説明

膨潤性材料および使用方法

本発明の1つの態様は、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子を含む膨潤性ゾル−ゲル組成物を含む。本発明の別の態様は、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子、および非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質を含む膨潤性複合材料を含む。乾燥時に、当該ゾル−ゲル組成物および膨潤性複合材料は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる可能性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2005年9月30日出願の米国仮特許出願第60/722,619号(すでに失効)に基づく優先権を主張する2006年10月2日出願の米国特許出願第11/537,944号(すでに米国特許第7,790,830号)の一部継続出願である2009年9月15日出願の米国特許出願第12/560,002号に基づく優先権を主張する。上述の出願の主題は、参照によりその全体を本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概して、膨潤性材料および使用方法に、より具体的には、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、自身の乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる膨潤性ゾル−ゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
膨潤する能力を有する高分子材料は、様々な応用例において有用である可能性がある。膨潤のメカニズムは、その材料の物性および化学的特性によって決定される分子レベルのプロセスの発生に依存する(非特許文献1)。
【0004】
ゾル−ゲル合成は、多様なモルホロジーおよび化学組成を有する有機/無機ポリマーを調製するための比較的単純かつ汎用性がある方法である(非特許文献2)。生体材料から調製される親水性ポリマー(非特許文献3;非特許文献4)とは対照的に、重合したアルコキシシランから構成される乾燥したゾル−ゲル(すなわちゼロゲル)は、非弾性的でありかつ十分に乾燥しているときには溶媒の中で大きな膨潤を起こしにくいSiOマトリクスを生成する。膨潤しないのは、ゲル化および乾燥のプロセスの間に発生し高分子のゾル−ゲル材料を架橋するかなりの程度の縮合反応に起因する可能性が高い(非特許文献5)。ゾル−ゲル由来の材料の固有の化学構造に起因して、ゾル−ゲル方法によって調製される膨潤性のシリカ固体の報告はほとんどない。「スマートな」材料を生成するために、pH(非特許文献6)または温度(非特許文献7;非特許文献8)の変化に応答して膨潤するアミン架橋したシラン前駆体を使用していくつかのゾル−ゲル組成物が配合された。これらのアミン架橋したゾル−ゲルは、非常に限られた膨潤しかすることができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Escobedoら、Phys.Report、1999年、第318巻、85頁
【非特許文献2】Wright、「Sol−Gel Materials: Chemistry and Applications」、Gordon and Breach Science Publ.、Amsterdam、2001年
【非特許文献3】Khalidら、Eur.J.Pharm.Sci.、2002年、第15巻、425頁
【非特許文献4】Elviraら、Biomaterials、2002年、1955頁
【非特許文献5】Brinkerら、「Sol−Gel Science. The Physics and Chemistry of Sol−Gel Processing」、第9章、Academic Press(San Diego)、1990年
【非特許文献6】Raoら、J.Sol−Gel Sci. and Tech.、2003年、第26巻、553頁
【非特許文献7】Raoら、Adv.Mater.、2001年、第13巻、274頁
【非特許文献8】Raoら、Adv.Mater.、2002年、第14巻、443頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、概して、膨潤性材料および使用方法に、より具体的には、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、自身の乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる膨潤性ゾル−ゲルに関する。
【0007】
本発明の1つの態様によれば、膨潤性ゾル−ゲル組成物は、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子を含むことができる。乾燥時に、当該ゾル−ゲル組成物は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる可能性がある。
【0008】
本発明の別の態様によれば、膨潤性複合材料は、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子、および非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質を含むことができる。乾燥時に、当該膨潤性複合材料は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる可能性がある。
【0009】
本発明の別の態様によれば、汚染された水および土壌を処理するための組成物は、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子を含むことができる。乾燥時に、当該組成物は、非極性もしくは有機の被吸着物質または非極性の有機被吸着物質を含有する水溶液と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる可能性がある。
【0010】
本発明の別の態様によれば、膨潤性複合材料を製造するための方法が提供される。当該方法の1つの工程は、残留シラノールを含む複数の有機シリカナノ粒子および微粒子物質を準備する工程を含むことができる。この残留シラノールは、この残留シラノールと反応性である少なくとも1つの基および少なくとも1つのアルキル基を有する試薬を用いて誘導体化されうる。この膨潤性複合材料は、その後、乾燥されてもよい。
【0011】
本発明の別の態様によれば、非極性もしくは有機の被吸着物質を含有する汚染された液体または土壌を改善するための方法が提供される。当該方法の1つの工程は、膨潤性複合材料に、非極性または有機の被吸着物質を取り込ませるのに有効な条件下で、汚染された液体または土壌を膨潤性複合材料と接触させることを含むことができる。この膨潤性複合材料は、乾燥時、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子を含むことができる。
【0012】
本発明の上記のおよび他の特徴は、添付の図面を参照して以下の説明を読めば、本発明が関係する技術分野の当業者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子顕微鏡観察(A − 乾燥した非膨潤状態における膨潤性材料;B − モデルにおける2に対応する部分的に膨潤した材料;C − モデル中の3および4に対応する十分に膨潤した材料)に基づく、本発明の膨潤性材料による溶解した有機物の吸収についての提案されたモデル(1 − 材料の表面への最初の吸着;2 − 十分な吸着が起こり、マトリクス膨張を誘発して材料−水境界にわたる吸収を導く;3 − この材料の中へのさらなる浸出を導く細孔充填;4 − 継続される材料の膨張によって、利用できる空隙容量が増加する)を示す概略図である。
【図2】親水性の内層および芳香族に富む外層を具える膨潤性有機シリカナノ粒子を示す概略図である。
【図3】複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子および微粒子物質材料を含む膨潤性複合材料を示す一連の電子顕微鏡写真である。左側パネルは標準モードを示し、右側パネルは、反射エネルギー弁別(backscattered energy discrimination)を示す(明るい点は当該微粒子物質を示す)。
【図4】TCE改善のための膨潤性複合材料の使用を描写する一連の説明図である。
【図5】本発明の別の態様に係る膨潤性複合材料を製造するための方法を説明するプロセスフロー図である。
【図6】TCE濃度(ppm) 対 時間(日)のプロットである。
【図7】4% nZVIを有する膨潤性複合材料(黒丸)、4% nZVIおよび0.001% パラジウム触媒を有する膨潤性複合材料(黒四角)、ならびに4% nZVI、0.001% パラジウム触媒、および3X w/wのクエン酸を有する膨潤性複合材料(白菱形)を用いた、現場でのTCE脱塩素を示すTCE濃度(ppm) 対 時間(日)のプロットである。
【図8】ZVI単独(白丸)およびZVI膨潤性複合材料+パラジウム(黒四角)を用いる塩化ビニルの還元的脱塩素を示す塩化ビニル濃度(ppm) 対 時間(日)のプロットである。
【図9】ZVI単独(白丸)およびZVI膨潤性複合材料+パラジウム(黒四角)を用いる1,1−ジクロロエチレン(1,1−DCE)の還元的脱塩素を示す1,1−DCE濃度(ppm) 対 時間(日)のプロットである。
【図10】ZVI単独(白丸)およびZVI膨潤性複合材料+パラジウム(黒四角)を用いるcis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)の還元的脱塩素を示すcis−1,2−DCE濃度(ppm) 対 時間(日)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特段の記載がない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0015】
本発明に関しては、用語「膨潤性(の)」は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、自身の乾燥体積の約2倍を超えて膨潤する、膨潤性材料の能力を指すことができる。例えば、当該膨潤性材料は、非極性もしくは有機の被吸着物質またはこのような被吸着物質を含有する水溶液と接触して置かれるときに、その乾燥体積の約3倍、4倍、5倍、6倍、7倍を超えて、またはさらに大きい倍率を超えて膨潤することができる。
【0016】
本願明細書で使用する場合、用語「非極性の被吸着物質」および「有機の被吸着物質」は、吸着、吸収、またはこれらの組み合わせのいずれによろうと、本発明の膨潤性材料によって取り込まれることができる物質を指すことができる。非極性被吸着物質の例としては、エタノール、アセトニトリル、メチル−t−ブチルエーテル、およびジクロロメタンなどの有機溶媒を挙げることができる。有機被吸着物質の例としては、ヘキサンおよびオクタンなどの炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ニトロベンゼン、フェノール、およびm−ニトロフェノールなどの芳香族炭化水素、ならびにトリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロエチレン、塩化ビニルおよびポリ塩素化ビフェニル類などの塩素化有機物を挙げることができる。
【0017】
本発明は、概して、膨潤性材料および使用方法に、より具体的には、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、自身の乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる膨潤性ゾル−ゲルに関する。当該膨潤性ゾル−ゲル材料は疎水性であり、水または水蒸気の存在下では膨潤しない。当該膨潤性ゾル−ゲル材料による吸収は非選択的であり、メタノールからヘキサンまでの範囲にわたる非極性または有機の被吸着物質によって誘導されうる。非極性または有機の被吸着物質の取り込みは、当該膨潤性ゾル−ゲル材料が急速に膨張するにつれて、100N/gを超える力を発生させる。加えて、膨潤および吸収は、化学反応によるのではなく、保存された引張り力の解放によって駆動される。実際、吸収される被吸着物質がエバポレーションまたは洗浄/乾燥によって除去されれば、膨潤は完全に可逆的である。また、当該膨潤性ゾル−ゲル材料は、非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質を含むことができる。
【0018】
当該膨潤性ゾル−ゲル組成物は、複数の柔軟に繋がれかつ相互に連結された、ナノメートルスケールの直径を有する有機シリカ粒子を含む。この複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子は、複数の架橋された芳香族シロキサンによって画定される無秩序な微細孔性のアレイまたはマトリクスを形成することができる。図2に示されるように、この有機シリカナノ粒子は、親水性の内層および疎水性の、芳香族に富む外層を含む多層構成を有することができる。以下により詳細に記載されるように、この有機シリカナノ粒子は、ポリシロキサンのケイ素原子の間で柔軟に連結されている芳香族架橋基を含む架橋ポリシロキサンから形成されうる。
【0019】
当該膨潤性ゾル−ゲル材料は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤する能力を有する。理論は明らかではないが、膨潤は、ゲル状態の間に架橋されてナノポーラスの材料またはポリマーマトリクスを与える相互に連結された有機シリカ粒子のモルホロジーに由来する可能性があると考えられる。そのゲルを乾燥する際、および誘導体化工程の後、引張り力が、ポリマーマトリクスの毛細管によって誘起される折りたたみによって生成される可能性がある。非極性または有機の被吸着物質がこの乾燥された材料を折りたたまれた状態に保持している粒子間相互作用を崩壊させるとき、マトリクスが膨張した状態へと緩和するにつれて、貯蔵されたエネルギーが解放されうる。その後、新しい表面積および空隙容量が生成される可能性があり、この新しい表面積および空隙容量は、膨張した細孔構造の中へと拡散することができる追加的な非極性または有機の被吸着物質をさらに捕捉する役割を果たす(図1)。
【0020】
当該膨潤性ゾル−ゲル材料は、親出願の米国特許出願第11/537,944号に記載されているのと同様にして形成することができる。簡潔に言えば、当該有機シリカナノ粒子は、下記の構造を有する架橋シラン前駆体から形成することができる:
(アルコキシ)Si−(CH−Ar−(CH−Si(アルコキシ)
式中、nおよびmは、個々に整数1〜8であることができ、Arは単環式、縮合環式、または多環式の芳香環であることができ、各アルコキシは独立にC1〜C5アルコキシであることができる。架橋シラン前駆体の例としては、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン(BTEB)、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0021】
ゾル−ゲル形成のための条件としては、適切な溶媒の中で酸触媒または塩基触媒を使用する、架橋シラン前駆体分子の重合を挙げることができる。塩基触媒の例としては、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、フッ化ナトリウム(または他のフッ化物塩)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、およびアルキルアミン(例えば、プロピルアミン)を挙げることができる。塩基触媒とともに使用するための溶媒の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、およびジクロロメタン/THF混合物を挙げることができる。酸触媒の例としては、塩酸、リン酸、および硫酸などの任意の強酸を挙げることができる。酸触媒とともに使用するための溶媒としては、塩基触媒とともに使用するための上で特定された溶媒を挙げることができる。
【0022】
重合後、このゲル状の組成物は、離液を誘導するのに有効な継続時間の間(例えば、約15分〜約7日)、熟成されてもよい。この熟成プロセスの後または熟成プロセスの間に、溶媒および触媒の抽出を実施することができる(すなわち、洗浄)。溶媒および触媒を除去した後、熟成された組成物は、このゲルの中に存在するシラノール末端ポリマーをエンドキャップするための誘導体化工程にかけられてもよい。この誘導体化工程のために使用される試薬としては、少なくとも1つのハロゲン基および少なくとも1つのアルキル基を含有するハロシラン試薬を挙げることができる。誘導体化試薬の例は、以下により詳細に与えられる。誘導体化の後、誘導体化されたゲルは、洗浄され、例えばオーブンの中、約60℃で約2時間、乾燥されてもよい。
【0023】
また、当該膨潤性ゾル−ゲル材料を使用して、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子および非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質材料を含む膨潤性複合材料を形成することができる。この膨潤性複合材料は疎水性であり、水を吸収しにくく、かつ非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる。後で論じるように、この膨潤性複合材料は、化学的改善および水系からの抽出を含めた、様々な応用例のために使用することができる。
【0024】
当該微粒子物質は、非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができるいずれかの反応性のまたは触媒的な物質を含むことができる。例えば、当該微粒子物質は、ハロゲン化被吸着物質などの有機被吸着物質を還元することができる反応性金属を含むことができる。反応性金属の例としては、ゼロ価の鉄(ZVI)、パラジウム、金、白金、ニッケルおよび亜鉛などの遷移金属を挙げることができる。当該微粒子物質として使用されてもよい他のタイプの反応性のまたは触媒的な物質としては、ゼオライト(例えば、方沸石、菱沸石、クリノプチロライト、輝沸石、ソーダフッ石、灰十字沸石および束沸石)、アルミナ、および活性炭/グラファイト状炭素、ならびに他の反応性遷移金属、合金、金属酸化物,および/またはセラミックなどの触媒的に活性である多機能性固体を挙げることができる。
【0025】
当該微粒子物質は、均一な構成またはランダムな構成で当該膨潤性ゾル−ゲル材料の多孔性のマトリクスもしくはアレイ内に閉じ込められてもよいし、または多孔性のマトリクスもしくはアレイ上に配置されてもよい。図3に示されるように、例えば、当該微粒子物質は、当該膨潤性ゾル−ゲル材料全体にわたってランダムに分散されてもよい。有利なことに、当該ゾル−ゲルの多孔性マトリクス内に閉じ込められた微粒子物質はこのゾル−ゲルによって潜在的に保護され、当該微粒子物質の不活性化および/または被毒が減じられる可能性がある。
【0026】
当該ゾル−ゲルの中に与えられる微粒子物質の量は、当該ゾル−ゲル材料の約0.1重量%〜約10重量%、約0.25重量%〜約8重量%、または、例えば約0.5重量%〜約5重量%であることができる。
【0027】
当該膨潤性ゾル−ゲル材料は、当該微粒子物質の表面の上へと堆積またはコーティングされた少なくとも1つの金属触媒も含むことができる。後述するように、この金属触媒の原子価は、当該微粒子物質によってゼロへと低下される可能があり、当該微粒子物質の少なくとも1つの表面の上への、この金属触媒の堆積を生じる可能性がある。この金属触媒は、パラジウム、ニッケル、および亜鉛などの遷移金属のいずれか1つまたは組み合わせであることができる。本発明の1つの例では、この金属触媒はパラジウムを含むことができる。
【0028】
膨潤性複合材料の1つの例は、重合したBTEB分子から形成される複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子、およびナノサイズのZVI粒子を含む微粒子物質を含むことができる。このナノサイズのZVI粒子は、重合したBTEB分子によって形成される多孔性のマトリクスもしくはアレイの上または多孔性のマトリクスもしくはアレイの内に均一にまたはランダムに分散されてもよい。この膨潤性複合材料は、さらにまたは任意に、パラジウムなどの金属触媒を含むことができる。パラジウムイオンは、このZVIによってゼロ価のパラジウムへと還元されることができ、このナノサイズのZVI粒子の少なくとも1つの表面の上へのパラジウムの堆積を生じることができる。
【0029】
ナノサイズのZVI粒子は、トリクロロエチレン(TCE)などの、水溶液中のハロゲン化有機被吸着物質を還元することができる可能性がある。理論は明らかではないが、膨潤性複合材料が水溶液の中の化学種を除去および脱塩素化するメカニズムは、下に示すように進行すると考えられる。
【化1】

【0030】
例えば、水の中への導入の直後に、この膨潤性複合材料は、TCEなどのハロゲン化有機被吸着物質を吸収してもよい。当該膨潤性複合材料は、当該膨潤性複合材料の体積あたりTCEの体積の少なくとも2倍のための容量を有し、これにより当該複合材料の膨潤を引き起こすことができる。TCEが吸収されると、TCEは、当該膨潤性複合材料全体にわたって分配されたナノサイズのZVI粒子と密に接触して留まることができる。このナノサイズのZVI粒子との接触によって、還元的塩素化反応が導かれうる。上記反応のためのプロトンの供給源は、合成の間を乗り越えて残ったしっかりと吸収された水から、または自然に存在するかもしくは膨潤性複合材料とともに注入されるかのいずれかである同時吸収される有機酸(例えば、生分解性界面活性剤または変性剤)からのいずれかに由来することができる。
【0031】
脱塩素反応は、得られる最終生成物、すなわち、エチレンおよび塩化物イオンが生成されるまで、進行することができる。エチレンはガス状であり、この膨潤性複合材料から拡散して、追加的な塩素化種のための空間を生成することができる。塩化物イオンは電荷を帯び、熱力学的な駆動力によって当該膨潤性複合材料から移動して、周囲の水系媒体に溶解することができる(図4)。吸収−反応−脱着のサイクルは、閉じ込められたZVIが枯渇するまで続くことができる。この時点で、膨潤性複合材料は塩素化溶媒を吸収してもよい。
【0032】
図5は、本発明の一態様に係る膨潤性複合材料を調製するための方法10を説明する。方法10において、工程12で、残留シラノールを有する複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子および微粒子物質を準備することができる。有機シリカナノ粒子は、下記の構造を有する複数の架橋シラン前駆体から形成することができる:
(アルコキシ)Si−(CH−Ar−(CH−Si(アルコキシ)
式中、nおよびmは、個々に整数1〜8であることができ、Arは単環式、縮合環式、または多環式の芳香環であることができ、各アルコキシは独立にC1〜C5アルコキシであることができる。架橋シラン前駆体の例としては、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、BTEB、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0033】
当該有機シリカナノ粒子を調製するために、複数の架橋シラン前駆体分子を溶媒と混合することができる。例えば、約100部(体積によって測定される)の溶媒を約15〜約40部のBTEBと混合(例えば、撹拌)して、反応混合物を形成することができる。この架橋シラン前駆体分子は、約0.25M〜約1Mの間で反応混合物の中に存在してもよい。この架橋シラン前駆体分子と混合されてもよい溶媒の例としては、THF、アセトン、少なくとも約15体積%のTHFを含有するジクロロメタン/THF混合物、および少なくとも約50体積%のTHFを含有するTHF/アセトニトリル混合物を挙げることができる。
【0034】
この架橋シラン前駆体分子を重合させる前に、当該微粒子物質をその反応混合物に加えることができる。当該微粒子物質は、ハロゲン化被吸着物質などの有機被吸着物質を還元することができる反応性金属を含むことができる。例えば、当該微粒子物質は、ゼロ価の鉄(ZVI)、パラジウム、金、白金、ニッケル、亜鉛のうちの少なくとも1つ、およびこれらの組み合わせなどの反応性金属を含むことができる。当該微粒子物質は、当該膨潤性複合材料の約0.5%〜約5重量%を構成することができる。例えば、この架橋シラン前駆体分子の重合に先立って約0.01〜約10部のナノサイズのZVI粒子を、反応混合物の中へと混ぜ込むことができる。
【0035】
当該微粒子物質の添加後、この架橋シラン前駆体分子の加水分解および縮合を触媒するために、化学量論量の水および触媒を含む触媒溶液を、この反応混合物に素早く加えることができる。架橋ポリシロキサンを重合(またはゲル化)させるための条件は当該技術分野で公知であり、適切な溶媒の中での酸触媒または塩基触媒の使用を挙げることができる。使用することができる塩基触媒の例としては、TBAF、DBN、およびアルキルアミン(例えば、プロピルアミン)が挙げられる。塩基触媒とともに使用してもよい溶媒としては、THF、アセトン、少なくとも約15体積%のTHFを含有するジクロロメタン/THF混合物、および少なくとも約50体積%のTHFを含有するTHF/アセトニトリル混合物が挙げられる。酸触媒の例としては、いずれかの強酸、例えば塩酸、リン酸、および硫酸を挙げることができる。酸触媒とともに使用するための溶媒の例としては、塩基触媒とともに使用するための上で特定された溶媒を挙げることができる。
【0036】
THFおよびBTEBを含む反応混合物を重合させるために、例えば、化学量論量の水および約1部のTBAFを含む触媒溶液をこの反応混合物に素早く加えることができる。この触媒溶液の添加後、水はアルコキシシラン基と反応することができ、フッ化物イオンは、BTEBの加水分解および重縮合を触媒してゲル様の複合材料を形成することができる。
【0037】
ゲル化後、この複合材料は、離液、すなわち、さらなる重縮合を伴うこのゲル複合材料の収縮、を誘導するのに十分な時間、熟成されてもよい。離液の間、このゲルの体積は、通常、およそ10%減少する。熟成時間はゲルを形成するために使用される触媒および溶媒に応じて変わりうるが、熟成は、典型的には約15分間〜約7日間実施することができる。熟成は、室温でまたは高温(例えば、約18℃〜約60℃)で実施することができる。加えて、熟成は、開放系雰囲気の中で、減圧下で、または容器もしくはオーブンの中で実施することができる。
【0038】
溶媒および触媒の抽出は、この熟成プロセスの後または熟成プロセスの中で実施することができる(例えば、洗浄すること)。溶媒および触媒の抽出のために使用することができる材料の例としては、中程度の極性のいずれかの有機溶媒、例えば、THF、アセトン、エタノール、アセトニトリル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
洗浄した後、残留シラノールを、工程14で、残留シラノールと反応性である少なくとも1つの基および少なくとも1つのアルキル基を有する試薬で誘導体化することができる。例えば、BTEBを含むゲルを、約1%以上のヘキサメチルジシラザンなどの誘導体化試薬を含む溶液で処理することができる。工程14は、当該ゲルの中に存在するシラノール末端ポリマーのエンドキャッピングをもたらすことができる。
【0040】
工程14で使用することができる試薬の1つのクラスとしては、少なくとも1つのハロゲン基および少なくとも1つのアルキル基を含有するハロシラン試薬を挙げることができる。このハロゲン基は、いずれかのハロゲン、例えばCl、Fl、I、またはBrであることができる。ハロシランまたはジハロシランとしては、クロロシラン、ジクロロシラン、フルオロシラン、ジフルオロシラン、ブロモシラン、ジブロモシラン、ヨードシラン、およびジヨードシランを挙げることができる。ハロシランの追加的な例としては、シアノプロピルジメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、(トリデカ−フルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロ−オクチル)ジメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、およびn−オクタデシルジメチルクロロシランを挙げることができる。この試薬のアルキル基は、いずれのアルキルであってもよい。例えば、このアルキル基は、1以上のヘテロ原子(例えば、S、O、N、P、およびハロ)を有するかまたは有しない、約30個までの炭素を含有する脂肪族もしくは非脂肪族の炭化水素、例えば直鎖炭化水素、分枝鎖炭化水素、環状炭化水素、および芳香族炭化水素であることができる。
【0041】
誘導体化試薬の別のクラスとしては、シラザンまたはジシラザン(例えば、ヘキサメチルジシラザン)を挙げることができる。例えば、少なくとも1つの反応性基および少なくとも1つの非反応性基(例えば、アルキル)を有するいずれのシラザンも使用することができる。
【0042】
工程16で、誘導体化されたゲルは、洗浄および乾燥されてもよい。乾燥は、いずれの適切な条件下ででも実施することができる。例えば、誘導体化されたゲルを、約40℃〜約120℃で約15分間〜約3時間、乾燥することができる。誘導体化されたゲルを乾燥する際、当該微粒子物質(例えば、ナノサイズのZVI粒子)は、当該膨潤性複合材料を含む多孔性マトリクスにわたってランダムに分配され、かつ/または当該膨潤性複合材料を含む多孔性マトリクスの中に高度に閉じ込められてもよい。
【0043】
乾燥した当該複合材料は、一体的な形態で維持することもできるし、または粉末形態へと粉砕/粉化することもできる。一体的な複合材料は、特定の応用例に適したいずれの所望の形状およびサイズに形成することができる。例えば、複数の架橋シラン前駆体分子、適切な溶媒、および微粒子物質を含む反応混合物を、所望の内部構成および内寸を有する容器の中で型にとることができる。重合後、得られるゲル複合材料は、容器の所望のサイズおよび形状に合致することになる。非極性または有機の被吸着物質の改善および回収(後で論じられる)などの他の応用例については、当該膨潤性複合材料を粉末形態へと粉砕または粉化することが望ましい場合がある。粉末形態を得るために一体物の粉化が実施される態様に応じて、得られる粒径は幅広く変わりうる。例えば、粉末の膨潤性複合材料は、約250μm未満の平均粒径を有してもよい。当該複合材料の粉末形態は高表面積を特徴とし、この高表面積によって、非極性または有機の被吸着物質のより迅速かつ有効な取り込みを可能にすることができる。
【0044】
本発明の別の態様では、少なくとも1つの金属触媒が当該微粒子物質の表面の上に堆積またはコーティングされてもよい。金属触媒としては、遷移金属のいずれか1つまたは組み合わせ、例えばパラジウム、ニッケル、および亜鉛を挙げることができる。本発明の1つの例では、この金属触媒はパラジウムを含むことができる。
【0045】
この金属は、当該複合材料が工程16で乾燥された後に、例えば当該複合材料を、適切な量の所望の金属触媒および溶媒を含有する溶液で処理することにより、微粒子物質の上に、堆積またはコーティングすることができる。この溶媒としては、エタノール、メタノール、またはイソプロパノールなどのアルコールを挙げることができる。1つの例では、等体積の約50mM酢酸パラジウム溶液をエタノールとあわせ、次いで、重合したBTEBおよびナノサイズのZVI粒子を含む複合材料を処理するために使用することができる。この例では、パラジウムイオンは、このZVIによってゼロ価のパラジウムへと還元されることができ、このナノサイズのZVI粒子の少なくとも1つの表面の上へのパラジウムの堆積を生じることができる。
【0046】
当該微粒子物質の表面上での金属触媒の堆積の程度は、当該膨潤性複合材料とその金属触媒を含有する溶液との間の全反応時間によって制御されてもよい。この反応時間は、約30分間〜約4時間であることができる。所望の時間で、この金属触媒を含有する溶液のいずれかの過剰分が、アルコールおよび/または他の溶媒を使用する連続的な洗浄工程によって、除去されてもよい。次いで、この複合材料は、約100℃で適切な時間、乾燥されてもよい。
【0047】
当該膨潤性複合材料は、非極性もしくは有機の被吸着物質を含有する汚染された液体または土壌を改善するための方法で使用することができる。用語「改善する(こと)(remediating)」および「改善(remediation)」は、特定の汚染された土壌または液体について監督する規制当局によって示される基準値(例えば、地表下の地下水についてのNational Primary Drinking Water Regulations)を達成するための、土壌および液体の汚染物質(すなわち、非極性および有機の被吸着物質)の実質的に完全な除去を指すことができる。本発明によって改善される可能性がある土壌および液体汚染物質の1つの例としては、ハロゲン化有機被吸着物質、例えばテトラクロロエテン(PCE)、四塩化炭素(CT)、TCE、トリクロロメタン(TCM)、cis 1,2−ジクロロエテン(cDCE)、トリブロモメタン(TBM)、trans 1,2−ジクロロエテン(tDCE)、1,2−ジブロモエタン(12EDB)、1,1−ジクロロエテン(11DCE)、トリクロロフルオロエタン(Freon 113)、塩化ビニル(VC)、トリクロロフルオロメタン(Freon 11)、ヘキサクロロエタン(HCA)、1,1,2,2−テトラクロロエタン(1122TeCA)、1,2,3−トリクロロプロパン(123TCP)、1,1,1,2−テトラクロロエタン(1112TeCA)、1,2−ジクロロプロパン(12DCP)、1,1,1−トリクロロエタン(111TCA)、リンダン、1,1,2−トリクロロエタン(112TCA)、ヘキサクロロブタジエン(HCBD)、1,1−ジクロロエタン(11DCA)、式C1210−xCl(式中、xは1より大きく11より小さい整数である)を有するポリ塩素化ビフェニル類、有機塩素系農薬、例えばアトラジン、または化学兵器として使用されるハロゲン化化学種、例えばエチルジクロロアルシンまたはホスゲンを挙げることができる。還元を受けやすい物質、例えばトリニトロトルエンなどのニトロ芳香族化合物も、当該膨潤性複合材料の標的である。
【0048】
当該方法1つの工程は、非極性もしくは有機の被吸着物質を含有する汚染された液体または土壌を膨潤性複合材料と接触させることを含むことができる。この膨潤性複合材料は、方法10(上記のとおり)に従って形成することができる。例えば、この膨潤性複合材料は、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子、およびこの非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたはこの非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質を含むことができる。この膨潤性複合材料の疎水性を緩和するために、この膨潤性複合材料は、水もしくは土壌への当該組成物の投与を容易にする生分解性界面活性剤または変性剤のうちの少なくとも1つと混合することができる。生分解性界面活性剤または変性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、有機酸(例えば、クエン酸および酢酸)、およびエタノールを挙げることができる。酸性のスラリー構成成分(例えば、クエン酸および酢酸)は、当該膨潤性複合材料によって同時吸収されて脱塩素反応のためのプロトン源を提供するという付加された恩恵を有する。
【0049】
このスラリーを、いずれかの適切な技法および/または装置を使用して、汚染された液体または土壌と接触させることができる。汚染された土壌が、例えば、ハロゲン化有機被吸着物質で汚染された帯水層を含む場合には、このスラリーは、ソニックドリリング(sonic drilling)または液圧作動衝撃/プロービング(hydraulically−powered percussion/probing)(例えば、GEOPROBE、Geoprobe Systems、カンザス州、サリナ(Salina))などの標準的な装置および方法を使用して、その土壌の中へと直接注入することができる。その汚染された土壌または液体と接触させるべきスラリーの量は、非極性もしくは有機の被吸着物質の濃度および/または改善されるべき液体または土壌の体積に依存することになろう。汚染された液体または土壌との接触の際、この有機被吸着物質は、当該膨潤性複合材料の中へと抽出され、これによって微粒子物質は、その後、この非極性または有機の被吸着物質を還元することができる。以下により詳細に記載されるように、吸収−反応−脱着のサイクルは、閉じ込められた微粒子物質が被吸着物質との反応を通して化学的に枯渇するまで、継続しうる。
【0050】
当該方法の1つの例では、膨潤性複合材料は、地下水から塩素化溶媒(例えば、TCE)を改善するために使用することができる。この膨潤性複合材料は、約100部(体積によって測定される)の溶媒(例えば、アセトンまたはTHF)を約15〜40部のBTEBと混合して反応混合物を形成することによって形成されてもよい。この反応混合物を撹拌した後、化学量論量の水および約1部のTBAFを含む溶液を、迅速にこの反応混合物に加えることができる。次に、約0.01〜約10部のナノサイズのZVI粒子をこの反応混合物の中へと加えて、溶液へと撹拌することができる。得られる溶液は、約10分以内にゲルを形成することができる。ゲル化後、このゲルは、約1時間〜約1週間、熟成されてもよい。熟成されたゲルは、次に、いずれかの水、フッ化物イオン、および他の残留試薬を抽出するために、溶媒で洗浄されてもよい。洗浄されたゲルは、次に、誘導体化試薬および溶媒を含む溶液(例えば、約1%を超えるヘキサメチルジシラザンを含む溶液)で処理されてもよい。一定期間(例えば、約1時間〜約1週間)の後、この誘導体化されたゲルは、いずれかの過剰の試薬(例えば、ヘキサメチルジシラザン)を除去するために、洗浄されてもよい。次に、この誘導体化されたゲルを、約100℃で乾燥して、膨潤性複合材料を形成することができる。
【0051】
膨潤性複合材料を形成した後、この複合材料は、生分解性界面活性剤または変性剤のうちの少なくとも1つと混合することができる。例えば、当該スラリーは、約1部の当該膨潤性複合材料、約3〜5部の追加的な生分解性界面活性剤または変性剤、および約10〜20部の水を含むことができる。得られるスラリーは、標準的な掘削装置を使用して、汚染された土壌または帯水層の中へと直接注入することができる。汚染された土壌または水の中へと注入されるスラリーの量は、TCEの濃度および処理されるべき物質(すなわち、土壌または水)の体積に基づくことができる。
【0052】
塩素化溶媒の改善のための膨潤性複合材料の使用は、ZVI単独の使用に勝って、いくつかの利点を有する。このような利点としては、以下のものを挙げることができるが、これらに限定されない:(1)毒性のある脱塩素中間体(例えば、cis−1,2−ジクロロエテンおよび塩化ビニル)は、当該膨潤性複合材料内に閉じ込められたまま留まり、完全な脱塩素が容易になる可能性がある;(2)当該膨潤性複合材料は、ZVIの作用を阻害する可能性がある溶解したアニオン(炭酸塩など)、硫黄化学種、および金属イオンに対するバリアとして働くことができる;(3)塩素化種は、当該ナノサイズのZVI粒子の近くに抽出され濃縮される可能性があり、これは、はるかに少ない当該膨潤性複合材料しか送り込まれる(例えば、帯水層の中へ注入される)必要がないということを意味する;(4)当該膨潤性複合材料は無毒であり、現場に残すことができる;ならびに(5)種々の土壌のタイプの中への送り込み(例えば、注入)を最適化するために、当該膨潤性複合材料は、特定の粒径へ製粉することができる。
【0053】
以下の実施例は説明のためのものに過ぎず、本願明細書に添付されている特許請求の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0054】
実施例1
研究室内の実験で、ZVIを含有する膨潤性複合材料(ZVI−複合材料)は、水溶液中のTCEおよび他の化学種を脱塩素化することに非常に有効であることが示された。5ppm TCEの水溶液を使用した。1つの溶液に、0.05% w/vのナノZVIを添加した(ZVI−複合材料)。他の溶液には、0.001% Pdを含む0.05% w/vのZVI−複合材料を添加した(ZVI−Pd−複合材料)。スラリー剤として添加した3X w/wのクエン酸を含むZVI−Pd−複合材料(ZVI−Pd−複合材料+クエン酸)も試験した。この溶液をセプタムで蓋をし、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC−MS)を用いる固相マイクロ抽出を使用して、TCEを適宜の時間に測定した。検出は、最大の選択性および感度のための選択イオンモードを使用して行った。TCEの濃度は、このTCE試験溶液と同様にして測定した較正曲線を使用して決定した。
【0055】
無撹拌の水相条件では、当該ZVI−複合材料を使用すると、TCE濃度は、99%超低下した。このTCE濃度の低下は、等質量のZVI単独よりも数桁大きい。環境に関連する濃度を使用すると、このZVI−複合材料は、撹拌した条件下で、0.0025% w/vのこの複合材料を水溶液に添加したときには、TCE濃度を、7日間のうちに100ppbから5ppb未満へと低下させることが判明した(図6)。ZVI単独と並べて比較すると、金属触媒としてパラジウムを含むZVI−複合材料(ZVI−Pd−複合材料)は、無撹拌の溶液において10〜100倍大きい脱塩素速度を示した(図6)。
【0056】
塩化ビニルおよびジクロロエチレンの種々の異性体についての機能的能力が、水溶液において実証された。ベンチスケールの地下水改善実験を、土壌水カラムの中で、流れ条件下で実施した:0.05% ZVI−Pd−複合材料を土壌−水混合物に分散させた。一定流量のもとで、TCEの濃度は、200ppb(注入口)から排出口で5ppb未満に低下した。時間を延長した後には、TCEの濃度は約1ppbまで低下した。これは当該複合材料の膨張に起因する可能性が高く、このことは、有機被吸着物質がマトリクスを膨潤させ始めるにつれての、より大きい吸収能力を実証する。静的な土壌−水バッチ実験も、ZVI−複合材料を添加するとTCE濃度が時間とともに急速に低下するということを実証した。
【0057】
表1および図7に示すように、金属触媒(例えば、パラジウム)の添加および有機酸の添加により、脱塩素速度が上昇する。溶液は、良好な混合を確実にするために、測定と測定の間にゆっくりと振り混ぜた。最大混入物質レベル(MCL)に到達するための時間は、TCE濃度の減少速度を測定して、5ppb未満(EPA MCLレベル)に到達するのに必要とされる日数を算出することにより、行った。材料は、0.05% w/vで溶液に添加した。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例2
1mのガラスカラムに、250mgの膨潤性複合材料−nZVI−0.001% パラジウム触媒を手で混合した500gの砂および砂利を充填した。この詰め込んだカラムを、200ppbのTCEを含有する水で湿らせた。200ppbで汚染された水を、この水が(地下水の移動を模擬するために)1日あたり0.5mで流れるように、一定流量でこのカラムにポンプ注入した。このカラムからの出力分を、この溶液が空気に曝露されないように(TCEがガス放出することを防ぐ。このガス放出があると、測定結果が偏ることになりうる)、シリンジの中に捕捉した。このシリンジからの試料(出力分)を試験して、固相マイクロ抽出GC−MS方法によりTCE濃度を決定した(表2)。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例3
図8〜10は、nZVI単独(白丸)または4% nZVIおよび0.001% パラジウム触媒を含む膨潤性複合材料(黒四角)の、塩化ビニル(図8)、1,1−ジクロロエチレン(1,1−DCE)(図9)、およびcis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)(図10)に対する反応性を説明する。塩化ビニル、1,1−DCE、およびcis−1,2−DCEは、TCEとともに地下水の中でしばしば見つかるTCE脱塩素の娘生成物または中間体である。溶解したこれらの塩素化化学種の初期濃度を含有する溶液を作製した。1つの溶液にnZVIを添加し、別の溶液に、4% nZVIおよび0.001パラジウム触媒を含む膨潤性複合材料を添加した。容器をセプタムで密閉して、系を空気に開放することなく試料とした。各溶液の中の各化学種の濃度を、GC−MS(選択イオンモード)を用いる固相マイクロ抽出を使用して時間とともに測定した。
【0062】
実施例4
1Lの瓶に、水の中の100ppbのTCEで飽和させた砂および砂利を充填した。10日間毎日、少量の水の試料(10mL)を抽出した。各試料量を採取した後、取り出したその少量を100ppbのTCE溶液で置き換えて、この系にヘッドスペースがないことを確実にした。これらの試料中の濃度を、固相マイクロ抽出GC−MS(選択イオンモード)によって測定した(表3)。
【0063】
【表3】

【0064】
本発明の上記の説明から、当業者は、改良、変更および修正を認識するであろう。そのような改良、変更および修正は、当該技術分野の技術の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤性ゾル−ゲル組成物であって、
複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子を含み、乾燥時の前記ゾル−ゲル組成物は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる、膨潤性ゾル−ゲル組成物。
【請求項2】
疎水性でありかつ水を吸収しにくい、請求項1に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項3】
前記非極性または有機の被吸着物質の吸収による前記ゾル−ゲル組成物の体積の変化によって、少なくとも100N/gの力が生成される、請求項1に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項4】
前記有機シリカナノ粒子は有機架橋基を有するポリシロキサンを含む、請求項1に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサンのケイ素原子の間に柔軟に連結された芳香族架橋基を含む、請求項4に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項6】
前記非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは前記非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質をさらに含む、請求項1に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項7】
前記微粒子物質は、ハロゲン化有機被吸着物質を還元して、炭化水素およびハロゲン化物イオン最終生成物を生成することができる、請求項6に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項8】
前記微粒子物質は反応性金属を含む、請求項7に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項9】
前記反応性金属は遷移金属を含む、請求項8に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項10】
前記反応性金属は、ゼロ価の鉄(ZVI)、パラジウム、金、白金、ニッケル、亜鉛のうちの少なくとも1つ、およびこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項11】
乾燥ゾル−ゲル組成物の約0.5重量%〜約5重量%のZVIをさらに含む、請求項1に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項12】
前記微粒子物質は、前記微粒子物質の表面の少なくとも一部分の上に堆積された金属触媒を含む、請求項6に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項13】
前記金属触媒は遷移金属を含む、請求項12に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項14】
前記遷移金属は、パラジウム、ニッケルおよび亜鉛からなる群から選択される、請求項13に記載のゾル−ゲル組成物。
【請求項15】
膨潤性複合材料であって、
複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子と、
非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質と、
を含み、前記複合材料は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる、膨潤性複合材料。
【請求項16】
疎水性でありかつ水を吸収しにくい、請求項15に記載の複合材料。
【請求項17】
前記有機シリカナノ粒子は有機架橋基を有するポリシロキサンを含む、請求項15に記載の複合材料。
【請求項18】
前記ポリシロキサンのケイ素原子の間に柔軟に連結された芳香族架橋基を含む、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
前記微粒子物質は、ハロゲン化有機被吸着物質を還元して、炭化水素およびハロゲン化物イオン最終生成物を生成することができる、請求項15に記載の複合材料。
【請求項20】
前記微粒子物質は反応性金属を含む、請求項15に記載の複合材料。
【請求項21】
前記反応性金属は遷移金属を含む、請求項20に記載の複合材料。
【請求項22】
前記反応性金属は、ZVI、パラジウム、金、白金、ニッケル、亜鉛のうちの少なくとも1つ、およびこれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の複合材料。
【請求項23】
前記複合材料の約0.5重量%〜約5重量%のZVIを含む、請求項15に記載の複合材料。
【請求項24】
前記微粒子物質の表面の少なくとも一部分の上に堆積された金属触媒をさらに含む、請求項15に記載の複合材料。
【請求項25】
前記金属触媒は遷移金属を含む、請求項24に記載の複合材料。
【請求項26】
前記遷移金属は、パラジウム、ニッケルおよび亜鉛からなる群から選択される、請求項25に記載の複合材料。
【請求項27】
汚染された水および土壌を処理するための組成物であって、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子を含み、前記有機シリカナノ粒子は、非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる、組成物。
【請求項28】
疎水性でありかつ水を吸収しにくい、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記有機シリカナノ粒子は有機架橋基を有するポリシロキサンを含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリシロキサンのケイ素原子の間に柔軟に連結された芳香族架橋基を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは前記非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質をさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記微粒子物質は、ハロゲン化有機被吸着物質を還元して、炭化水素およびハロゲン化物イオン最終生成物を生成することができる、請求項27に記載の組成物。
【請求項33】
前記有機被吸着物質は、テトラクロロエテン(PCE)、四塩化炭素(CT)、トリクロロエテン(TCE)、トリクロロメタン(TCM)、cis 1,2−ジクロロエテン(cDCE)、トリブロモメタン(TBM)、trans 1,2−ジクロロエテン(tDCE)、1,2−ジブロモエタン(12EDB)、1,1−ジクロロエテン(11DCE)、トリクロロフルオロエタン(Freon 113)、塩化ビニル(VC)、トリクロロフルオロメタン(Freon 11)、ヘキサクロロエタン(HCA)、1,1,2,2−テトラクロロエタン(1122TeCA)、1,2,3−トリクロロプロパン(123TCP)、1,1,1,2−テトラクロロエタン(1112TeCA)、1,2−ジクロロプロパン(12DCP)、1,1,1−トリクロロエタン(111TCA)、リンダン、1,1,2−トリクロロエタン(112TCA)、ヘキサクロロブタジエン(HCBD)、1,1−ジクロロエタン(11DCA)、式C1210−xCl(式中、xは1より大きく11より小さい整数である)を有するポリ塩素化ビフェニル類、有機塩素系農薬、化学兵器として使用されるハロゲン化化学種、または還元を受けやすい物質のうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記微粒子物質は反応性金属を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
前記反応性金属は遷移金属を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記反応性金属は、ZVI、パラジウム、金、白金、ニッケル、亜鉛のうちの少なくとも1つ、およびこれらの組み合わせを含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物の約0.5重量%〜約5重量%のZVIをさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項38】
水または土壌の中への前記組成物の投与を容易にする生分解性界面活性剤または変性剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項39】
前記微粒子物質の表面の少なくとも一部分の上に堆積された金属触媒をさらに含む、請求項31に記載の複合材料。
【請求項40】
前記金属触媒は遷移金属を含む、請求項39に記載の複合材料。
【請求項41】
前記遷移金属は、パラジウム、ニッケルおよび亜鉛からなる群から選択される、請求項40に記載の複合材料。
【請求項42】
膨潤性複合材料を製造するための方法であって、
残留シラノールを含む複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子および微粒子物質を準備する工程と、
前記残留シラノールと反応性である少なくとも1つの基および少なくとも1つのアルキル基を有する試薬を用いて、前記残留シラノールを誘導体化する工程と、
前記膨潤性複合材料を乾燥する工程と、
を含む方法。
【請求項43】
複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子を準備する前記工程は、
前記微粒子物質を準備する工程と、
前記微粒子物質と、適切な量の架橋シラン前駆体分子とを、ある量の溶媒、および前記架橋シラン前駆体分子の重合を誘導するのに有効である酸触媒または塩基触媒の存在下で混合する工程と、
をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記架橋シラン前駆体分子のうちの1以上は、下記の構造:
(アルコキシ)Si−(CH−Ar−(CH−Si(アルコキシ)
(式中、
nおよびmは、個々に、1〜8の整数であり、
Arは単環式、縮合環式、または多環式の芳香環である)
を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
各アルコキシは、独立にC1〜C5アルコキシである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
nおよびmは同じであり、かつ1〜6の整数である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
nおよびmは同じであり、かつ1〜3の整数である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
Arはフェニル、ビフェニル、またはナフチルである、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記1以上の架橋シラン前駆体分子はビス(トリアルコキシシリルアルキル)ベンゼンである、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記1以上の架橋シラン前駆体分子は、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、およびこれらの混合物から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記微粒子物質は反応性金属を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
前記反応性金属は遷移金属を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記反応性金属は、ZVI、パラジウム、金、白金、ニッケル、亜鉛のうちの少なくとも1つ、およびこれらの組み合わせを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記微粒子物質を準備する前記工程は、約0.01〜約10部のZVIを添加する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
前記溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジクロロメタン/THF、およびTHF/アセトニトリルの群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項56】
前記塩基触媒は、フッ化テトラブチルアンモニウム、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、およびプロピルアミンの群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項57】
前記酸触媒は強酸である、請求項43に記載の方法。
【請求項58】
前記試薬は、シアノプロピルジメチル−クロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、(トリデカ−フルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロ−オクチル)ジメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−オクタデシルジメチルクロロシラン、およびヘキサメチルジシラザンの群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項59】
誘導体化する前記工程の前に前記膨潤性複合材料を洗浄して、水および過剰の触媒を除去する工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項60】
洗浄する前記工程は、THF、アセトン、エタノール、アセトニトリル、またはこれらの組み合わせの中で実施される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
重合する前記工程の後で誘導体化する前記工程の前に、前記膨潤性複合材料組成物を熟成する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項62】
熟成する前記工程は、前記膨潤性複合材料の離液をもたらすのに有効な条件下で実施される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
熟成する前記工程は、約15分間〜約7日間、実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
熟成する前記工程は約18℃以上の温度で実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
金属触媒が前記微粒子物質の表面の少なくとも一部分の上に堆積されるように、乾燥された前記膨潤性複合材料を、ある量の金属触媒で処理する工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項66】
前記金属触媒は遷移金属を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記遷移金属は、パラジウム、ニッケルおよび亜鉛からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
乾燥された前記膨潤性複合材料を、ある量の金属触媒で処理する前記工程は、
乾燥された前記膨潤性複合材料を、前記金属触媒を含有する溶液で処理する工程であって、前記溶液は溶媒の体積にほぼ等しい前記金属触媒の体積を含む工程と、
前記溶液を、乾燥された前記膨潤性複合材料と約30分間〜約4時間反応させる工程と、
いずれかの過剰な金属触媒を除去する工程と、
処理された膨潤性複合材料を乾燥する工程と、
をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
非極性もしくは有機の被吸着物質を含有する汚染された液体または土壌を改善するための方法であって、
膨潤性複合材料に、前記非極性または有機の被吸着物質を取り込ませるのに有効な条件下で、前記汚染された液体または土壌を前記膨潤性複合材料と接触させる工程を含み、
前記膨潤性複合材料は、複数の相互に連結された有機シリカナノ粒子、および前記非極性もしくは有機の被吸着物質に結合するかまたは前記非極性もしくは有機の被吸着物質と反応することができる微粒子物質を含み、前記膨潤性複合材料は、前記非極性または有機の被吸着物質と接触して置かれるときに、その乾燥体積の少なくとも2倍まで膨潤することができる、方法。
【請求項70】
前記膨潤性複合材料は疎水性でありかつ水を吸収しにくい、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記有機シリカナノ粒子は有機架橋基を有するポリシロキサンを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記架橋ポリシロキサンは、前記ポリシロキサンのケイ素原子の間に柔軟に連結された芳香族架橋基を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記微粒子物質は、ハロゲン化有機被吸着物質を還元して、炭化水素およびハロゲン化物イオン最終生成物を生成することができる、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記微粒子物質は反応性金属を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記反応性金属は遷移金属を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記反応性金属は、ZVI、パラジウム、金、白金、ニッケル、亜鉛のうちの少なくとも1つおよびこれらの組み合わせを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記膨潤性複合材料は、乾燥複合材料の約0.5重量%〜約5重量%のZVIをさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項78】
前記微粒子物質は、前記微粒子物質の表面の少なくとも一部分の上に堆積された金属触媒を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項79】
前記金属触媒は遷移金属を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記遷移金属は、パラジウム、ニッケルおよび亜鉛からなる群から選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記微粒子物質は、ハロゲン化有機被吸着物質を還元して、炭化水素およびハロゲン化物イオン最終生成物を生成することができる、請求項69に記載の方法。
【請求項82】
前記有機被吸着物質は、PCE、CT、TCE、TCM、cDCE、TBM、tDCE、12EDB、11DCE、Freon 113、VC、Freon 11、HCA、1122TeCA、123TCP、1112TeCA、12DCP、111TCA、リンダン、112TCA、HCBD、11DCA、式C1210−xCl(式中、xは1より大きく11より小さい整数である)を有するポリ塩素化ビフェニル類、有機塩素系農薬、化学兵器として使用されるハロゲン化化学種、または還元を受けやすい物質のうちの少なくとも1つを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
非極性もしくは有機の被吸着物質を含有する汚染された液体または土壌を膨潤性複合材料と接触させる前記工程は、前記膨潤性複合材料を、前記汚染された液体または土壌の中へと直接注入する工程をさらに含む、請求項69に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−504683(P2013−504683A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529819(P2012−529819)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/048670
【国際公開番号】WO2011/034825
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512065627)エイビーエス マテリアルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】