説明

膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスのレベルを高めるための装置および方法

膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツの上および周りで、大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップと、窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータとを備え、弾性ストラップが、硬質アクチュエータの上にフィットし、それにより、窪み形硬質アクチュエータの窪み面を大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成され、装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置、また膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝痛を軽減する、および/または少なくとも1つの運動パフォーマンスレベルを高めるための装置および方法に関する。より詳細には、本発明は、膝痛を快適に低減する、および/または特にジャンプおよび/またはランニング時の運動パフォーマンスのレベルを高める、脚用の装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で言及する膝痛は、例えば変形性関節症などの変性疾患、関節不整合による生体機械的不全、および外傷など、いくつかの異なる構造的または機械的な原因から発生している。治療法は、診断、痛みの重度、および医師の訓練に基づいて異なる。膝痛を軽減するための従来のデバイスおよび方法は、以下のものを含む。1.処方鎮痛薬および処方箋の必要ない鎮痛薬;2.非ステロイド性抗炎症薬(「NSAIDS」)(抗炎症剤);3.アイシング;4.注射。これは2つの分類に分けられる。すなわちステロイド注射と、高分子量ヒアルロン酸(「HMWH」)タイプの注射;5.剛質の膝用装具;6.軟質の装具およびテーピング;7.手術;8.物理療法
【0003】
鎮痛薬は、高価なだけでなく、副作用を引き起こすこともあり、中毒になるおそれもある。
【0004】
NASAIDSは、膝痛の治療で非常に一般的なものである。NASAIDSは、経口摂取され、一般に、それらの作用時に抗炎症性である。それにもかかわらず、欠点は、とりわけ、結果が得られるまでに時間がかかること、それらの多様な作用、それらの高いコスト、および合成化学物質を体内に取り込むことによって引き起こされる副作用、例えば、限定はしないが、胃のむかつき、吐き気、嘔吐、胸焼け、頭痛、下痢、便秘、眠気、異常な疲労感、腹痛、脚の腫張、および耳鳴りである。
【0005】
アイシングは、痛みを麻痺させ、炎症を低減するが、利益が限られる。
【0006】
また、注射が、痛みを軽減するように意図される。ステロイドは、炎症を抑え、それにより痛みを軽減するように意図されている。それらの効果は、数週間から数ヶ月続く。HMWH注射は、人工滑液を膝関節内で生成するように意図されている。これは、結果を得られるまでに数週間かかることがあるが、効果は劇的に変わる。注射は、高価であり、また結果のばらつきもある。
【0007】
また、膝痛を軽減する試みとして、負荷支承機械的ブレースの装着もある。これらのシステムは、少なくともある程度の一時的な痛み緩和を実現する点でいくつかの利点を有する。例えば、剛質の膝用装具を使用して、人工膝関節全置換術(TKA)の必要を先送りする。しばしば「アンローダ」と呼ばれるこれらのブレースは、実際に膝の周りに剛質フレームを提供し、膝の両側からのてこの作用を生成し、典型的には、膝関節の傷んだ(しばしば内側の)区画から圧力を除去する。そのようなブレースを着用しても治癒することはなく、ある程度痛みを軽減するにすぎない。例えば、変形性関節症用の「アンローダ」ブレースは、煩わしく、それらの圧迫接点により不快に感じられることがよくあり、しかも高価である。
【0008】
軟質の装具も使用されており、時として、剛質装具と同じ機械的原理を使用する。軟質装具は、歴史的には、ある種のラップ(初期には非弾性のもの)であったが、弾性ラップ(Ace(登録商標)ラップ)の開発と共に、膝関節に対するその応答がより動的なものになり、これは、ある程度の快適さおよび効果を与えた。次に、1950から60年代に弾性ニットが開発された。より高度に開発された弾性ニットは今でも使用されている。70年代初頭には、厚さ約0.32センチメートルから約0.64センチメートルのネオプレンシート・ストックが、パターンに切断されて一体に縫い合わされ、または接着され、それにより、膝に被さるように引っ張ることができ、膝上約12.7センチメートルから約17.78センチメートル、および膝下約5.1センチメートルから約10.16センチメートルにフィットさせることができた。90年代には、Bio Skin(登録商標)と呼ばれる別の材料が市販され、これは、軟質ブレースの着用をより快適にしたが、依然として、材料が膝蓋の両側に着用される同様の設計に従うものであった。
【0009】
全般的な概念は、痛みが膝から発生しているので、膝領域(しかし膝蓋ではない)を覆い、膝に対して圧迫を加えることであった。したがって、痛み緩和のための軟質装具は、膝の上または膝蓋腱の近くにフィットするように設計されている。大腿部の遠位端、膝、または近位ふくらはぎへの圧迫があったとしてもそれは膝関節を覆う目的のものであった。いくつかのブレースでは、さらに、大腿部またはふくらはぎに被さる材料の量を減少させ、それにより膝関節自体のみを圧迫して取り囲むことに集中することが目指されている。しかし、これらのタイプの軟質装具は、いくつかの欠点を有している。ほとんどの設計において膝窩領域での膝の裏側でのフィット性が悪いことが、不快感のため、着用者にとっては問題である。
【0010】
同様に、手術および物理療法は、ほとんどの場合、不快感および痛みの長期的な欠点がある。
【0011】
残念ながら、膝痛のための現在の処置は、ほとんどすべての場合に、上で識別したこれらの分類の1つに当てはまる。
【0012】
ヒトのパフォーマンスのレベルを向上させるために、パフォーマンス向上薬物の他には知られている方法がない。そのような薬物なしで実際にヒトのパフォーマンスを向上させるコンセプトは知られていない。パフォーマンスを瞬時に高めることができる能力は、長きにわたって追究されている。デュポン(登録商標)社が、ウィリアム・クラマー博士と共に、ペンシルバニア州立大学で5年間にわたって研究を行い、圧迫衣類は、練習を積んでいるアスリートおよび練習を積んでいないアスリートの即時のパフォーマンス能力を維持はするが、実際に高めはしないことを見出した。クラマー博士の研究は、高い圧迫および高い弾性の衣類を用いた場合の疲労、力、および持久力の効果に注目した。この研究から、アスリートが、事前に分かっているレベルでのパフォーマンス能力を保つことはおそらくできることが分かったが、データは、維持されているレベルを超えるパフォーマンスは示さなかった。この研究および他のクラマー博士の業績から、ここで、水泳選手が異なる水着を着用するケース、およびテニス選手が腕に圧迫スリーブを着用するケースを見ることができる。
【0013】
したがって、従来技術は、膝痛を適切に軽減する、および/またはより下肢のパフォーマンスレベルを高める装置または方法を提供することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5735807号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、簡単かつ/または効果的に膝痛を軽減する、またはなくす装置を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
あるいは、またはさらに、本発明は、簡単かつ/または効果的に膝痛を軽減する、またはなくす方法を対象とする。
【0017】
あるいは、またはさらに、本発明は、簡単かつ/または効果的に運動パフォーマンスのレベルを高める装置を対象とする。
【0018】
あるいは、またはさらに、本発明は、簡単かつ/または効果的に運動パフォーマンスのレベルを高める方法を対象とする。
【0019】
本発明の一態様は、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツの上および周りで、大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップとを備え、装置のどの部分も、膝関節の外部を覆わず、または外部に接触せず、装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置を対象とする。
【0020】
別の態様では、装置はさらに、窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータを備え、弾性ストラップが、硬質アクチュエータの上にフィットするように構成され、それにより、窪み形硬質アクチュエータの窪み面を大腿部の中央部分の前側に対して押圧する。
【0021】
さらに別の態様では、上記位置が、大腿直筋、縫工筋、および内側広筋斜頭のほぼ交点の上にある。
【0022】
さらに別の態様では、略窪み形の硬質アクチュエータが、略楕円形であり、浅い窪み形を有し、それにより略平坦になる。
【0023】
本発明の別の態様では、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツの上および周りで、大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップとを備え、装置が、膝関節の両側には作用可能に位置決めされず、したがって、膝関節の別の部分に対する膝蓋、大腿、または脛骨顆の直接の解剖学的な位置合わせは提供せず、装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置を対象とする。
【0024】
本発明の別の態様は、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツの上および周りで、大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップと、窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータとを備え、弾性ストラップが、硬質アクチュエータの上にフィットし、それにより、窪み形硬質アクチュエータの窪み面を大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成され、装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置を対象とする。
【0025】
本発明の別の態様は、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツの上および周りで、大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップとを備え、装置が、内側広筋斜頭の発火強度を、装置なしの場合の発火強度に比べて減少させ、装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置を対象とする。
【0026】
さらに別の態様では、大腿部の中央部分が、大腿部の中央部分の遠位3分の1である。
【0027】
本発明の別の態様は、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された大腿部構成要素と、大腿部構成要素の上および周りで、大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップと、窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータとを備え、弾性ストラップが、硬質アクチュエータの上にフィットし、それにより、窪み形硬質アクチュエータの窪み面を大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成され、装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置を対象とする。
【0028】
本発明の別の態様は、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された大腿部構成要素と、大腿部構成要素の上および周りで、大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向でフィットするように構成された弾性ストラップと、大腿部に作用可能に面する面を有し、少なくとも1つの閉じた空間を作用可能に備え、および/または画定するアクチュエータとを備え、弾性ストラップが、アクチュエータの上にフィットし、それにより、アクチュエータの面を大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成され、装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置を対象とする。
【0029】
別の態様では、上記空間が、少なくとも部分的に中空である、ゲルを充填されている、または液体を充填されている。
【0030】
さらに別の態様では、上記面が窪み形である。
【0031】
さらに別の態様では、装置の装着により、着用者が、維持されている最高運動パフォーマンスレベルを超えるパフォーマンスを実現できるようになり、そのパフォーマンスは、以前の、または何らかの他の、着用者による運動パフォーマンスの絶対レベルを超える。
【0032】
さらに別の態様では、装置により、着用者が平均で少なくとも約2.4%のパフォーマンスレベルの向上を実現できるようになる。
【0033】
さらに別の態様では、装置が、少なくとも治療として有効な痛み低減量である量だけ痛みを軽減する。
【0034】
本発明の別の態様は、膝痛を軽減する方法であって、着用者の同じ脚の膝関節から離れている着用者の大腿部の長手方向中点で、着用者の大腿部の内側の一部分の上で部分に対して押圧される密着圧迫スリーブ、密着弾性ストラップ、および硬質アクチュエータの少なくとも1つを装着するステップを含み、密着圧迫スリーブ、密着弾性ストラップ、および硬質アクチュエータの少なくとも1つを装着するステップが、大腿部の内側広筋斜頭の活動または発火強度を減少させ、脚の大臀筋の活動または発火強度を増加させる方法を対象とする。
【0035】
本発明の別の態様は、上述した態様の任意の1つまたは複数を使用して、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高める方法を対象とする。
【0036】
本発明のさらに別の態様は、過去または将来の既知の(1つまたは複数の)特徴を含むか否かにかかわらず、上述した特徴の任意の1つまたは複数、および/または本明細書で以下に記載する具体的な特徴の任意の1つを単独でまたは併用して備える任意の装置または方法を対象とする。
【0037】
本明細書の一部を成し、本明細書に関連付けて読むことができる添付図面では、同様の参照符号が、様々な図面において同様の部分を示すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1a】本発明による左脚に着用された装置の一実施形態の内側斜視図である。
【図1b】本発明による左脚に着用された装置の代替実施形態の内側斜視図である。
【図1c】本発明による、下半身および脚に着用された装置のさらなる別の実施形態の内側斜視図である。
【図1d】本発明による、大腿部の周りに複数回巻かれた装置のさらなる別の実施形態の内側斜視図である。
【図1e】本発明による、脚に単独で着用された装置のさらに別の実施形態の内側斜視図である。
【図1f】本発明による、脚に単独で着用された装置のさらに別の実施形態の内側斜視図である。
【図2】図1aの装置の圧迫スリーブ構成要素10上への弾性ストラップ20の取付け位置決めを示す分解平面図である。
【図3】図1aの実施形態の圧迫スリーブ構成要素10上へのストラップ20の取付けを示す平面図である。
【図4】ヒトの大腿部の前側に対する、図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の相対動作位置決めを示す平面図である。
【図5】ヒトの右脚の前側の内部筋肉および神経系解剖学に対する、図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の相対動作位置決めを示す部分平面図である。
【図6a】図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の上部斜視平面図である。
【図6b】図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の側部・底部斜視図である。
【図6c】図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の斜めの上部・遠位部・側部斜視図である。
【図6d】図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の上部・近位部斜視図である。
【図6e】図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の上部・側部斜視図である。
【図6f】図1aの実施形態の窪み形アクチュエータ30の底部・側部斜視図である。
【図7a】本発明によるアクチュエータの代替実施形態のそれぞれ斜視図、上面図、および側面図である。
【図7b】本発明によるアクチュエータの代替実施形態のそれぞれ斜視図、上面図、および側面図である。
【図7c】本発明によるアクチュエータの代替実施形態のそれぞれ斜視図、上面図、および側面図である。
【図8】a、b、c、dは、図1aの実施形態を装着して、および装着せずに使用される外側広筋肉の筋電図データを示すグラフである。
【図9】a、b、c、dは、図1aの実施形態を装着して、および装着せずに使用される内側広筋肉の筋電図データを示すグラフである。
【図10】a、b、c、dは、図1aの実施形態を装着して、および装着せずに使用される外側ハムストリングス筋の筋電図データを示すグラフである。
【図11】a、b、c、dは、図1aの実施形態を装着して、および装着せずに使用される内側ハムストリングス筋の筋電図データを示すグラフである。ングス筋の筋電図データを示すグラフである。
【図12】a、b、c、dは、図1aの実施形態を装着して、および装着せずに使用される大臀筋の筋電図データを示すグラフである。
【図13】a、bは、図1aの実施形態を装着して、および装着せずに使用されるときの、体重に対して正規化した平均筋力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付図面に図示し、以下に詳細に論じるように、本発明の一態様は、膝痛を軽減するかなくす、および/または運動パフォーマンスの絶対レベルを即時に高めるための簡単かつ/または効果的な方法を提供する装置を対象とする。
【0040】
一実施形態では、本発明のこの態様の装置は、膝部をどこも覆わないが、膝痛がある者に対して顕著な痛み緩和をもたらす。この発見は、膝に関するいかなる種類の知見または治療とも異なるものである。例えば、膝痛の治療は、膝の使用時の痛みを軽減するためにブレース固定するとき、常に膝自体に注目している。それにもかかわらず、本発明の実施形態は、全く異なる原理によって機能する。膝に運動、構造、および感覚を提供する助けとなる膝関節よりも上位にある軟組織に係合することによって、本発明の実施形態は、膝およびその関連構造に対する一連の複雑な作用を発動すると考えられる。
【0041】
図1aを参照すると、装置1が、あるレベルの高い圧迫を左大腿部LTに加え、これは、着用者の四頭筋、ハムストリングス、臀筋内部で、正常な膝の筋肉発火シーケンスを変える。発火シーケンスのこの変化が、膝関節内部の負荷およびバイオダイナミクスを変えると考えられる。圧迫スリーブ構成要素10と、弾性ストラップ20と、(任意選択の)ハードプラスチック・アクチュエータ30との組合せは、大腿直筋(「RF」)と内側広筋斜頭(「VMO」)の接合部の上に配置されるとき、特に、筋肉構造がストラップ20およびアクチュエータ30によって独特に張力をかけられるので、四頭筋での発火シーケンスを変化させ、着用者の歩容における遊脚相を変え、着用者が歩きやすくなるようにすると見られる。同時に、この実施形態はまた、驚くべきことに、装着しやすく、着け心地が非常に良い。
【0042】
この実施形態のいくつかの利益には、膝痛を低減する、および/またはなくすのに即時に作用することが含まれる。第1に、この実施形態は、37人の患者のうち33人において即時の痛み緩和をもたらし、したがって予備試験に関する信頼性の要件に十分に対応した。以下に示すように、初期試験は、この装置が、例えば経口投与鎮痛薬を数年間使用していた数人の長期慢性患者において即時に作用したことを示す。患者は、装置1を着用することによって、手術に依拠することなく、膝を使用できる期間が延び、膝のリハビリテーションを行って機能が高まり、および/または麻酔性および非麻酔性鎮痛薬の摂取量が劇的に大幅にまたは完全に減少した。
【0043】
第2に、装着が簡単なので、この装置は、軟質装具または剛質装具よりもはるかに好ましい。
【0044】
装置の着用しやすさも同様に第3の重要な利益である。
【0045】
患者の膝痛を治療するコストも劇的に低減され、これが第4の重要な利益である。
【0046】
対照的に、従来の知見は、とりわけ、痛みのある領域を覆って、すなわち膝を覆って装具を装着するものであった。したがって、痛みのある膝部位から離れた位置で作用する装置の使用は、特に着用したときに本発明の実施形態が膝関節と物理的に接触する必要がないことを考えると、驚くべき技術である。外傷部位にわたる圧迫が痛みを減少させるという理解の下で、四頭筋およびハムストリングスの外傷に関して、軟質の圧迫大腿部スリーブが大腿部の上に配置されることがあるので、膝痛とは無関係の問題に対して大腿部スリーブを使用するという全般的なコンセプトは、それだけでは新規なものではない。逆に、従来の膝用ブレースは、大腿部の遠位部分まで達するように十分に長いものであったが、これらは排他的に、ブレースの残りの部分が膝に実際にフィットするように、またはてこの原理の支点を形成する向かい合う点を提供して、膝の直接的な機械的な再配置に影響を及ぼすように設計されて使用されている。しかし、膝痛を緩和するために膝から離れた位置にデバイスを装着するというコンセプトは、革新的なものである。
【0047】
それでありながら、装置1は、膝痛を軽減するかなくすのに効果的であることが確認された。スリーブ10による高いレベルの圧迫、および大腿部LT中央域での弾性ストラップ20によるハムストリングスと四頭筋の両方の包帯圧迫が、かなりのレベルの瞬時の痛み緩和をもたらす。スリーブ10のポケット13内にアクチュエータ30を収容すると、痛み緩和のレベルが最大になる。
【0048】
したがって、膝痛に対する圧迫スリーブ10の装着は独特のものである。専門家との相談の中で、本発明者は、大腿部デバイスによって膝痛緩和の治療を行うために使用されている製品はこれまでなかったことに気付いた。大腿部スリーブ10内に配置される窪み突形のハードプラスチック・アクチュエータ30に関連付けて使用される大腿部スリーブ10も、独創的であり発明性があるものである。大腿部に巻いた(アクチュエータ30を覆う、またはアクチュエータ30なしの)大腿部ストラップ20の利用も、独創的であり発明性があるものである。
【0049】
装置1は、例えば、大腿骨/脛骨関節または膝蓋大腿(「PF」)関節での変形性関節症、全般的なPF痛(これは約4人に1人に多かれ少なかれある)、および全般的な膝痛を患う人の痛みを軽減するために使用されるものである。少なくとも、全般的な膝蓋大腿不全による痛み、PF変形性関節症、大腿骨/脛骨変形性関節症、全般的な膝痛、人工膝関節全置換術後の痛み、膝手術後の痛みおよびその後の継続的な痛み、および/または外傷後の膝痛を緩和するのに特に有用である。
【0050】
また、装置1は、少なくとも跳躍距離についてヒトのパフォーマンスを高めるために瞬時に使用することができる。現時点までに、3人のアスリート(男性2名および女性1名)の跳躍距離の大幅な向上があった。本デバイスを着用したすべてのアスリートが、足が速くなったと感じた。この装置は、パフォーマンス向上のために、プロフェッショナルまたはアマチュアにかかわらず任意のアスリートが使用することができ、運動パフォーマンス能力をさらに高める。
【0051】
一実施形態では、装置1は、3つの構成要素、すなわち(1)大腿部スリーブ構成要素10と、(2)弾性ストラップ20と、(3)ハードプラスチック突形・楕円形アクチュエータ部片30とを含む。
【0052】
(大腿部構成要素)
着用者、医師、または他の者が、着用者の脚をスリーブ構成要素10に通して、スリーブ構成要素10を着用者の(片方または両方の)大腿部の上まで引っ張る、押す、転がす、またはその他の方法で移動させることによって、スリーブ構成要素10を装着する。
【0053】
大腿部スリーブ構成要素10に適した材料は、ライクラ/薄膜/ライクラ積層体である。この材料は、低い形状を有し、皮膚反応性がない。ネオプレンや弾性ニットなど他の弾性材料も有効であるが、嵩張り、重くなり、不快になる。特に、装置1は、Bio Skin(登録商標)などの材料を切断して縫い合わせて管状または平坦にすることによって形成されて、大腿部の周りを少なくとも一周覆って、それ自体に留めることができ、例えば縫い付けることによって、または着脱可能なフックおよびループ布地によって固定される。
【0054】
この材料の一実施形態は、全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第5735807号に記載されている。特に、そのような材料は3層からなり、これらの層は一体に積層および/または結合されて、4方向ストレッチ特性と呼ばれる特性を有する大腿部材料を形成する。この材料は、ナイロンなどからなる2層の布地外層を有し、各層が4方向ストレッチ特性を有する。中央または中心層(膜)は、やはり4方向ストレッチ特性を有するポリウレタン材料からなる。外層と中心層は一体に積層(結合)されて、本発明に有益な特性を有する材料となる。層を一体に積層することによって形成される材料は、薄く、非常に柔軟性があり、高い強度を有し、4方向ストレッチ特性を有し、高い弾性保持力を有し、かつ約35%程度の多孔率を有する。
【0055】
この特定の材料は、薄く、非常に柔軟性があるので、従来の縫製技法によって所望の形状に容易に成形(製造)される。材料の厚さは、約0.063センチメートルから約0.114センチメートル程度であるが、特定の用途に適するように他の厚さで製造することもできる。
【0056】
材料の縁部を(1つまたは複数の)縫い目で接合する(縫い合わせる)ために利用される糸または紐は、好ましくは弾性材料からなり、ステッチは、材料と実質的に同じストレッチ特性を縫い目に与える既知のタイプのものである。例えば2つの縁部を接着剤で一体に結合する、またはレーザもしくは超音波で溶接するなど、他の既知の方法によって縁部を一体に接合することもできることを理解されたい。材料(および(1つまたは複数の)縫い目)の4方向ストレッチ特性に関連付けられる柔軟性により、材料を大腿部に容易に密着させることができる。
【0057】
一実施形態では、より少ない縫い目を有する、または縫い目のない弾性織布が使用される。
【0058】
サポートの4方向ストレッチ特性および弾性は、サポートが取り囲む大腿部の領域に均一な維持力および優しい圧迫力を及ぼす。したがって、装置1は、大腿筋の撓みに固有の変化に対して抵抗を伴いながら適合する。すなわち、大腿部が撓められるとき、大腿部領域の撓みに関連する筋肉が撓んでそれらの直径サイズを変え、上記の材料により、装置1は、それらの変化に弾性的に適合できるようになるが、それと同時に、装置が取り囲む領域に一貫した抵抗力を及ぼす。ゆっくりとした伸長は、抵抗力をほとんど伴わずに達成され、急速な伸長は、強い抵抗力を伴って達成される。したがって、得られるスリーブ、ラップ、またはショートパンツは、ゆっくりとした運動に快適であり、大きいストレス下での大腿部の運動による急速な伸長に抵抗するように包帯サポートを形成する。
【0059】
この特定の薄い材料のさらなる利益は、約35パーセント程度のその多孔率である。この材料の多孔性により、空気が材料を通って流れ、それでも材料が熱保持特性を有することができるようになる。それにより、この材料は、材料を通るいくらかの空気の流れ(通気)を可能にする。熱保持品質により、いくらかの外部空気(高温または低温)が材料に入り、いくらかの内部空気(体熱)が材料を通って出ることができるようになる。この材料の独特の特性は、治療用熱を保持する助けとなり、その一方で依然として、発汗を減少するために通気性(空気の流れ)を可能にする。
【0060】
一実施形態では、この材料の特定の構成は、(a)ダーリントン・ファブリクスから市販されているライクラ材料(Style No.7043)、および(b)Fabrite Laminatorsによって製造されている厚さ1ミル(約0.00254センチメートル)のポリウレタン膜(Style No.6100)からなる。材料(a)と(b)は、熱、圧力、および接着剤を含むプロセスを使用して積層される。このプロセスは、最適化されたときには、材料を取り外す、または剥離するために少なくとも25PSIを必要とする積層体を形成する。
【0061】
装置1は、片脚に着用されるか、または2つのそのような装置が同時に両脚に着用される。
【0062】
一実施形態では、装置1は、ポケット内に収容されたアクチュエータ30が大腿部の中央部分の上にきて、アクチュエータ30の外周縁境界が大腿部の中心にくるように、脚を通してスリーブ10を引っ張ることによって装着される。
【0063】
図1bを参照すると、代替実施形態では、装置1は、ラップ40として着用されることがあり、ラップ40は、装着前に、矢印Cの方向に沿って正しい位置に円周方向で調節することができる。ラップとしてのこの設計は、特に体重の重い着用者にとっては装着がより簡単である。
【0064】
一実施形態では、装置1は、位置決めされたときに、ポケット内に収容されたアクチュエータ30が大腿部の中央部分の上にきて、アクチュエータ30の外周縁境界が大腿部の中心にくるように、脚にラップ40を巻き付けることによって装着される。一実施形態では、ラップ40は、大腿部の外側から内側に巻き付けられる。
【0065】
図1cを参照すると、別の代替実施形態において、ショートパンツ50をウエストまで引き上げて、大腿部に着用することができる。ショートパンツ50は、装置1の装着に対して片脚手法または両脚手法のオプションを提供する。ショートパンツとして設計されたとき、装置1は、痛みとパフォーマンスの両方に関して機能的である。この設計は、アクチュエータ30を大腿部の最適な点の上に位置決めするのを技術的に若干難しくすることがある。なぜなら、スリーブがショートパンツに取り付けられているので、脚の周りでスリーブを回転させにくいからである。したがって、特別に設計された、または特注のフィットしたショートパンツをあつらえることができる。ショートパンツ設計では、ショートパンツ50はウエストの周りにフィットし、大腿部分の長さ51が大腿部を下ってほぼ膝まで延び、一実施形態では、少なくとも膝上または膝下約5.08センチメートルである。
【0066】
図1dを参照すると、一実施形態では、バンドラップ60が、大腿部LTの周りに複数回巻かれる。そのようなラップ60は、包帯または紐として、ちょうど一回から数百回さらには数千回まで任意の回数巻かれることがあり、ある円周長さに対して、少なくとも1つのそれに続く円周長さ、またはそれとは離れた円周長さが全体的にまたは部分的に重なるか、または並び合って延びる。一例として、バンド63は、連続するバンド65の幅の一部分に部分的に重なる。一実施形態では、バンドラップ60は、その両端で、フックおよびループ布地によってそれ自体に取り付けられる。しかし、バンド61は、次々と触れ合う必要はなく、螺旋タイプの巻付けを成すように間を空けられることもある。バンド61は、互いに重なり合うことがあり、互いに並んで巻き付くことがあり、互いに離されることがあり、またはそれらの任意の組合せで構成されることがある。バンド61は、布地片から形成することができ、またはさらには例えば非常に細い紐から形成することができ、先細りするおよび/または変化するおよび/または不定の幅、厚さ、および材料組成でよい。
【0067】
バンド61がフックまたはループ布地でカバーされるので、それぞれフックまたはループ状にしやすい布地を有するポケット67が、アクチュエータ30を位置決めするために方向矢印Wに従ってラップ60に取り付けられる。しかし、この実施形態の1つまたは複数の追加の部片を位置決めおよび固定するのに適した任意の固定デバイスまたは配置構成を使用することができ、それらのいくつかを以下で説明する。
【0068】
一実施形態では、上述して参照した、圧迫スリーブ、ショートパンツ、またはバンドラップを含めた(1つまたは複数の)固定デバイスおよび/または(1つまたは複数の)配置構成の任意の1つまたは複数を、単独で、または別のものと組み合わせて、同じ脚に、または左右の脚で異なる形で使用することができる。
【0069】
一実施形態では、例えば圧迫スリーブ、圧迫ショートパンツ、またはバンドラップの任意の1つを、ストラップまたはアクチュエータなしで使用することができる。例えば図1eおよび図1dを参照すると、圧迫スリーブ70は、概して圧迫スリーブ10と同様に構成されるが、例えば縫付補強された72内側部分74を有し、この部分74は、圧迫スリーブ70の近位部分76または遠位部分78よりもその内径が実質的に狭く、したがってきつくなるように寸法設定および構成される。部分74は、例えばストラップ20(上)および/またはアクチュエータ30(下)と同じ大腿部分の上にフィットするように、例えばより短い長さの材料を使用することによって寸法設定された任意の長さの布地材料であり、特に(1つまたは複数の)同じ筋肉位置を覆うようにフィットするように寸法設定および位置決めすることができる。
【0070】
したがって、近位部分76および遠位部分78の(静止時の、伸展および伸長されていない)内径を表す線PおよびDは、中点の内側部分74の(静止時の、伸展および伸長されていない)内径を表す線Mよりも長い。線Mは、着用者の体型に応じて、任意の場所で線Dおよび/または線Pよりも3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%短いことがある。しかし、大腿部の中央部分の周りに十分にきつくフィットする材料を提供する任意の同様の構成が適しており、例えば特に、大腿直筋、縫工筋、または内側広筋斜頭筋のうちの任意の筋肉またはすべての筋肉の接合部の上に中央でまたは部分的にフィットするように大腿部の周りに材料を提供する。同様に、一実施形態のショートパンツは、大腿部の中央部分に配置されるより狭い内周寸法を有し、この実施形態のバンドラップは、大腿部の中央部分に、特に上述した位置で、よりきつく巻かれる。一実施形態では、アクチュエータ30はポケット13内に収まり、それにより、使用者がアクチュエータを挿入する、取り外す、および異なるまたは同じアクチュエータに交換することができるようになっている。
【0071】
(ストラップ)
図2および図3を参照すると、ストラップ20は、一片の伸展可能なループ布地11に取り付けられ、この布地11は、アクチュエータ30が中に縫い付けられているポケット13に隣接して大腿部構成要素スリーブ10に縫い付けられている。ループ布地11の位置は、装置1の効果に寄与するというよりは、ストラップ20をより簡単に巻き付けることができるように便宜を図られている。したがって、ループ11(またはフック布地)の任意の位置決め、またはスリーブ10を取り付けてしっかりと圧迫するのに適した任意の固定メカニズムが、この実施形態で有用である。ストラップ20は、アクチュエータ30が入ったポケットに隣接して大腿部構成要素上に縫い付けられている一片のループ固定具に取り付けられる。ストラップ20は、円周方向で大腿部の周りに内側に巻き付けられ、その両端でフックおよびループ固定具によって取り付けられる。
【0072】
ストラップ20は、離れていても、フックおよびループ材料によって取り付けられてもよいが、永久的に縫い付けることもできる。巻かれたストラップ20は、ラップの端部に永久的に取り付けられた弾性ラップを有することもできるが、別個の構成要素が好ましい。
【0073】
一実施形態では、ストラップ20は、大腿部の中央部分、特に大腿部の中央部分の遠位3分の1に、円周方向に位置決めされる。しかし、本発明のこの態様で他の適切な大腿部中央位置を使用することもできる。
【0074】
一実施形態では、弾性ストラップ20は、大腿部の外側から内側に巻き付けられる。したがって、一実施形態では、ストラップ20は、大腿部の周りに内側方向に巻き付けられるが、代替実施形態では外側へと巻き付けられる。
【0075】
(アクチュエータ)
図4および図5を参照すると、アクチュエータ30のこの位置決めは、特に、大腿部の中央部分の内側の上に、アクチュエータ30の水平および垂直中点39を四角形状に配置するものである。特に、アクチュエータ30の長手方向および垂直中点39は、VMO、大腿直筋(「RF」)および縫工筋「(S)」の接合部の上に位置決めされる。この位置は、大腿神経(「FN」)の分枝の上に中点39を配置するものである。
【0076】
一実施形態では、アクチュエータ30は、大腿部の中央部分、特に大腿部の中央部分の遠位3分の1に位置決めされる。しかし、本発明のこの態様で他の適切な大腿部中央位置を使用することもできる。
【0077】
したがって、アクチュエータ30(および装置1)は膝に全く触れず、当たらない。膝に対するアクチュエータ30の唯一の連接部分は、膝関節よりも上位にある筋肉、神経、および他の軟組織の上に配置される。
【0078】
図6aからfを参照すると、アクチュエータ30は、厚さ約0.20センチメートルの射出成形されたハードプラスチックナイロン構成要素である。アクチュエータ30は、その(平坦でない)表面を直接的にまたいだ両端間の長さが約10.2センチメートルであり、これがアクチュエータ30の最長寸法であり、その長手方向対称軸Yに沿って延びる。この長さ寸法Lは直線であり、したがって、(直線軸Yの上に延びる)上側に湾曲した長手方向表面の弧33によって追加される長さは考慮しない。この弧33は、延長された場合、上述した中心長手方向軸で、半径が約15.2センチメートルの円を定義する(弧33は、円状の線Xと同軸であり、延長された場合には円状の線Xと同一である)。アクチュエータ30は、それぞれの最も広い幅寸法および最も狭い幅寸法で、約8.26センチメートルおよび約6.35センチメートルの幅を有し、これらの幅は、2つの比較的直線状の先細りする向かい合う面31と32によって定義され、それらの間で直接的に延びる。これらの幅寸法は、上側に湾曲された幅方向の表面の弧34を考慮しない。この弧34は、先細りする側面長さ31および32の向かい合う端点間のほぼ半分の幅で、延長された場合に半径が約7.62センチメートルの円を定義する。アクチュエータ30全体が、その上面の周りで、比較的大きく湾曲した縁部弧38によって縁取られ、これがアクチュエータ30の周縁境界を成す。この縁部弧38は、延長された場合に、半径が約2.54センチメートルの円を定義する。その比較的直線状の向かい合う面が、それらの比較的離れた(約8.26センチメートルだけ離隔された)端部および比較的近い(約6.99センチメートル)端部で、それぞれの湾曲した向かい合う側面の弧によって接続され、これらの弧はそれぞれ、延長された場合に、半径がそれぞれ約5.1センチメートルまたは約4.45センチメートルの円を定義する。
【0079】
また、アクチュエータ30は、その全周にわたって概して湾曲され、概して平坦であるが突形の部片を形成し、わずかに湾曲した材料の上面に沿って約15.24センチメートルの長さおよび約7.62センチメートルの幅を有する。しかし、これらの一般的な寸法は、着用者の脚のサイズに応じて変更することができる。
【0080】
したがって、アクチュエータ30は、直観に反した方法で身体に装着される。窪み形面37が、左大腿部LTに対して実際に装着される。アクチュエータ30は、大腿部スリーブ構成要素10のポケット13内に収まり、(プルオンスリーブ、ラップ15、またはショートパンツ17として)大腿部に装着されるときに、ポケット13が、大腿直筋に対して内側に、内側広筋斜頭の近位体の上に位置決めされる。要約すると、アクチュエータ30の寸法にぴったり合うように縫い付けられたポケット13内にぴったり収まるアクチュエータ30が、大腿部中央でより内側に向けて位置決めされる。
【0081】
一実施形態では、大腿部に作用可能に面するアクチュエータの下面は、中空または液体もしくはゲルが充填された少なくとも1つの内部または周縁空間(限定はしないが、隙間、溝、穴、空洞、窪み、またはチャネルなど)を備える、および/または画定する。そのような(1つまたは複数の)空間の非限定的な例示的形状は、半球、窪み形、ドーム形、立方体、長方形、ボックス、開いた形状、または他の規則もしくは不規則および無秩序形状である。また、これらは、限定はしないが、例えばピラミッド形、円錐形、波形、凹凸、円筒形、瘤形、および/または(1つまたは複数の)不規則もしくは不定形状を含むこともある。
【0082】
例えば、これらの1つまたは複数の中空、ゲル充填、または液体充填空間は、1つまたは複数の主リップまたは補助リップ、あるいは1つまたは複数の同心のまたは隣接する内部リップまたは周縁リップによって画定することができる。これらのリップはいずれも、下面の境界にあるか、またはその内部にある。この/これらの空間は、閉じていても開いていてもよい(すなわち、開いている場合には、アクチュエータの主境界周縁部の一部を形成する)。
【0083】
別の実施形態では、中空および/または液体充填空間は、隆起、溝、または周縁および/または内部ブラシ、毛、または他の比較的柔軟性および/または可撓性の突起を備える。これらは、作用可能に大腿部に垂直な方向に対して任意の角度または複数の角度で突出する。
【0084】
一実施形態では、アクチュエータは、複数の独立した部片またはセグメントを備え、および/または画定し、これらは、部片毎に、または単一部片もしくはセグメントに沿ってもしくはその内部で、異なる硬さまたは同じ硬さを有する。
【0085】
一実施形態では、アクチュエータは、単に閉じたまたは開いた空間を備え、および/または画定し、あるいはさらに、正方形、多角形、円形、連続または不連続、不定形、および/または細長のリングまたはバンドを備える。
【0086】
一実施形態では、そのようなタイプまたはさらなるタイプの空間の任意のアレイおよび/または組合せを使用することができる。
【0087】
図7aからcを参照すると、一実施形態では、アクチュエータ80は完全に平坦であり、厚さ約0.254センチメートルである。アクチュエータ80は、真上から見たときにアクチュエータ30が有しているように見えるのと同じ周縁寸法を有する。すなわち、アクチュエータ80は、上から見た形状がアクチュエータ30と同じであるが、完全に平坦である。しかし、平坦化されているので、湾曲した上部、窪み形または突形、または湾曲した周縁リップを有さない。
【0088】
別の実施形態では、アクチュエータ90(図示せず)は、完全に平坦であり、厚さが約0.254センチメートルであるが、アクチュエータ80よりも長さおよび幅の寸法が小さい。その他の点ではアクチュエータ80と同じ相対形状寸法を有する。その平坦化された表面を直接的にまたいだ両端間の長さは約8.59センチメートルであり、これがアクチュエータ90の最長寸法であり、その長手方向対称軸に沿って延びる。2つの比較的直線状の先細りする向かい合う面間で直接測って、それぞれ最も広い寸法および最も狭い寸法で、幅は約6.20センチメートルおよび4.78センチメートルである。その比較的直線状の向かい合う面が、それらの比較的離れた(約6.20センチメートルだけ離隔された)端部および比較的近い(約4.78センチメートル)端部で、それぞれの湾曲した向かい合う側面の弧によって接続され、これらの弧はそれぞれ、延長された場合に、半径がそれぞれ約3.8センチメートルまたは約3.3センチメートルの円を定義する。平坦化されているので、湾曲した上部または湾曲した周縁リップを有さない。
【0089】
一実施形態では、アクチュエータ30、80、または90は、最大約0.254センチメートルの射出成形された112Rスケール硬度(少なくとも±約5%)の6/6ST801ナイロンから形成されるが、この硬度では約0.21センチメートルから約0.64センチメートルの間で形成することができる。本明細書で述べる機能のいくつかまたはすべてを実現する限りにおいて、硬度が変わるにつれて、使用される相対厚さも変えることができる。アクチュエータ30は、73°Fで約17.0のノッチ付きアイゾッド(ft/lb in.)を有し、73°Fで約9800psiの降伏時の曲げ強度を有し、73°Fで約7500psiの降伏時の引張強度を有する。他の適切な材料および硬度、ノッチ付きアイゾッド、曲げ強度、および/または引張強度の組合せも適している。
【0090】
あるいは、アクチュエータは、例えば射出成形された105Rスケール硬度(少なくとも±約5%)のABS648から形成することができる。この実施形態は、73°Fで約6.75のノッチ付きアイゾッド(ft/lb in.)を有し、73°Fで約10000psiの降伏時の曲げ強度を有し、73°Fで約5900psiの降伏時の引張強度を有する。
【0091】
しかし、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、または任意の他のポリマーもしくはコポリマー樹脂など、任意の硬質プラスチック材料または同様に機能する材料を使用することができる。また、例えば、処理された天然木材、任意の発泡射出成形樹脂(例えば上述したポリマーからなるものなど)、硬質ゴム、複合材、金属、または多くの他の材料を使用することもできる。しかし、本明細書で述べる機能の任意のものまたはすべてを行うのに適した任意の材料を使用することができる。
【0092】
一実施形態ではアクチュエータは完全に平坦であるが、この特定の実施形態に関して、任意の低い形状を使用することができる。
【0093】
ハードプラスチックおよび略楕円形のアクチュエータ30は、大腿部スリーブ構成要素20において、予め縫われたポケット15内に収まる。
【0094】
一実施形態では、プラスチック・アクチュエータ30は、大腿部の前側の他の部位に位置決めされる。
【0095】
アクチュエータ30は、プルオンスリーブ10、ラップ40、またはショートパンツ50のポケット内にあってよく、またはなくてもよい。
【0096】
一実施形態では、アクチュエータ30(または例えば80もしくは90)は、その縁部で、またはその比較的平坦な上面もしくは下面の1つまたは複数で、大腿部スリーブ構成要素10、ラップ40もしくは60、バンド61、またはストラップ20に、例えば接着剤またはフックおよびループ布地片によって、より直接的に、または直接的に固定される。
【0097】
一実施形態では、装置1は、特に体重の重い人が使用するときに、大腿部に対するその長手方向および円周方向での位置決めを動かさないように維持する助けとなるように貼着されたすべり止め内側仕上げを有し、例えば、マイクロフリースで被覆された布地、または「ゴム化」された布地、例えば被覆された豚革またはFabriFoam(登録商標)である。
【0098】
代替実施形態では、装置1は、ストラップ20および/またはアクチュエータ30が膝自体に当たらない、または触れないにせよ、膝の上に配置された一片の布地を添えられる。そのような実施形態は、例えば大腿部の下、および膝上、さらには膝下に伸長されるスリーブを備える。
【0099】
別の実施形態では、装置1または任意の他の実施形態は、膝周りにフィットするより大きな機械的なブレースの一部である。
【0100】
装置1はアクチュエータを備えて使用されるが、別の実施形態では、例えば大腿部スリーブ構成要素10および/または弾性ストラップ20のみを使用して良好な結果が得られる。
【0101】
(実施例)
上記のような多様な膝痛を単一のデバイスを用いて治療するという着想は、自分の膝痛のためにこのデバイスを着用したある整形外科医が述べているように、「すべての医学訓練を覆す」ものである。大腿部への強い圧迫と組み合わせた本発明のこの実施形態ほど、痛みを劇的にかつ瞬時に緩和することができることは予見できない。そのような圧迫と組み合わせた、上述した筋肉接合部で四頭筋の上に位置決めされるストラップ20および/またはアクチュエータ30の使用も予見できない。
【0102】
単独での大腿部スリーブの使用は、今日まで、ハムストリングスおよび四頭筋の外傷にのみ有用であった。関節痛、変性関節痛、および他のタイプの膝痛(それらはすべて非筋肉関節痛である)を低減するための大腿部へのデバイスの使用は今日まで存在していない。この発見の驚くべき性質は、ストラップ20および/またはアクチュエータ30の追加の使用を考慮したときにより一層強められる。
【0103】
まず、膝痛を緩和するために大腿部に何かを装着するという全体的な着想は、独創的な考えである。大腿での高圧迫スリーブ10とアクチュエータ30の組合せは予見できない。アクチュエータ30の位置は予見できない。突形アクチュエータの配置は、直観に反するものであるが、最も効果的である。装置1のこの構成要素の構成は、膝痛のための従来の装具の使用を科学会および医学会に一から再考させるものとなる。
【0104】
装置1およびその構成要素の組合せが予見できないだけでなく、それを見ただけでは何だか分からない。整形外科、装具、および研究の分野の専門家からは、装置1は、「驚くべきものである」、「これは、医学学校で教えられている従来の知識および科学を覆すものである」、および「これは説明はできないが有効である」という声が聞かれている。従来の知識および教示によれば、主としてすべての教示および注目が膝にしか向いていないために、膝痛の治療を大腿部において行うことは医学業界では考えられなかった。
【0105】
以下の比較データで見られるように、ここでも、アクチュエータ30の使用は直観に反するものである。大腿部の周りに高張力ストラップを装着する、または四頭筋の任意の部分の上にプラスチック製の突形楕円体を配置するような製品または方法は存在しない。装置1は、なぜ効果があるのか専門家を悩ませている。
【0106】
それにもかかわらず、予備試験は、装置1が脚の筋肉の発火パターンを変化させることを示し、これは、大臀筋以外の各主要な筋肉の発火強度の減少を含む。このことは、膝痛のない健康な患者に関する以下の試験結果で示されている。
【0107】
被験者は、本発明者または本発明の実施権者、または本発明への権利または関心を持つ任意の他の当事者とは事前に何の関係も持っていなかった。被験者は、本発明への出資をしておらず、または任意のそのような利害関係を持たず、分かっている範囲での事前の被験経験もなかった。
【0108】
(装置1を使用したときの脚の発火強度−実施例1から5)
膝痛のない患者に関して装置1を評価した。装置1の装着に関連する筋肉の活動を、確立された筋電図(EMG)技法を使用して定量化した。5人の被験者に、EMG試験のための器具を取り付けた。被験者の利き足で、以下の筋肉の筋腹の上に双極表面電極を配置した。1)外側広筋、2)内側広筋、3)外側ハムストリングス、4)内側ハムストリングス、および5)大臀筋。被験者が以下の活動を行っている間に、EMG信号を1560Hzでサンプリングした。1)自分で選択した速度で歩く、2)15.24センチメートルの段差から一歩降りる、および3)35.56センチメートルの箱から飛び降りる。さらに、被験者は、KinCom(商標)等速性筋力測定器で、膝の屈筋および伸筋に関して最大随意等尺性収縮を行い、各筋肉群について、発生した力を記録した。すべての被験者が、装置1ありの場合となしの場合について、上に列挙した活動を行った。すべての被験者に関して、装置1ありの場合となしの場合の試験の順序はランダムだった。
【0109】
図8aからd、図9aからd、図10aからd、図11aからd、および図12aからdを参照しながら、以下の表1から5で、装置1ありの場合となしの場合の被験者の脚の筋肉の平均EMG活動を比較する。
【0110】
表1(図8aからd:外側広筋)
【表1】

【0111】
表2(図9aからd:内側広筋)
【表2】

【0112】
表3(図10aからd:外側ハムストリングス)
【表3】

【0113】
表4(図11aからd:内側ハムストリングス)
【表4】

【0114】
表5(図12aからd:大臀筋)
【表5】

【0115】
図13aおよびbを参照しながら、以下の表6で、装置1ありの場合となしの場合の、体重で正規化した四頭筋およびハムストリングスの平均筋力を比較する。
【0116】
表6(図13aからb)
【表6】

【0117】
全体的には、被験者は、装置1を着用すると、すべての大腿部筋肉(外側広筋、内側広筋、外側ハムストリングス、および内側ハムストリングス)に関して筋肉活動の減少を示したが、大臀筋に関しては増加を示した。全活動にわたって平均を取ると、外側広筋および内側広筋の活動は、それぞれ18.2%および16.2%減少した。平均で、外側および内側ハムストリングス筋の活動は、それぞれ15.9%および9.6%減少した。大臀筋のみが、圧迫スリーブの装着後に活動の増加を示した(全活動にわたって19.5%の増加)。すなわち、装置は、ステップダウン中に大臀筋の力を少なくとも約45%改良した(最初の20%の立脚相での歩容に関して約17.9%)。この筋肉は、主に膝の全般的な安定化を司ると考えられている。
【0118】
被験者が装置1を着用していた間は大腿筋の活動の全体的な減少があったが、膝での力発生の減少はわずかにすぎなかった。被験者が装置1を着用していた間、平均で、膝伸筋の力発生(膝伸展中)の5.4%の減少および膝屈筋の力発生(膝屈曲中)の2.4%の減少があった。結論として、装置1の装着は筋肉活動の全体的な減少をもたらしたが、これらの実施例では、筋肉の活動のこの変化が膝屈曲/伸展中の筋肉の力発生の重要な変化を生じるとは考えられなかった。
【0119】
上のことから分かるように、装置1は、内側広筋斜頭での発火活動の減少、および外側広筋など膝の外側機構および大臀筋での全体的な発火活動の増加をもたらしている。大腿直筋および/または内側広筋斜頭での負荷の減少、および外側機構での負荷の増加は、それ以前に過度に使われた、または損傷している組織を、それほど使われずあまり損傷を受けていない組織よりも優先して保護することができ、それにより本明細書に示される結果を生むと考えられる。
【0120】
したがって、本発明の一態様は、内側広筋斜頭の発火の減少、ならびに外側広筋など膝の外側機構および大臀筋での筋肉の発火活動の増加を対象とする。
【0121】
(痛み緩和−実施例6から42)
装置1を着用した状態で、膝に対して生じるいくつかの筋肉および神経作用があると考えられる。装置1は、より高い安定性の感覚をもたらす筋肉機能を改善すると考えられる。剛質ブレースを着用していた数人の着用者は、知覚される膝の安定性が即時に相対的に改善したと感じた。しかし、最も顕著な効果は、膝痛の軽減であった。
【0122】
装置1を使用したときの膝痛の軽減に関して37人の被験者を試験した。被験者を3つの分類に分けた。(1)変形性関節症(実施例6から13)、(2)膝蓋大腿痛(実施例14から28)、および(3)全般的な膝痛(実施例29から42)。以下に見られるように、痛み軽減の平均パーセンテージは、それぞれ少なくとも約83%、少なくとも約79%、および少なくとも約75%であった。試験として、膝痛および徴候の診断で使用される標準的なステアステップ試験を行った。各患者が、痛みのある膝側の脚で、17.78センチメートルの段差から一歩降り、逆側の痛みのない膝側の脚の踵を地面に付け、次いでその脚を段差上の開始位置に再び持ち上げ、痛みに耐えられる場合にはそれを繰り返した。この試験は、関節痛だけを取り出し、0から10のアナログ段階を使用した。「10」は、耐えられない痛みを示し、「1」は、わずかな痛みから無痛を示し、「0」は、痛みが全くないこと(100%の痛み軽減)を示す。試験は常に、まず第1のセットのステアステップではデバイスなしで、その後、次のセットで装置を着用して行われた。デバイスありの場合となしの場合にそれぞれ、1から10の段階での痛みの評価を患者に尋ねた。ステップ試験前に装置1を脚に装着したときには、装置の感触に慣れるために一分間歩き回るように着用者に指示した。その時点で、多くの人が、デバイスによって脚が「弾む」感じになるとコメントした。
【0123】
現時点までに、予備試験は、装置1が、少なくとも、膝蓋大腿不全の痛み、PF変形性関節症、大腿骨/脛骨変形性関節症、全般的な膝痛、人工膝関節全置換術後の痛み、膝手術後の痛みおよびその後の継続的な痛み、および/または外傷後の膝痛を軽減する効果があることを示している。これらの予備試験の結果は、装置1が、様々な慢性および急性の膝痛を74%軽減することを示した。装置1を着用したほぼすべての人(現時点までに約40人)が、ほぼ即時の痛み緩和、すなわち約50%から100%の痛み緩和を感じた。特に、現時点までに、最も重度の痛みのあった人々が、装置1を着用して、多量の鎮痛薬の使用を止めた(9年間毎日鎮痛薬を服用していた人および10年間服用していた人が、現在は服用を止めた)。他の被験者の半分は、Tylenol(登録商標)など処方箋の必要ない鎮痛薬を間欠的に使用している。これらの使用者は、そのような薬剤の必要性が劇的に減った。
【0124】
以下は、まず装置なしの場合、次いで装置ありの場合の痛みを比較するデータである。ここで、痛みは、膝屈曲、ステップダウン、逆側の脚の踵の地面への接触、および逆側の脚の踵を開始位置まで持ち上げるために行われる膝伸展を5回(耐えられない場合にはそれ未満)繰り返した後に、0から10の痛みの段階で被験者が評価した。被験者の膝を(以下で見るように)おおまかに分類した。すなわち、手術歴あり(「1」)、変形性関節症(以下、「OA」および「2」とも呼ぶ)、膝蓋大腿痛および膝蓋大腿変形性関節症(「PFOA」および「3」とも呼ぶ)、人工膝関節全置換術(「TKA」および「4」とも呼ぶ)、および全般的な膝痛(以下では「5」とも呼ぶ)。
【0125】
【表7】





【0126】
したがって、特定の痛み緩和(パーセンテージでの減少)は以下の範囲で示された。この段落での範囲端点などに関して、値は「約」である。少なくとも11〜38、11〜43、11〜50、11〜57、11〜60、11〜67、11〜71、11〜75、11〜80、11〜83、11〜86、11〜88、11〜100、38〜43、38〜50、38〜57、38〜60、38〜67、38〜71、38〜75、38〜80、38〜83、38〜86、38〜88、38〜100、43〜50、43〜57、43〜60、43〜67、43〜71、43〜75、43〜80、43〜83、43〜86、43〜88、43〜100、50〜57、50〜60、50〜67、50〜71、50〜75、50〜80、50〜83、50〜86、50〜88、50〜100、57〜60、57〜67、57〜71、57〜75、57〜80、57〜83、57〜86、57〜88、57〜100、60〜67、60〜71、60〜75、60〜80、60〜83、60〜86、60〜88、60〜100、67〜71、67〜75、67〜80、67〜83、67〜88、67〜100、71〜75、71〜80、71〜83、71〜86、71〜88、71〜100、75〜80、75〜83、75〜88、75〜100、80〜83、80〜86、80〜88、80〜100、83〜86、83〜88、83〜100、86〜88、86〜100、および88〜100。
【0127】
以下の任意および/またはすべての範囲によって示されるパーセンテージまたはパーセンテージ範囲での痛みの緩和は、本明細書で使用するとき、治療として有効な痛み減少量と考えられるものとする。この段落でのすべての範囲端点に関して、値は「厳密に」または「約」である。11〜38、11〜43、11〜50、11〜57、11〜60、11〜67、11〜71、11〜75、11〜80、11〜83、11〜86、11〜88、11〜100、38〜43、38〜50、38〜57、38〜60、38〜67、38〜71、38〜75、38〜80、38〜83、38〜86、38〜88、38〜100、43〜50、43〜57、43〜60、43〜67、43〜71、43〜75、43〜80、43〜83、43〜86、43〜88、43〜100、50〜57、50〜60、50〜67、50〜71、50〜75、50〜80、50〜83、50〜86、50〜88、50〜100、57〜60、57〜67、57〜71、57〜75、57〜80、57〜83、57〜86、57〜88、57〜100、60〜67、60〜71、60〜75、60〜80、60〜83、60〜86、60〜88、60〜100、67〜71、67〜75、67〜80、67〜83、67〜88、67〜100、71〜75、71〜80、71〜83、71〜86、71〜88、71〜100、75〜80、75〜83、75〜88、75〜100、80〜83、80〜86、80〜88、80〜100、83〜86、83〜88、83〜100、86〜88、86〜100、および88〜100。
【0128】
(パフォーマンス向上−実施例43から48)
かなり意外なことに、初期試験は、健康なアスリートにおいて、試験を受けたアスリートの立ち幅跳びのパフォーマンスを装置1が平均で3.5%向上することをさらに示した。
【0129】
装置1を着用したときと着用しないときの、3人の健康なアスリート(男性2名、女性1名)のパフォーマンスの要約。第1の男性アスリート(実施例43から44)は高跳び選手である。第2の男性アスリート(実施例45から46)はサッカー選手である。女性のアスリート(実施例47から48)はバスケットボール選手である。
【0130】
各アスリートが、1セット4回として2セットに分けて、計8回のジャンプを行った。第1のセットは、装置1なしでの1回のジャンプと、それに続く装置1ありでの2回のジャンプ、さらにそれに続く装置1なしでの1回のジャンプからなる。第2のセットは、装置1ありでの1回のジャンプと、それに続く装置1なしでの1回のジャンプ、それに続く装置1ありでの1回のジャンプ、それに続く装置1なしでの1回のジャンプからなる。各アスリートはウォーミングアップをしてから最初のジャンプをした。ストレッチおよびウォーミングアップ、最小限のジョギング、そしてジャンプを行った。各アスリートのコンディションは良好であり、したがって疲労は問題なかった。測定は、インチの単位で行ったが、センチメートルに変換した。
【0131】
【表8】

【0132】
装置1を使用することによるパフォーマンス向上は、全体として少なくとも約3.5%である。セット1での向上は少なくとも約2.2%、セット2での向上は少なくとも約5.0%であった。すべてのアスリートについて向上が見られた。最小の向上は少なくとも約2.4%であり、次いで少なくとも約3.9%だった。次いで、最大の向上は少なくとも約4.2%だった。したがって、これらの実施例からの向上は、平均で約2.4%から約4.2%だった。すべてのアスリートによる24回のジャンプでの総計の向上は、109.22センチメートルであった。
【0133】
したがって、実際の最適なパフォーマンスレベルの特定の向上(パーセンテージ)は以下の範囲であることが示された。この段落でのすべての範囲端点に関して、値は「約」である。少なくとも0〜0.8、0〜1.2、0〜2.7、0〜3.4、0〜4.5、0〜5.1、0〜5.4、0〜7.6、0〜9.1、0.8〜1.2、0.8〜2.7、0.8〜3.4、0.8〜4.5、0.8〜5.1、0.8〜5.4、0.8〜7.6、0.8〜9.1、1.2〜2.7、1.2〜3.4、1.2〜4.5、1.2〜5.1、1.2〜5.4、1.2〜7.6、1.2〜9.1、2.7〜3.4、2.7〜4.3、2.7〜5.1、2.7〜5.4、2.7〜7.6、2.7〜9.1、3.4〜4.5、3.4〜5.1、3.4〜5.4、3.4〜7.6、3.4〜9.1、4.5〜5.1、4.5〜5.4、4.5〜7.6、4.5〜9.1、5.1〜5.4、5.1〜7.6、5.1〜9.1、5.1〜7.6、5.1〜9.1、5.4〜7.6、5.4〜9.1、および7.6〜9.1。
【0134】
通常、脚に装着されるデバイスは、重く、嵩張り、または動きにくくなり、競技中の使用には望ましくないとみなされている。本発明の実施形態は邪魔にならず、試験を受けたすべてのアスリートが、デバイスの着用により得られたパフォーマンスに対する良い効果のみを感じた。
【0135】
着用したとき、非常に多くの場合に、装置1を着用した脚が即時に、より「弾む」ように感じられる。歩行中の着用者の重複歩における遊脚相中、脚がばね負荷を受けているかのようになり、その脚の膝がより楽に前に振られる。実際に、対応する膝は、地面からより高く持ち上がり、それにより足がより高く上がることが観察された。
【0136】
この向上した「弾む」ような感覚は、4年前にオートバイ事故を起こし、膝蓋、脛骨、および腓骨の骨折が残っていた人に装着したときに最も顕著であった。これと共に、この着用者は、痛めた脚の神経障害があり、そのため、歩行中に脚を適切に持ち上げることができなかった。デバイスを装着した直後に、この着用者の歩容が変わり、つま先および踵を引き摺らないように、足を適度に床から上げることができた。
【0137】
本発明の第2の態様は、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高める方法であって、実質的に上述したような実施形態、特徴、構成要素、および技法の任意の組合せを含む方法を対象とする。加えて、または代替として、本発明のこの方法の態様で他の実施形態、技法、またはデバイスを使用することができる。
【0138】
本明細書で開示される本発明の例示的実施形態が本発明の目的を達成することは明らかであるが、いくつかの修正形態および他の実施形態を当業者が開発することもできることを理解されたい。さらに、任意の実施形態からの(1つまたは複数の)特徴および/または(1つまたは複数の)要素を、単独で、または(1つまたは複数の)他の実施形態と組み合わせて使用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に入るそのような修正形態および実施形態をすべて網羅するものと意図されていることを理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、
少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、
前記圧迫スリーブ、前記圧迫ラップ、または前記圧迫ショートパンツの上および周りで、前記大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップとを備え、
装置のどの部分も、膝関節の外部を覆わず、または前記外部に接触せず、
前記装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置。
【請求項2】
さらに、窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータを備え、前記弾性ストラップが、前記硬質アクチュエータの上にフィットするように構成され、それにより、前記窪み形硬質アクチュエータの窪み面を前記大腿部の中央部分の前側に対して押圧する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記位置が、大腿直筋、縫工筋、および内側広筋斜頭のほぼ交点の上にある請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記略窪み形の硬質アクチュエータが、略楕円形であり、浅い窪み形を有し、それにより略平坦になる請求項2に記載の装置。
【請求項5】
膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、
少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、
前記圧迫スリーブ、前記圧迫ラップ、または前記圧迫ショートパンツの上および周りで、前記大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップとを備え、
前記装置が、膝関節の両側には作用可能に位置決めされず、したがって、膝関節の別の部分に対する膝蓋、大腿、または脛骨顆の直接の解剖学的な位置合わせは提供せず、
前記装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置。
【請求項6】
さらに、窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータを備え、前記弾性ストラップが、前記硬質アクチュエータの上にフィットし、それにより、前記窪み形硬質アクチュエータの前記窪み面を前記大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成される請求項5に記載の装置。
【請求項7】
膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、
少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、
前記圧迫スリーブ、前記圧迫ラップ、または前記圧迫ショートパンツの上および周りで、前記大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップと、
窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータとを備え、前記弾性ストラップが、前記硬質アクチュエータの上にフィットし、それにより、前記窪み形硬質アクチュエータの前記窪み面を前記大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成され、
前記装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置。
【請求項8】
前記位置が、大腿直筋、縫工筋、および内側広筋斜頭のほぼ交点の上にある請求項7に記載の装置。
【請求項9】
膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、
少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された圧迫スリーブ、圧迫ラップ、または圧迫ショートパンツと、
前記圧迫スリーブ、前記圧迫ラップ、または前記圧迫ショートパンツの上および周りで、前記大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップとを備え、
前記装置が、内側広筋斜頭の発火強度を、装置なしの場合の発火強度に比べて減少させ、
前記装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置。
【請求項10】
前記大腿部の中央部分が、前記大腿部の中央部分の遠位3分の1である請求項9に記載の装置。
【請求項11】
膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、
少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された大腿部構成要素と、
前記大腿部構成要素の上および周りで、前記大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向できつくフィットするように構成された弾性ストラップと、
窪み面を有する略窪み形の硬質アクチュエータとを備え、前記弾性ストラップが、前記硬質アクチュエータの上にフィットし、それにより、前記窪み形硬質アクチュエータの前記窪み面を前記大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成され、
前記装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置。
【請求項12】
膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高めるための装置であって、
少なくとも片脚の大腿部の上にフィットするように構成された大腿部構成要素と、
前記大腿部構成要素の上および周りで、前記大腿部の中央部分で膝関節の上に、円周方向でフィットするように構成された弾性ストラップと、
前記大腿部に作用可能に面する面を有し、少なくとも1つの閉じた空間を備えるアクチュエータとを備え、前記弾性ストラップが、前記アクチュエータの上にフィットし、それにより、前記アクチュエータの前記面を前記大腿部の中央部分の前側の位置に対して押圧するように構成され、
前記装置の装着が、膝痛を軽減し、および/または運動パフォーマンスを高める装置。
【請求項13】
前記空間が、少なくとも部分的に中空である、ゲルを充填されている、または液体を充填されている請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記面が窪み形または平坦である請求項12に記載の装置。
【請求項15】
請求項1、5、7、9、11、および12のいずれか1項に記載の装置を使用する、膝痛を軽減する、および/または運動パフォーマンスを高める方法。
【請求項16】
膝痛を軽減する方法であって、
着用者の同じ脚の膝関節から離れている前記着用者の大腿部の長手方向中点で、前記着用者の前記大腿部の内側の一部分の上で前記部分に対して押圧される密着圧迫スリーブ、密着弾性ストラップ、および硬質アクチュエータの少なくとも1つを装着するステップを含み、
密着圧迫スリーブ、密着弾性ストラップ、および硬質アクチュエータの少なくとも1つを装着する前記ステップが、前記大腿部の内側広筋斜頭の活動または発火強度を減少させ、脚の大臀筋の活動または発火強度を増加させる方法。
【請求項17】
前記装置の装着により、着用者が、維持されている最高運動パフォーマンスレベルを超えるパフォーマンスを実現できるようになり、前記パフォーマンスが、以前の、または何らかの他の、前記着用者による運動パフォーマンスの絶対レベルを超える請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記装置の装着により、着用者が、維持されている最高運動パフォーマンスレベルを超えるパフォーマンスを実現できるようになり、前記パフォーマンスが、以前の、または何らかの他の、前記着用者による運動パフォーマンスの絶対レベルを超える請求項1、5、7、9、11、および12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記装置により、前記着用者が平均で少なくとも約2.4%のパフォーマンスレベルの向上を実現できるようになる請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記装置が、少なくとも治療として有効な痛み低減量である量だけ痛みを軽減する請求項1、5、7、9、11、および12のいずれか1項に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−530516(P2012−530516A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514231(P2012−514231)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/037666
【国際公開番号】WO2010/141958
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511295542)
【Fターム(参考)】