説明

自動トランスミッション液に適した摩擦調整剤としての、ヒドロキシ酸を含むアミン製品

【課題】自動トランスミッション液に適した摩擦調整剤としての、ヒドロキシ酸を含むアミン製品を提供すること。
【解決手段】潤滑用粘度の油と、式RN−C(O)R[式中、RおよびRは、少なくとも炭素原子6個のヒドロカルビル基であり、Rは、炭素原子1から6個のヒドロキシアルキル基、または前記ヒドロキシアルキル基を、そのヒドロキシル基を介してアシル化剤と縮合することによって形成する基である]によって表されるアミドと、窒素含有分散剤と、リン含有化合物とを含む本発明の組成物は、トランスミッションを潤滑するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本願は、2005年10月11日に出願された、米国仮特許出願第60/725,360号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、自動トランスミッション液、トラクション液、連続可変トランスミッション液(CVT)用の液、二段クラッチ自動トランスミッション液、農業用トラクター液、およびエンジン用潤滑剤などの液用の添加剤の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
重量を低減し、トランスミッション容量を増加したいという希望によって駆り立てられた速やかな技術変化が存在する自動トランスミッション市場では、改良されたクラッチ保持能力のための大きい静摩擦係数を示す自動トランスミッション液に対する希望が存在する。同時に、μ/V(摩擦係数対スライディング速度)曲線における正傾斜特性の保持を改良したい希望が存在する。これらの特性を定義するために使用されるより新しい試験が市場において存在する。静トルクは、Toyota SAE#2摩擦試験手順などの試験において測定することができ、正傾斜の保持は、μ/V曲線の傾斜が酸化性および機械的エージングの間に周期的に測定されるJASO LVFA (Japan Automotive Standards Organization, Low Velocity Friction Apparatus)のような手順によって測定することができる。
【0004】
特許、例えば、特許文献1には、この性能を実現するのに使用される1種類の摩擦調整剤技術が記載されている。大きい静摩擦係数と持続可能な正傾斜とを合わせた要求は、特許文献において極めて多く記載されている従来のATF摩擦調整剤技術と矛盾する場合が多い。通常使用されている摩擦調整剤の多くは、静摩擦係数が小さく、満足に使用できるほど十分に正傾斜が持続しない。正のmμ/Vまたは制震特性を保持するための技術を記載する追加の特許文献として、特許文献2が挙げられる。これらでは、金属洗剤および摩擦調整剤の組合せが用いられる場合がある。
【0005】
1985年4月23日登録のSchlichtらの特許文献3には、減摩剤として有用な、モノ−もしくはポリヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸および第一級もしくは第二級アミンから調製されるアミドが開示されている。
【0006】
2004年1月22日公開のAdamsらの特許文献4には、(a)カルボン酸をアミノアルコールと反応させることによって誘導され、少なくとも2つのヒドロカルビル基を含有する摩擦調整剤、および(b)自動トランスミッションにおいて良好な摩擦特性がもたらされる分散剤からなる液組成物が開示されている。
【0007】
特許文献5には、カルボン酸(または、その反応性均等物)をアミノアルコールと縮合させる;例えば、2モルのイソステアリン酸を1モルのトリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)と縮合させることによって調製され、多様なイミダゾリン、または、構造
【0008】
【化1】

[式中、RおよびRが、それぞれCHOCOR、CHOHまたはHを表す]
のオキサゾリンでよい、多様な生成物の少なくとも1つを含む潤滑油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,750,476号明細書
【特許文献2】米国特許第5,858,929号明細書
【特許文献3】米国特許第4,512,903号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/007652号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4,886,612号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、自動トランスミッションなどの機械デバイスにおいて使用するために、大きい静摩擦係数を取得し、摩擦系の酸化性および機械的ストレスの間持続可能な正傾斜を維持するための新規で、比較的簡単で安価な摩擦調整剤を開発するという課題を解決する。さらに、本発明の調合物は、良好な酸化安定性および低い銅腐食と合わせて、自動トランスミッション試験において良好な制震耐久性および摩擦安定性を示す。このことは、以下さらに詳細に説明するように、他の成分と組み合わせて、炭素原子が少なくとも6個の2つのアルキル基を有する第二級アミンとヒドロキシ酸もしくはヒドロキシチオ酸との縮合生成物を含む摩擦調整剤を使用することによって少なくとも部分的には実現される。該組成物は、他の用途の中でもとりわけ、トラクションドライブ、連続可変トランスミッション、二段クラッチトランスミッション、およびハイブリッド手動−自動トランスミッション、ならびにハイブリッドガソリン/電気自動車用のトランスミッションなどの多様なトランスミッションを含めての自動トランスミッションなどのトランスミッションを潤滑するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本発明は、(a)主要量の潤滑用粘度の油と、
(b)次式によって表されるアミドまたはチオアミドと、
N−C(X)R
[式中、Xは、OまたはSであり、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも炭素原子6個のヒドロカルビル基であり、Rは、炭素原子1から6個のヒドロキシアルキル基、または前記ヒドロキシアルキル基を、そのヒドロキシル基を介してアシル化剤と縮合することによって形成する基である]
(c)窒素含有分散剤と、
(d)リン含有化合物とを含み、但し、組成物が0.1重量%未満のジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有する、機械デバイスを潤滑するのに適した組成物を提供する。
【0012】
本発明は、トランスミッションに上記の組成物を供給するステップを含む、トランスミッションを潤滑するための方法をさらに提供する。
【0013】
本発明は、(a)濃縮物形成量の潤滑用粘度の油と、
(b)次式によって表されるアミドまたはチオアミドと、
N−C(X)R
[式中、Xは、OまたはSであり、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも炭素原子6個のヒドロカルビル基であり、Rは、炭素原子1から6個のヒドロキシアルキル基、または前記ヒドロキシアルキル基を、そのヒドロキシル基を介してアシル化剤と縮合することによって形成する基である]
窒素含有分散剤と、
リン含有化合物とを含み、但し、濃縮物が1重量%未満のジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有する、潤滑用粘度の油によって希釈することによって機械デバイス用潤滑剤を調製するのに適した濃縮物をさらに提供する。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
機械デバイスを潤滑するのに適した組成物であって、
(a)主要量の潤滑用粘度の油と、
(b)次式によって表されるアミドまたはチオアミドと、
N−C(X)R
[式中、Xは、OまたはSであり、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも炭素原子6個のヒドロカルビル基であり、Rは、炭素原子1から6個のヒドロキシアルキル基、または前記ヒドロキシアルキル基を、そのヒドロキシル基を介してアシル化剤と縮合することによって形成する基である]
(c)窒素含有分散剤と、
(d)リン含有化合物と
を含み、但し、該組成物が0.1重量%未満のジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有する、組成物。
(項目2)
およびRが、それぞれ独立に、炭素原子約8から約24個のアルキル基である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
およびRが、それぞれ独立に、2−エチルヘキシル基および炭素原子約10から約18個の基からなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目4)
が、2−エチルヘキシル基であり、Rが、炭素原子約10から約18個の基である、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記アミドまたはチオアミドのアミン部分RN−が、ジココアルキルアミン部分を含む、項目1に記載の組成物。
(項目6)
アミドまたはチオアミドのアミン部分RN−が、(2−エチルヘキシル)(水素化獣脂)アミン部分を含む、項目1に記載の組成物。
(項目7)
XがOである、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記アミドのカルボキシ部分−C(O)Rが、グリコール部分を含む、項目7に記載の組成物。
(項目9)
(b)の前記アミドまたはチオアミド量が、約0.05重量%から約10重量%である、項目1に記載の組成物。
(項目10)
(b)の前記アミドまたはチオアミド量が、約0.2重量%から約5重量%である、項目1に記載の組成物。
(項目11)
前記分散剤(c)が、ホウ素含有スクシンイミド分散剤を含む、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記分散剤(c)が、直接アルキル化法によって作製されるアシル化剤から調製される、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記分散剤(c)を無機リン化合物とさらに反応させる、項目11に記載の組成物。
(項目14)
前記分散剤または分散剤(複数)の量が、約0.1重量%から約10重量%である、項目1に記載の組成物。
(項目15)
前記リン含有化合物が、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、または任意のそのような酸のエステル;亜リン酸水素ジヒドロカルビル;ジチオリン酸ジヒドロカルビルエステル;チオリン酸トリヒドロカルビル;あるいは任意のそのような材料の塩を含む、項目1に記載の組成物。
(項目16)
前記リン含有化合物が、リン酸またはその塩を含む、項目1に記載の組成物。
(項目17)
複数のリン含有化合物が存在し、亜リン酸水素ジブチルおよびリン酸を含む、項目1に記載の組成物。
(項目18)
全リン含有量が、約0.01重量%から約0.30重量%である、項目1に記載の組成物。
(項目19)
洗剤、酸化防止剤、防食剤、シール膨潤剤、耐磨耗剤、消泡剤、粘度調整剤、および摩擦調整剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目20)
前記さらなる添加剤が、スルホランシール膨潤剤を少なくとも0.2重量%の量で含む、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記さらなる添加剤が、トリアゾール、ジメルカプトチアジアゾール、およびそれらの誘導体からなる群から選択される防食剤を含む、項目19に記載の組成物。
(項目22)
有機ホウ酸エステルおよび有機ホウ酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目23)
項目1に記載の成分を混合することによって調製される組成物。
(項目24)
機械デバイス用潤滑剤を調製するための潤滑用粘度の油による希釈に適した濃縮物であって
(a)濃縮物形成量の潤滑用粘度の油と、
(b)次式によって表されるアミドまたはチオアミドと、
N−C(X)R
[式中、Xは、OまたはSであり、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも炭素原子6個のヒドロカルビル基であり、Rは、炭素原子1から6個のヒドロキシアルキル基、または前記ヒドロキシアルキル基を、そのヒドロキシル基を介してアシル化剤と縮合することによって形成する基である]
(c)窒素含有分散剤と、
(d)リン含有化合物とを含み、但し、濃縮物が1重量%未満のジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有する、
濃縮物。
(項目25)
機械デバイスに項目1に記載の組成物を供給するステップを含む、機械デバイスを潤滑するための方法。
(項目26)
前記機械デバイスが、自動トランスミッションである、項目25に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
好ましい多様な特徴および実施形態が、非限定的例示によって以下で説明されるであろう。
【0015】
本発明の1成分は、潤滑剤組成物では主要な量において、あるいは濃縮物では濃縮物形成量において存在し得る潤滑用粘度の油である。適切な油として、天然および合成潤滑油、ならびにそれらの混合物が挙げられる。完全な調合潤滑剤では、潤滑用粘度の油は、一般に、主要な量(つまり、50重量%を超える量)において存在する。通常、潤滑用粘度の油は、組成物の75から95重量%の量において存在し、組成物の80重量%を超えることが多い。
【0016】
発明の潤滑剤および機能性液を作製するのに有用な天然油として、動物油;および植物油;ならびに、液体石油、および水素化分解および水素化仕上プロセスによってさらに精製し得るパラフィン、ナフテンもしくはパラフィン−ナフテン混合型の溶媒処理もしくは酸処理鉱物性潤滑油などの鉱物性潤滑油が挙げられる。
【0017】
合成潤滑油として、ポリアルファオレフィンとも呼ばれる重合およびインター重合したオレフィンなどの炭化水素油およびハロ置換炭化水素油;ポリフェニル;アルキル化ジフェニルエーテル;アルキル−もしくはジアルキルベンゼン;および硫化アルキル化ジフェニル;ならびにそれらの誘導体、類似体および同族体が挙げられる。アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、ならびに末端ヒドロキシル基がエステル化もしくはエーテル化によって修飾されている場合もあるそれらの誘導体もまた挙げられる。ジカルボン酸と多様なアルコールのエステル、またはC5からC12モノカルボン酸とポリオールもしくはポリオールエーテルから作製されるエステルもまた挙げられる。他の合成油として、ケイ素系油、リン含有酸の液体エステル、および重合テトラヒドロフランが挙げられる。
【0018】
天然もしくは合成いずれかの非精製、精製、および再精製油は、本発明の潤滑剤において使用し得る。非精製油は、さらなる精製処理をすることなく天然もしくは合成供給源から直接得られる油である。精製油は、1つもしくは複数の精製ステップにおいてさらに処理することによって1つもしくは複数の特性が改良されている。これらは、例えば、水素化することができ、酸化に対する安定性が改良された油がもたらされる。
【0019】
一実施形態では、潤滑用粘度の油は、合成油を含めての、APIグループII、グループIII、グループIV、またはグループV油、あるいはそれらの混合物である。これらは、API Base Oil Interchange−ability Guidelinesによって確立された分類である。グループIIとグループIII油はともに、<0.03%のイオウおよび>99%の飽和物を含有する。グループII油は、80から120の粘度指数を有し、グループIII油は、>120の粘度指数を有する。ポリアルファオレフィンは、グループIVに分類される。油は、スラックワックスまたはフィッシャー−トロプシュ合成ワックスなどのワックスを水素異性化することによって誘導される油でもよい。グループVは、「他の全て」を包含する(>0.03%のSおよび/または<90%の飽和物を含有し、80から120の粘度指数を有するグループIを除いて)。
【0020】
潤滑用粘度の油は、様々な型の油の混合物を含んでもよい。一実施形態では、潤滑用粘度の油の少なくとも50重量%が、ポリアルファオレフィン(PAO)である。通常、ポリアルファオレフィンは、4から30個、または4から20個、または6から16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。有用なPAOの例として、1−デセンから誘導されるものが挙げられる。これらのPAOは、100℃で1.5から150mm/s(cSt)の粘度を有してもよい。PAOは、通常、水素化材料である。
【0021】
本発明の油は、単一粘度範囲の油、または高粘度および低粘度範囲の油の混合物を包含し得る。本発明の油は、異なる型の油の混合物を含んでもよい。好ましい実施形態では、油は、1もしくは2から8もしくは10mm/sec(cSt)の100℃動粘度を示す。全体の潤滑剤組成物は、油および他の成分を使用して、100℃での粘度が1もしくは1.5から10もしくは15もしくは20mm/secになり、−40℃でのブルックフィールド粘度(ASTM−D−2983)が、20もしくは15Pa−s(20,000cPもしくは15,000cP)未満、好ましくは10Pa−s未満、さらに5未満になるように調合し得る。
【0022】
成分(b)は、摩擦調整剤として働きことができ、第二級アミンとヒドロキシ酸もしくはチオ酸(以下に説明)との縮合生成物と見ることができるアミドまたはチオアミド(少なくとも1個のアミドまたはチオアミド)である。アミンは、置換ヒドロカルビル基、例えば、アルキル基を含有するであろう。アミンは、次式によって表すことができ、
NH
式中、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも炭素原子6個のヒドロカルビル基である(例えば、6から30個の炭素原子、または8から24個の炭素原子、または10から20、または10から18、または12から16)。RおよびR基は、直鎖もしくは分枝でも、飽和もしくは不飽和でも、脂肪族、芳香族、または脂肪族と芳香族の混合でもよい。ある種の実施形態では、RおよびR基は、アルキル基、特に直鎖アルキル基である。RおよびR基は、同じでも、異なっていてもよい。適切なアミンの市販の例は、商標Armeen 2C(登録商標)で販売されており、2つのC12アルキル基を有すると考えられている。一実施形態では、アミンは、ジココアルキルアミンもしくは同族アミンを含む。ジココアルキルアミン(またはジココアミン)は、ココナツ油から誘導され、上式中の2つのR基が、主としてC12基(ある量のC8からC18も一般に存在するが)である第二級アミンである。ある種の実施形態では、基RとRの双方のうち1つは、2−エチルヘキシル基でよい。一実施形態では、アミドまたはチオアミドのアミン部分RN−は、(2−エチルヘキシル)(水素化獣脂)アミン部分を含み、「水素化獣脂」部分は、主としてC18基を有する獣脂から誘導される。市販のジアルキルアミンは、ある量のモノアルキルアミンおよび/またはトリアルキルアミンを含有するであろうし、かかる市販の材料から形成される生成物は、本発明の範囲内であることが企図される(いかなるトリアルキルアミン成分もアミドを形成するほどの反応性はないであろうと予想されることを認識しながら)ことが理解されよう。
【0023】
本発明のアミドまたはチオアミドは、上記のアミンとヒドロキシ酸もしくはヒドロキシチオ酸またはそれらの反応性均等物との縮合生成物である。XがOである場合では、アミドは、式RCOOHによって表し得るヒドロキシ酸の誘導体である。ヒドロキシ酸(もしくは、場合によっては、ヒドロキシチオ酸)では、Rは、炭素原子1から6個のヒドロキシアルキル基、またはそのようなヒドロキシアルキル基を、そのヒドロキシル基を介してアシル化剤(これには、イオウ含有アシル化剤が含まれてもよい)と縮合させることによって形成される基である。つまり、R上の−OH基は、それ自体潜在的に反応性であり、追加の酸性材料、またはその反応性均等物と縮合することによって、例えば、エステルを形成し得る。したがって、ヒドロキシ酸は、例えば、グリコール酸などの酸の1つもしくは複数の追加の分子と縮合し得る。適切なヒドロキシ酸の例は、グリコール酸、つまり、ヒドロキシ酢酸、HO−CH−COOHである。グリコール酸は、実質的に純粋な形態または70%水溶液いずれかで容易に入手可能である。Rが、1を超える炭素原子を含有する場合、ヒドロキシ基は、1番目の炭素(α)または鎖中の他の炭素(例えば、βもしくはω)上に存在し得る。炭素鎖自体は、直鎖、分枝、または環式でよい。
【0024】
本発明の組成物中の成分(b)の量は、一般に、自動トランスミッションにおける震動、つまり、トランスミッション液の摩擦特性のバランスが不適切である場合、シフト中に観測される性能欠陥を低減もしくは抑制するのに適した量である。有効な量は、最終液調合物の0.05から10.0重量%である。他の量として、0.07重量%から5重量%、または0.1重量%から3重量%、または0.1重量%から2重量%、または0.5重量%から1.5重量%、または0.2重量%から5重量%、または0.5重量%から5重量%でよい。濃縮物では、量は、比例してより大きいであろう。
【0025】
成分(c)は、窒素含有分散剤(少なくとも1つの窒素含有分散剤)である。一部の摩擦調整剤(b)の一部が、何らかの分散剤特性を示す場合には、成分(c)は、「(b)種以外」として記述し得る。窒素含有分散剤の例は、以下の米国特許第3219666号、第3316177号、第3340281号、第3351552号、第3381022号、第3433744号、第3444170号、第3467668号、第3501405号、第3542680号、第3576743号、第3632511号、第4234435号、第Re26433号、および第6165235号を含めての多数の米国特許において記載されている。
【0026】
窒素含有分散剤の一種類であるスクシンイミド分散剤は、ヒドロカルビル置換無水コハク酸(または酸、酸ハロゲン化物、もしくはエステルなどのその反応性均等物)を上記したようなアミンと反応させることによって調製する。ヒドロカルビル置換基は、一般に、平均、少なくとも8、または20、または30、または35個から最高350まで、または200まで、または100個までの炭素原子を含有する。一実施形態では、ヒドロカルビル基は、ポリアルケンから誘導される。そのようなポリアルケンは、少なくとも500のMn(数平均分子量)によって特徴づけることができる。一般に、ポリアルケンは、500、または700、または800、または900個から最高5000まで、または2500まで、または2000まで、または1500個までのMnによって特徴づけられる。他の実施形態では、Mnは、500、または700、または800から1200、または1300まで変動する。一実施形態では、多分散性(Mw/Mn)は、少なくとも1.5である。
【0027】
ポリアルケンとして、2から16まで、または6まで、または4個までの炭素原子の重合可能なオレフィンモノマーのホモポリマーおよびインターポリマーが挙げられる。オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、および1−オクテンなどのモノオレフィン;または、1,3−ブタジエンおよびイソプレンなどのジオレフィンモノマーなどのポリオレフィンモノマーでよい。一実施形態では、インターポリマーはホモポリマーである。ポリマーの例はポリブテンである。一例では、約50%のポリブテンが、イソブチレンから誘導される。ポリアルケンは、通常の手順によって調製し得る。
【0028】
一実施形態では、コハク酸アシル化剤は、ポリアルケンを過剰の無水マレイン酸と反応させて置換コハク酸アシル化剤を得ることによって調製し、置換基のそれぞれの当量重量に対するスクシニル基の数は、少なくとも1.3、例えば、1.5、または1.7、または1.8である。置換基当りのスクシニル基の最大数は、一般に、4.5、または2.5、または2.1、または2.0を超えないであろう。置換基がそのようなポリオレフィンから誘導される置換コハク酸アシル化剤の調製および使用は、米国特許第4234435号において記載されている。
【0029】
置換コハク酸アシル化剤は、いわゆる「塩素」ルート、またはいわゆる「熱」もしくは「直接アルキル化」ルートによって調製し得る。これらのルートは、米国特許出願公開第2005−0202981号のパラグラフ0014から0017に詳細に記載されている。直接アルキル化または低塩素ルートも米国特許第6077909号に記載されており、カラム6ライン13からカラム7ライン62、およびカラム9ライン10からカラム10ライン11を参照されたい。例示的な熱もしくは直接アルキル化プロセスは、不活性雰囲気下でポリオレフィンを無水マレイン酸とともに通常180から250℃で加熱するステップを含む。いずれかの反応剤が過剰でもよい。無水マレイン酸が、過剰に存在する場合、過剰分は、反応後蒸留によって除去し得る。これらの反応では、ポリオレフィンとして、耐熱ビニリデンポリイソブチレン、つまり、>75%のビニリデン終端基(αおよびβ異性体)を用いてよい。
【0030】
置換コハク酸アシル化剤は、上記のようなアミンを含めてアミンと通常反応させることによってスクシンイミド分散剤を形成する。より一般的には、アミンは、モノ−もしくはポリアミンでよい。モノアミンは、一般に、1から24個の炭素原子、または1から12個の炭素原子を含有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有する。モノアミンの例として、脂肪族(C8〜30)アミン、第一級エーテルアミン、第三級脂肪族第一級アミン、ヒドロキシアミン(第一級、第二級、または第三級アルカノールアミン)、エーテルアミン、N−(ヒドロキシヒドロカルビル)アミン、およびヒドロキシヒドロカルビルが挙げられる。ポリアミンとして、アルコキシル化ジアミン、脂肪族ジアミン、アルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのエチレンポリアミン)、ヒドロキシ含有ポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、縮合ポリアミン(少なくとも1つのヒドロキシ化合物と、少なくとも1つの第一級もしくは第二級アミノ基を含有する少なくとも1つのポリアミン反応剤との間の縮合反応)、および複素環式ポリアミンが挙げられる。アミン蒸留器ボトムと呼ばれる重質アミン生成物も挙げられる。有用なアミンとして、米国特許第4234435号(Meinhart)および米国特許第5230714号(Steckel)において開示されたアミンが挙げられる。
【0031】
アシル化剤と反応することによって分散剤を形成するアミンの量は、通常、CO:Nのモル比1:2から1:0.75を与える量である。アミンが第一級アミンである場合、イミドまでの完全な縮合が起り得る。アミド酸などの様々な量のアミド生成物も存在してよい。反応がむしろアルコールとの場合、生成分散剤は、エステル分散剤であろう。アミン官能基とアルコール官能基の双方が、別々の分子においてでも、同じ分子においてでも(上記の縮合アミンの場合と同様に)いずれにおいても存在する場合、アミド、エステルおよびおそらくはイミドの官能基の混合物が存在し得る。これらは、いわゆるエステル−アミド分散剤である。
【0032】
「アミン分散剤」は、ポリアルキレンポリアミンなどの、比較的高分子量の脂肪族もしくは脂環式ハロゲン化物とアミンとの反応生成物である。それらの例は、以下の米国特許第3275554号、第3438757号、第3454555号、および第3565804号において記載されている。
【0033】
「マンニッヒ分散剤」は、アルキル基が通常少なくとも30個の炭素原子を含有するアルキルフェノールと、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)と、アミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。以下の米国特許:第3036003号、第3236770号、第3414347号、第3448047号、第3461172号、第3539633号、第3586629号、第3591598号、第3634515号、第3725480号、第3726882号、および第3980569号において記載された材料が例示的である。
【0034】
後処理分散剤も、本発明の一部である。後処理分散剤は、一般に、スクシンイミド、アミン、またはマンニッヒ分散剤を、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸(テレフタール酸など)もしくは無水物(無水マレイン酸など)、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ酸などのホウ素化合物(ホウ素含有分散剤または「ホウ素化分散剤」が得られるための)、リン化合物(具体的に、無機のリンの酸、またはその金属もしくはアミン塩、例えば、リン酸や亜リン酸などのリンの酸もしくは無水物)、または2,5−ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)などの試薬と反応させることによって得られる。この種の材料の例は、以下の米国特許:第3200107号、第3282955号、第3367943号、第3513093号、第3639242号、第3649659号、第3442808号、第3455832号、第3579450号、第3600372号、第3702757号、および第3708422号において記載されている。
【0035】
分散剤の混合物も使用し得る。本発明の組成物中の成分(c)の量は、一般に、0.3から10重量%である。他の実施形態では、成分(c)の量は、最終のブレンド液調合物の0.5から7%、または1から5%である。濃縮物では、量は、比例して、より多いであろう。
【0036】
本発明の他の成分は、無機もしくは有機の(少なくとも1つの)リン含有化合物である。
【0037】
これは、リンの酸、リンの酸の塩、リンの酸のエステルまたはイオウ含有類似体を含めてのそれらの誘導体でよい。リンの酸、塩、エステル、またはそれらの誘導体として、リン酸、亜リン酸、それらのリンの酸のエステルもしくは塩、ホスファイト、リン含有アミド、リン含有カルボン酸もしくはエステル、リン含有エーテル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
一実施形態では、リン化合物は、有機もしくは無機のリンの酸、リンの酸のエステル、リンの酸の塩、またはそれらの誘導体でよい。リンの酸として、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびジチオリン酸を含めてのチオリン酸、ならびにモノチオリン酸、チオホスフィン酸、およびチオホスホン酸が挙げられる。任意のこれらのリン含有化合物は、金属塩またはアミン塩の形態でもよい。リン化合物の1つの群は、次式で表されるようなアルキルリン酸モノアルキル第一級アミン塩であり、
【0039】
【化2】

式中、R、R、Rは、アルキルまたはヒドロカルビル基であり、あるいはRおよびRの1つはHでよい。材料は、ジアルキルおよびモノアルキルリン酸エステルもしくはそれらの塩の1:1混合物でよい。この型の化合物は、米国特許第5354484号において記載されている。
【0040】
有機リンの酸として、ホスホン酸およびホスフィン酸も挙げられる。
【0041】
一実施形態では、リン材料は、リン酸アルキル(または、脂肪族アルキルの場合もある)、または一般に式(RO)PHOである亜リン酸アルキル(または、脂肪族アルキルの場合もある)のうちの1つでよい。前式で示されたような亜リン酸ジアルキルは、式(RO)(HO)PHOの少量の亜リン酸モノアルキルとともに存在する場合が多く、Rは、通常、アルキル基である。ある種の実施形態では、ホスファイトは、ホスファイトを実質的に親油性にするのに十分長いヒドロカルビル基を有するであろう。一部の実施形態では、ヒドロカルビル基は、実質的に非分枝である。適切な多数のホスファイトは、市販されており、米国特許第4752416号に記載されているのと同様に合成し得る。ある種のホスファイトは、脂肪族基のそれぞれにおいて12から22、または16から20個の炭素原子などのR基のそれぞれにおいて8から24個の炭素原子を含有する。一実施形態では、脂肪ホスファイトは、オレイル基から形成することができ、したがって、脂肪族基のそれぞれにおいて18個の炭素原子を有する。
【0042】
適切な他のリン材料として、本明細書の別の場所にあるように、リン酸のオレイルおよび他の長鎖エステルのアミンとの塩などの、アルキルリン酸のアミン塩が挙げられる。この点に関して有用なアミンは、商標Primene(登録商標)で販売されている第三級脂肪族第一級アミンである。その他として、ジヒドロカルビルジチオリン酸エステル、チオリン酸トリヒドロカルビル、または任意の前記酸性リン材料の塩が挙げられる。
【0043】
一実施形態では、85%リン酸が用いられる。ある種の実施形態では、複数のリン化合物が存在している。そのようなものの例として、亜リン酸水素ジブチルとリン酸の組合せが挙げられる。
【0044】
リン含有化合物は、ある種の実施形態では、成分(c)、窒素含有分散剤とは別個で異なる成分を含むであろう。しかし、窒素含有分散剤を、無機リン化合物と反応させるある種の実施形態では、リン含有分散剤は、リン含有化合物(d)として数え得る。他の実施形態では、(c)の任意のリン含有分散剤に加えて、それとは異なる、追加で別個のリン含有化合物(d)が存在するであろう。
【0045】
本発明の組成物中におけるリン含有化合物もしくはリン含有化合物(複数)の量は、ある種の実施形態では、0.01から2重量%、あるいは、0.02から1、または0.05から0.5重量%でよい。したがって、組成物のリンの全含有量は、当然のことながら、選択される特定の化合物のリン含有量に応じて、例えば、0.01から0.3重量%、または0.003もしくは0.03から0.20重量%、または0.05から0.15重量%でよい。
【0046】
しかし、本発明の組成物は、0.1重量%以下のジアルキルジチオリン酸亜鉛、または一部の実施形態では、より一般的に、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDPと呼称される場合もある)、つまり、ジアルキルジチオリン酸の亜鉛塩を含有するであろう。かかる材料は、次式で表すことができ、
【0047】
【化3】

式中、RおよびRは、それぞれ独立に、3から20個の炭素原子、または3から16もしくは3から12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアルカリール基などのヒドロカルビル基である。それらは、通常、第二級アルコールと第一級アルコールの混合物、例えば、イソプロパノールと4−メチル−2−ペンタノールの混合物でよいアルコールROHとROHの1つもしくは混合物を、五硫化リンと反応させることにより酸を得た後、酸化亜鉛で中和することによって調製する。ZDPは、潤滑剤業界では極めてよく知られており、潤滑剤に、耐磨耗、耐スカッフィング、防食、および酸化防止特性を含めた多様な特性を賦与するために非常に広範に使用されている。しかし、ZDPは、望ましくない場合もある。というのは、ZDPは、加水分解または熱に不安定である場合があり、クラッチ板操作を妨害し得る分解生成物の形成、および時間の経過に伴う性能の全般的な劣化がもたらされることがある。さらに、Zn含有量の低減などの金属含有量の低減した潤滑剤を提供することは、環境的に望ましい場合がある。したがって、本発明は、ZDPを含まない、またはZDPを実質的に含まない場合であっても、許容可能な性能を示す潤滑剤組成物を提供するものである。「ZDPを実質的に含まない」とは、調合物が、いかなるZDPをも意図的に添加することなく、あるいは、非常に少量のZDPの添加で調製されることを意味する。例えば、調合物は、0.001から0.1%、または0.005から0.05%などの0.1重量%未満のZDPを含有し得る。ある種の実施形態では、調合物は、いかなる種類の亜鉛化合物をも実質的に含まない、したがって、例えば、0.05重量%未満のZn、または0.0005から0.03%、または0.001から0.01、または0.0001から0.005%、またはそれ未満のZnを含有する。
【0048】
組成物が、濃縮物の形態である場合、多様な成分の相対的な量は、比例的に増加し、例えば、10倍(潤滑用粘度の油は除かれ、それは対応して減少するであろう)増加するであろう。この場合、最高1%、または0.5、または0.3、または0.1%までなどの対応して増加した量のZDPが、濃縮物では許容し得る。
【0049】
特にトランスミッション液、および自動トランスミッション液(ATF)において通常用いられる他の成分は、本調合物において通常存在してよい。
【0050】
使用される場合が多い一成分は、粘度調製剤である。粘度調製剤(VM)および分散粘度調製剤(DVM)はよく知られている。VMおよびDVMの例は、ポリメタクリラート、ポリアクリラート、ポリオレフィン、スチレン−マレイン酸エステルコポリマー、ならびにホモポリマー、コポリマー、およびグラフトコポリマーを含めての類似のポリマー物質である。
【0051】
市販のVM、DVM、およびそれらの化学的なタイプの例として、以下のもの:ポリイソブチレン(BP AmocoからのIndopol(登録商標)またはExxonMobilからのParapol(登録商標)など);オレフィンコポリマー(LubrizolからのLubrizol(登録商標)7060、7065、および7067、ならびにUniroyalからのTrilene(登録商標) CP−40およびCP−60など);水素化スチレン−ジエンコポリマー(ShellからのShellvis(登録商標)40および50、ならびにLubrizolからのLZ(登録商標) 7341、7351、および7441など);分散コポリマーであるスチレン/マレアートコポリマー(LubrizolからのLZ(登録商標)3702、3715、および3703など);その一部が分散特性を有するポリメタクリラート(RohMaxからのAcryloid(登録商標)およびViscoplex(登録商標)シリーズ、TexacoからのTLA(登録商標)シリーズ、ならびにLubrizolからのLZ(登録商標)7702およびLZ(登録商標)7720中のものなど);オレフィングラフト−ポリメタクリラートポリマー(Rohm GmbHからのViscoplex(登録商標)2−500および2−600など);ならびに水素化ポリイソプレン星型ポリマー(ShellからのShellvis(登録商標)200および260)が、挙げられる。粘度調整剤の最近の概要は、米国特許第5157088号、第5256752号、および第5395539号において知り得る。VMおよび/またはDVMは、最高15重量%の濃度で完全調合組成物中に組み込まれる。適切な量として、1から12%、または3から10%が挙げられる。
【0052】
本発明において使用される組成物で使用し得る他の成分は、補助摩擦調整剤である。摩擦調整剤は、当業者にはよく知られている。摩擦調整剤の有用なリストは、米国特許第4792410号中に含まれている。米国特許第5110488号には、摩擦調整剤として有用な、脂肪酸の金属塩および特に亜鉛塩が開示されている。摩擦調整剤のリストには、(a)ホウ素化脂肪族エポキシド
(b)脂肪族エポキシド
(c)ホウ素化アルコキシル化脂肪族アミン
(d)アルコキシル化脂肪族アミン
(e)脂肪族アミン
(f)ホウ素化グリセロールエステル
(g)グリセロールエステル
(h)脂肪酸の金属塩
(i)脂肪酸アミド
(j)脂肪族イミダゾリン
(k)カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物
(l)硫化オレフィン
(m)サリチル酸アルキルの金属塩
およびそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
これらの種類の摩擦調整剤のそれぞれの代表物は、周知であり、市販されている。例えば、ホウ素化脂肪族エポキシドは、カナダ国特許第1188704号から分かる。これらの油溶性ホウ素含有組成物は、80℃から250℃の温度でホウ酸もしくは三酸化ホウ素を次式を有する脂肪族エポキシドの
【0054】
【化4】

少なくとも1つと反応させることによって調製し、式中、R、R、R、およびR4のそれぞれは、水素、または脂肪族基であるか、あるいは、それらの任意の2つが、それらが結合しているエポキシ炭素原子もしくは炭素原子(複数)と一緒に、環式基を形成する。脂肪族エポキシドは、好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を含有する。
【0055】
ホウ素化脂肪族エポキシドは、2つの材料の反応を含む、それらを調製するための方法によって特徴づけることができる。これらの材料の第1、試薬Aは、三酸化ホウ素、または、メタホウ酸(HBO)、正ホウ酸(HBO)、および四ホウ酸(H)を含めての多様な形態のホウ酸の任意のものでよい。ホウ酸、特に正ホウ酸が好ましい。試薬Bは、上式を有する脂肪族エポキシドの少なくとも1つでよい。式において、R基のそれぞれは、水素、または脂肪族基である場合が最も多く、少なくとも1つが、少なくとも6個の炭素原子を含有するヒドロカルビルもしくは脂肪族基である。試薬Aと試薬Bのモル比は、一般に1:0.25から1:4である。1:1から1:3の比が好ましく、約1:2が特に好ましい比である。ホウ素化脂肪族エポキシドは、2つの試薬を単にブレンドし、80から250℃、好ましくは100から200℃の温度で、反応が行われるのに十分な時間それらを加熱することによって調製し得る。所望であれば、反応は、実質的に不活性で、通常液体の有機希釈剤の存在下で行ってよい。反応中、水が発生し、それは、蒸留によって除去し得る。
【0056】
上記の「試薬B」に対応する(b)非ホウ素化脂肪族エポキシドは、摩擦調整剤としても有用である。
【0057】
ホウ素化アミンは、一般に、米国特許第4622158号から分かる。ホウ素化アミン摩擦調整剤((c)ホウ素化アルコキシル化脂肪族アミンを含めて)は、好都合には、上記のようなホウ素化合物を対応するアミンと反応させることによって調製する。アミンは、単純な脂肪族アミン、またはヒドロキシ含有第三級アミンでよい。ホウ素化アミンは、上記のようなホウ素反応剤をアミン反応剤に添加し、50から300℃、好ましくは100℃から250℃または150℃から230℃で生成混合物を撹拌しながら加熱することによって調製し得る。反応混合物からの副生水の発生が停止し、反応が完了したことが示されるまで、反応を継続する。
【0058】
ホウ素化アミンを調製する際に有用であるアミンの中でも、商標「ETHOMEEN」によって知られ、Akzo Nobelから入手可能である市販のアルコキシル化脂肪族アミンが存在する。これらのETHOMEEN(登録商標)材料の代表的な例は、ETHOMEEN(登録商標)C/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−ココアミン);ETHOMEEN(登録商標)C/20(ポリオキシエチレン[10]ココアミン);ETHOMEEN(登録商標)S/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]ソイアミン);ETHOMEEN(登録商標)T/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−獣脂アミン);ETHOMEEN(登録商標)T/15(ポリオキシエチレン−[5]獣脂アミン);ETHOMEEN(登録商標)0/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オレイルアミン);ETHOMEEN(登録商標)18/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オクタデシルアミン);およびETHOMEEN(登録商標)18/25(ポリオキシエチル−エン[15]オクタデシルアミン)である。脂肪族アミンおよびエトキシル化脂肪族アミンも、米国特許第4741848号において記載されている。
【0059】
(d)アルコキシル化脂肪族アミン、および(e)脂肪族アミンそれ自体(オレイルアミンなど)は、本発明における摩擦調整剤として一般に有用である。そのようなアミンは、市販されている。
【0060】
グリセロールのホウ素化脂肪酸エステルと非ホウ素化脂肪酸エステルはともに、摩擦調整剤として使用し得る。(f)グリセロールのホウ素化脂肪酸エステルは、グリセロールの脂肪酸エステルをホウ酸によりホウ素化し、反応水を除去することによって調製する。好ましくは、それぞれのホウ素が、反応混合物中に存在する1.5から2.5個のヒドロキシル基と反応することになるように十分なホウ素が存在する。反応は、メタノール、ベンゼン、キシレン、トルエン、または油などの任意の適切な有機溶媒の存在なし、もしくはありで、60℃から135℃の範囲の温度で実施し得る。
【0061】
(g)グリセロールの脂肪酸エステル自体は、当業者によく知られた多様な方法によって調製し得る。モノオレイン酸グリセロールおよび獣脂酸グリセロールなどの多数のこれらのエステルは、工業規模で製造されている。有用なエステルは、油溶性であり、好ましくは、天然生成物において見られ、以下でより詳細に説明されるようなC8からC22脂肪酸もしくはそれらの混合物から調製する。モノ−およびジエステルの混合物も使用し得るが、グリセロールの脂肪酸モノエステルが好ましい。例えば、市販のモノオレイン酸グリセロールは、45%から55重量%のモノエステルと55%から45%のジエステルの混合物を含有してもよい。
【0062】
脂肪酸は、上記のグリセロールエステルを調製する際に使用し得る;それらは、それらの(h)金属塩、(i)アミド、および(j)イミダゾリンを調製する際にも使用し得、いずれも摩擦調整剤としても使用し得る。好ましい脂肪酸は、6から24個、好ましくは8から18個の炭素原子を含有するものである。酸は、分枝もしくは直鎖でも、飽和もしくは不飽和でもよい。適切な酸として、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、およびリノレン酸、ならびに天然生成物としての獣脂、パーム油、オリーブ油、落花生油、コーン油、および牛脚油からの酸が挙げられる。特に好ましい酸は、オレイン酸である。好ましい金属塩として、亜鉛およびカルシウム塩が挙げられる。例は、塩基過剰カルシウム塩、および一般式、Znオレアートで表し得るオレイン酸−亜鉛塩塩基性複合体である。好ましいアミドは、アンモニア、または第一級アミン、またはジエチルアミンおよびジエタノールアミンなどの第二級アミンとの縮合によって調製されるものである。脂肪イミダゾリンは、酸と、ジアミン、またはポリエチレンポリアミンなどのポリアミンとの環式縮合生成物である。イミダゾリンは、一般に以下の構造式によって表され、
【0063】
【化5】

式中、Rは、アルキル基であり、R’は、水素、または、ヒドロカルビル基、またはその一部分として−(CHCHNH)−を含んでもよい置換ヒドロカルビル基である。好ましい実施形態では、摩擦調整剤は、C8からC24脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、特にイソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンの生成物である。カルボン酸とポリアルキレンアミン(k)の縮合生成物は、一般に、イミダゾリン、またはアミドであり得る。
【0064】
硫化オレフィン(I)は、摩擦調整剤として使用されるよく知られた市販の材料である。特に好ましい硫化オレフィンは、米国特許第4957651号および第4959168号の詳細な教示に従って調製されるものである。(1)少なくとも1つの、多価アルコールの脂肪酸エステル、(2)少なくとも1つの脂肪酸、(3)少なくとも1つのオレフィン、および(4)少なくとも1つの、一価アルコールの脂肪酸エステルからなる群から選択される2つ以上の反応剤の共硫化混合物が、それらの特許中に記載されている。
【0065】
反応剤(3)、オレフィン成分は、少なくとも1つのオレフィンを含む。このオレフィンは、好ましくは、4から40個の炭素原子、好ましくは8から36個の炭素原子を通常含有するであろう脂肪族オレフィンである。末端オレフィン、またはアルファオレフィンが好ましく、特に12から20個の炭素原子を有するものが好ましい。これらのオレフィンの混合物が、市販されており、こうした混合物は、本発明での使用が企図されている。
【0066】
2つ以上の反応剤の共硫化混合物は、適切な反応剤の混合物をイオウ供給源と反応させることによって調製する。硫化するべき混合物は、10から90重量部の反応剤(1)、または0.1から15重量部の反応剤(2);または10から90重量部、しばしば15から60重量部、よりしばしば25から35重量部の反応剤(3)、または10から90重量部の反応剤(4)を含有し得る。本発明における混合物は、反応剤(3)と、反応剤(1)、(2)、および(3)として識別される反応剤の群の少なくとも1つの他のメンバーとを含む。硫化反応は一般に、撹拌を伴う高温で、任意選択で不活性雰囲気および不活性溶媒の存在下で行われる。本発明の方法において有用な硫化剤として、元素イオウ(これが好ましい)、硫化水素、ハロゲン化イオウと硫化ナトリウム、および硫化水素とイオウもしくは二酸化イオウの混合物が挙げられる。通常、オレフィン結合モル当り0.5から3モルのイオウを用いる場合が多い。
【0067】
サリチル酸アルキルの金属塩(m)として、長鎖(例えば、C12からC16)アルキル置換サリチル酸のカルシウムおよび他の塩が挙げられる。
【0068】
補助摩擦調整剤が、成分(b)に加えて使用し得る。仮に存在する場合、補助摩擦調整剤の量は、一般に、潤滑組成物の0.1から1.5重量%、好ましくは0.2から1.0、または0.25から0.75重量%でよい。しかし、一部の実施形態では、補助摩擦調整剤の量は、0.2重量%未満、または0.1重量%未満、例えば、0.01から0.1重量%で存在する。
【0069】
本発明の組成物は、洗剤をも含み得る。本明細書で使用される洗剤は、有機酸の金属塩である。洗剤の有機酸部分は、スルホナート、カルボキシラート、フェナート、サリチラートである。洗剤の金属部分は、アルカリもしくはアルカリ土類金属である。適切な金属として、ナトリウム、カルシウム、カリウム、およびマグネシウムが挙げられる。通常、洗剤は、塩基過剰であり、塩基過剰とは、中性の金属塩を形成するのに必要とされるよりも化学量論的に過剰の金属塩基が存在することを意味する。
【0070】
適切な塩基過剰有機塩として、実質的に親油性の特徴を有し、有機材料から形成されるスルホナート塩が挙げられる。有機スルホナートは、潤滑剤および洗剤の技術分野においてよく知られた材料である。スルホナート化合物は、平均10から40個の炭素原子、例えば、平均12から36個の炭素原子、または平均14から32個の炭素原子を含有してもよい。同様に、フェナート、サリチラート、およびカルボキシラートも、実質的に親油性の特徴を有する。
【0071】
本発明では、炭素原子が、芳香族かパラフィン系構成かいずれかであることが可能であるが、通常、アルキル化芳香族が用いられることになろう。通常、ベンゼン部分が使用されるが、ナフタレン系の材料も用い得る。
【0072】
ある種の実施形態では、洗剤は、モノアルキル化ベンゼンなどの塩基過剰のモノスルホン化アルキル化ベンゼンである。通常、アルキルベンゼン画分は、蒸留器のボトム供給源から得られ、モノ−もしくはジアルキル化されている。モノアルキル化芳香族が特に適していると本発明では考えられる。
【0073】
モノアルキル化芳香族(ベンゼン)の混合物を利用することによって本発明におけるモノアルキル化塩(ベンゼンスルホナート)を得るならばそれは望ましい。相当な部分の組成物が、アルキル基の供給源としてのプロピレンポリマーを含む混合物によって、塩の溶解性が助けられる。モノ官能性(例えば、モノスルホン化)材料を使用することによって、分子の架橋が防止され、潤滑剤由来の塩の沈殿が低減する。
【0074】
ある種の実施形態では、塩は「塩基過剰」である。塩基過剰とは、塩のアニオンを中和するのに要するよりも化学量論的に過剰の金属塩基が存在するであろうことを意味する。塩基過剰であることに由来する過剰の金属は、潤滑剤中に発生する場合がある酸を中和するという効果を有する。第2の利点は、塩基過剰塩が、動摩擦係数を上昇させることである。通常、過剰の金属塩基は、アニオンを中和するのに要する量より多く存在し、当量基準において、5:1から18:1などの最高30:1までの比で存在するであろう。
【0075】
組成物において利用される塩基過剰塩の量は、通常、油を含まない基準に対して、0.1から1.0重量%などの通常0.025から3重量%である。しかし、低灰(低金属含有量)組成物を所望する場合、塩基過剰塩は、0.01から0.1もしくはそれ未満などのより少ない量において存在してよく、あるいは、除外してもよい(実質的に含まれない)。塩基過剰塩は、通常、油を含まない基準に対して、TBN範囲が10〜600である油を約50%補給される。ホウ素化および非ホウ素化塩基過剰洗剤は、米国特許第5403501号および第4792410号に記載されているように、適している。
【0076】
他の材料は、それらが、上記の要求された成分もしくは明細書に不適合でない限り、本発明の組成物中に任意選択で含め得る。そのような材料として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系エステル酸化防止剤、第二級芳香族アミン酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、油溶性銅化合物、リン含有酸化防止剤、有機スルフィド、ジスルフィド、およびポリスルフィドを含めての酸化防止剤(つまり、酸化抑制剤)が、挙げられる。他の任意選択の成分として、シールの曲がりやすさを保持するように設計された、イソデシルスルホランやフタラートエステルなどのシール膨潤組成物が挙げられる。アルキルナフタレン、ポリメタクリラート、 ビニルアセタート/フマラートもしくは/マレアートコポリマー、およびスチレン/マレアートコポリマーなどの流動点降下剤も許容可能である。消泡剤も周知である。これらの任意選択の材料は、当業者には周知であり、一般に市販されており、欧州特許出願公開第761805号においてより詳細に説明されている。防食剤、染料、流動化剤、消臭剤、および消泡剤などの周知の材料も挙げ得る。有機ホウ酸エステルおよび有機ホウ酸塩も挙げ得る。
【0077】
上記の成分は、完全調合潤滑剤の形態でも、より少ない量の潤滑油内に収まる濃縮物の形態でもよい。上記の成分が、濃縮物中に存在する場合、それらの濃度は、一般に、最終ブレンドにおけるより薄い形態でのそれらの濃度に直接比例するであろう。
【実施例】
【0078】
(実施例1および2)
アミンとグリコール酸の縮合物の合成
(実施例1)
AkzoからのArmeen(登録商標)2C、ジココアミン、468.2g(1.2当量)を、機械的撹拌器、窒素導入口、熱電対、およびコンデンサー付Dean−Starkトラップを備えた1L4つ口フラスコに加える。フラスコおよびその内容物を撹拌しながら80℃まで加熱する。フラスコに、TCIからのグリコール酸70%水溶液130.4g(1.2当量)を添加用ロートを介して20分間かけて添加する。反応混合物を、蒸留物を収集しながら2時間かけて180℃まで加熱する。混合物を、追加の5〜1/2時間180℃に保持し、次いで終夜冷却する。その後、混合物を、70℃まで加熱し、ろ過助剤20gを添加する。混合物を、15分間撹拌し、布製パッドによってろ過する。反応生成物は、清澄な淡黄色の液体ろ過物503.6gであり、分析値は、N3.15%、TBN9.57%、TAN1.75%である。
【0079】
(実施例2)
使用されたアミンが、Armeen(登録商標)HTL8((2−エチルヘキシル)(水素化獣脂)アミン)の対応量であることを除いて、実施例1の手順を実質的に繰り返す。
【0080】
(実施例3および4、ならびに参考実施例1)
潤滑剤調合物
自動トランスミッション液に典型的な成分を含有する3つの調合物を調製する。それぞれの調合物を、高粘度指数合成基材油(100℃において4mm−1(cSt)油60.2%、および100℃において2mm−1(cSt)油25.8%、全基材油86%)のブレンドにおいて調製した。以下の表において識別される摩擦調整剤に加えて、それぞれの調合物は、スクシンイミド含有分散剤(約42%の油を含む)5.0%、官能性ポリメタクリラート分散剤−摩擦調整剤(26%の油を含む)4.0%、チアジアゾール防止剤0.04%、芳香族アミンおよび硫化置換ヒドロカルビル酸化防止剤1.1%、複素環式イオウ含有シール膨潤剤0.4%、ホウ素化エステル摩擦調整剤0.2%、塩基過剰カルシウムスルホナート洗剤(50%の油を含む)0.07%、メタクリラートコポリマー粘度調整剤(40%の油を含む)0.2%、亜リン酸水素ジブチル0.11%、追加の希釈油0.18%、85%リン酸0.1%、赤色染料0.02%、および市販の消泡剤0.03%を含有する。
【0081】
【表1−1】

【0082】
【表1−2】

粘度変化試験は、油が熱酸化され、鉄および銅クーポンの存在でストレスをかけられるISOT(インディアナ撹拌器酸化試験)である。この試験に対する条件は、170℃における168時間の加熱である。Total Base Number、Total Acid Number、および粘度を、試験の前後の試料について測定する。その結果によって、本発明の組成物は、非常に良好な粘度安定性を示し、粘度増加は40%以下、通常、増加は5%未満であることが分かる(ナフテナートとしてCu200ppmおよびFe250ppmを添加することによって酸化を早め、試料が157℃で240時間空気を吹き付けられる別個の「ATFスポットスクリーン試験」では、参考実施例1の材料は、100℃粘度が2.9%増加し、一方、実施例3の材料は、20.8%増加し、実施例4の材料は、40.1%増加することに留意されたい。ISOT試験は、一般に、スポットスクリーン試験に比較してより信頼性の高い酸化安定性の指標であると考えられる)。
【0083】
本発明の調合物は、ASTM D 664によって測定した場合、Total Acid Number(TAN)において変化も非常に良好(非常に小さい)な変化を示す。
【0084】
銅腐食試験は、「ZF銅腐食試験」手順によって実施され、その手順では、秤量済みの銅クーポンを試験油中に入れ、83mL/分の空気をパージしながら168時間150℃まで加熱する。試験の最後に、クーポンからの銅重量の損失、試験ドレン中の銅%、および視覚レーティング(ASTM D−130)を報告する。試験の最後での試料は、ほとんど重量損失がなく、視覚レーティングは良好であり、試験の最後での液は、比較的低濃度の銅を含有する。
【0085】
実施例3および4、ならびに参考実施例1に対応して調製した液調合物は、SAE#2試験手順、およびJapanese Automobile Standard、 JASO M−348−95、「Test method for friction property of automatic transmission fluids」から、μTでの静摩擦、または安定化静摩擦係数を求めるためにも試験される。μTは、試験液によって潤滑したクラッチの保持能力の程度を表す。保持能力は、トランスミッションの重量およびコストを最適化する場合に、重要な要件である。少なくとも0.12、または少なくとも0.15、例えば、0.15、または0.16でも、または0.17から0.19のμT値が望ましい。5から5000試験サイクルに対する結果を以下の表に示す。
【0086】
【表2】

本発明の調合物は、銅の低腐食および改良された耐酸化性という追加の利点を有しつつ、非常に良好で、高い静摩擦を提供することが十分可能である。
【0087】
(実施例5から9)
潤滑剤調合物
潤滑剤調合物を、以下の表に記載してあるのと同様に調製する。組成物におけるそれぞれの変形形態(記載成分の有無、および、例えば、油、分散剤、摩擦調整剤、防食剤、耐磨耗剤、流動点降下剤、補助のリンの酸、酸化防止剤の、それらの量および化学的性質)は、本発明の範囲にわたる企図された変形形態として独立におよび一般に適用可能であることを理解すべきである。
【0088】
【表3−1】

【0089】
【表3−2】

【0090】
【表3−3】

a ガスから液、またはフィッシャー−トロプシュ法
b 例えば、米国特許第4857214号において開示されているように
c 例えば、米国特許第6077909号において開示されているように
d ジメルカプトチアジアゾール
e 別個の実施例、または混合実施例としての、実施例1もしくは2の縮合物のそれぞれ
上記で参照した文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれている。実施例、または別段の明確な指示がある場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定する本明細書の数量は全て、単語「約」によって修飾されていることを理解されたい。別段の指示がない限り、本明細書において参照されたそれぞれの化学薬品、または組成物は、異性体、副生物、誘導体、および、通常、市販級の中に存在するものと理解されている他の材料を含有する場合がある市販級の材料であると解釈されるべきである。しかし、それぞれの化学成分の量は、別段の指示がない限り、市販材料中に通常存在し得る任意の溶媒もしくは希釈油を除外して表されている。本明細書に記載された、上方および下方の量、範囲、および比の限界は、独立に合わせ得ることが理解されよう。同様に、本発明のそれぞれの要素に対する範囲および量は、任意の他の要素に対する範囲および量と一緒に使用し得る。本明細書で使用される「基本的にからなる」という表現は、考慮下にある組成物の基礎的および新規な特徴に大きく影響を及ぼさない物質を含むことを許容するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2013−64158(P2013−64158A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−3243(P2013−3243)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2008−535654(P2008−535654)の分割
【原出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】