説明

膣内送達により子宮頸部異形成を治療するための二相性脂質小胞組成物および方法

膣内送達により子宮頸部異形成を治療するための二相性脂質小胞組成物。組成物は、水中油型エマルション、ヒトインターフェロンα−2bおよびL−メチオニンをその中に封入している脂質二重層小胞の懸濁液を含み、組成物は、組成物1グラム当たり約1〜10MIU(百万国際単位)のインターフェロンα−2bに特異的な活性、および0.01〜0.5重量パーセントのL−メチオニンを有する。治療方法において、約1〜20MIUインターフェロンα−2bの用量で組成物を投与され、少なくとも4週間の間、少なくとも3日/週でこの用量を投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膣内送達により子宮頸部異形成を治療するための二相性脂質小胞組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国において毎年実施される推定5千5百万件のパパニコラウスミアのうち、5%を超えるものが異常と報告される(2003年度ALTS調査)。毎年推定800,000人の女性に低度の扁平上皮内病変(LSIL)が見られる(非特許文献1)。
【0003】
これらの病変は、治療せずに時が経つと、CIN2〜3もしくは侵襲性癌のいずれかに進行するか(特に高リスクHPVサブタイプを呈する女性では)、または時が経つとともに退行する。LSILと診断された女性のうち25%は、グレード2または3の子宮頸部上皮内新生物(CIN)に進行し、22〜32%は持続性CIN1を有するが、約50%〜70%は2年以内にLSILの自発的退行を経験するであろう(非特許文献2)。約75%は、5年以内に自発的退行を経験する。
【0004】
ベセスダシステムの細胞学的なLSILの定義は、ドイツでおよびEU中で使用されているミュンヘン分類システムと異なる。LSILは、ベセスダシステムにおけるコンジローマまたはCIN1に対応する。ミュンヘン分類において、これらの所見はPap IIW〜IIID群で表される。しかしながら、IIID群にもCIN2(軽度異形成)のコルポスコピー診断を有する患者が含まれることは注目すべきである。
【0005】
現在のところ、LSILを呈しHPVを有する女性のため利用し得る直接的治療法はない。ひとたび低度の異常パパニコラウスミアが検出されると、患者と医師は、それを一度もしくは複数回繰り返すか、またはコルポスコピーに進むか選択するしかない。コルポスコピーはしばしば生検を伴って行われる。コルポスコピーおよび生検の所見に基づいて、治療の選択肢は、円錐切除、寒冷療法またはレーザー治療を含む。そのような選択肢の治療を受けた女性には、流産および早産の危険性が増大している可能性がある。
【0006】
子宮頸部の種々のHPV感染に対してインターフェロンが有効であると記載している刊行された多数の治験がある。子宮頸部上皮内新生物を治療するためのインターフェロンの使用についての研究は、0〜100%の間の治癒率を報告している。これらのバラツキは、用量、治療期間、適用方式、研究計画、疾患重症度、および有効性の尺度における差を反映している可能性が最も大きい。
【0007】
非盲検試験において、Pennaら、(1994年)(非特許文献3)は、HPV感染を伴うCINを有する女性の子宮頸部中の病変周囲内に3週間毎日3MIUのIFNβを適用した後の、タイプ16/18HPVの80%の病変退行および51%の正常への逆転を報告した。同様に、非盲検の予備試験で、Katesmarkら(1999年)(非特許文献4)は、IFNが移行帯中に注入されたときの、CINの73%の病理学的完全応答率を示した。
【0008】
Schneiderら(1995年)(非特許文献5)は、CINを有する女性において、IFN−γ 1bゲル療法後の、42%の完全応答、42%の部分応答を報告した。この研究において、CINIIIに比較してCINIIを有する患者の応答の方が良好であった。非喫煙者に比較して、喫煙者は有意に低い治癒率を示したことも興味がある。
【0009】
Zarconeら(1995年)(非特許文献6)は、HPV+の女性におけるCINIおよびIIの治療において、筋肉内および局所併用α−IFN療法で、12名の患者の小規模な研究における成功を報告している。3週間毎日筋肉内用量3MIU以下のIFNの投与を、治療の最後の2週間、用量が特定されないIFNクリーム剤の膣内適用と組み合わせたところ、7名の患者で完全応答、4名の患者で部分応答、そして1名の患者で無応答という結果であった。
【0010】
Syedら(1998年)(非特許文献7)は、毎日16MIUの用量のインターフェロンαの親水性ゲルを、膣内に1週間当たり5日連続して4週間にわたる治療期間投与すると、膣疣贅の治療にプラセボより有意に有効であったことを示した。これらの研究は、インターフェロン療法が、コルポスコピーにより判定され、ランダム生検の細胞学的および病理学的検査により確認された、HPV感染を伴うCINの治療に有効であることを示すが、これらの研究のいずれも、治療後のHPVの状態を検査していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jones、BA、Davey DD. Quality management in gynaecologic cytology using interlaboratory comparison. Arch Pathol Lab Med 2000年;124巻(5号):672〜81頁
【非特許文献2】ALTS group 2003、Ostor AG Natural history of cervical intraepithelial neoplasia: a critical review. Int. J. Gynecol Pathol 1993年;12巻:186〜92頁
【非特許文献3】Penna C、Fallan MG、Gordigiani Rら、Intralesional beta-interferon treatment of cervical intraepithelial neoplasia associated with humanpapillomavirus infection、Tumori 1994年;80巻:146〜150頁
【非特許文献4】Katesmark M.、Coulter Smith S.、Reynolds K.、Lawton F. A pilot study of the efficacy and tolderability of intralesional recombinant human beta interferons in cervical intraepithelial neoplasia. Ann Acad Singapore 1999年;28巻(6号)775〜7頁
【非特許文献5】Schneider A、Grubert T、Kirchmayr R、Wagner D、Papendick U、Schlunck G. Efficacy trial of topically administered Interferon gamma-lb gel in comparison to laser treatment in cervical intraepithelial neoplasia. Arch Gynecol Obstet 1995年;256巻:75〜83頁
【非特許文献6】Zarcone R.、Bellini P.、Cardone G.、Cardone A. Treatment of cervix condylomata with alpha-IFN leucocytar. Clin Exp Obst Gyn 1995年;22巻(4号):326〜9頁
【非特許文献7】Syed TA、Ahmadpour A. Human leukocyte derived interferon-α inhydrophilic gel for the treatment of intravaginal warts in women: a placebo-controlled、double-blind study. Intl J STD and AIDS 1998年;9巻:769〜772頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの研究における種々の制限に基づいて、疾患過程の初期段階中に異常な細胞像を逆転させて、HPVの存在を減少させまたは根絶することができる非侵襲的療法は、多くの若い女性の健康管理システムならびに身体的および精神的福祉に大きな利益を提供するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様において、本発明は、膣内送達により子宮頸部異形成を治療するための二相性脂質小胞組成物を含む。組成物は、水中油型エマルション、ヒトインターフェロンα−2bおよびメチオニンをその中に封入している脂質二重層小胞の懸濁液を含み、組成物は、組成物1グラム当たり約1〜10MIU(百万国際単位)のインターフェロン−α−2b特異的活性および0.01〜0.5重量パーセントのメチオニンを有する。
【0014】
組成物は、クリーム剤形態であってよく、特定の実施形態において、組成物1グラム当たり1〜3MIUヒトインターフェロンα−2bの特異的活性のヒトインターフェロンα−2bおよび0.01〜0.5重量パーセントのL−メチオニンを含む。
【0015】
他の態様において、本発明は、1〜20MIUの間のインターフェロンα−2bの用量で上記組成物を対象の膣内に投与して、少なくとも4週間の間、少なくとも3日/週の投与を繰り返すことにより、対象における子宮頸部異形成を治療する方法を含む。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の目的および特徴は、本発明の下記の詳細な説明を、添付図面と合わせて読めば、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】無水プラスチックプロリポソームゲル法を使用して調製した、本発明の組成物中の多重層脂質小胞のスキャンした像である。
【図2A】「無水プラスチックプロリポソーム−ゲル」(「溶融」または「融解」)法を使用して調製した多重層リポソームのスキャンした像である。
【図2B】2Aと同じ組成物であるが、溶媒蒸発法により調製した多重層リポソームのスキャンした像である。
【図3】中心部水性エマルションコアを有する二相性MLVの模式的断面図である。
【図4】図3のMLVの部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.二相性リポソーム組成物およびその調製方法
本発明は、インターフェロン、例えば、インターフェロンα−2bを、経粘膜送達により、例えば、膣内投与により送達することに、特に子宮頸部異形成の治療に、使用するための脂質二重層またはリポソームまたは脂質小胞組成物に関する。
【0019】
本発明の多重層脂質小胞を調製する好ましい方法は、下記の通りである。油と粘稠度増強剤を混合する。別に、水と界面活性剤を混合する。水溶性抗微生物剤、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン、リン酸塩などの緩衝剤、およびEDTAなどのキレート剤も、水中に溶解することができる。これらを穏やかに、例えば、約70℃に加熱して、次に混合して油および粘稠度増強剤とホモゲナイズする。その結果、水を連続相とし、油および粘稠度増強剤を分散相とするエマルションが生成する。油滴は、直径約1μm未満特に約0.5μm未満であることが望ましく、必要であれば、油滴のサイズを減少させるために、エマルションを、追加のせん断または超音波処理にかけることができる。
【0020】
別に、リン脂質、糖脂質および/またはセラミドおよび薬学的に許容し得る親水性溶媒、例えば、プロピレングリコールを混合し、それらを加熱して溶融物を形成させることにより、無水プロリポソームゲルが調製される。溶融物中に、脂質二重層の強度を増大させる材料、例えばコレステロール、浸透を促進する材料、例えばモノラウロイルリシン、および脂質二重層に電荷を賦与する材料、例えばステアリン酸を組み込むこともできる。少量の酸化防止剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシトルエン、またはブチル化ヒドロキシアニソールを溶融物に組み込むことができる。水性エマルションを溶融物に加えて、種々の成分を攪拌すると、その結果、中心部コア区画中に、分散相として油および粘稠度増強剤を含む水性エマルションを有する所望の多重層脂質小胞が形成される。
【0021】
水溶性の生物学的活性物質、特に、ヒトインターフェロンα−2bは、下で論ずるように、エマルションの水相中の溶液に取り込むことができる。インターフェロンα−2bを水性相中に取り込み、組成物1グラム当たり1〜10MIUの特異的活性を有する最終組成物を形成させる。組成物は、0.01〜0.5重量パーセントのL−メチオニン、例えば0.01〜0.2重量パーセントのL−メチオニン(この成分は、最終組成物中で所望の濃度を与えるのに効果的な濃度で水性相中に取り込むこともできる)、およびEDTAなどのキレート剤またはL−メチオニンなどの酸化防止剤および/またはグリシンなどのタンパク質安定剤も含むように製剤化することもできる。
A.無水プラスチックプロリポソームゲルの形成
リポソーム形成成分および他の必要な賦形剤を、プロピレングリコールなどの薬学的に許容し得る親水性溶媒と溶融する。
【0022】
「リポソーム形成成分」という表現は、脂質二重層の主成分として使用される材料または物質を表す。典型的リポソーム形成成分は、脂質二重層の形成における主成分として使用される糖脂質、レクチン、リン脂質、セラミドまたはそれらの混合物を含む。しかしながら、必要とされる両親媒性を有する他の天然および合成化合物を、リン脂質、糖脂質またはセラミドとともに取り込むことができて、脂質二重層の本質的特性が損なわれない限り、これらの高価な材料の一部を置き換える。適当な材料の選択は、当業者の知識のうちである。例には、ホスファチジルエタノールアミン、リソレクチン、リソホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸およびセレブロシド、エーテル脂質およびフィタノールが挙げられる。
【0023】
本発明のリポソーム製剤は、好ましくは、飽和および/または不飽和リン脂質、より好ましくはホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、糖脂質およびセラミドを含む。リン脂質は、好ましくは、主に経皮送達を可能にするために、モノラウロイルセリン、ジパルミトイルセリンまたはサリチル酸メチルなどの浸透増強剤と組み合わせる。
【0024】
「脂肪性物質」は、脂質二重層の強度を増大させるために使用することができる。有用な脂肪性物質の例には、コレステロール、コプロスタノール、コレスタノールおよびコレスタンおよび長鎖脂肪酸(C16からC22)、特にステアリン酸など飽和したものなどのステロイドが挙げられる。酸は、脂質二重層の強度を増大させることに加えて、負電荷を賦与する。飽和したまたは不飽和の酸を使用することができる。使用することができる他の脂肪性物質は、C16からC22の脂肪族アミン、脂肪族アセチル化タンパク質、脂肪族アセチル化ペプチド、脂肪族アセチル化PEGおよび誘導体を含む。これらの脂肪性物質は、上記のリポソーム形成成分とともに組み込まれて製品の物理的安定性および外観を改善する。
【0025】
親水性溶媒は、リポソーム形成成分の可塑剤および均一溶融物を調製する助剤として使用される。親水性溶媒の例には、プロピレングリコール、グリセリン、300と8000の間の分子量を有するポリエチレングリコール、エタノールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。生成する溶融物は、無水プラスチックプロリポソームゲルであると記載することができる。この無水プラスチックプロリポソームゲルは、全ての脂質相成分を含み、予め大量に調製して貯蔵することができる。それは、粘稠度が均一な半固体材料である。
B.多重層脂質小胞の形成
浸透増強剤、防腐剤などの親水性成分は、エマルションの連続相を形成する水溶液として、別に調製される。これを、40℃から80℃の範囲であってよい適当な溶融温度に予め加熱された脂質相溶融物に加えて、所望の製品サイズを得ることを可能にする任意の所与の技法により、激しく攪拌する。混合技法の例には、ボルテックスにかけるかまたはプロペラによる混合が挙げられる。この段階で、脂質二重層内に封入される固体の生物学的活性剤を組み込む(溶解する)ことも可能である。
【0026】
この手順は、種々の量の局所用リポソーム製品の調製に適している。攪拌としてボルテックス混合が使用されるなら、約20gまでの製品を調製することができる。実験室規模のプロペラミキサーが使用されるなら、約2Kgから10Kgまでの製品を作製することができる。この製剤化法は、大規模製造に適合させることもできる。したがって、プロペラ混合技法は、容器のサイズとプロペラミキサーの直径とを幾何学的に増大させることにより、そのままスケールアップすることができる。しかしながら、容器サイズが増大したとき、好ましい装置は、組合せミキサー、すなわち、プロペラミキサーの付いた高強力ミキサーと掻き取り表面攪拌機となる。水性相は、タンクAから無水プラスチックプロリポソームゲルを含むタンクBへポンプで送り込むことができ、または水性相をタンクBに加えて混合する前に、求められる温度でエマルションと混合することもできる。この手順は、任意の局所用リポソーム製品を大規模に製造するのに適している。
【0027】
リポソーム組成物は、適当な医薬用添加剤を使用することにより、本発明の多重層脂質小胞を用いて調製することができる。例えば、増粘剤を最終リポソーム製剤に添加することが必要とされることもある。他の薬学的に許容される化合物の添加は、当業者の視野のうちである。
C.最終多重層脂質小胞製品の特性
上記の方法により調製された多重層脂質小胞を模式的に示した図を、図3に示す。参照番号2により一般的に示される多重層脂質小胞は、一連の周辺性水溶液区画3および5の輪郭を定める一連の間隔で分かれた脂質二重層4、6および8で作られている。最小の脂質二重層7は、中心コア区画9の輪郭をその中央に定めている。6つの脂質二重層だけ示されているが、図は単純化されて模式的であり、実際には6を超える脂質二重層が存在することが理解されるべきである。
【0028】
図4は、図3の小胞の拡大図であり、脂質二重層の中心部コア区画およびある一部を詳細に示す。中心部コア区画9は、連続相としての水10と分散相としての親油性液滴または固体微粒子11とからなる水性エマルションにより占められている。親油性液滴または固体微粒子は、界面活性剤分子12の層により囲まれ、各界面活性剤分子の親水性部分13は水性相中に伸びて、疎水性部分は油滴の表面にある。
【0029】
コア区画を包囲しているのは、最内脂質二重層15である。脂質二重層は、脂質分子16の2層から構成されている。層中の各脂質分子16は、隣接の脂質二重層に実質的に平行に配向しており、二重層を形成する2層は、それらの分子の極性の端17を水性相に露出させ、非極性の端18を互いに隣接させている。最内脂質二重層15とその次の最内脂質二重層19との間に水または水性エマルションのいずれかで充填された周辺性区画20がある。示したように、界面活性剤で囲まれた親油性液滴または粒子11は、周辺性区画20中に存在することができる。
【0030】
周辺性区画20を囲むものは次の最内脂質二重層19であり、それは順送りで、さらなる周辺性区画およびさらなる脂質二重層により囲まれている。
【0031】
生物学的活性成分、例えば、インターフェロンα−2b、およびL−メチオニン成分は、中心部コア区画9中および周辺性区画20中の水性エマルションの水中に存在することが理解されるであろう。粘稠度増強剤または取り込み増強剤など親油性である生物学的活性成分は、中心区画9中および周辺性区画20中のエマルションの分散相中に存在することができる。それらは、21に示した脂質二重層の内部に存在することもできる。生物学的活性成分は、親油性液滴21を構成することができ、または生物学的活性成分は、液滴21を形成する親油性溶媒中に溶解することもできる。したがって、本発明は、水溶性または水不溶性の生物学的活性成分の局所適用を可能にする。
【0032】
組成物は、これらの水性成分の少なくとも約30重量パーセント、好ましくは約40〜70重量パーセントが、組成物の小胞外のバルク相中に運ばれずに、リポソームに封入された形態で存在する条件下に形成されることが好ましい。これらのレベルの封入は、種々の既知の戦略、例えば、逆相蒸発法によりリポソームを形成し、かつ/またはリポソーム形成脂質が高濃度の状態で水性相材料をカプセル化し、それによってバルク水性相の量を最小化することにより達成することができる。
【0033】
図1は、局所用ローション剤として使用するために作製された小胞の440×拡大スキャン像である。この製品は、ローション剤または半固体クリーム剤の粘稠度を示した。スキャン像を検査すると、均一なサイズ分布を有する多重層構造であることがわかる。これらは、1年を超える長期間の物理的安定性を示した。
【0034】
本発明の好ましい方法にしたがって製造されたリポソーム集団内で観察された性質における差を示す目的で、同一成分からであるが、一方の場合は溶媒蒸発法で、および他方の場合は好ましい無水プラスチックプロリポソームゲル法で調製された、2つのリポソーム組成物間で、比較テストが実施された。図2Aは、無水プロリポソームゲル(「溶融」または「融解」)法を使用して調製されたリポソーム集団のスキャン像であり、および図2Bは、溶媒蒸発法を使用して調製されたリポソーム集団のスキャン像である。わかるように、無水プラスチックプロリポソームゲル法を使用して得られたリポソーム集団は、溶媒蒸発法を使用して得られたものより実質的に均一なリポソームサイズ分布を有する。また、無水プラスチックプロリポソームゲル法を使用したときは、極く少量の凝集したまたは融合したリポソームが形成されるが、溶媒蒸発法を使用して得られたリポソーム集団では、大きい凝集物を観察することができる。
【0035】
本発明のある実施形態において、親油性物質は、リポソーム中にカプセル化できる油または固体/半固体の親油性粘稠度増強剤である。固体または半固体の親油性粘稠度増強剤として、脂肪族アルコール、ワックス、脂肪族アルコール脂肪酸エステル、グリセリドエステル、白色ワセリンおよびそれらの混合物が挙げられる。リポソーム中に首尾よくカプセル化される油の例は、ペンタエリトリトールテトラカプリレート/カプレート、ペンタエリトリトールテトライソステアレート、セテアリルオクタノエートおよび菜種油、ホホバ油、ピーナツ油、米ヌカ油、綿実油、ヒマワリ油、コーン油、クルミ油、アボカド油、ペルーバルサム、チョウジ油およびオイゲノールである。油を主成分とする植物抽出物も、リポソーム中に首尾よく組み込める。固体/半固体親油性粘稠度増強剤成分は、ワックス、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、グリセリルステアレート、石油またはそれらの組合せから選択することができる。好ましい粘稠度増強剤の具体的な例には、蜜蝋、グリセリルトリベヘネート、グリセリルステアレート、ステアリルヘプタノエート、ステアリルパルミテート、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルミリステート、ベヘニルエルケートおよびセチルパルミテートが挙げられる。
【0036】
本発明による小胞および粘稠度増強剤を含む組成物の粘度は、粘稠度増強剤を含まないがその他については同一である対応する小胞の粘度より大きい。粘稠度増強剤の量を変更することにより、比較的流動性の液体から「ローション」、「クリーム状」ないし「濃厚クリーム」までの実質的に任意の求められる粘度を得ることが可能である。組成物の特定の粘度を得るための粘稠度増強剤量は、日常的実験により決定することができる。
【0037】
油滴または固体/半固体親油性粘稠度増強剤成分を被覆するために使用される界面活性剤は、親油性コアを多重層脂質小胞中に首尾よくカプセル化するために重要である。約30種類の異なる界面活性剤をスクリーニングして、第一級カチオン性乳化剤が最も満足な結果を与えることを見出した。最も好ましい界面活性剤は塩化ベンザルコニウムである。天然から誘導された乳化剤などのノニオン性または両性界面活性剤も使用することができる。すなわち:PEG−60アーモンドグリセリド、アボカド油ジエタノールアミン、エトキシル化ホホバ油(PEG−40ホホバ酸およびPEG−40ホホバアルコール);ポリオキシエチレン誘導体:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート;ラノリン誘導体:ポリコール(polychol)20(Laneth20)、ポリコール40(laneth40);中性リン酸エステル:PPG−セチルエーテルホスフェート、DEAオレス−3−ホスフェートである。アシルグルタメート:TEA−ココイルグルタメート、ナトリウムラウロイルグルタメート、ナトリウム水素化獣脂グルタメートおよびナトリウムココイルグルタメートなどのアニオン性界面活性剤を使用することも可能である。界面活性剤は、高い臨界ミセル濃度(CMC)を有することが望ましい。
【0038】
水中親油性物質型エマルションを調製するとき、親水性成分および界面活性剤は全て水に取り込まれる。エマルションの水相が調製されたら、油および/または固体/半固体親油性成分を水に加えて、ホモジナイザー中5から30分の範囲の時間で比較的小さい液滴サイズを得る。好ましい液滴サイズの範囲は、0.1μmから1μm、最も好ましくは約0.5μm未満である。次に、脂質相溶融物を加熱して、水中親油性物質型エマルションを加え、製品サイズに応じてボルテックスにかけるかまたはプロペラ混合のいずれかにより激しく混合する。
【0039】
上記の製剤化手順は、大規模製造で容易に採用することができる。プロペラ混合手法は、容器のサイズおよびプロペラミキサーの直径を幾何学的に大きくすることによりそのままスケールアップすることができる。しかしながら、容器サイズが増大したとき、好ましい装置は、組合せミキサー、すなわち、プロペラミキサーの付いた高強力ミキサーと掻き取り表面攪拌機となる。大規模な操業において、水中親油性物質型エマルションを、第1タンクから、無水プラスチックプロリポソームゲルを含む第2タンクへ要求される温度で送り込み、混合することができる。
【0040】
本発明の多重層脂質小胞を用いて、可溶化された親油性生物学的活性化合物または油状植物抽出物を含む油滴は、リポソームカプセル化を通じて送達することができる。さらに、多区画カプセル化が可能なことにより、長期間に及ぶ薬剤放出が得られる。また、親油性固体/半固体の粘稠度増強剤の中心部親油性コア区画中へのカプセル化は、最終リポソーム組成物の粘度を増大させる。この場合、最終リポソーム製剤中への増粘剤の添加を避けることができる。
【0041】
全体として、中心部エマルションコア成分を有する多重層脂質小胞の調製は、物理的に安定で均一なリポソーム組成物を提供する。その組成物は、局所投与に適した粘度を有し、容易に大規模に製造することができる。
D.膣内使用のための典型的IFN−α−2bクリーム剤の製剤化
表1は、本発明にしたがって形成された1つの典型的脂質二重層組成物中の成分を示し、表中、各成分の量はmg/g最終組成物の単位で表し、また、範囲と典型的量(括弧内)の両方を示す。得られる組成物は以下の検討で「製剤Q25C」と表され、以下に詳述するようにして形成される。
【0042】
【表1】

Q25Cの製造プロセスの説明
ステップ1.水中油型マイクロエマルションの調製:オリーブ油、グリセロールモノステアレート40−55I型、セチルアルコールおよびブチル化ヒドロキシトルエンを一緒にして75℃±5℃で溶融する。エマルションの精製水を含む水性成分、水素化PEG−40ヒマシ油、塩化ベンザルコニウム50%溶液、メチルパラベン、プロピルパラベン、L−メチオニン、エデト酸二ナトリウム・二水和物、およびリン酸塩を一緒にしてステンレス鋼容器中で、成分が溶解するまで攪拌しながら75℃±5℃で加熱する。次に、油性成分(75℃±5℃)を、水性成分(75℃±5℃)に混合しながらゆっくり加え、粗いエマルションを形成させる。次に、粗いエマルションを、Microfluidizerによる処理により、均質なエマルションが形成されるまでホモジナイズする。このマイクロエマルションを8℃〜12℃に冷却する。
【0043】
ステップ2:脂質相の調製:脂質相は、Phospholipon 90H、コレステロールおよびブチル化ヒドロキシトルエンをプロピレングリコールとともにMMU10ミキサー中で、低速で混合しながら、約80〜90℃に加熱して溶融することにより調製する。脂質相成分の混合および加熱を、透明な溶融物が形成されるまで継続し、次に溶融物を約60℃に冷却する。
【0044】
ステップ3:水性相の調製:必要量のIFNα−2bストック溶液を加えてL−メチオニン、グリシンおよび精製水の混合物と穏やかに混合する。
【0045】
ステップ4:製品製剤化:インターフェロンα−2bを含む水性相(ステップ3から)を、ステンレス鋼ジャケット付混合タンク中でシステムA(ステップ1から)に加える。この混合物を8℃〜12℃の間に維持し、その間、混合物を緩やかに攪拌し、窒素ガスを流す。システムAと水性相の冷却された混合物を、MMU10ミキサー中で高速攪拌されている脂質相に急速に加える。混合を10〜15分間続け、その間、混合物の温度は約57〜60℃に維持する。このようにして形成されたバルク製品を、MMU10ミキサー中でゆっくりと混合して19℃〜25℃に冷却する。製品をMMU10ミキサーから10Lステンレス鋼貯蔵容器中に移して窒素ガスを流す。Unipac 100充填機を使用して、バルク製品を1gポリプロピレンチューブ中に充填する。チューブに窒素を流して、次に求められる量の製品をチューブ中に充填し、チューブを熱で封じる。インターフェロンα−2bクリーム剤充填チューブは、5℃±3℃で貯蔵する。
II.LSILに対する有効性についての前臨床および臨床試験
A.試験の根拠
現在のところ、LSILを呈するHPV感染女性のために利用し得る直接的療法がない。インターフェロンは、種々のHPV誘発病変、特に性器疣贅などの皮膚病変に対して有効であることが知られている。初期段階の子宮頸部HPV感染を治療できる療法は、多くの若い女性の身体的および精神的福祉に大きい利益を提供するであろう。
B.Q25Cについての前臨床試験のまとめ
本発明を支持して実施された毒性試験は、「非臨床実験室試験のためのGLP(Good Laboratory Practice)」および「GLPのためのOECD基準」の基準に準拠して実施した。以下の3つのタイプの毒性試験を実施した:
局所用インターフェロンα−2bクリーム剤のモルモットにおける皮膚感作(Buehler方法)。
【0046】
局所用Biphasixインターフェロンα−2bクリーム剤のウサギにおける反復投与皮膚刺激試験。
【0047】
ウサギにおけるインターフェロンα−2bクリーム剤の膣内刺激試験。
【0048】
3つの上記の毒性試験を別にして、本発明のIFN−α−2b組成物の毒性プロファイルについて、以下のことを考慮に入れるべきである:有効薬剤物質、インターフェロンα−2bは、Helixの薬物の供給業者、Schering Ploughにより世界的に広く市販されている安全な薬剤療法剤(Intron A(登録商標))と広く考えられている。
【0049】
Schering Ploughは、多くの種で、インターフェロンα−2bについて大規模な毒性のプロファイリングを既に完了している。
【0050】
本特許所有者は、患者に対する毎日のおよび全体のインターフェロンα−2b投与が、報告されている安全性の限界を超えないようにして、本明細書に記載した治験を実施した。
【0051】
組成物を構成する成分は、全て品質が認められている成分である。
【0052】
前臨床プロファイリングは、組成物および調製方法を上で説明した「製剤Q25C」と命名したインターフェロンα−2bクリーム剤の2つの製剤を含んでいた。
B1.皮膚感作試験
製剤Q25Cを、ニュージーランド白ウサギの背側の剃毛した皮膚の部位に、クリーム剤1グラム当たり2MIUインターフェロンα−2bの濃度(1×提案された臨床濃度)で1日2回適用する、10日間の探索的試験を実施した。テスト部位は、前回の適用から残留するいかなるクリーム剤も除去するために、上記の濡れガーゼ技法を使用して、適用と適用の間に清浄化した。試験対照は、陰性対照(食塩水)および媒体対照(インターフェロンα−2bを入れず、追加の精製水で置き換えた、製剤Q25Cと同一の組成)を含む。
【0053】
皮膚部位の外観を、紅斑および浮腫の徴候について毎日評価し、標準Draizeスコアシステムを使用してスコアを付けた。それに加えて、全身毒性のいかなる徴候についても、動物を毎日観察した。試験の終わりに剖検のアセスメントは実施しなかった。
【0054】
この探索的試験の過程を通して、紅斑の所見は全般的に良好であり(赤さについてのDraizeスコアは、一般的に2)、非常に僅かなまたは僅かな浮腫(スコア1〜2)が観察されただけである。最も目立つのは、完全な表面に存在する皮膚亀裂は、1頭の動物でだけ明らかであったことである。全身毒性の徴候は認められなかった。
C.膣内刺激試験
製剤Q25Aを膣内に、クリーム剤1グラム当たり2MIUおよび20MIUインターフェロンα−2b(1×および10×提案された臨床濃度)の濃度で、1週間に5日間連続して毎日6週間投与した。試験対照は、陰性対照(食塩水)およびインターフェロンを入れない媒体対照(α−2bを追加の精製水で置き換えた)を含む。
【0055】
膣口および会陰の外観を、紅斑、浮腫および膣分泌物の徴候について毎日評価した。それに加えて、全身毒性のいかなる徴候についても動物を毎日観察し、試験の終わりに屠殺して肉眼的病理所見のいかなる徴候も判定した。
【0056】
ウサギは、試験中に、全身毒性、または膣口および会陰の生体観察に基づく膣刺激の証拠を示さなかった。剖検で、組織/器官(膣を含む)に肉眼的病理所見は認められなかった。組織病理学的等級付けに基づいて、クリーム剤は刺激性微少と分類された。
【0057】
微少から軽度の、膣上皮の過形成、化生および上皮または固有層の大きい空胞化が、媒体対照クリーム剤を投与した数頭の動物および1頭の食塩水対照の動物で観察された。過形成および化生は、6週間の試験期間を通じて反復される毎日の媒体クリーム剤投与に対する微少から軽度の上皮の適応応答を表している可能性がある。どの動物にも、膣上皮の壊死、糜爛または潰瘍形成は存在しなかった。
これまでの毒性試験の結論
上記の研究は、製剤Q25Cに具体化された本発明の組成物は、非感作性であり、最悪でも、最初の過渡的期間、軽度から中等度に刺激性で、その後は、30日の試験期間にわたって、あるとしても、軽度に刺激性であるだけであるという結論を支持する。
D.臨床試験
Q25C製剤に具体化された本発明の組成物を、HPV感染LSIL状態(ヒトパピローマウイルス感染低度扁平上皮の上皮内病変状態)の治療における臨床有効性および副作用についてテストした。ここで「上皮内」は、子宮頸部の表面層にだけ存在する異常細胞を意味する。試験の目的は、疾患の進行または退行の自然経過を説明するために、対照集団として実施した第2の試験と比較して、局所用インターフェロンα−2bクリーム剤Q25Cの適用の有効性および安全性を判定することであった。方法および臨床試験、試験の被検者数、および臨床評価項目を表2に、および評価基準を表3に示す。
【0058】
【表2−1】

【0059】
【表2−2】

【0060】
【表3−1】

【0061】
【表3−2】

【0062】
【表3−3】

有効性パラメーター:有効性パラメーターの推計学的分析は、純粋に探索的なものであり、各検定に対してα=0.05を使用して、多くの検定に対してα調整をせずに実施した。両群間の応答率における差はχ検定で判定した。
【0063】
主な試験結果は、2つの試験集団間で比較したPap応答率に基づいた。患者のパパニコラウスミアが、LSIL細胞診断の共通ヨーロッパすなわち「ミュンヘン分類」システムによるパパニコラウスミアのIIWからIIID群までのいずれかからII群またはそれより良好に改善したならば、パパニコラウスミアの正常化が起こったとみなした。
【0064】
安全性パラメーター:全ての分析は記述的な性質のものである。検査値は、従属標本に対して、漸近的Mann−Whitney−U検定(群間差)および漸近的Wilcoxon検定(群内差)により分析した。全てのAEは、MedDRAにしたがってコードをつけ完全にリスト化して、試験群により分離した。AE関連および患者関連分析を実施した。
●第1評価項目(ITT):治療群における20名の患者のうち8名(40.00%)が、比較した対照群においては21名の患者のうち3名(14.29%)が応答した。しかしながら、治療群の2名の患者のパパニコラウスミアの結果は、以前の受診時の予備的PAP応答の後で悪化した。したがって、12週間の観察期間後のPAP応答だけ考慮するなら(対照群における定義によるように)、治療群の20名の患者のうち6名(30.00%)が応答した者である。
【0065】
プロトコル準拠集団(PP)におけるPAP応答:治療群において、15名の患者のうち7名(46.67%)が、比較した対照群においては19名の患者のうち3名(15.79%)が応答した。12週間の観察期間後のPAP応答だけ考慮するなら、
●有害事象:36例のAEを記録に残した。治療群における34例のAE:これらの7例は治療開始前に発症した。2例のSAEは、対照群の1名の患者で観察された。AE分析は、治療群の、治療開始後に始まった27例のAE(「治療出現AE」)に基づく。これらの27例のAEは、治療群の20名の患者の14名(70.00%)に起こった。国際医薬用語集−主要用語にしたがえば、3例のAEは分類「不正子宮出血」からおよび4例は分類「頭痛」からくる;他の全てのAEクラスは、1回または2回だけ起こった。3名の患者における5例のSAEは、試験の薬物療法中に全て治療に関していかなる因果関係もなしに起こった(治療群:1名の患者における治療開始前の妊娠、1名の患者における脳振盪および頚椎圧迫を伴った水泳中の事故;対照群:1名の患者における流産を伴った妊娠)。死亡はなく、他の有意のAEもなかった。
●臨床検査:尿:尿pH値に関して時間経過による有意の変化は観察されなかった。1つのセンターで、若干の尿パラメーターを定量的に測定した:平均赤血球数の明確な増加があったが、前後の変化は小さくて、このおよび他のパラメーターについて有意でなかった。定性的に測定した若干の患者において、白血球数、硝酸塩、タンパク質、ウロビリノーゲン、ビリルビンおよび/または血液が尿中に検出された。血液:試験開始時および終了時のヘマトクリット、MCV、MCHC、血小板および好塩基球に関して、有意の群間差が見出されたが、しかしながら、平均の前後の変化に関しては見出されなかった。治療群患者においては、白血球(しかし有意ではない)、リンパ球[Gpt/l](有意)、単球[Gpt/l](有意の)および好塩基球[Gpt/l](有意)において、増加の傾向があるように思われる。試験開始時および終了時のクレアチニン、ASATおよびアルカリホスファターゼ(AP)に関して、有意の群間差が見出されたが、しかしながら、平均の前後の変化に関してはなかった。ビリルビンに関して両群において有意の平均の低下があり、また、ALATに関しては、対照群において有意の平均の低下があった。CRFに関する全ての検査値について、研究者のアセスメント(正常か正常範囲外か:臨床に関連しているかまたは臨床に関連していないか)が必要とされた。臨床への関連性は稀な例で記録されただけである。
【0066】
身体検査および生命徴候:治療群の1例でだけ、V06の受診で病理学的所見が観察された(アンギナ)。各試験群内で、治験期間中、生命徴候は、正常な変動および測定誤差の限界内で殆ど一定のままであった。治療群において、V01の受診時の拡張期の血圧および心拍数に関して、高い値で群間に有意の差(U検定)があったが、前後の差に関して有意の差はなかった。
【0067】
総じて、治療群は、無治療比較群より高い応答率を有している。α=0.05を使用する統計的有意性は、直接比較するならば第1評価項目のためには合わない。しかしながら、小さい試料サイズ、および試験が僅かに異なるコルポスコピー検査スケジュールで別々にかつ独立に実施されたという事実のために、この種の比較が困難になる。
【0068】
追加の有効性結果:PAPIIIdを呈する患者の亜群分析は、治療群間の有意の差を明らかにした。試験IFN002のITT集団からの14名のPAPIIId患者のうち6名は応答し、比較したPP集団からの14名のPAPIIId患者に応答した者はいなかった。
【0069】
PAP応答率パラメーターを超えて、コルポスコピー診断は、個人の最終観察時に対照群に比較して治療群で統計的に有意に良好であった。IFN002の試験において、12名の患者(60%)は、「正常」または「非定型」に向かって改善した。比較によると、非介入試験においては、個人の最終観察時に、2名の患者(9.52%)が改善しただけであった。
【0070】
本発明を、特定の実施形態に関して説明したが、本発明から逸脱することなく、種々の変更および改変が為され得ることは、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルション、ヒトインターフェロンα−2bおよびL−メチオニンをその中に封入している脂質二重層小胞の懸濁液を含み、組成物1グラム当たり約1と10MIU(百万国際単位)の間のインターフェロンα−2b特異的活性、および0.01重量パーセントと0.5重量パーセントの間のL−メチオニンを有する、膣内送達により子宮頸部異形成を治療するための二相性脂質小胞組成物。
【請求項2】
クリーム剤形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物1グラム当たり1MIUと3MIUの間のヒトインターフェロンα−2bのインターフェロンα−2b特異的活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
0.01重量パーセントと0.5重量パーセントの間のL−メチオニンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中のインターフェロン−α−2BおよびL−メチオニンの少なくとも30%パーセントが、封入された水中油型エマルション中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
水中油型エマルション、ヒトインターフェロンα−2bおよびL−メチオニンをその中に封入している脂質二重層小胞の懸濁液を、1と20百万国際単位(MIU)の間のインターフェロンα−2bの用量で、対象の膣内に投与するステップであって、組成物が、組成物1グラム当たり約1と10MIUの間のインターフェロンα−2b特異的活性、および0.01重量パーセントと0.5重量パーセントの間のL−メチオニンを有するステップと、
少なくとも4週間の間、少なくとも3日/週の前記投与を繰り返すステップと
を含む、対象における子宮頸部異形成を治療する方法。
【請求項7】
投与する前記懸濁液が、組成物1グラム当たり1MIUと3MIUの間のヒトインターフェロンα−2bの特異的活性を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
投与する前記懸濁液がクリーム剤形態であり、投与1回当たり3gと7gの間の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
投与する前記懸濁液が、0.01重量パーセントと0.5重量パーセントの間のL−メチオニンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
投与する前記組成物中のインターフェロンα−2bおよびL−メチオニンの少なくとも30%パーセントが、封入された水中油型エマルション中に存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも6週間の期間少なくとも3日/週の前記投与を繰り返す、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−522698(P2010−522698A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500036(P2010−500036)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000563
【国際公開番号】WO2008/119160
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509269908)ファーマダーム ラボラトリーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】