説明

自励式スイッチング電源回路

【課題】定電圧制御下で安定動作しても、特定周波数で高調波ノイズが発生せず、良好な雑音端子電圧特性が得られる自励式スイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】トランスの一次巻線に励磁電流を流さないオフ動作期間中に帰還巻線に発生するフライバック電圧で周期制御用コンデンサを充電し、一次巻線に励磁電流を流すオン動作期間中に、充電速度でオン動作期間が変化するオフ制御コンデンサを周期制御用コンデンサの充電電圧で充電する。周期制御用コンデンサの充電電圧を発振周期Toより充分に長い循環周期Tcで変化させ、連続発振動作する発振周期Toを循環周期Tcで可変させ、高調波の周波数を分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスの帰還巻線に表れる電圧を駆動信号としてスイッチング素子の制御端子に正帰還させて連続発振動作を行う自励式スイッチング電源回路に関し、更に詳しくは、出力の雑音端子特性を改善する自励式スイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源回路は、安定化電源として、バッテリーチャージャーやACアダプタなどに用いられ、出力側に接続されるこれらの負荷の大きさにかかわらず、出力電圧を所定の設定電圧に安定させる定電圧制御を行っている(例えば、特許文献1)。
【0003】
以下、この従来の定電圧制御を行う自励式スイッチング電源回路100を、図5と図6を用いて説明すると、1は、電圧が変動する可能性のある不安定な直流電源であり、1aは、その高圧側端子、1bは、低圧側端子である。また、2aは、トランス2の一次巻線、2cは、トランス2の二次出力巻線、2b、2dは、トランス2の一次側に設けられた第1帰還巻線と第2帰還巻線であり、第1帰還巻線2bは一次巻線2aと同一方向に、第2帰還巻線2dは、一次巻線2aと逆方向に巻回されている。
【0004】
3は、発振用電界効果トランジスタ(以下、FETと記す)である。21は、回路起動時において、このFET3のゲートに順方向バイアス(換言すればスレッショルド電圧VTH以上のゲート電圧)を与えるために用いられている起動用抵抗であり、起動用抵抗21に直列に接続された電気抵抗25は、起動用抵抗21に対して小さい抵抗値であり、これにより両者の接続点J1で直流電源1の電圧を分圧し、低い直流電圧が出力された場合には、回路が起動しないようになっている。
【0005】
12は、帰還抵抗23とともにオン駆動回路を構成し、第1帰還巻線2bとFET3のゲートとの間に直列に接続されるオン制御コンデンサ、24は、ゲートへの過大入力を阻止する為の電気抵抗、5は、コレクタをFET3のゲートへ、エミッタを低圧側端子1bへ接続したオフ制御トランジスタである。
【0006】
第2帰還巻線2dの一側は、直列に接続された整流ダイオード54と出力制御用コンデンサ55を介して直流電源1の低圧側端子1bに接続し、また他側は、直接直流電源1の低圧側端子1bに接続し、これにより閉ループが形成される。整流ダイオード54は、第2帰還巻線2dに発生するフライバック電圧で出力制御用コンデンサ55が充電される充電方向を順方向として配設される。
【0007】
整流ダイオード54と出力制御用コンデンサ55の接続点J2は、フォトカプラ受光素子39を介してオフ制御トランジスタ5のベースJ3に接続し、ベースJ3と低圧側端子1b間にオフ制御コンデンサ53が接続されている。
【0008】
オフ制御トランジスタ5のベースJ3は、充放電抵抗50を介して、FET3とシャント抵抗51の接続点J4へも接続し、一次巻線電流がシャント抵抗51に流れることによるシャント抵抗51に発生する電圧でオフ制御コンデンサ53を充電し、ベースJ3のベース電圧がオフ制御トランジスタ5の動作電圧に達すると、オフ制御トランジスタ5のコレクタ、エミッタ間が導通するようになっている。
【0009】
フォトカプラ受光素子39は、トランス2の二次側のフォトカプラ発光素子35とフォトカップルして動作するもので、フォトカプラ発光素子35からの光を受光した際に、接続点J2からJ3へ出力制御用コンデンサ55からの放電電流をその受光量に応じて流す。
【0010】
二次出力巻線2c側に示される4と13は、それぞれ、整流平滑化回路を構成する整流用ダイオード及び平滑コンデンサであり、二次出力巻線2cの出力を整流平滑化して、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に出力する。
【0011】
高圧側出力線20aと低圧側出力線20bとの間には、分圧抵抗30、31が直列に接続され、その分圧点32を、誤差増幅器33の反転入力端子に接続し、反転入力端子に出力電圧の分圧となる出力検出電圧を入力している。誤差増幅器33の非反転入力端子と低圧側出力線20bの間には、基準電源34が接続され、非反転入力端子に、出力検出電圧と比較するための基準電圧を入力している。基準電圧は、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間の定電圧制御する所定の設定電圧を分圧抵抗30、31で分圧した電圧としているので、誤差増幅器33の出力は、設定電圧に対する出力電圧の差電圧を表す。
【0012】
誤差増幅器33の出力側には、電気抵抗36を介して高圧側出力線20aに接続し、誤差増幅器33の出力値により点滅するフォトカプラ発光素子35が接続されている。従って、フォトカプラ発光素子35は、上記差電圧応じた発光量で発光し、フォトカプラ発光素子35にフォトカップルする一次側のフォトカプラ受光素子39は、接続点J2からJ3へ差電圧に応じた電流を流す。
【0013】
このように構成された自励式スイッチング電源回路100は、始めに、直流電源1の高圧側端子1aと低圧側端子1bに直流電圧が加えられると、起動用抵抗21を介してオン制御コンデンサ12が充電され(図中下の電極が+で上が−の極性)、オン制御コンデンサ12の充電電圧は、徐々に上昇する。オン制御コンデンサ12の充電電圧がスレッショルド電圧VTHに達すると、FET3のゲートに順方向バイアス電圧が印加され、FET3がターンオンする(ドレイン−ソース間が導通する)。
【0014】
FET3がターンオンし、直列に接続された一次巻線2aに直流電源1から励磁電流が流れ始めると、トランス2の各巻線には誘導起電力が生じ、トランス2に励磁エネルギーが蓄積される。このとき、一次巻線2aに流れる電流によりシャント抵抗51のFET3側の接続点J4に発生する電圧は、充放電抵抗50を介してオフ制御コンデンサ53を充電する。一次巻線2aに流れる電流は、ターンオン後の経過時間に比例して上昇し、これによりオフ制御コンデンサ53の充電電圧がオフ制御トランジスタ5の動作電圧に達すると、コレクタ−エミッタ間が導通状態になり、FET3のゲートはオフ制御トランジスタ5によって実質的に短絡状態となり、FET3がターンオフする(以下、FET3がターンオンしてからターンオフするまでをオン動作期間、ターンオフしてから次にターンオンするまでをオフ動作期間という)。
【0015】
FET3がターンオフし、トランスに流れる電流が実質的に遮断されると、各巻線にはいわゆるフライバック電圧(誘導逆起電力)が生じる。このとき、二次出力巻線2cに発生するフライバック電圧は、整流用ダイオード4とコンデンサ13とにより形成される平滑整流回路によって整流平滑化され、出力線20a、20b間に接続される負荷に供給される電力として出力される。
【0016】
一方、第1帰還巻線2bに発生するフライバック電圧は、出力側に接続された負荷により二次巻線2cに発生するフライバック電圧と比例関係にあり、帰還巻線2bに発生するフライバック電圧によって、オン制御コンデンサ12が充電される(図5において下の電極が+で上が一の極性)。
【0017】
このオフ動作期間中は、オフ制御コンデンサ53から充放電抵抗50とシャント抵抗51を放電電流が流れ、その充電電圧すなわちオフ制御トランジスタ5のベース電圧が低下し、動作電圧以下となる。また、オフ制御トランジスタ5のベース、コレクタ間が等価ダイオードとして作用し、オン制御コンデンサ12は、第1帰還巻線2bに発生するフライバック電圧で、シャント抵抗51から充放電抵抗50、オフ制御トランジスタ5のベースからコレクタ、帰還抵抗23を充電路として充電される。
【0018】
二次出力巻線2cに蓄積されていた電気的エネルギの放出が終わると、ゲートに対して逆バイアスとして作用していた帰還巻線2bのフライバック電圧が降下し、それまでオン制御コンデンサ12に保持されていた充電電圧により、FET3のゲート電圧がスレッショルド電圧VTHを越え、FET3が再びターンオンし、このようにして一連の発振動作が繰り返される。
【0019】
ここで、一度の発振周期でトランス2に蓄積されるエネルギーは、FET3のオン動作期間の二乗にほぼ比例し、二次側の出力電圧が設定電圧に達しない状態では、フォトカプラ発光素子35が発光していないのでオフ制御コンデンサ53の充電速度に関与せず、シャント抵抗51の抵抗値により定まる最大オン時間で動作する。最大オン時間は、トランス2に蓄積されるエネルギーが、定格消費電力の負荷と自励式スイッチング電源回路100のスイッチング動作で消費するエネルギーの和よりやや大きいものとなるように設定され、その結果、出力電圧は、発振を繰り返しながら設定電圧まで上昇し、設定電圧を越えると、定電圧出力制御下での通常の連続自励発振動作に移行する。
【0020】
FET3のオフ動作期間中は、出力制御用コンデンサ55も、第2帰還巻線2dに発生するフライバック電圧により、整流ダイオード54を介して充電され、FET3がターンオンしたときに、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間の出力電圧が設定電圧を越えていると、その差電圧に応じた光量でフォトカプラ発光素子35が発光し、フォトカップリングするフォトカプラ受光素子39は、出力制御用コンデンサ55から差電圧に比例する放電電流を接続点J2から接続点J3へ流す。
【0021】
その結果、FET3がターンオンした直後に、一次巻線2aの励磁電流によるシャント抵抗51の電圧降下で充電されていたオフ制御コンデンサ53は、出力制御用コンデンサ55の充電電圧からも充電され、その充電が加速されることにより最大オン時間より早く、オフ制御トランジスタ5のベース電圧が動作電位に達する。
【0022】
これにより、FET3のゲートと低圧側端子1b間は、オフ制御トランジスタ5によって実質的に短絡状態となり、FET3はターンオン後速やかにターンオフする。その結果、一発振周期でのオン動作期間が短縮制御され、トランス2に蓄積されるエネルギーが低下するので、出力電圧が低下し、このような過程を経て出力電圧の定電圧制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特許第3691498号公報(明細書の項目0033乃至項目0066、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
この従来の自励式スイッチング電源回路100では、定電圧制御が各発振周期毎に行われ、出力電圧が所定の設定電圧に達した後に安定した連続発振動作を行っている間は、定電圧制御により変化するオン動作期間はわずかである。一方、オン動作期間が一定で負荷による消費電力が変化しない限り、各発振周期でのオフ動作期間も一定であり、定電圧制御下で出力電圧が設定電圧近傍に安定した後は、図6に示すように、ほぼ固定した発振周波数で動作する。
【0025】
例えば、直流電源電圧が240Vで、負荷への出力電圧が16V、出力電流が1.2Aに定電圧制御された自励式スイッチング電源回路100は、出力電圧が設定電圧16Vに達した後は、各発振周期Toのオン動作期間とオフ動作期間がほぼ一定で変化せず、160kHzの固定発振周期で連続発振動作を行い、これにより、出力線20a、20b間に、その二次以降の高調波による高調波ノイズが発生する。
【0026】
自励式スイッチング電源回路の出力に表れる雑音電圧特性について、情報技術装置(ITE)の国際規格CISPR22のclass Bでは、図7に示すように、0.15MHzから30MHzまでの周波数帯において、QPモード(順尖頭値検波)とAVRモード(平均値検波)での各上限値が規定され、160kHzの固定発振周期で連続動作する自励式スイッチング電源回路100の出力には、その整数倍の320kHz、480kHz、640kHz等で二次以降の高調波ノイズが表れ、これらの特定な周波数において、国際規格で規定する上限値(1)(2)とのマージンが減少し、実測値(4)(5)が上限値を超える恐れが生じていた。
【0027】
高調波のノイズ成分は、発振周波数に対する次数が小さいほど大きいので、発振周波数を低下させることが求められるが、そのために自励式スイッチング電源回路100が大型化するものであった。また、出力側の電源線に大容量のフィルターを介在させる手段も講じられたが、全体で高価なものとなっていた。
【0028】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、定電圧制御下で安定動作しても、特定周波数で高調波ノイズが発生しない自励式スイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上述の目的を達成するため、請求項1の自励式スイッチング電源回路は、一次巻線と二次出力巻線と第1帰還巻線と第2帰還巻線を有するトランスと、直流電源に、一次巻線と直列に接続され、ゲート電圧がスレッショルド電圧VTH以上である間、オン動作する発振用電界効果トランジスタと、直流電源の高圧側端子と発振用電界効果トランジスタのゲート間に接続された起動用抵抗と、一側が直流電源の低圧側端子に接続する第1帰還巻線の他側と発振用電界効果トランジスタのゲート間に接続され、発振用電界効果トランジスタをオン制御する電圧をゲートへ印加するオン制御コンデンサと、発振用電界効果トランジスタのゲートと直流電源の低圧側端子間に接続され、制御端子電圧が動作電圧以上である間、ゲートと低圧側端子間を導通させ、発振用電界効果トランジスタをオフ制御するドライバー素子と、発振用電界効果トランジスタと低圧側端子間に接続されるシャント抵抗と、ドライバー素子の制御端子と低圧側端子間に接続され、発振用電界効果トランジスタのオン動作期間中に、一次巻線の励磁電流が流れるシャント抵抗の電圧で充電され、制御端子電圧を動作電圧以上に引き上げるオフ制御コンデンサとを備え、発振用電界効果トランジスタのオン動作期間中に、オフ制御コンデンサの充電電圧で発振用電界効果トランジスタをターンオフし、発振用電界効果トランジスタのオフ動作期間中に、オン制御コンデンサの充電電圧で発振用電界効果トランジスタをターンオンし、所定の発振周期でオン動作期間とオフ動作期間を繰り返す自励式スイッチング電源回路であって、
ドライバー素子の制御端子と低圧側端子間に接続される周期制御用コンデンサと、
第2帰還巻線と周期制御用コンデンサの間に接続され、発振用電界効果トランジスタのオフ動作期間中に、第2巻線に発生するフライバック電圧で周期制御用コンデンサを充電する充電電流を流す逆流防止素子と、第2帰還巻線と直流電源の低圧側端子間に、周期制御用コンデンサと直列に接続され、周期制御用コンデンサの充電速度を調整する時定数抵抗と、周期制御用コンデンサと並列に接続され、前記発振周期より充分に長い循環周期で、周期制御用コンデンサの充電電圧が所定電圧に達する毎に、周期制御用コンデンサの両端を短絡する短絡回路とを更に備え、シャント抵抗の電圧とともに、周期制御用コンデンサの充電電圧でオフ制御コンデンサを充電し、ドライバー素子が発振用電界効果トランジスタをターンオフさせるまでのオン動作期間を短縮制御することを特徴とする。
【0030】
周期制御用コンデンサは、オン動作期間中にオフ制御コンデンサを充電する放電電流を流しながら、オフ動作期間中に第2巻線に発生するフライバック電圧で充電され、各発振周期を繰り返す毎に充電電圧が上昇する。周期制御用コンデンサの充電電圧が上昇すると、オフ制御コンデンサの充電速度が上昇し、発振用電界効果トランジスタをターンオフさせるまでのオン動作期間が短縮されるので、オフ動作期間中のフライバック電圧が消失するまでの時間も短縮し、オフ動作期間も短縮する。その結果、オン動作期間にオフ動作期間を加えた各発振周期は徐々に短縮し、発振用電界効果トランジスタの発振周期より充分に長い循環周期で、周期制御用コンデンサの充電電圧が所定電圧に達すると、短絡回路により周期制御用コンデンサに充電されていた電荷が放電され、充電電圧は一循環周期前の電位まで低下し、発振周期は一循環周期前の発振周期に戻る。
【0031】
従って、定電圧制御下で安定発振動作を行っていても、循環周期毎に、徐々に上昇する発振周波数がもとの発振周波数に戻り、固定発振周波数で連続発振しない。その結果、特定周波数の高調波ノイズが出力線に重畳することがない。
【0032】
請求項2の自励式スイッチング電源回路は、直列に接続された周期制御用コンデンサと時定数抵抗は、第2帰還巻線と直流電源の低圧側端子間に、トランスの第2帰還巻線に発生するフライバック電圧で充電される出力制御用コンデンサと並列に接続され、出力制御用コンデンサは、オン動作期間中に、設定電圧を超える出力電圧と設定電圧の差電圧に応じて、出力制御用コンデンサの充電電圧でオフ制御コンデンサを充電することを特徴とする。
【0033】
オフ制御コンデンサは、出力電圧が設定電圧を超える差電圧に応じて出力制御用コンデンサから充電される充電速度が増し、オン動作期間が短縮されるので、出力電圧は定電圧制御される。定電圧制御に用いる第2帰還巻線を、発振周波数を変化させる回路に兼用できる。
【0034】
請求項3の自励式スイッチング電源回路は、短絡回路は、周期制御用コンデンサの両側に直列に接続された一組の分圧抵抗と、周期制御用コンデンサの両側にコレクタとエミッタを、ベースを一組の分圧抵抗の分圧点に接続させたNPN型トランジスタとからなることを特徴とする。
【0035】
周期制御用コンデンサの充電電圧を分圧した分圧抵抗の分圧点の分電圧がNPN型トランジスタの動作電圧に達すると、コレクタとエミッタ間が導通状態となり、周期制御用コンデンサの両端が短絡される。各発振周期毎に上昇する周期制御用コンデンサの充電電圧は、循環周期毎にその分電圧がNPN型トランジスタの動作電圧に達して全て放電される。
【0036】
請求項4の自励式スイッチング電源回路は、短絡回路が、周期制御用コンデンサの両側に直列に接続された一組の分圧抵抗と、一組の分圧抵抗の分圧点にトリガ端子を接続させ、周期制御用コンデンサの両側に出力端子の両端をそれぞれ接続させたサイリスタ、もしくはトライアックからなることを特徴とする。
【0037】
請求項5のスイッチング電源装置の制御方法は、制御端子を有すると共にトランスの一次巻線に直列に接続されて前記トランスの帰還巻線に発生する電圧によって前記制御端子の電圧が閾値電圧に達するとオン動作し、オフ制御コンデンサの充電電圧により制御端子の電圧が閾値電圧未満に制御されるとオフ動作する発振用電界効果トランジスタからなるスイッチング素子により、前記トランスの一次側への電圧印加又はその遮断を制御し、前記トランスの二次側に電力を伝達して電圧出力を行うスイッチング電源装置の制御方法であって、前記トランスの一次巻線に励磁電流を流さないオフ動作中には、スイッチング素子の一発振周期より充分に長い間隔で充電電圧が変化する周期制御用コンデンサを前記トランスの帰還巻線に発生するフライバック電圧で充電する一方で、前記トランスの一次巻線に励磁電流を流すオン動作中には、前記オフ制御コンデンサを前記周期制御用コンデンサの充電電圧で充電し、前記周期制御用コンデンサの充電電圧によって前記オフ制御コンデンサの充電速度を変化させ、スイッチング素子の発振周期を変化させることを特徴とする。
【0038】
請求項6のスイッチング電源装置の制御方法は、前記周期制御用コンデンサの充電電圧によって前記オフ制御コンデンサの充電速度を加速し、スイッチング素子がオフ動作するまでのオン動作期間を短縮制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
請求項1の発明によれば、定電圧制御下で安定した連続発振動作を行っていても、発振周波数が循環周期で変化するので、出力線に発生する雑音電圧は分散され、出力線にフィルターを介在させる等の対策を講じることなく、雑音電圧特性について規定する国際規格を遵守できる。
【0040】
請求項2の発明よれば、出力制御用コンデンサを充電する為の第2帰還巻線を利用して周期制御用コンデンサが充電されるので、周期制御用コンデンサの充電手段を別に設けずに発振周波数を変化させることができる。
【0041】
また、第2帰還巻線の出力は出力負荷の変動でオフ動作期間のデューティ比が変化する。この第2帰還巻線を利用して周期制御用コンデンサの充電を行うことで、出力負荷変動によっても周期制御用コンデンサの充電速度が変化し、循環周期自体も変動するので、実動作において、より効果的な雑音電圧対策を期待できる。
【0042】
請求項3の発明よれば、一組の分圧抵抗の抵抗値を調整して、周期制御用コンデンサを短絡させる周期制御用コンデンサの充電電圧を設定できるので、一組の分圧抵抗を交換するだけで、循環周期を任意に調整できる。
【0043】
請求項4の発明によれば、短絡回路にサイリスタ又はトライアックのトリガ素子を用いるので、短絡回路を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自励式スイッチング電源回路10の回路図である。
【図2】図1の(ア)の電圧を示す波形図である。
【図3】定電圧制御下で連続自励発振動作を行っている自励式スイッチング電源回路10の、(a)は、FET3のドレイン−ソース間の電圧波形を、(b)は、FET3のドレイン−ソース間に流れる一次巻線電流を、それぞれ示す波形図である。
【図4】自励式スイッチング電源回路10の出力に表れる雑音電圧特性を、国際規格CISPR22の上限値と比較して表す波形図であり、 (1)は、QPモードでの国際規格の上限値、 (2)は、AVRモードでの国際規格の上限値、 (3)は、出力に表れる雑音電圧のピーク値 (4)は、QPモードでの出力に表れる雑音電圧、 (5)は、AVRモードでの出力に表れる雑音電圧を、示す波形図である。
【図5】従来の自励式スイッチング電源回路100の回路図である。
【図6】定電圧制御下で連続自励発振動作を行っている自励式スイッチング電源回路100の、(a)は、FET3のドレイン−ソース間の電圧波形を、(b)は、FET3のドレイン−ソース間に流れる一次巻線電流を、それぞれ示す波形図である。
【図7】自励式スイッチング電源回路100の出力に表れる雑音電圧特性を、国際規格CISPR22の上限値と比較して表す波形図であり、 (1)は、QPモードでの国際規格の上限値、 (2)は、AVRモードでの国際規格の上限値、 (3)は、出力に表れる雑音電圧のピーク値 (4)は、QPモードでの出力に表れる雑音電圧、 (5)は、AVRモードでの出力に表れる雑音電圧を、示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施の形態について図1乃至図4を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る自励式スイッチング電源回路10の構成を示す回路図である。本実施の形態に係る自励式スイッチング電源回路10は、図5に示す従来の自励式スイッチング電源回路100と主要な回路及び回路素子が共通するものであるので、同一の構成には同一の番号を付けて、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図1に示すように、トランス2は、一次側に一次巻線2aと、一次巻線2aと同一方向に巻回された第1帰還巻線2bと、一次巻線2aと逆方向に巻回された第2帰還巻線2dが配設され、二次側に二次出力巻線2cが配設されている。
【0047】
一次巻線2aは、発振用電界効果トランジスタ(以下、FETという)3と直列に、直流電源1に対して接続され、FET3のオンオフ動作によって、一次巻線2aに流れる励磁電流がオンオフ制御される。FET3は、ここではMOSFETが用いられ、ドレインを一次巻線2aに接続し、ソースを一次巻線電流検出のためのシャント抵抗51を介して直流電源1の低圧側端子1bに接続している。
【0048】
また、ゲートは、直流入力電源1に対して直列に接続された起動用抵抗21と電気抵抗25の接続点J1に、ゲートへの過大入力を阻止する電気抵抗24を介して接続している。起動用抵抗21と電気抵抗25のそれぞれの抵抗値は、14.1MΩと750kΩであり、これにより起動用抵抗21による電力消費を低下させている。
【0049】
起動用抵抗21と電気抵抗25の接続点J1と、第1帰還巻線2bの間には、FET3のオン動作に作用するオン制御コンデンサ12及び帰還抵抗23が直列に接続され、第1帰還巻線2bの他側は、直流入力電源1の低圧側端子1bに接続している。
【0050】
起動用抵抗21と電気抵抗25の接続点J1と低圧側端子1b間には、FET3のゲート電圧を低下させてオフ制御するドライバー素子5が配置されている。ここでは、ドライバー素子5として、コレクタを接続点J1へ、エミッタを低圧側端子1bへ接続させたNPN型のオフ制御トランジスタを用いている。オフ制御トランジスタ5のベースは、オフ制御コンデンサ53を介して低圧側端子1bに接続するとともに、充放電抵抗50を介してシャント抵抗51の高圧側に接続し、シャント抵抗51による電圧降下が一定値以上となると、オフ制御コンデンサ53の充電電圧であるベース電圧が上昇し、オフ制御トランジスタ5がオン動作するようになっている。
【0051】
第2帰還巻線2dの一側は、直列に接続された整流ダイオード54と出力制御用コンデンサ55を介して直流入力電源1の低圧側端子1bに接続し、また他側は、直接直流入力電源1の低圧側端子1bに接続し、これにより閉ループが形成される。整流ダイオード54は、出力制御用コンデンサ55との接続方向を順方向として配設され、第2帰還巻線2dに発生するフライバック電圧で出力制御用コンデンサ55が充電されるようになっている。整流ダイオード54と出力制御用コンデンサ55の接続点J2は、フォトカプラ受光素子39を介してオフ制御トランジスタ5のベースへの接続点J3に接続している。
【0052】
フォトカプラ受光素子39は、トランス2の二次側のフォトカプラ発光素子35とフォトカップルして動作するもので、フォトカプラ発光素子35からの光を受光している間に、出力制御用コンデンサ55から放電される放電電流をその受光量に比例して流す。
【0053】
本実施の形態では、従来の回路と異なり、図1に示すように、第2帰還巻線2dの一側と低圧側端子1b間に、更にCRローパスフィルタを構成する電気抵抗37とコンデンサ38が直列に接続され、コンデンサ38と並列に、整流ダイオード6、時定数抵抗7、放電保護抵抗8及び周期制御用コンデンサ9が順に直列に接続されている。
【0054】
整流ダイオード6は、時定数抵抗7との接続方向を順方向とし、これにより、第2帰還巻線2dに発生するフライバック電圧で出力制御用コンデンサ55の他に周期制御用コンデンサ9も充電されるようになっている。一度の発振周期To毎に発生するフライバック電圧で充電される周期制御用コンデンサ9の充電速度は、周期制御用コンデンサ9の容量と直列に接続された時定数抵抗7及び放電保護抵抗8の抵抗値による時定数で定まり、この時定数で定まる過渡期間は、連続発振動作する自励式スイッチング電源回路10の発振周期Toより充分に長い時間に設定されている。
【0055】
放電保護抵抗8は、後述するPNPトランジスタ14とNPNトランジスタ15とからなる短絡回路11によって周期制御用コンデンサ9の両端が短絡された際に、過大な短絡電流が発生しないように周期制御用コンデンサ9に直列に接続されている。
【0056】
時定数抵抗7と放電保護抵抗8の接続点J5は、放電抵抗16を介してオフ制御トランジスタ5のベースへ接続している。従って、短絡回路11が短絡動作していない間は、周期制御用コンデンサ9から放電保護抵抗8と放電抵抗16を、オフ制御コンデンサ53を充電する充電電流が流れる。
【0057】
短絡回路11を構成するNPNトランジスタ15のエミッタは、直流入力電源1の低圧側端子1bに接続し、コレクタは、コレクタ抵抗19を介して接続点J5に接続すると共に、PNPトランジスタ14のベースに接続している。また、PNPトランジスタ14のエミッタは、接続点J5に接続し、コレクタは、バイアス抵抗を介してNPNトランジスタ15のベースと、接続点J5と低圧側端子1b間に直列に接続された一組の分圧抵抗27、28による分圧点に接続している。これにより、周期制御用コンデンサ9の充電電圧が一定電位に達すると、分圧抵抗27、28によるその分電圧がNPNトランジスタ15の動作電圧に達して、そのコレクタ−エミッタ間が導通状態となると共に、コレクタ抵抗19にコレクタ電流が流れて、PNPトランジスタ14のコレクターエミッタ間も導通状態となり、短絡回路11を接続点J5と低圧側端子1b間の短絡回路11に流れる短絡電流が増大して、周期制御用コンデンサ9に蓄積されていた電荷が速やかに放電される。
【0058】
周期制御用コンデンサ9は、FET3がオン、オフ動作する一発振周期To内のオフ動作期間に第2帰還巻線2dに発生するフライバック電圧で充電され、オン動作期間にオフ制御コンデンサ53の充電電流を流す充放電を繰り返しながら、図2に示すように、充電電圧が徐々に上昇し、FET3の発振周期Toより充分に長い循環周期Tcで、充電電圧(J5の電位)の分電圧がNPNトランジスタ15の動作電圧に達するように、分圧抵抗27、28の各抵抗値が設定される。これにより、短絡回路11は循環周期Tcで短絡動作を繰り返し、周期制御用コンデンサ9の充電電位は、循環周期Tcで図2に示すように変化を繰り返す。
【0059】
トランスの二次出力巻線2cには、二次出力巻線2cと直列に整流用ダイオードと、二次出力巻線2cと並列に平滑コンデンサとからなる出力側整流平滑回路26が接続され、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に接続される負荷へ整流平滑化した直流電源を出力している。本実施の形態に係る自励式スイッチング電源回路10では、出力線20a、20b間の出力電圧と出力電流を設定電圧と設定電流に制御するための出力電圧監視回路17と出力電流監視回路18を備えている。
【0060】
出力電圧監視回路17は、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間の出力電圧が所定の値に設定した設定電圧となったときに、直列に接続された分圧抵抗30、31の分圧抵抗31による電圧降下によってNPNトランジスタ41が能動状態で動作するように、分圧抵抗30、31の各抵抗値が定められている。従って、出力電圧が設定電圧を超えると、その差電圧に比例する電流がフォトカプラ発光素子35に流れ、フォトカプラ発光素子35は、差電圧に応じた発光量で発光する。
【0061】
出力電流監視回路18は、低圧側出力線20bにシャント抵抗42が直列に接続され、シャント抵抗42に流れる出力電流が所定の値に設定した設定電流となったときに、シャント抵抗42による電圧降下によってNPNトランジスタ43が能動状態で動作するように定められている。従って、出力電流が設定電流を超えると、その差電流に比例する電流がフォトカプラ発光素子35に流れ、フォトカプラ発光素子35は、差電流に応じた発光量で発光する。
【0062】
前述したようにフォトカプラ発光素子35は、トランス2の一次側のフォトカプラ受光素子39とフォトカップリングし、出力電流が設定電流を越え、若しくは出力電圧が設定電圧を超えると、FET3のオン動作期間中に、オフ動作期間中に充電されていた出力制御用コンデンサ55から、その超えた値に応じた放電電流でオフ制御コンデンサ53を充電する。これにより、オフ制御コンデンサ53の充電が加速され、オフ制御コンデンサ53が速やかにオン動作することによりFET3のオン動作期間が短縮される。その結果、オン動作期間中にトランス2に蓄積されるエネルギーが減少し、設定値を超えていた出力電圧若しくは出力電流は、設定電圧若しくは設定電流となるように下降制御される。
【0063】
出力線20a、20b間に負荷が接続されると、自励式スイッチング電源回路10は、連続発振動作を繰り返しながら、出力電流が設定電流となるまで上昇し、出力電流を設定電流とした定電流制御下で出力電圧が設定電圧となるまで上昇する。その後、負荷による消費電力が一定であれば、出力電圧を設定電圧とする定電圧制御下で、出力電流は負荷の消費電力に見合う電流まで低下し、その状態で一発振周期Toでトランス2に発生するエネルギーが負荷の消費電力と見合うものとなるので、ほぼ一定の発振周期Toで発振動作を繰り返す。
【0064】
しかしながら、本発明では、このように定電圧制御下で一定の発振周期Toで発振動作が安定しても、各発振周期Toをこれより充分に長い循環周期Tcで変化させ、発振周波数が固定しないようにしている。以下、この自励式スイッチング電源回路10の発振動作を詳述する。
【0065】
一発振周期Toのオフ動作期間に、第2帰還巻線2dに発生するフライバック電圧は、整流ダイオード6の順方向に働くので、周期制御用コンデンサ9は、フライバック電圧によって、直列に接続された時定数抵抗7及び放電保護抵抗8との時定数で定まる充電速度で緩やかに充電される。このフライバック電圧の立ち上がりには、FET3がターンオフすることによるスイッチングノイズが重畳するが、電気抵抗37とコンデンサ38からなるローパスフィルターで取り除かれる。
【0066】
第2帰還巻線2dに発生するフライバック電圧が消失し、トランス2の各巻線の極性が反転すると、オフ制御コンデンサ53から充放電抵抗50とシャント抵抗51を放電電流が流れて、オフ制御トランジスタ5のベース電圧が低下し、そのコレクタ−エミッタ間が遮断され、FET3がターンオンする。FET3がターンオンした後のオン動作期間中は、オフ動作期間に充電された周期制御用コンデンサ9の充電電圧が、オフ制御コンデンサ5に加わり、オフ制御コンデンサ5を充電する充電電流が放電保護抵抗8と放電抵抗16に流れる。従って、オフ制御コンデンサ5は、シャント抵抗51の両端から流れる充電電流に、周期制御用コンデンサ9の放電電流が加わり、オフ制御トランジスタ5が速やかにオン動作することにより、発振周期Tcが短縮される。
【0067】
図3に示すように、各発振周期Tcでのオン動作期間は、オフ動作期間に比べて極めて短く、一発振周期Tcでオフ動作期間中に周期制御用コンデンサ9に蓄積される電荷は、オン動作期間中に放出される電荷より多いので、発振動作を繰り返すことによりその充電電圧は徐々に上昇する。一方、各発振周期Tcのオン動作期間に、周期制御用コンデンサ9からオフ制御コンデンサ5を充電する充電電流は、周期制御用コンデンサ9の充電電圧に比例するので、発振動作を繰り返す毎にオン動作期間が短縮され、発振周期Tcも徐々に短縮される。すなわち、自励式スイッチング電源回路10の発振周波数は、徐々に上昇する。
【0068】
周期制御用コンデンサ9の充電電圧が所定の電圧(図2では2.8V)まで上昇すると、分圧抵抗27、28で分圧された分電圧がNPNトランジスタ15の動作電圧に達し、コレクタ抵抗19にコレクタ電流が流れることにより、PNPトランジスタ14のコレクターエミッタ間も導通状態となり、接続点J2と低圧側端子1b間が導通状態となる。すなわち、NPNトランジスタ15とPNPトランジスタ14で構成される短絡回路11が短絡動作することにより、周期制御用コンデンサ9に蓄積されていた電荷が放電され、充電電圧は上昇前の電位まで低下する。その結果、次のオン動作期間では、周期制御用コンデンサ9からオフ制御コンデンサ5を充電する充電電流が減少し、発振周期Tcは一循環周期Tc前の周期に延長される。その後、再び発振毎に周期制御用コンデンサ9の充電電圧が上昇し、発振周期Tcが徐々に短縮される動作を繰り返す。
【0069】
図3に示すように、本実施の形態においては、時定数抵抗7、周期制御用コンデンサ9、分圧抵抗27、28等の各回路定数を調整して、短絡回路11が短絡する循環周期Tcを56.25μsecとしている。図3(a)に示すように、短絡回路11が短絡動作して周期制御用コンデンサ9の充電電圧が最低電位となった直後は、オン動作期間が1.38μsecであり、オン動作期間に比例する図3(b)に示す一次巻線電流は、0.412Aまで上昇する。従って、トランス2に蓄積されるエネルギーが大きく、オフ動作期間も5.54μsecと長く、一発振周期Tcは6.92μsec、発振周波数が144.5kHzとなっている。
【0070】
その後、発振動作を繰り返す毎に、周期制御用コンデンサ9の充電電圧が上昇して発振周期Tcが徐々に短縮され、充電電圧が2.8V付近まで上昇し、短絡回路11が短絡動作する直前の発振周期では、オン動作期間が0.79μsecまで短縮され、図3(b)に示すように一次巻線電流は、0.294Aまで低下する。その結果、フライバック電圧も速やかに消失してオフ動作期間も4.25μsecとなり、発振周期Tcが5.04μsecまで短縮され、その発振周波数は198.4kHzまで上昇する。
【0071】
つまり、自励式スイッチング電源回路10は、定電圧制御下で安定した連続発振動作を行っている間であっても、56.25μsecの循環周期Tcで発振周波数は144.5kHzから198.4kHzの間で変化し、固定周波数で発振しないので、図4に示すように、出力線20a、20b間に表れる高調波ノイズが特定の周波数に集中せず、情報技術装置(ITE)の国際規格CISPR22のclass Bで規定するQPモード(順尖頭値検波)とAVRモード(平均値検波)の各上限値(1)(2)に対して実測値(4)(5)は充分なマージンが得られる。
【0072】
上述の通り、循環周期Tcは、分圧抵抗27、28の抵抗値を可変させることにより容易に調整できるが、循環周期Tcを発振周期Tcに接近する10μsec以下とすると、高調波ノイズの周波数を充分に分散させることができず、また、66.5μsec以上とすると150kHz以下の可聴音域に入り、異音が発生する恐れが生じるので、この間の周期に設定するのが望ましい。
【0073】
上述の実施の形態では、定電圧制御と定電流制御に用いる帰還巻線2dを利用して、周期制御用コンデンサ9を充電するものであるが、他の帰還巻線に発生するフライバック電圧で周期制御用コンデンサ9を充電するものであってもよい。
【0074】
また、上述の実施の形態において、短絡回路11として、PNPトランジスタ14及びNPNトランジスタ15を用いているが、周期制御用コンデンサ9と並列に、例えば、接続点J5と低圧側端子1b間に、一対の出力端子の両端をそれぞれ接続し、トリガ端子を一組の分圧抵抗27、28の分圧点に接続させたサイリスタ又はトライアックなどのトリガ素子で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、出力電圧を定電圧制御する自励式スイッチング電源回路に適している。
【符号の説明】
【0076】
1 直流電源
1a 高圧側端子
1b 低圧側端子
2 トランス
2a 一次巻線
2b 帰還巻線(第1帰還巻線)
2c 二次出力巻線
2d 帰還巻線(第2帰還巻線)
3 発振用電界効果トランジスタ
5 オフ制御トランジスタ(ドライバー素子)
6 整流ダイオード(逆流防止素子)
7 時定数抵抗
9 加速制御用コンデンサ
11 短絡回路
12 オン制御コンデンサ
15 NPN型トランジスタ
21 起動用抵抗
27 分圧抵抗
28 分圧抵抗
50 充放電抵抗
51 シャント抵抗
53 オフ制御コンデンサ
55 出力制御用コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次出力巻線と第1帰還巻線と第2帰還巻線を有するトランスと、
直流電源に、一次巻線と直列に接続され、ゲート電圧がスレッショルド電圧VTH以上である間、オン動作する発振用電界効果トランジスタと、
直流電源の高圧側端子と発振用電界効果トランジスタのゲート間に接続された起動用抵抗と、
一側が直流電源の低圧側端子に接続する第1帰還巻線の他側と発振用電界効果トランジスタのゲート間に接続され、発振用電界効果トランジスタをオン制御する電圧をゲートへ印加するオン制御コンデンサと、
発振用電界効果トランジスタのゲートと直流電源の低圧側端子間に接続され、制御端子電圧が動作電圧以上である間、ゲートと低圧側端子間を導通させ、発振用電界効果トランジスタをオフ制御するドライバー素子と、
発振用電界効果トランジスタと低圧側端子間に接続されるシャント抵抗と、
ドライバー素子の制御端子と低圧側端子間に接続され、発振用電界効果トランジスタのオン動作期間中に、一次巻線の励磁電流が流れるシャント抵抗の電圧で充電され、制御端子電圧を動作電圧以上に引き上げるオフ制御コンデンサとを備え、
発振用電界効果トランジスタのオン動作期間中に、オフ制御コンデンサの充電電圧で発振用電界効果トランジスタをターンオフし、発振用電界効果トランジスタのオフ動作期間中に、オン制御コンデンサの充電電圧で発振用電界効果トランジスタをターンオンし、所定の発振周期でオン動作期間とオフ動作期間を繰り返す自励式スイッチング電源回路であって、
ドライバー素子の制御端子と低圧側端子間に接続される周期制御用コンデンサと、
第2帰還巻線と周期制御用コンデンサの間に接続され、発振用電界効果トランジスタのオフ動作期間中に、第2帰還巻線に発生するフライバック電圧で周期制御用コンデンサを充電する充電電流を流す逆流防止素子と、
第2帰還巻線と直流電源の低圧側端子間に、周期制御用コンデンサと直列に接続され、周期制御用コンデンサの充電速度を調整する時定数抵抗と、
周期制御用コンデンサと並列に接続され、前記発振周期より充分に長い循環周期で、周期制御用コンデンサの充電電圧が所定電圧に達する毎に、周期制御用コンデンサの両端を短絡する短絡回路とを更に備え、
発振用電界効果トランジスタのオン動作期間中に、シャント抵抗の電圧とともに、周期制御用コンデンサの充電電圧でオフ制御コンデンサを充電し、ドライバー素子が発振用電界効果トランジスタをターンオフさせるまでのオン動作期間を短縮制御することを特徴とする自励式スイッチング電源回路。
【請求項2】
直列に接続された周期制御用コンデンサと時定数抵抗は、第2帰還巻線と直流電源の低圧側端子間に、トランスの第2帰還巻線に発生するフライバック電圧で充電される出力制御用コンデンサと並列に接続され、
出力制御用コンデンサは、オン動作期間中に、設定電圧を超える出力電圧と設定電圧の差電圧に応じて、出力制御用コンデンサの充電電圧でオフ制御コンデンサを充電することを特徴とする請求項1に記載の自励式スイッチング電源回路。
【請求項3】
短絡回路は、周期制御用コンデンサの両側に直列に接続された一組の分圧抵抗と、周期制御用コンデンサの両側にコレクタとエミッタを、ベースを一組の分圧抵抗の分圧点に接続させたNPN型トランジスタとからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自励式スイッチング電源回路。
【請求項4】
短絡回路は、周期制御用コンデンサの両側に直列に接続された一組の分圧抵抗と、一組の分圧抵抗の分圧点にトリガ端子を接続させ、周期制御用コンデンサの両側に出力端子の両端をそれぞれ接続させたサイリスタ、もしくはトライアックからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自励式スイッチング電源回路。
【請求項5】
制御端子を有すると共にトランスの一次巻線に直列に接続されて前記トランスの帰還巻線に発生する電圧によって前記制御端子の電圧が閾値電圧に達するとオン動作し、オフ制御コンデンサの充電電圧により制御端子の電圧が閾値電圧未満に制御されるとオフ動作する発振用電界効果トランジスタからなるスイッチング素子により、前記トランスの一次側への電圧印加又はその遮断を制御し、前記トランスの二次側に電力を伝達して電圧出力を行うスイッチング電源装置の制御方法であって、
前記トランスの一次巻線に励磁電流を流さないオフ動作中には、スイッチング素子の一発振周期より充分に長い間隔で充電電圧が変化する周期制御用コンデンサを前記トランスの帰還巻線に発生するフライバック電圧で充電する一方で、前記トランスの一次巻線に励磁電流を流すオン動作中には、前記オフ制御コンデンサを前記周期制御用コンデンサの充電電圧で充電し、
前記周期制御用コンデンサの充電電圧によって前記オフ制御コンデンサの充電速度を変化させ、スイッチング素子の発振周期を変化させることを特徴とするスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項6】
前記周期制御用コンデンサの充電電圧によって前記オフ制御コンデンサの充電速度を加速し、スイッチング素子がオフ動作するまでのオン動作期間を短縮制御することを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−191795(P2012−191795A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54259(P2011−54259)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】