説明

自動ワインダの繊維機械管理システム及び自動ワインダ

【課題】巻取作業が中断されたボビンが別の巻取ユニットに搬送された場合でも、巻取作業が中断される前の巻取条件を再現することができる自動ワインダの繊維機械管理システムを提供する。
【解決手段】ワインダ3が備える巻取ユニット31は、ボビン23に巻き付けられた糸を解舒してパッケージを形成する。トレーは、情報を記録可能なRFタグを有する。巻取ユニット31は、RFタグの情報を読み取るためのRFリーダ5を有する。そして、本実施形態のワインダ3に適用される繊維機械管理システムは、巻取作業を途中で中断した場合には、中断したときの巻取条件及び巻取状況を示す巻取情報を記録する。そして、巻取作業が途中で中断したボビン23を用いて巻取作業を再び行うときは、当該ボビン23の巻取情報に基づいて、ボビン23が搬送された巻取ユニット31を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダに適用される繊維機械管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボビンから紡績糸を解舒して所定長のパッケージを形成する巻取ユニットを複数備える自動ワインダにおいて、糸を巻き付けるボビンをトレーに乗せて各巻取ユニットの巻取位置まで自動的に搬送する構成が従来から知られている。この種の自動ワインダの中には、ボビンの情報を管理する繊維機械管理システムを適用して、ボビン搬送の効率化を図っているものがある。この繊維機械管理システムにおいては、前記トレーには情報を記録するための記録手段が付されており、この記録手段に記録されている情報に適宜の手段でアクセスできるように構成されている。この種の自動ワインダの繊維機械管理システムが用いられている自動ワインダ(精紡ワインダ)を開示するものとして、特許文献1及び特許文献2がある。
【0003】
上記のような自動ワインダの巻取ユニットでは、糸切れ等が生じた際には、糸端同士を糸継ぎ装置で糸継ぎして巻取りを再開するように構成されている。しかしながら、糸がボビンに絡まった場合等においては、ボビン側の糸端が捕捉できなくなることがある。この状態ではパッケージの巻取作業を継続できなくなるので、巻取ユニットは、糸端の捕捉に失敗したボビンを自動ワインダの外側の搬送経路に排出し、新しいボビンの供給を受けて巻取りを再開するようになっている。
【0004】
ところで、上記のようにしてボビンが自動ワインダから排出された場合、当該ボビンには、パッケージに巻き取るべき糸が残ってしまっている。そこで、前記ボビンの糸端を巻取ユニットで捕捉できるように処理した後、当該ボビンを再び自動ワインダに戻すようにトレーの搬送を行う構成のボビン搬送機構が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−176081号公報
【特許文献2】特開昭62−41329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糸の品質を安定的に維持する観点から、ボビンから糸を引き出す際の速度や糸に掛かるテンション等のパッケージの巻取条件(ボビンの解舒条件)は、ボビンの解舒作業が開始されてから終了するまで、できるだけ一定であることが好ましい。しかし、糸端の捕捉ができずに巻取ユニットから排出されたボビンを自動ワインダに再び戻す構成の場合、自動ワインダに戻ってきたボビンが、以前に巻取作業を行った巻取ユニット(巻取作業を中断した巻取ユニット)に搬送されるとは限らない。巻取作業を行う巻取ユニットが変われば、巻取ユニットの個体差等により巻取条件が大きく変化してしまうおそれがあり、糸品質の安定化という点で改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、巻取作業が中断されたボビンが別の巻取ユニットに搬送された場合でも、巻取作業が中断される前の巻取条件を再現することができる自動ワインダの繊維機械管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、複数の巻取ユニットを備え、ボビン搬送機構に接続される自動ワインダの繊維機械管理システムにおいて、以下の構成が提供される。即ち、前記巻取ユニットは、ボビンに巻き付けられた糸を解舒してパッケージを形成する。前記ボビン搬送機構は、糸が巻き付けられたボビンがセットされる搬送体を搬送する。前記搬送体は、情報を記録可能なデータ記録部を有する。前記巻取ユニットは、巻取作業が行われる前記ボビンの前記データ記録部の情報を読み取るためのデータ読取部を有する。そして、前記巻取作業を途中で中断した場合には、中断したときの巻取条件及び巻取状況を示す巻取情報が記録される。前記繊維機械管理システムは、前記巻取作業が途中で中断した前記ボビンを用いて巻取作業を再び行うときは、当該ボビンの巻取情報に基づいて、前記ボビンが搬送された巻取ユニットを制御する。
【0010】
これにより、巻取作業が中断されたボビンが、当初に巻取作業を行った巻取ユニットとは別の巻取ユニットに搬送されたとしても、巻取情報に基づいて中断前の巻取条件が再現され、ほぼ同一の条件でボビンから糸を引き出すことができる。従って、同じボビンに巻き付けられている糸は同じ巻取条件で巻き取られることになり、糸の品質を安定させることができる。
【0011】
前記の自動ワインダの繊維機械管理システムにおいては、前記巻取情報は、前記ボビンに残っている残糸長さ情報を含むことが好ましい。
【0012】
これにより、ボビンに残っている残糸長さに応じた巻取ユニットによる処理及びボビン搬送機構による搬送を行うことが可能になる。
【0013】
前記の自動ワインダの繊維機械管理システムにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記巻取ユニットは、パッケージに巻き取る糸にテンションを付与することができるテンション付与手段を有する。前記巻取情報は、前記テンション付与手段の制御情報を含む。
【0014】
これにより、巻取作業が中断される前のテンション付与手段の制御情報を考慮することで、ボビンから引き出される糸のテンションを、当該ボビンの解舒作業が開始されてから終了するまでほぼ一定の範囲に収めることができる。
【0015】
前記の自動ワインダの繊維機械管理システムにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記巻取ユニットは、糸の欠陥を検出する糸欠陥検出部を有する。前記巻取情報は、前記糸欠陥検出部による欠陥検出に関する検出情報を含む。
【0016】
これにより、検出情報を参照することで、ボビンに巻き付けられていた糸の状況を把握することが可能になる。従って、糸の状況に応じて巻取ユニットの処理及びボビン搬送機構による搬送を行うことが可能になる。
【0017】
前記の自動ワインダの繊維機械管理システムにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記ボビン搬送機構は、複数の経路と、第2データ読取部と、経路切替装置と、を備える。前記第2データ読取部は、前記搬送体が有する前記データ記録部に記録されている情報を読み取るためのものである。前記経路切替装置は、前記第2データ読取部が読み込んだ情報に基づいて経路を切り替える。
【0018】
これにより、データ記録部に記録されている巻取情報に基づいてボビンの搬送先を決定することができるので、ボビンの搬送効率を効果的に向上させることができる。
【0019】
前記の繊維機械管理システムにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記巻取ユニットは、前記巻取情報を前記搬送体の前記データ記録部に記録するためのデータ書込部を有する。前記巻取作業が中断した場合には、前記巻取情報を前記データ記録部に書き込む。前記巻取作業が途中で中断した前記ボビンを用いて巻取作業を再び行うときは、前記データ記録部に記録されている前記巻取情報に基づいて、前記ボビンが搬送された巻取ユニットを制御する。
【0020】
これにより、搬送体のデータ記録部の巻取情報を読み込むだけで、巻取情報を取得して巻取作業に反映することができる。従って、中断前の巻取作業を再現するための処理を巻取ユニット側で完結させることができ、シンプルな処理が実現される。
【0021】
前記の自動ワインダの繊維機械管理システムにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、自動ワインダは、前記巻取情報をボビンごとに記憶可能な記憶部を備える。前記搬送体が有するデータ記録部には、他の搬送体と区別するための識別情報が記録されている。前記繊維機械管理システムは、前記巻取作業が途中で中断した前記ボビンを用いて巻取作業を再び行うときは、前記データ記録部に記録されている識別情報に基づいて前記ボビンを特定する。そして、前記ボビンの前記巻取情報に基づいて、前記ボビンが搬送された巻取ユニットを制御する。
【0022】
これにより、制御装置側でボビンの巻取情報を集中的に管理できるので、搬送体のデータ記録部の容量を小さく構成できる。また、巻取ユニット側としては、データを記憶させるための手段を特別に備える必要がないので、巻取情報を巻取作業に反映するための簡素な構成を実現することができる。
【0023】
本発明の第2の観点によれば、前記の繊維機械管理システムが適用される自動ワインダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るワインダを備える精紡ワインダを上から見た様子を示す概略的な平面図。
【図2】精紡ワインダの概略的な正面図及びブロック図。
【図3】ボビン及びトレーの外観斜視図。
【図4】精紡ユニットの構成を示す側面図。
【図5】巻取ユニットの構成を示す側面図。
【図6】変形例の精紡ワインダの概略的な正面図及びブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るワインダ3を備える精紡ワインダ1を上から見た様子を示す概略的な平面図である。図2は、精紡ワインダ1の概略的な正面図及びブロック図である。
【0026】
図1に示すように、精紡ワインダ1は、ボビン23をセットするトレー(搬送体)50を搬送するためのトレー搬送路90を備え、このトレー搬送路90には、精紡機2と、ワインダ3と、ボビン自動供給装置(ボビン搬送機構)6と、が配置されている。トレー搬送路90は、精紡機2とワインダ3との間を接続するとともにループ状に構成されており、ボビン23(トレー50)が当該トレー搬送路90内を循環するようになっている。なお、図1ではボビン23及びトレー50は1つのみが図示されているが、実際には複数のトレー50がトレー搬送路90に沿って搬送される。
【0027】
なお、以下の説明では、トレー搬送路90におけるトレー50の流れに注目して、トレー50の搬送方向上流側を単に「上流側」と、搬送方向下流側を単に「下流側」と、それぞれ称することがある。
【0028】
まず、トレー搬送路90で搬送されるトレー50及びボビン23の構成について、図3を参照して簡単に説明する。図3は、本実施形態の精紡ワインダ1で用いられるトレー50及びボビン23の外観斜視図である。
【0029】
図3の左側に示すように、トレー50は、略円板状に形成されたベース部50aと、ベース部50aから垂直に突出する棒状のボビン差込み部50bを備える。このトレー50は、前記差込み部50bの突出する方向が上を向いた状態で、トレー搬送路90に沿って移動する。
【0030】
図3の中央に示すように、ボビン23は細長い筒状に構成されており、その内部に前記差込み部50bを挿入することができる。これにより、ボビン23は、その長手方向を垂直に向けた状態でトレー50にセットされ、トレー搬送路90に沿って搬送することができる。
【0031】
なお、以下の説明では、糸が巻き付けられた状態のボビン(図3の右側のボビン)を「実ボビン」と呼ぶ場合がある。また、糸が巻き付けられていない状態(図3の中央に示す状態)のボビンについては、そのような状態を特に強調する意図で、当該ボビンを「空ボビン」又は「空のボビン」と呼ぶ場合がある。
【0032】
本実施形態のワインダ3(精紡ワインダ1)には、RFID(Radio Frequency IDentification:電波による個体識別)技術を用いてトレー50上のボビン23の情報を管理する繊維機械管理システムが適用されている。より具体的には、それぞれのトレー50において、適宜の情報を書込可能なRFタグ(データ記録部)60がベース部50aの内部に配置されており、ボビン23に関する情報をRFタグ60に(トレー50ごとに)書き込むことでボビン23の状況を管理している。
【0033】
次に、精紡ワインダ1の各構成について、トレー搬送路90に沿って説明する。トレー搬送路90は、実ボビン導入路91と、実ボビン搬送路92と、戻しボビン搬送路93と、ボビン待機ループ94と、ボビン供給路95と、空ボビン搬送路96と、空ボビン返却路97と、不良ボビン待機路98と、交換済ボビン返却路99と、を備えている。
【0034】
実ボビン導入路91は、精紡機2とボビン自動供給装置6とを接続しており、ボビン23を乗せたトレー50を、精紡機2からボビン自動供給装置6まで搬送できるように構成されている。以下、精紡機2について説明する。
【0035】
図2に示すように、精紡機2は、並列配置される多数の精紡ユニット32と、これらの多数の精紡ユニット32を統括的に制御することができる制御装置19と、を有している。また、精紡機2は、精紡ユニット32による糸の巻付けが完了したボビン23(実ボビン)を玉揚げするための図略の玉揚装置を有している。
【0036】
次に、図4を参照して、精紡ユニット32について詳細に説明する。本実施形態の精紡ユニット32は、図4に示すように、前工程で生成されたスライバ又は粗糸に撚りを加えて紡績するためのものである。具体的には、前記精紡機2はリング紡績機として構成されており、精紡ユニット32は、ドラフト機構101と加撚機構102とを備えるリング紡績ユニットとして構成されている。
【0037】
ドラフト機構101は複数のドラフトローラを備えており、このドラフトローラは、トップローラ103とボトムローラ104により構成されている。トップローラ103は、バックローラ103a、エプロンベルト105を装架したミドルローラ103b及びフロントローラ103cの3つのドラフトローラから構成されている。一方、ボトムローラ104は、バックボトムローラ104a、エプロンベルト105を装架したミドルボトムローラ104b、フロントボトムローラ104cの3つのドラフトローラから構成されている。図4に示すように、トップローラ103とボトムローラ104とは、スライバ又は粗糸の走行経路を挟んで対向するように配置されており、所定の圧力でスライバ又は粗糸をニップできるように構成されている。ボトムローラ104のそれぞれには、図略の駆動源の出力軸が接続されており、互いに異なる速度で駆動されることが可能になっている。このボトムローラ104が駆動されることで、スライバ又は粗糸が延伸されながら加撚機構102に送られる。
【0038】
加撚機構102は、スピンドル軸111と、リングレール112と、リング113と、トラベラ114と、を備えている。スピンドル軸111は、当該スピンドル軸111にセットされるボビン23を回転させるためのものである。リングレール112は、図略の駆動装置に接続されており、ボビン23の長手方向に移動可能に構成されている。リング113は、リングレール112に固定されており、トラベラ114を取り付けるためのフランジ部を有している。トラベラ114は、リング113のフランジ部に支持されており、当該リング113の周方向に移動可能に構成されている。
【0039】
以上のように構成された精紡ユニット32で精紡を行うには、最初に、ドラフト機構101から送られてきた糸(スライバ又は粗糸が延伸されたもの)を、トラベラ114とリング113との間の隙間に通し、その端部を適宜の方法で空ボビン23に固定する。そして、この状態でスピンドル軸111によってボビン23を回転させると、トラベラ114は、ボビン23に巻き取られる糸に引っ張られるようにして周方向に移動する。この結果、トラベラ114の回転がボビン23の回転よりも遅れ、こうして生じる回転数の差によって糸に撚りが加えられる。撚られた糸はボビン23に順次巻き付けられ、予め設定された長さだけ糸がボビン23に巻き取られたところで、スピンドル軸111の回転を停止して巻取りを終了する。
【0040】
本実施形態の精紡機2は、いわゆる一斉ドッフィングタイプとして構成されている。このタイプの精紡機2は、後述の空ボビン返却路97を介してボビン自動供給装置6から搬送されてくるボビン23を1列に並べて多数ストックしておき、所定のタイミングになると、多数のボビン23を一斉に各精紡ユニット32のスピンドル軸111にセットして、糸を同時に巻き付けていく。そして、糸の巻付けが完了すると、前記玉揚装置によって全てのボビン23(実ボビン)が一斉に玉揚げされ、適宜の位置で待機している空ボビン23が乗せられたトレー50から空のボビン23を抜き取り、そのトレー50にボビン23(実ボビン)が挿入される。そして、抜き取られた空のボビン23はスピンドル軸111にセットされ、精紡機2により糸が巻かれる。精紡機2で玉揚げされてトレー50に乗せられたボビン23は、実ボビン導入路91を搬送されることにより、ボビン自動供給装置6に導入される。
【0041】
ボビン自動供給装置6は、精紡機2からボビン23(実ボビン)を乗せたトレー50を受け取ると、当該トレー50のRFタグ60に適宜の情報を書き込み、口出し装置7でボビン23の口出しを行った後、当該トレー50をワインダ3側に供給するように構成されている。以下、詳しく説明する。
【0042】
図1に示すように、精紡機2の実ボビン導入路91下流側には、RFライタ4が配置されている。このRFライタ4は、ボビン23の紡績を行った精紡ユニット32を特定する情報等をRFタグ60に書き込むためのものである。実ボビン導入路91を搬送されるトレー50がRFライタ4の書込位置を通過すると、当該トレー50上のボビン23に糸を巻き付けた精紡ユニット32を特定する情報が、RFライタ4によってRFタグ60に記録される。
【0043】
精紡ユニット32は、精紡機2の長手方向に並列配置されており、一斉ドッフィングによって玉揚されたボビン23は、トレー50に装着された後、精紡ユニット32の並びと同一の順番で実ボビン導入路91を搬送される。従って、ボビン23が実ボビン導入路91に導入されてくる順番をカウントすることで、ボビン23が紡績された精紡ユニット32を特定できることになる。例えば、一斉ドッフィングが行われてからRFライタ4の読取位置を1番目に通過したトレー50のRFタグ60には、最も下流側に配置されている精紡ユニット32の錘番号としてNo.1を記憶させる。その次に搬送されてきたトレー50のRFタグ60には、錘番号がNo.1の精紡ユニット32の上流側に隣接している精紡ユニット32の錘番号としてNo.2を記憶させる。以降においても同様に、新しく搬送されてくるトレーのRFタグ60に錘番号をNo.3、No.4・・・と順番に記憶させていく。この結果、RFライタ4の書込位置を通過するトレー50のRFタグ60に、当該トレー50上のボビン23に糸を巻き付けた精紡ユニット32を特定する情報(錘番号)が記憶されることになる。
【0044】
また、本実施形態のRFライタ4は、上述した錘番号とともに、ドッフィング情報を書き込むように構成されている。ここでいうドッフィング情報とは、前記一斉ドッフィングを行ったときの時間又は何回目のドッフィングであるか等のドッフィングを行ったタイミングを示す情報である。
【0045】
なお、錘番号とともにドッフィング情報(ドッフィングの実施時刻等)をRFタグ60に記録するのは、以下の理由による。即ち、ボビン自動供給装置6及びワインダ3(精紡機2の下流側)では、RFタグ60に記憶された錘番号が同じトレー50が存在することがある。例えば、前回ドッフィング時にワインダ3側へ送られたボビン23の巻取作業が終了していないうちに、次のドッフィングが行われて新たなボビン23群がボビン自動供給装置6に導入されたような場合である。このような場合でも、RFタグ60に前記ドッフィング情報を記憶しておけば、当該ドッフィング情報を参照することで、錘番号が同じボビン23を異なるボビン23として区別することができる。また、本実施形態のRFライタ4は、上記情報に加えてロット番号や精紡機2の番号(精紡機2を複数備える場合に精紡機2ごとに付けられる番号)等もRFタグ60に記憶させることが可能になっている。なお、以下の説明において、RFタグ60に書き込まれるボビン23を特定するための情報(錘番号及びドッフィング情報)をボビン情報と称することがある。
【0046】
実ボビン導入路91の下流側端部は、実ボビン搬送路92の上流側端部に接続している。この実ボビン搬送路92は、ボビン自動供給装置6とワインダ3とを接続している。RFライタ4によってRFタグ60に所定の情報が書き込まれたトレー50は、実ボビン搬送路92に沿ってワインダ3へ搬送される。
【0047】
ボビン自動供給装置6は口出し装置7を備えており、この口出し装置7は、前記実ボビン搬送路92上であって、ワインダ3よりも上流側に配置されている。この口出し装置7は、ワインダ3でボビン23の糸を捕捉し易くするため、当該ボビン23の口出しを行うものである。簡単に説明すると、口出し装置7は、トレー50に乗って実ボビン搬送路92を搬送されてきたボビン23に吸引流を作用させることにより、ボビン23の表面から糸を解舒する。解舒された糸端は、筒状のボビン23の内部に挿入しておく。こうしておくことにより、口出し装置7の下流側のワインダ3において、ボビン23の糸端を簡単に捕捉することができる。
【0048】
なお、口出し装置7において口出しが常に成功するとは限らず、口出しに失敗する場合もある。この場合、口出しが失敗したボビン23を乗せたトレー50は、戻しボビン搬送路93に送り出される。この戻しボビン搬送路93は、口出し装置7のすぐ下流側において実ボビン搬送路92から分岐しており、ループ状に湾曲して実ボビン搬送路92の上流側端部に接続するように構成されている。以上の構成で、口出しに失敗したボビン23は、戻しボビン搬送路93に沿って搬送されることにより、再び口出し装置7の上流側まで戻される。これにより、口出しに失敗しても、口出し装置7による口出し処理が自動的に再実行されるので、口出しミスがあるたびにオペレータが対処する必要が無い。
【0049】
本実施形態の口出し装置7は、口出し装置用RFライタ42及び口出し装置用RFリーダ41を有している。口出し装置用RFライタ42は実ボビン搬送路92に配置されており、口出し装置7による口出しの失敗を示す口出し情報を、トレー50のRFタグ60に書き込むことができる。口出し装置用RFリーダ41は、前記口出し装置用RFライタ42よりも実ボビン搬送路92の上流側に配置されており、RFタグ60の記憶内容を読み取ることができる。なお、口出しの成否は、口出し装置7が有する図略のセンサによって検出している。
【0050】
この構成で、口出し装置用RFリーダ41の読取位置をボビン23がセットされたトレーが通過すると、口出し装置用RFリーダ41は、通過したボビン23の口出し情報をRFタグ60から取得する。当該ボビン23に口出しが行われた後、口出し装置7は、前記センサの信号に基づいて口出しの成否判定を行う。
【0051】
本実施形態では、RFタグ60に記憶される口出し情報に、口出しの連続失敗回数が含まれている。従って、口出し装置7が口出しに失敗するごとに、RFタグ60に記憶される口出しの連続失敗回数が1ずつカウントアップされ、再記憶される。一方で、口出し装置7が口出しに成功した場合には、RFタグ60に記憶される口出しミスの連続失敗回数がゼロにリセットされる。
【0052】
そして本実施形態では、口出しミスが所定回数以上連続して発生すると、不良ボビンであると判定し、不良ボビンである旨の内容を口出し装置用RFライタ42がRFタグ60に書き込むようになっている。不良ボビンである旨の情報が書き込まれたトレー50は、戻しボビン搬送路93に搬送されることなくワインダ3側へ送られる。ワインダ3側に送られたボビン23(トレー50)は、巻取位置にセットされても巻取ユニット31による巻取作業は行われず、空ボビン搬送路96に直ちに排出される。
【0053】
次にワインダ3について説明する。図1及び図2に示すように、ワインダ3は、複数の巻取ユニット31と、制御装置としての機台制御装置11と、を備える。また、ワインダ3には、巻取ユニット31ごとにRFリーダ(データ読取部)5及び巻取ユニット用RFライタ(データ書込部)40が配置されている。更に、ワインダ3は、巻取ユニット31が備える後述のクリアラ(糸欠陥検出部)15が接続されるクリアラコントロールボックス(CCB)12を備えている。
【0054】
また、図1に示すように、ワインダ3においては、実ボビン搬送路92から分岐するボビン供給路95が複数設けられている。前記複数のボビン供給路95は、ワインダ3が備える複数の巻取ユニット31に対応して設けられている。この複数のボビン供給路95によって、実ボビン搬送路92を搬送されてきたボビン23を各巻取ユニット31に振り分けることができる。具体的には以下のとおりである。
【0055】
各ボビン供給路95は所定の長さを有しており、当該ボビン供給路95上に複数のボビン23を並べてストックしておくことができるように構成されている。また、各ボビン供給路95の上流側端部には図略の案内部材等が配置されており、実ボビン搬送路92を搬送されてきたボビン23が、前記案内部材によってボビン供給路95内に自然に導入されるように形成されている。一方、ボビン供給路95にボビン23を導入するスペースが空いていない場合(ストックされているボビン23の本数が上限に達している場合)は、新しいボビン23を当該ボビン供給路95内に導入しようとしても、当該ボビン供給路95内のボビンによって阻止される。このとき、ボビン供給路95への導入を阻止されたボビン23は、そのまま実ボビン搬送路92を下流側に搬送され、スペースが空いている別のボビン供給路95に導入される。以上のようにして、精紡機2から送られてきたボビン23を各巻取ユニット31に対して振り分けることができる。
【0056】
一方、ボビン23を導入できるスペースが空いたボビン供給路95が1つも無い場合は、ボビン待機ループ94にボビン23が導入されて当該ボビン待機ループ94を搬送されるように構成されている。ボビン待機ループ94は、実ボビン搬送路92の一番下流側から分岐し、実ボビン搬送路92と一番上流側のボビン供給路95との分岐部よりも上流側の位置に接続するように構成されている。従って、ボビン23は、何れかのボビン供給路95でボビンをストックできるスペースが空くまでの間、ボビン待機ループ94と実ボビン搬送路92で構成されるループ経路を循環し続ける。
【0057】
次に、図5を参照して、巻取ユニット31の構成について詳細に説明する。図5に示すように、巻取ユニット31は、実ボビンから糸を巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成するためのものであり、糸をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための巻取ドラム(綾振ドラム)24を備えている。また、本実施形態の巻取ユニット31は、解舒作業を行うために適宜の位置にセットされたボビン23と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、ボビン23側から順に、テンション付与装置13と、糸継装置14と、クリアラ15と、を配置した構成となっている。
【0058】
テンション付与装置13は、走行する糸に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものが用いられている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸のテンションを一定にして、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0059】
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又はボビン23からの解舒中の糸切れ時等に、ボビン23側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。糸継装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。糸継装置14の下側及び上側には、ボビン23側の下糸を吸引捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を吸引捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。
【0060】
クリアラ15は、糸の太さを適宜のセンサで検出することで糸の欠陥及び毛羽量を検出するためのものである。このクリアラ15は、単に糸の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。また、クリアラ15の近傍には、クリアラ15が糸の欠陥を検出したときはそれを除去できるように切断手段が設けられている。
【0061】
ボビン23から解舒された糸は、糸継装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。この巻取ドラム24には図略の回転センサが取り付けられており、巻取ドラム24が所定角度回転するごとに回転パルス信号をユニット制御部10に出力している。本実施形態の巻取ユニット31は、時間あたりのパルス数を計測することで、巻取ドラム24の回転速度を算出することができるように構成されている。なお、本実施形態では、ユニット制御部10は巻取ユニット31ごとに配置されている。各巻取ユニット31のユニット制御部10は、それぞれが機台制御装置11に接続されており、機台制御装置11と巻取条件等の各種の情報のやり取りを行うことができるように構成されている。
【0062】
以上の構成で、ボビン供給路95によって搬送されてきたボビン23が巻取ユニット31の適宜の位置(巻取位置)にセットされると、巻取ドラム24が駆動され、前記ボビン23から解舒された糸が前記巻取ボビン22に巻き取られて所定長のパッケージ30が形成されることになる。
【0063】
RFリーダ5は、巻取ユニット31に巻き取られるボビン23を乗せたトレー50のRFタグ60を読み取ることができるように、ボビン供給路95に配置されている。このRFリーダ5で読み取られた情報はユニット制御部10に送信される。
【0064】
巻取ユニット用RFライタ40は、巻取ユニット31から送り出されるボビン23を乗せたトレー50のRFタグ60に巻取情報を書き込むことができるように、ボビン供給路95と空ボビン搬送路96の接続部分に配置されている。この巻取ユニット用RFライタ40は、ユニット制御部10に接続されており、ユニット制御部10から取得した巻取情報をRFタグ60に書き込むことができるように構成されている。
【0065】
機台制御装置11は、図2に示すように、表示手段としてのディスプレイ16と、操作手段としての入力キー17と、を備えている。ディスプレイ16は、各巻取ユニット31の状況を表示するためのものである。入力キー17は、オペレータが巻取条件等の設定等を行うためのものである。
【0066】
上述したように、機台制御装置11には、RFリーダで読み取られたボビン情報(錘番号及びドッフィング情報)が入力されており、現在巻取ユニット31が巻き取っているボビン23がどの精紡ユニット32で糸を巻き付けられたものかを特定することが可能になっている。
【0067】
CCB12は、クリアラ15から送信されてくる情報に基づいて、糸欠陥等が生じているか否か等の判定処理を行う。図2に示すように、CCB12は表示手段としてのディスプレイ18を有しており、糸欠陥に関する情報や糸欠陥に基づいて生成された情報等、各種の情報をディスプレイ18に表示できるように構成されている。また、CCB12は、前記機台制御装置11に電気的に接続されており、機台制御装置11と各種の情報のやり取りを行うことができるように構成されている。
【0068】
また、図5に示すように、巻取ユニット31の下方には前記ボビン供給路95が敷設されている。巻取ユニット31に供給されたボビン23は、このボビン供給路95によって前記巻取位置まで搬送される。なお、糸の巻取り中は、ボビン23を巻取位置に停止させておくため、ボビン供給路95によるトレー50の搬送を一時停止するように構成されている。
【0069】
また前述のように、ボビン供給路95はボビン23を複数ストックできるように構成されている。図5に示すように、ストックされているボビン23はボビン供給路95上に1列に並んでおり、当該ボビン供給路95の一番下流側にあるボビン23が、巻取ユニット31による糸の巻取りの対象となっている。図5においては、図面に複数描かれているボビンのうち最も右側のボビン23の位置が、前記巻取位置である。
【0070】
また、ボビン23からの糸の解舒は、図5に示すように、ボビン23をトレー50に乗せたままの状態で行われる。ボビン23の糸が無くなって空のボビン23となると、ボビン供給路95によるトレー50の搬送が行われる。これにより、空のボビン23は、トレー50に乗ったまま下流側へ送られ、空ボビン搬送路96(後述)に排出される。
【0071】
一方、巻取位置にあった空のボビン23が下流側に送られるのに伴って、ボビン供給路95にストックされていた各ボビン23も下流側へ送られる。これにより、巻取位置に新しいボビン23がセットされるので、当該新しいボビン23から糸を解舒して巻取りを再開することができる。なお、ボビン供給路95から空ボビン23を排出することにより、当該ボビン供給路95にボビン23をストックできるスペースが新たに空くことになる。これにより、実ボビン搬送路92を搬送されているボビン23が当該ボビン供給路95に補給される。
【0072】
図1に示すように、複数のボビン供給路95の下流側端部は、それぞれ空ボビン搬送路96と合流するように構成されている。この空ボビン搬送路96は、ワインダ3と、ボビン自動供給装置6とを接続している。そして、各巻取ユニット31から排出された空ボビン23は、空ボビン搬送路96を搬送されることにより、ボビン自動供給装置6に戻される。
【0073】
ボビン自動供給装置6において、空ボビン搬送路96は、前記戻しボビン搬送路93の途中に接続している。一方、戻しボビン搬送路93において、前記空ボビン搬送路96が接続している位置よりも下流側の位置からは、空ボビン返却路97が分岐して設けられている。空ボビン搬送路96を介してボビン自動供給装置6に戻ってきた空ボビンは、戻しボビン搬送路93の一部を通過した後、後述の経路切替機構(図略)によって空ボビン返却路97に導入される。空ボビン返却路97は、ボビン自動供給装置6と精紡機2とを接続している。そして、ボビン自動供給装置6は、空ボビン返却路97によって空のボビン23を搬送することにより、当該空のボビン23を精紡機2に戻すように構成されている。
【0074】
以上で説明したように、精紡機2とワインダ3との間を接続するループ状のトレー搬送路90によって、精紡機2とワインダ3との間でボビン23を循環させることができる。
【0075】
なお、実際には、空ボビンのほか、実ボビンや不良ボビンがランダムに混ざった状態で、空ボビン搬送路96を搬送される。従って、混在して搬送される空ボビン、実ボビン及び不良ボビンを、分別して適切に処理するための構成が必要となる。この点について、以下に詳しく説明する。
【0076】
まず、実ボビン(糸が残ったボビン)が空ボビン搬送路96を搬送される場合について説明する。例えば、巻取ユニット31における糸の巻取り中に糸切れが発生した場合、糸継装置14による糸継ぎが行われる。このとき、巻取ユニット31は、下糸案内パイプ25の先端部に吸引流を発生させて、ボビン23側の糸端を吸引捕捉して糸継装置14に案内し、当該糸継装置14によって上糸との糸継ぎを行う。
【0077】
しかし、下糸案内パイプ25によってボビン23側の糸端を吸引捕捉できない状態、例えば、糸端がボビン23の周囲に巻き付いてしまった場合や、ボビン23近くで糸が切れてしまった場合などは、下糸案内パイプ25によって糸端を捕捉することができず、糸継装置14による糸継ぎを実行することができない。このような場合、巻取ユニット31は、当該ボビン23の糸端の捕捉をあきらめて、糸端捕捉ができないボビン23を空ボビン搬送路96に排出する。なお、以下の説明では、このように巻取ユニット31が巻取りを中断して排出したボビンを「中断ボビン」と称することがある。そして本実施形態では、この中断ボビンの排出時に、所定の情報(以下に説明する巻取情報)がトレー50のRFタグ60に書き込まれるように構成されている。
【0078】
次に、巻取情報について説明する。本実施形態において、巻取ユニット用RFライタ40によってRFタグ60に書き込まれる巻取情報は、残糸情報と、巻取速度情報と、テンション情報と、糸欠陥情報と、を含んでいる。
【0079】
残糸情報は、ボビン23に残っている残糸長さを示す情報である。残糸長さは、精紡ユニット32でボビン23に巻き付けられる糸長さから解舒糸長さを減算することにより算出される。
【0080】
ここでいう解舒糸長さは、実ボビンから解舒された糸長さ(実ボビンからパッケージ30に巻き取られた糸長さ)であり、以下の方法によって算出することができる。即ち、上述したように、ユニット制御部10には、巻取ドラム24に取り付けられている回転センサからの回転パルス信号が入力される(図5参照)。ユニット制御部10は、この回転パルス信号をカウントし、このカウント値に基づいて解舒糸長さを算出する。このカウント値は、未だ巻取作業が行われていない新しい実ボビンが搬送されるタイミング、又は実ボビンから糸が全て解舒されたタイミングでリセットされ、新しい実ボビンの糸を解舒するタイミングに基づいてカウントが開始される。
【0081】
本実施形態では、精紡ユニット32で1本のボビン23に巻き付けられる所定の糸長さが予め設定糸長さとしてユニット制御部10に記憶されている。従って、この設定糸長さから解舒糸長さを減算することで、残糸長さを得ることができる。本実施形態では、このようにして算出された残糸長さが、RFタグ60に残糸情報として書き込まれる。
【0082】
巻取速度情報は、巻取作業が中断されるまでの巻取ドラム24の回転速度を示す情報である。この巻取速度情報は、例えば、巻取作業が中断されるまでの巻取速度の変化を時系列で並べたデータとして表現することができる。また、巻取速度情報としては、速度の変化が一定の範囲に収まるような定常速度に達したときの巻取速度の平均値を示すデータとしてもよい。このように、巻取速度情報は、巻取ドラム24の巻取速度に関する情報に基づいて設定される。
【0083】
テンション情報は、テンション付与装置13によって走行する糸に付与するテンションを示す情報である。本実施形態のテンション付与装置13は、電流値の大小によって糸に付与するテンションが変化するように構成されており、テンション情報は、この電流値に基づいて設定される。例えば、巻取作業が中断されるまでの電流値の変化をテンション情報としてRFタグ60に記憶しておくことで、ボビン23から解舒された糸がテンション付与装置13によってどの程度のテンションを付与されていたのかを把握することができる。そして、本実施形態の巻取ユニット31は、RFタグ60の記憶内容に基づいて、テンション付与装置13が糸に与えるテンションを制御することが可能に構成されている。
【0084】
糸欠陥情報(検出情報)は、巻取作業が中断されるまでにボビン23から引き出された糸の欠陥を示す情報である。この糸欠陥情報を参照することで、ボビン23から解舒された糸の状態(品質)を把握することができる。また、糸欠陥情報として、クリアラ15に糸欠陥が検出されて糸が切断された回数又は糸切れが生じた回数等も含むようにすることができる。このように、糸欠陥情報は、クリアリングに関する情報であり、ボビン23に巻き付けられていた糸の品質を示すデータである。この糸欠陥情報は、不良ボビンの判定に用いられる。例えば、巻取作業が中断されるまでの糸欠陥の部分と、巻取作業が再開されてからの糸欠陥の部分と、を合わせたものが、設定糸長さに対して一定の割合を超えた場合に、当該ボビンを不良ボビンと判定するのである。
【0085】
以上に示したように、巻取情報は、ボビン23から引き出される糸を解舒するときの巻取ユニット31の制御情報と、ボビン23に巻き付けられていた糸の様子を示す情報と、を含む情報である。なお、巻取情報は、上述した情報に限定される訳ではなく、事情に応じて適宜のものを巻取情報に追加することが可能である。この巻取情報を用いたボビン23の解舒作業については後述する。
【0086】
巻取位置には、巻取作業が中断されたボビン23と入れ替わるようにして、ストックされていた新しいボビン23がセットされる。この新しいボビン23は、口出し装置7によって口出しされているので、糸端を簡単に捕捉して糸継ぎを行うことができる。以上のように、糸切れ時に糸端捕捉ができない場合であっても、当該糸端捕捉ができないボビン23を排出して代わりに新しいボビン23をセットすることにより、糸継ぎを行って巻取りを再開することができる。
【0087】
糸端捕捉ができなかったボビン23は、空ボビン搬送路96を搬送される。ここで空ボビン搬送路96には、前述したように、他の巻取ユニット31から送り出された空ボビンも搬送されている。従って、糸端捕捉ができなかったボビン23は、空ボビンに混ざって空ボビン搬送路96を搬送され、戻しボビン搬送路93に導入される。
【0088】
ここで、図1に示すように、戻しボビン搬送路93上であって、戻しボビン搬送路93と空ボビン返却路97との分岐部よりも上流側の位置には、空ボビン判別装置8が設けられている。本実施形態の空ボビン判別装置(第3データ読取部)8は、RFタグ60の記憶内容を読取可能に構成されており、RFタグ60に記憶されている巻取情報(残糸情報)を読み取ることによって、空ボビンか否かを判別できるように構成されている。また、戻しボビン搬送路93と空ボビン返却路97との分岐部には、図略の経路切替機構が設けられている。そして、前記経路切替機構は、空ボビン判別装置8が空ボビンであると判断したボビン23は空ボビン返却路97側に送り出し、空ボビン判別装置8が空ボビンではないと判断したボビン23はそのまま戻しボビン搬送路93を搬送させるように構成されている。
【0089】
以上の構成により、空ボビンのみを精紡機2に返却することができる。なお、空ボビン判別装置8によって空ボビンではないと判断されたボビン23(糸が残っているボビン)は、戻しボビン搬送路93を搬送される。十分な残糸量を有するボビン23は、口出し装置7にて口出し処理される。RFタグ60の巻取情報(残糸情報)から残糸量が極少と判断されたボビン23は、図略の残糸処理装置にて極少残糸が除去される。このように、巻取ユニット31で糸端の捕捉ができなかったボビン23であっても、口出し装置7によって口出しされることにより、巻取ユニット31によって再び糸の解舒を行うことができる。なお、残糸量検出装置を更に備え、この残糸量検出装置によって残糸量を計測する構成とすることもできる。
【0090】
次に、RFタグ60に記憶されている巻取情報を利用したボビン23の解舒作業(パッケージ30の巻取作業)について説明する。
【0091】
巻取位置に新しくボビン23が供給されると、RFリーダ5は、トレー50のRFタグ60からボビン情報及び巻取情報を読み取る。ユニット制御部10はこれらの情報から、当該ボビンが中断ボビンであるか否かを判定する。
【0092】
ボビン23が中断ボビンであり、かつ当該ボビンに糸が残っている場合は、RFリーダ5は、RFタグ60から読み込んだ残糸情報、巻取速度情報、テンション情報、及び糸欠陥情報をユニット制御部10に送信する。そして、ユニット制御部10は、受信した巻取情報を各部の制御に反映させる。例えば、RFタグ60に記憶されている巻取速度情報に基づいて、目標とする巻取速度を設定し、定常速度がその巻取速度になるように巻取ドラム24の駆動手段を制御するのである。また、ボビン23から解舒される糸に付与されるテンションは、テンション情報に基づいて、巻取作業が中断される前と同じになるように制御される。
【0093】
本実施形態のように多数の巻取ユニット31を備える構成の場合、中断ボビンがワインダ3側に再搬送されてきたとしても、当初に巻取作業を行っていたのと同じ巻取ユニット31に搬送されるとは限らない。一方で、同じ精紡ユニット32で紡績されたボビン23の糸は、品質を一定にするという観点から、同じ条件で解舒作業が行われることが好ましい。この点、本実施形態の構成であれば、ボビン23を搬送しているトレー50のRFタグ60に記憶されている巻取情報を読み出して巻取条件を再現することができる。従って、当初に巻取作業を行った巻取ユニット31と異なる巻取ユニット31に中断ボビンが搬送されたとしても、ユニット制御部10の間で情報のやり取りを行う必要なくRFタグ60から巻取情報を取得することが可能になっている。
【0094】
次に、不良ボビン(不良糸が巻き取られたボビン)が空ボビン搬送路96を搬送される場合について説明する。
【0095】
精紡ユニット32において、例えばエプロンベルト105に損傷や摩耗等が発生すると、精紡ユニット32で製造される糸に太さムラが発生することがある。また、トラベラ114が摩耗すると、糸の毛羽の量が増大するという傾向がある。なお、以下の説明では、太さムラがある糸や毛羽量が多い糸は商品価値の低い不良糸であることを考慮し、このような不良糸が巻かれたボビン23を「不良ボビン」と呼ぶことがある。前記不良糸がパッケージ30に混入してしまうことを防ぐため、巻取ユニット31においては、不良ボビンを自動的に検出して排除できることが望まれる。
【0096】
そこで本実施形態では、前述のように、クリアラ15によってボビン23から解舒される糸の太さ及び毛羽を検出している。そして本実施形態では、ある巻取ユニット31のクリアラ15が検出した糸太さ変動の大きさや毛羽量が所定の許容範囲を超えたときに、当該巻取ユニット31において現在巻き取っているボビンは不良ボビンであると判定している。
【0097】
巻取ユニット31は、不良ボビンが検出された場合、それ以上の糸の解舒は行わずに当該不良ボビンをそのまま(糸が残ったまま)空ボビン搬送路96に排出し、ボビン供給路95にストックされている別のボビン23からの糸の解舒を開始するように構成されている。これにより、太さムラがある糸や、毛羽量の多い糸がパッケージ30に混入することを防ぐことができる。
【0098】
ところで、巻取ユニット31から空ボビン搬送路96に送り出された不良ボビンが、仮に戻しボビン搬送路93に導入されてしまうと、(当該不良ボビンには糸が残っているため)空ボビン判別装置8において空ボビンでは無いと判断されて、口出し装置7を経由して再びワインダ3に供給されてしまう。そこで、ボビン自動供給装置6は、不良ボビンが空ボビン搬送路96を搬送されてきたときは、当該不良ボビンを戻しボビン搬送路93に導入することなく、不良ボビン待機路98に退避させるように構成されている。
【0099】
具体的には以下のとおりである。機台制御装置11は、ある巻取ユニット31において不良ボビンが検出されると、当該ボビン23が不良ボビンである旨の情報をRFタグ60に記憶させる。また前述のように、巻取ユニット31によってボビン23の糸を巻き取る際には、当該ボビン23が装着されたトレー50のRFタグ60の記憶内容を読み取り、不良ボビンである旨の情報を検出すると、巻取位置から空ボビン搬送路96に当該ボビン23を排出する。なお、不良ボビンであるか否かは、糸欠陥情報によっても判定することができる。例えば、所定以上の糸欠陥が巻取作業中に検出されていたボビンを不良ボビンと判定することもできる。
【0100】
一方、図1に示すように、前記不良ボビン待機路98は、空ボビン搬送路96と戻しボビン搬送路93との合流部より上流側の位置において、当該空ボビン搬送路96から分岐して設けられている。この分岐部には経路切替機構(経路切換装置)43が設けられており、この経路切替機構43によって、空ボビン搬送路96を搬送されるボビン23の搬送経路を切り替えることができる。また、空ボビン搬送路96上であって、空ボビン搬送路96と不良ボビン待機路98との分岐部の上流側には、RFリーダ(第2データ読取部)9が配置されている。このRFリーダ9は、空ボビン搬送路96を搬送されてくるトレー50が備えるRFタグ60の記憶内容を読み取り、その情報を経路切替機構43に送信する。経路切替機構43は、RFタグ60に記憶されている内容から空ボビン搬送路96を搬送されてくるボビン23が不良ボビンであるか否かを判定する。
【0101】
RFタグ60に不良ボビンである旨の情報が記憶されていた場合、空ボビン搬送路96を搬送されてくるボビン23が不良ボビンであると判定される。ボビン23は、この判定結果に基づき、不良ボビン待機路98側に送り出される。不良ボビンではないと判定されると、ボビン23はそのまま空ボビン搬送路96を搬送される。
【0102】
また、前記不良ボビン待機路98はある程度の長さを有しているとともに、当該不良ボビン待機路98の下流側端部は行き止まりになっている。これにより、当該不良ボビン待機路98上に、不良ボビンを乗せたトレー50を複数個待機させることができる。
【0103】
不良ボビンを乗せたトレー50が不良ボビン待機路98に一定程度貯まると、オペレータは各トレー50から不良ボビンを取り除いて空ボビンに交換する。そして、オペレータが適宜の操作を行うことにより、不良ボビン待機路98が逆転駆動される。これにより、不良ボビン待機路98に貯まっていたトレー50は、交換された空ボビンを乗せて交換済ボビン返却路99に導入される。
【0104】
前記交換済ボビン返却路99は、図1に示すように、不良ボビン待機路98の途中から分岐し、空ボビン返却路97に接続している。そして、不良ボビンから交換された空ボビンを乗せたトレー50は、交換済ボビン返却路99を介して空ボビン返却路97に導入され、精紡機2に返却される。
【0105】
以上で説明したように、本実施形態のワインダ3は、RFタグ60の記憶内容に基づいて、搬送されているボビン23が空ボビン、実ボビン及び不良ボビンの何れかであるかを区別できるようになっている。これによって、ボビン自動供給装置6及びワインダ3に空ボビン、実ボビン及び不良ボビンが混在した状態であっても、トレー50の搬送を停止することなく、適切に各ボビンを振り分けて、精紡機2とワインダ3との間でボビン23のやり取りを適切に行うことができるようになっている。
【0106】
以上に示したように、本実施形態のワインダ3は、以下のように構成される。即ち、ワインダ3は、複数の巻取ユニット31を備え、ボビン自動供給装置6に接続される。巻取ユニット31は、ボビン23に巻き付けられた糸を解舒してパッケージ30を形成する。ボビン自動供給装置6は、糸が巻き付けられたボビン23がセットされるトレー50を搬送する。トレー50は、情報を記録可能なRFタグ60を有する。巻取ユニット31は、巻取作業が行われるボビン23がセットされるトレー50のRFタグ60の情報を読み取るためのRFリーダ5を有する。そして、本実施形態のワインダ3に適用される繊維機械管理システムは、巻取作業を途中で中断した場合には、中断したときの巻取条件及び巻取状況を示す巻取情報を記録する。そして、巻取作業が途中で中断したボビン23を用いて巻取作業を再び行うときは、当該ボビン23の巻取情報に基づいて、ボビンが搬送された巻取ユニット31を制御する。
【0107】
これにより、巻取作業が中断されたボビン23が、当初に巻取作業を行った巻取ユニット31とは別の巻取ユニット31に搬送されたとしても、巻取情報に基づいて中断前の巻取条件が再現されて、ほぼ同一の条件でボビン23から糸を引き出すことができる。従って、同じボビン23に巻き付けられている糸は同じ巻取条件で巻き取られることになり、糸の品質を安定させることができる。
【0108】
また、本実施形態のワインダ3の繊維機械管理システムにおいては、巻取情報は、ボビン23に残っている残糸長さ情報を含む。
【0109】
これにより、ボビン23に残っている残糸長さに応じた巻取ユニット31による処理及びボビン自動供給装置6による搬送を行うことが可能になる。
【0110】
また、本実施形態のワインダ3が備える巻取ユニット31は、パッケージ30に巻き取る糸にテンションを付与することができるテンション付与装置13を有する。そして、巻取情報は、テンション付与装置13のテンション情報を含む。
【0111】
これにより、巻取作業が中断される前のテンション付与装置13のテンション情報を考慮することで、ボビン23から引き出される糸のテンションを、当該ボビン23の解舒作業が開始されてから終了するまでほぼ一定の範囲に収めることができる。
【0112】
また、本実施形態のワインダ3が備える巻取ユニットは、糸の欠陥を検出するクリアラ15を有する。本実施形態の繊維機械管理システムにおいて、巻取情報は、クリアラ15による欠陥検出に関する糸欠陥情報を含む。
【0113】
これにより、糸欠陥情報を参照することで、ボビン23に巻き付けられていた糸の状況を把握することが可能になる。従って、糸の状況に応じて巻取ユニット31の処理及びボビン自動供給装置6による搬送を行うことが可能になる。なお、本実施形態の糸欠陥情報は、糸切断等のカットデータ(クリアラ15に糸欠陥が検出されて糸をカットした回数を示す情報)も含んでいる。
【0114】
また、本実施形態のワインダ3に接続されるボビン自動供給装置6は、複数の経路(トレー搬送路90)と、RFリーダ9と、経路切替機構43と、を備える。RFリーダ9は、トレー50が有するRFタグ60に記録されている情報を読み取るためのものである。経路切替機構43は、RFリーダ9が読み込んだ情報に基づいて経路を切り替える。
【0115】
これにより、RFタグ60に記録されている巻取情報に基づいてボビン23の搬送先を決定することができるので、ボビン23の搬送効率を効果的に向上させることができる。
【0116】
また、本実施形態のワインダ3が備える巻取ユニットは、巻取情報をトレー50のRFタグ60に記録するための巻取ユニット用RFライタ40を有する。巻取作業が中断した場合には、巻取情報をRFタグ60に書き込む。本実施形態の繊維機械管理システムは、巻取作業が途中で中断したボビン23を用いて巻取作業を再び行うときは、RFタグ60に記録されている巻取情報に基づいて、ボビン23が搬送された巻取ユニット31を制御する。
【0117】
これにより、トレー50のRFタグ60の巻取情報を読み込むだけで、巻取情報を取得して巻取作業に反映することができる。従って、中断前の巻取作業を再現するための処理を巻取ユニット31側で完結させることができ、シンプルな処理が実現される。
【0118】
以上に本発明の一実施形態に係るワインダ3を備える精紡ワインダ1を説明したが、本発明の繊維機械管理システムが適用される限りにおいて、ワインダ3の構成は事情に応じて適宜変更することができる。例えば、ワインダ3の巻取ユニット31ごとに配置される巻取ユニット用RFライタ40を省略して、機台制御装置11でボビン23ごとの巻取情報を管理する構成に変更することができる。次に、図6を参照して、機台制御装置11でボビン23ごとの巻取情報を管理する変形例について説明する。図6は、変形例の精紡ワインダ1の概略的な正面図及びブロック図である。なお、以下に説明する変形例は、機台制御装置11でボビン23ごとの巻取情報を管理する点及び巻取ユニット用RFライタ40が省略される点以外については上記実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0119】
変形例のワインダ203が備える機台制御装置11は、図略の記憶部を有しており、ボビンを特定するためのボビン情報と、このボビン情報に対応するボビン23の巻取情報と、を関連付けて当該記憶部に記憶できるように構成されている。図6に示すように、RFリーダ5が読み取った情報は、機台制御装置11に巻取ユニット31ごとに入力されている。
【0120】
以下、不良ボビンを検出する場合を例として具体的に説明する。機台制御装置11は、ある巻取ユニット31において不良ボビンが検出されると、当該巻取ユニット31で不良ボビンが検出された旨の情報を記憶するように構成されている。また前述のように、巻取ユニット31によってボビン23の糸を巻き取る際には、当該ボビン23が装着されたトレー50のRFタグ60に記録されている情報(ボビン23を特定するための情報を含む)をRFリーダ5が読み取り、その情報が機台制御装置11に入力される。そして、機台制御装置11は、巻取ユニット31で不良ボビンが検出されたときは、その旨の情報と、当該巻取ユニット31で現在巻き取られているボビン23(前記不良ボビン)のボビン情報と、を関連付けて記憶するように構成されている。従って、どのボビン23が不良ボビンであるかという情報が機台制御装置11に記憶されることとなる。
【0121】
機台制御装置11は、RFリーダ9から送られてくる情報と、自身が記憶している情報(どのボビン23が不良ボビンであるかという情報)とを照らし合わせることにより、RFリーダ9の位置を通過したトレー50が乗せているボビン23が不良ボビンであるか否かを判断するように構成されている。そして、経路切替機構43は、機台制御装置11が不良ボビンであると判断したボビン23は不良ボビン待機路98側に送り出し、機台制御装置11が不良ボビンではないと判断したボビン23はそのまま空ボビン搬送路96を搬送されることになる。以降の不良ボビンの搬送経路は、上記実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0122】
以上に示したように、変形例のワインダ203が備える機台制御装置11は、巻取情報をボビン23ごとに記憶可能な記憶部を備える。トレー50が有するRFタグ60には、他のトレー50と区別するためのボビン情報(錘番号及びドッフィング情報)が記録されている。繊維機械管理システムは、巻取作業が途中で中断したボビン23を用いて巻取作業を再び行うときは、RFタグ60に記録されている識別情報に基づいてボビン23を特定する。そして、ボビン23の巻取情報に基づいて、ボビン23が搬送された巻取ユニット31を制御する。
【0123】
これにより、機台制御装置11側でボビン23の巻取情報を集中的に管理できるので、トレー50のRFタグ60の記憶容量を小さくすることができる。また、巻取ユニット31側としては、データを記憶させるための手段を特別に備える必要がないので、巻取情報を巻取作業に反映するための簡素な構成を実現することができる。
【0124】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0125】
上記実施形態では、RFタグ60に錘番号及びドッフィング情報を記憶させて精紡ユニットを特定する構成であるが、この構成は事情に応じて適宜変更することができる。例えば、トレー50にユニークな識別番号を付し、その識別番号に基づいてボビン23を特定する構成とすることもできる。
【0126】
ボビン自動供給装置6に警告灯又はブザー等の報知手段を設け、ボビン自動供給装置6がボビンを口出しができないと判定すると、前記報知手段を作動させてオペレータに報知する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0127】
1 精紡ワインダ
2 精紡機
3 ワインダ(自動ワインダ)
4 RFライタ
5 RFリーダ(データ読取部)
6 ボビン自動供給装置(ボビン搬送機構)
9 RFリーダ(第2データ読取部)
11 機台制御装置
15 クリアラ(糸欠陥検出部)
16 ディスプレイ(報知手段)
23 ボビン
31 巻取ユニット
32 精紡ユニット
40 巻取ユニット用RFライタ(データ書込部)
43 経路切替機構(経路切替装置)
50 トレー(搬送体)
60 RFタグ(データ記録部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ワインダの繊維機械管理システムにおいて、
前記自動ワインダは、ボビンに巻き付けられた糸を解舒してパッケージを形成する複数の巻取ユニットを備え、
前記自動ワインダは、ボビンがセットされた搬送体を搬送するボビン搬送機構に接続されており、
前記搬送体は、情報を記録可能なデータ記録部を有し、
前記巻取ユニットは、巻取作業が行われる前記ボビンの前記データ記録部の情報を読み取るためのデータ読取部を有し、
前記巻取作業を途中で中断した場合には、中断したときの巻取条件及び巻取状況を示す巻取情報が記録され、
前記巻取作業が途中で中断した前記ボビンを用いて巻取作業を再び行うときは、当該ボビンの巻取情報に基づいて、前記ボビンが搬送された巻取ユニットを制御することを特徴とする自動ワインダの繊維機械管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動ワインダの繊維機械管理システムであって、
前記巻取情報は、前記ボビンに残っている残糸長さ情報を含むことを特徴とする自動ワインダの繊維機械管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動ワインダの繊維機械管理システムであって、
前記巻取ユニットは、パッケージに巻き取る糸にテンションを付与することができるテンション付与手段を有し、
前記巻取情報は、前記テンション付与手段の制御情報を含むことを特徴とする自動ワインダの繊維機械管理システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の自動ワインダの繊維機械管理システムであって、
前記巻取ユニットは、糸の欠陥を検出する糸欠陥検出部を有し、
前記巻取情報は、前記糸欠陥検出部による欠陥検出に関する検出情報を含むことを特徴とする自動ワインダの繊維機械管理システム。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の自動ワインダの繊維機械管理システムであって、
前記ボビン搬送機構は、
複数の経路と、
前記搬送体が有する前記データ記録部に記録されている情報を読み取るための第2データ読取部と、
前記第2データ読取部が読み込んだ情報に基づいて経路を切り替える経路切替装置と、
を備えることを特徴とする自動ワインダの繊維機械管理システム。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の自動ワインダの繊維機械管理システムであって、
前記巻取ユニットは、前記巻取情報を前記搬送体の前記データ記録部に記録するためのデータ書込部を有し、
前記巻取作業が中断した場合には、前記巻取情報を前記データ記録部に書き込み、
前記巻取作業を途中で中断した前記ボビンを用いて巻取作業を再び行うときは、前記データ記録部に記録されている前記巻取情報に基づいて、前記ボビンが搬送された巻取ユニットを制御することを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載の自動ワインダの繊維機械管理システムであって、
前記巻取情報をボビンごとに記憶可能な記憶部を備え、
前記搬送体が有するデータ記録部には、他の搬送体と区別するための識別情報が記録されており、
前記巻取作業を途中で中断した前記ボビンを用いて巻取作業を再び行うときは、前記データ記録部に記録されている識別情報に基づいて前記ボビンを特定し、
前記ボビンの前記巻取情報に基づいて、前記ボビンが搬送された巻取ユニットを制御することを特徴とする自動ワインダの繊維機械管理システム。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の繊維機械管理システムが適用されることを特徴とする自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−20838(P2011−20838A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169564(P2009−169564)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】