説明

臨床検査装置

【課題】 マイクロチップの着脱を簡易かつ迅速に行うことができる臨床検査装置を提供することである。
【解決手段】 検査液を収容する測定セルを備えるマイクロチップと、前記マイクロチップを載置して回転する回転体と、前記回転体を回転させる回転駆動機構と、前記マイクロチップを前記回転体上にロックするロック機構と、前記マイクロチップおよび前記回転体を収容し、前記マイクロチップを着脱するための着脱用開口を有する測定室と、前記着脱用開口を塞ぐ防護カバーと、前記マイクロチップの測定セルに光を照射する光源と、前記光源からの光を受光する受光部とを備え、前記回転体が前記回転駆動機構により回転されることによって作用される遠心力を利用して、前記マイクロチップにおいて前記検査液中の検体の遠心分離処理が行われる臨床検査装置であって、前記測定室の防護カバーは、前記測定室の着脱用開口を塞いだときにおいて、前記マイクロチップの壁面を圧下する圧下部材を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体を保持するマイクロチップを遠心回転させ、マイクロチップに保持された検査液中に含まれる検出対象成分の濃度を測定する臨床検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術を応用して、化学分析等を従来の装置に比して微細化して行うことのできる、『μ−TAS(μ−Total Analysis System)』や『Lab on a chip』と称されるマイクロチップを利用した分析方法が注目されている。
【0003】
このようなマイクロチップを使用した分析システム(以下、マイクロチップ分析システム)は、マイクロマシン作製技術によって小さな基盤上に形成された微細な流路内において、試薬の混合、反応、分離、抽出及び検出を含む分析のすべての工程を行うことを目指したものであり、例えば医療分野における血液の分析、超微量のタンパク質や核酸等の生体分子の分析等に用いられている。
【0004】
特に、マイクロチップ分析システムを用いて例えば人の血液の分析を行う場合には、(1)分析検査に必要とされる血液(検体)の量が微少量でよいので、患者への負担を軽減することができること、(2)血液と混合されて用いられる試薬の量も少なくて済むので、分析コストを低減することができること、(3)装置自体を小型のものとして構成することができるので、分析を容易に行うことができること、などの利点が得られることから、開発が進められている。
【0005】
一般的には、このようなマイクロチップ分析システムにおいては、検査液中における検出対象成分の濃度を測定するための方法として、例えば吸光光度分析法が用いられている。吸光光度分析法を用いた臨床検査装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【0006】
図12は、臨床検査分析装置の測定部の内部構造を概略的に示す断面図である。臨床検査装置は、筐体(不図示)を備え、筐体の内部に、図12に示す測定部と、光源と、受光部とが設けられている。
測定部100は、図12に示すように、測定室101を有し、この測定室101内に、例えば有底円筒状の回転体102が配置される。回転体102の下面中央位置を貫通して上下方向に伸びるように駆動軸103Bが配置され、該駆動軸103Bは遠心用モータ103Aに連結される。遠心用モータ103Aが駆動されることにより、回転体102が回転駆動される。上記遠心用モータ103A、駆動軸103B、後述するエンコーダ103Cで回転駆動機構103を構成する。
【0007】
回転体102の底部には、外径が回転体102の半径より小さい方向切替用ギア107が設けられており、方向切替用ギア107は、回転体102上であって、その回転軸中心と平行な軸の周りに回転可能に軸支されている。この方向切替用ギア107上に、マイクロチップを保持するためのチップ保持部106が設けられる。なお、図12では回転体102の回転バランスを適正な状態に維持するために、回転軸中心を挟んだ反対側の位置に、同一の構成のチップ保持部106が設けられている。
【0008】
測定室101の下部であって、回転体102およびチップ保持部106が設けられる方向切替用ギア107の各々には、マイクロチップがチップ保持部106に保持された状態において、光源131から反射鏡132を介して入射する光をマイクロチップの測定エリア(検査液が配置されるエリア)に導入させるための光導入用開口部101Aおよびアパーチャー部102Aが形成されている。
測定室101の上部には、マイクロチップの測定エリアを通過した光を受光する受光部133と、この光を導光する例えば光ファイバ134が装着される開口部101Bが設けられている。
【0009】
マイクロチップの測定エリア内の検査液の吸光度測定を行う際には、回転体102の回転が停止された状態で行われ、上記光源131からの光をマイクロチップの測定エリア内に導入する必要がある。したがって、その際の回転体102の停止位置は、高い位置制御で制御される必要がある。
このため、回転体102を回転駆動させるための遠心用モータ103Aにはエンコーダ103Cが連結されており、エンコーダ103Cからの信号に基いて回転体102の停止位置が制御される。
【0010】
また、測定室101の上面および下面の一部の領域には、分析検査時において測定室101内の温度を一定温度(例えば37℃)に維持するための面状の加熱ヒータ115が設けられている。加熱ヒータ115は、例えばサーミスタ等の温度測定手段116による検出温度に基いて、測定室101内の温度が一定になるように制御される。
【0011】
また、測定部100は、チップ保持部106に保持されたマイクロチップの向きを調整するための、回転体を回転駆動させる回転駆動機構103とは別の駆動機構を有するチップ方向切替機構110を備えている。
このチップ方向切替機構110は、例えば玉軸受け112などを介して遠心用モータ103Aの駆動軸103Bに対して回転自在に設けられた、方向切替用ギア107と噛合する原動側ギア113と、この原動側ギア113を回転駆動させるための駆動源であるチップ方向切替用モータ111とを有する。
そして、上記チップ方向切替用モータ111を駆動することにより、原動側ギア113が回転し、これと噛合する方向切替用ギア107が回転してチップ保持部106が回転する。これにより、マイクロチップの向き(回転体102の回転軸中心に対する向き)を変えることができる。
【0012】
上述した臨床検査装置による検査液の分析処理は、例えば以下のように行われる。
検体(血液)が保持されたマイクロチップを載置した回転体102を回転させ、遠心力を利用して、検体を遠心分離する分離処理を行い、当該分離処理により得られる検体液を秤量する。
そして、当該測定対象液と試薬とを混合し、反応させる混合反応処理と、当該混合反応処理により得られる測定液を測定エリアに液送する処理を含む前処理動作を行う。
ついで、回転体102の回転が停止された状態で、光源131からの光をマイクロチップの測定エリアに導入し、測定エリアを透過した光を受光部133によって受光する。これにより、測定エリア内の測定液により光吸収量が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−322208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年の医療現場においては、患者の傍らで主に医師や看護士が行う検査として、POCT(Point of care testing)のニーズが高まっている。POCTは、検査結果をその場で得ることができる、検査実施日に結果に基づいた医療・看護を行うことができる、患者が検査を身近に感ずることができる、等といった利点があり、医療の質の向上に資する検査である。
【0015】
上記した臨床検査装置をPOCT検査に使用するためには、従来以上に、検出対象成分を迅速かつ簡易に分析することが求められる。特に、他項目の検出対象成分を分析したり、或いは、複数人分の単一の検出対象成分を分析する場合は、多数のマイクロチップを使用することが必要となる。
【0016】
血液のような感染症が危惧される生体試料を分析する場合は、分析後のマイクロチップを速やかに廃棄せねばならない。したがって、分析毎に分析後のマイクロチップを上記の回転体から取外すとともに、次なる分析に供するマイクロチップを回転体上に載置しなければならない。分析に供するマイクロチップの個数が多い場合は、個々のマイクロチップを回転体から着脱する作業が煩雑であった。
【0017】
また、マイクロチップの遠心分離処理を実行する際には、マイクロチップが大きな遠心力を受ける。マイクロチップの重心位置がマイクロチップの支点(載置された支点)よりも鉛直方向上方に位置する場合は、マイクロチップに遠心方向斜め上方に起き上がろうとする力が作用する。したがって、遠心分離処理を実行する際には、マイクロチップが回転体から離脱することのないようにマイクロチップを回転体上にロックしておくことが必要になる。
しかしながら、従来の臨床検査装置においては、回転体上にマイクロチップを簡易かつ確実に装着する方法に関して検討されていなかった。
【0018】
本発明の目的は、マイクロチップの着脱を簡易かつ迅速に行うことができる臨床検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1の発明は、検査液を収容する測定セルを備えるマイクロチップと、前記マイクロチップを載置して回転する回転体と、前記回転体を回転させる回転駆動機構と、前記マイクロチップを前記回転体上にロックするロック機構と、前記マイクロチップおよび前記回転体を収容し、前記マイクロチップを着脱するための着脱用開口を有する測定室と、前記着脱用開口を塞ぐ防護カバーと、前記マイクロチップの測定セルに光を照射する光源と、前記光源からの光を受光する受光部とを備え、前記回転体が前記回転駆動機構により回転されることによって作用される遠心力を利用して、前記マイクロチップにおいて前記検査液中の検体の遠心分離処理が行われる臨床検査装置であって、前記測定室の防護カバーは、前記測定室の着脱用開口を塞いだときにおいて、前記マイクロチップの壁面を圧下する圧下部材を有することを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1記載の臨床検査装置において、前記マイクロチップが、前記回転体に対して垂直方向に伸びる開口と、この開口の壁面において前記回転体の遠心方向に突出するように形成されたフックとを有し、前記ロック機構が前記フックに係合される係合子を有し、前記係合子が、前記マイクロチップが前記圧下部材によって圧下されることによって、前記マイクロチップの開口に挿入されて前記フックに係合されることを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2記載の臨床検査装置において、前記フックが傾斜した摺動面を有し、前記係合子が前記フックの摺動面上を摺動する摺動先端部を有し、前記ロック機構が、前記係合子が前記フックの摺動面を通過するときに前記マイクロチップの側面によって押圧され、前記係合子が前記フックを通過した後に、前記マイクロチップを遠心方向に付勢する第1の弾性部と、前記マイクロチップの底面によって押圧され、前記係合子が前記フックを通過した後に、前記マイクロチップを遠心方向および鉛直方向上方に付勢する第2の弾性部とを有することを特徴とする請求項2記載の臨床検査装置。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1記載の臨床検査装置において、前記防護カバーが、互いに独立して回転自在に設けられた一方のカバー基板と他方のカバー基板とからなり、前記一方のカバー基板が、前記測定室に枢止され、前記圧下部材が通過する開口を有し、前記他方のカバー基板が、前記一方のカバー基板に枢止され、前記圧下部材を有することを特徴とする。
【0023】
請求項5の発明は、請求項4記載の臨床検査装置において、前記他方のカバー基板は、前記一方のカバー基板に当接する押当部を有することを特徴とする。
【0024】
請求項6の発明は、請求項5記載の臨床検査装置において、前記一方のカバー基板は、前記他方のカバー基板に設けられた押当部によって押し下げられ、前記測定室の着脱用開口を塞ぐことを特徴とする。
【0025】
請求項7の発明は、請求項6記載の臨床検査装置において、前記測定室が、前記一方のカバー基板をロックするカバーロック機構を有することを特徴とする。
【0026】
請求項8の発明は、請求項7記載の臨床検査装置において、前記一方のカバー基板のみが、前記カバーロック機構にロックされることを特徴とする。
【0027】
請求項9の発明は、請求項4記載の臨床検査装置において、前記他方のカバー基板に設けられた圧下部材が、前記マイクロチップの上壁面に当接する圧下ピンと、前記圧下ピンに連結され、前記一方のカバー基板および前記他方のカバー基板の間に挟持された弾性部材とを有することを特徴とする。
【0028】
請求項10の発明は、請求項9記載の臨床検査装置において、前記他方のカバー基板に設けられた圧下ピンが、前記弾性部材が押圧されることにより生じる反発力を受けて、鉛直方向上方に付勢されることを特徴とする。
【0029】
請求項11の発明は、請求項9記載の臨床検査装置において、前記圧下ピンが、前記一方のカバー基板が前記測定室のカバーロック機構にロックされたときに、前記マイクロチップの上壁面に当接する全長を有することを特徴とする。
【0030】
請求項12の発明は、請求項1記載の臨床検査装置において、前記マイクロチップが底面積に比して側面積が大きくなる姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0031】
請求項13の発明は、請求項1記載の臨床検査装置において、前記回転体上には、複数の前記マイクロチップが載置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の臨床検査装置によれば、測定室に設けられた防護カバーが着脱用開口を塞ぐという極めて簡単な操作を行うだけで、マイクロチップが圧下部材によって圧下され、マイクロチップを回転体上のロック機構に装着することができる。したがって、マイクロチップを簡易かつ確実に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の臨床検査装置の外観図である。
【図2】本発明の臨床検査装置の測定部の斜視図である。
【図3】本発明の臨床検査装置の測定部の内部構成を示す斜視図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】防護カバーの構成を示す部分拡大断面図である。
【図6】図4に示すA部の拡大図である。
【図7】マイクロチップの構成を概略的に示す斜視図および断面図である。
【図8】防護カバーの動作を説明する断面図である。
【図9】マイクロチップをロック機構に装着する動作を説明する部分拡大断面図である。
【図10】マイクロチップをロック機構から取外す動作を説明する部分拡大断面図である。
【図11】マイクロチップの着脱動作に伴う第1の弾性部および第2の弾性部の変位を説明する図である。
【図12】従来の臨床検査装置の測定部の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1〜図4は、本発明の臨床検査装置の装置構成を示す図である。
図1は、臨床検査装置の外観図であり、図1(A)は蓋をしている状態、図1(B)は蓋を開けて、臨床検査装置のチップ挿入口が見えている状態を示している。
図1(A)に示すように、臨床検査装置1は筐体1Aを備える。マイクロチップを臨床検査装置内に挿入するときは、図1(B)に示すように、筐体1Aの蓋1Bを開き、筐体1Aのチップ挿入口1Cからマイクロチップを測定室(図2参照)内に入れる。
【0035】
図2〜図4は、図1に示す筐体1Aの内部に配置された測定部20の構成を示す図である。図2は測定部20を示す斜視図であり、図3は測定部20の内部構成を示す斜視図であり、図4は図2のA−A断面図である。なお、図3では、理解を容易にするため、測定部20の天板部を取り外してある。
【0036】
臨床検査装置の測定部20は、中空円筒形状を有する測定室21と、測定室21の内部に配置された回転体22と、回転体22を回転駆動する回転駆動機構23と、測定室21の着脱用開口21Dを塞ぐ防護カバー24とを備える。
図4に示すように、回転体22は、駆動軸23Bを介して回転駆動機構23の遠心用モータ23Aが連結され、遠心用モータ23Aによって回転駆動される。遠心用モータ23Aには、その回転位置を検出するためのエンコーダ23Cが設けられている。
【0037】
図3に示すように、測定室21内に収容された回転体22は、測定室21よりも若干小さい外径を有する有底円筒形状を有している。回転体22の底面22Aには、マイクロチップの個数と同数(図3では6個)のロック機構26が設けられている。ロック機構26は、回転体22上にマイクロチップをロックすることにより、マイクロチップが遠心分離処理時に回転体22から離脱することを防止するために設けられている。
【0038】
図4に示すように、測定室21は、有底円筒部21Aと、有底円筒部21Aの開口を塞ぐ天板部21Bと、防護カバー24をロックするためのカバーロック機構である掴持部21Cとを有する。天板部21Bには、マイクロチップを着脱するための単数の着脱用開口21Dが設けられている。
【0039】
回転体22上に載置するマイクロチップの個数は、必要に応じて適宜設定される。マイクロチップを多数使用することにより、多数の検出対象成分の測定、或いは複数人分の単一の検出対象成分の測定を効率良く行うことができる。
複数のマイクロチップを回転体22上に載置する場合は、マイクロチップをロック機構26(図3に図示)に固定する毎に、防護カバー24を閉じて着脱用開口21D(図2に図示)を塞いだ状態で回転体22を回転駆動させ、着脱用開口21Dの直下に次なるロック機構26を移送する。
【0040】
図4に示すように、測定室21の下部および回転体22の各々には、光源31から反射鏡32を介して入射する光を透過させる光導入用開口21Eおよびアパーチャー(不図示)が形成されている。
図4に示すように、測定室21の下部には、マイクロチップ10の測定セルに向けて光を照射するとともに、マイクロチップ10に保持された検査液が発する蛍光を測定する、箱状の光源部30が設けられている。
図4に示すように、光源部30は、光源31と、光源31から発した光の光路上に光軸に対して傾斜して配置されたハーフミラー32と、ハーフミラー32で反射された光の光路上であって、光導入用開口21Eの近傍に配置されたレンズ33と、マイクロチップ10の測定用セル12に保持された検査液から発せられる光を検知する受光部34と、これら光源31、ハーフミラー32、レンズ33および受光部34を収容するケーシング35とを備えて構成される。
なお、以下では、光源部30は、マイクロチップ10に保持された検査液が発する蛍光を分析するものとして説明しているが、蛍光を分析するものに吸光を分析するものであっても良い。
【0041】
光源31は、波長525nmの緑色光を発する緑色発光ダイオードである。
ハーフミラー32は、ダイオード31から発した緑色光をレンズ33の方向へ反射し、マイクロチップ10の測定用セル12に保持された検査液が発する蛍光(黄緑色光)は透過する。レンズ33は凸面がハーフミラー32に対向する平凸レンズである。
受光部34は、マイクロチップ10の測定用セル12に保持された検査液から発せられる蛍光(黄緑色光)の強度を検知する。受光部34は、不図示の制御部に検査液が発する蛍光強度の信号を送出する。前記信号に基いて、不図示の制御部が検査液中の検出対象成分の濃度を算出する。
【0042】
本発明の臨床検査装置による検査液の分析処理は、例えば以下のように行われる。
図4に示すように、検査液(血液)が保持されたマイクロチップ10を載置した回転体22を回転させ、遠心力を利用して検査液を遠心分離する分離処理を行い、当該分離処理により得られる測定対象液を秤量する。
そして、当該測定対象液と試薬とを混合して反応させる混合反応処理と、当該混合反応処理により得られる測定対象液を測定用セル12に液送する処理を含む前処理動作を行う。
ついで、光源31からの光をマイクロチップ10の測定用セル12に導入する。測定用セル12に充填された測定対象液は、光源31が発する緑色光が照射され、黄緑色の蛍光を発する。
受光部34は受光した当該黄緑色の蛍光の強度を検知する。これにより、蛍光の強度を基にして、測定用セル12に充填された測定対象液に含まれる検出対象成分の濃度が得られる。
【0043】
次に、防護カバー24について説明する。図5は、図4に示す防護カバー24を拡大して示す部分拡大断面図である。
図5に示すように、測定室21の天板部21Bには、着脱用開口21Dを塞ぐための防護カバー24が設けられている。防護カバー24は、マイクロチップ10を圧下部材25によって圧下して、マイクロチップをロック機構26に装着するために設けられている。
【0044】
防護カバー24は、図5に示すように、互いに独立して円周方向に90°回転自在である一方のカバー基板24A(以下、カバー基板24Aと略す)および他方のカバー基板24B(以下、カバー基板24Bと略す)を備える。
カバー基板24Aは、長手方向の一端部に蝶番241Aが設けられて測定室21の天板部21Bに枢止されている。
カバー基板24Aの長手方向の他端部には、カバー基板24Aを測定室21にロックするための突状部242Aが設けられている。
さらに、カバー基板24Aの長手方向の概ね中央には、圧下ピン25Bが通過するための、円筒形状を有するスリーブ243Aが嵌合された貫通穴が設けられている。
【0045】
カバー基板24Bは、長手方向の一端に蝶番241Bが設けられてカバー基板24Aに枢止されている。
カバー基板24Bの、長手方向の蝶番241B寄りの箇所には、カバー基板24Bに対して垂直方向に伸びる圧下部材25が設けられている。
カバー基板24Bには、カバー基板24Bを押し下げたときに、カバー基板24Aの他端部に押し当てられる押当部242Bが設けられている。
押当部242Bは、カバー基板24Bを押し下げたときに、カバー基板24Bがカバー基板24Aに確実に当接する箇所である。押当部242Bは、カバー基板24Aを押し下げて測定室21の掴持部21Cに確実にロックするために設けられている。
カバー基板24Bの長手方向の他端には、カバー基板の開閉動作を容易に行うために、把持部243Bが設けられている。
【0046】
防護カバー24を閉じるときは、他方のカバー基板24Bの把持部243Bを把持して、カバー基板24Bを鉛直方向下方に押し下げ、押当部242Bをカバー基板24Aの他端部に押し当てる(図8(B)参照)。
これにより、他方のカバー基板24Bの押当部242Bによって、一方のカバー基板24Aに設けられたT字状の突状部242Aが押し下げられ、突状部242Aが掴持部21Cに挿嵌されて、一方のカバー基板24Aのみが掴持部21Cにロックされる(図8(B)参照)。
このようにしてカバー基板24Aを掴持部21Cにロックすることにより、マイクロチップ10に保持された検査液の遠心分離処理を行う際に、防護カバー24が開くおそれがない。
【0047】
図5に示すように、防護カバー24を構成するカバー基板24Aとカバー基板24Bとの間には、カバー基板24Aとカバー基板24Bの間に挟持されるようにして、弾性部材24Cが設けられている。
弾性部材24Cの内部には、圧下ピン25Bが遊嵌されている。弾性部材24Cは、例えばスプリングバネによって構成されている。
【0048】
圧下部材25は、図5に示すように、カバー基板24Bに固定するための有底円筒形状を有する保持具25Aと、保持具25Aに挿嵌された円柱状の圧下ピン25Bとを備えて構成される。
圧下ピン25Bは、弾性部材24Cを貫通するように弾性部材24Cの内部に遊嵌され、一端が保持具25Aに挿嵌されるとともに、他端が一方のカバー基板24Aに設けられたスリーブ243Aを通過して一方のカバー基板24Aの下方へ突出している。
圧下ピン25Bは、一方のカバー基板24Aを測定室21にロックした状態において、マイクロチップ10の壁面に当接することのできる全長を有している(図8(B)参照)。
【0049】
上記の防護カバー24は、カバー基板24Aを測定室21にロックしたときに、弾性部材24Cがカバー基板24Aおよびカバー基板24Bによって上下に押圧され、これにより反発力を生じる。
カバー基板24Bは、カバー基板24Aを測定室21にロックしたときには、測定室21にロックされていないため、上記した弾性部材24Cの反発力により鉛直方向上方に付勢される。これに伴い、カバー基板24Bに設けられた圧下ピン25Bは、カバー基板24Bと同時に鉛直方向上方に付勢され、マイクロチップ10の上壁面15から退避した状態となる(図8(C)参照)。
【0050】
つまり、圧下ピン25Bは、マイクロチップ10をロック機構26にロックするときにはマイクロチップを圧下するが、マイクロチップ10のロックが完了した後は、弾性部材24Cの反発力によってマイクロチップ10の上壁面15から退避する。即ち、圧下ピン25Bは、上下方向に進退することが可能である。
したがって、圧下ピン25Bが、マイクロチップ10に保持された検査液の遠心分離処理を行うときにおいて、妨げになることがない。
【0051】
圧下ピン25Bは、図4に示すように、マイクロチップ10の重心P付近の箇所において、マイクロチップ10の上壁面15を鉛直方向下方に圧下するように配置される。
圧下ピン25Bをこのように配置すれば、過大な圧力を加えなくてもマイクロチップ10をロック機構26に装着することができるので、回転体22に加えられる負荷を抑制することができる。
【0052】
次に、マイクロチップ10をロックするロック機構26について以下に説明する。図6は、図4に示すA部拡大図である。
図6に示すように、ロック機構26は、マイクロチップ10を収容する角筒状の枠体26Aと、マイクロチップ10に形成されたフック(図7に図示)に係合される係合子26Bと、枠体26Aを遠心方向(図6の紙面の左方)に押圧する第1の弾性部26Cと、マイクロチップ10を遠心方向および鉛直方向上方に向けて付勢する第2の弾性部26Dとを備える。
【0053】
枠体26Aは、マイクロチップ10を保持した状態で可動性を有し、後述するようにマイクロチップを着脱するときに回転体22の径方向に移動することが可能である。係合子26Bは、遠心方向に傾斜する摺動先端部261Bを有する。
図6に示すように、第1の弾性部26Cは、枠体26Aの側面に当接するように配置される。第1の弾性部26Cは、後述するようにマイクロチップ10を着脱する際に、マイクロチップ10の側壁面16によって枠体26Aを介して押圧され、マイクロチップ10を遠心方向に付勢するために設けられている。
第2の弾性部26Dは、底面22Aから回転軸に向けて45°傾斜した形状を有している。第2の弾性部26Dは、後述するようにマイクロチップを着脱する際に、マイクロチップ10のフック14(図7に図示)によって押圧されることにより、マイクロチップを遠心方向および鉛直方向上方に付勢するために設けられている。
【0054】
これら第1の弾性部26Cおよび第2の弾性部26Dは、例えば板バネによって構成されることが好ましい。第1の弾性部26Cおよび第2の弾性部26Dとして反発力に優れる板バネを使用した場合は、マイクロチップ10をより確実に回転体22にロックすることができるため、検査液中の検出対象成分の遠心分離処理を行った際に、マイクロチップ10が回転体22から離脱することを防止することができる。
なお、第1の弾性部26Cおよび第2の弾性部26Dは、図6に示す例では一体的に形成されているが、別部材により構成されていても良い。
【0055】
係合子26B、第1の弾性部26Cおよび第2の弾性部26Dは、図4に示すように、マイクロチップの重心位置Pよりも回転軸X寄りの位置に設けられている。
したがって、マイクロチップの重心位置Pよりも遠心方向寄りの位置に設けられた場合に比べ、マイクロチップ10の検査液中の検出対象成分の遠心分離処理を行う際に、マイクロチップの離脱を確実に防止することができる。
【0056】
次に本発明の臨床検査装置において用いられるマイクロチップについて説明する。図7は、マイクロチップの構成の概略を示す。図7(A)はマイクロチップの外観を示す斜視図、図7(B)はマイクロチップを長手方向に切断した断面図を示す。
マイクロチップ10は、図7(A)に示すように、測定用セル12、分離用セル(不図示)、混合セル(不図示)を含む流路が形成された一方の基板11Aの上方から、流路の形成されていない他方の基板11Bを被せて配置するとともに、一方の基板11Aおよび他方の基板11Bを貼り合わせることによって形成される。
【0057】
さらに、マイクロチップ10は、上記したロック機構26にロックするために、図7(B)に示すように、開口13およびフック14が形成されている。図6に示すように、開口13は回転体22の垂直方向に伸びるように形成され、フック14は開口13の内壁において遠心方向に突出するように形成されている。
フック14は、開口13の開口端から開口の奥に進むにつれ遠心方向に向けて傾斜する摺動面14Aと、摺動面14Aに連続して回転体22の底面22Aに平行に広がる平坦部14Bとを有する。
摺動面14Aは、係合子26Bの摺動先端部261B(図6に図示)と略平行に形成されている。図6に示す第1の弾性部26Cは、摺動先端部261Bが摺動面14A上を摺動することによって押圧される。
【0058】
次に、上記した本発明の臨床検査装置におけるマイクロチップ10の着脱方法について、図8ないし図11を用いて説明する。
図8は、防護カバー24の開閉動作を説明する断面図である。図8(A)は防護カバー24を開けた状態、図8(B)は圧下部材25によりマイクロチップ10の壁面を圧下した状態、図8(C)は圧下部材25がマイクロチップ10の壁面から退避した状態を示す。図9は、マイクロチップ10をロック機構26に装着する動作を説明する部分拡大断面図である。図10は、マイクロチップ10をロック機構26から取外す動作を説明する部分拡大断面図である。
【0059】
まず、マイクロチップ10をロック機構26に装着する動作について説明する。マイクロチップ10を装着する作業者は、図8(A)に示すように、防護カバー24を開いて、着脱用開口21Dから測定室21の内部にマイクロチップ10を挿入する。マイクロチップ10は、開口13が鉛直方向下方側に位置するようにして、枠体26Aの内部に収容する。
【0060】
次に、作業者は、図8(B)に示すように、カバー基板24Bの把持部243Bを把持して、カバー基板24Bを反時計回りに90°回転させ、カバー基板24Bの押当部242Bをカバー基板24Aの他端部に当接させる。これにより、図8(B)に示すように、カバー基板24Aに設けられたT字状の突状部242Aが、測定室21の掴持部21Cに挿入され、カバー基板24Aが測定室21にロックされる。
カバー基板24Bに設けられた圧下ピン25Bは、上記のようにカバー基板24Aを測定室21にロックすることによって、その先端部がマイクロチップ10の上壁面15に当接し、マイクロチップ10を圧下する。
上記のように、圧下ピン25Bによってマイクロチップ10が圧下されることによって、次のようにして、マイクロチップ10がロック機構26に装着される。
【0061】
図9(A)〜(C)に示すように、係合子26Bの摺動先端部261Bは、フック14の摺動面14A上を摺動しながら開口13の奥側に進むことにより、マイクロチップ10を収容した枠体26Aが回転軸X方向に移動する。マイクロチップ10が図9(C)の位置に移動したときは、第1の弾性部26Cが前記の枠体26Aによって押圧される。
図9(D)に示すように、係合子26Bの全体が摺動面14Aを通過したときには、フック14が第2の弾性部26Dを押圧した状態になる。第2の弾性部26Dは、回転体22の底面22Aに対して45°傾斜(図6に図示)した形状を有するので、フック14に押圧されることにより、マイクロチップ10を遠心方向および鉛直方向上方へ付勢する反発力を生じる。
最終的には、図9(E)に示すように、フック14の平坦部14Bに係合子26Bの基端部が係止され、マイクロチップ10がロック機構26にロックされ、マイクロチップ10の装着が完了する。
このように、本発明の臨床検査装置においては、カバー基板24Bを押し下げて、カバー基板24Aを測定室21にロックするだけで、マイクロチップ10の上壁面15が圧下ピン25Bによって圧下され、ロック機構26へのマイクロチップ10の装着が完了する。
【0062】
図11は、第1の弾性部26Cおよび第2の弾性部26Dの変形を模式的に示す図である。同図(A−1)は縦軸に第1の弾性部26Cの変位、横軸にマイクロチップ10の位置を示し、同図(B−1)は、縦軸に第2の弾性部26Dの変位、横軸にマイクロチップ10の位置を示す。同図(A−2)は第1の弾性部26Cが変位する様子を示し、同図(B−2)は第2の弾性部26Dが変位する様子を示す。図11を用いて、マイクロチップ10の装着時における第1および第2の弾性部の動作について以下に説明する。
【0063】
マイクロチップ10が図9(A)〜(B)の位置にあるときは、図11(A−1)の位置A〜Bに示すように、第1の弾性部26Cは変位していない。
マイクロチップ10が図9(C)の位置に移動したときは、第1の弾性部26Cが前記の枠体26Aによって押圧される。このときは、図11(A−1)の位置B〜Cおよび図11(A−2)に示すように、第1の弾性部26CがS1からS2に変位するとともに、図11(B−1)の位置B〜Cおよび図11(B−2)に示すように、第2の弾性部26DがT1からT2に変位する。
マイクロチップ10が図9(D)の位置に移動したときは、第1の弾性部26Cが枠体26Aに押圧された状態にあり、第2の弾性部26Dがマイクロチップ10のフック14に押圧される。第1の弾性部26Cは、図11(A−1)の位置Dに示すようにS2の状態である。第2の弾性部26Dは、図11(B−1)の位置Dおよび図11(B−3)に示すようにT3に変位する。
枠体26Aに押圧された第1の弾性部26Cは、枠体26Aを遠心方向に付勢し、図11(A−1)の位置Eおよび図11(A−2)に示すようにS2からS1に変位する。同時に、フック14に押圧された第2の弾性部26Dは、枠体26Aを遠心方向に付勢し、図11(B−1)の位置Eおよび図11(B−3)に示すようにT3からT1に変位する。
【0064】
マイクロチップ10をロック機構26に装着した後は、マイクロチップ10に保持された検査液中の検出対象成分の遠心分離処理を実行する際に、圧下ピン25Bが邪魔にならないようにするため、圧下ピン25Bをマイクロチップ10の上壁面15から退避させる必要がある。
弾性部材24Cは、圧下ピン25Bが図8(B)に示すように、マイクロチップ10の上壁面15に当接した状態において、カバー基板24Aおよびカバー基板24Bの双方により上下に挟まれて押圧されている。
したがって、マイクロチップ10のロック機構26への装着が完了した後には、作業者がカバー基板24Bから手を離せば、図8(C)に示すように、カバー基板24Bは弾性部材24Cによる反発力を受け鉛直方向上方側へ付勢される。
これに伴って、カバー基板24Bに固定された圧下ピン25Bが、カバー基板24Bと同時に鉛直方向上方へと付勢され、図8(C)に示すように、マイクロチップ10の上壁面15から退避した状態となる。
【0065】
続いて、マイクロチップ10をロック機構26から取外す動作について説明する。
作業者は、カバー基板24Aが測定室21にロックされた状態(図8(C))を解除して、カバー基板24Aおよびカバー基板24Bを時計周りに90°回転させ、防護カバー24を図8(A)に示す位置に配置し、測定室21の着脱用開口21Dを開く。
作業者は、マイクロチップ10を図10(F)に示す状態から図10(G)に示す状態になるよう移動させ、マイクロチップ10を収容した枠体26Aを回転体22の回転軸X方向に押圧する。
マイクロチップ10が図10(G)の位置に移動したときは、係合子26Bとフック14との係止状態が解除され、枠体26Aを介して第1の弾性部26Cが押圧されるとともに、マイクロチップ10のフック14によって第2の弾性部26Dが押圧される。
マイクロチップ10は、図10(H)に示すように、第2の弾性部26Dによる反発力を受けて鉛直方向上方へ付勢され、第1の弾性部26Cの弾性力に抗しながら枠体26Aに沿って鉛直方向上方へ進む。
マイクロチップ10は、図10(I)に示すように、フック14の摺動面14Aが係止部26Bの摺動先端部261B上を遠心方向へ摺動し、第1の弾性部26Cからの反発力を受け遠心方向へ付勢される。
最終的には、マイクロチップ10の開口13から係合子26を抜き出た状態になり、作業者がマイクロチップ10を手で掴んで、測定室21の着脱用開口21D(図2に図示)から取出すことができる。
【0066】
図11を用いて、マイクロチップ10の取外し時における第1および第2の弾性部の動作について説明する。
マイクロチップ10が図10(G)の位置に移動したときは、第1の弾性部26Cが前記の枠体26Aによって押圧される。このときは、図11(A−1)の位置F〜Gおよび図11(A−2)に示すように、第1の弾性部26CがS1からS2に変位するとともに、図11(B−1)の位置F〜Gおよび図11(B−3)に示すように、第2の弾性部26DがT1からT3に変位する。
マイクロチップ10が図10(H)の位置に移動したときは、図11(A−1)の位置G〜Hに示すように第1の弾性部26CがS2の状態にあるとともに、第2の弾性部26Dがマイクロチップ10を鉛直方向上方へ付勢する。このとき、第2の弾性部26Dは、図11(B−1)の位置G〜Hおよび図11(B−2)(B−3)に示すように、T3からT2、T1に順次に変位する。
マイクロチップ10が図10(I)の位置に移動したときは、第1の弾性部26Cがマイクロチップ10を遠心方向へ付勢する。このとき、第1の弾性部26Cは、図11(A−1)の位置Iおよび図11(A−2)に示すように、S2からS1に変位する。
【0067】
本発明の臨床検査装置においては、次に説明するような効果を期待することができる。
(1)極めて簡単な操作を行うだけで、マイクロチップ10を回転体22上に確実にロックすることができる。
即ち、防護カバー24(一方のカバー基板24A)によって、マイクロチップの着脱用開口21Dを塞ぐ、という極めて簡単な操作を行うだけで、マイクロチップ10が圧下部材25によって圧下され、マイクロチップ10をロック機構26に確実に装着することができる。
(2)マイクロチップ10が確実にロックされ、検査液の遠心分離処理を行う際に回転体22から離脱するおそれがない。
即ち、マイクロチップ10は、圧下部材25で圧下されることによって、ロック機構26に設けられた係合子26Bが、マイクロチップ10に設けられたフック14に係止される。マイクロチップ10に保持された検査液の遠心分離処理を行うときには、係合子26Bがフック14に係止されているため、遠心力によってマイクロチップ10が起き上がることが阻止され、マイクロチップ10が回転体22から離脱するおそれがない。
(3)マイクロチップ10を圧下する圧下部材25が、検査液の遠心分離処理を行うときにおいて、遠心分離処理の妨げになることがない。
即ち、圧下部材25は、一方のカバー基板24Aと他方のカバー基板24Bとの間に挟持される弾性部材24Cと、これに連結される圧下ピン25Bを備えている。マイクロチップ10をロック機構26に装着した後には、弾性部材24Cが一方のカバー基板24Aと他方のカバー基板24Bとに押圧されることによって生じる反発力を利用して、圧下ピン25Bが鉛直方向上方に付勢され、圧下ピン25Bが遠心分離処理の妨げになることを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 筐体
10 マイクロチップ
11A 下部基板
11B 上部基板
12 測定用セル
13 開口
14 フック
14A 摺動面
14B 平坦部
20 測定部
21 測定室
22 回転体
23 回転駆動機構
23A 遠心用モータ
23B 駆動軸
23C エンコーダ
24 防護カバー
24A 一方のカバー基板
241A 蝶番
242A 突状部
243A スリーブ
24B 他方のカバー基板
241B 蝶番
242B 押当部
243B 把持部
24C 弾性部材
25 圧下部材
25B 圧下ピン
26 ロック機構
26A 枠体
26B 係合子
261B 摺動先端部
26C 第1の弾性部
26D 第2の弾性部
30 光源部
31 光源
32 ハーフミラー
33 レンズ
34 受光部
35 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査液を収容する測定セルを備えるマイクロチップと、
前記マイクロチップを載置して回転する回転体と、
前記回転体を回転させる回転駆動機構と、
前記マイクロチップを前記回転体上にロックするロック機構と、
前記マイクロチップおよび前記回転体を収容し、前記マイクロチップを着脱するための着脱用開口を有する測定室と、
前記着脱用開口を塞ぐ防護カバーと、
前記マイクロチップの測定セルに光を照射する光源と、
前記光源からの光を受光する受光部とを備え、
前記回転体が前記回転駆動機構により回転されることによって作用される遠心力を利用して、前記マイクロチップにおいて前記検査液中の検体の遠心分離処理が行われる臨床検査装置であって、
前記測定室の防護カバーは、前記測定室の着脱用開口を塞いだときにおいて、前記マイクロチップの壁面を圧下する圧下部材を有することを特徴とする臨床検査装置。
【請求項2】
前記マイクロチップが、前記回転体に対して垂直方向に伸びる開口と、この開口の壁面において前記回転体の遠心方向に突出するように形成されたフックとを有し、
前記ロック機構が前記フックに係合される係合子を有し、
前記係合子が、前記マイクロチップが前記圧下部材によって圧下されることによって、前記マイクロチップの開口に挿入されて前記フックに係合されることを特徴とする請求項1記載の臨床検査装置。
【請求項3】
前記フックが傾斜した摺動面を有し、
前記係合子が前記フックの摺動面上を摺動する摺動先端部を有し、
前記ロック機構が、前記係合子が前記フックの摺動面を通過するときに前記マイクロチップの側面によって押圧され、前記係合子が前記フックを通過した後に、前記マイクロチップを遠心方向に付勢する第1の弾性部と、前記マイクロチップの底面によって押圧され、前記係合子が前記フックを通過した後に、前記マイクロチップを遠心方向および鉛直方向上方に付勢する第2の弾性部とを有することを特徴とする請求項2記載の臨床検査装置。
【請求項4】
前記防護カバーが、互いに独立して回転自在に設けられた一方のカバー基板と他方のカバー基板とからなり、
前記一方のカバー基板が、前記測定室に枢止され、前記圧下部材が通過する開口を有し、
前記他方のカバー基板が、前記一方のカバー基板に枢止され、前記圧下部材を有することを特徴とする請求項1記載の臨床検査装置。
【請求項5】
前記他方のカバー基板は、前記一方のカバー基板に当接する押当部を有することを特徴とする請求項4記載の臨床検査装置。
【請求項6】
前記一方のカバー基板は、前記他方のカバー基板に設けられた押当部によって押し下げられ、前記測定室の着脱用開口を塞ぐことを特徴とする請求項5記載の臨床検査装置。
【請求項7】
前記測定室が、前記一方のカバー基板をロックするカバーロック機構を有することを特徴とする請求項6記載の臨床検査装置。
【請求項8】
前記一方のカバー基板のみが、前記カバーロック機構にロックされることを特徴とする請求項7記載の臨床検査装置。
【請求項9】
前記他方のカバー基板に設けられた圧下部材が、前記マイクロチップの上壁面に当接する圧下ピンと、前記圧下ピンに連結され、前記一方のカバー基板および前記他方のカバー基板の間に挟持された弾性部材とを有することを特徴とする請求項4記載の臨床検査装置。
【請求項10】
前記他方のカバー基板に設けられた圧下ピンが、前記弾性部材が押圧されることにより生じる反発力を受けて、鉛直方向上方に付勢されることを特徴とする請求項9記載の臨床検査装置。
【請求項11】
前記圧下ピンが、前記一方のカバー基板が前記測定室のカバーロック機構にロックされたときに、前記マイクロチップの上壁面に当接する全長を有することを特徴とする請求項9記載の臨床検査装置。
【請求項12】
前記マイクロチップが底面積に比して側面積が大きくなる姿勢で配置されていることを特徴とする請求項1記載の臨床検査装置。
【請求項13】
前記回転体上には、複数の前記マイクロチップが載置されていることを特徴とする請求項1記載の臨床検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−53043(P2011−53043A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201274(P2009−201274)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】