説明

膵管腺癌に関連する新規の抗原及び抗体

本発明は、ヒト膵管腺癌(PDA)に関連して特異的に発現されるものとして同定された新規のヒトタンパク質抗原及びそれに関係する抗体を提供する。特に、新規のリン酸化されたα−エノラーゼアイソフォームが、膵臓由来の形質転換された細胞系の中で同定されており、かかるアイソフォームと結合する抗体が、PDA患者の血清中に特異的に存在する。これらのタンパク質及び抗体はPDA及び共通の分子的機能を有するその他の癌の診断及び治療にとって有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの癌、特に膵臓由来の癌を診断し治療するための新規の手段に関する。
【背景技術】
【0002】
膵管腺癌(PDA)は、米国及び欧州において最も頻度の高い膵臓癌であり、癌による死亡の第4番目の原因である。大部分の患者は12ヵ月以内で死亡し、診断後の5年生存率はわずか2%にすぎない。膵切除術が今なおPDAの管理及び化学療法の要であり続けているが、生存率に関してはわずかな利点しか提供しない(Laheru D及びJaffee M、2005年;Kleef Jら、2006年)。
【0003】
(モノクローナル抗体、ワクチン及び化学療法の使用を含めた)外科的及び医学的管理の改善にも関わらず、早期PDA診断のためのマーカーは未だに数少なくまた信頼性の低いものである。膵臓癌の診断のために最も広く使用されている血清学的マーカーは、シアリル化ルイス血液型抗原CA19−9であるが、その使用はほとんどが、PDA診断ではなくむしろ療法に対する応答を監視することに向けられている。実際、この抗原は、(慢性膵炎又は胆道閉塞といったような)良性膵臓疾患に罹患した患者由来の血清中にも高濃度で存在して偽陽性を提供する可能性があり、母集団の5〜10%においては全く発現されないことを理由として、全てのケースに使用することはできない(Okusaka Tら、2006年)。
【0004】
これらの理由から、生検及び組織病理学的評価といったような侵襲的手技を制限することを目的としてPDA診断において使用するため(Bouvet M, 2004年;Brand R, 2001年;Goggins M、2005年;Leung Tら、2005年)及び薬物候補を評価するため(Cohen S及びMeropol N、2002年;Jimento A及びHidalgo M、2006)の代替的バイオマーカーが承認審査段階にある。
【0005】
(RNA又はタンパク質レベルのいずれかに基づく)タンパク質発現の大規模分析を用いて候補のPDAバイオマーカーを同定するために、様々な技術が近年利用されてきている。特に、二次元ゲル電気泳動法(2−DE)により分離され、癌患者からの血清抗体により認識され、そして質量分析法を用いて同定されるタンパク質を比較することにより、PDA患者の血清中で液性応答を惹起する抗原を検出するために、プロテオーム技術が使用されてきた。タンパク質の分離、選択及び特徴付けのためのこのアプローチの変形形態は、SERPA(Klade Cら、2001年)、PROTEOMEX(Lichtenfels Rら、2003年)又はSPEAR(Unwin Rら、2003年)といったように、文献中に異なる名称で記述されている。
【0006】
これらの方法論に共通の研究作業前提は、癌によって特異的に発現される抗原(いわゆるヒト癌イムノーム)に対するB細胞レパートリーを特徴付けることによって、癌の免疫監視及び免疫編集に関与する特異的標的を定義付けし、無制御の細胞増殖及び転移を導く機序を理解することが可能であるはずである、というものである(Drake Cら、2006年;Dunn Gら、2004年)。
【0007】
免疫療法は、膵臓癌の治療にとって貴重なアプローチであり得るということが示唆されてきた(Laheru D及びJaffee M、2005年)。実際、PDA特異的タンパク質候補のリストが、RNAレベルにおけるそれらの高い発現に基づいて(国際公開第04/55519号(WO04/55519))、あるいは血清試料及び/又は膵臓試料の大規模プロテオーム解析(Bhattacharyya Sら、2004年;Cao Dら、2005年;Cecconi Dら、2003年;Chen Rら、2005年;Gronborg Mら、2006年;Honda Kら、2005年;Koomen Jら、2005年;Rodriguez Jら、2005年;Shen Jら、2004年、Rosty C及びGoggins M、2005年;Sinha Pら、1999年;Yu Yら、2005年)に基づいて作成されてきた。血清中のPDA診断のためのタンパク質候補は、フィブリノーゲンガンマ(Bloomston Mら、2006年)、DEAD−Boxタンパク質48(Xia Qら、2005年)、MIC−1(Koopmann Jら、2004年)、PTH関連タンパク質(Bouvet Mら、2001年)及びカルレティキュリン(Hong Sら、2004年)である。
【0008】
しかしながら、PDAの早期検出及びその他の膵臓病変又は癌との弁別のための信頼性の高いバイオマーカーがなおも必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、PDA患者由来の血清が、健康な個体から又はその他の病変に罹患した個体からの血清と比較した場合に、膵臓癌由来の細胞系の中で発現される特異的タンパク質に対する抗体を含有しているという観察事実に基づくものである。これらのタンパク質の存在は、正常な膵臓組織及びPDAの膵臓組織から得た抽出物中でかかるタンパク質に特異的な精製済み抗体を使用することによって確認された。
【0010】
本発明の主たる目的は、新規のα−エノラーゼアイソフォームの1つの中でも同様に判定済みである少なくとも3つの位置でリン酸化されているヒトα−エノラーゼ(ENOA)の新規のPDA関連アイソフォームにある。
【0011】
本発明のさらなる目的は、これらのENOAのリン酸化されたアイソフォームを結合させかつその他のENOAアイソフォームからそれらを区別する抗体にある。これらの抗体は、モノクローナル抗体(特にヒトモノクローナル抗体)及び抗体フラグメントといったような任意の適切なフォーマットのものであり得る。
【0012】
本発明においてPDA関連として定義付けされたタンパク質及びそれらを結合させる抗体(ならびにそれらを検出するためのその他のあらゆる特異的手段)を、PDA診断方法において、ならびにPDAを治療するための作用物質を識別するために使用することができる。特に、患者から得られた生体試料(例えば血清又は生検材料)中のPDA関連ENOAリン酸化アイソフォームの抗体ベースの検出は、PDAの診断のため、疾病の進行を評価するため又はPDAを治療するための薬物の効果を評価するための方法において使用可能である。
【0013】
本発明のさらなる目的は、PDAの診断のため、疾病の進行を評価するため、又はPDAを治療するための薬物の効果を評価するためのキットにおいて、本発明のPDA関連タンパク質及び/又はそれらを結合させる抗体のうちの少なくとも1つを含むキットにある。
【0014】
膵臓癌の診断及び治療における特異的抗α−エノラーゼ抗体の定義付け及び使用に関するものを含めた本発明のその他の目的が、以下の記述の中で提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】PDA(腫瘍)患者又は対照(健常)ドナーからのCF−PAC−1細胞(腫瘍細胞)及び血清を用いたPDA関連タンパク質抗原及び抗体を特徴付けするために適用されるSERPA方法の概略的表示である。
【図2】(A)PDA関連タンパク質の発現を検出するための検定としてCF−PAC−1細胞系からタンパク質抽出物を使用して調製された2−DEゲル。細胞抽出物中のタンパク質は、その分子量及びPIに応じてゲル中で分離され、銀染色を用いて顕示された。PDA血清でのウエスタンブロット法において存在するものの対照血清では存在しないスポットの位置は、標示されている(各番号に対応する特異的タンパク質の名称は、表1に列挙されている)。(B)標示されたPDA関連タンパク質を認識する抗体を含有する、異なる病期(II、III、IV)における慢性膵炎(CP)又はPDAに罹患した患者(各グループ内の患者の数はnとして標示されている)からの血清の百分率を表わすヒストグラム。頭文字に対応するタンパク質のフルネームは表Iに標示されている。
【図3】ヒトα−エノラーゼ(ENOA;SWISSPROT Acc. No. P06733;配列番号1)及びヒトガンマエノラーゼ(ENOG SWISSPROT Acc. No. P09104;配列番号2)タンパク質配列のアライメント(2つのタンパク質の中で同一であるアミノ酸は「:」で標示され、一方保存されているだけのタンパク質は「・」で標示されている)。2−DEゲルスポットにおいて質量分析法によって同定されENOAアイソフォームをかかるスポットに割当てるために使用されてきたペプチドの配列には下線が付されている。
【図4】異なるアルゴリズムによって予測されかつ/又は実験により同定されるヒトα−エノラーゼ(ENOA)のタンパク質配列内のリン酸化部位(太字、下線)の位置(タンパク質配列の下の小文字;参考文献については凡例を参照のこと)。ENOAアイソフォーム3中でリン酸化されているものとしてENOA中で同定されたペプチドは、普通線(normal line)でとり囲まれている。ENOAアイソフォーム3中でリン酸化されていないものとして同定されたペプチドは、破線でとり囲まれている。
【図5】(A)異なる手段による6個のα−エノラーゼアイソフォーム(ENOA1,2,3,4,5,6)の検出。ENOA1/2及び3の位置は、白色矢印で標示されている。(B)膜上に移されその後一次抗体として抗ENOAを用いてウエスタンブロット法でテストした正常な膵臓組織由来又はPDA患者の膵臓組織由来のタンパク質抽出物の中の6個のα−エノラーゼアイソフォーム(1、2、3、4、5、6)の検出。ENOA1/2アイソフォームの位置は、白色矢印で標示されている。ゲル上に投入されたタンパク質量の対照として、膜をウサギポリクローナル抗ヒトアクチン抗体(希釈度1:10000;Sigma Chemical Co.)でプローブした。
【図6】組換え型ヒトα−エノラーゼ(+rENOA又はrENOA)での予備吸着を伴う又は伴わないPDA患者の血清のプールを(一次抗体として)用いた、2−DEゲル及びウエスタンブロット法によるCF−PAC−1細胞抽出物中の6個のα−エノラーゼアイソフォーム(スポット1、2、3、4、5、6)の検出。代替的には、PDA患者血清のプールを(一次抗体として)用いて、ウエスタンブロット法を実施する前にホスファターゼ(+λPRASE)で膜を前処理した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
生化学的及びプロテオーム技術を組合せた形で使用することにより、疾患関連生体試料中に存在する個々のタンパク質の同定及び評価を可能にする。当該ケースにおいては、このタイプの分析は当初癌(PDA)に向けられ、潜在的にPDAの腫瘍形成及び/又は進行に関連付けされる抗体を含有する、膵管腺癌(PDA)患者の大規模パネルから得た血清及びヒトPDAから導出された細胞系(CF−PAC−1)という2つの疾患関連分子が使用された。
【0017】
これらの血清のウエスタンブロット分析によりCF−PAC−1抽出物中で検出された免疫反応性タンパク質のプロファイルを、CF−PAC−1プロテオーム中のPDA関連抗体及びそれに関係する抗原の候補を立証する目的で、異なる対照集団(健康な対象、非PDA腫瘍患者、慢性膵炎患者)からの血清を使用して得られたものと比較した(図1)。
【0018】
全く異なる公知の生物活性を有する限定された数のタンパク質(代謝酵素及び細胞骨格タンパク質を含む)に対する抗体は、PDA患者由来の血清中に選択的に存在することが発見されており、このことは、これらのタンパク質がPDA関連性を有し、PDA患者においてはインビボ抗体応答を誘発し、健康な対象又は非PDA癌患者においてはこれを誘発しない、ということを示唆していた。
【0019】
本発明においてPDA関連として定義付けされたタンパク質及び抗体(及びこれらを検出するためのその他のあらゆる特異的手段)は、PDA診断のための方法において、ならびにPDAを治療するための作用物質を同定するために使用可能である。
【0020】
PDA関連ヒトタンパク質パネル(α−エノラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、レチナール・デヒドロゲナーゼ−1、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ、伸長因子Tu及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ケラチンI型細胞骨格(cytoskeletal)10、コフィリン1を含む;図2B及び表I)は、タンパク質の分離及び分析のための2−DE及び質量分析法技術を用いて、PDA血清中に特異的に存在する抗体についての抗原として定義付けされた。その上、これらの抗原に対する精製済み抗体が、その差次的発現ひいては、PDAの早期診断のために(血清、完全又は部分的に精製された抗体、ポリクローナル抗体調製物及びペプチドを含めて)これらを検出するためそして患者の体内におけるこの癌の進行を評価するためのあらゆるタンパク質ベースの手段の有用性、を確認した。
【0021】
これらのタンパク質は、各々個別に又は組合せた形で、PDAの早期診断のためのバイオマーカーとして、及び患者の体内でのこの癌の進行を評価するために使用することができる。これらのバイオマーカーのうち、2−DE及びウエスタンブロット法を用いて同定されるENOA1/2(α−エノラーゼアイソフォーム1及びアイソフォーム2)及びCOF1(コンフィリン1)が、最も信頼性の高いPDA関連タンパク質抗原であるように思われる。
【0022】
実施例中に示されているように、かかるPDA関連抗原を結合させる抗体を、以上で列挙した範囲について使用することができる。かくして、生体試料(例えば血清、生検材料又は細胞/組織タンパク質抽出物)中のこのような抗原及び/又は抗体の検出を含む方法によって、PDAの早期診断及び患者の体内でのPDA進行の評価が可能である。
【0023】
PDA関連抗原の特徴付けは、以下で記述されている1つのケースを除いて、PDA関連タンパク質内の何らかの翻訳語修飾の定義付けにまで拡張されなかった。データは、(表I右欄について使用されている精製済み抗体のような)所与の抗原の全てのアイソフォームに共通のエピトープ、又は(PDA患者の血清中に存在しPDAの進行中に測定されたもののような(図2参照))PDA関連翻訳後修飾を含有するアイソフォーム(単複)のみに共通のエピトープを特異的に結合させるあらゆる抗体又はペプチドが、PDAの診断及び進行のために使用可能であるということを示唆している。
【0024】
PDAを治療するための新規の治療用化合物を提供することに関心が寄せられていることから、生体試料中のPDA関連抗原及び抗体(ならびにその結合特性)の検出を含む方法は、PDAを治療するための薬物候補を評価するためにも使用することができる。このアプローチは、ENOAアイソフォーム(ENOA1/2)での実施例において示されているように、PDA関連タンパク質及び/又は抗体の存在を比較することのできる検定において応用することができる。
【0025】
実施例及び文献中に記述されている生化学的及びプロテオーム技術を用いて立証できかつ候補化合物に対する曝露の後に見られるこれらの特性の変化は、PDA腫瘍形成及び転移を導く生物学的経路を標示する可能性がある。例えば、患者又は動物モデルの血清中のPDA関連抗原に対する一次抗体の消滅、ならびに、抗原特異的抗体を用いた細胞抽出物中のウエスタンブロット法によるスポット数の減少を検出することによって、1つの化合物のPDA特異的活性を確認することができる。
【0026】
候補化合物は、PDA関連タンパク質(例えばCOF1又はENOA1/2など)として本発明で定義付けされているものを含め、あらゆる潜在的PDA治療標的に指向させることができる。例えば、化合物は、それらを結合させる抗体(全般又は特異的アイソフォームのみ)の形、あるいは、修飾をもたらす酵素の活性を変調させることによりその発現又は翻訳後修飾を改変させる小分子の形をとることができる。その上、マウスモノクローナル抗体といったようなヒトα−エノラーゼを結合させる抗体が、6個のα−エノラーゼアイソフォーム(すなわちウエスタンブロット法においてPDA患者の血清を用いて検出されるようなENOA1/2を含む)を提示する膵臓由来の形質転換された細胞系のインビトロ成長及び増殖を阻害する、ということが発見された。インビトロ成長及び増殖に対するこの阻害効果は、このような6個のα−エノラーゼアイソフォームを提示する非膵臓由来の形質転換された細胞系についても観察されたが、わずか3個のリン酸化されていないこれらのアイソフォームしか提示しない細胞系では観察されておらず(実施例3;図5B;表IV)、PDAの治療のために抗ENOA抗体を使用する可能性が示唆されている。
【0027】
このとき、シグナル変換に影響を及ぼすペプチド、ペプチド類似体及び小分子といったような異なる化合物の効果を確認するためにすでにテストされた、細胞系又は動物モデルを使用する膵臓細胞用増殖検定のいずれかにおいてかかる潜在的な治療的特性を評価することができる(Beker Cら、2002年;Bauer Tら、2005年;Bruns Cら、2000年;Lee Lら、2002年;Levitzki A及びMishani E、2006年;Qin Yら、1995年;Yezhelyev Mら、2004年;Rubio-Viqueira Bら、2006年)。その上、膵臓癌をさらに効果的に治療するため異なる分子標的をターゲティングする化合物の組合せを使用する可能性が実証されてきた。例えば、細胞膜レセプタに特異的なキナーゼの阻害物質と共に化学療法試薬を投与することで、動物モデルにおいて実験的ヒト膵臓癌の成長が阻害され、生存期間が有意に延長された(Yokoi Nら、2005年)。代替的には、ウイルス又はヒトの標的に向けられた2つ以上の抗体が1つの医薬組成物に組合わされた場合、結果として得られる組成物は、相加効果のみならず相乗効果に起因して、改善された治療的及び/又は診断的効能を示し得るということが記述されてきた(Logtenberg T、2007年)。
【0028】
PDA関連タンパク質(例えば、ENOA1/2)に対する抗体を含む医薬組成物を、ヒトにおける治療及び診断を目的として投与することができる。かくして、PDAの治療又は診断のための方法は、PDA関連タンパク質(例えばENOA1/2)に対する抗体を含む医薬組成物の投与を含み得る。
【0029】
組成物は、共通の医薬賊形剤を含んでいてよく、単回又は複数回投薬量で、及び/又は適切なデバイスを用いて、筋内、静脈内、皮下、局所、粘膜経由といった様々な経路を通して、非生分解性/生分解性マトリクス材料中で、又は微粒子薬物送達系を用いて、投与可能である。特に、該組成物は、膵臓又はPDA関連タンパク質が存在し得るその他のあらゆる組織に対する有効な投与を可能にするはずである。
【0030】
医薬組成物は、化合物が充分な時間にわたりその活性を及ぼすことができるようにする治療上又は予防上有効な量の化合物を提供すべきである。所望の効果は、PDAの成長及び増殖を制御すること及びPDAの臨床症状の少なくとも一部分を減少させることによって、PDA患者の状態を改善することである。例えば、組成物は、投与経路及び個体の状態に応じて、体重1kgあたり約0.005〜約50mgの有効量で投与されるべきである。
【0031】
診断的な用途を有する組成物の場合には、化合物は、生体試料中のウイルスを検出するため臨床及び研究用実験室で一般的に公証済みの技術(例えばELISA又はその他の血清学的検定)を用いて、またインビボで対象に対し投与される場合には投与から少なくとも1、2、5、10、24時間以上後で検出されるはずである。PDA関連タンパク質及び/又は抗体の検出は、PDAを診断するために立証された公知の手段及び手順にしたがって又はこれらと組合せた形で、本発明のPDA関連タンパク質及び/又は抗体を用いて実施可能である。
【0032】
PDAの療法及び/又は診断のための臨床的な開発及び使用は、抗体の薬物動態及び薬物力学の特徴付け(Lobo Eら、2004年)、データ前臨床及び臨床安全性(Tabrizi M及びRiskos L、2007年)、そしてヒトにおける治療及びインビボ診断用の使用のためのモノクローナル抗体の生産及び品質管理に関する国際規定要件の遵守(Harris Rら、2004年)に基づくべきである。
【0033】
患者の体内でのPDA診断用のキットは本発明において定義されている通り以上で定義したPDA関連タンパク質及び/又は抗体を1つ以上とそれらの検出を可能にするその他のあらゆる化合物を含み得る。これらのキットは、標識された/されない抗原、抗体、又は(例えば酵素活性をもつものとして同定されたものの場合のように)かかる抗原との相互作用の後に修飾される基質を含むことができる。
【0034】
PDAに対する液性応答の標的となるもののうち、最も有利であるのは、新規のα−エノラーゼのリン酸化されたアイソフォームがPDA血清により認識されるという事実である。ヒトα−エノラーゼの新規のアイソフォーム(ENOA)は少なくとも3つの位置でリン酸化されており、合計7つのリン酸化部位が同定されている(図4)。この事実の重要性は、PDA患者から得られた血清を用いた又はPDA患者から得た膵臓組織内での2つのリン酸化度の高いENOAアイソフォーム(ENOA1/2)の特異的検出によって裏付けられる(図2B、5及び6、表I及びII)。PDA患者は、本発明のリン酸化度の高いENOAアイソフォームを特異的に結合する抗体を提示する。
【0035】
実施例は、ENOA配列内の複数の位置がリン酸化され得るにせよ、トレオニン、セリン及びチロシン残基の精密な組合せが、細胞系及びPDA組織の両方において実際にリン酸化され、PDA患者により産生されたヒト抗体によって検出される、ということを示している。特に、トレオニン55、チロシン57、チロシン200、チロシン236、トレオニン237、チロシン257及びセリン419におけるリン酸化が、ENOAアイソフォーム3内に存在し、このアイソフォームは、ENOA1/2と同様、ホスファターゼによる処置により改変されるタンパク質リン酸化プロファイルを示す。患者から得た生体試料を用いてPDAを診断し、疾病の進行を評価するために、タンパク質リン酸化の類似の変化を使用することができる。
【0036】
完全ENOA1/2アイソフォームの代替として、図4(囲みのある配列を参照のこと)で同定されたもののようなENOA1/2と同じリン酸化された残基を提示するENOA由来の単一ペプチド、それらを含むタンパク質配列又はそのライブラリ及び組合せを生成することが有用であり得る。かかるリン酸化されたタンパク質及びペプチドを生成し使用するための方法が、文献中で開示されている(Conrads Tら、2002年;米国特許第763164号(US763164);国際公開第97/30097号(WO97/30097))。
【0037】
α−エノラーゼ(特にENOA1/2)中の翻訳後の修飾の数及び効果は、PDA関連及び対照の試料において、公知の技術によってさらに確認することができる(Kalume Dら、2003年;Machida Kら、2003年;Mann Mら、2002年;Rush Jら、2005年;Molina Hら、2007年;Schmeizle K及びWhite F、2006年;Wu Jら、2005年)。ENOAについて公知の付加的なリン酸化及び/又は修飾(表III)は、ENOA1/2内に存在し、これらのアイソフォームの抗原性及び生物活性ならびにアイソフォーム特異的抗体によるそれらの検出に適切であり得る。特定の病期/疾病タイプに付随する翻訳後修飾は、その他のタンパク質について示されているように、特異的修飾を有するアイソフォームを区別する抗体又は直接的タンパク質分析を含めた複数の手段によって検出可能である(Edberg Dら、2005年;Mandell J、2003年)。
【0038】
2−DE及びウエスタンブロット法により非PDA/PDAタンパク質抽出物内で差次的に発現されたタンパク質アイソフォームに対するその結合を通して定義付けされる抗体、特にモノクローナル抗体を、2−DE及びウエスタンブロット法で類似のプロファイルを有する癌の治療において使用することが可能である。かくして、PDA治療用の医薬組成物の調製において及び、PDA患者又はα−エノラーゼについて類似の発現プロファイルを提示する(すなわち少なくとも3つの位置でリン酸化されている本発明のヒトα−エノラーゼの新規のアイソフォームを発現する)癌患者の治療的処置のための方法において、α−エノラーゼ(全般又は特に特異的リン酸化アイソフォーム)を結合させる抗体を使用することができる。
【0039】
リン酸化されたα−エノラーゼのアイソフォームが患者の血清中に存在することによって特徴付けされる(PDAといったような)癌の検出又は治療のために、抗体を使用することが可能である。これらの抗体は、診断上又は治療上の利点をもつ抗体を同定し、特徴付けしかつ生産するための公知の技術のうちの任意のものを応用して生成することができる(Jain Mら、2007年;Laffly E及びSodoyer R、2005年)。抗体は、Scfv(一本鎖可変フラグメント)、Fab(可変重/軽鎖ヘテロ2量体)、ダイアボディ、単離重鎖又は軽鎖、ペンタボディ又は二重特異性抗体といったような異なる名称で文献中に記述されている、完全抗体(例えばモノクローナル抗体、特にヒト又はヒト化モノクローナル抗体)、抗体フラグメント、抗原結合タンパク質、及びその他の工学処理された抗体ベースの融合タンパク質及びペプチドのように、機能的抗体についてのあらゆるタンパク質フォーマットで生成され得る。
【0040】
本発明の抗体は、治療用、安定化用、標識用又は診断用の作用物質に対する融合又は(化学的リンカー又は重合体を用いた)接合によって改良することができる。これらの作用物質の例としては、結合させることのできる検出可能な標識分子(例えば放射性同位元素、螢光化合物、毒素、金属原子、化学発光性化合物、生物発光性化合物、ビオチン、酵素基質又は酵素)がある。ENOA特異的活性は、同様に、診断又は治療の利用分野において代謝及び/又は安定性を改変させるタンパク質又は重合体といったようなもう1つの治療用タンパク質との融合によっても改良され得る。
【0041】
タンパク質部分、リガンド及び適切なリンカーを選択し設計するための手段ならびに融合タンパク質の構築、精製、検出及び使用のための方法及び戦略が、文献中で提供されており(Nilssonら、1997年、「キメラ遺伝子及びハイブリッドタンパク質の応用」Methods Enzymol. 第326〜328巻、Academic Press、2000年;国際公開第01/77137号(WO01/77137))、臨床及び研究実験室において一般的に利用可能である。例えば、融合タンパク質は、融合タンパク質のインビボ及び/又はインビトロ同定を容易にし得る(ポリヒスチジン、FLAG、c−Myc又はHAタグといったタグを含む)市販の抗体によって認識される配列を含有していてよい。その他のタンパク質配列は、(緑色螢光タンパク質の場合のように)直接螢光分析によって、又は(タンパク質分解部位などを用いる)特異的基質又は酵素によって、容易に同定可能である。
【0042】
(ENOA1/2といったような)PDA特異的タンパク質配列を認識する抗体又はこのような抗体から誘導されたその他のあらゆるタンパク質配列は、原核又は真核宿主細胞であり得る適切な宿主細胞を形質転換するためにかかるベクターを用いて組換え型タンパク質として発現され得、所望の組換え型タンパク質の分泌を可能にするはずである。かかるタンパク質を生産するための方法としては、タンパク質の発現に適した条件下でそのコーティング配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養すること、及び宿主細胞培養からタンパク質を回収することが含まれる。
【0043】
原核又は真核宿主細胞内への発現のためのベクターは、Oxford Univ. Pressにより刊行された「実践アプローチ」シリーズ内の出版物を含め、組換え型タンパク質のクローニング及び生産方法についての書籍及び雑誌の中で記述されている(「DNAクローニング2:発現系」、1995年;「DNAクローニング4:哺乳動物系」、1996年;「タンパク質の発現」、1999年;「タンパク質精製技術」、2001年)。所望の抗体フォーマット(Scfv、FAb、抗体フラグメント、完全ヒト抗体、など)、又は1つ以上の内部アミノ酸の挿入、置換又は除去に関係して、付加的なタンパク質配列を付加することが可能である。これらの技術は、同様に、タンパク質全般そして特に抗体の治療的特性のさらなる構造的及び機能的特徴付け及び最適化のためにも使用可能である(Kim Sら、2005年)。
【0044】
本発明についてここで以下の実施例を用いて記述するが、これらの実施例は本発明をいかなる形であれ制限するものとしてみなされるべきではない。
【実施例】
【0045】
実施例1:CP−PAC−1細胞系のプロテオームにおけるPDA関連液性抗原の検出
材料と方法
ヒト血清
血清試料は、患者及び健康なドナーのインフォームドコンセント及び医療機関の倫理委員会からの承認を得て、静脈血から単離させた。使用するまで、試料を−80℃で保管した。
【0046】
70人のPDA患者(男性31名、女性39名;年令範囲32〜86才;平均年令±標準偏差:67±11才)を、一般的に使用されている分類(Faria Sら、2004年)及びUICC(Union International Contre le Cancer(国際対癌協会))分類にしたがって、以下の通りの異なる臨床的病期にグループ分けした:第II期(転移なし、分化度中)17名、第III期(転移なし、分化度低)17名、及び第IV期(遠隔転移、未分化)。
【0047】
これらの血清の反応度を、癌又は自己免疫疾患の前歴のない対照として使用された40名の健康な対照(男性14名、女性26名、年令範囲57〜77才;平均年令±標準偏差:70±7才)のものと比較した。さらに、これらの血清の反応度を、30名の非PDA癌患者(肝細胞癌患者9名、乳癌患者12名、結腸癌患者8名、そして卵巣癌患者1名;男性11名、女性19名;年令範囲44〜79才;平均年令±標準偏差66±10)及び15人の慢性膵炎患者(男性9名、女性6名、年令範囲49〜76才;平均年令±標準偏差:59±8才)のものと比較した。
【0048】
血清を提供する患者の異なるグループ間の年令及び性別分布は、独立両側スチューデントt−検定によって評価される通り、充分有意な差異を示さなかった。慢性膵炎は一般にPDAよりも若い年令(平均44才前後)で発生することから、この疾病のグループにおいてのみ、これら2つのグループの年令分布は有意に異なっていた(性別分布は有意に異なっていなかった)。
【0049】
細胞系及び細胞抽出物調製
膵管腺癌(Schoumacher Rら、1990年)から誘導したCF−PAC−1細胞系(ECACC、照会番号91112501)由来の細胞(107)を収穫し、ハンクス液(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, USA)で洗浄した。ペレットを一晩、凍結乾燥させ、−80℃に保管した。200μlの再水和緩衝液[5Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%w/vのCHAPS(Sigma Chemical Co.)、2%v/vのIPG緩衝液3〜10NL(GE Healthcare Bio-Sciences, Uppsala, スウェーデン)、80mMのDTT(Sigma Chemical Co.)]及び微量のブロモフェノール・ブルー(Sigma Chemical Co.)中にペレットを再懸濁させた。タンパク質濃度をブラッドフォード検定(Bio-Rad Laboratories)で測定した。
【0050】
二次元ゲル電気泳動(2−DE)
CF−PAC−1細胞系由来のタンパク質抽出物100μgを、分析用及び分取用ゲルのため、7cmのIPGストリップ上へのゲル中(in gel)再水和(pH3〜10NL)により投入した。合計16000Vkの間、最高5000Vまでの電圧勾配で、IPGphorIEFユニットシステム(GE Healthcare Bio-Sciences)上で、等電点電気泳動法(IEF)を実施した。SDS−PAGEの前に、IPGストリップを15分間、トリス/HCl緩衝液(50mM;pH8.8)、尿素(6M)、グリセロール(30%v/v)、SDS(2%w/v)及びDTT(2%w/v)の溶液中で平衡化し、その後DTTに代ってブロモフェノール・ブルー及びヨードアセトアミド(2.5%w/v)を含有する同じ緩衝液中でさらに5分間平衡化した。第2次元については、恒常な200VでNovex X-Cell IITMミニ−セルシステム(Invitrogen)を用いて、小さいNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12%Bis-Trix Zoom(登録商標)プレキャストゲル(Invitrogen, Groningen、オランダ)上に7cmのストリップを走らせ、これをNovex X-Cell IITMブロット・モジュール(Invitrogen)を用いてHybond ECLニトロセルロース膜(GE Healthcare Bio science)上に移すか、又は質量分析法による分析のために銀染色した(Shevchenko Aら、1996年)。
【0051】
タンパク質スポットのPI値を、GE Healthcare Bio-Sciencesにより提供されたpH勾配グラフを用いて2−DEゲル上のそれらの位置から推定した。タンパク質の分子量を、公知の分子量のSeeBlue Plus 2予備染色標準(Invitrogen)の移動との比較によって計算した。「ImageScanner」(GE Healthcare Bio Sciences)で2−DEゲル画像を獲得し、「ImageMaster Labscan Ver 3.00」ソフトウェア(GE Healthcare Bio-Sciences)を用いてTIFF書式で記録した。
【0052】
膜を15分間4℃で、5%の脱脂粉乳を含有するTBSから成る遮断用緩衝液と共にインキュベートし、その後、スクラム(0.05%のTween 20及び50%の脱脂粉乳を含有するTBS中の1:200の作業希釈液)と共に4時間インキュベートした。洗浄後、室温で90分間1:1000希釈度のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−接合型ウサギ抗ヒト免疫グロブリンG(IgG)抗体(Santa Cruz Biotechnology)と共に膜をインキュベートした。
【0053】
代替的には、精製された一次抗体を用いたウエスタンブロット分析のため、2−DEゲルからブロッティングしたニトロセルロース膜を、マウス由来の抗体[例えばモノクローナル抗体、抗エノラーゼ19/128(Moscato Sらにおいて特徴付けされたクローン19/12のサブクローン)、抗トリオースリン酸イソメラーゼ1(Abnova Corporation)、抗ケラチン10(Chemicon International)、抗伸長因子tu(Abnova Corporation)]、か又はウサギ由来の抗体[例えばポリクローナル抗体、抗アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(Chemicon International)、抗グルコース−6リン酸1−デヒドロゲナーゼ(Bethyl laboratories)、抗イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(Biogenesis Ltd)及び抗−コフィリン1(Cell Signaling)]のいずれかの1:1000希釈液を用いて、25℃で1時間プローブした。その後、メーカーの指示事項にしたがって、抗マウスIgG又は抗ウサギIgGのいずれかの特異的二次HRP接合型ヤギ抗体と共に一時間膜をインキュベートした。
【0054】
50mMのTRIS/HClpH7.4、150mMのNaCl、1%のNP40、1%のTriton X-100、1mMのDTT、10μl/mlの阻害性カクテル、1mMのPMSF(全てSigma Chemical Co.)及び10μl/mlのヌクレアーゼミックス(GE Healthcare Bio-Sciences)を含有する400μlの溶解緩衝液中で、氷上で均質化された合計30〜50mgの新鮮な凍結組織(T18基本Ultra Turrax)を用いて、膵臓組織のウエスタンブロット分析を実施した。超音波処理装置(Hielscher UP 200S、3×40秒、振幅40%、サイクル0.5)での超音波処理の後、ミックスを遠心分離した(30分間4℃で13000rpm/分)。上清中に含有されブラッドフォード検定(Bio-Rad Laboratories)で測定されたタンパク質抽出物20μgを、小さいNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4−12%Bis-Trisプレキャストゲル(Invitrogen)上に走らせ、以上で記述した通りニトロセルロース膜に移した。
【0055】
ECL(増強化学発光、GE Healthcare Bio-Sciences)により免疫検出を実施し、その後ハイパーフィルム(GE Healthcare Bio-Sciences)上でのオートラジオグラフィを行なった。現像したフィルムの画像を「Image Scanner」(GE Healthcare Bio-Sciences)で獲得し、「Image Master Labscan Ver 3.00」ソフトウェア(GE Healthcare Bio-Sciences)でTIFF書式で記録し、Image Master 2D Eliteバージョン3.1ソフトウェア(GE Healthcare Bio-Sciences)を用いて解析した。
【0056】
質量分析法(MS)によるタンパク質の同定
MS分析のために、関心対象のスポットを分取2−DEゲルから切除し、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF)そして必要な場合には電子スプレーイオン化(ESI)によって分析した。
【0057】
タンパク質を25mMの重炭酸アンモニウム及び50%のアセトニトリルの溶液で一晩脱染し、その後、以前に記述された通り(Hellman Uら、1995年)トリプシンを用いてゲル中(in gel)で消化させた(Promega, Madison, WI, USA)。MALDI−TOF MSのためには、標的ディスクに0.5μLの各々のペプチド混合物を塗布し、空気乾燥させた。その後、0.5μLのマトリクス(30%のアセトニトリル、0.1%のTFAの溶液中の1%w/vのα−シアノ−4ヒドロキシ桂皮酸)を乾燥した試料中に塗布し、再び乾燥させた。Bruker Reflex III MALDI−TOFスペクトロメータを用いてスペクトルを得た。タンパク質消化物のMSスペクトル解釈を、MS−Fitソフトウェア(http://prospector.ucsf.edu :Chamrad Dら、2004年)を用いて「ペプチド質量フィンガプリント法」(PMF)により行なった。
【0058】
MS/MS実験のため、トリプシンペプチド混合物をZip Tip C18デバイス(Millipore)内で脱塩及び濃縮した。60%のメタノールプラス1%の蟻酸での溶出の後、4.5μlのトリプシンペプチド混合物を金コーティングされたホウケイ酸塩毛細管(Proxcon Biosystems)内に導入し、ナノESI源が取付けられたLCQ Thermo(Thermo Finnigan)イオントラップ質量分析計の中で分析した。毛細管の電圧を46Vに、そしてスプレー電圧を1.8kVに設定した。フルスキャン質量スペクトルからの最も安定した信号を捕捉し、22〜24%の範囲内の正規化した衝突エネルギーで低エネルギー衝突誘発型解離(CID)によりフラグメント化した。
【0059】
一部のタンパク質は同様にESIイオン源の備わったLCQ DECA XPプラスイオントラップ質量分析計(Thermo Finnigan)を用いて、LC−MS/MSによっても同定された。クロマトグラフィ分離とそれに続くMS分析装置は、10μLの注入体積そして200μl/分の流速で、Surveyor(オートサンプラ及びポンプ)計器(Thermo Finnigan)を用いて、C18カラムLuna、150×2.0mm(Phenomenex)上で行なわれた。
【0060】
全てのMS/MSデータ解析について、Bioworks 3.0(Thermo Finnigan)ソフトウェアを使用し、結果としての配列を、FASTAソフトウェア(http://www.ebi.ac.uk/fasta33/;Johnson Rら.,2005年)を用いてEBIデータベース中に存在するヒトタンパク質の配列と比較した。
【0061】
統計的分析
全ての統計をGraph Pad Prism Softwareを用いて計測した。データを平均±SEM(標準誤差)として提示した。PDA及び正常な膵臓組織の中での異なるタンパク質発現の有意性を査定するために、対応のない両側(2-tailed)t検定を使用した。0.05未満の両側(2-sided)P値が、統計的に有意であるとみなされた。
【0062】
結果
PDA関連タンパク質発現及び細胞増殖のためのモデルとして使用されることの多いCF−PAC−1細胞系のプロテオーム(Bouvet Mら、2001年;Szepeshazi Kら、2005年)を使用して、一次抗体の供給源としてPDA患者からの血清を用いてPDAに関連するタンパク質及び抗体の存在を同定した。
【0063】
この細胞系からのタンパク質抽出物を2−DEによって分析し、銀染色により代表的2次元マップを定義付けした。このアプローチにより、2−DEゲル内のその強度及び位置にしたがって分類できかつそれについてタンパク質の量、分子量及びpIを近似的に決定することのできる「スポット」として、この抽出物中に含まれたタンパク質を分離することが可能となる。
【0064】
2−DEゲルは、PDA患者又は非PDA患者(健康な対象、その他の癌に罹患した患者及び慢性膵炎に罹患した患者を含む)のいずれかに由来する血清パネルを用いて、ウエスタンブロット法により分析するために、膜上に移された。異なるスポットマップ間(そして2−DEゲルの銀染色画像とその対応するウエスタンブロット画像の間)の比較は、PDA関連スポットの同定を導き、このスポットは、例えば制御された形でタンパク質を消化する酵素を用いてかかるスポットから抽出されたタンパク質フラグメントの質量分析法による分析によって、さらに特徴付けすることができる(図1)。
【0065】
このアプローチを用いて、10個のスポットが選択され、PDA患者からの血清抗体により一意的に認識されているものとしてさらに特徴付けされた(図2A)。使用された二次抗体はそのアイソフォームに特異的なものであることから、分析はヒトIgG抗体に制限された。分取ゲルから10個のスポットを切除し、MALD−TOFMSにより分析して、それらがどのヒトタンパク質に対応するかを同定した。このアプローチを用いて、9つの異なるタンパク質をPDA関連抗原として同定した。2対のスポットが同じタンパク質のアイソフォームに対応し、1つのスポットが、2−DEによって充分に分離されていない2つの異なるタンパク質に属する配列を含有していた。対照血清を用いて実施されたウエスタンブロット法においては、これらのスポットの全てが不在であったか又はほぼ検出不能であった。これらのスポット中のタンパク質を1つ以上結合させる一次抗体が、PDA患者から得た血清の有意な割合において同定された(表I)。
【0066】
これらのPDA関連抗原タンパク質の中で、文献中でそれらが同定された生物活性のタイプに応じて2つのカテゴリのタンパク質を区別することができる。第1群のタンパク質には、代謝酵素すなわちα−エノラーゼ(各々1つの特異的アイソフォームに対応する2つのスポット中に存在する)、トリオースリン酸イソメラーゼ(各々特異的アイソフォームに対応する2つのスポット中に存在する)、レチナール・デヒドロゲナーゼ−1、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ、伸長因子Tu及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼが含まれる。第2群のタンパク質は、細胞骨格タンパク質すなわちケラチンI型細胞骨格10、及びコフィリン1として大部分が特徴付けされてきた。
【0067】
CF−PAC−1−細胞及びヒト血清を用いて得られた発見事実に加えて、健康な対象及びPDA対象から得た膵臓抽出物を、一次抗体として(ヒト血清ではなく)これらのタンパク質に対する精製済み抗体を用いたウエスタンブロット法において比較した。この分析により、(1つのアイソフォームに制限されず)1つのタンパク質の総量の定量化が可能になるが、この分析は、PDA患者の生検材料から得た膵臓組織内でこれらのタンパク質が様々な度合で過剰発現されたということを示している(表I)。
【0068】
これらのタンパク質の診断値(及びPDA血清中のこれらに対する特異的抗体の存在の診断値)が、対照として慢性膵炎患者由来の血清を用いて、疾病の病期に応じてグループ分けされた患者から得られたPDA血清の間で各タンパク質についてのスポットの存在を区別することによって、さらに評価された。
【0069】
ウエスタンブロット法による分析は、異なるタンパク質に対する自己抗体の存在及び量が、異なるPDA病期にある患者の間で均等に分布していないということを示した(図2B)。大部分のタンパク質に対する自己抗体が対照血清においては不在であったが、一方、それらを含有するPDA血清の頻度は、ENOA1/2を顕著な例外として、大部分のタンパク質について病期IIのPDA患者でわずかに存在する(25%未満)。自己抗体産生プロファイル内のこれらの頻度は、大部分の進行した病期において確認され、ここでも又、第III期及び第IV期のPDAにおける頻度の恒常な増加を考えると、α−エノラーゼアイソフォームに対する自己抗体が最も興味深いものである。
【0070】
結論
ヒト膵臓腫瘍細胞系(CF−PAC−1)の2−DE発現プロファイリングと(PDA患者由来の血清中のヒトIgGを一次抗体として使用する)ウエスタンブロット分析とを組合せた血清学に基づくアプローチは、PDA患者が特異的液性応答を生み出す限定数のヒトタンパク質及びそのアイソフォームの同定を可能にした。たった1つの例外(AL1A1)は別にして、これらのタンパク質の発現は、PDA生検材料においてアップレギュレートされた。その上、これらのPDA関連タンパク質に対する抗体の産生は、少なくとも一部の抗原について、進行した病期において著しく増大するように思われる。
【0071】
これらの結果は、この場合大部分が細胞内のものである早期PDA診断のために潜在的マーカーを同定するにあたっての血清学的アプローチが適切であることを実証している。免疫系が細胞内タンパク質に反応する機序は明確になっていないが、腫瘍細胞内の細胞内酵素の局在化を改変させる可能性のある腫瘍により作り出された独特の環境によって左右される可能性がある。
【0072】
コフィリン1(COF1)は、インバドポジウム形成に関与し(Yamaguchi Hら、2005年)かつおそらくは走化性及び成長因子刺激に応答した腫瘍細胞方向性に必要とされる(Mouneimne Gら、2004年)アクチン脱重合酵素としてアクチンのリモデリング、運動性及び癌において1つの役割を果たす。COF1の過剰発現は、以前にPDA動物モデルに関連して観察されてきた(Cecconi Dら、2003年;Sinha Pら、1999年)。
【0073】
α−エノラーゼは、多数の特性を有し異なる状況下で検出された保存度の高い代謝酵素である(Pancholi V、2001年;Piast Mら、2005年;Terrier Bら、2007年)。これは、プラスミノーゲンレセプタとして細胞表面上で発現され得(Lopez-Alemany Rら、2003年)、B細胞により認識され得、潜在的にB細胞活性化因子として作用する(Babu Jら、2002年)。2つのアイソフォームが、膵臓腺癌内で検出されたが、翻訳後修飾に関するその分子特性が記述されることはなかった(Shen Jら、2004年)。
【0074】
単一のアイソフォームとして又は多重アイソフォームの形で(ただし、ENOAリン酸化アイソフォームの特異的発現の証拠なしで)存在するα−エノラーゼに対する自己抗体が、例えば癌関連網膜症(Adamus G ら、1998年;Adamus Gら、1996年)、非小細胞肺癌及びその他の非膵臓癌(国際公開第07/072219号(WO07/072219);米国特許第20070172487号(US20070172487);Hepら、2007年)、胆汁性肝硬変(Akisawaら、1997年)、脳障害(Fujii Aら、2005年)及び自己免疫疾患(Ballot Eら、2003年;Bogdanos Dら、2004年;Gitlits Vら、2001年)といったような数多くの異なる生物学的及び疾病モデルにおいて同定されてきた。α−エノラーゼ及びα−エノラーゼ特異的抗体又は自己抗体の特性は、ファージ提示法(Arza Bら、1997年;Kemp Eら、2002年)又はペプチド(Adamus Gら、1998年;Sato Nら、2000年;Walter Mら、1995年;Fujii Aら、2005年)を用いて研究されてきた。
【0075】
PDA患者由来の血清中のこのタンパク質の2つの特異的アイソフォーム(ENOA1/2)に対する自己抗体の頻度及び特異的産生を考えると、特異的α−エノラーゼアイソフォーム及びそれらを検出するための抗体は、PDA診断にとって特に有用な手段であるということを、この結果が実証している(表I及び図2B)。抗体は、(実験の中で用いられた精製済み抗体のように)全ての又は大部分のアイソフォームに共通のエピトープ又は(PDA血清中に存在するもののように)その他のPDA関連アイソフォームとこのPDA関連アイソフォームを区別するエピトープに対して特異的であり得る。その上、病期IIからIVまでのPDAの進行は、ENOA1/2に対する自己抗体の産生のきわめて有意な増強により特徴付けされ、腫瘍サイズ及び成長能力との直接的相関関係を示唆している。
【0076】
かかるアイソフォームのより詳細な分析は、PDA診断のための自己抗体の的中率を立証するためのみならず、それらをPDA又はこの癌に対する考えられる治療的アプローチに結びつける分子機序をより深く理解するためにも重要である。
【0077】
実施例2:CF−PAC−1細胞内で自己抗体によって検出されるα−エノラーゼアイソフォームの分析
材料と方法
MS分析
スポットを分取2−DEゲルから切除し、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF)で分析した。タンパク質を0.025モル/Lの重炭酸アンモニウムと50%のアセトニトリルの溶液で一晩脱染し、その後、以前に記述された通り(Hellman Uら、1995年)トリプシンを用いてゲル中(in gel)で消化させた(Promega, Madison, WI, USA)。MALDI−TOF MSのためには、標的ディスクに0.5μLの各々のペプチド混合物を塗布し、空気乾燥させた。その後、0.5μLのマトリクス溶液(30%のアセトニトリル、0.1%のTFA中の1%w/vのα−シアノ−4ヒドロキシ桂皮酸)を乾燥した試料中に塗布し、再び乾燥させた。Bruker Reflex III MALDI−TOFスペクトロメータ(Bremen、ドイツ)を用いてスペクトルを得た。タンパク質消化物のMSスペクトル解釈を、MS−Fitソフトウェアを用いて「ペプチド質量フィンガプリント法」(PMF)により行なった。
【0078】
リン酸化分析
インタネットにより利用可能な以下のソフトウェアを用いて、ヒトα−エノラーゼタンパク質配列の分析を実施した:
NetPhos [ http://www.cbs.dtu.dk/services/; (B lorn N ら、1999年)]、
NetPhosK [http://www.cbs.dtu.dk/serviccs/; (Blom Nら、2004年)]、
dbPTM [ http ://dbPTM.mbc .nctu . edu.tw/; (Lee T ら、2006年)]、
PPSP [http://bioinformatics.lcd-ustc.org/PPSP/; (Xue Y ら、2006年)]及び
GPS [http://bioinformatics.lcd-ustc.org/gps_web/predict.php ; (Xue Y ら、2005年)]。
【0079】
以下の修正を伴って記述通りに(Yamagata Aら、2002年)λPPase(New England Biolabs Inc.)を用いて、ホスファターゼ処理を実施した。1mlの溶解緩衝液(1%w/vのNP−40、1%w/vのSDS、50mMのトリスpH7.6及び150mMのNaClプロテアーゼ阻害物質カクテル)中で15時間、ペレット化されたCF−PAC−1細胞(30×106個)を再懸濁させた。溶解物(2mgのタンパク質に対応する120μl)を、脱イオン水で1240μlの最終体積にし、その後20μlの20mMのMnCl2溶液及び20μlのλPPase緩衝液を添加した。各々の添加後、溶液を穏やかに混合した。混合物をアリコートに分割し、1つのアリコートに600単位のλPPaseを添加した。混合の後、アリコートを30℃で15時間インキュベートした。タンパク質をアセトン及びクロロホルムで沈澱させ、2−DE分析のために使用した(実施例1を参照のこと)。
【0080】
メーカーの指示事項によって及び文献(Wu Jら、2005年)で記述されているように、全タンパク質の検出のためにSypro Ruby染色液(Bio-Rad)を用いて及びPro Qリンタンパク質螢光染料(Molecular Probes)を使用して2−DEゲル中で、リンタンパク質の染料ベースの検出を実施した。簡単に言うと、2−DEの後、まず最初に50%のメタノール/10%の酢酸中で30分間ゲルを固定させることによって、Pro-Q染色法を実施した。次にゲルを精製水で洗浄し、4時間Pro-Q Diamondリンタンパク質染色法に付した。Sypro Ruby螢光染料での染色(一晩)に先立って、20%のアセトニトリルを含有する50mMの酢酸ナトリウム、pH4.0の連続的洗浄で脱染を行なった。
【0081】
生体材料由来の膵臓組織におけるENOAアイソフォームの発現の分析
健康な個体又はPDA患者(第II期)のいずれかの生体材料から得た膵臓組織を、氷上で、5モル/Lの尿素、2モル/Lのチオ尿素、4%w/vのCHAPS、2%v/vIPG緩衝液、非直線的pH3−10、0.08モル/Lのジチオトレイトール(DTT)、10μL/mLのヌクレアーゼミックス及び微量のブロモフェノール・ブルーを含有する400μlの溶解緩衝液中で均質化した(T18塩基性Ultra Turrax, IKA)。超音波処理装置(Hielscher UP200S、3×40秒、振幅40%、サイクル0.5Hielscher Ultrasonics GmbH)での超音波処理の後、ミックスを、タンパク質溶液が上清中に含まれた状態で遠心分離(13000rpm、4℃で30分)した。
【0082】
タンパク質濃度を、ブラッドフォード検定で測定した。30μgのタンパク質抽出物を、小さいNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12%のBis−Trisプレキャストゲル上に走らせ、ニトロセルロース膜に移し、抗α−エノラーゼモノクローナル抗体19/128(Moscato Sら、2000年)と共に4℃で一晩インキュベートし、実施例1で記述されている通りウエスタンブロット法において顕示させた。
【0083】
組換え型ヒスチジンタグ付けされたENOA(rENOA)の産生
組換え型タンパク質を、ヒスチジンタグに融合された(最初の9つのアミノ酸のみが欠如している)ヒトENOAの配列をコードするプラスミドでのトランスフェクションを受けた大腸菌(E. coli)細胞から精製した。簡単に言うと、細菌細胞を遠心分離によって1リットルの培養から収穫して、リゾチーム(100μg/ml)及びサルコシル0.7%を加えた天然結合緩衝液(NBB、20mMのリン酸ナトリウム及び500mMの塩化ナトリウム、pH7.8)20ml中に再懸濁させた。懸濁液を4℃で15分間ゆっくりと揺動させた。細胞溶解物を、高強度で10回の40秒パルスを用いて氷上で超音波処理した。4℃で15分間100000rpmで溶解物を遠心分離して、不溶性画分をペレット化させ、これを、室温で10分間、プロテアーゼ阻害物質で富化した10mlのグアニジニウム溶解緩衝液(6Mの塩酸グアニジン、20mMのリン酸ナトリウム、500mMの塩化ナトリウム、pH7.8)中に再懸濁させた。溶解物を、平衡化したカラム(Ni−NTAアガロースカラム、Invitrogen)に添加して、穏やかな回転を用いて4℃で30分間樹脂に対し結合できるようにした。樹脂をNBBで2回洗浄し、天然洗浄緩衝液で2回の洗浄がこれに続いた。10mlのイミダゾール溶出緩衝液(350mM pH6=組換え型ヒスチジンタグ付けENOA(rENOA)の産生)を用いて溶出を実施した。溶出された画分を滅菌水中で透析させ、次に凍結乾燥させ、滅菌した発熱物質を含まないダルベッコリン酸緩衝溶液(DPBS、Sigma)中で再懸濁させた。アリコートを−20℃で保管した。内毒素レベルは、カブトガニアメーバ状細胞溶解物検定(Pyrogent ; Bio Whittaker)において0.03EU/ml未満であった。
【0084】
患者の血清及びウエスタンブロット法を用いたCF−PAC−1中のENOAアイソフォームの発現の分析
上述の通り、CF−PAC−1 2−DEゲルをHybond ECLニトロセルロース膜(GE Healthcare)上に電気転写した。5%の脱脂粉乳を含有するTBSで1時間遮断した後、異なる条件下でENOA1/2+患者の3つの血清(TBS中1:100で希釈されたもの)のプールと共にブロットをインキュベートした。
【0085】
一連の実験において、血清プールをまず最初に15分間4℃で、組換え型α−エノラーゼ(rENOA)20μg/mlと共に揺動装置上でインキュベートしてから、膜とのインキュベーションを実施した。もう1つの一連の実験においては、膜をまず最初に、λPPase 600単位を含有するPBS2ml、20mMのMcCl2溶液40μlそしてλPPase緩衝液40μlと共に15時間30℃でインキュベートした。膜を1時間再び遮断し、TTBSで15分間3回洗浄し、血清のプール(希釈度1:100)と共にインキュベートした。
【0086】
ENOAアイソフォームに対する血清中の抗体の結合は、実施例1に記述されているようにウエスタンブロット法において標識済み抗ヒト抗体を用いて顕示された。固定化されたENOAの数量の対照として、膜をマウスモノクローナル抗体抗エノラーゼ19/128で再度プローブした(実施例1を参照のこと)。
【0087】
結果
PDA患者の血清中の抗体によりヒトα−エノラーゼの2つのアイソフォームが特異的に検出されることを実証した後、異なるアプローチを用いて、このようなアイソフォーム(及びCF−PAC−1細胞内に存在するこのタンパク質のその他のあらゆるアイソフォーム)を特徴付ける機能を実施した。
【0088】
異なるPDA患者の血清又はα−エノラーゼに対する精製済み抗体を用いて得られたウエスタンブロット法、2−DEゲルの銀染色及び質量分析法による分析を比較することにより、PDAに関連しない付加的なα−エノラーゼアイソフォームに対応する4つの付加的なスポットが、ENOA1/2と類似の分子量をもつものの実験的pI値はより低い状態で、2−DEゲル中に存在することがわかった(表II)。これらの証拠は、2−DEゲル分析中でCF−PAC−1又はMiaPaca−2細胞抽出物を用いて得られた。
【0089】
このようなスポットから得たペプチドは、ENOAのフラグメントと同一であり(かつきわめて類似のヒトガンマエノラーゼとは明らかに異なっている;図3)、スポットがENOAアイソフォームに対応しているはずであり、ここでENOA1/2のみがPDA関連であるとするウエスタンブロット法の証拠を確認している。翻訳後修飾は、往々にして1つのアイソフォームをもう1つのアイソフォームと区別する機能である。予備分析は、(分子量の限定された変化から考えて)グリコシル化を排除し、そして(pIの減少を考えて)示唆されたリン酸化修飾を排除するように思われた。
【0090】
ヒトα−エノラーゼの配列は、異なるキナーゼによるリン酸化のための潜在的標的である複数のチロシン、セリン、及びトレオニン残基を含む。この仮説は、その他のタンパク質について文献中で示されているように(Kumar Yら、2004年)、リン酸化非依存性抗体を用いて検出されるスポットの強度の何らかの変化が存在したか否かを知るため2−DE分離に先立って広く活性なホスファターゼに対してタンパク質抽出物を曝露することによって試された。実際、大部分の酸性アイソフォーム(すなわちPDA関連ENOA1/2及びENOAアイソフォーム3:表II)に対応するENOAスポットの強度は、ホスファターゼ前処理を受けたCF−PAC−1細胞抽出物において明らかに減少していた。その上、ENOAアイソフォーム3(ENOA1/2よりもさらに豊富なもの)の質量分析法による分析は、残基55、57、200、236、237、257及び419がこのアイソフォームにおいてリン酸化されることを示した(図4)。
【0091】
α−エノラーゼのインビボ又はインビトロリン酸化についての以前の報告書(Cooper Jら、1984年;Eigenbrodt Eら、1983年;Marcus Kら、2000年;Rush Jら、2005年;Stasykら、2005年;Molina Hら、2007年)は、一般に、少なくとも3つの特異的残基が同時にリン酸化され得ること、そして特にENOAアイソフォームにおいて残渣55、57、200、236、237、257及び419がリン酸化された状態で発見され得ることを示すことができなかった。その上、ENOAアイソフォーム3におけるリン酸化された残基の組合せは、リン酸化のための部位候補の数が多いことから(図4)、ENOAタンパク質配列のソフトウェアベースの分析を用いて予測することがほとんどできなかった。質量分析法による分析のこの段階で検出されていない付加的なリン酸化部位をENOAアイソフォーム3が有し得ることは排除できないが、ENOA1/2は、ENOAアイソフォーム3からそれらを特徴付けする(ホスファターゼを用いて得られた発見事実及びpI値に起因して同じくリン酸化されている確率が最も高い)翻訳後修飾された残基を含んでいるはずである。
【0092】
とりわけ、リン酸化状態が決定されておりリン酸化部位候補を含むENOA3アイソフォームから得られた2つ以上のペプチドが、このような修飾を示していない。例えば、文献中で実証済み白血病T細胞系内でリン酸化されているものとして特異的に同定されたチロシン44(Rush Jら、2005年)は、ENOAアイソフォーム3の中ではリン酸化状態になっていなかった。同様にしてENOAアイソフォーム3の場合(図4)のように残基55とではなく残基63と組合せてリン酸化されているものとして同定されてきた(Molina Hら、2007年)。
【0093】
PDA血清及びENOA特異的抗体の両方を用いて検出されたENOAアイソフォーム内のリン酸化のさらなる分析が、ウエスタンブロット法中で得られた画像と、2−DEゲル内の全タンパク質を染色する(銀染色又はSypro Ruby)染料又はリンタンパク質に特異的な染料(Pro-Q Diamond)を用いて得られる画像とを比較することによって実施された。この分析は、ENOA1/2及び3のみがCF−PAC−1細胞内でリン酸化されることを確認した(図5A;表II)。
【0094】
ENOA発現も同様に、PDA患者の血清中で検出される6個のアイソフォーム全てに共通の特異的エピトープに対する抗−エノラーゼ抗体の結合を用いて、外科的処置を受けたPDA患者(第II期;n=7)から得た組織及び正常な膵臓組織(n=1)についてのウエスタンブロット法によってテストされた。7つのPDA生検材料のうちの6つにおいて、6個のENOAアイソフォーム全てが検出された。これとは対照的に、正常な膵臓においては、4つのアイソフォーム(ENOA3、4、5及び6)のみが明確に検出可能であった(図5B)。PDA患者がENOA1/2に対する抗体を生成することのみならず、これらのアイソフォームがPDA膵臓組織内で有意に過剰発現されていることをも結論づけすることができる。
【0095】
リン酸化されたENOAに対するPDA患者からの血清の反応性を、この反応性がそれらのリン酸化されたエピトープに対し特異的に向けられているか否かの理解の範囲において、2−DE及びウエスタンブロット法でCF−PAC−1細胞抽出物を用いてさらに調査した。PDA患者の血清は6つのアイソフォーム全てに反応したことから、これらは、リン酸化されたエピトープ又はリン酸化されていないエピトープのいずれかに対して反応する抗体を含有しているかもしれない。
【0096】
第1の一連の実験においては、ENOA抗原に対する曝露が基準膵臓細胞系内でENOAアイソフォームを認識する血清の能力を改変させるか否かを知るために、リン酸化された残基を含まない組換え型ヒトENOAと共に血清を予めインキュベートした。実際、2−DEウエスタンブロット法による分析は、未リン酸化ENOAが、ENOA1/2アイソフォームに対する反応性に影響を及ぼすことなくアイソフォーム3、4、5及び6に対する反応性のみを著しく低減させることを顕示した。この証拠は、患者の血清がリン酸化されたENOA1/2アイソフォームに特異的に反応する抗体を含有することを確認するために膜をホスファターゼ(λP Pase)と共に予めインキュベートさせたもう1つの一連の実験においてさらに確認された。λPPaseが無い場合、血清は、全てのENOAアイソフォームを認識し、一方λPPase処置はENOA1/2に対する血清の反応性を著しく減少させた(図6)。
【0097】
抗−ENOAmAbは、処置された膜又は未処置の膜において全てのアイソフォームを同等に検出したことから(データ示さず)、これらのデータは、PDA患者の血清中の抗体がリン酸化ENOA1/2アイソフォームに対して特異的に反応することを実証している。
【0098】
結論
異なるプロテオームアプローチを用いて、多数のENOAアイソフォーム及びそれらに対する抗体が同定された(Adamus Gら、1998年;Adamus Gら、1996年;Akisawa Nら、1997年;Ballot Eら、2003年;Bryborn Mら、2005年;Lubec Gら、2003年;O’Dwyer Dら、2002年)。しかしながら、これらの報告書は、PDAの進行中の特定のアイソフォームに対する自己抗体の産生に対するリン酸化状態と位置の間の関連性についての明らかな実証を提供していない。
【0099】
その他の論文は、特定の細胞処置(Baty Jら、2005年;Bottalico Lら、1993年;Kanamoto Tら、2002年)又は疾病(Byrjalsen Iら、1999年;Clauser Kら、1995年;Nakanishi Tら、2006年;Tanaka Yら、2006年;米国特許第2007017487号(US20070172487))に関連付けて、例えば2−DEゲルのウエスタンブロット法において患者の血清を用いて検出されるα−エノラーゼスポットの強度及び/又は数の変化について報告しており、それがリン酸化といったような翻訳後修飾に起因し得るということを示唆している。
【0100】
その他の報告書では、ヒトα−エノラーゼが、2−DEゲルにより分析されたPDA試料の中で過剰発現されmRNAのレベル及び免疫細胞化学において確認された複数のタンパク質のうちの1つとして標示されているが、PDAに関連付けされたα−エノラーゼのアイソフォームを特徴付ける特異的リン酸化については全く言及されていない。(国際公開第04/55548号(WO04/55548);Shen Jら、2004年;Nakanishi Tら、2006年;Mikuriya Kら、2007年)。
【0101】
α−エノラーゼ内で検出された数多くの翻訳後修飾の中でも(表III)、古い文献においては(Cooper Jら、1984年;Coussens Pら、1985年;Eigenbrodt Eら、1983年;Golden Aら、1986年)、インビボとインビトロの両方でリン酸化が検出されてきた。最近では、2D−ゲル、市販のマウス抗ホスホチロシン抗体(クローン4G10、Cod. 05−321;Biomol)及びヒト血小板中の質量分析法(Marcus Kら、2000年)を用いて、α−エノラーゼの2つのリン酸化されたアイソフォームが検出されてきた。2D−ゲル、放射性標識及び質量分析法(Stasyk Tら、2005年)を用いてTGF beta 1処置済み細胞(MCF−7細胞系)内で、又はフラボノイドでの処置の後エノラーゼリン酸化が減少したMIAPaCa細胞(膵臓癌細胞系)(Lee Lら、2002年)内で、α−エノラーゼの単一のリン酸化変異体が検出された。その上、2つのリン酸化部位が、チロシン残基(44及び286;Rush Jら、2005年)又はチロシン及びセリン残基(57及び63;Molina Hら、2007年)にあった。
【0102】
しかしながら、これらの文書のいずれも、PDAを、少なくとも3つの位置ですでにリン酸化されたα−エノラーゼアイソフォームの付加的なリン酸化と、及びそれらを結合する抗体に、関連付けすることはなかった。
【0103】
実施例3:α−エノラーゼのリン酸化されたアイソフォームを発現する形質転換された細胞系の成長及び増殖に対するα−エノラーゼに結合する抗体の効果
材料と方法
細胞系の増殖についての検定
負の対照として用いられたマウスIgG1アイソフォーム整合済み対照モノクローナル抗体(P&D Systems)又は抗α−エノラーゼモノクローナル抗体72/1(Moscato Sら、2000年)を伴うか又は伴わない完全細胞培地(10%のウシ胎仔血清を伴うRPMI−1640)中で96ウェルのマイクロプレート内に2〜10×103個/ウェルの細胞を播種することによって、標示された細胞系を用いて細胞増殖のインビトロ検定を実施した。
【0104】
44時間又は68時間後に、37℃でさらに4時間、各ウェルに20μlのメチルテトラゾリウム溶液(MTT;5mg/ml)を添加した。培地を除去し、細胞をDMSOで溶解させた。540ナノメートルで分光光度計に対し平板の読取りを行なった。
【0105】
結果
2−DE及びウエスタンブロット法により決定されるようなα−エノラーゼ発現の異なるプロファイルを提示する細胞系の成長に対する抗α−エノラーゼ抗体の効果は、生存細胞内に取込まれ活性細胞成長、代謝及び増殖と相関関係をもつ化合物であるMTTの取込みを測定することによって、テストされた。
【0106】
MTTベースの比色分析を用いて、膵臓由来であるか非膵臓由来であるかとは無関係に6つのアイソフォーム全てを発現する形質転換された細胞系内で、細胞増殖の有意な阻害が得られた。IgGIアイソフォーム整合対照モノクローナル抗体又は3つのリン酸化ENOAアイソフォームを発現しない細胞系を使用すると、この効果は最小限である(表IV)。
【0107】
かくして、抗α−エノラーゼ抗体は、(生検材料からの組織又は血清といった)PDA関連生体試料内で検出されたα−エノラーゼの特異的リン酸化プロファイルを有する成長及び増殖細胞系を(少なくとも部分的に)阻害することができる。
【0108】
結論
一般に細胞質タンパク質とみなされているとしても、α−エノラーゼは、細胞表面上で生物学的に活性なタンパク質(Arza Bら、1997年;Bergman Aら、1997年;Moscato Sら、2000年;Lopez-Alemany Rら、2003年)ならびに可溶性因子(Babu J ら、2002年;Demir Aら、2005年)として発現され得る。
【0109】
インビトロデータは、細胞系がα−エノラーゼのリン酸化されたアイソフォームを発現する場合にのみ、(細胞表面レセプタとして及び/又は可溶性タンパク質として)細胞外空間内で発現されるα−エノラーゼアイソフォーム中に存在するエピトープに対する抗体の結合によって、形質転換された細胞系の成長が減速される、ということを示している。
【0110】
かくして、α−エノラーゼリン酸化アイソフォームを提示する細胞を特異的に結合させるモノクローナル抗体が、形質転換された細胞系の増殖を阻害できる。細胞の増殖を制御するためのこの機序は、PDAのみならずかかる分子機能を提示するその他の形態の癌においても存在するように思われ、PDA治療用薬剤の調製及びPDA患者の診断及び治療方法といったような、癌関連の治療用利用分野のために適切なモノクローナル抗体によってターゲティングされる可能性がある。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
【表4】

【0115】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの位置においてリン酸化されていることを特徴とする、ヒトα−エノラーゼのアイソフォーム。
【請求項2】
前記3つの位置が、トレオニン55、チロシン57、チロシン200、チロシン236、トレオニン237、チロシン257、及びセリン419の中から選択される、請求項1に記載のアイソフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のα−エノラーゼのアイソフォームと特異的に結合する抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体又は抗体フラグメントであることを特徴とする、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
検出可能な標識分子と融合しているか又は接合していることを特徴とする、請求項3又は4に記載の抗体。
【請求項6】
膵管腺癌の診断を目的とする、請求項1又は2に記載の抗α−エノラーゼのアイソフォーム又は請求項1又は2に記載の抗α−エノラーゼのアイソフォームと結合する抗体の使用。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の抗α−エノラーゼのアイソフォームの検出及び/又は請求項1又は2に記載の抗α−エノラーゼのアイソフォームと結合する抗体の検出を含んでなる、膵管腺癌(PDA)の診断方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の抗α−エノラーゼのアイソフォーム及び/又は請求項1又は2に記載の抗α−エノラーゼのアイソフォームと結合する抗体を含んでなる、膵管腺癌(PDA)の診断用キット。
【請求項9】
膵管腺癌の治療用の医薬組成物の調製のための抗α−エノラーゼ抗体の使用。
【請求項10】
抗α−エノラーゼ抗体を含んでなる膵管腺癌の治療用の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−505104(P2010−505104A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529713(P2009−529713)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060305
【国際公開番号】WO2008/037792
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(508178478)リボバックス バイオテクノロジーズ ソシエテ アノニム (6)
【出願人】(509087933)ビオリネ ディアニョスティーチ ソチエタ レスポンサビリタ リミテ (1)
【Fターム(参考)】