検査対象物の角部の塗装膜厚を容易に計測することが可能となる。しかも、この塗装膜厚計測治具1によれば、検査対象物20の面20cとプローブPの軸Xとがなす角度を容易に変更することができ、様々な角度で角部20aの塗装膜厚を計測することができる。
【0025】
第1の部材2の内部であって面2aの近傍には、棒状の永久磁石4が面2aに沿って配置されている。永久磁石4の両極には磁性体の金属片5及び6が当接しており、金属片5及び6の一辺は、面2aに露出している。同様に、第1の部材2の内部であって面2bの近傍には、棒状の永久磁石7が面2bに沿って配置されており、永久磁石7の両極には磁性体の金属片8及び9が当接しており、金属片8及び9の一辺は、面2bに露出している。塗装膜厚計測治具1は、金属片5から出て金属片6に入る磁束及び金属片8から出て金属片9に入る磁束によって、検査対象物20に安定して固着される。このような永久磁石4、7及び金属片5、6、8、9の配置により、永久磁石4、7から出る磁束が後述するプローブに入らないようにすることができる。また、検査対象物20が非磁性体である場合には、永久磁石4、7及び金属片5、6、8、9に代えて、検査対象物20に吸着する吸盤などを第1の部材2に設けることにより、塗装膜厚計測治具1を検査対象物20に安定して固着することができる。
【0026】
次に、塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚の計測方法について説明する。まず、第1の部材2の当接部2a及び2bを、検査対象物と同一形状の校正用部材に当接(固着手段がある場合は固着)する(第1の工程)。次に、プローブPの先端部を校正用部材に当接させ、電磁膜厚計の校正を行う(第2の工程)。なお、第1の工程及び第2の工程は、必要に応じて複数回繰り返しても良い。次に、塗装膜厚計測治具1を校正用部材から取り外し、第1の部材2の当接部2a及び2bを検査対象物に当接(固着手段がある場合は固着)する(第3の工程)。そして、プローブPの先端部を検査対象物の検査対象部位に当接させ、検査対象部位の塗装膜厚を計測する(第4の工程)。
【0027】
次に、本実施形態を用いた膜厚計測の検証結果について説明する。電磁膜厚計は、検査対象物の地金とプローブとの距離を磁気反応の変化に基づいて測定する。磁気反応は、検査対象物の材質、板厚、形状等によって異なり、特に形状の違いは磁気反応に大きな影響を与える。図3−1は、検査対象物21の検査対象部位が凸状の場合の磁力線を示す図であり、図3−2は、検査対象物22の検査対象部位が凹状の場合の磁力線を示す図である。図3−1及び図3−2に示すように、検査対象部位が凸状の場合、検査対象部位が凹状の場合と比較して、磁力線が疎となり、膜厚が厚く計測される。そのため、検査対象物の検査部位が角部である場合には、電磁膜厚計の校正時に検査部位の形状の影響を織り込む必要がある。
【0028】
図4−1は、平面部(F)、角部(3R)、角部(2R)のそれぞれの部位で校正を行った電磁膜厚計を用いて、平面部(F)、角部(3R)、角部(2R)のそれぞれの部位で膜厚を計測したときの実測値を真値で除した値を示す図であり、図4−2は、図4−1の値をグラフに表した図である。校正及び計測の対象とする厚さは標準板の125μm、201μm及び2枚を合わせた326μmである。平面部で校正を行った電磁膜厚計で角部の膜厚を計測した場合、角部の膜厚は実際の膜厚よりも20%〜30%程度厚く計測された。
【0029】
次に、標準板の平面部(F)、角部(3R)、角部(2R)を対象に厚さ250μmのビニールシートの厚さを計測した。計測は、1箇所5回の計測として20箇所の計100回とした。電磁膜厚計の校正は、それぞれの対象部位で標準板の125μm、201μm、及び2枚を合わせた326μmで行った。図5−1は、計測結果の頻度を示す図であり、図5−2は、計測結果の基本統計量を示す図であり、図5−3は、平面部(F)の計測結果のヒストグラムを示す図であり、図5−4は、角部(3R)の計測結果のヒストグラムを示す図であり、図5−5は、角部(2R)の計測結果のヒストグラムを示す図である。
【0030】
角部(3R)、角部(2R)における平均値は、平面部(F)と比較すると、2%程度の誤差であった。また、角部(3R)、角部(2R)における標準偏差は、平面部(F)よりも大きくなり、角部(3R)、角部(2R)の順に大きくなる。これは、角部の曲率が大きくなることによってプローブと角部との接触が不安定になるためと考えられるが、最大でも計測膜厚の2%程度であり、問題がない範囲と考えられる。
【0031】
次に、試験片の側断面のマクロ撮影による膜厚計測結果と、電磁膜厚計による膜厚計測結果との比較を行った。計測は、角部から10mm離れた場所、角部、及び、コバ面(厚さ方向断面)において行った。図6−1は、計測結果を示す図であり、図6−2は、角部(2R)の切断面(4)における計測値を示すグラフであり、図6−3は、角部(3R)の切断面(7)における計測値を示すグラフである。
【0032】
試験片の側断面のマクロ撮影による膜厚計測結果と、電磁膜厚計による膜厚計測結果とを比較したところ、両者は完全には一致しないが、誤差は概ね10%以内となった。この誤差には、試験片切断による塗膜の変形、顕微鏡での計測誤差、電磁膜厚計の校正誤差が含まれていると考えられ、特に試験片切断による塗膜の変形の影響が大きいと考えられる。なお、電磁膜厚計による膜厚計測結果は、全般的にマクロ撮影での計測結果よりも小さな値となり、安全側の値となった。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、校正用部材によって校正することにより、検査対象物の角部の塗装膜厚を正確に計測することが可能となる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図7−1は、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の側視図である。この塗装膜厚計測治具31は、概略くの字状の側視形状を有している。塗装膜厚計測治具31は、その内周側に当接部31a及び31bを有している。当接部31aと当接部31bとは、互いに直交しており、検査対象物20の検査対象部位である角部20aを挟み直交する面20b及び20cに、それぞれ当接するように配置される。この当接部31a及び31bは、面20b及び20cに対し、面で当接する形態、又は複数の点や線で当接する形態がある。面20b及び20cに対して複数の点や線で当接する形態の当接部31a及び31bは、面20b及び20cに対して当接する点や線を仮想の面上に置いた場合に、当該面が直交することとなる。なお、面20b及び20cが直交している場合(角部20aの角度が90度である場合)には当接部31a及び31bは直交するように形成されるが、面20b及び20cが直交しない場合には当接部31a及び31bは面20b及び20cがなす角部20aの角度と同じ角度をなすように形成される。すなわち、塗装膜厚計測治具31は、当接部31a及び31bの交差部が、角部20aの稜線と平行となるように検査対象物20に対して設置される。
【0035】
塗装膜厚計測治具31の外周側の面であって当接部31aと対向する面31cから、当接部31aと当接部31bの交差部に連通するように、孔31dが形成されている。この孔31dは、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される。孔31dにプローブPが挿嵌された状態では、プローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの中心31eに直交する配置となる。すなわちプローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。そして、図7−1に示すように、孔31dにプローブPが挿嵌された状態では、検査対象物20の面20cとプローブPの軸Xとが平行の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が0°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部20aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を、検査対象物20の角部20aに施されている塗装膜(図示せず)に当接させる。
【0036】
塗装膜厚計測治具31によれば、プローブPの計測基準となる軸Xが検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。このように、検査対象物20の角部20aに対するプローブPの相対位置を安定して保持することが可能になる。このため、検査対象物20の角部20aの膜厚を正確に計測することができる。この結果、従来は計測できないこととされていた検査対象物の角部の塗装膜厚を容易に計測することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の変形例について説明する。図7−2は、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の変形例の側視図である。この塗装膜厚計測治具32は、概略くの字状の側視形状を有している。塗装膜厚計測治具32は、その内周側に当接部32a及び32bを有している。当接部32aと当接部32bとは、互いに直交しており、検査対象物20の検査対象部位である角部20aを挟み直交する面20b及び20cに、それぞれ当接するように配置される。この当接部32a及び32bは、面20b及び20cに対し、面で当接する形態、又は複数の点や線で当接する形態がある。面20b及び20cに対して複数の点や線で当接する形態の当接部32a及び32bは、面20b及び20cに対して当接する点や線を仮想の面上に置いた場合に、当該面が直交することとなる。なお、面20b及び20cが直交している場合(角部20aの角度が90度である場合)には当接部32a及び32bは直交するように形成されるが、面20b及び20cが直交しない場合には当接部32a及び32bは面20b及び20cがなす角部20aの角度と同じ角度をなすように形成される。すなわち、塗装膜厚計測治具32は、検査対象物20の角部20aの中心32eが、角部20aの稜線と平行となるように検査対象物20に対して設置される。
【0038】
塗装膜厚計測治具32の外周側の面であって当接部32aと対向する面32cから、当接部32aと当接部32bの交差部に連通するように、孔32dが形成されている。この孔32dは、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される。孔32dにプローブPが挿嵌された状態では、プローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの中心32eの軸に直交する配置となる。すなわちプローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。そして、図7−2に示すように、孔32dにプローブPが挿嵌された状態では、検査対象物20の面20cとプローブPの軸Xとのなす角度が22.5°の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が22.5°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部20aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を、検査対象物20の角部20aに施されている塗装膜(図示せず)に当接させる。
【0039】
塗装膜厚計測治具32によれば、プローブPの計測基準となる軸Xが検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。このように、検査対象物20の角部20aに対するプローブPの相対位置を安定して保持することが可能になる。このため、検査対象物20の角部20aの膜厚を正確に計測することができる。この結果、従来は計測できないこととされていた検査対象物の角部の塗装膜厚を容易に計測することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の他の変形例について説明する。図7−3は、本発明の第2の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の他の変形例の側視図である。この塗装膜厚計測治具33は、概略くの字状の側視形状を有している。塗装膜厚計測治具33は、その内周側に当接部33a及び33bを有している。当接部33aと当接部33bとは、互いに直交しており、検査対象物20の検査対象部位である角部20aを挟み直交する面20b及び20cに、それぞれ当接するように配置される。この当接部33a及び33bは、面20b及び20cに対し、面で当接する形態、又は複数の点や線で当接する形態がある。面20b及び20cに対して複数の点や線で当接する形態の当接部33a及び33bは、面20b及び20cに対して当接する点や線を仮想の面上に置いた場合に、当該面が直交することとなる。なお、面20b及び20cが直交している場合(角部20aの角度が90度である場合)には当接部33a及び33bは直交するように形成されるが、面20b及び20cが直交しない場合には当接部33a及び33bは面20b及び20cがなす角部20aの角度と同じ角度をなすように形成される。すなわち、塗装膜厚計測治具33は、当接部33a及び33bの交差部33eが、角部20aの稜線と平行となるように検査対象物20に対して設置される。
【0041】
塗装膜厚計測治具33の外周側の面であって当接部33a及び33bと対向する面33cから、当接部33aと当接部33bの交差部に連通するように、孔33dが形成されている。この孔33dは、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される。孔33dにプローブPが挿嵌された状態では、プローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの中心33eに直交する配置となる。すなわちプローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。そして、図7−3に示すように、孔33dにプローブPが挿嵌された状態では、検査対象物20の面20cとプローブPの軸Xとのなす角度が45°の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が45°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部20aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を、検査対象物20の角部20aに施されている塗装膜(図示せず)に当接させる。
【0042】
塗装膜厚計測治具33によれば、プローブPの計測基準となる軸Xが検査対象物20の角部20aの稜線に直交する配置で保持される。このように、検査対象物20の角部20aに対するプローブの相対位置を安定して保持することが可能になる。このため、検査対象物20の角部20aの膜厚を正確に計測することができる。この結果、従来は計測できないこととされていた検査対象物の角部の塗装膜厚を容易に計測することが可能となる。
【0043】
また、塗装膜厚計測治具31の当接部31a及び31b、塗装膜厚計測治具32の当接部32a及び32b、塗装膜厚計測治具33の当接部33a及び33bに、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段を設けても良い。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段と同様の効果が得られる。
【0044】
なお、塗装膜厚計測治具31〜33を用いて検査対象物の塗装膜厚を計測する場合、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の手順で計測を行うことができる。
【0045】
次に、塗装膜厚計測治具31を用いた塗装膜厚の計測方法について説明する。まず、当接部31a及び31bを、検査対象物と同一形状の校正用部材に当接(固着手段がある場合は固着)する(第1の工程)。次に、プローブPの先端部を校正用部材に当接させ、電磁膜厚計の校正を行う(第2の工程)。なお、第1の工程及び第2の工程は、必要に応じて複数回繰り返しても良い。次に、塗装膜厚計測治具31を校正用部材から取り外し、当接部31a及び31bを検査対象物に当接(固着手段がある場合は固着)する(第3の工程)。そして、プローブPの先端部を検査対象物の検査対象部位に当接させ、検査対象部位の塗装膜厚を計測する(第4の工程)。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の効果が得られる。塗装膜厚計測治具32、33を用いた塗装膜厚の計測方法も、同様である。
【0046】
なお、ここでは当接部31bとなす角度が0°の孔31dが形成された塗装膜厚計測治具31(図7−1参照)、当接部32bとなす角度が22.5°の孔32dが形成された塗装膜厚計測治具32(図7−2参照)、当接部33bとなす角度が45°の孔33dが形成された塗装膜厚計測治具33(図7−3参照)を例に挙げて説明したが、1つの部材に当接部となす角度がそれぞれ異なる複数の孔が形成された塗装膜厚計測治具であっても良い。これにより、1つの塗装膜厚計測治具で、検査対象物の角部に複数の角度から塗装膜厚を計測することができる。
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図7−4は、本発明の第3の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の側視図である。この塗装膜厚計測治具34は、概略くの字状の側視形状を有している。塗装膜厚計測治具34は、その内周側に当接部34a及び34bを有している。本実施形態では、検査対象物23の検査対象部位である角部23aは、2C等のカット加工が施され、面取り面となっている。当接部34aと当接部34bとは、互いに直交しており、検査対象物23の検査対象部位である角部23aを挟み直交する面23b及び23cに、それぞれ当接するように配置される。この当接部34a及び34bは、面23b及び23cに対し、面で当接する形態、又は複数の点や線で当接する形態がある。面23b及び23cに対して複数の点や線で当接する形態の当接部34a及び34bは、面23b及び23cに対して当接する点や線を仮想の面上に置いた場合に、当該面が直交することとなる。なお、面23b及び23cが直交している場合には当接部34a及び34bは直交するように形成されるが、面23b及び23cが直交しない場合には当接部34a及び34bは面23b及び23cの角度と同じ角度をなすように形成される。すなわち、塗装膜厚計測治具34は、当接部34a及び34bの交差部が、角部23aの面取り面と垂直となるように検査対象物23に対して設置される。
【0048】
塗装膜厚計測治具34の外周側の面であって当接部34aと対向する面34cから、当接部34aと当接部34bの交差部に連通するように、孔34dが形成されている。この孔34dは、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される。孔34dにプローブPが挿嵌された状態では、プローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物23の角部23aの面取り面23aに直交する配置となる。すなわちプローブPの計測基準となる軸Xが、検査対象物23の角部23aの面取り面に直交する配置で保持される。そして、図7−4に示すように、孔34dにプローブPが挿嵌された状態では、検査対象物23の面23cとプローブPの軸Xとが45°の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が45°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部23aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を、検査対象物23の角部23aに施されている塗装膜(図示せず)に当接させる。
【0049】
塗装膜厚計測治具34によれば、プローブPの計測基準となる軸Xが検査対象物23の角部23aの面取り面に直交する配置で保持される。このように、検査対象物23の角部23aに対するプローブPの相対位置を安定して保持することが可能になる。このため、検査対象物23の角部23aの膜厚を正確に計測することができる。この結果、従来は計測できないこととされていた検査対象物の角部の塗装膜厚を容易に計測することが可能となる。
【0050】
また、塗装膜厚計測治具34の当接部34a及び34bに、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段を設けても良い。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段と同様の効果が得られる。
【0051】
なお、塗装膜厚計測治具34を用いて検査対象物の塗装膜厚を計測する場合、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の手順で計測を行うことができる。
【0052】
次に、塗装膜厚計測治具34を用いた塗装膜厚の計測方法について説明する。まず、当接部34a及び34bを、検査対象物と同一形状の校正用部材に当接(固着手段がある場合は固着)する(第1の工程)。次に、プローブPの先端部を校正用部材に当接させ、電磁膜厚計の校正を行う(第2の工程)。なお、第1の工程及び第2の工程は、必要に応じて複数回繰り返しても良い。次に、塗装膜厚計測治具34を校正用部材から取り外し、当接部34a及び34bを検査対象物に当接(固着手段がある場合は固着)する(第3の工程)。そして、プローブPの先端部を検査対象物の検査対象部位に当接させ、検査対象部位の塗装膜厚を計測する(第4の工程)。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の効果が得られる。
【0053】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図8−1は、本発明の第4の実施形態に係る塗装膜厚計測治具の平視図である。本実施形態は、本発明をボルト頭部の角部の膜厚計測治具に適用したものである。この塗装膜厚計測治具41は、図8−1に示すように、第1の部材42と、第2の部材43と、を含んで構成される。
【0054】
第1の部材42は、概略くの字状の平面視形状を有している。第1の部材42は、その内周側に当接部42a及び42bを有している。当接部42aと当接部42bとは、略120°の角度で交差しており、塗装膜厚計測治具41は、当接部42a及び42bが検査対象物であるボルト61の検査対象部位である角部61aを挟み略120°の角度で交差する面61b及び61cに、それぞれ当接するように配置される。この当接部42a及び42bは、面61b及び61cに対し、面で当接する形態、又は複数の点や線で当接する形態がある。面61b及び61cに対して複数の点や線で当接する形態の当接部42a及び42bは、面61b及び61cに対して当接する点や線を仮想の面上に置いた場合に、当該面が120°の角度で交差することとなる。
【0055】
第1の部材42の外周側の面42cは、ボルト61の角部61aの中心42dを軸(中心)とする円弧状の平面視形状を有している。第2の部材43は、第1の部材42の外周側の面42cに取り付けられている。第2の部材43は、第1の部材42の外周側の面42cに当たる面が、当該面42cの円弧状に沿うように凹設された円弧状に形成されている。この第2の部材43は、第1の部材42に対し、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1と同様な構成によってボルト61の角部61aの中心42dを軸(中心)として図中C―D方向に移動する。このように、第2の部材43は、ボルト61の角部61aの中心42dを軸(中心)として、第1の部材42の面42cに沿って図中時計回り及び反時計回りに回動可能である。この第2の部材43は、ボルト61の角部61aの中心42dの軸に直交する方向に貫通すると共に、当接部42a及び42bの交差部に連通する孔43cが形成されている。この孔43cは、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される。孔43cにプローブPが挿嵌された状態では、プローブPの計測基準となる軸Xが、ボルト61の角部61aの中心42dの軸に直交する配置となる。すなわちプローブPの計測基準となる軸Xが、ボルト61の角部61aの稜線に直交する配置で保持される。そして、図8−1に示すように、孔43cにプローブPが挿嵌された状態では、ボルト61の面61cとプローブPの軸Xとが60°の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が60°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部61aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を、ボルト61の角部61aに施されている塗装膜(図示せず)に当接させる。第2の部材43は、第1の部材42の面42cに沿って連続的に回動可能としても良いし、第1の部材42と第2の部材43との間にノッチ等を設けることにより、ボルト61の面61cとプローブPの軸Xとのなす角が所定の角度(例えば0°、30°、60°等)となるように段階的に回動可能としても良い。
【0056】
第1の部材42の面42a及び42bの端部には、係合部42e及び42fがそれぞれ延在している。係合部42e及び42fの先端部は、検査対象部位61aと対向する角部61dを挟む面61e及び61fにそれぞれ係合している。この係合部42e及び42fによって、塗装膜厚計測治具41はボルト61に安定して固着される。
【0057】
このように、塗装膜厚計測治具41によれば、プローブPの計測基準となる軸Xがボルト61の角部61aの稜線に直交する配置で保持される。このように、ボルト61の角部61aに対するプローブPの相対位置を安定して保持することが可能になる。このため、ボルト61の角部61aの膜厚を正確に計測することができる。この結果、従来は計測できないこととされていた検査対象物の角部の塗装膜厚を容易に計測することが可能となる。しかも、この塗装膜厚計測治具41によれば、ボルト61の面61cとプローブPの軸Xとがなす角度を容易に変更することができ、様々な角度で角部61aの塗装膜厚を計測することができる。なお、本実施形態では、検査対象物をボルトとした場合について説明したが、検査対象物をナットとすることもできる。なお、塗装膜厚計測治具41は、第2の部材43を有さない構成であってもよく、すなわち、第1の部材42に対し、プローブPの計測基準となる軸Xがボルト61の角部61aの稜線に直交するように、プローブPを挿嵌する孔が設けられていてもよい。
【0058】
なお、塗装膜厚計測治具41を用いて検査対象物の塗装膜厚を計測する場合、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の手順で計測を行うことができる。
【0059】
次に、塗装膜厚計測治具41を用いた塗装膜厚の計測方法について説明する。まず、第1の部材42の当接部42a及び42bを、検査対象物と同一形状の校正用部材に当接(固着手段がある場合は固着)する(第1の工程)。次に、プローブPの先端部を校正用部材に当接させ、電磁膜厚計の校正を行う(第2の工程)。なお、第1の工程及び第2の工程は、必要に応じて複数回繰り返しても良い。次に、塗装膜厚計測治具41を校正用部材から取り外し、第1の部材42の当接部42a及び42bを検査対象物に当接(固着手段がある場合は固着)する(第3の工程)。そして、プローブPの先端部を検査対象物の検査対象部位に当接させ、検査対象部位の塗装膜厚を計測する(第4の工程)。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の効果が得られる。
【0060】
また、塗装膜厚計測治具41の当接部42a及び42bに、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段を設けても良い。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段と同様の効果が得られる。
【0061】
次に、本発明の第3の実施形態の変形例について説明する。図8−2は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る塗装膜厚計測治具の平視図である。本実施形態は、本発明をボルト頭部の角部の膜厚計測治具に適用したものである。この塗装膜厚計測治具71は、図8−2に示すように、第1の部材72と、第2の部材73と、を含んで構成される。本実施形態では、検査対象物であるボルト81の角部がRを有していない。
【0062】
第1の部材72は、概略くの字状の平面視形状を有している。第1の部材72は、その内周側に当接部72a及び72bを有している。当接部72aと当接部72bとは、略120°の角度で交差しており、塗装膜厚計測治具71は、当接部72a及び72bが検査対象物であるボルト81の検査対象部位である角部81aを挟み略120°の角度で交差する面81b及び81cに、それぞれ当接するように配置される。この当接部72a及び72bは、面81b及び81cに対し、面で当接する形態、又は複数の点や線で当接する形態がある。面81b及び81cに対して複数の点や線で当接する形態の当接部72a及び72bは、面81b及び81cに対して当接する点や線を仮想の面上に置いた場合に、当該面が120°の角度で交差することとなる。
【0063】
第1の部材72の外周側の面72cは、当接部72a及び72bの交差部72dを軸(中心)とする円弧状の平面視形状を有している。第2の部材73は、第1の部材72の外周側の面72cに取り付けられている。第2の部材73は、第1の部材72の外周側の面72cに当たる面が、当該面72cの円弧状に沿うように凹設された円弧状に形成されている。この第2の部材73は、第1の部材72に対し、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1と同様な構成によって当接部72a及び72bの交差部72dを軸(中心)として図中C―D方向に移動する。このように、第2の部材73は、当接部72a及び72bの交差部72dを軸(中心)として、第1の部材72の面72cに沿って図中時計回り及び反時計回りに回動可能である。この第2の部材73は、当接部72a及び72bの交差部72dに直交する方向に貫通すると共に、当接部72a及び72bの交差部72dに連通する孔73cが形成されている。この孔73cは、電磁膜厚計のプローブPが挿嵌される。孔73cにプローブPが挿嵌された状態では、プローブPの計測基準となる軸Xが、当接部72a及び72bの交差部72dに直交する配置となる。すなわちプローブPの計測基準となる軸Xが、ボルト81の角部81aの稜線に直交する配置で保持される。そして、図8−2に示すように、孔43cにプローブPが挿嵌された状態では、ボルト81の面81cとプローブPの軸Xとが60°の関係にあり、この関係をプローブPのなす角度が60°の状態という。そして、塗装膜厚を測定する際には、角部81aに向けてプローブPを軸X方向に付勢して、プローブPの先端部を、ボルト81の角部81aに施されている塗装膜(図示せず)に当接させる。第2の部材73は、第1の部材72の面72cに沿って連続的に回動可能としても良いし、第1の部材72と第2の部材73との間にノッチ等を設けることにより、ボルト81の面81cとプローブPの軸Xとのなす角が所定の角度(例えば0°、30°、60°等)となるように段階的に回動可能としても良い。
【0064】
第1の部材72の面72a及び72bの端部には、係合部72e及び72fがそれぞれ延在している。係合部72e及び72fの先端部は、検査対象部位81aと対向する角部81dを挟む面81e及び81fにそれぞれ係合している。この係合部72e及び72fによって、塗装膜厚計測治具71はボルト81に安定して固着される。
【0065】
このように、塗装膜厚計測治具71によれば、プローブPの計測基準となる軸Xがボルト81の角部81aの稜線に直交する配置で保持される。このように、ボルト81の角部81aに対するプローブPの相対位置を安定して保持することが可能になる。このため、ボルト81の角部81aの膜厚を正確に計測することができる。この結果、従来は計測できないこととされていた検査対象物の角部の塗装膜厚を容易に計測することが可能となる。しかも、この塗装膜厚計測治具71によれば、ボルト81の面81cとプローブPの軸Xとがなす角度を容易に変更することができ、様々な角度で角部81aの塗装膜厚を計測することができる。なお、本実施形態では、検査対象物をボルトとした場合について説明したが、検査対象物をナットとすることもできる。なお、塗装膜厚計測治具71は、第2の部材73を有さない構成であってもよく、すなわち、第1の部材72に対し、プローブPの計測基準となる軸Xがボルト81の角部81aの稜線に直交するように、プローブPを挿嵌する孔が設けられていてもよい。
【0066】
なお、塗装膜厚計測治具71を用いて検査対象物の塗装膜厚を計測する場合、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の手順で計測を行うことができる。
【0067】
次に、塗装膜厚計測治具71を用いた塗装膜厚の計測方法について説明する。まず、第1の部材72の当接部72a及び72bを、検査対象物と同一形状の校正用部材に当接(固着手段がある場合は固着)する(第1の工程)。次に、プローブPの先端部を校正用部材に当接させ、電磁膜厚計の校正を行う(第2の工程)。なお、第1の工程及び第2の工程は、必要に応じて複数回繰り返しても良い。次に、塗装膜厚計測治具71を校正用部材から取り外し、第1の部材72の当接部72a及び72bを検査対象物に当接(固着手段がある場合は固着)する(第3の工程)。そして、プローブPの先端部を検査対象物の検査対象部位に当接させ、検査対象部位の塗装膜厚を計測する(第4の工程)。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1を用いた塗装膜厚計測方法と同様の効果が得られる。
【0068】
また、塗装膜厚計測治具71の当接部72a及び72bに、先に説明した第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段を設けても良い。これにより、第1の実施形態に係る塗装膜厚計測治具1の固着手段と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0069】
1、31〜33、41、71 塗装膜厚計測治具
2、42 第1の部材
3、43 第2の部材
4、7 永久磁石
5、6、8、9 金属片
20〜22 検査対象物
P プローブ
61、81 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の検査対象部位である角部を挟む二つの面とそれぞれ当接する二つの当接部と、
前記二つの当接部の交差部に連通し、電磁膜厚計のプローブが挿嵌される孔と、
を有し、
前記角部と前記プローブの軸とが所定の相対位置となるように、前記角部と前記プローブとを当接させることを特徴とする膜厚計測治具。
【請求項2】
前記二つの当接部を有する第1の部材と、
前記検査対象物の検査対象部位の軸又は前記二つの当接部の交差部を軸として回動可能であり、前記プローブが挿嵌される前記孔を有する第2の部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の膜厚計測治具。
【請求項3】
自身を前記検査対象物に固着させる固着手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜厚計測治具。
【請求項4】
前記固着手段は、磁石、吸盤又は前記検査対象物に係合する係合部であることを特徴とする請求項3に記載の膜厚計測治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜厚計測治具を、前記検査対象部位と略同一形状の部位を有する校正用部材に当接させる第1の工程と、
前記電磁膜厚計を校正する第2の工程と、
前記膜厚計測治具を前記検査対象部位に当接させる第3の工程と、
前記電磁膜厚計を用いて前記検査対象部位の膜厚を計測する第4の工程と、
を備えることを特徴とする膜厚計測方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【公開番号】特開2013−19760(P2013−19760A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153290(P2011−153290)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【Fターム(参考)】