説明

自動二輪車のランプユニット

【課題】ポジションランプの車体中央側への配光を十分に確保しながらも、ポジションランプとレンズとの間に大きな隙間を設けて放熱性を良好にできる自動二輪車のランプユニットを提供する。
【解決手段】 前面にレンズ19を有し車体3の前部に装着されるランプユニット1において、ヘッドランプ17とポジションランプ18とを設ける。レンズ19におけるポジションランプ18の前面を覆うポジションレンズ部22を、ランプレンズ部21よりも外方へ膨出した形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプと左右一対のポジションランプとを有し、車体の前部に装着される自動二輪車のランプユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、車体の前部に装着されるカウリングに、前方照射用のヘッドランプに加えて、薄暮時や駐車時などに点灯する左右一対のポジションランプを備え、各ポジションランプを、ヘッドランプの外側方に配したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−81154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ポジションランプは、前方および側方の適切な範囲に配光されるように配光角度が設定される。その場合、車体左右方向の中央側または外方側(以下、単に「車体中央側」または「車体外方側」という。)への配光がランプユニット内の他の部品によって妨げられることがある。そこで、ポジションランプによる車体中央側または車体外方側への配光量を十分増やすために、ポジションランプを前方へ移動させると、ポジションランプとこれの前方側に配置されたレンズとの隙間が小さくなる結果、その小さな空間内にポジションランプからの発生熱が閉じ込められて、周辺部材が熱的影響を受け易い。これを避けるためにレンズを前方に移動させると、ランプユニットの全体形状が大形化する。一方、ポジションランプとレンズとの間に十分な放熱用の空間を確保するために、ポジションランプを後退させると、ポジションランプによる車体中央側または車体外方側への配光量が低減する。
【0005】
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたもので、ポジションランプの配光を十分に確保しながらも、ポジションランプとレンズとの間に十分大きな隙間を設けることができる自動二輪車のランプユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る自動二輪車のランプユニットは、前面にレンズを有し、車体の前部に装着されるものであって、ヘッドランプとポジションランプとを備え、前記レンズにおける前記ポジションランプの前面を覆うポジションレンズ部がそのヘッドランプの前面を覆うランプレンズ部よりも外方へ膨出している。ここで、「ランプレンズ部よりも外方へ膨出している」とは、ランプレンズ部の外表面の仮想延長面よりも外方に進出している状態をいう。
【0007】
この構成によれば、レンズにおけるポジションランプの前面を覆うポジションレンズ部がそのヘッドランプの前面を覆うランプレンズ部よりも外方へ膨出しているから、ポジションランプの前後方向位置を、車体中央側または車体外方側への配光量が十分大きくなるように前方に設定しても、このポジションランプと外方へ膨出したポジションレンズ部との間に、ポジションランプの発生熱を効果的に放熱させるのに十分な隙間を確保することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記ポジションランプが、前方から見たとき、前記ヘッドランプの外側方の斜め上方に配置されている。この構成によれば、一般にヘッドランプとポジションランプ間の寸法を所要の大きさとした場合、ヘッドランプとポジションランプを同一高さで並置する配置と比較して、ポジションランプの位置を車体の中央寄りに設定できる。これにより、ランプユニット全体の左右方向の幅を小さくすることができるので、ポジションレンズ部の外方への膨出による前後方向寸法の僅かな増大を補って、ランプユニット全体の容積を小さくすることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記ポジションレンズ部が、前方から見たとき、内側部が内側方へ向かって弧状に突出している。この構成によれば、ポジションレンズ部が内側方へ向かって弧状に突出した流線型となるから、スピード感を感じる外観を与え、走行時の空気抵抗を低減させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動二輪車のランプユニットでは、レンズにおけるポジションランプの前面を覆うポジションレンズ部をそのヘッドランプの前面を覆うレンズ部よりも外方へ膨出した形状としたことにより、ポジションランプを、車体中央側または車体外方側への配光量が大きくなる前寄りの位置に設けても、ポジションランプとポジションレンズ部との間に十分な大きさの隙間を確保して放熱性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るランプユニット1を備えた自動二輪車の側面図を示す。この自動二輪車は、車体の前部を覆うカウリング2が車体フレーム3に支持されており、カウリング2にランプユニット1が装着されている。車体フレーム3の前端にはヘッドパイプ4が設けられ、このヘッドパイプ4に軸支されたフロントフォーク7に前輪8を取り付け、車体フレーム3の中央下部に揺動自在に軸支されたスイングアーム9の後端部に後輪10を取り付け、車体フレーム3のほぼ中央部に取り付けたエンジン11で後輪10を駆動する。フロントフォーク7の上端部には操向用のハンドル12が固定されている。車体フレーム3の上部には燃料タンク13およびシート14が取り付けられている。
【0012】
図2は自動二輪車の正面図、図3はカウリング2から取り外した状態のランプユニット1を示す全体の斜視図、図4はそのランプユニット1の正面図である。図2に示すように、ランプユニット1は、前輪8の上方に位置しており、図3に示すように、共に2灯式のヘッドランプ17とポジションランプ18とを備え、左右一対のヘッドランプ17の各々に対し、前方から見て外側方の斜め上方に、ポジションランプ18が配置されている。したがって、図4に示すように、ランプユニット2は目尻がつり上がった人間の顔の表情を与える。
【0013】
図5は図4のV−V線に沿った断面図であり、図5に示すように、ランプユニット1は、前側の左右一対のレンズ19と後側の単一のボディ20とを着脱自在に連結してなるもので、このレンズ19およびボディ20はそれぞれ樹脂で形成されている。レンズ19ハ左右一対ではなく、単一物としてもよい。
【0014】
レンズ19は、図4に示すランプレンズ部21と、その外側方に配設されたポジションレンズ部22とを有している。ボディ20には、各ランプレンズ部21,21に対向して、発光バルブのような2つのヘッドランプ用発光体23が取り付けられ、さらに、各ポジションレンズ部22に対向して2つのポジションランプ用発光体24が取り付けられている。すなわち、図5に示すように、ランプレンズ部21はヘッドランプ用発光体23の前面を覆うように配置され、ポジションレンズ部22はポジションランプ用発光体24の前面を覆うように配置されている。
【0015】
一方、図2に示すように、カウリング2には、ヘッドランプ17の前面である左右一対のレンズ19をカウリング2の外表面に臨ませる左右一対の開口部27が形成されている。
【0016】
図5に示すように、レンズ19における前記ポジションレンズ部22は、ランプレンズ部21よりも外方、この場合には前方Fへ膨出しているとともに、図4に示すように、前方から見たとき、内側部22aが内側方、つまり車体中央側へ向かって弧状に突出した形状になっている。これにより、前記ランプレンズ部21がカウリング2の外表面に面一に臨む配置で開口部27に臨んでいるのに対し、ポジションレンズ部22は、ランプレンズ部21の外表面の仮想延長面21Aよりも外方に突出する配置で開口部27に臨んでいる。
【0017】
さらに、図4に示すように、ボディ20の外周部の複数箇所(この実施形態では6箇所)に、カウリング2(図2)への取付部31が一体的に突出形成されており、これら取付部31を、図2のカウリング2の背面に形成された複数個のマウント部(図示せず)にボルト(図示せず)のような取付部材で取り付けることにより、ランプユニット1がカウリング2に支持されている。カウリング2の上部側にはウインドシールド32が装着されている。
【0018】
図5に示すように、各ヘッドランプ17には、それぞれヘッドランプ用発光体23からの光線を集光するためのヘッドランプ用リフレクタ33が設けられている。リフレクタ33は、例えば、樹脂板の内面にアルミニウム薄膜からなる反射膜を蒸着したものであり、ボディ20に支持されている。ヘッドランプ用リフレクタ33の前方側であってレンズ19の内方側には、前記リフレクタ33の周囲の機構を隠蔽するためのエクステンション41が設けられており、これによって、ランプユニット1を前方から見たときの美観の向上を図っている。このエクステンション41は、レンズ19の内面側に支持されている。
【0019】
ポジションランプ18の発光体24は、ボディ20に固定されたソケット40に装着されている。この発光体24からの光線を集光するためのポジションランプ用リフレクタ34はボディ20に支持されている。
【0020】
前記ランプユニット1では、レンズ19におけるポジションランプ18の前面を覆うポジションレンズ部22がランプレンズ部21よりも前方Fへ膨出しているから、ポジションランプ18を、車体中央側への配光Lが十分な光量となるように、前方Fに進出した位置に設けても、このポジションランプ18と前方へ膨出したポジションレンズ部22との間に、図4のVI−VI線に沿った断面図である図6に明示するように、ポジションランプ18の発生熱を効果的に放熱させるのに十分な隙間29が確保される。
【0021】
また、図4で示すように、左右一対のポジションランプ18をヘッドランプ17の外側方の斜め上方に配置しているので、ヘッドランプ17とポジションランプ18間の寸法Dを所要の大きさとした場合、両ランプ17,18を同一高さで並置する配置と比較して、ポジションランプ18の位置を車体中央寄りに設定できる。これにより、ランプユニット1の左右方向の幅を小さくすることができる。したがって、図5に示すポジションレンズ部22が前方Fへ膨出したことによりランプユニット1の両側部の前後方向寸法が若干大きくはなっても、これが補われて、ランプユニット1全体の容積が小さくなる。
【0022】
さらに、ポジションレンズ部22は、図4に示したように、前方から見たときに内側部22aが内側方へ向かって弧状に突出した形状を有しているので、ポジションレンズ部22が車体中央側へ進出する。これにより、ポジションレンズ部22の形状がスピード感を与える好ましい流線型となり、走行時のポジションレンズ部22の空気抵抗が低減する。
【0023】
前記ポジションレンズ部22は、図5に示すポジションランプ18との間に十分な隙間29が存在するように外側に膨出させればよく、その膨出方向は前方Fに限られるものではなく、例えば外側方であってもよい。
【0024】
また、ヘッドランプ17とポジションランプ18のレイアウトは上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、単一のヘッドランプとポジションランプが上下に並んだレイアウトについても、本発明を適用できる。その場合、ポジションランプを前方に寄せて配置できることにより、車体外方側への配向量が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るランプユニットを備えた自動二輪車を示す側面図である。
【図2】同実施形態の自動二輪車を示す正面図である。
【図3】同実施形態のランプユニットを示す斜視図である。
【図4】同実施形態のランプユニットを示す正面図である。
【図5】図4のV −V 線に沿った断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ランプユニット
2 カウリング
3 車体フレーム(車体)
17 ヘッドランプ
18 ポジションランプ
19 レンズ
21 ランプレンズ部
22 ポジションレンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にレンズを有し、車体の前部に装着されるランプユニットであって、
ヘッドランプとポジションランプとを備え、
前記レンズにおける前記ポジションランプの前面を覆うポジションレンズ部がそのヘッドランプの前面を覆うランプレンズ部よりも外方へ膨出している自動二輪車のランプユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記ポジションランプは、前方から見たとき、前記ヘッドランプの外側方の斜め上方に配置されている自動二輪車のランプユニット。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ポジションレンズ部は、前方から見たとき、内側部が内側方へ向かって弧状に突出している自動二輪車のランプユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−30809(P2007−30809A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220552(P2005−220552)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】