説明

自動二・三輪車用連動ブレーキ装置

【課題】前輪用ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を出力する第1マスタシリンダと、第1マスタシリンダおよび前輪ブレーキ間を結ぶ主液圧配管と、連動ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダと、第2マスタシリンダおよび前輪ブレーキ間を結ぶ連動液圧配管と、連動ブレーキ操作子の操作力を後輪ブレーキに伝達する後輪ブレーキ側操作力伝達手段とを備える自動二・三輪車用連動ブレーキ装置において、連動ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダおよび前輪ブレーキ間の液圧系のエア抜き作業を効率的に行うことを可能とする。
【解決手段】連動ブレーキ操作子27の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダ28Aに、連動ブレーキ操作子27の操作とは無関係にエア抜き操作部材60Aから押圧力を作用せしめることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧の作用によって作動する前輪ブレーキと、後輪ブレーキと、前輪用ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を出力する第1マスタシリンダと、第1マスタシリンダおよび前記前輪ブレーキ間を結ぶ主液圧配管と、連動ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダと、第2マスタシリンダおよび前記前輪ブレーキ間を結ぶ連動液圧配管と、前記連動ブレーキ操作子の操作力を前記後輪ブレーキに伝達する後輪ブレーキ側操作力伝達手段とを備える自動二・三輪車用連動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
左レバーを操作することでマスタシリンダから出力されるブレーキ液圧を前輪ブレーキに作用せしめるとともに後輪ブレーキにブレーキ操作力を伝達するようにした自動二輪車用連動ブレーキ装置が特許文献1で知られており、ブレーキペダルを操作することでマスタシリンダから出力されるブレーキ液圧を前輪ブレーキに作用せしめるとともに後輪ブレーキにブレーキ操作力を伝達するようにした自動二輪車用連動ブレーキ装置が特許文献2で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−290699号公報
【特許文献2】特許第3754484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような連動ブレーキ装置において、連動ブレーキ操作子(特許文献1では左レバー、特許文献2ではブレーキペダル)の操作によって液圧を発生するマスタシリンダ側の液圧系のエア抜きを、連動ブレーキ操作子の操作によって行うのであるが、特許文献1および特許文献2で開示されたものでは、連動ブレーキ操作子の操作による操作力が前記液圧系にダイレクトに伝達されないので、エア抜き作業に時間がかかるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、連動ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダおよび前輪ブレーキ間の液圧系のエア抜き作業を効率的に行い得るようにした自動二・三輪車用連動ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、液圧の作用によって作動する前輪ブレーキと、後輪ブレーキと、前輪用ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を出力する第1マスタシリンダと、第1マスタシリンダおよび前記前輪ブレーキ間を結ぶ主液圧配管と、連動ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダと、第2マスタシリンダおよび前記前輪ブレーキ間を結ぶ連動液圧配管と、前記連動ブレーキ操作子の操作力を前記後輪ブレーキに伝達する後輪ブレーキ側操作力伝達手段とを備える自動二・三輪車用連動ブレーキ装置において、前記連動ブレーキ操作子の操作とは無関係に第2マスタシリンダに押圧力を作用せしめることを可能としたエア抜き操作部材を含むことを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記連動ブレーキ操作子から第2マスタシリンダに押圧力が作用するタイミングを前記連動ブレーキ操作子の操作力が設定値以上となるまで遅延させる弾性部材と、該弾性部材の付勢力を調節可能な付勢力調節手段とを備えることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、第2マスタシリンダのシリンダボディに、前記連動ブレーキ操作子および前記エア抜き操作部材が平行もしくは同軸の軸線まわりに回動可能に支承されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記連動ブレーキ操作子および前記エア抜き操作部材が、共通な単一の支軸を介して前記シリンダボディに回動可能に支承されることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記連動ブレーキ操作子が、操向ハンドルに回動可能に配設されるレバーであり、前記操向ハンドルを前方から覆う前部ハンドルカバーと、前記操向ハンドルを後方から覆って前記前部ハンドルカバーに連設される後部ハンドルカバーとで囲まれる空間に、前記エア抜き操作部材が配置されることを第5の特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、第5の特徴の構成に加えて、前記エア抜き操作部材を手動操作するようにして該エア抜き操作部材に設けられる操作部が前記操向ハンドルの下方に配置され、前記前部ハンドルカバーおよび前記後部ハンドルカバーの少なくとも一方の下部に、前記操作部を臨ませる開口部が設けられるとともに、該開口部を覆うリッドが開閉可能に取付けられることを第6の特徴とする。
【0012】
なお実施の形態の右レバー24が本発明の前輪用ブレーキ操作子に対応し、実施の形態のブレーキケーブル30が本発明の後輪ブレーキ側操作力伝達手段に対応し、実施の形態のコイルばね66が本発明の弾性部材に対応し、実施の形態の調節ねじ67が本発明の付勢力調節手段に対応する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の特徴によれば、連動ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダに、連動ブレーキ操作子の操作とは無関係にエア抜き操作部材から押圧力を作用せしめることが可能であるので、第2マスタシリンダから連動液圧配管を経て前輪ブレーキに至る液圧系のエア抜き作業を行うときには、エア抜き操作部材から第2マスタシリンダに押圧力をダイレクトに作用せしめることができ、作業量を軽減するとともにエア抜き作業時間を短くして作業効率を高めることができる。
【0014】
また本発明の第2の特徴によれば、連動ブレーキ操作子から第2マスタシリンダに押圧力が作用するタイミングを弾性部材で遅延させることが可能であり、しかもその弾性部材の付勢力を付勢力調節手段で調節可能であるので、第2マスタシリンダから液圧力を出力するのに必要な初期荷重を変更することができるとともに、エア抜き時に弾性部材の付勢力を減少させることが可能であるので、エア抜き時にエア抜き操作部材にかかる負荷を小さくすることができる。
【0015】
本発明の第3の特徴によれば、連動ブレーキ操作子およびエア抜き操作部材が平行もしくは同軸の軸線まわりに回動可能であるので、連動ブレーキ操作子およびエア抜き操作部材をコンパクトに配置することができる。
【0016】
本発明の第4の特徴によれば、連動ブレーキ操作子およびエア抜き操作部材が、共通な単一の支軸を介してシリンダボディに回動可能に支承されるので、連動ブレーキ操作子およびエア抜き操作部材の近傍を部品点数を少なくした簡単な構成でコンパクト化することができる。
【0017】
本発明の第5の特徴によれば、操向ハンドルを前方から覆う前部ハンドルカバーと、操向ハンドルを後方から覆って前部ハンドルカバーに連設される後部ハンドルカバーとで囲まれる空間にエア抜き操作部材が配置されるので、エア抜き操作部材を前部ハンドルカバーおよび後部ハンドルカバー間に収納して外部から視認し難くし、外観性を高めることができる。
【0018】
さらに本発明の第6の特徴によれば、エア抜き操作部材に設けられて操向ハンドルの下方に配置される操作部を、前部ハンドルカバーおよび後部ハンドルカバーの少なくとも一方の下部に設けられる開口部から手動操作することが可能であり、前部および後部ハンドルカバーを外さずにエア抜き操作部材を手動操作することができるようにしてメンテナンス性を高めることができ、しかも開口部を覆うリッドは前部ハンドルカバーおよび後部ハンドルカバーの少なくとも一方の下部に配設されるので、リッドを目立たなくして外観性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1のスクータ型自動二輪車の側面図である。
【図2】連動ブレーキ装置の構成を示す図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図1の5矢視図である。
【図6】ハンドルカバーの下部を図5の6−6線に沿って示す断面図である。
【図7】実施例2の図3に対応した図である。
【図8】実施例3の図3に対応した図である。
【図9】実施例4の図3に対応した図である。
【図10】実施例5の図3に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1について図1〜図6を参照しながら説明すると、先ず図1において、スクータ型自動二輪車の車体フレームFは、前輪WFを懸架したフロントフォーク11ならびに該フロントフォーク11の上部に連なるバー状の操向ハンドル12を操向可能に支承したヘッドパイプ13、該ヘッドパイプ13から下方に延出するダウンチューブ14、ならびに該ダウンチューブ14の下端部に連設されて後方に延びるリヤフレーム15等を備える。リヤフレーム15は、前端部がダウンチューブ14の下端に連結されて後方側に向けてほぼ水平に延びる一対の前部フレーム部15a…と、前部フレーム部15a…の後端から後上方に延びる一対の中間フレーム部15b…と、両中間フレーム部15b…の後端を相互に連結する後部フレーム部15cとを有して、平面視で略楕円状に形成されるものである。
【0022】
車体フレームFは、運転者の足元を支持するフロアボード16aを有する車体カバー16により覆われるものであり、該車体カバー16の後部には、運転者が座るシート17が設けられる。
【0023】
車体フレームFにおけるリヤフレーム15の中間フレーム部15b…には、単気筒エンジンEを含むパワーユニットPの前部が、後輪WRの回転軸線と平行な軸線まわりに揺動可能に支承され、該パワーユニットPの後部に後輪WRが軸支される。またリヤフレーム15における後部フレーム部15cの後部および前記パワーユニットPの後部間にはリヤクッション18が設けられる。
【0024】
図2において、前輪WFには、第1〜第3ポッド20,21,22への液圧の作用によって作動するディスクブレーキである前輪ブレーキBFが装着され、後輪WRには、ブレーキカムアーム23へのブレーキ操作力の入力に応じてブレーキ作動するドラム式ブレーキである後輪ブレーキBRが装着される。
【0025】
前記操向ハンドル12の右側には、前輪用ブレーキ操作子である右レバー24の操作に応じて液圧を出力する第1マスタシリンダ25が取付けられ、この第1マスタシリンダ25および前輪ブレーキBFの第1および第3ポッド20,22間は主液圧配管26で結ばれる。また前記操向ハンドル12の左側には、連動ブレーキ操作子である左レバー27Aの操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダ28Aが取付けられ、第2マスタシリンダ28Aおよび前記前輪ブレーキBFの第2ポッド21間は連動液圧配管29で結ばれ、前記左レバー27Aの操作力は後輪ブレーキ側操作力伝達手段であるブレーキケーブル30を介して前記後輪ブレーキBRのブレーキカムアーム23に伝達される。
【0026】
すなわち右レバー24を操作すると、第1マスタシリンダ25から出力される液圧が前輪ブレーキの第1および第3ポッド20,22に作用して前輪ブレーキBFがブレーキ作動し、左レバー27Aを操作すると、第2マスタシリンダ28Aから出力される液圧が前輪ブレーキBFの第2ポッド21に作用して前輪ブレーキBFがブレーキ作動するとともに、ブレーキケーブル30からブレーキカムアーム23にブレーキ操作力が伝達されて後輪ブレーキBRがブレーキ作動する。
【0027】
図3において、左レバー27Aは、操向ハンドル12の左端部に装着されるグリップ31を握った左手で回動操作可能であり、第2マスタシリンダ28Aのシリンダボディ32Aには、前記グリップ31よりも内方側で前記操向ハンドル12に固定される支持腕部38が一体に設けられ、この支持腕部38に左レバー27Aがボルト33を介して回動可能に取付けられる。
【0028】
図4を併せて参照して、前記シリンダボディ32Aには、一端を端壁34で閉じるシリンダ孔35と、該シリンダ孔35よりも大径にしてシリンダ孔35の他端に一端が同軸に連なるロッド収容孔36とが設けられる。而して前記シリンダ孔35の他端および前記ロッド収容孔36の一端間には環状の段部37が形成され、ロッド収容孔36の他端は外部に開放される。しかも前記シリンダボディ32Aは、前記端壁34を左レバー27A側に臨ませ、前記ロッド収容孔36の他端を前記左レバー27Aとは反対側に向けて開放する姿勢で前記操向ハンドル12に取付けられる。
【0029】
前記シリンダ孔35には、前記端壁34との間に液圧室39を形成するピストン40が摺動可能に嵌合され、前記端壁34および前記ピストン40間に縮設される戻しばね42が前記液圧室39の容積を増大する側に前記ピストン40を付勢するばね力を発揮するようにして前記液圧室39に収容される。また前記端壁34には、前記液圧室39に通じる出力ポート43が設けられ、この出力ポート43に連動液圧配管29が接続される。
【0030】
前記ピストン40の外周には、前記シリンダ孔35の内面に摺接する一対の環状シール部材44,45が軸方向に間隔をあけて装着され、両環状シール部材44,45間で前記ピストン40の外周および前記シリンダ孔35の内周間には環状室46が形成される。
【0031】
前記シリンダ孔35の上方には、ブレーキ液を貯留するリザーバ47が固定配置されるものであり、このリザーバ47は、前記シリンダボディ32Aの上部に一体に形成されて上方に延びるとともに上端を開放した横断面四角形の壁部48と、該壁部48の上端開放部を閉じるようにして複数たとえば2つのねじ部材50,50で前記壁部の上端に締結される蓋部材49とで構成される。
【0032】
前記シリンダボディ32Aには、前記ピストン40の軸方向位置にかかわらず前記環状室46を前記リザーバ47内の下部に通じさせる補給ポート51が設けられるとともに、前記ピストン40が前記液圧室39の容積を最大とした軸方向位置にあるときに前記液圧室39を前記リザーバ47内の下部に通じさせるリリーフポート52とが設けられ、前記両環状シール部材44,45のうち前記環状室46および前記液圧室39間に介在する環状シール部材44は、環状室46から液圧室39へのブレーキ液の流通を許容する。
【0033】
前記ピストン40には、前記ロッド収容孔36内に同軸に配置されるピストンロッド41が、前記液圧室39とは反対側に臨む環状の規制段部53を前記ピストン40との間に形成するようにして同軸にかつ一体に設けられており、この規制段部53に当接して前記液圧室39の容積を増大する側への前記ピストン40および前記ピストンロッド41の移動限を規制するリング状の規制板54が、前記シリンダ孔35および前記ロッド収容孔36間の段部37と、前記ロッド収容孔36の一端寄り内面に装着される止め輪55とで挟持、固定される。また前記ピストンロッド41は、該ピストンロッド41の他端部および前記止め輪55間に設けられてロッド収容孔36孔内に収容されるブーツ56で覆われる。
【0034】
第2マスタシリンダ28Aのシリンダボディ32Aと一体の支持腕部38に、前記ボルト33で該ボルト33の軸線まわりに回動可能に取付けられる左レバー27Aには、第2マスタシリンダ28Aの前方で左右方向に延びる連結ロッド58の一端部が連結軸85を介して回動可能に取付けられる。一方、第2マスタシリンダ28Aにおける前記ピストンロッド41の他端に当接するノッカ59を長手方向中間部に一体に備えるエア抜き操作部材60Aが、第2マスタシリンダ28Aに関して左レバー27Aとは反対側で前後に延びるように配置され、前記連結ロッド58の他端は、前記ノッカ59よりも前方でエア抜き操作部材60Aに回動可能に連結される。
【0035】
ところでブレーキケーブル30は、アウターケーブル61内にインナーケーブル62が移動可能に挿通されて成るプッシュ・プルケーブルであり、第2マスタシリンダ28Aのシリンダボディ32Aにねじ部材63で取付けられた支持枠64に前記アウターケーブル61の一端部が固定され、該アウターケーブル61の一端部から突出したインナーケーブル62の一端部が、該インナーケーブル62の一端部に固着される連結駒86をエア抜き操作部材60Aに係合することで、前記エア抜き操作部材60Aの前端部に連結される。また前記連結ロッド58の他端部は、第2マスタシリンダ28Aのピストンロッド41に当接するノッカ59と、ブレーキケーブル30におけるインナーケーブル62の一端部の連結点との間で前記エア抜き操作部材60Aに連結軸87を介して回動可能に連結される。
【0036】
したがって左レバー27Aを回動操作すると、前記ノッカ59で前記ピストンロッド41を押圧するとともに前記ブレーキケーブル30を牽引するように前記エア抜き操作部材60Aを作動せしめる操作力が、前記連結ロッド58から前記エア抜き操作部材60Aに作用することになり、左レバー27Aを回動操作することで、後輪ブレーキBRおよび前輪ブレーキBFを連動、作動せしめることができる。
【0037】
ところで左レバー27Aから第2マスタシリンダ28Aに押圧力が作用するタイミングは、左レバー27Aの操作力が設定値以上となるまで、弾性部材であるコイルばね66によって遅延させることが可能であり、このコイルばね66の付勢力は付勢力調節手段である調節ねじ67の軸方向進退位置を変更することで調節可能である。
【0038】
第2マスタシリンダ28Aのシリンダボディ32Aには、第2マスタシリンダ28Aよりも後方でエア抜き操作部材60Aに対向するようにして操向ハンドル12側に向けて突出する突部69が一体に設けられており、この突部69に軸方向進退位置を変更可能として前記調節ねじ67が螺合され、前記コイルばね66は、第2マスタシリンダ28Aよりも後方でエア抜き操作部材60Aと、前記調節ねじ67で受けられたばね受け部材68との間に縮設される。
【0039】
而して左レバー27Aの回動操作時に、前記エア抜き操作部材60Aは、前記コイルばね66の付勢力に抗して第2マスタシリンダ28Aにノッカ59から押圧力を作用せしめる方向に回動するまでは、前記コイルばね66の当接点を支点として、左レバー27Aの回動軸線と平行な軸線まわりに回動し、後輪ブレーキBRを先行して作動せしめることになり、左レバー27Aの操作力が設定値以上となったときにはコイルばね66を圧縮しつつ第2マスタシリンダ28Aにノッカ59から押圧力を作用せしめることが可能となり、調整ねじ67の軸方向位置を変更することで、左レバー27Aから第2マスタシリンダ28Aに押圧力が作用するタイミングを変化させることができる。
【0040】
図5および図6を併せて参照して、操向ハンドル12の中央部はハンドルカバー70で覆われており、このハンドルカバー70は、操向ハンドル12を前方から覆う前部ハンドルカバー71と、操向ハンドル12を後方から覆って前部ハンドルカバー71に連設される後部ハンドルカバー72とで構成され、前部ハンドルカバー71および後部ハンドルカバー72で囲まれる空間Sに、第2マスタシリンダ28A、連結ロッド58、エア抜き操作部材60A、コイルばね66および調節ねじ67等が配置される。
【0041】
ところで前後に延びる前記エア抜き操作部材60Aの後部は、操向ハンドル12の下方に配置されるものであり、エア抜き操作部材60Aの後端部下面には、たとえば六角形の横断面形状を有する操作部73が、図示しない工具を係合してエア抜き操作部材60Aを手動操作するために、操向ハンドル12側に向けて突設される。
【0042】
而して前記操作部73に工具を係合してエア抜き操作部材60Aを操作すると、エア抜き操作部材60Aは、連結ロッド58の他端部のエア抜き操作部材60Aへの連結部を支点としてノッカ59で第2マスタシリンダ28Aのピストンロッド41に押圧力を作用せしめるように回動することができ、エア抜き操作部材60Aは、前記左レバー27Aの操作とは無関係に第2マスタシリンダ28Aに押圧力を作用せしめることが可能である。
【0043】
一方、ハンドルカバー70を協働して構成する前部および後部ハンドルカバー71,72の少なくとも一方の下部、この実施例では前部および後部ハンドルカバー71,72の下部には、図6で明示するように、前記操作部73を臨ませる開口部74が設けられるとともに、該開口部74を覆うリッド75が開閉可能に取付けられる。
【0044】
次にこの実施例1の作用について説明すると、前輪ブレーキBFおよび後輪ブレーキBRを連動してブレーキ作動せしめることを可能とした左レバー27Aの操作とは無関係に、エア抜き操作部材60Aによって第2マスタシリンダ28Aに押圧力を作用せしめることが可能であるので、第2マスタシリンダ28Aから連動液圧配管29を経て前輪ブレーキBFに至る液圧系のエア抜き作業を行うときには、エア抜き操作部材60Aから第2マスタシリンダ28Aに押圧力をダイレクトに作用せしめることができ、作業量を減少させつつ、エア抜き作業時間を短くして作業効率を高めることができる。
【0045】
また左レバー27Aから第2マスタシリンダ28Aに押圧力が作用するタイミングは、コイルばね66が発揮する付勢力によって左レバー27Aの操作力が設定値以上となるまで遅延させることができ、そのコイルばね66による付勢力は調節ねじ67の軸方向進退位置を変化させることができるので、第2マスタシリンダ28Aから液圧力を出力するのに必要な初期荷重を変更することができるとともに、エア抜き時にコイルばね66の付勢力を減少させるようにしてエア抜き時にエア抜き操作部材60Aにかかる負荷を小さくすることができる。
【0046】
また操向ハンドル12を前方から覆う前部ハンドルカバー71と、操向ハンドル12を後方から覆って前部ハンドルカバー71に連設される後部ハンドルカバー72とで囲まれる空間Sにエア抜き操作部材60Aが配置されるので、エア抜き操作部材60Aを前部ハンドルカバー71および後部ハンドルカバー72間に収納して外部から視認し難くし、外観性を高めることができる。
【0047】
さらにエア抜き操作部材60Aを手動操作するようにして該エア抜き操作部材60Aに設けられる操作部73が操向ハンドル12の下方に配置され、前部ハンドルカバー71および後部ハンドルカバー72の少なくとも一方の下部(この実施例1では両方の下部)に、操作部73を臨ませる開口部74が設けられるので、開口部74からエア抜き操作部材60Aを手動操作することが可能であり、前部および後部ハンドルカバー71,72を外さずにエア抜き操作部材60Aを手動操作することができるようにしてメンテナンス性を高めることができる。しかも前記開口部74を覆うリッド75が、前部ハンドルカバー71および後部ハンドルカバー72の少なくとも一方の下部(この実施例1では両方の下部)に開閉可能に取付けられるので、リッド75を目立たなくして外観性を高めることができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の実施例2について図7を参照しながら説明するが、実施例1に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとして、詳細な説明は省略する。
【0049】
左レバー27Aには、第2マスタシリンダ28Aの前方で左右方向に延びる連結ロッド58の一端部が回動可能に取付けられ、ノッカ59を長手方向中間部に一体に備えるエア抜き操作部材60Bが、第2マスタシリンダ28Aに関して左レバー27Aとは反対側で前後に延びるように配置される。また第2マスタシリンダ28Aのシリンダボディ32Aに取付けられた支持枠64にブレーキケーブル30におけるアウターケーブル61の一端部が固定され、該アウターケーブル61の一端部から突出したインナーケーブル62の一端部がエア抜き操作部材60Bの前端部に連結される。さらに前記連結ロッド58の他端部は、前記ノッカ59と、前記インナーケーブル62の一端部の連結点との間で前記エア抜き操作部材60Bに回動可能に連結される。
【0050】
また第2マスタシリンダ28Aのシリンダボディ32Aに一体に設けられる突部69には軸方向進退位置を変更可能として調節ねじ67が螺合され、コイルばね66が、エア抜き操作部材60Bと、前記調節ねじ67で受けられたばね受け部材68との間に縮設される。また前後に延びる前記エア抜き操作部材60Bの後部には、操向ハンドル12の下方に配置されるようにして操作部76が一体に設けられる。
【0051】
この実施例2によっても、上記実施例1と同様の効果を奏することができる。
【実施例3】
【0052】
本発明の実施例3について図8を参照しながら説明するが、実施例1および2に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとして、詳細な説明は省略する。
【0053】
グリップ31を握った左手で回動操作可能な左レバー27Bの操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダ28Bのシリンダボディ32Bには、前記グリップ31よりも内方側で前記操向ハンドル12に固定される支持腕部78が一体に設けられ、この支持腕部78に左レバー27Bが支軸79を介して回動可能に取付けられる。
【0054】
而して第2マスタシリンダ28Bのシリンダボディ32Bは、第2マスタシリンダ28Bが備えるピストンロッド41を左レバー27B側に配置するようにして操向ハンドル12に取付けられるものであり、左レバー27Bとは反対側の端部寄りでシリンダボディ32Bに一体に設けられて前方に突出する突部80に、ブレーキケーブル30におけるアウターケーブル61の一端部が固定され、アウターケーブル61の一端部から突出したインナーケーブル62の一端部に設けられる連結駒81が、前記支軸79と平行な連結ピン82を介して左ケーブル27Bに回動可能に連結される。
【0055】
第2マスタシリンダ28Bには、左レバー27Bの操作とは無関係にエア抜き操作部材60Cによって押圧力を作用せしめることが可能であり、第2マスタシリンダ28Bのピストンロッド41に当接するノッカ59を後端側に一体に備えて前後方向に延びるエア抜き操作部材60Cの前後方向中間部が、前記左レバー27Bと平行もしくは同軸の軸線まわりに回動可能として第2マスタシリンダ28Bのシリンダボディ32Bと一体の支持腕部78に回動可能に支承される。而してこの実施例3では、前記支持腕部78に、左レバー27Bおよびエア抜き操作部材60Cが共通な単一の支軸79を介して回動可能に支承される。
【0056】
前記エア抜き操作部材60Cの後端部には、たとえば六角形の横断面形状を有する操作部73が、図示しない工具を係合してエア抜き操作部材60Cを手動操作することを可能として突設される。また前記連結駒81には、前記エア抜き操作部材60Cの前端部に当接し得る係合段部83が設けられ、左レバー27Bの回動操作時には係合段部83がエア抜き操作部材60Cの前端部に当接して押圧することで、ノッカ59でピストンロッド41を押圧する側にエア抜き操作部材60Cが回動駆動されるのに対し、ノッカ59でピストンロッド41を押圧する側にエア抜き用操作エア抜き操作部材60Cを回動操作したときにはエア抜き操作部材60Cの前端部が前記係合段部83から離れることになる。
【0057】
この実施例3によれば、左レバー27Bおよびエア抜き操作部材60Cが平行もしくは同軸の軸線まわりに回動可能であるので、左レバー27Bおよびエア抜き操作部材60Cをコンパクトに配置することができ、特に、左レバー27Bおよびエア抜き操作部材60Cが、共通な単一の支軸79を介してシリンダボディ32Bの支持腕部78に回動可能に支承されるので、左レバー27Bおよびエア抜き操作部材60Cの近傍を、部品点数を少なくした簡単な構成でコンパクト化することができる。
【実施例4】
【0058】
本発明の実施例4について図9を参照しながら説明するが、実施例1〜3に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとして、詳細な説明は省略する。
【0059】
第2マスタシリンダ28Bには、左レバー27Bの操作とは無関係にエア抜き操作部材60Dによって押圧力を作用せしめることが可能であり、第2マスタシリンダ28Bのピストンロッド41に当接するノッカ59を前後方向中間部に一体に備えて前後方向に延びるエア抜き操作部材60Dの前記ノッカ59よりも前方の部分が、第2マスタシリンダ28Bのシリンダボディ32Bと一体の支持腕部78に、左レバー27Bと共通である単一の支軸79を介して回動可能に支承される。
【0060】
前記エア抜き操作部材60Dの長手方向中間部には、たとえば六角形の横断面形状を有する操作部73が、図示しない工具を係合してエア抜き操作部材60Dを手動操作することを可能として突設される。またエア抜き操作部材60Dの前端部は、前記連結駒81の係合段部83に当接可能である。
【0061】
さらにエア抜き操作部材60Dの後端部には、調節ねじ67が軸方向進退位置を変更可能として螺合され、該調節ねじ67で受けられるばね受け部材68と、シリンダボディ32Bと一体の支持腕部78との間にコイルばね66が縮設される。
【0062】
この実施例4によれば、実施例3と同様の効果を奏することができるのに加えて、コイルばね66が発揮する付勢力によって左レバー27Bの操作力が設定値以上となるまで左レバー27Bから第2マスタシリンダ28Bに押圧力が作用するタイミングを遅延させることができ、第2マスタシリンダ28Bから液圧力を出力するのに必要な初期荷重を変更することができるとともに、エア抜き時にコイルばね66の付勢力を減少させるようにしてエア抜き時にエア抜き操作部材60Dにかかる負荷を小さくすることができる。
【実施例5】
【0063】
本発明の実施例5について図10を参照しながら説明するが、実施例1〜4に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとして、詳細な説明は省略する。
【0064】
第2マスタシリンダ28Bには、左レバー27Bの操作とは無関係にエア抜き操作部材60Eによって押圧力を作用せしめることが可能であり、第2マスタシリンダ28Bのピストンロッド41に当接するノッカ59を前後方向中間部に一体に備えて前後方向に延びるエア抜き操作部材60Eの前記ノッカ59よりも前方の部分が、第2マスタシリンダ28Bのシリンダボディ32Bと一体の支持腕部78に、左レバー27Bと共通である単一の支軸79を介して回動可能に支承される。
【0065】
前記エア抜き操作部材60Eの後端部には、操作部84が一体に設けられ、エア抜き操作部材60Eの前端部は、前記連結駒81の係合段部83に当接可能である。
【0066】
この実施例5によれば、実施例3と同様の効果を奏することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0068】
たとえば上記実施の形態では本発明をスクータ型自動二輪車に適用した場合について説明したが、本発明は自動三輪車にも適用可能である。またブレーキペダルを連動ブレーキ操作子として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
12・・・操向ハンドル
24・・・前輪用ブレーキ操作子である右レバー
25・・・第1マスタシリンダ
26・・・主液圧配管
27A,27B・・・連動ブレーキ操作子である左レバー
28A,28B・・・第2マスタシリン
29・・・連動液圧配管
30・・・後輪ブレーキ側操作力伝達手段であるブレーキケーブル
32B・・・シリンダボディ
60A,60B,60C,60D,60E・・・エア抜き操作部材
66・・・弾性部材であるコイルばね
67・・・付勢力調節手段である調節ねじ
71・・・前部ハンドルカバー
72・・・後部ハンドルカバー
73,76,84・・・操作部
74・・・開口部
75・・・リッド
79・・・支軸
BF・・・前輪ブレーキ
BR・・・後輪ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧の作用によって作動する前輪ブレーキ(BF)と、後輪ブレーキ(BR)と、前輪用ブレーキ操作子(24)の操作に応じて液圧を出力する第1マスタシリンダ(25)と、第1マスタシリンダ(25)および前記前輪ブレーキ(BF)間を結ぶ主液圧配管(26)と、連動ブレーキ操作子(27A,27B)の操作に応じて液圧を発生する第2マスタシリンダ(28A,28B)と、第2マスタシリンダ(28A,28B)および前記前輪ブレーキ(BF)間を結ぶ連動液圧配管(29)と、前記連動ブレーキ操作子(27A,27B)の操作力を前記後輪ブレーキ(BR)に伝達する後輪ブレーキ側操作力伝達手段(30)とを備える自動二・三輪車用連動ブレーキ装置において、前記連動ブレーキ操作子(27A,27B)の操作とは無関係に第2マスタシリンダ(28A,28B)に押圧力を作用せしめることを可能としたエア抜き操作部材(60A,60B,60C,60D,60E)を含むことを特徴とする自動二・三輪車用連動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記連動ブレーキ操作子(27A,27B)から第2マスタシリンダ(28A,28B)に押圧力が作用するタイミングを前記連動ブレーキ操作子(27A,27B)の操作力が設定値以上となるまで遅延させる弾性部材(66)と、該弾性部材(66)の付勢力を調節可能な付勢力調節手段(67)とを備えることを特徴とする請求項1記載の自動二・三輪車用連動ブレーキ装置。
【請求項3】
第2マスタシリンダ(28B)のシリンダボディ(32B)に、前記連動ブレーキ操作子(27B)および前記エア抜き操作部材(60C,60D,60E)が平行もしくは同軸の軸線まわりに回動可能に支承されることを特徴とする請求項1または2記載の自動二・三輪車用連動ブレーキ装置。
【請求項4】
前記連動ブレーキ操作子(27B)および前記エア抜き操作部材(60C〜60E)が、共通な単一の支軸(79)を介して前記シリンダボディ(32B)に回動可能に支承されることを特徴とする請求項3記載の自動二・三輪車用連動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記連動ブレーキ操作子(27A)が、操向ハンドル(12)に回動可能に配設されるレバーであり、前記操向ハンドル(12)を前方から覆う前部ハンドルカバー(71)と、前記操向ハンドル(12)を後方から覆って前記前部ハンドルカバー(71)に連設される後部ハンドルカバー(72)とで囲まれる空間に、前記エア抜き操作部材(60A,60B)が配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動二・三輪車用連動ブレーキ装置。
【請求項6】
前記エア抜き操作部材(60A,60B)を手動操作するようにして該エア抜き操作部材(60A,60B)に設けられる操作部(73,76,84)が前記操向ハンドル(12)の下方に配置され、前記前部ハンドルカバー(71)および前記後部ハンドルカバー(72)の少なくとも一方の下部に、前記操作部(73,76,84)を臨ませる開口部(74)が設けられるとともに、該開口部(74)を覆うリッド(75)が開閉可能に取付けられることを特徴とする請求項5記載の自動二・三輪車用連動ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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